説明

情報処理装置、プログラム、及び画像履歴管理システム

【課題】画像処理部にて実行された画像処理に係る履歴画像を情報処理装置から画像履歴管理装置に送信して登録する場合において、履歴画像の送信のための情報処理装置と画像履歴管理装置間の通信負荷を低減する。
【解決手段】画像処理装置120から画像処理に係る履歴情報を受け取った場合、情報抽出管理部106の管理の下で、その履歴画像の特徴情報が抽出される。送信済み履歴DB112には、過去にセンター管理サーバに送信済みの履歴画像の特徴情報が登録されている。判定部110は、受け取った履歴画像から抽出された特徴情報と実質的に同じ特徴情報が送信済み履歴DB112に登録されていれば、その履歴画像は既に送信済みであると判定する。送信制御部116は、履歴画像が送信済みでなければその履歴画像を、送信済みであればその送信済みの履歴画像を特定する情報を、センター管理サーバに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、及び画像履歴管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業活動において情報漏洩は大きな問題となっている。プリンタやコピー機、ファクシミリ装置、スキャナ、或いはそれらのうち2以上の機能を併せ持つ複合機などといった画像処理装置においても、印刷やスキャン、ファクシミリ送信などによる情報漏洩に対する対策が求められている。このような要請に対し、印刷やファクシミリ送信などで出力した画像を、履歴情報として保存し、後で検索できるようにするシステムが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。例えば特許文献1に記載されたシステムでは、複写機が、複写のために読み取った画像データを、その読み取りの日時などの情報と共にネットワークを介して履歴管理サーバに送信し、登録している。
【0003】
ここで、同一拠点内では、同じ文書が繰り返し画像処理装置に入出力されるケースが頻繁に見られる。例えば、ある人が印刷した文書を別の人が複写したり、電子メールで配信された添付文書を複数人が印刷出力したり、などそのようなケースはかなり多い。
【0004】
【特許文献1】特開2005−157569号公報
【特許文献2】特開2005−160118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画像処理部にて実行された画像処理に係る履歴画像を情報処理装置から画像履歴管理装置に送信して登録する場合において、履歴画像の送信のための情報処理装置と画像履歴管理装置間の通信負荷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、画像処理部にて実行された画像処理に係る履歴画像であって画像履歴管理装置に送信済みの履歴画像の特徴を表す特徴情報を、当該履歴画像を特定する識別情報に対応づけて記憶した記憶部と、前記画像処理部にて画像処理が実行された場合において、当該画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであるか否かを、前記記憶部に記憶された特徴情報に基づき判定する判定部と、前記判定部が前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みではないと判定した場合は当該履歴画像を前記画像履歴管理装置に送信し、前記判定部が前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであると判定した場合は、当該履歴画像に代えて、前記実質的に同一の送信済みの履歴画像の識別情報を前記画像履歴管理装置に送信する送信部と、を備える情報処理装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、画像処理部にて実行された画像処理に係る履歴画像であって画像履歴管理装置に送信済みの履歴画像の特徴を表す特徴情報を、当該履歴画像を特定する識別情報に対応づけて記憶部に記憶するステップと、前記画像処理部にて画像処理が実行された場合において、当該画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであるか否かを、前記記憶部に記憶された特徴情報に基づき判定するステップと、前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みではないと判定した場合は当該履歴画像を前記画像履歴管理装置に送信するステップと、前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであると判定した場合は、当該履歴画像に代えて、前記実質的に同一の送信済みの履歴画像の識別情報を前記画像履歴管理装置に送信するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0008】
請求項3に係る発明は、情報処理装置と画像履歴管理装置とを備え、前記情報処理装置は、画像処理部にて実行された画像処理に係る履歴画像であって画像履歴管理装置に送信済みの履歴画像の特徴を表す特徴情報を、当該履歴画像を特定する識別情報に対応づけて記憶した記憶部と、前記画像処理部にて画像処理が実行された場合において、当該画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであるか否かを、前記記憶部に記憶された特徴情報に基づき判定する判定部と、前記判定部が前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みではないと判定した場合は当該履歴画像を前記画像履歴管理装置に送信し、前記判定部が前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであると判定した場合は、当該履歴画像に代えて、前記実質的に同一の送信済みの履歴画像の識別情報を前記画像履歴管理装置に送信する送信部と、を備え、前記画像履歴管理装置は、前記情報処理装置から受信した画像処理に係る履歴画像を保管する保管部と、前記情報処理装置から、画像処理に係る履歴画像の代わりに前記送信済みの履歴画像の識別情報を受け取った場合に、前記保管部に対し、当該画像処理の履歴画像として当該識別情報の示す履歴画像を前記保管部に登録する登録処理部と、を備える、画像履歴管理システムである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1,2又は3に係る発明によれば、情報処理装置から画像履歴管理装置に送信する履歴画像のデータ量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
画像履歴管理システムの実施の形態の一例を図1に示す。このシステムでは、1以上の拠点10に設置された画像処理装置120が実行した画像処理の履歴を、センター管理サーバ200に集めて管理する。
【0012】
画像処理装置120は、プリンタ、スキャナ、デジタル複写機、ファクシミリ装置、又はそれらのうちの2以上の機能を兼ね備えるデジタル複合機、などの装置である。また、色変換、画質調整、文字認識などのように、画像データに対して処理を施す装置も、画像処理装置120の範疇に入る。画像処理装置120が実行する画像処理の例としては、印刷、画像読取、複写、読み取った画像のファクシミリ送信などがある。また、読み取られた画像をインターネット等のネットワークを介して送信する処理も、画像処理の範疇に入る。この送信は、例えば、FTP(file transfer protocol)などの送信プロトコル、或いは電子メールに添付するなどの形で行うことができる。また、色変換、画質調整、文字認識などの処理も画像処理の一種である。
【0013】
拠点10は、画像処理装置120が設置される施設であり、例えばオフィスや店舗などがその一例である。拠点10には、1以上の画像処理装置120が設置される。それら画像処理装置120は、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)などのような拠点10内のネットワーク130に接続されている。ネットワーク130には、拠点管理サーバ100が接続されている。各画像処理装置120は、画像処理を実行した場合、その画像処理に関する履歴レコードを生成し、ネットワーク130を介して拠点管理サーバ100に送信する。拠点管理サーバ100は、各画像処理装置120の画像処理の履歴レコードを一時的に保持する。拠点管理サーバ100は、インターネット等のネットワーク20に接続されており、一時的に保持した履歴レコードの情報を、そのネットワーク20を介してセンター管理サーバ200に送信する。
【0014】
画像処理に関する履歴レコードには、画像処理が実行された日時や画像処理の種類などのように従来から処理履歴として記録されている履歴情報の他に、その画像処理に係る履歴画像が含まれる。画像処理に係る履歴画像は、画像処理に用いられた画像である。例えば画像読取、複写、ファクシミリ送信などの画像処理の場合、紙原稿を読み取った結果得られた画像を、履歴画像として用いることができる。また、印刷などの画像処理の場合は、クライアントコンピュータから受け取った印刷データから生成した画像を、履歴画像として用いることができる。また、色変換などの画像処理の場合は、その処理の対象の画像又はその処理の結果得られる画像を、履歴画像として用いることができる。また、そのような画像そのものの代わりに、そのような画像に対して画像圧縮などの所定の処理を施したものを、履歴画像として用いてもよい。また、画像処理装置がコンピュータからページ記述言語(PDL)で記述された印刷データを受け取り、この印刷データに従って印刷を行った場合、そのページ記述言語の印刷データを履歴画像として用いてもよい。
【0015】
なお、画像処理装置120は、画像処理結果の画像に対し、一意な文書識別子を付与し、その文書識別子をその画像に埋め込んで出力する機能を備える。一意な文書識別子として、例えばUUID(Universal Unique IDentifier)やGUID(Globally Unique Identifier)などといった全世界的に一意なIDを用いてもよい。UUID又はGUIDを生成する方式は公知であるので、画像処理装置120はこの方式を備えていればよい。また、出力画像への文書識別子の埋め込みは、当該識別子の値を示す文字列又はコード画像(例えばバーコードや2次元バーコード)を出力画像の余白部分に埋め込むことによりおこなってもよい。また、文書識別子の値を示すコード画像を透かし(ウォーターマーク)などの形態で、出力画像に重畳して埋め込んでもよい。文書識別子が埋め込まれた出力画像は、画像処理の種類に応じ、紙に印刷されるか、画像ファイルとして保存又は送信されるか、又はファクシミリ画像として送信される。なお、文書識別子は、画像処理が行われる毎に一意に付与されるので、その画像処理に係る履歴画像を識別するための識別情報としても利用できる。画像処理装置120は、このようにして出力画像に対して付与した文書識別子を、履歴情報の一項目として、拠点管理サーバ100に送る。
【0016】
ここで、画像読取や複写、ファクシミリ送信などのように、紙の原稿の読み取りを伴う画像処理の場合、読み取られる紙の原稿に対して文書識別子が含まれている場合がある。この場合、画像処理装置120は、読み取った画像に対し、新たに付与した文書識別子を埋め込んで出力する。このとき、紙の原稿に対して文書識別子が画像として埋め込まれている場合には、読み取られた画像から文書識別子を削除し、削除後の画像に対し、新たに付与された文書識別子を画像として埋め込んでもよい。この画像上での文書識別子の削除は、文書識別子を埋め込む際の処理と逆の処理方式を用いればよい。
【0017】
このように文書識別子が埋め込まれた原稿を読み取って処理する場合、出力画像に対して新たに付与される文書識別子は、原稿に埋め込まれていた文書識別子とは異なる。このような場合、画像処理装置120は、読み取った原稿の画像を表す履歴画像を、新たに付与された文書識別子を含んだ履歴情報と共に、拠点管理サーバ100に送る。このとき送られる履歴画像に含まれる文書識別子と、履歴情報中の文書識別子とは異なる。
【0018】
センター管理サーバ200は、各画像処理装置120の画像処理の履歴レコードを管理するための装置である。センター管理サーバ200は、拠点管理サーバ100から受信した各画像処理装置120の画像処理に関する履歴レコードを蓄積する。センター管理サーバ200は、蓄積した履歴レコードを検索する機能を提供する。検索機能は、例えば、漏洩した文書の漏洩源を特定するのに用いることができる。この検索は、日時等の履歴情報だけでなく、履歴画像も考慮して行ってもよい。
【0019】
次に図2を参照して拠点管理サーバ100について更に詳しく説明する。拠点管理サーバ100において、受信部102は、画像処理装置120から送られてきた履歴レコードを受信し、スプール104に蓄積する。スプール104は、履歴レコードを一時的に蓄積する記憶装置である。
【0020】
情報抽出管理部106は、スプール104に蓄積された履歴レコード中の履歴画像を取得し、ハッシュ値抽出部108a,文書識別子抽出部108b,テキスト抽出部108c,画像特徴量抽出部108dを用いて、その履歴画像の特徴情報を求める。
【0021】
ハッシュ値抽出部108aは、履歴画像がページ記述言語で表現された印刷データである場合に、その印刷データ中の描画される画像を表す部分のハッシュ値を計算する。印刷データには、印刷部数などの印刷属性を記述する部分など、描画される画像を表す部分以外の部分が含まれるので、履歴画像の特徴情報としてのハッシュ値を求めるにあたっては、描画される画像の部分以外の部分は省いている。したがって、印刷部数等の印刷属性が異なっていても、描画される画像の部分の記述が同一の場合、ハッシュ値は同じ値となる。なお、ハッシュの計算には、例えばSHA-256などのように、衝突の少ないハッシュ値を生成可能な公知のハッシュアルゴリズムを用いればよい。
【0022】
文書識別子抽出部108bは、履歴画像から文書識別子を抽出する。文書識別子の抽出は、文書識別子の埋め込み方式に応じた手法で実行すればよく、そのような手法としては公知の様々なものを利用できる。文書識別子抽出部108bが抽出する文書識別子は、読み取られた原稿中に元々含まれていた文書識別子であり、その読み取った画像の処理結果の出力画像に新たに付与された文書識別子とは異なる。後者の文書識別子は、その履歴画像と共に画像処理装置120が送信した履歴情報に組み込まれている。
【0023】
テキスト抽出部108cは、履歴画像に含まれるテキスト情報を抽出する。テキスト抽出部108cは、履歴画像がいわゆる画像データ(例えばビットマップ画像データやそれを圧縮符号化したデータ)である場合、その履歴画像に対して文字認識処理(OCR)を施し、その履歴画像に含まれるテキスト情報を抽出する。また、履歴画像がページ記述言語で記述された印刷データである場合、テキスト抽出部108cは、その印刷データ中の描画される画像を示す部分に含まれるテキスト情報を抽出する。
【0024】
画像特徴量抽出部108dは、履歴画像の画像特徴量を求める。ここで用いる画像特徴量の一例としては、例えば画像の投影波形を挙げることができる。例えば、画像の縦方向の投影波形は、画像中の各画素の値を縦方向の列に沿って累積加算した結果得られる、累積加算値の横方向の分布である。同様に横方向についても画像の投影波形を求めることができる。また、別の例としては、履歴画像をブロック単位に分割し、ブロックごとにその中に含まれるエッジ量を求め、求められたエッジ量の分布を画像特徴量として用いてもよい。このように画像特徴量としては様々なものが存在しており、画像特徴量抽出部108dはそれら様々な画像特徴量のうちの1つ以上を計算すればよい。画像特徴量抽出部108dは、履歴画像がページ記述言語で記述されている場合、その記述に従って画像を描画し、描画した画像の画像特徴量を求めてもよい。
【0025】
ハッシュ値抽出部108aが履歴画像から計算したハッシュ値、文書識別子抽出部108bがその履歴画像から抽出した文書識別子、テキスト抽出部108cがその履歴画像から抽出したテキスト情報、及び画像特徴量抽出部108dがその履歴画像から計算した画像特徴量は、それぞれ、その履歴画像の特徴情報の一項目となる。なお、履歴画像からそれらハッシュ値、文書識別子、テキスト情報、及び画像特徴量のすべてが求められるとは限らないので、履歴画像の特徴情報はそれらすべての値を必ずしも含まない。例えば、文書識別子が埋め込まれていない原稿を複写した場合、履歴画像には文書識別子は含まれないため、文書識別子抽出部108bは文書識別子を抽出しない。
【0026】
情報抽出管理部106は、スプール104から取り出した履歴画像をハッシュ値抽出部108a,文書識別子抽出部108b,テキスト抽出部108c,及び画像特徴量抽出部108dに渡し、それら各部が抽出した値を受け取る。ハッシュ値抽出部108a,文書識別子抽出部108b,テキスト抽出部108c,及び画像特徴量抽出部108dは、自分の担当する特徴情報項目を履歴画像から抽出できない場合は、抽出不能を示すデータを情報抽出管理部106に返せばよい。このようにして、情報抽出管理部106の管理の下、履歴画像から抽出可能な各特徴情報項目の値が求められる。
【0027】
なお、情報抽出管理部106は、画像処理の種類又は履歴画像の種類又はその両方に従って、ハッシュ値抽出部108a,文書識別子抽出部108b,テキスト抽出部108c,及び画像特徴量抽出部108dのうち特定のものにのみ履歴画像の特徴情報項目を求めさせてもよい。このような制御では、例えば、画像処理装置120が実行した画像処理が画像読取、複写又はファクシミリ送信など紙原稿の読み取りを伴うものである場合、履歴画像はページ記述言語の印刷データではなく画像データとなるので、情報抽出管理部106は、ハッシュ値抽出部108a以外の各ユニット108b〜108dに特徴情報項目を計算させてもよい。また、履歴画像がページ記述言語で記述されている場合には、ハッシュ値抽出部108aを含むすべてのユニット108a〜108dに特徴情報項目を計算させてもよい。また、画像特徴量抽出部108dが、ページ記述言語のデータを描画する機能を持たないものである場合において、履歴画像がページ記述言語で記述されている場合には、画像特徴量抽出部108dには特徴情報項目を計算させないようにしてもよい。このような制御において、画像処理装置120が実行した画像処理の種類は、画像処理装置120から送られてくる履歴情報から判別できる。
【0028】
以上、情報抽出管理部106による特徴情報の抽出の管理手順の例を説明した。なお、スプール104内に複数の履歴画像がある場合は、情報抽出管理部106は、例えば古い履歴レコードから順に取得し、取得した履歴レコードごと上述の処理を行えばよい。情報抽出管理部106は、履歴画像から抽出した特徴情報を判定部110に渡す。
【0029】
判定部110は、情報抽出管理部106から取得した履歴画像の特徴情報と、送信済み履歴DB(データベース)112に蓄積された情報とに基づき、その履歴画像が既に過去に送信済みの履歴画像と実質的に同一であるか否かを判定する。ここで、送信済み履歴DB112には、拠点管理サーバ100が過去にセンター管理サーバ200に送信した履歴画像の特徴情報が蓄積されている。
【0030】
送信済み履歴DB112に蓄積されたデータ内容の一例を図3に示す。図3に示される表の1行が1つの履歴画像に関する特徴情報レコードである。履歴画像に関する特徴情報レコード中の「付与された文書識別子」は、その履歴画像が生成された画像処理において、出力画像に新たに付与された識別子である。この例では、この「付与された文書識別子」を、履歴情報の識別子として用いている。「抽出された文書識別子」は、文書識別子抽出部108bがその履歴画像中から抽出した文書識別子である。また、「ハッシュ値」は、ハッシュ抽出部108aがその履歴画像から求めたハッシュ値である。「テキスト」はテキスト抽出部108cがその履歴画像から抽出したテキスト情報であり、「画像特徴量」は画像特徴量抽出部108dがその履歴画像から求めた画像特徴量である。特徴情報レコードには、必ずしも「抽出された文書識別子」、「ハッシュ値」、「テキスト」、「画像特徴量」のすべての値が含まれるわけではない。例えば、「抽出された文書識別子」は、履歴画像中に文書識別子が含まれている場合にのみ、特徴情報レコードに含まれる。
【0031】
判定部110は、送信済み履歴DB112に蓄積された各特徴情報レコードと、情報抽出管理部106から取得した判定対象の履歴画像の特徴情報レコードとを比較することにより、その履歴画像が過去にセンター管理サーバ200に送信済みのものと実質的に同一であるかどうかを判定する。この判定のための判定基準は、画像履歴管理システムにおける履歴画像を蓄積する目的又は要求される精度に応じて適宜規定すればよい。
【0032】
例えば、判定対象の特徴情報レコードと、送信済み履歴DB112内の特徴情報レコードとが、すべての項目の値が相互に実質的に同一である場合にのみ、それら両者が実質的に同一であるとする判定基準を用いてもよい。個々の項目の値同士が実質的に同一であるか否かを判定する判定基準は、項目毎に個別に判定部110に登録しておけばよい。なお、ここで言う「実質的に同一」とは、要求される精度からみて値同士が同一である状態を指す。
【0033】
また、別の例として、文書識別子が同一であれば、2つの履歴画像同士が同一であるとする判定基準を用いる場合も考えられる。以前に画像処理装置120が出力した文書と同じ文書が再度画像処理装置120で処理されたことが分かればよいのであれば、このような判定基準でもよい。
【0034】
以上、判定基準の例を説明したが、これらはあくまで一例に過ぎない。
【0035】
このような判定の結果、判定対象の履歴画像と実質的に同一の送信済みの履歴画像が見つかった場合、判定部110は、履歴レコード変換部114に対し、判定対象の履歴画像に対応する履歴レコードの変換を指示する。履歴レコード変換部114は、この変換指示に応じ、スプール104に蓄積されたその履歴画像に対応する履歴レコードからその履歴画像を削除し、代わりにその送信済みの履歴画像の特徴情報レコードにおける「付与した文書識別子」の情報を付け加える。このように、履歴レコード変換部114は、履歴レコード中の履歴画像を、送信済みの同一の履歴画像を示す文書識別子に置き換える。この変換が完了すると、履歴レコード変換部114は、送信制御部116に対し、当該履歴レコードの送信を指示する。送信指示を受けた送信制御部116は、その変換後の履歴レコードを、ネットワーク20を介してセンター管理サーバ200へ送信する。
【0036】
このような処理により、本実施形態では、判定対象の履歴画像と実質的に同一の履歴画像が送信済みである場合、判定対象の履歴画像の代わりにその同一の送信済み履歴画像の文書識別子がセンター管理サーバ200に送られる。なお、上述の処理例ではスプール104内の履歴レコード中の履歴画像を、その画像と実質的に同一の送信済みの履歴画像の文書識別子に置き換えたが、このようなスプール104内のデータの変換は必ずしも必要ではない。履歴レコードが拠点管理サーバ100からセンター管理サーバ200に送信されるときに、履歴画像のデータが、実質的に同一の送信済み画像の文書識別子に置き換えられていればよい。
【0037】
また、判定部110は、判定対象の履歴画像と実質的に同一の送信済みの履歴画像が見つからなかった場合には、送信制御部116に対し、その判定対象の履歴画像を含む履歴レコードの送信を指示する。この指示を受けた送信制御部116は、その履歴レコードをスプール104から取り出し、センター管理サーバ200へ送信する。
【0038】
また、判定部110は、判定対象の履歴画像から求めた特徴情報レコードを、送信済み履歴DB112に登録する。登録された特徴情報レコードは、後に生成された履歴情報の特徴情報との比較に用いられる。
【0039】
以上、拠点管理サーバ100の例について説明した。次に、センター管理サーバ200の例を、図4を参照して説明する。
【0040】
センター管理サーバ200の受信部202は、拠点管理サーバ100から送られてきた履歴レコードを受信する。登録処理部204は、受信部202が受信した履歴レコードを履歴保管部206に登録する。
【0041】
履歴保管部206に保管される履歴レコード群の例を図5に示す。この例では、個々の履歴レコードは、文書識別子、装置識別子、ジョブ識別子、日時、ユーザ識別子、ジョブ種別、処理パラメータ、・・・及び履歴画像を含む。装置識別子は当該履歴レコードの対象である画像処理ジョブを実行した画像処理装置120の識別子であり、ジョブ識別子はその画像処理ジョブの識別子である。日時はその画像処理ジョブが実行された日時であり、ユーザ識別子はそのジョブの実行を指示したユーザの識別子である。ジョブ種別はそのジョブの処理内容の種別である。ジョブ種別には、例えばコピー、印刷、スキャン、ファックス送信などがある。処理パラメータは、その画像処理ジョブの実行の際に用いられた処理パラメータである。例えばファクシミリ送信の場合の処理パラメータには送信先ファクシミリ番号がある。履歴画像のデータとしては、図示例では、履歴画像の画像ファイルの格納場所を指し示す参照情報を用いているが、これは一例に過ぎない。
【0042】
図5に例示した履歴レコードの構造はあくまで一例に過ぎない。履歴レコードには、例示した項目のすべてが含まれていなくてもよい。また、例示した項目以外の項目が含まれていてもよい。例えば、履歴レコードを生成した画像処理装置の機種名やIP(Internet Protocol)アドレスを、履歴レコードに含めてもよい。
【0043】
登録処理部204は、受信部202が受信した履歴レコードが履歴画像を含んでいる場合は、その履歴レコードを履歴保管部206に登録する。一方、受信部202が受信した履歴レコードが履歴画像の代わりに文書識別子を含んでいる場合は、履歴画像以外の履歴情報項目の値はその履歴レコードの値を履歴保管部206に登録するとともに、その文書識別子に対応する履歴レコードを履歴保管部206から検索し、当該登録対象の履歴レコードの履歴画像を指し示す参照情報として、検索された履歴レコード中の履歴画像の参照情報を登録する。
【0044】
以上のような画像履歴管理システムによれば、拠点管理サーバ100からセンター管理サーバ200へと送信したことのある履歴画像と実質的に同一の履歴画像は送信が省略されるので、履歴レコード送信のための拠点管理サーバ100の通信負荷を低減することができる。
【0045】
なお、以上のような履歴画像の送信制御は、例えば拠点管理サーバ100の通信帯域を確保する必要がある時間帯にのみ制限してもよい。例えば拠点管理サーバ100に、図6に例示するような制限時間帯の情報を登録しておく。この例では、週日の午前6時から午後8時までが制限時間帯に設定されている。拠点管理サーバ100は、画像処理装置120から履歴画像を受け取った時点がその制限時間帯内であれば上述のような制御を行い、制限時間帯外であれば、通信負荷の問題は少ないので、過去に送信済みの履歴画像であってもそのままセンター管理サーバ200に送信する。また、画像処理装置120から履歴画像を制限時間帯内に受け取り、上述の送信制御に従ってその履歴画像の代わりに、その履歴画像と実質的に同一の送信済み履歴画像の文書識別子をセンター管理サーバ200に送信した場合に、拠点管理サーバ100でその履歴画像を保存しておき、その後制限時間帯が終了した後で、その履歴画像を拠点管理サーバ100からセンター管理サーバ200に送信してもよい。この場合、センター管理サーバ200は、拠点管理サーバ100から受け取った履歴画像を保存し、対応する履歴レコードにおける履歴画像の情報を、以前に拠点管理サーバ100から受け取った文書識別子に対応する履歴画像ではなく、今回新たに受け取った履歴画像を指し示すものに変更すればよい。このように、実質的に同一と判定された過去の履歴画像を、制限時間帯が経過した後で、実際の履歴画像に置き換えることで、より正確な履歴画像を保存することができる。
【0046】
以上の例では、送信済み履歴DB112には、履歴画像の同一性の判定のために用いる特徴情報として、履歴画像から抽出した文書識別子、ハッシュ値、テキスト、及び画像特徴量を登録したが、これらはあくまで一例に過ぎない。これらすべての特徴を用いる必要は必ずしもない。また、この逆に例示した特徴以外の特徴を用いてももちろんよい。また、履歴画像の画像データ自体を特徴情報として送信済み履歴DB112に蓄積し、同一性の判定に用いてもよい。
【0047】
また以上の例では、画像処理装置120が生成した履歴レコードを、拠点管理サーバ100経由でセンター管理サーバ200に送ったが、これは一例に過ぎない。この代わりに、拠点管理サーバ100を設けず、画像処理装置120からセンター管理サーバ200に履歴レコードを直接送ってもよい。この場合、画像処理装置120が上述の拠点管理サーバ100の機能を持てばよい。
【0048】
以上に説明した拠点管理サーバ100及びセンター管理サーバ200は、典型的には、コンピュータにて上述の各部の機能又は処理内容を記述したプログラムを実行することにより実現される。コンピュータは、例えば、ハードウエアとして、図7に示すように、CPU(中央演算装置)30、メモリ(一次記憶)32、各種I/O(入出力)インタフェース34等がバス36を介して接続された回路構成を有する。また、そのバス36に対し、例えばI/Oインタフェース34経由で、ハードディスクドライブ38やCDやDVD、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体を読み取るためのディスクドライブ40が接続される。このようなドライブ38又は40は、メモリに対する外部記憶装置として機能する。実施形態の処理内容が記述されたプログラムがCDやDVD等の記録媒体を経由して、又はネットワーク経由で、ハードディスクドライブ38又は他の方式の不揮発性記憶装置などの固定記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。固定記憶装置に記憶されたプログラムがメモリに読み出されCPUにより実行されることにより、実施形態の処理が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】画像履歴管理システムの構成の一例を示す図である。
【図2】拠点管理サーバの内部構成の一例を示す図である。
【図3】送信済み履歴DBに蓄積されたデータ内容の一例を示す図である。
【図4】センター管理サーバの内部構成の一例を示す図である。
【図5】履歴保管部に保管される履歴レコード群の一例を示す図である。
【図6】制限時間帯情報の一例を説明するための図である。
【図7】コンピュータのハードウエア構成の一例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 拠点、20 ネットワーク、100 拠点管理サーバ、102 受信部、104 スプール、106 情報抽出管理部、108a ハッシュ値抽出部、108b 文書識別子抽出部、108c テキスト抽出部、108d 画像特徴量抽出部、110 判定部、112 送信済み履歴DB、114 履歴レコード変換部、116 送信制御部、120 画像処理装置、200 センター管理サーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理部にて実行された画像処理に係る履歴画像であって画像履歴管理装置に送信済みの履歴画像の特徴を表す特徴情報を、当該履歴画像を特定する識別情報に対応づけて記憶した記憶部と、
前記画像処理部にて画像処理が実行された場合において、当該画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであるか否かを、前記記憶部に記憶された特徴情報に基づき判定する判定部と、
前記判定部が前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みではないと判定した場合は当該履歴画像を前記画像履歴管理装置に送信し、前記判定部が前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであると判定した場合は、当該履歴画像に代えて、前記実質的に同一の送信済みの履歴画像の識別情報を前記画像履歴管理装置に送信する送信部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
画像処理部にて実行された画像処理に係る履歴画像であって画像履歴管理装置に送信済みの履歴画像の特徴を表す特徴情報を、当該履歴画像を特定する識別情報に対応づけて記憶部に記憶するステップと、
前記画像処理部にて画像処理が実行された場合において、当該画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであるか否かを、前記記憶部に記憶された特徴情報に基づき判定するステップと、
前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みではないと判定した場合は当該履歴画像を前記画像履歴管理装置に送信するステップと、
前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであると判定した場合は、当該履歴画像に代えて、前記実質的に同一の送信済みの履歴画像の識別情報を前記画像履歴管理装置に送信するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項3】
情報処理装置と画像履歴管理装置とを備え、
前記情報処理装置は、
画像処理部にて実行された画像処理に係る履歴画像であって画像履歴管理装置に送信済みの履歴画像の特徴を表す特徴情報を、当該履歴画像を特定する識別情報に対応づけて記憶した記憶部と、
前記画像処理部にて画像処理が実行された場合において、当該画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであるか否かを、前記記憶部に記憶された特徴情報に基づき判定する判定部と、
前記判定部が前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みではないと判定した場合は当該履歴画像を前記画像履歴管理装置に送信し、前記判定部が前記画像処理に係る履歴画像と実質的に同一の履歴画像が既に送信済みであると判定した場合は、当該履歴画像に代えて、前記実質的に同一の送信済みの履歴画像の識別情報を前記画像履歴管理装置に送信する送信部と、
を備え、
前記画像履歴管理装置は、
前記情報処理装置から受信した画像処理に係る履歴画像を保管する保管部と、
前記情報処理装置から、画像処理に係る履歴画像の代わりに前記送信済みの履歴画像の識別情報を受け取った場合に、前記保管部に対し、当該画像処理の履歴画像として当該識別情報の示す履歴画像を前記保管部に登録する登録処理部と、
を備える、画像履歴管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−147947(P2008−147947A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332300(P2006−332300)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】