感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法
【課題】ササクレ状凸欠陥のない表面品質に優れたアルミニウム管の製造が可能となる感光ドラム基体用アルミニウム管の表面処理方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム管Pと、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された接触ローラ2とを互いに外周面において接触するように配置し、この接触状態を維持しつつ、アルミニウム管Pと接触ローラ2との間に周速度差を設けた状態でアルミニウム管Pの外周面における接触ローラ2の接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、アルミニウム管Pの外周面と接触ローラ2の外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりQに通電してアルミニウム管Pに対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラ2との接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去する。電解液としては、通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液を用いる。
【解決手段】アルミニウム管Pと、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された接触ローラ2とを互いに外周面において接触するように配置し、この接触状態を維持しつつ、アルミニウム管Pと接触ローラ2との間に周速度差を設けた状態でアルミニウム管Pの外周面における接触ローラ2の接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、アルミニウム管Pの外周面と接触ローラ2の外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりQに通電してアルミニウム管Pに対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラ2との接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去する。電解液としては、通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置のOPC感光ドラム用の基体等として用いられる表面品質に優れた感光ドラム基体用アルミニウム管を製造するためのアノード電解による表面処理方法及び該方法で表面処理して得られた表面品質に優れた感光ドラム基体に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。
【背景技術】
【0003】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置の感光ドラムの基体として用いられるアルミニウム管は、その表面に均一なOPC(有機光導電体)塗膜を形成させる必要があることから、鏡面に近い表面状態であることが要求される。
【0004】
従来は、アルミニウム管を切削することによって鏡面仕上げが行われていたが、切削用刃具の調整や管理が容易でない上に作業に熟練を要することから、大量生産には適さないという問題があった。
【0005】
そこで、近年では、アルミニウム圧延板をしごき加工したDI管、アルミニウム押出素管をしごき加工したEI管、アルミニウム押出素管を引き抜き加工したED管などの無切削管が、感光ドラム用基体として多く用いられるようになってきている。中でも、ED管は、他の無切削管とは異なり、10本以上の管を1加工(2回の引抜加工)で生産できるので大量生産に適しており、市場拡大に伴う大量消費に対応し得るものとして注目されている。
【0006】
ED管は、一般に、アルミニウム製のビレットを押出してアルミニウム押出素管を得た後、該押出素管を所定長さに切断し、これを引き抜き加工することによって外径、内径、管壁の肉厚が所定値に規定されたアルミニウム管を得、次いで切断、端部の面取り加工、洗浄を順次行い、さらに寸法及び外観の検査を経て、製造されている。
【0007】
上記ED管からなる感光ドラム用基体は、高度の表面平滑性と寸法精度を有していることが求められるが、無切削加工であるために、押出加工のダイスラインに起因したスジ状欠陥や、引き抜き加工の潤滑油押し込みに起因したオイルピット等の微細な表面欠陥を有している。
【0008】
とりわけ、微小なアルミニウム片(91)が表面に付着した押出素管が引き抜かれて発生する鱗片状の表面欠陥(92)は、超音波洗浄や、OPC塗工時の熱の影響等によって立ち上がってササクレ状の凸欠陥(93)を生じやすかった(図14参照)。このようなササクレ状凸欠陥(93)が感光ドラム用基体の表面に存在すると、感光ドラムを構成して一様帯電した際に、該ササクレ状凸欠陥(93)がリーク(漏電)の起点になりやすく、画像が劣化するという問題があった。
【0009】
このようなササクレ状凸欠陥の発生を防止する技術として、押出ダイスのベアリング部の周方向における中心線平均粗さRa(Y)と押出方向における中心線平均粗さRa(X)との関係が、Ra(Y)<Ra(X)に設定された押出ダイスを用いて押出加工を行ってアルミニウム押出素管を製造することによって、ササクレ状凸欠陥の原因になっている押出素管表面での微小なアルミニウム片の付着(発生)を抑制する方法が公知である(特許文献1参照)。
【0010】
また、アルミニウム押出素管の表面に付着した微小なアルミニウム片を、引き抜き加工を行う前に、軟質性の摺擦部材でこすり落として除去することによって、ササクレ状凸欠陥の発生を防止する方法も知られている(特許文献2参照)。
【0011】
また、ED管の表面を布、紙、スポンジまたは研磨テープで拭くことによってED管表面のササクレ状凸欠陥を折り取って除去する方法も知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−267122号公報
【特許文献2】特開2006−159288号公報
【特許文献3】特開平8−82939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来技術では次のような問題があった。即ち、特許文献1に記載された方法によれば、ED管表面でのササクレ状凸欠陥の発生を抑制することができるものの、稀にササクレ状凸欠陥が発生することがあり、ササクレ状凸欠陥の発生を確実に防止できるまでには至っていなかった。
【0013】
また、特許文献2に記載の方法では、押出素管が引き抜かれて発生する鱗片状の表面欠陥を大幅に減少せしめることができたものの、アルミニウム片が素管表面に一体化していて十分に除去できない場合があり、このためにササクレ状凸欠陥の発生を確実に防止できるまでには至っていなかった。
【0014】
また、特許文献3(段落0007参照)では、ササクレ状凸欠陥が、不均質箇所や晶出物、偏在物が引き起こされて生じたので折れやすいと記載されているが、実際には組織的に正常な箇所からも凸欠陥は生じており、この場合には布、紙、スポンジ等で拭き取ることによって図13(a)に示すようにササクレ状凸欠陥(93)がより一層立ち上がって除去されることなく残ってしまう(より大きな欠陥になる)という問題があった。即ち、組織的に正常な箇所から生じた凸欠陥は、根元は管と一体化しているので、布、紙、スポンジ等で拭いても除去することはできず、逆に布、紙、スポンジ等の拭き取り材の繊維に引っ掛かってササクレ状凸欠陥(93)が立ち上がって除去されることなく残ってしまう。また、研磨テープを用いて研磨した場合には、図13(b)に示すように、鱗片状の表面欠陥を除去できるものの、砥粒(97)をテープに保持して擦り付けるので強い力が作用してしまってバリ状の突起欠陥(98)が新たに発生してこれがリーク(漏電)の原因になるという問題があった。
【0015】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、ササクレ状凸欠陥のない表面品質に優れたアルミニウム管の製造が可能となる感光ドラム基体用アルミニウム管の表面処理方法及びササクレ状凸欠陥がなく表面品質に優れると共に高品質の画像を形成できる感光ドラム基体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0017】
[1]感光ドラム基体用アルミニウム管と、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された接触ローラとを互いに外周面において接触するように配置し、この接触状態を維持しつつ、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設けた状態で前記アルミニウム管の外周面における前記接触ローラの接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、前記アルミニウム管の外周面と前記接触ローラの外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0018】
[2]非自転状態とした前記接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させることを特徴とする前項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0019】
[3]自転状態とした前記接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させることを特徴とする前項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0020】
[4]自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にある前記接触ローラを接触状態に配置せしめることを特徴とする前項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0021】
[5]自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管に対して、自転状態で位置固定状態にある前記接触ローラを接触状態に配置せしめることを特徴とする前項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0022】
[6]前記アルミニウム管の周速度を、前記接触ローラの周速度よりも大きくして、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設ける前項1〜5のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0023】
[7]前記接触ローラの周速度を、アルミニウム管の周速度よりも大きくして、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設ける前項1〜5のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0024】
[8]前記接触ローラとして、外形形状が略円柱形状であり、電解液が含浸された多孔連通構造の多孔質軟質体を用いる前項1〜7のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0025】
[9]前記多孔連通構造の多孔質軟質体が、連続気泡構造の発泡樹脂成形体である前項8に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0026】
[10]前記接触ローラの外周面の周方向の一部に当接する状態にスクレーパーを配置して、該スクレーパーによって前記接触ローラの外周面の清掃を行うことを特徴とする前項1〜9のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0027】
[11]略円筒形状で内周面が粗面に形成された接触ローラの中空内部空間に、感光ドラム基体用アルミニウム管を内挿状態に配置せしめ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との接触状態を維持しつつ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設けた状態で、前記接触ローラ及び前記アルミニウム管のうちの少なくともいずれか一方を自転させながら、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に存在せしめた電解液であって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0028】
[12]前記アルミニウム管の外周面の周速度を、前記接触ローラの内周面の周速度よりも大きくして、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設ける前項11に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0029】
[13]前記接触ローラの内周面の周速度を、前記アルミニウム管の外周面の周速度よりも大きくして、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設ける前項11に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0030】
[14]前記接触ローラとして、電解液が含浸された多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体を用いる前項11〜13のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0031】
[15]前記多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体が、連続気泡構造の略円筒形状発泡樹脂成形体である前項14に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0032】
[16]自転状態で位置固定状態にある感光ドラム基体用アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にあると共に該管との接触面が粗面である接触体を接触状態に配置せしめて、前記アルミニウム管の外周面における前記接触体の接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、前記アルミニウム管の外周面と前記接触体の表面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触体との接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0033】
[17]感光ドラム基体用アルミニウム管の外周面と接触ローラの外周面とを接触させることによって前記アルミニウム管の外周面の表面欠陥を引っ掛けてササクレ状凸欠陥を立ち上げると共に、前記アルミニウム管の外周面と前記接触ローラの外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0034】
[18]前記アノード電解工程の前処理工程として、前記アルミニウム管をカソード電解し、このカソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化する清浄工程を有することを特徴とする前項1〜17のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0035】
[19]前記アノード電解工程において、前記アルミニウム管に対して、前記アノード電解とカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行い、前記アノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去すると共に、前記カソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化することを特徴とする前項1〜17のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0036】
[20]前項1〜19のいずれか1項に記載の表面処理方法で表面処理して得られたアルミニウム管からなる感光ドラム基体。
【発明の効果】
【0037】
[1]の発明では、感光ドラム基体用アルミニウム管と、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された接触ローラとを互いに外周面において接触するように配置し、この接触状態を維持しつつ、アルミニウム管と接触ローラとの間に周速度差を設けた状態でアルミニウム管の外周面における接触ローラの接触位置を経時的に該管の周方向に移動させるので、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥をササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができる。しかして、アルミニウム管の外周面と接触ローラとの接触位置の近傍に形成せしめた電解液(通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液)の液溜まりの該電解液に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥を速く溶解せしめて除去することができる。このようにしてアルミニウム管の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0038】
[2]の発明では、非自転状態とした接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させるから、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥を効率良くササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができ、アノード電解によってこのササクレ状凸欠陥を十分に溶解除去できる。
【0039】
[3]の発明では、自転状態とした接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させるから、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥を効率良くササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができ、アノード電解によってこのササクレ状凸欠陥を十分に溶解除去できる。
【0040】
[4]の発明では、自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にある接触ローラを接触状態に配置せしめるから、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥を効率良くササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができ、アノード電解によってこのササクレ状凸欠陥を十分に溶解除去できる。
【0041】
[5]の発明では、自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管に対して、自転状態で位置固定状態にある接触ローラを接触状態に配置せしめるから、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥を効率良くササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができ、アノード電解によってこのササクレ状凸欠陥を十分に溶解除去できる。
【0042】
[6]の発明では、接触ローラの周速度よりもアルミニウム管の周速度が大きいので、アルミニウム管外周面の各部と接触ローラとの接触時間を均一化できるし、アルミニウム管の回転中に該管の表面が乾燥するのを防止できる。
【0043】
[7]の発明では、アルミニウム管の周速度よりも接触ローラの周速度が大きいので、ササクレ状凸欠陥を立ち上げる力が強く作用するものとなり、ササクレ状凸欠陥を十分に立ち上げることができるので、ササクレ状凸欠陥の溶解を促進させることができる。
【0044】
[8]の発明では、接触ローラとして、電解液が含浸された多孔連通構造の多孔質軟質体を用いるから、アルミニウム管の外周面と接触ローラの外周面との接触位置の近傍に電解液の液溜まりを安定して形成することができる。
【0045】
[9]の発明では、上記多孔質軟質体として、連続気泡構造の発泡樹脂成形体を用いるから、電解液による劣化が少なく、電解液保持媒体としての機能を長期にわたって維持できる。
【0046】
[10]の発明では、接触ローラの外周面の周方向の一部に当接する状態にスクレーパーを配置して、該スクレーパーによって接触ローラの外周面の清掃を行うから、接触ローラの外周面に付いた塵や汚れが、アルミニウム管の外周面に転移することを十分に防止することができる。
【0047】
[11]の発明では、略円筒形状で内周面が粗面に形成された接触ローラの中空内部空間に、感光ドラム基体用アルミニウム管を内挿状態に配置せしめ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との接触状態を維持しつつ、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設けた状態で、前記接触ローラ及び前記アルミニウム管のうちの少なくともいずれか一方を自転させるので、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥をササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができる。しかして、アルミニウム管と接触ローラとの間に存在せしめた電解液(通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液)に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥をアノード溶解除去することができる。このようにしてアルミニウム管の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0048】
[12]の発明では、接触ローラの内周面の周速度よりもアルミニウム管の外周面の周速度が大きいので、アルミニウム管外周面の各部と接触ローラとの接触時間を均一化できるし、アルミニウム管の回転中に該管の表面が乾燥するのを防止できる。
【0049】
[13]の発明では、アルミニウム管の外周面の周速度よりも接触ローラの内周面の周速度が大きいので、ササクレ状凸欠陥を立ち上げる力が強く作用するものとなり、ササクレ状凸欠陥を十分に立ち上げることができるので、ササクレ状凸欠陥の溶解を促進させることができる。
【0050】
[14]の発明では、接触ローラとして、電解液が含浸された多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体を用いるから、アルミニウム管の外周面に対して電解液を安定して供給することができる。
【0051】
[15]の発明では、上記多孔質軟質体として、連続気泡構造の略円筒形状発泡樹脂成形体を用いるから、電解液による劣化が少なく、電解液保持媒体としての機能を長期にわたって維持できる。
【0052】
[16]の発明では、自転状態で位置固定状態にある感光ドラム基体用アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にあると共に該管との接触面が粗面である接触体を接触状態に配置せしめて、アルミニウム管の外周面における接触体の接触位置を経時的に該管の周方向に移動させるので、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥をササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができる。しかして、アルミニウム管の外周面と接触体との接触位置の近傍に形成せしめた電解液(通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液)の液溜まりの該電解液に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥を速く溶解せしめて除去することができる。このようにしてアルミニウム管の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0053】
[17]の発明では、アルミニウム管の外周面と接触ローラの外周面との接触により、アルミニウム管の外周面の表面欠陥を引っ掛けてササクレ状凸欠陥を立ち上げるので、アルミニウム管の外周面と接触ローラとの接触位置の近傍に形成せしめた電解液(通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液)の液溜まりの該電解液に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥を速く溶解せしめて除去することができる。このようにしてアルミニウム管の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0054】
[18]の発明では、アノード電解工程の前処理工程として、アルミニウム管をカソード電解し、このカソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化する清浄工程を備えているから、外周面の表面欠陥が十分に除去されると共に外周面が十分に清浄化されたアルミニウム管を得ることができる。
【0055】
[19]の発明では、アノード電解工程において、アルミニウム管に対して、前記アノード電解とカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行い、アノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去すると共に、カソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化するから、外周面の表面欠陥が十分に除去されると共に外周面が十分に清浄化されたアルミニウム管を得ることができる。また、1つの工程において、アノード電解とカソード電解を同時並行的に実施できるので、[13]の発明と比較して表面処理の処理効率を向上できる利点がある。
【0056】
[20]の発明に係る感光ドラム基体は、外周面にササクレ状凸欠陥が実質的に存在しないから、この感光ドラム基体の外周面に感光層(OPC等)が被覆形成されてなる感光ドラムは、一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
この発明に係る、アルミニウム管の表面処理装置(1)の一実施形態を図1に示す。図1において、(2)は接触ローラ、(13)(14)は支持体、(16)は回収タンク、(19)は電源装置である。この表面処理装置(1)は、感光ドラム基体用アルミニウム管の表面処理に用いられる。
【0058】
前記支持体(13)は、感光ドラム基体用アルミニウム管(P)を支持するための支持体であり、本第1実施形態では、略円柱体形状に形成されている。前記支持体(13)は、その中心軸線方向が水平方向になる態様で安定状態に固定されている(図1参照)。前記アルミニウム管(P)は、前記支持体(13)の外側に外嵌されることによって、該管(P)の周方向に回転しないように安定状態に支持体(13)に支持固定されている。即ち、前記支持体(13)は、前記アルミニウム管(P)をその中心軸線方向が水平方向になる態様で且つ該管(P)が周方向に回転しないように安定状態に支持固定している。なお、前記支持体(13)は、該支持体(13)の外周面を前記アルミニウム管(P)の内面により強く当接せしめてアルミニウム管(P)をより安定状態に支持固定するために、筒状形状に形成してその周方向に複数個に分割すると共に、これら各分割片(支持体)を径方向における内方側から外方側に向けて付勢するバネ手段を具備せしめた構成としても良い。
【0059】
前記支持体(13)にセットされるアルミニウム管(表面処理対象のアルミニウム管)(P)としては、アルミニウム押出素管に引き抜き加工を行うことによって得られた引抜管(アルミニウムED管)等が挙げられる。
【0060】
前記接触ローラ(2)としては、外形形状が略円柱形状に形成され、多孔連通構造を備えた多孔質軟質体等が挙げられる。この第1実施形態では、前記接触ローラ(2)は略円筒形状に形成され、該接触ローラ(2)の中空内部空間(2a)に略円柱体形状の支持体(14)が内挿状態に配置され(図1参照)、該支持体(14)によって前記接触ローラ(2)は周方向に回転しないように安定状態に支持固定されている。しかして、前記支持体(13)に支持固定されたアルミニウム管(P)の外周面の周方向の少なくとも一部が、前記接触ローラ(2)に接触するように配置されている。
【0061】
前記支持体(13)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されており、該支持体(13)が陽極側の電気接点部を構成する一方、前記支持体(14)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されており、該支持体(14)が陰極側の電気接点部を構成している(図1参照)。これら両極の電気接点部の間で通電することにより、アルミニウム管(P)に対してアノード電解を行う。
【0062】
前記接触ローラ(2)及び前記アルミニウム管(P)の下方位置に、上面が開放された回収タンク(16)が配置されており、この回収タンク(16)内に電解液が収容されている(図1参照)。前記電解液としては、通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液を用いる。
【0063】
図1において、(18)は、回収電解液処理手段である。この回収電解液処理手段(18)は、前記回収タンク(16)内の電解液に、濾過、温度調整及び濃度調整を行う装置である。即ち、前記回収タンク(16)内の電解液は、前記回収電解液処理手段(18)に送液され、該回収電解液処理手段(18)において濾過、温度調整及び濃度調整が行われた後、ポンプ(図示しない)によって供給管(15)を介して前記接触ローラ(2)の外周面と前記アルミニウム管(P)の外周面との接触位置またはその近傍に供給される。この時、図1に示すように、接触ローラ(2)の外周面とアルミニウム管(P)の外周面との接触位置の近傍に電解液の液溜まり(Q)が形成され、微小な電解セルが形成されるので、この電解液の液溜まり(Q)に通電することによって、前記アルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことができる。
【0064】
しかして、前記支持体(14)をその中心軸線を自転軸として自転駆動させることによって前記接触ローラ(2)をその中心軸線を自転軸として自転させると共に、前記支持体(13)をその中心軸線を自転軸として自転駆動させることによって前記アルミニウム管(P)をその中心軸線を自転軸として自転させる(図1参照)。この時、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させる。このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(a)(b)参照)。
【0065】
しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥(93)をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥(93)に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥(93)を速く溶解せしめて除去することができる。
【0066】
このようにしてアルミニウム管(P)の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0067】
上記実施形態では、前記支持体(13)が電源装置(19)の陽極に接続され、前記支持体(14)が電源装置(19)の陰極に接続された構成が採用されていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、アルミニウム管(P)に対してアノード電解を行い得る電気接続になっていればどのような構成であっても良い。例えば、図2に示すような電気接続構成を採用しても良い。即ち、この第2実施形態では、少なくとも表面が電気伝導性材料で形成された支持体(13)が電源装置(19)の陽極に接続され、電源装置(19)の陰極に接続された補助電極板(17)が電解液の液溜まり(Q)に接触する状態に配置されている。このような電気接続構成で電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うようにしても良い。なお、前記補助電極板(17)は、その先端部が絶縁体である構成であれば、該先端部は、前記アルミニウム管(P)に接触していても良い。
【0068】
次に、この発明に係る、アルミニウム管の表面処理装置(1)の他の実施形態(第3実施形態)を図3に示す。図3において、(2)は接触ローラ、(3)は支持体、(6)は回収タンクである。
【0069】
前記支持体(3)は、感光ドラム基体用アルミニウム管(P)を支持するための支持体であり、本実施形態では、略円柱体形状に形成されている。前記支持体(3)は、その中心軸線方向が略上下方向になる態様で安定状態に固定されている(図3参照)。前記アルミニウム管(P)は、前記支持体(3)の外側に外嵌されることによって、該管(P)の周方向に回転しないように安定状態に支持体(3)に支持固定されている。即ち、前記支持体(3)は、前記アルミニウム管(P)をその中心軸線方向が略上下方向になる態様で且つ管(P)が周方向に回転しないように安定状態に支持固定している。なお、前記支持体(3)は、該支持体(3)の外周面を前記アルミニウム管(P)の内面により強く当接せしめてアルミニウム管(P)をより安定状態に支持固定するために、筒状形状に形成してその周方向に複数個に分割すると共に、これら各分割片(支持体)を径方向における内方側から外方側に向けて付勢するバネ手段を具備せしめた構成としても良い。
【0070】
前記支持体(3)にセットされるアルミニウム管(表面処理対象のアルミニウム管)(P)としては、アルミニウム押出素管に引き抜き加工を行うことによって得られた引抜管(アルミニウムED管)等が挙げられる。
【0071】
前記接触ローラ(2)としては、例えば、外形形状が略円柱形状に形成され、多孔連通構造を備えた保水性の多孔質軟質体等が挙げられる。本実施形態では、前記接触ローラ(2)は略円筒形状に形成され、該接触ローラ(2)の中空内部空間(2a)に通液管(4)が内挿状態に配置され(図3、4、5参照)、該通液管(4)によって前記接触ローラ(2)は周方向に回転しないように安定状態に支持固定されている。しかして、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の外周面の周方向の少なくとも一部が、前記接触ローラ(2)に接触するように配置されている。
【0072】
前記通液管(4)は、図5に示すように、一端(図5で上端)に導入口(4b)を有し、他端(図5で下端)が閉塞されていると共に、管壁には多数の吐出孔(4a)が形成されている。しかして、ポンプ(11)を駆動させることによって、前記導入口(4b)を介して前記通液管(4)内に電解液を連続して供給すると、電解液は前記通液管(4)の吐出孔(4a)から吐出されて接触ローラ(2)の内部の多孔連通構造に侵入して通過した(含浸された)後、接触ローラ(2)の外周面から外方に流れ出る。なお、前記電解液としては、通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液を用いる。
【0073】
前記接触ローラ(2)の外周面から外方に流れ出た電解液は、アルミニウム管(P)の外周面における前記接触位置及びその近傍領域で接触してここで微小な電解セルが形成されるので、即ち電解液の液溜まり(Q)が形成されるので、この接触電解液を媒体としてアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことができる。
【0074】
前記通液管(4)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されており、該通液管(4)が陰極側の電気接点部を構成する一方、前記支持体(3)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されており、該支持体(3)が陽極側の電気接点部を構成している(図3参照)。これら両極の電気接点部の間で通電することにより、アルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことができる。
【0075】
前記接触ローラ(2)及び前記アルミニウム管(P)の下方位置に、接触ローラ(2)から流れ出て電解に供されたのちに下方に落下する電解液を受け取るための樋構造の受液部(7)が配置されている。また、前記受液部(7)の下方位置に回収タンク(6)が配置されており、前記受液部(7)で受容した電解液は、前記回収タンク(6)内に送液されるものとなされている(図3参照)。
【0076】
図3において、(8)は、回収電解液処理手段である。この回収電解液処理手段(8)は、前記回収タンク(6)に回収された電解液に、濾過、温度調整及び濃度調整を行う装置である。即ち、前記回収タンク(6)内に回収された電解液は、前記回収電解液処理手段(8)に送液され、該回収電解液処理手段(8)において濾過、温度調整及び濃度調整が行われた後、前記回収タンク(6)内に戻される(図3参照)。前記回収タンク(6)内の電解液は、ポンプ(11)によって前記通液管(4)を介して前記接触ローラ(2)に再供給されるのであるが、前記濾過操作が施されていることによって電解液の汚れを効果的に除去することができ、前記温度調整操作が施されていることによってササクレ状凸欠陥の溶解速度の変動を抑制することができ、前記濃度調整操作が施されていることによってササクレ状凸欠陥の溶解後の表面状態のばらつきを抑制することができる。
【0077】
しかして、上記表面処理装置(1)におけるアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様については複数の実施態様が挙げられるので、以下図面を参照しつつ順次説明する。
【0078】
[第1態様]
この第1態様では、図6に示すように、前記接触ローラ(2)は、該接触ローラ(2)の外周面の周方向の一部と、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の外周面の周方向の一部とが互いに接触した状態を維持しながら、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の周囲を周回移動するものとなされている。即ち、非自転状態とした接触ローラ(2)を、非自転で静止固定状態のアルミニウム管(P)の周囲を周回移動させる(図6参照)。これにより、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させることができる。なお、前記接触ローラ(2)の周回移動は、該接触ローラ(2)に内挿されてこれ(2)を支持固定している通液管(4)を周回駆動制御することによって行われる。
【0079】
このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成された電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥(93)を溶解除去することができる(図12(c)参照)。
【0080】
[第2態様]
この第2態様では、図7に示すように、前記接触ローラ(2)は、該接触ローラ(2)の外周面の周方向の一部と、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の外周面の周方向の一部とが互いに接触した状態を維持しながら、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の周囲を周回移動するものとなされている。また、前記接触ローラ(2)は、前記周回移動の際に該接触ローラの中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御されている。即ち、自転状態とした接触ローラ(2)を、非自転で静止固定状態のアルミニウム管(P)の周囲を周回移動させる(図7参照)。これにより、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させることができる。
【0081】
このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成された電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥(93)を溶解除去することができる(図12(c)参照)。
【0082】
[第3態様]
この第3態様では、図8(a)に示すように、前記接触ローラ(2)は回転しないように前記通液管(4)に支持固定され、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)は該管(P)の中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御されている。即ち、非自転で静止固定状態の接触ローラ(2)に対して、自転状態で位置固定状態のアルミニウム管(P)を接触状態に配置せしめる(図8(a)参照)。これにより、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させることができる。
【0083】
このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成された電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥(93)を溶解除去することができる(図12(c)参照)。
【0084】
なお、この第3態様は、自転状態のアルミニウム管(P)を、回転不可能に固定された状態の接触体(2)に接触させる構成であるから、前記接触体(2)の外形形状の制約が少なくて済む。従って、前記接触体(2)の横断面形状としては、図8(a)のような円形の他、例えば図8(b)のような四角形形状(2X)を採用することも可能であるし、さらには三角形、五角形、六角形、八角形等の他の多角形形状や、楕円形状等を採用することも可能である。
【0085】
[第4態様]
この第4態様では、図9に示すように、前記接触ローラ(2)は、該接触ローラ(2)の中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御される一方、前記支持体(3)に支持されたアルミニウム管(P)は、該管(P)の中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御されている。即ち、自転状態で位置固定状態にある接触ローラ(2)に対して、自転状態で位置固定状態のアルミニウム管(P)を接触状態に配置せしめる(図9参照)。これにより、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させることができる。
【0086】
このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成された電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥(93)を溶解除去することができる(図12(c)参照)。
【0087】
なお、前記接触ローラ(2)の自転は、該接触ローラ(2)に内挿されてこれ(2)を支持固定している通液管(4)を自転駆動制御することによって行われる。また、アルミニウム管(P)の自転は、該管(P)に内挿されてこれ(P)を支持固定している支持体(3)を自転駆動制御することによって行われる。
【0088】
また、前記第4態様では、略板状のスクレーパー(5)の先端縁が、自転駆動する接触ローラ(2)の外周面の周方向の一部に当接する状態に配置されている(図9参照)から、接触ローラ(2)の外周面に付いた塵や汚れを該スクレーパー(5)の先端縁で除去することができ、これにより塵や汚れがアルミニウム管(P)の外周面に転移することを十分に防止することができる。
【0089】
なお、図9に示した構成では、接触ローラ(2)の自転方向とアルミニウム管(P)の自転方向は同一の回転方向(図9では両者ともに反時計回り方向)になるように構成されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けることができるのであれば、接触ローラ(2)の自転方向とアルミニウム管(P)の自転方向が逆の回転方向(いずれか一方が反時計回り方向で他方が時計回り方向)になるように構成されていても良い。
【0090】
次に、前記支持体(3)に支持されたアルミニウム管(P)と、接触ローラ(2)との相互配置形態の変形例を図10、11に示す。この図10、11に示す構成では、接触ローラ(2Y)は略円筒形状に形成され、該接触ローラ(2Y)の中空内部空間に、支持体(3)に支持されたアルミニウム管(P)が内挿状態に配置されている。また、前記アルミニウム管(P)の外周面と前記接触ローラ(2Y)の内周面とが接触するように配置されている。前記接触ローラ(2)としては、例えば、多孔連通構造を備えた保水性の略円筒形状多孔質軟質体等が挙げられる。
【0091】
また、前記接触ローラ(2Y)の外周面を被覆する態様で外筒体(21)が配置されている。前記外筒体(21)は、少なくとも表面が電気伝導性材料で形成されている。この外筒体(21)が陰極側の電気接点部を構成し、前記支持体(3)が陽極側の電気接点部を構成している。前記外筒体(21)の下端位置には導入管(23)が接続され、前記外筒体(21)の上端縁の一部にV字状の排出溝(22)が形成されている。電解液は、前記導入管(23)を介して前記接触ローラ(2Y)に供給され、この接触ローラ(2Y)の内部の多孔連通構造に侵入して上方に向けて通過した後、前記外筒体(21)の上端縁の排出溝(22)から外方に流れ出る。こうして外筒体(21)内は電解液で満たされているので、前記接触ローラ(2Y)の内部に常に電解液が供給される。なお、前記排出溝(22)から外方に流れ出た電解液は、前記受液部(7)を介して回収タンク(6)に回収される。前記電解液として、通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液を用いる。前記接触ローラ(2Y)及び前記アルミニウム管(P)は、いずれもその中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御されている。
【0092】
なお、図11では、接触ローラ(2Y)の自転方向とアルミニウム管(P)の自転方向は、逆の回転方向になるように構成されているが、同一の回転方向(両者ともに反時計回り方向又は両者ともに時計回り方向)になるように構成されていても良い。
【0093】
また、図11では、接触ローラ(2Y)及びアルミニウム管(P)の両方が自転駆動するものとなされているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、接触ローラ(2Y)が回転不能に固定され、アルミニウム管(P)だけが自転駆動するように構成されていても良いし、或いはアルミニウム管(P)が回転不能に固定され、接触ローラ(2Y)だけが自転駆動するように構成されていても良い。
【0094】
しかして、図3〜11の各実施形態では、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態でアルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥(93)をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥(93)に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥(93)を速く溶解せしめて除去することができる(図12(c)参照)。
【0095】
このようにしてアルミニウム管(P)の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0096】
上記実施形態では、支持体(14)、通液管(4)又は外筒体(21)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されることによって陰極側の電気接点部を構成し、また支持体(3)(13)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されることによって該支持体(3)(13)が陽極側の電気接点部を構成していたが、これら電気接点になるための電気伝導性材料としては、特に限定されるものではないが、Au、Pt、Zr、Ti、Al及びCからなる群より選ばれる1種または2種以上の電気伝導性材料が好適である。Au、Pt、Zr、Ti、Al及びCからなる群より選ばれる1種または2種以上の電気伝導性材料を用いて電気接点部を構成した場合には、電気接点部で溶損することがなく、電気接点部としての機能を長期にわたって維持できる。
【0097】
この発明において、前記接触体(2)としては、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された軟質体からなる接触ローラ、又は略円筒形状で内周面が粗面に形成された軟質体からなる接触ローラが好適に用いられるが、特にこれらに限定されるものではなく、例えば前記第3態様を採用する場合にはアルミニウム管(P)と接触する表面が粗面に形成された接触体であればどのような形状のものでも使用できる(図8(b)参照)。前記粗面としては、アルミニウム管(P)外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けて立ち上げることができる粗面(例えばザラザラな表面等)であればどのような形態であっても良い。即ち、前記接触体(2)としては、例えば、連続気泡構造の発泡樹脂成形体の他、外周面が粗面(ザラザラな表面等)に形成されたゴム成形体、不織布等の繊維構造体などが挙げられる。中でも、多孔連通構造を備えた多孔質軟質体が好ましく、特に好適なのは連続気泡構造の発泡樹脂成形体である。前記連続気泡構造の発泡樹脂成形体の樹脂素材としては、特に限定されないが、例えばPVA(ポリビニルアルコール)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、海綿等が挙げられる。
【0098】
また、前記電解液としては、電解液に通電を行っても陽極酸化皮膜を形成しないものであれば特に限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ソルビット、塩酸、硝酸、酢酸等のいずれか少なくとも1種の物質を含有してなる電解液などが挙げられる。
【0099】
また、前記アルミニウム管(P)としては、Al−Mn系合金、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金または純Alからなる管が、ED管として加工性が良い点で、好ましく用いられるが、特にこれら例示のものに限定されるものではない。
【0100】
また、この発明の表面処理方法では、前記アノード電解工程の前処理工程として、アルミニウム管をカソード電解し、このカソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化する清浄工程を設けるのが好ましい。この場合には、外周面の表面欠陥が十分に除去されると共に外周面が十分に清浄化されたアルミニウム管を得ることができる。
【0101】
或いは、前記アノード電解工程において、アルミニウム管に対して、アノード電解とカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行うのが好ましい。この場合には、アノード電解を行うことによって前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去できると共に、カソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化できる。
【0102】
なお、前記カソード電解の際には、カソードから発生した水素ガスがアルミニウム管の表面付近の電解液を攪拌するので、アルミニウム管の外周面の汚れを迅速に落とす効果が得られる。また、水素ガスは、アルミニウム管の隅々にまで発生するので、狭い隙間、クラック、ピンホールの中まで清浄化できる。
【実施例】
【0103】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0104】
<処理対象のアルミニウム管の製造>
Mn:1.12質量%、Si:0.11質量%、Fe:0.39質量%、Cu:0.16質量%、Zn:0.01質量%、Mg:0.02質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるビレットを、押出温度520℃、押出速度5m/分で押出加工することによって、アルミニウム押出素管(外径32mm、管壁厚さ1.5mm)を得た。
【0105】
得られたアルミニウム押出素管を切断機で切断して長さ2.2mの押出素管を多数本得た。これら多数本の押出素管の表面を倍率10倍のルーペで観察し、これらの中から表面に微小アルミニウム片(アルミニウム滓)が付着しているものを選別した。
【0106】
前記選んだ押出素管を引き抜き加工することによって、鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(外径24mm、管壁厚さ0.8mm)を得た。なお、得られたED管の外周面における鱗片状表面欠陥が存在する位置には、これ以降の表面の変化を追跡できるように、印を付けた。
【0107】
<実施例1>
前記鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(P)を、前述した図3の表面処理装置(1)の支持体(3)に支持固定せしめた(図4参照)。なお、表面処理装置(1)において、支持体(13)はTi製であり、通気管(4)はTi製であり、接触ローラ(2)は連続気泡構造の塩化ビニル樹脂発泡成形体からなり、電解液としては、水酸化ナトリウム濃度が50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様は、図6に示す態様になるように設定した。即ち、非自転状態とした接触ローラ(2)を、非自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管(P)の外周面の周囲を12周/分の周回速度で周回移動させた。しかして、このように周回移動させながら、電解液の液溜まり(Q)が存在した状態で3A/dm2で2分間のアノード電解を行うことによって、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0108】
<実施例2>
前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様を図7に示す態様になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0109】
なお、接触ローラ(2)の反時計回りの周回移動の周回速度を12周/分に設定し、接触ローラ(2)の時計回りの回転(自転)速度を20rpmに設定した(図7参照)。
【0110】
<実施例3>
前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様を図8に示す態様になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0111】
なお、アルミニウムED管(P)の反時計回りの回転(自転)速度を15rpmに設定した(図8参照)。
【0112】
<実施例4>
前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様を図9に示す態様になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0113】
なお、アルミニウムED管(P)の反時計回りの回転(自転)速度を30rpmに設定し、接触ローラ(2)の反時計回りの回転(自転)速度を30rpmに設定した(図9参照)。
【0114】
<実施例5>
前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様を図10、11に示す態様になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0115】
なお、アルミニウムED管(P)の時計回りの回転(自転)速度を20rpmに設定し、接触ローラ(2)の反時計回りの回転(自転)速度を5rpmに設定した(図11参照)。
【0116】
<実施例6>
前記鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(外径24mm、管壁厚さ0.8mm)を準備し、このアルミニウムED管(P)に対し、前処理として1.0A/dm2で2分間のカソード電解を行った(前処理工程)。
【0117】
次に、前記前処理を経たアルミニウムED管(P)を、前述した図3の表面処理装置(1)の支持体(3)に支持固定せしめた(図4参照)。なお、表面処理装置(1)において、支持体(13)はTi製であり、通気管(4)はTi製であり、接触ローラ(2)は連続気泡構造の塩化ビニル樹脂発泡成形体からなり、電解液としては、水酸化ナトリウム濃度が50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様は、図6に示す態様になるように設定した。即ち、非自転状態とした接触ローラ(2)を、非自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管(P)の外周面の周囲を12周/分の周回速度で周回移動させた。しかして、このように周回移動させながら、電解液の液溜まり(Q)が存在した状態で3A/dm2で2分間のアノード電解を行う(アノード電解工程)ことによって、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0118】
<実施例7>
実施例1のアノード電解において、3A/dm2でのアノード電解と1A/dm2でのカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行うものとした以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。なお、アノード電解の合計電解時間は2分間とし、カソード電解の合計電解時間は1分間とした。
【0119】
<実施例8>
前記鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(P)を、前述した図1の表面処理装置(1)の支持体(13)に支持固定せしめた(図1参照)。なお、表面処理装置(1)において、支持体(13)はTi製であり、支持体(14)はTi製であり、接触ローラ(2)はポリエチレン製不織布で形成された外周面が粗面(不織布繊維によるザラザラな表面)の略円柱体からなり、電解液としては、水酸化ナトリウム濃度が50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様は、図1に示す態様になるように設定した。また、アルミニウムED管の周速度:接触ローラの周速度=1:3に設定した(図1参照)。しかして、このような相対移動をさせながら、電解液の液溜まり(Q)が存在した状態で3A/dm2で2分間のアノード電解を行うことによって、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0120】
<比較例1>
表面処理(アノード電解)を行わないものとした以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を得た。
【0121】
<比較例2>
前記鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(P)の外周面を、中性洗剤水溶液が含浸されたポリエステル繊維製の布で擦ることによって表面処理して、感光ドラム基体用アルミニウム管を得た。
【0122】
【表1】
【0123】
上記のようにして得られた実施例1〜8及び比較例1、2のアルミニウム管に対して、それぞれ下記評価法に基づいて表面品質の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0124】
<表面品質(ササクレ状凸欠陥の有無)評価法>
得られたアルミニウム管を純水に浸漬し、この浸漬状態で35kHzの超音波を3分間照射した後、アルミニウム管を取り出し、該アルミニウム管の表面を倍率10倍のルーペで目視観察して、ササクレ状凸欠陥(鱗片状表面欠陥が立ち上がったもの)の有無を調べた。
【0125】
<管の表面の清浄性評価法>
得られたアルミニウム管の表面を目視観察し、異物付着や油分付着の有無を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…異物付着や油分付着が全く認められず非常に清浄性に優れていた
「○」…異物付着や油分付着が実質的に認められないレベルであり清浄性に優れていた
「×」…異物付着、油分付着が認められ、清浄性に劣っていた。
【0126】
表1から明らかなように、本発明の表面処理方法が適用された実施例1〜8のアルミニウム管は、表面にササクレ状凸欠陥がなく、表面品質に優れていた。
【0127】
これに対し、表面処理を全く行わなかった比較例1では、アルミニウム管は、表面にササクレ状凸欠陥が発生しており、表面品質に劣っていた。また、ポリエステル繊維製の布で擦る表面処理を行った比較例2でも、表面にササクレ状凸欠陥が発生しており、表面品質に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
この発明の表面処理方法で処理して製造されたアルミニウム管は、表面品質に優れているので、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置のOPC感光ドラム用基体として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】この発明に係る表面処理装置の一実施形態を示す模式的概略図である。
【図2】この発明に係る表面処理装置の他の実施形態を示す模式的概略図である。
【図3】この発明に係る表面処理装置のさらに他の実施形態を示す模式的概略図である。
【図4】支持体に支持されたアルミニウム管と、接触ローラとの配置形態を示す斜視図である。
【図5】接触ローラと通液管を分離させた状態で示す斜視図である。
【図6】アルミニウム管と接触ローラの相対移動態様の一例を示す平面図(上面図)である。
【図7】アルミニウム管と接触ローラの相対移動態様の他の例を示す平面図である。
【図8】アルミニウム管と接触ローラの相対移動態様のさらに他の例を示す平面図である。
【図9】アルミニウム管と接触ローラの相対移動態様のさらに他の例を示す平面図である。
【図10】支持体に支持されたアルミニウム管と、接触ローラとの配置形態の変形例を示す斜視図である。
【図11】図10の変形例の平面図である。
【図12】この発明の表面処理方法で処理したアルミニウム管の表面状態を経過順に示す模式的断面図であり、(a)は本表面処理方法を実施する前のアルミニウム管の表面状態、(b)はアルミニウム管の外周面に存在する鱗片状表面欠陥を接触ローラとの接触により立ち上げてササクレ状凸欠陥とした表面状態、(c)はアノード電解によりササクレ状凸欠陥を溶解除去した表面状態をそれぞれ示す。
【図13】従来法で表面処理した場合のアルミニウム管の表面状態を示す模式的断面図である。
【図14】ササクレ状凸欠陥の発生経路を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0130】
1…表面処理装置
2…接触ローラ
2a…中空内部空間
5…スクレーパー
93…ササクレ状凸欠陥
P…アルミニウム管
Q…電解液の液溜まり
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置のOPC感光ドラム用の基体等として用いられる表面品質に優れた感光ドラム基体用アルミニウム管を製造するためのアノード電解による表面処理方法及び該方法で表面処理して得られた表面品質に優れた感光ドラム基体に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。
【背景技術】
【0003】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置の感光ドラムの基体として用いられるアルミニウム管は、その表面に均一なOPC(有機光導電体)塗膜を形成させる必要があることから、鏡面に近い表面状態であることが要求される。
【0004】
従来は、アルミニウム管を切削することによって鏡面仕上げが行われていたが、切削用刃具の調整や管理が容易でない上に作業に熟練を要することから、大量生産には適さないという問題があった。
【0005】
そこで、近年では、アルミニウム圧延板をしごき加工したDI管、アルミニウム押出素管をしごき加工したEI管、アルミニウム押出素管を引き抜き加工したED管などの無切削管が、感光ドラム用基体として多く用いられるようになってきている。中でも、ED管は、他の無切削管とは異なり、10本以上の管を1加工(2回の引抜加工)で生産できるので大量生産に適しており、市場拡大に伴う大量消費に対応し得るものとして注目されている。
【0006】
ED管は、一般に、アルミニウム製のビレットを押出してアルミニウム押出素管を得た後、該押出素管を所定長さに切断し、これを引き抜き加工することによって外径、内径、管壁の肉厚が所定値に規定されたアルミニウム管を得、次いで切断、端部の面取り加工、洗浄を順次行い、さらに寸法及び外観の検査を経て、製造されている。
【0007】
上記ED管からなる感光ドラム用基体は、高度の表面平滑性と寸法精度を有していることが求められるが、無切削加工であるために、押出加工のダイスラインに起因したスジ状欠陥や、引き抜き加工の潤滑油押し込みに起因したオイルピット等の微細な表面欠陥を有している。
【0008】
とりわけ、微小なアルミニウム片(91)が表面に付着した押出素管が引き抜かれて発生する鱗片状の表面欠陥(92)は、超音波洗浄や、OPC塗工時の熱の影響等によって立ち上がってササクレ状の凸欠陥(93)を生じやすかった(図14参照)。このようなササクレ状凸欠陥(93)が感光ドラム用基体の表面に存在すると、感光ドラムを構成して一様帯電した際に、該ササクレ状凸欠陥(93)がリーク(漏電)の起点になりやすく、画像が劣化するという問題があった。
【0009】
このようなササクレ状凸欠陥の発生を防止する技術として、押出ダイスのベアリング部の周方向における中心線平均粗さRa(Y)と押出方向における中心線平均粗さRa(X)との関係が、Ra(Y)<Ra(X)に設定された押出ダイスを用いて押出加工を行ってアルミニウム押出素管を製造することによって、ササクレ状凸欠陥の原因になっている押出素管表面での微小なアルミニウム片の付着(発生)を抑制する方法が公知である(特許文献1参照)。
【0010】
また、アルミニウム押出素管の表面に付着した微小なアルミニウム片を、引き抜き加工を行う前に、軟質性の摺擦部材でこすり落として除去することによって、ササクレ状凸欠陥の発生を防止する方法も知られている(特許文献2参照)。
【0011】
また、ED管の表面を布、紙、スポンジまたは研磨テープで拭くことによってED管表面のササクレ状凸欠陥を折り取って除去する方法も知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−267122号公報
【特許文献2】特開2006−159288号公報
【特許文献3】特開平8−82939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来技術では次のような問題があった。即ち、特許文献1に記載された方法によれば、ED管表面でのササクレ状凸欠陥の発生を抑制することができるものの、稀にササクレ状凸欠陥が発生することがあり、ササクレ状凸欠陥の発生を確実に防止できるまでには至っていなかった。
【0013】
また、特許文献2に記載の方法では、押出素管が引き抜かれて発生する鱗片状の表面欠陥を大幅に減少せしめることができたものの、アルミニウム片が素管表面に一体化していて十分に除去できない場合があり、このためにササクレ状凸欠陥の発生を確実に防止できるまでには至っていなかった。
【0014】
また、特許文献3(段落0007参照)では、ササクレ状凸欠陥が、不均質箇所や晶出物、偏在物が引き起こされて生じたので折れやすいと記載されているが、実際には組織的に正常な箇所からも凸欠陥は生じており、この場合には布、紙、スポンジ等で拭き取ることによって図13(a)に示すようにササクレ状凸欠陥(93)がより一層立ち上がって除去されることなく残ってしまう(より大きな欠陥になる)という問題があった。即ち、組織的に正常な箇所から生じた凸欠陥は、根元は管と一体化しているので、布、紙、スポンジ等で拭いても除去することはできず、逆に布、紙、スポンジ等の拭き取り材の繊維に引っ掛かってササクレ状凸欠陥(93)が立ち上がって除去されることなく残ってしまう。また、研磨テープを用いて研磨した場合には、図13(b)に示すように、鱗片状の表面欠陥を除去できるものの、砥粒(97)をテープに保持して擦り付けるので強い力が作用してしまってバリ状の突起欠陥(98)が新たに発生してこれがリーク(漏電)の原因になるという問題があった。
【0015】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、ササクレ状凸欠陥のない表面品質に優れたアルミニウム管の製造が可能となる感光ドラム基体用アルミニウム管の表面処理方法及びササクレ状凸欠陥がなく表面品質に優れると共に高品質の画像を形成できる感光ドラム基体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0017】
[1]感光ドラム基体用アルミニウム管と、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された接触ローラとを互いに外周面において接触するように配置し、この接触状態を維持しつつ、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設けた状態で前記アルミニウム管の外周面における前記接触ローラの接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、前記アルミニウム管の外周面と前記接触ローラの外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0018】
[2]非自転状態とした前記接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させることを特徴とする前項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0019】
[3]自転状態とした前記接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させることを特徴とする前項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0020】
[4]自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にある前記接触ローラを接触状態に配置せしめることを特徴とする前項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0021】
[5]自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管に対して、自転状態で位置固定状態にある前記接触ローラを接触状態に配置せしめることを特徴とする前項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0022】
[6]前記アルミニウム管の周速度を、前記接触ローラの周速度よりも大きくして、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設ける前項1〜5のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0023】
[7]前記接触ローラの周速度を、アルミニウム管の周速度よりも大きくして、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設ける前項1〜5のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0024】
[8]前記接触ローラとして、外形形状が略円柱形状であり、電解液が含浸された多孔連通構造の多孔質軟質体を用いる前項1〜7のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0025】
[9]前記多孔連通構造の多孔質軟質体が、連続気泡構造の発泡樹脂成形体である前項8に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0026】
[10]前記接触ローラの外周面の周方向の一部に当接する状態にスクレーパーを配置して、該スクレーパーによって前記接触ローラの外周面の清掃を行うことを特徴とする前項1〜9のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0027】
[11]略円筒形状で内周面が粗面に形成された接触ローラの中空内部空間に、感光ドラム基体用アルミニウム管を内挿状態に配置せしめ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との接触状態を維持しつつ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設けた状態で、前記接触ローラ及び前記アルミニウム管のうちの少なくともいずれか一方を自転させながら、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に存在せしめた電解液であって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0028】
[12]前記アルミニウム管の外周面の周速度を、前記接触ローラの内周面の周速度よりも大きくして、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設ける前項11に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0029】
[13]前記接触ローラの内周面の周速度を、前記アルミニウム管の外周面の周速度よりも大きくして、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設ける前項11に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0030】
[14]前記接触ローラとして、電解液が含浸された多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体を用いる前項11〜13のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0031】
[15]前記多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体が、連続気泡構造の略円筒形状発泡樹脂成形体である前項14に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0032】
[16]自転状態で位置固定状態にある感光ドラム基体用アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にあると共に該管との接触面が粗面である接触体を接触状態に配置せしめて、前記アルミニウム管の外周面における前記接触体の接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、前記アルミニウム管の外周面と前記接触体の表面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触体との接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0033】
[17]感光ドラム基体用アルミニウム管の外周面と接触ローラの外周面とを接触させることによって前記アルミニウム管の外周面の表面欠陥を引っ掛けてササクレ状凸欠陥を立ち上げると共に、前記アルミニウム管の外周面と前記接触ローラの外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0034】
[18]前記アノード電解工程の前処理工程として、前記アルミニウム管をカソード電解し、このカソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化する清浄工程を有することを特徴とする前項1〜17のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0035】
[19]前記アノード電解工程において、前記アルミニウム管に対して、前記アノード電解とカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行い、前記アノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去すると共に、前記カソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化することを特徴とする前項1〜17のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【0036】
[20]前項1〜19のいずれか1項に記載の表面処理方法で表面処理して得られたアルミニウム管からなる感光ドラム基体。
【発明の効果】
【0037】
[1]の発明では、感光ドラム基体用アルミニウム管と、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された接触ローラとを互いに外周面において接触するように配置し、この接触状態を維持しつつ、アルミニウム管と接触ローラとの間に周速度差を設けた状態でアルミニウム管の外周面における接触ローラの接触位置を経時的に該管の周方向に移動させるので、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥をササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができる。しかして、アルミニウム管の外周面と接触ローラとの接触位置の近傍に形成せしめた電解液(通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液)の液溜まりの該電解液に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥を速く溶解せしめて除去することができる。このようにしてアルミニウム管の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0038】
[2]の発明では、非自転状態とした接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させるから、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥を効率良くササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができ、アノード電解によってこのササクレ状凸欠陥を十分に溶解除去できる。
【0039】
[3]の発明では、自転状態とした接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させるから、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥を効率良くササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができ、アノード電解によってこのササクレ状凸欠陥を十分に溶解除去できる。
【0040】
[4]の発明では、自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にある接触ローラを接触状態に配置せしめるから、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥を効率良くササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができ、アノード電解によってこのササクレ状凸欠陥を十分に溶解除去できる。
【0041】
[5]の発明では、自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管に対して、自転状態で位置固定状態にある接触ローラを接触状態に配置せしめるから、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥を効率良くササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができ、アノード電解によってこのササクレ状凸欠陥を十分に溶解除去できる。
【0042】
[6]の発明では、接触ローラの周速度よりもアルミニウム管の周速度が大きいので、アルミニウム管外周面の各部と接触ローラとの接触時間を均一化できるし、アルミニウム管の回転中に該管の表面が乾燥するのを防止できる。
【0043】
[7]の発明では、アルミニウム管の周速度よりも接触ローラの周速度が大きいので、ササクレ状凸欠陥を立ち上げる力が強く作用するものとなり、ササクレ状凸欠陥を十分に立ち上げることができるので、ササクレ状凸欠陥の溶解を促進させることができる。
【0044】
[8]の発明では、接触ローラとして、電解液が含浸された多孔連通構造の多孔質軟質体を用いるから、アルミニウム管の外周面と接触ローラの外周面との接触位置の近傍に電解液の液溜まりを安定して形成することができる。
【0045】
[9]の発明では、上記多孔質軟質体として、連続気泡構造の発泡樹脂成形体を用いるから、電解液による劣化が少なく、電解液保持媒体としての機能を長期にわたって維持できる。
【0046】
[10]の発明では、接触ローラの外周面の周方向の一部に当接する状態にスクレーパーを配置して、該スクレーパーによって接触ローラの外周面の清掃を行うから、接触ローラの外周面に付いた塵や汚れが、アルミニウム管の外周面に転移することを十分に防止することができる。
【0047】
[11]の発明では、略円筒形状で内周面が粗面に形成された接触ローラの中空内部空間に、感光ドラム基体用アルミニウム管を内挿状態に配置せしめ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との接触状態を維持しつつ、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設けた状態で、前記接触ローラ及び前記アルミニウム管のうちの少なくともいずれか一方を自転させるので、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥をササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができる。しかして、アルミニウム管と接触ローラとの間に存在せしめた電解液(通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液)に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥をアノード溶解除去することができる。このようにしてアルミニウム管の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0048】
[12]の発明では、接触ローラの内周面の周速度よりもアルミニウム管の外周面の周速度が大きいので、アルミニウム管外周面の各部と接触ローラとの接触時間を均一化できるし、アルミニウム管の回転中に該管の表面が乾燥するのを防止できる。
【0049】
[13]の発明では、アルミニウム管の外周面の周速度よりも接触ローラの内周面の周速度が大きいので、ササクレ状凸欠陥を立ち上げる力が強く作用するものとなり、ササクレ状凸欠陥を十分に立ち上げることができるので、ササクレ状凸欠陥の溶解を促進させることができる。
【0050】
[14]の発明では、接触ローラとして、電解液が含浸された多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体を用いるから、アルミニウム管の外周面に対して電解液を安定して供給することができる。
【0051】
[15]の発明では、上記多孔質軟質体として、連続気泡構造の略円筒形状発泡樹脂成形体を用いるから、電解液による劣化が少なく、電解液保持媒体としての機能を長期にわたって維持できる。
【0052】
[16]の発明では、自転状態で位置固定状態にある感光ドラム基体用アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にあると共に該管との接触面が粗面である接触体を接触状態に配置せしめて、アルミニウム管の外周面における接触体の接触位置を経時的に該管の周方向に移動させるので、アルミニウム管の外周面の鱗片状表面欠陥をササクレ状凸欠陥にして立ち上げることができる。しかして、アルミニウム管の外周面と接触体との接触位置の近傍に形成せしめた電解液(通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液)の液溜まりの該電解液に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥を速く溶解せしめて除去することができる。このようにしてアルミニウム管の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0053】
[17]の発明では、アルミニウム管の外周面と接触ローラの外周面との接触により、アルミニウム管の外周面の表面欠陥を引っ掛けてササクレ状凸欠陥を立ち上げるので、アルミニウム管の外周面と接触ローラとの接触位置の近傍に形成せしめた電解液(通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液)の液溜まりの該電解液に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥を速く溶解せしめて除去することができる。このようにしてアルミニウム管の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0054】
[18]の発明では、アノード電解工程の前処理工程として、アルミニウム管をカソード電解し、このカソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化する清浄工程を備えているから、外周面の表面欠陥が十分に除去されると共に外周面が十分に清浄化されたアルミニウム管を得ることができる。
【0055】
[19]の発明では、アノード電解工程において、アルミニウム管に対して、前記アノード電解とカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行い、アノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去すると共に、カソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化するから、外周面の表面欠陥が十分に除去されると共に外周面が十分に清浄化されたアルミニウム管を得ることができる。また、1つの工程において、アノード電解とカソード電解を同時並行的に実施できるので、[13]の発明と比較して表面処理の処理効率を向上できる利点がある。
【0056】
[20]の発明に係る感光ドラム基体は、外周面にササクレ状凸欠陥が実質的に存在しないから、この感光ドラム基体の外周面に感光層(OPC等)が被覆形成されてなる感光ドラムは、一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
この発明に係る、アルミニウム管の表面処理装置(1)の一実施形態を図1に示す。図1において、(2)は接触ローラ、(13)(14)は支持体、(16)は回収タンク、(19)は電源装置である。この表面処理装置(1)は、感光ドラム基体用アルミニウム管の表面処理に用いられる。
【0058】
前記支持体(13)は、感光ドラム基体用アルミニウム管(P)を支持するための支持体であり、本第1実施形態では、略円柱体形状に形成されている。前記支持体(13)は、その中心軸線方向が水平方向になる態様で安定状態に固定されている(図1参照)。前記アルミニウム管(P)は、前記支持体(13)の外側に外嵌されることによって、該管(P)の周方向に回転しないように安定状態に支持体(13)に支持固定されている。即ち、前記支持体(13)は、前記アルミニウム管(P)をその中心軸線方向が水平方向になる態様で且つ該管(P)が周方向に回転しないように安定状態に支持固定している。なお、前記支持体(13)は、該支持体(13)の外周面を前記アルミニウム管(P)の内面により強く当接せしめてアルミニウム管(P)をより安定状態に支持固定するために、筒状形状に形成してその周方向に複数個に分割すると共に、これら各分割片(支持体)を径方向における内方側から外方側に向けて付勢するバネ手段を具備せしめた構成としても良い。
【0059】
前記支持体(13)にセットされるアルミニウム管(表面処理対象のアルミニウム管)(P)としては、アルミニウム押出素管に引き抜き加工を行うことによって得られた引抜管(アルミニウムED管)等が挙げられる。
【0060】
前記接触ローラ(2)としては、外形形状が略円柱形状に形成され、多孔連通構造を備えた多孔質軟質体等が挙げられる。この第1実施形態では、前記接触ローラ(2)は略円筒形状に形成され、該接触ローラ(2)の中空内部空間(2a)に略円柱体形状の支持体(14)が内挿状態に配置され(図1参照)、該支持体(14)によって前記接触ローラ(2)は周方向に回転しないように安定状態に支持固定されている。しかして、前記支持体(13)に支持固定されたアルミニウム管(P)の外周面の周方向の少なくとも一部が、前記接触ローラ(2)に接触するように配置されている。
【0061】
前記支持体(13)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されており、該支持体(13)が陽極側の電気接点部を構成する一方、前記支持体(14)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されており、該支持体(14)が陰極側の電気接点部を構成している(図1参照)。これら両極の電気接点部の間で通電することにより、アルミニウム管(P)に対してアノード電解を行う。
【0062】
前記接触ローラ(2)及び前記アルミニウム管(P)の下方位置に、上面が開放された回収タンク(16)が配置されており、この回収タンク(16)内に電解液が収容されている(図1参照)。前記電解液としては、通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液を用いる。
【0063】
図1において、(18)は、回収電解液処理手段である。この回収電解液処理手段(18)は、前記回収タンク(16)内の電解液に、濾過、温度調整及び濃度調整を行う装置である。即ち、前記回収タンク(16)内の電解液は、前記回収電解液処理手段(18)に送液され、該回収電解液処理手段(18)において濾過、温度調整及び濃度調整が行われた後、ポンプ(図示しない)によって供給管(15)を介して前記接触ローラ(2)の外周面と前記アルミニウム管(P)の外周面との接触位置またはその近傍に供給される。この時、図1に示すように、接触ローラ(2)の外周面とアルミニウム管(P)の外周面との接触位置の近傍に電解液の液溜まり(Q)が形成され、微小な電解セルが形成されるので、この電解液の液溜まり(Q)に通電することによって、前記アルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことができる。
【0064】
しかして、前記支持体(14)をその中心軸線を自転軸として自転駆動させることによって前記接触ローラ(2)をその中心軸線を自転軸として自転させると共に、前記支持体(13)をその中心軸線を自転軸として自転駆動させることによって前記アルミニウム管(P)をその中心軸線を自転軸として自転させる(図1参照)。この時、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させる。このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(a)(b)参照)。
【0065】
しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥(93)をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥(93)に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥(93)を速く溶解せしめて除去することができる。
【0066】
このようにしてアルミニウム管(P)の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0067】
上記実施形態では、前記支持体(13)が電源装置(19)の陽極に接続され、前記支持体(14)が電源装置(19)の陰極に接続された構成が採用されていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、アルミニウム管(P)に対してアノード電解を行い得る電気接続になっていればどのような構成であっても良い。例えば、図2に示すような電気接続構成を採用しても良い。即ち、この第2実施形態では、少なくとも表面が電気伝導性材料で形成された支持体(13)が電源装置(19)の陽極に接続され、電源装置(19)の陰極に接続された補助電極板(17)が電解液の液溜まり(Q)に接触する状態に配置されている。このような電気接続構成で電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うようにしても良い。なお、前記補助電極板(17)は、その先端部が絶縁体である構成であれば、該先端部は、前記アルミニウム管(P)に接触していても良い。
【0068】
次に、この発明に係る、アルミニウム管の表面処理装置(1)の他の実施形態(第3実施形態)を図3に示す。図3において、(2)は接触ローラ、(3)は支持体、(6)は回収タンクである。
【0069】
前記支持体(3)は、感光ドラム基体用アルミニウム管(P)を支持するための支持体であり、本実施形態では、略円柱体形状に形成されている。前記支持体(3)は、その中心軸線方向が略上下方向になる態様で安定状態に固定されている(図3参照)。前記アルミニウム管(P)は、前記支持体(3)の外側に外嵌されることによって、該管(P)の周方向に回転しないように安定状態に支持体(3)に支持固定されている。即ち、前記支持体(3)は、前記アルミニウム管(P)をその中心軸線方向が略上下方向になる態様で且つ管(P)が周方向に回転しないように安定状態に支持固定している。なお、前記支持体(3)は、該支持体(3)の外周面を前記アルミニウム管(P)の内面により強く当接せしめてアルミニウム管(P)をより安定状態に支持固定するために、筒状形状に形成してその周方向に複数個に分割すると共に、これら各分割片(支持体)を径方向における内方側から外方側に向けて付勢するバネ手段を具備せしめた構成としても良い。
【0070】
前記支持体(3)にセットされるアルミニウム管(表面処理対象のアルミニウム管)(P)としては、アルミニウム押出素管に引き抜き加工を行うことによって得られた引抜管(アルミニウムED管)等が挙げられる。
【0071】
前記接触ローラ(2)としては、例えば、外形形状が略円柱形状に形成され、多孔連通構造を備えた保水性の多孔質軟質体等が挙げられる。本実施形態では、前記接触ローラ(2)は略円筒形状に形成され、該接触ローラ(2)の中空内部空間(2a)に通液管(4)が内挿状態に配置され(図3、4、5参照)、該通液管(4)によって前記接触ローラ(2)は周方向に回転しないように安定状態に支持固定されている。しかして、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の外周面の周方向の少なくとも一部が、前記接触ローラ(2)に接触するように配置されている。
【0072】
前記通液管(4)は、図5に示すように、一端(図5で上端)に導入口(4b)を有し、他端(図5で下端)が閉塞されていると共に、管壁には多数の吐出孔(4a)が形成されている。しかして、ポンプ(11)を駆動させることによって、前記導入口(4b)を介して前記通液管(4)内に電解液を連続して供給すると、電解液は前記通液管(4)の吐出孔(4a)から吐出されて接触ローラ(2)の内部の多孔連通構造に侵入して通過した(含浸された)後、接触ローラ(2)の外周面から外方に流れ出る。なお、前記電解液としては、通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液を用いる。
【0073】
前記接触ローラ(2)の外周面から外方に流れ出た電解液は、アルミニウム管(P)の外周面における前記接触位置及びその近傍領域で接触してここで微小な電解セルが形成されるので、即ち電解液の液溜まり(Q)が形成されるので、この接触電解液を媒体としてアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことができる。
【0074】
前記通液管(4)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されており、該通液管(4)が陰極側の電気接点部を構成する一方、前記支持体(3)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されており、該支持体(3)が陽極側の電気接点部を構成している(図3参照)。これら両極の電気接点部の間で通電することにより、アルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことができる。
【0075】
前記接触ローラ(2)及び前記アルミニウム管(P)の下方位置に、接触ローラ(2)から流れ出て電解に供されたのちに下方に落下する電解液を受け取るための樋構造の受液部(7)が配置されている。また、前記受液部(7)の下方位置に回収タンク(6)が配置されており、前記受液部(7)で受容した電解液は、前記回収タンク(6)内に送液されるものとなされている(図3参照)。
【0076】
図3において、(8)は、回収電解液処理手段である。この回収電解液処理手段(8)は、前記回収タンク(6)に回収された電解液に、濾過、温度調整及び濃度調整を行う装置である。即ち、前記回収タンク(6)内に回収された電解液は、前記回収電解液処理手段(8)に送液され、該回収電解液処理手段(8)において濾過、温度調整及び濃度調整が行われた後、前記回収タンク(6)内に戻される(図3参照)。前記回収タンク(6)内の電解液は、ポンプ(11)によって前記通液管(4)を介して前記接触ローラ(2)に再供給されるのであるが、前記濾過操作が施されていることによって電解液の汚れを効果的に除去することができ、前記温度調整操作が施されていることによってササクレ状凸欠陥の溶解速度の変動を抑制することができ、前記濃度調整操作が施されていることによってササクレ状凸欠陥の溶解後の表面状態のばらつきを抑制することができる。
【0077】
しかして、上記表面処理装置(1)におけるアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様については複数の実施態様が挙げられるので、以下図面を参照しつつ順次説明する。
【0078】
[第1態様]
この第1態様では、図6に示すように、前記接触ローラ(2)は、該接触ローラ(2)の外周面の周方向の一部と、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の外周面の周方向の一部とが互いに接触した状態を維持しながら、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の周囲を周回移動するものとなされている。即ち、非自転状態とした接触ローラ(2)を、非自転で静止固定状態のアルミニウム管(P)の周囲を周回移動させる(図6参照)。これにより、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させることができる。なお、前記接触ローラ(2)の周回移動は、該接触ローラ(2)に内挿されてこれ(2)を支持固定している通液管(4)を周回駆動制御することによって行われる。
【0079】
このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成された電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥(93)を溶解除去することができる(図12(c)参照)。
【0080】
[第2態様]
この第2態様では、図7に示すように、前記接触ローラ(2)は、該接触ローラ(2)の外周面の周方向の一部と、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の外周面の周方向の一部とが互いに接触した状態を維持しながら、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)の周囲を周回移動するものとなされている。また、前記接触ローラ(2)は、前記周回移動の際に該接触ローラの中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御されている。即ち、自転状態とした接触ローラ(2)を、非自転で静止固定状態のアルミニウム管(P)の周囲を周回移動させる(図7参照)。これにより、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させることができる。
【0081】
このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成された電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥(93)を溶解除去することができる(図12(c)参照)。
【0082】
[第3態様]
この第3態様では、図8(a)に示すように、前記接触ローラ(2)は回転しないように前記通液管(4)に支持固定され、前記支持体(3)に支持固定されたアルミニウム管(P)は該管(P)の中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御されている。即ち、非自転で静止固定状態の接触ローラ(2)に対して、自転状態で位置固定状態のアルミニウム管(P)を接触状態に配置せしめる(図8(a)参照)。これにより、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させることができる。
【0083】
このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成された電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥(93)を溶解除去することができる(図12(c)参照)。
【0084】
なお、この第3態様は、自転状態のアルミニウム管(P)を、回転不可能に固定された状態の接触体(2)に接触させる構成であるから、前記接触体(2)の外形形状の制約が少なくて済む。従って、前記接触体(2)の横断面形状としては、図8(a)のような円形の他、例えば図8(b)のような四角形形状(2X)を採用することも可能であるし、さらには三角形、五角形、六角形、八角形等の他の多角形形状や、楕円形状等を採用することも可能である。
【0085】
[第4態様]
この第4態様では、図9に示すように、前記接触ローラ(2)は、該接触ローラ(2)の中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御される一方、前記支持体(3)に支持されたアルミニウム管(P)は、該管(P)の中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御されている。即ち、自転状態で位置固定状態にある接触ローラ(2)に対して、自転状態で位置固定状態のアルミニウム管(P)を接触状態に配置せしめる(図9参照)。これにより、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で、アルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させることができる。
【0086】
このようにアルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態で両者(P)(2)を接触させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成された電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管(P)に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥(93)を溶解除去することができる(図12(c)参照)。
【0087】
なお、前記接触ローラ(2)の自転は、該接触ローラ(2)に内挿されてこれ(2)を支持固定している通液管(4)を自転駆動制御することによって行われる。また、アルミニウム管(P)の自転は、該管(P)に内挿されてこれ(P)を支持固定している支持体(3)を自転駆動制御することによって行われる。
【0088】
また、前記第4態様では、略板状のスクレーパー(5)の先端縁が、自転駆動する接触ローラ(2)の外周面の周方向の一部に当接する状態に配置されている(図9参照)から、接触ローラ(2)の外周面に付いた塵や汚れを該スクレーパー(5)の先端縁で除去することができ、これにより塵や汚れがアルミニウム管(P)の外周面に転移することを十分に防止することができる。
【0089】
なお、図9に示した構成では、接触ローラ(2)の自転方向とアルミニウム管(P)の自転方向は同一の回転方向(図9では両者ともに反時計回り方向)になるように構成されているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けることができるのであれば、接触ローラ(2)の自転方向とアルミニウム管(P)の自転方向が逆の回転方向(いずれか一方が反時計回り方向で他方が時計回り方向)になるように構成されていても良い。
【0090】
次に、前記支持体(3)に支持されたアルミニウム管(P)と、接触ローラ(2)との相互配置形態の変形例を図10、11に示す。この図10、11に示す構成では、接触ローラ(2Y)は略円筒形状に形成され、該接触ローラ(2Y)の中空内部空間に、支持体(3)に支持されたアルミニウム管(P)が内挿状態に配置されている。また、前記アルミニウム管(P)の外周面と前記接触ローラ(2Y)の内周面とが接触するように配置されている。前記接触ローラ(2)としては、例えば、多孔連通構造を備えた保水性の略円筒形状多孔質軟質体等が挙げられる。
【0091】
また、前記接触ローラ(2Y)の外周面を被覆する態様で外筒体(21)が配置されている。前記外筒体(21)は、少なくとも表面が電気伝導性材料で形成されている。この外筒体(21)が陰極側の電気接点部を構成し、前記支持体(3)が陽極側の電気接点部を構成している。前記外筒体(21)の下端位置には導入管(23)が接続され、前記外筒体(21)の上端縁の一部にV字状の排出溝(22)が形成されている。電解液は、前記導入管(23)を介して前記接触ローラ(2Y)に供給され、この接触ローラ(2Y)の内部の多孔連通構造に侵入して上方に向けて通過した後、前記外筒体(21)の上端縁の排出溝(22)から外方に流れ出る。こうして外筒体(21)内は電解液で満たされているので、前記接触ローラ(2Y)の内部に常に電解液が供給される。なお、前記排出溝(22)から外方に流れ出た電解液は、前記受液部(7)を介して回収タンク(6)に回収される。前記電解液として、通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液を用いる。前記接触ローラ(2Y)及び前記アルミニウム管(P)は、いずれもその中心軸線を自転軸として自転駆動するように制御されている。
【0092】
なお、図11では、接触ローラ(2Y)の自転方向とアルミニウム管(P)の自転方向は、逆の回転方向になるように構成されているが、同一の回転方向(両者ともに反時計回り方向又は両者ともに時計回り方向)になるように構成されていても良い。
【0093】
また、図11では、接触ローラ(2Y)及びアルミニウム管(P)の両方が自転駆動するものとなされているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、接触ローラ(2Y)が回転不能に固定され、アルミニウム管(P)だけが自転駆動するように構成されていても良いし、或いはアルミニウム管(P)が回転不能に固定され、接触ローラ(2Y)だけが自転駆動するように構成されていても良い。
【0094】
しかして、図3〜11の各実施形態では、アルミニウム管(P)と接触ローラ(2)との間に周速度差を設けた状態でアルミニウム管(P)の外周面における接触ローラ(2)の接触位置を経時的に該管(P)の周方向に移動させるので、アルミニウム管(P)の外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けてササクレ状凸欠陥(93)にして立ち上げることができる(図12(b)参照)。しかして、アルミニウム管(P)の外周面と接触ローラ(2)の外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まり(Q)に通電してアルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、このササクレ状凸欠陥(93)をアノード溶解除去することができる。立ち上がったササクレ状凸欠陥(93)に電流が優先的に流れるので、該ササクレ状凸欠陥(93)を速く溶解せしめて除去することができる(図12(c)参照)。
【0095】
このようにしてアルミニウム管(P)の外周面の表面欠陥を除去できるので、この表面処理方法を実施した後に、例えば洗浄のための超音波照射やOPC塗工時の加熱等を行っても、ササクレ状凸欠陥が発生するのを十分に防止できる。従って、本発明の表面処理方法が施されて製造されたアルミニウム管は、ササクレ状凸欠陥がなくて表面品質に優れており、従ってこのアルミニウム管を基体にして構成された感光ドラムに一様帯電した際にリークは生じ難いものとなる。
【0096】
上記実施形態では、支持体(14)、通液管(4)又は外筒体(21)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されることによって陰極側の電気接点部を構成し、また支持体(3)(13)は、少なくとも表面の一部が電気伝導性材料で形成されることによって該支持体(3)(13)が陽極側の電気接点部を構成していたが、これら電気接点になるための電気伝導性材料としては、特に限定されるものではないが、Au、Pt、Zr、Ti、Al及びCからなる群より選ばれる1種または2種以上の電気伝導性材料が好適である。Au、Pt、Zr、Ti、Al及びCからなる群より選ばれる1種または2種以上の電気伝導性材料を用いて電気接点部を構成した場合には、電気接点部で溶損することがなく、電気接点部としての機能を長期にわたって維持できる。
【0097】
この発明において、前記接触体(2)としては、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された軟質体からなる接触ローラ、又は略円筒形状で内周面が粗面に形成された軟質体からなる接触ローラが好適に用いられるが、特にこれらに限定されるものではなく、例えば前記第3態様を採用する場合にはアルミニウム管(P)と接触する表面が粗面に形成された接触体であればどのような形状のものでも使用できる(図8(b)参照)。前記粗面としては、アルミニウム管(P)外周面の鱗片状表面欠陥(92)を引っ掛けて立ち上げることができる粗面(例えばザラザラな表面等)であればどのような形態であっても良い。即ち、前記接触体(2)としては、例えば、連続気泡構造の発泡樹脂成形体の他、外周面が粗面(ザラザラな表面等)に形成されたゴム成形体、不織布等の繊維構造体などが挙げられる。中でも、多孔連通構造を備えた多孔質軟質体が好ましく、特に好適なのは連続気泡構造の発泡樹脂成形体である。前記連続気泡構造の発泡樹脂成形体の樹脂素材としては、特に限定されないが、例えばPVA(ポリビニルアルコール)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、海綿等が挙げられる。
【0098】
また、前記電解液としては、電解液に通電を行っても陽極酸化皮膜を形成しないものであれば特に限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、ソルビット、塩酸、硝酸、酢酸等のいずれか少なくとも1種の物質を含有してなる電解液などが挙げられる。
【0099】
また、前記アルミニウム管(P)としては、Al−Mn系合金、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金または純Alからなる管が、ED管として加工性が良い点で、好ましく用いられるが、特にこれら例示のものに限定されるものではない。
【0100】
また、この発明の表面処理方法では、前記アノード電解工程の前処理工程として、アルミニウム管をカソード電解し、このカソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化する清浄工程を設けるのが好ましい。この場合には、外周面の表面欠陥が十分に除去されると共に外周面が十分に清浄化されたアルミニウム管を得ることができる。
【0101】
或いは、前記アノード電解工程において、アルミニウム管に対して、アノード電解とカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行うのが好ましい。この場合には、アノード電解を行うことによって前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去できると共に、カソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化できる。
【0102】
なお、前記カソード電解の際には、カソードから発生した水素ガスがアルミニウム管の表面付近の電解液を攪拌するので、アルミニウム管の外周面の汚れを迅速に落とす効果が得られる。また、水素ガスは、アルミニウム管の隅々にまで発生するので、狭い隙間、クラック、ピンホールの中まで清浄化できる。
【実施例】
【0103】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0104】
<処理対象のアルミニウム管の製造>
Mn:1.12質量%、Si:0.11質量%、Fe:0.39質量%、Cu:0.16質量%、Zn:0.01質量%、Mg:0.02質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるビレットを、押出温度520℃、押出速度5m/分で押出加工することによって、アルミニウム押出素管(外径32mm、管壁厚さ1.5mm)を得た。
【0105】
得られたアルミニウム押出素管を切断機で切断して長さ2.2mの押出素管を多数本得た。これら多数本の押出素管の表面を倍率10倍のルーペで観察し、これらの中から表面に微小アルミニウム片(アルミニウム滓)が付着しているものを選別した。
【0106】
前記選んだ押出素管を引き抜き加工することによって、鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(外径24mm、管壁厚さ0.8mm)を得た。なお、得られたED管の外周面における鱗片状表面欠陥が存在する位置には、これ以降の表面の変化を追跡できるように、印を付けた。
【0107】
<実施例1>
前記鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(P)を、前述した図3の表面処理装置(1)の支持体(3)に支持固定せしめた(図4参照)。なお、表面処理装置(1)において、支持体(13)はTi製であり、通気管(4)はTi製であり、接触ローラ(2)は連続気泡構造の塩化ビニル樹脂発泡成形体からなり、電解液としては、水酸化ナトリウム濃度が50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様は、図6に示す態様になるように設定した。即ち、非自転状態とした接触ローラ(2)を、非自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管(P)の外周面の周囲を12周/分の周回速度で周回移動させた。しかして、このように周回移動させながら、電解液の液溜まり(Q)が存在した状態で3A/dm2で2分間のアノード電解を行うことによって、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0108】
<実施例2>
前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様を図7に示す態様になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0109】
なお、接触ローラ(2)の反時計回りの周回移動の周回速度を12周/分に設定し、接触ローラ(2)の時計回りの回転(自転)速度を20rpmに設定した(図7参照)。
【0110】
<実施例3>
前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様を図8に示す態様になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0111】
なお、アルミニウムED管(P)の反時計回りの回転(自転)速度を15rpmに設定した(図8参照)。
【0112】
<実施例4>
前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様を図9に示す態様になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0113】
なお、アルミニウムED管(P)の反時計回りの回転(自転)速度を30rpmに設定し、接触ローラ(2)の反時計回りの回転(自転)速度を30rpmに設定した(図9参照)。
【0114】
<実施例5>
前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様を図10、11に示す態様になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0115】
なお、アルミニウムED管(P)の時計回りの回転(自転)速度を20rpmに設定し、接触ローラ(2)の反時計回りの回転(自転)速度を5rpmに設定した(図11参照)。
【0116】
<実施例6>
前記鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(外径24mm、管壁厚さ0.8mm)を準備し、このアルミニウムED管(P)に対し、前処理として1.0A/dm2で2分間のカソード電解を行った(前処理工程)。
【0117】
次に、前記前処理を経たアルミニウムED管(P)を、前述した図3の表面処理装置(1)の支持体(3)に支持固定せしめた(図4参照)。なお、表面処理装置(1)において、支持体(13)はTi製であり、通気管(4)はTi製であり、接触ローラ(2)は連続気泡構造の塩化ビニル樹脂発泡成形体からなり、電解液としては、水酸化ナトリウム濃度が50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様は、図6に示す態様になるように設定した。即ち、非自転状態とした接触ローラ(2)を、非自転状態で位置固定状態にあるアルミニウム管(P)の外周面の周囲を12周/分の周回速度で周回移動させた。しかして、このように周回移動させながら、電解液の液溜まり(Q)が存在した状態で3A/dm2で2分間のアノード電解を行う(アノード電解工程)ことによって、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0118】
<実施例7>
実施例1のアノード電解において、3A/dm2でのアノード電解と1A/dm2でのカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行うものとした以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。なお、アノード電解の合計電解時間は2分間とし、カソード電解の合計電解時間は1分間とした。
【0119】
<実施例8>
前記鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(P)を、前述した図1の表面処理装置(1)の支持体(13)に支持固定せしめた(図1参照)。なお、表面処理装置(1)において、支持体(13)はTi製であり、支持体(14)はTi製であり、接触ローラ(2)はポリエチレン製不織布で形成された外周面が粗面(不織布繊維によるザラザラな表面)の略円柱体からなり、電解液としては、水酸化ナトリウム濃度が50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。前記表面処理装置(1)におけるアルミニウムED管(P)と接触ローラ(2)の相対移動態様は、図1に示す態様になるように設定した。また、アルミニウムED管の周速度:接触ローラの周速度=1:3に設定した(図1参照)。しかして、このような相対移動をさせながら、電解液の液溜まり(Q)が存在した状態で3A/dm2で2分間のアノード電解を行うことによって、感光ドラム基体用アルミニウム管を製造した。
【0120】
<比較例1>
表面処理(アノード電解)を行わないものとした以外は、実施例1と同様にして、感光ドラム基体用アルミニウム管を得た。
【0121】
<比較例2>
前記鱗片状表面欠陥を有したアルミニウムED管(P)の外周面を、中性洗剤水溶液が含浸されたポリエステル繊維製の布で擦ることによって表面処理して、感光ドラム基体用アルミニウム管を得た。
【0122】
【表1】
【0123】
上記のようにして得られた実施例1〜8及び比較例1、2のアルミニウム管に対して、それぞれ下記評価法に基づいて表面品質の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0124】
<表面品質(ササクレ状凸欠陥の有無)評価法>
得られたアルミニウム管を純水に浸漬し、この浸漬状態で35kHzの超音波を3分間照射した後、アルミニウム管を取り出し、該アルミニウム管の表面を倍率10倍のルーペで目視観察して、ササクレ状凸欠陥(鱗片状表面欠陥が立ち上がったもの)の有無を調べた。
【0125】
<管の表面の清浄性評価法>
得られたアルミニウム管の表面を目視観察し、異物付着や油分付着の有無を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…異物付着や油分付着が全く認められず非常に清浄性に優れていた
「○」…異物付着や油分付着が実質的に認められないレベルであり清浄性に優れていた
「×」…異物付着、油分付着が認められ、清浄性に劣っていた。
【0126】
表1から明らかなように、本発明の表面処理方法が適用された実施例1〜8のアルミニウム管は、表面にササクレ状凸欠陥がなく、表面品質に優れていた。
【0127】
これに対し、表面処理を全く行わなかった比較例1では、アルミニウム管は、表面にササクレ状凸欠陥が発生しており、表面品質に劣っていた。また、ポリエステル繊維製の布で擦る表面処理を行った比較例2でも、表面にササクレ状凸欠陥が発生しており、表面品質に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
この発明の表面処理方法で処理して製造されたアルミニウム管は、表面品質に優れているので、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置のOPC感光ドラム用基体として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】この発明に係る表面処理装置の一実施形態を示す模式的概略図である。
【図2】この発明に係る表面処理装置の他の実施形態を示す模式的概略図である。
【図3】この発明に係る表面処理装置のさらに他の実施形態を示す模式的概略図である。
【図4】支持体に支持されたアルミニウム管と、接触ローラとの配置形態を示す斜視図である。
【図5】接触ローラと通液管を分離させた状態で示す斜視図である。
【図6】アルミニウム管と接触ローラの相対移動態様の一例を示す平面図(上面図)である。
【図7】アルミニウム管と接触ローラの相対移動態様の他の例を示す平面図である。
【図8】アルミニウム管と接触ローラの相対移動態様のさらに他の例を示す平面図である。
【図9】アルミニウム管と接触ローラの相対移動態様のさらに他の例を示す平面図である。
【図10】支持体に支持されたアルミニウム管と、接触ローラとの配置形態の変形例を示す斜視図である。
【図11】図10の変形例の平面図である。
【図12】この発明の表面処理方法で処理したアルミニウム管の表面状態を経過順に示す模式的断面図であり、(a)は本表面処理方法を実施する前のアルミニウム管の表面状態、(b)はアルミニウム管の外周面に存在する鱗片状表面欠陥を接触ローラとの接触により立ち上げてササクレ状凸欠陥とした表面状態、(c)はアノード電解によりササクレ状凸欠陥を溶解除去した表面状態をそれぞれ示す。
【図13】従来法で表面処理した場合のアルミニウム管の表面状態を示す模式的断面図である。
【図14】ササクレ状凸欠陥の発生経路を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0130】
1…表面処理装置
2…接触ローラ
2a…中空内部空間
5…スクレーパー
93…ササクレ状凸欠陥
P…アルミニウム管
Q…電解液の液溜まり
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光ドラム基体用アルミニウム管と、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された接触ローラとを互いに外周面において接触するように配置し、この接触状態を維持しつつ、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設けた状態で前記アルミニウム管の外周面における前記接触ローラの接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、前記アルミニウム管の外周面と前記接触ローラの外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項2】
非自転状態とした前記接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させることを特徴とする請求項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項3】
自転状態とした前記接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させることを特徴とする請求項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項4】
自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にある前記接触ローラを接触状態に配置せしめることを特徴とする請求項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項5】
自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管に対して、自転状態で位置固定状態にある前記接触ローラを接触状態に配置せしめることを特徴とする請求項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項6】
前記アルミニウム管の周速度を、前記接触ローラの周速度よりも大きくして、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設ける請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項7】
前記接触ローラの周速度を、アルミニウム管の周速度よりも大きくして、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設ける請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項8】
前記接触ローラとして、外形形状が略円柱形状であり、電解液が含浸された多孔連通構造の多孔質軟質体を用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項9】
前記多孔連通構造の多孔質軟質体が、連続気泡構造の発泡樹脂成形体である請求項8に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項10】
前記接触ローラの外周面の周方向の一部に当接する状態にスクレーパーを配置して、該スクレーパーによって前記接触ローラの外周面の清掃を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項11】
略円筒形状で内周面が粗面に形成された接触ローラの中空内部空間に、感光ドラム基体用アルミニウム管を内挿状態に配置せしめ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との接触状態を維持しつつ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設けた状態で、前記接触ローラ及び前記アルミニウム管のうちの少なくともいずれか一方を自転させながら、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に存在せしめた電解液であって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項12】
前記アルミニウム管の外周面の周速度を、前記接触ローラの内周面の周速度よりも大きくして、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設ける請求項11に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項13】
前記接触ローラの内周面の周速度を、前記アルミニウム管の外周面の周速度よりも大きくして、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設ける請求項11に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項14】
前記接触ローラとして、電解液が含浸された多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体を用いる請求項11〜13のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項15】
前記多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体が、連続気泡構造の略円筒形状発泡樹脂成形体である請求項14に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項16】
自転状態で位置固定状態にある感光ドラム基体用アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にあると共に該管との接触面が粗面である接触体を接触状態に配置せしめて、前記アルミニウム管の外周面における前記接触体の接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、前記アルミニウム管の外周面と前記接触体の表面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触体との接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項17】
感光ドラム基体用アルミニウム管の外周面と接触ローラの外周面とを接触させることによって前記アルミニウム管の外周面の表面欠陥を引っ掛けてササクレ状凸欠陥を立ち上げると共に、前記アルミニウム管の外周面と前記接触ローラの外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項18】
前記アノード電解工程の前処理工程として、前記アルミニウム管をカソード電解し、このカソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化する清浄工程を有することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項19】
前記アノード電解工程において、前記アルミニウム管に対して、前記アノード電解とカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行い、前記アノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去すると共に、前記カソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の表面処理方法で表面処理して得られたアルミニウム管からなる感光ドラム基体。
【請求項1】
感光ドラム基体用アルミニウム管と、外形形状が略円柱形状で外周面が粗面に形成された接触ローラとを互いに外周面において接触するように配置し、この接触状態を維持しつつ、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設けた状態で前記アルミニウム管の外周面における前記接触ローラの接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、前記アルミニウム管の外周面と前記接触ローラの外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項2】
非自転状態とした前記接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させることを特徴とする請求項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項3】
自転状態とした前記接触ローラを、非自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管の外周面の周囲を周回移動させることを特徴とする請求項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項4】
自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にある前記接触ローラを接触状態に配置せしめることを特徴とする請求項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項5】
自転状態で位置固定状態にある前記アルミニウム管に対して、自転状態で位置固定状態にある前記接触ローラを接触状態に配置せしめることを特徴とする請求項1に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項6】
前記アルミニウム管の周速度を、前記接触ローラの周速度よりも大きくして、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設ける請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項7】
前記接触ローラの周速度を、アルミニウム管の周速度よりも大きくして、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に周速度差を設ける請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項8】
前記接触ローラとして、外形形状が略円柱形状であり、電解液が含浸された多孔連通構造の多孔質軟質体を用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項9】
前記多孔連通構造の多孔質軟質体が、連続気泡構造の発泡樹脂成形体である請求項8に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項10】
前記接触ローラの外周面の周方向の一部に当接する状態にスクレーパーを配置して、該スクレーパーによって前記接触ローラの外周面の清掃を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項11】
略円筒形状で内周面が粗面に形成された接触ローラの中空内部空間に、感光ドラム基体用アルミニウム管を内挿状態に配置せしめ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との接触状態を維持しつつ、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設けた状態で、前記接触ローラ及び前記アルミニウム管のうちの少なくともいずれか一方を自転させながら、前記アルミニウム管と前記接触ローラとの間に存在せしめた電解液であって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項12】
前記アルミニウム管の外周面の周速度を、前記接触ローラの内周面の周速度よりも大きくして、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設ける請求項11に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項13】
前記接触ローラの内周面の周速度を、前記アルミニウム管の外周面の周速度よりも大きくして、前記接触ローラの内周面と前記アルミニウム管の外周面との間に周速度差を設ける請求項11に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項14】
前記接触ローラとして、電解液が含浸された多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体を用いる請求項11〜13のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項15】
前記多孔連通構造の略円筒形状多孔質軟質体が、連続気泡構造の略円筒形状発泡樹脂成形体である請求項14に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項16】
自転状態で位置固定状態にある感光ドラム基体用アルミニウム管に対して、非自転状態で位置固定状態にあると共に該管との接触面が粗面である接触体を接触状態に配置せしめて、前記アルミニウム管の外周面における前記接触体の接触位置を経時的に該管の周方向に移動させながら、前記アルミニウム管の外周面と前記接触体の表面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記接触体との接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項17】
感光ドラム基体用アルミニウム管の外周面と接触ローラの外周面とを接触させることによって前記アルミニウム管の外周面の表面欠陥を引っ掛けてササクレ状凸欠陥を立ち上げると共に、前記アルミニウム管の外周面と前記接触ローラの外周面との接触位置の近傍に形成せしめた電解液の液溜まりであって通電しても陽極酸化皮膜を形成しない電解液の液溜まりの該電解液に通電して前記アルミニウム管に対してアノード電解を行うことによって、前記ササクレ状凸欠陥を溶解除去するアノード電解工程を含むことを特徴とする感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項18】
前記アノード電解工程の前処理工程として、前記アルミニウム管をカソード電解し、このカソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化する清浄工程を有することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項19】
前記アノード電解工程において、前記アルミニウム管に対して、前記アノード電解とカソード電解を交互に繰り返す交番電流による電解を行い、前記アノード電解を行うことによって、前記接触ローラとの接触でアルミニウム管外周面に立ち上がったササクレ状凸欠陥を溶解除去すると共に、前記カソード電解で発生する水素ガスによって該アルミニウム管の外周面を清浄化することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の感光ドラム基体用アルミニウム管のアノード電解による表面処理方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の表面処理方法で表面処理して得られたアルミニウム管からなる感光ドラム基体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−139702(P2010−139702A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315494(P2008−315494)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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