説明

患者状態情報管理システム

【課題】 センサからの信号と患者との対応づけが容易で、記憶される情報にノイズが少ない患者状態情報管理システムと当該システムを実現するプログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】 患者の状態を検知する状態検知装置と接続されたクライアント端末と;当該クライアント端末とネットワークを介して接続される管理端末及びデータベースサーバと;管理対象となっている患者についての患者情報及び当該患者情報と患者のID番号との対応関係を記憶する患者情報記憶装置を有し、前記クライアント端末が、利用者である患者のID番号を認識している状態にあるときだけ、前記状態検知装置からの信号を有効情報としてデータベースサーバに送信する手段を備えている患者状態情報管理システム及びそれを実現するプログラムを提供することによって上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者状態情報管理システムに関し、詳細には、病院施設、介護施設又は在宅医療等の現場において、患者の状態や動静をリアルタイムで把握することができ、転倒や転落等の事故を未然に防止することを可能にする患者状態情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院施設や介護施設、或いは在宅医療や在宅介護等の現場で起きる重大な事故のうち、かなりの割合を占めるのが、患者の転倒、転落による骨折等の事故であるといわれている。特に患者が高齢者である場合には、加齢や過去の病歴の結果、四肢の自由度が十分でなかったり、自らを支える筋力が不足している場合があり、ベッドから降りようとした際にベッドから転落したり、転倒したりすることがある。転落や転倒で骨折したりすると、その治療に余分の時間と費用が掛かる上に、高齢者の場合には、歩けない期間が長くなると自力歩行の再開が困難になるという重大な問題を引き起こす危険性がある。
【0003】
このため、従来から、転倒や転落事故を防止すべく、患者の状態や動静をリアルタイムで把握することを目指した種々の管理システムが提案されている。例えば特許文献1には、ベッドに体重センサなどのセンサを配置し、これらセンサによって患者がベッドから離れようとしていることを感知するようにした安全管理システムが開示されている。しかし、この安全管理システムにおいては、ベッドに配置されたセンサからの信号は、ナースコール端子を介して中央制御装置に送信され、ブザー等を鳴らして看護師等の医療スタッフの注意を喚起するだけであるので、その時点ではその信号が何号室のだれについてのものであるかは解るとしても、その時だけで消えてしまい、記録も何も残らないという不十分さがある。また、ベッドに配置されたセンサは常時作動しているので、看護師等の医療スタッフが対処中であっても、また、誰か介添者が居る場合であっても、患者がベッド上で移動すれば中央制御装置のブザーは鳴る可能性があり、当該安全管理システムからのコールが真に緊急を要するものであるのか否かが判別しづらいという欠点がある。
【0004】
また、例えば特許文献2には、患者の状態を示すセンサ等からの信号を管理装置の記録部に記録するようにした要介護者監視システムが開示されている。しかし、この監視システムにおいても、各種センサと管理装置との接続、及び各種センサと患者との対応づけは、既存のナースコールシステムを利用して行われている。したがって、例えば患者の病室等が変更となり、ナースコールシステムにおけるナースコール子機と患者との対応関係が変わると、それに応じて、各種センサからの信号と患者との対応づけも変更しなければならず、管理装置に記録されている各種センサ信号の管理が面倒であるという欠点がある。また、この監視システムにおいても、各種センサは常時作動しているので、医療スタッフが対処中である場合にも、各種センサからの信号は管理装置に送信され記録されてしまうので、記録される信号にノイズが多く含まれてしまうという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−105885号公報
【特許文献2】特開2005−46320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の監視システムが有する不都合や欠点を解消するために為されたもので、患者の状態を検知するセンサからの信号と患者との対応づけが容易で、かつ、記憶される情報にノイズが少ない、患者状態情報管理システムと、そのようなシステムを実現するためのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、患者のベッドサイドに利用者である患者の認識手段を備えたベッドサイド端末を設置し、このベッドサイド端末をクライアント端末として利用して、患者の状態を検知するセンサからの信号をシステムに送信するようにすれば、患者の状態を検知するセンサからの信号と患者との対応づけが容易に行えることを見出した。さらには、本発明者らは、ベッドサイド端末が利用者である患者を認識していないときには、センサからの信号を無効なものとして廃棄する手段を設けることにより、システムに記憶される情報にノイズが含まれることを大幅に抑制できることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、患者の状態を検知するセンサを備えた状態検知装置と接続され、利用者である患者のID番号を認識する手段を備えた少なくとも1台のクライアント端末と;当該クライアント端末とネットワークを介して接続されるデータベースサーバと;当該データベースサーバとネットワークを介して接続される管理端末と;管理対象となっている患者についての少なくとも氏名を含む患者情報及び当該患者情報と前記ID番号との対応関係を記憶する患者情報記憶装置;を有する患者状態情報管理システムであって、
ア)前記クライアント端末は、利用者である患者のID番号を認識している状態にあるときには、前記状態検知装置からの患者状態信号を有効情報と判断して当該患者のID番号とともに前記データベースサーバに送信し、利用者である患者のID番号を認識していない状態にあるときには、前記状態検知装置からの患者状態信号を無効情報と判断して破棄する手段を備え;
イ)前記データベースサーバは、前記クライアント端末から送信されてくる前記患者状態信号を、受信した患者のID番号及び受信時刻と関連づけて記憶装置に記憶する手段を備え;
ウ)前記管理端末は、前記データベースサーバに記憶されている前記患者状態信号を、前記患者情報記憶装置に記憶されている患者情報とともに、モニタ画面に出力する手段を備えている;
患者状態情報管理システムを提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0009】
また、本発明は、コンピュータを、本発明の患者状態情報管理システムにおける前記クライアント端末、前記管理サーバ、又は前記データベースサーバとして動作させる手順を記載したプログラムを提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0010】
患者の状態を検知するセンサを備えた前記状態検知装置、又は、前記クライアント端末、又は前記データベースサーバは、前記センサの出力信号を解析して、患者の動静を判別する動静判別手段を備えており、前記データベースサーバが記憶する前記患者状態信号には前記動静判別手段が判別した患者の動静に関する情報が含まれている。患者の動静に関する情報の一例としては、例えば、ベッドの上で安静にしている、活動している、ベッドに乗った、ベッドから降りようとしている(転倒転落予測)、ベッドから降りた、ベッド上にいない、痙攣しているなどの情報が挙げられる。このような患者の動静に関する情報が、患者状態信号に含まれている場合には、データベースサーバに記憶されている患者状態信号を、管理端末を介して、例えば管理端末のモニタ画面等の適宜の出力装置に逐次出力することによって、看護師等の医療スタッフは、当該患者が現在ベッド上でどのような状態にあるかをリアルタイムで知ることができる。
【0011】
また、本発明の患者状態情報管理システムは、その好適な一態様において、前記患者情報記憶装置に記憶されている患者情報が、管理対象となっている患者について別途調査することによって得られた転倒転落の危険度についての情報を含んでいるのが望ましい。転倒転落の危険度についての情報とは、例えば、転倒転落アセスメントと呼ばれる調査を患者ごとに行うことによって得ることができる、個々の患者についての転倒転落の危険度を数値や記号などで表した情報である。このような転倒転落の危険度についての情報を患者状態信号とともに、例えば、管理端末のモニタ画面に出力すれば、転倒、転落する危険性の違いを患者ごとに評価することができるので、より的確な対処が可能となる。
【0012】
また、本発明の患者状態情報管理システムは、その好ましい一態様において、前記クライアント端末が、前記状態検知装置からの患者状態信号を有効情報として前記データベースサーバに送信しているときには、そのモニタ画面に、当該患者についての状態情報管理がオン状態にあることを表示し、送信していないときには、そのモニタ画面に、当該患者についての状態情報管理がオフ状態にあることを表示する手段を備えている。これにより、患者本人は勿論、介添者や看護師等の医療スタッフは、当該患者のベッドサイドにおいて、当該患者について、本発明の患者状態情報管理システムが作動しているかどうかを知ることができるので、例えば、当該システムの作動をし忘れたり、当該システムの作動中に、患者のケアを行って、本来はノイズとなる患者状態信号がデータベースサーバに送信されてしまうというようなミスを防止することができる。
【0013】
なお、前記クライアント端末は、その好ましい一態様において、患者本人や、介添者、看護師等の医療スタッフが、当該患者のベッドサイドにおいて、必要に応じて患者状態情報管理システムの作動を適宜オン・オフできるように、患者のID番号の認識の有無によるオン・オフに加えて、例えば、オン・オフボタンなどをその画面上に備えている。
【0014】
さらに、本発明の患者状態情報管理システムは、その好ましい一態様において、前記データベースサーバが、前記クライアント端末からの患者状態信号の送信の有無に基づいて、当該患者についての状態情報管理がオン状態にあるか、オフ状態にあるかを判別するオン・オフ状態判別手段を備えており、前記データベースサーバが記憶する前記患者状態信号には前記オン・オフ状態判別手段が判別した当該患者についての状態情報管理のオン・オフ状態に関する情報が含まれている。これにより、管理端末が設置されている、例えばナースステーション等においても、個々の患者について、本発明の患者状態情報管理システムが作動しているか否かを確認することができるので、作動漏れ等のミスを防止することができる。
【0015】
また、本発明の好ましい一態様において、前記データベースサーバは、前記動静判別手段によって判別された患者の個々の動静について、緊急対応の要否を判断する手段を備えており、前記データベースサーバが記憶する前記患者状態信号には、患者の動静の各々についての緊急対応の要否に関する情報が含まれている。緊急対応の要否の判断は、判別された動静に基づいて行うことができる。例えば、判別された動静が「ベッドから降りようとしている(転倒転落予測)」というものである場合には、データベースサーバは、これを緊急対応を要する動静であると判断する。なお、「ベッドから降りようとしている」という動静は、健常者においては何ら転倒転落の危険性を予測させるものではないが、患者が高齢者であったり、四肢の自由度が十分でなかったり、自らを支える筋力が不足している場合には、ベッドから降りようとした際にベッドから転落したり、転倒したりすることが多いので、前記動静判別手段はこの動静を「転倒転落予測」と判断するのが好ましい。
【0016】
また、判別された動静が「痙攣している」というものである場合には、データベースサーバは、これを緊急対応を要する動静であると判断する。これら緊急対応の要否に関する情報には、緊急対応を要すると判断される動静が発生した時刻についての情報が含まれる。なお、どのような動静を緊急対応を要する動静であると判断するかは、予めデータベースサーバに設定しておけばよく、また、その設定が適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0017】
このような緊急対応の要否に関する情報が、患者状態信号に含まれている場合には、データベースサーバに記憶されている患者状態信号を、管理端末を介して、例えば管理端末のモニタ画面上に逐次出力することによって、看護師等の医療スタッフは、例えば、当該患者が転倒又は転落しそうであるとか、痙攣しているなどの、緊急対応を要する状態にあることをリアルタイムで知ることができるので、当該患者のベッドに駆けつけて、転倒又は転落を未然に防止したり、必要な処置を施すことが可能となる。
【0018】
さらには、本発明の患者状態情報管理システムは、その好適な一態様において、前記クライアント端末が、確認ボタンと、当該確認ボタンが押されたとき、確認済み信号を前記データベースサーバに送信する手段とを備えており、前記データベースサーバは、当該確認済み信号を受信すると、当該クライアント端末の利用者である患者について前記データベースサーバが記憶している少なくとも直前の緊急対応を要する動静に確認済みのマークを付す手段を備えている。クライアント端末がこのような手段を備えている場合には、看護師等が患者ベッドに駆けつけて必要な処置を行った場合には、当該患者のベッドサイドにあるクライアント端末から、当該患者の緊急対応を要する動静が既に対応済みであることを、前記データベースサーバに知らせることができるので、二重対応を防止することが可能となる。
【0019】
なお、前記データベースサーバは、上記確認済み信号を受信したとき、前記データベースサーバに記憶されている直前の緊急対応を要する動静だけでなく、過去に発せられた当該患者についての緊急対応を要する動静の全てに確認済みのマークを付するようにしても良い。
【0020】
本発明の患者状態情報管理システムは、その好適な一態様において、少なくとも1台の医療スタッフ用の携帯端末を有し、前記患者情報記憶装置は、管理対象となっている患者と担当医療スタッフとの対応関係を記憶しており、前記データベースサーバは、前記動静判別手段によって判別された患者の動静が緊急対応を要するものであると判断した場合には、前記患者情報記憶装置に記憶されている患者と担当医療スタッフとの対応関係に基づいて、当該患者の担当医療スタッフの携帯端末に、当該患者名と緊急対応を要する動静とを通知する手段を備えている。この通知は、無線LANを介したメールであっても良い。これにより、医療スタッフは、管理端末から離れていても、自身が担当する患者について、緊急対応を要する動静が発生したことを直ちに知ることができ、当該患者のベッドサイドに駆けつけて、必要な処置を行うことが可能となる。
【0021】
また、本発明の患者状態情報管理システムは、その好適な一態様において、少なくとも1台の医療スタッフ用の携帯端末を有し、前記患者情報記憶装置は、管理対象となっている患者と担当医療スタッフとの対応関係を記憶しており、前記携帯端末は、前記データベースサーバに対し、緊急対応を要する患者動静の有無を定期的に確認する手段を備えており、前記データベースサーバは、前記携帯端末からの前記確認要請があった場合には、前記患者情報記憶装置に記憶されている患者と担当医療スタッフとの対応関係と前記データベースサーバが記憶する前記患者状態信号に基づいて、当該携帯端末の利用者である医療スタッフが担当する患者についての緊急対応を要する動静の有無を、当該携帯端末に通知する手段を備えている。これにより、医療スタッフは、データベースサーバからの通知を待つことなく、緊急対応を要する動静の有無に関し、自身の携帯端末における情報をリアルタイムで更新することができるので、自身が担当する患者について緊急対応を要する動静が発生した場合には、これを遅滞なく知ることができる。
【0022】
本発明の患者状態情報管理システムは、一又は複数の病院又は介護施設内にベッドがある多数の患者を対象として有効であることは勿論、一定の地域内に分散してベッドが存在する在宅医療又は在宅介護の患者を対象としても有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の患者状態情報管理システムは、上述のように構成されているので、センサによって検知される患者状態信号と患者との対応づけが容易かつ確実であり、患者状態情報の管理が容易に行えるという利点がある。また、センサによって検知される患者状態信号と患者との対応づけが為されていない場合には、センサからの信号を無効なものとして破棄するようにしているので、データベースサーバに記憶される患者状態信号にノイズが含まれることが防止でき、真に有用な情報のみを患者状態信号として記憶することができるという利点がある。また、センサからの信号を解析して、患者の動静についての情報を時系列で得たり、緊急対応の要否の判断を行うことができるので、患者の状態をリアルタイムで把握して、遅滞なく、必要な処置を施すことができるという優れた利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の患者状態情報管理システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】クライアント端末が出力するモニタ画面の一例を示す図である。
【図3】クライアント端末が出力するモニタ画面の他の一例を示す図である。
【図4】管理端末が出力するモニタ画面の一例を示す図である。
【図5】管理端末が出力するモニタ画面の他の例を示す図である。
【図6】管理端末が出力するモニタ画面のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、実施例に基づいて本発明を詳述するが、本発明が実施例のものに限られないことは勿論である。
【0026】
〈システム構成〉
図1は本発明の患者状態情報管理システムの全体構成を示す概念図である。図1において、1は本発明の患者状態情報管理システムを示し、M、Mは患者、2、2は、それぞれ、患者M、Mのベッドである。本発明の患者状態情報管理システム1において、ベッド及びベッドサイドに設置される機器の構成は、各ベッドについて基本的に同じであるので、以下、患者Mのベッド2の周辺に設置される機器について説明する(患者Mのベッド2の周辺機器で、患者Mのベッド2の周辺機器と同じものには同じ符号を付してある)。なお、図1では、患者は2人、ベッドは2台しか示されていないが、患者の数は1人であっても3人以上であっても良く、ベッドも1台であっても3台以上であっても良いことは勿論である。
【0027】
図1において、3は、ベッド2のベッドサイドに設置されたクライアント端末であり、クライアント端末3には、状態検知装置4が接続されている。状態検知装置4は、通常、患者Mの状態を検知するセンサ5、5と、センサ5、5と接続されたコントローラ6とから構成されている。本発明の患者状態情報管理システム1においては、状態検知装置4を構成するセンサ5、5は、患者Mの状態が検知できる限り、どのようなものであっても良い。例えば、特開2009−118935号公報に開示されているベッドフレームに取り付けられる歪みセンサであっても良いし、特許文献1や2に記載されているようなベッドに設置される重量センサ、圧電センサ、或いは光電センサや、患者の体温、心拍数、呼吸数、血圧などを計測する生体センサ、患者の状態を撮影するCCDカメラであっても良く、これらの2種以上を組み合わせて用いても良い。当然のことながら、センサ5、5の数も図1に示す2個に限られず、1個であっても良いし、3個以上であっても良い。
【0028】
また、コントローラ6も、センサ5、5からの信号をクライアント端末3に伝達することができるものであればどのようなものであっても良い。例えば、センサ5、5からの信号を解析して、患者Mの動静を判別する手段を備え、その判別情報を、センサ5、5からの信号と共に、クライアント端末3に送信するものであっても良いし、判別した動静に関する情報だけをクライアント端末3に送信するものであっても良く、更には、センサ5、5からの信号を、例えばノイズを除去したり、増幅したりして、動静の判別の基礎とできる程度に質を高めたセンサ信号として、クライアント端末3に送信するだけのものであっても良い。
【0029】
7は非接触ICカードリーダライタ、8はICカードである。ICカード8は、通常、カード毎に固有の番号を有しているので、このICカード8のカード固有番号を患者MのID番号として使用する。ICカード8のカード固有番号に代えて、既存の患者番号若しくは新たに割り当てた患者番号などを患者MのID番号として、ICカード8内に記憶させておいても良い。
【0030】
9はデータベースサーバ、10は管理端末、11はネットワークであり、クライアント端末3、データベースサーバ9、管理端末10は、ネットワーク11を介して、常時若しくは随時接続される。ネットワーク11は、ベッド2、2等が同一病院又は同一介護施設内にあるときには、院内又は施設内のネットワークであるが、インターネットなどの汎用ネットワークであっても良い。
【0031】
12は、同じくネットワーク11に接続されている病院情報システムサーバ、13は、無線LANを介してネットワーク11に接続される携帯端末である。携帯端末13は、医療スタッフが常時携帯するものであり、図では1つしか示されていないけれども、医療スタッフの数に合わせて2以上の複数台の携帯端末13が存在することはいうまでもない。
【0032】
病院情報システムサーバ12には、通常、患者情報として、例えば、患者番号、氏名、生年月日、年齢、性別、住所、緊急連絡先、保険番号、診療科、病名、担当医、担当看護師、担当介助者、パスワード、生体認証情報などが記憶されており、医師や看護師等の医療スタッフが携帯端末を所持している場合には、その携帯端末の番号、メールアドレスも記憶されている。また、患者に配布したICカード8の固有番号を患者のID番号として用いる場合には、病院情報システムサーバ12には、患者に配布したICカード8の固有番号と、患者情報との対応関係も記憶されていることになる。この場合には、病院情報システムサーバ12は、それ単独で、本発明の患者状態情報管理システム1における患者情報記憶装置として機能することになる。
【0033】
なお、患者に配布したICカード8の固有番号と、患者情報との対応関係は、必ずしも、病院情報システムサーバ12に記憶させておかなければならないわけではなく、データベースサーバ9、又は管理端末10、又は別途設けたサーバに記憶させておいても良い。この場合には、患者情報を記憶する病院情報システムサーバ12と、患者のID番号と患者情報との対応関係を記憶しているデータベースサーバ9、管理端末10、又は別途設けたサーバとが、本発明の患者状態情報管理システム1における患者情報記憶装置として機能することになる。また、病院情報システムサーバ12は、病院施設内ではなく、データセンター等に存在していても良い。
【0034】
なお、本発明の患者状態情報管理システム1において、病院情報システムサーバ12は必ずしも必須のものではない。すなわち、病院情報システムサーバ12以外に患者情報を記憶しているサーバ等が存在する場合には、そのサーバ等を患者情報の記憶源として使用すれば良いし、本発明の患者状態情報管理システム1内に患者情報を記憶するサーバを設けても良い。ただし、患者情報を新たにサーバ等に入力して記憶させるのは非常に労力を要することであるので、既存の病院情報システムサーバ12のように、患者情報を記憶しているサーバが既に存在する場合には、そのサーバを患者情報の記憶源として、本発明の患者状態情報管理システム1における患者情報記憶装置、若しくはその一部として使用するのが望ましい。
【0035】
本発明の患者状態情報管理システム1の患者情報記憶装置に記憶される患者情報には、転倒転落アセスメントによって得られた個々の患者についての転倒、転落の危険度に関する情報を含めておくのが望ましい。転倒転落アセスメントとは、健康障害の程度、移動能力の程度、環境変化の有無、使用している薬剤の種類、排泄の状況、生活体験などに関する複数の項目について各患者がどの項目に該当するかを調べる調査であり、該当した項目に付与されている数値を合計して求められる数値を危険度の指標とするものである。合計した数値が大きいほど危険度が高く、例えば、0〜10はランクA、11〜20はランクB、21以上はランクCに分類され、ランクCが最も危険度が高い。このような転倒転落アセスメントによって得られた危険度についての情報は、病院情報システムサーバ12に記憶されていても良く、或いは、データベースサーバ9、管理端末10、又は別途設けたサーバに記憶されていても良い。
【0036】
〈システム動作〉
ベッド2の患者Mについて、本発明の患者状態情報管理システム1は、以下のように動作を開始する。すなわち、患者M又はベッドサイドにいる看護師等が、患者MのICカード8を、非接触ICカードリーダライタ7上に載せると、非接触ICカードリーダライタ7はICカード8に格納されているカード固有番号を患者MのID番号として読み取り、非接触ICカードリーダライタ7に接続されているクライアント端末3は、当該クライアント端末3の利用者が患者Mであることを認識する。ICカード8に格納されている患者MのID番号が、ICカード8の固有番号ではなく、患者Mについての既存の患者番号であっても、患者Mに新たに割り当てられた患者番号であっても良いことは前述したとおりである。
【0037】
一方、センサ5、5は、ベッド2上にいる患者Mの状態や動きを検知して、検知した信号をコントローラ5に送る。センサ5、5とコントローラ6とは、前述したとおり、状態検知装置4を構成している。コントローラ6が、センサ5、5からの信号に基づいてベッド2上にいる患者Mの動静を判別する動静判別手段を備えている場合、すなわち、コントローラ6にセンサ5、5からの信号に基づいてベッド2上にいる患者Mの動静を判別するアルゴリズムを記述したプログラムがインストールされている場合には、コントローラ6は、このプログラムに従って、センサ5、5からの信号を解析し、患者Mの動静を、例えば、「安静」(ベッドの上で安静にしている)、「活動」(ベッドの上で活動している)、「乗床」(ベッドに乗った)、「離床」(ベッドから降りた)、「不在」(ベッド上にいない)、「痙攣」(痙攣している)、「転倒転落予測」(ベッドから降りようとしている)」などに判別する。
【0038】
例えば、センサ5、5がベッド2のベッドフレームに取り付けられた歪みセンサである場合には、センサ5、5によって、患者Mの心拍にかかる体動だけが検出され、他に大きな体動が検出されないときは「安静」、姿勢の変更や、上肢若しくは下肢の動きが検出されるときは「活動」、それぞれ特有の波形が検出されるときは「乗床」又は「離床」、「離床」に引き続き心拍にかかる体動も検出されないときは「不在」、痙攣に伴う振動が検出されるときは「痙攣」、患者Mの体重が次第にベッドの端に移動しつつあるか移動したことが検出されたときは「転倒転落予測」と、それぞれ、コントローラ6によって判別される。
【0039】
ただし、上述したような動静の種類やその判別方法は、あくまでも例示であって、用いるセンサの種類やその配置、組み合わせ等によって、適宜変更されるものである。本発明の患者状態情報管理システム1においては、患者の状態や動きを検知するセンサからの信号に基づいて、動静判別手段によって患者の動静が判別されれば良く、動静の具体的な判別の仕方や、判別される動静の種類等は、特定のものに限られない。例えば、センサとして、上述した患者の体温、心拍数、呼吸数、血圧などを計測する生体センサを用いる場合には、センサによって検出された体温、心拍数、呼吸数、若しくは血圧が一定値以上に上昇又は低下した場合に、動静判別手段は、患者の動静を「異常体温」、「異常心拍数」、「異常呼吸数」、若しくは「異常血圧」と判断するようにしても良い。また、センサが患者の状態を撮影するCCDカメラ等の撮影装置である場合には、撮影された画像を解析して、動作判別手段は、患者の動静を「転倒転落予測(ベッドから降りようとしている)」、「痙攣」、「安静」、「不在」等であると判断することもできる。
【0040】
動静判別手段による上記のような判別は、例えば、5秒に1回、望ましくは3秒に1回、より望ましくは1秒に1回程度の間隔で実行される。これにより、患者Mの動静はコントローラ6によってほぼリアルタイムで判別され、動静に関する情報として、クライアント端末3に送られる。このとき、コントローラ6は、動静に関する情報に加えて、動静の判別の基礎としたセンサ5、5からの生のセンサ信号或いは生のセンサ信号からノイズを除去したり増幅したりして質を高めたセンサ信号も、併せてクライアント端末3に送るようにしても良い。
【0041】
センサ5、5と共に状態検知装置4を構成しているコントローラ6から、患者Mの動静に関する情報を受け取ったクライアント端末3は、その時、患者MのID番号を認識している状態にあれば、受け取った動静に関する情報を、センサ信号があればそれも併せて、有効情報と判断し、患者状態信号として、患者MのID番号と共に、データベースサーバ9に送信する。
【0042】
データベースサーバ9は、クライアント端末3からネットワーク11を介して者状態信号と患者MのID番号を受信すると、受信した患者状態信号を、受信した患者MのID番号及び受信時刻と関連づけて記憶装置に記憶する。また、データベースサーバ9は、受信した患者状態信号に含まれている患者の動静に関する情報に基づいて、当該動静が緊急の対応を要するものであるか否かを判断する手段を備えており、その判断結果を、当該動静についての緊急対応の要否に関する情報として、患者状態信号に含めて記憶装置に記憶する。受信した患者状態信号に含まれる個々の動静が、緊急対応を要するものであるか否かの判断は、動静判別手段が判別する動静のうちの何を緊急対応を要するものと判断するのかを、予め、例えばデータベースサーバ9の記憶装置内に指定しておき、データベースサーバ9が、随時その指定された内容を参照することによって行うことができる。緊急対応を要する動静としては、例えば、「転倒転落予測」や、「痙攣」などが挙げられるが、これに限られる訳ではない。
【0043】
なお、センサ5、5が患者Mの体温、心拍数、呼吸数、血圧などを計測する生体センサである場合には、動静判別手段によって判別される「異常体温」、「異常心拍数」、「異常呼吸数」、若しくは「異常血圧」などの動静を、予め緊急対応を要する動静としてデータベースサーバ9の記憶装置内に記憶させておいても良いし、センサ5、5が患者Mの状態を撮影するCCDカメラ等の撮影装置である場合には、撮影された画像に基づいて動作判別手段によって判別される「ベッドから降りようとしている」という「転倒転落予測」或いは「痙攣」の動静を、緊急対応を要する動静としてデータベースサーバ9の記憶装置内に記憶させておいても良い。
【0044】
一方、状態検知装置4を構成しているコントローラ6から患者Mの動静に関する情報を受け取ったとき、クライアント端末3が患者MのID番号を認識していない状態にあれば、クライアント端末3は、受け取った動静に関する情報を、センサ信号があればそれも併せて、無効情報と判断して破棄し、データベースサーバ9には送信しない。クライアント端末3が患者MのID番号を認識していない状態とは、例えば、ICカード8が非接触ICカードリーダライタ7上に載せられていない状態である。
【0045】
上述した例では、ICカード8を非接触ICカードリーダライタ7上に載せるか載せないかによって、クライアント端末3が、患者MのID番号を認識している状態にあるか、認識していない状態にあるかを切り換えているが、これとは別に、クライアント端末3に、患者MのID番号の認識をオン、オフする手段を設けても良い。例えば、クライアント端末3のモニタ画面上に、オン、オフボタンを設け、ICカード8を非接触ICカードリーダライタ7上に載せた状態で、オン、オフボタンのいずれかにタッチすることによって、クライアント端末3による患者MのID番号の認識をオン、オフできるようにする。このような場合には、ICカード8を非接触ICカードリーダライタ7上に載せた状態であっても、モニタ画面上のオフボタンをタッチすると、クライアント端末は患者MのID番号を認識していない状態となり、状態検知装置6からの患者Mの動静に関する情報は、クライアント端末3によって無効情報と判断され、破棄されることになる。
【0046】
また上述した例では、状態検知装置4を構成するコントローラ6が、センサ5、5からの信号に基づいてベッド2上にいる患者Mの動静を判別する動静判別手段を備えている場合について説明したが、動静判別手段は、クライアント端末3が備えていても良いし、或いは、データベースサーバ9、又はネットワーク11を介して接続されるその他のサーバが備えていても良い。コントローラ6が患者Mの動静を判別する手段を備えていない場合には、コントローラ6が、センサ5、5からの信号を、例えばノイズを除去したり、増幅したりして、動静の判別の基礎とできる程度に質を高めたセンサ信号として、クライアント端末3に送信することになることは上述したとおりである。
【0047】
以下、クライアント端末3及び管理端末10のモニタ画面に基づいて、本発明の患者状態情報管理システム1の動作をより詳細に説明する。
【0048】
〈クライアント端末〉
図2は、クライアント端末3のモニタ画面に表示されるトップメニューの一例である。クライアント端末3は、ベッドサイド端末として、患者に、医薬、診療記録等の医療情報を提供したり、テレビ、インターネット等の娯楽や情報ツールを提供するのに使用されているものであるが、本発明においては、クライアント端末として使用される。
【0049】
図2に示すとおり、クライアント端末3のトップメニュー画面の下段には、本発明の患者状態情報管理システム用の領域αが設けられており、左上には、現在時刻βが表示されている。領域αの最も左には、「現在の状態」として「不在」が表示され、その下に、「不在」となった時刻「13:52:10」が表示されている。つまり、このクライアント端末3の利用者である患者Mは、13時52分10秒にベッドから不在となり、現在もなお、ベッド上には居ないことになる。この「不在」という動静の判別が、前述した動静判別手段によって行われたものであることはいうまでもない。
【0050】
なお、クライアント端末3は、コントローラ6が動静を判別する手段を備えている場合には、コントローラ6からの動静に関する情報に基づいて、直接、クライアント端末3の画面に、例えば「不在」などの動静に関する情報を表示するようにしても良いが、通常は、データベースサーバ9に記憶されている患者Mについての患者状態信号に含まれている現在の動静に関する情報が、データベースサーバ9から、クライアント端末3に送信されてくるのを待って、クライアント端末3の画面に表示される。
【0051】
「不在」の右隣には、「監視OFF」の表示があり、現在、このクライアント端末3が、状態検知装置4からの患者状態信号を無効と判断して廃棄しており、データベースサーバ9又は管理端末10には送信していない状態にあることを示している。「監視OFF」となっているのは、ICカード8が非接触ICカードリーダライタ7上に載せられておらず、クライアント端末3が、利用者である患者のID番号を認識していない状態にあるからである。
【0052】
さらに、その右には、「要処置事象」として「転倒転落予測」と、その予測が為された日時「2009/11/3 10:12:28」が表示されている。この「要処置事象」欄の表示は、データベースサーバ9が、受信した患者状態信号中に含まれていた動静を緊急対応を要する動静であると判断した場合に、その動静に関する情報とその受信時刻とをクライアント端末3に対して送信することによって行われる。現在時刻βは、図2の左上隅に表示されているとおり、「2009年11月11日 PM 03:15」であるので、患者Mについてデータベースサーバ9からクライアント端末3に送信されてきた最新の「転倒転落予測」は一週間以上も前であることが分かる。
【0053】
「転倒転落予測」の日時の横には「確認」ボタンがある。この「確認」ボタンが押されると、クライアント端末3は、確認済み信号をデータベースサーバ9に送信することになる。データベースサーバ9は、クライアント端末3からの確認済み信号を受信すると、クライアント端末3の利用者である患者Mについて、データベースサーバ9が記憶している直前の「転倒転落予測」に確認済みのマークを付し、未確認の状態から確認済みの状態へと変更する。併せて、データベースサーバ9は、クライアント端末3に送信していた「転倒転落予測」を未確認から確認済みに変更する。この変更により、クライアント端末3は、当初は、例えば赤色に点滅させて注意を喚起していた「転倒転落予測」の表示を、その点滅を停止させ、色も赤色から緑等の色に変えて、既に確認済みで、緊急性を要しない過去の事象であることを示すことになる。
【0054】
なお、データベースサーバ9は、上記確認済み信号を受信したとき、データベースサーバ9に記憶されている直前の「転倒転落予測」だけでなく、上記確認作業によって同時に確認若しくは処置されたであろうと思われる過去の未確認「転倒転落予測」や「痙攣」などの緊急対応を要する動静の全てに確認済みのマークを付すようにしても良い。或いは、過去の未確認の緊急対応を要する動静の全てに確認済みのマークを付すのではなく、上記確認済み信号を受信したときから一定時間以内、例えば30分以内若しくは1時間以内に発せられた患者Mについての緊急対応を要する未確認の動静について確認済みのマークを付すようにしても良い。これらのことは、クライアント端末3のモニタ画面に表示されている「要処置事象」が「痙攣」である場合や、その他の緊急対応を要する動静である場合にも同様である。
【0055】
「確認」ボタンの右隣には、「転倒転落アセスメント」として、「危険度 C27」の表示がある。この表示は、例えば、クライアント端末3が最初に患者MのID番号を認識し、状態検知装置4からの患者状態信号をデータベースサーバ9に送信したときに、例えば、病院情報システムサーバ12に記憶されている患者Mの危険度を、データベースサーバ9が読み出して、クライアント端末3に送信することによって表示される。この危険度の表示は、当該クライアント端末3が患者Mでない他の患者のID番号を認識するか、病院情報システムサーバ12に記憶されている患者Mの危険度が変更されるまでは、クライアント端末3が患者MのID番号を認識している状態にあるか、そうでないかに係わらず、このまま表示される。
【0056】
図3は、図2の状態から2分経過後のクライアント端末3のトップメニュー画面を示している。図3に示すとおり、「現在の状態」は、「不在」から「安静」に変化しており、「安静」になったのは、「15:17:30」、すなわち、午後3時17分30秒であることが分かる。なお、この「安静」との判断も、前述した動静判別手段によって行われたものであることは勿論である。
【0057】
「安静」の右には「監視ON」との表示があり、ベッド上に戻った患者M、或いは、患者Mがベッドに戻ったことを確認した看護師等の医療スタッフが、患者MのICカード8を非接触ICカードリーダライタ7上に載せたことにより、クライアント端末3が患者MのID番号を認識している状態にあることを表している。この状態では、クライアント端末3は、状態検知装置4からの患者状態信号を、有効情報として、データベースサーバ9に送信している。
【0058】
〈管理端末〉
図4は、管理端末10が出力する「対象患者一覧」のモニタ画面の一例を示している。図に示すとおり、画面の右上には、現在時刻βが表示され、その下には、「病室」、「ベッド」、「患者番号」、「患者氏名」、「現況」、「最新未確認事象(予測)」、「監視」、「危険度」の項目が設けられ、個々の患者についてのこれらの情報が、患者別に表示されている。
【0059】
「病室」「ベッド」についての情報は、個々の患者についての患者状態信号を送信してくるクライアント端末の設置場所に関する情報から得ることができる。クライアント端末の設置場所に関する情報は、例えば、病院情報システムサーバ12に記憶されていても良いし、クライアント端末3、データベースサーバ9、又は管理端末10、或いは、ネットワーク11上にある他のサーバに記憶されていても良い。「患者番号」、「患者氏名」、及び「危険度」は、クライアント端末3が認識した患者のID番号に基づいて、例えば、病院情報システムサーバ12が記憶している患者情報から読み出すことができる。
【0060】
また、「現況」及び「最新未確認事象(予測)」に関する情報は、データベースサーバ9に記憶されている患者情報信号から得ることができる。この「最新未確認事象(予測)」の欄に表示される情報は、例えば、「転倒転落予測」や「痙攣」などの緊急対応を要する動静が何であるかについての情報であり、この情報には、それらの動静が発生した時刻が現在から何秒(又は何分)前であるかの情報を含めることができる。
【0061】
また「監視」のオン、オフについての情報は、例えば、クライアント端末3からコンスタントに患者情報信号が送信されてくる場合には、データベースサーバ9が「監視オン」と判断し、反対に、一定時間以上、クライアント端末3から患者情報信号が送信されてこない場合には、データベースサーバ9が「監視オフ」と判断することによって得ることができる。データベースサーバ9が判断した「監視オン」又は「監視オフ」の情報は、その判断の時刻とともに、患者状態信号に含められ、データベースサーバ9に記憶される。
【0062】
本発明の患者状態情報管理システム1は、当該システムが対象とする全患者のリストを患者情報として患者情報記憶装置に有しているので、当該患者リストに基づいて、図4に示す「対象患者一覧」のような画面を出力することができる。このような「対象患者一覧」の画面を出力することによって、管理対象としている全患者について、その状態を俯瞰することができるとともに、監視の漏れがないかどうかを確認することが可能となる。例えば、ベッド101の患者については、「不在」であるので「監視」が「OFF」であるのは良いとしても、ベッド305の患者は、「安静」という表示が為されたままで「監視」が「OFF」となっており、何らかの原因で、ICカード8が非接触ICカードリーダライタ7から落ちたか、載せ忘れていると考えられるので、看護師等の医療スタッフが当該患者のベッドサイドまで行って、状況を確認する必要があることが分かる。
【0063】
また、ベッド102の患者は、「現況」が「離床」、すなわち、ベッドを降りた状態にあり、かつ、「転倒転落予測」が30秒前に出ているので、至急に駆けつけて現状を確認する必要があることが分かる。特に、このベッド102の患者は、「危険度」が「C27」と高く、転倒、転落の危険性は極めて高い。ベッド501の患者は60秒前から「痙攣」を起こしており、この患者についても至急に駆けつけて現状を確認する必要がある。なお、図4では、10名の患者分の情報しか示されていないが、モニタ画面は上下方向にスクロールでき、管理対象とされている全患者について同様の表示ができることは勿論である。
【0064】
図4に示すような「対象患者一覧」は、表示されている各項目をキーに種々に並べ替えて出力することが可能である。例えば、危険度順や、患者氏名順に表示したり、監視がオフの対象患者だけを取り出して出力したり、必要に応じて、種々の形態で表示することができる。また、図4の例には表示されていない、例えば、年齢や性別、既往歴を併せて表示したり、それらの項目をキーに種々に並べ替えて出力することも可能である。また、出力先としては、図4に示すようにモニタ画面であっても良いし、プリンタであっても良く、さらにはネットワーク11を介して接続される他のサーバ等であっても良い。
【0065】
図5は、管理端末10の他の出力例であり、特定の患者についての患者状態信号を時系列的に表示した画面である。この図5に示すような画面は、例えば、図4に示す画面において、希望する患者の氏名等をクリックすることによって、切り換え表示される。
【0066】
図5の例は、図4におけるベッド101の患者についてのデータベースサーバ9に記憶されている患者状態信号を表示したものであり、画面上部のγで示される領域には、「基準日時」、「表示幅」、「単位」の表示がある。これらの項に表示から明らかなとおり、図5の画面は、2009年11月11日の午前0時0分を基準にして、2時間の幅で、10分毎に、患者状態信号に含まれている当該患者の動静を時系列的に表示したものである。なお、「不在」、「乗床」等の各動静の欄に表示されている数字は、そのような判断が為された回数を示している。例えば、午前0時0分から10分までの欄を見ると、当該患者は「乗床」、すなわち、ベッドに乗り、その後「活動」と判断されることが2回あり、その結果、「予測」、すなわち、転倒転落予測が為されたことが分かる。基準日時や表示幅、表示単位が適宜変更できることはいうまでもない。
【0067】
図6は、管理端末10が出力するモニタ画面のさらに他の例を示す図であり、「未確認転倒転落予測一覧」である。すなわち、動静判別手段によって「転倒転落予測」であると判別され、データベースサーバ9によって緊急対応が要であると判断されたにもかかわらず、未だ看護師等の医療スタッフによって現場の確認が為されていないものを、予測時刻の古いものから順に並べて表示したものである。この「未確認転倒転落予測一覧」に表示された患者に関しては、直ちに患者のベッドサイドに駆けつけて現状を確認する必要があるが、看護師等の医療スタッフは、「未確認転倒転落予測一覧」に表示されている予測が為されたのが何分前かという情報と、同じく表示されている「危険度」を勘案して、その優先順位を決めることができる。なお、図6に示すような「未確認転倒転落予測一覧」は、単離端末10のモニタ画面を左右に分割して、例えば、図4に示す「対象患者一覧」と同じ画面上に同時に表示するようにしても良い。
【0068】
「転倒転落予測」の代わりに「痙攣」について、同様に、「未確認痙攣一覧」を表示するようにしても良く、また、「転倒転落予測」と「痙攣」とを併せて、「緊急対応を要する未確認動静一覧」として表示するようにしても良い。さらには、「転倒転落予測」や「痙攣」に加えて、或いは、それらに代えて、「異常体温」、「異常心拍数」、「異常呼吸数」、若しくは「異常血圧」などの動静も、それらが緊急対応を要する動静であるとされ、かつ、未確認である場合には、「緊急対応を要する未確認動静一覧」として表示するようにしても良い。
【0069】
〈ベッドサイドでの対応〉
管理端末10のモニタ画面に表示される図6に示すような「未確認転倒転落予測一覧」を見て、該当する患者のベッドサイドに駆けつけた医療スタッフは、まず、現状を確認して患者の安全を確保するとともに、ICカード8を非接触ICカードリーダライタ7の上から外すか、当該クライアント端末3に患者のID番号の認識をオン・オフするボタン等が備えられている場合には、そのボタンを押すなどして、監視をオフにする。これにより、例えば、医療スタッフが介助するなどして、当該患者をベッドから降ろしたり、ベッドに乗せたり、ベッド上で移動させたりしても、そのような動作に対応するセンサ5、5からの信号や、それら信号に基づく患者の動静に関する情報は、データベースサーバ9には送信されない。医療スタッフが介助するなどして患者を移動させたときに得られる患者状態信号は、本来の患者状態信号ではなく、ノイズともいえるものであるので、そのような患者状態信号が、データベースサーバ9に記憶されないようにすることは、データベースサーバ9に記憶される患者状態信号にノイズが含まれることを防止し、真に有用な情報のみを患者状態信号として記憶することを可能にするという利点をもたらすものである。
【0070】
患者を安全な状態に戻すことができると、看護師等の医療スタッフは、図2の領域αに表示されている「確認」ボタンを押し、当該転倒転落予測が確認済みであることを、データベースサーバ9に通知する。確認済みであることの通知を受けたデータベースサーバ9は、前述したとおり、当該転倒転落予測に「確認済み」のマークを付し、未確認の状態から確認済みの状態へと変更する。これによって、当該転倒転落予測は、図6に示される「未確認転倒転落予測一覧」から削除されることになる。また、図4に示される「対象患者一覧」においても、「最新未確認事象(予測)」の欄から消えることになる。
【0071】
〈携帯端末への通知〉
以上の説明においては、看護師等の医療スタッフは管理端末10のモニタ画面を見て、緊急対応を要する患者の有無を知るようにしているが、携帯端末への通知機能を備えた本発明の患者状態情報管理システム1によれば、医療スタッフは、管理端末10から離れた場所にいても、各自が担当する患者について、緊急対応を要する動静の有無を知ることができる。
【0072】
すなわち、データベースサーバ9は、受信した患者状態信号に緊急対応を要する動静であると判断される動静に関する情報が含まれている場合には、当該患者を担当する医療スタッフの携帯端末13に、無線LANやインターネット等のネットワークを介してメール等で、緊急対応を要する動静の発生を通知する。通知される情報には、緊急対応を要する動静の種類と、その発生時刻、及び、該当する患者名が含まれる。場合によっては、当該患者の病室番号及びベッド番号を併せて通知するようにしても良い。患者、担当医療スタッフ、及び担当医療スタッフの携帯端末のメールアドレスや固有番号との対応関係は、例えば、患者情報記憶装置を構成している病院情報システムサーバ12に記憶されており、データベースサーバ9は、これらの情報を病院情報システムサーバ12から読み出して、自動的に、緊急対応を要する動静の発生を担当医療スタッフの携帯端末13に通知する。これにより、医療スタッフは、管理端末10から離れた場所にいるときでも、担当する患者について緊急対応を要する動静の発生を知ることができ、当該患者のベッドサイドに駆けつけるなどして、必要な処置を施すことができる。
【0073】
ただし、データベースサーバ9からのメールによる通知には、数秒から数十秒程度のタイムラグがある場合があるので、携帯端末13の側から、データベースサーバ9に対し、緊急対応を要する患者動静の有無を定期的に確認するようにしても良い。すなわち、携帯端末13は、例えば数秒に一度の間隔で、データベースサーバ9に対し、緊急対応を要する患者動静の有無の確認を要求する信号を送信する。この信号には、当然に、携帯端末13のメールアドレス又は固有番号についての情報が含まれている。このような確認要求信号を受信したデータベースサーバ9は、当該携帯端末13の利用者が担当している患者についてデータベースサーバ9に記憶されている患者状態信号を検索して、緊急対応を要する動静で未確認のものがあった場合には、その動静の種類、発生時刻、及び患者名を、当該携帯端末13に送信する。このとき、当該患者の病室番号及びベッド番号を併せて通知するようにしても良いことは勿論である。
【0074】
なお、当該携帯端末13の利用者である医療スタッフが担当する患者が誰であるかについての情報は、携帯端末13のメールアドレス又は固有番号に基づいて、病院情報システムサーバ12などの患者情報記憶装置から得ることができる。
【0075】
このように、データベースサーバ9からの通知を待つのではなく、携帯端末13の側からデータベースサーバ9に対し緊急対応を要する動静の有無を定期的に確認する場合には、データベースサーバ9からのメール等による通知が発信されてから携帯端末13に受信されるまでのタイムラグが無いので、看護師等の医療スタッフが管理端末10から離れている場合でも、担当する患者に関し、緊急対応を要する動静の有無をよりリアルタイムで知ることができ、迅速な対応が可能になるという優れた利点が得られる。
【0076】
なお、上述したクライアント端末3、データベースサーバ9、及び管理端末10の動作は、コンピュータを、それぞれ、クライアント端末3、データベースサーバ9、又は管理端末10として動作させるようにプログラムされたコンピュータプログラムによって実現されていることはいうまでもない。
【0077】
以上は複数の患者が単一の病院内に存在することを前提に説明をしたが、本発明の患者状態情報管理システムは、単一の病院若しくは介護施設内に存在する複数の患者若しくは被介護者だけを対象とするものではない。本発明の患者状態情報管理システムが対象とする患者は、2以上の別個の病院や介護施設に存在する複数の患者若しくは被介護者であっても良く、また、在宅医療又は在宅介護によって、別々の住居内に個別に存在する複数の患者若しくは被介護者であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したとおり、本発明の患者状態情報管理システムによれば、複数の患者の動静をリアルタイムで把握、管理することが容易に行えるので、転倒や転落等の事故の防止や、「痙攣」、「異常体温」、「異常心拍数」等の緊急を要する事態への対応に極めて有用であり、病院施設、介護施設はもとより、在宅医療や在宅介護における安全性の向上に貢献し、その産業上の利用可能性には多大のものがある。
【符号の説明】
【0079】
1 患者状態情報管理システム
、2 ベッド
3 クライアント端末
4 状態検知装置
5 センサ
6 コントローラ
7 非接触ICカードリーダライタ
8 ICカード
9 データベースサーバ
10 管理端末
11 ネットワーク
12 病院情報システムサーバ
13 携帯端末
、M 患者
α 患者状態情報管理システム用の領域
β 現在時刻
γ 「基準日時」「表示幅」「単位」の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の状態を検知するセンサを備えた状態検知装置と接続され、利用者である患者のID番号を認識する手段を備えた少なくとも1台のクライアント端末と;当該クライアント端末とネットワークを介して接続されるデータベースサーバと;当該データベースサーバとネットワークを介して接続される管理端末と;管理対象となっている患者についての少なくとも氏名を含む患者情報及び当該患者情報と前記ID番号との対応関係を記憶する患者情報記憶装置;を有する患者状態情報管理システムであって、
ア)前記クライアント端末は、利用者である患者のID番号を認識している状態にあるときには、前記状態検知装置からの患者状態信号を有効情報と判断して当該患者のID番号とともに前記データベースサーバに送信し、利用者である患者のID番号を認識していない状態にあるときには、前記状態検知装置からの患者状態信号を無効情報と判断して破棄する手段を備え;
イ)前記データベースサーバは、前記クライアント端末から送信されてくる前記患者状態信号を、受信した患者のID番号及び受信時刻と関連づけて記憶装置に記憶する手段を備え;
ウ)前記管理端末は、前記データベースサーバに記憶されている前記患者状態信号を、前記患者情報記憶装置に記憶されている患者情報とともに、モニタ画面に出力する手段を備えている;
患者状態情報管理システム。
【請求項2】
前記状態検知装置又は前記クライアント端末又は前記データベースサーバが、前記センサの出力信号を解析して、ベッド上における患者の動静を判別する動静判別手段を備えており、前記データベースサーバが記憶する前記患者状態信号には前記動静判別手段が判別した患者の動静に関する情報が含まれている請求項1記載の患者状態情報管理システム。
【請求項3】
前記患者情報記憶装置に記憶されている患者情報が、管理対象となっている患者について別途調査することによって得られた転倒転落の危険度についての情報を含んでいる請求項1又は2に記載の患者状態情報管理システム。
【請求項4】
前記クライアント端末は、当該クライアント端末が前記状態検知装置からの患者状態信号を有効情報として前記データベースサーバに送信しているときには、そのモニタ画面に、当該患者についての状態情報管理がオン状態にあることを表示し、送信していないときには、そのモニタ画面に、当該患者についての状態情報管理がオフ状態にあることを表示する手段を備えている請求項1〜3のいずれかに記載の患者状態情報管理システム。
【請求項5】
前記クライアント端末が、患者のID番号の認識をオン、オフする手段を備えている請求項1〜4のいずれかに記載の患者状態情報管理システム。
【請求項6】
前記データベースサーバは、前記クライアント端末からの患者状態信号の送信の有無に基づいて、当該患者についての状態情報管理がオン状態にあるか、オフ状態にあるかを判別するオン・オフ状態判別手段を備え、前記データベースサーバが記憶する前記患者状態信号には前記オン・オフ状態判別手段が判別した当該患者についての状態情報管理のオン・オフ状態に関する情報が含まれている請求項1〜5のいずれかに記載の患者状態情報管理システム。
【請求項7】
前記データベースサーバは、前記動静判別手段によって判別された患者の個々の動静について、緊急対応の要否を判断する手段を備えており、前記データベースサーバが記憶する前記患者状態信号には、患者の動静の各々についての緊急対応の要否に関する情報が含まれている請求項1〜6のいずれかに記載の患者状態情報管理システム。
【請求項8】
前記クライアント端末は、確認ボタンと、当該確認ボタンが押されたとき、確認済み信号を前記データベースサーバに送信する手段とを備えており、前記データベースサーバは、当該確認済み信号を受信すると、当該クライアント端末の利用者である患者について前記データベースサーバが記憶している少なくとも直前の緊急対応を要する動静に確認済みのマークを付す手段を備えている請求項7に記載の患者状態情報管理システム。
【請求項9】
当該患者状態情報管理システムは、さらに、少なくとも1台の医療スタッフ用の携帯端末を有し、前記患者情報記憶装置は、管理対象となっている患者と担当医療スタッフとの対応関係を記憶しており、前記データベースサーバは、前記動静判別手段によって判別された患者の動静が緊急対応を要するものであると判断した場合には、前記患者情報記憶装置に記憶されている患者と担当医療スタッフとの対応関係に基づいて、当該患者の担当医療スタッフの携帯端末に、当該患者名と緊急対応を要する動静とを通知する手段を備えている請求項7又は8記載の患者状態情報管理システム。
【請求項10】
当該患者状態情報管理システムは、さらに、少なくとも1台の医療スタッフ用の携帯端末を有し、前記患者情報記憶装置は、管理対象となっている患者と担当医療スタッフとの対応関係を記憶しており、前記携帯端末は、前記データベースサーバに対し、緊急対応を要する患者動静の有無を定期的に確認する手段を備えており、前記データベースサーバは、前記携帯端末からの前記確認要請があった場合には、前記患者情報記憶装置に記憶されている患者と担当医療スタッフとの対応関係と前記データベースサーバが記憶する前記患者状態信号に基づいて、当該携帯端末の利用者である医療スタッフが担当する患者についての緊急対応を要する動静の有無を、当該携帯端末に通知する手段を備えている請求項7又は8記載の患者状態情報管理システム。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1〜10のいずれかに記載の患者状態情報管理システムにおける前記クライアント端末、前記管理サーバ、又は前記データベースサーバとして動作させる手順を記載したプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−172674(P2011−172674A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37974(P2010−37974)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(505124683)株式会社ヴァイタス (4)
【Fターム(参考)】