説明

情報用配線装置

【課題】情報通信用の配線装置においてPoE給電やメディアコンバータのために必要な電源を容易に確保できる情報用配線装置を提供する。
【解決手段】情報用配線装置Aは、取付枠50の前面に取り付けられるプレート本体2を備える。プレート本体2の前面左側には取付枠50に取り付けられた電源コンセント80の前面を露出させる開口部21が設けられ、前面右側にはプリント配線板31が取り付けられている。プリント配線板31には、LANケーブル60に接続されたモジュラープラグ61が着脱自在に接続されるモジュラージャック5と、壁に配線されたLANケーブル70が接続される端子台32と、電源入力用のジャックコネクタ34と、モジュラージャック5と端子台32の間を電気的に接続する内部導電路36と、ジャックコネクタ34を介して供給される電源を内部導電路36に重畳させるためのインピーダンス補償回路部37が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報用配線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、Ethernet(登録商標)のようなネットワークのLANケーブルに直流電圧を重畳するPoE(Power on Ethernet(登録商標))と呼ばれる技術を利用し、ネットワークに接続されるハブやルータに給電するシステムがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−94013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシステムでは、出力端末と入力端末の間をLANケーブルで接続し、出力端末からLANケーブルに直流電圧を重畳させることにより、LANケーブルを介して入力端末への電力供給を行っていた。
【0005】
ところで、既築の建物(オフィスや一般の住宅など)にLANを導入し、建物内の複数箇所にLANコンセントが設置される場合、ハブを介して複数のLANコンセントに分岐配線することで、配線を削減することが行われる。このように配線削減のためハブを使用するのであるが、ハブに対してPoE給電が可能な機器が近くに無い場合、離れた場所にある電源コンセントとハブとの間を配線する必要があり、電源確保のために手間がかかるという問題があった。
【0006】
また、建物内の各部屋に、各部屋で使用される機器からのLANケーブルが接続されるLANコンセントが設置されている場合に、LANコンセントに電気信号と光信号との相互変換を行うメディアコンバータを設け、LANコンセント間を光ファイバーケーブルで接続して、コンセント間の通信を光通信とすることも検討されているが、この場合でもメディアコンバータの電源を確保するために、メディアコンバータと電源コンセントとの間を配線する必要があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、情報通信用の配線装置においてPoE給電やメディアコンバータのために必要な電源を容易に確保できる情報用配線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の情報用配線装置は、埋込配線器具を壁に埋込配設するための取付枠の前面に取り付けられるプレート本体を備える。プレート本体には開口部とモジュラージャックとケーブル接続部と電源入力端子と内部導電路とインピーダンス補償回路部とが設けられている。開口部は、取付枠に取り付けられた埋込配線器具の前面を露出させる。モジュラージャックには、ネットワークに接続される機器からのLANケーブルに接続されたモジュラープラグが着脱自在に接続される。ケーブル接続部には、壁に配線されたLANケーブルが接続される。内部導電路は、モジュラージャックとケーブル接続部との間を電気的に接続する。インピーダンス補償回路部は、電源入力端子を介して供給される電源を内部導電路に重畳させる。
【0009】
この情報用配線装置において、ケーブル接続部に、壁の表面に露出配線されたLANケーブルが接続されることも好ましい。
【0010】
また本願の情報用配線装置は、埋込配線器具を壁に埋込配設するための取付枠の前面に取り付けられるプレート本体を備える。プレート本体には、取付枠に取り付けられた埋込配線器具の前面を露出させる開口部と、電源入力端子と、電源入力端子に入力された電源が供給されて動作するメディアコンバータとが設けられる。メディアコンバータは、ネットワークに接続される機器からのLANケーブルに接続されたモジュラープラグが着脱自在に接続されるモジュラージャックと、壁に配線されて装置内部に導入された光ファイバーケーブルが接続されるケーブル接続部とを備える。そして、メディアコンバータは、LANケーブルから入力される電気信号を光信号に変換して光ファイバーケーブルに出力し、光ファイバーケーブルから入力される光信号を電気信号に変換してLANケーブルに出力する。
【0011】
この情報用配線装置において、電源入力端子を介して入力される交流電源を直流に変換してインピーダンス補償回路に出力する交流/直流変換部を備えることも好ましい。
【0012】
この情報用配線装置において、電源入力端子を介して入力される交流電源を直流に変換してメディアコンバータに供給する交流/直流変換部を備えることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、情報通信用の配線装置においてPoE給電やメディアコンバータのために必要な電源を容易に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)〜(d)は実施形態1の情報用配線装置の施工手順を模式的に示した説明図である。
【図2】(a)は同上の正面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。
【図3】同上の分解斜視図である。
【図4】同上のプレートブロックの分解斜視図である。
【図5】同上の基板ブロックの分解斜視図である。
【図6】同上のプリント配線板の模式的な平面図である。
【図7】同上のブロック回路図である。
【図8】同上の使用状態図を模式的に示した図である。
【図9】(a)〜(d)は実施形態2の情報用配線装置の施工手順を模式的に示した説明図である。
【図10】同上の使用状態図を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る情報用配線装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態1)
実施形態1の情報用配線装置について図1〜図8を参照して説明する。尚、以下の説明では特に断りがないかぎり、図2(a)に示す向きにおいて上下左右の方向を規定し(壁に取り付けられた状態での上下左右と同じ)、図2(b)の左側を前側、右側を後側として説明を行う。
【0017】
情報用配線装置Aは、図2〜図4に示すように、埋込配線器具用の取付枠50の前面に取り付けられるプレートブロック1と、プレートブロック1の前面側に取り付けられる化粧カバー4とを主要な構成として備えている。また、図7は情報用配線装置Aの概略的なブロック回路図であり、情報用配線装置Aはモジュラージャック5と、ケーブル接続部たる端子台32と、電源入力端子たるジャックコネクタ34と、内部導電路36と、インピーダンス補償回路部37とを備えている。モジュラージャック5には、ネットワークに接続される機器(例えばルータ100)からのLANケーブル60に接続されたRJ45型のモジュラープラグ61が着脱自在に接続される。端子台32には、壁に配線されたLANケーブル70が接続される。ジャックコネクタ34には、例えばAC−DCアダプタ62の出力線63に接続されたプラグコネクタ64が着脱自在に接続される。内部導電路36は、モジュラージャック5が備える後述のコンタクト33aと、端子台32に設けられた対応する圧接端子32eの間を電気的に接続する。インピーダンス補償回路部37は、ジャックコネクタ34を介して供給される電源を内部導電路36に重畳させるために設けられ、電源を接続することによって内部導電路36を含む伝送ラインのインピーダンスに影響を与えないようにインピーダンスの調整を行う。例えばインピーダンス補償回路部37は、伝送ラインと電源との間に直列に接続されるコイルを備え、直流的にはインピーダンスをゼロとして伝送ラインに電源を重畳し、伝送sれる信号の周波数帯域においては伝送ラインから電源側を見たインピーダンスを高インピーダンスとして信号伝送に影響を与えないように、インピーダンスを調整する。
【0018】
ここで、情報用配線装置Aについて説明する前に、情報用配線装置Aが取り付けられる取付枠50について説明を行う。取付枠50は、JIS C 8375で規格化された大角形連用配線器具(埋込配線器具)の取付枠であり、単位寸法(1個モジュール寸法と言う。)の埋込配線器具を上下方向に3個まで並べて取付可能な1連タイプのものである。図4に示す取付枠50は合成樹脂製であって、左右の側辺52a,52bと、両側辺52a,52bの上端間を連結する上側辺55aと、両側辺52a,52bの下端間を連結する下側辺55bとで矩形枠状に形成されている。左右の両側辺52a,52bには、埋込配線器具(図示せず)の左右両側縁に2個ずつ突設された突起(図示せず)と係合する2個で1組の係合孔53が3組ずつ設けられ、一方の側辺52aには他方の側辺52bとの間の距離を変えるように撓むことのできる撓み片54が形成されている。この取付枠50に埋込配線器具を取り付ける際は、先ず取付枠50の後方から左側の側辺52bの係合孔53に埋込配線器具の左側にある突起を挿入する。この状態で、埋込配線器具の右側を前方へ押すと、埋込配線器具の右側にある突起が右側の側辺52aの係合孔53に係合し、埋込配線器具が取付枠50に取り付けられる。一方、取付枠50から埋込配線器具を取り外す際には、撓み片54と側辺52aとの間にマイナスドライバーのような工具を挿入し、この工具をこじて撓み片54を撓ませると、埋込配線器具の突起と係合孔53とが係合した状態が解除されるので、埋込配線器具を取付枠50から容易に取り外すことができる。尚、上側辺55a及び下側辺55bには、壁201に埋設されたスイッチボックス(図示せず)に取付枠50を固定するための固定ネジを通す長孔56が設けられている。また、上側辺55a及び下側辺55bには、プレート本体2をネジ止めするためのプレート固定ネジ29がねじ込まれるネジ孔57が設けられている。
【0019】
次に、情報用配線装置Aの各部の構成を説明する。
【0020】
プレートブロック1は図5に示すようにプレート本体2と基板ブロック3とで構成される。
【0021】
基板ブロック3は、縦長の矩形板状のプリント配線板31を備えている。プリント配線板31の前面上部にはLANケーブルが接続される端子台32(ケーブル接続部)が設けられ、前面下部には後述のモジュラージャック5を構成するコンタクト部33とジャックコネクタ34がそれぞれ設けられている。
【0022】
端子台32は、4対8芯のLANケーブルが挿入される溝32aを左右方向の中央に備え、溝32aの左右両側に前方へ突出する突台部32bがそれぞれ設けられている。各突台部32bには、前側及び左右両側に開放された収納溝32cが4個ずつ設けられ、各々の収納溝32cにはIDC端子と呼ばれる圧接端子32e(図7に示す回路図参照)が配置されている。而して、施工者が、LANケーブル70の8本の芯線70aを対応する収納溝32cに配置した状態で、端子台32の前側にキャップ32dを被せ、キャップ32dを端子台32側に押し込むと、キャップ32dによって各々の芯線70aが対応する圧接端子32eに圧接接続される。キャップ32dが規定の位置まで押し込まれると、左右の突台部32bに設けられた突起がキャップ32dの孔と凹凸結合することによって、キャップ32dが端子台32に保持されており、圧接端子32eに接続された芯線70aが抜けにくくなっている。
【0023】
コンタクト部33は、バネ性を有する導電材料から形成された8極のコンタクト33aと、合成樹脂製の支持枠33bとを備えている。各コンタクト33aの一端側はプリント配線板31に半田付けされ、プリント配線板31の導電パターンからなる内部導電路36を介して端子台32の対応する圧接端子32eに電気的に接続されている。8極のコンタクト33aは左右方向に並べて設けられ、各コンタクト33aの他端側は下側に突出している。支持枠33bは略U形に形成されており、プリント配線板31の前面下部に固定されている。支持枠33bの下側片には、左右方向に一定の間隔をおいて8個のスリットが設けられており、各々のスリットに対応するコンタクト33aの先端側が挿入された状態で8本のコンタクト33aが保持されている。尚、プリント配線板31には位相補償、漏話補償のための回路が設けられている。
【0024】
ジャックコネクタ34は、接続口を下側に向けてプリント配線板31に実装されており、AC−DCアダプタ62からの出力線63に設けられたプラグコネクタ64が着脱自在に接続される。
【0025】
次にプレート本体2について説明する。プレート本体2は合成樹脂成形品からなり、前側から見た外形形状が横方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。プレート本体2の左側部の後面には取付枠50が取り付けられ、プレート本体2の右側部の前面には基板ブロック3が取り付けられる。プレート本体2の左側部には、取付枠50に取り付けられた埋込配線器具(図示せず)の前面を露出させる開口部21が、プレート本体2を前後方向に貫通するように設けられている。プレート本体2の上下両側部には、取付枠50の上側辺55a及び下側辺55bに設けられたネジ孔57にねじ込まれる固定ネジ(図示せず)を挿通させるための挿通孔22cがそれぞれ設けられている。
【0026】
プレート本体2の前面右側には矩形状に窪んだ凹部22が設けられ、この凹部22にプリント配線板31が取り付けられる。凹部22の底部には、プリント配線板31に設けられた丸孔35内に挿入されることによって位置決めを行う円柱状の突起22aと、プリント配線板31の側縁と係止する係止爪22bとが設けられている。
【0027】
プレート本体2の前面の下部右側には、基板ブロック3のコンタクト部33に対応する位置に、モジュラープラグ61が下側から差込接続されるプラグ接続台23が設けられている。プラグ接続台23は上面の略全体が開口した箱型であって、下面にはモジュラープラグ61が差込接続される接続口23aが開口している。ここにおいて、プリント配線板31に設けられたコンタクト部33と、プラグ接続台23とで、モジュラージャック5が構成されている。尚、プレート本体2には、プラグ接続台23の下面を覆う扉24が開閉自在に設けられている。
【0028】
また、プレート本体2の前面の上部右側には、端子台32に接続されるLANケーブル70の外被を両側から保持する一対の挟持片25が設けられ、挟持片25の上側にはLANケーブル70の外被を通すための溝26が設けられている。さらに、プレート本体2の前面には、挟持片25と溝26との間の部位に前方に突出する当接片27が設けられており、この当接片27がLANケーブル70の外被に側方から当接することによって、張力止めが行われようになっている。
【0029】
次に化粧カバー4について説明する。化粧カバー4は合成樹脂成形品からなり、前面側から見た形状が略矩形状の主部41と、主部41の略全周から後方に延びる側部42とを一体に備えている。主部41には、プレート本体2の開口部21と略同じ位置に、取付枠50に取り付けられた埋込配線器具の前面を露出させる矩形の窓孔43が設けられている。また、主部41の右側部には、プレート本体2に取り付けられたプリント配線板31に対応する部位に、前側に突出した突台部44が設けられ、プリント配線板31に実装された部品と干渉しないようになっている。突台部44の下面には、プラグ接続台23の下面の略全体を露出させる溝44aと、ジャックコネクタ34を露出させる丸孔44bとが設けられている。また突台部44の上面には、プレート本体2に設けられた溝26の上側に、LANケーブル70を導入するためのケーブル導入口44cが設けられている。また化粧カバー4の裏面には、プレート本体2に複数設けられた係止穴22dと係止離脱自在に係止する係止爪(図示せず)が設けられており、係止爪を対応する係止穴22dに係止させることによって、化粧カバー4がプレート本体2に取り付けられる。
【0030】
本実施形態の情報用配線装置Aは上記のような構成を有しており、この情報用配線装置Aの施工手順を図1に基づいて説明する。図1(a)に示すように、2個口の電源コンセント80が取り付けられて、前面に化粧カバー81が取り付けられた取付枠50に対して、情報用配線装置Aを取り付ける場合を例に説明を行う。先ず作業者は、化粧カバー81を取り外し、図1(b)に示すように取付枠50を露出させる。取付枠50は、建物の壁201(図1(b)(c)の斜線部分)に設けられた埋込用孔202に取り付けられており、取付枠50に取り付けられた電源コンセント80は後部を埋込用孔202に納めた状態で、壁201に固定されている。この取付枠50の前面側にプリント配線板31が取り付けられたプレート本体2を重ねた状態で、施工者が、挿通孔22cに通した固定ネジ29をネジ孔57にねじ込むと、プレート本体2が取付枠50に取り付けられる(図1(c)参照)。その後、施工者が、壁201に配線されたLANケーブル70を端子台32に結線し、プレート本体2の前面側に化粧カバー4を取り付けると、情報用配線装置Aの組立が完了する(図1(d)参照)。この時、LANケーブル70は、化粧カバー4の上面に設けられたケーブル導入口44cを通して、化粧カバー4内に導入されることになる。この施工状態において、ユーザが電源コンセント80にAC−DCアダプタ62を接続し、AC−DCアダプタ62のプラグコネクタ64を基板ブロック3のジャックコネクタ34に接続すると、内部導電路36及びLANケーブル60,70からなる伝送ラインに直流電圧が重畳される。
【0031】
図7は情報用配線装置Aのブロック回路図、図8は情報用配線装置Aの使用状態の説明図である。図8は光通信を導入したユーザの施工例であり、建物内には光通信ネットワークに接続される光回線終端装置(ONU)111が設置されている。そして、この光回線終端装置111に接続されたルータ100からのLANケーブル60に接続されたモジュラープラグ61が情報用配線装置Aのモジュラージャック5に接続されている。情報用配線装置Aの端子台32に接続されたLANケーブル70は、例えば壁201の上方位置に設置されたハブ110に接続されている。ハブ110は複数のポート110a〜110dを備えている。PoE受電機能を有するポート110aにはLANケーブル70が接続され、他のポート110b,110c,110dにはそれぞれ別々の部屋に配線されるLANケーブル71,72,73が接続されている。LANケーブル71,72,73には、それぞれ、建物内の別の部屋に設置されたLANコンセント120が接続されている。尚、ルータ100及びLANコンセント120には、LANに接続される機器(例えばノート型のパソコン102,103,104)が接続されている。この施工例ではハブ110が分配器のように使用されており、情報用配線装置Aから各所に設けられたLANコンセント120に直接配線する場合に比べてLANケーブルの本数や配線長を短くできる。
【0032】
ここで、ハブ110に電源を供給する必要があるが、情報用配線装置Aでは、AC−DC−DCアダプタ62のプラグコネクタ64をジャックコネクタ34に接続することによって、AC−DCアダプタ62から伝送ラインに電力が重畳されている。したがって、ハブ110がPoE受電機能を備えていれば、情報用配線装置AからLANケーブル70を介してハブ110に電源を供給することができる。図8の施工例ではハブ110がPoE受電機能を有し、LANケーブル70の所定の芯線70aに重畳された直流電圧(例えばDC24V)をDC−DCコンバータ110eによって内部の動作電圧(例えばDC3.3V)に変換し、ポート間の通信を制御する制御回路(図示せず)に供給している。このように、情報用配線装置Aは、ジャックコネクタ34に入力された電源を伝送ラインに重畳しているので、伝送ラインに接続されたハブ110に電源を供給するために、電源線を配線する必要がなくなり、LANケーブル70のみを配線すればよいから、配線施工の手間を省くことができる。尚、ルータ100がPoE受電機能を備えていれば、LANケーブル60を介してルータ100にも電源を供給することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の情報用配線装置Aは、埋込配線器具を壁に埋込配設するための取付枠50の前面に取り付けられるプレート本体2を備える。プレート本体2には開口部21とモジュラージャック5とケーブル接続部(端子台32)と電源入力端子(ジャックコネクタ34)と内部導電路36とインピーダンス補償回路部37とが設けられている。開口部21は、取付枠50に取り付けられた埋込配線器具(例えば電源コンセント80)の前面を露出させる。モジュラージャック5には、ネットワークに接続される機器からのLANケーブル60に接続されたモジュラープラグ61が着脱自在に接続される。ケーブル接続部には、壁に配線されたLANケーブル70が接続される。内部導電路36は、モジュラージャック5とケーブル接続部との間を電気的に接続する。インピーダンス補償回路部37は、電源入力端子を介して供給される電源を内部導電路36に重畳させる。
【0034】
これにより、モジュラージャック5又はケーブル接続部にLANケーブルを介して接続される機器がPoE受電機能を有していれば、これらの機器にLANケーブルを介して給電することができる。したがって、これらの機器に電源を供給するための電線を別途配線する必要が無く、配線施工の手間を省くことができる。
【0035】
また、この情報用配線装置において、ケーブル接続部(端子台32)に、壁の表面に露出配線されたLANケーブル70が接続されることも好ましい。
【0036】
これにより、既築の建物にLANを導入する場合は、LANケーブルが壁の表面に露出配線されることになるが、ケーブル接続部には露出配線されたLANケーブル70が接続されるので、既築の建物への配線にも対応が可能である。
【0037】
尚、本実施形態では、電源コンセント80に接続されたAC−DCアダプタ62によって交流を直流に変換して、情報用配線装置Aに供給しているが、情報用配線装置Aに、交流電源に接続される電源入力端子と、電源入力端子を介して入力される交流電源を直流に変換してインピーダンス補償回路部37に出力する交流/直流変換部を備えてもよい。
【0038】
これにより、情報用配線装置Aの外部にAC−DCアダプタ62を用意する必要がなく、電源コンセント80から情報用配線装置Aに交流電源を直接供給すればよい。
【0039】
(実施形態2)
実施形態2の情報用配線装置について図9及び図10を参照して説明する。
【0040】
実施形態1で説明した情報用配線装置Aは、モジュラージャック5と端子台32を備え、モジュラージャック5と端子台32の間を電気的に接続する内部導電路36に、ジャックコネクタ34に入力された直流電圧を重畳させている。それに対して、本実施形態の情報用配線装置Aは、光ファイバーケーブルにより伝送される光信号とLANケーブルにより伝送される電気信号とを相互に変換する光トランシーバ39(メディアコンバータ)を備えている。そして、ジャックコネクタ34に入力された直流電圧を光トランシーバ39に供給して、光トランシーバ39を動作させている。尚、実施形態1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
情報用配線装置Aは、図9に示すように、埋込配線器具用の取付枠50の前面に取り付けられるプレートブロック1と、プレートブロック1の前面側に取り付けられる化粧カバー4とを主要な構成として備えている。
【0042】
プレートブロック1は、図9(b)に示すようにプレート本体2と基板ブロック3とで構成される。
【0043】
基板ブロック3は、縦長の矩形板状のプリント配線板31を備え、プリント配線板31の前面の下部左側にはジャックコネクタ34が実装され、前面の下部右側には光トランシーバ39が実装されている。
【0044】
光トランシーバ39の上部には、2芯(送信用及び受信用)の光ファイバーケーブル76に接続された接続プラグ77が接続される光コネクタ部39aが設けられている。また光トランシーバ39の下部には、ネットワークに接続される機器からのLANケーブル60に設けられたRJ45型のモジュラープラグ61が着脱自在に接続されるモジュラージャック39bが設けられている。この光トランシーバ39には、ジャックコネクタ34に入力された電源が、プリント配線板31に形成された導電パターンを介して供給されている。そして、光トランシーバ39は、光ファイバーケーブル76から入力される光信号を電気信号に変換してLANケーブル60に出力し、LANケーブル60から入力される電気信号を光信号に変換して光ファイバーケーブル7に出力する。
【0045】
プレート本体2は合成樹脂成形品からなり、前側から見た外形形状が横方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。プレート本体2の左側部の後面には取付枠50が取り付けられ、プレート本体2の右側部の前面には基板ブロック3が取り付けられる。プレート本体2の左側部には、取付枠50に取り付けられた埋込配線器具(例えば電源コンセント80)の前面を露出させる開口部21が、プレート本体2を前後方向に貫通するように設けられている。プレート本体2の上下両側部には、取付枠50のネジ孔57にねじ込まれる固定ネジ29を挿通させる挿通孔22cがそれぞれ設けられている。
【0046】
プレート本体2の前面右側には、光トランシーバ39やジャックコネクタ34などが実装されたプリント配線板31が取り付けられる。プリント配線板31がプレート本体2に取り付けられた状態では、光トランシーバ39のモジュラージャック39b及びジャックコネクタ34は、接続口を下向きにしてプレート本体2の下側縁に沿って配置されている。
【0047】
次に化粧カバー4について説明する。化粧カバー4は合成樹脂成形品からなり、前面側から見た形状が略矩形状の主部41と、主部41の略全周から後方に延びる側部とを一体に備えている。主部41には、プレート本体2の開口部21と略同じ位置に、取付枠50に取り付けられた埋込配線器具の前面を露出させる矩形の窓孔43が設けられている。また、主部41の右側部には、プレート本体2に取り付けられたプリント配線板31に対応する部位に、前側に突出した突台部44が設けられ、プリント配線板31に実装された部品と干渉しないようになっている。突台部44の下面には、モジュラージャック39b及びジャックコネクタ34を露出させる開口が設けられている。突台部44の上面には、光ファイバーケーブル76をカバー内部に導入するための導入口44dが設けられている。また、突台部44の内側には、光ファイバーケーブル76の余長分が巻かれた状態で収納されるスペースが設けられている。
【0048】
本実施形態の情報用配線装置Aは上記のような構成を有しており、この情報用配線装置Aの施工手順を図9に基づいて説明する。図9(a)に示すように、2個口の電源コンセント80が取り付けられて、前面に化粧カバー81が取り付けられた取付枠50に対して、情報用配線装置Aを取り付ける場合を例に説明を行う。先ず作業者は、化粧カバー81を取り外し、図9(b)に示すように取付枠50を露出させる。取付枠50は、建物の壁201に設けられた埋込用孔202に取り付けられており、取付枠50に取り付けられた電源コンセント80は後部を埋込用孔202に納めた状態で、壁201に固定されている。この取付枠50の前面側にプリント配線板31が取り付けられたプレート本体2を重ねた状態で、施工者が、挿通孔22cに通した固定ネジ29をネジ孔57にねじ込むと、プレート本体2が取付枠50に取り付けられる(図9(c)参照)。その後、施工者が、壁に配線された光ファイバーケーブル76の接続プラグ77を光トランシーバ39の光コネクタ部39aに接続し、プレート本体2の前面側に化粧カバー4を取り付けると、情報用配線装置Aの組立が完了する(図9(d)参照)。この時、光ファイバーケーブル70は、化粧カバー4の上面に設けられたケーブル導入口44dを通して、化粧カバー4内に導入される。なお光ファイバーケーブル70の取り付けには、端末処理時にある程度の長さが必要であり、そのため、ある程度の余長が生じるが、その余長分は化粧カバー4の内部に収納されることになる。また、プリント配線板31に実装された光トランシーバ39のモジュラージャック39b及びジャックコネクタ34は、化粧カバー4の下部に設けられた開口(図示せず)を通して外部に露出する。
【0049】
この施工状態において、ユーザが電源コンセント80にAC−DCアダプタ62を接続し、AC−DCアダプタ62のプラグコネクタ64を基板ブロック3のジャックコネクタ34に接続すると、ジャックコネクタ34に入力された電源が光トランシーバ39に供給される。そして、光トランシーバ39は、光ファイバーケーブル76を介して伝送される光信号と、LANケーブル60を介して伝送される電気信号との変換(光信号→電気信号、電気信号→光信号)を相互に行う。
【0050】
尚、図9に示す情報用配線装置Aには光トランシーバ39が1個しか設けられていないが、図10に示すように光トランシーバ39が複数(図示例では3個)設けられていてもよく、複数の光トランシーバ39にはジャックコネクタ34に入力された電源がそれぞれ供給される。図10は光通信を導入したユーザの施工例であり、建物内には光通信ネットワークに接続される光回線終端装置(ONU)111が設置されている。そして、この光回線終端装置111に接続されたルータ100の複数(例えば3個)のポートにLANケーブル60を介して情報用配線装置Aの光トランシーバ39がそれぞれ接続されている。各々の光トランシーバ39には光ファイバーケーブル76が接続されている。各光ファイバーケーブル76は建物内の各部屋に配線され、各部屋に設置された別の情報用配線装置Aの光トランシーバ39に接続されており、光トランシーバ39のモジュラージャック39bに接続されたLAN機器(例えばコンピュータやハブなどの通信機器)とルータ100との間で通信を行うことができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の情報用配線装置Aは、埋込配線器具(例えば電源コンセント80)を壁201に埋込配設するための取付枠50の前面に取り付けられるプレート本体2を備える。プレート本体2には、取付枠50に取り付けられた埋込配線器具の前面を露出させる開口部21と、電源入力端子(ジャックコネクタ34)と、電源入力端子に入力された電源が供給されるメディアコンバータ(光トランシーバ39)とが設けられる。メディアコンバータは、ネットワークに接続される機器からのLANケーブル60に接続されたモジュラープラグ61が着脱自在に接続されるモジュラージャック39bと、壁201に配線されて装置内部に導入された光ファイバーケーブル76が接続されるケーブル接続部(光コネクタ部39a)とを備える。そして、メディアコンバータは、LANケーブル60から入力される電気信号を光信号に変換して光ファイバーケーブル76に出力し、光ファイバーケーブル76から入力される光信号を電気信号に変換してLANケーブル60に出力する。
【0052】
これにより、電源コンセントが取り付けられた取付枠50にプレート本体2を取り付けることで、プレート本体2に設けられたメディアコンバータに対して電源コンセント80から電源を供給することができる。したがって、メディアコンバータに電源を供給するための電線を配線する手間が省け、配線施工の手間を省くことができる。
【0053】
尚、本実施形態では、電源コンセント80に接続されたAC−DCアダプタ62によって交流を直流に変換して、情報用配線装置Aに供給しているが、情報用配線装置Aに、交流電源に接続される電源入力端子と、電源入力端子を介して入力される交流電源を直流に変換してメディアコンバータに出力する交流/直流変換部を備えてもよい。
【0054】
これにより、情報用配線装置Aの外部にAC−DCアダプタ62を用意する必要がなく、電源コンセント80から情報用配線装置Aに交流電源を直接供給すればよい。
【符号の説明】
【0055】
A 情報用配線装置
2 プレート本体
5 モジュラージャック
21 開口部
31 プリント配線板
32 端子台(ケーブル接続部)
34 ジャックコネクタ(電源入力端子)
36 内部導電路
37 インピーダンス補償回路部
50 取付枠
60 LANケーブル
61 モジュラープラグ
70 LANケーブル
80 電源コンセント(埋込配線器具)
201 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込配線器具を壁に埋込配設するための取付枠の前面に取り付けられるプレート本体を備え、
前記プレート本体には、前記取付枠に取り付けられた前記埋込配線器具の前面を露出させる開口部と、ネットワークに接続される機器からのLANケーブルに接続されたモジュラープラグが着脱自在に接続されるモジュラージャックと、前記壁に配線されたLANケーブルが接続されるケーブル接続部と、電源入力端子と、前記モジュラージャックと前記ケーブル接続部の間を電気的に接続する内部導電路と、前記電源入力端子を介して供給される電源を前記内部導電路に重畳させるためのインピーダンス補償回路部とが設けられたことを特徴とする情報用配線装置。
【請求項2】
前記ケーブル接続部に、前記壁の表面に露出配線されたLANケーブルが接続されることを特徴とする請求項1記載の情報用配線装置。
【請求項3】
埋込配線器具を壁に埋込配設するための取付枠の前面に取り付けられるプレート本体を備え、
前記プレート本体には、前記取付枠に取り付けられた前記埋込配線器具の前面を露出させる開口部と、電源入力端子と、前記電源入力端子に入力された電源が供給されて動作するメディアコンバータとが設けられ、
前記メディアコンバータは、ネットワークに接続される機器からのLANケーブルに接続されたモジュラープラグが着脱自在に接続されるモジュラージャックと、前記壁に配線されて装置内部に導入された光ファイバーケーブルが接続されるケーブル接続部とを備え、前記LANケーブルから入力される電気信号を光信号に変換して前記光ファイバーケーブルに出力し、前記光ファイバーケーブルから入力される光信号を電気信号に変換して前記LANケーブルに出力することを特徴とする情報用配線装置。
【請求項4】
前記電源入力端子を介して入力される交流電源を直流に変換して前記インピーダンス補償回路に出力する交流/直流変換部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の情報用配線装置。
【請求項5】
前記電源入力端子を介して入力される交流電源を直流に変換して前記メディアコンバータに供給する交流/直流変換部を備えたことを特徴とする請求項3記載の情報用配線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−70464(P2013−70464A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205537(P2011−205537)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】