説明

情報処理装置及びそのプログラム

【課題】印刷専門アプリケーションを用いることなく、異なる分版方式で作成した分版データを重ねて印刷する。
【解決手段】プリンタードライバーがインストールされたユーザーPCのCPUは、アプリケーションソフトウェアから1ページ目と2ページ目とを含む印刷対象データを受け取り、1ページ目を第1分版方式で分版して第1分版データを作成し、2ページ目を第1分版方式とは異なる第2分版方式で分版して第2分版データを作成する。そして、第1分版データと第2分版データとを同じ印刷媒体上に重ねて印刷させるジョブを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタリックインクやホワイトインクなどの特殊色インクを用いて用紙に印刷を行うインクジェットプリンターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−194847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェットプリンターで特殊色インクを用いて印刷する際には、DTPで作ったベクターデータをパソコン側でラスタライズするRIPのような印刷専門アプリケーションを使用することが考えられる。こうした印刷専門アプリケーションは、独自でプリンターにデータを伝達し印刷制御を行うため、プリンタードライバーの制限を受けずに、特殊色による版を重ねて印刷することが可能となる。
【0005】
しかしながら、印刷専門アプリケーションではなく、一般的なアプリケーションを使用して印刷する場合、特殊色による版を重ねて印刷することができなかった。一般的なアプリケーションでは、印刷時にプリンタードライバーを利用するが、その際には、OSにより提供される所定のインターフェース(グラフィックエンジン)を利用する。そうしたインターフェースでは、グレースケールやRGB等の画像しか扱えないという入力制限がある。そのため、プリンタードライバーでは特殊色による版を重ねて印刷することができなかった。一方、特殊色による版を重ねて印刷するには、上述したように印刷専門アプリケーションが必要となるため、コストが嵩むという問題があった。
【0006】
本発明は、印刷専門アプリケーションを用いることなく、異なる分版方式で作成した分版データを重ねて印刷することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の情報処理装置は、
アプリケーションソフトウェアから1ページ目と2ページ目とを含む印刷対象データを受け取るデータ受け取り手段と、
前記印刷対象データの1ページ目を第1分版方式で分版して第1分版データを作成し、前記印刷対象データの2ページ目を第1分版方式とは異なる第2分版方式で分版して第2分版データを作成する分版手段と、
前記第1分版データと前記第2分版データとを同じ印刷媒体上に重ねて印刷させるジョブを生成するジョブ生成手段と、
を備えたものである。
【0009】
この情報処理装置では、アプリケーションソフトウェアから受け取った1ページ目と2ページ目とを含む印刷対象データにつき、1ページ目を第1分版方式で分版して第1分版データを作成し、2ページ目を第1分版方式とは異なる第2分版方式で分版して第2分版データを作成する。そして、第1分版データと第2分版データとを同じ印刷媒体上に重ねて印刷させる。このため、印刷専門アプリケーションを用いることなく、異なる分版方式で作成した分版データを重ねて印刷することができる。
【0010】
本発明の情報処理装置において、前記分版手段は、前記第1分版方式及び前記第2分版方式の一方を予めユーザーが選択した特殊色で分版する方式とし、前記第1分版方式及び前記第2分版方式の残りの一方をモノクロ又はカラーで分版する方式としてもよい。こうすれば、特殊色による版と非特殊色による版とを重ねて印刷することができる。この場合、ジョブを受け取る印刷装置は、特殊色のインクの入った容器や非特殊色のインクの入った容器を備えたものを使用する。例えば、特殊色がホワイト、非特殊色がシアン、マゼンタ、イエローだとすると、ホワイトインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクをそれぞれ個別に収容した容器を備えたものを使用する。なお、特殊色としては、ホワイト、メタリック、無色透明のほか、企業や団体等の組織を象徴する色(コーポレートカラー)などが挙げられる。
【0011】
本発明の情報処理装置において、前記ジョブ生成手段は、前記第1分版データと前記第2分版データとを同じ印刷媒体上に予め印刷設定画面でユーザーが設定した順番で重ねて印刷させるジョブを生成してもよい。こうすれば、ユーザーの意思により1ページ目の上に2ページ目を重ねて印刷するか2ページ目の上に1ページ目を重ねて印刷するかを決定することができる。
【0012】
本発明の情報処理装置において、前記ジョブ生成手段は、前記第1分版データと前記第2分版データとを同時に同じ印刷媒体上に印刷させるジョブを生成してもよい。こうすれば、印刷媒体に対して1度の印刷動作を実行することにより、1ページ目と2ページ目とを重ねて印刷した印刷物が得られる。あるいは、前記ジョブ生成手段は、前記第1分版データ及び前記第2分版データの一方を印刷媒体上に印刷したあと該印刷媒体をバックフィードし、その後前記第1分版データ及び前記第2分版データの残りの一方を前記印刷媒体に重ねて印刷させるジョブを生成してもよい。こうすれば、印刷媒体に対して2度の印刷動作を実行することにより、1ページ目と2ページ目とを重ねて印刷した印刷物が得られる。
【0013】
本発明のプログラムは、1又は複数のコンピューターを、上述した情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピューターに実行させるか又は複数のコンピューターに各ステップを分担して実行させれば、上述した情報処理装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷システム1の構成の概略を示す構成図。
【図2】印刷設定画面150の説明図。
【図3】印刷データ生成ルーチンのフローチャート。
【図4】印刷物が得られるまでの手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、ユーザーPC10とインクジェットプリンター20とを含む印刷システム1の構成の概略を示す構成図である。
【0016】
ユーザーPC10は、インクジェットプリンター20とデータのやり取りが可能に接続され、CPU11を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM12と、一時的にデータを記憶するRAM13と、インクジェットプリンター20のプリンタードライバー14aやワープロなどのアプリケーションソフトウェア14bなどがインストールされたHDD14と、を備える。プリンタードライバー14aには、HDD14などに記憶されたRGBデータからなる画像データを受け取って色変換し、その色変換後のデータの階調値を表現するためにインクドットを分散して形成するハーフトーン処理を実行し、ハーフトーン処理されたデータをインクジェットプリンター20に転送すべきデータ順に並べ替え、並べ替えた後の印刷データをインクジェットプリンター20へ転送するプログラムが含まれる。また、アプリケーションソフトウェア14bとしては、例えば、マイクロソフト社のワードやアドビ社のアクロバットなどがある。こうしたユーザーPC10には、各種の情報を表示するディスプレイ15が接続されているほか、ユーザーが文字や記号などをユーザーPC10に入力するためのキーボード16やマウス17が接続されている。
【0017】
インクジェットプリンター20は、用紙Pを副走査方向(図1で奥から手前の方向)に搬送する紙送り機構41と、紙送り機構41によりプラテン46上に搬送された用紙Pに対して主走査方向(図1で左右の方向)の移動を伴って印刷ヘッド24に形成されたノズルからインク滴を吐出して印刷を行なうプリンター機構21と、装置全体をコントロールするコントローラー60と、を備える。プラテン46の主走査方向一端(図1で右端)には、印刷ヘッド24のノズル面を封止するキャッピング装置50が設置されており、プラテン46の主走査方向他端(図1で左端)には、ノズルの目詰まりを防止するために定期的に印刷ヘッド24のノズルからインク滴を吐出するフラッシングを行なうためのフラッシングエリア48が設けられている。
【0018】
プリンター機構21は、キャリッジガイド28によりガイドされながら主走査方向に往復動可能なキャリッジ22と、キャリッジガイド28の一端側と他端側にそれぞれ設置されたキャリッジモーター34および従動ローラー35と、キャリッジモーター34と従動ローラー35とに掛け渡されると共にキャリッジ22に取り付けられたキャリッジベルト32と、キャリッジ22に搭載され溶媒としての水に顔料粒子を分散させたシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K),ホワイト(W)の各色のインクを貯留し各色毎に独立して交換が可能なインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26からそれぞれ供給された各インクに加圧してインク滴を吐出する複数のノズルが形成された印刷ヘッド24と、を備える。本実施形態では、Wを特殊色、C,M,Y,Kを非特殊色とする。インクの加圧は、圧電素子に電圧を印加してこの圧電素子を変形させることにより行う。キャリッジ22は、キャリッジモーター34によりキャリッジベルト32を駆動することにより、主走査方向に往復動されるようになっている。なお、キャリッジ22の背面側には、キャリッジ22の主走査方向における位置を検出するキャリッジポジションセンサー36が取り付けられている。このキャリッジポジションセンサー36は、フレーム58にキャリッジガイド28に沿って配置されたリニア式の光学スケール36aと、光学スケール36aに対向するようキャリッジ22の背面に取り付けられ光学スケール36aを光学的に読み取る光学センサー36bとにより構成されている。
【0019】
紙送り機構41は、用紙Pをプラテン46上に搬送させる搬送ローラー42と、搬送ローラー42を回転駆動する搬送モーター44と、を備える。搬送モーター44は、その回転軸に回転量を検出するロータリーエンコーダー49が取り付けられており、ロータリーエンコーダー49からの回転量に基づいて駆動制御されている。なお、ロータリーエンコーダー49は、図示しないが、所定回転角間隔で目盛りが付されたロータリースケールと、ロータリースケールの目盛りを読み取るためのロータリースケールセンサーとにより構成されている。
【0020】
キャッピング装置50は、印刷ヘッド24をキャッピング装置50に対向する位置(いわゆるホームポジション)に移動させた状態でノズル面を封止することによりノズル内のインクの乾燥を防止したり、ノズル面を封止した状態でノズル内のインクを吸引することにより印刷ヘッド24をクリーニングしたりする。キャッピング装置50は、印刷ヘッド24のノズル面を密閉するために上方が開口された略直方体のキャップ51の他に、キャップ51の底部に接続されたチューブ(図示せず)や、チューブに取り付けられた吸引ポンプ(図示せず)などを備えている。このキャッピング装置50は、印刷ヘッド24をクリーニングする場合には、キャップ51により印刷ヘッド24のノズル面を封止した状態で吸引ポンプを駆動することにより、印刷ヘッド24のノズル面とキャップ51とにより形成される内部空間を負圧とし、ノズル内のインクを強制的に吸引する。
【0021】
コントローラー60は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種のプログラムを実行したりデータを記憶したりする機能を有する。このコントローラー60には、キャリッジポジションセンサー36からのキャリッジ22の位置や、ロータリーエンコーダー49からの搬送ローラー42の回転量が入力され、コントローラー60からは印刷ヘッド24への駆動信号や搬送モーター44への駆動信号,キャリッジモーター34への駆動信号,吸引ポンプへの駆動信号などが出力される。また、コントローラー60は、ユーザーPC10からの印刷指示や印刷データを受け付けたりする。なお、コントローラー60には、印刷バッファー領域が設けられており、ユーザーPC10から印刷データが受け付けられると、受け付けた印刷データは印刷バッファー領域に記憶される。
【0022】
次に、こうして構成された本実施形態の印刷システム1のユーザーPC10の動作、特に、連続する奇数ページと偶数ページとを同じ用紙に重ねて印刷する重ね印刷を行う場合の動作について説明する。
【0023】
重ね印刷を行う場合、ユーザーは、事前に図2に示す印刷設定画面150で重ね印刷を選択しておく必要がある。この点について以下に説明する。
【0024】
ユーザーがキーボード16やマウス17を操作してインクジェットプリンター20のプリンタードライバー14aを呼び出すと、ユーザーPC10のCPU11は、図2に示す印刷設定画面150をディスプレイ15に表示する。印刷設定画面150には、基本設定タブ152とページ設定タブ154とが表示される。基本設定タブ152では、図示しないが、用紙種類や印刷品質、カラー、給紙方法、用紙サイズなどをユーザーが設定することができる。なお、カラーの選択肢としては、例えばフルカラー、グレースケールなどがある。
【0025】
一方、ページ設定タブ154には、図2に示すように、印刷方向を縦か横のいずれかに設定する印刷方向設定欄154aと、印刷部数を数値入力する部数入力欄154bと、用紙サイズや出力用紙を選択設定するレイアウト設定欄154cと、重ね印刷機能を利用して印刷するか否かを設定する重ね印刷指定欄154dとが設けられている。このうち、重ね印刷指定欄154dには、「重ね印刷」という文字列の前に配置されたチェックボックス154eと、「奇数ページに偶数ページを重ねる」という文字列の前に配置された第1ラジオボタン154fと、「偶数ページに奇数ページを重ねる」という文字列の前に配置された第2ラジオボタン154gとが表示されている。
【0026】
本実施形態では、奇数ページに偶数ページを重ねて印刷する場合、奇数ページは特殊色であるホワイト(W)で分版し、偶数ページは非特殊色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色ごとに分版し、それらの分版したデータに基づいて奇数ページの上に偶数ページを重ねるように印刷するものとする。偶数ページに奇数ページを重ねて印刷する場合、偶数ページは特殊色であるホワイト(W)で分版し、奇数ページは非特殊色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色ごとに分版し、それらの分版したデータに基づいて偶数ページの上に奇数ページを重ねるように印刷するものとする。
【0027】
ユーザーがチェックボックス154eにチェックを入力していないときには、第1及び第2ラジオボタン154f,154gはグレーアウトされて選択不能となり、ユーザーがチェックボックス154eにチェックを入力したときには、第1及び第2ラジオボタン154f,154gはグレーアウトが解除されて選択可能となる。ユーザーは、印刷設定画面150における入力作業が終了すると、OKボタン154hをクリックする。すると、ユーザーPC10のCPU11は、印刷設定画面150でユーザーが設定した内容をRAM13に一時記憶すると共に、印刷設定画面150をディスプレイ15から消去する。
【0028】
次に、ユーザーPC10のCPU11によって実行される印刷データ生成ルーチンについて説明する。図3は、このルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、複数のページにわたるドキュメントを1つのファイルとして管理するアプリケーションソフトウェア14bの起動中に、ユーザーがそうしたファイルの印刷指令をキーボード16やマウス17を使って選択したときに開始される。
【0029】
図3の印刷データ生成ルーチンが開始されると、ユーザーPC10のCPU11は、まず、アプリケーションソフトウェア14bからファイルに含まれる複数のページの印刷対象データを受け取る(ステップS100)。ここでは、受け取った印刷対象データはRGBデータ(各色は0〜255の階調値で表されている)であるとする。
【0030】
続いて、CPU11は、RAM13から印刷設定画面150でユーザーが設定した内容を読み出す(ステップS102)。そして、重ね印刷が選択されているか否かを、印刷設定画面150で「重ね印刷」の前に配置されたチェックボックス154eがチェックされたか否かによって判定する(ステップS104)。重ね印刷が選択されていなければ、通常の手順で印刷データを生成し(ステップS106)、その印刷データをインクジェットプリンター20へ出力し(ステップS122)、本ルーチンを終了する。通常の手順で印刷データを生成する場合、アプリケーションソフトウェア14bから受け取ったページ単位のRGBデータを色変換LUT(ルックアップテーブル)を用いてC,M,Y,Kの各色に分版し、分版したデータの階調値を表現するためにインクドットを分散して形成するハーフトーン処理を実行し、ハーフトーン処理されたデータをインクジェットプリンター20に転送すべきデータ順に並べ替えることにより、1ページ目から順に印刷データを生成する。この印刷データをインクジェットプリンター20へ送ると、インクジェットプリンター20は1ページ目から順に各用紙に印刷を行う。つまり、1〜10ページ目までの印刷データが送られてきた場合には、10枚の用紙に印刷を行うことになる。
【0031】
一方、ステップS104で重ね印刷が選択されていたならば、連続する奇数ページと偶数ページとの重ね方を確認する(ステップS108)。ここでは、印刷設定画面150で「奇数ページに偶数ページを重ねる」という文字列の前に配置された第1ラジオボタン154fが選択されたか、「偶数ページに奇数ページを重ねる」という文字列の前に配置された第2ラジオボタン154gが選択されたかによって、重ね方を確認する。そして、第1ラジオボタン154fが選択されていた、つまり、奇数ページに偶数ページを重ねるという重ね方が選択されていたならば、奇数ページを特殊色であるWで分版し、分版したデータの階調値を表現するためにインクドットを分散して形成するハーフトーン処理を実行し、ハーフトーン処理後のデータをRAM13に一時記憶する(ステップS110)。続いて、偶数ページを非特殊色であるC,M,Y,Kの各色で分版し、分版したデータの階調値を表現するためにインクドットを分散して形成するハーフトーン処理を実行し、ハーフトーン処理後のデータをRAM13に一時記憶する(ステップS112)。そして、連続する奇数ページと偶数ページ(例えば1ページ目と2ページ目、3ページ目と4ページ目等)につき、奇数ページのハーフトーン処理後のデータに偶数ページのハーフトーン処理後のデータを重ねて印刷する印刷データを生成し(ステップS114)、生成した印刷データをインクジェットプリンター20に出力し(ステップS122)、本ルーチンを終了する。ここでは、印刷データとして、連続する奇数ページと偶数ページにつき奇数ページの印刷データと偶数ページの印刷データとを別々に作成する。そして、インクジェットプリンター20に対して、これらの印刷データと共に、連続する奇数ページと偶数ページにつき、奇数ページの印刷データを印刷したあとその用紙をバックフィードして再度同じ用紙に偶数ページの印刷データを印刷するという重ね印刷の指令を出力する。
【0032】
例えば、アプリケーションソフトウェア14bからのファイルには、図4(a)に示すように、1ページ目に白紙データ、2ページ目に写真データが含まれていたとする。その場合、印刷データは、図4(b)に示すように、1ページ目は、Wで分版されるため、Wのインクドットを用紙の全面に吐出して形成される印刷データとなる。また、2ページ目は、C,M,Y,Kの各色で分版されるため、各色のインクドットを吐出して形成される印刷データとなる。そして、1ページ目のWのインクを用紙の全面に吐出したあと、その用紙をバックフィードして再度同じ用紙に2ページ目のC,M,Y,Kの各色のインクを吐出することにより、図4(c)に示す印刷物を得る。つまり、用紙の全面を白色で印刷したあとその同じ用紙にカラー画像を印刷することになるため、得られた印刷物の白さが鮮やかに際だつようになる。
【0033】
一方、ステップS108で第2ラジオボタン154gが選択されていた、つまり、偶数ページに奇数ページを重ねるという重ね方が選択されていたならば、偶数ページを特殊色であるWで分版し、分版したデータの階調値を表現するためにインクドットを分散して形成するハーフトーン処理を実行し、ハーフトーン処理後のデータをRAM13に一時記憶する(ステップS116)。続いて、奇数ページを非特殊色であるC,M,Y,Kの各色で分版し、分版したデータの階調値を表現するためにインクドットを分散して形成するハーフトーン処理を実行し、ハーフトーン処理後のデータをRAM13に一時記憶する(ステップS118)。そして、連続する奇数ページと偶数ページにつき、偶数ページのハーフトーン処理後のデータに奇数ページのハーフトーン処理後のデータを重ねて印刷する印刷データを生成し(ステップS120)、生成した印刷データをインクジェットプリンター20に出力し(ステップS122)、本ルーチンを終了する。ここでも、印刷データとして、連続する奇数ページと偶数ページにつき奇数ページの印刷データと偶数ページの印刷データとを別々に作成する。そして、インクジェットプリンター20に対して、これらの印刷データと共に、連続する奇数ページと偶数ページにつき、偶数ページの印刷データを印刷したあとその用紙をバックフィードして再度同じ用紙に奇数ページの印刷データを印刷するという重ね印刷の指令を出力する。
【0034】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のユーザーPC10(プリンタードライバー14aがインストールされたユーザーPC10)が本発明の情報処理装置に相当し、CPU11がデータ受け取り手段、分版手段、ジョブ生成手段に相当する。
【0035】
以上説明した本実施形態のユーザーPC10によれば、アプリケーションソフトウェア14bから受け取った1ページ目と2ページ目とを含む印刷対象データにつき、1ページ目を特殊色であるWで分版して分版データを作成し、2ページ目を非特殊色であるC,M,Y,Kの各色で分版して分版データを作成する。そして、両分版データとを同じ印刷媒体上に重ねて印刷させる。このため、印刷専門アプリケーションを用いることなく、異なる分版方式で作成した分版データを重ねて印刷することができる。
【0036】
また、予め印刷設定画面150でユーザーが設定した順番で1ページ目と2ページ目とを重ねて印刷させるジョブを作成するため、ユーザーの意思により1ページ目の上に2ページ目を重ねて印刷するか2ページ目の上に1ページ目を重ねて印刷するかを決定することができる。
【0037】
更に、1ページ目(又は2ページ目)を用紙上に印刷したあと該用紙をバックフィードし、その後2ページ目(又は1ページ目)を同じ用紙に重ねて印刷するためのジョブを生成するため、用紙に対して2度の印刷動作を実行することにより、1ページ目と2ページ目とを重ねて印刷した印刷物が得られる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、特殊色をW、非特殊色をC,M,Y,Kのカラーとして説明したが、特殊色をメタリック色や無色透明、コーポレートカラーなどとしてもよい。メタリック色の場合には、そのメタリック色のインクをインクカートリッジ26に加え、メタリック色で色分版されたデータについてはそのメタリック色のインクで画像を形成する。無色透明の場合には、その透明インク(例えばグロスオプティマイザー)をインクカートリッジ26に加え、無色透明で色分版されたデータについてはその透明インクで画像を形成する。コーポレートカラーの場合には、そのコーポレートカラーをインクカートリッジ26に加え、コーポレートカラーで色分版されたデータについてはそのインクで画像を形成する。また、カラー画像の場合には、非特殊色にC,M,Y,Kのほかにライトシアンやライトマゼンタなどを含めてもよく、モノクロ画像の場合には、非特殊色をブラック(グレースケール)としてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、図4に示すように、1ページ目が白紙データの場合、その1ページ目をWで分版してWのインクドットを用紙の全面に吐出することとしたが、用紙の全面ではなく、Wのインクドットを2ページ目でドットが形成されない部分(つまり白地部分)に吐出するようにしてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、1ページ目(又は2ページ目)を用紙上に印刷したあと該用紙をバックフィードし、その後2ページ目(又は1ページ目)を同じ用紙に重ねて印刷するためのジョブを生成したが、次のようなジョブを生成してもよい。すなさち、1ページ目(又は2ページ目)の上に2ページ目(又は1ページ目)を重ねたジョブ、つまり両ページの分版データを同時に同じ用紙上に印刷するためのジョブを生成してもよい。こうすれば、用紙に対して1度の印刷動作を実行することにより、1ページ目と2ページ目とを重ねて印刷した印刷物が得られる。
【0042】
上述した実施形態では、ユーザーPC10のCPU11及びプリンタードライバー14aが印刷データ生成ルーチンを実行するようにしたが、インクジェットプリンター20のコントローラー60が印刷データ生成ルーチンを実行するようにしてもよい。この場合、インクジェットプリンター20が本発明の情報処理装置に相当し、プリンタードライバー14aやアプリケーションソフトウェア14bと同様のプログラムがコントローラー60の内部メモリ(ROMなど)に格納されることになる。こうしても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
上述した実施形態では、印刷ヘッド24として、圧電素子に電圧を印加することによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用するものとしたが、発熱抵抗体(例えばヒーターなど)に電圧を印加することによりインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 印刷システム、10 ユーザーPC、11 CPU、12 ROM、13 RAM、14 HDD、14a プリンタードライバー、14b アプリケーションソフトウェア、15 ディスプレイ、16 キーボード、17 マウス、20 インクジェットプリンター、21 プリンター機構、22 キャリッジ、24 印刷ヘッド、26 インクカートリッジ、28 キャリッジガイド、32 キャリッジベルト、34 キャリッジモーター、35 従動ローラー、36 キャリッジポジションセンサー、36a 光学スケール、36b 光学センサー、41 紙送り機構、42 搬送ローラー、44 搬送モーター、46 プラテン、48 フラッシングエリア、49 ロータリーエンコーダー、50 キャッピング装置、51 キャップ、58 フレーム、60 コントローラー、150 印刷設定画面、152 基本設定タブ、154 ページ設定タブ、154a 印刷方向設定欄、154b 部数入力欄、154c レイアウト設定欄、154d 重ね印刷指定欄、154e チェックボックス、154f 第1ラジオボタン、154g 第2ラジオボタン、154h OKボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションソフトウェアから1ページ目と2ページ目とを含む印刷対象データを受け取るデータ受け取り手段と、
前記印刷対象データの1ページ目を第1分版方式で分版して第1分版データを作成し、前記印刷対象データの2ページ目を第1分版方式とは異なる第2分版方式で分版して第2分版データを作成する分版手段と、
前記第1分版データと前記第2分版データとを同じ印刷媒体上に重ねて印刷させるジョブを生成するジョブ生成手段と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記分版手段は、前記第1分版方式及び前記第2分版方式の一方を予めユーザーが選択した特殊色で分版する方式とし、前記第1分版方式及び前記第2分版方式の残りの一方をモノクロ又はカラーで分版する方式とする、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ジョブ生成手段は、前記第1分版データと前記第2分版データとを同じ印刷媒体上に予め印刷設定画面でユーザーが設定した順番で重ねて印刷させるジョブを生成する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ジョブ生成手段は、前記第1分版データと前記第2分版データとを同時に同じ印刷媒体上に印刷させるジョブを生成する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ジョブ生成手段は、前記第1分版データ及び前記第2分版データの一方を印刷媒体上に印刷したあと該印刷媒体をバックフィードし、その後前記第1分版データ及び前記第2分版データの残りの一方を前記印刷媒体に重ねて印刷させるジョブを生成する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
1又は複数のコンピューターを、請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−114385(P2013−114385A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258911(P2011−258911)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】