説明

感光性接着剤組成物およびそれを用いて得られる中空部材

【課題】パターン形成が可能で、しかも微細な凹凸に対する優れた追従性と高い接着力を兼ね備えているだけでなく、中空部材に適用した場合に、その中空部に結露を生じることのない、優れた感光性接着剤組成物と、それを用いて得られる中空部材を提供する。
【解決手段】分子中にカルボキシル基とラジカル重合性基とウレタン結合とを有するポリマー(A)をベースポリマーとして含有するとともに、分子中にカルボキシル基を有しないウレタン(メタ)アクリレートポリマー(B)と、エポキシ樹脂(C)と、光重合開始剤(D)と、熱硬化促進剤(E)と、吸水性付与用ラジカル重合制御剤(F)とを含有し、上記(A)成分と(C)成分の配合割合が、(C)のエポキシ基のモル数/(A)のカルボキシル基のモル数=1〜1.5となるように設定されている感光性接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光・現像処理によって微細加工が可能で、しかも結露防止性能に優れた感光性接着剤組成物と、それを用いて得られる中空部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、イメージセンサ等の固体撮像素子や、各種センサ類を実装する場合、センサ上部に空間を設けた状態で、所定の基材上にこれらを接着させる必要がある。このため、両者を接着させる接着剤には、接着機能だけでなくギャップ形成機能が要求される。
【0003】
このような接着剤としては、従来から、露光・現像によって微細なパターンを形成することのできる感光性接着剤が汎用されている。しかし、上記感光性接着剤は、パターン形成時に架橋硬化するため、高温でその表面を軟化させた状態で基材に熱圧着しなければならず、対象となる素子やセンサに熱的ダメージを与えやすいという問題がある。このため、素子やセンサの種類によっては、上記熱圧着による接着工程に代えて、別途比較的穏やかな条件での接着工程が必要となり、余分なコストと手間を要するという問題が派生する。
【0004】
また、上記感光性接着剤を用いて熱圧着を行う際、すでに述べたように、上記感光性接着剤は、パターン形成時に架橋硬化しているため、熱圧着時に多少軟化するものの、充分な流動性を発現するには至らず、その結果として、基材や素子の接着面に凹凸があったり微妙な反り等が発生していると、両者の接着界面に隙間が生じて接着強度が不充分になるという問題もある。
【0005】
そこで、本出願人は、パターン形成後も高い接着力と微細な凹凸への追従性を兼ね備えた感光性接着剤組成物を開発し、すでに出願している(特許文献1を参照)。
【0006】
ところで、従来から知られている感光性接着剤組成物の場合、吸湿すると、これを用いて形成された中空パッケージ等の中空部材において、その中空構造内に結露が発生して封止された半導体素子等の品質を低下させるおそれがある。そこで、上記結露の発生を防止するために、例えば多孔質充填剤を添加して、接着剤自体の吸水率を下げることが行われている(特許文献2を参照)。
【0007】
しかしながら、このように、組成物中に多孔質充填剤を添加すると、パターン形成後、その充填剤が異物として素子上に残り、特に、機械的動作部分をもつMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスでは、動作不良を起こす可能性が高いという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−250020公報
【特許文献2】特開2008−45136公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、先に開発した感光性接着剤組成物を、上記MEMSデバイスも含めて各種電子部品のシール材として広く提供していくには、この感光性接着剤組成物を用いた中空部材において、結露が生じないようにすることが重要な課題であることが判明した。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、パターン形成が可能で、しかも微細な凹凸に対する優れた追従性と高い接着力を兼ね備えているだけでなく、中空部材に適用した場合に、その中空部に結露を生じることのない、優れた感光性接着剤組成物と、それを用いて得られる中空部材の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)成分をベースポリマーとして含有するとともに、下記の(B)〜(F)成分を含有し、上記(A)成分と(C)成分の配合割合が、(C)成分のエポキシ基のモル数/(A)成分のカルボキシル基のモル数=1〜1.5となるように設定されている感光性接着剤組成物を第1の要旨とする。
(A)分子中にカルボキシル基とラジカル重合性基とウレタン結合とを有するポリマー。(B)分子中にカルボキシル基を有しないウレタン(メタ)アクリレートポリマー。
(C)エポキシ樹脂。
(D)光重合開始剤。
(E)熱硬化促進剤。
(F)吸水性付与用ラジカル重合制御剤。
【0012】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記(F)成分の吸水性付与用ラジカル重合制御剤の含有量が、組成物全体に対し0.005〜0.07重量%に設定されている感光性接着剤組成物を第2の要旨とし、上記(F)成分の吸水性付与用ラジカル重合制御剤が、多環芳香族化合物である感光性接着剤組成物を第3の要旨とする。
【0013】
また、本発明は、それらのなかでも、特に、組成物が、実質的に無機質充填剤を含有しないものである感光性接着剤組成物を第4の要旨とし、上記(A)成分のベースポリマーが、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレートポリマーである感光性接着剤組成物を第5の要旨とする。
【0014】
さらに、本発明は、上記第1〜第5のいずれかの要旨である感光性接着剤組成物を用いてなる中空部材であって、上記感光性接着剤組成物からなる接着層が、露光による硬化によって平面視環状に形成されており、上記環状接着層の環状面を利用して複数の部材が接合され、上記環状接着剤層の枠部と、接合された部材とでつくられる空間によって中空部が形成されていることを特徴とする中空部材を第6の要旨とする。
【0015】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記接着層の吸水率が、60℃×湿度90%RHの雰囲気下で20時間放置後において、3.0〜5.0重量%となるよう設定されている中空部材を第7の要旨とする。
【0016】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、その記載部分が「アクリレート」である場合と「メタクリレート」である場合の双方を含む趣旨で用いている。
【0017】
すなわち、本発明者らは、露光・現像によるパターン形成が可能で、そのパターン形成後も高い接着力と微細な凹凸への追従性を備え、しかも中空部材に適用した場合に結露を生じることのない、優れた感光性接着剤組成物を得るために、一連の研究を重ねた。その結果、先に開発した感光性接着剤組成物において、無機質充填剤を添加して接着剤組成物の吸水率を下げることによって結露を防止するのではなく、逆に、接着剤組成物の吸水性能を高め、中空部材に適用した場合に結露の原因となる、内部に存在する水分を、接着剤組成物自体に吸着保持させることによって、結露を防止することができることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ベースポリマーとしてカルボキシル基とラジカル重合性基とウレタン結合とを有する特殊なポリマー(A)と、光重合開始剤(D)とが用いられているため、露光・現像によるパターン形成が可能な感光性を備えている。しかも、上記ベースポリマー(A)はウレタン結合を有するため、ウレタン(メタ)アクリレートポリマー(B)の存在と相俟って、全体に柔軟性が高められており、微細な凹凸等への追従性が非常に高いという優れた特性を備えている。そして、光照射によっては変化しないエポキシ樹脂(C)と熱硬化促進剤(E)とが用いられているため、パターン形成後の加熱時に、この両者と上記特殊なポリマー(A)のカルボキシル基とが反応して、優れた接着機能が発現するようになっている。さらに、吸水性付与用ラジカル重合制御剤(F)が用いられ、この吸水性付与用ラジカル重合制御剤の作用により、組成物硬化後の吸水率が高められている。
【0019】
したがって、本発明の感光性接着剤組成物を用いて、ガラス基板、有機基板、シリコン基板等の第1の被着体上に、接着剤層をパターン形成し、空間となる開口部を設けた後、この上に、固体撮像素子や各種センサ等の第2の被着体を熱圧着するようにすると、このとき、感光性接着剤組成物には、光照射では反応しない未反応のエポキシ樹脂が存在するため、組成物が流動性を有し、被着体の凹凸に追従して上記空間の周囲を完全にシールした状態で両者の接着を、強固に行うことができる。そして、上記感光性接着剤組成物からなる接着層(シール部分)の吸水率が高められているため、上記開口部等の中空構造において、存在する水分が、この部分を囲う接着剤層の内部に吸着保持されて、結露が防止されるという利点を有する。
【0020】
なお、本発明の感光性接着剤組成物のなかでも、特に、上記(F)成分の吸水性付与用ラジカル重合制御剤の含有量を、組成物全体に対し0.005〜0.07重量%に設定したものは、とりわけ優れた結露防止性能とシール性能とを備えたものとなり、好適である。
【0021】
そして、本発明の感光性接着剤組成物のなかでも、特に、上記(F)成分の吸水性付与用ラジカル重合制御剤として、多環芳香族化合物を用いたものは、とりわけ吸水性能の向上効果に優れ、好適である。
【0022】
さらに、本発明の感光性接着剤組成物のなかでも、特に、この組成物が、実質的に無機質充填剤を含有しないものである場合には、この組成物を用いてMEMSデバイスを作製した場合等において、上記無機質充填剤が素子上に残留付着して動作不良を招く等の不具合がなく、より高品質の製品を提供することができる。なお、上記「実質的に無機質充填剤を含有しない」とは、本発明の感光性接着剤組成物の調製において、「その組成物材料として無機質充填剤を含有させない」という趣旨であり、組成物の調製過程やその後の工程において、無機質充填剤に相当する無機物質がごくわずかに紛れ込んだ場合等は、「実質的に含有しない」ものとする。
【0023】
また、本発明の感光性接着剤組成物のなかでも、特に、上記(A)成分のベースポリマーとして、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレートポリマーを用いたものは、とりわけ熱圧着時の柔軟性、凹凸への追従性に優れたものとなり、好適である。
【0024】
そして、本発明の中空部材のなかでも、特に、上記接着層の吸水率が、60℃×湿度90%RHの雰囲気下で20時間放置後において、3.0〜5.0重量%となるよう設定されているものは、とりわけ、接着層に囲まれた中空部における結露防止性能に優れ、かつシール性能にも優れたものとなり、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)〜(d)は、いずれも本発明の感光性接着剤組成物を用いてイメージセンサ素子のパッケージングを行う方法の説明図である。
【図2】(a)、(b)は、ともに本発明の感光性接着剤組成物を用いてイメージセンサ素子のパッケージングを行う方法の説明図である。
【図3】本発明の感光性接着剤組成物を用いてSAWフィルタ素子のパッケージングを行う方法の説明図である。
【図4】(a)〜(e)は、いずれも本発明の感光性接着剤組成物を用いてSAWフィルタ素子のパッケージングを行う方法の説明図である。
【図5】(a)は従来のパッケージングの問題点の説明図、(b)は本発明の感光性接着剤組成物を用いた場合の優位性の説明図である。
【図6】(a)、(b)は、ともに評価用の試料として用いられる枠状パターン付チップの作製方法の説明図である。
【図7】上記枠状パターン付チップの説明図である。
【図8】上記枠状パターン付チップを用いて凹凸追従性を評価する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)分子中にカルボキシル基とラジカル重合性基とウレタン結合とを有するポリマーをベースポリマーとして用い、さらに、(B)分子中にカルボキシル基を有しないウレタン(メタ)アクリレートポリマーと、(C)エポキシ樹脂と、(D)光重合開始剤と、(E)熱硬化促進剤と、(F)吸水性付与用ラジカル重合制御剤とを用いて得られるものである。
【0027】
まず、ベースポリマーとして用いられるポリマー(A)は、その分子中に、(C)のエポキシ樹脂のエポキシ基と反応して接着性を発現するためのカルボキシル基と、主として光触媒によって重合反応を生起してパターン形成するためのラジカル重合性基と、光硬化後の樹脂に柔軟性を付与して被着体の凹凸に沿わせるためのウレタン結合とを有するものである。
【0028】
このようなポリマー(A)としては、ラジカル重合性を有するエチレン性不飽和モノマーと、(メタ)アクリル酸やカルボキシル基含有スチレン誘導体、無水マレイン酸等のカルボキシル基導入モノマーと、ウレタン結合を形成するための有機イソシアネートと、ポリオールとを組み合わせてなるウレタンオリゴマーもしくは反応性ポリウレタンがあげられる。
【0029】
上記エチレン性不飽和モノマーとしては、各種のオレフィン系モノマーが用いられるが、なかでも、(メタ)アクリレートが好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0030】
また、上記有機イソシアネートとしては、分子内に反応性のイソシアネート基を2個以上有する各種の有機ポリイソシアネートを用いることができる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等や、それらジイソシアネートから得られる三量体、上記ジイソシアネート類をトリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させたプレポリマー、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等があげられ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、上記有機イソシアネートとともに用いられるポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリカプロラクタンポリオール、ポリエステルポリオール等があげられ、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
なお、前記エチレン性不飽和モノマーとして、水酸基を含有するモノマーを用いる場合は、上記ポリオールを用いる必要はなく、上記モノマーの水酸基を利用して、ウレタン結合を形成することができる。このような水酸基含有エチレン性不飽和基としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ε−カプロラクトン縮合物、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等との反応により得られるエポキシ(メタ)アクリレート等があげられる。これらも、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
これらを用いて得られるポリマー(A)としては、特に、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレートポリマーが好ましく、そのなかでも特に、(メタ)アクリレート当量が550〜4,400g/当量であることが好ましい。また、酸価は20〜75KOHmg/gであることが好ましく、その重量平均分子量は12,000〜37,000であることが好ましい。
【0034】
すなわち、上記(メタ)アクリレート当量が550g/当量未満では、弾性率が上がり、凹凸への追従性が低下するという傾向がみられ、逆に4,400g/当量を超えると、パターン形成性が低下するという傾向がみられるため、好ましくない。そして、酸価が20KOHmg/g未満では、現像性(アルカリ性水溶液への溶解性)が低下するという傾向がみられ、逆に75KOHmg/gを超えると、吸水率が高くなるという傾向がみられるため、好ましくない。さらに、その重量平均分子量が12,000未満では、感光性接着剤組成物の粘度が低下し、塗膜形成が困難になるおそれがあり、逆に37,000を超えると、現像性(アルカリ性水溶液への溶解性)が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0035】
一方、本発明に用いられる、分子中にカルボキシル基を有しないウレタン(メタ)アクリレートポリマー(B)は、上記ポリマー(A)のウレタン結合と同様、光硬化後の樹脂に柔軟性を付与して被着体の凹凸に沿わせることを目的として配合されるもので、ポリマー(A)の場合と同様の、(メタ)アクリル酸や各種の(メタ)アクリレートと、ウレタン結合を形成するための有機イソシアネートと、ポリオールとを組み合わせてなるウレタンオリゴマーもしくは反応性ポリウレタンを用いて得ることができる。
【0036】
上記ウレタン(メタ)アクリレートポリマー(B)のなかでも、特に、(メタ)アクリレート当量が1,000〜30,000g/当量、重量平均分子量が2,500〜50,000のものが好ましい。すなわち、上記(メタ)アクリレート当量が1,000g/当量未満では、光硬化後の弾性率が上がり、凹凸追従性が低下するという傾向がみられ、逆に30,000g/当量を超えると、パターン形成性が低下するという傾向がみられるため、好ましくない。そして、その重量平均分子量が2,500未満では、感光性接着剤組成物の粘度が低下し、塗膜形成が困難になるおそれがあり、逆に、50,000を超えると、上記ポリマー(A)との相溶性が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0037】
さらに、本発明に用いられるエポキシ樹脂(C)は、露光・硬化後の熱圧着時に、前記ポリマー(A)に含有されるカルボキシル基と反応して優れた接着性を発現させるためのもので、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ノボラック型またはフルオレン型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂や、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂等があげられる。なお、上記「フェノキシ樹脂」とは、ビスフェノールAやビスフェノールFとエピクロルヒドリンとを反応させ、分子量を格段に大きくしたエポキシ樹脂をいう。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
そして、上記エポキシ樹脂のなかでも、特に、エポキシ当量が100〜500g/当量であることが好ましい。すなわち、エポキシ当量が100g/当量未満では、感光性接着剤組成物の粘度が低下し、塗膜形成が困難になるという傾向がみられ、逆に500g/当量を超えると、現像性(アルカリ性水溶液への溶解性)が低下するという傾向がみられるため、好ましくない。
【0039】
なお、前記ポリマー(A)と上記エポキシ樹脂(C)との組成比は、ポリマー(A)のカルボキシル基とエポシキ樹脂(C)のエポキシ基の割合によって決まり、上記エポキシ樹脂(C)のエポキシ基のモル数/ポリマー(A)のカルボキシル基のモル数=1〜1.5となる割合に設定することが必要である。すなわち、上記範囲よりもカルボキシル基が多いと、後述する吸水性付与用ラジカル重合制御剤(F)による吸水性能向上効果と相俟って、吸水率が増加しすぎてトラブルを生じやすく、逆にエポキシ基が多いと、熱圧着前の弾性率が大きくなって、感光性接着剤組成物が微細な凹凸に追従しにくくなるとともに、露光後現像時にパターンが白濁して光学的な品質が悪くなるからである。
【0040】
さらに、本発明に用いられる光重合開始剤(D)としては、例えば、置換または非置換の多核キノン類(2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等)、α−ケタルドニルアルコール類(ベンゾイン、ピバロン等)、エーテル類、α−炭化水素置換芳香族アシロイン類(α−フェニル−ベンゾイン、α,α−ジエトキシアセトフェノン類等)、芳香族ケトン類(ベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等の4,4′−ビスジアルキルアミノベンゾフェノン等)、チオキサントン類(2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等)、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−モルホリノプロパン−1−オン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記光重合開始剤(D)は、通常、A成分とB成分の合計量に対し、1.0〜2.0重量%の範囲内で用いることが好適である。
【0041】
そして、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる熱硬化促進剤(E)としては、エポキシ樹脂を熱硬化させるための促進剤として、例えば、イミダゾール系、アミン系、リン系(トリフェニルフォスフィン等)を使用することができる。上記熱硬化促進剤(E)は、通常、C成分に対し、2.5〜4.0重量%の範囲内で用いることが好適である。
【0042】
さらに、本発明の感光性接着剤組成物に用いられる吸水性付与用ラジカル重合制御剤(F)は、感光性接着剤組成物から得られる接着層の吸水性能を高める作用を果たすものであり、例えば、露光による硬化時に、そのラジカル重合を制御するような特性を示すものがあげられる。すなわち、感光性接着剤組成物が露光により硬化する際、ラジカル重合の進行により緻密な高分子構造が形成されていく過程で、部分的に、そのラジカル重合を制限することによって、疎となる部分をつくり、その疎の部分に、水分を吸収保持させることができるため、その吸水性能を高めることができるのである。
【0043】
このような吸水性付与用ラジカル重合制御剤(F)としては、例えば、t−ブチルカテコール等のカテコール類、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、p−メトキシフェノール等のヒドロキノン類、メトキノン等のアルコキシキノン類、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、t−ブチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン類、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン等のナフトキノン類、アントラセン類、アントラキノン類等があげられる。これらのなかでも、特に、重合制御性の観点から、ヒドロキノン類、ナフトキノン類が好適であり、なかでも、多環芳香族構造を有するものが、特に好ましい。
【0044】
そして、上記吸水性付与用ラジカル重合制御剤(F)の含有量は、組成物全体に対し、0.005〜0.07重量%に設定することが好適で、より好ましくは、0.01〜0.06重量%である。すなわち、上記F成分の含有量が少なすぎると、企図する吸水性向上効果が充分に得られないおそれがあり、逆に多すぎると、それ以上の吸水性能向上効果は得られない半面、露光・現像によるパターン形成時に、精密なパターン形状が得られにくくなる傾向がみられるからである。
【0045】
また、本発明の感光性接着剤組成物には、上記必須成分以外に、必要に応じて、他の添加剤、例えば、フタロシアニングリーン,フタロシアニンブルー等の顔料、シリカ,硫酸バリウム,タルク等の充填剤、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、安定剤、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールや5−アミノ−1−H−テトラゾール等の密着性付与剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、ブロックイソシアネート等の熱架橋剤等を適宜配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これらの他の添加剤は、組成物全体の0.01〜20重量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物は、これらの成分を、有機溶剤中に所定の割合で投入し、混合することにより、ワニスとして用いることができる。上記有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ソルベントナフサ、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メシチレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤またはこれらの混合溶剤を用いることができる。
【0047】
なお、上記有機溶剤の使用量は、感光性樹脂組成物の付与作業の容易性と付与後の乾燥時間とを考慮して、適宜に設定することができる。
【0048】
このようにして得られる感光性樹脂組成物(ワニス)を、基板等の表面に所定厚みで付与し、露光による硬化・現像後、その上に所定の被着体を重ねて熱圧着することにより、被着体を密着させることができる。このとき、上記感光性接着剤組成物は、露光による硬化後であっても柔軟な物性を有しているため、被着体の接着面に微細な凹凸があっても、凹凸に隙間なく入り込んだ状態で、接着力を発揮し、両者を強固に密着させることができる。したがって、本発明の感光性接着剤組成物は、各種電子部品用シール材として優れた性能を発揮することができる。
【0049】
しかも、上記感光性接着剤組成物によって形成された接着層は、その光硬化特性を利用して、フォトリソグラフィ工程によって、予めパターン形成を行い、平面視が四角枠形状等の環状となるようにして、その環状枠部で囲われた部分によって、中空部を形成することができる。したがって、この感光性接着剤組成物は、素子の表面に一定の空間(ギャップ)を設ける必要のあるイメージセンサ素子やSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタ素子のパッケージを構成するのに非常に有用である。そして、このような中空部材に適用した場合、上記接着層が、前記吸水性付与用ラジカル重合制御剤(F)の含有によって、吸水性能が高められているため、上記中空部に存在する水分が、この部分を囲う接着層の内部に吸着保持されて、結露が防止されるという利点を有する。
【0050】
ちなみに、本発明の感光性接着剤組成物を用いて、例えばつぎのようにして、イメージセンサ素子のパッケージングを行うことができる。すなわち、まず、本発明の感光性接着剤組成物を有機溶剤と混合してワニスを調製する。そして、これを剥離紙上に所定厚みで付与し、有機溶剤を乾燥除去することにより、未硬化の、粘着性ある感光性接着剤層(シート)を形成する。そして、この感光性接着剤層1を、図1(a)に示すように、光学ガラスからなるウェーハ2の表面に転写する。
【0051】
そして、フォトマスクを利用して露光し、感光性接着剤層1のうち、目的とするパターン部分を光硬化させる。図1(b)において、露光によって光硬化した部分を細かい斜線Pで示す。
【0052】
なお、上記露光のための光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ等の紫外線を有効に照射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に照射するものも用いられる。
【0053】
つぎに、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、例えば、スプレー,揺動浸漬,ブラッシング,スクラッピング等の公知の方法により、上記感光性接着剤層1の未硬化部分を除去して現像し、図1(c)に示すように、目的とするパターン(この例では、縦横に正方形の枠が並ぶパターン)を形成することができる。
【0054】
なお、上記現像液としては、例えば、0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液、0.008〜0.04重量%テトラメチルアンモニウムの希薄溶液等を用いることができる。
【0055】
一方、図1(d)に示すように、別途シリコンウェーハ3を用意し、その表面に、上記感光性接着剤層1のパターンの、正方形の各枠内に収まる配置でイメージセンサ素子4を規則的に設ける。そして、これを、上記パターン形成された感光性接着剤層1の上方に、正確に位置決めして対峙させる。
【0056】
そして、対峙された両者を貼り合わせ、例えば90〜200℃、より好ましくは100〜160℃、0.1〜6N/m2 、より好ましくは0.5〜3N/m2 の加熱・加圧条件で、両者を熱圧着する。この熱圧着時の熱によって、ポリマー(A)のカルボキシル基とエポキシ樹脂(C)とが反応して完全に硬化するとともに、両者の界面で強固な接着力を発現する。ただし、上記熱圧着時の加熱温度は、被着体が熱的ダメージを受けて損傷しないようできるだけ低く設定することが好ましい。
【0057】
そして、上記熱圧着によって強固に接着され一体化された積層物を、図2(a)に示すように、鎖線Qで示す切断ラインに沿って、個々にダイシングして、目的とするイメージセンサ素子4のパッケージ品を得ることができる。得られたパッケージ品を図2(b)に示す。
【0058】
このものは、イメージセンサ素子4の上部が中空で、その周囲が、本発明の感光性接着剤組成物によって形成された枠状の接着層によって強固に接着され密封されているとともに結露防止がなされているため、高品質のものとなる。
【0059】
また、本発明の感光性接着剤組成物を用いて、例えばつぎのようにして、SAWフィルタ素子のパッケージングを行うことができる。すなわち、まず、表面にSAWフィルタ素子(図示せず)が形成されたシリコンウェーハ10を準備し、図3に示すように、その上に、前記イメージセンサ素子のパッケージングの場合と同様にして、感光性接着剤組成物をシート状に成形してなる感光性接着剤層1を転写して積層する。
【0060】
そして、前記の場合と同様、フォトマスクを利用して露光し、感光性接着剤層1のうち、目的とするパターン部分を光硬化させる。図4(a)において、露光によって光硬化した部分を細かい斜線Pで示す。
【0061】
つぎに、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、前記と同様にして、上記感光性接着剤層1の未硬化部分を除去して現像し、図4(b)に示すように、目的とするパターン(バンプ形成予定部のウェーハ面が露出するよう、その周囲を環状に囲ったパターン)を形成することができる。
【0062】
つぎに、上記パターンのバンプ形成予定部に、図4(c)に示すように、はんだを用いてバンプ11を形成する。
【0063】
そして、図4(d)に示すように、上記バンプ11が形成されたシリコンウェーハ10を、上下逆にして、別途用意される基板12に対峙させ、基板12側の導線パターンと上記バンプ11とを正確に位置決めする。そして、両者を貼り合わせ、例えば100〜160℃、0.5〜3N/m2 の加熱・加圧条件で、両者を熱圧着する。この熱圧着時の熱によって、ポリマー(A)のカルボキシル基とエポキシ樹脂(C)とが反応して完全に硬化するとともに、両者の界面で強固な接着力を発現する。
【0064】
つぎに、上記熱圧着によって強固に接着され一体化された積層物を、鎖線Qで示す切断ラインに沿って、個々にダイシングして、目的とするSAWフィルタ素子のパッケージ品を得ることができる。得られたパッケージ品を図4(e)に示す。
【0065】
このものは、SAWフィルタ素子の上部が中空で、その周囲が感光性接着剤層1によって強固に接着され密封されているとともに結露防止がなされているため、高品質のものとなる。
【0066】
特に、従来の感光性接着剤組成物を用いて同様の構成のものを得ようとしても、露光後の感光性接着剤層1の粘弾性が低く、凹凸に追従しにくいため、図5(a)に示すように、バンプ11の周囲と感光性接着剤層1との間に隙間が生じて、接続信頼性が損なわれやすいという問題がある。これに対し、本発明の感光性接着剤組成物を用いた感光性接着剤層1によれば、図5(b)に示すように、バンプ11の周囲に感光性接着剤層1が完全に充填されて強固に接着するため、高い接続信頼性を実現することができる。また、無機質充填剤を配合しなくても結露防止性能に優れているため、MEMSデバイス等に広く適用することができる。
【0067】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
〔実施例1〜8、比較例1〜4〕
後記の表1〜表3に示す組成の感光性接着剤組成物を調製し、感光性接着剤組成物100重量部と、45重量部のメチルエチルケトンとを混合してワニスを得た。そして、シリコーン樹脂で剥離処理されたPETフィルム上に上記ワニスを、乾燥後の厚みが50μmとなるように付与し乾燥することにより、感光性接着シートを作製した。
【0069】
なお、上記感光性接着剤組成物の調製に用いた成分の詳細は、下記のとおりである。
【0070】
〔A成分〕
・カルボキシル基含有ウレタンアクリレートポリマー:
UN−5507、根上工業社製(酸価72KOHmg/g、カルボキシル基のモル数 1.28×10-3モル/g、重量平均分子量17,000)
【0071】
〔B成分〕
・カルボキシル基非含有ウレタンアクリレートポリマー:
UN−333、根上工業社製(二重結合当量2,500g/当量)
【0072】
〔C成分〕
・エポキシ樹脂:
ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂、HP−7200、大日本インキ社製(エポキシ 当量263g/当量、エポキシ基のモル数3.80×10-3モル/g)
【0073】
〔D成分〕
・光重合開始剤:
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン− 1、イルガキュア(登録商標)369、チバジャパン社製
【0074】
〔E成分〕
・熱硬化促進剤:
イミダゾールシラン、IM−100F、JX日鉱日石金属(旧日鉱マテリアル)社製
【0075】
〔F成分〕
・吸水性付与用ラジカル重合制御剤:
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、キノパワーLSN、川崎化成工業社製
【0076】
〔任意成分〕
・架橋剤:
トリメチロールプロパントリメタクリレート、SR350、サートマー社製
【0077】
このようにして得られた感光性接着シートの特性を、下記の方法に従って評価し、その結果を、後記の表1〜表3に併せて示した。
【0078】
〔吸水率、拡散係数〕
上記の感光性接着シートを、UV照射(1000mJ/cm2 )により全面露光した後、150℃×3時間加熱することによって、完全に硬化させた。そして、これを60℃×湿度90%RHの雰囲気下に20時間放置し、その前後での重量変化から吸水率を求めた。また、得られた重量の時間変化と、拡散方程式を解くことによって得られる計算結果とが最も近接する際の拡散係数を、本願における拡散係数とした。
【0079】
〔パターン形状の変形の有無〕
上記の感光性接着シートを、150mm×150mm×0.5mm厚のホウケイ酸ガラス表面の全面に、熱ロールラミネータを用いて80℃で貼り合わせた。そして、マスクを介してUV照射(400mJ/cm2 )してPETフィルムを剥離した後、0.7重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.15MPaで1分間現像し、図6(a)において、斜線Rで示すような枠状パターンを形成した。このものの一つの枠の大きさ(内寸)は5mm×5mmで、ライン幅は200μmである。上記枠状パターン付ホウケイ酸ガラスを、鎖線Qの切断線に従い個々にダイシングして、図6(b)に示すような枠状パターン付のチップを切り出した。そして、その1個を、20mm×70mm×0.6mm厚のシリコンウェーハ上に載置し、フリップチップボンダーを用いて、125℃、1.5MPa、10secで接着することにより、図7に示すような、模擬的な中空パッケージ品を作製した。30がホウケイ酸ガラス、31が感光性接着シートに由来する感光性接着剤層、32がシリコンウェーハである。そして、上記感光性接着剤層31のパターン形状が変形していないかどうかを目視により観察した。
【0080】
〔結露性〕
上記中空パッケージ品を、60℃×湿度90%RHの雰囲気下に168時間放置した後、室温で顕微鏡観察して、パッケージ内部に結露が生じていないかどうかを目視により観察した。
【0081】
〔凹凸追従性〕
図8に示すように、15.4mm×15mm×0.23mm厚のシリコンウェーハ32の表面に、厚み5μmのAlからなる素子形成層33を、幅140μmの環状部分33aを露出させた状態で形成した。そして、この上に、上記と同様の、図6(b)に示すような枠状パターン付のチップを載置し、上記と同様にして、模擬的な中空パッケージ品を作製した。そして、ホウケイ酸ガラス30の上から、枠状パターン部分の接着状態を観察した。このとき、干渉縞が見える場合は接着していない(×)と判断し、干渉縞が見えない場合は接着している(○)と判断した。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
上記の結果から、実施例1〜8品は、パターン形状の変形がなく解像性に優れているだけでなく、凹凸追従性に優れ、高いシール性が得られるとともに、結露の発生が防止されていることがわかる。これに対し、エポキシ基のモル数/カルボキシル基のモル数が本発明の範囲から外れる比較例1、2品は、パターン形状の変形があったり、凹凸追従性が悪かったりする問題を有する。また、F成分を含有しない比較例3品、同じくF成分を含有せず逆に架橋剤を加えて架橋密度を高めた比較例4品は、ともに結露を生じるため、実用上好ましくないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、各種の素子やセンサ類を実装する際に用いられる感光性接着剤組成物と、それを用いた中空部材に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分をベースポリマーとして含有するとともに、下記の(B)〜(F)成分を含有し、上記(A)成分と(C)成分の配合割合が、(C)成分のエポキシ基のモル数/(A)成分のカルボキシル基のモル数=1〜1.5となるように設定されていることを特徴とする感光性接着剤組成物。
(A)分子中にカルボキシル基とラジカル重合性基とウレタン結合とを有するポリマー。(B)分子中にカルボキシル基を有しないウレタン(メタ)アクリレートポリマー。
(C)エポキシ樹脂。
(D)光重合開始剤。
(E)熱硬化促進剤。
(F)吸水性付与用ラジカル重合制御剤。
【請求項2】
上記(F)成分の吸水性付与用ラジカル重合制御剤の含有量が、組成物全体に対し0.005〜0.07重量%に設定されている請求項1記載の感光性接着剤組成物。
【請求項3】
上記(F)成分の吸水性付与用ラジカル重合制御剤が、多環芳香族化合物である請求項1または2記載の感光性接着剤組成物。
【請求項4】
組成物が、実質的に無機質充填剤を含有しないものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
上記(A)成分のベースポリマーが、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレートポリマーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載された感光性接着剤組成物を用いてなる中空部材であって、上記感光性接着剤組成物からなる接着層が、露光による硬化によって平面視環状に形成されており、上記環状接着層の環状面を利用して複数の部材が接合され、上記環状接着剤層の枠部と、接合された部材とでつくられる空間によって中空部が形成されていることを特徴とする中空部材。
【請求項7】
上記接着層の吸水率が、60℃×湿度90%RHの雰囲気下で20時間放置後において、3.0〜5.0重量%となるよう設定されている請求項6記載の中空部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−144592(P2012−144592A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2010(P2011−2010)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】