説明

情報消去装置、情報消去方法

【課題】追記型のディスク状記録媒体について消去対象データの一部を上書き記録して上記消去対象データ全体が擬似的に消去されたものとする場合において、上記消去対象データがディスクの複数周にわたっている場合に、上書き消去された部分が集中して形成されてしまうことを防止して、消去後のディスクについてのシーク動作の安定性が損なわれることの防止を図る。
【解決手段】消去対象データが記録されている消去対象区間のうちからディスク状記録媒体の半径方向において重ならないように選択した一部区間を対象として上書き記録が行われるようにする。これにより、追記型のディスク状記録媒体について上書き記録による消去を行う場合において、消去対象のデータがディスクの複数周にわたっている場合にも、上書き消去された部分が集中して形成されてしまうことを効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状記録媒体に記録された情報を消去する情報消去装置とその方法に関するものであり、特に、いわゆる追記型のディスク状記録媒体に記録された情報を消去する際に適用して好適なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開昭62−298072号公報
【背景技術】
【0003】
デジタルデータを記録・再生するための技術として、例えば、CD(Compact Disc),MD(Mini-Disc),DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などの、光ディスク(光磁気ディスクを含む)を記録メディアに用いたデータ記録技術がある。光ディスクとは、レーザ光の照射によりその記録情報の読み取りが行われる円盤状の記録媒体を総称したものである。
【0004】
光ディスクには、例えばCD、CD−ROM、DVD−ROMなどとして知られているように再生専用タイプのものと、MD、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM、BD−R、BD−REなどで知られているようにユーザデータが記録可能なタイプがある。記録可能タイプのものは、光磁気記録方式、相変化記録方式、色素膜変化記録方式などが利用されることで、データが記録可能とされる。
このうち色素膜変化記録方式などは、いわゆるライトワンス記録方式とも呼ばれ、データ記録が一度だけ可能とされ、データ書換は不能とされる。このようなライトワンス記録方式に対応した光ディスクは、ライトワンス型、或いは追記型の光ディスクと称される。
【0005】
ここで、ライトワンス型の光ディスクについては、書換可能型の光ディスクの場合とは異なり、記録情報を上書き消去するということが非常に困難とされる。これは、ライトワンス型の光ディスクの場合、記録情報の消去にあたり対象部分に再び記録パワーによるレーザ光照射を行うと、記録膜が壊れ、その周辺へのアクセスが非常に困難となるためである。換言すれば、このように周辺部へのアクセスも困難となることで、結果的に必要以上のデータの破損を招いてしまうものである。
【0006】
上記の事情より、ライトワンス型の光ディスクでのデータ消去は、ファイル管理システムによる管理情報の更新によって、あたかも該当データが消去されたかのようにして扱うということで行われている。
【0007】
しかしながら、このような手法によると、該当データは実際に消去されたわけではなく存在しており、例えば上記管理情報を無視した読み取り等を行うことで、該当データを不正に得ることが可能となってしまう。
かかる事態は、該当データが例えば個人情報や機密情報等に係るものである場合、非常に問題となる。
【0008】
ここで、前述のような上書き消去による問題が生じるのは、消去対象とする全データを上書きしてしまうことによる。そこでこの点に鑑み、ライトワンス型の光ディスクの消去手法に関しては、消去対象とする全データを上書き対象とするのではなく、その対象区間のデータ再生を不能とするに十分な一部区間のデータのみを上書き消去するという考え方がある。
【0009】
例えば上記特許文献1に記載の発明では、ディスク上の狭い扇形の領域(アドレス記録位置1a)にアドレス情報を記録し、それ以外の領域(情報記録位置1b)にデータを記録する追記型光ディスクにおいて、再生を禁止する情報に対応するアドレス情報が記録されている上にダミー信号を記録することで、上記再生を禁止する情報についての再生を不可能にする手法が開示されている。
このようにアドレス情報を読み取り不能とすることで、消去すべきデータの全部を上書き消去せずとも、消去対象とするデータの読み取りを不能にすることができ、対象とするデータの全てを擬似的に消去することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記特許文献1に記載のような擬似的な消去を行う手法では、消去対象とするデータがディスクの複数周にわたって記録されている場合において、上書き消去した部分が集中的に形成されてしまうことになる。
前述のように上書き消去した部分は記録膜が壊れた部分となるため、その部分では反射光を殆ど得ることができず、従ってサーボ用のエラー信号等を適正に得ることができないものとなる。つまりは、上記特許文献1に記載の手法によると、このようにサーボ用のエラー信号が得られない部分が集中的に存在してしまうことで、シーク動作の際にフォーカスサーボが外れたり或いはトラバース信号が得られなくなる期間が長時間に及ぶ虞があり、結果、シーク動作を安定して行うことが非常に困難となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明では上記のような問題点に鑑み、情報消去装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明の情報消去装置は、ディスク状記録媒体に対する記録を行う記録部を備える。
また、上記ディスク状記録媒体に記録されたデータから消去対象として指定されたデータが記録されている消去対象区間のうちから、上記ディスク状記録媒体の半径方向において重ならないように選択した一部区間を対象として上記記録部に上書き記録を行わせる制御部を備えるものである。
【0012】
上記のように本発明では、消去対象データが記録されている消去対象区間のうちから上記ディスク状記録媒体の半径方向において重ならないように選択した一部区間を対象として、上書き記録が行われるようにしている。
このことで、追記型のディスク状記録媒体について上書き記録による消去を行う場合において、消去対象のデータがディスクの複数周にわたっている場合にも、上書き消去された部分が集中して形成されてしまうことを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、追記型のディスク状記録媒体について上書き記録による消去を行う場合において、消去対象のデータがディスクの複数周にわたるものである場合にも、上書き消去された部分が集中して形成されてしまうことを効果的に防止できる。このことで、シーク動作の安定化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態で対象とするディスク状記録媒体のエリア構造の説明図である。
【図2】実施の形態の情報消去装置の内部構成を示したブロック図である。
【図3】第1の実施の形態としての消去手法の説明図である。
【図4】第1の実施の形態としての消去手法を実現するための具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態としての消去手法の説明図である。
【図6】第2の実施の形態としての消去手法を実現するための具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図7】APC及び受光信号のゲイン調整に係る具体的な構成についての説明図である。
【図8】レーザパワーの切替手法の例についての説明図である。
【図9】レーザパワーの切替手法の他の例についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。

<1.実施の形態で対象とするディスク状記録媒体>
<2.実施の形態の情報消去装置の内部構成>
<3.第1の実施の形態としての消去手法>
<4.処理手順>
<5.第2の実施の形態としての消去手法>
<6.処理手順>
<7.変形例>
【0016】
<1.実施の形態で対象とするディスク状記録媒体>

先ず、実施の形態で対象とするディスク状記録媒体について説明する。
実施の形態で対象とするディスク状記録媒体は、いわゆるBD(Blu-ray Disc:登録商標)と呼ばれる光ディスクであり、データ記録が1度のみ可能とされたライトワンス型(追記型)の光ディスクとされる。以下、実施の形態で対象とするディスク状記録媒体については、光ディスクDと称する。
【0017】
本実施の形態の光ディスクDの物理パラメータは、例えば以下のようになる。
先ず、ディスクサイズとしては、直径が120mm程度、ディスク厚は1.2mm程度となる。すなわち、外形的に見ればCD(Compact Disc)方式のディスクや、DVD(Digital Versatile Disc)方式のディスクと同様となる。
そして記録/再生のためのレーザ光として、いわゆる青紫色レーザ光が用いられ、また光学系が高NA(例えばNA=0.85)とされること、さらには狭トラックピッチ(例えばトラックピッチ=0.32μm)、高線密度(例えば記録線密度0.12μm)を実現することなどで、直径120mmのディスクにおいて、ユーザデータ容量として23GB(ギガバイト)〜25GB程度を実現している。
また、記録層が2層とされたいわゆる2層ディスクも開発されており、2層ディスクの場合、ユーザデータ容量は50GB程度となる。
【0018】
図1は、光ディスクD全体のレイアウト(領域構成)を示している。
なお本例のシステムでは、ディスクのフォーマット(初期化)処理により図1のレイアウトが形成される。また、以下では一例として、光ディスクが1層ディスク(SL:Single Layer)である場合を例に説明を行う。
このディスク上の領域としては、内周側からリードインゾーン、データゾーン、リードアウトゾーンが配される。
また、記録・再生に関する領域構成としてみれば、リードインゾーンのうちの最内周側のプリレコーデッド情報領域PICが再生専用領域とされ、リードインゾーンの管理領域からリードアウトゾーンまでが、1回記録可能なライトワンス領域とされる。
【0019】
再生専用領域及びライトワンス領域には、ウォブリンググルーブ(蛇行された溝)による記録トラックがスパイラル状に形成されている。グルーブはレーザスポットによるトレースの際のトラッキングのガイドとされ且つ、このグルーブが記録トラックとされてデータの記録再生が行われる。
なお本例では、グルーブにデータ記録が行われる光ディスクを想定しているが、本発明はこのようなグルーブ記録の光ディスクに限らず、グルーブとグルーブの間のランドにデータを記録するランド記録方式の光ディスクに適用してもよいし、また、グルーブ及びランドにデータを記録するランドグルーブ記録方式の光ディスクにも適用することも可能である。
【0020】
また記録トラックとされるグルーブは、ウォブル信号に応じた蛇行形状となっている。そのため、光ディスクに対するディスクドライブ装置では、グルーブに照射したレーザスポットの反射光からそのグルーブの両エッジ位置を検出し、レーザスポットを記録トラックに沿って移動させていった際におけるその両エッジ位置のディスク半径方向における変動成分を抽出することにより、ウォブル信号を再生することができる。
このウォブル信号には、その記録位置における記録トラックのアドレス情報(物理アドレスやその他の付加情報等)が変調されている。そのため、装置側では、このウォブル信号からアドレス情報等を復調することによって、データの記録や再生の際のアドレス制御等を行うことができる。
【0021】
図1に示すリードインゾーンは、例えば半径24mmより内側の領域となる。
そしてリードインゾーン内における半径22.2〜23.1mmがプリレコーデッド情報領域PICとされる。
プリレコーデッド情報領域PICには、あらかじめ、記録再生パワー条件等のディスク情報や、ディスク上の領域情報、コピープロテクションに使う情報等を、グルーブのウォブリングによって再生専用情報として記録してある。なお、エンボスピット等によりこれらの情報を記録してもよい。
なお図示していないが、プリレコーデッド情報領域PICよりさらに内周側にBCA(Burst Cutting Area)が設けられる場合もある。BCAは光ディスクD固有のユニークIDを、記録層を焼き切る記録方式で記録したものである。つまり記録マークを同心円状に並べるように形成していくことで、バーコード状の記録データを形成する。
【0022】
リードインゾーンにおいて、例えば半径23.1〜24mmの範囲が管理/制御情報領域とされる。
当該管理/制御情報領域には、コントロールデータエリア、DMA(Disc Management Area)、テストライトエリア、バッファエリアなどを有する所定の領域フォーマットが設定される。
【0023】
また、データゾーンの外周側、例えば半径58.0〜58.5mmはリードアウトゾーンとされる。リードアウトゾーンは、管理/制御情報領域とされ、コントロールデータエリア、DMA、バッファエリア等が、所定のフォーマットで形成される。コントロールデータエリアには、例えばリードインゾーンにおけるコントロールデータエリアと同様に各種の管理/制御情報が記録される。DMAは、リードインゾーンにおけるDMAと同様の管理情報が記録される領域として用意される。
【0024】
データゾーンには、ユーザデータが記録される。後述する各実施の形態としての消去手法において、消去対象となるデータは、主に当該データゾーンの記録データのうちから指定されることになる。
本例の光ディスクDにおいて、データゾーンにおける記録/再生の最小単位は「クラスタ」単位とされる。クラスタは、BDにおいてはRUB(Recording Unit Block)とほぼ一致する。
またクラスタは、物理的に固定長とされる。クラスタ長は、最内周部分において1トラックに2クラスタが収まるような長さに設定されている。この場合、ディスク回転方式としてはCLV(Constant Linear Verocity)方式が採用されるため、1トラック(トラック1周)に含まれるクラスタ数は外周側となるに従って徐々に増加していく傾向となる。BDの場合、最終的に最も外周となる部分では、1トラック内のクラスタ数は5つとなる。
【0025】
<2.実施の形態の情報消去装置の内部構成>

続いて、図2により、実施の形態の情報消去装置の内部構成について説明する。
ここで、実施の形態の情報消去装置は、光ディスクDに対する記録機能と共に再生機能を有する。この意味で以下、実施の形態の情報消去装置については記録再生装置1と称する。
【0026】
図2において、光ディスクDは、図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時(及び後述する消去動作時)においてスピンドルモータ(SPM)2によって線速度一定(CLV)で回転駆動される。
そして光学ピックアップ(光学ヘッド)OPによって光ディスクD上のグルーブのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報の読み出しが行われる。
また記録時には光学ピックアップOPによってトラックにユーザデータがマークとして記録され、再生時には光学ピックアップOPによってマークにより記録されたデータの読み出しが行われる。
【0027】
光学ピックアップOP内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、レーザ光を対物レンズを介して光ディスクDの記録面に照射し、またその反射光を上記フォトディテクタに導く光学系が形成される。
【0028】
光学ピックアップOP内において、上記対物レンズは二軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
また光学ピックアップOP全体は図中のスレッド機構3によりディスク半径方向に移動可能とされている。
また光学ピックアップOPにおける上記レーザダイオードはレーザドライバ13からのドライブ信号(ドライブ電流)によってレーザ発光駆動される。
また、光学ピックアップOP内にはレーザ光の球面収差を補正するための球面収差機構が備えられており、後述するサーボ回路11の制御によって球面収差補正が行われる。
【0029】
光ディスクDからの反射光情報は上記フォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、上記フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当する高周波信号(再生データ信号又はRF信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号などを生成する。
さらに、グルーブのウォブリングに係る信号、すなわちウォブリング(ウォブル振幅)を検出する信号としてプッシュプル信号を生成する。
【0030】
マトリクス回路4から出力される再生データ信号はリーダ/ライタ(RW)回路5へ、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号はサーボ回路11へ、プッシュプル信号はウォブル回路8へ、それぞれ供給される。
【0031】
リーダ/ライタ回路5は、再生データ信号(RF信号)についての2値化処理、PLL(Phase Locked Loop)による再生クロック生成処理等を行い、光ディスクDに記録された信号についての2値データ列を得る。2値データ列は、変復調回路6に対して供給される。
【0032】
変復調回路6は、再生時のデコーダとしての機能と、記録時のエンコーダとしての機能とが与えられたものとなる。
再生時にはデコード処理として、再生クロックに基づいてランレングスリミテッドコードの復調処理を行う。またこのデコード処理に際しては、光ディスクDの記録データ中に周期的に埋め込まれたシンクパターンの検出も行う。当該シンクパターンの検出タイミングを表すシンク信号は、以下で説明するECCエンコーダ/デコーダ7等の必要な各部供給される。例えばPLLのロック判定に用いられるべく、シンク信号はリーダ/ライタ回路5に対しても供給される。また、シンク信号はシステムコントローラ10に対しても供給される。
【0033】
ECCエンコーダ/デコーダ7は、記録時にエラー訂正コードを付加するECCエンコード処理と、再生時にエラー訂正を行うECCデコード処理を行う。再生時には、変復調回路6で復調されたデータを内部メモリ(図示せず)に取り込んで、エラー検出/訂正処理及びデインターリーブ等の処理を行い、再生データを得る。
ECCエンコーダ/デコーダ7で再生データにまでデコードされたデータは、システムコントローラ10の指示に基づいて読み出され、AV(Audio-Visual)システム100に転送される。
【0034】
グルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路4から出力されるプッシュプル信号は、ウォブル回路8において処理される。ADIP情報としてのプッシュプル信号は、ウォブル回路8においてADIPアドレスを構成するデータストリームに復調されてアドレスデコーダ9に供給される。
アドレスデコーダ9は、供給されるデータについてのデコードを行ってアドレス値を得て、これをシステムコントローラ10に供給する。
またアドレスデコーダ9はウォブル回路8から供給されるウォブル信号を用いたPLL処理でクロックを生成し、例えば記録時のエンコードクロックとして各部に供給する。
【0035】
記録時には、AVシステム100から記録データが転送されてくるが、その記録データは前述したECCエンコーダ/デコーダ7におけるメモリに送られてバッファリングされる。
この場合、ECCエンコーダ/デコーダ7は、バファリングされた記録データのエンコード処理として、エラー訂正コード付加やインターリーブ、サブコード等の付加を行う。
またECCエンコードされたデータは、変復調回路6において例えばRLL(1−7)PP方式などの所定のランレングスリミテッド符号化処理(変調処理)が施され、リーダ/ライタ回路5に供給される。
記録時においてこれらのエンコード処理のための基準クロックとなるエンコードクロックは前述のウォブル信号から生成したクロックを用いる。
【0036】
エンコード処理により生成された記録データは、リーダ/ライタ回路5で記録補償処理として、記録層の特性、レーザ光のスポット形状、記録線速度等に対する最適記録パワーの微調整やレーザドライブパルス波形の調整などが行われた後、レーザドライブパルスとしてレーザードライバ13に送られる。
レーザドライバ13では供給されたレーザドライブパルスを前述した光学ピックアップOP内のレーザダイオードに与え、レーザ発光駆動を行う。これにより光ディスクDに記録データに応じたマークが形成されることになる。
【0037】
なお、レーザドライバ13に対しては、いわゆるAPC(Auto Power Control)回路が備えられ、光学ピックアップOP内に設けられたレーザパワーのモニタ用ディテクタ(フロントモニタ)の出力によりレーザ出力パワーをモニターしながらレーザーの出力が温度などによらず一定になるように制御する。
記録時及び再生時のレーザー出力の目標値(ライトパワー/リードパワー)はシステムコントローラ10から与えられ、記録時及び再生時にはそれぞれレーザ出力レベルが、その目標値になるように制御する。
【0038】
サーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号から、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
すなわちフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に応じてフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号を生成し、光学ピックアップOP内の二軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによって光学ピックアップOP、マトリクス回路4、サーボ回路11、二軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
【0039】
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
【0040】
またサーボ回路11は、トラッキングエラー信号の低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのシーク動作制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成し、スレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、光学ピックアップOPを保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、光学ピックアップOPの所要のスライド移動が行なわれる。
【0041】
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からの指示に応じて、フォーカスサーボループにフォーカスバイアスを与える。
またサーボ回路11は、システムコントローラ10からの指示に応じて、光学ピックアップOP内における上述した球面収差補正機構に対して球面収差補正のための駆動信号を供給する。
【0042】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモータ2をCLV回転させる制御を行う。スピンドルサーボ回路12は、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として得て、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成する。
またデータ再生時においては、リーダ/ライタ回路5内のPLLによって生成される再生クロック(デコード処理の基準となるクロック)が、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルモータ2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0043】
以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はマイクロコンピュータで構成されるシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、AVシステム100からのコマンドに応じて各種処理を実行する。例えばAVシステム100から書込命令(ライトコマンド)が出されると、システムコントローラ10は、指示されたアドレスをターゲットアドレスとしてシーク動作制御を行う。すなわちサーボ回路11に指令を出し、コマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光学ピックアップOPのアクセス動作を実行させる。また、これと共に、ECCエンコーダ/デコーダ7、変復調回路6により、AVシステム100から転送されてきたデータ(例えばMPEG2などの各種方式のビデオデータや、オーディオデータ等)について上述したようにエンコード処理を実行させる。そして、上記のようにリーダ/ライタ回路5からのレーザドライブパルスがレーザドライバ13に供給されることで、光ディスクDに対する記録が実行される。
【0044】
また、例えばAVシステム100から光ディスクDに記録された或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合は、まず指示されたアドレスをターゲットとしてシーク動作制御を行う。その後、その指示されたデータ区間のデータをAVシステム100に転送するために必要な制御を行う。すなわち光ディスクDからの読出データについて、リーダ/ライタ回路5、変復調回路6、ECCエンコーダ/デコーダ7におけるデコード/バッファリング等を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0045】
またシステムコントローラ10は、例えばAVシステム100側から光ディスクDに記録されたデータのうちから消去対象とするデータが指示されることに応じて、図4や図6にて説明する処理動作を実行することで実施の形態としての消去動作を実現するが、これについては後に改めて説明する。
【0046】
なお、この図2の例ではAVシステム100に接続される記録再生装置1としたが、例えばパーソナルコンピュータ等と接続されるものとしてもよい。
或いは、他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインターフェース部位の構成が、図2とは異なるものとなる。つまり、ユーザ操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。
【0047】
<3.第1の実施の形態としての消去手法>

ここで、前述もした通り、本例の光ディスクDのような追記型の光ディスクについて記録データを消去しようとするときは、

・ファイル管理システムによる管理情報の更新により該当データが消去されたかのように扱う手法では、実際には該当データが残されてしまいそれを読み取ることが可能となってしまう

・消去対象とするデータの読み取りを不能とすべく対象データ全体を上書き記録(つまり破壊)により消去しようとすると、その周辺部までアクセスが不能となってしまい、必要以上の範囲が再生不能となってしまう

という問題から、消去対象とするデータ全体を破壊するのではなく、該当データの再生が不能となる程度の一部区間のみを破壊することで該当データを擬似的に消去するという手法が有効となる。
【0048】
しかしながら、先に掲げた特許文献1に記載の発明の如くディスク上の所定位置に設定されたアドレス記録領域を破壊するなどとした場合には、消去対象データがディスクの複数周にわたって記録される場合に、破壊箇所が集中してしまい、その結果、シーク動作を安定して行うことができなくなってしまう虞がある。
【0049】
そこで第1の実施の形態では、次の図3に示すような消去手法を採ることで、このような問題の解決を図る。
先ず前提として、第1の実施の形態では、その再生を不能にしたいデータが記録された区間としての消去対象区間内の一部を上書き記録により破壊する具体的手法として、当該消去対象区間内に含まれるクラスタごとに、その一部区間を破壊するという手法を採る。
ここで、1クラスタ(1RUB)は1ECCブロックに一致する。従って、1クラスタ内において、ECCが解けない程度の長さの区間だけを破壊すれば、効率良くそのクラスタのデータを再生不能とすることができる。
この点に鑑み第1の実施の形態では、消去対象区間内におけるクラスタごとに、ECCが解けない程度の長さよる一部区間を上書きにより破壊することで、消去対象区間全体を再生不能にする(つまり擬似的に消去する)という手法を採る。
ここで、「ECCが解けない程度の長さ」とは、採用するエラー訂正処理の手法(エラー訂正能力の違い)にも依るが、例えばBDの場合であればおよそ1〜2mmの長さ(線方向の長さ)となり、2mm程度とすれば十分である。
【0050】
そしてこの前提の下で、第1の実施の形態では、各クラスタにおける破壊区間を、半径方向においてそれぞれが重ならないように選択するものとしている。
具体的に、第1の実施の形態では、システムコントローラ10が、指示された消去対象区間内において、破壊区間が半径方向に重ならないようにして、クラスタごとの破壊対象区間を設定する。そして、消去対象区間の先頭にシークし、以降は上記設定した破壊対象区間となるタイミングでクラスタごとの破壊記録を実行させる。
【0051】
このような第1の実施の形態としての消去手法により、破壊区間が集中して形成されてしまうことを効果的に防止することができ、結果、消去後のディスクについてシーク動作の安定性が損なわれるようなことがないようにできる。
【0052】
また、本実施の形態としても、データの破壊は消去対象区間全体でなく一部区間に対してのみ行うものとしているので、消去対象区間以外の部分へのアクセスが不能となる、すなわち必要以上の区間が再生不能となってしまうといったことの防止を図ることができる。換言すれば、消去対象とされなかったデータまでもが擬似的に消去されてしまうことの防止が図られるものである。
【0053】
<4.処理手順>

図4のフローチャートは、上記により説明した第1の実施の形態としての消去手法を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示している。
なおこの図4では、第1の実施の形態としての消去手法を実現するための具体的な処理の手順を、図2に示したシステムコントローラ10が実行する処理の手順として示している。システムコントローラ10は、例えば自らが備えるROM等のメモリに格納されたプログラムに従って図4に示す手順による処理動作を実行する。
【0054】
図4において、ステップS101では、消去対象区間の指示があるまで待機する。つまり、図2に示したAVシステム100からの消去対象区間(消去対象データ)の指示があったか否かの判別処理を、当該指示があるまで繰り返し実行するものである。
そして、AVシステム100からの消去対象区間の指示があった場合には、ステップS102において、先ずはクラスタカウント値nを「1」に設定する。なお後の説明からも明らかとなるように、クラスタカウント値nは、上書き記録(破壊記録)を行ったクラスタ数をカウントするための値となる。
【0055】
続くステップS103では、消去対象区間内のクラスタ数=Nとする。すなわち、ステップS101で指示のあった消去対象区間内に含まれるクラスタ数Nの値を保持する。
【0056】
そして、次のステップS104では、半径方向において破壊区間が重ならないようにクラスタごとの破壊区間を設定する。
ここで、消去対象区間が指定された場合、ディスクの記録フォーマットから当該消去対象区間内における各クラスタの配置関係が特定される。従ってステップS104では、このように配置関係が特定される各クラスタについて、それぞれの破壊区間が半径方向において重ならないように破壊区間の選択・設定を行う。
【0057】
このようにクラスタごとの破壊区間を設定した後は、ステップS105において、消去対象区間にシークしてリードを開始するための処理を実行する。つまり、消去対象区間の先頭アドレスをターゲットとしたシーク動作制御を行って、光学ピックアップOPによる読み取り動作を開始させる。
【0058】
続くステップS106では、n番目クラスタの破壊区間に到達するまで待機する。そして、n番目クラスタの破壊区間に到達した場合には、ステップS107において、破壊記録を開始させるための処理を行う。すなわち、リーダ/ライタ回路5に対する指示を行って、レーザドライバ13により記録パルスの出力を開始させて、ディスク上への上書き記録(破壊記録)を開始させるものである。
本例の場合、上書き記録は、ダミーデータの記録により行う。ダミーデータとしては、例えば8T−8Tの繰り返しパターンなどを挙げることができる。
システムコントローラ10はリーダ/ライタ回路5にこのようなダミーデータを与えて当該ダミーデータの記録を実行させる。
【0059】
破壊記録を開始させた後は、ステップS108において、破壊区間が終了するまで待機する。そして、破壊区間が終了した場合には、ステップS109において破壊記録を終了させる。すなわち、リード状態に戻すものである。
【0060】
破壊記録を終了させた後は、ステップS110において、n番目クラスタが終了するまで待機する。つまり、n番目クラスタの終了位置に到達するまで待機する。
【0061】
そして、n番目クラスタが終了した場合には、ステップS111において、n=Nであるか否かを判別する。すなわち、消去対象区間内の全クラスタについて破壊区間に対する破壊記録を実行したか否かを判別するものである。
ステップS111において、n=Nではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS112に進んでクラスタカウント値nを1インクリメント(n=n+1)した後、先のステップS106に戻るようにされる。この結果、消去対象区間内の全クラスタの破壊区間に対する破壊記録が完了するまでステップS106〜S112の処理が繰り返し実行されることになる。
【0062】
一方ステップS111において、n=Nであるとして肯定結果が得られた場合は、この図に示す一連の処理は終了となる。
【0063】
<5.第2の実施の形態としての消去手法>

続いて、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、記録データ中に周期的に挿入されているシンクパターン区間を対象として破壊記録を行うものである。
なお第2の実施の形態において、情報記録装置の構成は先の図2にて説明した第1の実施の形態の場合(記録再生装置1)と同様となるため改めての図示による説明は省略する。
【0064】
図5は、第2の実施の形態としての消去手法についての説明図である。
この図5に示されるように、第2の実施の形態では、指示された消去対象区間内に存在するシンクパターンの記録区間(図中シンク)のうち、所要のシンクを対象とした破壊記録を行うことで、当該消去対象区間のデータの再生を不能とするという手法を採る。
このとき、破壊対象とするシンクについては、それらを半径方向において重ならないように選択するという点は、第1の実施の形態の場合と同様である。
【0065】
ここで、図2に示した記録再生装置1をはじめとして、通常、光ディスクについての記録再生装置では、PLLのロック判定の手法として、シンクパターンが所定回数連続して検出されていることを要件とする手法を採るようにされている。
当然のことながら、PLLのロックが外れた場合には、その区間のデータについてデコーダ(図2ではECCエンコーダ/デコーダ7が該当)によるデコード処理は為されず、その結果、当該区間のデータを再生することは不能となる。
この点に鑑み第2の実施の形態では、指示された消去対象区間内において、上記所定複数個のシンクごとに、少なくともそのうちの1つのシンクを破壊するという手法を採る。つまりこのことで、上記消去対象区間全体のデータの再生が不能となるようにするものである。
そしてこのような手法を採ることを前提とした上で、破壊対象とするシンクを、半径方向においてそれらが重ならないように選択するというものである。
【0066】
このような第2の実施の形態としての消去手法によっても、データの破壊は、消去対象区間全体でなく一部区間に対してのみ行われるので、必要以上の区間が再生不能となってしまうといった事態の発生を効果的に防止できる。
また、この場合も破壊区間は半径方向において重ならないように選択されるので、破壊区間が集中して形成されてしまうことの防止が図られ、結果、消去後のディスクについてシーク動作の安定性が損なわれてしまうことの防止が図られる。
【0067】
<6.処理手順>

図6のフローチャートは、第2の実施の形態としての消去手法を実現するための具体的な処理の手順を示している。
なお、この図6においても第2の実施の形態の消去手法を実現するための具体的な処理の手順は、図2に示したシステムコントローラ10が例えば自らが備えるメモリ等に格納されたプログラムに従って実行する処理の手順として示している。
【0068】
図6において、先ずステップS201では、先の図4におけるステップS101と同様、消去対象区間の指示があるまで待機するようにされる。
そして、消去対象区間の指示があった場合は、ステップS202において、半径方向において破壊区間が重ならないように消去対象区間内で破壊対象とするシンクを設定する。
このとき、破壊対象とするシンクの設定は、PLLのロック判定における前述の連続検出の要件とされる「所定複数個」のシンクごとに、少なくともそのうちの1つが選出されるようにして行う。
【0069】
このように破壊対象とするシンクの設定行った後は、ステップS203において、先の図4におけるステップS105と同様に消去対象区間にシークしてリードを開始するための処理を行う。
そして続くステップS204において、破壊対象シンクタイミングとなるまで待機し、該ステップS204にて破壊対象シンクタイミングに至ったとした場合は、ステップS205において、シンクを破壊するための処理を行う。すなわち、リーダ/ライタ回路5にダミーデータを与えて当該ダミーデータの記録を実行させる。
BDの場合、シンクパターンは9T−9Tの計18Tの区間とされるので、ステップS205においては18T分の区間長にわたってダミーデータの上書き記録を実行させる。
【0070】
ステップS205においてシンクを破壊するための処理を実行した後は、ステップS206において、全破壊対象シンクの破壊が完了したか否かを判別する。
ステップS202にて設定した全破壊対象シンクの破壊が完了していないとして否定結果が得られた場合は、先のステップS204に戻る。これにより、全破壊対象シンクに対する破壊記録が完了するまで、ステップS204〜S206の処理が繰り返し実行されることになる。
またステップS206において、全破壊対象シンクの破壊が完了したとして肯定結果が得られた場合は、この図に示す処理は終了となる。
【0071】
なお、上記による説明では、第2の実施の形態としての消去手法がシステムコントローラ10による破壊対象シンクの設定によって実現される場合を例示したが、第2の実施の形態の消去手法は、ハードウエア構成により実現することもできる。
例えば、第2の実施の形態の消去手法は、破壊対象とするシンクを、乱数に基づき選択する回路(制御回路)を設けることでも実現できる。具体的には、前述の「所定複数個」のシンクごとに選択されるべき少なくとも1つのシンクを、乱数に基づき選択する回路を設けるというものである。このことで、破壊対象とするシンクが、半径方向において重ならないようにして選択されるようにできる。
【0072】
<7.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
ここで、実際においては、過去にデータ消去が指示された光ディスクDについて、再度、データ消去が指示されるというケースが考えられる。そしてこの場合において、新たに消去指示されたデータが記録されている区間が、過去に消去を行った区間に隣接するという場合も考えられる。
このように新たに消去指示されたデータが記録されている区間が、既消去区間に対して隣接する関係となる場合には、先の図4や図6にて説明したままの処理を実行したのでは、ディスク全体で見て、破壊区間が半径方向に重ならないようにすることができない虞がある。これは、図4や図6で説明した処理では、破壊とする区間を、指示された消去対象区間内でのみ半径方向において重ならないように設定しているためである。
そこで、このようなケースを考慮し、新たに消去指示されたデータが記録されている区間が、既消去区間に対して隣接する関係となる場合には、既消去区間で破壊した区間も含めて、破壊区間が半径方向に重ならないように破壊対象区間を設定するようにする。
このようにすることで、同一光ディスクDについて消去指示が複数回為される場合にも破壊区間が集中して形成されてしまうことを効果的に防止でき、シーク動作が不安定となってしまうことの防止が図られる。
【0073】
なお、前述のように乱数に基づき破壊対象区間を選択する構成を採る場合は、2回目以降の消去時も破壊区間はランダムに選択されるので、新たに消去指示されたデータが記録されている区間が既消去区間に対して隣接する関係となる場合にあっても、破壊区間が半径方向に重なることを効果的に抑制できる。
【0074】
また、これまでの説明では特に言及はしなかったが、上書き記録による疑似消去動作を実行する際には、これと共に、ファイル管理システムによる管理情報も更新して、該当データが消去されたものとして扱われるようにする。これにより、見かけ状も当該データが消去されたものとして扱われるようにできる。
【0075】
またこれまでの説明では、破壊記録として、ダミーデータの記録を行うものとしたが、破壊記録時のレーザ発光は、DC発光としてもよい。
破壊記録時のレーザ発光手法は、APCのかけ方やフォトディテクタのゲイン切り替えの手法など実際の構成に応じて適宜最適とされる手法を採用すればよい。例えば、破壊記録動作中のサーボの安定性や、破壊後にリードしたときにECCが解けなくなっているかなどの破壊後の特性等に応じて、適宜最適とされる手法を選定すればよい。
【0076】
また、これまでの説明では、破壊記録に際しての具体的なレーザパワーの制御手法については言及をしなかったが、破壊記録に際してのレーザパワーの制御手法としては、APCの追従性を考慮して、以下で説明するような手法を採ることができる。
【0077】
ここで、先ずは破壊記録に際してのレーザパワーの具体的な制御手法についての説明に先立ち、図7により、記録再生装置1におけるAPCに係る構成、及び光学ピックアップOP内のフォトディテクタについてのゲイン調整に係る構成について説明しておく。
先ず、この図7においても、先の図2に示したレーザドライバ13、マトリクス回路14、及びシステムコントローラ10が示されている。記録再生装置1には、光学ピックアップOP内にレーザダイオード15、フロントモニタ16、フォトディテクタ17、ゲインコントロール回路18が備えられる。
先の説明からも理解されるように、レーザドライバ15はレーザドライバ13により発光駆動される。また、フロントモニタ16は、レーザ出力パワーのモニタ用に設けられたフォトディテクタであり、当該フロントモニタ16の受光信号は、図中のAPC回路19に供給される。APC回路19はフロントモニタ16からの受光信号に基づき、レーザ出力パワーがシステムコントローラ10より指示されるパワー(例えばライトパワーやリードパワー)で一定となるようにレーザドライバ13を制御する。
【0078】
また、ゲインコントロール回路18は、フォトディテクタ17による受光信号についてのゲイン調整を行う。
ここで、ライト動作を行うときは、リード時に比べレーザパワーが増大するため、当然フォトディテクタ17への戻り光量が増大する。そのため後段のマトリクス回路4におけるA/D変換器での飽和を避けるために、ゲインコントロール回路18では、ライト時のフォトディテクタ17による受光信号について、そのレベルをリード時と同等とするようにゲイン調整を行う。
【0079】
以上の前提を踏まえた上で、破壊記録に際してのレーザパワー制御手法の具体例について説明する。
破壊記録に際してのレーザパワーの制御手法としては、APCの応答性を考慮して、次の図8又は図9の何れかの手法を採るものとすればよい。
図8は、APCの応答性があまり速くない場合に対応して採られるべきレーザパワーの制御手法(切替手法)についての説明図である。
この図8に示されるように、APCの応答性があまり速くない場合には、消去対象区間に到達(消去対象区間内の先頭クラスタの先頭に到達)したことに応じて、レーザパワーをそれまでのリードパワーから、該リードパワーとライトパワーとの間の所定のパワー(リードパワーよりも大で且つ記録データ破壊を生じさせない程度のパワー:以下、Eraseパワーと呼ぶ)に切り替える。そしてその後、破壊区間(破壊対象区間)に至ったことに応じて記録パルスを重畳することで、該破壊区間にてライトパワー/Eraseパワーの交互のレーザ発光が行われるようにする。
図示するように破壊区間通過後は、レーザパワーはリードパワーに戻す。
このような動作を消去対象区間内の各クラスタにおいて繰り返し行う。
【0080】
この図8に示すパワー切替手法と採る場合には、ゲインコントロール回路18におけるゲインの切り替え(つまりリード時受光レベルへの減衰)は、クラスタの先頭で行う。
またこの場合のAPCは、クラスタ先頭で目標値をEraseパワーに応じた値に切り替え、また破壊区間中ではデータが「1」のときにEraseパワーにライトパワー分を加算する形で実現する。
なお確認のために述べておくと、レーザドライバ13に対するレーザパワーの切り替え指示、及びAPC回路19に対する目標値の切り替え指示は、システムコントローラ10が行う。また、ゲインコントロール回路18に対するゲインの切り替え指示についてもシステムコントローラ10が行う。
【0081】
APCの応答性があまり速くない場合に対応して図8にて説明したような手法を採ることで、APCの安定化を図ることができ、その結果サーボ制御等の安定化が図られる。
【0082】
また、図9は、APCの応答性が比較的速い場合に対応して採られるべきレーザパワーの制御手法(切替手法)についての説明図である。
図示されるようにAPCの応答性が比較的良好な場合は、破壊区間に至ったことに応じてレーザパワーをリードパワーからEraseパワーに切り替え、破壊区間では記録パルスを重畳することでライトパワーによる発光が行われるようにする。
この場合のゲインコントロール回路18に対するゲインの切り替え指示は、破壊区間の先頭で行う。
また、この場合のAPCの目標値の切り替えについては、破壊区間の先頭にてリードパワー→Eraseパワーへの切り替えを行う共に、破壊区間中ではデータ「0」ではEraseパワー、データ「1」ではEraseパワーにライトパワー分を加算する形で行う。そして破壊区間の終了に応じリードパワーに応じた目標値に切り替える。
【0083】
また、これまでの説明では、本発明が、ディスク状記録媒体としてBDを対象とした記録再生を行うシステムに適用される場合を例示したが、本発明としては、ディスク状の記録媒体に対して記録及び/又は再生を行うシステムに対して広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
D 光ディスク、1 記録再生装置、OP 光学ピックアップ、2 スピンドルモータ、3 スレッド機構、4 マトリクス回路、5 リーダ/ライタ(RW)回路、6 変復調回路、7 ECCエンコーダ/デコーダ、8 ウォブル回路、9 アドレスデコーダ、10 システムコントローラ、11 サーボ回路、12 スピンドルサーボ回路、13 レーザドライバ、100 AVシステム、15 レーザダイオード、16 フロントモニタ、17 フォトディテクタ、18 ゲインコントロール回路、19 APC回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク状記録媒体に対する記録を行う記録部と、
上記ディスク状記録媒体に記録されたデータから消去対象として指定されたデータが記録されている消去対象区間のうちから、上記ディスク状記録媒体の半径方向において重ならないように選択した一部区間を対象として上記記録部に上書き記録を行わせる制御部と
を備える情報消去装置。
【請求項2】
上記制御部は、
上記上書き記録としてダミーデータの記録が行われるように上記記録部を制御する
請求項1に記載の情報消去装置。
【請求項3】
上記ディスク状記録媒体には、エラー訂正符号の付加処理が施されたデータが記録されており、
上記制御部は、
上記消去対象区間内に含まれるエラー訂正ブロックごとにその一部区間を対象とした上記上書き記録を実行させる
請求項2に記載の情報消去装置。
【請求項4】
上記エラー訂正ブロックごとに上記上書き記録を行う上記一部区間は、エラー訂正を不能とする程度の区間長に設定されている請求項3に記載の情報消去装置。
【請求項5】
上記ディスク状記録媒体には所定周期でシンクパターンが埋め込まれたデータが記録されており、
上記制御部は、
上記シンクパターンを対象として上記記録部に上記上書き記録を実行させる
請求項2に記載の情報消去装置。
【請求項6】
上記制御部は、乱数に基づき上記上書き記録の対象とするシンクを選択する請求項5に記載の情報消去装置。
【請求項7】
上記記録部は、上記ディスク状記録媒体に対してレーザ光の照射により記録を行うように構成され、
上記レーザ光のパワーを調整するパワー調整部と、
上記消去対象区間の先頭に応じたタイミングで上記レーザ光のパワーがリードパワーとライトパワーとの間の所定パワーに切り替えられるように制御するパワー切替制御部とを備える
請求項1に記載の情報消去装置。
【請求項8】
ディスク状記録媒体に記録されたデータから消去対象として指定されたデータが記録されている消去対象区間のうちから、上記ディスク状記録媒体の半径方向において重ならないように選択した一部区間を対象として上書き記録を行う
情報消去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−3798(P2012−3798A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136424(P2010−136424)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】