説明

情報記録媒体

【課題】2層の記録層を有し且つ記録・消去性能が良好な情報記録媒体、およびその製造方法、ならびにその記録再生方法を提供する。
【解決手段】第1の情報層11と第2の情報層20とを備え、第1の情報層11が、レーザビームの照射または電気エネルギーの印加によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第1の記録層4を含み、第2の情報層20が、レーザビームの照射または電気エネルギーの印加によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第2の記録層14を含む。そして、第1の記録層4が第1の材料からなり、第2の記録層14が第2の材料からなり、第1の材料と第2の材料とが異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的または電気的に情報を記録、消去、書き換え、および再生する情報記録媒体、およびその製造方法、ならびにその記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビームを用いて情報を記録、消去、書き換え、および再生する情報記録媒体として相変化形情報記録媒体がある。相変化形情報記録媒体への情報の記録、消去、および書き換えには、その記録層が結晶相と非晶質相との間で可逆的に相変化を生じる現象を利用する。一般に、情報を記録する場合は、レーザビームを照射して記録層を溶融して急冷することによって、照射部を非晶質相にして情報を記録する。一方、情報を消去する場合は、記録時より低パワーのレーザビームを照射して記録層を昇温して徐冷することによって、照射部を結晶相にして前の情報を消去する。したがって、相変化形情報記録媒体では、高パワーレベルと低パワーレベルとの間でパワーを変調させたレーザビームを記録層に照射することによって、記録されている情報を消去しながら新しい情報を記録または書き換えすることが可能である(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
近年、情報記録媒体を大容量化するための技術として、さまざまな技術が検討されている。たとえば、短波長の青紫色レーザを用いたり、レーザビームが入射する側の基板の厚さを薄くして開口数NAが大きいレンズを使用したりすることによって、レーザビームのスポット径をより小さくして高密度の記録を行う技術が検討されている。また、2つの情報層を備える情報記録媒体を用いて、その片側から入射するレーザビームによって2つの情報層の記録再生を行う技術も検討されている(特許文献1参照)。この技術では、2つの情報層を用いることによって記録密度をほぼ2倍にすることができる。
【0004】
片側から2つの情報層を記録再生する情報記録媒体(以下、2層情報記録媒体という場合がある)では、レーザビームの入射側の情報層(以下、第1の情報層という)を透過したレーザビームを用いて、レーザビームの入射側とは反対側の情報層(以下、第2の情報層という)の記録再生を行う。したがって、第1の情報層の透過率は40%以上であることが好ましい。一方、第2の情報層は、記録特性に関しては高い記録感度(低パワーのレーザビームでも記録マークを形成できる)を有することが望まれ、再生特性に関しては高い反射率を有することが望まれる。
【0005】
第1の情報層に対するレーザビームの透過率を40%以上にするためには、第1の記録層の厚さを6nm程度と薄くする必要がある。しかし、記録層が薄くなると、記録層が結晶化する際に、形成される結晶核が減少し、また、原子の移動できる距離が短くなる。このため、同じ材料からなる記録層でも薄い記録層の方が結晶化速度が相対的に低下する傾向がある。したがって、記録層が薄いほど結晶相が形成されにくくなり、消去率が低下する。
【0006】
従来から、記録層の材料(相変化材料)としては、結晶化速度が速く、繰り返し書き換え性能にも優れ、且つ信頼性も高いGeSbTe系の材料が用いられてきた。この材料を用いて、コンピュータのデータ記録用の光ディスクや映像記録用の光ディスクが商品化されている。GeSbTe系材料の中でも、GeTe−Sb2Te3ライン上の擬二元系組成は結晶化速度が最も速い。発明者らは、波長660nmの赤色レーザを用いて記録再生実験を行った。その結果、9m/sという高い線速度での記録において、GeTe−Sb2Te3からなる記録層の厚さを6nmと薄くしても、30dBという良好な消去率が得られた。この技術によって、赤色レーザを用いる2層情報記録媒体の実現可能性が見いだされた。
【0007】
また、電流の印加によって、相変化材料からなる記録層を相変化させる情報記録媒体も従来から検討されている。この情報記録媒体では、記録層が2つの電極に挟まれている。この情報記録媒体では、非晶質相の状態である記録層に電流を徐々に流していくと、ある閾電流(threshold current)で記録層が結晶相に相変化し、電気抵抗が急激に低下する。また、結晶相の状態である記録層にパルス幅が短い大電流パルスを印加することによって、記録層を溶融・急冷して高抵抗の非晶質相に戻すこともできる。電気抵抗の違いは通常の電気的手段によって簡単に検出可能であるから、このような記録層を用いることによって書き換え可能な情報記録媒体が得られる。
【非特許文献1】角田 義人ら、「光ディスクストレージの基礎と応用」、電子情報通信学会編、1995年、第2章
【特許文献1】特開平12−36130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
情報記録媒体の大容量化のためには、短波長の青紫色レーザを使って記録再生を行う2層情報記録媒体の実用化が望まれる。短波長のレーザビームを用いたり、開口数が大きい対物レンズを用いることによって、レーザビームのスポット径を小さくでき、より高密度の記録が可能となる。短波長のレーザビームを用いて記録を行うためには、小さな記録マークでも良好な形状に形成できる情報記録媒体が必要である。青紫色レーザを使うと、記録層にレーザビームが照射される時間が相対的に短くなるため、小さな記録マークを形成するには、結晶化速度の速い材料で記録層を形成することが必要となる。また、小さな記録マークでも十分な信号振幅を得るためには、結晶相と非晶質相との間で光学的特性の変化が大きい材料を用いて記録層を形成することが望ましい。
【0009】
発明者らの実験では、赤色レーザを用いる従来の2層情報記録媒体をそのまま青紫色レーザ用の情報記録媒体として適用すると、第1の情報層および第2の情報層において形成される記録マークが小さくなり、その結果、十分な信号振幅が得られなかった。また、第1の情報層に関して、十分な透過率を確保するために記録層の厚さを6nm程度にすると、消去率が15dB未満という不十分な値となってしまった。大きな信号振幅を得るためには、GeTe−Sb2Te3ライン上の擬二元系組成において、GeTeの割合を大きくすればよいことが発明者らの実験でわかっている。しかしながら、GeTeの割合が多くなるほど材料の融点が高くなる傾向があるため、GeTeの割合が多くなるほど非晶質相を形成するためのレーザパワー(記録パワー)がより大きくなる。現在入手可能な青紫色レーザの出力は赤色レーザの出力よりも小さい。このため、第1の情報層を透過してきたレーザビームで記録再生を行う第2の情報層に、GeTeが多い組成を適用した場合には、記録パワーが不足して飽和した信号振幅を得ることができなかった。
【0010】
このように、青紫色レーザを使った2層情報記録媒体においては、第1の情報層の消去率の確保と、第2の情報層の高記録感度化が重要な課題であることがわかった。
【0011】
青紫色レーザを用いる2層情報記録媒体の実用化には、透過率が高く良好な記録・消去性能を有する第1の情報層と、反射率および記録感度が高く良好な記録・消去性能を有する第2の情報層とが必要である。したがって、その実用化のためには、第1および第2の記録層の材料と、第1および第2の情報層の構成とを検討する必要がある。
【0012】
また、電流の印加によって相変化を生じる記録層の材料としては、Teを主成分とする材料が実用化されている。しかし、従来の材料は、結晶化に要する時間がμsオーダーと長かった。また、記録・消去性能が良好で且つ2層の記録層を備える電気的相変化形の情報記録媒体は、まだ実用化されていない。
【0013】
本発明は、2層の記録層を有し且つ記録・消去性能が良好な情報記録媒体、およびその製造方法、ならびにその記録再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の情報記録媒体は、第1の情報層と第2の情報層とを備える情報記録媒体であって、前記第1の情報層が、レーザビームの照射によってまたは電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第1の記録層を含み、前記第2の情報層が、前記レーザビームの照射によってまたは前記電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第2の記録層を含み、前記第1の記録層が第1の材料からなり、前記第2の記録層が第2の材料からなり、前記第1の材料と前記第2の材料とが異なることを特徴とする。本発明の情報記録媒体によれば、それぞれの情報層で良好な記録再生特性が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の情報記録媒体およびその製造方法によれば、2層の記録層を有し且つ記録・消去性能が良好な情報記録媒体が得られる。
【0016】
また、本発明の記録再生方法によれば、高密度の記録が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の情報記録媒体では、前記第1の材料がGeとSbとTeとを含み、前記第2の材料が、Ag、In、Ge、Sn、Se、Bi、AuおよびMnから選ばれる少なくとも1つの元素M1とSbとTeとからなるものでもよい。この構成によれば、レーザビームを用いて情報を記録する記録媒体(以下、光学的情報記録媒体という場合がある)に関して、透過率および消去率が高い第1の情報層と、反射率および記録感度が高い第2の情報層とを備える情報記録媒体が得られる。特に、この光学的情報記録媒体は、青紫色レーザを用いた高密度記録に好適である。また、電流を用いて情報を記録する記録媒体(以下、電気的情報記録媒体という場合がある)に関して、第1の記録層、第2の記録層、またはその両方を、選択的に結晶相と非晶質相との間で容易に相変化させることができる。
【0018】
本発明の情報記録媒体では、前記第1の材料が、組成式
GeaSbbTe3+a
(ただし、0<a≦10、1.5≦b≦4)
で表されるものでもよい。この構成によれば、第1の記録層が極めて薄い場合でも良好な記録再生特性が得られる。
【0019】
本発明の情報記録媒体では、前記第1の材料が、組成式
(Ge−M2)aSbbTe3+a
(ただし、M2はSnおよびPbから選ばれる少なくとも1つの元素であり、0<a≦10、1.5≦b≦4)
で表されるものでもよい。この構成によれば、Ge−Sb−Te3元系組成のGeを置換したSnまたはPbが結晶化能を向上させ、第1の記録層が極めて薄い場合でも十分な消去率が得られる。
【0020】
本発明の情報記録媒体では、前記第1の材料が、組成式
(GeaSbbTe3+a100-cM3c
(ただし、M3はSi、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Se、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Ta、W、Os、Ir、Pt、AuおよびBiから選ばれる少なくとも1つの元素であり、0<a≦10、1.5≦b≦4、0<c≦20)
で表されるものでもよい。この構成によれば、Ge−Sb−Te3元系組成に添加した元素M3が記録層の融点および結晶化温度を上昇させ、記録層の熱的安定性が向上する。
【0021】
本発明の情報記録媒体では、前記第2の材料が、組成式
(SbxTe100-x100-yM1y
(ただし、50≦x≦95、0<y≦20)
で表されるものでもよい。この構成によれば、第2の記録層の融点が低く且つ結晶相と非晶質相との屈折率差が大きいため、記録感度が高く且つ結晶相と非晶質相との反射率差が大きい第2の情報層が得られる。
【0022】
本発明の情報記録媒体では、前記第1および第2の記録層が、前記レーザビームの照射によって可逆的な相変化を起こす層であり、前記第1の情報層が、前記第2の情報層よりも前記レーザビームの入射側に配置されており、前記第2の材料の融点が、前記第1の材料の融点よりも低くてもよい。この構成によれば、記録感度が高い第2の情報層が得られる。
【0023】
本発明の情報記録媒体では、前記第1および第2の記録層が、前記レーザビームの照射によって可逆的な相変化を起こす層であり、前記第1の情報層が、前記第2の情報層よりも前記レーザビームの入射側に配置されていてもよい。この構成によれば、光学的情報記録媒体が得られる。
【0024】
上記光学的情報記録媒体では、前記第1の記録層の厚さが9nm以下であってもよい。この構成によれば、第1の情報層の透過率を高くして、第2の情報層の記録再生に必要なレーザ光量を第2の情報層に到達させることが容易になる。
【0025】
上記光学的情報記録媒体では、前記第2の記録層の厚さが6nm〜15nmの範囲内であってもよい。この構成によれば、第2の記録層の記録感度を特に高くできる。厚さを6nm以上とすることによって、記録層での光吸収量を多くできる。厚さを15nm以下とすることによって、記録マークを形成する際に溶融させる部分の体積を小さくできるため、記録感度の低下を防止できる。
【0026】
上記光学的情報記録媒体では、前記第1の記録層が結晶相である場合の前記第1の情報層の透過率Tc(%)と、前記第1の記録層が非晶質相である場合の前記第1の情報層の透過率Ta(%)とが、波長が390nm以上430nm以下の前記レーザビームに対して、
40≦(Tc+Ta)/2
を満たしてもよい。この構成によれば、第2の情報層に関して特に良好な記録・消去特性が得られる。
【0027】
上記光学的情報記録媒体では、前記第1の情報層と前記第2の情報層との間に配置された光学分離層をさらに備え、前記第1の情報層が、第1の基板と第1の下側保護層と第1の上側保護層と第1の反射層とをさらに含み、前記第2の情報層が、第2の下側保護層と第2の上側保護層と第2の反射層と第2の基板とをさらに含み、前記第1の基板、前記第1の下側保護層、前記第1の記録層、前記第1の上側保護層、前記第1の反射層、前記光学分離層、前記第2の下側保護層、前記第2の記録層、前記第2の上側保護層、前記第2の反射層、および前記第2の基板が、前記レーザビームの入射側からこの順序で配置されていてもよい。この構成によれば、第1および第2の情報層について、それぞれの反射率、記録感度、消去感度、および透過率(とくに第1の情報層)を、記録・消去・再生条件に合わせて最適化できる。また、光学分離層によって、第1の情報層と第2の情報層とを光学的に分離することができる。
【0028】
上記光学的情報記録媒体では、前記第1の基板と前記第1の下側保護層との間に配置された透明層をさらに備えてもよい。
【0029】
上記光学的情報記録媒体は、前記第1の下側保護層と前記第1の記録層との界面、および、前記第1の上側保護層と前記第1の記録層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面に配置された界面層をさらに備えてもよい。また、上記光学的情報記録媒体は、前記第2の下側保護層と前記第2の記録層との界面、および、前記第2の上側保護層と前記第2の記録層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面に配置された界面層をさらに備えてもよい。また、上記光学的情報記録媒体は、前記第1の上側保護層と前記第1の反射層との界面、および、前記第2の上側保護層と前記第2の反射層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面に配置された界面層をさらに備えてもよい。界面層を備えるこれらの構成によれば、隣接する層間の原子拡散を防止でき、特性および信頼性が特に高い情報記録媒体が得られる。
【0030】
上記光学的情報記録媒体は、前記第1の反射層と前記光学分離層との間に、前記第1の情報層の透過率を調整するための透過率調整層をさらに備えてもよい。この構成によれば、第1の情報層の透過率を特に高めることができる。
【0031】
上記光学的情報記録媒体は、前記第1の反射層と前記透過率調整層との間に配置された界面層をさらに備えてもよい。この構成によれば、第1の反射層と透過率調整層との間の原子拡散を防止でき、信頼性が特に高い情報記録媒体が得られる。
【0032】
上記光学的情報記録媒体では、前記第1の基板の厚さが、10μm〜800μmの範囲内であってもよい。この構成によれば、対物レンズの開口数(NA)を変化させることによって、第1の基板の溝の形状や記録・消去・再生条件に合わせて、記録マークの長さと幅と間隔とを最適化できる。たとえば、第1の基板の厚さが100μmの場合、NA=0.85で良好な記録・消去性能が得られた。また、第1の基板の厚さが600μmの場合、NA=0.6で良好な記録・消去性能が得られた。
【0033】
上記光学的情報記録媒体では、前記第2の基板の厚さが、400μm〜1300μmの範囲内であってもよい。この構成によれば、対物レンズのNAを変化させることによって、第2の基板の溝の形状や記録・消去・再生条件に合わせて、記録マークの長さと幅と間隔とを最適化できる。第1の基板の厚さが約100μmである場合は第2の基板の厚さは約1100μm、第1の基板の厚さが約600μmである場合は第2の基板の厚さは約600μmというように、情報記録媒体の厚さが約1200μmとなるように第1および第2の基板の厚さを選択することが好ましい。
【0034】
本発明の情報記録媒体では、第1および第2の電極とをさらに含み、前記第1および第2の記録層が、前記電流の印加によって可逆的な相変化を起こす層であり、前記第1の電極上に、前記第1の記録層、前記第2の記録層、および前記第2の電極がこの順序で積層されていてもよい。この構成によれば、電気的情報記録媒体が得られる。
【0035】
上記電気的情報記録媒体では、前記第1の記録層と前記第2の記録層との間に配置された中間電極をさらに備えてもよい。この構成によれば、第1の記録層と第2の記録層との間の原子拡散を防止できるため、繰り返し特性および信頼性を高めることができる。また、この構成によれば、第1の記録層または第2の記録層のどちらか一方のみに電流を印加できる。
【0036】
また、本発明の製造方法は、第1の情報層と第2の情報層とを備える情報記録媒体の製造方法であって、
(a)前記第1の情報層を形成する工程と、
(b)前記第2の情報層を形成する工程とを含み、
前記第1の情報層が、レーザビームの照射によってまたは電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第1の記録層を含み、
前記第2の情報層が、前記レーザビームの照射によってまたは前記電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第2の記録層を含み、
前記(a)の工程が、GeとSbとTeとを含む母材を用いて前記第1の記録層を形成する工程を含み、
前記(b)の工程が、Ag、In、Ge、Sn、Se、Bi、AuおよびMnから選ばれる少なくとも1つの元素M1とSbとTeとを含む母材を用いて前記第2の記録層を形成する工程を含むことを特徴とする。この製造方法によれば、本発明の情報記録媒体を容易に製造できる。
【0037】
本発明の製造方法では、前記第1および第2の記録層が、アルゴンガスまたはクリプトンガスを含むスパッタリングガスを用いたスパッタリング法によって形成されてもよい。このスパッタリングガスは、窒素ガスおよび酸素ガスから選ばれる少なくとも1つのガスをさらに含んでもよい。この構成によれば、繰り返し記録性能に優れた情報層を製造できる。
【0038】
本発明の製造方法では、前記第1の記録層の厚さが9nm以下であり、前記(a)の工程において、0.1nm/秒〜3nm/秒の範囲内の成膜レートで前記第1の記録層を形成してもよい。この構成によれば、厚さのばらつきが少ない第1の記録層を備える光学的情報記録媒体を生産性よく製造できる。
【0039】
本発明の製造方法では、前記第2の記録層の厚さが6nm〜15nmの範囲内であり、前記(b)の工程において、0.3nm/秒〜10nm/秒の範囲内の成膜レートで前記第2の記録層を形成してもよい。この構成によれば、記録感度が高い第2の情報層を備える光学的情報記録媒体を生産性よく製造できる。
【0040】
本発明の製造方法では、前記(a)の工程の前に前記(b)の工程が行われ、前記(b)の工程ののちであって前記(a)の工程の前に、
(c)前記第2の情報層上に光学分離層を形成する工程をさらに含み、
前記(a)の工程において、前記光学分離層上に前記第1の情報層を形成してもよい。
【0041】
また、情報記録媒体を記録再生するための本発明の第1の方法は、前記情報記録媒体が上記本発明の情報記録媒体であり、前記情報記録媒体の第1の情報層に対して、前記第1の情報層側から入射したレーザビームによって情報の記録再生を行い、前記情報記録媒体の第2の情報層に対して、前記第1の情報層を透過した前記レーザビームによって情報の記録再生を行い、前記レーザビームの波長が390nm以上430nm以下であることを特徴とする。この第1の記録再生方法によれば、光学的情報記録媒体の第1および第2の情報層に対して、高密度に信頼性よく記録再生を行うことができる。
【0042】
本発明の第1の記録再生方法では、情報を記録再生する際の前記情報記録媒体の線速度が3m/秒以上30m/秒以下であってもよい。
【0043】
本発明の第1の記録再生方法では、前記レーザビームが対物レンズによって集光されたレーザビームであり、前記対物レンズの開口数NAが0.5以上1.1以下であってもよい。この構成によれば、第1および第2の基板の厚さや溝の形状、ならびに記録・再生の条件に合わせて、記録マークの長さと幅と間隔とを最適化できる。
【0044】
また、情報記録媒体を記録再生するための本発明の第2の方法は、前記情報記録媒体が上記本発明の情報記録媒体であり、前記情報記録媒体の前記第1および第2の記録層が電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす層であり、前記第1または第2の記録層を非晶質相から結晶相に変化させる際に前記第1または第2の記録層に印加する電流パルスの振幅Icおよびパルス幅tcと、前記第1の記録層を結晶相から非晶質相に変化させる際に前記第1の記録層に印加する電流パルスの振幅Ia1およびパルス幅ta1と、前記第2の記録層を結晶相から非晶質相に変化させる際に前記第2の記録層に印加する電流パルスの振幅Ia2およびパルス幅ta2とが、Ic<Ia2<Ia1の関係、およびta1≦tcまたはta2≦tcの関係を満たすことを特徴とする。この第2の記録再生方法によれば、電気的情報記録媒体において、第1の記録層、第2の記録層、またはその両方を、選択的に結晶相または非晶質相に相変化させることができる。なお、本発明の電気的情報記録媒体は、相変化による電気抵抗の変化を生起するものであるため、変更可能なプログラマブル回路の構成素子として用いることもできる。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は一例であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下の実施形態では、同一の部分については同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
【0046】
(実施形態1)
実施形態1では、本発明の情報記録媒体について一例を説明する。実施形態1の情報記録媒体22について一部断面図を図1に示す。情報記録媒体22では、レーザビーム23の照射によって記録再生が行われる。
【0047】
図1を参照して、情報記録媒体22は、光学分離層21と、光学分離層21を挟むように配置された第1の情報層11および第2の情報層20とを備える。第1の情報層11は、第2の情報層20よりもレーザビーム23の入射側に配置されている。
【0048】
第1の情報層11は、レーザビーム23の入射側から順に配置された第1の基板1、第1の下側保護層2、第1の下側界面層3、第1の記録層4、第1の上側界面層5、第1の上側保護層6、第1の界面層7、第1の反射層8、第1の最上界面層9、および透過率調整層10を備える。
【0049】
第2の情報層20は、レーザビーム23の入射側から順に配置された第2の下側保護層12、第2の下側界面層13、第2の記録層14、第2の上側界面層15、第2の上側保護層16、第2の界面層17、第2の反射層18、および第2の基板19を備える。なお、界面層および保護層の名称において、下側とは記録層よりもレーザビーム23の入射側であることを意味し、上側とは記録層に対してレーザビーム23の入射側とは反対側であることを意味する。
【0050】
レーザビーム23は、第1の基板1側から入射する。第2の情報層20は、第1の情報層11および光学分離層21を透過したレーザビーム23によって記録再生が行われる。
【0051】
第1の基板1および第2の基板19は、透明で円盤状の基板である。第1の基板1および第2の基板19は、たとえば、ポリカーボネートやアモルファスポリオレフィンやPMMAといった樹脂、またはガラスを用いて形成できる。なお、第1の基板1は、第1の下側保護層2上に樹脂を塗布したのち、この樹脂を硬化させることによって形成してもよい。
【0052】
第1の基板1および第2の基板19の内側(光学分離層21側)の表面には、必要に応じて、レーザビームを導くための案内溝が形成されていてもよい。これらの基板の外側の表面は、平滑であることが好ましい。これらの基板は、短波長域において光学的に複屈折が小さいことが好ましい。これらの基板の材料としては、転写性・量産性に優れ、低コストであることから、ポリカーボネートが特に有用である。第1の基板1の厚さは、たとえば10μm〜800μm(好ましくは、50μm〜150μmまたは550μm〜650μm)の範囲内である。第2の基板19の厚さは、たとえば400μm〜1300μm(好ましくは、550μm〜650μmまたは1050μm〜1150μm)の範囲内である。
【0053】
第1の基板1および第2の基板19の両方に、レーザビームを導くための溝が形成されている情報記録媒体について、一例を図2に示す。図2の情報記録媒体22aでは、第1の情報層11aが第1の基板1aを含み、第2の情報層20aが第2の基板19aを含む。第1の基板1aおよび第2の基板19aには、溝(グルーブ)1bが形成されている。情報記録媒体22aでは、情報は、レーザビーム23の入射側の溝面である溝1bの部分に記録してもよいし、溝1bの間の部分(レーザビーム23の入射側から遠い方の溝面である。以下ランド1cという場合がある)に記録してもよい。また、溝1bとランド1cの両方に情報を記録してもよい。
【0054】
第1の下側保護層2、第1の上側保護層6、第2の下側保護層12および第2の上側保護層16は、いずれも誘電体からなる。これらの保護層は、光学距離を調整して記録層の光吸収効率を高める働きと、記録前後の反射光量の変化を大きくして信号振幅を大きくする働きとを有する。これらの保護層には、たとえばSiOx(xは、0.5〜2.5),Al23,TiO2,Ta25,ZrO2,ZnO,またはTe−Oなどの酸化物を用いることができる。また、Si−N,Al−N,Ti−N,Ta−N,Zr−N,またはGe−Nなどの窒化物を用いることもできる。また、ZnSなどの硫化物やSiCなどの炭化物を用いることもできる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。これらの中でも、ZnSとSiO2との混合物であるZnS−SiO2は、保護層の材料として特に優れている。ZnS−SiO2は、非晶質材料で、屈折率が高く、成膜速度が速く、機械的特性および耐湿性が良好である。
【0055】
第1の下側保護層2および第1の上側保護層6の厚さは、第1の記録層4が結晶相である場合とそれが非晶質相である場合とで反射光量の変化が大きく、且つ第1の情報層11の透過率が大きく、且つ第1の記録層4の光吸収効率が大きくなるように厳密に決定することができる。具体的には、これらの厚さは、たとえばマトリクス法に基づく計算を用いて決定できる。
【0056】
第2の下側保護層12および第2の上側保護層16の厚さも、同様に、第2の記録層14が結晶相である場合とそれが非晶質相である場合とで反射光量の変化が大きく、且つ第2の記録層14の光吸収効率が大きくなるように厳密に決定することができる。第1の下側保護層2、第1の上側保護層6、第2の下側保護層12および第2の上側保護層16は、それぞれ異なる材料・組成で形成してもよいし同一の材料・組成で形成してもよい。
【0057】
透過率調整層10は、第1の情報層11の透過率を調整する機能を有する。透過率調整層10によって、第1の記録層4が結晶相である場合の第1の情報層11の透過率Tc(%)と、第1の記録層4が非晶質相である場合の第1の情報層11の透過率Ta(%)とを共に高くすることができる。具体的には、透過率調整層10を備える情報記録媒体22では、透過率調整層10が無い場合に比べて、第1の情報層11の透過率が2%〜6%程度上昇する。透過率調整層10は、保護層について説明した材料で形成することができる。情報記録媒体22では、40≦(Tc+Ta)/2(より好ましくは、45≦(Tc+Ta)/2)であることが好ましい(実施形態2の情報記録媒体26においても同様である)。
【0058】
第1の下側界面層3、第1の上側界面層5、第2の下側界面層13および第2の上側界面層15は、それぞれ、第1の下側保護層2と第1の記録層4との間、第1の上側保護層6と第1の記録層4との間、第2の下側保護層12と第2の記録層14との間、および第2の上側保護層16と第2の記録層14との間で物質が移動することを防止する。これらの界面層は、特に、繰り返し記録によって生じる物質移動を防止する。これらの界面層は、たとえばSi−N,Al−N,Ti−N,Ta−N,Zr−N,Ge−Nなどの窒化物、これらを含む窒化酸化物、またはSiCなどの炭化物によって形成できる。これらの中でも、Ge−Nが特に好ましい。Ge−Nは、反応性スパッタリングで形成しやすく、機械的特性および耐湿性に優れる。界面層が厚いと、情報層の反射率や吸収率が大きく変化して記録・消去性能に影響を与える。したがって、界面層の厚さは、1nm〜10nmの範囲内であることが望ましく、2nm〜5nmの範囲内であることがより好ましい。
【0059】
第1の界面層7、第1の最上界面層9および第2の界面層17は、それぞれ、第1の上側保護層6と第1の反射層8との間、透過率調整層10と第1の反射層8との間、および第2の上側保護層16と第2の反射層18との間で物質が移動することを防止する。これらの界面層は、特に、高温高湿の環境における記録によって生じる物質移動を防止する。これらの界面層は、第1の下側界面層3、第1の上側界面層5、第2の下側界面層13および第2の上側界面層15について説明した材料で形成することができる。これらの界面層の厚さは、1nm〜10nmの範囲内であることが望ましく、2nm〜5nmの範囲内であることがより好ましい。
【0060】
第1の記録層4は、レーザビームの照射によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす材料からなる。第1の記録層4は、たとえばGeとSbとTeとを含む材料で形成できる。具体的には、第1の記録層4は、組成式GeaSbbTe3+aで表される材料で形成できる。この材料は、a=0の場合には、結晶相が非常に安定であり非晶質相の安定性に欠ける。一方、10<aの場合には、信号振幅は大きくなるが、融点が上がるとともに結晶化速度が低下する。そのため、aは、0<a≦10の関係を満たすことが好ましく、1≦a≦9の関係を満たすことがより好ましい。また、この材料は、b<1.5の場合には、結晶相が非常に安定であり非晶質相の安定性に欠ける。一方、4<bの場合には、信号振幅は大きくなるが、結晶化速度が低下する。そのため、bは、1.5≦b≦4の関係を満たすことが好ましく、1.5≦b≦3の関係を満たすことがより好ましい。
【0061】
また、第1の記録層4は、組成式(Ge−M2)aSbbTe3+a(ただし、M2は、SnおよびPbから選ばれる少なくとも1つの元素)で表される材料で形成してもよい。この組成式は、Geと元素M2とが合計で100・a/(3+2a+b)原子%だけ含まれることを意味している。この材料の組成は、組成式GeaSbbTe3+aで表される材料のGeの一部を元素M2で置換した組成である。この材料を用いた場合、Geを置換した元素M2が結晶化能を向上させるため、第1の記録層4が極めて薄い場合でも十分な消去率が得られる。元素M2としては、毒性がない点でSnがより好ましい。この材料を用いる場合も、0<a≦10(より好ましくは、1≦a≦9)、且つ1.5≦b≦4(より好ましくは、1.5≦b≦3)であることが好ましい。
【0062】
また、第1の記録層4は、組成式(GeaSbbTe3+a100-cM3c(ただし、M3は、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Se、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、およびBiから選ばれる少なくとも1つの元素)で表される材料で形成してもよい。この材料の組成は、組成式GeaSbbTe3+aで表される材料に元素M3を添加した組成である。この場合、添加された元素M3が記録層の融点および結晶化温度を上昇させるため、記録層の熱的安定性を向上でき、その結果、第1の情報層11の記録再生性能を向上できる。この材料は、20<cの場合には結晶化速度が不十分となるため、0<c≦20であることが好ましく、2≦c≦10であることがより好ましい。また、0<a≦10(より好ましくは、1≦a≦9)、且つ1.5≦b≦4(より好ましくは、1.5≦b≦3)であることが好ましい。
【0063】
第2の記録層14は、レーザビームの照射によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす材料からなる。第2の記録層14は、第1の記録層4の材料とは異なる材料で形成される。第2の記録層14は、第1の記録層4の材料よりも融点が低い材料からなることが好ましい。
【0064】
第2の記録層14は、Ag、In、Ge、Sn、Se、Bi、AuおよびMnから選ばれる少なくとも1つの元素M1とSbとTeとからなる材料で形成できる。具体的には、組成式(SbxTe100-x100-yM1yで表される材料で形成できる。この材料は、Sb70Te30共晶組成近傍のSb−Te合金に元素M1を加えることによって得られる。xおよびyが、それぞれ、50≦x≦95、および0<y≦20を満たす場合には、この材料は、融点が低く且つ屈折率が高い。このため、この範囲の組成の材料を用いて第2の記録層14を形成することによって、記録感度が高く且つ反射率も高い第2の情報層20が得られる。
【0065】
65≦xの場合には、結晶化速度が特に速く、特に良好な消去率が得られる。また、x≦85の場合には、複数の相が現れることを抑制できるため、繰り返し記録による特性劣化を抑制できる。したがって、65≦x≦85であることがより好ましい。また、良好な記録再生性能を得るためには結晶化速度を調整するための元素M1を添加することが好ましい。yは、1≦y≦10であることがより好ましい。y≦10の場合には、複数の相が現れることを抑制できるため、繰り返し記録による特性劣化を抑制できる。
【0066】
ここで、(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11、および(Sb0.7Te0.395Ge5、(Sb0.7Te0.390Ag5In5の屈折率、消衰係数、および融点を調べた結果を表1に示す。屈折率および消衰係数は、上記材料からなる厚さ10nmの層を石英基板上に形成したサンプルを分光器で測定することによって得た。また、融点は、示差走査熱量測定法(differential scanning calorimeter:DSC法)によって測定した。
【0067】
【表1】

【0068】
表1において、ncは、サンプルの層が結晶相である場合の屈折率を示す。naは、サンプルの層が非晶質相である場合の屈折率を示す。Δnは、Δn=nc−naで表され、層が結晶相である場合と層が非晶質相である場合との屈折率の変化を示す。kcは、サンプルの層が結晶相である場合の消衰係数を示す。kaは、サンプルの層が非晶質相である場合の消衰係数を示す。Δkは、Δk=kc−kaで表され、層が結晶相である場合と層が非晶質相である場合との消衰係数の変化を示す。
【0069】
表1に示すように、サンプルの層が結晶相であっても非晶質相であっても、(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11の消衰係数は、(Sb0.7Te0.395Ge5および(Sb0.7Te0.390Ag5In5の消衰係数よりも、約0.3小さかった。また、Sb70Te30共晶組成近傍のSb−Te合金に元素M1を加えた組成である(Sb0.7Te0.395Ge5、および(Sb0.7Te0.390Ag5In5は、Ge−Sb−Te3元系組成のGeをSnで置換した(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11と比較して、融点が約50℃低く、また、屈折率の変化Δnの絶対値が大きかった。
【0070】
以上の結果から、第1の記録層4の材料には、消衰係数が小さいために透過率を大きくできるGe−Sb−Te3元系組成またはそれをベースとする組成を用いることが好ましい。また、第2の記録層14の材料には、融点が低いため記録感度を高くでき、且つ屈折率変化Δnが大きいため反射率変化を大きくできる(Sb−Te)−M1系組成を用いることが好ましい。第1の記録層4/第2の記録層14の具体的な組み合わせとしては、たとえば、Ge6Sb2Te9/(Sb0.7Te0.395Ge5、Ge8Sb2Te11/(Sb0.7Te0.395Ge5、Ge8Sb2Te11/(Sb0.7Te0.390Ag5In5などが挙げられる。
【0071】
第1の記録層4の厚さは、第1の情報層11の透過率を高くして、第2の情報層20の記録再生の際に必要なレーザ光量を第2の情報層20に到達させるため、9nm以下であることが好ましく、5nm〜7nmの範囲内であることがより好ましい。
【0072】
第2の記録層14の厚さは、第2の情報層20の記録感度を高くするため、6nm〜15nmの範囲内であることが好ましい。第2の記録層14が厚い場合における熱の面内方向への拡散による隣接領域への熱的影響と、第2の記録層14が薄い場合における第2の情報層20の反射率の低下とを考慮すると、第2の記録層14の厚さは、8nm〜12nmの範囲内であることがより好ましい。
【0073】
第1の反射層8および第2の反射層18は、第1の記録層4または第2の記録層14に吸収される光量を増大させるという光学的な機能を有する。また、これらの反射層は、第1の記録層4または第2の記録層14で生じた熱を速やかに拡散させ、記録層を非晶質化しやすくするという熱的な機能も有する。さらに、これらの反射層は、使用する環境から多層膜を保護するという機能も有する。
【0074】
第1の反射層8および第2の反射層18の材料には、たとえばAl,Au,Ag,Cuといった熱伝導率が高い単体金属を用いることができる。また、これらの金属元素の1つまたは複数を主成分とし、耐湿性の向上または熱伝導率の調整等のために1つまたは複数の他の元素を添加した合金を用いることもできる。具体的には、Al−Cr,Al−Ti,Au−Pd,Au−Cr,Ag−Pd,Ag−Pd−Cu,Ag−Pd−Ti,Ag−Ru−Au,またはCu−Siといった合金を用いることができる。これらの合金は、いずれも耐食性に優れ且つ急冷条件を満足する優れた材料である。特にAg合金は、熱伝導率が大きく、光の透過率も高いため、第1の反射層8の材料として好ましい。
【0075】
第1の情報層11の透過率TcおよびTaをできるだけ高くするため、第1の反射層8の厚さは、5nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜12nmの範囲内であることがより好ましい。第1の反射層8が5nmより薄い場合には、その熱拡散機能が不十分となり、且つ第1の情報層11の反射率が低下する。また、第1の反射層8が15nmより厚い場合には、第1の情報層11の透過率が不十分となる。一方、第2の情報層20は、高い透過率を必要としない。そのため、第2の反射層18の厚さは、30nm〜150nmの範囲内であることが好ましく、70nm〜90nmの範囲内であることがより好ましい。第2の反射層18が30nmより薄い場合には、その熱拡散機能が不十分となり、第2の記録層14が非晶質化しにくくなる。また、第2の反射層18が150nmより厚い場合には、その熱拡散機能が大きくなりすぎて第2の情報層20の記録感度が低下する。
【0076】
光学分離層21は、第1の情報層11のフォーカス位置と第2の情報層20のフォーカス位置とを区別するために設けられる。光学分離層21の材料としては、光硬化性樹脂または遅効性樹脂を用いることができる。光学分離層21の材料は、記録再生に用いられるレーザビーム23の波長における光吸収が小さいことが好ましい。光学分離層21の厚さは、対物レンズの開口数NAとレーザビーム23の波長λによって決定される焦点深度ΔZ以上であることが必要である。焦光点の強度の基準を無収差の場合の80%と仮定した場合、ΔZはΔZ=λ/{2(NA)2}で近似できる。λ=400nm、NA=0.6のとき、ΔZ=0.556μmとなり、±0.6μm以内は焦点深度内となる。そのため、この場合には、光学分離層21の厚さは1.2μm以上であることが必要である。第1の情報層11と第2の情報層20との間の距離は、対物レンズを用いてレーザビーム23を集光可能な範囲内にあることが必要である。したがって、光学分離層21の厚さと第1の基板1の厚さとの合計は、対物レンズが許容できる基板厚さの公差内にすることが好ましい。このため、光学分離層21の厚さは、1.2μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0077】
実施形態1の情報記録媒体22は、実施形態3で説明する方法によって製造できる。
【0078】
(実施形態2)
実施形態2では、本発明の情報記録媒体について他の一例を説明する。実施形態2の情報記録媒体26の一部断面図を図3に示す。情報記録媒体26では、レーザビーム23の照射によって記録再生が行われる。
【0079】
図3を参照して、情報記録媒体26は、光学分離層21と、光学分離層21を挟むように配置された第1の情報層25および第2の情報層20とを備える。
【0080】
第1の情報層25は、レーザビーム23の入射側から順に配置された第1の基板1、透明層24、第1の下側保護層2、第1の下側界面層3、第1の記録層4、第1の上側界面層5、第1の上側保護層6、第1の界面層7、第1の反射層8、第1の最上界面層9、および透過率調整層10を備える。
【0081】
第2の情報層20は、レーザビーム23の入射側から順に配置された第2の下側保護層12、第2の下側界面層13、第2の記録層14、第2の上側界面層15、第2の上側保護層16、第2の界面層17、第2の反射層18、および第2の基板19を備える。
【0082】
以下の実施形態4で説明するように、情報記録媒体26を製造する場合には、まず、第2の基板19上に第2の反射層18〜第2の下側保護層12、光学分離層21、透過率調整層10〜第1の下側保護層2という順序で各層を積層する。そして、その後、透明層24を用いて第1の下側保護層2と第1の基板1とを貼り合わせることによって情報記録媒体26を形成できる。また、透明層24を形成せずに、樹脂を塗布して硬化させることによって第1の基板1を形成してもよい。
【0083】
光学分離層21および透明層24の材料としては、光硬化性樹脂または遅効性樹脂を用いて形成できる。この材料は、記録再生に用いるレーザビーム23の波長における光吸収が小さいことが好ましい。光学分離層21および透明層24の厚さは、実施形態1で説明した理由により、それぞれ、1.2μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0084】
光学分離層21の表面のうち第1の情報層25側の表面には、レーザビーム23を導く案内溝が形成されていてもよい。実施形態1の情報記録媒体22と同様に、レーザビーム23は第1の基板1側から入射する。そして、第2の情報層20においては、第1の情報層25および光学分離層21を透過したレーザビーム23によって記録再生が行われる。
【0085】
なお、第1の基板1、第1の下側保護層2、第1の下側界面層3、第1の記録層4、第1の上側界面層5、第1の上側保護層6、第1の界面層7、第1の反射層8、第1の最上界面層9、透過率調整層10、第2の下側保護層12、第2の下側界面層13、第2の記録層14、第2の上側界面層15、第2の上側保護層16、第2の界面層17、第2の反射層18、および第2の基板19には、実施形態1で説明したものと同様のものを用いることができる。また、それらの形状および機能についても、実施形態1で説明した形状および機能と同様である。
【0086】
(実施形態3)
実施形態3では、本発明の情報記録媒体22の製造方法について説明する。
【0087】
実施形態3の製造方法は、第1の情報層11を形成する工程(工程(a))を含む。具体的には、まず、レーザビーム23を導くための案内溝を形成した第1の基板1(厚さがたとえば0.1mm)を用意する。次に、第1の基板1を成膜装置内に配置し、第1の基板1上に第1の下側保護層2を成膜する。このとき、第1の基板1に案内溝が形成されている場合には、案内溝が形成されている側に第1の下側保護層2を成膜する。第1の下側保護層2は、Arガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、第1の下側保護層2を構成する金属からなる母材を反応性スパッタリングすることによって形成できる。また、第1の下側保護層2は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で化合物からなる母材をスパッタリングすることによっても形成できる。
【0088】
続いて、第1の下側保護層2上に第1の下側界面層3を成膜する。第1の下側界面層3は、Arガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で、第1の下側界面層3を構成する金属からなる母材を反応性スパッタリングすることによって形成できる。また、第1の下側界面層3は、Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で化合物からなる母材をスパッタリングすることによっても形成できる。
【0089】
続いて、第1の下側界面層3上に第1の記録層4を成膜する。第1の記録層4は、その組成に応じて、Ge−Sb−Te合金からなる母材、Ge−Sb−Te−M2合金からなる母材、またはGe−Sb−Te−M3合金からなる母材を、一つの電源を用いて、スパッタリングすることによって形成できる。すなわち、第1の記録層4は、GeとSbとTeとを含む母材を用いて形成できる。
【0090】
スパッタリングの雰囲気ガス(スパッタリングガス)には、Arガス、Krガス、Arガスと反応ガス(酸素ガスおよび窒素ガスから選ばれる少なくとも1つのガス)との混合ガス、またはKrガスと反応ガスとの混合ガスを用いることができる。また、第1の記録層4は、Ge、Sb、Te、M2、またはM3の各々の母材を複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。また、第1の記録層4は、Ge、Sb、Te、M2、またはM3のうちいずれかの元素を組み合わせた2元系母材や3元系母材などを、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらの場合でも、Arガス雰囲気中、Krガス雰囲気中、Arガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中、またはKrガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成する。
【0091】
第1の記録層4の成膜レートは、0.1nm/秒〜3nm/秒の範囲内であることが好ましい。実施形態1で説明したように、形成される第1の記録層4の厚さは、9nm以下(より好ましくは、7nm以下)であることが好ましい。成膜レートは電源の投入パワーで制御できる。成膜レートを下げすぎると、成膜時間が長くなり、また、雰囲気中のガスが必要以上に記録層中に混入してしまう。また、成膜レートを上げすぎると、成膜時間を短くできるが、記録層の厚さを正確に制御することが難しくなる。したがって、第1の記録層4の成膜レートは、0.1nm/秒〜3nm/秒の範囲内であることが好ましい。
【0092】
続いて、第1の記録層4上に第1の上側界面層5を成膜する。第1の上側界面層5は、第1の下側界面層3と同様の方法で形成できる(以下の界面層についても同様である)。これらの界面層を形成する際に用いられる母材の組成は、界面層の組成およびスパッタリングガスに応じて選択される(他の層を形成する工程においても同様である)。すなわち、組成が同一の母材を用いてこれらの界面層を形成する場合もあるし、組成が異なる母材を用いてこれらの界面層を形成する場合もある(他の層を形成する工程においても同様である)。
【0093】
続いて、第1の上側界面層5上に第1の上側保護層6を成膜する。第1の上側保護層6は、第1の下側保護層2と同様の方法で形成できる(以下の保護層についても同様である)。
【0094】
続いて、第1の上側保護層6上に、第1の界面層7と第1の反射層8とを順に成膜する。第1の反射層8は、Arガス雰囲気中で、第1の反射層8を構成する金属または合金からなる母材をスパッタリングすることによって形成できる。
【0095】
続いて、第1の反射層8上に、第1の最上界面層9と透過率調整層10とを順に成膜する。透過率調整層10は、第1の下側保護層2と同様の方法で形成できる。
【0096】
このようにして、第1の情報層11を形成する。なお、必要に応じて、透過率調整層10を成膜したのちに、第1の記録層4の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。第1の記録層4の結晶化はレーザビームを照射することによって行うことができる。
【0097】
工程(a)の前後、または並行して、第2の情報層20を形成する(工程(b))。具体的には、まず、第2の基板19(厚さがたとえば1.1mm)を用意する。そして、第2の基板19を成膜装置内に配置し、第2の基板19上に第2の反射層18を成膜する。このとき、第2の基板19に案内溝が形成されている場合には、案内溝が形成されている側に第2の反射層18を成膜する。第2の反射層18は、Arガス雰囲気中で、第2の反射層18を構成する金属または合金からなる母材を、スパッタリングすることによって形成できる。
【0098】
続いて、第2の反射層18上に、第2の界面層17、第2の上側保護層16、および第2の上側界面層15を、この順序で成膜する。
【0099】
続いて、第2の上側界面層15上に第2の記録層14を成膜する。第2の記録層14は、Sb−Te−M1合金からなる母材を、一つの電源を用いて、スパッタリングすることによって形成できる。すなわち、第2の記録層14は、SbとTeと元素M1とを含む母材を用いて形成できる。スパッタリングの雰囲気ガス(スパッタリングガス)には、Arガス、Krガス、Arガスと反応ガス(酸素ガスおよび窒素ガスから選ばれる少なくとも1つのガス)との混合ガス、またはKrガスと反応ガスとの混合ガスを用いることができる。また、第2の記録層14は、Sb、TeおよびM1の各々の母材を複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。また、第2の記録層14は、Sb、Te、およびM1のうちいずれかの元素を組み合わせた2元系母材などを、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらの場合でも、Arガス雰囲気中、Krガス雰囲気中、Arガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中、またはKrガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングを行う。
【0100】
第2の記録層14の成膜レートは、0.3nm/秒〜10nm/秒の範囲内であることが好ましい。実施形態1で説明したように、第2の記録層14の厚さは、6nm〜15nmの範囲内であることが好ましい。第2の記録層14の成膜レートは、電源の投入パワーで制御できる。成膜レートを下げすぎた場合には、成膜時間が長くなることに加え、雰囲気中のガスが必要以上に記録層中に混入してしまう。また、成膜レートを上げすぎた場合には、成膜時間を短くできるが、層厚を正確に制御することが難しくなる。したがって、第2の記録層14の成膜レートは、0.3nm/秒〜10nm/秒の範囲内であることが好ましい。
【0101】
続いて、第2の記録層14上に、第2の下側界面層13および第2の下側保護層12を、この順序で成膜する。
【0102】
このようにして第2の情報層20を形成できる。なお、第2の下側保護層12を形成したのちに、必要に応じて、第2の記録層14の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。第2の記録層14の結晶化はレーザビームを照射することによって行うことができる。
【0103】
最後に、第1の情報層11と第2の情報層20とを光学分離層21を介して貼り合わせる。具体的には、まず、光学分離層21の材料となる紫外線硬化性樹脂を透過率調整層10上または第2の下側保護層12上にスピンコートしたのち、第1の情報層11と第2の情報層20とを密着させる。その後、第1の情報層11側から紫外線を照射して光学分離層21を硬化させることによって、情報記録媒体22が得られる。なお、光学分離層21の材料として遅効性樹脂を用いる場合には、紫外線の照射は不要である。
【0104】
(実施形態4)
実施形態4では、情報記録媒体26の製造方法について説明する。
【0105】
実施形態4の製造方法では、まず、第2の情報層20を形成する(工程(b))。具体的には、まず、第2の基板19(厚さがたとえば1.1mm)を用意し、成膜装置内に配置する。
【0106】
続いて、第2の基板19上に第2の反射層18を成膜する。このとき、第2の基板19に案内溝が形成されている場合には、案内溝が形成された側に第2の反射層19を成膜する。そして、第2の反射層18上に、第2の界面層17、第2の上側保護層16、第2の上側界面層15、第2の記録層14、第2の下側界面層13、および第2の下側保護層12を順に成膜する。これらの各層は、実施形態3で説明した方法で形成できる。
【0107】
このようにして第2の情報層20を形成できる。なお、第2の下側保護層12を成膜したのちに、必要に応じて、第2の記録層14の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。
【0108】
続いて、第2の情報層20の第2の下側保護層12上に光学分離層21を形成する(工程(c))。光学分離層21は、光硬化性樹脂または遅効性樹脂を第2の下側保護層12上にスピンコートしたのち、樹脂を硬化させることによって形成できる。なお、光学分離層21がレーザビームの入射側の表面に案内溝を備える場合には、溝が形成された基板(型)を硬化前の樹脂に密着させたのち、樹脂を硬化させ、その後、基板(型)をはがすことによって案内溝を形成できる。
【0109】
続いて、光学分離層21上に第1の情報層25を形成する(工程(a))。具体的には、まず、光学分離層21上に、透過率調整層10、第1の最上界面層9、第1の反射層8、第1の界面層7、第1の上側保護層6、第1の上側界面層5、第1の記録層4、第1の下側界面層3、および第1の下側保護層2をこの順序で成膜する。これらの各層は、実施形態3で説明した方法で形成できる。第1の下側保護層2を成膜したのちに、必要に応じて、第1の記録層4の全面を結晶化させる初期化工程を行ってもよい。
【0110】
最後に、透明層24によって第1の下側保護層2と第1の基板1とを貼り合わせる。具体的には、まず、透明層24の材料である紫外線硬化性樹脂を第1の基板1上または第1の下側保護層2上にスピンコートしたのち、第1の基板1と第1の下側保護層2とを密着させる。その後、第1の情報層25側から紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、光学分離層21上に配置された第1の情報層25を形成できる。なお、透明層24が遅効性樹脂からなる場合には、紫外線の照射は不要である。このようにして、情報記録媒体26を製造できる。
【0111】
(実施形態5)
実施形態5では、実施形態1および2で説明した本発明の情報記録媒体の記録再生方法について説明する。
【0112】
本発明の記録再生方法に用いられる記録再生装置50の一部の構成を図4に模式的に示す。図4を参照して、記録再生装置50は、情報記録媒体51を回転させるためのスピンドルモータ27と、半導体レーザ29を備える光学ヘッド30と、半導体レーザ29から出射されるレーザビーム23を集光する対物レンズ28とを備える。情報記録媒体51は、実施形態1または2で説明した情報記録媒体であり、第1の記録層4と第2の記録層14とを備える。対物レンズ28は、レーザビーム23を、第1の記録層4または第2の記録層14上に集光する。
【0113】
対物レンズ28の開口数NAは、0.5以上1.1以下(より好ましくは、0.6以上1.0以下)であることが好ましい。レーザビーム23の波長は、350nm以上500nm以下(より好ましくは、390nm以上430nm以下)であることが好ましい。情報を記録する際の情報記録媒体の線速度は、3m/秒以上30m/秒以下(より好ましくは、4m/秒以上15m/秒以下)であることが好ましい。
【0114】
情報の記録は、レーザビーム23のパワーを、高パワーのピークパワー(Pp(mW))と低パワーのバイアスパワー(Pb(mW))とに変調させることによって行う。ピークパワーのレーザビーム23を照射することによって非晶質相が形成され、その非晶質相が記録マークとなる。記録マーク間では、バイアスパワーのレーザビーム23が照射され、結晶相が形成される。
【0115】
第1の情報層11または25に対して記録を行う際には、レーザビーム23の焦点を第1の記録層4に合わせて第1の記録層4に情報を記録する。再生は、第1の記録層4から反射してきたレーザビーム23を用いて行う。第2の情報層20に対して記録を行う際には、レーザビーム23の焦点を第2の記録層14に合わせ、第1の情報層11または25と光学分離層21とを透過したレーザビーム23によって情報を記録する。再生は、第2の記録層14によって反射され、光学分離層21と第1の情報層11または25とを透過してきたレーザビーム23を用いて行う。
【0116】
なお、記録再生の対象となる情報記録媒体の第1の基板1、光学分離層21および第2の基板19のいずれかが溝(グルーブ)1bを備える場合には、情報は、溝1bに記録しても、ランド1cに記録してもよい。また、溝1bおよびランド1cの両方に情報を記録してもよい。第1の情報層11または25と第2の情報層20とは、ともに同一の部分(溝、ランド、または、溝およびランド)に情報を記録してもよいし、異なる部分に情報を記録してもよい。
【0117】
(実施形態6)
実施形態6では、本発明の情報記録媒体についてその他の一例を説明する。実施形態6の情報記録媒体41の一部断面図を図5に示す。情報記録媒体41では、電気エネルギーの印加、具体的には電流パルスの印加によって情報の記録が行われる。
【0118】
図5を参照して、情報記録媒体41は、基板31と、基板31上に順に積層された第1の電極32と、第1の記録層33と、中間電極34と、第2の記録層35と、第2の電極36とを備える。第1の記録層33は、第1の情報層を構成する。第2の記録層35は第2の情報層を構成する。
【0119】
基板31としては、ポリカーボネート等からなる樹脂からなる樹脂基板、ガラス基板、Al23等からなるセラミックからなるセラミック基板、Si基板、または、さまざまな金属(たとえば銅)からなる金属基板を用いることができる。なお、基板31が導電性を有する場合には、基板31を第1の電極32として用いてもよい。以下では、基板31として絶縁性の基板を用いた場合について説明する。
【0120】
情報記録媒体41は、基板31上に、第1の電極32、第1の記録層33、中間電極34、第2の記録層35、および第2の電極36を順に積層することによって製造できる。第1の記録層33の組成および形成方法は、実施形態1および3で説明した第1の記録層4の組成および形成方法と同様である。第2の記録層35の組成および形成方法は、実施形態1および3で説明した第2の記録層14の組成および形成方法と同様である。第1の記録層33および第2の記録層35は、電流の印加により発生するジュール熱によって、結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす。
【0121】
第1の電極32、中間電極34、および第2の電極36の材料としては、Al、Au、Ag、Cu、Pt、Ti、Wといった単体金属を用いることができる。または、これらの金属元素のうちの1つまたは複数を主成分とし、耐湿性の向上あるいは熱伝導率の調整等のために1つまたは複数の他の元素を添加した合金材料を用いることもできる。第1の電極32、中間電極34、および第2の電極36は、Arガス雰囲気中で、これらの電極を構成する金属または合金からなる母材をスパッタリングすることによって形成できる。
【0122】
以下に、情報記録媒体41を用いた記録再生方法について説明する。第1の電極32と第2の電極36の間、および中間電極34と第2の電極36の間には、スイッチ39を介してパルス電源37が接続されている。第1の電極32と第2の電極36との間には、スイッチ40を介して抵抗測定器38が接続されている。
【0123】
情報記録媒体41では、第1の記録層33と第2の記録層35とを、それぞれ非晶質相と結晶相との間で相変化させることによって情報が記録される。また、情報の再生は、結晶相にある記録層の抵抗にくらべて非晶質相にある記録層の抵抗が高いことを利用して行われる。具体的には、第1の記録層33および第2の記録層35の抵抗値を測定することによって情報を再生する。
【0124】
非晶質相(高抵抗状態)にある第1の記録層33を結晶相(低抵抗状態)に変化させる場合には、スイッチ39を端子39a側に閉じ(スイッチ40は開)、第1の電極32と第2の電極36との間に電流パルスを印加する。このとき、第1の記録層33の材料は、第2の記録層35の材料に比べて結晶化温度が低く結晶化時間が長いため、印加する電流パルスの振幅やパルス幅を調整することによって、第1の記録層33のみを相変化させることができる。
【0125】
また、非晶質相にある第2の記録層35を結晶相に変化させる場合には、スイッチ39を端子39b側に閉じ(スイッチ40は開)、中間電極34と第2の電極36との間に電流パルスを印加する。記録層を、結晶相から再度非晶質相に戻す場合には、結晶化時よりも相対的に高い振幅(電流値)の電流パルスをより短い時間で印加する。
【0126】
具体的には、第1の記録層33(または第2の記録層35)を非晶質相から結晶相に変化させる際には、振幅がIcでパルス幅がtcの電流パルスを第1の記録層33(または第2の記録層35)に印加する。また、第1の記録層33を結晶相から非晶質相に変化させる際には、振幅がIa1でパルス幅がta1の電流パルスを第1の記録層33に印加する。また、第2の記録層35を結晶相から非晶質相に変化させる際には、振幅がIa2でパルス幅がta2の電流パルスを第2の記録層35に印加する。ここで、これらの振幅とパルス幅とは、Ic<Ia2<Ia1の関係、およびta1≦tcまたはta2≦tcの関係を満たすことが好ましい。
【0127】
第1の記録層33および第2の記録層35の抵抗値は、スイッチ40を閉じて(スイッチ39は開)、抵抗測定器38によって測定する。第1の記録層33および第2の記録層35の抵抗値を測定することによって、記録された情報を読み出すことができる。
【0128】
この情報記録媒体41をマトリクス的に多数配置することによって、大容量の書換型メモリが得られる。そのような情報記録媒体について、一例の構成を図6に模式的に示す。
【0129】
図6を参照して、情報記録媒体42は、ストライプ状に配置された複数のワード線(word line)43と、ストライプ状に配置された複数のビット線(bit line)44と、複数のメモリセル45とを備える。ワード線43およびビット線44は、電流パルスの印加および抵抗の測定のための電気配線である。ワード線43とビット線44とは、直交するように配置されている。メモリセル45は、ワード線43とビット線44との交点(図6中のハッチングで示す)において、ワード線43とビット線44との間に挟まれるように配置されている。メモリセル45には、中間電極34を省略した情報記録媒体41を用いることができる。
【0130】
情報記録媒体42では、ワード線43とビット線44との間の電圧を変化させてメモリセルに電流パルスを印加することによって、情報を記録することができる。
【0131】
以下に、中間電極34を省略した場合の記録再生方法について説明する。第1の記録層33を結晶相に変化させる際に、振幅がIc1でパルス幅がtc1の電流パルスを印加する。第2の記録層35を結晶相に変化させる際に、振幅がIc2でパルス幅がtc2の電流パルスを印加する。第1の記録層33を非晶質相に変化させる際に、振幅がIa1でパルス幅がta1の電流パルスを印加する。第2の記録層35を非晶質相に変化させる際に振幅がIa2でパルス幅がta2の電流パルスを印加する。
【0132】
第1の記録層33の材料が非晶質相から結晶相に変化する温度Tx1は、第2の記録層35の材料が非晶質相から結晶相に変化する温度Tx2よりも低い(Tx1<Tx2)。また、第1の記録層33の材料が非晶質相から結晶相に変化する際に要する時間tx1は、第2の記録層35の記録材料が非晶質相から結晶相に変化する際に要する時間tx2よりも長い(tx2<tx1)。したがって、振幅Ic1、パルス幅tc1、振幅Ic2およびパルス幅tc2が、Ic1<Ic2且つtc1>tc2を満たすようにすることによって、各記録層を選択的に結晶化できる。また、振幅がIc2でパルス幅がtc1の電流パルスを第1の記録層33および第2の記録層35に印加することによって、両方の記録層を同時に結晶化できる。
【0133】
また、第1の記録層33の材料の融点は、第2の記録層35の材料の融点よりも高い。したがって、ta2を短くし、Ia1>Ia2とすることによって、第2の記録層35のみを非晶質化することができる。一方、パルス幅ta1が短い場合、振幅がIa1でパルス幅がta1の電流パルスを印加すると、2つの記録層が共に非晶質相になる。この場合、第2の記録層35のみを結晶化することによって、第1の記録層33のみを非晶質相にできる。
【0134】
以下に、各記録層の状態の判別方法について説明する。第1の記録層33が非晶質相である場合の抵抗値Ra1、第1の記録層33が結晶相である場合の抵抗値Rc1、第2の記録層35が非晶質相である場合の抵抗値Ra2、および、第2の記録層35が結晶相である場合の抵抗値Rc2とする。2つの記録層の抵抗値の合計は、2つの記録層の状態に応じてRa1+Ra2、Ra1+Rc2、Rc1+Ra2、またはRc1+Rc2となる。ここで、Ra1とRa2とを異なる値とし、Rc1およびRc2をそれらの値よりもずっと小さい値とすることによって、抵抗値から各記録層の状態を容易に判別することができる。このように、記録層の4つの異なる状態、すなわち2値の情報を抵抗値の一度の測定で検出することができる。
【実施例】
【0135】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0136】
(実施例1)
実施例1では、図1の情報記録媒体22の第1の情報層11の透過率を測定し、透過率調整層10の効果について調べた。
【0137】
まず、透過率測定用のサンプルを作製した。具体的には、第1の情報層11を作製し、光学分離層21を介して第1の情報層11と第2の基板19とを貼りあわせることによってサンプルを作製した。
【0138】
一方、比較例として、透過率調整層10がない場合のサンプルも作製し、透過率を測定した。この比較例のサンプルは以下のようにして製造した。まず、第1の基板1として、ポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を用意した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第1の下側保護層2としてZnS−SiO2層(SiO2:20mol%)、第1の下側界面層3としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の記録層4として(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11層(厚さ:6nm)、第1の上側界面層5としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の上側保護層6としてZnS−SiO2層(SiO2:20mol%)、第1の界面層7としてGeN層(厚さ:5nm)、および、第1の反射層8としてAg合金層(厚さ:10nm)を順次スパッタリング法によって積層した。このようにして比較例のサンプルを製造した。
【0139】
透過率調整層10を備えるサンプルを形成する場合には、第1の反射層8上に、さらに第1の最上界面層9としてGeN層(厚さ:3nm)、および、透過率調整層10としてZnS−SiO2層(厚さ:約30nm、SiO2:20mol%)を順次スパッタリング法により積層した。そして、第2の基板19に、光学分離層21の材料である紫外線硬化性樹脂をスピンコートした。そして、樹脂の上に第1の情報層11を密着させ、紫外線を照射して樹脂を硬化させた。以上のようにして、透過率測定用サンプルを製造した。
【0140】
ここで、第1の下側保護層2および第1の上側保護層6の厚さは、マトリクス法(たとえば、久保田 広著、「波動光学」、岩波書店、1971年、第3章を参照)に基づく計算により、厳密に決定された。具体的には、これらの厚さは、第1の記録層4が結晶相である場合と非晶質相である場合とで波長405nmにおける反射光量の変化がより大きく、且つ第1の情報層11の透過率がより大きく、且つ第1の記録層4の光吸収効率が大きくなるように決定された。また、透過率調整層10の厚さは、第1の記録層4が結晶相である場合と非晶質相である場合との反射光量の差および第1の記録層4の光吸収効率を低下させることなく、第1の情報層11の透過率がより大きくなるように厳密に決定された。
【0141】
このようにして得られたサンプルについて、最初に、第1の記録層4が非晶質相である場合の透過率Ta(%)を測定した。その後、第1の記録層4を結晶化させる初期化工程を行い、第1の記録層4が結晶相である場合の透過率Tc(%)を測定した。測定には分光器を用い、波長405nmにおける透過率の値を調べた。測定後、(Tc+Ta)/2の値を計算した。
【0142】
透過率の測定結果を表2に示す。ここで、表2中のサンプル2−1および2−3の第1の情報層11は、記録層が結晶相である場合の反射率が、記録層が非晶質相である場合の反射率よりも高い。また、サンプル2−1および2−3は、記録層が結晶相である場合の反射率がほぼ同等である。サンプル2−2および2−4の第1の情報層11は、記録層が非晶質相である場合の反射率が、記録層が結晶相である場合の反射率よりも高い。また、サンプル2−2と2−4とは、記録層が非晶質相である場合の反射率がほぼ同等である。
【0143】
【表2】

【0144】
表2に示すように、透過率調整層10を設けたサンプル2−3および2−4の第1の情報層11では、透過率調整層10がないサンプル2−1および2−2の第1の情報層11と比較して、反射率を下げることなく(Tc+Ta)/2の値が2%〜6%程度向上した。従って、第1の情報層11は、透過率調整層10を含むことが好ましい。
【0145】
なお、図2の情報記録媒体26の第1の情報層25についても同様の方法で透過率を測定した結果、透過率調整層10が同様の効果を持つことが確認できた。
【0146】
(実施例2)
実施例2では、第1の情報層11の特性と第1の記録層4の厚さとの関係を調べた。具体的には、第1の記録層4の厚さを変化させて第1の情報層11を作製し、光学分離層21を介して第1の情報層11と第2の基板19とを貼り合わせたサンプルを作製した。形成したサンプルについて、第1の情報層11の消去率、振幅対雑音比(Carrier to Noise Ratio:CNR)、および透過率を測定した。
【0147】
以下にサンプルの製造方法を説明する。まず、第1の基板1としてポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を準備した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第1の下側保護層2としてZnS−SiO2層(厚さ:約40nm、SiO2:20mol%)、第1の下側界面層3としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の記録層4として(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11層(厚さ:4nm〜10nm)、第1の上側界面層5としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の上側保護層6としてZnS−SiO2層(厚さ:約5nm、SiO2:20mol%)、第1の界面層7としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の反射層8としてAg合金層(厚さ:10nm)、第1の最上界面層9としてGeN層(厚さ:5nm)、および、透過率調整層10としてZnS−SiO2層(厚さ:約30nm、SiO2:20mol%)を、順次スパッタリング法によって積層した。その後、第1の記録層4の全面を結晶化させる初期化工程を行った。このようにして、第1の情報層11を形成した。
【0148】
次に、光学分離層21の材料である紫外線硬化性樹脂を第2の基板19上にスピンコートした。そしてこの樹脂上に第1の情報層11を密着させ、紫外線を照射することによって樹脂を硬化させた。以上のようにして、第1の記録層4の厚さが異なる複数のサンプルを作製した。
【0149】
作製したサンプルについて、実施例1と同様の方法によって、第1の情報層11の透過率を測定した。また、作製したサンプルについて、図4に示した装置を用いて、第1の情報層11の消去率およびCNRを測定した。このとき、レーザビーム23の波長は405nm、対物レンズ28のNAは0.65、測定時のサンプルの線速度は8.6m/s、最短マーク長は0.294μmとした。また、情報はグルーブに記録した。
【0150】
CNRは、(8−16)変調の3T信号を10回記録したのち、スペクトラムアナライザーで測定した。消去性能は、3T信号を10回記録して振幅を測定し、その上から11T信号を1回重ね書きして再度3T信号の振幅を測定し、3T信号の減衰率を計算することによって評価した。以下、この3T信号の減衰率を消去率という。
【0151】
第1の情報層11の消去率およびCNRの測定結果、および(Tc+Ta)/2の計算結果を表3に示す。
【0152】
【表3】

【0153】
表3中、A〜Dは、(Tc+Ta)/2の値、CNRおよび消去率の値を示す。具体的には、(Tc+Ta)/2の値について、D<30%、30%≦C<40%、40%≦B<50%、50%≦Aである。CNRについては、40(dB)≦C<50(dB)、50(dB)≦Bである。消去率については、20(dB)≦C<30(dB)、30(dB)≦Bである。第1の情報層11は、(Tc+Ta)/2の値が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。また、CNRは、40dB以上であることが好ましく、50dB以上であることがより好ましい。また、消去率は、20dB以上であることが好ましく、30dB以上であることがより好ましい。
【0154】
表3に示すように、サンプル3−1(第1の記録層4の厚さ:4nm)では、透過率は十分であるがCNRおよび消去率が不十分であった。サンプル3−4(第1の記録層4の厚さ:10nm)では、CNRおよび消去率が高いが、透過率が30%未満であった。サンプル3−2(第1の記録層4の厚さ:6nm)、およびサンプル3−3(第1の記録層4の厚さ:9nm)では、透過率が35%〜45%で、CNRが50dB、消去率が30dBという良好な結果が得られた。以上の結果から、第1の記録層4の膜厚は、9nm以下であることが好ましい。
【0155】
なお、図2の情報記録媒体26の第1の情報層25についても同様の方法で消去率、CNRおよび透過率を測定した結果、同様の結果が得られた。
【0156】
(実施例3)
実施例3では、第1の情報層11の特性と第1の記録層4の材料との関係を調べた。具体的には、第1の記録層4の組成を変化させて第1の情報層11を作製し、光学分離層21を介して第1の情報層11と第2の基板19とを貼り合わせたサンプルを作製した。形成したサンプルについて、第1の情報層11のCNR、消去率および透過率を測定した。
【0157】
以下に、サンプルの製造方法について説明する。まず、第1の基板1としてポリカーボネート基板(直径:120mm、厚さ0.6mm)を準備した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第1の下側保護層2としてZnS−SiO2層(厚さ:約40nm、SiO2:20mol%)、第1の下側界面層3としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の記録層4(厚さ:6nm)、第1の上側界面層5としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の上側保護層6としてZnS−SiO2層(厚さ:約5nm、SiO2:20mol%)、第1の界面層7としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の反射層8としてAg合金層(厚さ:10nm)、第1の最上界面層9としてGeN層(厚さ:5nm)、および、透過率調整層10としてZnS−SiO2層(厚さ:約30nm、SiO2:20mol%)を、順次スパッタリング法により積層した。ここで、第1の記録層4の材料としては、(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11、(Sb0.7Te0.395Ge5、または(Sb0.7Te0.390Ag5In5を用いた。透過率調整層10を形成したのち、第1の記録層4の全面を結晶化させる初期化工程を行った。このようにして、第1の記録層4の組成が異なる3種類の第1の情報層11を作製した。
【0158】
次に、光学分離層21の材料である硬化前の紫外線硬化性樹脂を第2の基板19上にスピンコートした。そしてこの樹脂上に第1の情報層11を密着させ、紫外線を照射することによって樹脂を硬化させた。以上のようにして、第1の記録層4の組成が異なる複数のサンプルを作製した。
【0159】
作製したサンプルについて、実施例1と同様の方法で第1の情報層11の透過率を測定した。また、これらのサンプルについて、実施例2と同様の方法で第1の情報層11のCNRおよび消去率を測定した。
【0160】
第1の情報層11のCNRおよび消去率、ならびに(Tc+Ta)/2の計算結果を表4に示す。
【0161】
【表4】

【0162】
表4中、B〜Dは、(Tc+Ta)/2の値、CNRおよび消去率の値を示す。具体的には、(Tc+Ta)/2の値について、30%≦C<40%、40%≦B<50%である。CNRについては、D<40(dB)、50(dB)≦Bである。消去率については、20(dB)≦C<30(dB)、30(dB)≦Bである。
【0163】
表4に示すように、サンプル4−2および4−3は、透過率、CNR、および消去率がともに不十分であった。一方、サンプル4−1では、透過率が45%、CNRが50dB、消去率が30dBという良好な結果が得られた。以上の結果から、上記サンプルの中では、組成式(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11で表される材料が、第1の記録層4の材料として好ましい。
【0164】
なお、図2の情報記録媒体26の第1の情報層25についても同様の方法で消去率、CNRおよび透過率を測定した結果、同様の結果が得られた。
【0165】
(実施例4)
実施例4では、第2の情報層20の特性と第2の記録層14の材料との関係を調べた。具体的には、第2の記録層14の材料を変化させて第2の情報層20を形成し、光学分離層21を介して第1の基板1と第2の情報層20とを貼りあわせたサンプルを作製した。形成したサンプルについて、第2の情報層20の記録感度、CNR、および反射率を測定した。
【0166】
以下に、サンプルの製造方法について説明する。まず、第2の基板19としてポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.6mm)を準備した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第2の反射層18としてAl合金層(厚さ:80nm)、第2の上側保護層16としてZnS−SiO2層(厚さ:約10nm、SiO2:20mol%)、第2の上側界面層15としてGeN層(厚さ:5nm)、第2の記録層14(厚さ:10nm)、第2の下側界面層13としてGeN層(厚さ:5nm)、および、第2の下側保護層12としてZnS−SiO2層(厚さ:約60nm)を、順次スパッタリング法によって積層した。ここで、第2の記録層14としては、(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11、(Sb0.7Te0.395Ge5、または(Sb0.7Te0.390Ag5In5を用いた。
【0167】
第2の下側保護層12および第2の上側保護層16の厚さは、マトリクス法に基づく計算により、波長405nmにおいて、第2の記録層14が結晶相のときの反射光量が第2の記録層14が非晶質相のときの反射光量よりも大きく、且つ第2の記録層14が結晶相のときと非晶質相のときとで反射光量の変化がより大きく、且つ第2の記録層14の光吸収効率が大きくなるように厳密に決定した。
【0168】
次に、第2の記録層14の全面を結晶化させる初期化工程を行った。次に、光学分離層21の材料である紫外線硬化性樹脂を第1の基板1上にスピンコートした。そして、この樹脂上に第2の情報層20を密着させ、紫外線を照射して樹脂を硬化させた。以上のようにして、第2の記録層14の組成が異なる複数のサンプルを形成した。
【0169】
形成したサンプルについて、基板の鏡面部における反射率を測定した。また、これらのサンプルについて、図4の装置を用いて、第2の情報層20の記録感度およびCNRを測定した。このとき、レーザビーム23の波長は405nm、対物レンズ28のNAは0.65、測定時のサンプルの線速度は8.6m/s、最短マーク長は0.294μmとした。また、情報はグルーブに記録した。ここで、記録感度とは、振幅(dBm)の飽和値から3dBmだけ低い振幅を与えるピークパワーPp(mW)の1.3倍のピークパワーPp(mW)で定義される値である(以下の実施例においても同様である)。記録感度の値が小さいほど、より低いレーザパワーで記録が可能であることを示す。なお、第1の情報層11の透過率の平均値(Tc+Ta)/2が40%程度であり、第1の基板1に入射する半導体レーザ29の最大パワーは約12mW程度であるので、第2の情報層20に到達するレーザパワーは約5mWである。このため、第2の情報層20の記録感度は5mW以下であることが好ましい。
【0170】
第2の情報層20の記録感度、CNR、および第2の記録層14が結晶相である場合の反射率の測定結果を表5に示す。
【0171】
【表5】

【0172】
表5中、B〜Dは、記録感度、CNR、および反射率の値を示す。具体的には、記録感度について、5(mW)<D、B≦5mWである。CNRについては、50(dB)≦Bである。反射率については、10%≦C<20%、20%≦B<30%である。第2の情報層20では、CNRが40dB以上であることが好ましく、50dB以上であることがより好ましい。また、反射率が10%以上であることが好ましく、反射率が20%以上であることがより好ましい。
【0173】
表5に示すように、サンプル5−1では、5mW以下の記録レーザパワーでCNRが飽和せず記録感度が十分でないこと、および反射率が不十分であることがわかった。また、低融点材料である(Sb0.7Te0.395Ge5または(Sb0.7Te0.390Ag5In5を用いたサンプル5−2および5−3では、5mW以下の記録感度と高いCNRとを両立できることがわかった。
【0174】
なお、図3に示した情報記録媒体26の第2の情報層20についても同様の方法で記録感度を測定した結果、同様の結果が得られた。
【0175】
(実施例5)
実施例5では、実施例3および実施例4の結果に基づき、図1の情報記録媒体22を製造した。そして、製造した情報記録媒体22について、第1の情報層11の透過率、CNRおよび消去率と、第2の情報層20の記録感度、反射率およびCNRとを測定した。
【0176】
実施例5では、第1の記録層4および第2の記録層14の組成は、(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11または(Sb0.7Te0.395Ge5とした。第1の記録層4の厚さは6nm、第2の記録層14の厚さは10nmとした。
【0177】
第1の情報層11は、各層を成膜した後に、初期化工程を行った。第1の情報層11について、初期化工程の前後で透過率を測定した。第2の情報層20も、成膜後に初期化工程を行った。その後、光学分離層21の材料である硬化前の紫外線硬化性樹脂を第2の下側保護層12の上にスピンコートし、第1の情報層11と第2の情報層20とを密着させた。そして、紫外線を照射して樹脂を硬化させた。このようにして第1の情報層11と第2の情報層20とを備えるサンプル(情報記録媒体22)を製造した。なお、記録層および光学分離層以外の構成および製造条件は、実施例3および4と同様である。
【0178】
このようにして得られたサンプルについて、第1の情報層11のCNRおよび消去率を測定した。また、第2の情報層20の記録感度、反射率およびCNRを測定した。これらの測定は、上記実施例で説明した方法と同様の方法で行った。測定結果を表6に示す。
【0179】
【表6】

【0180】
表6中、B〜Dは、各測定の結果を示す。(Tc+Ta)/2の値については、30%≦C<40%、40%≦B<50%である。CNRについては、D<40(dB)、40(dB)≦C<50(dB)、50(dB)≦Bである。消去率については、20(dB)≦C<30(dB)、30(dB)≦Bである。記録感度については、12(mW)<D、B≦12(mW)である。表6の反射率とは第2の記録層14が結晶相である場合の第2の情報層20の反射率であり、10%≦C<20%、20%≦B<30%である。
【0181】
サンプル6−1は、第1の記録層4および第2の記録層14の組成が、ともに(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11である。サンプル6−2は、第1の記録層4の組成が(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11であり、第2の記録層14の組成が(Sb0.7Te0.395Ge5である。サンプル6−3は、第1の記録層4および第2の記録層14の組成が、ともに(Sb0.7Te0.395Ge5である。
【0182】
表6に示すように、サンプル6−1では、実施例4の結果と同様に、第2の情報層20の記録感度および反射率が十分でなかった。また、サンプル6−3では、実施例3の結果と同様に、透過率、CNRおよび消去率が不十分であり、且つ第1の情報層11の透過率が十分でないために第2の情報層20の記録感度、反射率およびCNRが低下した。これに対して、サンプル6−2では、第1の情報層11および第2の情報層20がともに、CNRが50dB以上で、消去率が30dB以上であるという良好な結果が得られた。
【0183】
以上、情報をグルーブに記録した場合について説明した。さらに、ランドに情報を記録した場合と、ランドとグルーブの両方に情報を記録した場合とについて同様の測定を行ったところ、同様の結果が得られた。
【0184】
(実施例6)
実施例6では、実施形態4の製造方法で図3の情報記録媒体26を製造した。そして、製造した情報記録媒体26について、第1の情報層25のCNRおよび消去率、ならびに第2の情報層20の消去率およびCNRを測定した。
【0185】
以下に、サンプルの製造方法について説明する。まず、第2の基板19としてポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を準備した。そして、そのポリカーボネート基板上に、第2の反射層18としてAl合金層(厚さ:80nm)、第2の上側保護層16としてZnS−SiO2層(厚さ:約10nm、SiO2:20mol%)、第2の上側界面層15としてGeN層(厚さ:5nm)、第2の記録層14として(Sb0.7Te0.395Ge5層(厚さ:10nm)、第2の下側界面層13としてGeN層(厚さ:5nm)、および、第2の下側保護層12としてZnS−SiO2層(厚さ:約60nm、SiO2:20mol%)を、順次スパッタリング法によって積層した。その後、第2の記録層14の全面を結晶化させる初期化工程を行った。
【0186】
続いて、第2の下側保護層12上に紫外線硬化性樹脂をスピンコートし、その上に案内溝を形成した基板をかぶせ、樹脂を硬化させた後に基板をはがした。この工程によって、レーザビーム23を導く案内溝が第1の情報層25側に形成された光学分離層21を形成した。
【0187】
その後、光学分離層21の上に、透過率調整層10としてZnS−SiO2層(厚さ:約30nm、SiO2:20mol%)、第1の最上界面層9としてGeN層(厚さ:3nm)、第1の反射層8としてAg合金層(厚さ:10nm)、第1の界面層7としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の上側保護層6としてZnS−SiO2層(厚さ:約5nm、SiO2:20mol%)、第1の上側界面層5としてGeN層(厚さ:5nm)、第1の記録層4として(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11層(厚さ:6nm)、第1の下側界面層3としてGeN層(厚さ:5nm)、および、第1の下側保護層2としてZnS−SiO2層(厚さ:約40nm、SiO2:20mol%)を、順次スパッタリング法により積層した。その後、第1の記録層4の全面を結晶化させる初期化工程を行った。
【0188】
次に、第1の基板1としてポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ0.1mm)を準備した。そして、透明層24の材料である紫外線硬化性樹脂を、第1の基板1上にスピンコートした。その後、その樹脂上に第1の下側保護層2を密着させ、紫外線を照射して樹脂を硬化させた。以上のようにして、サンプル(情報記録媒体26)を製造した。
【0189】
製造したサンプルについて、図4の装置を用いて、第1の情報層25および第2の情報層20のCNRおよび消去率を測定した。このとき、レーザビーム23の波長は405nm、対物レンズ28のNAは0.85、測定時の情報記録媒体26の線速度は5.0m/s、最短マーク長は0.206μmとした。情報は、グルーブに記録した。その結果、第1の情報層25および第2の情報層20は共に、CNRが50dB以上で消去率が30dB以上という良好な結果が得られた。
【0190】
(実施例7)
第2の記録層14の材料に、M1として、Ag、InおよびGeの代わりにSn、Se、Bi、AuまたはMnを添加した場合について、実施例4、5および6と同様の測定を行った。その結果、実施例4、5および6と同様の効果が得られた。
【0191】
(実施例8)
実施例8では、図5の情報記録媒体41を製造し、電気エネルギー(電流パルス)の印加による記録層の相変化を確認した。
【0192】
まず、基板31として、表面を窒化処理したSi基板を用意した。そして、そのSi基板上に、第1の電極32としてAu層(面積:1.0mm×1.0mm、厚さ:0.1μm)、第1の記録層33として(Ge0.74Sn0.268Sb2Te11層(面積:0.6mm×0.6mm、厚さ:0.5μm)、中間電極34としてAu層(面積:0.6mm×0.6mm、厚さ0.1μm)、第2の記録層35として(Sb0.7Te0.395Ge5層(面積:0.2mm×0.2mm、厚さ:0.5μm)、および、第2の電極36としてAu層(面積:0.2mm×0.2mm、厚さ:0.1μm)を、順次スパッタリング法により積層した。
【0193】
その後、第1の電極32、中間電極34、および第2の電極36にAuからなるリード線をボンディングした。第1の電極32と第2の電極36との間、および中間電極34と第2の電極36との間には、パルス電源37をスイッチ39を介して接続した。第1の記録層33および第2の記録層35の相変化による抵抗値の変化は、第1の電極32と第2の電極36との間にスイッチ40を介して接続した抵抗測定器38によって検出した。
【0194】
第1の記録層33および第2の記録層35が共に高抵抗状態(非晶質相)のときに、第1の電極32と第2の電極36との間に振幅50mA、パルス幅100nsの電流パルスを印加したところ、2つの記録層がともに、低抵抗状態(結晶相)に変化した。次に、第1の電極32と第2の電極36との間に、振幅150mA、パルス幅50nsの電流パルスを印加したところ、第2の記録層35のみが低抵抗状態から高抵抗状態に変化した。また、第1の記録層33および第2の記録層35がともに低抵抗状態のときに、第1の電極32と第2の電極36との間に振幅200mA、パルス幅50nsの電流パルスを印加したところ、2つの記録層が共に低抵抗状態から高抵抗状態に変化した。さらに、第1の記録層33および第2の記録層35がともに高抵抗状態のときに、中間電極34と第2の電極36の間に振幅50mA、パルス幅100nsの電流パルスを印加したところ、第2の記録層35のみが高抵抗状態から低抵抗状態に変化した。
【0195】
以上のように、図5の情報記録媒体41では、第1の記録層33および第2の記録層35のそれぞれを、電気的に結晶相と非晶質相との間で可逆的に変化させることことができた。その結果、4つの状態、すなわち、第1の記録層33と第2の記録層35が共に高抵抗の状態、第1の記録層33が低抵抗で第2の記録層35が高抵抗の状態、第1の記録層33が高抵抗で第2の記録層35が低抵抗の状態、第1の記録層33と第2の記録層35が共に低抵抗の状態を実現できた。
【0196】
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明の情報記録媒体について一例を示す一部断面図である。
【図2】本発明の情報記録媒体について他の一例を示す一部断面図である。
【図3】本発明の情報記録媒体についてその他の一例を示す一部断面図である。
【図4】本発明の記録再生方法に用いられる記録再生装置について構成の一部を模式的に示す図である。
【図5】本発明の情報記録媒体のその他の一例、およびその記録再生装置の一例について構成を模式的に示す図である。
【図6】本発明の情報記録媒体のその他の一例について構成の一部を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0198】
1,1a 第1の基板
1b 溝(グルーブ)
1c ランド
2 第1の下側保護層
3 第1の下側界面層
4,33 第1の記録層
5 第1の上側界面層
6 第1の上側保護層
7 第1の界面層
8 第1の反射層
9 第1の最上界面層
10 透過率調整層
11,11a,25 第1の情報層
12 第2の下側保護層
13 第2の下側界面層
14,35 第2の記録層
15 第2の上側界面層
16 第2の上側保護層
17 第2の界面層
18 第2の反射層
19,19a 第2の基板
20,20a 第2の情報層
21 光学分離層
22,22a,26,41,42 情報記録媒体
23 レーザビーム
24 透明層
27 スピンドルモータ
28 対物レンズ
29 半導体レーザ
30 光学ヘッド
31 基板
32 第1の電極
34 中間電極
36 第2の電極
37 パルス電源
38 抵抗測定器
39,40 スイッチ
43 ワード線
44 ビット線
45 メモリセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の情報層と第2の情報層とを備える情報記録媒体であって、
前記第1の情報層が、レーザビームの照射によってまたは電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第1の記録層を含み、
前記第2の情報層が、前記レーザビームの照射によってまたは前記電流の印加により発生するジュール熱によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす第2の記録層を含み、
前記第1の記録層が第1の材料からなり、
前記第2の記録層が第2の材料からなり、
前記第1の記録層が結晶相であるときの前記第1の情報層における透過率がTc(%)であり、
前記第1の記録層が非晶質相であるときの前記第1の情報層における透過率がTa(%)である場合に、
40≦(Tc+Ta)/2
を満たし、
前記第2の材料が、組成式
(SbxTe100-x100-yM1y
(ただし、50≦x≦95、0<y≦20、M1はAg、In、Ge、Sn、Se、Bi、AuおよびMnから選ばれる少なくとも1つの元素)
で表される、情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1の材料がGeとSbとTeとを含む、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記第1の材料が、組成式
GeaSbbTe3+a
(ただし、0<a≦10、1.5≦b≦4)
で表される、請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記第1の材料が、組成式
(Ge−M2)aSbbTe3+a
(ただし、M2はSnおよびPbから選ばれる少なくとも1つの元素であり、0<a≦10、1.5≦b≦4)
で表される、請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記第1の材料が、組成式
(GeaSbbTe3+a100-cM3c
(ただし、M3はSi、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Se、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Ta、W、Os、Ir、Pt、AuおよびBiから選ばれる少なくとも1つの元素であり、0<a≦10、1.5≦b≦4、0<c≦20)
で表される、請求項2に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記第1および第2の記録層が、前記レーザビームの照射によって可逆的な相変化を起こす層であり、
前記第1の情報層が、前記第2の情報層よりも前記レーザビームの入射側に配置されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記第1の記録層の厚さが9nm以下である、請求項6に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記第2の記録層の厚さが6nm〜15nmの範囲内である、請求項6または7に記載の情報記録媒体。
【請求項9】
前記レーザビームの波長が390nm以上430nm以下である、請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項10】
前記第1の情報層と前記第2の情報層との間に配置された光学分離層をさらに備え、
前記第1の情報層が、第1の基板と第1の下側保護層と第1の上側保護層と第1の反射層とをさらに含み、
前記第2の情報層が、第2の下側保護層と第2の上側保護層と第2の反射層と第2の基板とをさらに含み、
前記第1の基板、前記第1の下側保護層、前記第1の記録層、前記第1の上側保護層、前記第1の反射層、前記光学分離層、前記第2の下側保護層、前記第2の記録層、前記第2の上側保護層、前記第2の反射層、および前記第2の基板が、前記レーザビームの入射側からこの順序で配置されている、請求項6ないし9のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項11】
前記第1の基板と前記第1の下側保護層との間に配置された透明層をさらに備える、請求項10に記載の情報記録媒体。
【請求項12】
前記第1の下側保護層と前記第1の記録層との界面、および、前記第1の上側保護層と前記第1の記録層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面に配置された界面層をさらに備える、請求項10に記載の情報記録媒体。
【請求項13】
前記第2の下側保護層と前記第2の記録層との界面、および、前記第2の上側保護層と前記第2の記録層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面に配置された界面層をさらに備える、請求項10に記載の情報記録媒体。
【請求項14】
前記第1の上側保護層と前記第1の反射層との界面、および、前記第2の上側保護層と前記第2の反射層との界面から選ばれる少なくとも1つの界面に配置された界面層をさらに備える、請求項10に記載の情報記録媒体。
【請求項15】
前記第1の反射層と前記光学分離層との間に、前記第1の情報層の透過率を調整するための透過率調整層をさらに備える、請求項10に記載の情報記録媒体。
【請求項16】
前記第1の反射層と前記透過率調整層との間に配置された界面層をさらに備える、請求項15に記載の情報記録媒体。
【請求項17】
前記第1の基板の厚さが、10μm〜800μmの範囲内である、請求項10に記載の情報記録媒体。
【請求項18】
前記第2の基板の厚さが、400μm〜1300μmの範囲内である、請求項10に記載の情報記録媒体。
【請求項19】
第1および第2の電極とをさらに含み、
前記第1および第2の記録層が、前記電流の印加によって可逆的な相変化を起こす層であり、
前記第1の電極上に、前記第1の記録層、前記第2の記録層、および前記第2の電極がこの順序で積層されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の情報記録媒体。
【請求項20】
前記第1の記録層と前記第2の記録層との間に配置された中間電極をさらに備える、請求項19に記載の情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−269074(P2006−269074A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154896(P2006−154896)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【分割の表示】特願2001−253401(P2001−253401)の分割
【原出願日】平成13年8月23日(2001.8.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】