情報記録装置
【課題】転がり部品や摺動部品の摩耗に起因する接触抵抗増加を防ぐことにより、記録層の切替速度の低下を防ぎ、高速記録と長期信頼性に優れた多層光記録装置を実現する。
【解決手段】エレクトロクロミック材料を用いた多層光記録装置において、電源と媒体との間に、電力を供給するための電磁誘導手段としてのロータリトランス100を設けた。
【解決手段】エレクトロクロミック材料を用いた多層光記録装置において、電源と媒体との間に、電力を供給するための電磁誘導手段としてのロータリトランス100を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて媒体に情報を記録する情報記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は記録密度を高めるために、光源の短波長化により光スポットを小さくする努力が重ねられてきた。しかし光源の短波長化は限界に近づいてきている。そこで今後の技術として、光の直進性と透過性を生かした多層光記録方式が期待されている。
【0003】
例えば特開2004-310912号公報に開示されているように、エレクトロクロミック材料を用いた層選択型多層光ディスクを用いれば、光記録装置の高記録密度化を実現できる。これは、ポリカーボネート基板上において、記録層を透明電極ではさんだ構造を複数積層した光ディスクである。記録又は読み出しを行ないたい層に所定の電圧を印加すると、記録層が透明状態から着色状態に変化し、記録光、再生光に対する吸収及び反射が増加して、記録や読み出しが可能になる。光が照射された場所は変質して透明状態となり、情報として記録される。電圧を印加した層以外は全て透明なので、電圧を印加した特定の層のみの記録・再生が可能になる。
【0004】
【特許文献1】特開2004-310912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例では、記録装置の静止部分から光ディスクに電圧を供給するために、光ディスクの回転軸の周囲に設置された、ベアリングもしくはスリップリングなどの転がり部品や摺動部品を用いた。これらの方法により、回転する光ディスクの所定の記録層に電圧を供給することができた。
【0006】
しかし、上記方式では長期間使用している間に転がり部又は摺動部が摩耗する。時間の経過とともに摩耗部分の表面において酸化膜の面積が増加する。すると摩耗部分の電気抵抗が増加し、転がり部又は摺動部の電圧降下が増加するので、その結果記録層に加わる電圧が低下する。印加電圧が低下すると記録層が透明状態から着色状態に変化する速度が遅くなる。このため記録層の切替時間が遅くなり、装置の記録・再生速度が低下してしまう。上記酸化膜の面積が増加すると電気抵抗がさらに増大し、最終的に無限大の抵抗となって記録層へ電流を供給できなくなり、多層記録が不可能となる。
【0007】
また上記方式では、一つの透明電極層に電圧を印加するために、一つのベアリングもしくはスリップリングが必要となる。すなわち記録層数の増大に対応するためには、ベアリングやスリップリングを多数積み重ねなければならない。これらの部品の厚さによっては記録装置全体の高さが増すので、記録容量の増大と装置の小型化を両立することが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、転がり部品や摺動部品の摩耗に起因する接触抵抗増加と、それに伴なう電圧降下を防ぐことにより、供給電圧不足による記録層の切替速度の低下を防ぎ、高速記録と長期信頼性に優れた多層光記録装置を実現することにある。また、他の目的は、記録層数を増やしても装置全体の高さを増やさず、記録容量の増大と装置の小形化を両立できる多層光記録装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、エレクトロクロミック材料を用いた多層光記録装置において、電源と媒体との間に、電力を供給するための電磁誘導手段を設けたことにより達成される。上記電磁誘導手段は、媒体を保持する回転体と、回転体を回転可能に支持する非回転体のそれぞれに設置した一対のコイル、及びコイルを取り囲む磁性体により構成すれば良い。これにより、回転する媒体に対して非接触で電力を供給することが可能となり、従来の転がり部又は摺動部の摩耗に起因する問題を解決できる。
【0010】
また、特定の記録層に電流を供給するための電流制御回路を回転体に設置し、電流制御回路に制御信号を供給するために電磁誘導手段を設けるのが望ましい。上記電磁誘導手段は、媒体を保持する回転体と非回転体のそれぞれに設置した一対のコイル及びコイルを取り囲む磁性体により構成すれば良い。これにより、回転する電流制御回路に非接触で信号を供給することが可能となり、従来の転がり部や摺動部の摩耗に起因する問題を解決できる。また電力を供給するための電磁誘導手段と、制御信号を供給するための電磁誘導手段の2つを設置しておけば、電流制御回路の機能により電流の極性と記録層の切替が可能となる。このようにしておけば、記録層数の増加に関係なく、上記2つの電磁誘導手段により特定の記録層に電流を供給することができる。
【0011】
従来、記録層数の増大に対応するためには、ベアリングやスリップリングを多数積み重ねなければならなかったが、上記構成により記録層数がどれだけ増加しても装置全体の高さは一定となる。よって、記録容量の増大と装置の小形化を両立できる多層光記録装置を実現できる。
【0012】
また、電流制御回路に制御信号を供給するために、電流源と媒体との間に信号を供給するための光発光手段と光受光手段を設けても良い。これにより回転する電流制御回路に非接触で信号を供給することが可能となり、従来の転がり部や摺動部の摩耗に起因する課題を同様に解決できる。また、電力を供給するための電磁誘導手段と、制御信号を供給するための光発光・受光手段の2つを設置しておけば、電流制御回路の機能により電流の極性と層切替が可能となる。このようにしておけば、記録層数の増加に関係なく、特定の記録層に電流を供給することができる。このようにして、記録容量の増大と装置の小形化を両立できる多層光記録装置を実現できる。
【0013】
電流制御回路は媒体を固定する固定盤に設置し、ハブに設置した電磁誘導手段と電流制御回路を、フレキシブル基板を用いて接続するのが好ましい。この構成によると、記録層数が増加した場合に以下の効果が生まれる。媒体と電流制御回路の接続端子数は増加するが、電流制御回路と電磁誘導手段との接続は、上記で述べたように、少なくとも電力を供給する配線と制御信号を供給する配線の2系統でまかなうことができる。よって、媒体と電流制御回路の間の多端子接続は、コンタクトピンと多層プリント基板で構成し、2系統の配線で良い電流制御回路と電磁誘導手段との接続には柔軟なフレキシブル基板を用いることで実現できる。
【0014】
このような構成とすれば、フレキシブル基板の接続ピン数は記録層数に関わらず一定でありピン数が増加することはないので、長期接続信頼性に優れた低コストの接続構造を実現できる。また、媒体を固定盤に設置する際に固定盤に力が加わっても、フレキシブル基板は柔軟で変形可能な構造なので、電磁誘導手段に加わる力は緩和される。回転体と非回転体の双方に設置した電磁誘導手段同士は、結合効率を高めるために数10μmの間隔で相対している。この電磁誘導手段に加わる力が緩和されると、コイル同士や磁性体同士が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがなくなるので、媒体を長期間安定して回転させることができる。
【0015】
さらに、固定盤とハブとの間に空間を設けたり、固定盤や電流制御回路を柔軟な構造にしたり、固定盤と回転軸の接続部を柔軟な構造とすることで、ハブに設置した電磁誘導手段に加わる力がさらに緩和され、コイル同士や磁性体同士の接触や噛み込みの発生確率が低くなり、媒体をさらに長期間安定して回転させることができる。
【0016】
また、回転体と非回転体を回転軸に平行な面で対向させ、その対向面に電磁誘導手段を設けても良い。このようにしておけば、媒体を固定盤に設置する際に回転体に力が加わっても、回転体と非回転体は対向面に対してほぼ平行にずれるので両者の間隔の変化が小さくなる。よってコイル同士や磁性体同士の接触や噛み込みの発生確率が低くなり、媒体を長期間安定して回転させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、転がり部品や摺動部品の摩耗に起因する記録層の切替速度の低下を防ぎ、高速記録と長期信頼性に優れた記録装置を実現することができる。また、記録層数を増やしても装置全体の高さを増やさず、記録容量の増大と装置の小型化を両立できる情報記録装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る情報記録装置について図を用いて説明する。図1は、本発明の第一実施例を示す情報記録装置をディスク回転軸に沿って切断した断面図である。
【0019】
ディスク1は、エレクトロクロミック材料からなる記録層を2枚の透明電極層ではさんだ構造を複数積層して成る、層選択型多層光ディスクである。ディスク内部の構造と製法に関しては、特開2003-3462378号公報又は特開2004-310912号公報に開示されているので詳細な説明は省略する。
【0020】
ディスク1の内周領域には、記録層をはさんだ透明電極に電流を供給するための複数の引き出し電極が形成されている。引き出し電極の末端は、固定盤3と向かい合うディスク1内周部の表面に露出している。固定盤3の表面には、上記引き出し電極に対応する位置に上下方向に伸縮可能なバネ性を有する複数の接触ピン4が設置されている。
【0021】
ディスク1を固定盤3に載せると、ディスク1の最内周部がディスク押さえ5と勘合する。ディスク押さえ5にはバネが内蔵されており、ディスク1全体を固定盤3の方向に押さえ付ける力を発揮する。これによりディスク1と固定盤3が近接し、ディスク1の引き出し電極と接触ピン4が接触する。ディスク1に反りや傾きが生じていても、接触ピン4が上下方向に伸縮するので接触可能となる。
【0022】
固定盤3とハブ10は回転軸2に固定されており、回転軸2とともに回転することができる。固定盤3の底面には、ディスク1の記録層へ供給する電流を制御するために電流制御回路基板6を設置した。接触ピン4は電流制御回路基板6の貫通穴に形成された電極と半田などを用いて電気的に接続されている。
【0023】
電流制御に必要なコンデンサや抵抗などの受動部品8、及びIC7は回路基板6上に搭載されている。ディスク1の回転時に基板も回転するので、回転軸中心から見た各部品のモーメントの合計が最小となるように部品を搭載すれば、回転時の動バランスが最小となり、振動が少なくモータ消費電力の少ない回転系を実現できる。
【0024】
ハブ10の下面には、電流制御回路基板6へ電力と制御信号を供給するための電磁誘導手段であるロータリトランス100が設けられている。ロータリトランス100は、回転するハブ10側に取り付けられたロータ側電力供給コイル101とロータ側信号供給コイル102及びロータ側コア103、そして静止しているスリーブ13側に取り付けられたステータ側電力供給コイル104とステータ側信号供給コイル105及びステータ側コア106、以上の部品で構成されている。
【0025】
コイル101とコイル104は、回転軸2を中心とした同心円状の巻線構造であり、お互いに約30μm程度の微小な間隔で対向している。ベース20側の回路基板19に設けられている電源回路から約100kHzの交流電流が配線12を経由してコイル104に供給されると、コイル104の周囲に交流磁束が発生する。コア103及び106は、交流磁束を通しやすい軟磁性材料、たとえば亜鉛やマンガンなどを含むフェライトの粉末から製造されている。交流磁束はステータ側コア106の内部を通り、磁束の一部は対向しているロータ側コア103に浸入する。このロータ側コア103内部の磁束変化によりコイル101に誘起起電力が発生する。
【0026】
コイル101両端の電極はフレキシブル基板9の電極に接続されており、フレキシブル基板9は電流制御回路基板6と接続している。コイル101の交流誘起起電力は電流制御回路基板6内部の平滑回路で直流電流に変換され、接触ピン4を経由してディスク1の記録層に供給される。
【0027】
コイル101とコイル104、コア103とコア106は、回転軸2を中心とした同心円状の構造なので、ハブ10の回転速度が変化しても原理的には磁気回路に変化はない。このためコア内部を通る交流磁束の振幅と周波数は、ハブの回転速度にかかわらず一定となり、回転するディスク1に対して安定した電力を供給することができる。
【0028】
コイル102とコイル105も同様に約30μm程度の微小な間隔で対向している。ベース20側の回路基板19に設けられている制御回路から交流電流をコイル105に供給すれば、前記と同様にコア106及びコア103の内部に交流磁束が発生し、コイル102に誘起起電力が発生する。
【0029】
コイル102両端の電極はフレキシブル基板9を通じて電流制御回路基板6と接続されている。上記の誘起起電力は電流制御回路基板6の内部で増幅及び変換され、記録層の切替や、電流の極性、及び電流値の制御に利用される。
【0030】
本実施例では電力を供給するコイルと制御信号を供給するコイルが、共通のコアを利用しているので、お互いの混信をさけるためには交流電流の周波数成分が影響を受けないように注意する必要がある。例えばコイル104に供給する交流電流の基本周波数を100kHzとした場合、コイル105に供給する交流電流の基本周波数としては100kHzとその高次の周波数を避けたほうが望ましい。あるいは1MHz以上に設定しておけば、高次の周波数成分が混信する確率は低くなる。
【0031】
ハブ10の最下部にはリング状のロータ磁石11が固定されている。またスリーブ13の内周に接するようにモータステータ固定リング14と、軸受け15が設けられている。軸受け15と回転軸2の間には動圧発生流体16が充填されている。回転軸2の下部には、動圧発生流体16の漏れを防ぐためのキャップ21が取り付けられている。本実施例では流体軸受けを採用したが、他の構造例えばボールベアリングを用いた軸受け構造を用いても良い。
【0032】
モータステータ固定リング14の外周にはモータステータコア18とモータ巻線17が配置されている。モータ巻線17に所定の駆動電流を供給すれば、モータステータコア18とロータ磁石11の間にトルクが発生し、ハブ10を含む上記回転構造を毎分数千回転の速度で回転させることができる。
【0033】
モータステータ固定リング14の下部には回路基板19とベース20が設置されている。回路基板19には、ディスク1へ電力を供給するための電源と制御信号源、及びその他の記録装置として必要な電子回路が実装されている。回路基板19とコイル104及びコイル105は配線12によって接続されており、必要な電力と制御信号をコイルへ供給することができる。
【0034】
次に、本実施例を用いた記録再生例を説明する。図11にディスクの断面構造を示した。ここでは、簡単のために2層ディスクを示しているが、3層以上のディスクにおいてもディスク作製方法、記録再生方法は同様である。ディスク1のエレクトロクロミック層としては、無機材料のWO3層503、506を用い、固体電解質材料にTa2O5層504、507を用いた。これらの層をITO透明電極層502、505、508ではさんだ積層体構造を2回繰り返すことで、2枚の着色可能層と3枚の透明電極層を厚さ0.6mm、直径120mmのトラッキング用のランド・グルーブ溝を有するポリカーボネート基板上501に形成した。これら記録層と電極層を保護するために、ほぼ同じ厚さのポリカーボネート基板509を紫外線硬化型樹脂を用いて貼り合わせた。
【0035】
図12は、本発明の情報記録媒体の電極部の一例を示す拡大図である。ディスク内周部には、上記3つの透明電極に電流を供給するための引き出し電極として、3重の同心円リング状の金属電極511を貼り付けた。金属電極は、導電性樹脂510を介して、各透明電極と接している。このようにして完成したディスク1を固定盤3に搭載し、同心円状金属電極511と接触ピン4を接触させた。
【0036】
記録層への印加電流の仕様は以下の通りである。
1.2つの記録層に独立に、着色のための正電圧、及び消色のための負電圧を印加。
2.最大電圧は正電圧、負電圧ともに5V
3.最大電流は100mA
4.正電圧、負電圧が最大値の90%に達するまでの立ち上がり時間は100マイクロ秒以下
5.着色、消色の繰り返し数は100回以上
【0037】
以下に、図7を用いて本実施例による情報記録再生の動作を説明する。
【0038】
最初にモータ202を用いて光ディスク201を回転駆動させる。モータ回転数の制御方法としては、記録再生を行なうゾーン毎にディスクの回転数を変化させるZCAV(Zoned Constant Linear Velocity)方式を採用した。光ディスク201は、光スポットとの相対線速度15m/sの速度となるように回転させた。ここでは、線速度15m/sにて記録再生を行ったが、さらに15m/sより早くしたり、遅くした線速度、角速度一定などのディスク回転数制御を行っても、給電に問題はなかった。
【0039】
記録装置の外部から供給される入力信号は、8ビットを1単位として、変調器208に入力した。ここでは、8−16変調方式を用いた。これは、8ビットの情報を16ビットに変換する変調方式である。この方式でディスク上に、8ビットの情報に対応させた3T〜14Tのマーク長の情報記録を行なう。ここでTとは情報記録時のクロック周期を表わしている。変調器208により変換された3T〜14Tのデジタル信号は記録波形発生回路206に転送され、マルチパルス記録波形が生成される。記録波形発生回路206では、3T〜14Tの信号を時系列的に交互に「0」と「1」に対応させるようにしている。
【0040】
記録波形発生回路206により生成された記録波形は、レーザー駆動回路207に転送され、レーザー駆動回路207はこの記録波形をもとに、光ヘッド203内の半導体レーザーを発光させる。光ヘッド203には情報記録用のレーザーとして、光波長660nmの半導体レーザーが搭載されている。
【0041】
所定の層に電流を印加して着色させた後、このレーザー光をサーボ回路209で制御しながら、レンズNA0.65の対物レンズにより光ディスク201の記録層上に絞り込み、レーザービームを照射することにより情報の記録を行なった。トラッキングはランド・グルーブ方式で行った。記録時のパワーは30mWと、記録パルス以外の時間は、再生パワーまでパワーを落とした。
【0042】
記録された情報の再生も、上記光ヘッドを用いて行なった。再生時のパワーは1mWとした。所定の層に電流を印加して着色させ、レーザービームを記録されたマーク上に照射し、マークとマーク以外の部分からの反射光を検出することにより再生信号を得る。この再生信号の振幅をプリアンプ204により増大させ、復調器210で16ビット毎に8ビットの情報に変換して出力信号とする。以上の動作により記録されたマークの再生が完了する。
【0043】
以上の条件でマークエッジ記録を行なった場合、最短マークである3Tマークのマーク長は約0.40μm、最長マークである14Tマークのマーク長は約1.96imとなる。記録信号には、情報信号の始端部、終端部に4Tマークと4Tスペースの繰り返しのダミーデータが含まれている。
【0044】
ここでは、レーザー波長660nm、NA0.65にて記録を行ったが、さらに405nmなどの短波長のレーザーを用いてもよい。また、NA0.85などNAが異なる場合でも同様に記録できる。トラッキング方式も、ランド・グルーブ方式以外の方式、例えばサンプルサーボ方式などでも良い。さらに、8−16変調方式、だけでなく1−7変調などここに記載されていない変調方式、ダミーデータを含まない信号でも同様な結果が得られた。
【0045】
さらに、本発明の技術により、接触ピン4の位置をディスクの内周側、直径23mmから33mmの範囲の狭い範囲内に接触部を設けることが可能となり、より好ましかった。これは従来のディスクでクランプエリアと呼ばれ、ディスクを固定するのに用いられている。これにより、本発明の給電機構を有する情報記録再生装置は、層選択型光ディスクの記録及び/又は再生を行うことが出来るだけでなく、給電を必要としないDVDなどの既存の光ディスクへの記録及び/又は再生を行うこと、つまり互換性を有することが出来た。
【0046】
次に図8乃至図10を用いて記録層の切り替え動作を説明する。図8は本発明の第一の実施例における記録層の切り替えに必要な電気回路のブロック図を示す。交流電源回路401と切り替え信号発生回路402は、ともに回路基板19に電子回路として搭載されている。
【0047】
交流電源回路401は電磁誘導に必要な交流電圧を発生させる回路であり、本実施例では振幅12V、周波数100kHzのスイッチング電源を用いた。交流電源回路401で生成した交流電圧は電力供給用ロータリトランス403に供給され、ロータリトランス403の電磁誘導作用により回転体に伝えられた電力は、電流制御回路基板405に供給される。ここで、電力供給用ロータリトランス403は、図1の構成例でいうと、ロータ側電力供給コイル101、ロータ側コア103、ステータ側電力供給コイル104、及びステータ側コア106からなる。交流電源の周波数は、100kHz以外でも動作するが、光ディスクのサーボ周波数と混信を避けるため、100kHz以下がより好ましい。
【0048】
一方切り替え信号発生回路402は、どの記録層に電力を供給するかを決めるための信号を発生する回路である。本実施例では、上記交流電源との混信を避けるため、振幅5V、周波数500〜1000kHzの信号を発生した。信号は信号供給用ロータリトランス404に伝えられ、ロータリトランス404の電磁誘導作用により回転体に伝えられた信号は、電流制御回路基板405に供給される。ここで、ロータリトランス404は、図1に示した構成例でいうと、ロータ側信号供給コイル102、ロータ側コア103、ステータ側信号供給コイル105及びステータ側コア106からなる。切り替え信号の周波数は、500〜1000kHz以外でも動作するが、光ディスクの信号周波数をさけることがより好ましく、ここでは1MHzより大きい周波数をさけた。これは、信号へのノイズの漏れこみを防止するためである。
【0049】
電流制御回路基板405には、供給された交流電力を整流し直流に変換する回路が内蔵されている。また変換された直流電流をどの記録層に供給するのかを決める切り替え回路が設けられている。ロータリトランス404から供給された信号の振幅や周波数に応じて供給すべき記録層を判断し、回路基板405に設けられた第一接触ピン406、第二接触ピン407、第三接触ピン408に電流を供給する。
【0050】
第一接触ピン406、第二接触ピン407、第三接触ピン408は、層選択型多層光ディスク409の表面に設置された第一同心円電極410、第二同心円電極411、第三同心円電極412とそれぞれ接続されている。上記制御回路405によって振幅と時間を制御された直流電流は、これらの電極を通じて第一記録層413及び第二記録層414に供給される。
【0051】
次に、第一記録層413及び第二記録層414に供給される電流の切り替えのタイミングを説明する。第一記録層413に印加される電圧をV12、第二記録層414に印加される電圧をV23とする。
【0052】
図9は、第一の切り替え方法を説明するV12及びV23の時間変化を示すグラフである。最初に時間t11においてV12を0Vから2.5Vに上昇させた。これによって第一記録層413に電圧が加わり、第一記録層413は透明状態から着色状態への変化が進行した。時間t12においてディスク全面の着色が完了した。次に、時間t13においてV12を2.5Vから−2Vに下降させた。このように着色時の電圧と逆向きに電圧を印加すると、着色状態から透明状態へ変化する時間を短縮する効果がある。時間t14においてディスク全面の消色が完了し、全てが透明状態へ戻った。着色が完了してから消色が完了するまでの時間をP1とする。
【0053】
次に、時間t21においてV23を0Vから2.5Vに上昇させた。これによって第二記録層414に電圧が加わり、第二記録層414は透明状態から着色状態への変化が進行した。時間t22においてディスク全面の着色が完了した。次に時間t23においてV23を2.5Vから−2Vに下降させた。この逆電圧は、V12のときと同様に着色状態から透明状態へ変化する時間を短縮する効果がある。時間t24においてディスク全面の消色が完了し、全てが透明状態へ戻った。着色が完了してから消色が完了するまでの時間をP2とする。
【0054】
本実施例では、第一記録層413の消色が完了した時間t14と、第二記録層414の着色が完了した時間t22との間の時間差をできるだけ少なくするように制御のタイミングを決めた。すなわちt14よりも、第二記録層414に電圧を印加する時間t21が先となるようにした。
【0055】
このようにすると、第一記録層413が着色状態となっている時間P1と、第二記録層414が着色状態となっている時間P2の間の時間が短縮できる。本実施例のようにP1の終了後、時間差なく即座にP2に移行できれば理想的である。このようなタイミングで電流を制御すれば、第一記録層413の記録再生状態から、第二記録層414記録再生状態へ移行する時間を最も短くできるので、層選択型多層光ディスク装置の高速記録再生を実現できる。
【0056】
図10は、第二の切り替え方法を説明するV12及びV23の時間変化を示すグラフである。本実施例では、第一記録層413の消色が完了する時間t14と、第二記録層414へ電圧を印加する時間t21との間の時間差をできるだけ少なくするように制御のタイミングを決めた。
【0057】
このようにするとP1とP2の間に一定の時間が発生するので、記録層の切り替え時間を短縮という面では不利となる。しかし、V12が0Vの状態となってからV23に電圧を供給するので、V12とV23の両方に同時に電圧を印加する回路を設ける必要はなくなる。このようなタイミングで電流を制御すれば、第一記録層と第二記録層に同時に電力を供給することがなくなり、回路構成を削減でき、ディスク全体への供給電力を削減できる。
【0058】
図2は、本発明の第一の実施例において媒体を固定盤に設置する際に、固定盤に力が加わった場合の情報記録装置の断面図である。ディスク1を取り付けるための力Fが下方に加わると、固定盤3や回路基板6は図のように回転軸2に対して下方にわずかに傾く。しかしフレキシブル基板9は柔軟で変形可能な構造であり、また固定盤3とハブ10の間には、回転軸2を除けば、お互いに接触することない空間が設けられている。以上の構造により、ハブ10の傾く角度は固定盤3や回路基板6の傾く角度より少なくなる。
【0059】
この結果、約30μmの間隔gで相対しているコア103と106が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがより少なくなる。以上の理由によりディスク1を取り付ける行為を繰り返しても、上記構造によりディスク1を長期間安定して回転させることができる。
【0060】
図3は、本発明の第二の実施例を示す情報記録装置の断面図である。本実施例では電流制御回路基板6に制御信号を供給するために、発光素子と受光素子を用いて信号伝送を行なう。
【0061】
ロータリトランス100は、ロータ側電力供給コイル101とロータ側コア103、そして静止しているスリーブ13側に取り付けられたステータ側電力供給コイル104とステータ側コア106、以上の部品で構成されている。電流制御回路基板6への電力供給は、図1と同様にコイル101とコイル104との間の電磁誘導により達成される。
【0062】
スリーブ13の内周側には発光素子302が取り付けられており、回路基板19に実装された発光素子の駆動回路によって、発光素子302の光の照射と停止を制御している。ハブ10の内周側には受光素子301が取り付けられており、発光素子302から照射された光を受光して、光の強度に対応した起電力発生する。受光素子301の電極はフレキシブル基板9を通じて電流制御回路基板6と接続されている。受光素子301の起電力は制御回路内部で増幅及び変換され、記録層の切替や、電流の極性、及び電流値の制御に利用される。
【0063】
本実施例では、電力の供給に電磁誘導コイルを用い、制御信号の供給に光素子を用いているので、原理的に混信することはなくなる。すなわち記録装置内部の電気ノイズや外部の電気ノイズに対して耐性の高い制御回路を実現できる。
【0064】
なお本実施例では、受光素子301が発光素子302の前面に対向した瞬間だけ起電力が発生する。このため、例えば毎分3600回転(毎秒60回転)でハブ10が回転している場合は、1/60sec=16.7msecの周期で受光素子301に起電力が発生する。電流の制御として16.7msecより細かい周期で制御する必要がなければ図3の構成で十分である。
【0065】
上記の周期より細かい周期で電流を制御する必要がある場合は、以下の構造に変更すれば良い。
(1) 複数個の受光素子301をハブ10の内周部へ設置する。
(2) 発光素子302と受光素子301を、回転軸2の中心が通る位置に設置する。例えば、
・キャップ21上の回転軸2の中心が通る位置に発光素子302を搭載し、回転軸2の底面に受光素子301を搭載する。さらに回転軸2の内部に配線を敷設しておき、この配線により受光素子301と電流制御回路基板6とを接続しておく。
・ベース20と反対側に筐体カバーを設置し、カバー内部に配線を敷設しておく。カバー表面において、回転軸2の中心が通る位置に発光素子302を搭載しておく。一方、回転軸2の上面に受光素子301を搭載し、回転軸2の内部に配線を敷設しておき、受光素子301と電流制御回路基板6とを接続する。
【0066】
このようにしておけば、発光素子と受光素子が対向する時間が増加するので、より細かい時間周期で電流制御することが可能となる。
【0067】
図4は、本発明の第三の実施例を示す情報記録装置の断面図である。本実施例では、外力Fに対して固定盤3や電流制御回路6を柔軟な構造にすることで、ハブ10の傾く角度を固定盤3や回路基板6の傾く角度より少なくすることができる。固定盤3としては、例えばディスク1の厚さより薄い有機樹脂からなる円盤を用いれば良い。また回路基板6としてはポリイミド樹脂からなるフレキシブル回路基板を用いれば良い。
【0068】
この結果、約30μmの間隔gで相対しているコア103と106が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがより少なくなる。よってディスク1を取り付ける行為を繰り返しても、上記構造によりディスク1を長期間安定して回転させることができる。
【0069】
図5は、本発明の第四の実施例を示す情報記録装置の断面図である。本実施例では、固定盤3を固定盤外周部3aと固定盤内周部3bの2つの部品で構成した。固定盤外周部3aと固定盤内周部3bをあらかじめ接着しておき、回転軸2に対して固定盤内周部3bを圧入した。
【0070】
固定盤内周部3bの一部の厚さを薄くすることで、外力Fに対して柔軟な構造にできるので、ハブ10の傾く角度を固定盤3や回路基板6の傾く角度より少なくすることができる。
【0071】
この結果、約30μmの間隔gで相対しているコア103と106が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがより少なくなる。よってディスク1を取り付ける行為を繰り返しても、上記構造によりディスク1を長期間安定して回転させることができる。
【0072】
図6は、本発明の第五の実施例を示す情報記録装置の断面図である。本実施例では、回転側のハブ10と静止側のスリーブ13を回転軸2に平行な面で対向させ、その対向面にコア103とコア106を設置した。このようにしておけば、力Fにより固定盤3や回路基板6が傾いても、コア103とコア106はその対向面に対してほぼ平行にずれるので、両者の間隔gの変化が小さくなる。この結果、コア103と106が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがより少なくなる。よってディスク1を取り付ける行為を繰り返しても、上記構造によりディスク1を長期間安定して回転させることができる。
【0073】
また、以上に述べた実施例は層選択型多層光ディスクに限定されるものではなく、媒体に電力を供給する必要がある記憶装置一般に適用可能である。例えば磁気ディスク駆動装置、光磁気ディスク駆動装置、電界アシストによる磁気ディスク駆動装置又は光ディスク駆動装置などへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第一実施例を示す情報記録装置の断面図である。
【図2】本発明の第一の実施例において固定盤に力が加わった場合の情報記録装置の断面図である。
【図3】本発明の第二の実施例を示す情報記録装置の断面図である
【図4】本発明の第三の実施例を示す情報記録装置の断面図である。
【図5】本発明の第四の実施例を示す情報記録装置の断面図である。
【図6】本発明の第五の実施例を示す情報記録装置の断面図である。
【図7】本実施例による情報記録再生の動作を説明する図である。
【図8】本発明おける記録層の切り替えに必要な電気回路のブロック図を示す。
【図9】第一の切り替え方法を説明するV12及びV23の時間変化を示すグラフである。
【図10】第二の切り替え方法を説明するV12及びV23の時間変化を示すグラフである。
【図11】本発明の情報記録媒体の断面図である。
【図12】本発明の情報記録媒体の電極部の拡大図である。
【符号の説明】
【0075】
1…ディスク、2…回転軸、3…固定盤、3a…固定盤外周部、3b…固定盤内周部、4…接触ピン、5…ディスク押さえ、6…電流制御回路基板、7…IC、8…受動部品、9…フレキシブル基板、10…ハブ、11…ロータ磁石、12…配線、13…スリーブ、14…モータステータ固定リング、15…軸受け、16…動圧発生流体、17…モータ巻線、18…モータステータコア、19…回路基板、20…ベース、21…キャップ、100…ロータリトランス、101…ロータ側電力供給コイル、102…ロータ側信号供給コイル、103…ロータ側コア、104…ステータ側電力供給コイル、105…ステータ側信号供給コイル、106…ステータ側コア、201…光ディスク、202…モータ、203…光ヘッド、204…プリアンプ、206…記録波形発生回路、208…変調器、209…サーボ回路、210…復調器、301…受光素子、302…発光素子、401…交流電源回路、402…切り替え信号発生回路、403…電力供給用ロータリトランス、404…信号供給用ロータリトランス、405…電流制御回路基板、406…第一接触ピン1、407…第二接触ピン、408…第三接触ピン3、409…層選択型多層光ディスク、410…第一同心円電極、411…第二同心円電極、412…第三同心円電極、413…第一記録層、414…第二記録層
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて媒体に情報を記録する情報記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は記録密度を高めるために、光源の短波長化により光スポットを小さくする努力が重ねられてきた。しかし光源の短波長化は限界に近づいてきている。そこで今後の技術として、光の直進性と透過性を生かした多層光記録方式が期待されている。
【0003】
例えば特開2004-310912号公報に開示されているように、エレクトロクロミック材料を用いた層選択型多層光ディスクを用いれば、光記録装置の高記録密度化を実現できる。これは、ポリカーボネート基板上において、記録層を透明電極ではさんだ構造を複数積層した光ディスクである。記録又は読み出しを行ないたい層に所定の電圧を印加すると、記録層が透明状態から着色状態に変化し、記録光、再生光に対する吸収及び反射が増加して、記録や読み出しが可能になる。光が照射された場所は変質して透明状態となり、情報として記録される。電圧を印加した層以外は全て透明なので、電圧を印加した特定の層のみの記録・再生が可能になる。
【0004】
【特許文献1】特開2004-310912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例では、記録装置の静止部分から光ディスクに電圧を供給するために、光ディスクの回転軸の周囲に設置された、ベアリングもしくはスリップリングなどの転がり部品や摺動部品を用いた。これらの方法により、回転する光ディスクの所定の記録層に電圧を供給することができた。
【0006】
しかし、上記方式では長期間使用している間に転がり部又は摺動部が摩耗する。時間の経過とともに摩耗部分の表面において酸化膜の面積が増加する。すると摩耗部分の電気抵抗が増加し、転がり部又は摺動部の電圧降下が増加するので、その結果記録層に加わる電圧が低下する。印加電圧が低下すると記録層が透明状態から着色状態に変化する速度が遅くなる。このため記録層の切替時間が遅くなり、装置の記録・再生速度が低下してしまう。上記酸化膜の面積が増加すると電気抵抗がさらに増大し、最終的に無限大の抵抗となって記録層へ電流を供給できなくなり、多層記録が不可能となる。
【0007】
また上記方式では、一つの透明電極層に電圧を印加するために、一つのベアリングもしくはスリップリングが必要となる。すなわち記録層数の増大に対応するためには、ベアリングやスリップリングを多数積み重ねなければならない。これらの部品の厚さによっては記録装置全体の高さが増すので、記録容量の増大と装置の小型化を両立することが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、転がり部品や摺動部品の摩耗に起因する接触抵抗増加と、それに伴なう電圧降下を防ぐことにより、供給電圧不足による記録層の切替速度の低下を防ぎ、高速記録と長期信頼性に優れた多層光記録装置を実現することにある。また、他の目的は、記録層数を増やしても装置全体の高さを増やさず、記録容量の増大と装置の小形化を両立できる多層光記録装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、エレクトロクロミック材料を用いた多層光記録装置において、電源と媒体との間に、電力を供給するための電磁誘導手段を設けたことにより達成される。上記電磁誘導手段は、媒体を保持する回転体と、回転体を回転可能に支持する非回転体のそれぞれに設置した一対のコイル、及びコイルを取り囲む磁性体により構成すれば良い。これにより、回転する媒体に対して非接触で電力を供給することが可能となり、従来の転がり部又は摺動部の摩耗に起因する問題を解決できる。
【0010】
また、特定の記録層に電流を供給するための電流制御回路を回転体に設置し、電流制御回路に制御信号を供給するために電磁誘導手段を設けるのが望ましい。上記電磁誘導手段は、媒体を保持する回転体と非回転体のそれぞれに設置した一対のコイル及びコイルを取り囲む磁性体により構成すれば良い。これにより、回転する電流制御回路に非接触で信号を供給することが可能となり、従来の転がり部や摺動部の摩耗に起因する問題を解決できる。また電力を供給するための電磁誘導手段と、制御信号を供給するための電磁誘導手段の2つを設置しておけば、電流制御回路の機能により電流の極性と記録層の切替が可能となる。このようにしておけば、記録層数の増加に関係なく、上記2つの電磁誘導手段により特定の記録層に電流を供給することができる。
【0011】
従来、記録層数の増大に対応するためには、ベアリングやスリップリングを多数積み重ねなければならなかったが、上記構成により記録層数がどれだけ増加しても装置全体の高さは一定となる。よって、記録容量の増大と装置の小形化を両立できる多層光記録装置を実現できる。
【0012】
また、電流制御回路に制御信号を供給するために、電流源と媒体との間に信号を供給するための光発光手段と光受光手段を設けても良い。これにより回転する電流制御回路に非接触で信号を供給することが可能となり、従来の転がり部や摺動部の摩耗に起因する課題を同様に解決できる。また、電力を供給するための電磁誘導手段と、制御信号を供給するための光発光・受光手段の2つを設置しておけば、電流制御回路の機能により電流の極性と層切替が可能となる。このようにしておけば、記録層数の増加に関係なく、特定の記録層に電流を供給することができる。このようにして、記録容量の増大と装置の小形化を両立できる多層光記録装置を実現できる。
【0013】
電流制御回路は媒体を固定する固定盤に設置し、ハブに設置した電磁誘導手段と電流制御回路を、フレキシブル基板を用いて接続するのが好ましい。この構成によると、記録層数が増加した場合に以下の効果が生まれる。媒体と電流制御回路の接続端子数は増加するが、電流制御回路と電磁誘導手段との接続は、上記で述べたように、少なくとも電力を供給する配線と制御信号を供給する配線の2系統でまかなうことができる。よって、媒体と電流制御回路の間の多端子接続は、コンタクトピンと多層プリント基板で構成し、2系統の配線で良い電流制御回路と電磁誘導手段との接続には柔軟なフレキシブル基板を用いることで実現できる。
【0014】
このような構成とすれば、フレキシブル基板の接続ピン数は記録層数に関わらず一定でありピン数が増加することはないので、長期接続信頼性に優れた低コストの接続構造を実現できる。また、媒体を固定盤に設置する際に固定盤に力が加わっても、フレキシブル基板は柔軟で変形可能な構造なので、電磁誘導手段に加わる力は緩和される。回転体と非回転体の双方に設置した電磁誘導手段同士は、結合効率を高めるために数10μmの間隔で相対している。この電磁誘導手段に加わる力が緩和されると、コイル同士や磁性体同士が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがなくなるので、媒体を長期間安定して回転させることができる。
【0015】
さらに、固定盤とハブとの間に空間を設けたり、固定盤や電流制御回路を柔軟な構造にしたり、固定盤と回転軸の接続部を柔軟な構造とすることで、ハブに設置した電磁誘導手段に加わる力がさらに緩和され、コイル同士や磁性体同士の接触や噛み込みの発生確率が低くなり、媒体をさらに長期間安定して回転させることができる。
【0016】
また、回転体と非回転体を回転軸に平行な面で対向させ、その対向面に電磁誘導手段を設けても良い。このようにしておけば、媒体を固定盤に設置する際に回転体に力が加わっても、回転体と非回転体は対向面に対してほぼ平行にずれるので両者の間隔の変化が小さくなる。よってコイル同士や磁性体同士の接触や噛み込みの発生確率が低くなり、媒体を長期間安定して回転させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、転がり部品や摺動部品の摩耗に起因する記録層の切替速度の低下を防ぎ、高速記録と長期信頼性に優れた記録装置を実現することができる。また、記録層数を増やしても装置全体の高さを増やさず、記録容量の増大と装置の小型化を両立できる情報記録装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る情報記録装置について図を用いて説明する。図1は、本発明の第一実施例を示す情報記録装置をディスク回転軸に沿って切断した断面図である。
【0019】
ディスク1は、エレクトロクロミック材料からなる記録層を2枚の透明電極層ではさんだ構造を複数積層して成る、層選択型多層光ディスクである。ディスク内部の構造と製法に関しては、特開2003-3462378号公報又は特開2004-310912号公報に開示されているので詳細な説明は省略する。
【0020】
ディスク1の内周領域には、記録層をはさんだ透明電極に電流を供給するための複数の引き出し電極が形成されている。引き出し電極の末端は、固定盤3と向かい合うディスク1内周部の表面に露出している。固定盤3の表面には、上記引き出し電極に対応する位置に上下方向に伸縮可能なバネ性を有する複数の接触ピン4が設置されている。
【0021】
ディスク1を固定盤3に載せると、ディスク1の最内周部がディスク押さえ5と勘合する。ディスク押さえ5にはバネが内蔵されており、ディスク1全体を固定盤3の方向に押さえ付ける力を発揮する。これによりディスク1と固定盤3が近接し、ディスク1の引き出し電極と接触ピン4が接触する。ディスク1に反りや傾きが生じていても、接触ピン4が上下方向に伸縮するので接触可能となる。
【0022】
固定盤3とハブ10は回転軸2に固定されており、回転軸2とともに回転することができる。固定盤3の底面には、ディスク1の記録層へ供給する電流を制御するために電流制御回路基板6を設置した。接触ピン4は電流制御回路基板6の貫通穴に形成された電極と半田などを用いて電気的に接続されている。
【0023】
電流制御に必要なコンデンサや抵抗などの受動部品8、及びIC7は回路基板6上に搭載されている。ディスク1の回転時に基板も回転するので、回転軸中心から見た各部品のモーメントの合計が最小となるように部品を搭載すれば、回転時の動バランスが最小となり、振動が少なくモータ消費電力の少ない回転系を実現できる。
【0024】
ハブ10の下面には、電流制御回路基板6へ電力と制御信号を供給するための電磁誘導手段であるロータリトランス100が設けられている。ロータリトランス100は、回転するハブ10側に取り付けられたロータ側電力供給コイル101とロータ側信号供給コイル102及びロータ側コア103、そして静止しているスリーブ13側に取り付けられたステータ側電力供給コイル104とステータ側信号供給コイル105及びステータ側コア106、以上の部品で構成されている。
【0025】
コイル101とコイル104は、回転軸2を中心とした同心円状の巻線構造であり、お互いに約30μm程度の微小な間隔で対向している。ベース20側の回路基板19に設けられている電源回路から約100kHzの交流電流が配線12を経由してコイル104に供給されると、コイル104の周囲に交流磁束が発生する。コア103及び106は、交流磁束を通しやすい軟磁性材料、たとえば亜鉛やマンガンなどを含むフェライトの粉末から製造されている。交流磁束はステータ側コア106の内部を通り、磁束の一部は対向しているロータ側コア103に浸入する。このロータ側コア103内部の磁束変化によりコイル101に誘起起電力が発生する。
【0026】
コイル101両端の電極はフレキシブル基板9の電極に接続されており、フレキシブル基板9は電流制御回路基板6と接続している。コイル101の交流誘起起電力は電流制御回路基板6内部の平滑回路で直流電流に変換され、接触ピン4を経由してディスク1の記録層に供給される。
【0027】
コイル101とコイル104、コア103とコア106は、回転軸2を中心とした同心円状の構造なので、ハブ10の回転速度が変化しても原理的には磁気回路に変化はない。このためコア内部を通る交流磁束の振幅と周波数は、ハブの回転速度にかかわらず一定となり、回転するディスク1に対して安定した電力を供給することができる。
【0028】
コイル102とコイル105も同様に約30μm程度の微小な間隔で対向している。ベース20側の回路基板19に設けられている制御回路から交流電流をコイル105に供給すれば、前記と同様にコア106及びコア103の内部に交流磁束が発生し、コイル102に誘起起電力が発生する。
【0029】
コイル102両端の電極はフレキシブル基板9を通じて電流制御回路基板6と接続されている。上記の誘起起電力は電流制御回路基板6の内部で増幅及び変換され、記録層の切替や、電流の極性、及び電流値の制御に利用される。
【0030】
本実施例では電力を供給するコイルと制御信号を供給するコイルが、共通のコアを利用しているので、お互いの混信をさけるためには交流電流の周波数成分が影響を受けないように注意する必要がある。例えばコイル104に供給する交流電流の基本周波数を100kHzとした場合、コイル105に供給する交流電流の基本周波数としては100kHzとその高次の周波数を避けたほうが望ましい。あるいは1MHz以上に設定しておけば、高次の周波数成分が混信する確率は低くなる。
【0031】
ハブ10の最下部にはリング状のロータ磁石11が固定されている。またスリーブ13の内周に接するようにモータステータ固定リング14と、軸受け15が設けられている。軸受け15と回転軸2の間には動圧発生流体16が充填されている。回転軸2の下部には、動圧発生流体16の漏れを防ぐためのキャップ21が取り付けられている。本実施例では流体軸受けを採用したが、他の構造例えばボールベアリングを用いた軸受け構造を用いても良い。
【0032】
モータステータ固定リング14の外周にはモータステータコア18とモータ巻線17が配置されている。モータ巻線17に所定の駆動電流を供給すれば、モータステータコア18とロータ磁石11の間にトルクが発生し、ハブ10を含む上記回転構造を毎分数千回転の速度で回転させることができる。
【0033】
モータステータ固定リング14の下部には回路基板19とベース20が設置されている。回路基板19には、ディスク1へ電力を供給するための電源と制御信号源、及びその他の記録装置として必要な電子回路が実装されている。回路基板19とコイル104及びコイル105は配線12によって接続されており、必要な電力と制御信号をコイルへ供給することができる。
【0034】
次に、本実施例を用いた記録再生例を説明する。図11にディスクの断面構造を示した。ここでは、簡単のために2層ディスクを示しているが、3層以上のディスクにおいてもディスク作製方法、記録再生方法は同様である。ディスク1のエレクトロクロミック層としては、無機材料のWO3層503、506を用い、固体電解質材料にTa2O5層504、507を用いた。これらの層をITO透明電極層502、505、508ではさんだ積層体構造を2回繰り返すことで、2枚の着色可能層と3枚の透明電極層を厚さ0.6mm、直径120mmのトラッキング用のランド・グルーブ溝を有するポリカーボネート基板上501に形成した。これら記録層と電極層を保護するために、ほぼ同じ厚さのポリカーボネート基板509を紫外線硬化型樹脂を用いて貼り合わせた。
【0035】
図12は、本発明の情報記録媒体の電極部の一例を示す拡大図である。ディスク内周部には、上記3つの透明電極に電流を供給するための引き出し電極として、3重の同心円リング状の金属電極511を貼り付けた。金属電極は、導電性樹脂510を介して、各透明電極と接している。このようにして完成したディスク1を固定盤3に搭載し、同心円状金属電極511と接触ピン4を接触させた。
【0036】
記録層への印加電流の仕様は以下の通りである。
1.2つの記録層に独立に、着色のための正電圧、及び消色のための負電圧を印加。
2.最大電圧は正電圧、負電圧ともに5V
3.最大電流は100mA
4.正電圧、負電圧が最大値の90%に達するまでの立ち上がり時間は100マイクロ秒以下
5.着色、消色の繰り返し数は100回以上
【0037】
以下に、図7を用いて本実施例による情報記録再生の動作を説明する。
【0038】
最初にモータ202を用いて光ディスク201を回転駆動させる。モータ回転数の制御方法としては、記録再生を行なうゾーン毎にディスクの回転数を変化させるZCAV(Zoned Constant Linear Velocity)方式を採用した。光ディスク201は、光スポットとの相対線速度15m/sの速度となるように回転させた。ここでは、線速度15m/sにて記録再生を行ったが、さらに15m/sより早くしたり、遅くした線速度、角速度一定などのディスク回転数制御を行っても、給電に問題はなかった。
【0039】
記録装置の外部から供給される入力信号は、8ビットを1単位として、変調器208に入力した。ここでは、8−16変調方式を用いた。これは、8ビットの情報を16ビットに変換する変調方式である。この方式でディスク上に、8ビットの情報に対応させた3T〜14Tのマーク長の情報記録を行なう。ここでTとは情報記録時のクロック周期を表わしている。変調器208により変換された3T〜14Tのデジタル信号は記録波形発生回路206に転送され、マルチパルス記録波形が生成される。記録波形発生回路206では、3T〜14Tの信号を時系列的に交互に「0」と「1」に対応させるようにしている。
【0040】
記録波形発生回路206により生成された記録波形は、レーザー駆動回路207に転送され、レーザー駆動回路207はこの記録波形をもとに、光ヘッド203内の半導体レーザーを発光させる。光ヘッド203には情報記録用のレーザーとして、光波長660nmの半導体レーザーが搭載されている。
【0041】
所定の層に電流を印加して着色させた後、このレーザー光をサーボ回路209で制御しながら、レンズNA0.65の対物レンズにより光ディスク201の記録層上に絞り込み、レーザービームを照射することにより情報の記録を行なった。トラッキングはランド・グルーブ方式で行った。記録時のパワーは30mWと、記録パルス以外の時間は、再生パワーまでパワーを落とした。
【0042】
記録された情報の再生も、上記光ヘッドを用いて行なった。再生時のパワーは1mWとした。所定の層に電流を印加して着色させ、レーザービームを記録されたマーク上に照射し、マークとマーク以外の部分からの反射光を検出することにより再生信号を得る。この再生信号の振幅をプリアンプ204により増大させ、復調器210で16ビット毎に8ビットの情報に変換して出力信号とする。以上の動作により記録されたマークの再生が完了する。
【0043】
以上の条件でマークエッジ記録を行なった場合、最短マークである3Tマークのマーク長は約0.40μm、最長マークである14Tマークのマーク長は約1.96imとなる。記録信号には、情報信号の始端部、終端部に4Tマークと4Tスペースの繰り返しのダミーデータが含まれている。
【0044】
ここでは、レーザー波長660nm、NA0.65にて記録を行ったが、さらに405nmなどの短波長のレーザーを用いてもよい。また、NA0.85などNAが異なる場合でも同様に記録できる。トラッキング方式も、ランド・グルーブ方式以外の方式、例えばサンプルサーボ方式などでも良い。さらに、8−16変調方式、だけでなく1−7変調などここに記載されていない変調方式、ダミーデータを含まない信号でも同様な結果が得られた。
【0045】
さらに、本発明の技術により、接触ピン4の位置をディスクの内周側、直径23mmから33mmの範囲の狭い範囲内に接触部を設けることが可能となり、より好ましかった。これは従来のディスクでクランプエリアと呼ばれ、ディスクを固定するのに用いられている。これにより、本発明の給電機構を有する情報記録再生装置は、層選択型光ディスクの記録及び/又は再生を行うことが出来るだけでなく、給電を必要としないDVDなどの既存の光ディスクへの記録及び/又は再生を行うこと、つまり互換性を有することが出来た。
【0046】
次に図8乃至図10を用いて記録層の切り替え動作を説明する。図8は本発明の第一の実施例における記録層の切り替えに必要な電気回路のブロック図を示す。交流電源回路401と切り替え信号発生回路402は、ともに回路基板19に電子回路として搭載されている。
【0047】
交流電源回路401は電磁誘導に必要な交流電圧を発生させる回路であり、本実施例では振幅12V、周波数100kHzのスイッチング電源を用いた。交流電源回路401で生成した交流電圧は電力供給用ロータリトランス403に供給され、ロータリトランス403の電磁誘導作用により回転体に伝えられた電力は、電流制御回路基板405に供給される。ここで、電力供給用ロータリトランス403は、図1の構成例でいうと、ロータ側電力供給コイル101、ロータ側コア103、ステータ側電力供給コイル104、及びステータ側コア106からなる。交流電源の周波数は、100kHz以外でも動作するが、光ディスクのサーボ周波数と混信を避けるため、100kHz以下がより好ましい。
【0048】
一方切り替え信号発生回路402は、どの記録層に電力を供給するかを決めるための信号を発生する回路である。本実施例では、上記交流電源との混信を避けるため、振幅5V、周波数500〜1000kHzの信号を発生した。信号は信号供給用ロータリトランス404に伝えられ、ロータリトランス404の電磁誘導作用により回転体に伝えられた信号は、電流制御回路基板405に供給される。ここで、ロータリトランス404は、図1に示した構成例でいうと、ロータ側信号供給コイル102、ロータ側コア103、ステータ側信号供給コイル105及びステータ側コア106からなる。切り替え信号の周波数は、500〜1000kHz以外でも動作するが、光ディスクの信号周波数をさけることがより好ましく、ここでは1MHzより大きい周波数をさけた。これは、信号へのノイズの漏れこみを防止するためである。
【0049】
電流制御回路基板405には、供給された交流電力を整流し直流に変換する回路が内蔵されている。また変換された直流電流をどの記録層に供給するのかを決める切り替え回路が設けられている。ロータリトランス404から供給された信号の振幅や周波数に応じて供給すべき記録層を判断し、回路基板405に設けられた第一接触ピン406、第二接触ピン407、第三接触ピン408に電流を供給する。
【0050】
第一接触ピン406、第二接触ピン407、第三接触ピン408は、層選択型多層光ディスク409の表面に設置された第一同心円電極410、第二同心円電極411、第三同心円電極412とそれぞれ接続されている。上記制御回路405によって振幅と時間を制御された直流電流は、これらの電極を通じて第一記録層413及び第二記録層414に供給される。
【0051】
次に、第一記録層413及び第二記録層414に供給される電流の切り替えのタイミングを説明する。第一記録層413に印加される電圧をV12、第二記録層414に印加される電圧をV23とする。
【0052】
図9は、第一の切り替え方法を説明するV12及びV23の時間変化を示すグラフである。最初に時間t11においてV12を0Vから2.5Vに上昇させた。これによって第一記録層413に電圧が加わり、第一記録層413は透明状態から着色状態への変化が進行した。時間t12においてディスク全面の着色が完了した。次に、時間t13においてV12を2.5Vから−2Vに下降させた。このように着色時の電圧と逆向きに電圧を印加すると、着色状態から透明状態へ変化する時間を短縮する効果がある。時間t14においてディスク全面の消色が完了し、全てが透明状態へ戻った。着色が完了してから消色が完了するまでの時間をP1とする。
【0053】
次に、時間t21においてV23を0Vから2.5Vに上昇させた。これによって第二記録層414に電圧が加わり、第二記録層414は透明状態から着色状態への変化が進行した。時間t22においてディスク全面の着色が完了した。次に時間t23においてV23を2.5Vから−2Vに下降させた。この逆電圧は、V12のときと同様に着色状態から透明状態へ変化する時間を短縮する効果がある。時間t24においてディスク全面の消色が完了し、全てが透明状態へ戻った。着色が完了してから消色が完了するまでの時間をP2とする。
【0054】
本実施例では、第一記録層413の消色が完了した時間t14と、第二記録層414の着色が完了した時間t22との間の時間差をできるだけ少なくするように制御のタイミングを決めた。すなわちt14よりも、第二記録層414に電圧を印加する時間t21が先となるようにした。
【0055】
このようにすると、第一記録層413が着色状態となっている時間P1と、第二記録層414が着色状態となっている時間P2の間の時間が短縮できる。本実施例のようにP1の終了後、時間差なく即座にP2に移行できれば理想的である。このようなタイミングで電流を制御すれば、第一記録層413の記録再生状態から、第二記録層414記録再生状態へ移行する時間を最も短くできるので、層選択型多層光ディスク装置の高速記録再生を実現できる。
【0056】
図10は、第二の切り替え方法を説明するV12及びV23の時間変化を示すグラフである。本実施例では、第一記録層413の消色が完了する時間t14と、第二記録層414へ電圧を印加する時間t21との間の時間差をできるだけ少なくするように制御のタイミングを決めた。
【0057】
このようにするとP1とP2の間に一定の時間が発生するので、記録層の切り替え時間を短縮という面では不利となる。しかし、V12が0Vの状態となってからV23に電圧を供給するので、V12とV23の両方に同時に電圧を印加する回路を設ける必要はなくなる。このようなタイミングで電流を制御すれば、第一記録層と第二記録層に同時に電力を供給することがなくなり、回路構成を削減でき、ディスク全体への供給電力を削減できる。
【0058】
図2は、本発明の第一の実施例において媒体を固定盤に設置する際に、固定盤に力が加わった場合の情報記録装置の断面図である。ディスク1を取り付けるための力Fが下方に加わると、固定盤3や回路基板6は図のように回転軸2に対して下方にわずかに傾く。しかしフレキシブル基板9は柔軟で変形可能な構造であり、また固定盤3とハブ10の間には、回転軸2を除けば、お互いに接触することない空間が設けられている。以上の構造により、ハブ10の傾く角度は固定盤3や回路基板6の傾く角度より少なくなる。
【0059】
この結果、約30μmの間隔gで相対しているコア103と106が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがより少なくなる。以上の理由によりディスク1を取り付ける行為を繰り返しても、上記構造によりディスク1を長期間安定して回転させることができる。
【0060】
図3は、本発明の第二の実施例を示す情報記録装置の断面図である。本実施例では電流制御回路基板6に制御信号を供給するために、発光素子と受光素子を用いて信号伝送を行なう。
【0061】
ロータリトランス100は、ロータ側電力供給コイル101とロータ側コア103、そして静止しているスリーブ13側に取り付けられたステータ側電力供給コイル104とステータ側コア106、以上の部品で構成されている。電流制御回路基板6への電力供給は、図1と同様にコイル101とコイル104との間の電磁誘導により達成される。
【0062】
スリーブ13の内周側には発光素子302が取り付けられており、回路基板19に実装された発光素子の駆動回路によって、発光素子302の光の照射と停止を制御している。ハブ10の内周側には受光素子301が取り付けられており、発光素子302から照射された光を受光して、光の強度に対応した起電力発生する。受光素子301の電極はフレキシブル基板9を通じて電流制御回路基板6と接続されている。受光素子301の起電力は制御回路内部で増幅及び変換され、記録層の切替や、電流の極性、及び電流値の制御に利用される。
【0063】
本実施例では、電力の供給に電磁誘導コイルを用い、制御信号の供給に光素子を用いているので、原理的に混信することはなくなる。すなわち記録装置内部の電気ノイズや外部の電気ノイズに対して耐性の高い制御回路を実現できる。
【0064】
なお本実施例では、受光素子301が発光素子302の前面に対向した瞬間だけ起電力が発生する。このため、例えば毎分3600回転(毎秒60回転)でハブ10が回転している場合は、1/60sec=16.7msecの周期で受光素子301に起電力が発生する。電流の制御として16.7msecより細かい周期で制御する必要がなければ図3の構成で十分である。
【0065】
上記の周期より細かい周期で電流を制御する必要がある場合は、以下の構造に変更すれば良い。
(1) 複数個の受光素子301をハブ10の内周部へ設置する。
(2) 発光素子302と受光素子301を、回転軸2の中心が通る位置に設置する。例えば、
・キャップ21上の回転軸2の中心が通る位置に発光素子302を搭載し、回転軸2の底面に受光素子301を搭載する。さらに回転軸2の内部に配線を敷設しておき、この配線により受光素子301と電流制御回路基板6とを接続しておく。
・ベース20と反対側に筐体カバーを設置し、カバー内部に配線を敷設しておく。カバー表面において、回転軸2の中心が通る位置に発光素子302を搭載しておく。一方、回転軸2の上面に受光素子301を搭載し、回転軸2の内部に配線を敷設しておき、受光素子301と電流制御回路基板6とを接続する。
【0066】
このようにしておけば、発光素子と受光素子が対向する時間が増加するので、より細かい時間周期で電流制御することが可能となる。
【0067】
図4は、本発明の第三の実施例を示す情報記録装置の断面図である。本実施例では、外力Fに対して固定盤3や電流制御回路6を柔軟な構造にすることで、ハブ10の傾く角度を固定盤3や回路基板6の傾く角度より少なくすることができる。固定盤3としては、例えばディスク1の厚さより薄い有機樹脂からなる円盤を用いれば良い。また回路基板6としてはポリイミド樹脂からなるフレキシブル回路基板を用いれば良い。
【0068】
この結果、約30μmの間隔gで相対しているコア103と106が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがより少なくなる。よってディスク1を取り付ける行為を繰り返しても、上記構造によりディスク1を長期間安定して回転させることができる。
【0069】
図5は、本発明の第四の実施例を示す情報記録装置の断面図である。本実施例では、固定盤3を固定盤外周部3aと固定盤内周部3bの2つの部品で構成した。固定盤外周部3aと固定盤内周部3bをあらかじめ接着しておき、回転軸2に対して固定盤内周部3bを圧入した。
【0070】
固定盤内周部3bの一部の厚さを薄くすることで、外力Fに対して柔軟な構造にできるので、ハブ10の傾く角度を固定盤3や回路基板6の傾く角度より少なくすることができる。
【0071】
この結果、約30μmの間隔gで相対しているコア103と106が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがより少なくなる。よってディスク1を取り付ける行為を繰り返しても、上記構造によりディスク1を長期間安定して回転させることができる。
【0072】
図6は、本発明の第五の実施例を示す情報記録装置の断面図である。本実施例では、回転側のハブ10と静止側のスリーブ13を回転軸2に平行な面で対向させ、その対向面にコア103とコア106を設置した。このようにしておけば、力Fにより固定盤3や回路基板6が傾いても、コア103とコア106はその対向面に対してほぼ平行にずれるので、両者の間隔gの変化が小さくなる。この結果、コア103と106が接触したり、お互いに噛み込みを起こしたりすることがより少なくなる。よってディスク1を取り付ける行為を繰り返しても、上記構造によりディスク1を長期間安定して回転させることができる。
【0073】
また、以上に述べた実施例は層選択型多層光ディスクに限定されるものではなく、媒体に電力を供給する必要がある記憶装置一般に適用可能である。例えば磁気ディスク駆動装置、光磁気ディスク駆動装置、電界アシストによる磁気ディスク駆動装置又は光ディスク駆動装置などへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第一実施例を示す情報記録装置の断面図である。
【図2】本発明の第一の実施例において固定盤に力が加わった場合の情報記録装置の断面図である。
【図3】本発明の第二の実施例を示す情報記録装置の断面図である
【図4】本発明の第三の実施例を示す情報記録装置の断面図である。
【図5】本発明の第四の実施例を示す情報記録装置の断面図である。
【図6】本発明の第五の実施例を示す情報記録装置の断面図である。
【図7】本実施例による情報記録再生の動作を説明する図である。
【図8】本発明おける記録層の切り替えに必要な電気回路のブロック図を示す。
【図9】第一の切り替え方法を説明するV12及びV23の時間変化を示すグラフである。
【図10】第二の切り替え方法を説明するV12及びV23の時間変化を示すグラフである。
【図11】本発明の情報記録媒体の断面図である。
【図12】本発明の情報記録媒体の電極部の拡大図である。
【符号の説明】
【0075】
1…ディスク、2…回転軸、3…固定盤、3a…固定盤外周部、3b…固定盤内周部、4…接触ピン、5…ディスク押さえ、6…電流制御回路基板、7…IC、8…受動部品、9…フレキシブル基板、10…ハブ、11…ロータ磁石、12…配線、13…スリーブ、14…モータステータ固定リング、15…軸受け、16…動圧発生流体、17…モータ巻線、18…モータステータコア、19…回路基板、20…ベース、21…キャップ、100…ロータリトランス、101…ロータ側電力供給コイル、102…ロータ側信号供給コイル、103…ロータ側コア、104…ステータ側電力供給コイル、105…ステータ側信号供給コイル、106…ステータ側コア、201…光ディスク、202…モータ、203…光ヘッド、204…プリアンプ、206…記録波形発生回路、208…変調器、209…サーボ回路、210…復調器、301…受光素子、302…発光素子、401…交流電源回路、402…切り替え信号発生回路、403…電力供給用ロータリトランス、404…信号供給用ロータリトランス、405…電流制御回路基板、406…第一接触ピン1、407…第二接触ピン、408…第三接触ピン3、409…層選択型多層光ディスク、410…第一同心円電極、411…第二同心円電極、412…第三同心円電極、413…第一記録層、414…第二記録層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層を有する媒体と、
前記複数の記録層に供給する電流を制御して記録層の選択を行なう電流制御回路と、
電源からの電力を前記媒体側に非接触で供給するための電磁誘導手段と
を有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報記録装置において、前記媒体を保持する回転体と、前記回転体を回転可能に支持する非回転体とを有し、前記電力を供給するための電磁誘導手段は、前記回転体と前記非回転体のそれぞれに設置した一対のコイルと磁性体を備えることを特徴とする情報記録装置。
【請求項3】
請求項2記載の情報記録装置において、前記回転体と前記非回転体のそれぞれに設置した一対のコイルと磁性体は、前記回転体の回転軸に垂直な面を挟んで対向していることを特徴とする情報記録装置。
【請求項4】
請求項2記載の情報記録装置において、前記回転体と前記非回転体のそれぞれに設置した一対のコイルと磁性体は、前記回転体の回転軸の方向に延在する回転面を挟んで対向していることを特徴とする情報記録装置。
【請求項5】
請求項2記載の情報記録装置において、前記電流制御回路は前記回転体に設けられていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項6】
請求項5記載の情報記録装置において、前記非回転体側から前記回転体に設けられた前記電流制御回路に非接触で制御信号を供給するための電磁誘導手段を有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項7】
請求項6記載の情報記録装置において、前記制御信号を供給するための電磁誘導手段は、前記回転体と前記非回転体のそれぞれに設置した一対のコイルと磁性体とを有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項8】
請求項5記載の情報記録装置において、前記非回転体側から前記回転体に設けられた前記電流制御回路に非接触で制御信号を供給するための手段として、前記非回転体に設けられた発光手段と前記回転体に設けられた受光手段とを有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項9】
請求項5記載の情報記録装置において、前記回転体は、前記媒体を固定する固定盤と、前記電磁誘導手段を保持するハブを有し、前記固定盤に前記電流制御回路が設けられ、フレキシブル基板によって前記電流制御回路と前記電磁誘導手段が電気的に接続されていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項10】
請求項9記載の情報記録装置において、前記媒体を前記固定盤に固定する際に前記ハブに設置した前記電磁誘導手段が前記非回転体と接触しないように、前記固定盤と前記ハブとの間に空間が設けられていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項11】
請求項9記載の情報記録装置において、前記媒体を前記固定盤に固定する際に前記ハブに設置した前記電磁誘導手段が前記非回転体と接触しないように、前記固定盤及び前記電流制御回路を柔軟な構造としたことを特徴とする情報記録装置。
【請求項12】
請求項9記載の情報記録装置において、前記媒体を前記固定盤に固定する際に前記ハブに設置した前記電磁誘導手段が前記非回転体と接触しないように、前記固定盤の前記回転体の回転軸との接続部を柔軟な構造としたことを特徴とする情報記録装置。
【請求項13】
請求項9記載の情報記録装置において、前記媒体を前記固定盤に固定する際に前記ハブに設置した前記電磁誘導手段が前記非回転体と接触しないように、前記回転体と前記非回転体を前記回転体の回転軸に平行な面で対向させ、前記対向面に前記電磁誘導手段を設けたことを特徴とする情報記録装置。
【請求項1】
複数の記録層を有する媒体と、
前記複数の記録層に供給する電流を制御して記録層の選択を行なう電流制御回路と、
電源からの電力を前記媒体側に非接触で供給するための電磁誘導手段と
を有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報記録装置において、前記媒体を保持する回転体と、前記回転体を回転可能に支持する非回転体とを有し、前記電力を供給するための電磁誘導手段は、前記回転体と前記非回転体のそれぞれに設置した一対のコイルと磁性体を備えることを特徴とする情報記録装置。
【請求項3】
請求項2記載の情報記録装置において、前記回転体と前記非回転体のそれぞれに設置した一対のコイルと磁性体は、前記回転体の回転軸に垂直な面を挟んで対向していることを特徴とする情報記録装置。
【請求項4】
請求項2記載の情報記録装置において、前記回転体と前記非回転体のそれぞれに設置した一対のコイルと磁性体は、前記回転体の回転軸の方向に延在する回転面を挟んで対向していることを特徴とする情報記録装置。
【請求項5】
請求項2記載の情報記録装置において、前記電流制御回路は前記回転体に設けられていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項6】
請求項5記載の情報記録装置において、前記非回転体側から前記回転体に設けられた前記電流制御回路に非接触で制御信号を供給するための電磁誘導手段を有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項7】
請求項6記載の情報記録装置において、前記制御信号を供給するための電磁誘導手段は、前記回転体と前記非回転体のそれぞれに設置した一対のコイルと磁性体とを有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項8】
請求項5記載の情報記録装置において、前記非回転体側から前記回転体に設けられた前記電流制御回路に非接触で制御信号を供給するための手段として、前記非回転体に設けられた発光手段と前記回転体に設けられた受光手段とを有することを特徴とする情報記録装置。
【請求項9】
請求項5記載の情報記録装置において、前記回転体は、前記媒体を固定する固定盤と、前記電磁誘導手段を保持するハブを有し、前記固定盤に前記電流制御回路が設けられ、フレキシブル基板によって前記電流制御回路と前記電磁誘導手段が電気的に接続されていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項10】
請求項9記載の情報記録装置において、前記媒体を前記固定盤に固定する際に前記ハブに設置した前記電磁誘導手段が前記非回転体と接触しないように、前記固定盤と前記ハブとの間に空間が設けられていることを特徴とする情報記録装置。
【請求項11】
請求項9記載の情報記録装置において、前記媒体を前記固定盤に固定する際に前記ハブに設置した前記電磁誘導手段が前記非回転体と接触しないように、前記固定盤及び前記電流制御回路を柔軟な構造としたことを特徴とする情報記録装置。
【請求項12】
請求項9記載の情報記録装置において、前記媒体を前記固定盤に固定する際に前記ハブに設置した前記電磁誘導手段が前記非回転体と接触しないように、前記固定盤の前記回転体の回転軸との接続部を柔軟な構造としたことを特徴とする情報記録装置。
【請求項13】
請求項9記載の情報記録装置において、前記媒体を前記固定盤に固定する際に前記ハブに設置した前記電磁誘導手段が前記非回転体と接触しないように、前記回転体と前記非回転体を前記回転体の回転軸に平行な面で対向させ、前記対向面に前記電磁誘導手段を設けたことを特徴とする情報記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−149225(P2007−149225A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342490(P2005−342490)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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