説明

情報記録体及びその情報記録方法

【課題】目視で観察が可能で、視る角度によって異なる複数の画像情報や、立体画像として認知できるような画像情報や、文字、数字、絵柄などの情報を簡便に記録することができる情報記録体を提供する。また、前記の情報を、情報記録体に記録する情報記録方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、特定の強度以上の光の照射で、発色するか、または色が変化する発色層と、レンズ集合体層とを有し、該レンズ集合体層が、集光作用を有するレンズ機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成り、さらに、前記発色層を、前記レンズ集合体層に対して入射した光の集光される側に配置して成ることを特徴とする情報記録体を提供する。また、前記情報記録体へ特定の角度からの光の照射で情報を記録し、該特定の角度からのみ観察が可能な情報記録方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録体及びそれを用いた情報記録方法に関し、特に、レーザー光などの光を照射することにより該情報記録体を改質して文字、数字、絵柄、バイオメトリックス情報等の立体画像情報を含む情報の記録が可能である情報記録体とそれを用いた立体画像情報等の情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カードやパスポート等に直接、個人の個別情報を打ち込むレーザーエングレービング技術が注目されている。レーザーエングレービング技術は、個別情報の改ざんや変造の防止という点で、安全性を高め、耐久性を向上させることができ、さらに頑健性の高い社会システムの構築において有効な技術である。
【0003】
レーザーエングレービング技術は、カードなどの素材そのものの特性を変化させることによって、素材の内部に直接情報を刻み込む技術である。これは、カードの内部の層に刻印したり、カードの内部に黒色層を発現させて印字したりする為、刻み込まれた情報の、シンナー等の有機溶剤や薬品に対する耐久性が高くなり、さらに、偽造・改ざんを困難にすることができる。
【0004】
情報としては、文字、数字、絵柄や、指紋、顔、血管等の画像情報などのバイオメトリックス情報などがあり、それらによって、個人を識別する個別情報とすることができる。
【0005】
さらに、レーザーエングレービング技術を施したカード等に様々なICチップを埋め込み、情報システムと連携させることで、高度なセキュリティシステムの実現が可能となる(特許文献1)。
【0006】
レーザーエングレービング技術の一つとして、レーザーを利用した個別情報の記録方法としては、例えば背後に反射層を有する回折素子の構造を持つ層に対して、レーザー光を選択的に照射して反射層を破壊することにより個別情報を追記する方法が知られている(特許文献2)。
【0007】
また別のレーザーエングレービング技術の例として、体積ホログラムのホログラム記録層以外の層にレーザー光を照射することによって、その層を物理的あるいは化学的に改質して個別情報を追加記録する方法などが知られている(特許文献3,特許文献4、特許文献5)。
【0008】
これらのように、これまでのレーザーエングレービング技術では、通常、レーザー等の光加工技術により、カード等の表面層やカード基材内部を改質させて個別情報を書き込んでいる為、耐久性、耐改竄性に優れており、さらに情報を追記可能であることから、一般的に利用されているが、画像情報の質という点では、これらは全て2次元でかつ単一の画像情報の記録であった。
【0009】
このような従来の2次元でかつ単一の画像情報が記録された情報記録体を用いた情報の表示品質は、見た目においては、溶融リボンによる溶融文字印字情報や昇華転写方式やインクジェット方式での印画像とほぼ同等の表示品質であった。
【0010】
すなわち、3次元の立体画像として認知されるような、より実際に近く、情報量の多い画像情報や、2次元の複数の画像情報等のより多くの画像情報を、情報記録体に、目視に
て一瞥で確認出来る様に記録する事はできなかった。
【0011】
前記のような情報量の多い画像情報は、前記の指紋、顔、血管等の画像情報などのバイオメトリックス情報等として個別情報を記録するのに用いることができるため、より高度なセキュリティー関連用途への適用が可能となるが、提供されていなかった。
【0012】
また、これまでのレリーフ回折素子の機能をもつレリーフ回折構造体や、体積ホログラム等を利用したセキュリティ用の情報記録体などにおいて個別情報を記録する場合は、個別情報を記録するスペースが限られており、より詳細な個別情報や、より多くの個別情報を、目視にて一瞥で確認出来る様に記録する事は不可能であった。
【0013】
一方、複数の画像情報の記録方法としては、例えば、レンチキュラーレンズの拡大効果を用いるとともに、観察角度を変えることによる焦点移動を考慮した印刷パターンを、レンズの焦点距離付近に位置精度良くレンズピッチで印刷することで、複数の画像情報や立体画像情報を記録する方法が知られている。(特許文献6参照)
特に、レンチキュラーレンズの焦点側の平面に対してインクジェット印刷方式によって直接印刷する方法を用いると、要求があり次第すぐに立体画像を提示することが出来るいわゆるオンデマンドでの記録への対応が可能となる。
【0014】
しかし、前記の様な方法では、レンチキュラーレンズの材料であるレンチキュラーシートへのレンズの印刷パターンの位置精度とピッチ精度の向上が課題となる。特に写真などの高解像度の画像情報を記録する為には、μm単位での位置精度が要求される。しかしながら、この実現は技術上困難であり、ずれを生じることが多く、その結果、製品の製造の收率が低くなり、生産性が非常に低いという問題があった。
【0015】
このようなレンズの印刷パターンの課題に対し、レンチキュラーレンズと感光フィルムを組み合わせ、レンチキュラーレンズ側から走査露光する事により解決する方法が知られている(例えば特許文献7)。該公開情報では、感光フィルムの詳細についての説明がされていないが、一般的に、感光フィルムを使用した場合は、露光後に、現像・定着・焼き付け等のそれぞれの処理を行う必要があり、煩雑な工程や専用の設備を必要とする事から、顔写真等の画像情報を、要求あり次第にすぐに記録を行い表示するオンデマンドでの記録の用途には不向きであるといえる。
【特許文献1】特開2006−103221号公報
【特許文献2】特開2000−47556号公報
【特許文献3】特開2002−32724号公報
【特許文献4】特開2007−304377号公報
【特許文献5】特開2007−105732号公報
【特許文献6】特開2008−15048号公報
【特許文献7】特開平8−220477号公報
【特許文献8】特開平3−198003号公報
【特許文献9】特開2000−75106号公報
【特許文献10】特開2000−131505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、目視で観察が可能で、視る角度によって異なる複数の画像情報や、立体画像として認知できるような画像情報や、文字、数字、絵柄などの情報を簡便に記録することができる情報記録体を提供することを課題としている。
【0017】
また、本発明は、観察者が情報記録体を目視する際に、見る角度を変えることによって異なる画像を視認できるような画像情報や、文字、数字、絵柄などの情報を、情報記録体に記録する情報記録方法を提供することを、課題としている。
【0018】
また、本発明は、観察者が情報記録体を目視する際に、立体画像として認知できるような画像情報や、文字、数字、絵柄などの情報を、情報記録体に記録する情報記録方法を提供することを、課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、係る課題を解決するものであり、上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、少なくとも、特定の強度以上の光の照射で、発色するか、または色が変化する発色層と、レンズ集合体層とを有する情報記録体であって、該レンズ集合体層が、集光作用を有するレンズ機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成り、さらに、前記発色層を、前記レンズ集合体層に対して入射した光の集光される側に配置して成ることを特徴とする情報記録体である。
【0020】
請求項2に記載の発明は、情報記録体であって、前記レンズ集合体層のレンズ焦点位置が、前記発色層の位置となるようにするための焦点距離調整層を有し、該焦点距離調整層が、前記発色層と前記レンズ集合体層との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の情報記録体である。
【0021】
請求項3に記載の発明は、情報記録体であって、前記レンズ集合体層および焦点距離調整層の少なくともいずれか一方が任意のパターン状に部分的に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の情報記録体である。
【0022】
請求項4に記載の発明は、情報記録体であって、少なくともレンズ集合体層が配置され、次に焦点距離調整層が配置され、次に発色層が配置され、該焦点距離調整層と該発色層の少なくも一部に、レリーフ型回折素子の機能を有するレリーフ型回折構造部が形成され、さらに該発色層の該レリーフ型回折構造部が形成された部分を含む面の少なくとも一部に反射層が配置される事を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報記録体である。
【0023】
請求項5に記載の発明は、情報記録体であって、少なくともレンズ集合体層が配置され、さらに少なくとも発色層が配置され、次に、レリーフ型回折素子の機能を有するレリーフ型回折構造層が配置され、該レリーフ型回折構造層の配置された面の少なくも一部分に反射層が配置される事を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報記録体である。
【0024】
請求項6に記載の発明は、情報記録体であって、前記レンズ集合体層の光の照射される側の反対側の面の下に配置されるいずれかの層として体積ホログラム層が配置されている事を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報記録体である。
【0025】
請求項7に記載の発明は、前記発色層において、前記光が照射される前の前記発色層の光の透過率が50%以上であり、該光の波長が360nmから830nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報記録体である。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の光がレーザー光であることを特徴とする請求項1〜7に記載の情報記録体である。
【0027】
請求項9に記載の発明は、前記レンズ集合体層の集光効果により集光した光によって、
前記発色層を発色させる事を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の情報記録体への情報記録方法であって、前記レンズ集合体層の各単位セルの頂点から成る仮想平面に対する光の照射角度を2つ以上の複数の角度から照射することで、該複数の角度のそれぞれの光の照射角度でのみ確認出来る画像の情報を、同一の情報記録体にそれぞれ記録することを特徴とする情報記録方法である。
【0028】
請求項10に記載の発明は、前記レンズ集合体層の集光効果により集光した光によって、前記発色層を発色させる事を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の情報記録体への情報記録方法であって、前記レンズ集合体層の各単位セルの頂点から成る仮想平面に対する光の照射角度が、観察点における観察者の両眼を想定した2つの角度から成り、それぞれの角度から光を照射し、該それぞれの角度に対応する画像の情報を一対の視差画像情報として記録することで、観察者が両眼で該一対の視差画像情報を視認した際に視差を得られて、立体画像として認知できるようにすることを特徴とした情報記録方法である。
【0029】
請求項11に記載の発明は、情報記録体への情報記録方法であって、前記一対の視差画像情報を、前記光の照射角度に対応して、情報記録体にそれぞれ記録することにより、該一対の視差画像情報を同一の情報記録体に複数記録することを特徴とする請求項10に記載の情報記録方法である。
【0030】
請求項12に記載の発明は、前記光が、レーザー光であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の情報記録方法である。
【発明の効果】
【0031】
請求項1に記載の本発明により、情報記録体の基本構造が、レンズ機能をもつ単位セルから成るレンズ集合体層と発色層との複層構造となっているため、この複層構造の該レンズ集合体層側からレーザーなどの光を照射すると、個々の単位セルのレンズを通過した光が各々集光し、該発色層において、光の集光した部分のみを発色させる事ができる。これにより、例えば、一つの画像に対応した照射パターンのレーザー光を特定の角度から照射した場合、該照射パターンのレーザー光に照射された各々の単位セルのレンズにて集光が生じ、それぞれの焦点部分において該発色層が発色し、前記一つの画像に対応した照射パターンが発色パターンとして記録される。従って、観察者が該発色パターンを、レーザー光を照射した際の照射角度からのみ観察することが可能となる情報記録体を提供できる。
【0032】
請求項2に記載の本発明により、情報記録体に、焦点距離調整層を設けることにより、情報を記録する際に、レーザー光等の光の焦点距離を調整して、発色層に焦点を合わせることができるため、単位セルのレンズ機能の部分の材料やレンズの設計の許容範囲をより広げることができる情報記録体を提供できる。
【0033】
請求項3に記載の本発明により、情報記録体において、前記レンズ集合体層および焦点距離調整層の少なくともいずれか一方が任意のパターン状に部分的に配置されていることにより、該任意のパターンの範囲に限定した情報の記録が可能となる情報記録体を提供できる。
【0034】
請求項4に記載の本発明により、情報記録体において、少なくともレンズ集合体層が配置され、次に焦点距離調整層が配置され、次に発色層が配置され、該焦点距離調整層と該発色層の少なくも一部に、レリーフ型回折素子の機能を有するレリーフ型回折構造部が形成され、さらに該発色層の該レリーフ型回折構造部が形成された部分を含む面の少なくとも一部に反射層が配置されることにより、たとえば、レリーフ型回折構造部に回折現象を利用したレリーフ型回折レンズの機能を持たせることが可能となり、反射層の機能と組み
合わせることによって、観察者が情報記録体と特定の距離でのみ画像を観察できるような情報記録体を提供できる。
【0035】
請求項5に記載の本発明により、情報記録体において、少なくともレンズ集合体層が配置され、さらに少なくとも発色層が配置され、次に、レリーフ型回折素子の機能を有するレリーフ型回折構造層が配置され、該レリーフ型回折構造層の配置された面の少なくも一部分に反射層が配置されることにより、たとえば、レリーフ型回折構造部に回折現象を利用したレリーフ型回折レンズの機能を持たせることが可能となり、反射層の機能と組み合わせることによって、観察者が情報記録体と特定の距離でのみ画像を観察できるような情報記録体を提供できる。
【0036】
請求項6に記載の本発明により、情報記録体において、前記レンズ集合体層の光の照射される側の反対側の面の下に配置されるいずれかの層として体積ホログラム層が配置されていることにより、別途、体積ホログラム層に記録されているホログラム情報と発色層の情報とを合成した情報を、観察者が、観察することができるため、ホログラム情報により、セキュリティー機能を高めることが可能な情報記録体を提供できる。
【0037】
請求項7に記載の本発明により、情報記録体の前記発色層において、前記光が照射される前の前記発色層の光の透過率が50%以上であり、該光の波長が360nmから830nmの範囲であることにより、観察者が、情報記録体を可視光領域にて観察する際に、発色層の向こう側に設定された背景情報を発色層を透過して観察することができ、また、該背景情報と発色層の情報とを組み合わせて観察することができる情報記録体を提供できる。
【0038】
請求項9に記載の本発明により、情報記録体への情報記録方法において、前記レンズ集合体層の各単位セルの頂点から成る仮想平面に対する光の照射角度を2つ以上の複数の角度から照射することで、該複数の角度のそれぞれの光の照射角度でのみ確認出来る画像の情報を、同一の情報記録体に情報記録体にそれぞれ記録することのできる情報記録方法を提供できる。
【0039】
請求項10に記載の本発明により、情報記録体への情報記録方法において、前記レンズ集合体層の各単位セルの頂点から成る仮想平面に対する光の照射角度が、観察点における観察者の両眼を想定した2つの角度から成り、それぞれの角度から光を照射し、該それぞれの角度に対応する画像の情報を一対の視差画像情報として記録することで、観察者が両眼で該一対の視差画像情報を視認した際に視差を得られて、立体画像として認知できるようにすることが可能となる情報記録方法を提供できる。
【0040】
請求項11に記載の本発明により、情報記録体への情報記録方法において、前記一対の視差画像情報を、前記光の照射角度に対応して、情報記録体に、それぞれ記録することにより、該一対の視差画像情報を同一の情報記録体に複数記録することが可能となる情報記録方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、光としてレーザー光を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
図1は、本発明に係る情報記録体の第1の実施の形態例を断面で示した説明図である。情報記録体11は、平凸レンズの機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成るレンズ集合体層2とレーザー光の照射で発色する発色層3とを備えた構成であり、該発色層3はレンズ集合体層2に対して入射した光が集光される側に配置され
ている。
図2は、本発明に係る情報記録体の第2の実施の形態例を断面で示した説明図である。情報記録体12は、平凸レンズの機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成るレンズ集合体層2とレーザー光の照射で発色する発色層3との層間に焦点距離調整層4を備えた構成である。焦点距離調整層4は、レンズ集合体層2のレンズ焦点位置が前記発色層3付近となる様に距離を調整する為のスペーサーの役割を果たす。
【0043】
図3は、本発明に係る情報記録体の第3の実施の形態例を断面で示した説明図である。ここでは、平凸レンズの機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置し、かつ任意のパターンに形成して成るレンズ集合体層2を使用した場合の例を示す。
情報記録体13は、平凸レンズの機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成るレンズ集合体層2とレーザー光の照射で発色する発色層3との層間に焦点距離調整層4を備えた構成である。焦点距離調整層4は、レンズ集合体層2のレンズ焦点位置が議発色層3付近となる様に距離を調整する為のスペーサーの役割を果たす。
【0044】
図4は、本発明に係る情報記録体の第4の実施の形態例を断面で示した説明図である。情報記録体14は、平凸レンズの機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成るレンズ集合体層2とレーザー光の照射で発色する発色層であって回折構造を形成している回折構造発色層31、焦点距離調整層4、回折構造に近接して設けられた反射層5を備えた構成である。
【0045】
図5は、本発明に係る情報記録体の第5の実施の形態例を断面で示した説明図である。情報記録体15は、平凸レンズの機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成るレンズ集合体層2とレーザー光の照射で発色する発色層3と、レリーフ型回折構造層6と、反射層5とを備えた構成である。
【0046】
図6は、本発明に係る情報記録体の第6の実施の形態例を断面で示した説明図である。情報記録体16は、平凸レンズの機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成るレンズ集合体層2とレーザー光の照射で発色する発色層3と、体積ホログラム層7とを備えた構成である。
【0047】
図7は、本発明に係わる情報記録体への記録方法の例を断面で示した説明図である。ここでは、図2で説明した情報記録体12を例として説明する。
【0048】
レンズ集合体2に対して垂直に照射されたレーザー光81は、レンズ集合体2を構成する各々の単位セルによって集光し、発色層3における単位セルのレンズの焦点部分を発色させ、発色した部分301を生じさせる。これにより、垂直方向から確認可能な1番目の画像の情報を記録することができる。
【0049】
図8は、本発明に係わる情報記録体への記録方法の、図7に続く次の例を断面で示した説明図である。ここでは、図2で説明した情報記録体12を例として説明する。
【0050】
レンズ集合体2の垂線に対して任意の角度802の方向から照射されたレーザー光82は、レンズ集合体2を構成する各々の単位セルのレンズによって集光し、発色層3における該単位セルの焦点部分を発色させ、発色した部分302を生じさせる。これにより、垂線に対して任意の角度802の方向からのみ確認可能な2番目の画像の情報を記録することができる。ここで示すように、図7の説明図にて示した発色した部分301とは区別することができる。
【0051】
図9は、本発明に係わる情報記録体へ記録された情報を観察する例を断面で示した説明
図である。
【0052】
ここで、図7と図8において説明した方法で2つの画像情報が記録された情報記録体12は、レンズ集合体2に対して垂直な方向901から観察すると、単位セルのレンズの焦点部分で発色層3の発色した部分301のみが該単位セルのレンズによって拡大され、該発色した部分301の組み合わせた情報から1番目の画像として観察することができる。
【0053】
図10は、本発明に係わる情報記録体へ記録された情報を観察する他の例を断面で示した説明図である。
【0054】
ここで、図10のように、レンズ平面の垂線に対して任意の角度802の方向における観察点902から観察すると、単位セルのレンズの焦点部分で発色層3の発色した部分302のみが単位セルによって拡大され、該部分302の組み合わせた情報から2番目の画像として観察することができる。
【0055】
このとき、前記図7と図8の例における、レーザー光81、及びレーザー光82をそれぞれ異なる画像に対応する照射パターンで照射することにより、角度によって異なる2つの画像を出現させることが可能である。
【0056】
図11は、本発明に係わる情報記録体への視差情報の記録方法の例を断面で示した説明図である。ここでは、図2で説明した情報記録体12を例として説明する。
【0057】
観察者に視差をあたえることのできる右視画像情報と左視画像情報の対となる画像情報において該右視画像情報のパターンを照射するレーザー光83によって発色し記録される右視情報記録部分303と、該左視画像情報のパターンを照射するレーザー光84によって発色し記録される左視情報記録部分304とを作成することで、それらの対からなる画像情報を記録する事ができる。これを一対の視差画像情報として記録することで、観察者が両眼で該一対の視差画像情報を視認した際に視差を得られて、立体画像として認知できるようにすることができる。
【0058】
なお、この場合のレーザー光83、及び84は、画像情報の再生状況によっては、拡散するレーザー光とする事も可能であり、この様な記録により歪みや欠落部のない立体感の有る再生像を得ることも可能である。
【0059】
図12は、本発明に係わる情報記録体へ記録された一対の視差画像情報を観察する例を断面で示した説明図である。
右目903は、レンズにより拡大された右視情報記録部分303を視認し、左目904は、レンズにより拡大された左視情報記録部分304を視認することとなる。この為、観察者は、左右の画像情報をそれぞれの目にのみ視認させることができ、視差を得ることができる。これにより観察者は、立体画像として認知することが可能となる。
【0060】
以下に、本発明の偽造防止構造体、偽造防止枚葉体を構成する各部材についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0061】
〔発色層〕
発色層は、レーザー光によりマーキングが可能となるものであれば良く、無機系、金属系、有機色素系、高分子材料等の制限は特に無く、レーザーエングレービングに用いられる材料系や追記型光記録媒体に用いられるような公知の材料系はすべて使用可能である。
また、これら前記の材料のフィルム形成体を使用することや、溶媒中に溶解、又は分散させてウェットコーティングしたり、真空蒸着やスパッタ等のドライコーティングをして得
られる塗膜を使用することが可能である。
材料の特性としては、特定の強度以上の光によって発色が開始されるような閾値特性を有することが望ましい。
【0062】
例えば、IDカード用のレーザーエングレービング材料として一般的に使用されているポリカーボネート樹脂、又はポリエステル樹脂を主体とした材料等は、レーザーパルスエネルギーの吸収により特定の温度以上の高温での炭化等が起こり、情報が記録されるものが多く、この様な材料のフィルム形状物を用いる事や、又はこれらの前記の材料を溶媒に溶解した樹脂塗液を塗工して得られる塗膜を発色層として使用する事も可能である。
【0063】
また、特許文献1における「黒色発色層」や「カラー発色層」に使用される発色構成物の類も使用可能であり、特に光吸収材料を樹脂に添加、又は樹脂骨格に結合させる方法や、熱感応性マイクロカプセルを使用する方法は低エネルギーで発色させる為には効果的な手法である。
【0064】
更に別の例としては特許文献5における「レーザーマーキング可能な化合物」と「フォトポリマー」による発色構成物の類も例として挙げられ、特に閾値の制御のために、レーザー光照射により改質を促進される化合物を添加したり、又は該化合物を樹脂骨格に結合させる方法については、低エネルギーで発色させる為には効果的な手法である。
【0065】
また、レンズ集合体層により集光されたレーザーの照射により改質されるプラスチック材料、あるいは改質を促進される無機材料及び/又は有機材料を含有するプラスチック材料、あるいは照射されたレーザーを吸収し発熱する無機材料及び/又は有機材料を含有するプラスチック材料としては、特許文献5に記載の材料を用いることが例として挙げられる。
【0066】
なお、レーザー照射前の前記発色層の可視光領域の光透過率が50%以上である場合には、観察者は、観察者に対して発色層よりも奥側にある、印刷された画像や、レリーフ型回折構造による画像、又は体積型ホログラム等による画像の色つきの情報を確認することができる。
【0067】
〔レンズ集合体層〕
レンズ集合体層は、集光要素を持つレンズ機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置させた構造になっており、代表的な例としては、蝿の目レンズ、マイクロレンズアレイなどが挙げられるが、この限りでない。
【0068】
例えば、凸レンズ、平凸レンズ、両凸レンズ、メニスカス凸レンズ、凸シリンドリカルレンズ、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、回折レンズ、球体レンズ、または前記レンズを複数組み合わせた複合レンズから成る一つ以上の単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置させたレンズ集合体や、前記レンズ集合体と同一の表面形状を有し、集光作用を有する連続的な膜も使用可能である。
【0069】
さらに、レンズ集合体層は、表面形状が平坦であっても、材料の屈折率を連続的にかつ周期的に変化させることにより、単位セルの機能を果たすレンズの機能を発現させ、これらから成る複数のレンズの組み合わせとしてもよい。
【0070】
前記レンズ集合体層の材料としては有機材料、無機材料、有機無機複合材料などの中から、集光特性、透明性、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性などを考慮し、用途に見合った材料を適宜選択すればよい。
【0071】
また、前記レンズ集合体を構成する単位セル部分は同一の形状であり、周期的に稠密で平面状に集積されている事が好ましい。異なる形状の単位セルを集合させた形状の場合でも記録が可能だが、個々の単位セルの焦点距離が異なることに起因した部分的な記録抜けが生じる可能性がある。また、単位セルの周期性が無い、又は稠密に充填されていない場合、単位セルの無い部分では記録された画像情報が再生されないことから、再生像が部分的に欠落した像になってしまう。
【0072】
特に、レーザー光を透過集光させる特性が必要である事から、使用するレーザ光の照射量、照射周波数に相応した耐熱性が必要となる。耐熱性のないレンズ集合体を使用した場合には、情報記録時の照射後に個々の単位セルが変形、又は変質してしまい、記録した画像情報を正確に再生する事ができなくなる。
【0073】
なお、レンズ集合体層において単位セルを任意のパターン状の領域で平面状に集積させることや、異なる集光作用の複数のレンズ集合体層を、それぞれのパターン状領域で設けることも可能であり、これにより、特定の部分のみにレーザー光により書き込み可能な情報記録体を得ることができる。
【0074】
上記のレンズ集合体層を形成する方法は、公知の方法によって形成することができ、例えば、ドライエッチング法又はウェットエッチング法を適用する、または特許文献8に開示されるように、レンズに対応する球面が形成された原盤に樹脂を滴下し、この樹脂を固化させて剥離することで、マイクロレンズアレイを製造する方法や、特許文献9に開示されるような表面張力を利用したマイクロレンズアレイの製造方法や、特許文献10に開示されるような両面に複数のレンズ面が形成されたマイクロレンズアレイの製造方法は公知であり、これらの製造方法によって形成することも可能であるが、これに限定されず公知の方法で製造可能である。
なお、これら公知の製造方法により、レンズ集合体層を、発色層上、又は焦点距離層上に直接形成しても良い。
【0075】
〔焦点距離調整層〕
焦点距離調整層は、レンズ集合体層と発色層の間に設置され、レーザー集合体層を構成する個々のレンズ焦点が、発色層の表面、又は内部に位置するように、層間距離を調整する機能が有る。
【0076】
レンズ集合体層に対する様々なレーザーの入射角における焦点位置が、発色層表面、又は内部となるような厚み、形状とすることで、観察角度による再生像の歪みやボケ(滲み)を抑えることも可能である。
【0077】
使用される材料は、有機材料、無機材料、有機無機複合材料の何れでも良く、制限はない。
また、焦点距離調整層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、ウェットコーティング、熱エンボス法など公知の方法によって設けることが可能である。
また、レンズ集合体層によって集光されたレーザー光を透過させる特性が必要である事から、使用するレーザー光、パルスレーザー光の照射量、照射周波数、レンズ集合体層の集光作用に相応した耐熱性が必要となる。特に発色層との界面にて集光する為、界面での耐熱性が重要となる。この場合、発色層が発色する為に必要なレーザーの照射量に相応する耐熱性が必要と考えられる。耐熱性のないレンズ集合体を使用した場合には、情報記録時の照射後にレンズが変形、又は変質してしまい、記録した画像情報を正確に再生する事ができなくなる。
【0078】
〔回折構造発色層〕
回折構造発色層は、発色層自体がレリーフ型回折構造を形成していることが特徴であり、前記回折構造は近接した反射層によって、観察角度による鮮やかな色変換機能を有する。
【0079】
この様な発色層を設けた情報記録体は、画像情報の非記録部分(非発色部分)では、レリーフ型回折構造による鮮やかな色変換機能を得ることができ、記録部分(発色部分)では個別情報を立体画像や複数像として確認することができる、セキュリティ性の高い情報記録体となる。
【0080】
また、回折構造発色層の成型方法としては、熱エンボス法、フォトポリマー法、又は前記の複合方法等による公知の方法で成形すれば良く、例えばウェットコーティング法により発色層の塗膜を得た後に、加熱した塗膜に回折構造の金型を押し当てて形状を転写する熱エンボス方式により形成することが可能である。
【0081】
〔レリーフ型回折構造層〕
レリーフ型回折構造層は、例えば特許文献2に記載の公知の技術により成形する事ができる。
【0082】
使用する材料の例としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレートなどの熱硬化性樹脂をそれぞれ単独、或いは上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して使用することができ、更には、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、或いは、これらにラジカル重合性不飽和単量体を加え電離放射線硬化性としたものなどを使用することができる。このほか、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチック、ジアゾ系感光材料、フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、サーモクロミックス材料、カルコゲンガラスなどの感光材料なども使用できる。
【0083】
前記の材料を用いてレリーフ型回折構造を形成する方法は、公知の方法によって形成することができ、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、前記支持体上に離型性樹脂層、保護層を順に積層した積層シートの保護層の上に、前記光回折構造形成層用樹脂の塗布液をグラビアコート法、ロールコート法、バーコート法などの手段で塗布して、塗膜を形成し、その上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。また、フォトポリマーを用いる場合は、前記積層シートの保護層上に、フォトポリマーを同様にコーティングした後、前記原版を重ねてレーザー光を照射することにより複製することができる。
【0084】
このように、表面凹凸のレリーフとして回折格子やホログラムの干渉縞を光回折構造層の表面に記録する方法は、量産性があり、コストも低くできる点で特に好ましい。
【0085】
〔反射層〕
本発明の反射層は、回折構造体を覆うようにして設けられた光学薄膜からなり、回折構造体により発生する回折光を反射させる事を特徴とする。この為、回折構造体よりも屈折率が高い高屈折率材料を使用することによって光学効果を得ることもできる。この場合、両層の屈折率の差は、0.2以上であることが好ましい。屈折率の差を0.2以上にすることによって、回折構造体と反射層との界面で屈折および反射が起こり、回折構造体の構造
による光学効果を得ることができる。
【0086】
反射層の材料としては、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Agなどの金属材料の単体、またはこれらの化合物などが挙げられる。
【0087】
また、透明な反射層として使用できる高屈折率材料の例を以下に挙げる。以下に示す化学式または化合物名の後に続くカッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスとしては、Sb23(3.0)、Fe23(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb23(5)、WO3(5)、SiO(5)、Si23(2.5)、In23(2.0)、PbO(2.6)、Ta23(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、Si22(10)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al23(1)、GaO(2)などが挙げられる。有機ポリマーとしては、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)などが挙げられる。これらの材料は、屈折率、反射率、透過率などの光学特性や、耐候性、層間密着性などに基づいて適宜選択され、薄膜の形態で形成される。形成方法としては、膜厚、成膜速度、積層数、光学膜厚などの制御が可能な、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法など公知の方法を適宜使用することができるほか、これらの材料の微粒子を各種溶媒に分散した高輝性インキを塗工する事も可能である。
【0088】
また、前記の金属、セラミックス、又は有機ポリマーの微細な粉末やゾルまたは金属ナノ粒子などを有機高分子樹脂に分散して得られる高輝性光反射インキ、有機ポリマーや有機ポリマーの微粒子を使用することもできる。この場合、回折構造体が溶剤により変質などの変化が生じないように注意が必要であるが、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法など公知の印刷法により形成できる。これらのような印刷法により反射層を設ける場合には、乾燥後の該反射層の膜厚が0.001〜10μm程度になるように調整すればよい。
【0089】
また、反射層又は透明な反射層は部分的に設けてもよい。この場合、パスタ加工、水洗シーライト加工、レーザー加工などが例として挙げられるほか、例えば錫等を真空蒸着する事で微細な海島状の反射層を設ける事も可能である。
【0090】
前記透明な反射層の透過率は360nmから830nmの波長領域での透過率が20%以上であり、この範囲であれば、反射層の下に配置された情報、例えば顔写真、文字、パターン等の印刷情報が確認可能となる為である。
【0091】
なお、透明な反射層が配置された部分では、該反射層の下部に視認可能な情報を設ける事が出来、必要な情報と偽造防止構造を積層する事が可能となる。これらの技術により、例えば、IDカードやパスポート等で使用可能な、偽造防止用オーバーシート等に応用する事が可能である。
【0092】
〔体積ホログラム層〕
体積ホログラム層は、特許文献5に記載の公知の方法で形成すれば良い。例えば、体積ホログラム用の感光性樹脂組成物を乾燥後膜厚10μmとなるように塗布して体積型ホログラム形成用層を得た後、体積型ホログラム形成用層をミラー原版に密着させ、アルゴンイオンレーザー光(波長514.5nm)を乾燥塗膜の法線方向から35°で入射し、入射光と反射光を干渉させて体積型ホログラム(ホログラムミラー)を記録した後に、加熱、紫外線定着露光により固定化された体積型ホログラムを得る事もできる。
【0093】
さらに、体積型ホログラム層、及びその近接する層の層間にバリア層を設けることもできる。本発明に使用する体積型ホログラム用樹脂組成物や剥離層ならびに感熱性接着剤層の組み合わせによっては、経時的に体積型ホログラム層から他の層への低分子量成分の移行が起こり、これに起因して記録されたホログラムのピーク波長が青側(短波長側)に移行したり、剥離層等にこれが移行した場合にはその剥離性を変化させたりする場合がある。上記のようなバリア層を設けることによって、これらの阻害要因を解消することができるのである。
【0094】
このようなバリア層として用いる材料としては、そのバリア性を発現する材料であれば、特に制限はないが、通常、透明性有機樹脂材料を用いることによってその目的を達成することができる。中でも、無溶剤系の3官能以上、好ましくは6官能以上の、紫外線や電子線等の電離放射線に反応する電離放射線硬化性エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。特に、その中でもウレタン変性アクリレート樹脂がそのバリア性の高さから好ましく用いられる。
【0095】
また、これらの電離放射線硬化性樹脂としては、そのコーティング適性、最終的に得られるバリア層の硬度等を考慮すると、その分子量は500〜2000の範囲のものが好ましく用いられる。また、バリア層のコーティングは基本的に無溶剤系であるため、体積型ホログラム層、剥離層、感熱性接着剤層のどの層にも積層形成することができる。
【0096】
〔使用するレーザー〕
マーキングするレーザーの種類としては、CO2 レーザーに代表される遠赤外線レーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:YVOレーザーに代表される近赤外線パルスレーザー、可視光のパルスレーザー、エキシマレーザー、Nd:YAGレーザー又はNd:YVOレーザーの第3高調波を用いた紫外線レーザー、半導体レーザー、フェムト秒レーザー、ピコ秒レーザー等があげられる。特に、Nd:YAGレーザー、Nd:YVOレーザーは、高出力、高パルス安定性が利点としてあげられる。また、Nd:YAGレーザー又はNd:YVOレーザーの第3高調波を用いたレーザーは、高解像度、マーキング材料のUV光吸収性等が利点としてあげられる。また、フェムト秒レーザー、ピコ秒レーザー等の超短パルスレーザーは、材料を高温状態にすることなく分子の結合を切ることができるため、非熱での書き込みが可能となる。また、YAGもしくはダイオードレーザーは比較的小型の装置で大きな熱エネルギーを発する装置とすることができ、オンデマンドでの情報記録も実施可能である。
更には、綺麗な再生像を得る、立体画像を得る、又は焦点距離を調整する為に照射するレーザーを集光させたり、拡散させたりする事も可能である。この様な場合は公知の集光素子や光拡散素子を利用すればよい。
【0097】
〔情報記録体〕
本発明における情報記録体は、情報を記録する前、及び少なくとも一部の情報を記録した後の両方の状態である、請求項1から8に記載の情報記録体である。
このため、例えば請求項6に記載の情報記録体の様な体積ホログラムと情報記録層とが複層となっている情報記録体の場合、個別情報がレーザーによって印刷されていない状態であっても本発明に該当する。この様な情報記録体を製造しておき、実際に使用する際に個別情報などの情報を追記することでセキュリティ性が飛躍的に向上するほか、オンデマンドでの情報追記が可能となる。
【0098】
〔情報記録方法〕
本発明の情報記録方法は、レンズ集合体層側より照射されたレーザーが、レンズ集合体層の各レンズによって集光し、この集光したレーザーによって発色層を発色、記録すること
を特徴としている。なお、照射するレーザーの方向を変えることで複数の画像情報などの情報を記録することが可能である。
【0099】
本発明の情報記録方法では、集光していないレーザーでは発色層が発色せず、集光したレーザーによって発色する様にレーザーの出力、スポット径、周波数、走査速度、レンズの集光作用、レンズ焦点距離を調整する事が好ましい。この様な情報記録方法であれば、レンズを通らなかったレーザーによって、たとえば画像情報におけるコントラストが低下してしまうことを防止出来る。また、発色層上にパターン状に設けたレンズ集合体層を有する情報記録体であっても、レンズ部分でのみ記録することが可能となる。
【0100】
複数の画像情報の記録を応用した、立体画像の記録方法の例としては、立体物のある角度における2次元像を該角度からのみ再生可能とすることで得られるステレオグラムが挙げられる。この様なステレオグラムの原画は、立体物の任意の角度から撮影した複数の2次元画像情報を用いれば良い。得られた複数の2次元画像情報の記録は、撮影した角度からレーザー照射することで完成する。この様に記録された情報記録体の再生像は、様々な角度から見た場合でも立体感のある再生像となる。
【0101】
また、別の例としては、左右の視差画像情報を、同一平面に記録し、左右の眼にそれぞれの左右視画像情報のみが再生されるように記録することで両眼視差による立体画像を再生させるステレオグラムが挙げられる。この様なステレオグラムの原画は、右眼画像情報と左眼画像情報とをそれぞれ撮影した2次元画像情報を用いれば良い。得られた2つの2次元画像情報の記録は、撮影した角度(左右の眼の位置)からレーザー照射することで完成する。この様に記録された情報記録体の再生像は、奥行きを感じる立体感のある再生像となる。
前記の立体画像は、得られる再生像の例である。本発明の情報記録体は複数の画像情報を記録できることを特徴とする情報記録方法であり、得られる再生像は複数の2次元画像情報、2次元アニメーション(動画)、3次元画像情報であって良く、これらに限定されない。
【0102】
以上、実施例を元に各部材の詳細な説明をしてきたが、意匠性を向上すべく各層を着色することや、表裏面もしくは層間に印刷を施すことや、パターン状に設置した任意の層の段差を目立たなくさせるオーバーコートを施す事など、使用の目的により適宜利用可能である。また、各層の接着性を鑑み、各層間に接着層、接着アンカー層を設けることや、コロナ放電処理・プラズマ処理・フレーム処理等の各種易接着処理を施すことも可能である。
【0103】
更には、回折構造体の回折光以外の光を除去する目的で、この偽造防止構造体(1)の下に、黒色層(光吸収層)や着色層(特定波長吸収層)を全面、又は任意のパターンで設置する、又は、回折構造体の回折光以外の光を正反射方向へ反射、散乱させる為の反射層や散乱層を追加で設ける事も可能である。
【0104】
また、各単位セルのレンズ機能に支障の無い範囲で、最表層に保護層をコーティングしたり、又は反射防止構造を設けても良い
以下、具体的実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0105】
<実施例1>
φ5.0mm半球を六方細密充填方式にて並べた金型を形成し、射出成型により溶融したアクリル樹脂を射出し冷却することにより、φ5. 0mm半球の単位セルから成る六方細密充填パターンに整列されたレンズ集合体層を作成した。得られたレンズ集合体層に下記組成のドライラミネート用接着剤を4g/m2(固形重量)塗布し、発色層であるレーザーエングレービング用ポリエステルフィルム(TEIJIN-DUPON製MERINEX-LEO 100μm)とドライラミネートし、情報記録体を得た。
〔接着剤配合〕
タケラックA511(ポリオール 三井竹田ケミカル製) 10部
タケラックA-50(ポリイソシアネート 三井竹田ケミカル製) 1部
酢酸エチル/トルエン(重量比1/1) 9部。
【0106】
<実施例2>
φ0.5mm半球を六方細密充填方式にて並べた金型を形成し、フォトポリマー法によって、
レーザーエングレービング用ポリエステルフィルム(TEIJIN-DUPON製MERINEX-LEO 100μm)上に直接φ0.5mm半球の単位セルから成る六方細密充填パターンに整列されたレンズ集合体層を作成し、情報記録体を得た。
【0107】
<実施例3>
単位セルとして、φ0.1mm半球を六方細密充填方式にて並べた金型を使用したこと以外は実施例2と同様の方法で情報記録体を得た。
【0108】
<実施例4>
レーザーエングレービング用ポリエステルフィルム(TEIJIN-DUPON製MERINEX-LEO 100μm)上に、単位セルとして、φ0.5mmのガラスビーズを六方細密充填方式にて平面に並べた後、ポリエステル系透明樹脂を塗布しガラスビーズを固定して情報記録体を得た。
【0109】
<実施例5>
曲率半径50ミクロンで、レンズ頂点位置から基体裏面までの130μmのレンチキュラーレンズシートの平面側に、レーザー発色インキ(東洋インキ製 Elbima-Z117)を10g/m2(固形重量)塗布し、情報記録体を得た。
【0110】
実施例1から5により得られたそれぞれの情報記録体に対し、レーザーマーカ(キーエンス製YAGパルスレーザー)を使用して画像情報を記録した。画像情報の記録では、図7に示すような垂直方向からのレーザー照射により着色層の変色した部分301を生じさせた。また、図8に示すように、垂線より30°斜方からのレーザー照射により着色層の変色した部分301を生じさせた。
【0111】
前記のレーザー照射の条件は下記のようにした。
走査速度 : 500mm/s
レーザーパワー : 5%
線幅 : 0.2mm
線数 : 4本
前記の方法によって記録された実施例1から5の情報記録体は、垂直方向から観察すると図9にしめすような画像情報91が確認できた。また、垂線より30°斜方から観察すると図10にしめすような画像情報92が確認出来た。これにより、本発明の情報記録体を用いて、本発明の情報記録方法に基づく情報の記録を行い、その結果を観察することができた。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係る情報記録体の第1の実施の形態例を断面で示した説明図である。
【図2】本発明に係る情報記録体の第2の実施の形態例を断面で示した説明図である。
【図3】本発明に係る情報記録体の第3の実施の形態例を断面で示した説明図である。
【図4】本発明に係る情報記録体の第4の実施の形態例を断面で示した説明図である。
【図5】本発明に係る情報記録体の第5の実施の形態例を断面で示した説明図である。
【図6】本発明に係る情報記録体の第6の実施の形態例を断面で示した説明図である。
【図7】本発明に係わる情報記録体への記録方法の例を断面で示した説明図である。
【図8】本発明に係わる情報記録体への記録方法の、図7に続く次の例を断面で示した説明図である。
【図9】本発明に係わる情報記録体へ記録された情報を観察する例を断面で示した説明図である。
【図10】本発明に係わる情報記録体へ記録された情報を観察する他の例を断面で示した説明図である。
【図11】本発明に係わる情報記録体への視差情報の記録方法の例を断面で示した説明図である。
【図12】本発明に係わる情報記録体へ記録された一対の視差画像情報を観察する例を断面で示した説明図である。
【符号の説明】
【0113】
11・・・第1の情報記録体
12・・・第2の情報記録体
13・・・第3の情報記録体
14・・・第4の情報記録体
15・・・第5の情報記録体
16・・・第6の情報記録体
2・・・レンズ集合体層
3・・・発色層
31・・レリーフ型回折構造発色層
301・・・1番目の画像情報に対応する着色層の各単位セルのレンズの焦点で発色した部分
302・・・2番目の画像情報に対応する着色層の各単位セルのレンズの焦点で発色した部分
303・・・右視情報記録部分
304・・・左視情報記録部分
4・・・焦点距離調整層
5・・・反射層
6・・・レリーフ型回折構造層
7・・・体積ホログラム層
81・・・垂直に照射されるレーザー光
82・・・任意の角度802の方向から照射されるレーザー光
83・・・右視画像情報のパターンを照射するレーザー光
84・・・左視画像情報のパターンを照射するレーザー光
801・・・レンズ集合体に対して垂直な方向
802・・・レンズ平面の垂線に対して任意の角度
91・・・1番目の画像情報
92・・・2番目の画像情報
901・・・レンズ平面の垂線の方向における観察点
902・・・レンズ平面の垂線に対して任意の角度802の方向における観察点
903・・・右目
904・・・左目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、特定の強度以上の光の照射で、発色するか、または色が変化する発色層と、レンズ集合体層とを有する情報記録体であって、該レンズ集合体層が、集光作用を有するレンズ機能をもつ単位セルを平面状に隣り合って間隙がないように配置して成り、さらに、前記発色層を、前記レンズ集合体層に対して入射した光の集光される側に配置して成ることを特徴とする情報記録体。
【請求項2】
情報記録体であって、前記レンズ集合体層のレンズ焦点位置が、前記発色層の位置となるようにするための焦点距離調整層を有し、該焦点距離調整層が、前記発色層と前記レンズ集合体層との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の情報記録体。
【請求項3】
情報記録体であって、前記レンズ集合体層および焦点距離調整層の少なくともいずれか一方が任意のパターン状に部分的に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の情報記録体。
【請求項4】
情報記録体であって、少なくともレンズ集合体層が配置され、次に焦点距離調整層が配置され、次に発色層が配置され、該焦点距離調整層と該発色層の少なくも一部に、レリーフ型回折素子の機能を有するレリーフ型回折構造部が形成され、さらに該発色層の該レリーフ型回折構造部が形成された部分を含む面の少なくとも一部に反射層が配置される事を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報記録体。
【請求項5】
情報記録体であって、少なくともレンズ集合体層が配置され、さらに少なくとも発色層が配置され、次に、レリーフ型回折素子の機能を有するレリーフ型回折構造層が配置され、該レリーフ型回折構造層の配置された面の少なくも一部分に反射層が配置される事を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報記録体。
【請求項6】
情報記録体であって、前記レンズ集合体層の光の照射される側の反対側の面の下に配置されるいずれかの層として体積ホログラム層が配置されている事を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報記録体。
【請求項7】
前記発色層において、前記光が照射される前の前記発色層の光の透過率が50%以上であり、該光の波長が360nmから830nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報記録体。
【請求項8】
請求項1に記載の光がレーザー光であることを特徴とする請求項1〜7に記載の情報記録体。
【請求項9】
前記レンズ集合体層の集光効果により集光した光によって、前記発色層を発色させる事を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の情報記録体への情報記録方法であって、前記レンズ集合体層の各単位セルの頂点から成る仮想平面に対する光の照射角度を2つ以上の複数の角度から照射することで、該複数の角度のそれぞれの光の照射角度でのみ確認出来る画像の情報を、同一の情報記録体にそれぞれ記録することを特徴とする情報記録方法。
【請求項10】
前記レンズ集合体層の集光効果により集光した光によって、前記発色層を発色させる事を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の情報記録体への情報記録方法であって、前記レンズ集合体層の各単位セルの頂点から成る仮想平面に対する光の照射角度が、観察点における観察者の両眼を想定した2つの角度から成り、それぞれの角度から光を照射し、該それぞれの角度に対応する画像の情報を一対の視差画像情報として記録することで、観察者が両眼で該一対の視差画像情報を視認した際に視差を得られて、立体画像として認知できるようにすることを特徴とした情報記録方法。
【請求項11】
情報記録体への情報記録方法であって、前記一対の視差画像情報を、前記光の照射角度に対応して、情報記録体にそれぞれ記録することにより、該一対の視差画像情報を同一の情報記録体に複数記録することを特徴とする請求項10に記載の情報記録方法。
【請求項12】
前記光が、レーザー光であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の情報記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−131878(P2010−131878A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310578(P2008−310578)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】