情報中継装置
【課題】 信号情報や感知器情報のサイズが大きい場合や送信先の光ビーコンの数が多い場合、あるいは情報中継装置と光ビーコンの間の通信負荷が高い場合であっても、信号情報に含まれる残秒数や感知器情報に含まれる感知後の経過時間を適正に保ちつつ、これらの情報を光ビーコンを介して車載装置に送信することができる情報中継装置を提供する。
【解決手段】 アプリケーション処理部11の演算部1101は、予め定めた所定時間(例えば、100msec)ずつ遅延(経過)させながら、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ信号情報S3、信号情報S2、信号情報S1を送信する。その際に、信号情情報S3、信号情報S2、信号情報S1に含まれる現在の信号灯色とその残秒数を、上記所定時間を差し引くことにより更新する。
【解決手段】 アプリケーション処理部11の演算部1101は、予め定めた所定時間(例えば、100msec)ずつ遅延(経過)させながら、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ信号情報S3、信号情報S2、信号情報S1を送信する。その際に、信号情情報S3、信号情報S2、信号情報S1に含まれる現在の信号灯色とその残秒数を、上記所定時間を差し引くことにより更新する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御機や車両感知器などの交通設備から送られてくる情報を中継して、光ビーコンなどの通信装置に送信することができる情報中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通分野の中継装置として、交差点に設置された交通信号制御機から送られてくる信号灯色とその残秒数などの情報を含む信号情報や、道路上に設置された画像感知器などの車両感知器から送られてくる車両の感知有無、感知位置、感知後の経過時間などの情報を含む感知器情報を受信して、道路上に設置された光ビーコンに送信する情報中継装置が開発されている。
【0003】
情報中継装置は、交通信号制御機から送られてくる信号情報を受信する。そして、この信号情報を編集して交差点に流入する複数の道路それぞれに対応した複数の信号情報を作成し、これらの情報を上記複数の道路それぞれに設置された複数の光ビーコンに送信する。
【0004】
また、情報中継装置は、車両感知器から送られてくる感知器情報を受信する。そして、この感知器情報を編集して上記複数の道路それぞれに対応した複数の感知器情報を作成し、これらの情報を上記複数の道路それぞれに設置された複数の光ビーコンに送信する。
【0005】
光ビーコンは、情報中継装置から送られてきた信号情報や感知器情報を受信し、これらの情報を車載装置に送信する。車載装置は、信号情報に含まれる信号灯色の残秒数に基づいて信号灯色が青から黄に切り替わる旨の情報を運転者に提供する。また、車載装置は、この車載装置が搭載されている車両が走行している道路と交差する道路に設置された車両感知器から送られた感知器情報に含まれる車両の感知有無、感知位置、感知後の経過時間に基づいて、交差点に接近する車両があるため、運転に注意を促す旨の情報を運転者に提供する。
【0006】
また、交通分野以外の中継装置として、時刻情報を伝送する標準電波を受信し、自己の保持する時刻を修正するとともに、時刻情報を子機に向けて送信し、子機の保持時刻を修正する標準電波の中継装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−338273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
情報中継装置は、交差点に流入する複数の道路の各々に設置されている光ビーコンに対し、信号情報と感知器情報をほぼ同時に送信する処理を行う。このため、これらの情報のサイズが大きい場合や送信先の光ビーコンの数が多い場合、あるいは情報中継装置と光ビーコンの間の通信負荷が高い場合には、すべての光ビーコンに所定の許容誤差時間(例えば、100msec)以内に信号情報と感知器情報を受信させることができないおそれがあった。
【0009】
この場合、前記許容誤差時間以内に信号情報と感知器情報を受信できなかった光ビーコンがそのままこれらの情報を車載装置に送信すると、信号情報に含まれている信号灯色の残秒数や感知後の経過時間が正しい値から前記許容誤差時間以上ずれていることから、車載装置が適切な情報を運転者に提供できないおそれがあった。
【0010】
前記特許文献1においても、標準電波の中継装置は子機との間の通信負荷を考慮して時刻情報を送信していないことから、前記特許文献1にも上記の課題を解決する手段は何ら示されていない。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、信号情報や感知器情報のサイズが大きい場合や送信先の光ビーコンの数が多い場合、あるいは情報中継装置と光ビーコンの間の通信負荷が高い場合であっても、信号情報に含まれる残秒数や感知器情報に含まれる感知後の経過時間を適正に保ちつつ、これらの情報を光ビーコンを介して車載装置に送信することができる情報中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る情報中継装置は、路上に設置された交通設備から時間に関する情報を含む交通情報を受信する受信手段と、車載装置と通信可能な複数の通信装置のそれぞれに、前記交通情報を送信する送信手段とを備える情報中継装置であって、前記送信手段は、前記複数の通信装置のうちの一の通信装置に前記交通情報を送信してから予め定めた所定時間経過後に前記複数の通信装置のうちの他の通信装置に前記交通情報を送信するように構成されており、前記所定時間に基づいて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新する交通情報更新手段を備え、前記更新された交通情報を前記他の通信装置に送信するように構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0013】
交通設備は、例えば、交差点に設置された交通信号制御機が該当する。この場合、交通情報は、交通信号制御機から送信された信号灯色とその残秒数とを含む信号情報であり、時間に関する情報は信号灯色とその残秒数である(請求項4)。
また、交通設備は、例えば、路上に設置された車両感知器が該当する。この場合、交通情報は、車両感知器から送信された感知結果と感知後の経過時間とを含む感知器情報であり、時間に関する情報は感知後の経過時間である(請求項5)。
通信装置は、例えば、近赤外光を用いて車載装置とスポット的に通信可能な光ビーコンや、車両が交差点間を走行中、継続的に当該車両の車載装置と通信可能なITS無線機が該当する。
所定時間は、固定の時間でも良いし、可変の時間でも良い。
【0014】
第1発明に係る情報中継装置は、複数の通信装置のそれぞれに対し、予め定めた所定時間(例えば、100msec)ずつ遅延(経過)させながら、交通情報を送信する。その際に、この所定時間に基づいて時間に関する情報を更新し、時間に関する情報の誤差が許容誤差時間内に保たれるようにする。これにより、送信処理の負荷が分散されるとともに、時間に関する情報の適正が保たれるため、情報中継装置は、時間に関する情報の誤差が許容誤差時間以内に収まるようにしつつ、交通情報を通信装置を介して車載装置に送信することができる
【0015】
第1発明に係る情報中継装置は、前記交通情報を受信してから該交通情報を前記一の通信装置に送信するまでに要する送信準備時間を取得する取得手段を備え、前記交通情報更新手段は、さらに、前記送信準備時間を用いて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新するように構成されていても良い(請求項2)。
【0016】
交通情報を受信してから該交通情報を前記一の通信装置に送信するまでに要する送信準備時間をさらに用いて時間に関する情報を更新すれば、時間に関する情報の適正がより保たれるようになる。
【0017】
第1発明に係る情報中継装置は、前記通信装置に前記交通情報を送信してから該通信装置が該交通情報を受信するまでに要する送信所要時間を取得する第二取得手段とを備え、前記交通情報更新手段は、さらに、前記送信所要時間を用いて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新するように構成されていても良い(請求項3)。
【0018】
通信装置に交通情報を送信してからこの通信装置がこの交通情報を受信するまでに要する送信所要時間をさらに用いて時間に関する情報を更新すれば、時間に関する情報の適正がより保たれるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、交通情報のサイズが大きい場合や送信先の通信装置の数が多い場合、あるいは情報中継装置と通信装置の間の通信負荷が高い場合であっても、時間に関する情報を適正に保ちつつ、交通情報を通信装置を介して車載装置に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る情報中継装置を含む交通システムの概要を示す模式図である。
【図2】情報中継装置の構成を示すブロック図である。
【図3】交通情報編集・送信処理のフローチャートを示す図である。
【図4】交通情報編集・送信処理のフローチャートを示す図である。
【図5】交差点に流入する1つの道路用の信号情報のフォーマットの例を示す図である。
【図6】道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例を示す図である。
【図7】更新した道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例を示す図である。
【図8】交差点に流入する1つの道路用の感知器情報のフォーマットの例を示す図である。
【図9】道路L1用の感知器情報D1の具体的なデータ例を示す図である。
【図10】更新した道路L1用の感知器情報D1の具体的なデータ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る情報中継装置を含む交通システムの模式図である。交通システムは、情報中継装置1、交通信号制御機2、車両感知器3、路上通信装置4、車載装置5、中央装置7などを含む。中央装置7は、交通管制センター内に設置されており、複数の交差点ISのそれぞれに設置された交通信号制御機2と電話回線などの通信回線を介して接続されている。なお、中央装置7は、交通管制センター内に設置されず、道路上に設置されていても良い。交通信号制御機2は、複数の交差点ISのそれぞれに設置された情報中継装置1と電話回線などの通信回線を介して接続されている。車両感知器3は、交差点ISに流入する複数の道路L1、道路L2、道路L3、道路L4(これらを総称して道路Lという)にそれぞれ設置されており、上記の情報中継装置1と電話回線などの通信回線を介して接続されている。路上通信装置4は、交差点ISに流入する複数の道路L1、道路L2、道路L3、道路L4にそれぞれ設置されており、上記の情報中継装置1と電話回線などの通信回線を介して接続されている。なお、図1では、車両感知器3と路上通信装置4は道路L1と道路L2にのみ記載されているが、実際には車両感知器3と路上通信装置4は道路L3と道路L4にも設置されている。
【0022】
中央装置7は、所定の周期でスプリット等の情報を含む信号制御指令を複数の交通信号制御機2に送信する。
【0023】
交通信号制御機2は、中央装置7から受診した信号制御指令に基づいて信号灯器21の各信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。また、交通信号制御機2は、信号灯色及びその残秒数を含む信号情報Sを作成して、当該交通信号制御機2に接続されている情報中継装置1に送信する。
【0024】
車両感知器3は、例えば画像式車両感知器であり、道路L上の感知エリアDAを撮像する撮像装置3aと、撮像装置3aを制御する撮像制御装置3bとを含んでいる。車両感知器3は、所定周期毎に上記の感知エリアDAを通過する車両を感知するとともに、その車両の位置、速度等を算出し、車両の感知結果(感知の有無)、車両を感知した場合はその車両の位置と速度、感知後の経過時間(感知結果が更新されてからの経過時間)を含む感知器情報Dを作成して、当該車両感知器3に接続されている情報中継装置1に送信する。なお、車両感知器3は、超音波式車両感知器や遠赤外式車両感知器などであっても良い。
【0025】
情報中継装置1は、交通信号制御機2から信号灯色とその残秒数を含む信号情報Sを受信すると、後述する交通情報編集・送信処理によりこの情報を編集して道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれに対応した複数の信号情報S1、信号情報S2、信号情報S3、信号情報S4(これらを総称して信号情報Seditという)を作成し、当該情報中継装置1に接続されている道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれに設置されている路上通信装置4に、対応する信号情報Seditを送信する。
【0026】
また、情報中継装置1は、車両感知器3から車両の感知結果、感知車両の位置と速度、感知後の経過時間を含む感知器情報Dを受信すると、後述する交通情報編集・送信処理によりこの情報を編集して道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれに対応した複数の感知器情報D1、感知器情報D2、感知器情報D3、感知器情報D4(これらを総称して感知器情報Deditという)を作成し、当該情報中継装置1に接続されている道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれに設置されている路上通信装置4に、対応する感知器情報Deditを送信する。
【0027】
路上通信装置4は、例えば光ビーコンであり、車両6に搭載された車載装置5との間で各種情報の無線通信を行う通信部4aと、通信部4aを制御する通信制御装置4bとを含んでいる。通信制御装置4bにはROM等の記憶部が備えられており、路上通信装置4から当該路上通信装置4が設置されている道路Lの流入先の交差点IS(交差点IS手前の停止線)までの距離の情報が予め記憶されている。例えば、道路L1に設置された路上通信装置4の記憶部には、当該路上通信装置4から交差点IS手前の停止線P1までの距離の情報が予め記憶されている。なお、これらの距離の情報は、予め記憶されている構成に限定されず、中央装置7等から取得して記憶する構成であっても良い。路上通信装置4は、情報中継装置1から信号情報Sedit、感知器情報Deditを受信すると、これらの情報と距離情報を当該路上通信装置4の通信エリアTA(斜線部分)を通過する車両6に搭載された車載装置5に送信する。
【0028】
車載装置5は、路上通信装置4との間で各種情報を無線通信する。車載装置5は、車両6が路上通信装置4の通信エリアTAを通過する際に、路上通信装置4との間で無線通信を行い、信号情報Sedit、感知器情報Dedit及び距離情報を取得する。
【0029】
車載装置5は、信号情報Seditを取得すると、信号情報Seditに含まれる信号灯色とその残秒数に基づいて、信号灯色が何秒後に青から黄に切り替わるかを運転者に報知する。また、車載装置5は、さらに距離情報を取得して、信号情報Seditに含まれる信号灯色とその残秒数、距離情報に含まれる停止線までの距離、車両6から取得した当該車両6の速度に基づいて、車両6が交差点ISを青で安全に通過できるか否かを判断し、通過できると判断した場合には、現在の速度を保持して走行するよう運転者に報知し、通過できないと判断した場合には、交差点IS手前の停止線で安全に停止できるように減速するよう運転者に報知する。
【0030】
車載装置5は、感知器情報Deditと距離情報を取得すると、感知器情報Deditに含まれる交差側の道路L2、道路L4における車両の感知結果(感知の有無)、感知車両の位置と速度、感知後の経過時間に基づいて、交差する道路L2、道路L4から何秒後に他の車両が交差点ISに到達するかを計算するとともに、距離情報に含まれる停止線までの距離、車両6から取得した当該車両6の速度に基づいて、車両6が何秒後に交差点ISに到達するかを計算し、他の車両と車両6が交差点ISにほぼ同時に到達すると判断した場合には、運転者に交差側の道路L2や道路L4から他の車両が交差点ISに接近しているので、注意して運転するように促す旨の情報を報知し、出会い頭事故を防止する。
【0031】
車載装置5が運転者に対して以上のような安全運転支援を適正に行うためには、信号情報Seditに含まれる信号灯色とその残秒数の誤差、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間の誤差が、所定の許容誤差時間(例えば100msec)以内になっていることが要求される。
【0032】
次に情報中継装置1について詳述する。図2は情報中継装置の構成を示すブロック図である。情報中継装置1は、アプリケーション処理部11、プロトコル変換部12などを備える。アプリケーション処理部11は、演算部1101、記憶部1102、I/F部1103などを備える。プロトコル変換部12は、演算部1201、記憶部1202、I/F部1203などを備える。
【0033】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されており、I/F部1103を介して、交通信号制御機2から信号情報Sを、車両感知器3から感知器情報Dを受信し、後述する交通情報編集・送信処理を行って、編集した信号情報Sedit、感知器情報Deditをプロトコル変換部に出力する。アプリケーション処理部11の記憶部1102は、メモリなどの記憶装置から構成されており、各種の情報を記録する。
【0034】
プロトコル変換部12の演算部1201は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されており、アプリケーション処理部11が出力した信号情報Sedit、感知器情報Deditを取得して、送り先の路上通信装置4に対して、信号情報Sedit、感知器情報Deditを、I/F部1203部を介して送信する。プロトコル変換部12の記憶部1202は、メモリなどの記憶装置から構成されており、各種の情報を記録する。
【0035】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、信号情報S又は感知器情報Dを受信すると、以下の交通情報編集・送信処理を行う。図3及び図4は、交通情報編集・送信処理のフローチャートを示す図である。
【0036】
演算部1101は、受信した情報が信号情報Sか感知器情報Dかを判断し(ステップS01)、信号情報Sであれば(ステップS01においてYES)、ステップS02以降の処理に進む。演算部1101は、受信した信号情報Sに基づいて、道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれを基準とした信号情報Seditをその道路Lごとに作成する(ステップS02)。すなわち、演算部1101は、道路L1用の信号情報S1、道路L2用の信号情報S2、道路L3用の信号情報S3、道路L4用の信号情報S4を作成する。
【0037】
その際に、演算部1101は、受信した信号情報Sに含まれている信号灯色とその残秒数の情報を更新する。具体的には、受信した信号情報Sに含まれている現在の信号灯色の残秒数から、演算部1101が信号情報Sを受信してから演算部1101がステップS03で作成した信号情報SeditをステップS04で送信することができる状態になるまでに要する時間(以下、信号情報送信準備時間SPTという)を差し引くことにより、残秒数を更新する。これにより、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差が所定の許容誤差時間以内に保たれる。なお、現在の信号灯色の残秒数よりも信号情報送信準備時間SPTが大きい場合には、信号情報Seditに含まれる信号灯色も更新する(2番目の信号灯色を現在の信号灯色に繰り上げ、3番目の信号灯色を2番目の信号灯色に繰り上げ、同様に、順次信号灯色を繰り上げる)。なお、上記の信号情報送信準備時間SPTは、アプリケーション処理部11の記憶部1102に記憶されており、予め人手で計測しても良いし、情報処理装置1が定期的に自身で計測しても良い。
【0038】
図5は交差点に流入する1つの道路用の信号情報のフォーマットの例を示す図である。図において、それぞれのレコードのデータ長は1バイトとなっている。「灯器情報(1)」は、本実施形態においては、交差点ISに流入する1つの道路Lにおける信号灯器21の情報である。「灯色情報(1)」は現在の信号灯色の情報を示しており、「灯色情報(2)」は2番目の信号灯色の情報を示している。「丸信号灯色表示」は当該灯色情報における丸灯の灯色を示しており、「0:不明」「1:青」「2:黄」「3:赤」「4:黄点滅」「5:赤点滅」「6:滅灯」の7種類がある。「青矢信号表示方向」は青矢灯器が示す通行許可方向を表しており、青矢灯器が示す通行許可方向は「bit7:左斜め後ろ」「bit6:左」「bit5:左斜め前」「bit4:直進」「bit3:右斜め前」「bit2:右」「bit1:右斜め後ろ」「bit0:Uターン」の8方向がある。「最小残秒数」は当該灯色の予定継続の最小秒数(0.1秒単位:0.0〜240.0秒)を示しており、残秒数が確定している場合は確定秒数が格納され、残秒数が可変の場合は最小残秒数が格納される。「最大残秒数」は当該灯色の予定継続の最大秒数(0.1秒単位:0.0〜240.0秒)を示しており、残秒数が確定している場合は確定秒数が格納され、残秒数が可変の場合は最大残秒数が格納される。本実施形態においては、単に「残秒数」というと、この「最小残秒数」と「最大残秒数」の両方を含むものとする。なお、本フォーマットの詳細については、社団法人新交通管理システム協会(以下、UTMS協会)から発行されている規格書に記載されている。
【0039】
図6は道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例を示す図である。「方路0」は道路L1に対応し、「方路0、1灯器番号」が「0x12(16進数)」であることから、道路L1の灯器番号は「1」である。「灯器情報(1) 灯色情報(1) 丸信号灯色表示」が「0x01」であることから、道路L1の現在の丸灯の灯色は「青」である。「灯器情報(1) 灯色情報(1) 最小残秒数」と「灯器情報(1) 灯色情報(1) 最大残秒数」がともに「0x0118(16進数)」(=280(10進数))であることから、上記「青」の残秒数は28.0秒である。なお、交通信号制御機2から送られてきた信号情報Sでは、この「青」の残秒数は28.2秒であったが、上述の信号情報送信準備時間SPTが200msec(=0.2秒)であることから、アプリケーション処理部11の演算部1101は、28.2秒から0.2秒を減じて28.0秒に更新している。また、「灯器情報(1) 灯色情報(2) 丸信号灯色表示」が「0x02」であることから、道路L1の2番目の丸灯の灯色は「黄」である。「灯器情報(1) 灯色情報(2) 最小残秒数」と「灯器情報(1) 灯色情報(2) 最大残秒数」がともに「0x0064(16進数)」(=40(10進数))であることから、上記「黄」の残秒数は4.0秒である。
【0040】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、まず、道路L4に設置されている路上通信装置4に対し、道路L4用の信号情報S4をプロトコル変換部12を介して送信する(ステップS03)。演算部1101が信号情報Seditをプロトコル変換部12に出力してから、路上通信装置4がこの信号情報Seditを受信するまでに要する時間(以下、信号情報送信所要時間SNTという。例えば、80msecとする)が上述の許容誤差時間(100msec)以内になっている場合には、路上通信装置4が車載装置5に送信する信号情報S4に含まれる信号灯色とその残秒数の誤差は上記許容誤差時間以内になっていることから、この信号情報S4を受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0041】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、さらにステップS04以降に、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4にもそれぞれの道路用の信号情報S3、信号情報S2、信号情報S1を送信する必要があるが、そのまま立て続けにこれらの路上通信装置4に送信すると、これらの路上通信装置4の中には、その受信した信号情報Seditに含まれる信号灯色とその残秒数の誤差が上記の許容誤差時間を上回るものが出てくる。信号情報送信所要時間SNTは、アプリケーション処理部11の演算部1101が信号情報Seditをプロトコル変換部12に出力してからプロトコル変換部12が路上通信装置4にこの信号情報Seditを送信するまでに要する時間と、プロトコル変換部12が信号情報Seditを送信してからこの信号情報Seditを路上通信装置4が受信するまでに要する時間とから構成されており、例えば、前者の値が20msecであり、後者の値が60msecであるとすると、プロトコル変換部12が道路L4に設置されている路上通信装置4に信号情報S4を送信した時点で既に20msecが経過しており、さらに道路L3に設置されている路上通信装置4に信号情報S3を送信した時点で40msecが経過し、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4にそれぞれ信号情報S2、信号情報S1を送信した時点でそれぞれ60msec、80msecが経過していることになる。そして、道路L4、道路L3、道路L2、道路L1に設置された路上通信装置4がそれぞれ信号情報S4、信号情報S3、信号情報S2、信号情報S1を受信する時点で、それぞれ80msec、100msec、120msec、140msecが経過していることになる。従って、道路L1に設置された路上通信装置4が送信する信号情報S1、道路L2に設置された路上通信装置4が送信する信号情報S2、道路L3に設置された路上通信装置4が送信する信号情報S3のそれぞれに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差は上記の許容誤差時間を上回ることになる。そうすると、これらの路上通信装置4から信号情報S1、信号情報S2又は信号情報S3を受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができない。
【0042】
そこで、アプリケーション処理部11の演算部1101は、予め定めた所定時間(例えば、100msec)ずつ遅延(経過)させながら、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ信号情報S3、信号情報S2、信号情報S1を送信する。その際に、信号情情報S3、信号情報S2、信号情報S1に含まれる現在の信号灯色とその残秒数を、上記所定時間を差し引くことにより更新する。これにより、プロトコル変換部12の送信処理の負荷が分散されるとともに、路上通信装置4が車載装置5に送信する時点の信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差が上記許容誤差時間以内に保たれるため、その信号情報Seditを受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0043】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、上記所定時間(100msec)待機し(ステップS04)、道路L3用の信号情報S3に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずることにより、信号情報S3を更新する(ステップS05)。現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずると0秒以下になる場合には、信号情報S3に含まれる信号灯色も更新する。例えば、上記所定時間が500msec(=0.5秒)であり、現在の信号灯色が「青」で残秒数が0.1秒、2番目の信号灯色が「黄」で残秒数が4.0秒、3番目の信号灯色が「赤」で残秒数が3.0秒の場合には、現在の信号灯色の残秒数(0.1秒)から上記所定時間(0.5秒)を減ずると−0.4秒となることから、2番目の信号灯色である「赤」を現在の信号灯色とし、その残秒数を4.0秒に算出した−0.4秒を加えて3.6秒に更新する。
【0044】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、更新した信号情報S3を道路L3に設置されている路上通信装置4に送信する(ステップS06)。
演算部1101は、さらに上記所定時間(100msec)待機し(ステップS07)、道路L2用の信号情報S2に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間の2倍を減ずることにより、信号情報S2を更新する。上記所定時間の「2倍」としているのは、演算部1101がステップS02で道路L2用の信号情報S2を作成してから、ステップS04で待機した上記所定時間とステップS07で待機した上記所定時間とが経過しているからである。なお、現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずると0秒以下になる場合には、同様に、信号情報S2に含まれる信号灯色も更新する。
【0045】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、更新した信号情報S2を道路L2に設置されている路上通信装置4に送信する(ステップS09)。
演算部1101は、さらに上記所定時間(100msec)待機し(ステップS10)、道路L1用の信号情報S1に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間の3倍を減ずることにより、信号情報S1を更新する。上記所定時間の「3倍」としているのは、演算部1101がステップS02で道路L1用の信号情報S1を作成してから、ステップS04で待機した上記所定時間とステップS07で待機した上記所定時間とステップS10で待機した上記所定時間とが経過しているからである。なお、現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずると0以下になる場合には、同様に、信号情報S1に含まれる信号灯色も更新する。
【0046】
アプリケーション処理部11の演算部1101がステップS02で作成した道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例が図6で示したものだとすると、ステップS11で更新した道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例は図7のようになる。「灯器情報(1) 灯色情報(1) 最小残秒数」と「灯器情報(1) 灯色情報(1) 最大残秒数」がともに0.3秒減少し、「0x115(16進数)」(=27.7秒)になっていることがわかる。
【0047】
以上のように、本発明に係る情報中継装置1は、予め定めた所定時間ずつ遅延(経過)させながら、複数の道路Lに設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ信号情報Seditを送信する。その際に、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数を、上記所定時間を差し引くことにより更新する。これにより、情報中継装置1の送信処理の負荷が分散されるとともに、路上通信装置4が車載装置5に送信する時点の信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差が上記許容誤差時間以内に保たれるため、その信号情報Seditを受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0048】
一方、アプリケーション処理部11の演算部1101は、受信した情報が感知器情報Dであれば(ステップS02においてNO)、ステップS22以降の処理に進む。演算部1101は、受信した感知器情報Dに基づいて、道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれを基準とした感知器情報Deditをその道路Lごとに作成する(ステップS22)。すなわち、演算部1101は、道路L1用の感知器情報D1、道路L2用の感知器情報D2、道路L3用の感知器情報D3、道路L4用の感知器情報D4を作成する。
【0049】
その際に、演算部1101は、受信した感知器情報Dに含まれる感知後の経過時間の情報を更新する。具体的には、受信した感知器情報Dに含まれている感知後の経過時間に、演算部1101が感知器情報Dを受信してから演算部1101がステップS23で作成した感知器情報DeditをステップS24で送信することができる状態になるまでに要する時間(以下、感知器情報送信準備時間DPTという)を加えることにより、感知後の経過時間を更新する。これにより、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間の誤差が所定の許容誤差時間以内に保たれる。なお、上記の感知器情報送信準備時間DPTは、アプリケーション処理部11の記憶部1102に記憶されており、予め人手で計測しても良いし、情報処理装置1が定期的に自身で計測しても良い。
【0050】
図8は交差点に流入する1つの道路用の感知器情報のフォーマットの例を示す図である。図において、それぞれのレコードのデータ長は1バイトとなっている。「検知エリア(1)」は、本実施形態においては、交差点ISに流入する1つの道路Lと交差点ISで交差する道路L(交差点ISに流入する1つの道路Lが道路L1であれば、この道路と交差点ISで交差する道路は、例えば、道路L2である)における感知エリアDAである。「情報取得経過時間」は検知情報が更新されてからの経過時間(0.1秒単位:0.0〜25.4秒)を示しており、本実施形態においては、感知エリアDAにおける感知後の経過時間(感知エリアDAにおける車両の感知結果が更新されてからの経過時間)に該当する。「四輪障害物有無」は、検知エリアにおける四輪の障害物有無を示し、「0:無」「1:有」となっており、本実施形態においては、感知エリアDAで感知した車両の有無に該当する。「対象車線(1)」は、本実施形態においては、道路Lのいずれも1車線であることから、道路Lそのものに該当する。「四輪障害物数(K)」は、出力する軽自動車以上の四輪障害物数(0〜5)を示しており、本実施形態においては、感知エリアDAで感知した車両の台数に該当する。「四輪障害物(1)」は、上記「四輪障害物数(K)」の車両のうちの1台目を示している。「速度」は、障害物の移動速度(km/h単位:0〜254km/h)を示しており、本実施形態においては、感知エリアDAで感知した車両の速度に該当する。「基点から障害物までの道程距離」は、基点(交差点中心又は光ビーコンヘッド位置)から障害物の指定された位置種別までの道程距離(0.1m単位:−3276.8〜3276.6m)を示しており、本実施形態においては、感知エリアDAで感知した車両の交差点I中心までの距離、すなわち、感知エリアDAで感知した車両の位置に該当する。なお、本フォーマットの詳細については、UTMS協会から発行されている規格書に記載されている。
【0051】
図9は道路L1用の感知記情報D1の具体的なデータ例を示す図である。「検知エリア(1)」は道路L2に対応し、「検知エリア番号」は「1」である。「検知エリア(1) 情報取得経過時間」が「0x04」であることから、感知後の経過時間は0.4秒である。車両感知器3から送られてきた感知器情報Dでは、感知後の経過時間は0.1秒であったが、上記の感知器情報送信準備時間DPTが300msec(=0.3秒)であることから、アプリケーション処理部11の演算部1101は、0.1秒に0.3秒を加えて0.4秒に更新している。「検知エリア(1) 四輪障害物有無 等」が「0x01」であることから、道路L2に設置されている車両感知器3が感知エリアDAで感知した車両の有無は「有」である。「検知エリア(1) 対象車線数(J)」は「0x01」であるが、これは道路L2が1車線であることに対応している。「検知エリア(1) 対象車線(1) 四輪障害物数(K) 等」が「0x01」であることから、道路L2に設置された車両感知器3が感知エリアDAで感知した車両の台数は「1」である。「検知エリア(1) 対象車線(1) 四輪障害物(1) 速度」は「0x28(16進数)」(=40(10進数))であることから、道路L2に設置されている車両感知器3が感知エリアDAで感知した車両の速度は「40km/h」である。「検知エリア(1) 対象車線(1) 四輪障害物(1) 基点から障害物までの道程距離」は「0x05DC(16進数)」(=1500(10進数))であることから、道路L2に設置されている車両感知器3が感知エリアDAで感知した車両の位置は「交差点IS中心から150m」である。
【0052】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、まず、道路L4に設置されている路上通信装置4に対し、道路L4用の感知器情報D4をプロトコル変換部を介して送信する(ステップS23)。演算部1101が感知器情報Deditをプロトコル変換部12に出力してから、路上通信装置4がこの感知器情報Deditを受信するまでに要する時間(以下、感知器情報送信所要時間DNTという)が上述の信号情報送信所要時間SNTと同じく80msecであり、上述の許容誤差時間(100msec)以内になっている場合には、路上通信装置4が車載装置5に送信する感知器情報D4に含まれる感知後の経過時間の誤差は上記許容誤差時間以内になっていることから、この感知器情報D4を受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0053】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、さらにステップS24以降に、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4にもそれぞれの道路用の感知器情報D3、感知器情報D2、感知器情報D1を送信する必要があるが、信号情報Seditと同様、予め定めた所定時間(例えば、100msec)ずつ遅延(経過)させながら、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ感知器情報D3、感知器情報D2、感知器情報D1を送信する。その際に、感知器情報D3、感知器情報D2、感知器情報D1に含まれる感知後の経過時間を、上記所定時間を加えることにより更新する。これにより、プロトコル変換部12の送信処理の負荷が分散されるとともに、路上通信装置4が車載装置5に送信する時点の感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間の誤差が上記許容誤差時間以内に保たれるため、その感知器情報Deditを受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0054】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、上記所定時間(100msec)待機し(ステップS24)、道路L3用の感知器情報D3に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間を加えることにより、感知器情報D3を更新する(ステップS25)。アプリケーション処理部11の演算部1101は、更新した感知器情報D3を道路L3に設置されている路上通信装置4に送信する(ステップS26)。
【0055】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、さらに上記所定時間(100msec)待機し(ステップS27)、道路L2用の感知器情報D2に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間の2倍を加えることにより、感知器情報D2を更新する。上記所定時間の「2倍」としているのは、演算部1101がステップS22で道路L2用の感知器情報D2を作成してから、ステップS24で待機した上記所定時間とステップS27で待機した上記所定時間とが経過しているからである。
【0056】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、更新した感知器情報D2を道路L2に設置されている路上通信装置4に送信する(ステップS29)。
アプリケーション処理部11の演算部1101は、さらに上記所定時間(100msec)待機し(ステップS30)、道路L1用の感知器情報D1に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間の3倍を加えることにより、感知後の経過時間を更新する。上記所定時間の「3倍」としているのは、演算部1101がステップS02で道路L1用の感知器情報D1を作成してから、ステップS24で待機した上記所定時間とステップS27で待機した上記所定時間とステップS30で待機した上記所定時間とが経過しているからである。
【0057】
アプリケーション処理部11の演算部1101がステップS22で作成した道路L1用の感知器情報D1の具体的なデータ例が図9で示したものだとすると、ステップS31で更新した道路L1用の感知器情報D1の具体的なデータ例は図10のようになる。「検知エリア(1) 情報取得経過時間」が0.3秒増加し、「0x07」になっていることがわかる。
【0058】
以上のように、本発明に係る情報中継装置1は、予め定めた所定時間ずつ遅延(経過)させながら、複数の道路Lに設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ感知器情報Deditを送信する。その際に、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間を、上記所定時間を加えることにより更新する。これにより、情報中継装置1の送信処理の負荷が分散されるとともに、路上通信装置4が車載装置5に送信する時点の感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間が上記許容誤差時間以内に保たれるため、その感知器情報Deditを受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0059】
上述の実施の形態においては、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTがともに80msecであり、上述の許容誤差時間(100msec)以内になっていたが、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTが上述の許容誤差時間を超えている場合、例えば、200msecである場合には、情報中継装置1のアプリケーション処理部11の演算部1101は、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTを考慮して、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間を更新する。
【0060】
具体的には、アプリケーション処理部11の演算部1101は、ステップS02で信号情報S4を作成する際に、受信した信号情報Sに含まれる現在の信号灯色の残秒数から、信号情報送信準備時間SPTを差し引くだけでなく、さらに、信号情報送信所要時間SNT(200msec)を差し引く。なお、信号情報S4に含まれる現在の信号灯色の残秒数よりも、信号情報送信準備時間SPTと信号情報送信所要時間SNTの合計が大きい場合には、信号情報S4に含まれる現在の信号灯色も更新する。
【0061】
また、演算部1101は、ステップS05で信号情報S3に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずるだけでなく、さらに、信号情報送信所要時間SNT(200msec)を差し引く。なお、ステップS05の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を信号情報送信所要時間SNTに加えても良い。また、現在の信号灯色の残秒数よりも、上記所定時間と信号情報送信所要時間SNTの合計が大きい場合には、信号情報S3に含まれる現在の信号灯色も更新する。
【0062】
また、演算部1101は、ステップS08で信号情報S2に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間の2倍を減ずるだけでなく、さらに、信号情報送信所要時間SNT(200msec)を差し引く。なお、ステップS08の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を信号情報送信所要時間SNTに加えても良い。また、現在の信号灯色の残秒数よりも、上記所定時間の2倍と信号情報送信所要時間SNTの合計が大きい場合には、信号情報S2に含まれる現在の信号灯色も更新する。
【0063】
また、演算部1101は、ステップS11で信号情報S1に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間の3倍を減ずるだけでなく、さらに、信号情報送信所要時間SNT(200msec)を差し引く。なお、ステップS11の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を信号情報送信所要時間SNTに加えても良い。また、現在の信号灯色の残秒数よりも、上記所定時間の3倍と信号情報送信所要時間SNTの合計が大きい場合には、信号情報S1に含まれる現在の信号灯色も更新する。
【0064】
同様に、アプリケーション処理部11の演算部1101は、ステップS22で感知器情報D4を作成する際に、受信した感知器情報Dに含まれる感知後の経過時間に、感知器情報送信準備時間DPTを加えるだけでなく、さらに、感知器情報送信所要時間DNTを加えることにより、感知後の経過時間を更新する。
【0065】
また、演算部1101は、ステップS25で感知器情報D3に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間を加えるだけでなく、さらに、感知器情報送信所要時間DNT(200msec)を加える。なお、ステップS25の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を感知器情報送信所要時間DNTに加えても良い。
【0066】
また、演算部1101は、ステップS28で感知器情報D2に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間の2倍を加えるだけでなく、さらに、感知器情報送信所要時間DNT(200msec)を加える。なお、ステップS28の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を感知器情報送信所要時間DNTに加えても良い。
【0067】
また、演算部1101は、ステップS31で感知器情報D1に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間の3倍を加えるだけでなく、さらに、感知器情報送信所要時間DNT(200msec)を加える。なお、ステップS31の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を感知器情報送信所要時間DNTに加えても良い。
【0068】
このように、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTがともに上述の許容誤差時間を超えている場合であっても、予めこれらの時間を考慮して、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間が更新されているため、路上送信装置4がこれらの情報を車載装置5に送信する時点では、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間の誤差はともに上記許容誤差時間以内に保たれる。従って、車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0069】
信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTは、それぞれアプリケーション処理部11の記憶部1102に記憶されており、信号情報Sedit毎(すなわち、送信先の路上通信装置4毎)、感知器情報Dedit毎(すなわち、送信先の路上通信装置4毎)に異なる値であっても良いし、同じ値であっても良い。なお、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTは、予め人手で計測しても良いし、情報中継装置1が定期的に何らかの情報を路上通信装置4に送信して、この送信から当該情報に対する応答情報を受信するまでに要した時間を計測し、その半分の時間を求めても良い。
【0070】
上述の実施の形態においては、情報中継装置1と交通信号制御機2は別々の筐体に収められている構成であったが、これに限定されるものではなく、情報中継装置1と交通信号制御機2が1つの筐体に収められている構成であっても良い。この場合、情報中継装置1と交通信号制御機2の間の情報のやり取りは、有線、無線、内部バス等のいずれを用いたものでも良い。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 情報中継装置
11 アプリケーション処理部
1101 演算部
1102 記憶部
1103 I/F部
12 プロトコル変換部
1201 演算部
1202 記憶部
1203 I/F部
2 交通信号制御機
21 信号灯器
3 車両感知器
3a 撮像装置
3b 撮像制御装置
4 路上通信装置
4a 通信部
4b 通信制御装置
5 車載装置
6 車両
7 中央装置
DA 感知エリア
IS 交差点
L、L1、L2、L3、L4 道路
P1、P2 停止線
TA 通信エリア
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御機や車両感知器などの交通設備から送られてくる情報を中継して、光ビーコンなどの通信装置に送信することができる情報中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通分野の中継装置として、交差点に設置された交通信号制御機から送られてくる信号灯色とその残秒数などの情報を含む信号情報や、道路上に設置された画像感知器などの車両感知器から送られてくる車両の感知有無、感知位置、感知後の経過時間などの情報を含む感知器情報を受信して、道路上に設置された光ビーコンに送信する情報中継装置が開発されている。
【0003】
情報中継装置は、交通信号制御機から送られてくる信号情報を受信する。そして、この信号情報を編集して交差点に流入する複数の道路それぞれに対応した複数の信号情報を作成し、これらの情報を上記複数の道路それぞれに設置された複数の光ビーコンに送信する。
【0004】
また、情報中継装置は、車両感知器から送られてくる感知器情報を受信する。そして、この感知器情報を編集して上記複数の道路それぞれに対応した複数の感知器情報を作成し、これらの情報を上記複数の道路それぞれに設置された複数の光ビーコンに送信する。
【0005】
光ビーコンは、情報中継装置から送られてきた信号情報や感知器情報を受信し、これらの情報を車載装置に送信する。車載装置は、信号情報に含まれる信号灯色の残秒数に基づいて信号灯色が青から黄に切り替わる旨の情報を運転者に提供する。また、車載装置は、この車載装置が搭載されている車両が走行している道路と交差する道路に設置された車両感知器から送られた感知器情報に含まれる車両の感知有無、感知位置、感知後の経過時間に基づいて、交差点に接近する車両があるため、運転に注意を促す旨の情報を運転者に提供する。
【0006】
また、交通分野以外の中継装置として、時刻情報を伝送する標準電波を受信し、自己の保持する時刻を修正するとともに、時刻情報を子機に向けて送信し、子機の保持時刻を修正する標準電波の中継装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−338273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
情報中継装置は、交差点に流入する複数の道路の各々に設置されている光ビーコンに対し、信号情報と感知器情報をほぼ同時に送信する処理を行う。このため、これらの情報のサイズが大きい場合や送信先の光ビーコンの数が多い場合、あるいは情報中継装置と光ビーコンの間の通信負荷が高い場合には、すべての光ビーコンに所定の許容誤差時間(例えば、100msec)以内に信号情報と感知器情報を受信させることができないおそれがあった。
【0009】
この場合、前記許容誤差時間以内に信号情報と感知器情報を受信できなかった光ビーコンがそのままこれらの情報を車載装置に送信すると、信号情報に含まれている信号灯色の残秒数や感知後の経過時間が正しい値から前記許容誤差時間以上ずれていることから、車載装置が適切な情報を運転者に提供できないおそれがあった。
【0010】
前記特許文献1においても、標準電波の中継装置は子機との間の通信負荷を考慮して時刻情報を送信していないことから、前記特許文献1にも上記の課題を解決する手段は何ら示されていない。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、信号情報や感知器情報のサイズが大きい場合や送信先の光ビーコンの数が多い場合、あるいは情報中継装置と光ビーコンの間の通信負荷が高い場合であっても、信号情報に含まれる残秒数や感知器情報に含まれる感知後の経過時間を適正に保ちつつ、これらの情報を光ビーコンを介して車載装置に送信することができる情報中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る情報中継装置は、路上に設置された交通設備から時間に関する情報を含む交通情報を受信する受信手段と、車載装置と通信可能な複数の通信装置のそれぞれに、前記交通情報を送信する送信手段とを備える情報中継装置であって、前記送信手段は、前記複数の通信装置のうちの一の通信装置に前記交通情報を送信してから予め定めた所定時間経過後に前記複数の通信装置のうちの他の通信装置に前記交通情報を送信するように構成されており、前記所定時間に基づいて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新する交通情報更新手段を備え、前記更新された交通情報を前記他の通信装置に送信するように構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0013】
交通設備は、例えば、交差点に設置された交通信号制御機が該当する。この場合、交通情報は、交通信号制御機から送信された信号灯色とその残秒数とを含む信号情報であり、時間に関する情報は信号灯色とその残秒数である(請求項4)。
また、交通設備は、例えば、路上に設置された車両感知器が該当する。この場合、交通情報は、車両感知器から送信された感知結果と感知後の経過時間とを含む感知器情報であり、時間に関する情報は感知後の経過時間である(請求項5)。
通信装置は、例えば、近赤外光を用いて車載装置とスポット的に通信可能な光ビーコンや、車両が交差点間を走行中、継続的に当該車両の車載装置と通信可能なITS無線機が該当する。
所定時間は、固定の時間でも良いし、可変の時間でも良い。
【0014】
第1発明に係る情報中継装置は、複数の通信装置のそれぞれに対し、予め定めた所定時間(例えば、100msec)ずつ遅延(経過)させながら、交通情報を送信する。その際に、この所定時間に基づいて時間に関する情報を更新し、時間に関する情報の誤差が許容誤差時間内に保たれるようにする。これにより、送信処理の負荷が分散されるとともに、時間に関する情報の適正が保たれるため、情報中継装置は、時間に関する情報の誤差が許容誤差時間以内に収まるようにしつつ、交通情報を通信装置を介して車載装置に送信することができる
【0015】
第1発明に係る情報中継装置は、前記交通情報を受信してから該交通情報を前記一の通信装置に送信するまでに要する送信準備時間を取得する取得手段を備え、前記交通情報更新手段は、さらに、前記送信準備時間を用いて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新するように構成されていても良い(請求項2)。
【0016】
交通情報を受信してから該交通情報を前記一の通信装置に送信するまでに要する送信準備時間をさらに用いて時間に関する情報を更新すれば、時間に関する情報の適正がより保たれるようになる。
【0017】
第1発明に係る情報中継装置は、前記通信装置に前記交通情報を送信してから該通信装置が該交通情報を受信するまでに要する送信所要時間を取得する第二取得手段とを備え、前記交通情報更新手段は、さらに、前記送信所要時間を用いて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新するように構成されていても良い(請求項3)。
【0018】
通信装置に交通情報を送信してからこの通信装置がこの交通情報を受信するまでに要する送信所要時間をさらに用いて時間に関する情報を更新すれば、時間に関する情報の適正がより保たれるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、交通情報のサイズが大きい場合や送信先の通信装置の数が多い場合、あるいは情報中継装置と通信装置の間の通信負荷が高い場合であっても、時間に関する情報を適正に保ちつつ、交通情報を通信装置を介して車載装置に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る情報中継装置を含む交通システムの概要を示す模式図である。
【図2】情報中継装置の構成を示すブロック図である。
【図3】交通情報編集・送信処理のフローチャートを示す図である。
【図4】交通情報編集・送信処理のフローチャートを示す図である。
【図5】交差点に流入する1つの道路用の信号情報のフォーマットの例を示す図である。
【図6】道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例を示す図である。
【図7】更新した道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例を示す図である。
【図8】交差点に流入する1つの道路用の感知器情報のフォーマットの例を示す図である。
【図9】道路L1用の感知器情報D1の具体的なデータ例を示す図である。
【図10】更新した道路L1用の感知器情報D1の具体的なデータ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る情報中継装置を含む交通システムの模式図である。交通システムは、情報中継装置1、交通信号制御機2、車両感知器3、路上通信装置4、車載装置5、中央装置7などを含む。中央装置7は、交通管制センター内に設置されており、複数の交差点ISのそれぞれに設置された交通信号制御機2と電話回線などの通信回線を介して接続されている。なお、中央装置7は、交通管制センター内に設置されず、道路上に設置されていても良い。交通信号制御機2は、複数の交差点ISのそれぞれに設置された情報中継装置1と電話回線などの通信回線を介して接続されている。車両感知器3は、交差点ISに流入する複数の道路L1、道路L2、道路L3、道路L4(これらを総称して道路Lという)にそれぞれ設置されており、上記の情報中継装置1と電話回線などの通信回線を介して接続されている。路上通信装置4は、交差点ISに流入する複数の道路L1、道路L2、道路L3、道路L4にそれぞれ設置されており、上記の情報中継装置1と電話回線などの通信回線を介して接続されている。なお、図1では、車両感知器3と路上通信装置4は道路L1と道路L2にのみ記載されているが、実際には車両感知器3と路上通信装置4は道路L3と道路L4にも設置されている。
【0022】
中央装置7は、所定の周期でスプリット等の情報を含む信号制御指令を複数の交通信号制御機2に送信する。
【0023】
交通信号制御機2は、中央装置7から受診した信号制御指令に基づいて信号灯器21の各信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。また、交通信号制御機2は、信号灯色及びその残秒数を含む信号情報Sを作成して、当該交通信号制御機2に接続されている情報中継装置1に送信する。
【0024】
車両感知器3は、例えば画像式車両感知器であり、道路L上の感知エリアDAを撮像する撮像装置3aと、撮像装置3aを制御する撮像制御装置3bとを含んでいる。車両感知器3は、所定周期毎に上記の感知エリアDAを通過する車両を感知するとともに、その車両の位置、速度等を算出し、車両の感知結果(感知の有無)、車両を感知した場合はその車両の位置と速度、感知後の経過時間(感知結果が更新されてからの経過時間)を含む感知器情報Dを作成して、当該車両感知器3に接続されている情報中継装置1に送信する。なお、車両感知器3は、超音波式車両感知器や遠赤外式車両感知器などであっても良い。
【0025】
情報中継装置1は、交通信号制御機2から信号灯色とその残秒数を含む信号情報Sを受信すると、後述する交通情報編集・送信処理によりこの情報を編集して道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれに対応した複数の信号情報S1、信号情報S2、信号情報S3、信号情報S4(これらを総称して信号情報Seditという)を作成し、当該情報中継装置1に接続されている道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれに設置されている路上通信装置4に、対応する信号情報Seditを送信する。
【0026】
また、情報中継装置1は、車両感知器3から車両の感知結果、感知車両の位置と速度、感知後の経過時間を含む感知器情報Dを受信すると、後述する交通情報編集・送信処理によりこの情報を編集して道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれに対応した複数の感知器情報D1、感知器情報D2、感知器情報D3、感知器情報D4(これらを総称して感知器情報Deditという)を作成し、当該情報中継装置1に接続されている道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれに設置されている路上通信装置4に、対応する感知器情報Deditを送信する。
【0027】
路上通信装置4は、例えば光ビーコンであり、車両6に搭載された車載装置5との間で各種情報の無線通信を行う通信部4aと、通信部4aを制御する通信制御装置4bとを含んでいる。通信制御装置4bにはROM等の記憶部が備えられており、路上通信装置4から当該路上通信装置4が設置されている道路Lの流入先の交差点IS(交差点IS手前の停止線)までの距離の情報が予め記憶されている。例えば、道路L1に設置された路上通信装置4の記憶部には、当該路上通信装置4から交差点IS手前の停止線P1までの距離の情報が予め記憶されている。なお、これらの距離の情報は、予め記憶されている構成に限定されず、中央装置7等から取得して記憶する構成であっても良い。路上通信装置4は、情報中継装置1から信号情報Sedit、感知器情報Deditを受信すると、これらの情報と距離情報を当該路上通信装置4の通信エリアTA(斜線部分)を通過する車両6に搭載された車載装置5に送信する。
【0028】
車載装置5は、路上通信装置4との間で各種情報を無線通信する。車載装置5は、車両6が路上通信装置4の通信エリアTAを通過する際に、路上通信装置4との間で無線通信を行い、信号情報Sedit、感知器情報Dedit及び距離情報を取得する。
【0029】
車載装置5は、信号情報Seditを取得すると、信号情報Seditに含まれる信号灯色とその残秒数に基づいて、信号灯色が何秒後に青から黄に切り替わるかを運転者に報知する。また、車載装置5は、さらに距離情報を取得して、信号情報Seditに含まれる信号灯色とその残秒数、距離情報に含まれる停止線までの距離、車両6から取得した当該車両6の速度に基づいて、車両6が交差点ISを青で安全に通過できるか否かを判断し、通過できると判断した場合には、現在の速度を保持して走行するよう運転者に報知し、通過できないと判断した場合には、交差点IS手前の停止線で安全に停止できるように減速するよう運転者に報知する。
【0030】
車載装置5は、感知器情報Deditと距離情報を取得すると、感知器情報Deditに含まれる交差側の道路L2、道路L4における車両の感知結果(感知の有無)、感知車両の位置と速度、感知後の経過時間に基づいて、交差する道路L2、道路L4から何秒後に他の車両が交差点ISに到達するかを計算するとともに、距離情報に含まれる停止線までの距離、車両6から取得した当該車両6の速度に基づいて、車両6が何秒後に交差点ISに到達するかを計算し、他の車両と車両6が交差点ISにほぼ同時に到達すると判断した場合には、運転者に交差側の道路L2や道路L4から他の車両が交差点ISに接近しているので、注意して運転するように促す旨の情報を報知し、出会い頭事故を防止する。
【0031】
車載装置5が運転者に対して以上のような安全運転支援を適正に行うためには、信号情報Seditに含まれる信号灯色とその残秒数の誤差、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間の誤差が、所定の許容誤差時間(例えば100msec)以内になっていることが要求される。
【0032】
次に情報中継装置1について詳述する。図2は情報中継装置の構成を示すブロック図である。情報中継装置1は、アプリケーション処理部11、プロトコル変換部12などを備える。アプリケーション処理部11は、演算部1101、記憶部1102、I/F部1103などを備える。プロトコル変換部12は、演算部1201、記憶部1202、I/F部1203などを備える。
【0033】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されており、I/F部1103を介して、交通信号制御機2から信号情報Sを、車両感知器3から感知器情報Dを受信し、後述する交通情報編集・送信処理を行って、編集した信号情報Sedit、感知器情報Deditをプロトコル変換部に出力する。アプリケーション処理部11の記憶部1102は、メモリなどの記憶装置から構成されており、各種の情報を記録する。
【0034】
プロトコル変換部12の演算部1201は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されており、アプリケーション処理部11が出力した信号情報Sedit、感知器情報Deditを取得して、送り先の路上通信装置4に対して、信号情報Sedit、感知器情報Deditを、I/F部1203部を介して送信する。プロトコル変換部12の記憶部1202は、メモリなどの記憶装置から構成されており、各種の情報を記録する。
【0035】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、信号情報S又は感知器情報Dを受信すると、以下の交通情報編集・送信処理を行う。図3及び図4は、交通情報編集・送信処理のフローチャートを示す図である。
【0036】
演算部1101は、受信した情報が信号情報Sか感知器情報Dかを判断し(ステップS01)、信号情報Sであれば(ステップS01においてYES)、ステップS02以降の処理に進む。演算部1101は、受信した信号情報Sに基づいて、道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれを基準とした信号情報Seditをその道路Lごとに作成する(ステップS02)。すなわち、演算部1101は、道路L1用の信号情報S1、道路L2用の信号情報S2、道路L3用の信号情報S3、道路L4用の信号情報S4を作成する。
【0037】
その際に、演算部1101は、受信した信号情報Sに含まれている信号灯色とその残秒数の情報を更新する。具体的には、受信した信号情報Sに含まれている現在の信号灯色の残秒数から、演算部1101が信号情報Sを受信してから演算部1101がステップS03で作成した信号情報SeditをステップS04で送信することができる状態になるまでに要する時間(以下、信号情報送信準備時間SPTという)を差し引くことにより、残秒数を更新する。これにより、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差が所定の許容誤差時間以内に保たれる。なお、現在の信号灯色の残秒数よりも信号情報送信準備時間SPTが大きい場合には、信号情報Seditに含まれる信号灯色も更新する(2番目の信号灯色を現在の信号灯色に繰り上げ、3番目の信号灯色を2番目の信号灯色に繰り上げ、同様に、順次信号灯色を繰り上げる)。なお、上記の信号情報送信準備時間SPTは、アプリケーション処理部11の記憶部1102に記憶されており、予め人手で計測しても良いし、情報処理装置1が定期的に自身で計測しても良い。
【0038】
図5は交差点に流入する1つの道路用の信号情報のフォーマットの例を示す図である。図において、それぞれのレコードのデータ長は1バイトとなっている。「灯器情報(1)」は、本実施形態においては、交差点ISに流入する1つの道路Lにおける信号灯器21の情報である。「灯色情報(1)」は現在の信号灯色の情報を示しており、「灯色情報(2)」は2番目の信号灯色の情報を示している。「丸信号灯色表示」は当該灯色情報における丸灯の灯色を示しており、「0:不明」「1:青」「2:黄」「3:赤」「4:黄点滅」「5:赤点滅」「6:滅灯」の7種類がある。「青矢信号表示方向」は青矢灯器が示す通行許可方向を表しており、青矢灯器が示す通行許可方向は「bit7:左斜め後ろ」「bit6:左」「bit5:左斜め前」「bit4:直進」「bit3:右斜め前」「bit2:右」「bit1:右斜め後ろ」「bit0:Uターン」の8方向がある。「最小残秒数」は当該灯色の予定継続の最小秒数(0.1秒単位:0.0〜240.0秒)を示しており、残秒数が確定している場合は確定秒数が格納され、残秒数が可変の場合は最小残秒数が格納される。「最大残秒数」は当該灯色の予定継続の最大秒数(0.1秒単位:0.0〜240.0秒)を示しており、残秒数が確定している場合は確定秒数が格納され、残秒数が可変の場合は最大残秒数が格納される。本実施形態においては、単に「残秒数」というと、この「最小残秒数」と「最大残秒数」の両方を含むものとする。なお、本フォーマットの詳細については、社団法人新交通管理システム協会(以下、UTMS協会)から発行されている規格書に記載されている。
【0039】
図6は道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例を示す図である。「方路0」は道路L1に対応し、「方路0、1灯器番号」が「0x12(16進数)」であることから、道路L1の灯器番号は「1」である。「灯器情報(1) 灯色情報(1) 丸信号灯色表示」が「0x01」であることから、道路L1の現在の丸灯の灯色は「青」である。「灯器情報(1) 灯色情報(1) 最小残秒数」と「灯器情報(1) 灯色情報(1) 最大残秒数」がともに「0x0118(16進数)」(=280(10進数))であることから、上記「青」の残秒数は28.0秒である。なお、交通信号制御機2から送られてきた信号情報Sでは、この「青」の残秒数は28.2秒であったが、上述の信号情報送信準備時間SPTが200msec(=0.2秒)であることから、アプリケーション処理部11の演算部1101は、28.2秒から0.2秒を減じて28.0秒に更新している。また、「灯器情報(1) 灯色情報(2) 丸信号灯色表示」が「0x02」であることから、道路L1の2番目の丸灯の灯色は「黄」である。「灯器情報(1) 灯色情報(2) 最小残秒数」と「灯器情報(1) 灯色情報(2) 最大残秒数」がともに「0x0064(16進数)」(=40(10進数))であることから、上記「黄」の残秒数は4.0秒である。
【0040】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、まず、道路L4に設置されている路上通信装置4に対し、道路L4用の信号情報S4をプロトコル変換部12を介して送信する(ステップS03)。演算部1101が信号情報Seditをプロトコル変換部12に出力してから、路上通信装置4がこの信号情報Seditを受信するまでに要する時間(以下、信号情報送信所要時間SNTという。例えば、80msecとする)が上述の許容誤差時間(100msec)以内になっている場合には、路上通信装置4が車載装置5に送信する信号情報S4に含まれる信号灯色とその残秒数の誤差は上記許容誤差時間以内になっていることから、この信号情報S4を受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0041】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、さらにステップS04以降に、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4にもそれぞれの道路用の信号情報S3、信号情報S2、信号情報S1を送信する必要があるが、そのまま立て続けにこれらの路上通信装置4に送信すると、これらの路上通信装置4の中には、その受信した信号情報Seditに含まれる信号灯色とその残秒数の誤差が上記の許容誤差時間を上回るものが出てくる。信号情報送信所要時間SNTは、アプリケーション処理部11の演算部1101が信号情報Seditをプロトコル変換部12に出力してからプロトコル変換部12が路上通信装置4にこの信号情報Seditを送信するまでに要する時間と、プロトコル変換部12が信号情報Seditを送信してからこの信号情報Seditを路上通信装置4が受信するまでに要する時間とから構成されており、例えば、前者の値が20msecであり、後者の値が60msecであるとすると、プロトコル変換部12が道路L4に設置されている路上通信装置4に信号情報S4を送信した時点で既に20msecが経過しており、さらに道路L3に設置されている路上通信装置4に信号情報S3を送信した時点で40msecが経過し、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4にそれぞれ信号情報S2、信号情報S1を送信した時点でそれぞれ60msec、80msecが経過していることになる。そして、道路L4、道路L3、道路L2、道路L1に設置された路上通信装置4がそれぞれ信号情報S4、信号情報S3、信号情報S2、信号情報S1を受信する時点で、それぞれ80msec、100msec、120msec、140msecが経過していることになる。従って、道路L1に設置された路上通信装置4が送信する信号情報S1、道路L2に設置された路上通信装置4が送信する信号情報S2、道路L3に設置された路上通信装置4が送信する信号情報S3のそれぞれに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差は上記の許容誤差時間を上回ることになる。そうすると、これらの路上通信装置4から信号情報S1、信号情報S2又は信号情報S3を受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができない。
【0042】
そこで、アプリケーション処理部11の演算部1101は、予め定めた所定時間(例えば、100msec)ずつ遅延(経過)させながら、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ信号情報S3、信号情報S2、信号情報S1を送信する。その際に、信号情情報S3、信号情報S2、信号情報S1に含まれる現在の信号灯色とその残秒数を、上記所定時間を差し引くことにより更新する。これにより、プロトコル変換部12の送信処理の負荷が分散されるとともに、路上通信装置4が車載装置5に送信する時点の信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差が上記許容誤差時間以内に保たれるため、その信号情報Seditを受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0043】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、上記所定時間(100msec)待機し(ステップS04)、道路L3用の信号情報S3に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずることにより、信号情報S3を更新する(ステップS05)。現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずると0秒以下になる場合には、信号情報S3に含まれる信号灯色も更新する。例えば、上記所定時間が500msec(=0.5秒)であり、現在の信号灯色が「青」で残秒数が0.1秒、2番目の信号灯色が「黄」で残秒数が4.0秒、3番目の信号灯色が「赤」で残秒数が3.0秒の場合には、現在の信号灯色の残秒数(0.1秒)から上記所定時間(0.5秒)を減ずると−0.4秒となることから、2番目の信号灯色である「赤」を現在の信号灯色とし、その残秒数を4.0秒に算出した−0.4秒を加えて3.6秒に更新する。
【0044】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、更新した信号情報S3を道路L3に設置されている路上通信装置4に送信する(ステップS06)。
演算部1101は、さらに上記所定時間(100msec)待機し(ステップS07)、道路L2用の信号情報S2に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間の2倍を減ずることにより、信号情報S2を更新する。上記所定時間の「2倍」としているのは、演算部1101がステップS02で道路L2用の信号情報S2を作成してから、ステップS04で待機した上記所定時間とステップS07で待機した上記所定時間とが経過しているからである。なお、現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずると0秒以下になる場合には、同様に、信号情報S2に含まれる信号灯色も更新する。
【0045】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、更新した信号情報S2を道路L2に設置されている路上通信装置4に送信する(ステップS09)。
演算部1101は、さらに上記所定時間(100msec)待機し(ステップS10)、道路L1用の信号情報S1に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間の3倍を減ずることにより、信号情報S1を更新する。上記所定時間の「3倍」としているのは、演算部1101がステップS02で道路L1用の信号情報S1を作成してから、ステップS04で待機した上記所定時間とステップS07で待機した上記所定時間とステップS10で待機した上記所定時間とが経過しているからである。なお、現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずると0以下になる場合には、同様に、信号情報S1に含まれる信号灯色も更新する。
【0046】
アプリケーション処理部11の演算部1101がステップS02で作成した道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例が図6で示したものだとすると、ステップS11で更新した道路L1用の信号情報S1の具体的なデータ例は図7のようになる。「灯器情報(1) 灯色情報(1) 最小残秒数」と「灯器情報(1) 灯色情報(1) 最大残秒数」がともに0.3秒減少し、「0x115(16進数)」(=27.7秒)になっていることがわかる。
【0047】
以上のように、本発明に係る情報中継装置1は、予め定めた所定時間ずつ遅延(経過)させながら、複数の道路Lに設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ信号情報Seditを送信する。その際に、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数を、上記所定時間を差し引くことにより更新する。これにより、情報中継装置1の送信処理の負荷が分散されるとともに、路上通信装置4が車載装置5に送信する時点の信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差が上記許容誤差時間以内に保たれるため、その信号情報Seditを受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0048】
一方、アプリケーション処理部11の演算部1101は、受信した情報が感知器情報Dであれば(ステップS02においてNO)、ステップS22以降の処理に進む。演算部1101は、受信した感知器情報Dに基づいて、道路L1、道路L2、道路L3、道路L4のそれぞれを基準とした感知器情報Deditをその道路Lごとに作成する(ステップS22)。すなわち、演算部1101は、道路L1用の感知器情報D1、道路L2用の感知器情報D2、道路L3用の感知器情報D3、道路L4用の感知器情報D4を作成する。
【0049】
その際に、演算部1101は、受信した感知器情報Dに含まれる感知後の経過時間の情報を更新する。具体的には、受信した感知器情報Dに含まれている感知後の経過時間に、演算部1101が感知器情報Dを受信してから演算部1101がステップS23で作成した感知器情報DeditをステップS24で送信することができる状態になるまでに要する時間(以下、感知器情報送信準備時間DPTという)を加えることにより、感知後の経過時間を更新する。これにより、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間の誤差が所定の許容誤差時間以内に保たれる。なお、上記の感知器情報送信準備時間DPTは、アプリケーション処理部11の記憶部1102に記憶されており、予め人手で計測しても良いし、情報処理装置1が定期的に自身で計測しても良い。
【0050】
図8は交差点に流入する1つの道路用の感知器情報のフォーマットの例を示す図である。図において、それぞれのレコードのデータ長は1バイトとなっている。「検知エリア(1)」は、本実施形態においては、交差点ISに流入する1つの道路Lと交差点ISで交差する道路L(交差点ISに流入する1つの道路Lが道路L1であれば、この道路と交差点ISで交差する道路は、例えば、道路L2である)における感知エリアDAである。「情報取得経過時間」は検知情報が更新されてからの経過時間(0.1秒単位:0.0〜25.4秒)を示しており、本実施形態においては、感知エリアDAにおける感知後の経過時間(感知エリアDAにおける車両の感知結果が更新されてからの経過時間)に該当する。「四輪障害物有無」は、検知エリアにおける四輪の障害物有無を示し、「0:無」「1:有」となっており、本実施形態においては、感知エリアDAで感知した車両の有無に該当する。「対象車線(1)」は、本実施形態においては、道路Lのいずれも1車線であることから、道路Lそのものに該当する。「四輪障害物数(K)」は、出力する軽自動車以上の四輪障害物数(0〜5)を示しており、本実施形態においては、感知エリアDAで感知した車両の台数に該当する。「四輪障害物(1)」は、上記「四輪障害物数(K)」の車両のうちの1台目を示している。「速度」は、障害物の移動速度(km/h単位:0〜254km/h)を示しており、本実施形態においては、感知エリアDAで感知した車両の速度に該当する。「基点から障害物までの道程距離」は、基点(交差点中心又は光ビーコンヘッド位置)から障害物の指定された位置種別までの道程距離(0.1m単位:−3276.8〜3276.6m)を示しており、本実施形態においては、感知エリアDAで感知した車両の交差点I中心までの距離、すなわち、感知エリアDAで感知した車両の位置に該当する。なお、本フォーマットの詳細については、UTMS協会から発行されている規格書に記載されている。
【0051】
図9は道路L1用の感知記情報D1の具体的なデータ例を示す図である。「検知エリア(1)」は道路L2に対応し、「検知エリア番号」は「1」である。「検知エリア(1) 情報取得経過時間」が「0x04」であることから、感知後の経過時間は0.4秒である。車両感知器3から送られてきた感知器情報Dでは、感知後の経過時間は0.1秒であったが、上記の感知器情報送信準備時間DPTが300msec(=0.3秒)であることから、アプリケーション処理部11の演算部1101は、0.1秒に0.3秒を加えて0.4秒に更新している。「検知エリア(1) 四輪障害物有無 等」が「0x01」であることから、道路L2に設置されている車両感知器3が感知エリアDAで感知した車両の有無は「有」である。「検知エリア(1) 対象車線数(J)」は「0x01」であるが、これは道路L2が1車線であることに対応している。「検知エリア(1) 対象車線(1) 四輪障害物数(K) 等」が「0x01」であることから、道路L2に設置された車両感知器3が感知エリアDAで感知した車両の台数は「1」である。「検知エリア(1) 対象車線(1) 四輪障害物(1) 速度」は「0x28(16進数)」(=40(10進数))であることから、道路L2に設置されている車両感知器3が感知エリアDAで感知した車両の速度は「40km/h」である。「検知エリア(1) 対象車線(1) 四輪障害物(1) 基点から障害物までの道程距離」は「0x05DC(16進数)」(=1500(10進数))であることから、道路L2に設置されている車両感知器3が感知エリアDAで感知した車両の位置は「交差点IS中心から150m」である。
【0052】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、まず、道路L4に設置されている路上通信装置4に対し、道路L4用の感知器情報D4をプロトコル変換部を介して送信する(ステップS23)。演算部1101が感知器情報Deditをプロトコル変換部12に出力してから、路上通信装置4がこの感知器情報Deditを受信するまでに要する時間(以下、感知器情報送信所要時間DNTという)が上述の信号情報送信所要時間SNTと同じく80msecであり、上述の許容誤差時間(100msec)以内になっている場合には、路上通信装置4が車載装置5に送信する感知器情報D4に含まれる感知後の経過時間の誤差は上記許容誤差時間以内になっていることから、この感知器情報D4を受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0053】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、さらにステップS24以降に、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4にもそれぞれの道路用の感知器情報D3、感知器情報D2、感知器情報D1を送信する必要があるが、信号情報Seditと同様、予め定めた所定時間(例えば、100msec)ずつ遅延(経過)させながら、道路L3、道路L2、道路L1に設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ感知器情報D3、感知器情報D2、感知器情報D1を送信する。その際に、感知器情報D3、感知器情報D2、感知器情報D1に含まれる感知後の経過時間を、上記所定時間を加えることにより更新する。これにより、プロトコル変換部12の送信処理の負荷が分散されるとともに、路上通信装置4が車載装置5に送信する時点の感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間の誤差が上記許容誤差時間以内に保たれるため、その感知器情報Deditを受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0054】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、上記所定時間(100msec)待機し(ステップS24)、道路L3用の感知器情報D3に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間を加えることにより、感知器情報D3を更新する(ステップS25)。アプリケーション処理部11の演算部1101は、更新した感知器情報D3を道路L3に設置されている路上通信装置4に送信する(ステップS26)。
【0055】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、さらに上記所定時間(100msec)待機し(ステップS27)、道路L2用の感知器情報D2に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間の2倍を加えることにより、感知器情報D2を更新する。上記所定時間の「2倍」としているのは、演算部1101がステップS22で道路L2用の感知器情報D2を作成してから、ステップS24で待機した上記所定時間とステップS27で待機した上記所定時間とが経過しているからである。
【0056】
アプリケーション処理部11の演算部1101は、更新した感知器情報D2を道路L2に設置されている路上通信装置4に送信する(ステップS29)。
アプリケーション処理部11の演算部1101は、さらに上記所定時間(100msec)待機し(ステップS30)、道路L1用の感知器情報D1に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間の3倍を加えることにより、感知後の経過時間を更新する。上記所定時間の「3倍」としているのは、演算部1101がステップS02で道路L1用の感知器情報D1を作成してから、ステップS24で待機した上記所定時間とステップS27で待機した上記所定時間とステップS30で待機した上記所定時間とが経過しているからである。
【0057】
アプリケーション処理部11の演算部1101がステップS22で作成した道路L1用の感知器情報D1の具体的なデータ例が図9で示したものだとすると、ステップS31で更新した道路L1用の感知器情報D1の具体的なデータ例は図10のようになる。「検知エリア(1) 情報取得経過時間」が0.3秒増加し、「0x07」になっていることがわかる。
【0058】
以上のように、本発明に係る情報中継装置1は、予め定めた所定時間ずつ遅延(経過)させながら、複数の道路Lに設置されている路上通信装置4に対し、それぞれ感知器情報Deditを送信する。その際に、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間を、上記所定時間を加えることにより更新する。これにより、情報中継装置1の送信処理の負荷が分散されるとともに、路上通信装置4が車載装置5に送信する時点の感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間が上記許容誤差時間以内に保たれるため、その感知器情報Deditを受信した車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0059】
上述の実施の形態においては、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTがともに80msecであり、上述の許容誤差時間(100msec)以内になっていたが、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTが上述の許容誤差時間を超えている場合、例えば、200msecである場合には、情報中継装置1のアプリケーション処理部11の演算部1101は、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTを考慮して、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間を更新する。
【0060】
具体的には、アプリケーション処理部11の演算部1101は、ステップS02で信号情報S4を作成する際に、受信した信号情報Sに含まれる現在の信号灯色の残秒数から、信号情報送信準備時間SPTを差し引くだけでなく、さらに、信号情報送信所要時間SNT(200msec)を差し引く。なお、信号情報S4に含まれる現在の信号灯色の残秒数よりも、信号情報送信準備時間SPTと信号情報送信所要時間SNTの合計が大きい場合には、信号情報S4に含まれる現在の信号灯色も更新する。
【0061】
また、演算部1101は、ステップS05で信号情報S3に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間を減ずるだけでなく、さらに、信号情報送信所要時間SNT(200msec)を差し引く。なお、ステップS05の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を信号情報送信所要時間SNTに加えても良い。また、現在の信号灯色の残秒数よりも、上記所定時間と信号情報送信所要時間SNTの合計が大きい場合には、信号情報S3に含まれる現在の信号灯色も更新する。
【0062】
また、演算部1101は、ステップS08で信号情報S2に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間の2倍を減ずるだけでなく、さらに、信号情報送信所要時間SNT(200msec)を差し引く。なお、ステップS08の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を信号情報送信所要時間SNTに加えても良い。また、現在の信号灯色の残秒数よりも、上記所定時間の2倍と信号情報送信所要時間SNTの合計が大きい場合には、信号情報S2に含まれる現在の信号灯色も更新する。
【0063】
また、演算部1101は、ステップS11で信号情報S1に含まれる現在の信号灯色の残秒数から上記所定時間の3倍を減ずるだけでなく、さらに、信号情報送信所要時間SNT(200msec)を差し引く。なお、ステップS11の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を信号情報送信所要時間SNTに加えても良い。また、現在の信号灯色の残秒数よりも、上記所定時間の3倍と信号情報送信所要時間SNTの合計が大きい場合には、信号情報S1に含まれる現在の信号灯色も更新する。
【0064】
同様に、アプリケーション処理部11の演算部1101は、ステップS22で感知器情報D4を作成する際に、受信した感知器情報Dに含まれる感知後の経過時間に、感知器情報送信準備時間DPTを加えるだけでなく、さらに、感知器情報送信所要時間DNTを加えることにより、感知後の経過時間を更新する。
【0065】
また、演算部1101は、ステップS25で感知器情報D3に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間を加えるだけでなく、さらに、感知器情報送信所要時間DNT(200msec)を加える。なお、ステップS25の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を感知器情報送信所要時間DNTに加えても良い。
【0066】
また、演算部1101は、ステップS28で感知器情報D2に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間の2倍を加えるだけでなく、さらに、感知器情報送信所要時間DNT(200msec)を加える。なお、ステップS28の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を感知器情報送信所要時間DNTに加えても良い。
【0067】
また、演算部1101は、ステップS31で感知器情報D1に含まれる感知後の経過時間に上記所定時間の3倍を加えるだけでなく、さらに、感知器情報送信所要時間DNT(200msec)を加える。なお、ステップS31の処理に要する時間が大きい場合には(例えば、100msec)、この時間を感知器情報送信所要時間DNTに加えても良い。
【0068】
このように、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTがともに上述の許容誤差時間を超えている場合であっても、予めこれらの時間を考慮して、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間が更新されているため、路上送信装置4がこれらの情報を車載装置5に送信する時点では、信号情報Seditに含まれる現在の信号灯色とその残秒数の誤差、感知器情報Deditに含まれる感知後の経過時間の誤差はともに上記許容誤差時間以内に保たれる。従って、車載装置5は上述の安全運転支援を適正に行うことができる。
【0069】
信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTは、それぞれアプリケーション処理部11の記憶部1102に記憶されており、信号情報Sedit毎(すなわち、送信先の路上通信装置4毎)、感知器情報Dedit毎(すなわち、送信先の路上通信装置4毎)に異なる値であっても良いし、同じ値であっても良い。なお、信号情報送信所要時間SNT、感知器情報送信所要時間DNTは、予め人手で計測しても良いし、情報中継装置1が定期的に何らかの情報を路上通信装置4に送信して、この送信から当該情報に対する応答情報を受信するまでに要した時間を計測し、その半分の時間を求めても良い。
【0070】
上述の実施の形態においては、情報中継装置1と交通信号制御機2は別々の筐体に収められている構成であったが、これに限定されるものではなく、情報中継装置1と交通信号制御機2が1つの筐体に収められている構成であっても良い。この場合、情報中継装置1と交通信号制御機2の間の情報のやり取りは、有線、無線、内部バス等のいずれを用いたものでも良い。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 情報中継装置
11 アプリケーション処理部
1101 演算部
1102 記憶部
1103 I/F部
12 プロトコル変換部
1201 演算部
1202 記憶部
1203 I/F部
2 交通信号制御機
21 信号灯器
3 車両感知器
3a 撮像装置
3b 撮像制御装置
4 路上通信装置
4a 通信部
4b 通信制御装置
5 車載装置
6 車両
7 中央装置
DA 感知エリア
IS 交差点
L、L1、L2、L3、L4 道路
P1、P2 停止線
TA 通信エリア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上に設置された交通設備から時間に関する情報を含む交通情報を受信する受信手段と、
車載装置と通信可能な複数の通信装置のそれぞれに、前記交通情報を送信する送信手段と
を備える情報中継装置であって、
前記送信手段は、前記複数の通信装置のうちの一の通信装置に前記交通情報を送信してから予め定めた所定時間経過後に前記複数の通信装置のうちの他の通信装置に前記交通情報を送信するように構成されており、
前記所定時間に基づいて前記時間に関する情報を更新することにより前記交通情報を更新する交通情報更新手段を備え、
前記更新された交通情報を前記他の通信装置に送信するように構成されている
ことを特徴とする情報中継装置。
【請求項2】
前記交通情報を受信してから該交通情報を前記一の通信装置に送信するまでに要する送信準備時間を取得する取得手段を備え、
前記交通情報更新手段は、さらに、前記送信準備時間を用いて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の情報中継装置。
【請求項3】
前記通信装置に前記交通情報を送信してから該通信装置が該交通情報を受信するまでに要する送信所要時間を取得する第二取得手段を備え、
前記交通情報更新手段は、さらに、前記送信所要時間を用いて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新するように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報中継装置。
【請求項4】
前記交通情報は、交差点に設置された交通信号制御機から送信された信号灯色とその残秒数とを含む信号情報であり、
前記時間に関する情報は、前記信号灯色とその残秒数である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の情報中継装置。
【請求項5】
前記交通情報は、路上に設置された車両感知器から送信された車両の感知結果と感知後の経過時間とを含む感知器情報であり、
前記時間に関する情報は、前記感知後の経過時間である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の情報中継装置。
【請求項1】
路上に設置された交通設備から時間に関する情報を含む交通情報を受信する受信手段と、
車載装置と通信可能な複数の通信装置のそれぞれに、前記交通情報を送信する送信手段と
を備える情報中継装置であって、
前記送信手段は、前記複数の通信装置のうちの一の通信装置に前記交通情報を送信してから予め定めた所定時間経過後に前記複数の通信装置のうちの他の通信装置に前記交通情報を送信するように構成されており、
前記所定時間に基づいて前記時間に関する情報を更新することにより前記交通情報を更新する交通情報更新手段を備え、
前記更新された交通情報を前記他の通信装置に送信するように構成されている
ことを特徴とする情報中継装置。
【請求項2】
前記交通情報を受信してから該交通情報を前記一の通信装置に送信するまでに要する送信準備時間を取得する取得手段を備え、
前記交通情報更新手段は、さらに、前記送信準備時間を用いて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の情報中継装置。
【請求項3】
前記通信装置に前記交通情報を送信してから該通信装置が該交通情報を受信するまでに要する送信所要時間を取得する第二取得手段を備え、
前記交通情報更新手段は、さらに、前記送信所要時間を用いて前記時間に関する情報を更新することにより、前記交通情報を更新するように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報中継装置。
【請求項4】
前記交通情報は、交差点に設置された交通信号制御機から送信された信号灯色とその残秒数とを含む信号情報であり、
前記時間に関する情報は、前記信号灯色とその残秒数である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の情報中継装置。
【請求項5】
前記交通情報は、路上に設置された車両感知器から送信された車両の感知結果と感知後の経過時間とを含む感知器情報であり、
前記時間に関する情報は、前記感知後の経過時間である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の情報中継装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−34158(P2011−34158A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177249(P2009−177249)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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