説明

情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】複数のアプリケーションから環境変数の値が操作される場合に、環境変数の値に不整合等が生じることを防止する。
【解決手段】OSプラットフォーム100上にJava(登録商標)VM110が設けられ、複数のアプリケーション120が前記JavaVM110上で実行可能に構成されると共に、前記アプリケーション120の実行環境に依存する環境変数であるキー113aの値を各アプリケーション120から操作可能に構成されたプリンタ1であって、前記キー113aに対する操作を仲介するプロパティ操作仲介部115を備え、前記プロパティ操作仲介部115は、前記キー113aを操作するアプリケーション120に専用の専用キー113dを生成し、この専用キー113aの値に対して操作を実行する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体に係り、特に、OSプラットフォーム上の仮想マシンで種々のアプリケーションプログラムを実行させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやプリンタなどのデジタル家電製品や、ファクシミリ装置や携帯電話などの通信機器とった様々な機器には組込型のコンピュータが組み込まれている。このような機器の中には、コンピュータのOS(Operating System)プラットフォーム上で仮想マシン(Virtual Machine)を動作させ、プラットフォーム独立の実行形式のコード(いわゆる「バイトコード(中間コード)」)を仮想マシンに実行させて、OSプラットフォームの違いに依存しないアプリケーションプログラム(以下、単に「アプリケーション」と言う)の実行環境を実現しているものがある。これによれば、アプリケーション開発者がOSプラットフォームの違いを意識する必要がないため、アプリケーション開発の労力の低減が図られる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の仮想マシンとしては、Java(登録商標)仮想マシンが広く用いられている。Java仮想マシンは、特定のファイルフォーマット、すなわちクラスファイルフォーマットのプログラムを認識して実行するものであり、また、クラスファイルは、Java仮想マシンの命令(又は上記バイトコード)を保持したものである。Javaの仕様においては、Java仮想マシンのバージョン情報やインストールディレクトリといった実行環境に依存する種々の情報(環境変数)をまとめてシステムプロパティとして管理しており、ある環境変数の値を複数のクラスファイルから参照、設定できるようになっている。
また、Java仮想マシンでは、OSGiフレームワークを用いてJava仮想マシン上で複数の複数のJavaアプリケーション(以下、単に「アプリケーション」と言う)を動作させている。このOSGiフレームワークでは、アプリケーションを複数のクラスファイルの集合体として取り扱っており、上位システムプロパティを通じて複数のアプリケーションからシステムプロパティを参照・設定することができるようになっている。
(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−284729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、システムプロパティの同一の環境変数に対して、複数のアプリケーションのそれぞれが値を設定すると、環境変数に不整合等が生じて正常に動作しないアプリケーションが発生する。このため、単独のJavaアプリケーションとして問題なく動作しているアプリケーションを、上記OSGiフレームワークで動作可能に移植するためには、システムプロパティを利用しているプログラムソースを修正する必要があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数のアプリケーションから環境変数の値が操作される場合に、環境変数の値に不整合等が生じることを防止できる情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、OSプラットフォーム上に仮想マシンが設けられ、複数のアプリケーションプログラムが前記仮想マシン上で実行可能に構成されると共に、前記アプリケーションプログラムの実行環境に依存する環境変数の値を各アプリケーションプログラムから操作可能に構成された情報処理装置であって、前記環境変数に対する操作を仲介する操作仲介手段を備え、前記操作仲介手段は、前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行するため、複数のアプリケーションプログラムが同一の環境変数の値を操作する場合であっても、アプリケーションプログラムが互いに独立した環境変数の値を操作するため、環境変数の値に不整合等が生じることがない。
【0007】
ここで、上記発明において、前記操作仲介手段は、前記環境変数および値を複製して前記専用の環境変数を生成することが望ましい。
また、上記発明において、前記仮想マシンには前記環境変数および値が複数記録されてなるシステムプロパティが設けられると共に、前記アプリケーションプログラムには識別子が予め付与され、前記操作仲介手段は、前記アプリケーションプログラムの識別子を前記環境変数に付して前記専用の環境変数を生成すると共に、前記専用の環境変数の値に前記環境変数の値を複製し、これら専用の環境変数および値を前記システムプロパティに追加し、この専用の環境変数の値に対して操作を実行することも望ましい。
また、上記発明において、前記仮想マシンは、前記アプリケーションプログラムを読み込む複数のローダを備えると共に、各ローダには識別子が予め付与され、前記操作仲介手段は、前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムを読み込んだローダに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行することも望ましい。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、OSプラットフォーム上に仮想マシンを設け、複数のアプリケーションプログラムを前記仮想マシン上で実行可能に構成すると共に、前記アプリケーションプログラムの実行環境に依存する環境変数の値を各アプリケーションプログラムから操作可能にした情報処理装置の情報処理方法であって、前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行することを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、OSプラットフォーム上に仮想マシンを設け、複数のアプリケーションプログラムを前記仮想マシン上で実行可能に構成すると共に、前記アプリケーションプログラムの実行環境に依存する環境変数の値を各アプリケーションプログラムから操作可能にした情報処理装置を、前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行する手段として機能させることを特徴とするプログラムを提供する。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、OSプラットフォーム上に仮想マシンを設け、複数のアプリケーションプログラムを前記仮想マシン上で実行可能に構成すると共に、前記アプリケーションプログラムの実行環境に依存する環境変数の値を各アプリケーションプログラムから操作可能にした情報処理装置を、前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行する手段として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
本発明に係る情報処理方法、情報処理プログラムおよび記録媒体によれば、本発明に係る情報処理装置と同様に、環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行するため、複数のアプリケーションプログラムが同一の環境変数の値を操作する場合であっても、アプリケーションプログラムが互いに独立した環境変数の値を操作するため、環境変数の値に不整合等が生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1実施の形態)
図1は、本実施の形態に係るネットワークプリンタ(以下、単に「プリンタ」と言う)1の概略構成を示す図である。この図に示すように、プリンタ1は、大別すると、制御部10と、印字ユニット11と、拡張スロット12と、ネットワークカード13と、フラッシュROM14とを有している。
【0012】
制御部10は、プリンタ1の各部を中枢的に制御するものであり、演算処理プロセッサとしてのCPU20と、このCPU20により実行される制御プログラム(いわゆるファームウェア)が格納されるROM21と、CPU20のワークエリアとして機能して演算結果や各種データを一時的に格納するRAM22とを有している。
印字ユニット11は、制御部10の制御に基づいて記録用紙への印字を実行するものであり、図示せぬ給紙機構、印字ヘッド等の一般的なプリンタが有する印字(印刷)機構を備えて構成されている。拡張スロット12は、プリンタ1に内設され、当該プリンタ1の機能を拡張するためのカード型の回路が挿脱されるソケットであり、この拡張スロット12には、上記ネットワークカード13が挿着されている。
【0013】
ネットワークカード13は、データ通信部30と周辺機器接続部31とを有し、建物内に敷設されたLAN等のネットワーク2を介して他の通信端末(例えばパーソナルコンピュータ)3とデータ通信する機能、および、周辺機器を接続する機能を有するものである。すなわち、上記データ通信部30は、TCP/IP等の所定の通信プロトコルに基づいて信号処理するネットワークコントローラ32と、有線または無線にてネットワーク2に接続される通信I/F33とを有して構成されている。また、周辺機器接続部31は、キーボードやマウス、カードリーダ等の周辺機器を接続するためのものであり、例えばUSB規格やIEEE1394規格等の所定規格に準拠して信号処理を実行する接続I/Fコントローラ34と、周辺機器4の接続口たる複数(図示例では2つ)の接続コネクタ35を備えている。上記接続I/Fコントローラ34は、接続コネクタ35に接続されている周辺機器4の情報(以下、「デバイス情報」という)を各周辺機器4から取得することで、これらの周辺機器4を管理する、いわゆるホスト機能を有している。
【0014】
フラッシュROM14は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、各種のアプリケーションが格納されている。これらのアプリケーションは、例えばメモリカード等の記録媒体50に記録されて配布され、或いは、ネットワーク2等の電気通信回線を通じて配布され、そして、このようにして配布されたアプリケーションがフラッシュROM14にインストール可能に構成されている。また、制御部10のROM21に格納される制御プログラムもアプリケーションと同様に、記録媒体50、或いは、ネットワーク2等の電気通信回線を介して配布可能であり、このように配布された制御プログラムがROM21にインストール可能に構成されている。
【0015】
上記フラッシュROM14等に格納されるアプリケーションとしては、印刷実行するユーザの認証のための認証アプリケーションや複数のプリンタで処理を分散(例えば、100部の印刷を5台のプリンタで20部ずつ印刷させる等)して行わせるクラスタプリント(分散印刷)アプリケーション、印刷対象の画像に対して処理を行う画像処理アプリケーション、プリンタ1のステータスを通信端末3などに通知する状態管理アプリケーションなどの各種のアプリケーションがあり、これらのアプリケーションの実行環境について以下に詳述する。
【0016】
図2は、プリンタ1のアプリケーション実行環境を示すソフトウェア概略構成図である。この図に示すように、プリンタ1の制御部10には、OSプラットフォーム100上にインタプリタ環境であるソフトウェアプラットフォーム101が構成されている。こソフトウェアプラットフォーム101は、Javaプラットフォームのランタイム環境として構成されており、インタプリタとしてのJavaVM(Java仮想マシン)110、ライブラリ111およびフレームワーク群112を備えて構成されている。
ライブラリ111は標準のAPIライブラリとプリンタ1に専用のライブラリを含んで構成されており、OSプラットフォーム100が提供する抽象化された各種コンピュータ資源を、さらにソフトウェアプラットフォーム101専用のモデルによって抽象化して、この上で動作するアプリケーションのための実行環境を提供する。
【0017】
フレームワーク群112はOSGi(Open Service Gateway initiative)フレームワーク112aを含んで構成されており、このOSGiフレームワーク112aは単一のJavaVM110上に複数の上述した各種のアプリケーション120を動作させる。また、OSGiフレームワーク112aは、アプリケーション120のライフサイクルの管理やアプリケーション間通信機能などを提供する。このOSGiフレームワーク112a上には、複数のシステムサービスがプリインストールされている。システムサービスには、新たなアプリケーションを追加したり更新したり削除したりするためのサービス管理サービスや、Servletインタフェースにしたがって実装されたJavaクラスを通信端末3等のクライアントのブラウザから操作可能なWebアプリケーションとして動作させるためのHTTPサービスのほか、複数のアプリケーション120からJavaVM100が備えるシステムプロパティ113を操作可能にするサービスが予め用意されており、複数のアプリケーション120からシステムプロパティ113を参照・設定等の操作ができるようになっている。システムプロパティ113は、図3に示すように、実行環境に依存する変数である環境変数(以下、「キー」と言う)113aと、そのキーの値113bとの対応を記録するものである。
【0018】
さらに、このJavaVM100には、プロパティ操作仲介部115が設けられている。プロパティ操作仲介部115は、OSGiフレームワーク112aとシステムプロパティ113との間に介在して、OSGiフレームワーク112aがアプリケーション120からシステムプロパティ113のキー113aに対する参照や設定等の操作を受け付けた場合、このOSGiフレームワーク112aに代わってシステムプロパティ113を操作し、その結果をOSGiフレームワーク112aに戻すものである。
このプロパティ操作仲介部115は、アプリケーション120の識別やシステムプロパティ113に対するアクセス権を管理するために、アプリ管理データ130を備えて構成されている。
【0019】
図4はアプリ管理データ130の構成を模式的に示す図である。
アプリ管理データ130は、システムプロパティ113の各キー113aへのアクセス権をアプリケーション120ごとに管理するためのものである。すなわち、本実施形態では、アプリケーション120ごとに識別子としてのアプリケーションIDが付与されており、アプリ管理データ130には、アプリケーションIDごとにアクセス権設定データ131が設けられている。このアクセス権設定データ131は、アプリケーション120がアクセスするキー113aと、そのキー113aに対するアクセス権113cとの対応を規定するものであり、アクセス権113cとしては、例えば読み込み(参照)のみを許可する「Read」、読み込みおよび書き込みを許可する「Read/Write」等が設定されている。上記アプリケーションIDは、アプリケーション120がインストールされたときに例えばプロパティ操作仲介部115により付与されて管理される。
【0020】
そして、プロパティ操作仲介部115は、OSGiフレームワーク112aに代わってシステムプロパティ113を操作する場合、同一のキー113aに対して各アプリケーション120から重複して値が設定されるのを防止すべく、操作対象のキー113aを複製してアプリケーション120に専用の新たなキー(以下、「専用キー」と言う)113adを生成し、この専用キー113dに対して操作を行うこととしている。
【0021】
図5はプロパティ操作仲介部115によるシステムプロパティ操作処理を示すフローチャートである。この図に示すように、アプリケーション120がシステムプロパティ113のキー113aに対して操作を要求した場合、その操作要求がOSGiフレームワーク112aを介してプロパティ操作仲介部115に入力されて、このプロパティ操作仲介部115に受け付けられる(ステップSa1)。上記操作要求は、操作対象のキー113aを「xxx」とした場合、Javaにおいては、
System.getProperty("xxx");
というコマンドを用いて行われる。
【0022】
プロパティ操作仲介部115は、操作要求を受け付けると、当該操作要求を出したアプリケーション120のアプリケーションIDをアプリ管理データ130に基づいて特定し(ステップSa2)、このアプリケーションIDに基づいて、操作対象のキー113aをアプリケーション120に専用の専用キー113d(図6参照)に変換し(ステップSa3)、その専用キー113dに対して操作を実行する。具体的には、アプリケーションIDが「001」であり、操作対象のキー113aが「xxx」である場合、プロパティ操作仲介部115は、操作対象のキー113a(「xxx」)を専用キー113d(「001.xxx」すなわち「ID.キー」)に変換する。(この結果、上記コマンドは、System.getProperty("0001.xxx");として扱われることになる。)
【0023】
次いで、プロパティ操作仲介部115は、システムプロパティ113の中から専用キー113dを検索して専用キー113dがあるか否かを判断し(ステップSa4)、専用キー113dがシステムプロパティ113に無い場合には(ステップSa4:No)、操作対象のキー113aがシステムプロパティ113にあるか否かを判断する(ステップSa5)。この判断の結果、操作対象のキー113aがシステムプロパティ113にある場合には(ステップSa5:Yes)、プロパティ操作仲介部115は、システムプロパティ113に新たに専用キー113dを追加すると共に、当該専用キー113dの値に、上記操作対象のキー113aの値113bをコピー(複製)する(ステップSa6)。
【0024】
そして、プロパティ操作仲介部115は、上記ステップSa4の判断の結果、専用キー113dがシステムプロパティ113にあった場合(ステップSa4:Yes)、又は、上記ステップSa6にて専用キー113dをシステムプロパティ113に追加した後、この専用キー113dとその値に対して、アプリケーション120から受け付けた操作を実行する(ステップSa7)。この操作にあっては、プロパティ操作仲介部115は、アプリ管理データ130に基づいて、操作対象のキー113aに対するアクセス権113cに従った操作のみを許可して実行する。そして操作が完了した後、プロパティ操作仲介部115は、その操作結果を戻り値としてOSGiフレームワーク112aに戻し(ステップSa8)、本処理を終了する。また、上記ステップSa5の判断の結果、操作対象のキー113aがシステムプロパティ113にない場合には(ステップSa5:No)、プロパティ操作仲介部115は、処理手順をステップSa8に進め、操作対象のキー113aがシステムプロパティ113に存在しない事を示す値(例えば「Null」)を戻し値としてOSGiフレームワーク112aに戻し、本処理を終了する。
【0025】
これにより、図6に示すように、システムプロパティ113には、アプリケーション120ごとに、アプリケーションIDに基づいた専用キー113dが追加される。そして、アプリケーション120がシステムプロパティ113のキー113aを操作する場合には、そのキー113aに対応する専用キー113dに対して操作が行われることとなり、複数のアプリケーション120がシステムプロパティ113の同一のキー113aを操作する場合であっても、それぞれ独立した専用キー113dに対して操作が行われるため、キー113aの値に不整合等が生じるのが防止される。
【0026】
(第2実施の形態)
上述した第1実施の形態では、システムプロパティ113にアプリケーション120ごとに専用の専用キー113dを追加し、この専用キー113dに対して操作を実行する構成について説明した。これに対して、本実施の形態では、システムプロパティ113に専用キー113dを追加するのではなく、アプリケーション120ごとに専用の上記システムプロパティ(以下、「専用システムプロパティ」と言う)114を生成し、その専用システムプロパティ114に対して操作を実行することとしている。
【0027】
図7は本実施形態に係るプリンタ1のアプリケーション実行環境を示すソフトウェア概略構成図である。なお、以下の説明では、第1実施の形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7に示すように、JavaVM110には複数のクラスローダ116が設けられている。クラスローダ116は、各アプリケーション120のクラスをRAM21等のメモリにロード(読み込む)するものである。すなわち、各アプリケーション120がJavaVM110上で実行される際には、いずれかのクラスローダ116により読み込まれて実行される。
【0028】
これらのクラスローダ116には予め識別IDが付与されており、この識別IDが本実施形態のプロパティ操作仲介部115Aにより管理されており、また、図8に示すように、クラスローダ116ごとに専用の専用プロパティ114が予め設けられている。そして、アプリケーション120からシステムプロパティ113に対して操作要求がなされた場合、プロパティ操作仲介部115Aは、この専用プロパティ114に対して操作を実行することとしている。なお、図8には、専用プロパティ114にキー113aが記録されている態様を示しているが、専用プロパティ114が生成された当初はキー113aは空となっている。
【0029】
図9はプロパティ操作仲介部115Aによるシステムプロパティ操作処理を示すフローチャートである。この図に示すように、プロパティ操作仲介部115Aは、操作要求を受け付けると(ステップSb1)、アプリケーション120をロードしたクラスローダ116の識別IDを特定し(ステップSb2)、この識別IDに専用のクラスオブジェクトである専用プロパティ114に対して操作を実行する。この結果、システムプロパティ113に対する操作は、プロパティ操作仲介部115Aによって生成された専用プロパティ114に対する操作として扱われるため、アプリケーション120が実行した「System.getProperty("xxx");」というコマンドは、専用プロパティ114のオブジェクト名を「Properties001」とした場合、「Properties001.getProperty("xxx");」として扱われることになる。
【0030】
すなわち、プロパティ操作仲介部115Aは、操作対象のキー113aが専用プロパティ114にあるか否かを判断し(ステップSb3)、操作対象のキー113aがない場合には(ステップSb3:No)、システムプロパティ113の中に操作対象のキー113aがあるか否かを判断する(ステップSb4)。操作対象のキー113aがシステムプロパティ113にある場合には(ステップSb4:Yes)、プロパティ操作仲介部115Aは、専用プロパティ114に操作対象のキー113aおよびその値を複製して追加する(ステップSb5)。
【0031】
そして、プロパティ操作仲介部115Aは、上記ステップSb3の判断の結果、操作対象のキー113aが専用プロパティ114にあった場合(ステップSb3:Yes)、又は、上記ステップSb5にて操作対象のキー113aを専用プロパティ114に追加した場合に、複製したキー113aとその値に対して、アプリケーション120から受け付けた操作を実行する(ステップSb6)。この操作にあっては、プロパティ操作仲介部115Aは、アプリ管理データ130に基づいて、操作対象のキー113aに対するアクセス権113cに従った操作のみを許可して実行する。そして操作が完了した後、プロパティ操作仲介部115Aは、その操作結果を戻り値としてOSGiフレームワーク112aに戻し(ステップSb7)、本処理を終了する。また、上記ステップSb4の判断の結果、操作対象のキー113aがシステムプロパティ113にない場合には(ステップSb4:No)、プロパティ操作仲介部115Aは、処理手順をステップSb7に進め、操作対象のキー113aがシステムプロパティ113に存在しない事を示す値(例えば「Null」)を戻し値としてOSGiフレームワーク112aに戻し、本処理を終了する。
【0032】
このように、本実施の形態によれば、アプリケーションプログラム120をロードするクラスローダ116ごとに専用プロパティ114を設け、この専用プロパティ114に対してシステムプロパティ113の操作を実行するため、複数のアプリケーション120がシステムプロパティ113の同一のキー113aを操作する場合であっても、それぞれ独立した専用プロパティ114のキー113aに対して操作が行われるため、キー113aの値に不整合等が生じるのが防止される。
【0033】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態では、組込機器の一態様としてプリンタ1を例示したがこれに限らず、例えば、ファクシミリやプロジェクタ等の電子機器にも適用可能である。
さらに、上述した実施の形態では、プリンタ1の制御部10が各種アプリケーション120を実行する構成としたが、これに限らず、ネットワークカード13の例えばネットワークコントローラ32が各種アプリケーション120を実行する構成としても良い。
このような構成においては、ネットワークカード13をプリンタ1に挿着するだけで、プリンタ1の制御プログラムを特に変更を加えることなく、種々のアプリケーション120をインストールして実行することが可能となり、プリンタ1の機能を柔軟に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係るネットワークプリンタの構成図。
【図2】アプリケーション実行環境を示すソフトウェア概略構成図。
【図3】システムプロパティの概略図。
【図4】アプリ管理データの概略図。
【図5】第1実施形態のシステムプロパティ操作処理のフローチャート。
【図6】第1実施形態の動作を説明するための図。
【図7】本発明の第2実施形態に係るネットワークプリンタの構成図。
【図8】専用プロパティの概略図。
【図9】第2実施形態のシステムプロパティ操作処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0035】
1…ネットワークプリンタ(プリンタ)、10…制御部、13…ネットワークカード、100…OSプラットフォーム、101…ソフトウェアプラットフォーム、110…JavaVM、113…システムプロパティ、113a…キー(環境変数)、113d…専用キー、114…専用システムプロパティ、115、115A…プロパティ操作仲介部、120…アプリケーションプログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OSプラットフォーム上に仮想マシンが設けられ、複数のアプリケーションプログラムが前記仮想マシン上で実行可能に構成されると共に、前記アプリケーションプログラムの実行環境に依存する環境変数の値を各アプリケーションプログラムから操作可能に構成された情報処理装置であって、
前記環境変数に対する操作を仲介する操作仲介手段を備え、
前記操作仲介手段は、前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記操作仲介手段は、前記環境変数および値を複製して前記専用の環境変数を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記仮想マシンには前記環境変数および値が複数記録されてなるシステムプロパティが設けられると共に、前記アプリケーションプログラムには識別子が予め付与され、
前記操作仲介手段は、
前記アプリケーションプログラムの識別子を前記環境変数に付して前記専用の環境変数を生成すると共に、前記専用の環境変数の値に前記環境変数の値を複製し、これら専用の環境変数および値を前記システムプロパティに追加し、この専用の環境変数の値に対して操作を実行する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記仮想マシンは、前記アプリケーションプログラムを読み込む複数のローダを備えると共に、各ローダには識別子が予め付与され、
前記操作仲介手段は、前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムを読み込んだローダに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
OSプラットフォーム上に仮想マシンを設け、複数のアプリケーションプログラムを前記仮想マシン上で実行可能に構成すると共に、前記アプリケーションプログラムの実行環境に依存する環境変数の値を各アプリケーションプログラムから操作可能にした情報処理装置の情報処理方法であって、
前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行する
ことを特徴とする情報処理装置の情報処理方法。
【請求項6】
OSプラットフォーム上に仮想マシンを設け、複数のアプリケーションプログラムを前記仮想マシン上で実行可能に構成すると共に、前記アプリケーションプログラムの実行環境に依存する環境変数の値を各アプリケーションプログラムから操作可能にした情報処理装置を、
前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行する手段
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
OSプラットフォーム上に仮想マシンを設け、複数のアプリケーションプログラムを前記仮想マシン上で実行可能に構成すると共に、前記アプリケーションプログラムの実行環境に依存する環境変数の値を各アプリケーションプログラムから操作可能にした情報処理装置を、
前記環境変数を操作するアプリケーションプログラムに専用の環境変数を生成し、この環境変数の値に対して操作を実行する手段
として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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