説明

情報記録被転写体と情報記録体およびその製造方法

【課題】紙類やプラスチックからなる基材へ中間転写媒体を転写して形成した情報記録体(通帳、パスポート、免許証、各種証明書等々)に関し、該情報記録体の耐久性及び偽造・改竄あるいは変造に対するセキュリテイ性が良好な情報記録被転写体とその製造方法及び情報記録体を提供する。
【解決手段】基材の表面に蛍光体を含む易接着層を有し、該易接着層の厚みが基材上の箇所で異なることによって生ずる発光輝度の違いによって図柄を形成することを特徴とする情報記録被転写体及びその製造方法と該情報記録被転写体上に接着層または受像層兼接着層、中間層及び剥離性保護層からなる転写層を設けていることを特徴とする情報記録体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙類やプラスチックからなる基材へ中間転写媒体を転写して形成した情報記録体(通帳、パスポート、免許証、各種証明書等々)に関し、該情報記録体の耐久性及び偽造・改竄あるいは変造に対するセキュリテイ性が良好な情報記録被転写体とその製造方法および情報記録体を提供する。
【背景技術】
【0002】
カード形状または冊子形状で、それらに画像や文字などの情報を記載した免許証、パスポートなどの各種証明書としての情報記録体が広く用いられており、この情報記録体を作成する手段として熱転写によって画像および文字などの情報を形成・担持してなる中間転写媒体を基材からなる情報記録被転写体に転写形成するものがある。
【0003】
前記情報記録体の作成に用いられる熱転写可能な中間転写媒体とは、支持体上に、転写層として支持体側から剥離層、中間層、接着層などを順次設けたものであり、転写層側が情報記録被転写体の基材に重ねられ、加圧され、支持側または基材側のいずれかから加熱を受けることによって、基材に転写される媒体である。
【0004】
剥離層とは、支持体と転写層との界面がそれぞれの材料同士の相性によって、転写の際に転写層が巧く剥離しない場合、これらの良好な剥離を実現させるために設ける層である。なお本発明において剥離層は必須ではない。また、中間層は接着層と剥離層との間に存在する層で必要に応じて適宜設計してよい。例えば、両者の間の接着力を向上させる層とか、偽造防止対策や装飾性を高める為の層であり、偽造防止対策や装飾性を高める為の層としては、例えば、回折構造を持ったOVD形成層が挙げられる。
【0005】
接着層は、加熱加圧によって基材との接着を行う層であり、熱移行性材料で画像・文字などの情報を形成する受像層を兼ねた受像層兼接着層とすることができる
受像層および、受像層兼接着層とは感熱転写プリンタやインクジェットプリンタ等の印刷技術によって、印刷の版無しで画像情報(文字、記号、等も含む)を記録できる受像適性を備えた層であり、中間転写媒体の転写前に染料または顔料による画像を設けることが可能となる。
【0006】
受像層兼接着層への情報の形成方法として、中間転写媒体をドラムとサーマルヘッドとでその主要部が構成される転写装置へ搬送し、色材が熱移行性材料である転写リボンの色材層を中間転写媒体の受像層兼接着層に当接させると共に、転写リボン側から前記サーマルヘッドを圧接し、かつ、画像データに基づき前記サーマルヘッドの発熱素子群を適宜発熱させて、画像データに基づく画像パターンを前記受像層兼接着層に形成・印刷する。尚、画像データが多色である場合には、色調の異なる転写リボン又は色調の異なる色材層を有する転写リボンを適用し、同様な工程を繰返して前記受像層兼接着層に多色の画像パターンが形成される。
【0007】
また、OVD形成層は、装飾性と偽造防止を目的としており、例えば微細な凹凸パターンで構成されるレリーフ型ホログラムが形成されたOVD形成層と、前記微細な凹凸面に沿って設けられOVD形成層よりその屈折率が大きい材料からなる透過性薄膜層で構成されており、このように、前記中間層としてレリーフ型ホログラムを利用した中間転写媒体は、エンボス複製法により、安価に大量に製造することができ、デッドコピーが難しいため多用されている。
【0008】
転写方法の例をあげると、中間転写媒体の接着層または受像層兼接着層を被転写媒体である基材に当接させ、かつ、中間転写媒体の支持体側から熱ロール、熱板等の加熱媒体を圧接し、転写温度に加熱して被転写媒体である基材に接着層を圧着させると共に、中間転写媒体から支持体を剥離させて情報記録体を得るものである。
【0009】
また、上記のように被転写媒体である基材と中間転写媒体の受像層兼接着層の接着を行う際、基材の材質によっては接着性が良好ではないため、基材上に熱可塑性の易接着層を形成することによって接着性を改善した情報記録被転写体を準備する場合が有る。
【0010】
以上のように、従来の中間転写媒体を用いた情報記録体(例えば、特許文献1参照。)は偽変造防止の効果が高い情報記録体として使用されている。
しかしながら上記情報記録体において、熱や薬品を利用するなどして表面の中間転写箔を剥離し、記録された情報を変造することによる不正利用される可能性があった。また、このようにして変造された情報記録体において、その変造の痕跡が残りにくく、判別が困難であるという問題が有った。
またこの問題を解決するために、例えば易接着層に蛍光体を混合するという手法をとることもできるが、この場合には情報記録体全面が一様に蛍光を発することになるため偽造が容易になる。これに対して、易接着層を印刷する際に網点を利用した版によって画像を形成した場合、易接着層の網点濃度の濃い部分において転写層の密着性は保たれるが、網点濃度の薄い部分においては易接着層が存在しない箇所が発生し、その部分での転写層の密着性が極めて弱くなるという問題点があった。
【0011】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2000−6555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、表面に設けられた転写層が十分な密着性を備える情報記録被転写体、および偽造・改竄あるいは変造にたいするセキュリティ性が良好な情報記録体を提供し、更に基材表面に設けられる特殊な易接着層の形成方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、基材の表面に蛍光体を含む易接着層を有し、該易接着層の厚みが基材上の箇所で異なることによって生ずる発光輝度の違いによって図柄を形成することを特徴とする情報記録被転写体である。
【0014】
本発明の請求項2に係る発明は、前記易接着層に含まれる蛍光体が、赤外光又は可視光又は紫外光で励起され、赤外波長領域又は可視波長領域又は紫外波長領域で発光することを特徴とする、請求項1記載の情報記録被転写体である。
【0015】
本発明の請求項3に係る発明は、前記易接着層に含まれる蛍光体が赤外光又は可視光で励起され、該励起光の波長よりも長い波長領域において発光することを特徴とする、請求項1又は2記載の情報記録被転写体である。
【0016】
本発明の請求項4に係る発明は、前記易接着層がスクリーン印刷によって形成され、印刷時の部分的な印画圧力の違いにより易接着層の厚みの差を設けることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の情報記録被転写体である。
【0017】
本発明の請求項5に係る発明は、前記易接着層がスクリーン印刷によって基材上に形成
され、基材を設置する印刷台に形成された凹凸パターンによって生じる印画圧力の違いを利用して易接着層の厚みの差を設けることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の情報記録被転写体である。
【0018】
本発明の請求6に係る発明は、請求項1から5の何れかに記載の情報記録被転写体上に、接着層または受像層兼接着層、剥離性保護層を備えた情報記録体である。
【0019】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項1から5の何れかに記載の情報記録被転写体上に接着層または受像層兼接着層、中間層及び剥離性保護層を設けていることを特徴とする情報記録体である。
【0020】
本発明の請求項8に係る発明は、前記中間層が、回折格子構造体が形成されたOVD(Optical Variable Device)形成層を備えることを特徴とする請求項7記載の情報記録体である。
【0021】
本発明の請求項9に係る発明は、基材の表面に蛍光体を含む易接着層を有し、該易接着層の厚みが場所によって異なることによって生ずる発光輝度の違いによって図柄を形成することを特徴とする請求項1から5何れか記載の情報記録被転写体の製造方法である。
【0022】
本発明の請求項10に係る発明は、前記易接着層がスクリーン印刷によって形成され、印刷時の部分的な印画圧力の違いにより易接着層の厚みの差を設けることを特徴とする、請求項1から5何れか記載の情報記録被転写体の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る情報記録体は、基材上に蛍光を発する易接着層を設けてその上に情報の記録された転写層を熱圧によって密着させたものであり、基材上の易接着層の厚みを場所によって変化させることでパターンが形成され、それに伴って蛍光の発光輝度が変化することで目視又は機械によってパターンを確認できるように加工されたものである。
【0024】
易接着層は基材の少なくとも転写層を設ける部分の全面に設けられていることから転写層の密着性は十分に得ることが出来、かつ、厚みの差によってパターンを持たせることで偽造防止効果を高めている。また、仮にこの情報記録体が変造された場合、蛍光を発する易接着層のパターンを破壊することになるため、変造の痕跡を発見する事が容易になる。
【0025】
上記易接着層は層の厚みの差によってパターンを持たせているため、易接着層とパターンを それぞれの工程で形成する必要がなく、また特殊な印刷設備を必要とすることなく、従来から易接着層の塗工に使用されていたスクリーン印刷方式を応用することができ、これによって簡便な方法で情報記録被転写体を得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明に係る情報記録被転写体および、中間転写媒体の1実施例を示す側断面説明図であり、図2は情報記録被転写体の易接着層上に転写層をそなえた情報記録体の1実施例を示す側断面説明図である。情報記録被転写体(1)は図1に示すように、蛍光体(図示せず)を含む易接着層(1B)を設けた基材(1A)からなる情報記録被転写体(1)からなる。また中間転写媒体(2)は例えば、支持体(2A)/剥離性保護層(2B)/中間層(2C)/接着層又は受像層兼接着層(2D)からなる。また、図2における情報記録体(3)は情報記録被転写体の易接着層(1B)の上に中間転写媒体の接着層又は受像層兼接着層(2D)側を当接させて、支持体側から熱圧を加えた後に支持体を除去することによって形成され、その構成は上から順に、例えば、剥離性保護層(2B)/中間層(2C)/接着層又は受像層兼接着層(2D)/易接着層(1B)/基材(1A)である。以下、それぞれの層について説明する。
【0028】
前記基材(1A)として使用される材料として、最も本発明の効果を受ける紙をはじめ、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、などが単独で又は組み合わされた複合体として使用可能である。
【0029】
前記易接着層(1B)の主体である樹脂としては、中間転写媒体(2)の接着層又は受像層兼接着層(2D)と相性の良い樹脂であり熱可塑性の材料、例えば、ウレタン、アクリル、酢酸ビニル、等が単独で又は組み合わせで使用可能である。本発明における易接着層(1B)はこれらの樹脂中に蛍光体(図示せず)を含むものである。
【0030】
上記蛍光体を含む易接着層を形成するために、例えば前記樹脂をエマルジョン化したものに蛍光顔料を分散させたインキを作成し、スクリーン印刷等により基材上に形成することができる。例えば平台のスクリーン印刷機を使用する場合は一般的に以下のような構造と動作により印刷が行なわれ、以下、図3を参照して説明する。印刷機は、基材を乗せる台(4)、スクリーン版(5A)、スキージ(5B)およびドクター(5C)、によって構成される。まず台(4)の上に基材(1A)を乗せ、その上にわずかな隙間を空けた状態でスクリーン版を設置する。次にスクリーン版上の図柄の無い部分にインキ(図示せず)を乗せ、ドクターによって図柄部分を通過するように掻きとることでメッシュ部分にインキを充填する。その後スキージを動かして圧力をかけることでメッシュ部分のインキを基材に転写する。この際のスキージと基材の間にかかる圧力を印画圧力と呼ぶ。
通常は印画圧力が強くなれば押し出されるインキが多くなるため塗工厚は増加するが、印画圧力が部分的に極端に強くなった場合にはインキが圧力の強い部分から周辺部へ移行するため、逆に塗工厚は薄くなる。この原理を利用することで易接着層の厚みを部分的に変化させることができ、厚みの差による図柄の表現が可能である。
【0031】
例えば平台のスクリーン印刷機を使用する場合は本発明では以下のような構造と動作により易接着層の厚み差を設けて図柄を形成する。印刷機の構成は通常の印刷と同様であり、台、スクリーン版、スキージおよびドクターからなる。この台(4)の上に、図柄用の治具(6)を配置する(図3参照)。図4に示すように、台の部分に置く図柄用治具としては、例えば文字の形に切り出した薄いシート(6A)などを用意できる。シートの厚みは0.05mmから0.5mm程度のものが好適に利用できるがこの限りではない。シートの代わりに、針金を曲げて作成した文字や模様(6B)を使用することが出来る。針金の太さも0.05mmから0.5mm程度のものが好適に利用できる。その他、熱可塑性の樹脂で凹凸パターンを形成したり、切削により凹凸パターンを形成したりすることもできる。この上に基材を設置し、上記の通常の印刷方法と同様に印刷を行なう。シートや針金を配置した部分の基材はそれ以外の部分に比べて見かけ上では厚くなるため、スキージによって加えられる圧力が集中し、他の部分に比べて印画圧力が大きくなる。この結果、シートや針金を配置した部分の基材(1A)に塗工された易接着層の図柄部分(7Aおよび7B)の厚みは他の部分(7C)に比べて薄くなる(図5参照)。また、台の上に単純な型を置くだけではなく、微細な凸版を使用して図柄を形成することや、番号印刷機を利用することも可能である。さらに、例えばシリンダータイプのスクリーン印刷機であれば、シリンダーに上記のような手法によって凹凸パターンを付加したり、シリンダーに直接凹凸を形成したりすることで同様の効果を得る事が可能である。
【0032】
また、印画圧力はスキージの形状によっても変更することができる。例えばスキージの一部分を削るなどしてその他の部分よりも凹んだ形状に加工すればその部分の印画圧力は
不十分となり、基材へのインキの移行が少なくなる。また、逆にスキージの一部のみを凸状になるように加工した場合も、その部分の印画圧力が極端に高くなるため、インキが周辺部に押し出されるため、塗工層の厚みは薄くなり、周辺部が厚くなる。このように、スキージを加工することでも塗工層の厚みに変化をもたせることができ、その厚みの差によって例えば、バーコード状や波状などの図柄を形成することができる。
【0033】
前記易接着インキに含まれる蛍光体とは、赤外光又は可視光又は紫外光で励起され、赤外波長領域又は可視波長領域又は紫外波長領域で発光するものである。例えば、赤外光で励起され、その波長よりも長い波長領域で発光する赤外蛍光体や、紫外光で励起され、可視波長領域で発光する紫外蛍光体などが好適に使用される。また前記以外の励起光と発光波長領域の組み合わせである蛍光体も使用できる。これらの蛍光体を上記の易接着層用のインキに混合することで、易接着層の厚みの差による図柄を蛍光体の発光による図柄として表現することができる。例えば紫外光で励起され可視波長領域で発光する蛍光体を易接着インキに混合して使用し、上記のような手法により情報記録被転写体上の易接着層の厚みに差を設けて図柄を作成した場合、この情報記録被転写体に紫外光を照射すると、易接着層の厚みが厚い部分では強く、薄い部分では弱く発光することで、同様の図柄が目視で確認できるようになる。この手法は目視による確認のみならず、赤外光などを検知できる検証器を用いることによって、様々な波長領域の発光を生じる蛍光体を使用した場合でも活用できる。
【0034】
前記中間転写媒体(2)の支持体(2A)としては、接着層又は受像層兼接着層(2D)に使用される材料より溶融又は軟化温度の高い材料であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、または紙、合成紙などを単独で又はそれらを組み合わせた複合体が使用可能である。
【0035】
前記剥離性保護層(2B)としては、接着層又は受像層兼接着層(2D)をより効果的に被転写体に転写すると共に、転写された接着層又は受像層兼接着層(2D)については、外部からの化学的、機械的破損を防止する保護膜の機能を有する。例えば、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂あるいはこれらに、テフロン(登録商標)パウダー、ポリエチレンパウダー、動物系ワックス、植物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、水素化ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、合成動物ロウ系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、及び、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩などの耐摩擦剤を添加したものが使用可能である。また、無機物を使用してもよい。
【0036】
前記中間層(2C)としては、絵柄層(図示せず)やOVD層(図示せず)等を形成することができ、絵柄層はグラビア印刷等通常の印刷方法で形成することができる。OVD層はホログラム形成層(図示せず)と透過性薄膜層(図示せず)とからなり、ホログラム形成層はホログラム形成用樹脂層の表面に、微細な凹凸パターンが設けられている。樹脂は、エンボス成形性が良好で、プレスムラが生じ難く、明るい再生像が得られ、剥離性保護層(2B)及び透過性薄膜層との接着性が良好である必要がある。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレートなどの熱硬化性樹脂あるいはこれらの混合物、さらにはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料などが使用可能であり、また、前記以外のものでも、ホログラム画像を形成可能な安定性を有する材料であれば使用可能である。透過性薄膜層はホログラム形成層の情報を透過するための透明材料であって、ホログラム形成層(屈折率n=1.3〜1.5)よりも屈折率の高いことが装飾性の向上に好ましい。さらに透過性薄膜層は、複数の層を重ね合わせて形成してもよく、異なる屈折率の層の組み合わせ、高屈折率の層と低屈折率の層とを交互に積層した多層膜としてもよい。また、このような薄膜層を形成する方法としては、真空蒸着法の他にスパッタリング法、イオンプレーティング法等の成膜手段が適用可能であり、膜厚としては10nm〜1000nmの範囲内にあることが好ましい。なお、ホログラム層は前記のいわゆるレリーフ型ホログラム以外に、リップマンホログラムなどの体積位相型ホログラムを用いることも可能である。
【0037】
前記接着層又は受像層兼接着層(2D)としては、感熱接着剤として用いられるものであり、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系、線状飽和ポリエステルやポリエステル系ポリアミド等のポリエステル系、アクリル系等の熱可塑性樹脂を主としたものである。
【0038】
以下に、本発明に係る情報記録体について、具体的に実施例を挙げて、さらに詳しく説明するが、それに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
[易接着インキの作製]:蛍光体としては顔料タイプと染料タイプがあるが、本実施例では固形分比50%の水系ウレタンエマルジョンに赤外蛍光顔料を3.0重量%で分散させ、易接着層印刷用のスクリーンインキを作成した。
請求項1から5何れか記載の[スクリーン版の作製]:テトロン製スクリーンクロスを使用し、200線/インチのメッシュで650mm×650mmの枠に貼り、これに乳剤を塗布した後、別途作製したポジフィルムを使用して露光し、定法に従いスクリーン版(5A)を作製した。スクリーン版の図柄は150mm×150mmのベタ柄である。
【0040】
[図柄形成用治具1の準備]:厚さ0.2mmの粘着テープを文字および図柄の形状に裁断して図柄形成用治具1(6A)を作成した。
【0041】
[図柄形成用治具2の準備]:太さ0.1mmの針金を図柄形状に曲げて図柄形成用治具2(6B)を作成した。
【0042】
[基材用紙の準備]:180kgベースの用紙(わらがみ:東海パルプ(株)製)を基材用紙(1A)として準備した。
【0043】
[スクリーン印刷機の準備]:図3及び図4に示すように、上記で作成した図柄形成用治具1(6A)および図柄形成用治具2(6B)をスクリーン印刷機の台(4)上に配置し、その上に基材用紙(1A)をセットした。さらにスクリーン印刷機に上記で作成したスクリーン版(5A)とスキージ(5B)およびドクター(5C)をセットした。
【0044】
[易接着層の印刷]:上記で準備したスクリーン印刷機と易接着インキを用いて基材用紙に印刷を行なった。これにより、図5に示すように、基材用紙(1A)の全面に易接着層(1B)が形成された情報記録被転写体(1)を得たが、特に図柄形成用治具1(6A)によって形成された図柄部分1(7A)および図柄形成用治具(6B)によって形成された図柄部分2(7B)の易接着層の厚みがその他の易接着層の部分(7C)に比べて薄く形成された。また、比較用として、図柄形成用治具1および2を配置せずに印刷を行なった比較用情報記録被転写体も作成した。得られたそれぞれの情報記録被転写体を90mm×55mmの大きさに断裁した。
【0045】
[情報記録体の作製]:市販のカードプリンタCP300FX(凸版印刷株式会社製)を用いて、専用色リボンから専用中間転写フィルム(中間転写媒体)上に画像を中間転写し、装置の内蔵ヒートロールを使用して前記工程で作製した情報記録被転写体および、比較用情報記録被転写体の易接着層上に画像を転写させてから、専用中間転写フィルムの支持体を剥離させることにより、蛍光を含む易接着層を有する情報記録体および、比較用情報記録体を得た。
【0046】
[検証器の作製]:被検証物に対し赤外光を照射するLEDを使用した照明部および、上記赤外蛍光顔料の発光波長のみを透過させるバンドパスフィルターを受光部に取り付けたCCDカメラを使用した検出部、からなる検証器を作成した。
【0047】
<効果の確認1>
得られた情報記録体を目視で観察したところ、プリンタによって印刷された内容以外には確認できなかった。この情報記録体を上記で作成した検証器を用いて観察すると、全面的に発光しているとともに、図柄形成用治具1(6A)によって形成された易接着層の図柄部分(7A)および図柄形成用治具2(6B)によって形成された易接着層の図柄部分(7B)の発光がその他の易接着層の部分(7C)の発光に比べて弱い様子が観察され、表現されている文字及び図柄の内容を確認することができた。また、比較用情報記録体を同様に検証器で観察したところ、全面的に発光するのみであった。また、粘着テープなどを使用して転写箔の密着性評価を行なったところ、情報記録体、比較用情報記録体共に十分な密着性を示していた。よって、表面に設けられた転写層が十分な密着性を備えるとともに、基材表面の易接着層において蛍光による図柄を形成することができる情報記録体を得ることができ、発明の効果が確認された。
【0048】
<効果の確認2>
得られた情報記録体上および比較用情報記録体上にプリンタにより印刷された内容を各々除去した。その上で改めて[情報記録体の作製]手順にしたがって改竄された情報記録体および比較用情報記録体を得た。情報記録体は目視においては真正品と判別ができなかったが、検証器を用いて観察したところ易接着層に形成されていた図柄が破壊されている様子が観察されたので改竄の痕跡を確認することができた。一方改竄された比較用情報記録体は目視において真正品と判別できなく、更に検証器を用いた観察によっても全面的に発光しており真正品と判別ができなかった。
よって本発明により、偽造・改竄あるいは変造にたいするセキュリティ性が良好である情報記録体を得ることができ、発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る情報記録被転写体および転写体の1実施例を示す側断面説明図である。
【図2】本発明に係る情報記録体の層構成の1実施例を示す側断面説明図である。
【図3】本発明の実施の一形態における印刷方法を示す側断面説明図である
【図4】本発明の実施の一形態における印刷方法を示す俯瞰図である
【図5】本発明に係る情報記録被転写体の1実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ・・・情報記録被転写体
1A・・・基材
1B・・・易接着層
2 ・・・中間転写媒体
2A・・・支持体
2B・・・剥離性保護層
2C・・・中間層
2D・・・接着層又は受像層兼接着層
3 ・・・情報記録体
4 ・・・スクリーン印刷機の台
5A・・・スクリーン版
5B・・・スキージ
5C・・・ドクター
6 ・・・図柄形成用治具
6A・・・図柄形成用治具1
6B・・・図柄形成用治具2
7A・・・易接着層の図柄部分1
7B・・・易接着層の図柄部分2
7C・・・その他の易接着層の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に蛍光体を含む易接着層を有し、該易接着層の厚みが基材上の箇所で異なることによって生ずる発光輝度の違いによって図柄を形成することを特徴とする情報記録被転写体。
【請求項2】
前記易接着層に含まれる蛍光体が、赤外光又は可視光又は紫外光で励起され、赤外波長領域又は可視波長領域又は紫外波長領域で発光することを特徴とする、請求項1記載の情報記録被転写体。
【請求項3】
前記易接着層に含まれる蛍光体が赤外光又は可視光で励起され、該励起光の波長よりも長い波長領域において発光することを特徴とする、請求項1又は2記載の情報記録被転写体。
【請求項4】
前記易接着層がスクリーン印刷によって形成され、印刷時の部分的な印画圧力の違いにより易接着層の厚みの差を設けることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の情報記録被転写体。
【請求項5】
前記易接着層がスクリーン印刷によって基材上に形成され、基材を設置する印刷台に形成された凹凸パターンによって生じる印画圧力の違いを利用して易接着層の厚みの差を設けることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の情報記録被転写体。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の情報記録被転写体上に接着層または受像層兼接着層、剥離性保護層からなる転写層を転写したことを特徴とする情報記録体。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載の情報記録被転写体上に接着層または受像層兼接着層、中間層及び剥離性保護層からなる転写層を転写したことを特徴とする情報記録体。
【請求項8】
前記中間層が、回折格子構造体が形成されたOVD(Optical Variable Device)形成層を備えることを特徴とする請求項7記載の情報記録体。
【請求項9】
基材の表面に蛍光体を含む易接着層を有し、該易接着層の厚みが場所によって異なることによって生ずる発光輝度の違いによって図柄を形成することを特徴とする情報記録被転写体の製造方法。
【請求項10】
前記易接着層がスクリーン印刷によって形成され、印刷時の部分的な印画圧力の違いにより易接着層の厚みの差を設けることを特徴とする、請求項1から3何れか記載の情報記録被転写体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−233893(P2009−233893A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79896(P2008−79896)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】