説明

情報通信体の製造方法

【課題】 従来疑似接着予定面のほぼ全域に疑似接着フィルムを貼り込んだ情報通信体の開封口は段差を形成しないと開封不能になる。長尺シートの疑似接着予定面に連続的に疑似接着フィルムを被覆する場合に開封不能になりがちである。
【解決手段】 上流のフィルム被覆工程で一方のマージナル孔部分22を先に切除する。続いて下流の工程中に残りのもう一方のマージナル孔部分22を後から切除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見掛けは通常のDM、葉書、往復葉書、封書等であるにもかかわらず、折り畳まれ或いは切り離されて多層に重ね合わされたシートが剥離可能に積層されているため、内部に多量の情報が隠蔽されている情報通信体を製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来印刷物の表面に光沢を付与すると共に美観や耐久性を向上させるための手段として、印刷物の表面をフィルムで被覆するラミネート法が普及している。前記ラミネート法としてはドライラミネートやサーマルラミネート等の方法が採用されているが、これらは業界でプリントラミネートと総称され、例えばオフセット印刷等で印刷を施された枚葉の用紙表面を1枚ずつ、連続的に繰り出されるフィルムにより被覆するものである。このような方法で搬送される用紙を連続的に繰り出されるフィルムで被覆するにあたり、仮に搬送される用紙の姿勢がばらばらのまま長尺状のフィルムによって連続的に被覆されても何ら問題を生じることはない。即ち、仮に1枚目の用紙が斜めに搬送されたままフィルムで被覆され、続く2枚目も歪んだ状態で被覆されたとしても、被覆直後に両者間のフィルムをカットして当初の枚葉状態に切り離してしまうため、用紙や被覆されたフィルムに皺や破れ等が生じることはない。
【0003】
然るに最近は、オフセット印刷等枚葉用紙を印刷する手法以外に、輪転印刷やフォーム印刷等長尺状の連続用紙を高速印刷する手法が盛んに利用されるため、長尺シートを連続的にフィルム被覆する必要性が発生する。
ところで本発明者等は、特開2000−168273号公報の「情報通信体の製造方法及び製造装置」中に連続フォーム用紙を疑似接着フィルムで連続的に被覆する方法を開示している。
さらにその改良として平成20年5月17日に「情報通信体の製造装置」を出願した。
【特許文献1】 特開2000−168273号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで前記改良出願の「情報通信体の製造装置」で製造される情報通信体は、疑似接着予定面全面に渡り疑似接着フィルムが貼着されている。そのため折り畳まれた葉片同士の開封端縁が一致していると密着が良好なため指先での開封が困難になる。したがって、仕上がり時に開封端縁が揃わないようにする必要がある。端縁が揃っていなければ段差が発生しているのでその段差を開封の端緒として容易に指先で開封することができるのである。
【0005】
本発明は、このような長尺シートに疑似接着フィルムを被覆することにより製造される情報通信体の開封を容易にしようとするものであり、疑似接着予定面全面に疑似接着フィルムが被覆された形態の情報通信体において、確実に開封が可能な情報通信体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の情報通信体の製造方法は、折り線を介して少なくとも3葉片以上の葉片が横方向に連接された単位シートが縦方向に連接された両端にマージナル孔を有する長尺シートの少なくとも一方の面に疑似接着フィルムを連続的に少なくとも疑似接着予定面の全域に渡り被覆ラミネートすると共に疑似接着フィルムの表面同士が対向するように折り畳み、加圧或いは加圧・加熱処理を施して剥離可能に一体化する情報通信体の製造方法における当該情報通信体の開封口の形成手段であって、前記長尺シートに疑似接着フィルムを被覆ラミネートした後に一方のマージナル孔を先に切除して、続く下流の工程で残るもう一方のマージナル孔を切除することを特徴としている。
【0007】
また、上記目的を達成するために本発明の別の形態は、折り線を介して少なくとも3葉片以上の葉片が横方向に連接された単位シートが縦方向に連接された両端にマージナル孔を有する長尺シートの少なくとも一方の面に疑似接着フィルムを連続的に少なくとも疑似接着予定面の全域に渡り被覆ラミネートすると共に疑似接着フィルムの表面同士が対向するように折り畳み、加圧或いは加圧・加熱処理を施して剥離可能に一体化する情報通信体の製造方法における当該情報通信体の開封口の形成手段であって、前記長尺シートに疑似接着フィルムを被覆ラミネートした後に型抜きを施すと共に一方のマージナル孔を先に切除して、続く下流の工程で残るもう一方のマージナル孔を切除することを特徴としている。
【0008】
上記情報通信体の製造方法による作用は次の通りである。即ち最初の被覆ラミネート工程の直後に一方のマージナル孔を任意の位置で切除する。続いて下流の工程で残るもう一方のマージナル孔を切除する。前記それぞれのマージナル孔の切除位置は、折り畳んだ際に対向する葉片同士が端縁において一致しない任意の位置を選択する。そうすることにより開封の糸口となる段差が生じる。また最初の被覆ラミネート工程の直後に、マージナル孔近辺に例えば三角コーナー等の抜き窓を形成しておき、その縁辺に沿ってマージナル孔を切除すれば、両葉片を対向して折り畳んだ際に仮に開封端縁が一致していてもコーナーカット等により段差が形成されるため開封することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
上述したように本発明の情報通信体の製造方法によれば、疑似接着予定面全面に渡り疑似接着フィルムが貼着される形態の情報通信体において、誰にでも極めて容易に開封することができる段差による開封端緒を形成することができる。
また、従来から多用されている、あらかじめ疑似接着された多層フィルムを対向葉片間に挟み込んで加圧・加熱処理を施す方法で頻発する開封不能事故(接着剤が溶け出して開封端縁の紙面にはみ出してしまう)があるが、本発明によれば、過熱により疑似接着フィルムの感熱接着剤が溶け出しても、情報通信体の仕上がり寸法は紙面全面が被覆されたフィルムにより切除されるので用紙に溶け出した接着剤が付着して開封が不能になる事故が解消される。
さらに、全面的に疑似接着フィルムで被覆された情報通信体なので、開封展開後に紙面が露出した部分が全くなく、全面が光沢を放つ美しいフィルム表面仕上がりとなり著しく美観が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を各図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は本製造方法の上流工程であるフィルム被覆工程を示す要部概略図である。図2(A)及び(B)は三つ折り葉書用紙の表面図及び裏面図である。図3(A)及び(B)は疑似接着予定面に疑似接着フィルムが貼着された状態を示す表面図である。図4は本発明の情報通信体の製造方法を示す要部概略図である。図5は疑似接着フィルムの断面図である。図6(A)、(B)及び(C)は被覆ラミネートされた長尺シートのI−I線、II−II線及びIII−III線断面図である。図7は完成した三つ折り葉書の斜視図である。図8は本発明の異なる開封手段を示す斜視図である。
【0012】
まず本発明において一番基本的な形態であるZ折り(三つ折)タイプの情報通信体(葉書)を例に説明する。なお本発明の情報通信体の製造方法は大きく上流と下流の2つの工程に分かれるため、最初に上流工程に当たる長尺シートの疑似接着フィルム被覆手段について説明する。
図2(A)に示す如く、長尺シートSは第一葉片11、第二葉片12、第三葉片13が折り線14及び15(必ずしも表示される必要はなくミシン目等に代えても構わない)を介して横方向に連接された単位シートtが切取線16(必ずしも表示される必要はなくミシン目等に代えても構わない)を介して縦方向に連接されたものである。そして第一葉11表面には郵便切手欄17、郵便番号欄18、受取人の住所氏名19等が例えばプリンタ等により記載されており、さらに第二葉片12及び第三葉片13表面にはそれぞれ個人的な秘密を要する個人情報20が記載されている。なお個人情報20は必ずしも秘密を要するものである必要はなく、宣伝広告等の一般情報が混在していても構わず、或いは一般情報のみが記載されていても構わない。
【0013】
そして図2(B)に示す如く第一葉片11、第二葉片12裏面にもそれぞれ個人的な秘密を要する個人情報20が記載されており、また第一葉片11裏面には宣伝広告等の一般情報21が記載されている。なお長尺シートSの両外側縁辺にはマージナル孔22が設けられたマージナル部分23が切取線24(必ずしも表示される必要はなくミシン目等に代えても構わない)を介して連接されている。
【0014】
このように構成された長尺シートSは、例えば切取線16から蛇腹状にブロック単位に折り畳まれて図4に示す如く図中左側に配置され上方のピントラクタ1へ移送される。なお、切取線16を設けることなく長尺シートSをロール状に巻き取り、図4左側から供給しても構わない。そして図1に示す如く、ピントラクタ1の下流には一対のラミネートローラ2a、2bが配置されており長尺シートSはその間を通過する。その際ラミネートローラ2aには上下に待機しているロールから繰り出される疑似接着フィルムGが長尺シートSの表裏面と整合されながら送り込まれる。
【0015】
ところで前記疑似接着フィルムGは、図5に示す如く例えばポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートのような腰のしっかりした基材31の一方の面に公知の感熱接着剤層32を形成し、さらにもう一方の面に剥離可能に疑似接着するように疑似接着層30を形成したものを好適に使用することができる。なお、本発明において疑似接着フィルムGの構成に制限はなく公知のものを使用すればよい。
【0016】
図1において、既述の通り上下から送り込まれる疑似接着フィルムGは長尺シートSの表裏の疑似接着予定面と整合されると共にラミネートローラ2a、2b間を加熱・加圧されながら通過するのであるが、この際に長尺シート側に接するように設けられた疑似接着フィルムGの感熱接着剤層32が加熱により接着性を発揮して、図3の斜線で示される部分及び図6(A)に示す如く、長尺シートSの疑似接着予定面に剥離不能に接着されるのである。
【0017】
そして表裏の疑似接着予定面がフィルム被覆された長尺シートSはさらに下流の一対のニップローラ3a、3b間を通過する。このニップローラ3a、3bの用紙搬送速度は上流のピントラクタ1のそれと同等かやや早めの速度になる。
【0018】
さらにニップローラ3a、3b間を通過した長尺シートSは、一方のマージナル孔部分23をスリッター4a、4bにより切除され図6(B)に示す状態となって下流の工程へと送り出されるのである。なお前記先に切除されるマージナル孔部分23は、三つ折りに折り畳んだ際に対向する葉片同士の開封端縁が一致しないよう切取線24の位置が決められる。
以上が本発明の情報通信体の製造方法の上流工程に当たる長尺シートのフィルム被覆手段に関する概略説明である。
【0019】
次に本発明の情報通信体の製造方法における下流の工程について説明する。
既述の通り、先に切除されるマージナル孔部分23が切除された長尺シートSは、図4中央部に示す如く、スリッター4a、4bとサポートローラ40との間に弛みを形成した後に、続く下流の折り畳みアングル41を通過してサポートローラ42に到達する時点で図6(C)に示す如く断面Z字状の三つ折りに折り畳まれる。
【0020】
前記三つ折に折り畳まれた長尺シートSはサポートローラ42により水平方向に進行方向を転換しピントラクタ43のピンとマージナル孔22を合致させて下流へ搬送される。そして残りのマージナル部分23をスリッター44a、44bにより切取線24から切り離され、続くダイカットローラ45a、45bにより天地方向の切取線16に沿ってそれぞれ単品の二つ折り葉書に断裁される。その後例えば下流のヒートローラ46a、46b等を通過して加圧或いは加圧・加熱処理を施されることにより、折り畳まれて対向する疑似接着層30が剥離可能に接着されて図7に示す如く一体化された状態で右側のベルトコンベアのスタッカ47上に順次積載されるのである。
【0021】
この葉書の受取人は対向葉片を剥離することにより当初の平面状態に展開することができる。そしてフィルム被覆された用紙表面の透明フィルムを透して内部の各種情報を視認することができるのである。
【0022】
ところで、上記実施例ではZ折り(三つ折)タイプの場合を記載しているが、葉片の数や折の形態についてはこれに限らない。例えば3葉片の場合既述のZ折りのほかに巻き折りタイプがあるがこれについても本発明に包含される。
さらに葉片が増えれば蛇腹折、巻き折り、観音開き折り、それらの複合折り等の全ての折り形態に本発明が適用できることはいうまでもない。
【0023】
なお本発明の情報通信体の製造方法は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、マージナル部分近辺に三角形等の窓状の穴を抜いておいて、その三角形の縁辺に沿ってマージナル部分を切除すれば、図8に示す如く、葉片を対向して折り畳んだ際に仮に開封端縁が一致していてもコーナーカットが施され段差が形成されるので容易に開封することができる。
また本実施例では剥離可能に一体化された後に表出する面を住所記載面としているが、この住所記載面を何れの表出面に配置するかは任意に決定すればよい。また中央の葉片が段差により端縁に表出する部分が生じた場合、その部分に「郵便はがき」や「POST CARD」及びそれに準じる表示等を記載しても構わない。
さらに、本実施例では葉書について説明しているが、葉書以外に往復葉書、封書、DM、スピードくじ等に利用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本製造方法の上流工程であるフィルム被覆工程を示す要部概略図である。
【図2】 (A)及び(B)は三つ折葉書用紙の表面図及び裏面図である。
【図3】 (A)及び(B)は疑似接着予定面に疑似接着フィルムが貼着された状態を示す表面図である。
【図4】 本発明の情報通信体の製造方法を示す要部概略図である。
【図5】 疑似接着フィルムの断面図である。
【図6】 (A)、(B)及び(C)は被覆ラミネートされた長尺シートのI−I線及びII−II線とIII−III線断面図である。
【図7】 完成した三つ折葉書の斜視図である。
【図8】 本発明の異なる開封手段を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
G 疑似接着シート
S 長尺シート
t 単位シート
1、43 ピントラクタ
2a、2b、46a、46b ヒートローラ
3a、3b ニップローラ
11、12、13 葉片
14、15 折り線
16、24 切取線
17 郵便切手欄
18 郵便番号欄
19 受取人住所氏名
20 個人情報
21 一般情報
22 マージナル孔
23 マージナル部分
30 疑似接着層
31 基材
32 感熱接着剤層
40、42 サポートローラ
4a、4b、44a、44b スリッター
45a、45b ダイカットローラ
47 スタッカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り線を介して少なくとも3葉片以上の葉片が横方向に連接された単位シートが縦方向に連接された両端にマージナル孔を有する長尺シートの少なくとも一方の面に疑似接着フィルムを連続的に少なくとも疑似接着予定面の全域に渡り被覆ラミネートすると共に疑似接着フィルムの表面同士が対向するように折り畳み、加圧或いは加圧・加熱処理を施して剥離可能に一体化する情報通信体の製造方法における当該情報通信体の開封口の形成手段であって、前記長尺シートに疑似接着フィルムを被覆ラミネートした後に一方のマージナル孔を先に切除して、続く下流の工程で残るもう一方のマージナル孔を切除することを特徴とした情報通信体の製造方法。
【請求項2】
折り線を介して少なくとも3葉片以上の葉片が横方向に連接された単位シートが縦方向に連接された両端にマージナル孔を有する長尺シートの少なくとも一方の面に疑似接着フィルムを連続的に少なくとも疑似接着予定面の全域に渡り被覆ラミネートすると共に疑似接着フィルムの表面同士が対向するように折り畳み、加圧或いは加圧・加熱処理を施して剥離可能に一体化する情報通信体の製造方法における当該情報通信体の開封口の形成手段であって、前記長尺シートに疑似接着フィルムを被覆ラミネートした後に型抜きを施すと共に一方のマージナル孔を先に切除して、続く下流の工程で残るもう一方のマージナル孔を切除することを特徴とした情報通信体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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