説明

情報処理装置および情報処理方法

【課題】光ディスク装置(ODD)とPCのインタフェースにSATAを用い、消費電流低減のためオプション規格であるDIPM規格を使用する場合、DIPMタイマーの時間設定値がODDで固定されていると、様々な仕様に対応するうえで不便である。
【解決手段】PCのCPUからのコマンドにより、DIPMタイマーの時間設定値を変更できるようにする。たとえば動作開始までの時間遅延よりも消費電流低減を優先する場合や記録媒体が装着されている場合には、時間設定値を短くする。これにより顧客ごとに異なる仕様に対応することと、装置の状況によって時間設定値を変更することが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置および情報処理方法に係わり、特に消費電流を低減できる情報処理装置および情報処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PC(Personal Computer)におけるCPU(Central Processing Unit)を含む制御部と光ディスク装置(Optical Disc Drive、以下ODDと略記する)とのインタフェース(以下IFと略記する)方式においては、処理速度の高速化と省スペース化のため、データを並列に送るPATA(Parallel Advanced Technology Attachment)から直列に送るSATA(Serial Advanced Technology Attachment)に移行している。
【0003】
SATAはPATAと比較し伝送速度が高速であるため、消費電流の低減が重要な課題となる。特に電源としてバッテリーを用いる携帯用のノートPCに適用する場合には重要な課題である。このため論理レベルを従来の5V/0Vから、0.5V/0Vとしている。
【0004】
またIFに関わる回路の制御方法を工夫し、基本動作に影響を与えることなく、消費電流を低減する方法も提案されている。特許文献1では、上位装置から発行されるコマンドの時間間隔をモニタして、適切なタイミングでパワーセーブをする技術が開示されている。また特許文献2では、ホストコンピュータから一定時間コマンドが受信されない場合は、サーボ制御回路をオフ状態にする時間を変える技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−335357号公報
【特許文献2】特開平8−212679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SATAの規格ではDIPM(Device Initiated Power Management)と呼ばれるIFに関わる回路の消費電流低減のためのオプション規格がある。これにつき図1を用いて説明する。
図1はDIPM規格における消費電流制御の状態の説明図である。消費電流制御の状態にはActive、Partial、Slumberと呼ばれる3つの状態がある。図1ではそれぞれの状態について、内容、復帰時間、消費電流が記載されている。
【0007】
Activeの状態では物理的な論理信号を生成する論理回路と、動作クロックを発生するPLL(Phase Lock Loop)回路が動作しており、データの送受信が可能な状態である。消費電流は3つの状態の中で最も多い。
Partialの状態では論理回路に電源を供給しているが、少なくも前記論理回路は動作を停止しており、データの送受信はできない。Activeへ復帰するに要する時間は10マイクロ秒以内と短い。消費電流は3つの状態の中で中間である。
Slumberの状態では論理回路に電源を供給しているが、前記論理回路、PLL回路とも動作を停止しており、データの送受信はできない。Activeへ復帰するに要する時間は10ミリ秒以内と長い。消費電流は3つの中で最も少ない。
【0008】
なお、前記したPartial、Slumberでの回路の動作は一例である。これらの状態で必須の事項は、Activeの状態への復帰時間であり、これが満たされれば前記と異なる回路の動作であっても良い。
【0009】
次に図2を用いて、これら3つの状態の間での状態遷移の一例を説明する。図2はDIPM規格を用いる一例を示す消費電流の遷移図である。横軸は経過時間、縦軸は消費電流を示す。図中の白抜きの矢印は、ODDがPCの制御部からのコマンドを受信するタイミングを示す。
【0010】
最初に状態はSlumberであったとする。図中aで示した期間の動作は次のとおりである。まずコマンドAを受信すると10ミリ秒以内に状態はSlumberからActiveへ遷移し、ODDはたとえば記録、再生、停止などの動作を行う。たとえば50ミリ秒後には消費電流を低減するためにPartialの状態に遷移する。ODDに対するコマンドは短い期間に集中して発生されることがあるので、コマンドAを受信した直後は直ちに(10マイクロ秒以内)Activeの状態に復帰できるよう、Partialの状態でたとえば50ミリ秒待機する。この間にコマンドを受信することがなければSlumberの状態に遷移し、さらに消費電流を低減する。
【0011】
次に図中bで示した期間の動作は次のとおりである。まずコマンドBを受信すると10ミリ秒以内に状態はSlumberからActiveへ遷移し、ODDは前記したような動作を行う。たとえば50ミリ秒後には消費電流を低減するためにPartialの状態に遷移する。その後たとえば50ミリ秒経過しないうちに次のコマンドCを受信すると、直ちに(10マイクロ秒以内)Activeの状態に復帰し、ODDは前記したような動作を行う。たとえば50ミリ秒後には消費電流を低減するためにPartialの状態に遷移し、たとえば50ミリ秒待機する。この間にコマンドを受信することがなければSlumberの状態に遷移し、さらに消費電流を低減する。
以上のようにActiveとSlumberとの間にPartialの状態を設けて、コマンドに対する動作を遅らせることなく、消費電流の低減を行っている。なお、時間の経過を計るタイマーはODDが有しており、たとえば50ミリ秒などとした所定時間はそのファームウェアが規定している。
【0012】
このためその値は簡単には変更できない状態にある。ODDの製造者はPCの製造者から値の変更の要請があれば、その都度ファームウェアを変更する必要があり、多くの種類のファームウェアを準備する必要があった。
【0013】
本発明の目的はこの問題を解決したうえで、消費電流を低減できる情報処理装置および情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため本発明は、CPUを含む制御部と、該制御部の発生するコマンドにより制御され、情報処理を行う第1の動作モードと該第1の動作モードよりも消費電流が小さい第2の動作モードとを含む少なくも二つの動作モードを有する光ディスク装置とを有する情報処理装置であって、前記第1の動作モードが前記他の動作モードに遷移するまでの時間を、前記制御部が指定する時間に設定するタイマーを有することを特徴としている。
【0015】
また本発明は、装置外部の制御部の発生するコマンドにより制御され、情報処理を行う第1の動作モードと該第1の動作モードよりも消費電流が小さい第2の動作モードとを含む少なくも二つの動作モードを有する光ディスク装置を含む情報処理装置であって、前記第1の動作モードが他の動作モードに遷移するまでの時間を、前記制御部が指定する時間に設定するタイマーを有することを特徴としている。
【0016】
また本発明は、コマンドにより制御され、情報処理を行う第1の動作モードと該第1の動作モードよりも消費電流が小さい第2の動作モードとを含む少なくも二つの動作モードを有する、情報を記録ないし再生するための情報処理方法であって、第1の前記コマンドに応じて少なくも前記第1の動作モードから他の動作モードへ遷移する時間の設定値を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記設定値が装置の状態に適するかを判定する判定ステップとを有し、前記判定ステップで装置の状態に適さないと判定された場合には、第2の前記コマンドにより前記設定値を適した値に書替えることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、コマンドにより制御され、情報処理を行う第1の動作モードと該第1の動作モードよりも消費電流が小さい第2の動作モードとを含む少なくも二つの動作モードを有する、情報を記録ないし再生するための情報処理方法であって、第3の前記コマンドにより記録媒体が装着されているかを判定する判定ステップを有し、前記判定ステップで記録媒体が装着されていると判定された場合には、第4の前記コマンドにより前記設定値を、記録媒体が装着されていない場合よりも長い時間に設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、消費電流を低減できる情報処理装置および情報処理方法を提供でき、特に消費電流の低減に関しODDのファームウェアを統一できる情報処理装置および情報処理方法を実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いながら説明する。
前記したActiveを始めとする状態の時間は、ODDに設けられたタイマー(以下、DIPMタイマーと呼ぶ)がカウントしている。また前記したとおり所定の時間は、ファームウェアで規定することが多い。本発明においては、この所定の時間を、上位の制御部であるPC側から変更できることを特徴としている。たとえば据置型PCではコマンドに対する動作の速さを優先して、携帯用のノートPCよりも前記時間を長く設定し、またバッテリーを電源として使用する時は、消費電流低減を優先して前記時間を短く設定する。記録媒体である光ディスクが装着されている場合には、コマンドに対する動作の速さを優先して前記時間を長く設定する。これらを制御部のCPUからのコマンドで随時行えるようにしている。
【0020】
まず図3を用いて使用するコマンドの構成を説明する。図3は本発明の一実施例を示すコマンドの構成図である。
ATAPI(AT Attachment Packet Interface)のパケットコマンドには、ODDなどのデバイスに対して、たとえばタイマーの設定を行うためのMODE SELECTコマンド、あるいは前記設定を読出し確認するためのMODE SENSEコマンドがある。これらは複数のページから構成されており、中にはVendor Unique空き領域と呼ばれる使い道が特定されていない領域がある。MODE SENSEコマンドでは現在Page Code=2Bhがこれに相当するので、図3は一例としてこれを用いた場合を示している。
【0021】
図3の0バイトはこのPage Codeを示しており、この場合は2Bhを示している。1バイトから3バイトはこの場合は使用せず(Reserved)、4バイトから7バイトでActiveからPartialへ遷移するまでの時間(Partial Timer値)を、8バイトから11バイトでActiveからSlumberへ遷移するまでの時間(Slumber Timer値)を定めている。このようなコマンドを用いて、PCの制御部がODDに対して、状態を遷移するまでの時間を設定できるようにしている。
【0022】
図4は本発明の一実施例を示すブロック図である。これに基づき動作説明を行う。
図4において、PC全体の制御部41はCPUを含んでおり、ここでコマンドが発生されてODD42に送信される。ODD42においては、このコマンドは前記した消費電力制御を行うSATA制御回路421で受信される。SATA制御回路421はODD42をActiveにするためのコマンドを受信すると、これに従いODD42のIF部をActiveの状態とし、引続いて受信されるコマンドの指示するたとえば図示しない記録再生部での記録再生などの動作を開始できるようにし、その後PartialやSlumberの状態に遷移させるなどODD42の状態制御を行う。また、SATA制御回路421が前記した時間を設定するためのコマンドを受信した場合には、このコマンドに伴う時間の設定値をDIPMタイマー管理情報格納部422へ送り、ここに格納された設定値を書替える。この時間に応じてODD42では前記した状態の切替えが行われて、消費電流の低減がなされる。なお、製造した当初の設定値についてはDIPMタイマー初期値格納部423に格納しておき、前記したコマンドによる書替えの指示があるまでは、この値を使用すれば良い。DIPMタイマー管理情報格納部422は、前記した書替えを行うためRAM(Random Access Memory)を使用するが、DIPMタイマー初期値格納部423はROM(Read Only Memory)であっても良い。
【0023】
さらに図4のSATA制御回路421において、DIPMタイマー管理情報格納部422に格納された現在の設定値を参照するコマンド(前記したMODE SENSEコマンド)を発生させ、PCの制御部41のCPUがこれを確認できるようにすると良い。
【0024】
図5は本発明の一実施例を示す動作フロー図である。これに基づき、前記DIPMタイマー管理情報格納部422に格納する時間の設定方法を説明する。
ステップS51で、たとえばPCの電源を入れて起動する際にフローが開始される。ステップS52で、制御部41はSATA制御回路421に対しDIPMタイマー管理情報格納部422に格納された時間の設定値を送信するようコマンドを送り、SATA制御回路421はこれに応えて制御部41に設定値を送信する。
【0025】
ステップS53で制御部41は、知らされた現在の時間の設定値を、現在の使用状況において変更する必要があるかを判断する。たとえば、特に据置型PCなどでは、消費電流低減よりも動作開始までの時間遅延が少ないことを優先したい場合があるが、この場合は時間設定値をActive=500ミリ秒、Partial=3秒などと長い値が望ましい。また携帯用のノートPCなどでは、これらの優先度が逆になる場合が多いので、Active=50ミリ秒、Partial=100ミリ秒などと短い値が望ましい。またノートPCにおいても、商用電源で駆動する時は前者の長い値とし、バッテリーで駆動するときは後者の短い値とすることも有効である。これらを考慮してステップS53での判断が行われる。
【0026】
ステップS53での判断の結果、設定値の変更が必要であると判断された場合には(図中のYes)、ステップS54で制御部41はSATA制御回路421に対しコマンドを送り、DIPMタイマーの設定値を所望の値に変更させる。変更された設定値はDIPMタイマー管理情報格納部422に格納され、ステップS55でフローを終了する。
【0027】
ステップS53での判断の結果、設定値の変更が必要でないと判断された場合には(図中のNo)、そのままステップS55でフローを終了する。
ステップS55でフローは終了するが、以後PCの電源が切断されるまで必要に応じて、このフローが繰返される。
【0028】
図6は本発明の別な一実施例を示す動作フロー図である。これに基づき、前記DIPMタイマー管理情報格納部422に格納する時間の図5とは別な設定方法を説明する。
ステップS61で動作を開始する。ステップ62で、制御部41はSATA制御回路421にコマンドを送り、現在のODD42の状況を取得する。
ステップS63で、制御部41は前記取得した状況より、記録媒体である光ディスクが装着されているかを判定する。
【0029】
ステップS63での判定の結果、光ディスクが装着されていると判定された場合には(図中のYes)、消費電流低減よりも動作開始までの時間遅延が少ないことを優先するものとし、ステップS64でDIPMタイマーの設定値を前記したような長い値に設定する。
ステップS63での判定の結果、光ディスクが装着されていないと判定された場合には(図中のNo)、動作開始までの時間遅延よりも消費電流低減を優先するものとし、ステップS65でDIPMタイマーの設定値を前記したような短い値に設定する。
いずれの場合もステップS66でフローを終了するが、以後PCの電源が切断されるまで必要に応じて、このフローが繰返される。
【0030】
以上、本発明の実施例について説明したが、これは一例であって本発明を限定するものではない。DIPMタイマー522の時間設定値を具体的な数値で示したが、これに数値限定するものではないし、また設定値の数も限定するものではない。このほか状況に応じて設定値を変更する方法については、本実施例で説明したDIPM規格以外にも様々な変形例や、他の規格が考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】DIPM規格における消費電流制御の状態の説明図である。
【図2】DIPM規格を用いる一例を示す消費電流の遷移図である。
【図3】本発明の一実施例を示すコマンドの構成図である。
【図4】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施例を示す動作フロー図である。
【図6】本発明の別な一実施例を示す動作フロー図である。
【符号の説明】
【0032】
41・・・・・制御部
42・・・・・ODD
421・・・・SATA制御回路
422・・・・DIPMタイマー管理情報格納部
423・・・・DIPMタイマー初期値格納部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUを含む制御部と、
該制御部の発生するコマンドにより制御され、情報処理を行う第1の動作モードと該第1の動作モードよりも消費電流が小さい第2の動作モードとを含む少なくも二つの動作モードを有する光ディスク装置とを有する情報処理装置であって、
前記第1の動作モードが前記他の動作モードに遷移するまでの時間を、前記制御部が指定する時間に設定するタイマー
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、前記制御部は、装置の電源の種類に応じて前記指定する時間を切替えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置において、前記制御部は、前記光ディスク装置に記録媒体が取付けられているかに応じて前記指定する時間を切替えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置において、前記タイマーが設定する時間を前記制御部へ知らせるコマンドを発生する光ディスク制御回路を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
装置外部の制御部の発生するコマンドにより制御され、情報処理を行う第1の動作モードと該第1の動作モードよりも消費電流が小さい第2の動作モードとを含む少なくも二つの動作モードを有する光ディスク装置を含む情報処理装置であって、
前記第1の動作モードが他の動作モードに遷移するまでの時間を、前記制御部が指定する時間に設定するタイマー
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
コマンドにより制御され、情報処理を行う第1の動作モードと該第1の動作モードよりも消費電流が小さい第2の動作モードとを含む少なくも二つの動作モードを有する、情報を記録ないし再生するための情報処理方法であって、
第1の前記コマンドに応じて少なくも前記第1の動作モードから他の動作モードへ遷移する時間の設定値を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記設定値が装置の状態に適するかを判定する判定ステップとを有し、
前記判定ステップで装置の状態に適さないと判定された場合には、第2の前記コマンドにより前記設定値を適した値に書替えることを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
コマンドにより制御され、情報処理を行う第1の動作モードと該第1の動作モードよりも消費電流が小さい第2の動作モードとを含む少なくも二つの動作モードを有する、情報を記録ないし再生するための情報処理方法であって、
第3の前記コマンドにより記録媒体が装着されているかを判定する判定ステップを有し、
前記判定ステップで記録媒体が装着されていると判定された場合には、第4の前記コマンドにより前記設定値を、記録媒体が装着されていない場合よりも長い時間に設定することを特徴とする情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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