説明

情報記憶素子

【課題】ユーザの意思に応じた情報の書き込みや読み取りを可能とする情報記憶素子を提供する。
【解決手段】本発明のRFIDタグ(情報記憶素子)10によれば、ユーザはRFIDタグ10(正確にはその受光素子)を光にかざすか否か、またはRFIDタグ10をかざす光の種類をその意思に応じて選択することで、R/W20によるRFIDタグ10の読み書き情報の内容または種類を調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダによる非接触方式での情報の読み取りおよびライタによる非接触方式での情報の書き込みが可能な情報記憶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R/W(リーダ/ライタ)により、RFIDタグに情報を書き込んだり、RFIDタグから情報を読み取ったりして、当該情報をさまざまな目的で利用する手法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2003−317044号公報
【特許文献2】特開2004−192645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、RFIDタグに書き込まれる情報は、将来的に読み取られた場合、当該情報の内容によってはユーザのプライバシーの安全が脅かされる等の弊害が生じる可能性がある。また、RFIDタグから読み取られる情報の内容によっては、ユーザの機密情報漏洩の糸口が悪意ある第三者に提供される等の弊害が生じる可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、ユーザの意思に応じた情報の書き込みや読み取りを可能とする情報記憶素子を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の情報記憶素子は、リーダまたはライタに付属する発光素子によって発せられ、且つ、ユーザによって視覚的に認識され得る光を感知する受光素子と、受光素子による光の感知の有無または受光素子により感知された光の種類に応じて、リーダによって読み取られ得る情報の種類または内容およびライタによって書き込まれ得る情報の種類または内容のうち一方または両方を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0006】
本発明の情報記憶素子によれば、ユーザは情報記憶素子(正確にはその受光素子)を光にかざすか否か、または情報記憶素子をかざす光の種類をその意思に応じて選択することで、リーダによって情報記憶素子から読み取られる情報の種類または内容、およびライタによって情報記憶素子に書き込まれる情報の種類または内容うち一方または両方を調節することができる。これにより、ユーザのプライバシーの安全が脅かされたり、ユーザの機密情報の漏洩の糸口が悪意ある第三者に提供されたりする等の弊害が防止される。
【0007】
また、本発明の情報記憶素子は、リーダによる情報記憶素子からの情報読み取り結果、およびライタによる情報記憶素子への情報書き込み結果のうち一方または両方に応じて、光を発する発光素子をさらに備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の情報記憶素子によれば、発光素子による発光の有無または種類により、リーダによる情報記憶素子からの情報読み取り結果、ライタによる情報記憶素子への情報書き込む結果のうち一方または両方がどのようなものであったかをユーザにその視覚を通じて認識させることができる。
【0009】
さらに、本発明の情報記憶素子は、前記制御手段が、前記受光素子による光の感知の有無または受光素子により感知された光の種類に応じた種類または内容の情報の、リーダによる読み取りおよび書き込みのうち一方または両方を許容または禁止することを特徴とする。
【0010】
本発明の情報記憶素子によれば、ユーザは情報記憶素子(正確にはその受光素子)を光にかざすか否か、または情報記憶素子をかざす光の種類をその意思に応じて選択することで、リーダによって情報記憶素子から読み取られる情報の種類または内容、およびライタによって情報記憶素子に書き込まれる情報の種類または内容うち一方または両方を選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の情報記憶素子の実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態における情報記憶素子の構成説明図であり、図2は本発明の一実施形態における情報記憶素子の機能説明図である。
【0013】
図1に示されているRFIDタグ(情報記憶素子)10は、ユーザが持っている物品に付されている。RFIDタグ10は、受光素子11と、ICチップモジュール(制御手段)12と、アンテナ13と、LED等の発光素子14とを備えている。
【0014】
RFIDタグ(ICタグ)10としては、パッシブ型、セミパッシブ型、アクティブ型等、種々のタイプのものが適宜選択されうる。パッシブ型タグは、R/W(リーダ/ライタ)側のアンテナから送信された電波をアンテナで受信し、この電波を整流してエネルギーとして使用し、R/Wから送信されてきたコマンドに応じてICチップがメモリから情報を読み出し、その情報をアンテナから発信する。セミパッシブ型タグは、動作は基本的にパッシブ型と同じであるが、搭載電池の電力をエネルギーとして使用してパッシブ型よりも電波の送信距離を長くすることもでき、R/Wからのコマンドに応じて動作する。アクティブ型タグは、セミパッシブ型と同様に搭載電池の電力をエネルギーとして使用するが、R/Wからのコマンドに応じて電波を発信するのではなく、一定時間ごとにアンテナから電波を発信する。また、RFIDタグ10の利用周波数帯は、135kHz未満、13.56MHz帯、950MHz帯(UHF)、2.45GHz帯等、種々の周波数帯が選択されうる。
【0015】
受光素子11は、R/W20に設けられている発光素子21によって発せられた、ユーザによって視覚的に認識され得る光(可視光)を感知する。
【0016】
ICチップモジュール12は、R/W20の発光素子21受光素子11による光の感知の有無または受光素子11により感知された光の種類に応じて、R/W20によって読み取られ得る情報、およびR/W20によって書き込まれ得る情報の両方を制限する。また、ICチップモジュール12は、アンテナ13を介してR/W20と通信をすることで、R/W20から信号や情報を受信したり、R/W20に対して信号や情報を送信したりする。
【0017】
発光素子14は、R/W20によるRFIDタグ10からの情報読み取り結果およびR/W20によるRFIDタグ10への情報書き込み結果に応じて、光を発する。
【0018】
また、図1に示されているように、RFIDタグ10から情報を読み取る機能と、RFIDタグ10に情報を書き込む機能とを有するR/W20が、複数のエリアA1,A2およびA3のそれぞれに設置されている。R/W20はそれぞれLED等の発光素子21を有しているが、エリアA1に設置されているR/W20の発光素子21は「赤色光」を発し、エリアA2に設置されているR/W20の発光素子21は「青色光」を発し、エリアA3に設置されているR/W20の発光素子21は「白色光」を発する。
【0019】
前記構成のRFIDタグ10の機能について図2を用いて説明する。
【0020】
ユーザが、RFIDタグ10が付された物品を持ってエリアA1〜A3のうちいずれかに赴き、そのRFIDタグ10をR/W20に近づけると、受光素子11が、このR/W20に付属する発光素子21からの発光を感知する(図2/S1)。
【0021】
ICチップモジュール12は、受光素子11によって感知された光の色、すなわち、光の周波数または波長を判定(または測定)する(図2/S2)。
【0022】
そして、ICチップモジュール12は、光の色が「赤」であると判定した場合(図2/S2‥A1)、読み取り可能な情報の種類P1,P2,P3、および書き込み可能な情報の種類Q1,Q2の情報を記憶部(図示略)から読み取る。そして、ICチップモジュール12は、当該種類P1,P2,P3の情報がR/W20によりRFIDタグ10から読み取られ、且つ、当該種類Q1,Q2の情報がRFIDタグ10に書き込まれることを許容する(図2/S3−1)。これに応じて、R/W20は、種類P1,P2,P3の情報をRFIDタグ10から読み取り、且つ、種類Q1,Q2の情報をRFIDタグ10に書き込む。
【0023】
また、ICチップモジュール12は、光の色が「青」であると判定した場合(図2/S2‥A2)、読み取り可能な情報の種類P1,P2、および書き込み可能な情報の種類Q3の情報を記憶部(図示略)から読み取る。そして、ICチップモジュール12は、当該種類P1,P2の情報がR/W20によりRFIDタグ10から読み取られ、且つ、当該種類Q3の情報がRFIDタグ10に書き込まれることを許容する(図2/S3−2)。これに応じて、R/W20は、種類P1,P2の情報をRFIDタグ10から読み取り、且つ、種類Q3の情報をRFIDタグ10に書き込む。
【0024】
さらに、ICチップモジュール12は、光の色が「白」であると判定した場合(図2/S2‥A3)、読み取り可能な情報の種類が記憶部(図示略)から読み取らず、かつ、書き込み可能な情報の種類Q1,Q3の情報を記憶部から読み取る。そして、ICチップモジュール12は、R/W20によるRFIDタグ10からの情報読み取りを禁止し、且つ、当該種類Q1,Q3の情報がRFIDタグ10に書き込まれることを許容する(図2/S3−3)。これに応じて、R/W20は、種類Q1,Q3の情報をRFIDタグ10に書き込む。
【0025】
続いて、ICチップモジュール12が、R/W20による情報読み取り結果および情報書き込み結果が適正か否か、すなわち、受光素子11により感知された光の色に応じた種類の情報がRFIDタグ10から読み込まれたか否か、また、受光素子11により感知された光の色に応じた種類の情報がRFIDタグ10に書き込まれたか否かを判定する(図2/S4)。
【0026】
そして、ICチップモジュール12は、R/W20による情報読み取り結果および情報書き込み結果が適正であると判定した場合(図2/S4‥YES)、緑色光を発する発光素子14を作動させて、当該発光素子14から緑色光を発せさせる(図2/S5−1)。一方、ICチップモジュール12は、R/W20による情報読み取り結果および情報書き込み結果が不適正であると判定した場合(図2/S4‥NO)、赤色光を発する発光素子14を作動させて、当該発光素子14から赤色光を発せさせる(図2/S5−1)。
【0027】
前記機能を発揮するRFIDタグ(情報記憶素子)10によれば、ユーザはRFIDタグ10(正確にはその受光素子11)をかざす光の色をその意思に応じて選択することで、R/W20によってRFIDタグ10から読み取られる情報、およびR/W20によってRFIDタグ10に書き込まれる情報を調節することができる。例えば、ユーザは、エリアA1に設置されているR/W20に付属する発光素子21から発せされる光の色が「赤」であることから、このR/W20にRFIDタグ10を近づけた場合、R/W20が、種類P1,P2,P3の情報をRFIDタグ10から読み取り、且つ、種類Q1,Q2の情報をRFIDタグ10に書き込むことをその視覚を通じて認識することができる(図2/S3−1参照)。また、ユーザは、エリアA2に設置されているR/W20に付属する発光素子21から発せされる光の色が「青」であることから、このR/W20にRFIDタグ10を近づけた場合、R/W20が、種類P1,P2の情報をRFIDタグ10から読み取り、且つ、種類Q3の情報をRFIDタグ10に書き込むことをその視覚を通じて認識することができる(図2/S3−2参照)。さらに、ユーザは、エリアA3に設置されているR/W20に付属する発光素子21から発せされる光の色が「白」であることから、このR/W20にRFIDタグ10を近づけた場合、R/W20がRFIDタグ10から情報を読み取らず、且つ、種類Q1,Q3の情報をRFIDタグ10に書き込むことをその視覚を通じて認識することができる(図2/S3−3参照)。
【0028】
これにより、ユーザのプライバシーの安全が脅かされたり、ユーザの機密情報の漏洩の糸口が悪意ある第三者に提供されたりする等の弊害が防止される。
【0029】
また、発光素子14による発光の色の別により、R/W20によるRFIDタグ10からの情報読み取り結果、およびR/W20によるRFIDタグ10への情報書き込む結果が、受光素子11の発光色に鑑みて適切なものであったか否かをユーザにその視覚を通じて認識させることができる(図2/S5−1,S5−2参照)。
【0030】
なお、情報記憶素子の実施形態としては、RFIDタグ10のほか、ICカード等、情報保持機能を有しており、情報の読み取りおよび情報の書き込みが可能なあらゆる情報記憶素子であってもよい。
【0031】
また、前記実施形態では発光素子21から発せられる光の色(赤、青、白)により、R/W20による情報読み書きのパターンがユーザに認識されるようにしたが、他の実施形態として発光素子21から発せられる光の点滅パターン、または当該光の色および点滅パターンの組合せにより、R/W20による情報読み書きのパターンがユーザに認識されるようにしてもよい。さらに、発光素子21からの発光の有無により、R/W20による情報読み書きのパターンがユーザに認識されるようにしてもよい。
【0032】
前記実施形態では発光素子14から発せられる光の色により、R/W20による情報読み書き結果の適否がユーザに認識されるようにしたが、他の実施形態として発光素子14から発せられる光の点滅パターン、または当該光の色および点滅パターンの組合せにより、R/W20による情報読み書き結果の適否がユーザに認識されるようにしてもよい。さらに、RFIDタグ(情報記憶素子)10に音響素子が設けられ、「ピッ」という短音により情報読み書き結果が適切であったことがユーザに認識される一方、「ピー」という長音により情報読み書き結果が適切であったことがユーザに認識されるようにしてもよい。
【0033】
また、RFIDタグ10の片面に当たる所定波長の光を感知するように受光素子11が設けられ、かつ、ICチップモジュール12が受光素子11の光感知履歴をそのメモリに書き込むように構成されていてもよい。受光素子11の光感知履歴には、光非感知状態から光感知状態への切り替えの有無や当該切り替えの回数、当該切り替え時刻等が含まれうる。
【0034】
当該構成のRFIDタグ10によれば、受光素子11による光感知が可能な面が隠れるようにRFIDタグ10が物品に貼り付けられることで、タグ10が当該物品のトレーサビリティ管理等に利用されうる。たとえば、タグ10が物品から剥がされることで、受光素子11が所定波長の光を感知し、ICチップモジュール12が光非感知状態から光感知状態への切り替えがあったことを光感知履歴としてメモリに書き込む。しかる後、リーダによってRFIDタグ10から光感知履歴が読み取られ、当該切り替えの有無に応じて、そのタグ10が貼付されている物体が、真正品か或いは途中ですりかえられた可能性があるものであるかが判別されうる。また、光感知履歴に当該切り替えの時刻が含まれている場合、タグ10が物品から剥がされた日時のほか、タグ10を物品から剥がした主体が特定されうる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態における情報記憶素子の構成説明図
【図2】本発明の一実施形態における情報記憶素子の機能説明図
【符号の説明】
【0036】
10‥RFIDタグ(情報記憶素子)、11‥受光素子、12‥ICチップモジュール(制御手段)、13‥アンテナ、14‥発光素子、20‥R/W、21‥R/Wの発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダによる非接触方式での情報の読み取りおよびライタによる非接触方式での情報の書き込みが可能な情報記憶素子であって、
リーダまたはライタに付属する発光素子によって発せられ、且つ、ユーザによって視覚的に認識され得る光を感知する受光素子と、
受光素子による光の感知の有無または受光素子により感知された光の種類に応じて、リーダによって読み取られ得る情報の種類または内容およびライタによって書き込まれ得る情報の種類または内容のうち一方または両方を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする情報記憶素子。
【請求項2】
リーダによる情報記憶素子からの情報読み取り結果およびライタによる情報記憶素子への情報書き込み結果のうち一方または両方に応じて、光を発する発光素子をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の情報記憶素子。
【請求項3】
前記制御手段が、前記受光素子による光の感知の有無または受光素子により感知された光の種類に応じた種類または内容の情報の、リーダによる読み取りおよび書き込みのうち一方または両方を許容または禁止することを特徴とする請求項1記載の情報記憶素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−172214(P2007−172214A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367822(P2005−367822)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】