説明

情報提供システム

【課題】 端末に対して各種情報を提供するための情報提供システムであって、新規な情報提供システムを提供する。
【解決手段】 本発明の実施形態に係る情報提供システム1は、各種情報を可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧振動の情報として発信する発信装置10と、各種情報を受信する端末としての携帯電話20、インターネット40を介して発信装置10に接続されたサーバ50から構成される。このような構成において、発信装置10から携帯電話20に対して、空気を媒体とした音として各種情報を伝達することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末に対して各種情報を提供するための情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
端末に対して各種情報を提供するシステムが従来から提供されている。
例えば、ラジオやテレビ放送にて、放送信号に文字コードや図形情報、番組に関する情報等を重畳(多重)し、テレビ受信機やラジオ受信機に通常の番組内容に付加して各種情報を提供する文字多重放送が行われている。
ラジオ放送では、割り当てられたチャンネル内の空き周波数や、ステレオ放送に用いる副搬送波の高域に、テレビ放送では、垂直同期と有効映像範囲の間に残されている余白の走査線に、デジタル化した情報を重畳して、携帯ラジオやテレビに各種情報を提供している。
【0003】
また、カメラ機能を備えた携帯電話を用いて、印刷された又はディスプレイに表示されたQRコード(登録商標)等の二次元コードを読み取らせ、コードを解読させることで、携帯電話に情報を提供するシステムも既に実用化されている。
二次元コードには、URLや商品説明の情報等がコード化されて含まれており、携帯電話のユーザは、二次元コードを読み込ませることで、各種情報を携帯電話のディスプレイに表示させることができる。インターネットへのアクセス機能を持った携帯電話であれば、URLを読み取ることで、そのホームページへアクセスし、さらに種々の情報をダウンロード表示させることが可能である。
【0004】
二次元コードを用いた情報提供システムは、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2005−122641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、文字多重放送のシステムでは、テレビやラジオの電波にデジタル情報を重畳して乗せる必要があるため、大掛かりな放送局の設備が必須となる。したがって、コストがかかり、端末に対して手軽に情報を提供することができない。
【0006】
また、携帯電話のカメラを用いてQRコードを撮影する方法は、カメラを搭載していない端末では使用することができない。また、ユーザは、携帯電話を手でもって、QRコードを認識できる位置に携帯電話の撮像部を移動させる必要があり手間がかかる。QRコードを正しく画像認識するには、フォーカシングされた状態で、撮影画像の中心にQRコードが所定の大きさで位置している必要があり、初心者や機械に不慣れな人にとっては、非常に困難な作業である。
【0007】
本発明は、このような課題を解決することが可能であって、新規な情報提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る情報提供システムは、符号化された各種情報を可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧振動に変換して発信する発信装置と、前記音圧振動を受信して復号化することで前記各種情報を復元する端末と、を備え、前記発信装置から前記端末に対して、空気を媒体とした音として情報を伝達することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る発信装置は、情報提供システムにおいて端末に対して各種情報を発信するための発信装置であって、各種情報を符号化するための演算手段と、前記符号化された各種情報を可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧振動に変換して発信するためのスピーカーと、を備え、前記端末に対して、空気を媒体とした音として情報を伝達することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る情報提供方法は、端末に対して各種情報を提供する情報提供方法であって、各種情報を符号化する符号化工程と、前記符号化された各種情報を可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧変動に変換して発信する発信工程と、端末において前記音圧変動を受信する受信工程と、端末において前記音圧振動を復号化して、前記各種情報を復元する復元工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る放送設備は、テレビやラジオ等の放送を行う放送設備であって、各種情報を符号化して放送信号に重畳させるための演算手段と、前記放送信号を電波として送信するための送信アンテナと、を備え、前記符号化された各種情報が重畳された放送信号は、放送受信機に受信されて再生されるときに、前記放送信号に重畳されている符号化された各種情報が、放送受信機のスピーカーから可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧振動として発信されるように構成された信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来の設備を活用し、低コストで運用できる、新規な情報提供システム、情報提供方法、及び情報提供システムで用いられる発信装置、端末、放送設備、プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る情報提供システムは、情報の発信装置側では、メッセージ等の各種情報を音(音圧振動)として端末に向けてスピーカーから発信し、端末側では、マイクロフォンからこの音圧振動を受信してデコードすることにより、発信された情報を認識することを特徴としている。すなわち、発信装置から端末に向けて、空気を媒体として情報を伝達する情報提供システムであることを特徴とする。
【0014】
(第1実施形態)
図1は本実施形態に係る情報提供システム1の構成を概略的に示す図である。同図に示すように、情報提供システム1は、各種情報を音圧振動の情報として発信する発信装置10と、各種情報を受信する端末としての携帯電話20、インターネット40を介して発信装置10に接続されたサーバ50から構成されている。発信装置10は、入力手段としてのキーボード11、ディスプレイ12、各種情報を音として発信するためのスピーカー(PA)13及びこれらと接続されたPC(パーソナルコンピュータ)本体14とから構成される。ここで、PAとは、Public Addressの略であり、電気的な音響拡声装置の総称を意味する。
【0015】
また、図示は省略するが、PC本体14内には、各種演算や制御を行うための演算手段としてのMPU(マイクロプロセッサ)、演算の際にワークエリアとして使用されるメモリ、各種データやプログラム等を保存しておく記憶装置(ハードディスク)が内蔵されている。
【0016】
携帯電話20は、スピーカー13からの音を拾うためのマイクロフォン21、ディスプレイ22を備えている。また、図示は省略するが、携帯電話20内には、各種演算や制御を行うための演算手段としてのプロセッサーやメモリが内蔵されている。
【0017】
上述した情報提供システム1の発信装置10は、百貨店、スーパー、商店街、映画館、遊園地等の商業施設、娯楽施設等に設置される。また、音圧振動に変換された各種情報(音圧振動情報)は、単独で、又は当該施設で流されている音楽やアナウンス等の他の音声に重畳されて、スピーカー13から発信される。当該施設を訪れた客は、自分の携帯電話20を使ってこの音圧振動情報を受信することで、各種情報を得ることができる。
【0018】
各種情報として、商品、イベント、施設案内等に関するメッセージや、関連するHPのURL等の文字情報が、端末の所有者に提供される。当該施設を訪れている客は、URLを読み込んでから、端末のネット機能を用いてインターネットにアクセスすることで、さらなる情報を入手したり、直接商品説明を読んだりすることができる。
【0019】
もちろん、発信装置を設置する場所は、情報提供者の自由であり、適宜、他の場所に設置しても良い。提供される情報の内容も、文字情報に限らず、イメージ情報等を提供しても良い。
【0020】
次に、発信装置10において、携帯電話20に向けて発信する音圧振動情報(以下、「サウンドコード」とする)を生成する処理について詳細に説明する。図2は、サウンドコードを生成する機能を実現するための概念的な回路を示すブロックダイアグラムである。
【0021】
同図に示すPA Source(PAソース)は、発信装置10が設置されている施設等において、PAから流されている音、すなわち、サウンドコードが重畳される音声を意味している。例えば、PAから音楽CDが流されているときには、その音楽の音声信号がPAソース信号であり、何も流されていない場合には、PAソース信号はゼロである。
【0022】
PAソース信号は、サウンドコードを生成するタイミング、音圧レベル等を決定するために用いられる。PAソース信号は、まず、A/D変換回路101によってデジタル信号に変換され、フレーム分割回路102、ピーク・アベレージ検出器103、立ち上がり検出器104、マスキング回路105へと送られ、サウンドコードを生成するためのパラメータが決定される。各回路は、コードプロファイル(Code Profile)を参照しながら、適切なパラメータを設定する。
【0023】
コードプロファイルとは、予め情報提供者が発信装置10を介してサーバ50にアクセスして、発信したい各種情報(メッセージ)を登録すると共に、情報提供者が要求する信号レベルやタイミングを設定することにより作成されるプロファイルである。情報提供者は、サーバ50にアクセスし、ディスプレイ11に表示される要求項目に従って入力を行うことで、コードプロファイルを簡単に作成することができる。作成されたコードプロファイルは、サーバ50からPC本体14へと送信されて格納され、上述したように、サウンドコードを生成する際に参照される。
【0024】
フレーム分割回路102では、PAソース信号が、1〜5ms毎にフレーム単位に分割され、以降の処理がフレーム単位で行われる。この処理単位は、PAソースの特性やコードプロファイルを参照して適宜最適値が設定される。
【0025】
ピーク・アベレージ検出器103では、PAソース信号のピーク値及び平均値が検出され、サウンドコードを発信する際の音圧レベルを設定するためのリファレンス・パラメータとなる。
【0026】
立ち上がり検出器104では、PAソース信号の立ち上がりエッジを検出する。PAソース信号が立ち上がる箇所は、音が急激に大きくなることを意味しているおり、ここでの検出値は、後述するマスキング効果を得るために用いられる。
【0027】
マスキング回路105では、上記PAソース信号の立ち上がりエッジを参照して、マスキング効果が顕著に得られるタイミングでサウンドコードを発信するためのパラメータの設定が行われる。マスキング効果とは、小さな音(音圧の低い信号)が大きな音(音圧の高い信号)によってかき消されてしまう心理聴覚評価の1つである。後述するように、本実施形態では、12kHz近傍を使ってサウンドコードを発信するように構成されているため、この帯域においてマスキング効果が顕著に得られるタイミングでサウンドコードを発信するように設定する。
【0028】
続いて、このようにして求められたパラメータに基づき、コード生成回路106において、コードプロファイルに含まれる各種情報(メッセージ)が符号化され、サウンドコードが生成される。また、コード生成回路106では、コード生成の際に、スクランブル(Scramble)処理が行われている。スクランブル処理とは、0又は1何れかの信号が連続して発生することを防ぐための処理であり、ここでは、疑似ランダム信号が用いられる。後述するように、本システムでは、NRZ変調が用いられているため、0又は1何れかの信号が連続すると、連続した数だけ見かけの周波数が低くなってしまう。これを避けるために、スクランブル処理を行い、0,1の発生頻度が、できるだけ1対1に近付けられる。
【0029】
生成されるサウンドコードの周波数帯域は、以下の点を踏まえて決定される。まず、受信装置としての携帯電話20に搭載されているマイクロフォン21と、発信装置10のスピーカー13の動作可能範囲内の周波数である必要がある。本発明者の調査に依れば、ある携帯電話に搭載されているマイクロフォンの受信可能周波数帯域は50Hz〜20kHzであり、PAシステムで使われている幾つかのスピーカーの再生可能帯域は、65Hz〜20kHz、65Hz〜17kHzであった。
【0030】
また、サウンドコードの音が本来のPAソース音に与える影響を少なくする必要がある。人間の可聴音域は、個人差はあるが、通常20Hzから15乃至20kHzと言われている。また、楽器の出せる基本波の周波数範囲は、例えば、ピアノが30Hz〜4,100Hz、パイプオルガンが10Hz〜8,000Hz、ヴァイオリンが200Hz〜2,650Hzと言われており、人間の出す声は、85Hz〜1,100Hzと言われている。
【0031】
また、本実施形態では、後述するように、サウンドコードの発信信号としてNRZ信号を用いており、クロック周波数が高いほどより多くのデータを扱うことができる。したがって、扱えるデータ量を多くするためには、なるべく周波数の高い帯域を用いることが望ましい。
【0032】
これらの点を踏まえると、サウンドコードを発信する周波数は、可聴音域における高音帯域である12〜13kHzあたりを用いるのが望ましい。但し、情報提供者の要望にあわせて、他の帯域の周波数を用いてサウンドコードを発信するように構成しても良い。また、サウンドコードを発信する周波数は、スピーカーの発信可能帯域及びマイクロフォンの受信可能帯域を満たす必要があり、スピーカー及びマイクロフォンの性能にあわせて、発信周波数を変更するようにしても良い。特に、使用するスピーカーの性能が低く、周波数対応域が狭い場合には、スピーカーから発信可能な周波数帯域を選択する必要があるのは言うまでもない。
【0033】
次に、サウンドコードのデータ構造について図3を参照して説明する。図3は、サウンドコードのデータ構造を示す図である。同図に示すデータフレームは、タイミングを同期するためのプリアンブル(preamble)の後に、ファイルの先頭を識別するためのSOF(Start Of File)、データのタイプ(type)、データの長さを表す(length)が順に設けられている。その後に、data1、data2、…、data7、CRC(Cyclic Redundancy Code)から構成されるデータ列が16列設けられており、この一つのフレームで112バイトのデータを扱うことができる。
【0034】
typeは、情報提供者の識別や、受信者を特定の相手に限定する場合等に用いることができる。また、lengthは、サウンドコードの長さを表し、同図に示すフレームを最大16フレーム、すなわち2048バイトのデータまで扱うことができるように構成されている。
【0035】
CRCは、エラー訂正のために付加されている。CRCとは、データの誤り検出及び誤り訂正のための多項巡回符号を意味し、発信データに前もって誤り信号コード(CRC)を付加し、受信時に誤り補正が行われる。ここでは、フレーム毎の処理ではなく、7バイト毎にCRCを付加して誤り訂正を行うようにしており、列単位でデータ量を適宜可変にすることも可能である。
【0036】
このようにして生成されたサウンドコードは、マスキング回路105で決定されたタイミングに従って送出される。このときの1フレームの伝送時間は42.66msに設定されており、最大16フレームの場合でも682.66msである。
【0037】
続いて、サウンドコードは、D/A変換回路107において、NRZ(Non
Return to Zero)変調されると共にアナログ信号に変換される。このとき、ピーク・アベレージ検出器での検出結果に追随して、ビットを割り当てることで、サウンドコードの音圧レベルが決定される。ビットサイズは任意の範囲に設定できるが、10乃至16ビットが適当である。例えば、16ビットの場合、最も小さい0,1の音圧レベルは、0000,0x0001、最も大きい音圧レベルは、0000,0xFFFFとなる。
【0038】
アナログ信号に変換されたサウンドコードは、ローパスフィルター(LPF)108により、高周波成分がカットされてサイン波となる。
【0039】
このように整形されたサウンドコードのアナログ信号は加算回路109において、PAソース信号と加算され、スピーカーから発信される。図2中、「PA source+」は、PAソース信号にサウンドコードが重畳されていることを示している。
【0040】
上述したサウンドコードを生成する処理は、発信装置10の演算手段が、記憶装置に格納されているアプリケーションを実行することにより、ソフトウェア的に実現されるが、このような処理を行うための専用回路を設け、ハードウェア的に実現しても良い。
【0041】
次に、端末側の携帯電話10において、サウンドコードを受信する処理について、図4を参照して説明する。図4は、サウンドコードを受信する機能を実現するための概念的な回路を示すブロックダイアグラムである。
【0042】
サウンドコードが重畳されたPAソースの音は、携帯電話10のマイクロフォン21によって拾われ、図中PA Source+で示される電気信号に変換される。この電気信号は、まず、バンドパスフィルター(BPF)201を通過する。BPF201は、サウンドコードの発信周波数近傍以外の周波数をカットするように構成されており、PA Source+のうち主にサウンドコード成分の信号のみがAGC(Automatic
Gain Control)回路202へと送られる。
【0043】
AGC回路202は、入力の電気信号の振幅が変動する場合においても一定の出力が得られるよう、自動的に増幅回路の増幅率(利得)を調整する回路であり、ここで受信したサウンドコードの信号レベルが調整される。
【0044】
次に、DET(検波器:Detector)203とPLL(Phase Locked Loop)回路204により、信号の同期が取られ、元のNRZ信号が得られる。なお、受信クロックの精度が十分に高い場合には、PLL回路204を省くことができる。
【0045】
続いて、サウンドコード信号は、スクランブル解除回路205に送られ、サウンドコードに施されたスクランブル処理が解除され、サウンドコードが復号化される。
【0046】
続いて、サウンドコード信号は、CRC(Cyclic Redundancy
Check)回路206に送られ、サウンドコードに予め付加されているCRCに基づいてエラーを検出し、誤り訂正が行われる。CRCは、図3に示すようにフレーム構造の列毎に付与されており、CRC回路206での誤り訂正も列毎に行われる。
【0047】
このようにして復号されたサウンドコードからメッセージが復元され、携帯電話20のディスプレイ22に表示されることになる。復元されたメッセージを端末の所有者に呈示する方法としては、視覚的にディスプレイに表示する方法に限らず、携帯電話20のスピーカー(不図示)から音声により呈示させるようにしても良い。
【0048】
上述したサウンドコードを受信してメッセージを復元する制御・処理は、携帯電話20の演算手段に所定のプログラムを実行させることで、ソフトウェア的に実現されるが、特定の機能を実現するための回路を設置し、ハードウェア的に実現するように構成しても良い。
【0049】
以上、第1実施形態に係る情報提供システム1の構成について説明したが、続いて、本システムを用いて、各種情報(メッセージ)を発信する手順について説明する。
【0050】
まず、本情報提供システムを用いて各種情報を発信したい情報発信者が、コードプロファイルを作成する。コードプロファイルは、発信装置10を介して、サーバ50にアクセスすることで作成することができる。コードプロファイルには、発信したいメッセージを登録すると共に、発信のタイミング、発信するサウンドコードの音圧レベル、発信周波数等に関して、情報発信者が希望する設定値が登録される。
【0051】
発信のタイミングとしては、例えば、1分ごとに10回(サウンドコードが16フレームから成る場合であれば、1回あたりの伝送時間は、上述したように682.66ms)連続して発信する、といったタイミングや、10秒ごとにエンドレスで繰り返し発信するといったタイミングが設定される。
【0052】
次に、情報発信者が、発信装置10に対してサウンドコードの発信指令を出すと、上述した処理に従って、サウンドコードが生成され、発信装置10のスピーカー13からサウンドコードが発信される。このとき、PAソース信号が存在する場合には、PAソース音に、サウンドコードの音声信号が重畳されて発信され、PAソース信号が存在しない場合には、プロファイル・データに従いサウンドコードの音声信号のみが発信される。
【0053】
本実施形態に係るサウンドコードは、可聴音帯域の高音帯域12kHz近傍の周波数を使って発信され、伝送時間はミリ秒単位であるから、PAソース信号が存在しない場合であっても、注意して聞かない限り人間の耳には、ほとんど聞き取れない程度の音である。また、PAソース信号が存在する場合であれば、マスキング効果も加わり、サウンドコードの音は人間の耳にはほとんど感じ取れない程度となる。
【0054】
サウンドコードの受信を行いたい携帯電話の所有者は、携帯電話20上で、サウンドコードを受信するためのJAVA(登録商標)やBREW(登録商標)のアプリケーションを実行させることで、マイクロフォン21からサウンドコードを拾って、ディスプレイ22上に、発信された各種情報(メッセージ)を表示させることができる。サウンドコードの受信感度が低い場合には、スピーカー13に対してマイクロフォン21を向けるように携帯電話20の向きを変えたり、携帯電話20をスピーカー13に近付けたりすることで確実に受信できる。
【0055】
サウンドコードを用いて各種情報の発信をしていることに関しては、施設内の掲示板や音声アナウンス等で告知することで、施設を訪れた客に知らせておけば良い。
【0056】
サウンドコードのメッセージがURLである場合には、受信した客は携帯電話のインターネット接続機能を利用してホームページにアクセスすることで、さらなる情報を得ることができる。
【0057】
以上、詳細に説明した本実施形態に係る情報提供システムによれば、既存の設備等を利用して、低コストで、施設を訪れた客に対して各種情報を提供することができる。情報の受信端末としても、既存の携帯電話には会話用のマイクロフォンが内蔵されており、本情報提供システム用のアプリケーションを組み込むだけで、サウンドコードによる各種情報を受信することが可能である。
【0058】
なお、本実施形態では、説明を分かり易くするために、発信装置10のスピーカー13が一つの場合を例に挙げて説明したが、施設内の複数の場所でサウンドコードを受信させたい場合には、複数のスピーカーが設置されることになる。
【0059】
また、本実施形態では、発信したい場所に設置された発信装置によりサウンドコードを生成するように構成したが、予めサーバにアクセスする等してサウンドコードを作成しておき、現場に設置された発信装置は、予め作成されたサウンドコードを所定のタイミングで発信(再生)するだけにしても良い。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。第1実施形態は、PCに接続されたスピーカーからサウンドコードを発信する構成の情報提供システムであったが、第2実施形態においては、テレビやラジオ放送等の公共放送にサウンドコード(音圧振動情報)を重畳させて放送し、放送電波を受信した受信機のスピーカーからサウンドコードが音圧振動として発信される構成である点が大きく異なる。以下、第1実施形態と共通する構成についての説明は省略し、異なる構成について詳細に説明する。
【0061】
図5は、第2実施形態に係る情報提供システム2の構成を概略的に示す図である。ここでは、ラジオ放送を例に挙げて説明する。同図に示すように情報提供システム2は、ラジオ番組の放送を行っている放送局60、放送電波を受信して再生し、放送電波に重畳されているサウンドコードを音圧振動として発信する放送受信機70、音圧振動を受信するための携帯電話20を備えている。
【0062】
放送局60は、放送電波を送信するための機材(不図示)及び送信アンテナ61を備えると共に、図示しないコードプロファイルを生成するためのシステムや、サウンドコードを生成して番組情報の電波に重畳させて放送するためのシステムをも備えている。また、放送受信機70は、放送電波を受信するためのアンテナ71及び放送番組の音声情報(及びサウンドコード)を再生するためのスピーカー72を備えている。
【0063】
このような構成の情報提供システム2において、まず、放送局60からサウンドコードが重畳された番組情報が放送される。コードプロファイルは、予めサウンドコードの発信を希望する情報提供者(広告主等)の要望に沿って作成されている。コードプロファイルを参照しながら、所定の発信のタイミング、音圧レベル、周波数等に基づいて生成されたサウンドコードが、番組情報信号(PAソース信号)に重畳され、送信アンテナ61から広域に放送される。
【0064】
サウンドコードが重畳された放送電波をアンテナ71から受信した放送受信機70は、番組の音声情報をスピーカー72から再生すると同時に、サウンドコードの音声情報もスピーカー72から再生、すなわち音圧振動として発信する。
【0065】
ここで、放送番組の中では、URL等のメッセージがサウンドコードとして重畳放送されている旨のアナウンスがなされている。メッセージを受信したい携帯電話20の所有者は、サウンドコードを受信するためのアプリケーションを起動させてから、携帯電話20のマイクロフォン21をスピーカー72に向けることで、マイクロフォン21を介してサウンドコードを携帯電話20に取り込ませることができる。取り込まれたサウンドコードは、携帯電話20内でデコードされ、サウンドコードのメッセージがディスプレイ22上に表示されることになる。
【0066】
以上、第2実施形態について詳細に説明したが、本実施形態によれば、公共放送を
利用してサウンドコードを広域に放送し、放送を受信した受信機を介して、サウンドコードの音圧振動を多くの場所で発信することが可能である。また、既存の放送設備に、サウンドコードを重畳させるための簡単なシステムを追加するだけで良く、少ない設備投資で広域にサウンドコードを発信することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、番組の中で伝えきれない文字情報等を視聴者に伝えるために有効に利用することが可能である。また、視聴者に番組のホームページやスポンサーのホームページにアクセスし易くするために、URL情報をサウンドコードとして送れば、広告媒体として有効活用することもできる。
【0068】
なお、本実施形態では、情報提供システム2を地上波ラジオに適用した場合を例に挙げて説明したが、地上波テレビに適用しても良いし、地上波放送だけでなく、ケーブルテレビ等の有線放送、CS放送やBS放送等の衛星放送に適用しても良い。
【0069】
以上、第1及び第2実施形態に基づいて、本発明に係る情報提供システムについて説明したが、本情報提供システムによれば、従来にない新規な方法で各種情報を端末に提供することができる。また、本システムによれば、既存の設備を有効に活用して情報提供を行うことが可能であり、低コストで情報提供システムを構築することができる。
【0070】
なお、本発明の実施形態は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、サウンドコードのフォーマット構造は、適宜変更可能であり、エラー訂正の方式や、符号化の方式も適宜自由に設定できることは言うまでもない。
【0072】
また、受信側の端末は携帯電話に限定されるものではなく、マイクロフォンを備えた端末であれば、どのような端末であっても良い。例えば、PDA、ICレコーダー、携帯ラジオ、携帯テレビ、ノートパソコン、ラジカセ、ゲーム機等であっても良い。また、本発明を適用するための専用端末を提供しても良い。
【0073】
また、受信側の端末は、ディスプレイを備えていない端末であっても、スピーカーを備えていれば良く、各種情報を音声で再生することで端末の所有者に知らせることができる。また、端末は携帯端末に限定されるものではなく、据え置き型の端末であっても良く、サウンドコードの音を拾うためのマイクロフォンを備えた端末であれば良い。
【0074】
また、コードプロファイルは、サーバにアクセスして作成するものに限定されず、ユーザのPC本体にコードプロファイルを作成するためのアプリケーションをインストールしておいて、PC本体を使って作成するように構成しても良い。また、予めコードプロファイルを作成するのではなく、サウンドコードを生成する際に、その場で各パラメータを設定するようにしても良い。
【0075】
また、サウンドコードの発信周波数は12kHz近傍に限定されるものではなく、適宜、好ましい周波数帯域を使うことが可能である。例えば、スピーカーの性能が低い場合(10kHz以上の音を発信できない場合等)には、もう少し低い周波数帯域7〜8kHzの周波数を用いるようにすれば良い。また、複数の周波数帯域を用いるように構成しても良いし、PAソース信号の周波数特性に合わせてサウンドコードの発信周波数を適宜変化させるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は第1実施形態に係る情報提供システムの構成を概略的に示す図である
【図2】図2は、サウンドコードを生成する機能を実現するための概念的な回路を示すブロックダイアグラムである。
【図3】図3は、サウンドコードのデータ構造を示す図である。
【図4】図4は、サウンドコードを受信する機能を実現するための概念的な回路を示すブロックダイアグラムである。
【図5】図5は、第2実施形態に係る情報提供システム2の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1,2 情報提供システム
10 発信装置
11 ディスプレイ
12 キーボード
13 スピーカー
14 PC本体
20 携帯電話
21 マイクロフォン
22 ディスプレイ
40 インターネット
50 サーバ
60 放送局
61 送信アンテナ
70 放送受信機
71 アンテナ
72 スピーカー
【0078】
101 A/D変換回路
102 フレーム分割回路
103 ピーク・アベレージ検出器
104 立ち上がり検出器
105 マスキング回路
106 コード生成回路
107 D/A変換回路
108 ローパスフィルター
109 加算回路
201 バンドパスフィルター
202 AGC回路
203 検波器
204 PLL回路
205 スクランブル解除回路
206 CRC回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化された各種情報を可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧振動に変換して発信する発信装置と、
前記音圧振動を受信して復号化することで前記各種情報を復元する端末と、を備え、
前記発信装置から前記端末に対して、空気を媒体とした音として情報を伝達することを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
情報提供システムにおいて端末に対して各種情報を発信するための発信装置であって、
各種情報を符号化するための演算手段と、
前記符号化された各種情報を可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧振動に変換して発信するためのスピーカーと、を備え、前記端末に対して、空気を媒体とした音として情報を伝達することを特徴とする発信装置。
【請求項3】
端末に対して各種情報を提供する情報提供方法であって、
各種情報を符号化する符号化工程と、
前記符号化された各種情報を可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧変動に変換して発信する発信工程と、
端末において前記音圧変動を受信する受信工程と、
端末において前記音圧振動を復号化して、前記各種情報を復元する復元工程と、を備えることを特徴とする情報提供方法。
【請求項4】
テレビやラジオ等の放送を行う放送設備であって、
各種情報を符号化して放送信号に重畳させるための演算手段と、
前記放送信号を電波として送信するための送信アンテナと、を備え、
前記符号化された各種情報が重畳された放送信号は、放送受信機に受信されて再生されるときに、前記放送信号に重畳されている符号化された各種情報が、放送受信機のスピーカーから可聴音域のうち12〜13kHzあたりの高音帯域を利用する音圧振動として発信されるように構成された信号であることを特徴とする放送設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−13925(P2007−13925A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67061(P2006−67061)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【分割の表示】特願2005−187934(P2005−187934)の分割
【原出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【特許番号】特許第3834579号(P3834579)
【特許公報発行日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(502441950)株式会社フィールドシステム (4)
【Fターム(参考)】