説明

情報機器

【課題】信号と電力を送信する複数の導電線から供給される電力の最大規格値を超える電力以上の電力を使用することができる情報機器を提供すること。
【解決手段】外部のケーブル31に接続される接続部2を介して送られる信号と第1電力を分離し、分離した前記第1電力の電力量を制御して出力する第1給電部1と、前記第1電力の電圧よりも低い出力電圧の第2電力を出力する二次電池21と、前記第1電力と前記第2電力を合流し、合流した電力を負荷10に供給する合流部13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
IT機器に個々に装着されるACアダプタを使用する機会は増大しており、IT機器の設置時にACアダプタの数が増えて電源の利便性を損なっている。
【0003】
このような背景から一部のネットワーク機器においてイーサネット(登録商標、以下同様)信号線を通じて電力を受給し、ACアダプタを省略する方法が開発されている。これは、PoE(Power over Ethernet(登録商標))と呼ばれ、イーサネット用UTPケーブルを通じてIP電話機やネットワークカメラなどのネットワーク機器に電力を供給する技術である。米国電気電子学会により決められたLAN規格のIEEE802.3afでは48V/1.54Wの給電、12.95Wの受電が最大規格として規定されている。また、新たに策定されたIEEE802.3atでは57V/34.20Wの給電、25.50Wの受電が最大規格として規定されている。
【0004】
従来のPoE技術の電源は、最大規格を超える消費電力を有する機器では使用できなかったので、現状の最大規格25.5Wを超える消費電力のノート型パーソナルコンピュータ(ノートPC)などの情報機器には接続できなかった。
【0005】
一方、最大規格PoE技術を用いて、ノートPCなどのモバイル装置の駆動時間を確保する電源制御を行う電源制御システムが知られている。そのシステムにおけるPoE受電回路は、イーサネットを介して電源を受けるようになっている。また、PoE受電回路がPoE給電を受けているか否かは電源制御回路により判断される。
【0006】
この場合、電源制御回路は、ACケーブル給電、PoE給電、バッテリーの順にマザーボードに電力を供給している。従って、PoE給電によりマザーボードを駆動している場合には、バッテリーからの給電が停止される。
【0007】
また、ACアダプタ付きのノートPCにおいて、電力使用のピーク時には内部回線を切り替えてACアダプタからの給電を切断するとともにバッテリーモードで動作させ、オフィス全体の電力平準化を図る方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−59112号公報
【特許文献2】特開2003−143773号公報
【特許文献3】特開2004−180404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PoEにより給電されるノートパソコンにバッテリーを搭載する構造において、PoE能力を超えた電力が必要な場合には、PoE動作からバッテリー動作に切り換えることしかできない。
【0010】
また、オフィス全体平均して電力の平準化を図ろうとする場合に、個々のノートPCの使用状態に合わせた切り替えは難しく、グループ分けして定時切り替えすることが一般的
であった。また、CPUのように瞬間的に電流変動が大きい部品の影響を受けて電力線には変動の多い電流が流れるので電力のピークが予想できないでいた。これと同じように、PoEを用いた機器においてもピーク電力が予想できない。
【0011】
本発明の目的は、信号と電力を送信するケーブルから供給される電力の最大規格値を超える電力を負荷に供給することができる情報機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態の1つの観点によれば、外部のケーブルに接続される接続部を介して送られる信号と第1電力を分離し、分離した前記第1電力の電力量を制御して出力する第1給電部と、前記第1電力の電圧よりも低い出力電圧の第2電力を出力する二次電池と、前記第1電力と前記第2電力を合流し、合流した電力を負荷に供給する合流部と、を有することを特徴とする情報機器が提供される。
発明の目的および利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素および組み合わせによって実現され達成される。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、典型例および説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない、と理解される。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、外部のケーブルに接続される接続部を介して送られる信号と第1電力のうち第1電力を分離し、電力量を設定範囲に制御して合流部に出力するとともに、二次電池から第2電力を合流部に出力している。これにより、第1電力と第2電力は合成され、負荷に供給される。この場合、第1電力の電圧を第2電力の電圧よりも高くしているので、負荷に接続される合流部では、第1電力が自己整合的且つ優先的に負荷に供給され、負荷電力の不足分が二次電池から供給される。
従って、信号とともにケーブルから送られる電力を極めて平準化することができ、ケーブル内において第1電力による信号へのノイズの影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態に係る情報機器における電源系統の構造を主として例示する回路ブロック図である。
【図2】図2は、実施形態に係る情報機器に装着される給電装置のPoE系給電部の電流制御系の一例を示す等価回路図である。
【図3】図3は、実施形態に係る情報機器に装着される給電装置のPoE系給電部の電流制御系の別の例を示す等価回路図である。
【図4】図4は、実施形態に係る情報機器に装着される給電装置のPoE系給電部の電流制御系のさらに別の例を示す等価回路図である。
【図5】図5は、ノートPCの消費電力量の時間的推移を例示する波形図である。
【図6】図6は、実施形態に係る情報機器に装着される給電装置の給電電力量の時間的推移を例示する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面において、同様の構成要素には同じ参照番号が付されている。
図1は、実施形態に係る情報機器の一例であるノートPC内の主として電源系統の構造を例示する回路ブロック図である。図1において、ノートPC内には給電装置として、イーサネット(PoE)系給電部1と二次電池11とAC−DCアダプタ系給電部21が取り付けられている。
【0016】
PoE系給電部1は、ルータに接続されるLANケーブル31の端部のイーサネットプラグ(不図示)が差し込まれるイーサネットコネクタ2を有している。イーサネットコネ
クタ(接続部)2では、LANケーブル31内の複数の導電線を通してLAN信号を受信し、同時に電力を受電する。その電力は、LANケーブル31内の複数の導電線のうちの信号線を利用して信号に重畳されて供給される場合もあるし、電力専用線を利用して供給される場合もある。
【0017】
イーサネットコネクタ2には、配線3を介して、信号/電力分離回路4、PoEマネージメント回路5、昇圧DC/DCコンバーター6、電源制御部7及び電流検出部8が順に接続されている。
【0018】
信号/電力分離回路4は、LANケーブル31から送られるLAN信号と電力とを分離し、電力をPoEマネージメント回路5に出力し、信号をマザーボード10aに信号線32を介して送信する。マザーボード10aは、負荷10の一つであり、CPU10b、記憶素子10c等が搭載されている。なお、負荷10には、マザーボード10aの他にランプ、表示素子10d等も含まれる。
【0019】
PoEマネージメント回路5は、PoE系給電部1がPoE電力を受電する規格に対応していることを示す信号をPoE電力の給電元、例えばルータに送り、その給電元から電力を送電させる。PoEマネージメント回路5は、その他に、条件を設定して送電をオン・オフするなどの管理も行う。
【0020】
LANケーブル31がイーサネットコネクタ2から取り外される場合には、信号処理部10a内に入力する信号、電力が無くなるので、PoEマネージメント回路5、或いはマザーボード10aの信号処理部などをLANケーブル取り外し検知部として使用することもできる。その検知部は、ランプ点滅、警報等によりLANケーブル31の抜けを告知してもよい。この場合、ランプや警報器、例えばブザー等は負荷10の一部であり、二次電池11から電力が供給される。
【0021】
降圧DC/DCコンバーター6は、PoEマネージメント回路5から送られた電力の電圧値、例えば57Vを設定電圧値、例えば13.5Vまで降圧させる構造を有している。
【0022】
電流制御部7は、降圧DC/DCコンバーター6を介して入力する電力の電流量を制御する回路であり、演算部9からの制御値に基づいて配線3を流れる電流量を制御する構造を有している。演算部9は、電流検出部8により検出された電流値に基づいて電流制御部7への制御値を求め、その制御値を電流制御部7に出力することにより電流制御部7に電流値を制御させる。これにより、降圧DC−DCコンバーター6と電流制御部7による電圧・電流制御によって電力が設定値を超えないように制御される。
【0023】
電流制御部7、電流検出部8及び演算部9は、例えば図2に例示するような構造を有している。図2において、電流制御部7は、ダイオードDとディプレッション型のpMOS電界効果トランジスタTを有している。ダイオードDは、pMOS電界効果トランジスタTのソースとドレインに並列に逆バイアスとなる向きに接続され、定電圧素子として使用される。
【0024】
また、電流検出部8としてシャント抵抗Rsが使用される。シャント抵抗Rsの一端はダイオードDのアノードとpMOS電界効果トランジスタTのドレインに接続され、他端は負荷10側の配線34に接続される。演算部9は、シャント抵抗Rsの両端のそれぞれにエミッタとベースを接続して電流を増幅するpnpバイポーラトランジスタQ1を有している。pnpバイポーラトランジスタQ1のコレクタは、2つの抵抗素R1、R2を介して接地線GNDに接続される。2つの抵抗素子R1、R2の接続点は、pMOS電界効果トランジスタTのゲートに接続される。これにより、シャント抵抗Rs、第1、第2の
抵抗R1、R2の値を予め選択しておき、シャント抵抗Rsを通る電流が大きくなるほどpMOS電界効果トランジスタTのソース・ドレイン間の電流が小さくなるように制御される。
【0025】
演算部9として、図3に例示するようにオペアンプQ2採用してもよい。図3において、シャント抵抗Rsの2つの端子のうち、ダイオードDのアノードに接続される一方の端部と接地線GNDの間に直列に第3、第4の抵抗R3、R4を接続し、他方の端部と接地線GNDの間に直列に第5、第6の抵抗R5、R6を接続する。そして、第3、第4の抵抗R3、R4の接続点をコンパレータQ2の一方の入力端に接続するとともに、第5、第6の抵抗R5、R6の接続点をコンパレータQ2の他方の入力端に接続する。さらに、コンパレータQ2の出力端をpMOS電界効果トランジスタTのゲートに接続する。第3〜第6の抵抗R3〜R6の値は予め調整される。
【0026】
これにより、シャント抵抗Rsの両端の電位差に基づく電圧をコンパレータQ2により増幅してpMOS電界効果トランジスタTのゲートに印加し、ゲート電圧の大きさによってpMOS電界効果トランジスタTのソース・ドレイン間電流を制御することができる。
【0027】
ところで、電流検出器8により検出された電流値に基づいて電流を制御する素子としては、ディプレション型MOS電界効果トランジスタTに限られるものではなく、回路構成によってはエンハンス型でもよい。また、MOS電界効果トランジスタ以外のサイリスタ、IGBT、バイポーラトランジスタ等の他の半導体素子を使用してもよい。
【0028】
また、電流検出部8として、シャント抵抗を用いる回路に限られるものではなく、ホールセンサーや磁気抵抗効果(MR)センサーなど磁気センサーを用いた電流センサーを用いてもよい。なお、電流検出部8は、図2、図3では、電流制御部7の後段に取り付ける例で示したが、その前段に設定しても動作が可能である。
【0029】
また、演算部9は、電流検出器8からではなく、二次電池11の端子電圧を検出する構造を有してもよく、二次電池11の電圧の大きさに応じて、電流制限部7のpMOS電界効果トランジスタTのゲート電圧を調整しても良い。例えば、図4に例示するように、第7、第8の抵抗R7、R8を介して二次電池11の端子を接地GNDに接続するとともに、第7、第8の抵抗R7、R8の間の接続点の電圧を電流検出部8のpMOS電界効果トランジスタTのゲートに接続する。この場合、第7、第8の抵抗R7、R8には微弱電流が流れるようにそれらの抵抗値が設定される。
【0030】
これにより、二次電池11の端子電圧が低下する場合にはpMOS電界効果トランジスタTのゲートに印加する電圧を低くし、その逆に二次電池11の端子電圧が高い場合にpMOS電界効果トランジスタTのゲートに印加する電圧を高くできる。従って、二次電池11の蓄電量が低下して電圧が低くなった場合には、PoE系給電部1から二次電池11に電力を供給するようにすることができる。
【0031】
二次電池11として、例えばリチウムイオンバッテリーが使用される。二次電池11には、過電流、加熱を検出する保護検出回路11aが取り付けられ、過電流、過熱状態になった場合には、二次電池11の端子とフューズ12の間に接続されたスッチ11bを保護検出回路21aにより切断する。
【0032】
二次電池11の端子は、フューズ12、配線33を介して合流部13に接続されている。また、PoE系給電部1の出力端は、正バイアス接続の第1のダイオードD1と配線34を介して合流部13に接続されている。また、これにより、二次電池11とPoE系給電部1は合流部13で電気的に並列に接続され、ここから供給される電力は合流部13で
加算されるように合流する。
【0033】
合流部13から負荷10に至る配線36、37の途中には、第2のダイオードD2が直列に接続されている。第2のダイオードD2は、そのアノードが合流部13側になるように取り付けられる。また、第2のダイオードD2には、第1のMOS電界効果トランジスタ(MOSFET)14のソース/ドレインが並列に接続されている。また、第1のMOSFET14のゲートは、CPUを有するゲート制御回路15により電圧が制御される。このCPUは、マザーボード10a上のCPU10bであってもよい。
【0034】
ACアダプタ系給電部21は、AC−DCアダプタ22のプラグに接続されるAC−DCコネクタ(接続部)23を有している。AC−DCコネクタ23は、配線38、39、フューズ24、第2のMOSFET25のソース/ドレイン及び第3のダイオードD3を介して第1のMOSFET14のソース/ドレインの一方と負荷10に接続される。第1のMOSFET14のソース/ドレインの他方は合流部13に接続される。また、AC−DCコネクタ(接続部)23は、配線38、40、フューズ24、第2のMOSFET25、バッテリーチャージ用DC/DCコンバーター16、第4のダイオードD4を介して合流部23に接続される。
【0035】
第2のMOSFET25のゲートは、ゲート制御回路15に接続されている。ゲート制御回路15は、例えば、AC−DCアダプタ系給電部21からの電力供給が可能な状態で第2のMOSFET25をオンすることにより、バッテリーチャージ用DC−DCコンバーター16を介して合流部13に電力を供給させることができる。この場合、第1のダイオードD1には逆バイアスがかかるので、PoE系給電部1に電流が流れることはない。
【0036】
さらに、ゲート制御回路15は、第1、第2のMOSFET14、25をオンし、AC−DCコネクタ23を介して供給される電力を第3のダイオードD3、配線38、39を介して直に負荷10に供給するとともに二次電池11を急速充電することができる。なお、PoE系給電部1からの電力の供給の有無は、例えば電流検出回路8又はPoEマネージメント回路8により検出される。
【0037】
従って、情報機器であるノートPCでは、ゲート制御回路15、第1、第2のMOSFET14、25、第2のダイオードD2を含む電流経路が二次電池11の急速充電回路となる。また、ゲート制御回路15、第2のMOSFET25、第4のダイオードD4を含む電流経路が定電流充電回路となる。さらに、ゲート制御回路15は、第2のMOSFET(開閉スイッチ)25をオンした状態で、第1のMOSFET(開閉スイッチ)14のオン、オフを選択することにより、急速充電回路と定電流充電回路を切り換えて二次電池11への電力供給経路の切換制御回路としても機能する。
【0038】
なお、図1に示す電源系の配線はプラス側を示していて、マイナス側の配線は接地線に接続されるので省略して描かれている。
【0039】
次に、上記の給電装置による電力供給について説明する。
まず、ルータ(不図示)に接続されたLANケーブル31のイーサネットプラグをイーサネットコネクタ2に差し込むと、LANケーブル31の導電線を通して信号と電力をPoE系給電部1に送ることが可能な状態になる。
【0040】
LANケーブル31を通してノートPCに送られる信号と電力は、信号/電源分離回路4によって分離される。分離された電力はPoEマネージメント回路5に出力される一方、LAN信号は信号線32を通ってマザーボード10aの信号処理部などに送信される。
【0041】
PoEマネージメント回路5により管理される電力は、降圧DC/DCコンバーター6に送られ、ここで負荷10に適応する使用電圧まで降下される。例えば、約57Vの電圧が13.5Vの電圧に降下される。
【0042】
降圧DC/DCコンバーター5により電圧変換された電力は、電流制御部7により電流が制御され、さらにPoE系給電部1の出力として第1のダイオードD1、配線34を介して合流部13に送られる。この場合、電流検出部8により測定された電流は、設定値、例えば1.85A以下になるように演算部9を介して電流制御部7を制御する。例えば、電流制御部7では、図2又は図3に示すように、演算部9からの出力に基づいてpMOS電界効果トランジスタTのゲート電圧を制御することにより電流量を調整する。
【0043】
PoE系給電部1から第1のダイオードD1を通った電力は、配線33、フューズ12を介して給電される二次電池11の電力と合流部13で合流する。この場合、PoE系給電部1から供給される電力の電圧は二次電池11から出力される電力の電圧よりも大きい。例えば、PoE系給電部1の出力電圧は13.5Vであり、また、二次電池11の定格出力電圧は例えば10.8Vであり、充電終止電圧は12.6Vである。なお、AC−DCアダプタ系給電部21の出力電圧は例えば19Vであり、PoE系給電部1、二次電池11の出力電圧よりも高く設定されている。
【0044】
このため、PoE系給電部1からの電力は、二次電池11からの電力よりも優先的に負荷10に安定して供給される。また、負荷10の消費電力がPoE系給電部1からの電力では足りない分が二次電池11から供給される。なお、第1のダイオードD1は、合流部13からPoE系給電部1への電力の供給を防止する。
【0045】
電流制御部7は、LANケーブル31から配線32を介して供給される電力の電流量を制御することにより、PoE系給電部1から合流部13への約25W以上の電力供給を防止する。また、二次電池11の出力電圧は、PoE系給電部1の出力電圧よりも低いので、PoE系給電部1から供給される電力が約25W以下の場合には、二次電池11からの合流部13への電力供給量は大幅に低減する。
【0046】
この場合、AC−DCアダプタ22のプラグがACアダプタ用コネクタ23に接続されていないか、或いは、ゲート制御回路15が第2のMOSFET25をオフしている状態となっている。
【0047】
一方、AC−DCアダプタ系給電部21から負荷10への給電が無く、二次電池11の電圧が定格電圧以下となったときであって、負荷10の消費電力が25Wを下回り、PoE系給電部1の電力供給量に余裕がある時間帯が存在することがある。この場合には、PoE系給電部1は、第1のダイオードD1、フューズ12等を介して二次電池11を定電圧モードで自己整合的に充電し、二次電池11の端子が充電終止電圧に達した状態で充電が停止する。
【0048】
また、AC−DC系給電部21から給電される電力の電圧は、PoE系給電部1から供給される電力の電圧よりも高く設定されている。従って、ゲート制御回路15により第2のMOSFET25がオンし、第1のMOSFET14がオフし、AC−DCアダプタ系給電部21からの給電がある場合には、第3のダイオードD3を介してAC−DC系給電部21から負荷10に電力が優先して供給される。この場合、PoE系給電部21、二次電池11から合流部13には電力が殆ど供給されない状態となる。また、二次電池11は、バッテリーチャージ用DC/DCコンバーター26及び第4のダイオードD4を介して充電される。この場合、第2のダイオードD2に逆バイアスがかかっているので、AC−DC系給電部21から直に二次電池12が充電されることはない。
【0049】
これに対し、第1、第2のMOSFET14、25が双方ともオンされる場合には、電圧がバッテリーチャージ用DC/DCコンバーター26よりも高いAC−DC系給電部21からの電力は、第1、第2のMOSFET14、25を通して二次電池11を急速充電する。第1、第2のMOSFET14、25がオンされる条件としては、例えば、PoE系給電部1からの電力の供給が停止する場合である。
【0050】
これにより、二次電池11の充電については、第1、第2のMOSFET14、25の制御により、PoE系給電部21からの定電流充填と、バッテリーチャージ用DC/DCコンバーター26からの定電圧充電と、AC−DC系給電部21からの急速充電のいずれかの選択が可能になる。
【0051】
以上のように本実施形態によれば、PoE系給電部21と二次電池11の双方の電力を合流して負荷に供給しているので、イーサネットにより供給される以上の電力量を負荷10に供給することができる。しかも、設定量を越えないようにPoE系給電部1の出力電力を電流制御部7等により制御しているので、イーサネットから供給される電力を極めて平準化された状態に制御することが可能になり、イーサネットに流れる電流の変動に起因するノイズの発生を抑制することができる。
【0052】
ところで、ノートPCにAC−DCアダプタ22を接続し、事務作業を行っているときのノートPCの消費電力の推移の一例を図5に示す。図5において、ノートPCの平均電力はIEEE802.3atに従うPoEによる電力供給の最大規格25.5Wを越えることがあるので、PoEによる電力供給だけではノートPCの動作を続けることはできない。また、図5に示す消費電力の推移によれば、長時間にわたる電力変動と非常に短時間の変動が組み合わさっていることがわかる。このように実際の事務処理においては電力の予想を行うのは容易ではない。また、図5において、25Wを越える電力の総計は39.0Whであった。
【0053】
そこで、上記の給電装置を試作してノートPCを動作させ、図1に示すX点とY点のそれぞれの電流、電圧を測定してPoE系給電部1と二次電池11のそれぞれの電力分担量の変化を調査したところ、図6に例示する結果が得られた。図6によれば、ノートPCの消費電力が低下するに合わせて二次電池11からの供給電力量が低下しているが、PoE系給電部1から供給される電力の供給はほぼ一定となっている。
【0054】
図6において、ノートPCの負荷の最大消費電力は最大で37.56Wであったが、PoE系給電部1からの最大電力供給量を21.96Wに制限しつつ、消費電力に対する不足分を二次電池11から供給してノートPCの連続作動に成功した。同時に、PoE系給電部1においては、電力変動が極めて少ない電力平準化が実現された。この場合の二次電池11の最大電力供給量は17.10Wになった。なお。負荷10の平均消費電力は15.79Wであり、PoE系給電部1からの平均供給電力は14.84Wであり、二次電池11からの平均供給電力は0.95Wとなった。
【0055】
これにより、LAN系統の電力送電に発生するノイズを押さえることができ、電力供給によるLANの信号系への悪影響を及ぼさないことが明らかになった。また、PoE系給電部1からの供給電力でノートPCを動作させることが可能になり、かつイーサネットに流れる電力を極めて平準化する状態にコントロールすることが可能となる。
【0056】
なお、上記の実施形態では、ノートPC内の給電装置について説明したが、そのような給電装置は、ノートPCの取り付けに限られるものではない。例えば、LANが接続される無線LANアクセスポイント、シンクライアント、タブレットPC、ハンディターミナ
ル、スマートフォン、監視カメラ等の電子機器が取り付け対象となる。
【0057】
ここで挙げた全ての例および条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明および概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例および条件に限定することなく解釈され、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換および変形を施すことができると理解される。
【0058】
次に、本発明の実施形態について特徴を付記する。
(付記1) 外部のケーブルに接続される接続部を介して送られる信号と第1電力を分離し、分離した前記第1電力の電力量を制御して出力する第1給電部と、前記第1電力の電圧よりも低い出力電圧の第2電力を出力する二次電池と、前記第1電力と前記第2電力を合流し、合流した電力を負荷に供給する合流部と、を有する情報機器。
(付記2) 前記第1給電部は、前記信号と前記第1電力を分離する信号/電力分離部と、前記信号/電力分離部により分離された前記第1電力の電圧を電圧降下するコンバーターと、前記コンバーターにより電圧降下された前記第1電力の電流値を制御する電流制御部とを有することを特徴とする付記1に記載の情報機器。
(付記3) 前記電流制御部は、前記第1給電部から供給される前記第1電力の電流量を制御する半導体素子を有することを特徴とする付記2に記載の情報機器。
(付記4) 前記ケーブルはイーサネット規格のLANケーブルであり、前記第1給電部はPoEの規格に準じる構造を有することを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1つに記載の情報機器。
(付記5) 前記二次電池には過電流、加熱を検出する保護検出回路と、前記保護検出回路の検出値に基づいて前記合流部と前記二次電池の電気的接続を切断するスイッチを有することを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1つに記載の情報機器。
(付記6) 前記負荷の消費電力は、前記第1給電部から供給される前記第1電力よりも大きいことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれか1つに記載の情報機器。
(付記7) 前記負荷の前記消費電力は、前記第1給電部の前記第1電力と前記二次電池の前記第2電力により供給されることを特徴とする付記6に記載の情報機器。
(付記8) 交流を直流に変換するアダプタから供給され、前記第1電力の電圧よりも高い電圧の第3電力を前記合流部に供給する第2給電部を有することを特徴とする付記1乃至付記7のいずれか1つに記載の情報機器。
(付記9) 前記第2給電部は、第1開閉スイッチとDC/DCコンバーターを介して前記合流部に接続され、さらに、前記第1開閉スイッチと第2開閉スイッチを介して前記合流部及び前記負荷に接続されることを特徴とする付記8に記載の情報機器。
(付記10) 前記ケーブルと前記接続部の接続が外された状態を検知する取り外し検知部を有することを特徴とする付記1乃至付記9のいずれか1つに記載の情報機器。
(付記11) 前記負荷は、CPU、記憶部を有することを特徴とする付記1乃至付記10のいずれか1つに記載の情報機器。
【符号の説明】
【0059】
1 PoE系給電部
2 イーサネットコネクタ
3 配線
4 信号/電力分離回路
5 PoEマネージメント回路
6 降圧DC/DCコンバーター
7 電流制御部
8 電流検出部
9 演算部
10 負荷
11 二次電池
13 合流部
14 MOSFET
15 ゲート制御回路
21 AC−DC系給電部
23 AC−DCコネクタ
25 MOSFET
26 バッテリー用DC/DCコンバーター
D1、D2、D3、D4 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のケーブルに接続される接続部を介して送られる信号と第1電力を分離し、分離した前記第1電力の電力量を制御して出力する第1給電部と、
前記第1電力の電圧よりも低い出力電圧の第2電力を出力する二次電池と、
前記第1電力と前記第2電力を合流し、合流した電力を負荷に供給する合流部と、
を有する情報機器。
【請求項2】
前記第1給電部は、
前記信号と前記第1電力を分離する信号/電力分離部と、
前記信号/電力分離部により分離された前記第1電力の電圧を電圧降下するコンバーターと、
前記コンバーターにより電圧降下された前記第1電力の電流値を制御する電流制御部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の情報機器。
【請求項3】
前記ケーブルはイーサネット規格のLANケーブルであり、前記第1給電部はPoEの規格に準じる構造を有することを特徴とする請求項1又は求項2に記載の情報機器。
【請求項4】
交流を直流に変換するアダプタから供給され、前記第1電力の電圧よりも高い電圧の第3電力を前記合流部に供給する第2給電部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の情報機器。
【請求項5】
前記第2給電部は、第1開閉スイッチとDC/DCコンバーターを介して前記合流部に接続され、さらに、前記第1開閉スイッチと第2開閉スイッチを介して前記合流部及び前記負荷に接続されることを特徴とする請求項4に記載の情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109688(P2013−109688A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255865(P2011−255865)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】