説明

情報伝達装置及び情報伝達方法

【課題】コミュニケーションのために改良スピードおよび安全を可能にする情報伝達装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、スプリッタと、検出器と、当該スプリッタと当該検出器との間に定義された第1及び第2の経路からなり、当該第1及び第2の経路の少なくとも一つには操作装置が配置されている。前記スプリッタは、入射粒子のパラメータの値に応じて、当該第1又は第2の経路に当該入射粒子を向けるよう配置され、当該パラメータの値が重ね合わせにある粒子が当該スプリッタに衝突し、当該粒子の波動関数が当該第1及び第2の経路の両方に向けられる場合に、当該検出器の近傍又は当該検出器において、当該波動関数の当該第1及び第2の経路に向けられた部分どうしが干渉するよう、当該操作装置は前記波動関数に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出装置及び情報伝達装置に関し、特に情報の効率的なコミュニケーションを可能とする情報伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速な情報伝達は多くの技術分野で望まれている。安全に情報を伝達する能力も多くの分野、特に手形交換銀行間の銀行取引において、大変重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】A. Einstein, B. Podolsky, N. Rosen. 「Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality Be Considered Complete?」 Phys. Rev. 47, 777 (1935).
【非特許文献2】N. Bohr. 「Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality be Considered Complete?」 Phys Rev 48, 696 (1935).
【非特許文献3】D. Bohm. 「Wholeness and the implicate order.」 Routledge and Kegan London (1980).
【非特許文献4】J. S. Bell. 「On the Einstein-Podolsky-Rosen Paradox.」 Physics 1, 195-200 (1964).
【非特許文献5】J. S. Bell. 「Foundations of Quantum Mechanics.」 Ed. B. d'Espagnat, New York: Academic, 171 (1971).
【非特許文献6】A. Aspect, P. Grangier, G. Roger. 「Experimental Realization of Einstein-Podolsky- Rosen-Bohm Gedankenexperiment: a New Violation of Bell's Inequalities.」 Phys. Rev. Lett. 49, 91 (1982).
【非特許文献7】W. Tittel, J. Brendel, H. Zbinden and N. Gisin. 「Violation of Bell Inequalities by Photons More Than 10 km Apart.」 Phys. Rev. Lett. 17, 81, 3563-3566 (1998).
【非特許文献8】P. Kwiat, H. Weinfurter, A. Zeilinger. 「Quantum Seeing in the Dark.」 Scientific American Nov. 1996.
【非特許文献9】M. Kasevich, P. Kwiat, H. Weinfurter, A. Zeilinger. 「Interaction-Free Measurement.」 Phys. Rev. Lett. 74, 24 (1995).
【非特許文献10】Z. Zhao, Y. Chen, H. Briegel et al. 「Experimental demonstration of Five photon entanglement and open-destination teleportation.」 Nature 430, 54-58 (2004).
【非特許文献11】M. Nielsen, I. Chuang. 「Quantum Computation and Quantum Information.」 Cambridge (2000).
【非特許文献12】W.H. Zurek. 「Decoherence and the Transition from Quantum to Classical.」 Los Alamos Science Number 27 2002.
【非特許文献13】H. E. Brandt. 「Quantum Computation: The Grand Mathematical Challenge for the Twenty First Century and the Millennium.」 Proc. Am. Math. Soc. (17-18 Jan 2000).
【非特許文献14】J. D. Franson. 「Bell Inequality for Position and Time.」 Phys. Rev. Lett. 62, 19 (1989).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、コミュニケーションのための改良スピード及び安全を可能にする情報伝達装置を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
故に本発明の第1の態様は、以下を含む検出装置を提供する。スプリッタ、検出器、スプリッタと検出器の間に定義された第1及び第2の経路、スプリッタは入射粒子のパラメータの値に応じて入射粒子を第1又は第2の経路に向けるよう配置されている、第1及び第2の経路の少なくとも一つに配置された操作装置であって、パラメータの値が重ね合わせにある粒子がスプリッタに衝突し、粒子の波動関数が第1及び第2の経路の両方に向けられた場合、操作装置は波動関数に作用し、検出器の近傍又は検出器において、第1及び第2の経路に向けられた波動関数の部分どうしの干渉を可能にする。
【0006】
好適にはスプリッタは偏光スプリッタであり、入射粒子のパラメータは入射粒子の偏光方向である。
【0007】
好ましくは、偏光スプリッタは第1の偏光方向を有する粒子を第1アームに向け、第2の偏光方向を有する粒子を第2アームに向けるように配置され、ここで第1及び第2の偏光方向は互いに約90°異なる。
【0008】
好適には、操作装置は第1の経路に設けられた旋回装置を含み、第1の経路を通過する偏光粒子の偏光方向を変えることができる。
【0009】
好適には、旋回装置は第1の経路を通過する偏光粒子の偏光方向を約90°変えることができる。
【0010】
あるいは第1及び第2の経路に第1及び第2の旋回装置がそれぞれ設けられ、それぞれの経路を通過する偏光粒子の偏光方向を変えることができる。
【0011】
好ましくは、旋回装置は、それぞれの経路を通過する粒子の偏光方向の差が90°に変えられるよう、粒子の偏光方向を変えることができる。
【0012】
好適には、操作装置は、第1の経路を通過する粒子の波動関数の一部と干渉するように粒子を発するように設定された操作粒子源を含み、結果として、偏光スプリッタによって第2の経路に向けられた粒子の波動関数の一部の偏光方向とほぼ等しい偏光方向を有する少なくとも成分を有する波動関数を与える。
【0013】
好適には、操作装置は、第1の経路に配置され、入射粒子の偏光方向に応じて、入射粒子を検出器か他の方向に向けるよう設定された更なる偏光スプリッタを更に含む。
【0014】
好ましくは、操作粒子源は、そこから発せられた粒子が、更なる偏光スプリッタによって検出器に向けられた粒子の波動関数の少なくとも一部と干渉するように、更なる偏光スプリッタに向けて粒子を発するように設定されている。
【0015】
好適には、操作装置は、第1の経路の有効経路長を変えるよう設定された位相変換部を更に含む。
【0016】
好適には、第1及び第2の有効経路長は、パラメータの値が重ね合わせにある粒子が偏光スプリッタに衝突した場合に、粒子の波動関数が第1及び第2の経路の両方に向けられ、第1及び第2の経路に向けられた波動関数の部分どうしで干渉が生ずるよう設定されており、検出器における干渉は弱め合いとなり、そのため検出器によって粒子が検出されない。
【0017】
好ましくは、単一の値のパラメータを有する粒子が偏光スプリッタに衝突し、第1の経路又は第2の経路のいずれかに向けられた場合、粒子はそこでの検出のために検出器に向けられる。
【0018】
本発明のその他の態様は、下記を含む情報伝達装置を提供する。情報粒子源、第1の場所に設けられたフィルタであり、所定の値のパラメータを有する粒子のみがそこを通過できるよう設定されたフィルタ、及び第2の場所に設けられた検出装置であり、確定されたパラメータの値を有する入射粒子と、粒子の値が重ね合わせにある入射粒子との識別ができるよう設定された検出装置。
【0019】
好適には、検出装置は上記のいずれかに係る検出装置である。
【0020】
好適には、パラメータは粒子の偏光方向であり、フィルタは偏光フィルタである。
【0021】
好ましくは、情報粒子源は粒子対を発することができ、それぞれの対の一つの粒子はフィルタに向けられ、それぞれの対のその他の粒子は検出装置に向けられる。
【0022】
好適には、粒子対の一つの粒子がフィルタを通過する経路上の位置と、粒子対の一つの粒子がフィルタを通過しない経路外の位置との間を、フィルタは移動させられる。
【0023】
好適には、情報粒子源から発せられる粒子は、物質粒子である。
【0024】
本発明のさらなる態様は、以下を含む情報伝達装置を提供する。粒子対を発することができる情報粒子源であって、対における第1の粒子は第1の場所に向けて発せられ、対における第2の粒子は第2の場所に向けて発せられる。第1の場所に設けられたフィルタであって、フィルタによって各々の粒子対における一つの粒子が吸収される経路上の位置と、フィルタによって各々の粒子対における一つの粒子が吸収されない経路外の位置との間を移動可能である。及び第2の場所に設けられた検出装置であって、相対的に短いコヒーレンス長を有する入射粒子と、相対的に長いコヒーレンス長を有する入射粒子とを判別可能である。
【0025】
好ましくは、情報粒子源は少なくとも三順位原子構造を有する物質のサンプルを含み、電子として発せられた粒子対の粒子の一方は、構造内で第1順位から第2順位に移動し、電子として発せられた粒子対の粒子の他方は、構造内で第2順位から第3順位に移動する。
【0026】
好適には、検出装置は以下を含む。スプリッタ、検出器、スプリッタと検出器の間に第1及び第2の経路が定義され、第1の経路の経路長は第2の経路の経路長よりも長く、粒子がスプリッタに衝突し、粒子の波動関数が第1及び第2の経路に向けられた場合に、第1及び第2の経路に向けられた波動関数の部分どうしが検出器において、又は検出器の近傍で、互いに干渉するように装置はされている。
【0027】
好適には、情報粒子源は波動関数が互いにエンタングルされた粒子の対を発することができる。
【0028】
好適には、情報粒子源からフィルタへの経路長は、情報粒子源から検出装置までの経路長よりも短い。
【0029】
好適には、一対の経路長モジュールが提供され、経路長モジュールのそれぞれは入力及び出力を有し、それらの間の経路長を定義する。経路長モジュールの経路長は互いにほぼ同じであり、経路長モジュールの観察者からは隠されている。経路長モジュールの一つは情報粒子源からフィルタへ向かう粒子がそこを通るように配置され、もう一つの経路長モジュールは情報粒子源から検出装置に向かう粒子がそこを通るように配置される。
【0030】
好適には、情報粒子源から発せられた粒子は光子である。
【0031】
本発明のその他の態様は、第1の伝達装置のフィルタが第2の伝達装置の検出装置の近くに配置され、第2の伝達装置のフィルタが第1の伝達装置の検出装置の近くに配置されるよう配置された上記の第1及び第2の伝達装置を含む情報伝達装置を提供する。
【0032】
本発明の更なる態様は、上記に係る検出装置を提供するステップ、及び入射粒子を検出装置に向けるステップを含む粒子の検出方法を提供する。
【0033】
本発明のその他の態様は、下記ステップを含む情報伝達方法を提供する。所定の値のパラメータを有する粒子のみそこを通過させるフィルタを提供すること、確定されたパラメータの値を有する入射粒子と、粒子の値の重ね合わせにある入射粒子とを判別可能な検出装置を提供すること、各々の粒子対における一つの粒子がフィルタに向けられ、各々の粒子におけるその他の粒子が検出装置に向けられる粒子対を発することが可能な情報粒子源を提供すること、及び各々の粒子対における一つの粒子がフィルタを通過する経路上の位置と、各々の粒子対における一つの粒子がフィルタを通過できない経路外の位置との間でフィルタを移動させること。
【0034】
好ましくは、検出装置は上記に係る検出装置である。
【0035】
本発明のその他の態様は、以下のステップを含む情報伝達方法を提供する。そこに入射する粒子を吸収のみするフィルタを提供すること、相対的に短いコヒーレンス長を有する入射粒子と、相対的に長いコヒーレンス長を有する入射粒子とを判別可能な検出を提供すること、各々の粒子対における一つの粒子がフィルタに向けられ、各々の粒子対におけるその他の粒子が検出装置に向けられる粒子対を発することができる情報粒子源を提供すること、及び各々の粒子対における一つの粒子がフィルタを通過する経路上の位置と、各々の粒子対における一つの粒子がフィルタを通過しない経路外の位置との間でフィルタを移動させること。
【0036】
好適には、情報粒子源を提供するステップは、少なくとも三順位原子構造を有する物質のサンプルを提供することを含み、電子として発せられた粒子対における粒子の一つは、構造内で第1順位から第2順位に移動し、電子として発せられた粒子対における粒子のその他の一つは、構造内で第2順位から第3順位に移動する。
【0037】
好適には検出装置を提供するステップは、スプリッタ、検出器、スプリッタと検出器の間に定義された第1及び第2の経路を提供することを含み、第1の経路の経路長は第2の経路の経路長よりも長く、装置は、粒子がスプリッタに衝突し、粒子の波動関数が第1及び第2の経路の両方に向けられた場合に、第1及び第2の経路に向けられた波動関数の部分どうしが、検出器において、又は検出器の近傍において、互いに干渉するようにされている。
【0038】
好ましくは、情報粒子源からフィルタへの経路長は、情報粒子源から検出装置への経路長よりも短い。
【0039】
好適には、経路上の位置にフィルタを配置することは、第1のバイナリ状態をコミュニケーションするために用いられ、フィルタを経路外の位置に配置することは、第2のバイナリ状態をコミュニケーションするために用いられる。
【0040】
好適には、方法は一対の経路長モジュールを提供するステップを更に含み、経路長モジュールのそれぞれは入力と出力を有し、それらの間に経路長を定義する。それぞれの経路長モジュールの経路長は実質的に互いに同じであり、経路長モジュールの観察者から隠されている。方法は更に、情報粒子源からフィルタへ進む粒子がモジュールの一つを通過し、情報粒子源から検出装置へ進む粒子がもう一つのモジュールの通過するよう、経路長モジュールを設定するステップを含む。
【0041】
好ましくは、方法は、第1のフィルタが第2の検出装置の近傍に配置され、第2のフィルタが第1の検出装置の近傍に配置されるよう、第2のフィルタ及び第2の検出装置を提供するステップを含む。
【0042】
好適には、方法は、第1の検出装置及び第2のフィルタの位置で、第2の検出装置及び第1のフィルタの位置からの情報を受け取るステップと、情報を受け取った後、予め定められた時間の長さの範囲内で、第2の検出装置及び第1のフィルタの位置に確認シグナルを伝達するステップを更に含む。
【0043】
好適には、方法は暗号化された情報を伝達するステップを更に含む。
【0044】
本発明のその他の態様は、以下のステップを含む情報伝達方法を提供する。粒子に作用可能なフィルタを提供すること、粒子対を発することができる情報粒子源を提供すること、粒子対における粒子の波動関数が互いにエンタングルされており、各々の対における一つの粒子は検出装置に向けられ、各々の対におけるその他の粒子はフィルタに向けられ、検出装置は、粒子対のその他の粒子がフィルタに作用された時の粒子対の一つの粒子と、粒子対のその他の粒子がフィルタに作用されなかった時の粒子対の一つの粒子とを判別可能であり、及び各々の粒子対における一つの粒子がフィルタを通過して第1のバイナリ状態を検出器に伝達するような経路上の位置と、各々の粒子対における一つの粒子がフィルタを通過せずに第2のバイナリ状態を検出器に伝達するような経路外の位置との間でフィルタを移動させること。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明がより容易に理解されるように、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態が実施例として説明される。
【0046】
【図1】セットアップの概略図であり、光子は偏光ビームスプリッタに入射される。
【図2】本発明の実施の形態に係る第1の情報伝達装置の概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る第2の情報伝達装置の概略図である。
【図4】本発明が用いる原子系のエネルギー順位の図である。
【図5】図4の原子系を用いる装置の概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る第3の情報伝達装置の概略図である。
【図7】物理的に安全な量子チャネルの概略レイアウトである。
【図8】球状に分布した粒子の源の概略図である。
【図9】遅延選択干渉実験の部材の概略図である。
【図10】図10a乃至図10cは、繰り返しコヒーレント審問による非干渉測定を説明するための図を示す。
【図11】2つの異なるアプローチを用いるほぼ同時の事象の2つの時空間図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
多体系を扱う時、量子力学(QM)の形式論は系の変数を観測するための基準を必要とする。このように、我々がn−体系を有する場合、位置に関し我々は基底状態|X1..Xn〉のセットを持ちうるであろう。これに基づき、物理的性質は波動関数|Ψ〉から導出される。系の状態は、1次の線形微分方程式によって展開する。
【数1】

【0048】
これは、波動関数の完全な確定的展開を示すが、観測は確定的でなく、測定値Mと〈Ψ*|M|Ψ〉は作用素Mの固有状態の一つに収縮する。2つの粒子が空間的隔たりによって分離され、観測が実施された場合における波動関数Ψ(x,x)によって記述される2体系の概要を作り上げることにより、QMの形式論はなお正しかったか否かをEPR(非特許文献1参照)の論文は問うた。もし系が波動関数のみで記述された場合、粒子の一つの観測は波動関数の収縮を招くように思われ、遠方のもう一つの粒子の物理的性質を瞬時に確定するように思われる。
【0049】
アインシュタインは反発し、粒子に生得的な古典的、客観的性質を有することを望み、従うべき特殊相対性理論を望んだ。このようにQMは過度の隠れた変数を要求し、不完全であるように思われた。まるでまっぷたつに割られ、2つのブラックボックスに隠されたコインのように。「表」であることを明らかにしたある遠方の観察者は、その他の遠方の観察者が裏を持ったことを知る。系は観察者が単に明らかにした状態を既に有していた。「シュレディンガーの猫」のような他の観測パラドックスは、深い哲学的問題をも浮かび上がらせた。
【0050】
ボーア(非特許文献2参照)と補足性の原則(あるいはコペンハーゲン解釈)に係るこの困惑の解決法は、まるであたかもそれらが古典的に存在しているように、観測されていない量について人は話してはならないということであった。我々は交換可能な観測量の相補的な対を計測することができるだけである。このため、PXとY又はPYとXであり、PXとX又はPYとYでない。観測の局面は互いに相補的であるように思われ、観測によって許される状態に系をおくように確かに思われる。断固とした論理的実証主義理論におけるこのもっともらしい言い直しは、観測されるまでは何も存在しないということである。このようにEPRの議論は誤って導かれていた。この観点において、測定値は観測前に存在していなかった。観測の実施と総ての観測装置が考慮に入れられた時に、情報を超光速で送信する陰謀はない。
【0051】
一方QMは多大な成功に貢献し、明らかに潜在的な哲学的非客観性によって困惑されることは少なかった。しかし、ある者はボーアの立場を蒙昧主義者のそれとみなし、隠れた変数が存在するのではないか、この明らかな超光速コミュニケーションがそうではなくあり得ないというEPRの観点の拒絶における現実の現象ではないかと考え始めた。特にボーム(非特許文献3参照)(と初期のド・ブロイ)は、情報のみを運ぶ「量子ポテンシャル」又は「パイロット波」はQMを説明できるのか、そしてこの装置の付加により古典的な立場に戻せるのかと考えた。この隠れた情報は超光速で送られる必要があるということがなおも証明され、それが実験的に検証できる現実的な何かであるのか不思議がるのは当然であった。ベル(非特許文献4、5参照)は古典的な現実主義に対する量子の予測を検証するための単純化されたEPR装置を思いついた。前者は、空間的隔たりにわたる観測において、古典的な場合よりも相関性を生じる。図1はセットアップの本質を示しており、そこではエンタングル光子源があり、光子Sは偏光ビームスプリッタ(PBS)に入射し、そして検出器は水平及び垂直光子をピックアップする。
【数2】

【0052】
同時モニタCMは検出器DH,DVにおけるシグナルの期待値を計算することができる。
E(1,2)=PHH(1,2)+PVV(1,2)−PHV(1,2)−PVH(1,2)
【0053】
ベルの不等式は計算され、そこで素数は異なる角度のPBSに寄与する。
|E(1,2)+E(1’,2’)+E(1’,2)−E(1,2’)|=2 式3
【0054】
下記の確率に注意してほしい。
HH(1,2)=PVV(1,2)=1/2cos(θ−θ)及び
HV(1,2)=PVH(1,2)=1/2sin(θ−θ
ここで、θはPBS1の角度であり、θはPBS2の角度である。
【0055】
期待値はE(1,2)=cos(θ−θ)として計算する。
【0056】
「ベル角度」と呼ばれるθ=3π/8、θ’=3π/8、θ=π/4、θ’=0のため、ベルの不等式はやぶれ、次式が生じる。
|E(1,2)+E(1’,2’)+E(1’,2)−E(1,2’)|=2v2
【0057】
アラン・アスペ(非特許文献6参照)らはこれを示し、事後相関は観測された光子対の状態間に生じたと認識されることができるという、多くの人々の合理的な疑問を凌駕した。10kmまでにわたる新たな実験(非特許文献7参照)は空間的隔たりを無意味にしたかに見える。
【0058】
このメカニズムを経るシグナリングは、量子計測の不確定性から不可能ではないかと最近考えられている。偏光器による変調は、我々のバイナリ数とその相補物が、意図された時間の半分でシグナルされることをもたらす。
【0059】
(装置)
単純に、我々は遠隔信号機にエンタングル光子の波動関数を水平及び垂直成分に収縮させ、そして遠隔受信機にその相補物を観測させて、バイナリコミュニケーションのスキームをセットアップすることはできない。観測行為は不確定であり、信号機が水平状態に収縮させたくとも、彼はこれを時間の半分で達成するのみであろう。シグナルは全面的にノイズに埋もれるようになる。ベルのチャネルに未だ懐疑的な相対論者達は、この限界を、まるで因果律及び物事のスキーム上の彼等の神聖不可侵な思考を守るかのように大喜びする。
【0060】
我々が非収縮状態をバイナリ数として、収縮状態のいずれかをその他として使用できる場合、観測の不確定性は克服される。図2は、コミュニケーションチャネルとしてのエンタングル光子(対1及び2)の光源(S)を示す。偏光変調器と干渉計の間の距離は、光子の伝播を示す線における二重の遮断線によって示されている。(偏光ビームスプリッタPBSを介した)干渉計のセットアップによる光子状態の非弱め合い観測(非特許文献8、9参照)は、収縮状態と非収縮状態を判別するであろう。
【0061】
平行成分は光源からの垂直成分と干渉しないため、対角線のアライメントにするために、平行及び垂直アームの両方はファラデー旋光器又は類似物によってz軸に対して回転させられる。バイナリ0をシグナルするために、エンタングル光子はコミュニケーションチャネルを経由して送られる。これは、遠方の偏光フィルタを透明にすることにより達成される。干渉計において最小のシグナルを与えるため、入射光子は弱め合い干渉長に供される。非エンタングルメントが伝搬され、非弱め合い干渉によって検出器で最大シグナルが生じるよう、フィルタが平行又は垂直である時に、バイナリ1が生じる。なお干渉計は、光源から変調器以上に遠くに配置されている。
【0062】
現実には、いくつかの要因が確率を理想から遠ざける。光源からの非エンタングル光子の照射、不完全な光学系、及び不完全な経路長など。バイナリ状態を識別するために、これら2つのシグナルの違いを増幅することは容易いのだが。なお伝搬の瞬間に、光子は既に変調器と検出器に既に存在する。シグナルは質量エネルギーによって伝搬されず、量子状態のみが伝搬される。また状態はコピーされないので、「複製不可能定理」は当てはまらない(非特許文献11参照)。
【0063】
一般的にはいくつかの理由により、計算される確率は検出器の出力信号におけるとても僅かな変調に過ぎないであろう。光子のほとんどはエンタングルしないであろう(典型的なダウンコンバージョンプロセスによれば僅か1:1010)し、光学系と経路長は理想に達しないであろう。そのため情報を運ばない大きなバイアスシグナル上にシグナルが乗るであろうが、検出器から増幅器へのACカップリングはこれを判別し始めることができる。干渉計の2つのアームの間の経路差を許容し、正確な干渉のために、ビットあたり数十の光子が送られる。
【0064】
図3を参照して、その他の実施の形態が下記で説明される。
【0065】
水平成分は光源(A)からの垂直成分と干渉しないため、PBS2を介するその他の光源(非特許文献9参照)(B)とのエンタングルメントによって、我々は水平光子を再生する。簡便のため、光源(B)は光源(A)と同じパワーを有する。遅延された|H2〉のテンソル産物と光源(B)により、エンタングルされた垂直光子が生じ、それはそれ故に、チャネル/光源(A)に共鳴する情報を含む。干渉が検出器で生じるよう、位相情報は状態ベクトル上に示される。なお、第2のPBSからの未使用の水平光子が空間を進むことは許容されるべきであり、問題のない僅かなエンタングルメントは検出前に消失される。
【0066】
バイナリ0をシグナルするために、エンタングル光子がコミュニケーションチャネルAを介して送られる。これは離れた偏光フィルタを透明にすることによって達成された。干渉計において、入射した光子(光源A,B)の様相は共同して最小のシグナルを与える。非エンタングルメントが伝達されるようにフィルタが水平か垂直のいずれかである時に、バイナリ1が生じる。
【0067】
検出において、下記の(理想的な)確率と、これによる検出器におけるシグナルの強度が記される。
【数3】

【数4】

【0068】
一般的に、位相δの調整によりP≠Pである。他の選択肢として、干渉計中における第2のアームと干渉させるために、PBS2からの水平出力にファラデー旋光器を使用可能である。現実には、様々な要因が確率を理想から遠ざける。光源からの非エンタングル光子の照射、不完全な光学系と不完全な経路長などである。バイナリ状態の識別のためにこれら2つのシグナルの差異を増幅することは容易いことなのだが。なお伝送の瞬間に、光子は既に変調器と検出器に存在する。シグナルは質量エネルギーによって伝送されず、量子状態のみが伝送される。なお状態はコピーされず、「複製不可能定理」は当てはまらない(非特許文献10参照)。
【0069】
ここに付け加える、古典的なデータを量子チャネル下に送る更なる方法は、フランソン(非特許文献14参照)によって展開されたように、場所と時間に関してベルの不等式を用いることである。この方法は、長距離の光ファイバケーブルに渡るコミュニケーションに有利である(非特許文献7参照)。その本質は、三順位原子系(Ψ,Ψ,ΨGnd)によってエンタングル光子を生成することである。
【0070】
図4に示したものは、原子系のエネルギー順位の概略図である。系がグラウンド状態からτ1のライフタイムをもつΨの状態に励起された時、光子γ1が生成される。次に系は、Ψの状態よりもかなり短いτ2のライフタイムをもつΨ2の状態になる。これらの光子の観測において、同時検出はτ秒離れた2つのイベントをモニタすることを我々は見いだす。単一の粒子を検出する確率は以下(η検出器効率)で与えられる。
【数5】

【0071】
そこで光子伝搬の演算子は真空状態|0〉から粒子を生み出し、以下のハイゼンベルク表示(展開演算子との一定状態)で与えられる。
【数6】

【0072】
フランソン(非特許文献14参照)による図5に示された装置を考えてみよう。光源は光子γ,γを発し、それらは続いてレンズL,Lでコリメートされ、そして光子γ,γのみがそれぞれ通過するよう、(F,F)でフィルタされる。銀蒸着半透鏡M,Mは、光子を短い経路S,Sのみならず長い干渉経路L,Lに沿って検出器D,D,D’,D’に進ませる。
【0073】
まず検出器D,Dにおけるシグナルを考えてみよう。2つの光子の同時検出は下記式で表される。
【数7】

【0074】
時間のオフセット窓ΔTがτよりかなり大きい場合、この像は予測されるようにゼロになる傾向がある。銀蒸着ミラーを長い経路L,Lに挿入し、位相がΦ,Φシフトすると、(一つの粒子に対する)検出器における波動関数は、下記で与えられる。
【数8】

【0075】
フランソンは干渉経路のこのシナリオにおける検出器D1,D2の間の同時カウントを得ることができる。
【数9】

【0076】
これは、再び非局所的効果を示すベルの不等式である。空間的隔たりに設定された位相Φ,Φは同時カウントを瞬時にコントロールする。直感的に、これは以下のように理解される。光子γ,γが生成された時、それらはエンタングルされており、状態Ψ,Ψのライフタイムである両方の光子の(τ+τ)の検出のための時空間(そしてこのため干渉計における干渉長)において不確定性を共有している。第1の光子γの検出(観測)はより短いτの時間フレームにおける第2の光子γの検出を保証する。Lのような自己干渉経路のセットアップは、波動関数の「コヒーレンス長におけるこの変化」を観測するであろう。
【0077】
ここに示されたように、波束の時空間相関のこの特別な方法を用いる、古典的なバイナリ数を量子チャネルに送るスキームを実行するために、図6に示された装置が述べられる。
【0078】
再びプロトコルは、バイナリ0は変調(M)がないものとして表現され、バイナリ1はγ,γの間の組み合わせ波動関数の収縮で表現される。変調器は吸収体であり、カーセル又はポッケルセル装置で作られた電気シャッターであり得る。ビット時間は干渉計を通る伝達時間より長い。第2の状態Ψのライフタイムは干渉計を通る伝達時間より長い。
【0079】
再び、光源を干渉計と変調器の間に等距離となるようセッティングし、介入者攻撃を防止する変調器の前に如何なる情報は存在しない。波動関数の収縮及び変調器の観測による干渉長の変化は第2の粒子に作用する干渉計に反映される。干渉は、ゼロ変調が検出器での最小のシグナルとなるよう(弱め合い干渉)、変調が最大のシグナルとなるよう(強め合い干渉)設定される。
【0080】
(物理的に安全な量子チャネル)
図2に示した干渉計と変調器を2つ用いることによって、全二重量子チャネルがセットアップされることができる。このチャネルは「介入者攻撃」に対して安全である。なぜなら情報はチャネルの両端のみに存在するからである。いかなる非コヒーレント測定も波動関数を収縮させ、ランダムなノイズのみが残される。正確な位相長を伴わないコヒーレント測定は、エンタングル光子のみが知覚されるので、一定のバイナリ数を生ずる。伝達ステーションどうしの距離がよく知られているため、位相長が推測されることができた場合、チャネルへの進入は大規模で明らかな混乱をもたらし、シグナル伝達の損失をもたらす。よってモニタリングは安全性へのこの侵害をとらえることができる。
【0081】
しかし、チャネルの両端に秘密のランダムな位相長を導入することによってさらなる観測がされることができる。例えば光ファイバケーブルの長さは、チャネルの導入者でさえ位相長が分からないように、(X線、超音波、テラヘルツ放射線等による)検査に対して不透明なブラックボックスの中で、揃えられた対にされて、機械的に調整される。もしコミュニケーションチャネルの正確な機械に挿入されず、秘密の位相長を確認するために時間領域反射装置に挿入された場合、安全隠蔽装置も装置を破壊する。安全な組み合わせ工程はこのようする。
【0082】
変調距離の前でなく後に情報が存在する時に、もし傍受者が長い方の長さを推測した場合、ランダムな位相長装置による防護のさらなる側面がある。チャネル位相長及びランダム位相長の許された時間枠内の周期的な認知プロトコルは、誤った長さが挿入されたことを確認する。サブナノ秒の解像度は、キロメータレベルになりうる全チャネル長において、解像度をセンチメートル単位に落とし込む。位相の固定は簡単なことではないだろう。
【0083】
チャネルは自然界において量子であるにもかかわらず、キュービットでなくビットを古典的に送信するために用いられている。そして古典的なディジタルチャネルのための総ての一般的な暗号測定も適用する。この物理的に安全で、古典的に安全なチャネルは(クラッキングがないという意味において、RSAコードは、総ての物理的防護手順は克服された)、銀行内の送金や軍事情報のような機密情報の伝達に大きな恩恵となる。図7は、上述した物理的に安全な量子チャネルの概略レイアウトを示す。
【0084】
(考察)
ベルの理論及びアスペの実験に付け加えて、情報の瞬間伝送のための装置と議論が示されてきた。当然、相対論との矛盾について心配はあるが、確率の保存を保証するためには、自然は常に情報を超光速に送信しているに違いないことが示されるだろうし、合理的で一貫する宇宙の観念が生じる。実験は既に存在しており、それは繰り返しコヒーレント審問/無侵襲計測のような純粋な情報のみを運ぶ「量子ポテンシャル(非特許文献3参照)」の効果を示している。ここにおいて、波動関数は検査対象へのエネルギーの転送無しに実験環境を探る。不可避的に、時空間の我々の観念は以下に示す提示によって変えられるはずである。
【0085】
確率の保存は、量子状態情報の超光速伝送を要求する。
【0086】
QMにおける正規化波動関数の確率密度は、波動関数の二乗で与えられる。
ρ(r,t)=|Ψ(r,t)| 又は
【数10】

【0087】
もしそのコンセプトに何らかの理があれば、確率は保存され一連の式に従う。
【数11】

【0088】
上記関係にシュレーディンガー方程式を適用することにより、確率流密度jは下記のように導かれる。
【数12】

【0089】
単位時間あたりに一つと数えられるほどゆっくりと発せられた粒子(図8)の球状の源をあげる。球状に設けられているため、(例えば)直径における1光年は検出器の表面である。確率が保存されるよう、光年直径の波動関数はランダムに収縮し、(局在的になる)ので、検出イベントにつき一つの粒子のみが数えられる。今日の思想では、波動関数は何か「現実のもの」として知覚されず捨てられる。そして粒子が遡及的に経路に沿って進んだと言うために、古典的な経路は光源からイベントを記録する検出器に帰される。
【0090】
しかし遅延選択干渉実験(図9)によって例証されたように、波動関数そのものを捨て、観測前に古典的概念を適用しようとすることは問題がある。装置に入った光子は銀蒸着半透鏡Aに入射する。2つの検出器1及び2は、それが装置に入ってきた時に、粒子がどの経路を通ったかを明らかにすることができる。装置に挿入された第2の銀蒸着半透鏡Bは経路に干渉をおこさせる。光子の記録が干渉計の両方のアームがなぞられたことを意味するように干渉長が設定されていれば、もし我々が再び装置を巨大な大きさに拡大した場合に、これは古典的思考態様に問題を引き起こす。古典的に、光子(又は粒子)はアームのいずれかに沿って進んだが、両方ではなかった。確定はミラーAでなされた。もし我々の装置のアームが光年にわたる長さであれば、光子が装置に入射した後にミラーBを挿入することは、光子がどの経路を経由したか、あるいは波として行動し、装置に入射した後に両方のアームを使用すると決定したかどうかを確定するように見える。
【0091】
波動関数の物理的存在の真実を全く考慮しない現在の思想は、これらの現象を説明しようとする難局に陥る。何かが空間を進んだことは間違いないのに、観測されるまで光子は本当は存在しないというボーア/コペンハーゲンの観点の当惑を我々は見てきた。観測においてシュレーディンガーの方程式が常に従わられるように、多言を要する説明は各々の検出イベントシナリオでの分離された宇宙を必要とする。(一つの宇宙でも有効な)その他の考えは、イベントを記録する検出器は、どの経路をとったか確定するために、情報を第1のミラーに送り返すというものである。これは先進及び遅延波動関数である。ここでの問題は、遅延選択実験にある。この観点において、情報は時間内に戻された。
【0092】
オッカムの剃刀をこの量子観測プロセスの解釈に適用し、自然は波動関数の全体にわたって観測環境の外で「感じて」いて、超光速で情報を送っているということを、完全にシンプルに受け入れることは合理的である。このため図7において、波動関数は明るい球状上の検出器の表面と相互作用し、イベントにつき一つの粒子のみが記録されるよう企てる。このため確率が保存される。同様に図9において、波動関数は装置を通過し、一貫する結果を保証するためにミラーBと検出器に衝突する。
【0093】
自然は、超光速伝送によって、その状態変数を抑え込むスキームを持っていると我々は提案する。そのため「確率の保存」のような概念は破れない。次のセクションでは非干渉測定を見る。そこで対象物は、限界において、そこに入射する光子なしに想像される。なぜならそれは波動関数によって審問されるからである。
【0094】
(繰り返しコヒーレント審問による非干渉測定)
この論文に形成されようとしている概念は、物理学における現実の対象としての波動関数の優位性であり、物理学における時空間の理解の現状への、超光速にコミュニケートするその能力の影響である。量子非侵害測定の分野(非特許文献8、9参照)であるから、波動関数の現実世界の物理的影響が疑われることはできない。これの本質は、下記の概略図に示される。
【0095】
図10aは干渉計のセットアップを示しており、そこではコヒーレント光子源が(銀蒸着半透鏡である)第1のビームスプリッタに入射し、第2のところで再結合する。検出器D−Darkはビームが弱め合い干渉するように設定されたコヒーレンス長を有し、一方検出器D−Lightは強め合い干渉用に設定されている。図10bにおいて、不透明な物体が干渉計の一つのアームに配置されている。D−Darkの発火は、光子が干渉することなく装置を通過したことを示す。それは光子が一つのアームのみを経てきたということである。時間の半分で光子は物体に吸収され、その他の半分で検出器に通り抜ける。観測装置に入射した光子の数の半分のみによって、物体は検出されたと我々は言うことができる。本願の範囲を超えるが、図10cはセットアップを示し(非特許文献8参照)、そこでは繰り返しコヒーレント尋問によって、この50%の限界が改善されることができ、限界において光子が物体に吸収されないことになる。
【0096】
このトリックは、ビームスプリッタ、回転子、及びミラーは、光子が物体のある一方のアームに入射する非常に低い確率を与えるにもかかわらず(δはとても小さく、サイドアームでsinδ>0であり、一方メインアームではcosδ>1である。)、波動関数は常に通り抜けるということであり、それは減衰せず(ポテンシャルバリアがない)、我々はΨ=AsinδでなくΨ=sinδを有する。なおAは何らかの減衰係数である。波動関数は常に環境を観測し、何度も装置を通過させられる。光子は光子と物体の相互作用の消滅確率を与えず、その存在の確実性を増す。最も低いミラーは、多数の通過の後、審問波動関数を消す。もしサイドアームが検出された光子のカウントによってブロックされた場合、定められた干渉長にある検出器は機能する。
【0097】
(空間における同時性、時間における同時性)
ローレンツ変換は、光シグナルの伝送時間(Vt’γとVx’γ/c)に帰する項を有していると理解されている。そして総てのローレンツ群は、双曲幾何学の時空間の回転とみなされる。絶対的な時空間の概念は去る。これが我々の「現実」観である。われわれが言わんとすることは、光速のシグナル(そこではチャージされていない!)にとって物理学は正しいが、改良された時間計測システムが、ベルのチャネルを用いるクロックで作られることができるということである。我々はx=x’γ及びt=t’γという変換を提案する。それは、物理学(例えば遅延ポテンシャルに対応すること)には使用できないが、哲学的に正しい。
【0098】
図11は、イベントA、行動Bについての、空間的隔たりにわたる超光速シグナルによるほとんど同時の事象の2つの時空ダイヤグラム図を示す。ローレンツの観点は因果律を誤らせる。一方、軸の「拡張収縮」観点はそれを正しくする。このように、客観的現実の平凡な(3空間+1時間)観点は空間に帰される。イベントは確定的な場所で総ての観察者に受け入れられる時間に起きる。宇宙は確定的で客観的なステージであり、そこでイベントの劇が生じる。ベルが提案したような同時性が保存される未知の好ましい参照フレームは必要ない。総ての観察者はこのスキームに同意可能であり、これはローレンツによって、理性が失われた前の1904年に最初に提案された。
【0099】
(量子の現実1:3次元におけるシュレーディンガー方程式)
超光速効果と波動関数の物理的実存は、我々に時空間の概念の変更を迫る。浮かび上がることは、長さと時間膨張効果を伴う、波動関数の光速以下の、3次元における動きの優位性である。波動関数は、空間にわたって量子粒子についての情報を運び、観測装置のような他の量子システムと相互作用する。我々は観測された時に何かが粒子であると言い、エネルギーや運動量のような一般的な概念がそれに帰される。この古典的で知的な古い考えは、最重要な概念としての波動関数の観点から我々が本当は考えなければならない時に、空間を移動する粒子の観点から我々に考えさせる。ΨEΨのようなそれへの操作は、情報そして物理学から、システムの物理的観測量を定義する。
【0100】
古典的世界と量子世界との間のギャップに橋を架けるために、教科書は我々に、古典的限界において、アクションが大きい場合、我々は特定経路や光線方程式又はハミルトン・ヤコビ方程式のような古典力学の幾何学的限界に達することを示し、我々の心を静めた。
【0101】
3次元における単一の粒子のためにシュレーディンガー方程式を解くと、我々は近似値を得る。
【数13】

【0102】
ここで位相Aは古典的行動で確認されるであろう座標系の実関数であり、Fは時間から独立した実又は複素関数である。hの小ささにより、位相の急速な変化はこの関数を小さい距離にわたるものとする。このため、最小のアクションの経路から離れた波動関数は急激に干渉して収縮し、限界において古典的経路の観念を与える。シュレーディンガー方程式における式4の代用は、下記式を与える。
【数14】

【0103】
古典的物理学を宣言し、波長をゼロにするのと等価なhをゼロとすることにより、1次及び2次の項の脱落は、下記式を与える。
【数15】

【0104】
波は単色であるという仮定の下、
A(x,y,z,t)=S(x,y,z)−hνt
=S−Et
【0105】
式6の代わりに、我々はハミルトン・ヤコビ方程式を得る。
【数16】

【0106】
なぜか量子効果は観念の外で望まれ、我々はスペクトルのフーリエ係数によって成分が与えられる波束として表される空間の粒子の考えによってさらにフェザーベッディングされる。粒子が計測されその位置と運動量が不確定原理により支配される狭い領域に落とし込まれた時に、波束が生ずるよう、これは適用される。図7の状況はこの波束の概念を無効にする。なぜなら、観測前は、波動関数は球面波eik.r/rで与えられるからである。我々が粒子の概念に場所と運動量を帰することができるのは、検出の後のみである。
【0107】
実際には、空間を進むのは波動関数であり、さらに図4において、「確率の保存が常に真となる」よう、波動関数は総ての検出器と共謀する。もしある光子がある時ある場所で観測されたならば、他の場所では観測されることはできない。多世界、増幅−減衰波(観測の予備知識−情報は未来から過去にさえ向かう!)のようなこの観測問題の公式の総てにオッカムの剃刀を適用し、瞬間につき一つの光子のみが観測されるように、総ての検出器が、情報の通過と共に波動関数によって超光速に結合されているということを、全くシンプルに認めるのは容易である。
【0108】
心にとって、量子力学を近似古典力学のように示すことはたやすい。古典力学を経て、我々は我々の時空の概念を得た。しかし我々はこのようなことをするのを止めるべきであり、3次元にわたって移動する波動関数の量子的現実に直面すべきである。強磁性、超伝導、分子の形状、及び結晶の形状のように、物事は古典的に説明することができなかった巨視的レベルに存在する。そして我々は時空についても同じことを認めなければならない。
【0109】
(量子の現実2:観測問題とデコヒーレンス)
量子力学は自然の記述であり、式1は常に真であるはずである。しかし観測は系を観測者の固有状態に落とし込み、このようにそれに確率を割り当てる。
【数17】

【数18】

【0110】
これがシュレーディンガー方程式から上記への非ユニタリ変換という、観測問題である。シュレーディンガーはこれを彼の有名な猫のパラドックスで強調した。そこで彼は、滑稽な比率に対するこの明白で非古典的な態度を強調するために、巨視的な観測装置に巻き込まれた微視的な量子イベントを提示した。結果として猫は死と生の状態の重ね合わせにされ、いつ誰によって収縮させられるのだろうか?
【0111】
これからの哲学的スピンオフのいくつかがボーアの相補性原理/コペンハーゲン解釈であった。波動関数、多世界の解釈、あるいは増幅/減衰波、そして予め定められた未来における事象が現在に影響を与えるという量子的超決定論を崩壊させる奇妙な心体/意識の効果。これに再びオッカムの剃刀を適用し、量子コンピュータ(非特許文献11参照)を作ろうとする試みの中で人々が実際に見ていること、及び純粋な状態を維持する困難性に気付くことにより、観測問題を説明する最も健全な候補はデコヒーレンス理論(非特許文献12、13参照)である。
【0112】
デコヒーレンス理論の中心は純粋状態と環境のエンタングルメントであり、系−環境密度行列からの系の縮約密度行列の計算は下記の通りである。
【数19】

単純なケースから始めると、2次元のヒルベルト空間における下記の状態によって記述される、閉ざされた2状態システムを考えてみる。
【0113】
状態|0>と状態|1>は直交である。QMにおける物理量を計算するための最も一般的な方法は、以下のように密度行列/演算子を使用することである。
【数20】

以下を与える。
【数21】

そして密度行列は、
【数22】

【0114】
直交成分は、系がいずれかの状態にあるかという確率を与える。非直交成分は、状態間の干渉を与える。演算子Aで表されるいかなる観測量の期待値は、密度行列と演算子行列との積の総和によって与えられる。
【数23】

【0115】
系は孤立して存在できず、ユニタリ発展を通して、通常非直交である状態|e>と状態|e>で表される環境とエンタングルするようになる。テンソル積をとると、密度行列は下記のようになる。
【数24】

【0116】
原理的に、我々は環境の状態を知ることができない。そのため我々は、トレースされた環境の状態の縮約密度行列のみ得られる。直交環境基底ベクトル|e>及び|e>は、このように使われる。
【数25】

【0117】
2状態システムの縮約密度行列は下記式で与えられる。
【数26】

このため、
【数27】

【0118】
式7と比較すると、我々はコヒーレンス項に対する修飾を見る。環境状態eとeは時間と共に発展し、環境は多くのエネルギー状態と共に真に広大であるため、時間(非特許文献12参照)の非常に僅かな期間において、eとeはそれらが直交であることを自身で見るであろう。例えば、各々の状態が(k…k,r…r)のような多くの変数の関数である場合、少なくとも一つの変化が全く異なる波動関数をもたらす。無限ポテンシャルの直方体のボックスの中の2つの粒子でモデルされた環境の部分のシンプルな例を考えると、一つの粒子の波動関数は下記で与えられる。
【数28】

【0119】
ボックスの次元はa,b,cであり、2つの粒子1,2の直交条件をとると、
【数29】

【0120】
直ちに波動関数は直交である。格子振動/熱緩和効果はa,b,cを時間とともに連続的に変化させるであろう。
【0121】
このように短い時間の後、我々の環境状態は直交になり、我々の密度行列は下記のようになりがちである。
【数30】

【0122】
すなわち、疑いなく、純粋状態の確率的な混合である。総ての密度行列はユニタリ状態で発展する。しかしそれは、波動関数の幻想に収縮と非ユニタリ変換を与える我々の系を心配するもののための、減縮されたトレースをとるという行動である。我々がボックスを開けるまで、シュレーディンガーの猫は既に死んでいるか未だ生きているかである。この実験のような大きな確率サンプルは縮約密度行列を与える。我々はどの猫が生きるか又は死ぬかを言うことはできないが、古典的統計力学における多粒子問題の確率空間と全く同じように確率を予測するのみである。
【0123】
(結論)
我々は超光速コミュニケーション/暗号化方法を議論してきた。量子ポテンシャルは、純粋な情報であり質量エネルギーを有しないにもかかわらず、現実で、それの工業的利用は考慮されるべきである。地球の周りを驚くべき早さで情報、スピーチ、及び絵を送ることを発見したマクスウェル、ヘルツ、マルコーニ、及びロジー・ベアードを迎えた1世紀前の驚きと同様に、その他のトリックが自然から締め出されたように思われる。ツァイリンガーら(非特許文献8、9参照)は非浸襲実験について議論してきた。そこでは、(限界において)実際に物体にエネルギーを与えることなく、X線が光源をイメージするのに用いられた。おそらく、医学的なイメージングに大きな恩恵となろう。暗号を理解すること、保存すること、及び研究することは、急成長する量子コンピュータの分野(非特許文献11参照)にとっても重要である。
【0124】
原理的なレベルにおいて、量子状態と環境とのエンタングルメントのプロセスは、この神秘的なプロセスを理解するためのなんらかの方法を与えているように思われる。そして量子力学の準古典的な観念は、シュレーディンガー方程式によって決定論的に発展する波動関数で常に本来的に明らかになる。
【0125】
考慮すべき皮肉がここにある。客観的実在(不確定及び観測問題)を明白に無視しているから、アインシュタインは量子力学(QM)を好まなかったというものだ。QMの現代の公式は、観測問題は、量子系がその環境とエンタングルするようになった時のコヒーレンスの欠如の一つと見ている(非特許文献12参照)。これは、どちらにせよ孤立した波動関数の発展のように、決定論的なプロセスである。場所と時間のその否定を伴う時空は、宇宙を神秘的、非客観的、そして非古典的にする。もし観測に依存するなら、我々はどうすれば独立した事象の存在を語ることができるのだろうか?目くそ鼻くそを笑う。時空は、光速以下で移動する質量エネルギーを含む作用のための、単なる計算/概念化ツールである。量子力学は論理を保ち、宇宙を3空間と時間の「客観的」状態に帰する。そこでは、同時に生ずる事象や物質までもが、明確な場所で観測から独立した時間に起きたり存在していたと言われることができる。もし我々が、量子状態(そしてその総ての従属物−量子法則)の流れの優位性を、古典的な粒子の代わりの(長さの収縮と時間の歪みの相対的効果を伴う)3世界と時間を進む波として受け入れたならば、古典的な「感傷」や直感はこのように物理学に帰ることができる。
【0126】
図に戻り、図2はシグナルコミュニケーション装置1を示す。装置は情報粒子源を含み、情報粒子源は、不確定性を有するが相関する偏光方向を有する粒子対を発することができる。好ましい実施の形態においては、粒子対が発せられた時、どちらの粒子の偏光方向も確定されないが、粒子の偏光方向は互いに90°異なるようにされている。運動量保存のため、粒子は反対方向に発せられることが好ましいであろう。下記においてより詳しく説明するように、情報粒子源は、粒子対の第1の粒子が偏光フィルタ2に向かう第1の方向に発せられ、粒子対の第2の粒子が検出装置に向かう第2の方向に発せられるよう設定されている。
【0127】
発明の好ましい実施の形態において、情報粒子源から発せられる粒子は光子である。
【0128】
偏光フィルタ2は、特定の偏光方向を有する光子の通過させるフィルタである。偏光フィルタ2は第1の位置に配置されるようにされており、そこで各々の粒子対の第1の粒子はフィルタに衝突する。あるいは偏光フィルタ2は第2の位置に配置されるようにされており、そこで各々の粒子対の第1の粒子は偏光フィルタ2を迂回し、前方に進み続ける。偏光フィルタ2は短時間の間に、第1及び第2の位置の間を動かされることができる。
【0129】
偏光フィルタ2の変調は、いくつかの手段によって実現可能である。第1の粒子の経路は、切り替え可能ミラーによって、透明経路と偏光経路の間で切り替え可能である。あるいはファラデー旋光器、カーセル、及びポッケルスセルのような電気シャッターとして機能する電気光学素子が(偏光ビームスプリッタの補助の下)、粒子の波動関数を1チャンネルから、水平又は垂直チャネルに好適な角度に設定された二重シンクロシャッターに対して水平又は垂直な2チャンネルに分割する。波面を回転させることにより、シャッターは自然に機能する。そしてバイナリゼロを伝達するために、透明な場合を実行するために、我々はクリアな伝送を有さなければならない。これは、開放にされた時のその偏光態様のため、シングルシャッターではできない。
【0130】
検出装置3は偏光ビームスプリッタ4を含む。偏光ビームスプリッタ4は入射粒子が遭遇する検出装置の最初の構成要素である。検出装置3は検出器5も含む。検出器5は情報粒子源から発せられたタイプの粒子を検出可能であり、このタイプの粒子が検出器5に衝突した時に、適切なシグナルを供給する。第1及び第2の経路は偏光ビームスプリッタ4と検出器5の間に定義される。粒子はいずれかの経路に沿って進み、検出器5に到達する。偏光ビームスプリッタは、第1の偏光方向を有する入射粒子が第1の経路に向けられ、第2の偏光方向を有する入射粒子が第2の経路に向けられるよう設定される(本実施例において、第2の偏光方向は、好ましくは、第1の偏光方向と90°異なる。)。
【0131】
好ましい実施の形態において、適切に傾けられたミラーMが設けられ、経路をやってきた粒子を検出器方向に導く。加えて、第1及び第2のファラデー旋光器6,7が各々の経路に配置され、第1の経路を進む粒子はその偏光方向をπ/4(つまり45°)回転させられ、第2の経路を進む粒子はその偏光方向を−π/4(つまり−45°)回転させられる。あるいは、単一のファラデー旋光器が配置され、第1の経路を進む粒子は偏光方向をπ/2(つまり90°)回転させられる。
【0132】
銀蒸着ハーフミラーあるいはその他の適切な装置(不図示)が検出器のそばに設けられ、いずれかの経路を進んできた粒子が同じ方向から検出器に到達するようにする。
【0133】
偏光フィルタ3は、検出器5の情報粒子源に対するよりも、わずかに情報粒子源の近くに配置されている。故に、各々の粒子対の第2の粒子が検出器5に到達する時までに、対の第1の粒子は偏光フィルタ2に衝突し、それ故、対の第1の粒子の偏光方向(そして、そのため、対の第2の粒子も)は確定されるか、あるいは粒子対の第1の粒子は偏光フィルタ2を迂回し、対の第1の粒子の偏光方向は確定されず、その場合、対の第2の粒子の偏光方向も確定されない。検出装置3を通る粒子の成り行きを、いくつかのケース毎に考察する。
【0134】
検出装置3に達する粒子の偏光方向が確定された場合、粒子は偏光ビームスプリッタ4を通過し、実際の偏光方向に応じて、検出装置3のアームの一方に向けられるだろう。粒子が向けられた方の経路がどちらであっても、粒子は検出器5に到着し、検出される。そして粒子の到着は、検出器5に適切なシグナルを生成させるだろう。
【0135】
検出器に到達した粒子の偏光方向が確定されなかった場合、粒子は偏光状態の重ね合わせにあることが理解されよう。偏光ビームスプリッタ4に衝突すると、第1の偏光方向を有する粒子に対応する粒子の波動関数の一部は第1の経路に向けられ、第2の偏光方向を有する粒子に対応する波動関数の更なる部分は第2の経路に向けられるだろう。
【0136】
第1及び第2の経路に沿って進む波動関数の部分が第1及び第2のファラデー旋光器6,7を通過する時、波動関数のこれらの部分に対応する粒子の偏光方向はそれぞれπ/4及び−π/4回転させられ、結果として等しくなる。波動関数の2つの部分は両方とも検出器5に到着し、互いに結合し、互いに重なり合う。2つの経路の相対的な長さは、この重ね合わせが検出器5での弱め合い干渉となるよう設定され、そのため粒子は検出されない。
【0137】
したがって検出装置3は、(対のその他の粒子が偏光フィルタに到達した時に第1の位置にある偏光フィルタ2によって)偏光方向が確定された入射粒子と、(もし粒子対のその他の粒子が偏光フィルタ2を迂回した場合に)偏光方向が確定されなかった入射粒子とを判別することができる。第1の場合では、粒子は検出器5で検出され、第2の場合では粒子は検出されない。
【0138】
量子チャネルにわたる古典的なバイナリデータ伝達プロトコルを実行するための変調器の機能を果たすために、偏光フィルタ2が透明にされた時、各々の対の第1の粒子は水平及び垂直成分の重ね合わせの状態のままにある。これはバイナリ0をシグナルする。偏光フィルタ2が垂直又は水平位置に置かれた時、水平又は垂直成分のみに収縮する第1の粒子の波動関数について観測はなされるであろう。これはバイナリ1をシグナルする。変調時間は、第2の粒子が干渉計を通過するのに充分であるべきであり、充分な粒子が検出器に到達し、良質なシグナル対雑音比を保証する。
【0139】
ファラデー旋光器6,7の目的は、第1及び第2の経路にそって進む粒子に対応する波動関数の部分を操作することであり、それによりそれらは互いに干渉する。この機能を満たす操作装置のさらなる例を以下説明する。
【0140】
図3は、本発明の実施の形態に係る第2のシグナルコミュニケーション装置8を示す。ここでも装置は情報粒子源、情報粒子源から距離を隔てて配置された偏光フィルタ、及び情報粒子源からこれも距離を隔てて配置された検出装置9を含み、粒子対は偏光フィルタ2と検出装置9のそれぞれに衝突する。しかし、第2のシグナルコミュニケーション装置8の検出装置9は、第1のもの用に供給された場合と異なる。これは下記で詳細に説明する。
【0141】
再び検出装置9は、第1の偏光方向を有する入射粒子が第1の経路に向けられ、(第1の偏光方向と90°異なる)第2の偏光方向を有する入射粒子が第2の経路に向けられるよう配置された偏光ビームスプリッタ4を含む。
【0142】
第2の経路は、第2の経路に沿って進行する粒子を検出器に向けるよう適度に傾けられたミラーMのみを含む。
【0143】
第1の経路は、第1の経路を進む粒子が通過しなければならない位相変換部10を含み、位相変換部は第1の経路の有効経路長に予め定められた長さを効果的に加える。例えば位相変換部10は、細心の注意を払って機械加工された長さを有するガラスのブロックである。
【0144】
更に偏光ビームスプリッタ11も第1の経路に設けられる。本実施例において、検出装置9は、水平な偏光方向を有する粒子が第1の経路に向けられ、(垂直な偏光方向を有する粒子が第2の経路に向けられるよう)設定されている。そして更なる偏光ビームスプリッタ11は、水平な偏光方向を有しそこに入射してくる粒子を更なる偏光ビームスプリッタ11を通過させ、垂直な偏光方向を有する入射粒子を検出器5に反射されるよう設定されている。
【0145】
更なる粒子源12も設けられ、(情報粒子源から発せられた粒子と同じタイプの)粒子を更なる偏光ビームスプリッタ11に向けて発するよう設定される。
【0146】
入射粒子が確定されていない偏光方向を有する場合、情報粒子源から第1の経路を経て来た粒子の波動関数の部分は、更なる粒子源12から発せられた粒子の波動関数と付加的に重ね合わせられ、そしてそれは垂直な偏光方向に対応する部分を持つようになる。これは、第1及び第2の経路を進んだ入射粒子の波動関数の部分どうしの検出器5における干渉を可能にする。前述したように、波動関数の2つの部分が弱め合い干渉するように2つの経路の長さは選択されるので、結果として検出器5で検出される粒子はない。これは、第1の経路に配置された位相変換部10の導入により達成される。
【0147】
したがって検出装置9も、偏光方向が確定されている入射粒子と、偏光方向が確定されていない粒子との判別が可能であることが理解されよう。
【0148】
図4に関して上述したように、2方向のコミュニケーションは、互いに平行で、情報が反対方向に伝達されるように設定された2つの伝達装置を使うことによって達成されることができる。
【0149】
この明細書及び請求項で使用された時に、「含む」及び「含んでいる」との語、及びそれらの派生語は特定の特徴、ステップ、又は完全体が含まれることを意味し、それらの語は他の特徴、ステップ、又は部材の存在を除外するよう解釈されてはならない。
【0150】
前述の記述、又は請求項、又は添付した図面に記述され、それらの特定の態様、又は開示した機能を実施するための手段、又は必要に応じて開示された結果を得るための方法又はプロセスの観点から表現された特徴は、別個に、又はそのような特徴のいかなる組み合わせとして、それの多様な態様で発明を実現するために利用される。
【0151】
クリス、ユージーン、及びファールークに捧げる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリッタと、
検出器と、
前記スプリッタと前記検出器との間に定義された第1及び第2の経路と
前記第1及び第2の経路の少なくとも一つに配置された操作装置と
を含み、
前記スプリッタは、入射粒子のパラメータの値に応じて、前記第1又は第2の経路に前記入射粒子を向けるよう配置され、
前記パラメータの値が重ね合わせにある粒子が前記スプリッタに衝突し、前記粒子の波動関数が前記第1及び第2の経路の両方に向けられる場合に、前記検出器の近傍又は前記検出器において、前記波動関数の前記第1及び第2の経路に向けられた部分どうしが干渉するよう、前記操作装置は前記波動関数に作用する、検出装置。
【請求項2】
前記スプリッタは偏光スプリッタであり、前記入射粒子の前記パラメータは前記入射粒子の偏光方向である、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記偏光スプリッタは、第1の偏光方向を有する粒子を前記第1の経路に向け、第2の偏光方向を有する粒子を前記第2の経路に向けるよう配置されており、前記第1及び第2の偏光方向は、互いに約90°異なる、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記操作装置は、前記第1の経路に設けられ、前記第1の経路を通過する偏光粒子の前記偏光方向を変えることができる旋回装置を含む、請求項2又は3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記旋回装置は、前記第1の経路を通過する偏光粒子の前記偏光方向を約90°変えることができる、請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の経路のそれぞれに第1及び第2の旋回装置が設けられ、前記第1及び第2の旋回装置は、前記第1及び第2の経路を通過する粒子の前記偏光方向を変えることができる、請求項2又は3に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の経路を通過する粒子どうしの偏光方向の差が90°になるよう、前記第1及び第2の旋回装置は前記粒子の前記偏光方向を変えることができる、請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記操作装置は操作粒子源を含み、
前記操作粒子源は、粒子が第1の経路を通過する粒子波動関数の部分と干渉し、結果として、前記偏光スプリッタによって前記第2の経路に向けられた粒子波動関数の部分のそれとほぼ同じ偏光方向を有する少なくとも部分を含む波動関数を与えるよう、前記粒子を発するよう設定される、請求項2又は3に記載の検出装置。
【請求項9】
前記操作装置は前記第1の経路に配置された更なる偏光スプリッタを更に含み、
前記更なる偏光スプリッタは、入射粒子の前記偏光方向に応じて、前記検出器か、その他の方向に前記入射粒子を向けるよう設定される、請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記操作粒子源は前記更なる偏光スプリッタに向けて粒子を発するように設定され、これにより、そこから発せられた粒子は、前記更なる偏光スプリッタによって前記検出器に向けられた粒子波動関数の少なくとも部分と干渉する、請求項8に記載の検出装置。
【請求項11】
前記操作装置は位相変換器を更に含み、
前記位相変換器は前記第1の経路の有効経路長を変えるよう設定される、請求項2乃至10のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項12】
前記第1及び第2の経路の有効長は、前記パラメータの値が重ね合わせにある粒子が前記偏光スプリッタに衝突し、前記粒子の波動関数が前記第1及び第2の経路の両方に向けられ、前記第1及び第2の経路に向けられた前記波動関数の部分どうしの間で干渉が生じた場合に、前記検出器において前記干渉は弱め合いとなり、粒子が前記検出器で検出されないようにされる、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項13】
前記パラメータが単一の値である粒子が前記偏光スプリッタに衝突し、前記第1の経路又は前記第2の経路のいずれかに向けられた場合、前記粒子は検出されるために前記検出器に向けられる、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項14】
情報粒子源と、
第1の位置に設けられたフィルタと、
第2の位置に設けられた検出装置と
を含み、
前記フィルタは、特定のパラメータの値を有する粒子のみがそこを通れるよう設定され、
前記検出装置は、確定された前記パラメータの値を有する入射粒子と、前記粒子の値が重ね合わせにある入射粒子とを判別する、情報伝達装置。
【請求項15】
前記検出装置は、請求項1乃至13のいずれか1項に記載された検出装置である、請求項14に記載の情報伝達装置。
【請求項16】
前記パラメータは粒子の偏光方向であり、前記フィルタは偏光フィルタである、請求項15に記載の情報伝達装置。
【請求項17】
前記情報粒子源は粒子対を発し、それぞれの対における一つの粒子は前記フィルタに向けられ、それぞれの対における他の粒子は前記検出装置に向けられる、請求項14乃至16のいずれか1項に記載の情報伝達装置。
【請求項18】
前記フィルタは、各々の粒子対の前記一つの粒子が前記フィルタを通過する経路上の位置と、各々の粒子対の前記一つの粒子が前記フィルタを通過しない経路外の位置との間を移動する、請求項14乃至17のいずれか1項に記載の情報伝達装置。
【請求項19】
前記情報粒子源から発せられた前記粒子は物質粒子である、請求項14乃至18のいずれか1項に記載の情報伝達装置。
【請求項20】
粒子の対を発する情報粒子源であって、対における第1の粒子は第1の位置に向けて発せられ、対における第2の粒子は第2の位置に向けて発せられる情報粒子源と、
前記第1の位置に設けられたフィルタであって、各々の粒子対の前記一つの粒子が前記フィルタに吸収される経路上の位置と、各々の粒子対の前記一つの粒子が前記フィルタに吸収されない経路外の位置との間を移動するフィルタと、
前記第2の位置に設けられた検出装置であって、相対的に短いコヒーレンス長を有する入射粒子と、相対的に長いコヒーレンス長を有する入射粒子とを判別する検出装置と
を含む、情報伝達装置。
【請求項21】
前記情報粒子源は少なくとも三順位原子構造を有する物質のサンプルを含み、
電子が前記構造の中で第1順位から第2順位に移動する時に、粒子対の前記粒子の一つが発せられ、前記電子が前記構造の中で前記第2順位から第3順位に移動する時に、前記粒子対の前記粒子の他の一つが発せられる、請求項20に記載の情報伝達装置。
【請求項22】
前記検出装置は、
スプリッタと、
検出器と、
前記スプリッタと前記検出器との間に定義された第1及び第2の経路と
を含み、
前記第1の経路の経路長は前記第2の経路の経路長より長く、
前記スプリッタに粒子が衝突し、前記粒子の波動関数が前記第1及び第2の経路の両方に向けられた場合、前記第1及び第2の経路に向けられた波動関数の部分どうしが、前記検出器の近傍、又は前記検出器において互いに干渉する、請求項20又は21に記載の情報伝達装置。
【請求項23】
前記情報粒子源は、波動関数が互いにエンタングルされた粒子の対を発する、請求項14乃至18又は20乃至22のいずれか1項に記載の情報伝達装置。
【請求項24】
前記情報粒子源から前記フィルタまでの前記経路長は、前記情報粒子源から前記検出装置までの前記経路長よりも短い、請求項14乃至23のいずれか1項に記載の情報伝達装置。
【請求項25】
一対の経路長モジュールが設けられ、前記経路長モジュールのそれぞれは入力と出力を有し、それらの間に経路長を定義し、
前記一対の経路長モジュールのそれぞれの前記経路長は互いに実質的に等しく、前記経路長モジュールの観察者から隠されており、
前記経路長モジュールの一つは、前記情報粒子源から前記フィルタに進む粒子がそこを通るように配置され、
前記経路長モジュールの残りの一つは、前記情報粒子源から前記検出装置に進む粒子がそこを通るように配置されている、請求項14又は24に記載の情報伝達装置。
【請求項26】
前記情報粒子源から発せられる前記粒子は光子である、請求項14乃至25のいずれか1項に記載の情報伝達装置。
【請求項27】
請求項14乃至26のいずれか1項に記載の第1及び第2の伝達装置を含み、
前記第1の伝達装置の前記フィルタが前記第2の伝達装置の前記検出装置の近傍に配置され、前記第2の伝達装置の前記フィルタが前記第1の伝達装置の前記検出装置の近傍に配置されるよう、前記第1及び第2の伝達装置が配置された情報伝達装置。
【請求項28】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の検出装置を提供するステップと、
入射粒子を前記検出装置に向けるステップと
を含む粒子の検出方法。
【請求項29】
特定の値のパラメータを有する粒子のみを通過させるよう設定されたフィルタを提供するステップと、
確定された前記パラメータの値を有する入射粒子と、前記粒子の値の重ね合わせにある入射粒子とを判別可能な検出装置を提供するステップと、
粒子対を発する情報粒子源を提供するステップであって、それぞれの対の一方の粒子は前記フィルタに向けられ、それぞれの対の他方の粒子は前記検出装置に向けられるステップと、
それぞれの粒子対の前記一方の粒子が前記フィルタを通過する経路上の位置と、それぞれの粒子対の前記一方の粒子が前記フィルタを通過しない経路外の位置との間で、前記フィルタを移動させるステップと
を含む情報伝達方法。
【請求項30】
前記検出装置は請求項1乃至13のいずれか1項に記載の検出装置である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
入射する粒子を吸収のみするよう設定されたフィルタを提供するステップと、
相対的に短いコヒーレンス長を有する入射粒子と、相対的に長いコヒーレンス長を有する入射粒子とを判別する検出装置を提供するステップと、
粒子対を発する情報粒子源を提供するステップであって、それぞれの対の一方の粒子は前記フィルタに向けられ、それぞれの対の他方の粒子は前記検出装置に向けられるステップと、
それぞれの粒子対の前記一方の粒子が前記フィルタを通過する経路上の位置と、それぞれの粒子対の前記一方の粒子が前記フィルタを通過しない経路外の位置との間で、前記フィルタを動かすステップと
を含む情報伝達方法。
【請求項32】
前記情報粒子源を提供するステップは、少なくとも三順位原子構造を有する物質のサンプルを提供することを含み、
前記構造内で電子が第1順位から第2順位に移動する時に、前記粒子対の粒子の一方が発せられ、前記構造内で電子が第2順位から第3順位に移動する時に、前記粒子対の粒子の他方が発せられる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記検出装置を提供するステップは、
スプリッタと、
検出器と、
前記スプリッタ及び前記検出器の間に定義された第1及び第2の経路と
を含む検出装置を提供することを含み、
前記第1の経路の経路長は前記第2の経路の経路長よりも長く、
粒子が前記スプリッタに衝突し、前記粒子の波動関数が前記第1及び第2の経路の両方に向けられた場合、前記第1及び第2の経路に向けられた前記波動関数の前記部分どうしが、前記検出器の近傍又は前記検出器において互いに干渉する、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記情報粒子源から前記フィルタまでの前記経路長は、前記情報粒子源から前記検出装置までの前記経路長よりも短い、請求項29乃至33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記フィルタを前記経路上の位置に配置することは第1のバイナリ状態をコミュニケーションするために用いられ、前記フィルタを前記経路外の位置に配置することは第2のバイナリ状態をコミュニケーションするために用いられる、請求項29乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
一対の経路長モジュールを提供するステップであって、前記経路長モジュールのそれぞれは入力と出力を有し、それらの間に経路長を定義するステップと、
前記情報粒子源から前記フィルタに進む粒子が前記経路長モジュールの一つを通過し、前記情報粒子源から前記検出装置に進む粒子が前記経路長モジュールの残りの一つを通過するよう、前記一対の経路長モジュールを配置するステップと
を含み、
前記一対の経路長モジュールのそれぞれの前記経路長は互いに実質的に等しく、前記経路長モジュールの観察者から隠されている、請求項29乃至35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
第2のフィルタ及び第2の検出装置を提供するステップを更に含み、
前記第1のフィルタは前記第2の検出装置の近傍に配置され、前記第2のフィルタは前記第1の検出装置の近傍に配置される、請求項29乃至36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の検出装置及び前記第2のフィルタの位置で、前記第2の検出装置及び前記第1のフィルタからの情報を受けるステップと、
前記情報を受けた後に、予め設定された時間の長さの範囲内で、前記第2の検出装置及び前記第1のフィルタの位置に確認シグナルを送信するステップと
をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
暗号化情報を送信するステップを含む、請求項29乃至38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
粒子に作用するフィルタを提供するステップと、
粒子対を発する情報粒子源を提供するステップであって、前記粒子対の前記粒子の波動関数は互いにエンタングルされており、それぞれの対の一方の粒子は検出装置に向けられ、それぞれの対の他方の粒子は前記フィルタに向けられ、前記検出装置は、前記粒子対の前記他方の粒子が前記フィルタに作用されていた時の粒子対の一つの粒子と、前記粒子対の前記他方の粒子が前記フィルタに作用されなかった時の粒子対の一つの粒子とを判別可能であるステップと、
第1のバイナリ状態を前記検出器に伝送するために、それぞれの粒子対の前記一方の粒子が前記フィルタを通過する経路上の位置と、第2のバイナリ状態を前記検出器に伝送するために、それぞれの粒子対の前記一方の粒子が前記フィルタを通過しない経路外の位置との間で、前記フィルタを移動させるステップと
を含む情報伝達方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−151867(P2012−151867A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45416(P2012−45416)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2007−546185(P2007−546185)の分割
【原出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(507199908)
【Fターム(参考)】