説明

情報認識システム、情報認識装置、及び情報認識プログラム

【課題】複数の情報入力がなされたものと誤認識してしまうことを防止する情報認識システム、情報認識装置、情報認識プログラムを提供する。
【解決手段】検出装置2に取り付けられたセンサ21が、指の加速度信号を検出し、情報認識装置に対して送信する。情報認識装置では、受信した信号のデータを受信し、記憶する。記憶したデータのうち所定時点101から第一時間Aの間に検出されたデータを解析対象データとして抽出し、パターンデータ97と比較する。比較の結果、指の動きを特定できなかった場合、所定時点101から第二時間B経過後の時点を新たな所定時点102として、解析対象データを抽出する。指の動きを特定できた場合、所定時点103から第一時間Aよりも短い第三時間C経過後の時点を新たな所定時点104として、解析対象データを抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報認識システム、情報認識装置、及び情報認識プログラムに関する。より詳細には、手に取り付けられたセンサの情報に基づいて、入力情報を認識する情報認識システム、情報認識装置、及び情報認識プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キーボードの代わりに情報の入力を行うことが可能な情報認識装置が開発されている。例えば特許文献1では、手の仕草で情報入力を行うことが可能な情報認識装置が提案されている。この装置では、ユーザの指に取り付けられたセンサからの信号が、所定の周期でスキャンされる。所定時間内にスキャンされた信号のデータ(スキャンデータ)が取得されて解析され、指の動きが認識される。その結果、認識された指の動きに対応する情報が入力されたと判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−503350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の装置では、スキャンデータは所定の周期で繰り返し取得されるので、スキャンデータの取得タイミングによっては、同一の情報入力を示す一連の指の動きが、前後する取得タイミングで取得されたスキャンデータにも含まれることがある。したがって、一連の指の動きが複数回解析され、情報入力が複数回なされたものと誤認識されてしまう可能性があるという問題点がある。
【0005】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、複数の情報入力がなされたものと誤認識してしまうことを防止する情報認識システム、情報認識装置、及び情報認識プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題点を解決するために、請求項1に係る発明の情報認識システムは、センサと送信手段とを少なくとも備えた検出装置と、前記検出装置において検出された信号に基づいて、入力情報を認識する情報認識装置とを備えた情報認識システムであって、前記検出装置は、ユーザの手に取り付けられるセンサと、前記センサにおいて検出される信号であって、前記手の動きを示す信号を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記信号のデータである検出データを、前記情報認識装置に対して送信する送信手段とを備え、前記情報認識装置は、前記検出装置から送信された前記検出データであって、一連の前記手の動きを示す検出データを受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された前記検出データを記憶する第一記憶手段と、前記第一記憶手段に記憶された前記検出データのうち、所定時点から第一時間内に検出された前記検出データである解析対象データを抽出する抽出手段と、前記手が所定動作を行った場合に前記センサにおいて検出される前記信号のデータであるパターンデータを、前記所定動作を示す動作情報に対応付けて記憶する第二記憶手段と、前記抽出手段によって抽出された前記解析対象データと、前記第二記憶手段に記憶されている前記パターンデータとの比較結果に基づいて、前記抽出手段によって抽出された前記解析対象データが前記パターンデータに該当するかを判断する判断手段と、前記判断手段によって前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合に、該当するとされた前記パターンデータに対応付けられている前記動作情報を選択して出力する出力手段とを備え、前記抽出手段が、前記所定時点から所定時間経過後の時点を新たな所定時点として、繰り返し前記解析対象データを抽出する場合において、前記判断手段によって前記解析対象データが前記パターンデータに該当しないと判断された場合には、前記所定時点から第二時間経過後の時点を新たな前記所定時点とし、前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合には、前記所定時点から前記第二時間より長い前記第三時間経過後の時点を新たな前記所定時点とすることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明の情報認識システムは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記検出装置が、複数の前記センサを備えている場合において、前記第三時間は、前記複数のセンサ毎に設定され、前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合には、前記解析対象データの基となる前記検出データが検出された前記センサに対して設定されている前記第三時間経過後の時点を新たな前記所定時点とすることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明の情報認識システムは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、前記情報認識装置は、前記判断手段において前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断されてから、次に前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断されるまでの間の時間を特定する時間特定手段と、前記時間特定手段において特定された前記時間以下となるように前記第三時間を設定する時間設定手段とを備えている。
【0009】
また、請求項4に係る発明の情報認識システムは、請求項3に記載の発明の構成に加えて、前記時間設定手段は、前記時間特定手段において、複数の前記解析データに基づいて前記時間が複数特定された場合には、特定された前記時間のうち最も短い時間を前記第三時間として設定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明の情報認識システムは、請求項1から4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記第三時間は、前記第一時間よりも短いことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る発明の情報認識システムは、請求項3に記載の発明の構成に加えて、前記情報認識装置は、前記時間特定手段において特定される前記時間を、前記ユーザを特定する情報であるユーザ特定情報に対応付けて記憶する第三記憶手段と、前記ユーザ特定情報が入力される入力手段とを備え、前記時間設定手段は、前記第三記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記入力手段において入力された前記ユーザ特定情報に対応する前記時間を選択し、選択された前記時間を前記第三時間として設定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る発明の情報認識システムは、請求項1から6のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記検出装置が、複数の前記センサを備えている場合において前記抽出手段は、前記複数のセンサにおいて検出される信号に基づいた複数の前記検出データから、複数の前記解析対象データを抽出し、前記判断手段は、前記手が所定動作を行った場合に前記複数のセンサにおいて検出される信号のデータである複数の前記パターンデータと、前記複数の解析対象データとの比較結果に基づいて、前記複数の解析対象データが前記複数のパターンデータに該当するかを判断することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る発明の情報認識装置は、ユーザの手に取り付けられたセンサにおいて検出される信号であって、前記手の動きを示す信号のデータである検出データを受信し、受信した前記検出データに基づいて、入力情報を認識する情報認識装置であって、前記検出装置から送信された前記検出データであって、一連の前記手の動きを示す検出データを受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された前記検出データを記憶する第一記憶手段と、前記第一記憶手段に記憶された前記検出データのうち、所定時点から第一時間内に検出された前記検出データである解析対象データを抽出する抽出手段と、前記手が所定動作を行った場合に前記センサにおいて検出される前記信号のデータであるパターンデータを、前記所定動作を示す動作情報に対応付けて記憶する第二記憶手段と、前記抽出手段によって抽出された前記解析対象データと、前記第二記憶手段に記憶されている前記パターンデータとの比較結果に基づいて、前記抽出手段によって抽出された前記解析対象データが前記パターンデータに該当するかを判断する判断手段と、前記判断手段によって前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合に、該当するとされた前記パターンデータに対応付けられている前記動作情報を選択して出力する出力手段とを備え、前記抽出手段が、前記所定時点から所定時間経過後の時点を新たな所定時点として、繰り返し前記解析対象データを抽出する場合において、前記判断手段によって前記解析対象データが前記パターンデータに該当しないと判断された場合には、前記所定時点から第二時間経過後の時点を新たな前記所定時点とし、前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合には、前記所定時点から前記第二時間より長い前記第三時間経過後の時点を新たな前記所定時点とすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に係る発明の情報認識プログラムは、請求項8に記載の情報認識装置の各処理手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の情報認識システムでは、情報認識装置において、第一記憶手段に記憶されている検出データのうち所定時点から第一時間内の検出データが、解析対象データとして抽出される。抽出された解析対象データと、第二記憶手段に記憶されているパターンデータとが比較される。解析対象データがパターンデータに該当しないと判断された場合、所定時点から第二時間経過した時点を新たな所定時点として解析対象データが抽出される。一方、解析対象データがパターンデータに該当すると判断された場合には、所定時点から第三時間経過した時点を新たな所定時点として解析対象データが抽出される。第二時間と比較して第三時間が長いので、同一の情報入力を示す一連の指の動きから、解析対象データが複数抽出されてしまうことがない。このため、一連の指の動きが複数回解析されてしまうことを防止できる。情報入力が複数回なされたものと誤認識されてしまうことを防止できる。
【0016】
また、請求項2に係る発明の情報認識システムでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、検出装置がセンサを複数備えている場合に、センサ毎に第三時間が設定される。これによって、センサが取り付けられた部分毎に最適な第三時間を設定することができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明の情報認識システムでは、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、手の動作が短い時間内に連続して行われた場合であっても、其々の動作が検出されない誤動作を防止できる。
【0018】
また、請求項4に係る発明の情報認識システムでは、請求項3に記載の発明の効果に加えて、手の動作が短い期間内に連続して行われた場合に、其々の動作が検出されない誤動作をより確実に防止できる。
【0019】
また、請求項5に係る発明の情報認識システムでは、請求項1から4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、第三時間は第一時間よりも短いので、第一記憶手段に記憶されている検出データの全てを解析対象データとして抽出し、パターンデータと比較することができる。
【0020】
また、請求項6に係る発明の情報認識システムでは、請求項3に記載の発明の効果に加えて、ユーザ毎に最適な第三時間を設定することができる。これによって、動作が短い時間内に連続して行われた場合であっても、動作が検出されない誤動作を確実に防止できる。
【0021】
また、請求項7に係る発明の情報認識システムでは、請求項1から6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、判断手段による判断の精度を高めることができる。
【0022】
また、請求項8に係る発明の情報認識装置では、第一記憶手段に記憶されている検出データのうち所定時点から第一時間内の検出データが、解析対象データとして抽出される。抽出された解析対象データと、第二記憶手段に記憶されているパターンデータとが比較される。解析対象データがパターンデータに該当しないと判断された場合、所定時点から第二時間経過した時点を新たな所定時点として解析対象データが抽出される。一方、解析対象データがパターンデータに該当すると判断された場合には、所定時点から第三時間経過した時点を新たな所定時点として解析対象データが抽出される。第二時間と比較して第三時間が長いので、同一の情報入力を示す一連の指の動きから、解析対象データが複数抽出されてしまうことがない。このため、一連の指の動きが複数回解析されてしまうことを防止できる。情報入力が複数回なされたものと誤認識されてしまうことを防止できる。
【0023】
また、請求項9に係る発明の情報認識プログラムでは、請求項8に記載の情報認識装置の各処理手段としてコンピュータを機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】情報認識システム1の概要を示す模式図である。
【図2】打鍵動作が認識される場合の処理の概要を示す模式図である。
【図3】「J」打鍵時にセンサ21において検出される加速度信号の一例である。
【図4】「M」打鍵時にセンサ21において検出される加速度信号の一例である。
【図5】検出装置2の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】情報認識装置3の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】時間テーブル3821を示す模式図である。
【図8】パターンデータ3831を示す模式図である。
【図9】動作認識処理を示すフローチャートである。
【図10】時間計測処理を示すフローチャートである。
【図11】動作認識サブ処理を示すフローチャートである。
【図12】検出データ受信処理を示すフローチャートである。
【図13】検出データ送信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態における情報認識システム1及び情報認識装置3について、図面を参照して説明する。なおこれらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0026】
はじめに、図1を参照し、情報認識システム1の概要について説明する。情報認識システム1は、検出装置2と情報認識装置3とを少なくとも備えている。検出装置2は、手袋の形状を有しており、ユーザの手に装着される。図1では、右手用の検出装置2と左手用の検出装置2とが準備されている。ユーザが何らかの手の動作を実行した場合に、検出装置2において手の動きを示す信号が検出される。検出された信号のデータが、情報認識装置3に対して送信される。情報認識装置3においてデータが解析され、手の動きが特定される。
【0027】
例えば、ユーザがキーボードのうち特定のキーを打鍵する動作を行った場合、検出装置2において打鍵動作を示す信号が検出され、データが情報認識装置3に送信される。情報認識装置3においてデータが解析される。解析の結果、打鍵動作によって選択されたキーの種別が特定される。選択されたキーの種別が手の動きから特定可能となるので、ユーザはキーボードを用いることなく情報を入力することが可能となる。なお以下では、情報認識システム1において、ユーザの打鍵動作からキーの種別が特定される場合を例示して説明する。しかしながら本発明はこれに限定されず、例えば情報認識システム1は、他の手の動き(手話動作など)から入力情報を特定してもよい。
【0028】
検出装置2及び情報認識装置3について詳説する。はじめに、検出装置2の詳細について説明する。検出装置2は、手袋形状を有する手袋部13を備えている。手袋部13のうちそれぞれの指先部分に、手の動きを検出する加速度センサ(以下、「センサ21」という。)が取り付けられている。なおセンサ21としては、加速度センサの他に例えばジャイロセンサなどが使用可能である。検出装置2は、手袋部13の手首部分に制御部12を備えている。センサ21と制御部12とはハーネス14によって接続されている。センサ21において検出された信号は、ハーネス14を介して制御部12に伝送される。制御部12は、図示外のアンテナ28(図5参照)を備えている。制御部12は、センサ21によって検出された信号を受け、データ化して情報認識装置3に対して無線送信する(データ化された信号を「検出データ」という。)。制御部12は、LEDで構成された表示部29を備えている。表示部29は、検出装置2の状態等をユーザに通知する為に設けられている。なお表示部29としては、LEDの他に例えばLCDなどが使用可能である。
【0029】
次に、情報認識装置3の詳細について説明する。情報認識装置3は、図示外のアンテナ35及びアンテナ37(図6参照)を備えている。情報認識装置3は、検出装置2の制御部12から無線送信された検出データを、アンテナ35を介して受信する。受信された検出データが解析され、打鍵動作によって選択されたキー種別が特定される。特定されたキー種別の情報は、アンテナ37を介して他の機器(PCなど)に無線送信される。
【0030】
情報認識装置3は、LEDで構成された表示部39を備えている。表示部39は、情報認識装置3の状態等をユーザに通知するために設けられている。なお表示部39としては、LEDの他に例えばLCDなどが使用可能である。情報認識装置3は、入力部40を備えている。入力部40は、情報認識装置3の動作モード(通常モード、設定モード、詳細後述)を切り替える場合や、ユーザを特定する情報(詳細後述)を入力するために設けられている。入力部40としては、例えばタッチパネルやボタン等が使用される。
【0031】
なお、図1に示す情報認識システム1では、右手用の検出装置2と左手用の検出装置2とが準備されている。しかしながら本発明はこの構成に限定されない。情報認識システム1は、片方の手に装着される検出装置2のみ備えた構成であってもよい。センサ21は、手袋部13のうち指先部分に取り付けられていたが、本発明はこの構成に限定されず、他の部位(指の関節部分、掌、手の甲など)に取り付けられていてもよい。センサ21と制御部12との間の通信は、ハーネス14を介した有線通信に限定されず、無線通信であってもよい。検出装置2と情報認識装置3との間の通信、情報認識装置3と他の機器(PCなど)との間の通信は無線通信に限定されず、有線通信であってもよい。情報認識システム1は、情報認識装置3が手袋部13に取り付けられた構成であってもよい。
【0032】
情報認識システム1において、打鍵動作からキー種別が特定される迄の概要について、図2を参照して説明する。なお本実施の形態では、右手用の検出装置2のセンサ21において検出された信号と、左手用の検出装置2のセンサ21において検出された信号とは、それぞれ別々に情報認識装置3にて解析され、選択されたキーの種別が特定される。従って以下においては、右手用の検出装置2のセンサ21において検出された信号が情報認識装置3において解析される場合について説明し、左手用の検出装置2において検出された信号が解析される場合については説明を省略する。
【0033】
検出装置2のセンサ21は、3軸(x軸、y軸、z軸)の其々の方向の加速度信号(G)を常時出力している。加速度信号(G)は、制御部12に内蔵されるCPU23(図5参照)によって所定周期(5ms)で検出され、データ化されて検出データとされる。情報認識装置3において検出装置2から送信された検出データが受信される。検出データは、手袋部13(図1参照)の各指に取り付けられたセンサ21毎に、検出データ記憶領域385(図6参照)に記憶される。図中の点90は、人さし指に取り付けられたセンサ21からの加速度信号(G)のうちz軸成分の信号に基づく検出データを示している。図面左右方向は時間軸(t)を示しており、図面上下方向はz軸方向の加速度(G(z))を示している。
【0034】
一方、各キーの打鍵動作を示す加速度信号(G)のデータ(以下「パターンデータ」という。)が、センサ21毎に、キー種別の情報に対応付けられて予め情報認識装置3のパターンデータ記憶領域383(図6参照)に記憶される。図中の97は、パターンデータの一例(「J」が選択された場合に、人さし指に取り付けられたセンサ21の加速度信号(G)のz軸成分のパターンデータ98等)を示している。情報認識装置3において、検出データ記憶領域385(図6参照)に記憶された検出データとパターンデータとが比較され、選択されたキー種別の特定が試みられる。
【0035】
具体的には次のようにしてキー種別の特定が試みられる。検出データ記憶領域385に記憶された検出データのうち、所定時点101から第一時間Aの間に検出された検出データが抽出される(抽出された検出データを「解析対象データ」という。)。第一時間Aは500msに設定される。抽出された解析対象データとパターンデータとが比較される。解析対象データに該当するパターンデータがパターンデータ記憶領域383に記憶されておらず、キー種別が特定できない場合、打鍵動作が行われていないと判断される。この場合、所定時点101から第二時間B経過後の時点が新たな所定時点102とされる。第二時間Bは5msに設定される。そして新たな所定時点102から第一時間Aの間に検出された検出データが解析対象データとして抽出され、繰り返しキー種別の特定が試みられる。このように、所定時点を第二時間Bずつ移動させながら第一時間Aの間の検出データが解析対象データとして順次抽出される。
【0036】
ここで、ユーザが「J」のキーを打鍵する動作を行ったとする(図中矢印91)。加速度信号(G)の経時変化の軌跡は、図中93に示すように、「J」の打鍵動作によって特有のパターンを描く。
【0037】
所定時点が第二時間Bずつ順次更新されながら、繰り返し解析対象データが抽出され、キー種別の特定が試みられる。このような中、所定時点103を所定時点とし、解析対象データ94が抽出されたとする。そして、抽出された解析対象データ94がパターンデータ97に該当すると判断されたとする。この場合、ユーザがキー「J」の打鍵動作を行ったものと判断される。判断結果は他の機器(PCなど)に送信される。
【0038】
なお通常、打鍵瞬間の加速度信号(G)の経時変化の軌跡は、打鍵動作がゆっくり行われた場合と速く行われた場合とで変化しない。打鍵瞬間の解析対象データが得られれば、打鍵瞬間のパターンデータと比較することによってキー種別を特定することができる。従って本実施の形態のように、打鍵速度の変化に応じて第一時間Aを変更する必要はない。
【0039】
解析対象データ94の解析によって、ユーザの打鍵動作からキー種別「J」が特定された場合、所定時点103から第三時間C経過後の時点が新たな所定時点104とされる。第三時間Cとしては、ユーザ毎に異なる時間が設定される(詳細は後述する。)。そして新たな所定時点104から第一時間Aの間に検出された検出データが、解析対象データとして抽出され、キー種別の特定が繰り返し試みられる。解析対象データに該当するパターンデータが該当せず、キー種別が特定できない場合、所定時点104から第二時間B経過後の時点が新たな所定時点105とされ、繰り返し解析対象データが抽出される。
【0040】
ここで本実施の形態では、第二時間B(5ms)と比較して第三時間Cが長くなるように、其々の時間が設定される。このようにして、キー種別が特定された後、次いで抽出される解析対象データに、キー種別特定の基となった解析対象データ94のうち打鍵動作を顕著に示す部分(例えば、加速度信号(G)の振幅変化が大きい部分)が含まれないようにしている。これによって、同一の情報入力を示す一連の指の動きから、解析対象データが複数抽出されてしまうことを防止している。一連の指の動きが複数回解析されてしまって、情報入力が複数回なされたものと誤認識されてしまうことを防止している。
【0041】
また本実施の形態では、第一時間A(500ms)と比較して第三時間Cが短くなるように、第三時間Cが設定される。このようにして、図2に示すように、所定時点103から第一時間内の検出データ(解析対象データ)の中に、必ず所定時点104での検出データが含まれるようにしている。これによって、検出データ記憶領域385(図6参照)に記憶された検出データの全てが解析対象データとされ解析対象とされるので、解析されない検出データの存在によって打鍵動作が特定されない不具合を防止している。
【0042】
「J」の打鍵動作後、続いて「M」を打鍵する動作をユーザが行ったとする(図中矢印92)。加速度信号(G)の経時変化の軌跡は、図中95に示すように、「M」の打鍵動作によって特有のパターンを描く。
【0043】
ここで本実施の形態では、ユーザが連続して打鍵動作を行うことが可能な時間と第三時間Cとが同一となるように、第三時間Cが設定される。これによって図2に示すように、所定時点103から第三時間C経過後の時点(所定時点104)は、「M」の打鍵動作(図中92)よりも必ず前の時点となる。以後、繰り返し解析データが抽出される中で、所定時点106から第一時間Aの間に検出された検出データが解析対象データ96として抽出され、キー種別「M」が特定される。「M」の打鍵動作に基づく解析対象データ96は抜けなく確実に抽出され、解析される。このように、同一の指を使って2回連続して打鍵動作が行われた場合、1回目の打鍵動作に対してキー種別が特定された後、続いて順次抽出される解析対象データに基づいて、2回目の打鍵動作に対するキー種別を確実に特定することができる。連続して打鍵動作が行われた場合であっても、其々の打鍵動作に基づく検出データを確実に解析対象データとして抽出し、キー種別を特定することができる。
【0044】
本実施の形態では、上述のように、加速度信号をセンサ毎に解析し、打鍵動作からキー種別を特定している。上述の説明では、右手人さし指の位置に取り付けられたセンサ21から検出された加速度信号に基づいて、キー種別が特定される場合を例示している。上述の処理が、各指の位置に取り付けられたセンサ21毎に実行されることになる。
【0045】
なお上述では、ユーザが連続して打鍵動作を行うことが可能な時間と第三時間Cとが同一となるように第三時間Cが設定されていたが、本発明はこれに限定されない。第三時間Cは連続打鍵動作可能な時間以下であれはよく、同一でなくともよい。
【0046】
また図2では、説明のため、解析対象データとパターンデータとのz軸成分同士のみを比較する例を挙げて説明した。しかしながら実際には、3軸(x軸、y軸、z軸)のデータ全てが比較され、解析対象データがパターンデータに該当するかが判断される。
【0047】
また図2では、人さし指に取り付けられたセンサ21から検出された加速度信号(G)のみに基づいて、キー種別を特定していた。しかしながら本発明はこの方法に限定されない。複数のセンサ21から検出される加速度信号(G)を総合的に解析することによって、キー種別を特定してもよい。
【0048】
[J]及び[M]の打鍵時において、両手(右手及び左手)の全ての指(小指、薬指、中指、人さし指、親指)の位置に取り付けられたすべてのセンサ21から検出される加速度信号(G)の測定結果について、図3及び図4に示す。図3及び図4に示すように、唯一のキー(「J」(図3参照)や「M」(図4参照)など)が打鍵された場合であっても、打鍵に使用された指(右手人さし指)以外の指の位置に取り付けられたセンサ21では、打鍵に基づく加速度信号(G)の変化が観測される。解析時においては、複数のセンサ21から検出された信号に基づく複数の解析対象データと、複数のパターンデータとが比較されてもよい。これによって、一のセンサ21基づいた解析対象データのみを用いた場合と比較して、認識精度を大きく向上させることができる。
【0049】
検出装置2の電気的構成について、図5を参照して説明する。検出装置2は、センサ21から出力される加速度信号(G)の検出処理や、検出データの送信処理を司るCPU23を備えている。検出装置2は、CPU23が駆動する場合に必要なプログラム、初期設定情報、及びパラメータが少なくとも記憶されるROM24を備えている。検出装置2は、タイマやカウンタ等が記憶されるRAM25を備えている。CPU23がROM24及びRAM25の記憶領域にアクセスすることが可能なように、CPU23とROM24、RAM25とはバス30を介して接続している。
【0050】
検出装置2は、既述のセンサ21と、センサ21から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ26とを備えている。CPU23がセンサ21からの出力信号を検出することができるように、センサ21とA/Dコンバータ26とが接続している。A/Dコンバータ26とCPU23とが接続している。
【0051】
検出装置2は、変調制御を司るRFモジュール27と、無線の送受信が行われるアンテナ28とを備えている。アンテナ28を介して情報認識装置3と無線通信を行うことが可能なように、CPU23とRFモジュール27とが接続している。RFモジュール27とアンテナ28とが接続している。
【0052】
検出装置2は、検出装置2の状態等をユーザに対して通知することが可能な表示部29を備えている。CPU23が所望の情報を表示部29に表示させることが可能なように、CPU23と表示部29とが接続している。
【0053】
情報認識装置3の電気的構成について、図6を参照して説明する。情報認識装置3は、解析対象データの解析制御や検出データの通信制御を司るCPU31を備えている。情報認識装置3は、初期設定情報やパラメータ情報等が記憶されるROM32を備えている。情報認識装置3は、タイマやカウンタ等が記憶されるRAM33を備えている。情報認識装置3は、後述する変数やテーブルが記憶されるフラッシュメモリ38を備えている。CPU31が、ROM32、RAM33、及びフラッシュメモリ38の記憶領域にアクセスすることが可能なように、CPU31とROM32、RAM33、及びフラッシュメモリ38とはバス41を介して接続している。
【0054】
情報認識装置3は、変復調制御を司るRFモジュール34と、検出装置2との間で無線の送受信が行われるアンテナ35とを備えている。アンテナ35を介して検出装置2と無線通信を行うことが可能なように、CPU31とRFモジュール34とが接続し、RFモジュール34とアンテナ35とが接続している。情報認識装置3は、変復調制御を司るRFモジュール36と、他の機器(PCなど)との間で無線の送受信が行われるアンテナ37とを備えている。アンテナ37を介して検出装置2と無線通信を行うことが可能なように、CPU31とRFモジュール36とが接続し、RFモジュール36とアンテナ37とが接続している。
【0055】
情報認識装置3は、情報認識装置3の状態等をユーザに対して通知することが可能な表示部39を備えている。CPU31が所望の情報を表示部39に表示させることが可能なように、CPU31と表示部39とが接続している。情報認識装置3は、ユーザが入力操作可能な入力部40を備えている。CPU31が入力内容を認識できるように、CPU31と入力部40とが接続している。
【0056】
フラッシュメモリ38に設けられる記憶領域について説明する。フラッシュメモリ38は、時間情報記憶領域381、時間テーブル記憶領域382、パターンデータ記憶領域383、プログラム記憶領域384、検出データ記憶領域385、及びその他の情報記憶領域386を少なくとも備えている。
【0057】
時間情報記憶領域381には、第一時間及び第二時間(図2参照)が少なくとも記憶される。具体的には、第一時間として500msが記憶され、第二時間として5msが記憶されている。時間テーブル記憶領域382には、第三時間(図2参照)として設定する時間を管理する時間テーブル(図7参照)が記憶される。パターンデータ記憶領域383には、パターンデータ(図2参照)を管理するパターンデータテーブル(図8参照)が記憶される。プログラム記憶領域384には、CPU31が駆動する場合に必要なプログラムが記憶される。検出データ記憶領域385には、検出装置2から受信した検出データが記憶される。その他の情報記憶領域386には、上述した情報以外の情報が記憶される。
【0058】
フラッシュメモリ38の時間テーブル記憶領域382に記憶される時間テーブルの一例(時間テーブル3821)について、図7を参照して説明する。時間テーブル3821には、ユーザを特定するための情報であるユーザ特定情報と、第三時間として設定する時間とが対応付けて記憶される。これらの時間は、第二時間(5ms)と比較して長くなるように調整される(詳細は後述する)。図7に示す例では、ユーザ特定情報として「A」「B」「C」が記憶されている。ユーザ特定情報としては、例えばユーザ各人を特定するための情報(氏名など)であってもよいし、ユーザが含まれるカテゴリ(大人/子供、男性/女性など)を特定するための情報であってもよい。其々のユーザ特定情報に対応する時間として「110ms」「90ms」「150ms」が記憶されている。これらの時間は、後述する時間計測処理において、時間テーブル記憶領域382に記憶される。詳細は後述する。
【0059】
フラッシュメモリ38のパターンデータ記憶領域383に記憶されるパターンデータの一例(パターンデータ3831)について、図8を参照して説明する。パターンデータ3831には、打鍵動作が行われた場合の手の動きを示す加速度信号(G)に基づくデータ(x軸方向、y軸方向、z軸方向)が、キー種別に対応付けてセンサ21毎(親指、人さし指・・・)に記憶されている。パターンデータとして、打鍵動作が行われた場合にセンサ21から検出される加速度信号(G)のデータが100ms周期で合計5つずつ、500ms分記憶されている。図8に示す例では、キー種別「Q」「W」「E」に対応するパターンデータが、センサ21毎(親指、人さし指・・・)毎に、x軸方向、y軸方向、z軸方向についてそれぞれ記憶されている。
【0060】
情報認識装置3のCPU31において実行される各種処理(動作認識処理、時間計測処理、検出データ受信処理)について、図9〜図12を参照して説明する。動作認識処理は、通常モードで動作する指示が入力部40を介してユーザによってなされた場合に、CPU31によって起動され実行される。時間計測処理は、設定モードで動作する指示が入力部40を介してユーザによってなされた場合に、CPU31によって起動され実行される。CPU31は、通常モード動作時において、動作認識処理及び検出データ受信処理のうち何れの処理を実行させるかを、所定の周期で切り替える。一方の処理から他方の処理に実行処理が切り替わる場合、実行中であった処理は一旦中断される。そして他方の処理が代わりに実行される。中断された処理は、次の実行タイミングで中断時点から処理を再開する。このようにして、共通のCPU31で異なる処理が並列して実行される。
【0061】
動作認識処理について、図9を参照して説明する。動作認識処理では、検出装置2から受信し検出データ記憶領域385に記憶されている検出データが参照され、打鍵動作によって選択されたキー種別が特定される。なお、通常モードで動作する指示が入力部40を介してなされた場合、併せて、検出装置2を装着したユーザのユーザ特定情報が入力部40を介して入力されているものとする。
【0062】
動作認識処理が起動されると、はじめに、初期設定処理が実行される(S11)。初期設定処理では、動作認識処理において必要なパラメータの初期値がRAM33に記憶される。必要なパラメータは、解析対象データの抽出を開始する時点(以下「抽出開始時点」という。)から、次に解析対象データの抽出を開始する場合の抽出開始時点迄の間の間隔(図2のうち第二時間B又は第三時間Cに相当する。以下「開始オフセット時間」という。)、及び第一時間である。初期設定処理では、時間情報記憶領域381に記憶されている第二時間である「5ms」が読み出され、初期時の開始オフセット時間としてRAM33に記憶される。また、時間情報記憶領域381に記憶されている第一時間である「500ms」が読み出され、初期時の第一時間としてRAM33に記憶される。
【0063】
RAM33に記憶された第一時間(500ms)に基づいて、解析対象データが検出データ記憶領域385から抽出される(S13)。検出データ記憶領域385には、検出データ受信処理(図12参照、後述)において検出装置2から受信した検出データが記憶されている。検出データは5ms周期で3軸(x軸、y軸、z軸)分取得されているので、第一時間(500ms)内に解析対象データとして抽出される検出データの総数は300(=(500/5)×3)ということになる。
【0064】
次いで、解析対象データとパターンデータとが比較され、何れかのキーを選択する打鍵動作が行われたかが判断される(S15)。比較処理は、例えば以下のようにして行われる。解析対象データとして抽出された検出データ(総数300)が、3軸成分(x軸、y軸、z軸)毎に20ずつに分割される。分割された其々の検出データの平均値が算出される。算出の結果、合計15つの平均値(x軸:5つ(=(300/3/20))、y軸:5つ(=(300/3/20))、z軸:5つ(=(300/3/20)))が得られる。得られた平均値が、パターンデータ記憶領域383に記憶されているパターンデータと比較される。平均値とパターンデータとを比較する方法としては特に限定されない。例えば、平均値とパターンデータとの相違の度合いが予め設定されている閾値未満となっているか否かを判断することによって実行することができる。また例えば、一般的なパターンマッチングの手法を用いることができる。
【0065】
なお、上述の実施の形態では、解析対象データとして検出された検出データは分割されて平均値が算出され、算出された値がパターンデータと比較されていた。しかしながら本発明はこの比較方法に限定されず、他の比較方法を用いることも可能である。例えば、分割された検出データの分散値や最大値が算出され、算出された値がパターンデータと比較されてもよい。
【0066】
比較の結果、打鍵動作によって選択されたキー種別が特定された場合(S17:YES)、特定されたキー種別のデータがRFモジュール36によって変調され、アンテナ37を介して他の装置(PCなど)に送信される(S19)。キー種別のデータを受信した他の装置において、入力情報が認識される。
【0067】
次いで、時間テーブル記憶領域382に記憶されている時間テーブルのうち、入力部40を介して入力されたユーザ特定情報に対応付けられている時間が第三時間として読み出され、開始オフセット時間としてRAM33に記憶される(S21)。例えば、ユーザ特定情報として「A」が入力されている場合、「110ms」(図7参照)が第三時間として読み出され、開始オフセット時間とされる。そしてS13に戻る。S13では、次に解析対象データを抽出する場合における抽出開始時点を、前回の抽出開始時点から開始オフセット時間(第三時間)分経過した時点に新たに設定する。そして新たに設定した時点から第一時間(500ms)の間に検出された検出データが解析対象データとして検出データ記憶領域385から抽出される。そして上述の処理が繰り返し実行される。
【0068】
一方、比較の結果、打鍵動作によって選択されたキー種別が特定されなかった場合(S17:NO)、打鍵動作が行われていないものと判断される。このような場合、時間情報記憶領域381に記憶されている第二時間(5ms)が読み出され、開始オフセット時間としてRAM33に記憶される(S23)。そしてS13に戻る。S13では、次に解析対象データを抽出する場合における抽出開始時点を、前回の抽出開始時点から開始オフセット時間(第二時間(5ms))分経過した時点に新たに設定する。そして新たに設定した時点から第一時間(500ms)の間に検出された検出データが解析対象データとして検出データ記憶領域385から抽出される。そして上述の処理が繰り返し実行される。
【0069】
時間計測処理について、図10及び図11を参照して説明する。時間計測処理では、ユーザが連続して打鍵動作を行う場合における、打鍵動作間の時間が計測される。なお、設定モードで動作する指示が入力部40を介してなされた場合、併せて、検出装置2を装着したユーザを特定するユーザ特定情報が入力部40を介して予め入力されているものとする。計測された時間は、入力されたユーザ特定情報に対応付けられて時間テーブル記憶領域382(図6参照)に記憶される。
【0070】
時間計測処理が実行されると、はじめに初期設定処理が実行される(S31)。初期設定処理では、動作認識処理における初期設定処理(S11、図9参照)における処理と同じ処理が実行され、第一時間(100ms)が設定される。また開始オフセット時間として第二時間(5ms)が設定される。次いで、ユーザに所定のキーを連続して打鍵動作させるために、連続打鍵動作をユーザに促す表示を表示部39に表示させる(S32)。次いで、ユーザの打鍵動作を解析する処理(動作認識サブ処理)の1回目が実行される(S33)。
【0071】
図11を参照し、動作認識サブ処理について説明する。動作認識サブ処理では、RAM33に記憶された第一時間(500ms)に基づいて、解析対象データが検出データ記憶領域385から抽出される(S51)。抽出された解析対象データとパターンデータとが比較され、所定のキーを選択する打鍵動作が行われたかが判断される(S53)。比較処理は、例えば動作認識処理において実行される比較処理(S15、図9参照)と同一の方法が使用される。
【0072】
比較の結果、打鍵動作によって所定のキー種別が特定されなかった場合(S55:NO)、打鍵動作は行われていないと判断される。このような場合、S51に戻る。S51では、次に解析対象データを抽出する場合における抽出開始時点を、前回の抽出開始時点から開始オフセット時間(第二時間(5ms))分経過した時点に設定する。そして新たに設定した時点から第一時間(500ms)の間に検出された検出データが解析対象データとして検出データ記憶領域385から抽出される。そして上述の処理が繰り返し実行される。一方、比較の結果、打鍵動作によって所定のキー種別が特定された場合(S55:YES)、動作認識サブ処理を終了して時間計測処理に戻る。
【0073】
1回目の動作認識サブ処理が終了した後、時間計測処理では、所定のキー種別が特定された場合における解析対象データの抽出終了時点の時刻情報(a)が、RAM33に一時的に記憶される(S35)。次いで、動作認識サブ処理の2回目が実行される(S37)。動作認識サブ処理の詳細は、S33において実行された1回目の動作認識サブ処理と同一である。説明を省略する。
【0074】
2回目の動作認識サブ処理が終了した後、所定のキー種別が特定された場合における解析対象データの抽出終了時点の時刻情報(b)が、RAM33に一時的に記憶される(S39)。次いで、RAM33に記憶された時刻情報(a及びb)の差分時間が算出される(S41)。算出された時間が第二時間より長い場合(S43:YES)、算出された時間は、入力部40を介して予め入力されているユーザ特定情報に対応付けられ、時間テーブル記憶領域382の時間テーブルに記憶される(S45)。そして時間計測処理は終了される。一方、算出された時間が第二時間以下である場合(S43:NO)、ユーザに対して再計測を促す表示を表示部39に表示させる(S47)。そしてS32に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0075】
検出データ受信処理について、図12を参照して説明する。検出データ受信処理では、はじめに検出装置2から検出データ(全てのセンサ21における3軸分のデータ)を受信しているかが判断される(S61)。検出データを受信していない場合には(S61:NO)、特段処理を行うことなくS61に戻り、継続して検出データの受信が監視される。一方、検出データを受信した場合(S61:YES)、受信した検出データがフラッシュメモリ38の検出データ記憶領域385に記憶される(S63)。そしてS61に戻り、継続して検出データの受信が監視される。
【0076】
検出装置2のCPU23において実行される検出データ送信処理について、図13を参照して説明する。検出データ送信処理は、検出装置2の電源が投入された場合において、CPU23により起動され実行される。
【0077】
検出データ送信処理が実行されると、はじめに、所定の短い周期(例えば100ns)で更新されるタイマが初期化される(S70)。次いで、センサ21から出力される加速度信号(G)を検出する周期(5ms。以下「検出周期」という。)が到来したかが判断される(S71)。検出周期が到来していない場合(S71:NO)、S71に戻り、継続して検出周期の到来が監視される。検出周期が到来した場合(S71:YES)、センサ21から出力される加速度信号(G)が取得される(S73)。全てのセンサ21について、3軸(x軸、y軸、z軸)分の加速度信号(G)が取得される。検出された加速度信号(G)はデータ化され、検出データとして情報認識装置3に対して無線送信される(S75)。そしてS70に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。無線送信された検出データは、情報認識装置3において上述のように解析処理が実行される。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態では、第二時間と比較して第三時間が長くなるように調整される。同一の情報入力を示す一連の指の動きに基づく検出データから、解析対象データが複数抽出されてしまうことがない。このため、一連の指の動きが複数回解析され、情報入力が複数回なされたものと誤認識されてしまうことを防止できる。
【0079】
なお、図13のS73の処理を行うCPU23が本発明の「取得手段」に相当し、S75の処理を行うCPU23が本発明の「送信手段」に相当する。図12のS61の処理を行うCPU31が本発明の「受信手段」に相当する。図6の検出データ記憶領域385を備えたフラッシュメモリ38が本発明の「第一記憶手段」に相当し、パターンデータ記憶領域383を備えたフラッシュメモリ38が本発明の「第二記憶手段」に相当する。図9のS13の処理を行うCPU31が本発明の「抽出手段」に相当し、S15の処理を行うCPU31が本発明の「判断手段」に相当し、S19の処理を行うCPU31が本発明の「出力手段」に相当する。図10のS41の処理を行うCPU31が本発明の「時間特定手段」に相当し、S45の処理を行うCPU31が本発明の「時間設定手段」に相当する。図1の入力部40が本発明の「入力手段」に相当する。
【0080】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上述の実施の形態では、時間計測処理によって計測された時間が時間テーブルに記憶されていた。しかしながら例えば、打鍵動作間の時間であって、連続して打鍵することが可能な最小の時間(以下「限界時間」という。)がユーザ特定情報に対応付けられて時間テーブル記憶領域382に予め記憶されていてもよい。開始オフセット時間を設定する場合には、第三時間として上述の限界時間が読み出され、開始オフセット時間とされる。
【0081】
本発明は、例えばユーザ毎に最適なパターンデータを準備し、パターンデータにユーザ特定情報を対応づけてパターンデータ記憶領域383に記憶してもよい。比較対象データとの比較処理を行う場合に、入力されたユーザ特定情報に対応するパターンデータを使用することによって、打鍵動作の誤認識をさらに抑制することができる。
【0082】
本実施の形態では、時間テーブル記憶領域382に記憶される時間テーブルには、ユーザ特定情報と第三時間とが一対一で対応付けられて記憶されていた。しかしながら本発明はこの構成に限定されない。ユーザに取り付けられる検出装置2には複数のセンサ21(右手及び左手、親指〜小指)が取り付けられているので、其々のセンサ21毎に第三時間を対応づけて記憶してもよい。そして、図9のS17においてキー種別が特定された場合には、打鍵動作がなされた指の位置に取り付けられているセンサ21に対応付けられている第三時間が読み出される。読み出された第三時間は開始オフセット時間としてRAM33に記憶される(S21)。ユーザが連続打鍵可能な打鍵間隔は、指によって異なることが想定される。しかしながら上述の構成とすることによって、各指の打鍵動作の解析に最適な第三時間を選択し、開始オフセット時間として設定することができる。
【0083】
また例えば情報認識装置3は、複数の指の加速度信号に基づいて其々キー種別が特定された場合に、複数のキーが同時に打鍵されたことを認識できる構成としてもよい。そして第三時間は、複数のセンサ21の組み合わせ(「親指+人さし指」、「人さし指+中指」など)毎に対応付けて記憶されていてもよい。複数のキーが同時に打鍵されたと認識された場合、センサ21の組み合わせに対応する第三時間が読み出される。読み出された第三時間は、センサ21からの加速度信号を解析する場合の開始オフセット時間として設定される。複数のキーを同時に打鍵する場合と、唯一のキーを単独で打鍵する場合とでは、ユーザが連続打鍵可能な打鍵間隔が異なることが想定される。しかしながら上述の構成とすることによって、複数のキーが同時に打鍵される状況に最適な第三時間を選択し、開始オフセット時間として設定することができる。
【0084】
また本実施の形態では、時間計測処理(図10参照)において時間が計測され(S33〜S41)、計測された時間が時間テーブル記憶領域382の時間テーブルに記憶されていた(S45)。ここで例えば、複数のセンサ21の其々が使用されて時間が計測され、複数の時間が得られた場合には、これらの中で最も小さい時間が時間テーブルに記憶される(S45)こととしてもよい。
【0085】
上述の実施の形態では、制御部12がセンサ21において発生した信号を検出し、情報認識装置3に対して検出データを無線送信していた。しかしながら本発明はこの構成に限定されない。例えば、センサ21において発生した信号を情報認識装置3が直接検出し、検出データ記憶領域385に記憶する構成であってもよい。この場合、センサ21と情報認識装置3との間の通信は、ハーネスなどを介した有線通信であってもよいし、アンテナを介した無線通信であってもかまわない。
【符号の説明】
【0086】
1 情報認識システム
2 検出装置
3 情報認識装置
21 センサ
23 CPU
31 CPU
40 入力部
38 フラッシュメモリ
383 パターンデータ記憶領域
385 検出データ記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと送信手段とを少なくとも備えた検出装置と、前記検出装置において検出された信号に基づいて、入力情報を認識する情報認識装置とを備えた情報認識システムであって、
前記検出装置は、
ユーザの手に取り付けられるセンサと、
前記センサにおいて検出される信号であって、前記手の動きを示す信号を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記信号のデータである検出データを、前記情報認識装置に対して送信する送信手段と
を備え、
前記情報認識装置は、
前記検出装置から送信された前記検出データであって、一連の前記手の動きを示す検出データを受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記検出データを記憶する第一記憶手段と、
前記第一記憶手段に記憶された前記検出データのうち、所定時点から第一時間内に検出された前記検出データである解析対象データを抽出する抽出手段と、
前記手が所定動作を行った場合に前記センサにおいて検出される前記信号のデータであるパターンデータを、前記所定動作を示す動作情報に対応付けて記憶する第二記憶手段と、
前記抽出手段によって抽出された前記解析対象データと、前記第二記憶手段に記憶されている前記パターンデータとの比較結果に基づいて、前記抽出手段によって抽出された前記解析対象データが前記パターンデータに該当するかを判断する判断手段と、
前記判断手段によって前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合に、該当するとされた前記パターンデータに対応付けられている前記動作情報を選択して出力する出力手段と
を備え、
前記抽出手段が、前記所定時点から所定時間経過後の時点を新たな所定時点として、繰り返し前記解析対象データを抽出する場合において、前記判断手段によって前記解析対象データが前記パターンデータに該当しないと判断された場合には、前記所定時点から第二時間経過後の時点を新たな前記所定時点とし、前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合には、前記所定時点から前記第二時間より長い第三時間経過後の時点を新たな前記所定時点とすることを特徴とする情報認識システム。
【請求項2】
前記検出装置が、複数の前記センサを備えている場合において、
前記第三時間は、前記複数のセンサ毎に設定され、
前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合には、前記解析対象データの基となる前記検出データが検出された前記センサに対して設定されている前記第三時間経過後の時点を新たな前記所定時点とすることを特徴とする請求項1に記載の情報認識システム。
【請求項3】
前記情報認識装置は、
前記判断手段において前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断されてから、次に前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断されるまでの間の時間を特定する時間特定手段と、
前記時間特定手段において特定された前記時間以下となるように前記第三時間を設定する時間設定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報認識システム。
【請求項4】
前記時間設定手段は、
前記時間特定手段において、複数の前記解析データに基づいて前記時間が複数特定された場合には、特定された前記時間のうち最も短い時間を前記第三時間として設定することを特徴とする請求項3に記載の情報認識システム。
【請求項5】
前記第三時間は、前記第一時間よりも短いことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の情報認識システム。
【請求項6】
前記情報認識装置は、
前記時間特定手段において特定される前記時間を、前記ユーザを特定する情報であるユーザ特定情報に対応付けて記憶する第三記憶手段と、
前記ユーザ特定情報が入力される入力手段と
を備え、
前記時間設定手段は、
前記第三記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記入力手段において入力された前記ユーザ特定情報に対応する前記時間を選択し、選択された前記時間を前記第三時間として設定することを特徴とする請求項3に記載の情報認識システム。
【請求項7】
前記検出装置が、複数の前記センサを備えている場合において
前記抽出手段は、
前記複数のセンサにおいて検出される信号に基づいた複数の前記検出データから、複数の前記解析対象データを抽出し、
前記判断手段は、
前記手が所定動作を行った場合に前記複数のセンサにおいて検出される信号のデータである複数の前記パターンデータと、前記複数の解析対象データとの比較結果に基づいて、前記複数の解析対象データが前記複数のパターンデータに該当するかを判断することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の情報認識システム。
【請求項8】
ユーザの手に取り付けられたセンサにおいて検出される信号であって、前記手の動きを示す信号のデータである検出データを受信し、受信した前記検出データに基づいて、入力情報を認識する情報認識装置であって、
検出装置から送信された前記検出データであって、一連の前記手の動きを示す検出データを受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記検出データを記憶する第一記憶手段と、
前記第一記憶手段に記憶された前記検出データのうち、所定時点から第一時間内に検出された前記検出データである解析対象データを抽出する抽出手段と、
前記手が所定動作を行った場合に前記センサにおいて検出される前記信号のデータであるパターンデータを、前記所定動作を示す動作情報に対応付けて記憶する第二記憶手段と、
前記抽出手段によって抽出された前記解析対象データと、前記第二記憶手段に記憶されている前記パターンデータとの比較結果に基づいて、前記抽出手段によって抽出された前記解析対象データが前記パターンデータに該当するかを判断する判断手段と、
前記判断手段によって前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合に、該当するとされた前記パターンデータに対応付けられている前記動作情報を選択して出力する出力手段と
を備え、
前記抽出手段が、前記所定時点から所定時間経過後の時点を新たな所定時点として、繰り返し前記解析対象データを抽出する場合において、前記判断手段によって前記解析対象データが前記パターンデータに該当しないと判断された場合には、前記所定時点から第二時間経過後の時点を新たな前記所定時点とし、前記解析対象データが前記パターンデータに該当すると判断された場合には、前記所定時点から前記第二時間より長い第三時間経過後の時点を新たな前記所定時点とすることを特徴とする情報認識装置。
【請求項9】
請求項8に記載の情報認識装置の各処理手段としてコンピュータを機能させるための情報認識プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図4】
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