説明

情報処理システム、その制御方法及びプログラム

【課題】簡素な構成で、瞬時に溺れている疑いのある遊泳者を監視者が発見できるようにする。
【解決手段】管理サーバ103は、遊泳者の位置を特定し、遊泳者の位置に基づいて遊泳者の状態を判定する。HMD104は、遊泳者の位置に対して整合する位置に、管理サーバ103による判定結果に対応する情報を合成表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現実空間の映像とコンピュータグラフィックス画像データとを合成して提示させることが可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海水浴場やプール等では、毎年のように水難事故が発生している。水難事故を防止するための対策としては、監視員やライフセーバ等を配置するということが行われている。また近年は、水難事故を防止するための種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、被監視者は沈水状態を検知可能な溺水センサを装着しており、沈水検知状態が所定時間継続した場合に、溺水状態にあることを監視者に対して、警告音、警報メッセージ、警報光、警報振動等により知らせる技術が開示されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、使用者の口や鼻の近辺に水圧センサが配置され、GPSにより使用者の位置を常時監視するとともに、当該水圧センサが所定の基準水深より深い位置にある時間をタイマで計測し、使用者が溺れているか否かを判断し、溺れていると判定された場合には、光や音を発して緊急事態を知らせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−184574号公報
【特許文献2】特開2006−232109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、被監視者が溺水状態にあることが検知された場合、監視者の監視端末を介して、誰かが溺水状態にあることを知らせるための警報音、警報メッセージ、警報光、警報振動等の警報を発生させることが開示されている。しかしながら、この構成では、監視者は、あくまで誰かが溺れていることを知ることができるものの、どこで溺れているのかを瞬時に知ることができない。また、特許文献1には、被監視者が溺水状態にあることが検知された場合、被監視者の水泳帽等に取り付けられている溺水センサに備えられた警報発生手段から、警報音、警報メッセージ、警報光等を発生させることも開示されているが、溺水状態の被監視者の頭部が水中に浸かっている場合には、警報音や警報メッセージや警報光が必ずしも監視者に届くとは限らない。
【0007】
また、特許文献2には、GPS機能を有する監視装置によって、溺れた人の位置を表示させることが開示されている。しかしながら、この構成では、監視装置の表示部には、自己の位置との相対的な位置情報が表示されることになるため、この相対的な位置情報に基づいて、実際の海水浴場やプールにおける位置を見比べる必要があるため、やはり直ぐに溺れている人の位置を特定することはできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、簡素な構成で、瞬時に溺れている疑いのある遊泳者を監視者が発見できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の情報処理システムは、現実空間の映像とコンピュータグラフィックス画像データとを合成して表示させることが可能な拡張現実感提示装置を有する情報処理システムであって、遊泳者の位置を特定する特定手段と、前記特定手段により特定される前記遊泳者の位置に基づいて、前記遊泳者の状態を判定する判定手段と、前記拡張現実感提示装置において、前記遊泳者の位置に対して整合する位置に、前記判定手段による判定結果に対応する情報を合成表示させる表示制御手段とを有することを特徴とする。
本発明の情報処理システムの制御方法は、現実空間の映像とコンピュータグラフィックス画像データとを合成して表示させることが可能な拡張現実感提示装置を有する情報処理システムの制御方法であって、遊泳者の位置を特定する特定ステップと、前記特定ステップにより特定される前記遊泳者の位置に基づいて、前記遊泳者の状態を判定する判定ステップと、前記拡張現実感提示装置において、前記遊泳者の位置に対して整合する位置に、前記判定ステップによる判定結果に対応する情報を合成表示させる表示制御ステップとを有することを特徴とする。
本発明のプログラムは、現実空間の映像とコンピュータグラフィックス画像データとを合成して表示させることが可能な拡張現実感提示装置を有する情報処理システムの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、遊泳者の位置を特定する特定ステップと、前記特定ステップにより特定される前記遊泳者の位置に基づいて、前記遊泳者の状態を判定する判定ステップと、前記拡張現実感提示装置において、前記遊泳者の位置に対して整合する位置に、前記判定ステップによる判定結果に対応する情報を合成表示させる表示制御ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な構成で、瞬時に溺れている疑いのある遊泳者を監視者が発見することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプール監視システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における管理サーバとHMDとの機能的な構成を示す図である。
【図3−1】本発明の第1の実施形態における管理サーバのハードウェア構成を示す図である。
【図3−2】本発明の第1の実施形態におけるHMDのハードウェア構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るプール監視システムの処理を示すフローチャートである。
【図5】受信機から発信される信号を説明するための図である。
【図6】警報情報のAR表示の例を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るプール監視システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るプール監視システムの構成を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るプール監視システムは、遊泳者に装着される発信機101と、プールの周囲の水面上及び水面下に配置される、発信機101から発信された超音波を受信する受信機a〜d102と、受信機102が発信機101からの超音波の受信に応じて送信する信号を解析し、遊泳者が溺れていないかどうかを判定する管理サーバ103と、監視員の頭部に装着され、現実空間の映像において溺れている遊泳者に対して整合する位置に警告を表すコンピュータグラフィックス画像データを合成表示する眼鏡型のHMD(Head Mounted Display)104とにより構成される。なお、図1においては、説明の簡単のため、遊泳者の一人だけ示しているが、同じプール内に遊泳者が何人いても構わない。この場合、各遊泳者に対して一つの発信機101が装着される。
【0014】
上述したとおり、HMD104は、現実空間の映像に対して整合する位置にコンピュータグラフィックス画像データを表示することにより、拡張された現実感を演出する。以下では、このように拡張された現実感を与えるコンピュータグラフィックス画像データの合成表示を、AR(Augmented Reality)表示と称することがある。なお、HMD104には、非透過型、ビデオ透過型、光学透過型等の様々な方式があるが、どの方式のものを用いても構わない。また、以下で説明する実施形態においては、AR表示を行うデバイスであるAR表示デバイスの例としてHMD104を挙げるが、これに限られない。例えば、カメラによって撮影された現実空間の映像を液晶ディスプレイ等に表示し、表示した現実空間の映像にコンピュータグラフィックス画像データを合成表示するような携帯端末型のデバイスであってもよい。或いは、光学的に透過して映し出される現実空間の映像にコンピュータグラフィックス画像データを合成表示するようなヘッドアップディスプレイ型のデバイスであってもよい。
【0015】
また、現実空間の映像に整合させてコンピュータグラフィックス画像データを表示させる際に、現実空間の映像中におけるオブジェクト(例えば、遊泳者)とコンピュータグラフィックス画像データとの座標合わせが行われる。座標合わせの手法としては、本実施形態においては、HMD104の位置(例えば、緯度、経度)と姿勢(例えば、方向、仰角)とを検知し、HMD104を装着した監視員が現実空間のどこを見ているのかを推定し、推定した位置に整合するようにコンピュータグラフィックス画像データを合成する。
【0016】
図2は、第1の実施形態における管理サーバ103とHMD104との機能的な構成を示す図である。図2に示すように、管理サーバ103は、信号受信部1031、位置特定部1032、溺水判定部1033、及び、位置/警報情報送信部1034により構成される。信号受信部1031は、受信機a〜d102から発信される信号を受信する。詳細は後述するが、受信機a〜d102は、遊泳者が装着している発信機101から発信される超音波を受信すると、それぞれ受信したタイミングでハイレベルとなる波形の信号を管理サーバ103に対して送信する。信号受信部1031は、このように受信機a〜d102から発信された信号を受信するものである。位置特定部1032は、信号受信部1031が各受信機a〜d102から受信した信号に基づいて、遊泳者の位置を特定する。溺水判定部1033は、位置特定部1032により特定される遊泳者の位置が水の領域内である時間を計測することによって、遊泳者が水の中にいる時間、即ち遊泳者が陸に戻っていない時間を計測する。そして溺水判定部1033は、計測時間が所定の時間を超過する場合、当該遊泳者は溺水している疑いがあると判定する。位置/警報情報送信部1034は、溺水判定部1033により遊泳者が溺水している疑いがあると判定された場合、そのときの遊泳者の位置を示す位置情報と、溺水の疑いがあることを警報するための警報情報とをHMD104に対して送信する。なお、この警報情報は、予めHMD104側に保持されていてもよい。
【0017】
HMD104は、位置/警報情報受信部1041、位置姿勢検知部1042、及び、提示部1043により構成される。位置/警報情報受信部1041は、管理サーバ103から上述した位置情報と警報情報とを受信する。位置姿勢検知部1042は、HMD104の位置(例えば、緯度、経度、あるいは、ローカルで定義された位置座標など)及び姿勢(例えば、方向、仰角)を検知する。提示部1043は、位置姿勢検知部1042により検知されたHMD104の位置及び姿勢に基づいて、HMD104を装着する監視員が現実空間のどこを見ているかを推定し、監視員が見ていると推定される現実空間の映像、即ちHMD104に実際に映し出されている映像中において、遊泳者と重畳する位置又は遊泳者の近傍に警報情報を合成表示する。
【0018】
図3−1は、本実施形態における管理サーバ103のハードウェア構成を示す図である。図3−1において、CPU3011は、システムバスに接続される各デバイスやコントローラを統括的に制御する。ROM3012或いはHDD3013には、CPU3011の制御プログラムであるオペレーティングシステム(OS)や、後述する各種機能を実現するためのプログラムが記憶されている。RAM3013は、CPU3011の主メモリ、ワークエリア、一時退避領域等として機能する。通信I/Fコントローラ3014は、ネットワークを介して外部機器(例えば、HMD104や受信機a〜d102)との通信制御処理を実行する。なお、HDD3015の代替手段として、SDD(Solid State Drive)を用いてもよい。
【0019】
図3−2は、本実施形態におけるHMD104のハードウェア構成を示す図である。図3−2において、CPU3021は、システムバスに接続される各デバイスやコントローラを統括的に制御する。ROM3022には、CPU3021の制御プログラムであるOSや、後述する各種機能を実現するためのプログラムが記憶されている。RAM3023は、CPU3021の主メモリ、ワークエリア、一時退避領域等として機能する。通信I/Fコントローラ3024は、ネットワークを介して外部機器(例えば、管理サーバ103)との通信制御処理を実行する。ディスプレイコントローラ3025は、ディスプレイ3026における画像表示を制御する。
【0020】
なお、図2における信号受信部1031及び位置/警報情報送信部1034は、図3−1の通信I/Fコントローラ3014に対応する構成である。位置特定部1032及び溺水判定部1033は、図3−1のCPU3011及びROM3012或いはHDD3015に格納されるプログラムに対応する構成である。また、図2における位置/警報情報受信部1041は、図3−2の通信I/Fコントローラ3024に対応する構成である。位置姿勢検知部1042は、図示していないジャイロセンサや加速度センサ、CPU3021及びROM3022に格納されるプログラムに対応する構成である。提示部1043は、CPU3021、ROM3022に格納されるプログラム、ディスプレイコントローラ3025、ディスプレイ3026に対応する構成である。
【0021】
図4は、第1の実施形態に係るプール監視システムの処理を示すフローチャートである。ステップS401において、信号受信部1031は、受信機a〜d102の全てからハイレベルの信号を受信したか否かを判定する。図5は、受信機a〜d102から発信される信号を説明するための図である。受信機a〜d102は、発信機101から発信される超音波を受信すると、そのタイミングでハイレベルの信号を出力する。図5の例では、受信機a102は時刻t1に発信機101から超音波を受信し、同時刻t1にハイレベルの信号を出力している。また、受信機b102は時刻t2に発信機101から超音波を受信し、同時刻t2にハイレベルの信号を出力している。また、受信機c102は時刻t3に発信機101から超音波を受信し、同時刻t3にハイレベルの信号を出力している。受信機d102は時刻t4に発信機101から超音波を受信し、同時刻t4にハイレベルの信号を出力している。受信機a〜d102の全てからハイレベルの信号を受信した場合、処理はステップS402に移行する。一方、受信機a〜dのうちの何れかから未だハイレベルの信号を受信していない場合、受信するまで待機する。
【0022】
ステップS402において、位置特定部1032は、受信機a〜d102からハイレベルの信号を受信した時刻差や位相差に基づいて遊泳者の位置を特定する。なお、このような位置特定方法として、例えば特開2000−98019号公報、特開2007−26331号公報に開示される技術を適用することができる。ステップS403において、溺水判定部1033は、位置特定部1032により特定された遊泳者の位置が水の領域内であるか否かを判定する。溺水判定部1033は、管理サーバ103内に保持されている水の領域及び陸の領域等を含む地図情報を参照し、位置特定部1032により特定された遊泳者の位置が水の領域に該当するか否かを判定することにより、ステップS403の判定を行う。遊泳者の位置が水の領域内である場合、処理はステップS404に移行する。一方、遊泳者の位置が水の領域内ではない場合、処理はステップS405に移行する。
【0023】
溺水判定部1033は、初めて遊泳者の位置が水の領域内であると判定した時点から現時点までの経過時間をタイマにより測定している。ステップS404においては、溺水判定部1033は、タイマによって計測されている時間が所定時間を経過したか否かを判定する。タイマの計測時間が所定時間を経過している場合、処理はステップS406に移行する。一方、タイマの計測時間が所定時間を経過していない場合、処理はステップS401に戻る。なお、遊泳者が陸の領域に戻ると、ステップS405において、溺水判定部1033は、タイマをリセットする。
【0024】
ステップS406において、位置/警報情報送信部1034は、直前のステップS402において特定された遊泳者の位置を示す位置情報(遊泳者が溺水していると判定された時点に対応する遊泳者の位置を示す位置情報)と、遊泳者が溺水している疑いがあることを警報するための警報情報とをHMD104に対して送信する。
【0025】
ステップS407において、HMD104の位置/警報情報受信部1041は、管理サーバ103から上述した位置情報と警報情報とを受信する。ステップS408において、位置姿勢検知部1042は、HMD104の位置と姿勢とを検知する。ステップS409において、提示部1043は、位置姿勢検知部1042により検知されたHMD104の位置及び姿勢に基づいて、HMD104を装着する監視員が現実空間のどこを見ているかを推定する。そして提示部1043は、図6に示すように、監視員が見ていると推定される現実空間の映像中(HMD104に実際に映し出されている映像中)において、遊泳者と重畳する位置又は遊泳者の近傍に警報情報のコンピュータグラフィックス画像データ601を合成表示する。
【0026】
なお、本実施形態については、監視領域(例えば、プール)の固有のローカルな座標系で遊泳者の位置を計測する。例えば、監視領域を上から捉えた平面図に対して2次元の座標を設定し、上述した地図情報として、水の領域及び陸の領域を表す座標データを予め管理サーバ103に記憶させておく。これにより、遊泳者の位置を表す座標データと、予め管理サーバ103に記憶された水の領域および陸の領域を表す座標データとを比較することで、遊泳者が水の領域にいるのか、陸の領域にいるのかを特定することができる。
【0027】
また、監視者の位置の特定は、遊泳者の位置の特定と同様、例えば、HMD104にも超音波の発信機を備えておき、水面上に備えられた複数の受信機でHMD104の発信機からの超音波を受信し、そのときの時刻差や位相差に基づいて特定することができる。これにより、監視者と遊泳者との相対的な位置関係を特定することができ、HMD104上の適切な位置に警報情報をAR表示することが可能となる。
【0028】
また、HMD104にGPS機能を備えておくことで、監視者の位置を表す緯度、経度を捉えるとともに、遊泳者の位置を表すローカルの座標を緯度、経度に変換することで、監視者と遊泳者との相対的な位置関係を特定する構成とすることもできる。
【0029】
なお、本実施形態の他の適用例として、遊泳者の遊泳時間の管理にも使用することも可能である。例えば、管理サーバ103がステップS401〜S404と同様の処理により、当該遊泳者の所定の利用時間以上プールに存在するかどうかを監視することができる。もし、所定の利用時間以上プールに存在するようであれば、管理サーバ103は、監視員が装着しているHMD104に対して、遊泳者の位置情報と利用時間を超過している旨の警報情報とを送信すれば、監視員は警報情報のAR表示により当該遊技者を把握することができる。
【0030】
第1の実施形態によれば、簡素な構成で、瞬時に溺れている疑いのある遊泳者を監視者が発見することが可能となる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態との相違点について説明する。第1の実施形態との相違点は、管理サーバ103の溺水判定部1033の機能にある。
【0032】
第2の実施形態において、溺水判定部1033は、遊泳者がほぼ同じ場所に留まっている時間を計測し、計測時間が所定時間以上となった場合、遊泳者が溺水している疑いがあると判定する。遊泳者がほぼ同じ場所に留まっているかどうかは、例えば、溺水判定部1033は、位置特定部1032によって逐次特定される、水の領域内における遊泳者の位置の分散を算出し、算出した分散の値が所定の閾値以下である場合、ほぼ同じ場所に留まっていると判定する。つまり、遊泳者の位置は所定の時間間隔で計測されるため、管理サーバ103には各時刻における遊泳者の位置情報の履歴が格納されており、例えば遊泳者の位置を2次元座標で特定する構成の場合には、遊泳者のx座標やy座標の値の分散を算出することになる。そして、x座標やy座標の値がばらつきが小さいということは、遊泳者が同じ位置に留まっていることを表しているということになる。管理サーバ103は、このように算出される分散の値が所定の閾値以下となっている状態が所定時間以上継続した場合、遊泳者の位置情報と警報情報とをHMD104に対して送信する。
【0033】
また、遊泳者がほぼ同じ場所に留まっている時間ではなく、遊泳者の動きにランダム性がなくなり、単調な動きに変化してからの時間を計測してもよい。海においては、遊泳者の動きにランダム性があることは遊泳者が泳いでいる状態にあることが推測され、そこから単調な動きに変化することは潮流に流されている疑いがあることが推定されるためである。単調な動きが所定時間以上継続する場合、遊泳者が溺水している疑いもあるため、このようなときに、管理サーバ103は、遊泳者の位置情報と警報情報とをHMD104に対して送信するようにしてもよい。なお、遊泳者の動きにランダム性があるか、或いは遊泳者の動きが単調であるかを判定する際に、外部システムから潮流のデータを取得し、当時の潮流を加味して遊泳者の動きを判定するようにしてもよい。
【0034】
なお、複数の遊泳者が同じ周波数の超音波を発信すると、各遊泳者の位置を検出することが困難となる。従って、異なる発信機間では、超音波の周波数を異ならせたり、超音波の発信タイミングを変えたり、異なる変調(M系列等の疑似乱数畳み込みを含む)を行う、等の方法を採用することにより、同時に複数の発信機を用いた場合でも、各遊泳者の位置を正確に検出することが可能となる。また、第1、第2の実施形態で説明した遊泳者の溺水判定方法の何れか一方のみを適用するだけでなく両方を同時に適用して遊泳者が溺れているかどうかを判定してもよい。
【0035】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下では、第1又は第2の実施形態との相違点について説明する。第1又は第2の実施形態との相違点は、遊泳者の位置特定方法にある。
【0036】
第3の実施形態においては、遊泳者を特定可能なIDを発信する無線タグを当該遊泳者に装着し、海やプールの周囲には、無線タグからIDを受信する複数のリーダ(無線受信機)を設置する。管理サーバ103は、複数のリーダからIDの受信時点や受信強度を受信し、複数のリーダ間におけるIDの受信時点の時間差やIDの受信強度の差に基づいて、遊泳者の位置を特定する。
【0037】
また、例えばプールのレーンを区切る浮きの付いたロープ等に一定間隔で無線タグのリーダを取り付けておけば、無線タグの位置をプール上の格子位置で計測することが可能となる。即ち、管理サーバ103は、複数のリーダ間における無線タグからのIDの受信強度の大小関係等に基づいて位置や方向を絞り込むことで、該当するプール上の格子位置を判定し、それを遊泳者の位置として特定する。例えば、最も受信強度の大きかったリーダの位置を遊泳者の位置とする。
【0038】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。以下では、第1又は第2の実施形態との相違点について説明する。第1又は第2の実施形態との相違点は、遊泳者の位置特定方法にある。
【0039】
第4の実施形態においては、遊泳者にはGPS(Global Positioning System)端末が装着される。GPS端末は、複数のGPS衛星から時刻データ等を含む信号を受信することにより遊泳者の位置情報(緯度、経度)を計測し、計測した位置情報を管理サーバ103に対して逐次送信する。そして、管理サーバ103は位置情報を受信し、遊泳者の位置を特定する。また、監視者についても、GPS機能をHMD104に備えることで、同様に位置情報(緯度、経度)を計測するこができる。これにより、監視者と遊泳者との相対的な位置関係を特定することができ、HMD104上の適切な位置に警報情報をAR表示することが可能となる。
【0040】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。以下では、第1又は第2の実施形態との相違点について説明する。第1又は第2の実施形態との相違点は、遊泳者の位置特定方法にある。
【0041】
図7は、第5の実施形態に係るプール監視システムの構成を概略的に示す図である。第5の実施形態においては、遊泳者にはマーカとなるような目立つキャップ701を被せておく。各キャップ701は全て異なる模様で遊泳者を識別可能としている。例えばプールの屋根からプール全体を画角に捉えるようにカメラ702を配置し、管理サーバ103がカメラにより撮影された画像データを受信し、予め格納されている模様の画像データと照合する画像解析を行うことにより、遊泳者の位置を特定する。つまり、カメラの画角で捉えられる領域に対して予め座標が設定されており、管理サーバ103は、カメラ702によって撮像された画像の中から、予め管理サーバ103に格納されているキャップの模様を抽出すると、画像の中のキャップの位置を表す座標により、遊泳者の位置を特定することができる。これにより、他の実施形態と同様、溺水判定部1033は、遊泳者が溺水している疑いがあるか否かを判定することができる。
【0042】
また、第5の実施形態では、遊泳者に被せているキャップ701を遊泳者の位置特定のためだけではなく、HMD104において警報情報を合成表示する位置を特定するためにも使用することができる。即ち、管理サーバ103に予めキャップ701に関する情報を登録しておき、管理サーバ103が、遊泳者が溺水している疑いがあると判定すると、その遊泳者のキャップに関する情報に当該遊泳者が溺れていることを示すフラグを設定する。HMD104は、所定の時間間隔で管理サーバ103に対して問い合わせを行い、フラグが設定されている情報が存在する場合には、該当するキャップ701をHMD104に装着されているカメラ703が捉えた場合、警報情報を当該キャップ701と整合する位置にAR表示する。この場合、HMD104(カメラ)側には、照合用の各キャップ701の画像データが予め準備されている必要がある。この場合、監視者と遊泳者との相対的な位置関係を特定することなく、HMD104上の適切な位置に警報情報をAR表示することが可能となる。つまり、監視者の位置座標を必ずしも特定する必要がない。
【0043】
第4の実施形態については、遊泳者の位置が緯度、経度で得られるため、HMD104を装着している監視者の位置についても緯度、経度で計測することにより、HMD104上の適切な位置に警報情報をAR表示することが可能である。
【0044】
また、上述した実施形態では、プール監視システムの必須機能を管理サーバ103とHMD104とに分けているが、管理サーバ103の機能の一部又は全部をHMD104に備えるようにしてもよい。
【0045】
上述した実施形態によれば、簡素な構成で、瞬時に溺れている疑いのある遊泳者を監視者が発見することが可能となる。なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
101:発信機、102:受信機、103:管理サーバ、104:HMD、701:キャップ、702、703:カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間の映像とコンピュータグラフィックス画像データとを合成して表示させることが可能な拡張現実感提示装置を有する情報処理システムであって、
遊泳者の位置を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定される前記遊泳者の位置に基づいて、前記遊泳者の状態を判定する判定手段と、
前記拡張現実感提示装置において、前記遊泳者の位置に対して整合する位置に、前記判定手段による判定結果に対応する情報を合成表示させる表示制御手段とを有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記特定手段により特定される前記遊泳者の位置に基づいて、前記遊泳者が水の領域内に所定の時間以上継続して存在するか否かを判定し、その判定結果に応じて前記遊泳者の状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記特定手段により特定される前記遊泳者の位置に基づいて、水の領域内における前記遊泳者の位置の分散を算出し、当該分散の値に応じて前記遊泳者の状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記特定手段は、撮像手段により撮影された前記遊泳者に装着されたマーカの画像データを取得し、前記画像データを解析することにより、前記遊泳者の位置を特定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
現実空間の映像とコンピュータグラフィックス画像データとを合成して表示させることが可能な拡張現実感提示装置を有する情報処理システムの制御方法であって、
遊泳者の位置を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにより特定される前記遊泳者の位置に基づいて、前記遊泳者の状態を判定する判定ステップと、
前記拡張現実感提示装置において、前記遊泳者の位置に対して整合する位置に、前記判定ステップによる判定結果に対応する情報を合成表示させる表示制御ステップとを有することを特徴とする情報処理システムの制御方法。
【請求項6】
現実空間の映像とコンピュータグラフィックス画像データとを合成して表示させることが可能な拡張現実感提示装置を有する情報処理システムの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
遊泳者の位置を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにより特定される前記遊泳者の位置に基づいて、前記遊泳者の状態を判定する判定ステップと、
前記拡張現実感提示装置において、前記遊泳者の位置に対して整合する位置に、前記判定ステップによる判定結果に対応する情報を合成表示させる表示制御ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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