情報再生方法、情報再生装置及び光ディスク
【課題】光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生する。
【解決手段】RF信号は、HPF60及び等価回路61を介した後、ADC62でAD変換される。光ディスクが超解像光ディスクであれば、ADC62の出力信号は非対称FIRフィルタ63に入力される。この非対称FIRフィルタ63では、RF信号における位相歪みが補正されるように等価係数が設定されている。従って、PLL67では、記録クロックが精度良く抽出され、インターポレータ64では、サンプリングが精度良く行われる。そして、インターポレータ64の出力信号は、等価回路65とビタビ復号器66とにより復号される。
【解決手段】RF信号は、HPF60及び等価回路61を介した後、ADC62でAD変換される。光ディスクが超解像光ディスクであれば、ADC62の出力信号は非対称FIRフィルタ63に入力される。この非対称FIRフィルタ63では、RF信号における位相歪みが補正されるように等価係数が設定されている。従って、PLL67では、記録クロックが精度良く抽出され、インターポレータ64では、サンプリングが精度良く行われる。そして、インターポレータ64の出力信号は、等価回路65とビタビ復号器66とにより復号される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報再生方法、情報再生装置及び光ディスクに係り、さらに詳しくは、光ディスクに記録されている情報を再生する情報再生方法及び情報再生装置、該情報再生装置に用いられる光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術の進歩及びデータ圧縮技術の向上に伴い、音楽、映画、写真及びコンピュータソフトなどの情報を記録するための媒体として、DVD(digital versatile disc)などの光ディスクが注目されるようになり、その低価格化とともに、光ディスクに記録されている情報を再生するための情報再生装置として光ディスク装置が普及するようになった。
【0003】
この光ディスク装置では、光ディスクに再生用の光ビームを集光し、その反射光に基づいて情報の再生を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年、光記録の分野において、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報の再生(以下、「超解像再生」という)が可能な光ディスク(以下、「超解像光ディスク」ともいう)が提案されている(例えば、特許文献2〜特許文献5参照)。この超解像光ディスクは、光が集光されると、例えばその光学定数(例えば、屈折率実部n、及び屈折率虚部k)が変化する材料を含む層(以下、「超解像層」という)を有している。
【0005】
これにより、超解像層に再生用の光ビームが集光されると、上記光学定数の変化に起因して光スポット内に微小マスク領域あるいは微小開口領域が生じ、超解像再生を可能としている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている光ディスク装置を用いて超解像光ディスクに記録されている情報を再生しようとすると、反射光から得られるRF信号に位相歪みが生じ、再生エラーとなる頻度が高いという不都合があった。
【0007】
そこで、例えば特許文献6には、スライサを用いた再生系において、位相補正を行う波形等価器を用いることで、光磁気ディスクの超解像再生に起因する再生信号の非対称性を補正する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、この方法では、短ピッチの記録マークの復号性能を向上できるPRML(Partial response maximum likelihood)方式を用いていないため、超解像再生を使用したとしても、大きな高密度化は困難である。
【0009】
ところで、通常の光ディスクにおいても、タンジェンシャルチルトなどに起因する光学的な収差により、再生信号に位相歪みが生じる場合があり、その対策としてPRML方式において、位相補正のためPR(Partial Response)フィルタを用いる方法が、特許文献7などに記載されている。
【0010】
この特許文献7には、決められた符号間干渉を与えるPR(Partial Response)フィルタとして、適応PRフィルタを用いる方法が開示されている。
【0011】
この適応PRフィルタは、デジタル構成のFIRフィルタで構成されており、その波形等価の精度を高くするため、再生信号のクロック抽出後のクロックタイミングで整形された再生信号を適応PRフィルタに与えている。これにより、回転ムラなどの影響を避けた位相補正が可能となり、正確なPR特性に波形等価が可能となっている。
【0012】
しかしながら、光磁気ディスクの磁気による転写を用いた超解像法や、タンジェンシャルチルトなどにより生じる光スポットの非対称性と比較して、非常に大きな位相歪みを発生させる超解像再生では、位相補正の機能を果たす適応PRフィルタの前段でのクロック抽出が困難であり、正常な再生が出来ない。
【0013】
【特許文献1】特開2002−319137号公報
【特許文献2】特開平6−183152号公報
【特許文献3】特開平5−205314号公報
【特許文献4】特開平11−250493号公報
【特許文献5】特開2001−250274号公報
【特許文献6】特開1996−221839号公報
【特許文献7】特開2002−32919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することができる情報再生方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2の目的は、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することができる情報再生装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明の第3の目的は、PRML方式を用いて、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することができる光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、第1の観点からすると、光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、光源と、前記光源から出射された光を前記光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成回路と;前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号の位相歪みを補正する位相補正回路と;前記位相歪みが補正されたRF信号からクロックを抽出するクロック抽出回路と;前記クロックに同期して、前記位相歪みが補正されたRF信号から前記情報を復号する復号回路と;を備える第1の情報再生装置である。
【0018】
これによれば、位相補正回路により、情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときのRF信号の位相歪みが補正され、その位相歪みが補正されたRF信号から、クロック抽出回路にてクロックが抽出される。そこで、復号回路では、正確なクロックに同期して情報が復号されることとなる。従って、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することが可能となる。
【0019】
本発明は、第2の観点からすると、光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、光源と、前記光源から出射された光を前記光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成回路と;前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号の位相歪みを補正する位相補正回路と;前記位相歪みが補正されたRF信号からクロックを抽出するクロック抽出回路と;前記クロックに同期して、前記RF信号から前記情報を復号する復号回路と;を備える第2の情報再生装置である。
【0020】
これによれば、位相補正回路により、情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときのRF信号の位相歪みが補正され、その位相歪みが補正されたRF信号から、クロック抽出回路にてクロックが抽出される。そこで、復号回路では、正確なクロックに同期して情報が復号されることとなる。従って、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することが可能となる。
【0021】
本発明は、第3の観点からすると、光ディスクに光ビームを照射し、前記光ディスクからの反射光を受光する情報再生装置を用いて、前記光ディスクに記録されている情報を再生するPRML方式を用いた情報再生方法において、前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときに、前記情報を復号するのに先立って、前記反射光から得られるRF信号の位相歪みを補正する工程を含むことを特徴とする情報再生方法である。
【0022】
これによれば、情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときに、情報を復号するのに先立って、反射光から得られるRF信号の位相歪みが補正される。従って、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することが可能となる。
【0023】
本発明は、第4の観点からすると、回折限界よりも小さいピッチの記録マークと;前記記録マークの再生に適した等価係数に関する情報と;が記録されている光ディスクである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図24に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置20の概略構成が示されている。
【0025】
この図1に示される光ディスク装置20は、光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23を光ディスク15の半径方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、駆動制御回路26、再生信号処理回路28、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。また、本実施形態では、光ディスク15は、一例として図2に示されるように、透明基板に挟まれる形で、情報が記録されている記録層、光を反射する反射層、及び温度により光学定数(例えば、屈折率実部n、及び屈折率虚部k)が変化する材料を含む超解像層を有し、超解像再生が可能な超解像光ディスクであるものとする。
【0026】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15にレーザ光を照射するとともに、光ディスク15からの反射光を受光するための装置である。この光ピックアップ装置23は、光ディスク15に対応する波長のレーザ光を出射する光源と、該光源からの光を光ディスク15に集光する対物レンズを含み、光ディスク15で反射され対物レンズを介した戻り光を所定位置に導く光学系と、前記所定位置に配置され前記戻り光を受光する複数の受光領域を有する受光器と、対物レンズを微小駆動する駆動系(いずれも図示省略)などを備えている。受光器の各受光領域は、それぞれ受光光量に応じた信号(光電変換信号)を再生信号処理回路28に出力する。また、駆動系は、対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカシングアクチュエータ、及び対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキングアクチュエータを有している。ここでは、一例として光源から出射されるレーザ光の波長(以下、「光源波長」ともいう)を635nm、対物レンズの開口数(NA)を0.6とする。この場合の回折限界は、約530nm(≒光源波長/2NA)である。
【0027】
ところで、光ピックアップ装置23を用いて光ディスク15に400nmピッチで形成されているピット(ピット長=200nm)を再生したときのCNR(キャリア/ノイズ比)と再生パワーPrとの関係が一例として図3に示されている。図3では、再生パワーPrが2mW以上では、CNRが30dBを超えており、超解像再生が可能であることが分かる。なお、以下では、超解像再生が可能な再生パワーを「超解像再生パワー」ともいう。
【0028】
光ディスク15に超解像再生パワーのレーザ光が集光されると、その部分の温度が上昇し、光スポット内に、一例として図4(A)に示されるような微小開口領域、あるいは、一例として図4(B)に示されるような微小マスク領域が生じる。微小マスク領域及び微小開口領域は、いずれも光スポットの進行方向と反対の方向に尾を引いた形状を有している。なお、微小マスク領域及び微小開口領域のどちらが生じるかは、超解像層の材料や層構成に依存している。
【0029】
そこで、微小開口領域が生じる場合には、ピットが微小開口領域に含まれるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。一方、微小マスク領域が生じる場合には、ピットが微小マスク領域によってマスクされるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。
【0030】
例えば、マスク領域が生じる場合には、一例として図5に示されるように、光スポットによる加熱に起因して、超解像層の光学定数が変化し、スポット後方部の反射率が低下する。そのため、超解像層の光入射側表面PLでの光強度分布を考えると、入射光は対称な光スポット形状をしているが、反射光は非対称な光スポット形状(状態)となる。従って、記録層からの情報を、非対称な形状の光スポットで、読み出すことになり、RF信号には位相歪みが生じる。
【0031】
また、超解像層の光入射側表面PLにおける、反射光の光強度分布の再生パワー依存性が、一例として図6に示されている。これによると、再生パワーPrを超解像再生パワーまで上げると、光スポット後方がマスクされ、反射光の光強度分布が後部から削れた形状に変化している。なお、図6では、光スポットの中心位置を基準(原点)としている。
【0032】
また、図6における光強度分布をフーリエ変換して求めた、光学系における読み込み系(光ディスクを含む)のボード線図が、一例として図7(A)及び図7(B)に示されている。再生パワーPrが2.5mWのときには、ゲインは回折限界を超えた高周波領域まである程度維持されているが、位相を見ると、回折限界より低い周波数から位相歪みが発生している。この位相歪みは、RF信号における位相歪みとなり、RF信号に含まれている情報の復号結果に悪影響を及ぼす。
【0033】
図1に戻り、前記再生信号処理回路28は、アンプ28a、サーボ信号生成回路28b、ウォブル信号生成回路28c、RF信号生成回路28d、及びデコーダ28eなどから構成されている。
【0034】
アンプ28aは、光ピックアップ装置23の受光器からの複数の光電変換信号をそれぞれ電圧信号に変換するとともに、所定のゲインで増幅する。
【0035】
サーボ信号生成回路28bは、アンプ28aの各出力信号に基づいてサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号など)を生成する。ここで生成されたサーボ信号は前記駆動制御回路26に出力される。
【0036】
ウォブル信号生成回路28cは、アンプ28aの各出力信号に基づいてウォブル信号を生成する。
【0037】
RF信号生成回路28dは、アンプ28aの各出力信号に基づいてRF信号を生成する。
【0038】
デコーダ28eは前記ウォブル信号からアドレス情報及び同期信号などを抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号は駆動制御回路26に出力される。
【0039】
また、デコーダ28eは前記RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとして前記バッファマネージャ37を介して前記バッファRAM34に格納する。ここでは、一例として図8に示されるように、RF信号から2値化データを得るための回路(以下、「2値化データ取得回路」ともいう)として、ハイパスフィルタ(HPF)60、等価回路61、ADコンバータ(ADC)62、非対称FIRフィルタ63、インターポレータ64、等価回路65、ビタビ復号器66、PLL67、及び切替回路68などを備えている。
【0040】
HPF60は、RF信号に含まれる低周波ノイズを除去する。等価回路61は、HPF60の後段に配置され、光学系によるMTF(modulation transfer function)の低下により減衰した高域成分を強調し、符号間干渉を低減する。なお、等価回路61は、ADC62でのAD変換時にエイリアシングノイズが起こらないように高周波成分をカットするローパスフィルタ(LPF)の役割も兼ねている。
【0041】
ADC62は、等価回路61の後段に配置され、等価回路61の出力信号をデジタル信号に変換(AD変換)する。切替回路68は、ADC62の後段に配置され、CPU40からの指示に従って、ADC62の出力信号を非対称FIRフィルタ63及びインターポレータ64のいずれかに出力する。
【0042】
非対称FIRフィルタ63は、ADC62の出力信号に対してフィルタ処理を行い、前記RF信号における位相歪みを補正する。この非対称FIRフィルタ63の詳細については後述する。
【0043】
インターポレータ64は、ADC62の出力信号あるいは非対称FIRフィルタ63の出力信号が入力され、前後2つ以上の時間のサンプル値から、クロックタイミングにおけるサンプル値を補間する。
【0044】
PLL67は、インターポレータ64の出力信号から光ディスク15に記録されている記録信号のクロック(以下「記録クロック」ともいう)を再生し、インターポレータ64に前記クロックタイミングを指示する。すなわち、インターポレータ64とPLL67の組み合わせで、記録クロックに同期したサンプリングが行われる。なお、記録クロックの周期は1Tとする。
【0045】
等価回路65は、インターポレータ64の後段に配置され、インターポレータ64の出力信号に対して、所望のPR(Partial Response)特性に応じた応答となるように波形等価を行う。なお、前記所望のPR特性を、例えばPR(1、2、2、2、1)としても良い。
【0046】
ビタビ復号器66は、等価回路65の後段に配置され、等価回路65の出力信号に対して、最尤(maximum likelihood)復号方式であるビタビ(Viterbi)復号方式で復号処理を行い、2値化データを出力する。すなわち、ここでは、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)信号処理方式を用いている。
【0047】
図1に戻り、前記駆動制御回路26は、対物レンズ60の位置ずれを補正するため、再生信号処理回路28からのサーボ信号に基づいて、光ピックアップ装置23の駆動系の駆動信号を生成する。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。さらに、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各モータの駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
【0048】
前記バッファRAM34には、光ディスク15から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、前記バッファマネージャ37によって管理されている。
【0049】
前記レーザ制御回路24は、光ピックアップ装置23の光源の発光パワーを制御する。
【0050】
前記インターフェース38は、上位装置90(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
【0051】
前記フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、光ピックアップ装置23の光源の発光特性、後述する等価係数情報などが格納されている。
【0052】
前記CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って前記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
【0053】
《非対称FIRフィルタの詳細》
ここで、前記非対称FIRフィルタ63の詳細について説明する。
【0054】
この非対称FIRフィルタ63は、一例として図9に示されるように、20個の遅延素子(D1〜D20)、21個の乗算器(h1〜h21)、係数設定回路100、及び加算器102などを有している。すなわち、非対称FIRフィルタ63は、21タップのFIRフィルタを含んでいる。各乗算器での乗算係数(kn;n=1〜21)は、それぞれタップ係数とも呼ばれている。また、各乗算器での乗算係数の組み合わせは、等価係数とも呼ばれている。なお、図9では、遅延素子及び乗算器の一部は図示が省略されている。なお、各遅延素子の遅延時間はいずれも1T(記録クロックの1周期)である。
【0055】
加算器102は、各乗算器の出力信号を加算し、インターポレータ64に出力する。
【0056】
係数設定回路100は、光ディスク15における超解像層の構成、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び光源の駆動波形など(以下、便宜上「係数設定条件」ともいう)に基づいて、等価係数を設定する。ここでは、予め、係数設定条件毎に適切な等価係数が取得され前記等価係数情報としてフラッシュメモリ39に格納されている。従って、係数設定回路100は、係数設定条件に対応する等価係数をフラッシュメモリ39から抽出し、各乗算器に設定する。
【0057】
なお、ここでは、一例として、光ディスク15に記録されている既知のピット列を再生し、最小平均二乗(LMS)アルゴリズムや帰納的最小二乗(Recursive Least-Squares:RLS)アルゴリズムなどを用いて、前記PLL67で確実に記録クロックを抽出できる目標信号と非対称FIRフィルタ63の出力信号との差が最小となる等価係数を求め、得られた等価係数をそのときの係数設定条件に適切な等価係数とする。なお、非対称な等価係数を初期値として使用することにより、演算の収束を早めることができる。
【0058】
係数設定回路100により設定される等価係数の例を以下に示す。ここでは、図10に示されるように、係数設定条件1は、記録媒体の種類がA、再生パワーが2.5mW、線速度が4.30m/s、最短ピット長が0.193μmであり、係数設定条件2は、記録媒体の種類がA、再生パワーが2.1mW、線速度が4.30m/s、最短ピット長が0.193μmである。また、係数設定条件3は、記録媒体の種類がB、再生パワーが2.7mW、線速度が4.30m/s、最短ピット長が0.193μmであり、係数設定条件4は、記録媒体の種類がB、再生パワーが2.7mW、線速度が4.30m/s、最短ピット長が0.130μmである。さらに、係数設定条件5は、記録媒体の種類がA、再生パワーが2.7mW、線速度が3.00m/s、最短ピット長が0.193μmである。なお、記録媒体Aは、微小マスク領域が生じる超解像光ディスクであり、記録媒体Bは、微小開口領域が生じる超解像光ディスクである。
【0059】
係数設定条件1のときの前記面PLでの反射光の光強度分布が図11に示されている。スポット後方の反射光強度が、熱により生じた微小マスクにより小さくなり、非対称な形となっている。そして、このときの等価係数が図12に示されている。等価係数も中心のタップ係数(ここではk11)を原点として非対称な形となっている。
【0060】
係数設定条件2のときの前記面PLでの反射光の光強度分布が図13に示されている。係数設定条件1と比べて、再生パワーを減らしているため、微小マスク領域の面積が減少し、光強度分布が対称に近づいている。そして、このときの等価係数が図14に示されている。係数設定条件1の場合とは等価係数が異なっており、再生パワーに応じて等価係数を変更する必要があることを示している。
【0061】
係数設定条件3のときの前記面PLでの反射光の光強度分布が図15に示されている。スポット後方の反射光強度が、熱により生じた微小開口領域により大きくなり、非対称な形となっている。そして、このときの等価係数が図16に示されている。係数設定条件1の場合とは等価係数が異なっており、超解像層の種類により等価係数を変更する必要があることを示している。
【0062】
係数設定条件4のときの等価係数が図17に示されている。係数設定条件3の場合とは、等価係数が異なっており、最短マーク長(記録密度)に応じて、等価係数を変更する必要があることを示している。なお、係数設定条件4と係数設定条件3とで異なるのは、記録密度のみであるので、係数設定条件4での反射光強度分布は、図15と同一である。
【0063】
係数設定条件5のときの前記面PLでの反射光の光強度分布が図18に示されている。係数設定条件1と比較して、線速度を減らしているため、より超解像層が高温になり、スポット後方の反射光強度が小さくなっている。そして、このときの等価係数が図19に示されている。係数設定条件1の場合とは等価係数が異なっており、線速度により等価係数を変更する必要があることを示している。
【0064】
次に、光ディスク装置20に光ディスク15がロードされたときの処理について図20を用いて簡単に説明する。図20のフローチャートは、CPU40によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。
【0065】
最初のステップ401では、所定の線速度(又は角速度)で光ディスク15が回転するように駆動制御回路26に指示する。
【0066】
次のステップ403では、光ディスク15に記録されている係数設定条件やディスク情報などを読み出す。
【0067】
次のステップ405では、読み出したディスク情報に基づいて、光ディスク15が超解像光ディスクであるか否かを判断する。ここでは、光ディスク15は超解像光ディスクであるため、ここでの判断は肯定され、ステップ407に移行する。
【0068】
このステップ407では、フラグFに、ロードされた光ディスクが超解像光ディスクであることを意味する値「1」をセットする。
【0069】
次のステップ411では、読み出した係数設定条件、ディスク情報及びフラグFの値などをRAM41に保存する。
【0070】
次のステップ413では、読み出した係数設定条件及びフラグFの値を、これらを必要とする各部に通知する。そして、光ディスク15がロードされたときの処理を終了する。
【0071】
なお、上記ステップ405において、もし光ディスク15が超解像光ディスクでなければ、ステップ405での判断は否定され、ステップ409に移行する。このステップ409では、フラグFに、ロードされた光ディスクが超解像光ディスクでないことを意味する値「0」をセットする。そして、前記ステップ411に移行する。
【0072】
《再生処理》
続けて、上位装置90から、光ディスク15に対する再生要求があったときの、光ディスク装置20における処理(再生処理)について図21を用いて簡単に説明する。図21のフローチャートは、CPU40によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。
【0073】
最初のステップ501では、上位装置90から再生要求コマンドを受信した旨を再生信号処理回路28、レーザ制御回路24などに通知する。これにより、係数設定回路100は、フラッシュメモリ39に格納されている等価係数情報とRAM41に保存されている係数設定条件とに基づいて、前述したようにして等価係数を設定する。
【0074】
次のステップ503では、RAM41に保存されているフラグFを読み出す。
【0075】
次のステップ505では、フラグFの値が「1」であるか否かを判断する。ここでは、フラグFの値は「1」であるため、ここでの判断は肯定され、ステップ507に移行する。
【0076】
このステップ507では、ADC62の出力信号が非対称FIRフィルタ63に入力されるように、切替回路100に指示する。
【0077】
次のステップ511では、再生要求コマンドに含まれる指定アドレスに対応する目標位置近傍に光スポットが形成されるように、駆動制御回路26に指示する。これにより、シーク動作が行なわれる。そして、シーク動作が完了するとステップ513に移行する。なお、シーク動作が不要であれば、ここでの処理はスキップされる。
【0078】
次のステップ513では、再生を開始する。
【0079】
次のステップ515では、再生が完了したか否かを判断する。完了していなければ、ここでの判断は否定され、所定時間経過後に再度判断する。完了していれば、ここでの判断は肯定され、再生処理を終了する。
【0080】
なお、上記ステップ505において、もしフラグFの値が「0」であれば、ステップ505での判断は否定され、ステップ509に移行する。このステップ509では、ADC62の出力信号がインターポレータ64に入力されるように、切替回路100に指示する。そして、前記ステップ511に移行する。
【0081】
すなわち、光ディスク装置20は、超解像光ディスク及び従来の光ディスク(ここでは、DVD)のいずれにも対応可能である。
【0082】
ところで、図22には、上記再生処理における、非対称FIRフィルタ63を介したインターポレータ64の入力信号のアイパターンの例が示されている。この場合には、アイが開いており、PLL67では記録クロックの抽出を精度良く行うことができる。特に最短ピットでもしっかりとアイが開いており、記録クロックの抽出は容易である。なお、図23には、比較のために、仮に非対称FIRフィルタ63を介さないときのインターポレータ64の入力信号のアイパターンの例が示されている。この場合には、アイが開いておらず、PLL67では記録クロックを精度良く抽出するのは困難である。特に、最短ピットでは、アイが開いていないため、記録クロックの抽出は不可能である。すなわち、RF信号における位相歪みが非対称FIRフィルタ63によって補正されている。
【0083】
また、図24には、光ディスク15に記録されている長さ193nmのピットを再生したときのビットエラーレートが示されている。再生条件は、再生パワーPrが2.5mW、再生時の線速度が2.5m/sである。また、非対称FIRフィルタ63の等価係数は、図12に示される各タップ係数を用いた。非対称FIRフィルタ63を介さないときには、ビットエラーレートは約0.5であり、まったく復号できていないが、非対称FIRフィルタ63を介したときには、ビットエラーレートは激減して、0.0020まで小さくなっており、正常な復号が行われている。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る光ディスク装置によると、RF信号は、HPF60で低周波ノイズが除去され、等価回路61で符号間干渉が低減され、ADC62でAD変換される。ロードされた光ディスクが超解像光ディスクであれば、ADC62の出力信号は非対称FIRフィルタ63に入力される。この非対称FIRフィルタ63では、係数設定回路100により、係数設定条件に対応する等価係数がフラッシュメモリ39から抽出され、各乗算器に設定されているため、RF信号における位相歪みは、非対称FIRフィルタ63により補正される。非対称FIRフィルタ63の出力信号は、インターポレータ64を介してPLL67に供給される。ここでは、位相歪みが補正されているため、記録クロックが精度良く抽出される。そこで、インターポレータ64では、記録クロックに同期してサンプリングが精度良く行われる。インターポレータ64の出力信号は、等価回路65とビタビ復号器66とによりPRML信号処理方式で復号される。従って、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を、精度良く再生することが可能となる。
【0085】
なお、上記実施形態において、一例として図25に示されるように、前記切替回路68を省いて前記ADC62の出力信号を前記非対称FIRフィルタ63に入力し、一例として図26に示されるように、前記非対称FIRフィルタ63に、前記係数設定回路100に対して等価係数の変更を指示する係数変更回路104を付加しても良い。この係数変更回路104は、光ディスク15が超解像光ディスクでないときに、等価係数が中心のタップ係数(ここではk11)を原点として対称な複数のタップ係数から構成されるように変更する。この場合に、係数変更回路104は、非対称FIRフィルタ63が、符号間干渉を減少又は調整する目的のFIRフィルタとなるように、等価係数を変更しても良い(図27参照)。また、係数変更回路104は、光ディスク15が超解像光ディスクでないときに、非対称FIRフィルタ63が無効となるように、任意の1つの乗算器のタップ係数を1とし、残りの乗算器のタップ係数を全て0としても良い。
【0086】
また、上記実施形態において、光ディスク15のウォブル情報(図33参照)や、光ディスク15の内周部に位置するTOC(Table Of Contents)情報領域(図34参照)に、等価係数に関する情報が含まれている場合には、CPU40は、上記ステップ403でその等価係数に関する情報も光ディスク15から読み出してRAM41に保存し、係数設定回路100は、上位装置90から再生要求コマンドを受信した旨の通知があると、RAM41に保存されている等価係数に関する情報と係数設定条件とに基づいて、等価係数を設定しても良い。
【0087】
この場合に、例えば、光ディスク15に記録されている等価係数に関する情報が4倍速での再生に対応するものであり、ユーザから16倍速での再生が要求されたときに、一例として図28に示されるように、光ディスク15に記録されている等価係数に関する情報から16倍速での再生に対応する等価係数を算出する係数演算回路106を前記非対称FIRフィルタ63に付加しても良い。なお、係数演算回路106で算出された等価係数は、RAM41、又は光ディスク15の所定領域に記録しておき、次回演算時に使用することが望ましい。また、この場合に、非対称な等価係数を初期値として使用することにより、演算の収束を早めることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、前記非対称FIRフィルタ63が21タップのFIRフィルタを含む場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば5タップのFIRフィルタを含んでいても良い。また、FIRフィルタのタップ数が偶数であっても良い。
【0089】
また、上記実施形態において、等価回路61が線形回路の場合には、HPF60も線形回路であるため、HPF60と等価回路61の順番が入れ替わった構成でも良い。
【0090】
また、上記実施形態において、図29に示されるように、前記ADC62で記録クロックに同期したサンプリングを行っても良い。この場合には、前記PLL67で抽出された記録クロックはADC62に供給される。そして、前記インターポレータ64は不要である。
【0091】
また、上記実施形態において、前記非対称FIRフィルタ63がアナログ回路で構成されている場合には、図30に示されるように、前記ADC62を前記インターポレータ64の前段に配置しても良い。
【0092】
また、上記実施形態において、図31に示されるように、前記ADC62の出力信号を直接、前記インターポレータ64に入力させ、非対称FIRフィルタ63を介した信号をPLL67にのみ入力させるようにしても良い。この場合には、従来のRF信号を復号する回路をそのまま利用することが可能である。
【0093】
また、上記実施形態において、前記非対称FIRフィルタ63に代えて、図32に示されるように、超解像再生時(上記実施形態では、再生パワー2.5mWでの再生時)の位相歪み(図7(B)参照)とは逆の位相特性を有し、位相歪みを打ち消す機能を持った位相補償アナログフィルタ73を用いても良い。この場合には、前記ADC62は、前記インターポレータ64の前段に配置される。
【0094】
また、上記実施形態では、情報の再生のみが可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち、少なくとも情報の再生が可能な光ディスク装置であれば良い。
【0095】
また、上記実施形態では、光ピックアップ装置が1つの光源を備える場合について説明したが、これに限らず、例えば互いに異なる波長の光を発光する複数の光源を備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明の情報再生方法によれば、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生するのに適している。また、本発明の情報再生装置によれば、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生するのに適している。また、本発明の光ディスクによれば、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報をPRML方式を用いて精度良く再生するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】超解像光ディスクを説明するための図である。
【図3】超解像光ディスクにおける再生パワーとCNRとの関係を説明するための図である。
【図4】図4(A)は微小開口領域を説明するための図であり、図4(B)は微小マスク領域を説明するための図である。
【図5】微小マスク領域の作用を説明するための図である。
【図6】超解像光ディスクにおける反射光の光強度分布と再生パワーとの関係を説明するための図である。
【図7】図7(A)はゲインの周波数特性を説明するためのボード線図であり、図7(B)は位相の周波数特性を説明するためのボード線図である。
【図8】図1におけるデコーダの2値化データ取得回路を説明するための図である。
【図9】図8における非対称FIRフィルタを説明するための図である。
【図10】係数設定条件1〜5を説明するための図である。
【図11】係数設定条件1での反射光の光強度分布を説明するための図である。
【図12】係数設定条件1での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図13】係数設定条件2での反射光の光強度分布を説明するための図である。
【図14】係数設定条件2での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図15】係数設定条件3での反射光の光強度分布を説明するための図である。
【図16】係数設定条件3での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図17】係数設定条件4での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図18】係数設定条件5での反射光の光強度分布を説明するための図である。
【図19】係数設定条件6での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図20】光ディスクがロードされたときの処理を説明するためのフローチャートである。
【図21】再生処理を説明するためのフローチャートである。
【図22】位相歪みが補正されているときのアイパターンを説明するための図である。
【図23】位相歪みが補正されていないときのアイパターンを説明するための図である。
【図24】非対称FIRフィルタの有無とビットエラーレートとの関係を説明するための図である。
【図25】2値化データ取得回路の変形例1を説明するための図である。
【図26】図25における非対称FIRフィルタを説明するための図である。
【図27】光ディスクが超解像光ディスクでないときに変更された図26の非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図28】係数演算回路を備えた非対称FIRフィルタを説明するための図である。
【図29】2値化データ取得回路の変形例2を説明するための図である。
【図30】2値化データ取得回路の変形例3を説明するための図である。
【図31】2値化データ取得回路の変形例4を説明するための図である。
【図32】2値化データ取得回路の変形例5を説明するための図である。
【図33】等価係数に関する情報の格納領域の例1を説明するための図である。
【図34】等価係数に関する情報の格納領域の例2を説明するための図である。
【符号の説明】
【0098】
15…光ディスク、20…光ディスク装置(情報再生装置)、23…光ピックアップ装置(光ヘッド)、28d…RF信号生成回路(信号生成回路)、28e…デコーダ(位相補正回路、クロック抽出回路、復号回路)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報再生方法、情報再生装置及び光ディスクに係り、さらに詳しくは、光ディスクに記録されている情報を再生する情報再生方法及び情報再生装置、該情報再生装置に用いられる光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術の進歩及びデータ圧縮技術の向上に伴い、音楽、映画、写真及びコンピュータソフトなどの情報を記録するための媒体として、DVD(digital versatile disc)などの光ディスクが注目されるようになり、その低価格化とともに、光ディスクに記録されている情報を再生するための情報再生装置として光ディスク装置が普及するようになった。
【0003】
この光ディスク装置では、光ディスクに再生用の光ビームを集光し、その反射光に基づいて情報の再生を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年、光記録の分野において、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報の再生(以下、「超解像再生」という)が可能な光ディスク(以下、「超解像光ディスク」ともいう)が提案されている(例えば、特許文献2〜特許文献5参照)。この超解像光ディスクは、光が集光されると、例えばその光学定数(例えば、屈折率実部n、及び屈折率虚部k)が変化する材料を含む層(以下、「超解像層」という)を有している。
【0005】
これにより、超解像層に再生用の光ビームが集光されると、上記光学定数の変化に起因して光スポット内に微小マスク領域あるいは微小開口領域が生じ、超解像再生を可能としている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている光ディスク装置を用いて超解像光ディスクに記録されている情報を再生しようとすると、反射光から得られるRF信号に位相歪みが生じ、再生エラーとなる頻度が高いという不都合があった。
【0007】
そこで、例えば特許文献6には、スライサを用いた再生系において、位相補正を行う波形等価器を用いることで、光磁気ディスクの超解像再生に起因する再生信号の非対称性を補正する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、この方法では、短ピッチの記録マークの復号性能を向上できるPRML(Partial response maximum likelihood)方式を用いていないため、超解像再生を使用したとしても、大きな高密度化は困難である。
【0009】
ところで、通常の光ディスクにおいても、タンジェンシャルチルトなどに起因する光学的な収差により、再生信号に位相歪みが生じる場合があり、その対策としてPRML方式において、位相補正のためPR(Partial Response)フィルタを用いる方法が、特許文献7などに記載されている。
【0010】
この特許文献7には、決められた符号間干渉を与えるPR(Partial Response)フィルタとして、適応PRフィルタを用いる方法が開示されている。
【0011】
この適応PRフィルタは、デジタル構成のFIRフィルタで構成されており、その波形等価の精度を高くするため、再生信号のクロック抽出後のクロックタイミングで整形された再生信号を適応PRフィルタに与えている。これにより、回転ムラなどの影響を避けた位相補正が可能となり、正確なPR特性に波形等価が可能となっている。
【0012】
しかしながら、光磁気ディスクの磁気による転写を用いた超解像法や、タンジェンシャルチルトなどにより生じる光スポットの非対称性と比較して、非常に大きな位相歪みを発生させる超解像再生では、位相補正の機能を果たす適応PRフィルタの前段でのクロック抽出が困難であり、正常な再生が出来ない。
【0013】
【特許文献1】特開2002−319137号公報
【特許文献2】特開平6−183152号公報
【特許文献3】特開平5−205314号公報
【特許文献4】特開平11−250493号公報
【特許文献5】特開2001−250274号公報
【特許文献6】特開1996−221839号公報
【特許文献7】特開2002−32919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することができる情報再生方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2の目的は、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することができる情報再生装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明の第3の目的は、PRML方式を用いて、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することができる光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、第1の観点からすると、光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、光源と、前記光源から出射された光を前記光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成回路と;前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号の位相歪みを補正する位相補正回路と;前記位相歪みが補正されたRF信号からクロックを抽出するクロック抽出回路と;前記クロックに同期して、前記位相歪みが補正されたRF信号から前記情報を復号する復号回路と;を備える第1の情報再生装置である。
【0018】
これによれば、位相補正回路により、情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときのRF信号の位相歪みが補正され、その位相歪みが補正されたRF信号から、クロック抽出回路にてクロックが抽出される。そこで、復号回路では、正確なクロックに同期して情報が復号されることとなる。従って、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することが可能となる。
【0019】
本発明は、第2の観点からすると、光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、光源と、前記光源から出射された光を前記光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成回路と;前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号の位相歪みを補正する位相補正回路と;前記位相歪みが補正されたRF信号からクロックを抽出するクロック抽出回路と;前記クロックに同期して、前記RF信号から前記情報を復号する復号回路と;を備える第2の情報再生装置である。
【0020】
これによれば、位相補正回路により、情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときのRF信号の位相歪みが補正され、その位相歪みが補正されたRF信号から、クロック抽出回路にてクロックが抽出される。そこで、復号回路では、正確なクロックに同期して情報が復号されることとなる。従って、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することが可能となる。
【0021】
本発明は、第3の観点からすると、光ディスクに光ビームを照射し、前記光ディスクからの反射光を受光する情報再生装置を用いて、前記光ディスクに記録されている情報を再生するPRML方式を用いた情報再生方法において、前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときに、前記情報を復号するのに先立って、前記反射光から得られるRF信号の位相歪みを補正する工程を含むことを特徴とする情報再生方法である。
【0022】
これによれば、情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときに、情報を復号するのに先立って、反射光から得られるRF信号の位相歪みが補正される。従って、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生することが可能となる。
【0023】
本発明は、第4の観点からすると、回折限界よりも小さいピッチの記録マークと;前記記録マークの再生に適した等価係数に関する情報と;が記録されている光ディスクである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図24に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置20の概略構成が示されている。
【0025】
この図1に示される光ディスク装置20は、光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23を光ディスク15の半径方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、駆動制御回路26、再生信号処理回路28、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。また、本実施形態では、光ディスク15は、一例として図2に示されるように、透明基板に挟まれる形で、情報が記録されている記録層、光を反射する反射層、及び温度により光学定数(例えば、屈折率実部n、及び屈折率虚部k)が変化する材料を含む超解像層を有し、超解像再生が可能な超解像光ディスクであるものとする。
【0026】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15にレーザ光を照射するとともに、光ディスク15からの反射光を受光するための装置である。この光ピックアップ装置23は、光ディスク15に対応する波長のレーザ光を出射する光源と、該光源からの光を光ディスク15に集光する対物レンズを含み、光ディスク15で反射され対物レンズを介した戻り光を所定位置に導く光学系と、前記所定位置に配置され前記戻り光を受光する複数の受光領域を有する受光器と、対物レンズを微小駆動する駆動系(いずれも図示省略)などを備えている。受光器の各受光領域は、それぞれ受光光量に応じた信号(光電変換信号)を再生信号処理回路28に出力する。また、駆動系は、対物レンズをフォーカス方向に駆動するためのフォーカシングアクチュエータ、及び対物レンズをトラッキング方向に駆動するためのトラッキングアクチュエータを有している。ここでは、一例として光源から出射されるレーザ光の波長(以下、「光源波長」ともいう)を635nm、対物レンズの開口数(NA)を0.6とする。この場合の回折限界は、約530nm(≒光源波長/2NA)である。
【0027】
ところで、光ピックアップ装置23を用いて光ディスク15に400nmピッチで形成されているピット(ピット長=200nm)を再生したときのCNR(キャリア/ノイズ比)と再生パワーPrとの関係が一例として図3に示されている。図3では、再生パワーPrが2mW以上では、CNRが30dBを超えており、超解像再生が可能であることが分かる。なお、以下では、超解像再生が可能な再生パワーを「超解像再生パワー」ともいう。
【0028】
光ディスク15に超解像再生パワーのレーザ光が集光されると、その部分の温度が上昇し、光スポット内に、一例として図4(A)に示されるような微小開口領域、あるいは、一例として図4(B)に示されるような微小マスク領域が生じる。微小マスク領域及び微小開口領域は、いずれも光スポットの進行方向と反対の方向に尾を引いた形状を有している。なお、微小マスク領域及び微小開口領域のどちらが生じるかは、超解像層の材料や層構成に依存している。
【0029】
そこで、微小開口領域が生じる場合には、ピットが微小開口領域に含まれるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。一方、微小マスク領域が生じる場合には、ピットが微小マスク領域によってマスクされるか否かによって戻り光の光量が大きく変化する。
【0030】
例えば、マスク領域が生じる場合には、一例として図5に示されるように、光スポットによる加熱に起因して、超解像層の光学定数が変化し、スポット後方部の反射率が低下する。そのため、超解像層の光入射側表面PLでの光強度分布を考えると、入射光は対称な光スポット形状をしているが、反射光は非対称な光スポット形状(状態)となる。従って、記録層からの情報を、非対称な形状の光スポットで、読み出すことになり、RF信号には位相歪みが生じる。
【0031】
また、超解像層の光入射側表面PLにおける、反射光の光強度分布の再生パワー依存性が、一例として図6に示されている。これによると、再生パワーPrを超解像再生パワーまで上げると、光スポット後方がマスクされ、反射光の光強度分布が後部から削れた形状に変化している。なお、図6では、光スポットの中心位置を基準(原点)としている。
【0032】
また、図6における光強度分布をフーリエ変換して求めた、光学系における読み込み系(光ディスクを含む)のボード線図が、一例として図7(A)及び図7(B)に示されている。再生パワーPrが2.5mWのときには、ゲインは回折限界を超えた高周波領域まである程度維持されているが、位相を見ると、回折限界より低い周波数から位相歪みが発生している。この位相歪みは、RF信号における位相歪みとなり、RF信号に含まれている情報の復号結果に悪影響を及ぼす。
【0033】
図1に戻り、前記再生信号処理回路28は、アンプ28a、サーボ信号生成回路28b、ウォブル信号生成回路28c、RF信号生成回路28d、及びデコーダ28eなどから構成されている。
【0034】
アンプ28aは、光ピックアップ装置23の受光器からの複数の光電変換信号をそれぞれ電圧信号に変換するとともに、所定のゲインで増幅する。
【0035】
サーボ信号生成回路28bは、アンプ28aの各出力信号に基づいてサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号など)を生成する。ここで生成されたサーボ信号は前記駆動制御回路26に出力される。
【0036】
ウォブル信号生成回路28cは、アンプ28aの各出力信号に基づいてウォブル信号を生成する。
【0037】
RF信号生成回路28dは、アンプ28aの各出力信号に基づいてRF信号を生成する。
【0038】
デコーダ28eは前記ウォブル信号からアドレス情報及び同期信号などを抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号は駆動制御回路26に出力される。
【0039】
また、デコーダ28eは前記RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとして前記バッファマネージャ37を介して前記バッファRAM34に格納する。ここでは、一例として図8に示されるように、RF信号から2値化データを得るための回路(以下、「2値化データ取得回路」ともいう)として、ハイパスフィルタ(HPF)60、等価回路61、ADコンバータ(ADC)62、非対称FIRフィルタ63、インターポレータ64、等価回路65、ビタビ復号器66、PLL67、及び切替回路68などを備えている。
【0040】
HPF60は、RF信号に含まれる低周波ノイズを除去する。等価回路61は、HPF60の後段に配置され、光学系によるMTF(modulation transfer function)の低下により減衰した高域成分を強調し、符号間干渉を低減する。なお、等価回路61は、ADC62でのAD変換時にエイリアシングノイズが起こらないように高周波成分をカットするローパスフィルタ(LPF)の役割も兼ねている。
【0041】
ADC62は、等価回路61の後段に配置され、等価回路61の出力信号をデジタル信号に変換(AD変換)する。切替回路68は、ADC62の後段に配置され、CPU40からの指示に従って、ADC62の出力信号を非対称FIRフィルタ63及びインターポレータ64のいずれかに出力する。
【0042】
非対称FIRフィルタ63は、ADC62の出力信号に対してフィルタ処理を行い、前記RF信号における位相歪みを補正する。この非対称FIRフィルタ63の詳細については後述する。
【0043】
インターポレータ64は、ADC62の出力信号あるいは非対称FIRフィルタ63の出力信号が入力され、前後2つ以上の時間のサンプル値から、クロックタイミングにおけるサンプル値を補間する。
【0044】
PLL67は、インターポレータ64の出力信号から光ディスク15に記録されている記録信号のクロック(以下「記録クロック」ともいう)を再生し、インターポレータ64に前記クロックタイミングを指示する。すなわち、インターポレータ64とPLL67の組み合わせで、記録クロックに同期したサンプリングが行われる。なお、記録クロックの周期は1Tとする。
【0045】
等価回路65は、インターポレータ64の後段に配置され、インターポレータ64の出力信号に対して、所望のPR(Partial Response)特性に応じた応答となるように波形等価を行う。なお、前記所望のPR特性を、例えばPR(1、2、2、2、1)としても良い。
【0046】
ビタビ復号器66は、等価回路65の後段に配置され、等価回路65の出力信号に対して、最尤(maximum likelihood)復号方式であるビタビ(Viterbi)復号方式で復号処理を行い、2値化データを出力する。すなわち、ここでは、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)信号処理方式を用いている。
【0047】
図1に戻り、前記駆動制御回路26は、対物レンズ60の位置ずれを補正するため、再生信号処理回路28からのサーボ信号に基づいて、光ピックアップ装置23の駆動系の駆動信号を生成する。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。さらに、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各モータの駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
【0048】
前記バッファRAM34には、光ディスク15から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、前記バッファマネージャ37によって管理されている。
【0049】
前記レーザ制御回路24は、光ピックアップ装置23の光源の発光パワーを制御する。
【0050】
前記インターフェース38は、上位装置90(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
【0051】
前記フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、光ピックアップ装置23の光源の発光特性、後述する等価係数情報などが格納されている。
【0052】
前記CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って前記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
【0053】
《非対称FIRフィルタの詳細》
ここで、前記非対称FIRフィルタ63の詳細について説明する。
【0054】
この非対称FIRフィルタ63は、一例として図9に示されるように、20個の遅延素子(D1〜D20)、21個の乗算器(h1〜h21)、係数設定回路100、及び加算器102などを有している。すなわち、非対称FIRフィルタ63は、21タップのFIRフィルタを含んでいる。各乗算器での乗算係数(kn;n=1〜21)は、それぞれタップ係数とも呼ばれている。また、各乗算器での乗算係数の組み合わせは、等価係数とも呼ばれている。なお、図9では、遅延素子及び乗算器の一部は図示が省略されている。なお、各遅延素子の遅延時間はいずれも1T(記録クロックの1周期)である。
【0055】
加算器102は、各乗算器の出力信号を加算し、インターポレータ64に出力する。
【0056】
係数設定回路100は、光ディスク15における超解像層の構成、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び光源の駆動波形など(以下、便宜上「係数設定条件」ともいう)に基づいて、等価係数を設定する。ここでは、予め、係数設定条件毎に適切な等価係数が取得され前記等価係数情報としてフラッシュメモリ39に格納されている。従って、係数設定回路100は、係数設定条件に対応する等価係数をフラッシュメモリ39から抽出し、各乗算器に設定する。
【0057】
なお、ここでは、一例として、光ディスク15に記録されている既知のピット列を再生し、最小平均二乗(LMS)アルゴリズムや帰納的最小二乗(Recursive Least-Squares:RLS)アルゴリズムなどを用いて、前記PLL67で確実に記録クロックを抽出できる目標信号と非対称FIRフィルタ63の出力信号との差が最小となる等価係数を求め、得られた等価係数をそのときの係数設定条件に適切な等価係数とする。なお、非対称な等価係数を初期値として使用することにより、演算の収束を早めることができる。
【0058】
係数設定回路100により設定される等価係数の例を以下に示す。ここでは、図10に示されるように、係数設定条件1は、記録媒体の種類がA、再生パワーが2.5mW、線速度が4.30m/s、最短ピット長が0.193μmであり、係数設定条件2は、記録媒体の種類がA、再生パワーが2.1mW、線速度が4.30m/s、最短ピット長が0.193μmである。また、係数設定条件3は、記録媒体の種類がB、再生パワーが2.7mW、線速度が4.30m/s、最短ピット長が0.193μmであり、係数設定条件4は、記録媒体の種類がB、再生パワーが2.7mW、線速度が4.30m/s、最短ピット長が0.130μmである。さらに、係数設定条件5は、記録媒体の種類がA、再生パワーが2.7mW、線速度が3.00m/s、最短ピット長が0.193μmである。なお、記録媒体Aは、微小マスク領域が生じる超解像光ディスクであり、記録媒体Bは、微小開口領域が生じる超解像光ディスクである。
【0059】
係数設定条件1のときの前記面PLでの反射光の光強度分布が図11に示されている。スポット後方の反射光強度が、熱により生じた微小マスクにより小さくなり、非対称な形となっている。そして、このときの等価係数が図12に示されている。等価係数も中心のタップ係数(ここではk11)を原点として非対称な形となっている。
【0060】
係数設定条件2のときの前記面PLでの反射光の光強度分布が図13に示されている。係数設定条件1と比べて、再生パワーを減らしているため、微小マスク領域の面積が減少し、光強度分布が対称に近づいている。そして、このときの等価係数が図14に示されている。係数設定条件1の場合とは等価係数が異なっており、再生パワーに応じて等価係数を変更する必要があることを示している。
【0061】
係数設定条件3のときの前記面PLでの反射光の光強度分布が図15に示されている。スポット後方の反射光強度が、熱により生じた微小開口領域により大きくなり、非対称な形となっている。そして、このときの等価係数が図16に示されている。係数設定条件1の場合とは等価係数が異なっており、超解像層の種類により等価係数を変更する必要があることを示している。
【0062】
係数設定条件4のときの等価係数が図17に示されている。係数設定条件3の場合とは、等価係数が異なっており、最短マーク長(記録密度)に応じて、等価係数を変更する必要があることを示している。なお、係数設定条件4と係数設定条件3とで異なるのは、記録密度のみであるので、係数設定条件4での反射光強度分布は、図15と同一である。
【0063】
係数設定条件5のときの前記面PLでの反射光の光強度分布が図18に示されている。係数設定条件1と比較して、線速度を減らしているため、より超解像層が高温になり、スポット後方の反射光強度が小さくなっている。そして、このときの等価係数が図19に示されている。係数設定条件1の場合とは等価係数が異なっており、線速度により等価係数を変更する必要があることを示している。
【0064】
次に、光ディスク装置20に光ディスク15がロードされたときの処理について図20を用いて簡単に説明する。図20のフローチャートは、CPU40によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。
【0065】
最初のステップ401では、所定の線速度(又は角速度)で光ディスク15が回転するように駆動制御回路26に指示する。
【0066】
次のステップ403では、光ディスク15に記録されている係数設定条件やディスク情報などを読み出す。
【0067】
次のステップ405では、読み出したディスク情報に基づいて、光ディスク15が超解像光ディスクであるか否かを判断する。ここでは、光ディスク15は超解像光ディスクであるため、ここでの判断は肯定され、ステップ407に移行する。
【0068】
このステップ407では、フラグFに、ロードされた光ディスクが超解像光ディスクであることを意味する値「1」をセットする。
【0069】
次のステップ411では、読み出した係数設定条件、ディスク情報及びフラグFの値などをRAM41に保存する。
【0070】
次のステップ413では、読み出した係数設定条件及びフラグFの値を、これらを必要とする各部に通知する。そして、光ディスク15がロードされたときの処理を終了する。
【0071】
なお、上記ステップ405において、もし光ディスク15が超解像光ディスクでなければ、ステップ405での判断は否定され、ステップ409に移行する。このステップ409では、フラグFに、ロードされた光ディスクが超解像光ディスクでないことを意味する値「0」をセットする。そして、前記ステップ411に移行する。
【0072】
《再生処理》
続けて、上位装置90から、光ディスク15に対する再生要求があったときの、光ディスク装置20における処理(再生処理)について図21を用いて簡単に説明する。図21のフローチャートは、CPU40によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。
【0073】
最初のステップ501では、上位装置90から再生要求コマンドを受信した旨を再生信号処理回路28、レーザ制御回路24などに通知する。これにより、係数設定回路100は、フラッシュメモリ39に格納されている等価係数情報とRAM41に保存されている係数設定条件とに基づいて、前述したようにして等価係数を設定する。
【0074】
次のステップ503では、RAM41に保存されているフラグFを読み出す。
【0075】
次のステップ505では、フラグFの値が「1」であるか否かを判断する。ここでは、フラグFの値は「1」であるため、ここでの判断は肯定され、ステップ507に移行する。
【0076】
このステップ507では、ADC62の出力信号が非対称FIRフィルタ63に入力されるように、切替回路100に指示する。
【0077】
次のステップ511では、再生要求コマンドに含まれる指定アドレスに対応する目標位置近傍に光スポットが形成されるように、駆動制御回路26に指示する。これにより、シーク動作が行なわれる。そして、シーク動作が完了するとステップ513に移行する。なお、シーク動作が不要であれば、ここでの処理はスキップされる。
【0078】
次のステップ513では、再生を開始する。
【0079】
次のステップ515では、再生が完了したか否かを判断する。完了していなければ、ここでの判断は否定され、所定時間経過後に再度判断する。完了していれば、ここでの判断は肯定され、再生処理を終了する。
【0080】
なお、上記ステップ505において、もしフラグFの値が「0」であれば、ステップ505での判断は否定され、ステップ509に移行する。このステップ509では、ADC62の出力信号がインターポレータ64に入力されるように、切替回路100に指示する。そして、前記ステップ511に移行する。
【0081】
すなわち、光ディスク装置20は、超解像光ディスク及び従来の光ディスク(ここでは、DVD)のいずれにも対応可能である。
【0082】
ところで、図22には、上記再生処理における、非対称FIRフィルタ63を介したインターポレータ64の入力信号のアイパターンの例が示されている。この場合には、アイが開いており、PLL67では記録クロックの抽出を精度良く行うことができる。特に最短ピットでもしっかりとアイが開いており、記録クロックの抽出は容易である。なお、図23には、比較のために、仮に非対称FIRフィルタ63を介さないときのインターポレータ64の入力信号のアイパターンの例が示されている。この場合には、アイが開いておらず、PLL67では記録クロックを精度良く抽出するのは困難である。特に、最短ピットでは、アイが開いていないため、記録クロックの抽出は不可能である。すなわち、RF信号における位相歪みが非対称FIRフィルタ63によって補正されている。
【0083】
また、図24には、光ディスク15に記録されている長さ193nmのピットを再生したときのビットエラーレートが示されている。再生条件は、再生パワーPrが2.5mW、再生時の線速度が2.5m/sである。また、非対称FIRフィルタ63の等価係数は、図12に示される各タップ係数を用いた。非対称FIRフィルタ63を介さないときには、ビットエラーレートは約0.5であり、まったく復号できていないが、非対称FIRフィルタ63を介したときには、ビットエラーレートは激減して、0.0020まで小さくなっており、正常な復号が行われている。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る光ディスク装置によると、RF信号は、HPF60で低周波ノイズが除去され、等価回路61で符号間干渉が低減され、ADC62でAD変換される。ロードされた光ディスクが超解像光ディスクであれば、ADC62の出力信号は非対称FIRフィルタ63に入力される。この非対称FIRフィルタ63では、係数設定回路100により、係数設定条件に対応する等価係数がフラッシュメモリ39から抽出され、各乗算器に設定されているため、RF信号における位相歪みは、非対称FIRフィルタ63により補正される。非対称FIRフィルタ63の出力信号は、インターポレータ64を介してPLL67に供給される。ここでは、位相歪みが補正されているため、記録クロックが精度良く抽出される。そこで、インターポレータ64では、記録クロックに同期してサンプリングが精度良く行われる。インターポレータ64の出力信号は、等価回路65とビタビ復号器66とによりPRML信号処理方式で復号される。従って、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を、精度良く再生することが可能となる。
【0085】
なお、上記実施形態において、一例として図25に示されるように、前記切替回路68を省いて前記ADC62の出力信号を前記非対称FIRフィルタ63に入力し、一例として図26に示されるように、前記非対称FIRフィルタ63に、前記係数設定回路100に対して等価係数の変更を指示する係数変更回路104を付加しても良い。この係数変更回路104は、光ディスク15が超解像光ディスクでないときに、等価係数が中心のタップ係数(ここではk11)を原点として対称な複数のタップ係数から構成されるように変更する。この場合に、係数変更回路104は、非対称FIRフィルタ63が、符号間干渉を減少又は調整する目的のFIRフィルタとなるように、等価係数を変更しても良い(図27参照)。また、係数変更回路104は、光ディスク15が超解像光ディスクでないときに、非対称FIRフィルタ63が無効となるように、任意の1つの乗算器のタップ係数を1とし、残りの乗算器のタップ係数を全て0としても良い。
【0086】
また、上記実施形態において、光ディスク15のウォブル情報(図33参照)や、光ディスク15の内周部に位置するTOC(Table Of Contents)情報領域(図34参照)に、等価係数に関する情報が含まれている場合には、CPU40は、上記ステップ403でその等価係数に関する情報も光ディスク15から読み出してRAM41に保存し、係数設定回路100は、上位装置90から再生要求コマンドを受信した旨の通知があると、RAM41に保存されている等価係数に関する情報と係数設定条件とに基づいて、等価係数を設定しても良い。
【0087】
この場合に、例えば、光ディスク15に記録されている等価係数に関する情報が4倍速での再生に対応するものであり、ユーザから16倍速での再生が要求されたときに、一例として図28に示されるように、光ディスク15に記録されている等価係数に関する情報から16倍速での再生に対応する等価係数を算出する係数演算回路106を前記非対称FIRフィルタ63に付加しても良い。なお、係数演算回路106で算出された等価係数は、RAM41、又は光ディスク15の所定領域に記録しておき、次回演算時に使用することが望ましい。また、この場合に、非対称な等価係数を初期値として使用することにより、演算の収束を早めることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、前記非対称FIRフィルタ63が21タップのFIRフィルタを含む場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば5タップのFIRフィルタを含んでいても良い。また、FIRフィルタのタップ数が偶数であっても良い。
【0089】
また、上記実施形態において、等価回路61が線形回路の場合には、HPF60も線形回路であるため、HPF60と等価回路61の順番が入れ替わった構成でも良い。
【0090】
また、上記実施形態において、図29に示されるように、前記ADC62で記録クロックに同期したサンプリングを行っても良い。この場合には、前記PLL67で抽出された記録クロックはADC62に供給される。そして、前記インターポレータ64は不要である。
【0091】
また、上記実施形態において、前記非対称FIRフィルタ63がアナログ回路で構成されている場合には、図30に示されるように、前記ADC62を前記インターポレータ64の前段に配置しても良い。
【0092】
また、上記実施形態において、図31に示されるように、前記ADC62の出力信号を直接、前記インターポレータ64に入力させ、非対称FIRフィルタ63を介した信号をPLL67にのみ入力させるようにしても良い。この場合には、従来のRF信号を復号する回路をそのまま利用することが可能である。
【0093】
また、上記実施形態において、前記非対称FIRフィルタ63に代えて、図32に示されるように、超解像再生時(上記実施形態では、再生パワー2.5mWでの再生時)の位相歪み(図7(B)参照)とは逆の位相特性を有し、位相歪みを打ち消す機能を持った位相補償アナログフィルタ73を用いても良い。この場合には、前記ADC62は、前記インターポレータ64の前段に配置される。
【0094】
また、上記実施形態では、情報の再生のみが可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち、少なくとも情報の再生が可能な光ディスク装置であれば良い。
【0095】
また、上記実施形態では、光ピックアップ装置が1つの光源を備える場合について説明したが、これに限らず、例えば互いに異なる波長の光を発光する複数の光源を備えていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明の情報再生方法によれば、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生するのに適している。また、本発明の情報再生装置によれば、光ディスクに記録されている記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報を精度良く再生するのに適している。また、本発明の光ディスクによれば、記録マークのピッチが回折限界よりも小さい情報をPRML方式を用いて精度良く再生するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】超解像光ディスクを説明するための図である。
【図3】超解像光ディスクにおける再生パワーとCNRとの関係を説明するための図である。
【図4】図4(A)は微小開口領域を説明するための図であり、図4(B)は微小マスク領域を説明するための図である。
【図5】微小マスク領域の作用を説明するための図である。
【図6】超解像光ディスクにおける反射光の光強度分布と再生パワーとの関係を説明するための図である。
【図7】図7(A)はゲインの周波数特性を説明するためのボード線図であり、図7(B)は位相の周波数特性を説明するためのボード線図である。
【図8】図1におけるデコーダの2値化データ取得回路を説明するための図である。
【図9】図8における非対称FIRフィルタを説明するための図である。
【図10】係数設定条件1〜5を説明するための図である。
【図11】係数設定条件1での反射光の光強度分布を説明するための図である。
【図12】係数設定条件1での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図13】係数設定条件2での反射光の光強度分布を説明するための図である。
【図14】係数設定条件2での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図15】係数設定条件3での反射光の光強度分布を説明するための図である。
【図16】係数設定条件3での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図17】係数設定条件4での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図18】係数設定条件5での反射光の光強度分布を説明するための図である。
【図19】係数設定条件6での非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図20】光ディスクがロードされたときの処理を説明するためのフローチャートである。
【図21】再生処理を説明するためのフローチャートである。
【図22】位相歪みが補正されているときのアイパターンを説明するための図である。
【図23】位相歪みが補正されていないときのアイパターンを説明するための図である。
【図24】非対称FIRフィルタの有無とビットエラーレートとの関係を説明するための図である。
【図25】2値化データ取得回路の変形例1を説明するための図である。
【図26】図25における非対称FIRフィルタを説明するための図である。
【図27】光ディスクが超解像光ディスクでないときに変更された図26の非対称FIRフィルタの等価係数を説明するための図である。
【図28】係数演算回路を備えた非対称FIRフィルタを説明するための図である。
【図29】2値化データ取得回路の変形例2を説明するための図である。
【図30】2値化データ取得回路の変形例3を説明するための図である。
【図31】2値化データ取得回路の変形例4を説明するための図である。
【図32】2値化データ取得回路の変形例5を説明するための図である。
【図33】等価係数に関する情報の格納領域の例1を説明するための図である。
【図34】等価係数に関する情報の格納領域の例2を説明するための図である。
【符号の説明】
【0098】
15…光ディスク、20…光ディスク装置(情報再生装置)、23…光ピックアップ装置(光ヘッド)、28d…RF信号生成回路(信号生成回路)、28e…デコーダ(位相補正回路、クロック抽出回路、復号回路)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、
光源と、前記光源から出射された光を前記光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;
前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成回路と;
前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号の位相歪みを補正する位相補正回路と;
前記位相歪みが補正されたRF信号からクロックを抽出するクロック抽出回路と;
前記クロックに同期して、前記位相歪みが補正されたRF信号から前記情報を復号する復号回路と;を備える情報再生装置。
【請求項2】
光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、
光源と、前記光源から出射された光を前記光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;
前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成回路と;
前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号の位相歪みを補正する位相補正回路と;
前記位相歪みが補正されたRF信号からクロックを抽出するクロック抽出回路と;
前記クロックに同期して、前記RF信号から前記情報を復号する復号回路と;を備える情報再生装置。
【請求項3】
前記位相補正回路は、予想される位相歪みに対して逆の位相特性を有する位相補償アナログフィルタを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報再生装置。
【請求項4】
前記位相補正回路は、FIRフィルタと、前記FIRフィルタの等価係数を設定する設定回路とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報再生装置。
【請求項5】
前記光ディスクには、等価係数に関する情報が記録されており、
前記設定回路は、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つと、前記光ディスクに記録されている等価係数に関する情報とから、前記FIRフィルタの等価係数を設定することを特徴とする請求項4に記載の情報再生装置。
【請求項6】
前記光ディスクには、等価係数に関する情報が記録されており、
前記位相補正回路は、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つと、前記光ディスクに記録されている等価係数に関する情報とに基づいて、前記FIRフィルタの等価係数を算出する演算回路を更に備え、
前記設定回路は、前記演算回路で算出された等価係数を設定することを特徴とする請求項4に記載の情報再生装置。
【請求項7】
前記演算回路は、中央を原点として非対称な等価係数を初期値として演算を行うことを特徴とする請求項6に記載の情報再生装置。
【請求項8】
前記FIRフィルタの等価係数は、中央を原点として非対称であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項9】
前記位相補正回路は、前記情報における記録マークのピッチが回折限界以上のときの前記RF信号に対して、中央を原点として対称となるように前記FIRフィルタの等価係数を変更する変更回路を、更に備えることを特徴とする請求項8に記載の情報再生装置。
【請求項10】
前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号を前記位相補正回路に出力し、前記情報における記録マークのピッチが回折限界以上のときの前記RF信号を前記復号回路に出力する切替回路を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項11】
光ディスクに光ビームを照射し、前記光ディスクからの反射光を受光する情報再生装置を用いて、前記光ディスクに記録されている情報を再生するPRML方式を用いた情報再生方法において、
前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときに、前記情報を復号するのに先立って、前記反射光から得られるRF信号の位相歪みを補正する工程を含むことを特徴とする情報再生方法。
【請求項12】
回折限界よりも小さいピッチの記録マークと;
前記記録マークの再生に適した等価係数に関する情報と;が記録されている光ディスク。
【請求項13】
前記等価係数に関する情報は、前記記録マークが記録されている領域と異なる領域に記録されていることを特徴とする請求項12に記載の光ディスク。
【請求項14】
前記等価係数に関する情報は、TOC情報領域に記録されていることを特徴とする請求項13に記載の光ディスク。
【請求項15】
前記等価係数に関する情報は、ウオブル情報として記録されていることを特徴とする請求項12に記載の光ディスク。
【請求項16】
前記記録マークの記録密度、前記記録マークの再生に適した再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つが、更に記録されていることを特徴とする請求項12〜15のいずれか一項に記載の光ディスク。
【請求項1】
光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、
光源と、前記光源から出射された光を前記光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;
前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成回路と;
前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号の位相歪みを補正する位相補正回路と;
前記位相歪みが補正されたRF信号からクロックを抽出するクロック抽出回路と;
前記クロックに同期して、前記位相歪みが補正されたRF信号から前記情報を復号する復号回路と;を備える情報再生装置。
【請求項2】
光ディスクに記録されている情報をPRML方式を用いて再生する情報再生装置であって、
光源と、前記光源から出射された光を前記光ディスクに集光する対物レンズを含む光学系と、前記光ディスクからの反射光を受光する光検出器とを有する光ヘッドと;
前記光検出器の出力信号からRF信号を生成する信号生成回路と;
前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号の位相歪みを補正する位相補正回路と;
前記位相歪みが補正されたRF信号からクロックを抽出するクロック抽出回路と;
前記クロックに同期して、前記RF信号から前記情報を復号する復号回路と;を備える情報再生装置。
【請求項3】
前記位相補正回路は、予想される位相歪みに対して逆の位相特性を有する位相補償アナログフィルタを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報再生装置。
【請求項4】
前記位相補正回路は、FIRフィルタと、前記FIRフィルタの等価係数を設定する設定回路とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報再生装置。
【請求項5】
前記光ディスクには、等価係数に関する情報が記録されており、
前記設定回路は、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つと、前記光ディスクに記録されている等価係数に関する情報とから、前記FIRフィルタの等価係数を設定することを特徴とする請求項4に記載の情報再生装置。
【請求項6】
前記光ディスクには、等価係数に関する情報が記録されており、
前記位相補正回路は、記録密度、再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つと、前記光ディスクに記録されている等価係数に関する情報とに基づいて、前記FIRフィルタの等価係数を算出する演算回路を更に備え、
前記設定回路は、前記演算回路で算出された等価係数を設定することを特徴とする請求項4に記載の情報再生装置。
【請求項7】
前記演算回路は、中央を原点として非対称な等価係数を初期値として演算を行うことを特徴とする請求項6に記載の情報再生装置。
【請求項8】
前記FIRフィルタの等価係数は、中央を原点として非対称であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項9】
前記位相補正回路は、前記情報における記録マークのピッチが回折限界以上のときの前記RF信号に対して、中央を原点として対称となるように前記FIRフィルタの等価係数を変更する変更回路を、更に備えることを特徴とする請求項8に記載の情報再生装置。
【請求項10】
前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときの前記RF信号を前記位相補正回路に出力し、前記情報における記録マークのピッチが回折限界以上のときの前記RF信号を前記復号回路に出力する切替回路を更に備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の情報再生装置。
【請求項11】
光ディスクに光ビームを照射し、前記光ディスクからの反射光を受光する情報再生装置を用いて、前記光ディスクに記録されている情報を再生するPRML方式を用いた情報再生方法において、
前記情報における記録マークのピッチが回折限界よりも小さいときに、前記情報を復号するのに先立って、前記反射光から得られるRF信号の位相歪みを補正する工程を含むことを特徴とする情報再生方法。
【請求項12】
回折限界よりも小さいピッチの記録マークと;
前記記録マークの再生に適した等価係数に関する情報と;が記録されている光ディスク。
【請求項13】
前記等価係数に関する情報は、前記記録マークが記録されている領域と異なる領域に記録されていることを特徴とする請求項12に記載の光ディスク。
【請求項14】
前記等価係数に関する情報は、TOC情報領域に記録されていることを特徴とする請求項13に記載の光ディスク。
【請求項15】
前記等価係数に関する情報は、ウオブル情報として記録されていることを特徴とする請求項12に記載の光ディスク。
【請求項16】
前記記録マークの記録密度、前記記録マークの再生に適した再生パワー、再生時の線速度及び前記光源の駆動波形のうちの少なくとも一つが、更に記録されていることを特徴とする請求項12〜15のいずれか一項に記載の光ディスク。
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図5】
【図22】
【図23】
【図3】
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【図11】
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【図15】
【図16】
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【図18】
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【図21】
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【図25】
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【図27】
【図28】
【図29】
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【図34】
【図2】
【図5】
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【図23】
【公開番号】特開2007−280551(P2007−280551A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108184(P2006−108184)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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