説明

意匠塗膜形成方法、意匠タイルおよび意匠金属テープ

【課題】 補修面の模様や色彩に同化するタイル調の模様を現出する意匠塗膜形成方法を提供し、さらに、補修面の模様や色彩に同化するタイル調の模様を有する補修用の意匠タイルおよび意匠金属テープを提供することである。
【解決手段】 アクリルシリコン塗料、アクリルウレタン塗料、フッ素樹脂塗料のいずれかまたは2種以上の塗料を用いてタイル調の模様を描画して、所定の模様を有する第一の塗膜(2、11)の上にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシランのいずれかを含むクリアー塗膜あるいは半クリアー塗膜からなる第二の塗膜(3、12)を造膜する意匠塗膜形成方法とし、該方法により製造する意匠タイル(1)および意匠金属テープ(10)とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル等の外装材や、金属テープ等の補修材に所定の模様を付与する意匠塗膜形成方法に関し、さらに所定の模様が付与されていると共に、補修の際にも周囲と違和感なく使用可能となる意匠タイルおよび意匠金属テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築分野においては、耐久性、意匠性に優れていることから、外装材料としてタイルが広く使用されている。外装材料として使用されるタイルは経年変化による劣化や、変色、割れ、剥落が生じると、その都度補修が必要となる。
【0003】
また、補修の際には、変色したり割れているタイルと交換するための新しいタイルや、補修用の金属テープ等を用いる。
【0004】
そのために、補修用のタイルや金属テープは、元のタイル面と外観を揃えるために、同じ模様や色合いを有する意匠性に優れていることが望まれる。
【0005】
また、意匠性・外観・高級感をそのまま維持し、耐候性、防水性、耐久性に優れたタイル壁面とするために、タイル化粧面上に複数のクリアーコーティング材を塗装するとしたタイル壁面の改修方法が既に出願されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−33565号公報(第1−12頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイルなどのセラミック系外装材は、重厚な意匠を有する反面、製造の際に高温での焼成工程が必要なため、細かな意匠性などの再現性が乏しいという問題がある。また、そのために、補修の際には、周囲と同化するまで、意匠性を合致させることが困難であるという問題がある。
【0007】
さらに、外装材料として用いられるので、意匠性を保持すると共に、防汚性を備え、周囲の旧いタイルと調和した模様を容易に再現可能なタイルが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、補修面の模様や色彩に同化するタイル調の模様を現出する意匠塗膜形成方法を提供し、さらに、補修面の模様や色彩に同化するタイル調の模様を有する補修用の意匠タイルおよび意匠金属テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、基材表面に、アクリルシリコン塗料、アクリルウレタン塗料、フッ素樹脂塗料のいずれかまたは2種以上の塗料を用いてタイル調の模様を描画して、所定の模様を有する第一の塗膜を形成し、前記第一の塗膜の上にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシランのいずれかを含むクリアー塗膜あるいは半クリアー塗膜からなる第二の塗膜を造膜する意匠塗膜形成方法としたことを特徴としている。
【0010】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、親水性を発揮する透明な第二の塗膜を造膜するので、第一の塗膜により描画した模様をクリアーに現出すると共に、汚れを簡単に清掃可能とする意匠塗膜を形成することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、アルコール溶液にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシランのいずれかを溶解した塗料を用いて前記第二の塗膜を形成したあとで、強制乾燥することを特徴としている。
【0012】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、アルコール溶液を希釈剤として用いているので、塗料が加水分解されシラノールが生成され、親水性を発揮するシリカ層を形成し、ガラス質の透明皮膜を造膜することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の意匠塗膜形成方法により意匠塗膜が形成されている意匠タイルとしたことを特徴としている。
【0014】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、所定の模様を有し、耐久性と防汚染性を備えて、同一の模様の壁面の修復に容易に適応可能な意匠タイルを得ることができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載の意匠塗膜形成方法により意匠塗膜が形成されている意匠金属テープとしたことを特徴としている。
【0016】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、修復する壁面と同じ模様と同程度の親水性を有する意匠金属テープを得ることができ、壁面の修復を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、補修面の模様や色彩に同化するタイル調の模様を現出する意匠塗膜形成方法を提供し、さらに前記意匠塗膜形成方法により意匠塗膜を形成することで、補修面の模様や色彩に同化するタイル調の模様を有する意匠タイルおよび意匠金属テープを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る意匠塗膜形成方法、意匠タイルおよび意匠金属テープの実施の形態について、図面と共に詳細に説明する。
【0019】
建材の外装材料として使用されるタイルは経年変化による劣化や、変色、割れ、剥落が生じると、その都度補修が必要となる。
【0020】
また、補修の際には、変色したり割れているタイルと交換するための新しいタイルや、補修用の金属テープ等を用いる。
【0021】
また、前記建材は一般に屋外で使用され外部環境に曝されるので、前記塗料としては、高耐候性を備える塗料が望ましく、さらには環境保全および安全衛生のため、有機溶剤を使用しないあるいは使用量を大幅に減少可能なエマルジョン塗料であることが望ましい。そのために、本実施の形態においては、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂のいずれか、またはそれらを組み合わせた樹脂成分からなる高耐候性エマルジョン塗料を用いることとしている。
【0022】
しかし、高耐候性エマルジョン塗料を塗布した基材表面は、高度な撥水性も備えているので、古いタイルの表面が有する親水性と大きく相違している。表面の親水性に差があると、表面の汚れの程度が異なり、さらに、清掃しても同等とはならないことがある。そのために、タイル壁面を修復する際には、タイルと同一な模様を描画すると共に、その表面の親水性を同等にしておくことが肝要となる。
【0023】
本実施の形態においては、従来のタイル面と同等な親水性を発揮するために、基材表面に、アクリルシリコン塗料、アクリルウレタン塗料、フッ素樹脂塗料のいずれかまたは2種以上の塗料を用いてタイル調の模様を描画して、所定の模様を有する第一の塗膜を形成した後、前記第一の塗膜の上にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシランのいずれかを含むクリアー塗膜あるいは半クリアー塗膜からなる第二の塗膜を造膜する意匠塗膜形成方法とした。
【0024】
前記第一の塗膜は、高耐候性エマルジョン塗料である、アクリルシリコン塗料、アクリルウレタン塗料、フッ素樹脂塗料を用いているので、高度な耐久性を備えている。また、前記第二の塗膜として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシランのいずれかを含むクリアー塗膜あるいは半クリアー塗膜を造膜する構成としているので、親水性を発揮して、従来のタイル面と同等の親水性を有する透明皮膜を造膜することができる。
【0025】
前記第二の塗膜はアルコール溶液を溶剤として用い、前記第一の塗膜上に塗布した後で強制乾燥するほうが好ましい。この方法で造膜される第二の塗膜は、アルコール溶液を希釈剤として用いているので、塗料が加水分解されシラノールが生成され、親水性を発揮するシリカ層を形成し、ガラス質の透明皮膜を造膜することができる。
【0026】
前記第一の塗膜にタイル調の模様を描画する方法としては、はけ塗りやローラ塗りやスプレー塗り等が採用可能であるが、塗料を含浸した不織布等の無方向性の繊維材料を繰り返し圧着して無定形の模様を描画することもできる。
【0027】
図1には、基材として意匠タイル1を示し、図2には基材として意匠金属テープ10を示している。
【0028】
図1(a)に示すように、意匠タイル1には所定の模様が描画されている。前記意匠タイル1は、セラミック系外装材であって、高温での焼成工程が必要なために細かな意匠性などの再現性が乏しいものである。そのために、補修用の意匠タイル1を得るためには、タイル表面に任意の模様を描画するほうが好適である。
【0029】
そのために、高耐候性エマルジョン塗料である、アクリルシリコン塗料、アクリルウレタン塗料、フッ素樹脂塗料のいずれかまたは2種以上の塗料を用いて、所定の模様の第一の塗膜2を作成することができる。
【0030】
しかし、前記高耐候性エマルジョン塗料が塗布された第一の塗膜2は撥水性を有しているので、従来のタイルが有する親水性に近づけるには、親水性を付与する第二の塗膜3を塗布すればよい。つまり、図1(b)に示すように、タイル本体1Aに第一の塗膜2と第二の塗膜3とが造膜された構成となる。
【0031】
二層の塗膜を造膜しているので、第一の塗膜2が備える意匠を維持するためには、前記第二の塗膜3は透明性を有していることが望ましく、クリアー塗料もしくは半クリアー塗料が好ましい。
【0032】
そのために、本実施の形態においては、前記第二の塗膜3を形成する塗料として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシランを採用することとし、それらのいずれかを含むクリアー塗膜あるいは半クリアー塗膜を造膜する構成とした。
【0033】
上記のような塗料を用いることで、表面がガラス質となる親水性塗膜を造膜することができる。さらには、これらの塗料は、低コストで入手可能であり、技術的にも実用性が高いので好適である。
【0034】
上記のような構成の意匠タイル1としているので、補修するタイル面と同等の模様と同等の親水性を発揮可能であり、割れたり剥離したり劣化したタイルと交換することで、周囲のタイルと同化する補修用意匠タイルとすることができる。
【0035】
図2に示す意匠金属テープ10も同様に、アクリルシリコン塗料、アクリルウレタン塗料、フッ素樹脂塗料のいずれかまたは2種以上の塗料を用いて、所定の模様が描画された第一の塗膜11と親水性を備えるとともに透明性を有する第二の塗膜12とが造膜されている。
【0036】
意匠金属テープ10は、前記第一の塗膜11によって、補修するタイルと同一の模様がテープ本体10Aに描画されている。また、前記第一の塗膜11上に造膜される第二の塗料12が透明性を有しているので、補修するタイル面に貼付して、割れたり剥離したり劣化したタイル面の模様を揃えることができる。また、前記第二の塗膜12がタイル面と同等の親水性を備えているので、周囲のタイル面と同一の汚れとなり、また、同じように均一に清掃することもできる。つまり、周囲のタイルと同化する補修用金属テープとすることができる。
【0037】
意匠金属テープ10は、補修するタイル面に容易に貼付するために、裏面側に粘着部13と剥離テープ14とを備えておくこともできる。この構成であれば、所定の大きさに切断した後で、前記剥離テープ14を剥がして、所定の補修部に容易に貼付可能となり好適である。
【0038】
上記の親水性と透明性を備える第二の塗膜(3、12)は、はけ塗り、バーコート、吹きつけ塗り、ローラ塗、浸漬塗、静電塗装、流し塗り等、公知の塗装手段を適宜選択してコーティングすることができる。塗膜厚さは5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲である。塗膜厚さが5μmに満たない時は基材の保護が不十分になる傾向があり、500μmを越える厚さとする時はコストアップするだけでなく塗膜にクラックが生じ易く、耐久性が低下する傾向がある。
【0039】
塗膜の乾燥法としては、自然乾燥または強制乾燥を行うことができるが、意匠タイルや意匠金属テープ等の小物の場合は、塗膜表面の改質効果をより完全にするために熱処理を施し強制乾燥することが好ましい。
【0040】
上記したように本発明に係る意匠塗膜形成方法によれば、所定の模様が描画された第一の塗膜に親水性と透明性を備える第二の塗膜を造膜するので、耐久性があり、いつまでの色落ちせずに、汚れが均一であり清掃し易い塗膜を形成することができる。そのために、前記方法を用いて、補修時に使用可能な意匠タイルおよび意匠金属テープを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る意匠タイルを示し、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図2】本発明に係る意匠金属テープの全体概略図および一部拡大断面図を示す。
【符号の説明】
【0042】
1 意匠タイル
2 第一の塗膜
3 第二の塗膜
10 意匠金属テープ
11 第一の塗膜
12 第二の塗膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に、アクリルシリコン塗料、アクリルウレタン塗料、フッ素樹脂塗料のいずれかまたは2種以上の塗料を用いてタイル調の模様を描画して、所定の模様を有する第一の塗膜を形成し、前記第一の塗膜の上にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシランのいずれかを含むクリアー塗膜あるいは半クリアー塗膜からなる第二の塗膜を造膜することを特徴とする意匠塗膜形成方法。
【請求項2】
アルコール溶液にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシランのいずれかを溶解した塗料を用いて前記第二の塗膜を形成したあとで、強制乾燥することを特徴とする請求項1に記載の意匠塗膜形成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の意匠塗膜形成方法により意匠塗膜が形成されていることを特徴とする意匠タイル。
【請求項4】
請求項1または2に記載の意匠塗膜形成方法により意匠塗膜が形成されていることを特徴とする意匠金属テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−130513(P2007−130513A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323055(P2005−323055)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(591164794)株式会社ピアレックス・テクノロジーズ (25)
【Fターム(参考)】