説明

情報表示部を有する手摺及びその取付方法

【課題】点字等の情報表示部を有するプレートを、段差のない状態で、既存の手摺に対して容易かつ強固に組み付けできるようにすること。
【解決手段】点字等の情報表示部を有する手摺構成体10と手摺本体1とを接続する手摺において、手摺構成体は、連結基部21の一端に挿入部23を有する一対のベース部材20と、挿入部の外周面に拡開可能に配設される複数のフィットブロック32を有する拡開部材30と、挿入部を貫通するボルト41と、拡開部材の先端に当接するナット42とからなる締付部材40と、ベース部材同士を連結する連結ねじ50と、ベース部材の上面部を被覆する表面に点字等の情報表示部を有する表示プレート70と、ベース部材の下面部を被覆し、固定ねじ90を介して表示部プレートに固定される下面プレート80とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば点字等の情報表示部を有する手摺及びその取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば駅等の公共施設においては、階段手摺等に点字等の情報表示部を設けて、視覚障害者に対する情報の提供を行っている。
【0003】
しかし、従来のものは、手摺を摺って歩く動作に支障のないように薄肉の金属板やシール等に点字を刻印した情報表示プレートを手摺の表面にリベット等で取り付けるため、使用するうちに剥がれた状態や、金属板の端部が跳ね上がった状態となって、利用者が負傷する危険性の虞がある。また、長期間使用するうちに点字部が摩耗して、刻印された点字情報が十分に伝達されないという問題がある。そのため、損傷等を受けた古い情報表示プレートを新規の情報表示プレートと交換する必要がある。
【0004】
また、表面に点字が形成された蓋体を被着した案内構成部を、ジョイント部材を介して手摺本体に組み込むか、あるいは、上記案内構成部の両端において手摺本体を内挿する状態で組み込む、案内用手摺が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3621903号公報(特許請求の範囲、図1,図3,図8,図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の金属板やシール等に点字を刻印した情報表示プレートを手摺の表面に取り付けるものにおいては、リベット等を切断して古い情報表示プレートを取り外した後に、新規の情報表示プレートを取り付けるため、交換作業に手間を要する。しかも、交換後においても、上述したように、情報表示プレートの剥がれや跳ね上がり等の問題は解消されないという問題がある。
【0006】
これに対して、特許文献1に記載の技術は、情報表示プレート自体を交換する必要はないが、案内構成部と手摺本体とのジョイント部に段差が生じ、また、案内構成部の開口部に、表面に点字が形成された蓋体(情報表示プレート)を被着するため、案内構成部と情報表示プレートとの間に段差が生じる。したがって、視覚障害者に対して安全性が十分でない。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術においては、情報表示プレートを被着した案内構成部を、ジョイント部材を介して手摺本体に組み込むか、あるいは、上記案内構成部の両端において手摺本体を内挿する状態で組み込んで手摺を構成するため、手摺本体と案内構成部との心出し等の位置合せに手間を要するばかりか、手摺本体と案内構成部の接合部に隙間が生じ、強固な固定が難しいという問題がある。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、段差のない状態で、点字等の情報表示部を有するプレートを手摺に組み込むことができると共に、既存の手摺に対しても容易に、かつ、強固に組み付けできるようにした情報表示部を有する手摺及びその取付方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、点字等の情報表示部を有する手摺構成体と、この手摺構成体を接続する中空状の手摺本体とを具備する情報表示部を有する手摺において、 上記手摺構成体は、 連結基部の一端に連設され、先端に上記手摺本体の開口部内に挿入される挿入部を有する一対のベース部材と、 上記挿入部の外周面に拡開可能に配設される複数のフィットブロックを有する拡開部材と、 上記ベース部材の挿入部を貫通するボルトと、上記拡開部材の先端に当接し、上記ボルトと螺合するナットとからなる締付部材と、 上記ベース部材の連結基部同士を連結する連結部材と、 手摺の一部を構成すべく、上記ベース部材の上面部を被覆する略半筒状に形成され、表面に点字等の情報表示部を有する表示プレートと、 手摺の一部を構成すべく、上記ベース部材の下面部を被覆する略半筒状に形成され、固定部材を介して上記表示部プレートに固定される下面プレートと、を具備することを特徴とする。
【0010】
このように構成することにより、一対のベース部材は、手摺本体の開口部内に容易に位置決め(心出し)されて挿入固定され、連結されたベース部材と手摺本体に、手摺の一部を構成する表面に点字等の情報表示部を有する表示プレートと、下面プレートとを固定することができる。
【0011】
請求項1記載の発明において、互いに連結された上記ベース部材と上記手摺本体との間に形成される空間内に挿入される内挿部材を更に具備し、上記ベース部材は、断面略半円筒状に形成される連結基部の一端に、円柱部を介して挿入部が形成され、上記内挿部材は、上記連結基部と共働して、上記円柱部と同じ外径の円形断面を形成すべく略半円柱状に形成される方が好ましい(請求項2)。
【0012】
このように構成することにより、連結されたベース部材と手摺本体との間の空間を内挿部材で塞いだ状態で、上記表示プレートと下面プレートとを固定することができる。また、連結基部を断面略半円筒状に形成し、内挿部材を略半円柱状に形成することで、連結基部同士を連結して断面を円形状にすることができると共に、連結基部と内挿部材とが共働して、円柱部と同じ外径の円形断面を形成することができる。
【0013】
また、請求項1記載の発明において、好ましくは、上記挿入部は先端に向かって狭小テーパ状に形成され、上記拡開部材を構成する複数のフィットブロックは、上記挿入部のテーパ面に摺接される傾斜面を有すると共に、傾斜面をテーパ面に圧接する弾性力を付勢するばね部材によって拘束される構成である方がよい(請求項3)。また、上記ベース部材の挿入部は、ベース部材の外周に適宜間隔をおいて設けられた軸方向に沿う複数のガイド溝内に嵌挿される複数の楔状板部材によって構成され、上記拡開部材を構成する複数のフィットブロックは、上記ガイド溝内に嵌挿され、かつ、上記楔状板部材のテーパ面に摺接される傾斜面を有すると共に、傾斜面をテーパ面に圧接する弾性力を付勢するばね部材によって拘束される構成である方がよい(請求項4)。
【0014】
このように構成することにより、締付部材を構成するボルトが、ベース部材の挿入部を貫通して、拡開部材の先端に当接されるナットに螺合して締め付けることで、ばね部材の弾性力に抗してフィットブロックが挿入部のテーパ面の拡径側に移動して、手摺本体の内周面に圧接される。
【0015】
また、上記表示プレートの内面に雌ねじ部を設け、上記下面プレートの表面に、貫通孔を有する凹所を設け、貫通孔を介して上記雌ねじ部に螺合される固定部材の頭部を上記凹所内に収容する方が好ましい(請求項5)。この場合、固定部材が悪戯によって容易に操作されないようにする方が好ましく、例えば固定部材の頭部に、中心部に突起を有する六角穴を設けて、この形状に合致する係合部を有する特殊な工具のみによって操作できるようにすることができる。
【0016】
このように構成することにより、表示プレートと下面プレートを固定する固定部材の頭部を、下面プレートに設けられた凹所内に収容して、下面プレートの表面に突出部をなくすことができる。
【0017】
また、請求項6記載の発明は、請求項1,3ないし5のいずれかに記載の情報表示部を有する手摺を取り付ける方法であって、 上記手摺本体の2箇所を切断して、上記手摺構成体を取り付けるための空間を形成し、 上記手摺構成体を構成する一対のベース部材の先端部に連設される挿入部及びこの挿入部の外周面に拡開可能に配設される拡開部材を、上記手摺本体の開口部内に挿入し、 上記ベース部材の挿入部を貫通するボルトと、拡開部材の先端に当接するナットとからなる締付部材の締め付けによって上記拡開部材を拡開移動して、ベース部材を手摺本体に固定し、 上記手摺本体に固定された一対の上記ベース部材同士を連結部材によって連結し、 上記ベース部材の上面部を、表面に点字等の情報表示部を有する略半筒状の表示プレートによって被覆すると共に、上記ベース部材の下面部を、略半筒状の下面プレートによって被覆し、固定部材によって上記表示プレートと下面プレートを固定する、ことを特徴とする。
【0018】
このように構成することにより、ベース部材を、手摺本体の開口部内に容易に位置決め(心出し)して挿入した後、締付部材の締め付けにより拡開部材を拡開移動してベース部材を手摺本体に固定した状態で、手摺の一部を構成する表面に点字等の情報表示部を有する表示プレートと、下面プレートを固定部材によって固定して、手摺構成体と手摺本体を段差なく接続することができる。
【0019】
また、請求項6記載の発明において、連結された上記ベース部材と上記手摺本体との間に形成された空間内に、内挿部材を挿入して空間を塞ぎ、上記ベース部材と内挿部材の上面部を、上記表示プレートによって被覆すると共に、上記ベース部材と内挿部材の下面部を、上記下面プレートによって被覆し、固定部材によって上記表示プレートと下面プレートを固定するようにしてもよい(請求項7)。
【0020】
このように構成することにより、連結されたベース部材と手摺本体との間の空間を、内挿部材で塞いだ状態で、手摺の一部を構成する表面に点字等の情報表示部を有する表示プレートと、下面プレートを固定部材によって固定して、手摺構成体と手摺本体を段差なく接続することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上に詳述したように、この発明の情報表示部を有する手摺によれば、上記のように構成されているので、以下の効果が得られる。
【0022】
(1)請求項1,6記載の発明によれば、表面に点字等の情報表示部を有する手摺構成体のベース部材を、手摺本体の開口部内に容易に位置決め(心出し)して挿入した後、締付部材の締め付けにより拡開部材を拡開移動してベース部材を手摺本体に固定した状態で、手摺の一部を構成する表面に点字等の情報表示部を有する表示プレートと、下面プレートを固定するので、表面に点字等の情報表示部を有する手摺構成体と手摺本体を段差のない状態で組み付けることができると共に、既存の手摺に対しても、点字等の情報表示部を有する手摺構成体を容易に、かつ、強固に手摺本体に取り付けることができる。
【0023】
(2)請求項2,7記載の発明によれば、連結されたベース部材と手摺本体との間の空間を内挿部材で塞いだ状態で、上記表示プレートと下面プレートとを固定することができるので、上記(1)に加えて更に手摺構成体の強度を強固にすることができる。
【0024】
(3)請求項3,4記載の発明によれば、締付部材を構成するボルトが、ベース部材の挿入部を貫通して、拡開部材の先端に当接されるナットに螺合して締め付けることで、ばね部材の弾性力に抗してフィットブロックが挿入部のテーパ面の拡径側に移動して、手摺本体の内周面に圧接されるので、上記(1),(2)に加えて、更にベース部材と手摺本体との固定を容易かつ強固にすることができる。
【0025】
(4)請求項5記載の発明によれば、表示プレートと下面プレートを固定する固定部材の頭部を、下面プレートに設けられた凹所内に収容して、下面プレートの表面に突出部をなくすことができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更に利用者に対する安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、この発明の最良の実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、この発明に係る情報表示部を有する手摺の要部を示す斜視図、図2は、上記手摺の断面図、図3は、図2の要部拡大断面図(a)、(a)のI−I線に沿う断面図(b)、(a)のII−II線に沿う断面図(c)及び(a)のIII−III線に沿う断面図(d)である。
【0028】
この発明に係る情報表示部を有する手摺は、例えば駅等の公共施設の階段や通路等に設置される手摺本体1の一部に、点字等の情報表示部11を有する手摺構成体10を組み込んで、視覚障害者に対する情報の提供を行えるようにした手摺である。
【0029】
この場合、手摺本体1は、例えばステンレス製のパイプにて形成されており、図示しないブラケットによって壁面に固定されている。
【0030】
上記手摺構成体10は、図2ないし図8に示すように、手摺本体1の開口部2内に一端が挿入され、拡開部材30及び締付部材40によって固定される一対のベース部材20と、連結部材例えば連結ねじ50によって互いに連結されたベース部材20と手摺本体1との間に形成された空間61を塞ぐ内挿部材60と、ベース部材20と内挿部材60の上面部を被覆する点字等の情報表示部11を有する表示プレート70と、ベース部材20と内挿部材60の下面部を被覆する下面プレート80とで主に構成されている。
【0031】
上記ベース部材20は、例えばアルミニウム合金製鋳物にて形成されており、断面略半円筒状に形成される連結基部21の一端に、手摺本体1の内径と同じ外径の円柱部22を介して先端に向かって狭小テーパ状をなす略截頭円錐状の挿入部23が形成され、円柱部22及び挿入部23には連結基部21の中心部の内方円弧溝21aに連通する貫通孔24が中心軸線上に設けられている。なお、挿入部23の基端側の大径部には平行外周面26が形成されている。この平行外周面26には、手摺構成体10と手摺本体1との隙間を塞ぐために、ドーナツ板状のスペーサ27が嵌装されるようになっている(図2,図3参照)。
【0032】
また、両ベース部材20の連結基部21における端部から内方側の部位には、連結部材である連結ねじ50が貫通する取付孔28aが穿設され、挿入部23と反対側の端部付近の部位には、連結ねじ50が螺合するねじ孔28bが刻設されている。
【0033】
なお、ベース部材20の円柱部22には、上記取付孔28a及びねじ孔28bと直交する方向の貫通孔25Aが穿設されている。また、ベース部材20の連結基部21には、貫通孔25Aと平行であって、両連結基部21が連結された際に貫通孔25Aと同径の孔25Bを形成する半円溝25aが形成されている。これら貫通孔25Aと半円溝25aによって形成される孔25Bは、後述する固定部材である固定ねじ90を案内するために設けられたものである。
【0034】
上記拡開部材30は、挿入部23のテーパ面23aに回転不能に摺接される傾斜面31を有する複数例えば4個のフィットブロック32と、各フィットブロック32の傾斜面31をテーパ面23aに圧接する弾性力を付勢して拘束するばね部材例えば環状ばね33と、を具備している。この場合、各フィットブロック32の外周の中間部には、互いに周方向に連通する係止溝34が設けられており、各フィットブロック32の係止溝34に環状ばね33が嵌挿されて、4個のフィットブロック32が拘束されている。このように構成される拡開部材30は、締付部材40の締付作用によって、各フィットブロック32が環状ばね33の弾性力に抗して拡開移動して手摺本体1の開口部2内に固定される。
【0035】
上記締付部材40は、ベース部材20に設けられた貫通孔24を貫通する締付ボルト41と、拡開部材30の先端に当接する鍔43を有する鍔付きナット42とで構成されている。なお、締付ボルト41の頭部頂面には六角穴44が設けられている。図6に示すように、締付ボルト41の頭部に設けられた六角穴44に係合する六角レンチ45をもって締付ボルト41を鍔付きナット42に螺合することによって、各フィットブロック32が環状ばね33の弾性力に抗して挿入部23のテーパ面23aの拡径側に沿って拡開移動して、各フィットブロック32の外周面が手摺本体1の開口部2の内周面に圧接される。この拡開作用によってベース部材20の挿入部23が手摺本体1の開口部2内に固定される。
【0036】
上記のようにして固定された一対のベース部材20の連結基部21は、上記取付孔28aとねじ孔28bが合致された状態で、図7に示すように、取付孔28aを貫通する連結ねじ50をねじ孔28bに螺合することによって連結固定される。
【0037】
上記のようにして、互いに連結されたベース部材20と手摺本体1との間に形成される空間61内に内挿部材60が挿入されて、空間61が塞がれる。この場合、内挿部材60は、図3(c)及び図8に示すように、略半円柱状の基部62の平坦面62aに、断面略半円筒状に形成される連結基部21の内方円弧溝21a内に嵌合する円弧凸条63が突設されている。このように形成される内挿部材60の円弧凸条63をベース部材20の内方円弧溝21a内に嵌合することで、ベース部材20に対する内挿部材60の位置決めを容易にすることができると共に、連結基部21と内挿部材60とが共働して中実円形断面が形成される。これにより、この中実円形断面の外周面に被着される表示プレート70と下面プレート80の補強を図っている(図3(d)参照)。なお、この場合、連結基部21と内挿部材60とが共働して形成する中実円形断面の外径は、円柱部22と同じ外径であって、手摺本体1の外径より表示プレート70及び下面プレート80の厚み分、小径に形成されている。このように形成するすることにより、中実円形断面の外周面に表示プレート70及び下面プレート80が被着された状態で、手摺本体1と手摺構成体10の外径が同一になる。
【0038】
上記ベース部材20と内挿部材60の上面部を被覆する表示プレート70は、手摺の一部を構成すべく手摺本体1と同一の曲率を有する略半筒状に形成されている。この表示プレート70の表面には、点字等の情報表示部11が施されている。また、表示プレート70の下面における両端部及び中間部の3箇所には雌ねじ部であるナット71が溶接等の固定手段によって固着されている。
【0039】
一方、ベース部材20と内挿部材60の下面部を被覆する下面プレート80は、手摺の一部を構成すべく手摺本体1と同一の曲率を有する略半筒状に形成されている。この下面プレート80の表面には、底部に貫通孔81を有する拡開テーパ状の凹所82が設けられている。
【0040】
上記のように構成される表示プレート70と下面プレート80は、ベース部材20と内挿部材60の上下面部を被覆した状態で、下面プレート80の貫通孔81及びベース部材20の連結基部21に設けられた貫通孔25A,孔25Bを貫通し、ナット71に螺合される固定部材である固定ねじ90によって固定されている。
【0041】
この場合、固定ねじ90は皿ねじによって形成されており、截頭円錐状の頭部91は下面プレート80に設けられた凹所82内に収容されて、外部に突出しないようになっている。また、固定ねじ90が悪戯によって容易に操作されないようにする方が好ましい。例えば、図10に示すように、固定ねじ90の頭部91に、中心部に突起92を有する六角穴93を設ける一方、固定ねじ90の頭部91の形状に合致する係合穴101を有する特殊な六角レンチ100等の工具のみによって、固定ねじ90を操作できるようにする方がよい。
【0042】
上記のように構成されるこの発明に係る情報表示部を有する手摺によれば、点字等の情報表示部11を有する表示プレート70と下面プレート80を、手摺本体1との間に段差がない状態で取り付けることができるので、利用者が手摺を摺って歩行する動作に支障をきたすのを防止することができる。
【0043】
次に、既存の手摺本体1に手摺構成体10を取り付ける手順の一例について、図4ないし図9を参照して説明する。
【0044】
まず、既存の手摺本体1の所定位置の2箇所を切断して、手摺構成体10を取り付けるための取付空間3を形成する(図4参照)。
【0045】
次に、一方のベース部材20の挿入部23の外面に、スペーサ27と、環状ばね33によって拘束された複数のフィットブロック32を嵌装する。次に、フィットブロック32の先端に鍔付きナット42を当接した状態で、挿入部23を貫通する締付ボルト41を鍔付きナット42に緩く螺合する。これにより、挿入部23の外周面にフィットブロック32が仮固定される。この状態では、フィットブロック32は、挿入部23のテーパ面23aに回転不能に摺接される。
【0046】
次に、挿入部23とフィットブロック32を、手摺本体1の開口部2内に挿入した状態で、六角レンチ45を用いて、鍔付きナット42に螺合されている締付ボルト41を締め付けると、各フィットブロック32が環状ばね33の弾性力に抗して挿入部23のテーパ面23aの拡径側に沿って拡開移動して、各フィットブロック32の外周面が手摺本体1の開口部2の内周面に圧接される。この拡開作用によってベース部材20の挿入部23を手摺本体1の開口部2内に固定する。同様の操作を行って、両ベース部材20を手摺本体1に固定する(図5及び図6参照)。このように、締付ボルト41を締め付けることによって、フィットブロック32が挿入部23のテーパ面23aに沿って拡開移動するので、ベース部材20の手摺本体1に対する心出しが容易であり、しかも、手摺本体1に対してベース部材20を強固に固定することができる。
【0047】
次に、手摺本体1に固定された一対のベース部材20の連結基部21の平坦面側同士を当接すると共に、取付孔28aとねじ孔28bとを合致した状態で、取付孔28aを貫通する連結ねじ50をねじ孔28bに螺合してベース部材20同士を連結固定する(図7参照)。この際、ベース部材20の円柱部22と手摺本体1の間に隙間が生じる場合は、隙間に応じて厚さの異なるスペーサ27を用いて隙間を塞ぐようにすればよい。そのために、厚さの異なる数種類のスペーサ27を用意しておく必要がある。
【0048】
次に、連結されたベース部材20と手摺本体1との間に形成された空間61内に、内挿部材60を挿入して空間61を塞ぐ(図8参照)。このとき、内挿部材60の円弧凸条63をベース部材20の内方円弧溝21a内に嵌合することで、ベース部材20に対する内挿部材60の位置決めが容易となり、また、連結基部21と内挿部材60とが共働して中実円形断面が形成される(図3(d)参照)。
【0049】
内挿部材60によって空間61を塞いだ後、ベース部材20と内挿部材60の上面部を、表示プレート70によって被覆すると共に、ベース部材20と内挿部材60の下面部を、下面プレート80によって被覆する。そして、下方から固定ねじ90を、下面プレート80の貫通孔81及びベース部材20の連結基部21に設けられた貫通孔25A,孔25Bに貫通し、特殊な六角レンチ100を用いて、固定ねじ90をナット71に螺合して、表示プレート70と下面プレート80をベース部材20と内挿部材60に固定する(図9参照)。
【0050】
なお、点字等の情報表示部11が摩耗等によって交換が必要となった場合は、上記と逆の操作によって固定ねじ90とナット71との螺合を解除して、古い表示プレート70を取り外した後、新規の表示プレート70を同様な操作によって固定すればよい。なお、下面プレート80に損傷が生じた場合は、必要に応じて表示プレート70と下面プレート80を交換してもよい。
【0051】
なお、上記実施形態では、ベース部材20に連設される略截頭円錐状の挿入部23のテーパ面23aに、拡開部材30を構成するフィットブロック32を摺接させる構造について説明したが、この発明は、この構造に限定されるものではない。
【0052】
例えば、図11ないし図14に示すように、ベース部材200の連結基部210の一端に連設される挿入部230を、ベース部材200の外周に適宜間隔をおいて設けられた軸方向に沿う複数(図面では6個)のガイド溝201内に嵌挿される複数(6個)の楔状板部材231によって構成してもよい。これに対応させて、拡開部材300を構成する複数のフィットブロック320を、ガイド溝201内に嵌挿され、かつ、楔状板部材231のテーパ面232に摺接される傾斜面310を有すると共に、傾斜面310をテーパ面232に圧接する弾性力を付勢するばね部材例えば環状ばね330によって拘束する構成とする。
【0053】
この第2実施形態において、楔状板部材231は、先端部にベース部材200の先端面に当接する係止片233がテーパ面232と反対側の平坦下面234側に突設されている。
【0054】
また、フィットブロック320は、楔状板部材231に摺接しない端部における傾斜面310と反対側の平坦上面322に、環状ばね330を嵌挿する係止溝340が設けられ、かつ、先端部には段部323を介して、上記鍔付きナット42の鍔部43が当接可能な当接片324が突設されている。
【0055】
なお、この実施形態では、半円筒状の連結基部210の一端部に半円筒状の円柱部半体221が連結ねじ222によって連結されて、円柱部220と挿入部230の一部が形成され、かつ、貫通孔240が形成されている。
【0056】
この場合、連結基部210と円柱部半体221は、それぞれアルミニウム合金製の押出形材によって形成されている。また、連結基部210と円柱部半体221の外周面には、上記ガイド溝201がそれぞれ3個設けられている。なお、円柱部半体221の平坦面には、連結基部210の内方円弧溝211内に摺動可能に嵌合する円弧溝付き凸条223が設けられている。また、連結基部210と円柱部半体221の対向する平坦面には、互いに嵌合する断面略L字状の嵌合凹条202と嵌合凸条203が左右非対称に設けられている。これら嵌合凹条202と嵌合凸条203を嵌合するには、連結基部210と円柱部半体221とを当接して、嵌合凹条202内に嵌合凸条203を挿入した後、連結基部210と円柱部半体221とを相対的に平行移動して、嵌合凹条202と嵌合凸条203を嵌合する。
【0057】
また、この実施形態においては、内挿部材600も連結基部210と同じ断面形状を有するアルミニウム合金製押出形材によって形成されている。すなわち、内挿部材600は、連結基部210を所定の寸法に切断して形成されており、平坦面に内方円弧溝211が設けられると共に、内方円弧溝211の両側に嵌合凹条202と嵌合凸条203が設けられている。したがって、内挿部材600は、連結基部210に当接して、嵌合凹条202内に嵌合凸条203を挿入した後、連結基部210と内挿部材600とを相対的に平行移動して、嵌合凹条202と嵌合凸条203を嵌合する。なお、嵌合凹条202と嵌合凸条203に代えて、第1実施形態と同様に、内挿部材600の平坦面に、連結基部210の内方円弧溝211に嵌合する円弧凸条を設けてもよい。
【0058】
この実施形態の取付手順は、ベース部材200における挿入部230の楔状板部材231のテーパ面232に、フィットブロック320の傾斜面310を回転不能に摺接すると共に、環状ばね330の弾性力の付勢によって拘束した状態にして拡開部材300をセットする。そして、フィットブロック320に設けられた当接片324に鍔付きナット42の鍔部43を当接する一方、貫通孔240を貫通する締付ボルト41を鍔付きナット42に緩く嵌合してフィットブロック320を仮固定する。
【0059】
次に、挿入部230とフィットブロック320を、手摺本体1の開口部2内に挿入した状態で、六角レンチ45を用いて、鍔付きナット42に螺合されている締付ボルト41を締め付けると、各フィットブロック320が環状ばね330の弾性力に抗して挿入部230のテーパ面232の拡径側に沿って拡開移動して、各フィットブロック320の外周面が手摺本体1の開口部2の内周面に圧接される。この拡開作用によってベース部材200の挿入部230を手摺本体1の開口部2内に固定することができる。同様の操作を行って、両ベース部材200を手摺本体1に固定した後、手摺本体1に固定された一対のベース部材200の連結基部210の平坦面側同士を当接すると共に、取付孔28aとねじ孔28bとを合致した状態で、取付孔28aを貫通する連結ねじ50をねじ孔28bに螺合してベース部材20同士を連結固定する。この際、ベース部材200の円柱部220と手摺本体1の間に隙間が生じる場合は、隙間に応じて厚さの異なるスペーサ27を用いて隙間を塞ぐようにすればよい。
【0060】
以下、第1実施形態と同様に、連結されたベース部材200と手摺本体1との間に形成された空間61内に、内挿部材60を挿入して空間61を塞ぐ。このとき、内挿部材600を連結基部210に当接して、嵌合凹条202内に嵌合凸条203を挿入した後、連結基部210と内挿部材600とを相対的に平行移動して、嵌合凹条202と嵌合凸条203を嵌合する。これにより、ベース部材200に対する内挿部材600の位置決めが容易となり、また、連結基部210と内挿部材600とが共働して中実円形断面が形成される。
【0061】
内挿部材600によって空間61を塞いだ後、第1実施形態と同様に、ベース部材200と内挿部材600の上面部を、表示プレート70によって被覆すると共に、ベース部材200と内挿部材600の下面部を、下面プレート80によって被覆する。そして、下方から固定ねじ90を、下面プレート80の貫通孔81及びベース部材20の連結基部21に設けられた貫通孔25A,孔25Bに貫通し、特殊な六角レンチ(図示せず)を用いて、固定ねじ90をナット71に螺合して、表示プレート70と下面プレート80をベース部材20と内挿部材60に固定する。
【0062】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0063】
なお、上記実施形態では、互いに連結されたベース部材20,200と手摺本体1との間に形成された空間61内に内挿部材60,600を挿入して、空間61を塞いだ状態で、表示プレート70と下面プレート80を固定する場合について説明したが、ベース部材20,200を、例えば肉厚にして強度をもたせた場合には、内挿部材60,600を用いずに表示プレート70と下面プレート80を固定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明に係る情報表示部を有する手摺の第1実施形態の取付状態を示す斜視図である。
【図2】上記手摺の断面図である。
【図3】上記手摺の要部を示す断面図(a)、(a)のI−I線に沿う断面図(b)、(a)のII−II線に沿う断面図(c)及び(a)のIII−III線に沿う断面図(d)である。
【図4】この発明におけるベース部材の一方を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図5】上記ベース部材の他方を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図6】上記ベース部材を手摺本体に固定する状態を示す斜視図である。
【図7】上記ベース部材同士を連結する状態を示す斜視図である。
【図8】この発明における内挿部材を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図9】この発明における表示プレートと下面プレートを取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図10】この発明における固定ねじと固定ねじ操作用の特殊六角レンチを示す斜視図である。
【図11】この発明に係る情報表示部を有する手摺の第2実施形態の取付状態を示す断面図である。
【図12】第2実施形態におけるベース部材の一方を取り付ける状態を示す拡大断面図である。
【図13】第2実施形態の分解斜視図である。
【図14】第2実施形態におけるベース部材、挿入部及び拡開部材を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 手摺本体
2 開口部
3 取付空間
10 手摺構成体
11 情報表示部
20 ベース部材
21 連結基部
21a 内方円弧溝
22 円柱部
23 挿入部
23a テーパ面
24 貫通孔
30 拡開部材
31 傾斜面
32 フィットブロック
33 環状ばね(ばね部材)
40 締付部材
41 締付ボルト
42 鍔付きナット
50 連結ねじ(連結部材)
60 内挿部材
61 空間
62 基部
62a 平坦面
63 円弧凸条
70 表示プレート
71 ナット
80 下面プレート
81 貫通孔
82 凹所
90 固定ねじ
91 頭部
200 ベース部材
201 ガイド溝
202 嵌合凹条
203 嵌合凸条
210 連結基部
211 内方円弧溝
220 円柱部
230 挿入部
231 楔状板部材
232 テーパ面
233 係止片
234 平坦下面
240 貫通孔
300 拡開部材
310 傾斜面
320 フィットブロック
322 平坦上面
323 段部
324 当接片
330 環状ばね
340 係止溝
600 内挿部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点字等の情報表示部を有する手摺構成体と、この手摺構成体を接続する中空状の手摺本体とを具備する情報表示部を有する手摺において、
上記手摺構成体は、
連結基部の一端に連設され、先端に上記手摺本体の開口部内に挿入される挿入部を有する一対のベース部材と、
上記挿入部の外周面に拡開可能に配設される複数のフィットブロックを有する拡開部材と、
上記ベース部材の挿入部を貫通するボルトと、上記拡開部材の先端に当接し、上記ボルトと螺合するナットとからなる締付部材と、
上記ベース部材の連結基部同士を連結する連結部材と、
手摺の一部を構成すべく、上記ベース部材の上面部を被覆する略半筒状に形成され、表面に点字等の情報表示部を有する表示プレートと、
手摺の一部を構成すべく、上記ベース部材の下面部を被覆する略半筒状に形成され、固定部材を介して上記表示部プレートに固定される下面プレートと、
を具備することを特徴とする情報表示部を有する手摺。
【請求項2】
請求項1記載の情報表示部を有する手摺において、
互いに連結された上記ベース部材と上記手摺本体との間に形成される空間内に挿入される内挿部材を更に具備し、
上記ベース部材は、断面略半円筒状に形成される連結基部の一端に、円柱部を介して挿入部が形成され、上記内挿部材は、上記連結基部と共働して、上記円柱部と同じ外径の円形断面を形成すべく略半円柱状に形成されている、ことを特徴とする情報表示部を有する手摺。
【請求項3】
請求項1又は2記載の情報表示部を有する手摺において、
上記挿入部は先端に向かって狭小テーパ状に形成され、
上記拡開部材を構成する複数のフィットブロックは、上記挿入部のテーパ面に摺接される傾斜面を有すると共に、傾斜面をテーパ面に圧接する弾性力を付勢するばね部材によって拘束されている、ことを特徴とする情報表示部を有する手摺。
【請求項4】
請求項1又は2記載の情報表示部を有する手摺において、
上記ベース部材の挿入部は、ベース部材の外周に適宜間隔をおいて設けられた軸方向に沿う複数のガイド溝内に嵌挿される複数の楔状板部材によって構成され、
上記拡開部材を構成する複数のフィットブロックは、上記ガイド溝内に嵌挿され、かつ、上記楔状板部材のテーパ面に摺接される傾斜面を有すると共に、傾斜面をテーパ面に圧接する弾性力を付勢するばね部材によって拘束されている、ことを特徴とする情報表示部を有する手摺。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の情報表示部を有する手摺において、
上記表示プレートの内面に雌ねじ部を設け、上記下面プレートの表面に、貫通孔を有する凹所を設け、貫通孔を介して上記雌ねじ部に螺合される固定部材の頭部を上記凹所内に収容してなる、ことを特徴とする情報表示部を有する手摺。
【請求項6】
点字等の情報表示部を有する手摺構成体と、この手摺構成体を接続する中空状の手摺本体とを具備する、情報表示部を有する手摺の取付方法であって、
上記手摺本体の2箇所を切断して、上記手摺構成体を取り付けるための空間を形成し、
上記手摺構成体を構成する一対のベース部材の先端部に連設される挿入部及びこの挿入部の外周面に拡開可能に配設される拡開部材を、上記手摺本体の開口部内に挿入し、
上記ベース部材の挿入部を貫通するボルトと、拡開部材の先端に当接するナットとからなる締付部材の締め付けによって上記拡開部材を拡開移動して、ベース部材を手摺本体に固定し、
上記手摺本体に固定された一対の上記ベース部材同士を連結部材によって連結し、
上記ベース部材の上面部を、表面に点字等の情報表示部を有する略半筒状の表示プレートによって被覆すると共に、上記ベース部材の下面部を、略半筒状の下面プレートによって被覆し、固定部材によって上記表示プレートと下面プレートを固定する、
ことを特徴とする情報表示部を有する手摺の取付方法。
【請求項7】
請求項6記載の情報表示部を有する手摺の取付方法において、
互いに連結された上記ベース部材と上記手摺本体との間に形成される空間内に、内挿部材を挿入して空間を塞ぎ、
上記ベース部材と内挿部材の上面部を、上記表示プレートによって被覆すると共に、上記ベース部材と内挿部材の下面部を、上記下面プレートによって被覆し、上記固定部材によって上記表示プレートと下面プレートを固定する、
ことを特徴とする情報表示部を有する手摺の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−285965(P2008−285965A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134440(P2007−134440)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】