説明

情報記録媒体、記録再生装置およびスタンパー

【課題】内周側から外周側までの全域において平坦性が良好な情報記録媒体を提供する。
【解決手段】複数の凸部を有する凹凸パターンによってデータトラックパターンおよびサーボパターンが基材の少なくとも一面側に形成されると共に凹凸パターンの各凹部に非磁性材料が埋め込まれ、データトラックパターンを構成する凹凸パターンは、各凸部が同心円状または螺旋状となるように形成され、サーボパターンを構成する凹凸パターンは、データトラックパターンと同心の複数の環状領域A1a〜A4aに区分けされると共に、基材の回転方向(矢印Rの向き)に沿った単位凸部長の各環状領域A1a〜A4a内における平均長をデータトラックパターンの中心Oから環状領域までの距離で除した値が内周側の環状領域よりも外周側の環状領域ほど小さくなるように各環状領域A1a〜A4a毎に単位凸部長が規定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸パターンによってデータトラックパターンおよびサーボパターンが形成されると共に凹凸パターンの各凹部に非磁性材料が埋め込まれた情報記録媒体と、その情報記録媒体を備えた記録再生装置と、その情報記録媒体を製造するためのスタンパーとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の情報記録媒体を備えた記録再生装置として、ディスクリートトラック型の磁気ディスクを備えて構成された磁気記録装置が特開平9−97419号公報に開示されている。この場合、磁気ディスクは、ガラスディスク基板(基材)の一面側に記録磁性部材(磁性材料)で同心円状の記録トラック(帯状の凸部)が形成されている。また、各記録トラックの間(凹部)には、磁気ディスクの平坦性を向上させると共に、隣り合う磁気トラックを磁気的に分離するためのガードバンド部材(非磁性材料)が埋め込まれてガードバンド部が形成されている。この磁気ディスクの製造に際しては、まず、基材の一面側に磁性材料をスパッタリングして記録磁気層を形成する。次いで、記録磁気層を覆うようにしてポジ形レジストをスピンコートしてプリベークした後に、原盤カッティング装置を用いてガードバンド部のパターンと同じパターンを描画して現像処理する。これにより、記録磁気層の上にレジストパターンが形成される。続いて、レジストパターンをマスクとして用いて記録磁気層をエッチング処理した後にアッシング装置によって残留マスクを除去する。これにより、基材の上に磁性材料からなる記録トラックやサーボパターン(凸部)が形成される。次いで、この状態の基材に非磁性材料をスパッタリングする。この際には、各記録トラック間の凹部が非磁性材料で埋め尽くされ、かつ、各記録トラックが非磁性材料で覆われるまで非磁性材料を十分にスパッタリングする。続いて、スパッタリングした非磁性材料の表面をドライエッチング処理することにより、非磁性材料から記録トラックの上面を露出させる。これにより、記録トラックおよびガードバンド部が交互に隣接した状態となり、磁気ディスクが完成する。
【特許文献1】特開平9−97419号公報(第6−12頁、第1−19図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の磁気ディスクには、以下の問題点がある。すなわち、従来の磁気ディスクでは、記録磁気層(記録トラック)を覆うようにして非磁性材料をスパッタリングした後に、記録トラックやサーボパターン等の凸部の上面が露出するまで非磁性材料をドライエッチング処理して表面を平坦化している。しかし、この製造方法に従って磁気ディスクを製造した場合には、磁気ディスクの外周側において、磁性材料で形成されている凸部の上に非磁性材料が大量に残留して(以下、凸部の上に残留した非磁性材料を「残渣」ともいう)厚手の非磁性材料によって凸部が覆われた状態となることがある。
【0004】
具体的には、例えば、図29に示すように、上記の製造方法に従って製造した磁気ディスク10xは、同心円状の複数の記録トラックで構成された凹凸パターン20tが形成されたトラックパターン領域Atと、トラッキングサーボ用の凹凸パターン20sxが形成されたサーボパターン領域Asxとが磁気ディスク10xの回転方向(同図に示す矢印Rの向き)で交互に並ぶように規定されて製造されている。この場合、この種の磁気ディスクを搭載した記録再生装置では、記録再生時に磁気ディスクを角速度一定で回転させるのが一般的となっている。したがって、この磁気ディスク10xでは、単位時間当たりに磁気ヘッド(図示せず)の下方を通過させられる磁気ディスク10x上の長さに比例して、磁気ディスク10xの回転方向に沿ったサーボパターン領域Asxの長さが磁気ディスク10xの内周側から外周側に向かうほど長くなるように(サーボパターン領域Asxが磁気ディスク10xの外周側ほど幅広となるように)規定されている。具体的には、図30,32に示すように、内周側領域Axiにおける内周側サーボパターン領域Asxiの長さよりも、外周側領域Axoにおける外周側サーボパターン領域Asxoの長さの方が凹凸パターン20tの中心O(図29参照)からの距離に比例して長くなっている。また、この種の磁気ディスクでは、中心Oからの距離が等しい部位においてサーボパターン領域Asx(凹凸パターン20sx)における凸部21sxi,21sxo(以下、区別しないときは「凸部21sx」ともいう)の回転方向に沿った単位凸部長(磁気信号の読み取りに際して「1つの凸部有り」と検出される基準の長さ:図31,33におけるL1xi,L1xo)と、凹部22sxi,22sxo(以下、区別しないときは「凹部22sx」ともいう)の回転方向に沿った単位凹部長(磁気信号の読み取りに際して「1つの凹部有り」と検出される基準の長さ:図31,33におけるL2xi,L2xo)とが等しくなるように規定されている。したがって、この磁気ディスク10xでは、内周側から外周側までの全域において単位凹部長に対する単位凸部長の比が1となっている。
【0005】
したがって、図31,33に示すように、この磁気ディスク10xでは、内周側サーボパターン領域Asxiにおける凸部21sxiの長さL1xiよりも、外周側サーボパターン領域Asxoにおける凸部21sxoの長さL1xoの方が凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して長くなっている。この場合、出願人は、非磁性材料15をドライエッチング処理して各凸部21sx,21sx・・を露出させる際に、その下方に存在する凸部21sxの長さが長いほど(凸部21sxの上面の幅が広いほど)、非磁性材料15に対するエッチングの進行が遅くなる現象を見出している。このため、図31に示すように、その長さL1xiが比較的短い内周側サーボパターン領域Asxiにおいて凸部21sxi上の残渣(非磁性材料15)が除去されて磁気ディスク10xの内周側において平坦性が良好となる(表面粗さRaの値が小さくなる:または、凹凸の高低差Hxiが小さくなる)ようなエッチング条件で磁気ディスク10xの内周側から外周側までの全域をエッチング処理したときには、図33に示すように、その長さL1xoが比較的長い外周側サーボパターン領域Asxoにおいて凸部21sxo上に比較的厚手の残渣(非磁性材料15)が存在する状態となる。したがって、このようなエッチング条件で非磁性材料15をエッチング処理したときには、磁気ディスク10xの外周側における表面粗さRa(または、凹凸の高低差Hxo)が非常に大きくなる。このように、従来の磁気ディスク10xには、その外周側において、凸部21sxoが厚手の非磁性材料15によって覆われた状態となることに起因して、磁気ディスク10xの平坦性が外周側において(中心Oからの距離が長くなるほど)著しく悪化するという問題点がある。
【0006】
また、従来の磁気ディスクでは、その製造工程において、記録磁気層を覆うようにして形成したポジ形レジストの層に原盤カッティング装置を用いて露光パターンを描画した後に現像処理することでレジストパターンが形成される。この場合、露光パターンの描画にある程度の時間を要するため、記録磁気層をエッチング処理するためのレジストパターン(マスク)を短時間で形成するのが困難となっている。このため、この点を改善するのが好ましい。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、内周側から外周側までの全域において平坦性が良好な情報記録媒体、平坦性が良好な情報記録媒体を有する記録再生装置、およびエッチング処理用の凹凸パターンを短時間で容易に形成し得るスタンパーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく本発明に係る情報記録媒体は、複数の凸部を有する凹凸パターンによってデータトラックパターンおよびサーボパターンが基材の少なくとも一面側に形成されると共に当該凹凸パターンの各凹部に非磁性材料が埋め込まれ、前記データトラックパターンを構成する凹凸パターンは、前記各凸部が同心円状または螺旋状となるように形成され、前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記データトラックパターンと同心の複数の環状領域に区分けされると共に、前記基材の回転方向に沿った単位凸部長の当該各環状領域内における平均長を当該データトラックパターンの中心から当該環状領域までの距離で除した値が内周側の当該環状領域よりも外周側の当該環状領域ほど小さくなるように当該各環状領域毎に当該単位凸部長が規定されている。
【0009】
なお、本明細書における「各凸部が同心円状または螺旋状となるように形成されたデータトラックパターン」には、凹凸パターンの凹部によって情報記録媒体における半径方向および回転方向の双方に対して分離された単位記録要素としての凸部が同心円状または螺旋状に配列させられているパターンド媒体のデータトラックパターンが含まれる。また、本明細書における「単位凸部長」とは、情報記録媒体からの磁気信号の読み取りに際して「1つの凸部有り」と検出するための基準の長さをいう。したがって、実際の情報記録媒体では、サーボデータの内容に応じて、単位凸部長の整数倍の長さの凸部が形成されてサーボパターンが構成される。この場合、「1つの凸部有り」と検出するための基準の長さについては、サーボパターン全体において1つの共通する長さに規定してもよいし、サーボパターンを構成する各種パターンの種類(プリアンブルパターン、アドレスパターンおよびバーストパターン等)に応じて各パターン毎に相違する長さに規定することもできる。また、一般的には、凸部の形成部位は「検出信号の出力有り」または「信号レベルがHighの検出信号」として検出される。さらに、本明細書における「データトラックパターンの中心から環状領域までの距離」とは、例えば、「データトラックパターンの中心から、環状領域の最内周部位までの距離」や、「データトラックパターンの中心から、環状領域の最外周部位までの距離」のみならず、「データトラックパターンの中心から、環状領域の半径方向における中央部位などの任意の部位までの距離」などがこれに含まれる。ただし、この距離を規定する部位はすべての環状領域において同じ部位とする。
【0010】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記基材の回転方向に沿った単位凹部長に対する前記単位凸部長の比が前記環状領域内において当該環状領域の内周側から当該環状領域の外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凸部長および当該単位凹部長が規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。なお、本明細書における「単位凹部長」とは、情報記録媒体からの磁気信号の読み取りに際して「1つの凹部有り」と検出するための基準の長さをいう。したがって、実際の情報記録媒体では、サーボデータの内容に応じて、単位凹部長の整数倍の長さの凹部が形成されてサーボパターンが構成される。この場合、「1つの凹部有り」と検出するための基準の長さについては、サーボパターン全体において1つの共通する長さに規定してもよいし、サーボパターンを構成する各種パターンの種類(プリアンブルパターン、アドレスパターンおよびバーストパターン等)に応じて各パターン毎に相違する長さに規定することもできる。また、一般的には、凹部の形成部位は「検出信号の出力なし」または「信号レベルがLow の検出信号」として検出される。
【0011】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凹部長が前記環状領域内において当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど長くなるように規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。
【0012】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凸部長が前記環状領域内における当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。なお、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凸部長がいずれかの環状領域内において僅かにばらついた状態になったとしても、それらの長さ(製造目標としての所定の長さを中心とする所定範囲内の長さ)は等しい長さの範疇に含まれるものとする。また、本明細書における「ほぼ等しい長さ」には、製造目標としての所定の長さを中心として、製造誤差とは別に当初から規定した僅かな幅の許容範囲内の長さが含まれるものとする。
【0013】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凸部長および前記単位凹部長の合計長が前記環状領域内において前記データトラックパターンの中心からの距離に比例して当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど長くなるように規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。なお、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凸部長と単位凹部長との合計長がいずれかの環状領域内においてデータトラックパターンの中心からの距離に対して比例する長さとは僅かに相違する長さになったとしても、その凹凸パターンにおける単位凸部長と単位凹部長との合計長は、中心からの距離に比例している長さの範疇に含まれるものとする。
【0014】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凸部長が前記環状領域内において前記データトラックパターンの中心からの距離に比例して当該環状領域の内周側から当該環状領域の外周側に向かうほど長くなるように規定されると共に、前記基材の回転方向に沿った単位凹部長と前記単位凸部長の合計長が当該環状領域内において前記データトラックパターンの中心からの距離に比例して当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど長くなるように当該単位凸部長および当該単位凹部長が規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。なお、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凸部長がいずれかの環状領域内においてデータトラックパターンの中心からの距離に対して比例する長さとは僅かに相違する長さになったとしても、その凹凸パターンにおける単位凸部長は、中心からの距離に比例している長さの範疇に含まれるものとする。また、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凸部長と単位凹部長との合計長がいずれかの環状領域内においてデータトラックパターンの中心からの距離に対して比例する長さとは僅かに相違する長さになったとしても、その凹凸パターンにおける単位凸部長と単位凹部長との合計長は、中心からの距離に比例している長さの範疇に含まれるものとする。
【0015】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凸部長の前記環状領域内における前記平均長が前記内周側の環状領域から前記外周側の環状領域までの全環状領域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。なお、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凸部長の環状領域内における平均長が僅かにばらついた状態になったとしても、それらの平均長(製造目標としての所定の長さを中心とする所定範囲内の長さ)は等しい長さの範疇に含まれるものとする。
【0016】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凸部長を前記データトラックパターンの中心からの距離で除した値が前記環状領域内において当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凸部長が規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。
【0017】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、前記基材の回転方向に沿った単位凹部長を前記データトラックパターンの中心からの距離で除した値が前記環状領域内において当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凹部長が規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。
【0018】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凸部長が前記環状領域内における当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。なお、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凸部長がいずれかの環状領域内において僅かにばらついた状態になったとしても、それらの長さ(製造目標としての所定の長さを中心とする所定範囲内の長さ)は等しい長さの範疇に含まれるものとする。
【0019】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凹部長が前記環状領域内における当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されて前記サーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。 なお、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凹部長がいずれかの環状領域内において僅かにばらついた状態になったとしても、それらの長さ(製造目標としての所定の長さを中心とする所定範囲内の長さ)は等しい長さの範疇に含まれるものとする。
【0020】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの情報記録媒体と、前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータに基づいてサーボ制御を実行する制御部とを備えている。
【0021】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの情報記録媒体と、前記各環状領域毎に予め規定された読み出し周波数情報(サーボパターンの検出時(読み出し時)に使用されるクロックの基準となる周波数情報)に基づいて前記情報記録媒体から前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出してサーボ制御する制御部とを備えている。
【0022】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの情報記録媒体と、前記データトラックパターンの中心からの距離に応じて予め規定された読み出し周波数情報に基づいて前記情報記録媒体から前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出してサーボ制御する制御部とを備えている。
【0023】
また、本発明に係るスタンパーは、上記のいずれかの情報記録媒体における前記凹凸パターンの凹部に対応して形成された凸部と、前記情報記録媒体における前記凹凸パターンの凸部に対応して形成された凹部とを有する凹凸パターンが形成されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、各環状領域内における単位凸部長の平均長をデータトラックパターンの中心から環状領域までの距離で除した値が内周側の環状領域よりも外周側の環状領域ほど小さくなるように各環状領域毎に単位凸部長を規定してサーボパターンを構成する凹凸パターンを構成したことにより、単位凸部長がその内周側から外周側に向けて徐々に長くなるように凹凸パターンが形成されている従来の磁気ディスク10xと比較して、外周側の環状領域における単位凸部長を十分に短くすることができる。したがって、各凸部を覆うようにして形成した非磁性材料の層をエッチング処理する際に、外周側の環状領域における凸部の上の残渣の厚みと内周側の環状領域における凸部の上の残渣の厚みとの差(すなわち、情報記録媒体の内周側の凸部上における残渣の厚みと情報記録媒体の外周側の凸部上における残渣の厚みとの差)が大きくなる事態を回避することができる。また、内周側の環状領域から外周側の環状領域までの全域において各凸部の上に非磁性材料(残渣)が存在しないように非磁性材料をエッチング処理したときに、内周側の環状領域内において非磁性材料のみならず凸部までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部の上の残渣を取り除くことができる。したがって、情報記録媒体の平坦性を全域に亘って良好に維持することができる。このため、情報記録媒体の全域において、情報記録媒体に対する磁気ヘッドの浮上量をほぼ同等に維持することができる結果、この情報記録媒体を備えている記録再生装置によれば、安定した記録再生を実行することができる。
【0025】
また、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凹部長に対する単位凸部長の比が各環状領域内において環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長および単位凹部長を規定したことにより、各環状領域内における外周側の単位凸部長を十分に短くすることができる。したがって、情報記録媒体の平坦性を環状領域内における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域に亘って良好に維持することができる。このため、各環状領域内における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において、この情報記録媒体に対する磁気ヘッドの浮上量をほぼ同等に維持することができる結果、安定した記録再生を実行することができる。
【0026】
さらに、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凹部長が環状領域内において環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど長くなるように規定したことにより、例えば単位凹部長を環状領域内における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域に亘って等しい長さに規定して単位凸部長を変化させることで単位凹部長に対する単位凸部長の比を環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど小さくする構成とは異なり、環状領域における外周側において単位凸部長が過度に短くなる事態を回避することができる。したがって、環状領域における外周側の凸部からの磁気的信号の読み出しエラーの発生を確実に回避することができる。
【0027】
また、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凸部長が環状領域における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において等しい長さとなるように規定したことにより、各環状領域における凸部(磁性材料)の上に形成される残渣(非磁性材料)の厚みを環状領域の内周側から環状領域の外周側の全域において均一に維持することができる。また、環状領域における内周側の各凸部の上に残渣が生じないように非磁性材料をエッチング処理したときにその環状領域における外周側の凸部がエッチングされる事態や外周側の凸部の上に残渣が生じる事態を回避することができ、環状領域における外周側の各凸部の上に残渣が生じないように非磁性材料をエッチング処理したときにその環状領域の内周側において凸部がエッチングされる事態や内周側の凸部の上に残渣が生じる事態を回避することができる。
【0028】
さらに、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凸部長および単位凹部長の合計長(すなわち、凸部および凹部の形成ピッチ)がデータトラックパターンの中心からの距離に比例して環状領域内において環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど長くなるように規定したことにより、情報記録媒体を角速度一定の条件で回転させつつサーボパターン領域からサーボデータを読み出す際に使用されるクロックの基準となる周波数情報(読み出し周波数情報)を一つの環状領域内において変化させることなく、その環状領域における環状領域の内周側から環状領域の外周側までのサーボパターン領域からサーボデータを確実に読み出す(検出する)ことができる。したがって、例えば、環状領域の内周側から外周側まで磁気ヘッドをシーク動作させる際における読み出し周波数情報の周波数切替え処理を不要とすることができる結果、シーク動作を短時間で実行することができる。このため、データアクセスを高速に行うことができる。また、読み出し周波数情報として環状領域の数に対応する種類の周波数情報を出力できればよいため、簡易な構成の制御部によってトラッキングサーボを行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凸部長が環状領域内においてデータトラックパターンの中心からの距離に比例して環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど長くなり、かつ単位凹部長と単位凸部長の合計長が環状領域内においてデータトラックパターンの中心からの距離に比例して環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど長くなるように単位凸部長および単位凹部長を規定したことにより、外周側の環状領域において単位凸部長が長くなる事態を回避しつつ、1つの環状領域内において読み出し周波数情報の周波数を変化させることなく、サーボデータの読み取りができるため、例えば、環状領域の内周側から外周側まで磁気ヘッドをシーク動作させる際における読み出し周波数情報の周波数切替え処理を不要とすることができる。したがって、シーク動作を短時間で実行することができるため、データアクセスを高速に行うことができる。また、読み出し周波数情報として環状領域の数に対応する種類の周波数情報を出力できればよいため、簡易な構成の制御部によってトラッキングサーボを行うことができる。また、この情報記録媒体および記録再生装置によれば、磁気ヘッドの下方を単位凸部長の凸部および単位凹部長の凹部が通過させられる時間が1つの環状領域内における内周側と外周側とで等しくすることができる。したがって、磁気ヘッドが検出するサーボデータの単位凸部長および単位凹部長の信号形状を1つの環状領域内における内周側から外周側までの全域において等しくすることができる。このため、より一層確実にサーボデータを読み出す(検出する)ことができる。
【0030】
さらに、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凸部長の環状領域内における平均長が内周側の環状領域から外周側の環状領域までの全環状領域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定したことにより、内周側の環状領域から外周側の環状領域までのすべての環状領域(すなわち、情報記録媒体の全域)に亘って平坦性にばらつきを生じさせることなく良好に維持することができる。この結果、情報記録媒体の全域において、情報記録媒体に対する磁気ヘッドの浮上量を均一に維持することができる。
【0031】
また、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が環状領域内において環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長を規定したことにより、回転方向に沿った単位凸部長がデータトラックパターンの中心からの距離に比例して長くなるように(単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域に亘って等しくなるように)凹凸パターンが形成されている従来の磁気ディスク10xと比較して、環状領域内における外周側の単位凸部長を十分に短くすることができる。したがって、各凸部を覆うようにして形成した非磁性材料の層をエッチング処理する際に、環状領域内における外周側の凸部の上の残渣の厚みと内周側の凸部の上の残渣の厚みとの差が大きくなる事態を回避することができる。また、環状領域における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において各凸部の上に非磁性材料(残渣)が存在しないように非磁性材料をエッチング処理したときに、環状領域の内周側において非磁性材料のみならず凸部(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部の上の残渣を取り除くことができる。したがって、情報記録媒体の平坦性を環状領域内における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域に亘って良好に維持することができる。このため、環状領域内における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において、情報記録媒体に対する磁気ヘッドの浮上量を同等に維持することができる結果、この記録再生装置によれば、安定した記録再生を実行することができる。
【0032】
さらに、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凹部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が環状領域内において環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど小さくなるように単位凹部長を規定してサーボパターンを構成する凹凸パターンを形成したことにより、基材の回転方向に沿った単位凹部長がデータトラックパターンの中心からの距離に比例して長くなるように(単位凹部長を中心からの距離で除した値が内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように)凹凸パターンが形成されている従来の情報記録媒体(磁気ディスク10x)と比較して、環状領域内における外周側の単位凹部長を十分に短くすることができる。この場合、出願人は、回転方向に沿った長さが過剰に長い凹部の存在部位において、その凹部を挟むようにして形成されている凸部の上の非磁性材料に対するエッチングの進行が遅くなる現象を見出している。一方、この情報記録媒体によれば、上記のように各凹部の単位凹部長が十分に短いため、凸部の上の非磁性材料に対するエッチングの進行が遅くなる事態を招くことなく、非磁性材料の層をエッチング処理することができる結果、環状領域内における外周側の凸部上の残渣の厚みと内周側の凸部上の残渣の厚みとの差が大きくなる事態を回避することができる。また、環状領域内における内周側から外周側までの全域において各凸部の上に非磁性材料(残渣)が存在しないように非磁性材料をエッチング処理したときに、環状領域の内周側において非磁性材料のみならず凸部(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部の上の残渣を取り除くことができる。これにより、情報記録媒体の平坦性を環状領域における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域に亘って一層良好に維持することができる。
【0033】
また、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凸部長が環状領域における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において等しい長さとなるように規定してサーボパターンを構成する凹凸パターンを形成したことにより、各凸部(磁性材料)上の非磁性材料に対するエッチング条件(エッチングレート)を環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において均一に維持することができる。したがって、環状領域内における外周側の凸部上の残渣の厚みと内周側の凸部上の残渣の厚みとの差を十分に小さくすることができる。また、環状領域内における内周側から外周側までの全域において各凸部の上に非磁性材料(残渣)が存在しないように非磁性材料をエッチング処理したときに、環状領域の内周側において非磁性材料のみならず凸部(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部の上の残渣を取り除くことができる。これにより、情報記録媒体の平坦性を環状領域内において環状領域の内周側から環状領域の外周側まで全域に亘って一層良好、かつ一層均一に維持することができる。この結果、情報記録媒体の環状領域内における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において、情報記録媒体に対する磁気ヘッドの浮上量を均一に維持することができる。
【0034】
さらに、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凹部長が環状領域内における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において等しい長さとなるように規定してサーボパターンを構成する凹凸パターンを形成したことにより、各凹部を挟むようにして形成されている各凸部(磁性材料)上の非磁性材料に対するエッチング条件(エッチングレート)を環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において均一に維持することができる。したがって、環状領域内における外周側の凸部上の残渣の厚みと内周側の凸部上の残渣の厚みとの差を十分に小さくすることができる。また、環状領域内における内周側から外周側までの全域において各凸部の上に非磁性材料(残渣)が存在しないように非磁性材料をエッチング処理したときに、環状領域の内周側において非磁性材料のみならず凸部(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部の上の残渣を取り除くことができる。これにより、情報記録媒体の平坦性を環状領域内における環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域に亘って一層良好、かつ一層均一に維持することができる。
【0035】
また、本発明に係る記録再生装置によれば、各環状領域毎に予め規定された読み出し周波数情報に基づいて制御部が情報記録媒体からサーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出すことにより、例えば、情報記録媒体の内周側の環状領域内から外周側の環状領域内まで磁気ヘッドをシーク動作させる際における検出用クロックの周波数切替え処理の回数を少なくすることができる。したがって、シーク動作を短時間で実行することができるため、データアクセスを高速に行うことができる。
【0036】
また、本発明に係る記録再生装置によれば、データトラックパターンの中心からの距離に応じて予め規定された読み出し周波数情報に基づいて制御部が情報記録媒体からサーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出すことにより、情報記録媒体を角速度一定の条件で回転させつつサーボパターン(サーボデータ)を確実に読み出すことができる。
【0037】
また、本発明に係るスタンパーによれば、上記のいずれかの情報記録媒体における凹凸パターンの凹部に対応して形成した凸部と、前記情報記録媒体における前記凹凸パターンの凸部に対応して形成した凹部とを有する凹凸パターンを備えたことにより、例えば、電子線描画装置を用いて情報記録媒体製造用の中間体における樹脂層に露光パターンを描画して現像処理することでエッチング処理用の凹凸パターン(サーボパターン等を形成するエッチング処理時にマスクとして使用する凹凸パターン)を形成する製造方法とは異なり、樹脂層にスタンパーの凹凸パターンを押し付けるだけでエッチング処理用の凹凸パターンを短時間で容易に形成することができる。また、1枚のスタンパーによって多数の中間体にエッチング処理用の凹凸パターンを形成することができる。したがって、情報記録媒体の製造コストを十分に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係る情報記録媒体、記録再生装置およびスタンパーの最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0039】
図1に示すハードディスクドライブ1は、本発明に係る記録再生装置の一例としての磁気記録再生装置であって、スピンドルモータ2、磁気ヘッド3、信号変換部4、検出用クロック出力部5、サーボデータ検出部6、ドライバ7、制御部8、ROM9および磁気ディスク10aを備えて構成されている。この場合、磁気ディスク10aは、一例として、垂直記録方式で記録データを記録可能なディスクリートトラック型の磁気ディスク(パターンド媒体)であって、本発明における情報記録媒体に相当する。具体的には、図2に示すように、この磁気ディスク10aは、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基材11の上にこの順で形成されている。この場合、中間層13の上に形成されている磁性層14は、磁性材料で形成された凸部21,21・・と凹部22,22・・とが交互に形成されることによって所定の凹凸パターン20を構成する。また、凹部22,22・・には、SiO等の非磁性材料15が埋め込まれている。さらに、凹部22に埋め込まれた非磁性材料15、および凸部21の上には、一例としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜がCVD法によって成膜されて厚みが2nm程度の保護層(DLC膜)16が形成されている。また、この磁気ディスク10aでは、保護層16の表面に潤滑剤(一例として、フッ素系の潤滑剤)が塗布されている。
【0040】
ガラス基材11は、本発明における基材に相当し、直径2.5インチのガラス板を表面粗さRaが0.2〜0.3nm程度となるように表面研磨して厚みが0.6mm程度となるように形成されている。なお、本発明における基材は、ガラス材料に限定されるものではなく、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で形成することができる。軟磁性層12は、CoZrNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが100nm〜200nm程度となるように形成されている。中間層13は、磁性層14を形成するための下地層として機能する層であって、CrやCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが40nm程度となるように形成されている。磁性層14は、磁性材料で形成された凸部21,21・・で構成された層であって、後述するように、例えばCoCrPt合金をスパッタリングする処理と、レジストパターン等をマスクとして用いてエッチング処理して凹部22,22・・を形成する処理とがこの順で実行されることによって、凸部21,21・・(凹凸パターン20)が形成されて構成されている。
【0041】
この場合、図3に示すように、この磁気ディスク10aでは、凹凸パターン20(凹凸パターン20t)の中心Oを中心とする同心円状の(すなわち、凹凸パターン20tと同心の)4つの環状領域A1a〜A4a(本発明における複数の環状領域の一例:以下、区別しないときには、環状領域Aaともいう)に区分けされて凹凸パターン20(凹凸パターン20t、凹凸パターン20sa)が形成されている。なお、本発明における「複数の環状領域」の数は上記の4つに限定されず、磁気ディスク10aの内周側から外周側までを2つ以上の任意の数に区分けすることができる。また、この磁気ディスク10aでは、トラックパターン領域At,Atの間にサーボパターン領域Asaが設けられてトラックパターン領域Atおよびサーボパターン領域Asaが磁気ディスク10aの回転方向(矢印Rの向き)において交互に並ぶように形成されている。
【0042】
また、図5,7に示すように、トラックパターン領域At(各環状領域Aaにおける内周側の内周側トラックパターン領域Ati、および各環状領域Aaにおける外周側の外周側トラックパターン領域Ato)には、データトラックパターンとしての凹凸パターン20tが形成されている。この場合、凹凸パターン20tは、磁気ディスク10aの回転中心を中心O(図3参照)とする同心円状の多数の凸部21t,21t・・(データ記録用トラック)と、各凸部21t,21t・・の間の凹部22t,22t・・とで構成されている。なお、磁気ディスク10aの回転中心と凹凸パターン20tの中心Oとが一致しているのが好ましいが、実際には、製造誤差に起因する30〜50μm程度の極く小さなずれが生じることがある。しかし、この程度のずれ量であれば磁気ヘッド3に対するトラッキングサーボ制御が十分に可能であるため、回転中心と中心Oとは、実質的には同様であるといえる。また、凹凸パターン20tの凹部22t,22t・・には、非磁性材料15が埋め込まれてトラックパターン領域Atの表面が平坦化されている。
【0043】
また、図4〜8に示すように、サーボパターン領域Asa(各環状領域Aaにおける内周側の内周側サーボパターン領域Asai、および各環状領域Aaにおける外周側の外周側サーボパターン領域Asao)には、サーボパターンとしての凹凸パターン20saが形成されている。この場合、図5〜8に示すように、凹凸パターン20saは、プリアンブルパターン、アドレスパターンおよびバーストパターンなどの各種サーボパターンを構成する凸部21s,21s・・(凸部21siおよび凸部21so)並びに凹部22s,22s・・(凹部22siおよび凹部22so)で構成されている。また、この磁気ディスク10aでは、回転方向(各図における矢印Rの向き)に沿った凸部21sの長さと凹部22sの長さとの合計長(すなわち、凸部21sおよび凹部22sの形成ピッチ)が各環状領域Aa内において凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例してその内周側からその外周側に向けて徐々に長くなるように規定されている。したがって、図4に示すように、各環状領域Aaは、回転方向に沿った長さが環状領域Aaにおける内周側の長さL4iよりも、外周側の長さL4oの方が僅かに長くなっている。
【0044】
また、この磁気ディスク10aでは、回転方向に沿った凸部21sの長さが環状領域Aaにおける内周側から外周側までの全域において等しい長さとなるように(本発明における「単位凸部長が等しい長さ、または、ほぼ等しい長さ」となるように規定した一例)各凸部21s,21s・・が形成されると共に、回転方向に沿った凹部22sの長さが各環状領域Aaの内周側から外周側に向けて徐々に長くなるように各凹部22s,22s・・が形成されている。したがって、この磁気ディスク10aでは、回転方向に沿った凹部22sの長さに対する凸部21sの長さの比が各環状領域Aaにおいてその内周側からその外周側に向けて徐々に小さくなるように規定されている。さらに、このこの磁気ディスク10aでは、凸部21sの長さがすべての環状領域Aaに亘って等しい長さとなるように規定されている。この結果、この磁気ディスク10aでは、各環状領域Aa内の凸部21sの平均長がすべての環状領域Aaにおいて等しくなると共に、各環状領域Aa内の凸部21sの平均長を凹凸パターン20tの中心Oから環状領域Aaまでの距離(一例として、環状領域Aaにおける最内周の部位とする)で除した値が内周側の環状領域A1aから外周側の環状領域A4aに向かうほど小さくなっている。また、図4に示すように、この磁気ディスク10aでは、各環状領域Aaの内周側の長さL4i,L4i・・が互いに等しくなるように規定され、各環状領域Aaの外周側の長さL4o,L4o・・が互いに等しくなるように規定されている。
【0045】
具体的には、図5,6に示すように、各環状領域Aaにおける内周側領域Aia(一例として、環状領域A1a内における中心Oからの距離が11mmの部位のプリアンブルパターンの形成領域)では、凹部22siの長さL2i(一例として、220nm)と凸部21siの長さL1i(一例として、220nm)との合計長である長さL3iが440nmとなるように規定されている。これに対して、図7,8に示すように、各環状領域Aaにおける外周側領域Aoa(一例として、環状領域A1a内における中心Oからの距離が16mmの部位のプリアンブルパターンの形成領域)では、凹部22soの長さL2o(一例として、420nm)と凸部21soの長さL1o(一例として、凸部21siの長さL1iと等しい220nm)との合計長である長さL3oが640nmとなっている。この結果、この磁気ディスク10aでは、図6に示すように、各環状領域Aaにおいて、その内周側領域Aiaにおける凹凸パターン20saの凹部22siの長さL2iに対する凸部21siの長さL1iの比が1であるのに対して、図8に示すように、外周側領域Aoaにおける凹部22soの長さL2oに対する凸部21soの長さL1oの比が11/21となっている。
【0046】
この場合、凹部22sの長さ(単位凹部長)に対する凸部21sの長さ(単位凸部長)の比については、上記のプリアンブルパターンのみならず、アドレスパターンやバーストパターンを構成する凹凸パターン20saについても同様に規定されている。また、バーストパターンについては、磁気ディスク10aの回転方向に沿って複数の矩形状の凸部21s,21s・・が凹部22sを挟んで並んでいる領域において、単位凹部長に対する単位凸部長の比が上記の条件を満たすように規定されている。なお、図7,8では、本発明についての理解を容易とするために、凹部22soの長さL2oに対する凸部21soの長さL1oの比を誇張して小さくした状態(凹部の長さを誇張して長くした状態)を図示している。また、図5〜8では、サーボパターンにおけるプリアンブルパターンおよびバーストパターンを模式的に図示しており、理解を容易にすべく、回転方向に沿った各凸部21s,21s・・や各凹部22s,22s・・の長さをサーボパターンの単位凸部長および単位凹部長のみで図示している。したがって、実際の磁気ディスク10aでは、凸部21s,21s・・や凹部22s,22s・・の数、形成位置および長さが各図に示す状態とは異なり、トラッキングサーボ制御に必要なトラックアドレスおよびセクターアドレス等の情報(パターン)を含む各種の制御用データに対応して、凸部21sや凹部22sのそれぞれの数、形成位置および長さが規定されて凹凸パターン20saが形成されている。この場合、凸部21sや凹部22sの実際の長さは、凸部21sや凹部22sの長さ(単位凸部長および単位凹部長)の整数倍の長さとなる。
【0047】
一方、スピンドルモータ2は、制御部8の制御下で磁気ディスク10aを一例として4200rpmの回転数で定速回転させる。磁気ヘッド3は、図1に示すように、スイングアーム3aを介してアクチュエータ3bに取り付けられて磁気ディスク10aに対する記録データの記録再生時において磁気ディスク10a上を移動させられる。また、磁気ヘッド3は、磁気ディスク10aの各環状領域Aaにおけるサーボパターン領域Asaからのサーボデータの読み出しと、各環状領域Aaにおけるトラックパターン領域At(凸部21t,21t・・)に対する記録データの磁気的な書き込みと、各環状領域Aaにおけるトラックパターン領域Atに磁気的に書き込まれている記録データの読み出しとを実行する。なお、磁気ヘッド3は、実際には磁気ディスク10aに対して磁気ヘッド3を浮上させるためのスライダの底面(エアベアリング面)に形成されているが、このスライダについての説明および図示を省略する。アクチュエータ3bは、制御部8の制御下でドライバ7から供給される駆動電流によってスイングアーム3aをスイングさせることにより、磁気ヘッド3を磁気ディスク10a上の任意の記録再生位置に移動させる。
【0048】
信号変換部4は、アンプ、LPF(Low Pass Filter)およびA/D変換器等(図示せず)を備え、磁気ヘッド3によって磁気ディスク10aから取得された各種信号を増幅してノイズを除去した後にA/D変換して出力する。ROM9は、制御部8が出力すべき読み出し周波数情報についてのクロックデータDclを各環状領域Aa毎に記憶している。この場合、制御部8は、後述するように、クロックデータDclに基づき、一例として、同一環状領域Aa内では周波数を変化させず、かつ、凹凸パターン20tの中心Oから離れている環状領域Aa内の記録トラックにオントラックさせるときほど周波数が高くなるように読み出し周波数情報の周波数を変化させて検出用クロック出力部5に出力する。検出用クロック出力部5は、制御部8がクロックデータDclに基づいて出力する読み出し周波数情報を取得すると共に、信号変換部4から出力されたデジタルデータのうちから、磁気ヘッド3を介して各環状領域Aaのサーボパターン領域Asaから読み出されたプリアンブル用のデータ(信号)を取得(検出)する。また、検出用クロック出力部5は、読み出し周波数情報とプリアンブル用のデータとに基づいて位相や周波数等の調整を行うことにより、実際のサーボデータ検出時に使用される検出用クロックClsを生成してサーボデータ検出部6に出力する。
【0049】
この場合、この磁気ディスク10aでは、前述したように、各環状領域Aaにおける長さL4i,L4i・・が互いに等しく、かつ長さL4o,L4o・・が互いに等しくなるように凹凸パターン20saが形成されている。このため、磁気ディスク10aを角速度一定の回転速度で定速回転させたときには、磁気ヘッド3の下方をサーボパターン領域Asaが通過させられる時間が外周側の環状領域Aaほど短時間となる。したがって、制御部8は、一例として、磁気ディスク10aが4200rpmで定速回転させられている状態において、磁気ヘッド3が環状領域A1a内の記録トラック(凸部21t)にオントラックさせられているときには、22MHzの読み出し周波数情報を出力し、磁気ヘッド3が環状領域A2a内の記録トラックにオントラックさせられているときには、32MHzの読み出し周波数情報を出力し、環状領域A3a内の記録トラックにオントラックさせられているときには、42MHzの読み出し周波数情報を出力し、環状領域A4a内の記録トラックにオントラックさせられているときには、52MHzの読み出し周波数情報を出力する。
【0050】
サーボデータ検出部6は、検出用クロック出力部5から出力された検出用クロックClsに同期して読み込むことにより、信号変換部4から出力されたデジタルデータからサーボデータDsを取得(検出)して制御部8に出力する。ドライバ7は、制御部8からの制御信号に従ってアクチュエータ3bを制御して磁気ヘッド3を所望の記録トラック(凸部21t)にオントラックさせる。制御部8は、ハードディスクドライブ1を総括的に制御する。また、制御部8は、サーボデータ検出部6から出力されるヘッド位置情報に基づいて磁気ヘッド3が磁気ディスク10a上の内周側の各環状領域Aaから外周側の各環状領域Aaまでの間のいずれの環状領域Aa内の記録トラックにオントラックしているかを特定すると共に、所望の磁気ヘッド3の位置(磁気ヘッド3を移動させようとする環状領域Aaおよび記録トラックの位置)に応じて、環状領域Aa毎に予め規定されてROM9に記憶させられているクロックデータDcl(周波数変更条件についてのデータ)に応じて前述したように読み出し周波数情報の周波数を変化させて検出用クロック出力部5に出力する。さらに、制御部8は、サーボデータ検出部6から出力されたサーボデータDsに基づいてドライバ7を制御する。
【0051】
次に、磁気ディスク10aの製造方法、および使用方法について、図面を参照して説明する。
【0052】
まず、ガラス基材11の上にCoZrNb合金をスパッタリングすることによって軟磁性層12を形成した後に、軟磁性層12の上に中間層形成用材料をスパッタリングすることによって中間層13を形成する。次いで、中間層13の上にCoCrPt合金をスパッタリングすることによって厚みが15nm程度の磁性層14を形成する。続いて、磁性層14の上に、例えば、スパッタリング法によって厚み12nm程度のC(炭素)マスク層17を形成すると共に、Cマスク層17の上にスパッタリング法によって厚み4nm程度のSiマスク層18を形成する。次いで、Siマスク層18の上にポジ型の電子線レジストをスピンコートして厚みが130nm程度の樹脂層19(マスク形成用機能層)を形成する。これにより、図9に示すように、磁気ディスク10aを製造するための中間体30が完成する。次いで、図10に示すように、電子線描画装置を用いて中間体30に電子ビームEBを照射して凹凸パターン20saおよび凹凸パターン20tと平面形状が同じ露光パターンを樹脂層19に描画する。続いて、露光パターンの描画が完了した樹脂層19を現像処理することにより、図11に示すように、Siマスク層18の上に凹凸パターン41(レジストパターン)を形成する。
【0053】
次いで、凹凸パターン41(樹脂層19)をマスクとして用いてアルゴン(Ar)ガスによるイオンビームエッチング処理を行うことにより、凹凸パターン41における凹部41b,41b・・の底部においてマスク(凸部41a,41a・・)から露出しているSiマスク層18をエッチングして、図12に示すように、Siマスク層18に凹凸パターン42(Siマスクパターン)を形成する。続いて、凹凸パターン42をマスクとして用いて酸素ガスを反応ガスとする反応性イオンエッチング処理を行うことにより、凹凸パターン42における凹部42b,42b・・の底部においてマスク(凸部42a,42a・・)から露出しているCマスク層17をエッチングして、図13に示すように、Cマスク層17に凹凸パターン43(Cマスクパターン)を形成する。次いで、凹凸パターン43をマスクとして用いて、アルゴン(Ar)ガスによるイオンビームエッチング処理を行う。これにより、図14に示すように、磁性層14においてマスクパターンによって覆われていた部位(凹凸パターン43の凸部43a,43a・・によって覆われていた部位)が凸部21,21・・となり、マスクパターンから露出していた部位(凹凸パターン43の凹部43b,43b・・の底部において露出していた部位)が凹部22,22・・となって中間層13の上に凹凸パターン20(凹凸パターン20sa,20t)が形成される。続いて、凸部21,21・・の上に残存しているCマスク層17(Cマスクパターン)に対して酸素ガスを反応ガスとする反応性イオンエッチング処理を行うことにより、凸部21,21・・の上面を露出させる(残存しているCマスク層17を除去する)。
【0054】
次いで、例えば150W程度のバイアス電力を中間体30に印加しつつ、アルゴン(Ar)ガスの圧力を例えば0.3Paに設定して非磁性材料15としてのSiOをスパッタリングする。この際には、非磁性材料15によって凹部22,22・・を完全に埋め尽くし、かつ、凸部21,21・・の上面に例えば厚みが60nm程度の非磁性材料15の層が形成されるように非磁性材料15を十分にスパッタリングする。この場合、中間体30に対してバイアス電力を印加した状態で非磁性材料15をスパッタリングすることにより、表面が大きく凹凸することなく非磁性材料15の層が形成される。続いて、アルゴン(Ar)ガスの圧力を例えば0.04Paに設定すると共に、中間体30(非磁性材料15の層)の表面に対するイオンビームの入射角度を2度に設定した状態で磁性層14の上(凸部21,21・・の上、凹部22,22の上、および凹部22,22の内部)の非磁性材料15の層をイオンビームエッチング処理する。この際には、中間体30における各環状領域Aa内の内周側(後に内周側領域Aiaとなる部位)において各凸部21si,21si・・の上面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続する。
【0055】
この場合、この磁気ディスク10a(中間体30)では、各環状領域Aa内における内周側の凸部21si,21si・・の長さL1iと、環状領域Aa内における外周側の凸部21so,21so・・の長さL1oとが等しい長さ(この例では、220nm)となるように形成されている。また、この磁気ディスク10aでは、環状領域A1a〜A4aのすべて(すなわち、磁気ディスク10aの全域)の凸部21si,21si・・の長さL1iと、外周側の凸部21so,21so・・の長さL1oとが等しい長さとなるように形成されている。したがって、いずれかの環状領域Aaにおける内周側の各凸部21si,21si・・の上面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続することで、すべての環状領域Aaにおける内周側の各凸部21si,21si・・およびすべての環状領域Aaにおける外周側の各凸部21so,21so・・の上面も非磁性材料15から露出する(すべての環状領域Aa、すなわち、磁気ディスク10aの全域において凸部21si,21soの上面がほぼ同時に露出する)。これにより、非磁性材料15の層に対するイオンビームエッチング処理が完了して中間体30の表面が平坦化される。続いて、中間体30の表面を覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することによって保護層16を形成した後に、保護層16の表面にフッ素系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布する。これにより、図2に示すように、磁気ディスク10aが完成する。
【0056】
この磁気ディスク10aでは、前述したように、磁気ディスク10aの全域に亘って(すべての環状領域Aaにおいて)各凸部21s,21s・・の上の非磁性材料15(残渣)が除去されているため、磁気ディスク10aの表面における凹凸の高低差(環状領域Aaにおける内周側での高低差Hiおよび外周側での高低差Ho)が磁気ディスク10aの全域(すべての環状領域Aa)においてほぼ均一となる。具体的には、例えば環状領域A1aにおける内周側領域Aiaの磁気ディスク10aの表面の凹凸度合い、すなわち、表面粗さRaが0.7nm程度で、環状領域A1aにおける外周側領域Aoaの磁気ディスク10aの表面粗さRaが0.8nm程度となった(その他の環状領域Aaにおいても、内周側領域Aiaの表面粗さRa、および外周側領域Aoaの表面粗さRaが0.7〜0.8nm程度となった)。したがって、磁気ディスク10aの内周側から外周側までのすべての環状領域Aaにおいて磁気ヘッド3(スライダ)の浮上量がほぼ一定となって、安定した記録再生が可能となる。
【0057】
一方、従来の製造方法に従って製造した磁気ディスク10xでは、回転方向に沿った長さL1xiが比較的短い内周側領域Axiにおいて非磁性材料15から凸部21sxiの上面を露出させた状態において、内周側領域Axiにおける磁気ディスク10xの表面粗さRaが0.7nm程度となった。これに対して、回転方向に沿った長さL1xoが凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して内周側領域Axiよりも長くなっている外周側領域Axoでは、凸部21sxo上の残渣が厚くなることに起因して、磁気ディスク10xの表面粗さRaが3.1nm程度となった。この場合、外周側領域Axoにおいて非磁性材料15から凸部21sxoの上面が露出するようなエッチング条件で非磁性材料15をエッチング処理したときには、磁気ディスク10xの内周側から外周側までの全域において凹部22sx内の非磁性材料15に対するエッチングが進行してその平坦性が悪化する。また、上記のようなエッチング条件で非磁性材料15をエッチング処理したときには、内周側領域Axiにおいて凸部21sxiが過剰にエッチングされて磁気的信号の正常な読み出しが困難となるおそれがある。このため、従来の製造方法に従って製造した磁気ディスク10xでは、サーボデータDsの正常な読み出しを可能としつつ、磁気ディスク10xの内周側から外周側までの全域において磁気ヘッド3(スライダ)の浮上量を均一化するのが困難となっている。
【0058】
このように、この磁気ディスク10aおよびハードディスクドライブ1によれば、各環状領域Aa内における単位凸部長の平均長を中心Oから環状領域Aaまでの距離で除した値が内周側の環状領域Aaよりも外周側の環状領域Aaほど小さくなるように各環状領域Aa毎に単位凸部長を規定してサーボパターンを構成する凹凸パターン20saを構成したことにより、単位凸部長が磁気ディスク10xの内周側から外周側に向けて徐々に長くなるように凹凸パターンが形成されている従来の磁気ディスク10xと比較して、外周側の環状領域Aaにおける単位凸部長を十分に短くすることができる。したがって、各凸部21,21・・を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、外周側の環状領域Aaにおける凸部21s上の残渣の厚みと内周側の環状領域Aaにおける凸部21s上の残渣の厚みとの差が大きくなる事態を回避することができる。また、内周側の環状領域Aaから外周側の環状領域Aaまでの全域において各凸部21s,21s・・の上に非磁性材料15(残渣)が存在しないように非磁性材料15をエッチング処理したときに、内周側の環状領域Aa内において非磁性材料15のみならず凸部21s(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部21s,21s・・の上の残渣を取り除くことができる。したがって、磁気ディスク10aの平坦性を全域に亘って良好に維持することができる。このため、磁気ディスク10aの全域において、磁気ディスク10aに対する磁気ヘッド3の浮上量をほぼ同等に維持することができる結果、このハードディスクドライブ1によれば、安定した記録再生を実行することができる。
【0059】
また、この磁気ディスク10aおよびハードディスクドライブ1によれば、単位凹部長に対する単位凸部長の比が各環状領域Aa内においてその内周側からその外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長および単位凹部長を規定して凹凸パターン20sa(サーボパターン)を形成したことにより、各環状領域Aa内における外周側の単位凸部長を十分に短くすることができる。したがって、磁気ディスク10aの平坦性を環状領域Aa内における内周側から外周側までの全域に亘って良好に維持することができる。このため、各環状領域Aa内における内周側から外周側までの全域において、磁気ディスク10aに対する磁気ヘッド3の浮上量をほぼ同等に維持することができる結果、安定した記録再生を実行することができる。
【0060】
さらに、この磁気ディスク10aおよびハードディスクドライブ1によれば、単位凹部長が環状領域Aa内においてその内周側からその外周側に向かうほど長くなるように規定して凹凸パターン20sa(サーボパターン)を形成したことにより、例えば単位凹部長を環状領域Aa内における内周側から外周側までの全域に亘って等しい長さに規定して単位凸部長を変化させることで単位凹部長に対する単位凸部長の比を環状領域Aaの内周側から外周側に向かうほど小さくする構成とは異なり、環状領域Aaにおける外周側において単位凸部長が過度に短くなる事態を回避することができる。したがって、環状領域Aaにおける外周側の凸部からの磁気的信号の読み出しエラーの発生を確実に回避することができる。
【0061】
また、この磁気ディスク10aおよびハードディスクドライブ1によれば、単位凸部長が環状領域Aaにおける内周側から外周側までの全域において等しい長さとなるように規定して凹凸パターン20sa(サーボパターン)を形成したことにより、各環状領域Aaにおける凸部21sの上に形成される残渣(非磁性材料15)の厚みを環状領域Aaの内周側から外周側の全域において均一に維持することができる。また、環状領域Aaにおける内周側の各凸部21si,21si・・の上に残渣が生じないように非磁性材料15をエッチング処理したときにその環状領域Aaにおける外周側の凸部21so(磁性材料)がエッチングされる事態や外周側の凸部21soの上に残渣が生じる事態を回避することができ、環状領域Aaにおける外周側の各凸部21so,21so・・の上に残渣が生じないように非磁性材料15をエッチング処理したときにその環状領域Aaの内周側において凸部21si(磁性材料)がエッチングされる事態や内周側の凸部21siの上に残渣が生じる事態を回避することができる。
【0062】
さらに、この磁気ディスク10aおよびハードディスクドライブ1によれば、単位凸部長および単位凹部長の合計長(すなわち、凸部および凹部の形成ピッチ)が凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して環状領域Aa内においてその内周側からその外周側に向かうほど長くなるように規定して凹凸パターン20sa(サーボパターン)を形成したことにより、磁気ディスク10aを角速度一定の条件で回転させつつサーボパターン領域AsaからサーボデータDsを読み出す際に使用されるクロックの基準となる周波数情報(読み出し周波数情報)を一つの環状領域Aa内において変化させることなく、環状領域Aaにおける内周側から外周側までのサーボパターン領域AsaからサーボデータDsを確実に読み出す(検出する)ことができる。
【0063】
また、この磁気ディスク10aおよびハードディスクドライブ1によれば、各環状領域Aa内における単位凸部長の平均長が内周側の環状領域A1aから外周側の環状領域A4aまでの全環状領域Aaにおいて等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定してサーボパターンを構成する凹凸パターン20saを構成したことにより、各環状領域Aa毎に平坦性にばらつきを生じさせることなく、内周側の環状領域A1aから外周側の環状領域A4aまでのすべての環状領域Aa(すなわち、磁気ディスク10aの内周側から外周側までの全域)に亘って平坦性を良好に維持することができる。この結果、磁気ディスク10aの全域において、磁気ディスク10aに対する磁気ヘッド3の浮上量を均一に維持することができる。
【0064】
さらに、この磁気ディスク10aを搭載したハードディスクドライブ1によれば、各環状領域Aa毎に予め規定された読み出し周波数情報に基づいて制御部8がサーボデータ検出部6を制御して磁気ディスク10aからサーボパターンに対応付けられているサーボデータDsを読み出すことにより、例えば、磁気ディスク10aの内周側の環状領域A1aから外周側の環状領域A4aまで磁気ヘッド3をシーク動作させる際における読み出し周波数情報の周波数切替え処理の回数を3回だけに止めることができる。したがって、シーク動作を短時間で実行することができるため、データアクセスを高速に行うことができる。また、読み出し周波数情報として環状領域の数(この例では4つ)に対応する種類の周波数情報を出力できればよいため、簡易な構成の制御部(検出用クロック出力部5および制御部8)によってトラッキングサーボを行うことができる。
【0065】
次いで、磁気ディスク10aの他の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、前述した製造方法と同様の工程については、重複する詳細な説明を省略する。
【0066】
前述した磁気ディスク10aの製造方法では、中間体30における樹脂層19に対して電子線描画装置を用いて露光パターンを描画した後に現像処理することで、エッチング処理用のマスクとして使用する凹凸パターン41(レジストパターン)を形成したが、本発明に係る情報記録媒体の製造方法はこれに限定されない。例えば、本発明に係るスタンパーの一例であるスタンパー35a(図15参照)を用いたインプリント法によって中間体30の樹脂層19に凹凸パターン41を形成することもできる。この場合、図15に示すように、スタンパー35aは、磁気ディスク10aにおける凹凸パターン20(凹凸パターン20t,20sa)とは凹凸位置関係が反転している凹凸パターン39が形成されている。なお、スタンパー35aの凹凸パターン39は、凸部39a,39a・・が磁気ディスク10aの凹凸パターン20における凹部22,22・・に対応し、凹部39b,39b・・が凹凸パターン20における凸部21,21・・に対応して形成されている。したがって、このスタンパー35aでは、凸部39aの回転方向に沿った長さが凹凸パターン20における凹部22の回転方向に沿った長さとほぼ等しく、かつ凹部39bの回転方向に沿った長さが凹凸パターン20における凸部21の回転方向に沿った長さとほぼ等しくなっている。なお、スタンパー35aの製造方法については、特に限定されず、公知の各種製造方法によって製造することができる。
【0067】
このスタンパー35aを用いた磁気ディスク10aの製造に際しては、図15に示すように、まず、中間体30の樹脂層19にスタンパー35aの凹凸パターン39をインプリント法によって転写する。具体的には、スタンパー35aにおける凹凸パターン39の形成面を中間体30の樹脂層19に押し付けることにより、凹凸パターン39の凸部39a,39a・・を中間体30の樹脂層19に押し込む。次いで、中間体30からスタンパー35aを剥離し、さらに、底面に残存する樹脂(残渣:図示せず)を酸素プラズマ処理によって除去する。これにより、図11に示すように、中間体30におけるSiマスク層18の上に凹凸パターン41が形成される。続いて、凹凸パターン41をマスクとして用いてSiマスク層18をエッチングすることによってCマスク層17の上に凹凸パターン42を形成し、凹凸パターン42をマスクとして用いてCマスク層17をエッチングすることによって磁性層14の上に凹凸パターン43を形成する。次いで、凹凸パターン43をマスクとして用いて磁性層14をエッチングすることによって中間層13の上に凹凸パターン20を形成する。続いて、前述した製造方法と同様にして非磁性材料15をスパッタリングした後に、非磁性材料15の層に対するイオンビームエッチング処理を実行して平坦化する。この後、CVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することで保護層16を形成すると共に、保護層16の表面にフッ素系の潤滑剤を塗布する。これにより、図2に示すように、磁気ディスク10aが完成する。
【0068】
このように、磁気ディスク10aを製造するためのスタンパー35aによれば、磁気ディスク10aにおける凹凸パターン20(凹凸パターン20t,20sa)の凹部22,22・・に対応して形成された凸部39a,39a・・と、磁気ディスク10aにおける凹凸パターン20の凸部21,21・・に対応して形成された凹部39b,39b・・とを有する凹凸パターン39を形成したことにより、例えば、電子線描画装置を用いて中間体30の樹脂層19に凹凸パターン20sa,20tと平面形状が同じ露光パターンを描画して現像処理することで凹凸パターン41を形成する製造方法とは異なり、樹脂層19にスタンパー35aの凹凸パターン39を押し付けるだけで凹凸パターン41を短時間で容易に形成することができる。また、1枚のスタンパー35aによって多数の中間体30に凹凸パターン41を形成することができる。したがって、磁気ディスク10aの製造コストを十分に低減することができる。
【0069】
次いで、本発明における情報記録媒体の他の一例である磁気ディスク10b、および磁気ディスク10bを搭載したハードディスクドライブ1b(本発明における記録再生装置の他の一例)について、図面を参照して説明する。なお、磁気ディスク10aおよびハードディスクドライブ1と共通の構成要素については、共通の符号を付して重複する説明を省略する。
【0070】
図16に示す磁気ディスク10bでは、磁気ディスク10bの内周側から外周側までが凹凸パターン20tの中心Oを中心とする同心円状の(すなわち、凹凸パターン20tと同心の)4つの環状領域A1b〜A4b(本発明における複数の環状領域の一例:以下、区別しないときには、環状領域Abともいう)に区分けされて凹凸パターン20が形成されている。また、この磁気ディスク10bでは、磁気ディスク10aにおけるサーボパターン領域Asaに代えて、トラックパターン領域At,At・・の間にサーボパターン領域Asb,Asb・・が設けられてトラックパターン領域Atおよびサーボパターン領域Asbが磁気ディスク10bの回転方向(矢印Rの向き)において交互に並ぶように規定されている。
【0071】
また、図17〜21に示すように、サーボパターン領域Asb(環状領域Ab内における内周側の内周側サーボパターン領域Asbi、および環状領域Ab内における外周側の外周側サーボパターン領域Asbo)には、磁気ディスク10aにおける凹凸パターン20saに代えてサーボパターンとしての凹凸パターン20sbが形成されている。この場合、凹凸パターン20sbは、凹凸パターン20saと同様にして、プリアンブルパターン、アドレスパターンおよびバーストパターンなどの各種サーボパターンを構成する凸部21s,21s(凸部21siおよび凸部21so)・・並びに凹部22s,22s・・(凹部22siおよび凹部22so)で構成されている。また、この磁気ディスク10bでは、回転方向(各図における矢印Rの向き)に沿った凸部21sの長さを凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例させずに(外周側ほど長くせずに)、各環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域において等しくなるように(単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値を環状領域内において環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど小さく規定した一例であって、本発明における「単位凸部長が等しい長さ、または、ほぼ等しい長さ」となるように規定した一例)、各凸部21s,21s・・が形成されている。
【0072】
同様にして、回転方向に沿った凹部22sの長さについても、凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例させずに(外周側ほど長くせずに)、環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域において等しくなるように(単位凹部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値を環状領域内において環状領域の内周側から環状領域の外周側に向かうほど小さく規定した一例であって、本発明における「単位凹部長が等しい長さ、または、ほぼ等しい長さ」となるように規定した一例)各凹部22s,22s・・が形成されている。このため、この磁気ディスク10bでは、回転方向に沿った凸部21sの長さと凹部22sの長さとの合計長(すなわち、凸部21sおよび凹部22sの形成ピッチ)が凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例せずに(外周側ほど長くせずに)、各環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域において等しくなるように規定されている。したがって、図17に示すように、例えば、環状領域A2bでは、環状領域A2bの内周側における回転方向に沿った長さL52と、環状領域A2bの外周側における回転方向に沿った長さL52とが等しくなっている。この場合、この磁気ディスク10bでは、環状領域A1b〜A4bのそれぞれの回転方向に沿った長さL51〜L54が、一例として、外周側の環状領域Abほど徐々に長くなるように規定されている。また、図19,21に示すように、回転方向に沿った凹部22sの長さに対する凸部21sの長さの比が各環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域において等しくなるように凹凸パターン20sbが形成されている。
【0073】
具体的には、図18,19に示すように、環状領域Abにおける内周側の内周側領域Aib(一例として、環状領域A1bにおける中心Oからの距離が11mmの部位のプリアンブルパターンの形成領域)では、凹部22siの長さL7i(一例として、220nm)と凸部21siの長さL6i(一例として、220nm)との合計長である長さL8iが440nmとなるように規定されている。また、図20,21に示すように、環状領域Abにおける外周側の外周側領域Aob(一例として、環状領域A1bにおける中心Oからの距離が16mmの部位のプリアンブルパターンの形成領域)においても、凹部22soの長さL7o(一例として、凹部22siの長さL7iと等しい220nm)と凸部21soの長さL6o(一例として、凸部21siの長さL6iと等しい220nm)との合計長である長さL8oが440nmとなっている。この結果、図19,21に示すように、この磁気ディスク10bでは、環状領域Ab内の内周側領域Aibにおける凹凸パターン20sbの凹部22siの長さL7iに対する凸部21siの長さL6iの比と、環状領域Ab内の外周側領域Aobにおける凹部22soの長さL7oに対する凸部21soの長さL6oの比とが各環状領域Ab内においてそれぞれ1となっている。この場合、凹部22sの長さ(単位凹部長)に対する凸部21sの長さ(単位凸部長)の比については、上記のプリアンブルパターンのみならず、アドレスパターンやバーストパターンを構成する凹凸パターン20sbについても同様に規定されている。また、バーストパターンについては、磁気ディスク10bの回転方向に沿って複数の矩形状の凸部21s,21s・・が凹部22sを挟んで並んでいる領域において、単位凹部長に対する単位凸部長の比が上記の条件を満たすように規定されている。
【0074】
また、この磁気ディスク10bでは、各環状領域Ab内の凸部21sの平均長が内周側の環状領域A1bから外周側の環状領域A4bに向かうほど僅かに長くなっている。さらに、この磁気ディスク10bでは、各環状領域Ab内の凸部21sの平均長を凹凸パターン20tの中心Oから環状領域Abまでの距離(一例として、環状領域Abにおける最内周の部位とする)で除した値が、内周側の環状領域A1bから外周側の環状領域A4bに向かうほど小さくなっている。
【0075】
なお、図18〜21では、サーボパターンにおけるプリアンブルパターンおよびバーストパターンを模式的に図示しており、理解を容易にすべく、回転方向に沿った各凸部21s,21s・・や各凹部22s,22s・・の長さをサーボパターンの単位凸部長および単位凹部長のみで図示している。したがって、実際の磁気ディスク10bでは、凸部21s,21s・・や凹部22s,22s・・の数、形成位置および長さが各図に示す状態とは異なり、トラッキングサーボ制御に必要なトラックアドレスおよびセクターアドレス等の情報(パターン)を含む各種の制御用データに対応して、凸部21sや凹部22sのそれぞれの数、形成位置および長さが規定されて凹凸パターン20sbが形成されている。この場合、凸部21sや凹部22sの実際の長さは、凸部21sや凹部22sの長さ(単位凸部長および単位凹部長)の整数倍の長さとなる。なお、この磁気ディスク10bの製造方法については、前述した磁気ディスク10aの製造方法と同様であるため、重複する説明を省略する。この場合、インプリント法によって磁気ディスク10bを製造する際には、磁気ディスク10bにおける凹凸パターン20の凸部21,21・・に対応する凹部39b,39b・・と、磁気ディスク10bにおける凹凸パターン20の凹部22,22・・に対応する凸部39a,39a・・とを有する凹凸パターン39が形成されたスタンパー35b(図15参照)を用いればよい。
【0076】
この磁気ディスク10bでは、環状領域Abにおける内周側の凸部21si,21si・・の長さL6iと、環状領域Abにおける外周側の凸部21so,21so・・の長さL6oとが等しい長さ(例えば、環状領域A1bでは、220nm)となるように形成されている。したがって、磁気ディスク10bの製造時に非磁性材料15をイオンビームエッチング処理する際に、環状領域Ab内において内周側の各凸部21si,21si・・の上面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続することで、その環状領域Abにおける外周側の各凸部21so,21so・・の上面も非磁性材料15から露出する(凸部21si,21soの上面がほぼ同時に露出する)。したがって、図19,21に示すように、この磁気ディスク10bでは、環状領域Ab内の全域に亘って各凸部21s,21s・・上の非磁性材料15(残渣)が除去されている。このため、磁気ディスク10bの表面における凹凸の高低差Hが環状領域Ab内の全域において均一となる。具体的には、磁気ディスク10bの表面の凹凸度合い、すなわち、表面粗さRaは、例えば環状領域A1b内における内周側領域Aiおよび外周側領域Aoの双方において0.7nm程度となった(その他の環状領域Ab内においても、ほぼ同じ表面粗さRaとなった)。したがって、磁気ディスク10bの内周側から外周側までの全域において磁気ヘッド3(スライダ)の浮上量がほぼ一定となって、安定した記録再生が可能となる。
【0077】
また、この磁気ディスク10bでは、前述したように、サーボパターン領域Asbの凹凸パターン20sbにおける回転方向に沿った凸部21sの長さと凹部22sの長さとの合計長(長さL8i,L8o)が環状領域Abにおける環状領域Abの内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように各凸部21s,21s・・および各凹部22s,22s・・が形成されている。したがって、図17に示すように、例えば環状領域A2bにおける内周側サーボパターン領域Asbi(内周側の凹凸パターン20sb)の回転方向に沿った長さL52と、外周側サーボパターン領域Asbo(外周側の凹凸パターン20sb)の回転方向に沿った長さL52とが等しくなっている。このため、この磁気ディスク10bでは、トラックパターン領域Atの回転方向に沿った長さが環状領域Abの内周側から外周側に向けて徐々に長くなっている。具体的には、内周側トラックパターン領域Ati(内周側の凹凸パターン20t)の回転方向に沿った長さよりも、外周側トラックパターン領域Ato(外周側の凹凸パターン20t)の回転方向に沿った長さの方が長くなっている。したがって、従来の磁気ディスク10xと比較して、環状領域Abの外周側において凸部21tの長さが長くなっている分だけ、記録データの記録可能容量が増加している。
【0078】
この場合、この磁気ディスク10bでは、回転方向に沿ったサーボパターン領域Asbの長さが各環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域において等しくなるように凹凸パターン20sbが形成されている。このため、磁気ディスク10bを角速度一定の回転速度で定速回転させたときには、磁気ヘッド3の下方をサーボパターン領域Asbが通過させられる時間が環状領域Abの内周側よりも環状領域Abの外周側ほど短時間となる。したがって、この磁気ディスク10bを搭載したハードディスクドライブ1b(図1参照)では、前述した磁気ディスク10aを搭載したハードディスクドライブ1とは異なり、ROM9が、読み出し周波数情報についてのクロックデータDclを各環状領域Ab内における磁気ヘッド3の移動位置(環状領域Ab内における中心Oからの距離)に関連付けて記憶している。また、制御部8は、クロックデータDclに基づき、一例として、各環状領域Ab内において、凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して環状領域Abの内周側よりも環状領域Abの外周側ほど波長が短くなるように読み出し周波数情報の周波数を直線的に変化させて検出用クロック出力部5に出力する。したがって、磁気ディスク10bを角速度一定の条件で回転させつつサーボパターン領域Asbからサーボパターン(サーボデータ)を確実に読み出すことができる。
【0079】
このように、この磁気ディスク10bおよびハードディスクドライブ1bによれば、各環状領域Ab内における単位凸部長の平均長を中心Oから環状領域Abまでの距離で除した値が内周側の環状領域Abよりも外周側の環状領域Abほど小さくなるように各環状領域Ab毎に単位凸部長を規定してサーボパターンを構成する凹凸パターン20sbを構成したことにより、単位凸部長が磁気ディスク10xの内周側から外周側に向けて徐々に長くなるように凹凸パターンが形成されている従来の磁気ディスク10xと比較して、外周側の環状領域Abにおける単位凸部長を十分に短くすることができる。したがって、各凸部21,21・・を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、外周側の環状領域Abにおける凸部21s上の残渣の厚みと内周側の環状領域Abにおける凸部21s上の残渣の厚みとの差が大きくなる事態を回避することができる。また、内周側の環状領域Abから外周側の環状領域Abまでの全域において各凸部21s,21s・・の上に非磁性材料15(残渣)が存在しないように非磁性材料15をエッチング処理したときに、内周側の環状領域Ab内において非磁性材料15のみならず凸部21s(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部21s,21s・・の上の残渣を取り除くことができる。したがって、磁気ディスク10bの平坦性を全域に亘って良好に維持することができる。このため、磁気ディスク10bの全域において、磁気ディスク10bに対する磁気ヘッド3の浮上量をほぼ同等に維持することができる結果、このハードディスクドライブ1bによれば、安定した記録再生を実行することができる。
【0080】
また、この磁気ディスク10bおよびハードディスクドライブ1bによれば、単位凸部長を凹凸パターン20tの中心Oからの距離で除した値が環状領域Ab内においてその内周側からその外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長を規定して凹凸パターン20sb(サーボパターン)を形成したことにより、回転方向に沿った単位凸部長が中心Oからの距離に比例して長くなるように(単位凸部長を中心Oからの距離で除した値が環状領域Abの内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように)凹凸パターンが形成されている従来の磁気ディスク10xと比較して、環状領域Ab内における外周側の単位凸部長を十分に短くすることができる。したがって、各凸部21,21・・を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、環状領域Ab内における外周側の凸部21so上の残渣の厚みと内周側の凸部21si上の残渣の厚みとの差が大きくなる事態を回避することができる。また、環状領域Abにおける環状領域Abの内周側から外周側までの全域において各凸部21s,21s・・の上に非磁性材料15(残渣)が存在しないように非磁性材料15をエッチング処理したときに、環状領域Abの内周側において非磁性材料15のみならず凸部21s(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部21s,21s・・の上の残渣を取り除くことができる。したがって、磁気ディスク10bの平坦性を環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域に亘って良好に維持することができる。このため、環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域において、磁気ディスク10bに対する磁気ヘッド3の浮上量を同等に維持することができる結果、このハードディスクドライブ1bによれば、安定した記録再生を実行することができる。
【0081】
さらに、この磁気ディスク10bおよびハードディスクドライブ1bによれば、単位凹部長を凹凸パターン20tの中心Oからの距離で除した値が環状領域Ab内においてその内周側からその外周側に向かうほど小さくなるように単位凹部長を規定して凹凸パターン20sb(サーボパターン)を形成したことにより、回転方向に沿った単位凹部長が中心Oからの距離に比例して長くなるように(単位凹部長を中心Oからの距離で除した値が内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように)凹凸パターンが形成されている従来の磁気ディスク10xと比較して、環状領域内における外周側の単位凹部長を十分に短くすることができる。この場合、出願人は、回転方向に沿った長さが過剰に長い凹部の存在部位において、その凹部を挟むようにして形成されている凸部の上の非磁性材料に対するエッチングの進行が遅くなる現象を見出している。一方、この磁気ディスク10bによれば、上記のように各凹部22sの単位凹部長が十分に短いため、凸部21sの上の非磁性材料15に対するエッチングの進行が遅くなる事態を招くことなく、非磁性材料15の層をエッチング処理することができる結果、環状領域内における外周側の凸部21so上の残渣の厚みと内周側の凸部21si上の残渣の厚みとの差が大きくなる事態を回避することができる。また、環状領域における内周側から外周側までの全域において各凸部21s,21s・・の上に非磁性材料15(残渣)が存在しないように非磁性材料15をエッチング処理したときに、環状領域の内周側において非磁性材料15のみならず凸部21s(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部21s,21s・・の上の残渣を取り除くことができる。これにより、磁気ディスク10bの平坦性を環状領域Abにおける内周側から外周側までの全域に亘って一層良好に維持することができる。
【0082】
また、この磁気ディスク10bおよびハードディスクドライブ1bによれば、単位凸部長が環状領域Abにおける内周側から外周側までの全域において等しい長さとなるように規定して凹凸パターン20sb(サーボパターン)を形成したことにより、各凸部21s,21s・・(磁性材料)上の非磁性材料15に対するエッチング条件(エッチングレート)を環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において均一に維持することができる。したがって、環状領域内における外周側の凸部21so上の残渣の厚みと内周側の凸部21si上の残渣の厚みとの差を十分に小さくすることができる。また、環状領域における内周側から外周側までの全域において各凸部21s,21s・・の上に非磁性材料15(残渣)が存在しないように非磁性材料15をエッチング処理したときに、環状領域の内周側において非磁性材料15のみならず凸部21s(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部21s,21s・・の上の残渣を取り除くことができる。これにより、磁気ディスク10bの平坦性を環状領域Ab内においてその内周側からその外周側まで全域に亘って一層良好、かつ一層均一に維持することができる。この結果、磁気ディスク10bの環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域において、磁気ディスク10bに対する磁気ヘッド3の浮上量を均一に維持することができる。
【0083】
さらに、この磁気ディスク10bおよびハードディスクドライブ1bによれば、単位凹部長が環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域において等しい長さとなるように規定して凹凸パターン20sb(サーボパターン)を形成したことにより、各凹部22s,22s・・を挟むようにして形成されている各凸部21s,21s・・(磁性材料)上の非磁性材料15に対するエッチング条件(エッチングレート)を環状領域の内周側から環状領域の外周側までの全域において均一に維持することができる。したがって、環状領域内における外周側の凸部21so上の残渣の厚みと内周側の凸部21si上の残渣の厚みとの差を十分に小さくすることができる。また、環状領域における内周側から外周側までの全域において各凸部21s,21s・・の上に非磁性材料15(残渣)が存在しないように非磁性材料15をエッチング処理したときに、環状領域の内周側において非磁性材料15のみならず凸部21s(磁性材料)までもがエッチングされる事態を招くことなく各凸部21s,21s・・の上の残渣を取り除くことができる。これにより、磁気ディスク10bの平坦性を環状領域Ab内における内周側から外周側までの全域に亘って一層良好、かつ一層均一に維持することができる。
【0084】
また、この磁気ディスク10bを搭載したハードディスクドライブ1bによれば、凹凸パターン20tの中心Oからの距離に応じて予め規定された読み出し周波数情報に基づいて制御部8がサーボデータ検出部6を制御して磁気ディスク10bからサーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出すことにより、磁気ディスク10bを角速度一定の条件で回転させつつサーボパターン(サーボデータ)を確実に読み出すことができる。
【0085】
続いて、本発明における情報記録媒体のさらに他の一例である磁気ディスク10cについて、図面を参照して説明する。なお、磁気ディスク10a,10bと共通の構成要素、およびハードディスクドライブ1における磁気ディスク10aを除く構成要素については、共通の符号を付して重複する説明を省略する。
【0086】
図22に示す磁気ディスク10cでは、前述した磁気ディスク10a,10bと同様にして、磁気ディスク10cの内周側から外周側までが凹凸パターン20tの中心O(図示せず)を中心とする同心円状の(すなわち、凹凸パターン20tと同心の)4つの環状領域A1c〜A4c(本発明における複数の環状領域の一例:以下、区別しないときには、環状領域Acともいう)に区分けされて凹凸パターン20(凹凸パターン20t,20sc)が形成されている。なお、同図では環状領域A2cを中心として環状領域A1c〜A3cの3つの領域のみを図示している。また、この磁気ディスク10cでは、磁気ディスク10aにおけるサーボパターン領域Asaに代えて、トラックパターン領域At,At・・の間にサーボパターン領域Asc,Asc・・が設けられてトラックパターン領域Atおよびサーボパターン領域Ascが磁気ディスク10cの回転方向(矢印Rの向き)において交互に並ぶように規定されている。
【0087】
また、図22〜26に示すように、サーボパターン領域Asc(環状領域Ac内における内周側の内周側サーボパターン領域Asci、および環状領域Ac内における外周側の外周側サーボパターン領域Asco)には、磁気ディスク10aにおける凹凸パターン20saに代えてサーボパターンとしての凹凸パターン20scが形成されている。この場合、凹凸パターン20scは、凹凸パターン20sa,20sbと同様にして、プリアンブルパターン、アドレスパターンおよびバーストパターンなどの各種サーボパターンを構成する凸部21s,21s(凸部21siおよび凸部21so)・・並びに凹部22s,22s・・(凹部22siおよび凹部22so)で構成されている。また、この磁気ディスク10cでは、回転方向(各図における矢印Rの向き)に沿った凸部21sの長さが凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して環状領域Ac内においてその内周側からその外周側に向かうほど長くなるように規定されて各凸部21s,21s・・が形成されている。同様にして、回転方向に沿った凹部22sの長さについても、凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して環状領域Ac内においてその内周側からその外周側に向かうほど長くなるように規定されて各凹部22s,22s・・が形成されている。このため、この磁気ディスク10cでは、回転方向に沿った凸部21sの長さと凹部22sの長さとの合計長(すなわち、凸部21sおよび凹部22sの形成ピッチ)が凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して環状領域Ac内においてその内周側からその外周側に向かうほど長くなるように規定されている。
【0088】
具体的には、図23,24に示すように、環状領域Acにおける内周側の内周側領域Aic(一例として、環状領域A1cにおける中心Oからの距離が11mmの部位のプリアンブルパターンの形成領域)では、凹部22siの長さL12i(一例として、220nm)と凸部21siの長さL11i(一例として、220nm)との合計長である長さL13iが440nmとなるように規定されている。また、図25,26に示すように、環状領域Acにおける外周側の外周側領域Aoc(一例として、環状領域A1cにおける中心Oからの距離が16mmの部位のプリアンブルパターンの形成領域)では、凹部22soの長さL12o(一例として、320nm)と凸部21soの長さL11o(一例として、320nm)との合計長である長さL13oが640nmとなるように規定されている。この結果、図24,26に示すように、この磁気ディスク10cでは、環状領域Ac内の内周側領域Aicにおける凹凸パターン20scの凹部22siの長さL12iに対する凸部21siの長さL11iの比と、環状領域Ac内の外周側領域Aocにおける凹部22soの長さL12oに対する凸部21soの長さL11oの比とが各環状領域Ac内においてそれぞれ1となっている。
【0089】
この場合、凹部22sの長さ(単位凹部長)に対する凸部21sの長さ(単位凸部長)の比については、上記のプリアンブルパターンのみならず、アドレスパターンやバーストパターンを構成する凹凸パターン20scについても同様に規定されている。また、バーストパターンについては、磁気ディスク10cの回転方向に沿って複数の矩形状の凸部21s,21s・・が凹部22sを挟んで並んでいる領域において、単位凹部長に対する単位凸部長の比が上記の条件を満たすように規定されている。なお、図23〜26では、サーボパターンにおけるプリアンブルパターンおよびバーストパターンを模式的に図示しており、理解を容易にすべく、回転方向に沿った各凸部21s,21s・・や各凹部22s,22s・・の長さをサーボパターンの単位凸部長および単位凹部長のみで図示している。したがって、実際の磁気ディスク10cでは、凸部21s,21s・・や凹部22s,22s・・の数、形成位置および長さが各図に示す状態とは異なり、トラッキングサーボ制御に必要なトラックアドレスおよびセクターアドレス等の情報(パターン)を含む各種の制御用データに対応して、凸部21sや凹部22sのそれぞれの数、形成位置および長さが規定されて凹凸パターン20scが形成されている。この場合、凸部21sや凹部22sの実際の長さは、凸部21sや凹部22sの長さ(単位凸部長および単位凹部長)の整数倍の長さとなる。
【0090】
また、この磁気ディスク10cでは、各環状領域Ac内における凸部21sの平均長が各環状領域A1c〜A4cの全領域において等しくなるように規定されている。したがって、各環状領域Ac内の凸部21sの平均長を凹凸パターン20tの中心Oから環状領域Acまでの距離(一例として、環状領域Acにおける最内周の部位とする)で除した値が内周側の環状領域A1cから外周側の環状領域A4cに向かうほど小さくなっている。この場合、各環状領域Acにおける回転方向に沿った内周側の長さについては、磁気ディスク10cにおける外周側の環状領域Acほど僅かに長くなっている。具体的には、図22に示すように、例えば、環状領域A2cにおける回転方向に沿った内周側の長さL92iよりも、環状領域A3cにおける回転方向に沿った内周側の長さL93iの方が僅かに長くなっている。また、各環状領域Acにおける回転方向に沿った外周側の長さについては、磁気ディスク10cにおける外周側の環状領域Acほど僅かに短くなっている。具体的には、例えば、環状領域A2cにおける回転方向に沿った外周側の長さよりも、環状領域A3cにおける回転方向に沿った外周側の長さの方が僅かに短くなっている。なお、この磁気ディスク10cの製造方法については、前述した磁気ディスク10aの製造方法と同様であるため、重複する説明を省略する。この場合、インプリント法によって磁気ディスク10cを製造する際には、磁気ディスク10cにおける凹凸パターン20の凸部21,21・・に対応する凹部39b,39b・・と、磁気ディスク10cにおける凹凸パターン20の凹部22,22・・に対応する凸部39a,39a・・とを有する凹凸パターン39が形成されたスタンパー35c(図15参照)を用いればよい。
【0091】
この磁気ディスク10cでは、上記のように各環状領域Ac内における凸部21sの平均長が各環状領域A1c〜A4cの全領域において等しくなるように規定されている。したがって、磁気ディスク10cの製造時に非磁性材料15をイオンビームエッチング処理する際に、内周側の環状領域Ac内においてその外周側の各凸部21so,21so・・の上面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続することで、その環状領域Ac内の各凸部21si,21si・・の上面が非磁性材料15から露出すると共に、外周側の環状領域Ac内においてその外周側の各凸部21so,21so・・の上面およびその内周側の各凸部21si,21si・・の上面も非磁性材料15から露出する(内周側の環状領域Acと外周側の環状領域Acとで凸部21so,21soの上面がほぼ同時に露出する)。したがって、この磁気ディスク10cでは、すべての環状領域Acに亘って凸部21s,21s・・上の非磁性材料15(残渣)が除去されている。このため、磁気ディスク10cの表面における凹凸の高低差がすべての環状領域Acにおいてほぼ均一となる。したがって、磁気ディスク10cの内周側から外周側までの全域において磁気ヘッド3(スライダ)の浮上量がほぼ一定となって、安定した記録再生が可能となる。
【0092】
また、この磁気ディスク10cでは、前述したように、回転方向に沿った凸部21sの長さと凹部22sの長さとの合計長(すなわち、凸部21sおよび凹部22sの形成ピッチ)が環状領域Ac内において凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例してその内周側からその外周側に向かうほど長くなるように規定して凹凸パターン20sc(サーボパターン)を形成したことにより、磁気ディスク10cを角速度一定の条件で回転させつつサーボパターン領域AscからサーボデータDsを読み出す際に使用されるクロックの基準となる周波数情報(読み出し周波数情報)を一つの環状領域Ac内において変化させることなく、環境領域Acにおける内周側から外周側までのサーボパターン領域AscからサーボデータDsを確実に読み出す(検出する)ことができる。また、回転方向に沿った単位凸部長および単位凹部長が環状領域Ac内において凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例してその内周側から外周側に向かうほど長くなるように規定して凹凸パターン20sc(サーボパターン)が形成されているため、磁気ヘッド3の下方を単位凸部長の凸部21sおよび単位凹部長の凹部22sが通過させられる時間が環状領域Ac内における内周側と外周側とで等しくなる。したがって、磁気ヘッド3が検出するサーボデータの単位凸部長および単位凹部長の信号形状を環状領域Ac内における内周側から外周側までの全域において等しくすることができる。このため、より一層確実にサーボデータDsを読み出す(検出する)ことができる。
【0093】
このように、この磁気ディスク10cでは、単位凸部長が環状領域Ac内において凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して環状領域Acの内周側から外周側に向かうほど長くなり、かつ単位凹部長と単位凸部長の合計長が環状領域Ac内において凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して環状領域Acの内周側から外周側に向かうほど長くなるように単位凸部長および単位凹部長を規定して凹凸パターン20sc(サーボパターン)が形成されている。したがって、この磁気ディスク10cおよびハードディスクドライブ1によれば、外周側の環状領域Acにおいて凸部21sの回転方向に沿った長さが長くなる事態を回避しつつ、1つの環状領域Ac内において読み出し周波数情報の周波数を変化させることなく、サーボデータの読み取りができるため、例えば、環状領域Acの内周側から外周側まで磁気ヘッド3をシーク動作させる際における読み出し周波数情報の周波数切替え処理を不要とすることができる。したがって、シーク動作を短時間で実行することができるため、データアクセスを高速に行うことができる。また、読み出し周波数情報として環状領域の数(この例では4つ)に対応する種類の周波数情報を出力できればよいため、簡易な構成の検出用クロック出力部5および制御部8によってトラッキングサーボを行うことができる。
【0094】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、環状領域Aa,Ab内における内周側から外周側までの全域において回転方向に沿った各凸部21s,21s・・の長さ(長さL1I,L1o、長さL6i,L6o)が等しくなるように凹凸パターン20sa,20sbを形成する磁気ディスク10a,10bについて上記したが、各凸部21s,21s・・の長さが環状領域の内周側から外周側までの各部において僅かに異なるように凹凸パターン20saを形成することもできる。具体的には、環状領域の内周側の凸部21siよりも環状領域の外周側の凸部21soの方が回転方向に沿った長さが僅かに長くなるように形成することができる。このように各凸部21s,21s・・の長さを異ならしめる構成であったとしても、外周側の凸部21soの長さを、従来の磁気ディスク10xにおける凸部21sxoの長さL1xoよりも短くして単位凸部長を規定して凹凸パターン20sa,20sbを形成することで、外周側の凸部21so上の残渣を十分に薄く形成することができるため、環状領域Aa,Ab内における外周側において良好な平坦性を良好に維持することができる。
【0095】
また、本発明におけるサーボパターンは上記の例に限定されず、磁気ディスク10a〜10cのサーボパターン領域Asa〜Ascにおける凹凸パターン20sa〜20scの凹凸形状を反転させると共に本発明における各種条件を満たすように単位凸部長および単位凹部長を規定してサーボパターンを形成することもできる。また、上記の磁気ディスク10a〜10cでは、凹凸パターン20における各凸部21,21・・の基端部から突端部までが磁性材料で形成されているが、本発明はこれに限定されず、図27に示す磁気ディスク10dのように、基材11aに形成した凹凸パターンを覆うようにして磁性層14aを形成することにより、その表面が磁性層14aで形成された凸部21a,21a・・と底面が磁性層14aで形成された凹部22a,22a・・とによって凹凸パターン20aを構成することもできる。この場合、基材11aの凹凸パターンについては、前述した磁気ディスク10a等における凹凸パターン20の形成方法と同様にして、例えば磁性層14のエッチングに際してマスクとして使用した凹凸パターン43を用いて基材11aをエッチングすることで形成することができる。また、例えばスタンパー35a〜35cと同様のスタンパーを用いたプレス成形や射出成形によって基材11aに凹凸パターンを形成することもできる。さらに、図28に示す磁気ディスク10eのように、各凸部21b,21b・・を構成する磁性層14bと各凸部21b,21b・・間の凹部22b,22b・・の底面を構成する磁性層14bを連続させて凹凸パターン20bを構成することもできる。また、磁気ディスク10a〜10cは、垂直記録方式の磁気ディスクであるが、面内記録方式の磁気ディスクに本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】ハードディスクドライブ1,1bの構成を示すブロック図である。
【図2】磁気ディスク10a〜10eの層構造を示す断面図である。
【図3】磁気ディスク10aの平面図である。
【図4】磁気ディスク10aにおけるサーボパターン領域Asaの平面図である。
【図5】環状領域Aa内における内周側領域Aiaの平面図である。
【図6】内周側領域Aiaにおける内周側サーボパターン領域Asaiの断面図である。
【図7】環状領域Aa内における外周側領域Aoaの平面図である。
【図8】外周側領域Aoaにおける外周側サーボパターン領域Asaoの断面図である。
【図9】磁気ディスク10aを製造するための中間体30の断面図である。
【図10】電子ビームEBを照射して樹脂層19に露光パターンを描画した状態の中間体30の断面図である。
【図11】図10に示す状態の樹脂層19を現像処理した中間体30、およびスタンパー35a(35b,35c)の凹凸パターン39を樹脂層19に転写した状態の中間体30の断面図である。
【図12】凹凸パターン41をマスクとしてSiマスク層18をエッチング処理してCマスク層17の上に凹凸パターン42(Siマスク)を形成した状態の中間体30の断面図である。
【図13】凹凸パターン42をマスクとしてCマスク層17をエッチング処理して磁性層14の上に凹凸パターン43(Cマスク)を形成した状態の中間体30の断面図である。
【図14】凹凸パターン43をマスクとして磁性層14をエッチング処理して中間層13の上に凹凸パターン20を形成した状態の中間体30の断面図である。
【図15】樹脂層19にスタンパー35a(35b,35c)の凹凸パターン39を押し付けた(樹脂層19に凸部39a,39a・・を押し込んだ)状態の中間体30およびスタンパー35a(35b,35c)の断面図である。
【図16】磁気ディスク10bの平面図である。
【図17】磁気ディスク10bにおけるサーボパターン領域Asbの平面図である。
【図18】環状領域Ab内における内周側領域Aibの平面図である。
【図19】内周側領域Aibにおける内周側サーボパターン領域Asbiの断面図である。
【図20】環状領域Ab内における外周側領域Aobの平面図である。
【図21】外周側領域Aobにおける外周側サーボパターン領域Asboの断面図である。
【図22】磁気ディスク10cにおけるサーボパターン領域Ascの平面図である。
【図23】環状領域Ac内における内周側領域Aicの平面図である。
【図24】内周側領域Aicにおける内周側サーボパターン領域Asciの断面図である。
【図25】環状領域Ac内における外周側領域Aocの平面図である。
【図26】外周側領域Aocにおける外周側サーボパターン領域Ascoの断面図である。
【図27】磁気ディスク10dの層構造を示す断面図である。
【図28】磁気ディスク10eの層構造を示す断面図である。
【図29】従来の磁気ディスク10xの平面図である。
【図30】磁気ディスク10xにおける内周側領域Axiの平面図である。
【図31】内周側領域Axiにおける内周側サーボパターン領域Asxiの断面図である。
【図32】磁気ディスク10xにおける外周側領域Axoの平面図である。
【図33】外周側領域Axoにおける外周側サーボパターン領域Asxoの断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1,1b ハードディスクドライブ
3 磁気ヘッド
6 サーボデータ検出部
8 制御部
10a〜10e 磁気ディスク
11 ガラス基材
11a 基材
14,14a,14b 磁性層
15 非磁性材料
19 樹脂層
20,20a,20b,20sa〜20sc,20t,39 凹凸パターン
21,21a,21b,21s,21si,21so,21t,39a 凸部
22,22a,22b,22s,22si,22so,22t,39b 凹部
30 中間体
35a〜35c スタンパー
A1a〜A4a,A1b〜A4b,A1c〜A4c 環状領域
Aia,Aib,Aic 内周側領域
Aoa,Aob,Aoc 外周側領域
Asa,Asb,Asc サーボパターン領域
Asai,Asbi,Asci内周側サーボパターン領域
Asao,Asbo,Asco 外周側サーボパターン領域
At トラックパターン領域
Cls 検出用クロック
Dcl クロックデータ
Ds サーボデータ
H,Hi,Ho 高低差
L1i〜L4i,L6i〜L8i,L11i〜L13i,L92i,L93i,L1o〜L4o,L6o〜L8o,L11o〜L13o,L51〜L54 長さ
O 中心
R 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凸部を有する凹凸パターンによってデータトラックパターンおよびサーボパターンが基材の少なくとも一面側に形成されると共に当該凹凸パターンの各凹部に非磁性材料が埋め込まれ、
前記データトラックパターンを構成する凹凸パターンは、前記各凸部が同心円状または螺旋状となるように形成され、
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記データトラックパターンと同心の複数の環状領域に区分けされると共に、前記基材の回転方向に沿った単位凸部長の当該各環状領域内における平均長を当該データトラックパターンの中心から当該環状領域までの距離で除した値が内周側の当該環状領域よりも外周側の当該環状領域ほど小さくなるように当該各環状領域毎に当該単位凸部長が規定されている情報記録媒体。
【請求項2】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記基材の回転方向に沿った単位凹部長に対する前記単位凸部長の比が前記環状領域内において当該環状領域の内周側から当該環状領域の外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凸部長および当該単位凹部長が規定されている請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記単位凹部長が前記環状領域内において当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど長くなるように規定されている請求項2記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記単位凸部長が前記環状領域内における当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されている請求項2または3記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記単位凸部長および前記単位凹部長の合計長が前記環状領域内において前記データトラックパターンの中心からの距離に比例して当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど長くなるように規定されている請求項2から4のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記単位凸部長が前記環状領域内において前記データトラックパターンの中心からの距離に比例して当該環状領域の内周側から当該環状領域の外周側に向かうほど長くなるように規定されると共に、前記基材の回転方向に沿った単位凹部長と前記単位凸部長の合計長が当該環状領域内において前記データトラックパターンの中心からの距離に比例して当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど長くなるように当該単位凸部長および当該単位凹部長が規定されている請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記単位凸部長の前記環状領域内における前記平均長が前記内周側の環状領域から前記外周側の環状領域までの全環状領域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されている請求項2から6のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記単位凸部長を前記データトラックパターンの中心からの距離で除した値が前記環状領域内において当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凸部長が規定されている請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記基材の回転方向に沿った単位凹部長を前記データトラックパターンの中心からの距離で除した値が前記環状領域内において当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凹部長が規定されている請求項8記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記単位凸部長が前記環状領域内における当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されている請求項8または9記載の情報記録媒体。
【請求項11】
前記サーボパターンを構成する凹凸パターンは、前記単位凹部長が前記環状領域内における当該環状領域の前記内周側から当該環状領域の前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されている請求項8から10のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の情報記録媒体と、前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータに基づいてサーボ制御を実行する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項13】
請求項1から7のいずれかに記載の情報記録媒体と、前記各環状領域毎に予め規定された読み出し周波数情報に基づいて前記情報記録媒体から前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出してサーボ制御する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項14】
請求項1、および8から11のいずれかに記載の情報記録媒体と、前記データトラックパターンの中心からの距離に応じて予め規定された読み出し周波数情報に基づいて前記情報記録媒体から前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出してサーボ制御する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項15】
請求項1から11のいずれかに記載の情報記録媒体における前記凹凸パターンの凹部に対応して形成された凸部と、前記情報記録媒体における前記凹凸パターンの凸部に対応して形成された凹部とを有する凹凸パターンが形成された情報記録媒体製造用のスタンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2006−120299(P2006−120299A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142375(P2005−142375)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】