説明

患者流体管理システム

1つ以上の注入ポンプを精密に制御し、患者センサおよび薬剤情報をリアルタイムで監視し、患者状態と、そのような監視および制御に基づいて患者への薬剤投与の状態とを導出し、リアルタイムの患者、注入、および薬剤情報、ならびに導出された患者状態および薬剤レベルに基づいて注入パラメータを自動的に調節することによって、患者流体を管理するための統合された解決策を提供する患者流体ケアシステム。本発明の一側面は、種々の患者および注入パラメータのリアルタイムの表示を提供する。本発明の別の側面は、リアルタイムの患者流体平衡および薬剤レベル情報を医療スタッフに提供する。本発明のさらに別の側面では、本発明は注入の間、受信されたリアルタイム患者の生物学的データに基づいて患者の所定の注入プロトコルまたは計画を自動的に調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮特許出願第61/287,881号(名称「MEMS Pump for Medical Infusion Pump」、2009年12月18日出願)、米国仮特許出願第61/287,903号(名称「Pump Stay」、2009年12月18日出願)、米国仮特許出願第61/287,912号(名称「Micro Infusion Pump System Software」、2009年12月18日出願)、および米国仮特許出願第61/287,991号(名称「Central Venous Pressure Monitoring Using Micro Infusion Pump」、2009年12月18日出願)の優先権を主張し、これらの出願の内容は各々その全体が本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、患者流体管理システムおよび関連方法に関し、より具体的には、使い捨て圧電駆動注入ポンプを利用する患者流体管理システムに関する。
【背景技術】
【0003】
医療治療は、一般的に、注入ポンプと称されるものを介して薬剤、ビタミン、栄養素、代謝産物等を患者に提供するステップを伴う。注入ポンプは、患者の血液、身体組織、消化管、呼吸系、粘膜、または皮膚に流体を直接的に投与する。さらに、患者治療は、多くの場合、単一患者に複数の流体を同時に投与するステップを含む。次に、投与される流体の種類ならびに流体の流量および総量が、患者の特定の健康問題、患者のバイタルサイン、および種々の患者モニタから取得された他のリアルタイムの患者の生物学的データによって決定される。
【0004】
故に、医師および他の医療スタッフは、種々の、独立して管理され、多くの場合、遠隔に位置するデータ源から、必要とされる薬剤、医療機器、および患者の生物学的データを収集する課題がしばしば提示される。Kernsらの特許文献1、Rublacabaの特許文献2、Samiotesらの特許文献3、およびEggersらの特許文献4に説明されるもの等、種々の形式の多重構成要素注入システムが、提案されているが、しかしながら、これらのシステムは、医療スタッフが直面する前述の課題に対して、完全に統合された解決策を提供していない。例えば、Eggerの特許は、注入ポンプとインターフェースユニットとの間の双方向通信に依存する、過度に複雑なシステムを説明している。すなわち、Eggerの注入ポンプは、インターフェースユニットにデータを通信し返す。
【0005】
故に、注入治療の安全性および精度を改善するために、注入流体の送達を精密に駆動しつつ、同時に、患者の生物学的情報を取得し、医療スタッフにリアルタイムの注入状態ならびに患者の流体および薬剤状態に関する関連予測を提供するために、統合されたシステムが必要とされる。さらに、医療スタッフをより効率的に利用し、および患者の安全性の向上を提供するために、リアルタイムの患者センサ入力に基づいて、流体流量および総注入量等の動作仕様を医療スタッフによって確立された範囲内で反応させるか、または調節することができるシステムが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,756,706号明細書
【特許文献2】米国特許第4,898,578号明細書
【特許文献3】米国特許第5,256,157号明細書
【特許文献4】米国特許第5,713,856号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による患者流体ケアシステムは、注入流体の精密な送達を提供しつつ、同時に患者の生物学的情報を取得し、医療スタッフにリアルタイムの注入状態ならびに患者の流体および薬剤状態に関する関連予測を提供する。さらに、本発明による患者流体ケアシステムは、リアルタイムの患者情報に従って、医療スタッフによって確立された範囲内に所定の注入プロトコルまたは計画に反応するか、またはそれを調節することができる。
【0008】
本発明の一側面は、種々の患者および注入パラメータのリアルタイムの表示を提供する。本発明の別の側面は、リアルタイムの患者流体平衡および薬剤レベル情報を医療スタッフに提供する。本発明のさらに別の側面では、本発明は注入の間、受信されたリアルタイムの患者の生物学的データに基づいて、患者の所定の注入プロトコルまたは計画を自動的に調節する。
【0009】
本発明の実施形態が可能とする、これらおよび他の側面、特徴、ならびに利点は、添付図面を参照することによって本発明の実施形態の以下の説明から明白となり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による患者流体ケアシステムの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による患者流体ケアシステムの注入ポンプの斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による患者流体ケアシステムのデータフローおよび処理の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の具体的実施形態について、添付図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形式で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態が提供されることにより、本開示が詳細かつ完璧となり、当業者に発明の範囲を完全に伝達する。添付図面において例示される実施形態の詳細な説明で使用される用語は、本発明の限定を意図するものではない。図面中、同一番号は同一要素を指す。
【0012】
本発明による患者流体ケアシステムは、患者の栄養または薬剤流体がそれから管理および監視される単一インターフェースを提供する。図1に示されるように、本発明による患者流体ケアシステム10は、ユーザインターフェース22を有する端末20を備える。ユーザインターフェース22は、例えば、タッチスクリーンディスプレイを備えてもよい。端末20は、流体リザーバ40から患者ライン60を通して患者50に注入流体を提供する機能を果たす1つ以上の注入ポンプ30を制御する役割を果たす。患者ライン60は、この分野で周知の種々の異なる管類およびカテーテルシステムを備えてもよい。端末20は、注入流体リザーバまたはバッグ40を支持するための静脈内輸液支柱あるいはスタンドをさらに備えてもよい。好ましくは、静脈内輸液支柱またはスタンドは、高さ調節可能である。
【0013】
注入ポンプ30に関して、蠕動ポンプ、注射器ポンプ、およびエラストマーポンプを含む種々の種類の注入ポンプを、注入ポンプ30として利用することができることが企図される。最大の精度および利便性を達成するために、注入ポンプ30は、圧電効果によって駆動される微小電気機械、すなわち、MEMSのマイクロポンプであることが好ましい。要するに、そのようなマイクロポンプは、周知の集積回路加工方法および技術を使用して加工することができる。例えば、集積回路製造加工技法を使用して、小型チャネルをシリコンウエハの表面上に形成することができる。ガラス等の材料の薄片を、処理されたシリコンウエハの表面上に取着することによって、流路および流体チャンバをチャネルおよびチャンバから形成することができる。次いで、圧電材料の層、すなわち、石英等の圧電体が、シリコンウエハと反対側のガラスに取着される。電圧が、圧電体に印加されると、逆圧電効果、すなわち、振動が圧電体によって発生させられ、ガラスを介してチャンバ内の流体に伝達される。次に、共鳴が、シリコンウエハのチャンバの中の流体中に生成される。流体流路の中の弁および他の設計特徴の含有物を介して、シリコンウエハおよびガラス被覆によって形成されるチャンバを通る流体の正味の指向性流動を達成することができる。そのようなポンプおよび関連制御システムの実施例は、譲受人の同時係属中の米国特許出願第(現在未定)号の「Infusion Pump」に詳細に説明されており、その内容は、全体として本明細書に組み込まれる。
【0014】
図2に示されるように、本発明の一実施形態によると、注入ポンプ30は、使い捨て本体30aと、非使い捨てまたは再使用可能の基部30bとを備える。使い捨て本体30aは、注入流体に接触する注入ポンプ30の構成要素、例えば、圧電マイクロポンプ、流量計(図示せず)、ならびに流体入口および出口ポート(同様に、図示せず)を格納する。注入ポンプ30の基部30bは、ポンプ30に電力を提供するための制御回路と、流量計データを端末20に提供し戻すための感知回路とを格納する。注入ポンプ30の使い捨て本体30aおよび再使用可能の基部30bは、相互に嵌着するように構成され、それによって、単一ポンプユニット30を生成し、本体30aと基部30bとの間の電気通信を確立する。
【0015】
基部30bは、端末20から分離しているか、またはその中に組み込まれてもよい。基部30bが端末20内に統合されない用途において、基部30bは、端末20との電気通信を確立するために、1つ以上の電気コネクタ(図示せず)を備える。さらに、基部30bが端末20内に統合されない用途において、基部30bは、端末20内に統合されるか、または静脈内輸液支柱若しくはスタンド等、支持構造に取着されるように動作可能である、第2の搭載部に相補的である物理的搭載部(図示せず)を備える。
【0016】
ある実施形態では、図2に示されるように、注入ポンプ30の基部30bは、1つ以上のユーザインターフェース32aおよび32bをさらに備える。インターフェース32aは、ライト等の視覚インジケータを備えてもよく、それは、ユーザに対面し、それによってユーザに警告またはアラートを提供するように基部30b上に配置される。インターフェース32bは、例えば、同一ポンプ30を通して圧送される流体の名称、略称、または他のインジケータを表示するディスプレイを備えてもよい。
【0017】
患者流体ケアシステム10は、注入ポンプ30の下流の患者ライン60を通る実際の注入流体流動を測定するように機能する、図3に示される流量計34をさらに備える。流量計34は、種々の周知の流量計を備えてもよい。例えば、流量計34は、監視される流体を加熱し、加熱器の下流の加熱された流体の流動を感知する加熱器を利用することによって、流体流量を決定するように構成されてもよい。そのような流量計は、Sensirion AG(スイス)およびSiargo Incorporated(米国)から市販されており、少なくとも、Mayerらの米国特許第6,813,944号および米国公開第2009/0164163号に詳細に説明されており、参照することによって、本明細書に組み込まれる。代替として、流量計34は、流体流路の中の狭窄の両側に配置される2つの圧力センサを利用するように構成されてもよい。流体流量は、圧力センサ間の相対的差異およびその変化によって決定される。流量計34は、好ましくは、注入ポンプ30、例えば、基部30bの中に統合される。
【0018】
概して、動作時において、図1を参照すると、端末20は、ユーザインターフェース22またはデータネットワークコネクタ24を介して端末20に入力された入力に基づいて、注入ポンプ30の動作のための制御因子を決定および提供する。データネットワークコネクタ24は、例えば、遠隔場所において、ユーザインターフェースとデータ通信するコネクタであるLAN、すなわち、ローカルエリアネットワークを備えてもよい。そのような遠隔場所は、例えば、看護ステーションおよび/または診察室、あるいは医師の部屋であってもよい。データネットワーク能力もまた、自宅医療市場に対する本発明による患者流体ケアシステム10の使用を容易にする。
【0019】
好ましい実施形態では、端末20によって注入ポンプ30に提供される制御因子は、ユーザ入力、1つ以上の患者センサから端末20によって受信されたセンサ入力、および1つ以上の薬品データベースまたはライブラリから取得されたデータの組み合わせによって決定される。これらの入力はそれぞれ、以下にさらに詳細に説明される。ある医療状況において、複数の注入流体、例えば、栄養および薬剤流体を、単一患者に同時に投与することが望ましいであろうことに留意されたい。本発明による患者端末20は、複数の患者ライン60、例えば、最大30の患者ライン60に対して注入状態を監視することができ、複数の注入ポンプ20、例えば、最大30の注入ポンプ20を物理的に支持し、その動作を制御することができることが企図される。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態による患者流体ケアシステム10の機能性およびワークフローを示す概略図である。矢印は、データの方向またはフローを示す。好ましくは、患者端末20内に格納されるのは、1つ以上のデータメモリユニットと関連付けられた中央処理ユニットまたはCPU26、注入ポンプおよび種々の患者センサに電力を提供するための電源回路、ならびに種々の患者センサから患者センサデータを受信するためのセンサデータ回路である。明瞭性のため、患者端末20は、図3に、具体的には示されないことに留意されたい。
【0021】
図3に示されるように、患者データ102は、例えば、ユーザインターフェース22を介してデータを手動で入力することによって、および/または患者端末20と関連付けられたバーコードリーダによってCPU100に提供される。患者情報102は、患者の氏名、患者の識別番号、患者の連絡先情報、患者の緊急連絡先、患者の介護者の氏名、患者の介護者の連絡先、および保険業者情報を備えてもよい。
【0022】
患者の生物学的データは、例えば、ユーザインターフェース22を介してデータを手動で入力することによって、および/または患者センサ入力によってCPU100に提供される。患者の生物学的データは、例えば、患者の体重、血圧、不感性発汗、尿量、および患者の他のバイタルサインを含む。この点において、CPU100は、図1に示される蓄尿袋26内に収集される患者の尿の重量または質量を決定するための循環圧計104およびスケール106等、種々の患者センサおよびモニタとリアルタイムでデータ通信するように構成される。広範囲の他の患者センサが、本発明の患者流体ケアシステム10と関連付けられてもよいことが理解されるであろう。例えば、患者ケアシステム10は、患者温度センサ、心拍センサ、およびパルス酸素濃度計等の患者のヘモグロビンの酸素化を測定するための種々のセンサと関連付けられてもよい。さらに、患者の医師は、患者の流体または水分平衡に関する患者の生物学的データを入力または記述し、および患者流体平衡の閾値を規定してもよい。
【0023】
患者の薬理学的データ108は、例えば、ユーザインターフェース22を介してデータを手動で入力することによって、および/または患者端末20と関連付けられたバーコードリーダによって、CPU100に提供される。患者の薬理学的データ108は、患者に投与されるべき薬剤の一般的商標名または学名、および所望の薬剤の用量に関するデータを備えてもよい。
【0024】
本発明のある実施形態では、薬理学的データベース112からのデータはまた、CPU100によって提供またはアクセスされる。薬理学的データベース112は、患者流体ケアシステム10と関連付けられたメモリ構成要素内に、永続的または一時的に記憶されてもよく、あるいは患者端末20のネットワークコネクタ24を介して遠隔場所においてアクセスされてもよい。薬理学的データベース112は、例えば、所定の標準用量、それを超えると毒性が生じ得る用量である最大中毒量、すなわち、MTD、それを下回ると有効ではなくなる用量である最小有効量、すなわち、MED、代謝率、例えば、体内での薬剤の半減期、および他の薬物動態情報を提供してもよい。
【0025】
注入データ110は、例えば、ユーザインターフェース22を介してデータを手動で入力することによってCPU100に提供される。注入データ110は、具体的注入計画またはプロトコルに関するデータを備えてもよく、それに従って、患者の薬理学的データ108として提供される薬剤または複数の薬剤が、患者流体ケアシステム10の注入ポンプ20を通して患者に投与される。特定の注入データ110は、例えば、特定の注入ポンプ20、注入の流量、注入される注入流体の総量を規定するステップを備えてもよい。注入データ110に関連するのは、例えば、ポンプ30に提供される電圧、電圧がポンプ30に印加される周波数、ならびに電圧および周波数が増加または減少させられる速度を含む、注入ポンプ30の動作を指示する特定の制御因子116である。制御因子116は、注入データ110として、ユーザインターフェース22を介してユーザによって直接提供されるのではなく、注入データ110に基づいてCPU100またはCPU100のソフトウェアモジュールによって決定されてもよいことを理解されるであろう。
【0026】
本発明による患者流体ケアシステム10の一実施形態では、患者の病歴データがCPU100に提供され、それによって、患者端末20のユーザインターフェース22からアクセス可能である。そのような患者の病歴は、例えば、患者端末20のネットワークコネクタ24を通して、電気医療記録、すなわちEMRシステムからアクセスされてもよい。
【0027】
本発明の患者流体ケアシステム10のCPU100および関連付けられたメモリ構成要素は、現在および以前に取得された患者および薬剤データの検索ならびに再調査を提供するデータ入力ログを含むことに留意されたい。CPU100は、以下にさらに詳細に説明されるように、ある比較および計算を行うように動作可能なソフトウェアモジュールをさらに備えてもよい。
【0028】
前述の入力およびそのような入力の継続監視に基づいて、本発明による患者流体ケアシステム10は、患者の状態に関するリアルタイムの情報をユーザに提供する。そのようなリアルタイム情報は、一般的には、独立しており、多くの場合、遠隔である医療機器および情報リソースを介して医師等の医療提供者のみに利用可能となるであろう。本発明の利点の1つは、患者から遠隔の場所における単一患者端末内またはネットワークデータ互換性による、そのような医療情報の統合および提示である。
【0029】
本発明による患者流体ケアシステム10の付加的な利点は、付加的なリアルタイム患者情報を導出するために、前述のデータ入力を分析するシステム10の操作性である。例えば、患者流体ケアシステム10は、前述の患者の生物学的データ、患者の薬理学的データ108、薬理学的データベース112、および注入データ110に関する入力のいくつかに基づいて、リアルタイムの患者薬物レベルを計算し、患者の医療提供者に提供する。より具体的には、CPU100は、患者バイタルサイン、リアルタイムの注入量を監視し、投与されている特定の薬物または複数の薬物の薬物動態を考慮して、患者流体ケアシステム10が、投与される薬剤に関して、患者の体内に存在するその量のリアルタイムの推定値を導出する薬剤レベルソフトウェアモジュールを備えてもよい。
【0030】
薬物レベル計算の精度の中核を成すのは、患者の体重等の患者特有のデータ、患者に注入される薬剤の各々の実際の流量および量等、注入特有のデータ、および薬理学的データベース112からアクセスされる患者に注入される薬剤の各々に関連する薬物動態の統合である。さらに、システム10と薬理学的データベース112との統合に基づいて、システム10は、医療提供者によってシステム10に入力される注入計画を周知の薬理学的情報と比較し、注入計画の入力の間に、比較に基づいて潜在的エラーがなされた場合に警告またはアラートを提供することができる。
【0031】
付加的リアルタイム患者情報を導出するために、前述のデータ入力を分析するための患者流体ケアシステム10の操作性のさらに別の実施例は、患者水分または流体平衡を計算するためのシステム操作性である。例えば、CPU100は、医療提供者に、患者の蓄尿袋を継続して計量するスケール106から受信されたデータによって決定される患者の尿量データ、その時間まで患者に注入された水および他の流体の量に関する注入データ、ならびに患者の不感性発汗の量を利用することによって、患者の水分平衡情報を提供する流体平衡ソフトウェアモジュールを備えてもよい。
【0032】
患者流体ケアシステム10によって導出される水分管理情報は、その後の患者治療を決定する際に、医師によって使用することができる。例えば、注入量が、患者の小さいサイズに起因して綿密に監視されなければならない未熟児等の対する医療環境において、薬品の濃度は、幼児の水分平衡データ、すなわち、尿および不感性発汗損失の量ならびに総注入量入力に基づいて選択される。さらに、患者の流体平衡は、多量の注入流体が、潜在的に患者の心臓および腎臓に危険な負荷を課し得る中心静脈栄養法の間、非常に重要なものである。
【0033】
本発明の一実施形態では、患者流体ケアシステム10はまた、医師によって元々設定されたパラメータ内の患者注入プロトコルまたは計画を自動的に調節するために、前述のデータ入力ならびに計算された患者薬剤レベルおよび流体平衡を利用するように動作可能である。CPU100は、これらの自動調節を決定および実装するための補償ソフトウェアモジュールを備えてもよい。より具体的には、動作時、医師または医療提供者は、患者流体ケアシステム10に、患者の注入計画、例えば、投与されるべき薬剤の量および薬剤が投与される流量を入力するであろう。加えて、医師は、あるパラメータおよび条件を注入計画が管理される範囲内に設定してもよい。例えば、中心静脈栄養法が投与されている場合、医師は、超えるべきではない初期注入流量および最終注入量を入力してもよい。医師は、システム10に患者の尿量を監視するようさらに指示してもよく、注入の間に、尿量が設定閾値を下回る場合、注入は、自動的に注入流量を調節するか、または注入を終了させる。
【0034】
さらに別の実施例では、患者の血圧は、薬品を平衡させているカテコールアミンおよびβ遮断薬を投与することによって管理されてもよい。この場合、血圧は、多くの場合、拮抗し、異なる作用機序を有する複数の薬物を投与することによって制御される。患者流体ケアシステム10は、医師が、血圧等の患者センサからの入力に基づいて、そのような拮抗薬剤を自動的に投与するであろう注入計画を設定することを可能にする。医療スタッフによって決定される注入および生物学的センサ入力の範囲内に拮抗薬剤を規定することを含む自動制御を行うことができる。さらに、薬理学的データベース112へのアクセスを介して、患者流体ケアシステム10は、MTDおよびMED警告またはアラームを実行して、医療スタッフに通知することができる。
【0035】
本発明の一実施形態では、患者流体ケアシステム10は、シミュレーション機能をさらに備える。シミュレーション機能は、他のタスクの中でもとりわけ注入の間の計画された時間、例えば、薬剤の注入の開始が企図される時間における患者流体平衡を推定する。
【0036】
本発明の患者流体ケアシステム10は、患者のベッドサイドにおいて、医師が、患者端末20および患者流体ケアシステム10のソフトウェア機能性を介して、データ編集物を表示するページにアクセスし、閲覧し得るという点において、特に有利である。そのようなページは、例えば、患者体内に残留する用量を含む、注入されている各薬剤の注入状態を表示すること、グルーピングすることによって各薬剤の注入状態を表示すること、および患者の水分または流体平衡を表示することしてもよい。
【0037】
さらに、本発明の患者流体ケアシステム10は、注入ポンプ10のマイクロポンプ30が、患者端末20とデータを交換しない、すなわち、マイクロポンプ30と患者端末20との間の電気的連通が、患者端末20からマイクロポンプ30まで一方向であるという点において、特に有利である。マイクロポンプ30は、患者端末20のスレーブである。この構成は、簡略化された、およびより経済的な注入ポンプ10を提供するために、有利である。例えば、マイクロポンプ30を患者端末20のスレーブとすることによって、マイクロポンプ30内の回路は、簡略化され、それによって、より製造が経済的となる。マイクロポンプ30の一部が使い捨てである実施形態を考えると、病院または医院は、患者流体ケアシステム10の使い捨て部分のみをより経済的に取得し得、および限定された数のより複雑でよりコストがかかる患者端末20だけを入手および維持する必要があり得る。
【0038】
データネットワーク能力を利用する患者流体ケアシステム10および圧電駆動された注入ポンプは、従来のコストがかかる中心静脈圧監視機器の必要がなくして、患者の中心静脈圧を監視するように構成されてもよいので、特に、自宅ケア配備に好適である。この機能性は、譲受人の同時係属中の米国特許出願第(現在未定)号の「CIRCULATORY PRESSURE MONITORING USING INFUSION PUMP SYSTEMS」に、より詳細に説明されており、その内容は全体として、本明細書に組み込まれる。
【0039】
本発明は、特定の実施形態および用途の観点から説明されたが、当業者は、これらの教示に照らして、請求される発明の精神から逸脱することなく、またはその範囲を超えることなく、追加的な実施形態および修正をもたらすことができる。故に、本明細書における図面および説明は、本発明の理解を容易にするための一例として提案され、その範囲を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者流体ケアシステムであって、
該システムは、
注入ポンプと、
流量計と、
該注入ポンプおよび該流量計と流体的に連絡している患者流体ラインと、
患者センサと、
該注入ポンプ、該流量計、および該患者センサとデータ通信している患者端末であって、該患者端末は、注入補償モジュールを有する中央処理ユニットを含み、該注入補償モジュールは、該流量計および該患者センサからのデータ入力に基づいて該注入ポンプに対する制御因子を決定する、患者端末と
を含む、システム。
【請求項2】
前記注入ポンプは、圧電駆動される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記注入ポンプは、使い捨て部分を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記患者センサは、スケールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記患者センサは、前記注入ポンプを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記患者端末は、患者インターフェースをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記患者端末は、タッチスクリーン患者インターフェースをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記患者端末の中央処理ユニットは、前記流量計および前記患者センサからのデータ入力に基づいて、患者流体平衡を決定する患者流体平衡モジュールをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
患者流体ケアのための方法であって、
該方法は、
患者注入閾値を含む患者注入計画を規定することと、
該規定された患者注入計画に従って、注入流体を患者に提供することと、
該注入流体を該患者に提供している間、患者センサから患者センサデータを受信することと、
該受信された患者センサデータおよび該患者注入閾値に従って、該患者注入計画を自動的に調節することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記患者注入計画を規定するステップは、注入ポンプ制御因子を決定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記規定された患者注入計画に従って、注入流体を患者に提供するステップは、圧電駆動注入ポンプによって、該注入流体を該患者に圧送することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記注入流体を前記患者に提供する間、患者センサから患者センサデータを受信するステップは、注入ポンプから患者循環圧データを受信することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記注入流体を前記患者に提供する間、患者センサから患者センサデータを受信するステップは、スケールから患者尿量データを受信することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記受信された患者センサデータおよび前記患者注入閾値に従って、前記患者注入計画を自動的に調節するステップは、患者流体平衡を決定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記受信された患者センサデータおよび前記患者注入閾値に従って、前記患者注入計画を自動的に調節するステップは、前記患者内の薬剤レベルを決定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記受信された患者センサデータおよび前記患者注入閾値に従って、前記患者注入計画を自動的に調節するステップは、薬剤データベースにアクセスすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
患者流体ケアのための方法であって、
該方法は、
患者注入計画を患者端末に入力することと、
該患者注入計画に従って、注入流体を患者に投与することと、
該注入流体の投与の間、患者の生物学的情報を受信することと、
該注入流体の投与の間、注入流動情報を受信することと、
該受信された患者の生物学的情報および該受信された注入流動情報から計算された患者パラメータを該患者端末のユーザインターフェースに提供することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記患者注入計画に従って、注入流体を患者に投与するステップは、圧電駆動注入ポンプを利用することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記受信された患者の生物学的情報および前記受信された注入流動情報から計算された患者パラメータを前記患者端末のユーザインターフェースに提供するステップは、患者流体平衡を提供することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記受信された患者の生物学的情報および前記受信された注入流動情報から計算された患者パラメータを前記患者端末のユーザインターフェースに提供するステップは、前記患者の薬剤レベルを提供することを備える、請求項17に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−514838(P2013−514838A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544931(P2012−544931)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061162
【国際公開番号】WO2011/075708
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512159742)ケーアンドワイ コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】