説明

情報伝送装置および情報伝送方法

【課題】検出した位置情報や並び順に基づいて装置がIPアドレスなどの情報を判断して自動設定することが可能である情報伝送方法および装置を提供すること。
【解決手段】新たな位置情報や並び順に関する情報が必要となった時に、各データ処理装置は位置確認データを支線伝送路へ送信し、位置確認データには幹線伝送路あるいは支線伝送路への伝送方向を指定する情報が含まれ、中継装置は位置確認データを受信したら予め決めておいた方向に中継し、各データ処理装置は中継装置から受信した位置確認データの数やデータ内容などに基づいて、自装置の位置情報や並び順に関する情報などを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に搭載する情報伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両においては、複数の編成が併結されて一つの編成として走行したり、一つの編成が複数の編成に分割されて走行するなど、編成内の車両の数や並び順が動的に変化することがあり得る。
【0003】
一方、鉄道車両に搭載する情報伝送システムにおいては、情報伝送システムを構成する伝送装置がデータを送受信処理あるいは中継処理するために必要なパラメータの一部は、編成内の車両の数や並び順に対応して設定される場合がある。そのようなパラメータの例としてIP(Internet Protocol)アドレスが挙げられる。IPアドレスのビット列に先頭から何両目か、あるいは号車番号に関する情報を含ませることにより、データの内容を解析する必要なく送信元のIPアドレスを参照するだけで、前記送信元の編成内での位置関係が明確となり、データの送受信処理および中継処理に関する処理負荷が低減される。
【0004】
しかし上述のように、編成内の車両の数や並び順が動的に変化すると、個々の伝送装置の編成内での並び順も変化するため、割り付けるIPアドレスもそれに応じて変更されなくてはならない。
【0005】
編成内の車両の数や並び順の変化に対応してIPアドレスを割り付け直す方法としては、例えば、特許文献1に記載の鉄道車両用ネットワークシステムが知られている。
【0006】
この方式は、伝送プロトコルにTCP(Transmission Control Protocol)/IPやUDP(User Datagram Protocol)/IPを採用し、IPアドレスの3バイト目および4バイト目に車両編成識別番号と伝送装置識別番号を割り付け、先頭車両と最後尾車両あるいは異なる編成どうしの併結部分の伝送装置のIPアドレスを固定にし、編成内の車両数が増減した場合でも、前記固定IPアドレスを持つ伝送装置を基準にしてその他の各伝送装置のIPアドレスを割り付けるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−175904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の技術は、先頭車両と最後尾車両あるいは異なる編成どうしの併結部分の伝送装置のIPアドレスを固定にするか、あるいは、伝送装置が設置された車両の編成内の位置情報(先頭車両あるいは最後尾車両あるいは異なる編成どうしの併結部分)を車両機器から通知してもらい、その情報に基づいてIPアドレスを自動設定する。
【0009】
上記IPアドレスを固定にする場合、伝送装置を車両に設置する前に予めIPアドレスを設定しておく必要があるか、あるいは、車両設置後に設定用スイッチ(ディップスイッチやロータリースイッチなど)や設定用端末などを用いてIPアドレスを設定する作業が必要となる。しかし、伝送装置を車両に設置する前に予めIPアドレスを設定しておく方法では、故障時に装置交換する際に別の車両用の伝送装置を利用することができず、予め交換用の装置を車両毎に準備しておく必要があるためコストがかかるという問題があり、車両設置後にIPアドレスを設定する方法では、車両設置時に作業量が増加し、設定ミスが発生する可能性があるという問題がある。
【0010】
また、上記方法によりIPアドレスを自動設定する場合、伝送装置が設置された車両の編成内の位置情報(先頭車両あるいは最後尾車両あるいは異なる編成どうしの併結部分)を伝送装置へ通知する機能や装置が車両側に必要となり、装置数や部品数が増加するという問題がある。
【0011】
また、前記伝送装置だけではなく、車両に設置される他の装置に関しても、上述と同様の問題が存在する。
【0012】
そこで本発明では、伝送装置に限らず車両に設置される他の装置に関しても、装置を車両に設置する前に、装置が設置される車両の編成内における位置情報を予め設定する必要がなく、あるいは通知される必要がなく、複数の装置間で相互に情報交換を行うことで、装置が設置されている車両の編成内における位置情報や並び順を検出することができる情報伝送方法および装置を提供する。また、さらに前記検出した位置情報や並び順に基づいて装置がIPアドレスなどの情報を判断して自動設定することが可能である情報伝送方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、複数の鉄道車両で構成される編成列車の前記鉄道車両間でデータ伝送を行う鉄道車両の情報伝送装置において、隣接する車両の中継装置と幹線伝送路で接続され、隣接する車両から受信したデータの中継処理を行う中継装置と、中継装置と支線伝送路で接続されるデータ処理装置と、を備え、データ処理装置が伝送方向の情報が含まれたデータを中継装置へ出力した場合に、中継装置は、支線伝送路または幹線伝送路から受信したデータに含まれた伝送方向の情報に応じてデータの中継方向を決定する手段を有し、データ処理装置は、中継装置から受信したデータから編成列車における自装置の位置を検出する。
【0014】
または、隣接する車両に搭載された中継装置と幹線伝送路で接続され、隣接する車両から受信したデータの中継処理を行う中継装置と、中継装置と支線伝送路で接続されるデータ処理装置と、を備え、複数の鉄道車両で構成される編成列車の鉄道車両間でデータ伝送を行う情報伝送方法において、伝送方向の情報が含まれたデータが、データ処理装置から前記中継装置へ出力されるステップと、データを受信した中継装置が、データに含まれた伝送方向の情報に応じてデータの中継方向を決定するステップと、データを受信したデータ処理装置が、データの受信回数に応じて編成列車における自装置の位置を検出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、装置を車両に設置する前に、装置が設置される車両の編成内における位置情報を予め設定する必要がなく、あるいは通知される必要がないため、故障時に装置交換する際に別の車両用の装置を設定変更無しで利用することができ、また、車両設置後に設定用スイッチ(ディップスイッチやロータリースイッチなど)や設定用端末などを用いて位置情報や並び順を設定する作業が不要であるので設定ミスが発生しない。
【0016】
また、装置が設置された車両の編成内における位置情報を予め設定あるいは通知されなくても、複数の装置間で相互に情報交換を行うだけで、装置が車両の編成内の位置情報や並び順を検出し、前記検出した位置情報や並び順に基づいて装置にIPアドレスなどの情報を判断して自動設定することが可能であるため、複数編成が併結されたり分割されたりして、編成内の車両構成は動的に変化した場合にも対応可能である。
【0017】
また、前記装置は、装置の設置される車両が、異なる車両あるいは異なる編成の車両に変更されても、装置の設定の追加あるいは変更の作業を実施する必要なく、装置は変更後の設置位置に対応した動作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施形態に係る情報伝送システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の1実施形態に係る中継装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の1実施形態に係る検出フローを示す図である。
【図4】本発明の1実施形態に係る動作を示す図である。
【図5】本発明の1実施形態に係る検出フローを示す図である。
【図6】本発明の1実施形態に係る動作を示す図である。
【図7】本発明の1実施形態に係る情報伝送システムの構成を示す図である。
【図8】本発明の1実施形態に係る情報伝送システムの構成を示す図である。
【図9】本発明の1実施形態に係る情報伝送システムの構成を示す図である。
【図10】本発明の1実施形態に係る情報伝送システムの構成を示す図である。
【図11】本発明の1実施形態に係るデータ中継部の構成を示す図である。
【図12】本発明の1実施形態に係る情報伝送システムの構成を示す図である。
【図13】本発明の1実施形態に係る表示装置の構成を示す図である。
【図14】本発明の1実施形態に係る情報伝送システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態では、中継装置やデータ処理装置は、号車番号などの自装置が設置された車両の編成内における位置情報や、他のデータ処理装置との間の相対的な並び順に関する情報を予め持つ必要はなく、電源オン時やリセット時、複数編成の併結や分割で編成構成が変化した時など、新たな位置情報や並び順に関する情報が必要となった時に、各データ処理装置は位置確認データを支線伝送路へ送信する。
【0020】
前記位置確認データには幹線伝送路あるいは支線伝送路への伝送方向を指定する情報が含まれ、全てのデータ処理装置が送信する前記位置確認データに含まれる前記伝送方向を指定する情報は全て同一である。なお、動作や機能が異なる複数の種類のデータ処理装置が混在する場合は、前記伝送方向を指定する情報に関して、前記種類毎に異なる情報を定義してもよい。
【0021】
各中継装置は、前記位置確認データに含まれる前記伝送方向を指定する情報と、前記位置確認データを幹線伝送路や支線伝送路などの中継する方向との対応関係を予め決めておき、前記位置確認データを受信したら予め決めておいた方向に中継する。前記対応関係は全ての中継装置において同一であり、中継装置がどの車両に接続されても結果は同じとなる。
【0022】
各データ処理装置は前記中継装置から受信した位置確認データの数やデータ内容などに基づいて、自装置の位置情報や並び順に関する情報などを判断する。
以下、本発明の詳細な実施形態について図面を用いて説明する。
【0023】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態について説明する。
まず、図1に、第1実施形態に係る情報伝送システムの一構成例を示す。
【0024】
図1における情報伝送システムでは、列車の編成は複数の車両1から構成される。各車両1は、車両間でデータを送受信あるいは中継するための中継装置2と、各車両の中継装置2を接続する幹線伝送路9と、各車両内に設置された、電動機やブレーキなど列車走行機能を制御するか、あるいは空調や車内灯など列車走行以外の機能を制御するデータ処理装置990と、中継装置2とデータ処理装置990を接続する支線伝送路99を含む構成とする。
【0025】
図2に中継装置2の構成を示す。図2における中継装置2は、データ中継部3とデータ分配部4を含む構成とする。
【0026】
データ中継部3は、一方の幹線伝送路9から受信したデータを他方の幹線伝送路9に中継したり、幹線伝送路9から支線伝送路99へ中継するデータをデータ分配部4へ送り、また、データ分配部4経由で支線伝送路99から受け取ったデータを幹線伝送路9へ中継する処理などを行う機能を持つ。
【0027】
さらに、データ中継部3は、宛先アドレスなどのような、データの宛先を表す「宛先情報」と、中継先の幹線伝送路や支線伝送路を示す情報を対応付けて記憶する。例えば、図2に示すように、データ中継部3が持つ伝送路へのポートに(1)、(2)、(3)と番号付けしておき、宛先情報「甲」のデータはポート(1)と(2)のみに中継し、宛先情報「乙」のデータはポート(2)と(3)のみに中継する、などという情報を記憶する。
【0028】
データ分配部4は、支線伝送路99の一部であり、複数のデータ処理装置990と中継装置2を接続する機能を持つ。
【0029】
本実施形態では、例として、データ中継部3はIEEE802.3規格のLANで使用されるスイッチングハブあるいはレイヤ3スイッチを使用することとし、宛先情報にはIPアドレスあるいはMACアドレスを使用するとし、特定の宛先アドレスと中継先ポートを固定設定できる機能があるとする。このような機能は、例えば、MICREL社製のスイッチングデバイスであるKS8995MAに実装されているStatic MAC Address設定機能を使用すれば実現できる。
【0030】
また、幹線伝送路9および支線伝送路99はIEEE802.3規格のLANを使用し、データ分配部4はIEEE802.3規格のLANで使用されるスイッチングハブあるいはリピータハブを使用したという前提で以下説明する。
【0031】
なお、以下の説明や図では、説明の簡単化のため、中継装置2へ接続されたデータ処理装置990は1個とし、その他のデータ処理装置990の説明や表記は省略する。
【0032】
また、データ分配部4は、データ中継部3と複数のデータ処理装置990を接続し、データを改変することなく相互にそのまま中継する機能を最低限有していれば良いため、以下、支線伝送路99の一部として考える。
【0033】
次に、図3および図4において、データ処理装置990が自装置の位置情報や並び順を検出する手順を説明する。
【0034】
車両1への電源の投入や装置のリセット、編成の分割あるいは併結により編成内の車両1の数や並び順が変化するなど、データ処理装置990が位置や並び順の検出を開始するトリガとなる事象が発生する(検出手順9001)と、各データ処理装置990は、幹線伝送路あるいは支線伝送路への伝送方向を指定する情報、すなわち図4に示すように宛先IPアドレス「239.0.0.1」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−01」)が含まれる位置確認パケット301を支線伝送路99へ送信する(検出手順9002)。なお、ここではパケットのデータ内部は任意の値でよい。
【0035】
一方、各車両1に設置された全ての中継装置2は、幹線伝送路あるいは支線伝送路への伝送方向を指定する情報、すなわち図4に示すように、宛先IPアドレス「239.0.0.1」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−01」)のパケットをポート(2)および(3)へ中継するように設定されている。すなわち、宛先IPアドレス「239.0.0.1」のパケットがポート(1)から受信されると、当該パケットをポート(2)と(3)へ中継し、パケットをポート(2)から受信するとポート(3)のみへ中継し、パケットをポート(3)から受信するとポート(2)のみへ中継することを意味する。なお、以降の説明では、図4に示すような中継装置2のポート(1)(2)(3)は、図2に示すデータ中継部のポート(1)(2)(3)と同義であるとする。また、宛先IPアドレス「239.0.0.1」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−01」)は本実施形態での一例であり、もちろん他の値でもよい。
【0036】
前記位置確認パケット301を支線伝送路99すなわちポート(3)から受信した中継装置2は、宛先IPアドレスが「239.0.0.1」であるから幹線伝送路9のポート(2)のみに中継し、前記位置確認パケット301は隣接する中継装置2のポート(1)へ達する。
【0037】
次に、前記隣接する中継装置2は、幹線伝送路9のポート(1)から前記位置確認パケット301を受信すると、宛先IPアドレスが「239.0.0.1」であるから幹線伝送路9のポート(2)および支線伝送路99のポート(3)に中継する。
【0038】
支線伝送路99へ送信された前記位置確認パケット301は、データ処理装置990で受信され、宛先IPアドレスが「239.0.0.1」であるからデータ処理装置990は位置確認パケット301であると認識し、位置確認パケット301の受信数を1インクリメントする(検出手順9003、9004、9005)。
【0039】
データ処理装置990は前記トリガとなる事象が発生後、ある時点から時間計測し、一定時間経過後(検出手順9006)、受信した位置確認パケット301の数を検出し、自装置の位置や並び順を判断する(検出手順9007のPの値)。
【0040】
図4の例では、4個のデータ処理装置990を先頭(中継装置2のポート(1)方向の端部の車両)からa,b,c,dと名付けると、a,b,c,dの各データ処理装置990からそれぞれ位置確認パケット301を送信した後、データ処理装置aは位置確認パケット301を受信せず(図3のP=0)、データ処理装置bは位置確認パケット301を1個受信し(図3のP=1)、データ処理装置cは位置確認パケット301を2個受信し(図3のP=2)、データ処理装置dは位置確認パケット301を3個受信(図3のP=3)する。すなわち、各データ処理装置990は、自装置が先頭車両から数えてP+1番目の位置(並び順がP+1番目)にある装置であると判断できる。また、P=0のデータ処理装置aは先頭車両であることが判断できる。
【0041】
この結果を基にして、データ処理装置990はその位置や並び順に対応した設定値、例えばIPアドレスなどを設定することができる。
【0042】
また、上述の手順で検出した前記位置や並び順の情報、例えば前記PあるいはP+1などの値を、検出した各データ処理装置990に実装された発光ダイオード(LED)や液晶表示器(LCD)などの表示器に表示できるようにして、前記データ処理装置990を保守する作業員が外部から前記表示器を目視することにより、正しく設定されているか否かを確認できるようにしてもよい。
【0043】
ところで、上述の説明では、幹線伝送路9および支線伝送路99はIEEE802.3規格のLANを使用した例であったが、当然ながら、IEEE802.3規格のLANに限定されることはなく、それ以外の通信手段、例えばATM(Asyncronous Transfer Mode)やIEEE802.5規格のLAN、IEC61158規格のフィールドLANなどでも実現可能である。
【0044】
これは、以下の全ての実施形態においても同様である。
さらに、上述の説明では、データ中継部3は、IEEE802.3規格のLANで使用されるスイッチングハブあるいはレイヤ3スイッチを使用することを例にしたが、当然ながら、図11に示すような構成でも実現可能である。
【0045】
すなわち、図11において、データ中継部3は、データの中継処理を行うCPUやキャッシュメモリや主記憶メモリなどを搭載する演算装置2000と、送受信データを蓄積したり、処理プログラムや初期設定情報やログ情報などを蓄積しておくハードディスクやシリコンディスク、不揮発性メモリなどの記憶装置2003と、幹線伝送路9を介して相手の中継装置2のデータ中継部3との間のデータ送受信のインタフェース機能を持つ幹線伝送路インタフェース装置2001と、支線伝送路99を介してデータ処理装置990との間のデータ送受信のインタフェース機能を持つ支線伝送路インタフェース装置2002から構成され、必要であれば、アドレスや伝送路の動作モードなどの初期設定項目を入力するスイッチやキーボードなどの入力装置2004と、設定項目の確認や、動作状態やログ情報を表示する発光ダイオード(LED)や液晶表示器(LCD)などの出力装置2005を実装してもよい。
【0046】
図11に示すデータ中継部3の場合、前記宛先情報は宛先アドレスに限らず、データフィールド内に宛先情報を示すフィールドを設けてもよい。
【0047】
前記演算装置2000は、幹線伝送路インタフェース装置2001あるいは支線伝送路インタフェース装置2002から受信したデータの宛先情報から、データを中継する伝送路を判断し、幹線伝送路インタフェース装置2001や支線伝送路インタフェース装置2002の一方あるいは双方へ出力する。
【0048】
これも、以下の全ての実施形態においても同様である。
以上、第1の実施形態について説明した。
以上に述べた実施形態により、本発明では、装置を車両に設置する前に、装置が設置される車両の編成内における位置情報を予め設定する必要がなく、あるいは通知される必要がないため、故障時に装置交換する際に別の車両用の装置を設定変更無しで利用することができ、また、車両設置後に設定用スイッチ(ディップスイッチやロータリースイッチなど)や設定用端末などを用いて位置情報や並び順を設定する作業が不要であるので設定ミスが発生しない。
【0049】
また、装置が設置された車両の編成内における位置情報を予め設定あるいは通知されなくても、複数の装置間で相互に情報交換を行うことにより、装置が車両の編成内の位置情報や並び順を検出し、前記検出した位置情報や並び順に基づいて装置にIPアドレスなどの情報を判断して自動設定することが可能であるため、複数編成が併結されたり分割されたりして、編成内の車両構成は動的に変化した場合にも対応可能である。
【0050】
また、前記装置は、装置の設置される車両が、異なる車両あるいは異なる編成の車両に変更されても、装置の設定の追加あるいは変更の作業を実施する必要なく、装置は変更後の設置位置に対応した動作が可能である。
【0051】
〔第2の実施形態〕
上述の第1の実施形態では、データ処理装置990は自装置の先頭(あるいは最後尾)からの位置や並び順は判断できるが、最後尾(あるいは先頭)からの位置や並び順、さらにはデータ処理装置の全数は判断できない。
【0052】
そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態の動作に加えて以下の動作を追加する。
各車両1に設置された全ての中継装置2には、幹線伝送路あるいは支線伝送路への伝送方向を指定する情報、すなわち図6に示すように、宛先IPアドレス「239.0.0.2」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−02」)のパケットはポート(1)および(3)へ中継するように設定しておく。すなわち、宛先IPアドレス「239.0.0.2」のパケットがポート(1)から受信するとポート(3)のみへ中継し、ポート(2)から受信するとポート(1)と(3)へ中継し、ポート(3)から受信するとポート(1)のみへ中継することを意味する。なお、図6に示すような中継装置2のポート(1)(2)(3)は、図2に示すデータ中継部のポート(1)(2)(3)と同義であるとする。また、宛先IPアドレス「239.0.0.2」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−02」)は本実施形態での一例であり、もちろん他の値でもよい。
【0053】
図5に示すように、車両1への電源の投入や装置のリセット、編成の分割あるいは併結により編成内の車両1の数や並び順が変化するなど、データ処理装置990が位置や並び順の検出を開始するトリガとなる事象が発生する(検出手順9001)と、各データ処理装置990は、位置確認パケット301の他に、幹線伝送路あるいは支線伝送路への伝送方向を指定する情報、すなわち図6に示すように宛先IPアドレス「239.0.0.2」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−02」)が含まれる第2位置確認パケット302を支線伝送路99へ送信する(検出手順9011)。なお、ここではパケットのデータ内部は任意の値でよい。
【0054】
前記第2位置確認パケット302を支線伝送路99すなわちポート(3)から受信した中継装置2は、宛先IPアドレスが「239.0.0.2」であるから幹線伝送路9のポート(1)のみに中継し、前記第2位置確認パケット302は隣接する中継装置2のポート(2)へ達する。
【0055】
次に、前記隣接する中継装置2は、幹線伝送路9のポート(2)から前記第2位置確認パケット302を受信すると、宛先IPアドレスが「239.0.0.2」であるから幹線伝送路9のポート(1)および支線伝送路99のポート(3)に中継する。
【0056】
支線伝送路99へ送信された前記第2位置確認パケット302は、データ処理装置990で受信され、宛先IPアドレスが「239.0.0.2」であるからデータ処理装置990は第2位置確認パケット302であると認識し、第2位置確認パケット302の受信数を1インクリメントする(検出手順9012、9013、9014)。
【0057】
データ処理装置990は前記トリガとなる事象が発生後、ある時点から時間計測し、一定時間経過後(検出手順9006)、受信した第2位置確認パケット302の数を検出し、自装置の位置や並び順を判断する(検出手順9015のQの値)。
【0058】
図6の例では、a,b,c,dの各データ処理装置990からそれぞれ第2位置確認パケット302を送信した後、データ処理装置dは第2位置確認パケット302を受信せず(図5のQ=0)、データ処理装置cは第2位置確認パケット302を1個受信し(図5のQ=1)、データ処理装置bは第2位置確認パケット302を2個受信し(図5のQ=2)、データ処理装置aは第2位置確認パケット302を3個受信(図5のQ=3)する。すなわち、各データ処理装置990は、自装置が最後尾車両から数えてQ+1番目の位置(並び順がQ+1番目)にある装置であると判断できる。また、Q=0のデータ処理装置dは最後尾車両であることが判断できる。
【0059】
この結果(Qの値)および第1の実施形態の結果(Pの値)を基にして、データ処理装置990はその位置や並び順およびデータ処理装置の総数は判断することができる。すなわち、データ処理装置990の総数は(P+Q+1)個であり、編成内での自装置の位置は先頭車両から(P+1)番目、最後尾車両から(Q+1)番目ということになる。もし、データ処理装置が1車両に1個ずつ設置されていれば、その編成の車両数は(P+Q+1)両であり、自装置は(P+1)号車に設置されていることがわかる。
【0060】
このようにして求めた値を基にして、各装置へ設定値、例えばIPアドレスなどを設定することができる。
【0061】
また、上述の手順で検出した前記位置や並び順の情報、例えば前記P、Q、P+1、Q+1、P+Q+1などの値を、検出した各データ処理装置990に実装された発光ダイオード(LED)や液晶表示器(LCD)などの表示器に表示できるようにして、前記データ処理装置990を保守する作業員が外部から前記表示器を目視することにより、正しく設定されているか否かを確認できるようにしてもよい。
【0062】
以上、第2の実施形態について説明した。
以上に述べたことにより、本発明では、第1の実施形態における効果に加えて、編成内に設置されている装置の総数が検出でき、編成内の全装置において先頭及び後尾から何番目に設置されているかが判断できるため、編成内における自装置の位置を正確に把握することができる。
【0063】
また、複数編成が併結あるいは分割されて編成内の装置数などに変更が生じた場合でも、各データ処理装置が自律的に変更後の構成、つまり編成内における自装置の位置を検出することができる。
【0064】
〔第3の実施形態〕
上述の第1、第2の実施形態では、幹線伝送路9および支線伝送路99は1重系構成であったが、伝送路障害に対するシステムの信頼性を向上させるために、幹線及び支線伝送路9、99や中継装置2を多重系にする構成も考えられる。
【0065】
そこで、第3の実施形態では、多重化の例として、図7に示すように、各中継装置2と幹線伝送路および支線伝送路を2重化した構成を示し、一方を1系とし、1系中継装置21では1系幹線伝送路91と1系支線伝送路991を接続し、他方を2系とし、2系中継装置22では2系幹線伝送路92と2系支線伝送路992を接続する。
【0066】
各車両1のデータ処理装置990は1系支線伝送路991と2系支線伝送路992が接続され、データ処理装置990は1系と2系の双方に対して独立に、上述の第1の実施形態、あるいは第2の実施形態と同様の処理を行う。すなわち、中継装置の数と並び順の検出は1系と2系で独立に実施し、双方の検出結果を比較することができる。比較した結果、双方の検出結果に相違があると、どちらかの系で障害が発生していることがわかる。
【0067】
例えば、伝送路障害が発生した場合の例を図8に示す。
図8では、2両目と3両目の間の1系幹線伝送路91で障害が発生した例である。
各データ処理装置990が1系と2系で独立に第1の実施形態である図3、図4と同様の手順を実施すると、データ処理装置aでは1系、2系ともP=0、データ処理装置bでは1系、2系ともP=1であるが、データ処理装置cでは1系でP=0、2系でP=2、データ処理装置dでは1系でP=1、2系でP=3となる。
【0068】
データ処理装置cは、2系ではP=2となり、先頭側に2つのデータ処理装置が存在することが分るが、1系ではP=0となり、先頭側から第1位置確認パケット301を未受信であるため、先頭車側の1系幹線伝送路あるいは自車両内の1系支線伝送路に障害が発生したと判断できる。
【0069】
データ処理装置dは、2系ではP=3となり、先頭側に3つのデータ処理装置が存在することが分るが、1系ではP=1となり、先頭側から第1位置確認パケット301を1つしか受信していないため、先頭車側の1車両向こうの1系幹線伝送路に障害が発生したと判断することができる。
【0070】
また、各データ処理装置990が1系と2系で独立に第2の実施形態である図5、図6と同様の手順を実施すると、データ処理装置aでは1系でP=0、Q=1、2系でP=0、Q=3、データ処理装置bでは1系でP=1、Q=0、2系でP=1、Q=2、データ処理装置cでは1系でP=0、Q=1、2系でP=2、Q=1、データ処理装置dでは1系でP=1、Q=0、2系でP=3、Q=0となる。
【0071】
したがって、データ処理装置990は全部で4個設置されており、各車両に1個ずつ設置されている場合、各車両に搭載されたそれぞれのデータ処理装置では、自装置の位置と車両数と故障発生箇所を判断することができる。つまり、データ処理装置aは、車両が4両あり、自装置が1号車にあり、2号車と3号車の間の1系幹線伝送路91に障害が発生していると判断でき、データ処理装置bは、車両が4両あり、自装置が2号車にあり、2号車と3号車の間の1系幹線伝送路91に障害が発生していると判断でき、データ処理装置cは、車両が4両あり、自装置が3号車にあり、2号車と3号車の間の1系幹線伝送路91に障害が発生していると判断でき、データ処理装置dは、車両が4両あり、自装置が4号車にあり、2号車と3号車の間の1系幹線伝送路91に障害が発生していると判断することができる。
【0072】
また、上述の手順で検出した編成内における前記位置や並び順の情報、例えば前記P、Q、P+1、Q+1、P+Q+1などの値を、各系毎に、検出した各データ処理装置990に実装された発光ダイオード(LED)や液晶表示器(LCD)などの表示器に表示できるようにして、前記データ処理装置990を保守する作業員が外部から前記表示器を目視することにより、各データ処理装置で正しく検出または設定されているか否かを確認できるようにしてもよい。さらに、各系双方の検出結果を比較した結果、双方の検出結果に相違があると、前記表示器に、例えば警告灯を点灯させるか、あるいは障害が発生した旨の文字列を表示するなどの、障害発生通知機能があってもよい。
【0073】
以上、第3の実施形態について説明した。
以上に述べたことにより、本発明により、2重系などの多重系システムにおいて、装置の数と並び順を各系独立に検出し、1系と2系の間で検出結果を比較することにより、各データ処理装置において障害箇所を自動的に検出することが可能であり、障害が発生している可能性のある箇所を表示することが可能であり、迅速な修理作業が実施できる。
【0074】
〔第4の実施形態〕
上述の第1〜第3の実施形態では、支線伝送路99を介して中継装置2に接続されたデータ処理装置990が編成内の自位置や並び順を検出する内容であったが、中継装置2自体が自装置の位置(号車番号)や並び順を検出することが必要になる場合もある。
【0075】
そこで第4の実施例では、図9に示すように、データ中継部3に第4のポート(ポート(4))を設け、ポート(4)に内部伝送路995を介して中継処理制御部5を接続する。中継処理制御部5は、データ中継部3を含む中継装置2の初期化や中継に必要な設定値をデータ中継部3やデータ分配部4に設定する機能を持つ。このような機能は、例えば、MICREL社製のスイッチングデバイスであるKS8995MAに実装されているMIIインタフェースを使用すれば実現できる(当該データシートのSystem Level Applicationsの項に記載されている構成など)。
【0076】
本実施形態の動作は、第1および第2の実施形態における、ポート(3)をポート(4)に、支線伝送路99を内部伝送路995に、データ処理装置990を中継処理制御部5に置き換え、幹線伝送路あるいは支線伝送路への伝送方向を指定する情報、例えば、ある値の宛先IPアドレス(第1や第2の実施形態における値とは異なる値)が含まれる位置確認パケットを使用すれば、第1および第2の実施形態の図3〜図6と同様な手順で実施することができる。
【0077】
また、上述の手順で検出した前記位置や並び順の情報、例えば第1や第2の実施形態における前記P、Q、P+1、Q+1、P+Q+1などの値を、検出した各中継装置2に実装された発光ダイオード(LED)や液晶表示器(LCD)などの表示器に表示できるようにして、前記中継装置2を保守する作業員が外部から前記表示器を目視することにより、各中継装置2で正しく検出または設定されているか否かを確認できるようにしてもよい。
【0078】
以上、第4の実施形態について説明した。
以上に述べたことにより、本発明では、各中継装置2が自律的に編成内の車両数や自装置の位置(号車番号に相当)を検出することが可能である。
【0079】
また、複数編成が併結あるいは分割されて編成内の装置数などに変更が生じた場合でも、各中継装置2が自律的に変更後の構成、つまり編成内における自装置の位置を自律的に検出することができる。
【0080】
〔第5の実施形態〕
本発明が対象としている情報伝送システムでは、データ処理装置990は、電動機やブレーキなど列車走行機能を制御するデータ処理装置や空調や車内灯など列車走行以外の機能を制御するデータ処理装置など、動作や機能が異なる複数の種類のデータ処理装置が混在する可能性がある。それら複数の種類のデータ処理装置は、それぞれ種類別に自装置の位置や並び順を検出する必要がある。
【0081】
そこで、上述の第1〜第3の実施形態において、データ処理装置990の種類別に位置確認パケットや第2位置確認パケットを定義し、第1〜第3の実施形態で述べた方法により、同じ種類のデータ処理装置どうしで位置確認パケットや第2位置確認パケットを送受信すればよい。
【0082】
例えば、電動機を制御するインバータ装置に相当するデータ処理装置は、インバータ装置用の位置確認パケットの宛先IPアドレスを「239.0.0.1」とし、ブレーキを制御するブレーキ制御装置に相当するデータ処理装置は、ブレーキ制御装置用の位置確認パケットの宛先IPアドレスを「239.0.0.3」とする。さらに、全ての中継装置2は、宛先IPアドレス「239.0.0.1」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−01」)および宛先IPアドレス「239.0.0.3」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−03」)のパケットをポート(2)および(3)へ中継するように設定する。すなわち、宛先IPアドレス「239.0.0.1」および「239.0.0.3」のパケットをポート(1)から受信するとポート(2)および(3)へ中継し、ポート(2)から受信するとポート(3)のみへ中継し、ポート(3)から受信するとポート(2)のみへ中継するように設定し、各データ処理装置990は自装置が送信した宛先IPアドレス(自装置の種類に対応する宛先IPアドレス)を持つ位置確認パケットを選別して受信すれば、第1の実施形態で述べた手順により、各種類のデータ処理装置が種類毎に独立に、自装置の並び順を検出することができる。
【0083】
さらに、電動機を制御するインバータ装置に相当するデータ処理装置は、インバータ装置用の第2位置確認パケットの宛先IPアドレスを「239.0.0.2」とし、ブレーキを制御するブレーキ制御装置に相当するデータ処理装置は、ブレーキ制御装置用の第2位置確認パケットの宛先IPアドレスを「239.0.0.4」とし、全ての中継装置2は、宛先IPアドレス「239.0.0.2」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−02」)および宛先IPアドレス「239.0.0.4」(宛先MACアドレスは「01−00−5E−00−00−04」)のパケットはポート(1)および(3)へ中継するように設定し、すなわち、宛先IPアドレス「239.0.0.2」および「239.0.0.4」のパケットをポート(1)から受信するとポート(3)のみへ中継し、ポート(2)から受信するとポート(1)と(3)へ中継し、ポート(3)から受信するとポート(1)のみへ中継するように設定し、各データ処理装置990は自装置が送信した宛先IPアドレスを持つ第2位置確認パケットを選別して受信すれば、第2の実施形態で述べた手順により、各種類のデータ処理装置が種類毎に独立に、自装置と同じ種類のデータ処理装置の数や自装置の位置や並び順を検出することができる。
【0084】
また、幹線伝送路9及び支線伝送路99や中継装置2を多重系にすれば、各種類のデータ処理装置が種類毎に独立に、第3の実施形態で述べた手順により、各種類のデータ処理装置の数と並び順を各系独立に検出でき、さらに各系間での検出結果を比較することにより、障害箇所を検出することが可能である。
【0085】
以上、第5の実施形態について説明した。
以上に述べたことにより、本発明では、第1〜第3の実施形態の効果に加え、複数の種類のデータ処理装置が、それぞれ種類別に独立して、各種類毎にデータ処理装置の位置や並び順を検出することが可能となる。
【0086】
〔第6の実施形態〕
上述の第1〜第5の実施形態では、各車両は連結されており、隣接する中継装置2を接続する幹線伝送路9は有線伝送路を想定していたが、図10に示すように、幹線伝送路9を無線伝送路と有線伝送路の混在構成にすることもできる。
【0087】
すなわち、図10における例では、車両A11、車両群B12、車両C13で一つの編成を構成し、車両A11と車両C13は1両の車両で構成され、車両群B12は複数の車両を連結して構成され、車両A11と車両群B12の間の幹線伝送路9は無線伝送路で構成し、車両群Bに属する複数の車両1間の幹線伝送路9は有線伝送路で構成し、車両群B12と車両C13の間の幹線伝送路9は無線伝送路で構成する。
【0088】
車両A、車両群B、車両Cの最前部および最後部では、図10に示すように、中継装置2に無線装置93およびアンテナ装置930が接続され、中継装置2から出力されたデータを無線装置93にて無線信号に変換して、アンテナ装置930から無線伝送路へ送信され、隣接車両において、アンテナ装置930が無線伝送路から受信した前記無線信号を無線装置93にて中継装置2へ入力するためのデータに変換して、前記データを中継装置2へ入力する。アンテナ装置930はある一定方向に対してのみ無線電波を送受信する特性を持ち、1個のアンテナ、あるいは複数のアンテナをアレイ状に並べたものでもよい。
【0089】
その他の各装置の動作やデータの処理手順は第1〜第5の実施形態と同様である。
【0090】
無線伝送路として使用する無線方式に限定はないが、IEEE802.11規格やIEEE802.15規格、IEEE802.16規格などの無線LANを使用してもよいし、携帯電話などで使用されている無線方式を使用してもよいし、列車無線やDSRCなど鉄道や自動車などでの使用を想定した無線方式を使用してもよい。
【0091】
なお、有線伝送路と異なり無線伝送路の場合、同一方向に複数車両が存在すると、アンテナ装置930は、隣接車両からだけではなく、隣接車両のさらに向こうの遠方の車両からも直接無線信号を受信してしまい、データ処理装置が並び順などを誤検出してしまう可能性がある。例えば、図10の例では、車両C13から見て前方には、車両群B12と車両A11が存在するので、車両A11が送信した信号は、車両群B12から中継された信号と車両A11から直接届いた信号の2つの信号を車両C13が受信する可能性がある。このとき、車両C13のデータ処理装置990は車両A11からのデータを重複してカウントしてしまうので、車両A11に設置されたデータ処理装置990は並び順を誤検出する。そこで、各データ処理装置は、それぞれ異なる信号を位置確認パケットとして送信するようにし、各車両の無線装置93は、送信元データ処理装置が同一の位置確認パケットを複数受信した場合、一番最初に受信したパケットのみ中継装置2へ出力し、後から受信したパケットを廃棄するか、あるいは、受信電波強度の最も強いパケット(信号を送信した車両からの距離が最も近いパケット)のみ中継装置2へ出力し、その他のパケットを廃棄する、などの方法により誤検出を回避することができる。
【0092】
以上、第6の実施形態について説明した。
以上に述べたことにより、本発明では、幹線伝送路9を無線伝送路に置き換えることにより、複数の車両が併結や分割を行う場合に、有線伝送路であれば、その都度、伝送路を接続したり外したりする必要があるが、無線伝送路であればその必要がなく、また、無線伝送路を介して接続された車両や車両群は必ずしも物理的に連結される必要がなく、物理的に離れた状態で走行しても同様の効果が得られるので、走行中に並び順が変更される場合があっても、その都度、並び順を再検出して新しい構成を把握することができる。
【0093】
したがって、本実施形態により、鉄道車両に限らず、複数の車両が連結されずに同じ方向に並んで走行する自動車やバス、船舶、飛行機などの移動体へ本発明を適用することが可能となる。
【0094】
〔第7の実施形態〕
上述の第1〜第6の実施形態において、図12に示すように、幹線伝送路9の1箇所あるいは複数個所に表示装置8を接続し、表示装置8がデータ処理装置990の位置や数を検出して表示することができる。
【0095】
すなわち、表示装置8は、図4や図6に示すような位置確認パケットや第2位置確認パケットを受信し、第1ないし第2の実施形態で述べた値「P」や「Q」を検出して、データ処理装置の位置や数を表示装置8に表示する。
【0096】
また、第5の実施形態で述べた方法により、データ処理装置の種類別にデータ処理装置の位置や数を表示装置8に表示することもできる。
【0097】
表示装置8の構成例は図13に示すように、位置確認パケットや第2位置確認パケットの数を検出するCPUやキャッシュメモリや主記憶メモリなどを搭載する演算装置2800と、送受信データを蓄積したり、処理プログラムや初期設定情報やログ情報などを蓄積しておくハードディスクやシリコンディスク、不揮発性メモリなどの記憶装置2803と、幹線伝送路9あるいは支線伝送路99から位置確認パケットや第2位置確認パケットを受信する機能を持つ伝送路インタフェース装置2801と、前記検出結果などを表示する発光ダイオード(LED)や液晶表示器(LCD)などの出力装置2805から構成され、必要であれば、アドレスや伝送路の動作モードなどの初期設定項目を入力するスイッチやキーボードなどの入力装置2804を実装してもよい。
【0098】
また、表示装置8は、図14に示すように、他のデータ処理装置990と同様に支線伝送路99に接続してもよい。ただし、表示装置8を支線伝送路99に接続する場合、中継装置2内のデータ分配部4は、接続されたデータ処理装置990から送信された位置確認パケットや第2位置確認パケットを、データ中継部3および表示装置8の双方へ中継させる必要がある。
【0099】
以上、第7の実施形態について説明した。
以上に述べたことにより、本発明では、表示装置8によりデータ処理装置990の位置や数の確認を行うことができる。前記表示装置8を運転台や車両の客室内に設置しておけば、車両の併結や分割により編成の構成に変更が発生した場合でも、データ処理装置の接続確認を容易に実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
1、11、13 車両
2、21、22 中継装置
3 データ中継部
4 データ分配部
5 中継処理制御部
8 表示装置
9、91、92 幹線伝送路
12 車両群
93 無線装置
99、991、992 支線伝送路
301、302 位置確認パケット
930 アンテナ装置
990 データ処理装置
995 内部伝送路
2000、2800 演算装置
2001 幹線伝送路インタフェース装置
2002 支線伝送路インタフェース装置
2003、2803 記憶装置
2004、2804 入力装置
2005、2805 出力装置
2801 伝送路インタフェース装置
9001〜9015 検出手順

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄道車両で構成される編成列車の前記鉄道車両間でデータ伝送を行う鉄道車両の情報伝送装置において、
隣接する車両の中継装置と幹線伝送路で接続され、隣接する車両から受信したデータの中継処理を行う中継装置と、
前記中継装置と支線伝送路で接続されるデータ処理装置と、を備え、
前記データ処理装置が伝送方向の情報が含まれたデータを前記中継装置へ出力した場合に、前記中継装置は、前記支線伝送路または前記幹線伝送路から受信した前記データに含まれた伝送方向の情報に応じて前記データの中継方向を決定する手段を有し、
前記データ処理装置は、前記中継装置から受信した前記データから編成列車における自装置の位置を検出することを特徴とする情報伝送装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報伝送装置において、
前記データ処理装置は、受信した前記データの数により、自装置が編成列車の末端から何番目に接続されているかを検出することを特徴とする情報伝送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報伝送装置において、
前記データが含まれている伝送方向の情報は、前記データの宛先を表すアドレスであることを特徴とする情報伝送装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の情報伝送装置において、
前記データ処理装置は、
伝送方向の情報がそれぞれ異なる複数種類のデータを前記中継装置へ出力し、
前記中継装置から受信した各種類毎の前記データの数により、自装置が編成の末端から何番目に接続されているかを検出し、かつ編成内に接続された前記データ処理装置の総数を検出することを特徴とする情報伝送装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の情報伝送装置において、
前記幹線伝送路および前記中継装置が多重系で構成されており、
前記データ処理装置は、
各系の前記中継装置に対して伝送方向の情報が含まれた前記データを出力し、
各系の前記中継装置から前記データを受信し、受信した前記データの数を各系毎に検出し、検出した前記データの数が各系の間で相違する場合は、前記幹線伝送路または前記支線伝送路に異常が発生したと判断することを特徴とする情報伝送装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の情報伝送方法および装置において、
前記データ処理装置は機能が異なる複数の種類のデータ処理装置が存在し、前記データ処理装置はデータを中継装置へ送信し、前記データには伝送方向を指定する情報が含まれ、前記データ処理装置の種類毎に、前記伝送方向を指定する情報が異なることを特徴とする情報伝送装置。
【請求項7】
請求項1および請求項6記載の情報伝送方法および装置において、前記データ処理装置または前記中継装置は、少なくとも自装置の位置と並び順を検出し、検出した結果を表示する表示手段を持つことを特徴とする情報伝送装置。
【請求項8】
請求項1および請求項6記載の情報伝送方法および装置において、前記伝送路は無線伝送路と有線伝送路のいずれかあるいは両方から構成されていることを特徴とする情報伝送装置。
【請求項9】
請求項1および請求項6記載の情報伝送方法および装置において、前記伝送路に表示装置を接続し、前記データ処理装置の位置及び数を表示させることを特徴とする情報伝送装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の情報伝送装置を有する編成列車において、
前記編成列車を構成する各鉄道車両は、少なくとも前記中継装置と、前記データ処理装置と、を有することを特徴とする鉄道車両。
【請求項11】
隣接する車両に搭載された中継装置と幹線伝送路で接続され、隣接する車両から受信したデータの中継処理を行う中継装置と、
前記中継装置と支線伝送路で接続されるデータ処理装置と、を備え、
複数の鉄道車両で構成される編成列車の前記鉄道車両間でデータ伝送を行う情報伝送方法において、
伝送方向の情報が含まれたデータが、前記データ処理装置から前記中継装置へ出力されるステップと、
前記データを受信した前記中継装置が、前記データに含まれた伝送方向の情報に応じて前記データの中継方向を決定するステップと、
前記データを受信した前記データ処理装置が、前記データの受信回数に応じて前記編成列車における自装置の位置を検出するステップと、を備えることを特徴とする情報伝送方法。
【請求項12】
請求項11に記載の情報伝送方法において、
前記データを受信した前記データ処理装置が、前記データの受信回数に応じて前記編成列車における自装置の位置を検出するステップで、前記データの受信回数に1を加えた数を自装置が編成列車の末端からの接続位置と判断することを特徴とする情報伝送方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の情報伝送方法において、
それぞれ異なる伝送方向の情報が含まれた複数種類のデータが、前記データ処理装置から前記中継装置へ出力されるステップと、
複数種類の前記データを受信した前記中継装置が、複数種類の前記データに含まれた伝送方向の情報に応じて前記データそれぞれについて中継方向を決定するステップと、
複数種類の前記データを受信した前記データ処理装置が、複数種類の前記データそれぞれの受信回数に応じて、自装置が編成の末端から何番目に接続されているかを検出し、かつ編成内に接続された前記データ処理装置の総数を検出するステップと、を備えることを特徴とする情報伝送方法。
【請求項14】
請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の情報伝送方法において、
前記幹線伝送路および前記中継装置が多重系で構成されており、
伝送方向の情報が含まれたデータが、前記データ処理装置から各系の前記中継装置へ出力されるステップと、
前記データを受信した各系の前記中継装置が、前記データに含まれた伝送方向の情報に応じて前記データの中継方向を決定するステップと、
前記データを受信した前記データ処理装置が、前記データの受信回数を各系毎に検出し、検出した前記データの数が各系の間で相違する場合は、前記幹線伝送路または前記支線伝送路に異常が発生したと判断することを特徴とする情報伝送方法。
【請求項15】
請求項11ないし請求項14のいずれかに記載の情報伝送方法において、
検出した編成列車における自装置の位置の情報を表示装置へ表示することを特徴とする情報伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−102624(P2013−102624A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245045(P2011−245045)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】