説明

感光性樹脂組成物、カラーフィルタ及びカラーフィルタの製造方法

【課題】高精細化したディスプレイパネル用カラーフィルタをフォトリソグラフィー法で製造する際に、着色層の平坦性を損なわない感光性樹脂組成物、それを用いたカラーフィルタ、及び表示ムラのないディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】顔料、透明樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、光重合開始剤を含有した感光性樹脂組成物であって、(a)硬化後の表面硬度が、該表面に角錐型微小先端を有する圧子を20秒かけて5mNとなる荷重で押し込んだ時に、計測されるビッカース硬度(HV)が27から45(b)硬化後の膜の膨潤率が、下記式(1)で示される膨潤率で90%から110%を特徴とする感光性樹脂組成物。式(1)膨潤率(%)=(溶剤浸漬後の膜厚−溶剤浸漬前の膜厚)/溶剤浸漬前の膜厚×100(c)硬化後の算術平均粗さ(Ra)が、5nmから15nmであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置やカラー撮像管素子等に用いるカラーフィルタ用の感光性樹脂組成物、カラーフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、2枚の基板の間に液晶を挟み、この液晶に画素ごとに電圧を印加して光の透過と非透過(遮断)とを制御して、この透過部分と遮断部分とで画面表示を行うディスプレイである。そして、2枚の前記基板のうち一方の基板に画素ごとに透明着色膜を設けて、その透過光を着色することにより、カラー表示を可能としている。この透明着色膜を設けた基板は一般にカラーフィルタと呼ばれるが、このカラーフィルタは、例えば、図1の断面説明図に示すような構造を有している。すなわち、カラーフィルタは、透明基板と、この透明基板の表面を多数の画素領域に区画する遮光膜と、前記画素領域に設けられた透明着色膜とを備えて構成されている。透明着色膜は画素領域ごとに異なる色彩を有しており、代表的には、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3色の透明着色膜が利用される。
【0003】
これら3色は光の3原色であり、これら3原色及びその混合によって色彩のほぼ全てを表示することが可能となる。また、遮光膜は、特定の画素領域を透過する光と隣接する画素領域を透過する光との混合を防止するものである。例えば、赤色(R)画素に隣接して緑色(G)画素が存在する場合、この両者を透過する光同士の混合を防ぐことで鮮明なカラー画面の表示が可能となる。
【0004】
このようなカラーフィルタの製造初期には、蒸着法や染色法が用いられていたが、それぞれ隣接する画素ごとに薄膜を十数層にも重ねる複雑なプロセスが必要(蒸着法)、色素受像の為の有機層や色耐性に問題がある(染色法)、などの理由で用いられなくなった(特許文献1及び2)。また、オフセット印刷やスクリーン印刷などの既存の印刷方式を利用して、CFのパターニングを行う試みがされてきた(特許文献3)。しかし、スクリーン印刷では、スクリーン版の変形が生じやすく、印刷パターンの変形やパターンの重ね合わせ精度に問題があった。さらに、オフセット印刷においては、ブランケットからのパターンの受理や転移時にパターンの潰れや、にじみ、加圧時にパターン中心部と輪郭部においてのインキ膜厚の差異が生じる問題があった。
【0005】
そこで、近年では透明基板上にBM(ブラックマトリックス)、及び3色の着色パターンの各層を各々、顔料分散レジスト塗布、露光、及び現像工程等を繰り返すフォトリソグラフィー法(顔料分散法とも呼ばれる)が製造方法の中心となっている。また、ディスプレイの高精細化がテレビ製品やモバイル製品で進んでおり、画素の小型化やBM線幅の微細化が求められている。
【0006】
画素の小型化に伴い、フォトリソグラフィー法でカラーフィルタを作製すると、ディスプレイとした際に表示ムラとなる不具合が発生するようになった。図2、図3にフォトリソグラフィー法で繰り返し着色層を形成する工程の平面図と断面図を示す。
【0007】
例えば、図2及び図3の(a)から(c)はそれぞれ、(a)はR画素3RとG画素3Gが形成された基板、(b)は(a)の基板にB画素形成用のB顔料分散レジストを塗布した工程、(c)はB画素3Bをフォトリソグラフィー法で形成した工程を示している。
【0008】
上記(a)のR画素とG画素が形成された透明基板1に、(b)B顔料分散レジストを
塗布すると、B顔料分散レジスト成分中の溶剤がR画素3R及びG画素3Gに浸透し、部分的に膨潤が起こる。この膨潤によりR画素3R及びG画素3Gの表面に凹凸が生じ、(c)B画素3Bをフォトリソグラフィー法で形成すると、前記R画素3R及びG画素3Gの表面に生じた凹凸により、表示ムラのあるカラーフィルタとなる。
【0009】
カラーフィルタが変形して表示性能が劣化する問題に対する提案はあるが(例えば特許文献4)、パネル基板に高速で衝突する表示媒体に対する物理的硬度に関する提案であり、溶剤による膨潤を制御するという知見は得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−26361号公報
【特許文献2】特開平4−86801号公報
【特許文献3】特開平11−314341号公報
【特許文献4】特開2007−322900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような事情の下になされ、高精細化したディスプレイパネル用カラーフィルタをフォトリソグラフィー法で製造する際に、着色層の平坦性を損なわない感光性樹脂組成物、それを用いたカラーフィルタ、及び表示ムラのないディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも顔料、透明樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、光重合開始剤を含有した感光性樹脂組成物であって、
(a)硬化後の表面硬度が、該表面に角錐型微小先端を有する圧子を20秒かけて5mNとなる荷重で押し込んだ時に、計測されるビッカース硬度(HV)が27から45
(b)硬化後の膜の膨潤率が、N−メチルピロリドンを溶剤に用いた時に、下記式(1)で示される膨潤率が90%から110%
式(1)
膨潤率(%)=(溶剤浸漬後の膜厚−溶剤浸漬前の膜厚)/溶剤浸漬前の膜厚×100であることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、更に、(c)硬化後の表面粗度(Ra)が、5nmから15nmであることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物である。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記顔料が少なくとも緑色顔料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物である。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、基板上に、少なくとも請求項1乃至3の何れかに記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥する工程と、パターン露光する工程と、現像工程からなるフォトリソグラフィー法を用いることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0016】
更に、本発明の請求項5に係る発明は、請求項4に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されたことを特徴とするカラーフィルタである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所定の配合割合とした感光性樹脂組成物を用いることにより、溶剤に
より膨潤しない平坦性に優れた透明着色膜(フィルタセグメント)及びブラックマトリックスを形成することができる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、着色層の平坦性の良いカラーフィルタの製造が可能であり、表示ムラのない良好なディスプレイパネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のカラーフィルタの断面形状の説明図である。
【図2】従来のフォトリソ法による画素形成工程を示す平面説明図である。
【図3】従来のフォトリソ法による画素形成工程を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る感光性樹脂組成物、カラーフィルタ及びカラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明に係る一実施形態であるカラーフィルタの断面形状を示す。図1に示すように、本発明のカラーフィルタは透明基材1の上に、BM(ブラックマトリックス)2と赤色画素3R、緑色画素3G、青色画素3Bからなる透明着色膜(フィルタセグメント)3で構成されている。前記透明着色膜(フィルタセグメント)3はそれぞれ感光性樹脂組成物からなり、顔料、透明樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、光重合開始剤を含有している。以下、カラーフィルタの形成に用いられる本発明の感光性樹脂組成物について説明する。
【0021】
(顔料)
本発明に係る前記顔料としては、一般に市販されている有機顔料を用いることができ、形成する透明着色膜(フィルタセグメント)の色相に応じて、染料、天然色素、無機顔料を併用することができる。有機顔料としては、発色性が高く、且つ耐熱性、特に耐熱分解性の高いものが好適に用いられる。有機顔料は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。また、有機顔料は、ソルトミリング、アシッドペースティング等により微細化したものであっても良い。以下に、本実施形態に係る感光性樹脂組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス(C.I.)番号で示す。
【0022】
前記透明着色膜(フィルタセグメント)を構成する赤色画素を形成する場合には、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、122、123、146、149、168、177、178、179、184、185、187、192、200、202、208、210、216、220、223、224、226、240、254、255、264、272等の赤色顔料を用いることができる。赤色感光性樹脂組成物には、黄色顔料、オレンジ色顔料を併用することができる。
【0023】
前記透明着色膜(フィルタセグメント)を構成する緑色画素を形成する場合には、C.I.Pigment Green 7、10、36、37、58等の緑色顔料を用いることができる。緑色感光性樹脂組成物には黄色顔料を併用することができる。
【0024】
前記透明着色膜(フィルタセグメント)を構成する青色画素を形成する場合には、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、64、80等の青色顔料を用いることができる。青色感光性樹脂組成物には紫色顔料を併用することができる。
【0025】
前記透明着色膜(フィルタセグメント)を構成する黄色画素を形成する場合には、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14
、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等の黄色顔料を用いることができる。
【0026】
前記透明着色膜(フィルタセグメント)を構成する紫色画素を形成する場合には、C.I.Pigment Violet1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の顔料を用いることができる。
【0027】
前記透明着色膜(フィルタセグメント)を構成するマゼンタ色画素を形成する場合には、C.I.Pigment Red 7、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、146、177、178、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272等の顔料を用いることができる。マゼンタ色感光性樹脂組成物には黄色顔料を併用することができる。
【0028】
前記透明着色膜(フィルタセグメント)を構成するシアン色画素を形成する場合には、C.I.Pigment Blue 15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、80等の顔料を用いることができる。
【0029】
前記透明着色膜(フィルタセグメント)を構成するオレンジ色画素を形成する場合には、C.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等の顔料を用いることができる。
【0030】
BM(ブラックマトリックス)を形成する場合には、カーボンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、具体的にはC.I.ピグメントブラック1、6、7、12、20、31等を用いることができる。黒色感光性樹脂組成物には、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料の混合物を用いることもできる。黒色顔料としては、価格、遮光性の大きさからカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックは、樹脂などで表面処理されていてもよい。また、色調を調整するため、黒色感光性樹脂組成物には、青色顔料や紫色顔料を併用することができる。
【0031】
以上説明した感光性樹脂組成物には、彩度と明度のバランスをとりつつ、良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、無機顔料を含有させることができる。無機顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等が挙げられる。
【0032】
無機顔料は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。無機顔料は、顔料の合計質量を基準(100質量%)として、0.1〜10質量%で用いることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物には、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。染料は、顔料の合計質量を基準(100質量%)として、0.1〜10質量%で用いることができる。
【0034】
(透明樹脂)
本発明に係る前記透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上のものを用いることができる。透明樹脂には、非感光性透明樹脂及び感光性透明樹脂が含まれ、これらを単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0035】
また、透明樹脂の分子量は、20,000〜100,000の範囲であることが望ましい。透明樹脂の分子量が20,000未満では、現像の際にカラーフィルタパターンの直線性が悪化し、膜減り率が増大し、カラーフィルタパターンの断面形状が悪くなる。逆に、100,000以上であれば、現像時間が遅くなり、生産性が低下する。したがって、より好ましくは、20,000〜60,000の範囲が良い。
【0036】
非感光性透明樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有しない樹脂であり、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂がある。熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
【0037】
感光性透明樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂であり、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基、カルボキシル基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する官能基を前記高分子に導入した樹脂が挙げられる。
【0038】
具体的には、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体及び他のエチレン性不飽和単量体を共重合した共重合体に、水酸基と反応可能な官能基及びエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を反応させることにより得られるものがある。水酸基と反応可能な官能基としては、イソシアネート基、カルボキシル基等が挙げられるが、特に反応性の点でイソシアネート基が好ましく、イソシアネート基及びエチレン性不飽和二重結合を有する化合物として具体的には、2−アクリロイルエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等が挙げられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合体やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体等の酸無水物を含む高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0039】
(エチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマー)
前記エチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等が代表例として挙げられる。多官能モノマーは、感光性樹脂組成物の感度アップの観点から、エチレン性不飽和二重結合を4〜12個有することが好ましい。3個以下のエチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマーを含む感光性樹脂組成物では、所望の感度を得ることができない。
【0040】
エチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマーは、単独でまたは2種類を以上混合して用いることができる。
【0041】
エチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマーの含有量は、顔料100質量部に対して、好ましくは10〜300質量部、より好ましくは10〜200質量部で用いることができる。
【0042】
(光重合開始剤)
本発明に係る前記光重合開始剤の例としては、オキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。
【0043】
本発明の効果にある、溶剤に膨潤しない平坦性に優れた透明着色膜(フィルタセグメント)及びブラックマトリックスを形成するためには、オキシムエステル系光重合開始剤を含むことが望ましい。特に好ましいオキシムエステル系光重合開始剤としては、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、1,2−オクタジオン−1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]が挙げられる。
【0044】
特に好ましいアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0045】
特に好ましいα―アミノアルキルアセトフェノン系光重合開始剤としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルチオフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンが挙げられる。
【0046】
特に好ましいカルバゾール系光重合開始剤としては、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−メチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−ベンゾイルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ブチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−オクチルカルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾールが挙げられる。
【0047】
これらの光重合開始剤は、1種を単独、または2種以上を混合して用いることができる。光重合開始剤の含有量は、顔料100質量部に対して5〜200質量部、好ましくは10〜150質量部の量で用いることができる。
【0048】
(任意成分)
本発明に係る感光性樹脂組成物は、基本的に増感剤は必要としないが、光重合開始剤と併用してもかまわない。これらの増感剤は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。増感剤の含有量は、光重合開始剤100質量部に対して0.1〜60質量部が好ましい。
【0049】
また本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、連鎖移動剤としての働きをする多官能チオールを含有させることができる。
【0050】
本発明の効果にある、溶剤に膨潤しない平坦性に優れた透明着色膜(フィルタセグメン
ト)及びブラックマトリックスを形成するためには、多官能チオールを含むことが望ましい。これらの多官能チオールは、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。多官能チオールの含有量は、顔料100質量部に対して0.05〜100質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜60質量部である。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物は、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。また、透明基板との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。貯蔵安定剤は、感光性樹脂組成物中の顔料100質量部に対して、0.1〜10質量部の量で用いることができる。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、顔料を十分に組成物中に分散させ、ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布して透明着色膜(フィルタセグメント)またはブラックマトリックスを形成することを容易にするために、溶剤を含有させることができる。溶剤は単独でも、また、混合して用いてもよい。
【0053】
前記溶剤としては、例えば1,2,3−トリクロロプロパン、1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ジオキサン、2−ヘプタノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、3,5,5−トリメチルシクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、4−ヘプタノン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、n−ブチルアルコール、n−ブチルベンゼン、n−プロピルアセテート、N−メチルピロリドン、o−キシレン、o−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロトルエン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
【0054】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーや透明樹脂に顔料を分散する際には、適宜、界面活性剤、樹脂型顔料分散剤、色素誘導体等の分散剤が使用できる。分散剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、分散剤を用いて顔料を透明樹脂及び有機溶剤中に分散してなる感光性樹脂組成物を用いた場合には、透明性に優れたカラーフィルタが得られる。顔料分散剤は、感光性樹脂組成物中の顔料100質量部に対して、0.1〜40質量部、好ましくは0.1〜30質量部の量で用いることができる。
【0055】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、また、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤が挙げられる。
【0056】
樹脂型顔料分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーや透明樹脂と相溶性のある部位とを有する樹脂であり、顔料に吸着して顔料のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーへの分散を安定化する働きをするものである。樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などの油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0057】
色素誘導体は、有機色素に置換基を導入した化合物である。このような有機色素には、一般に色素とは呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。色素誘導体としては、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用でき、これらは単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる
【0058】
(感光性樹脂組成物の製法)
本発明の感光性樹脂組成物は、顔料を、必要に応じて上記顔料分散剤と共にエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、必要に応じて透明樹脂及び有機溶剤中に三本ロールミ
ル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散し、光重合開始剤を添加して製造することができる。また、2種以上の色素を含むカラーフィルタ用感光性樹脂組成物は、各色素を別々に、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー等に微細に分散したものを混合して製造することもできる。
【0059】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子及び混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0060】
次に、本発明に係る前記感光性樹脂組成物を用いて形成されるカラーフィルタについて説明する。
【0061】
本発明に係るカラーフィルタは、基板上に、前記感光性樹脂組成物から形成された透明着色膜(フィルタセグメント)、BM(ブラックマトリックス)のうち一つ以上を備えるものである。透明着色膜(フィルタセグメント)を構成する着色画素は、赤色、緑色、青色、黄色、紫色、マゼンタ色、シアン色、オレンジ色などから2〜6色の着色画素から選択される。その際に、同色系の色で、濃度の異なるフィルタセグメントが形成されていてもよい。
【0062】
液晶用カラーフィルタの場合は、前記透明着色膜(フィルタセグメント)上に、さらに透明導電層、配向膜層を順次積層せしめたものであり、例えば薄膜トランジスタのような電極を形成した対向基板と対置させ、間に液晶を介在させて液晶表示装置を構成する。以下、本明細書では、透明基板、ブラックマトリックス及び透明着色膜(フィルタセグメント)を合わせてカラーフィルタとする。また、必要に応じて前記カラーフィルタ上に保護層を設けることができる。
【0063】
次に、本発明の前記感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタの製造方法について説明する。
【0064】
(感光性樹脂組成物の塗布工程)
カラーフィルタの透明基板には、硝子基板、石英基板、プラスチック基板等、公知の透明基板材料が使用でき、中でも透明性、強度、耐熱性、耐候性において優れている硝子基板が好ましい。感光性樹脂組成物の塗布工程では、スリットダイコーター、スピンコーター等、公知の塗工装置を用いることができる。その後、溶剤成分を除去するため必要に応じて、減圧乾燥処理やプリベーク処理を施すことができる。
【0065】
(露光工程)
前記パターン露光をする工程では、従来公知の露光方法によりフィルタセグメントまたはBM(ブラックマトリックス)2を形成できる。前記パターン露光する工程では、透明基板の上面から紫外線、或いは電子線照射してパターンを硬化させる。照射する光或いは放射線としては、感光性樹脂組成物が硬化する吸収波長を有するものであれば特に限定されるものではないが、紫外線或いは電子線が特に好ましい。特に、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等による紫外線照射処理が好ましい。また、不要な波長はそれに対応するフィルタを介してカットすることが望ましい。
【0066】
(現像工程)
現像工程では、従来公知の現像方法により、前記感光性樹脂組成物の未露光部分を除去してフィルタセグメント、またはブラックマトリックスを形成する。未露光部分の除去に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもで
きる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0067】
(焼成工程)
本実施形態においては、フィルタセグメント及びブラックマトリックスを形成した後、加熱処理を施して熱硬化させる工程を設けることができる。加熱方法としてはコンベクションオーブン、ホットプレート、ハロゲンヒータ、IRオーブンによる加熱等が利用でき、特に限定されるものではない。ここで、焼成条件は、200〜250℃で10分〜60分間加熱することが好ましい。
【0068】
本発明の効果にある、溶剤に膨潤しない平坦性に優れたフィルタセグメント及びブラックマトリックスを形成するためには、焼成条件は、温度が高く、時間が長い方が、より望ましい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0070】
まず、実施例及び比較例で用いたアクリル樹脂溶液及び顔料分散体の調製方法について説明する。樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定したポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0071】
(アクリル樹脂溶液合成例)
反応容器にシクロヘキサノン370部を収容し、この容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、下記混合物を1時間かけて滴下し、重合反応を行った。
メタクリル酸 20.0部
メチルメタクリレート 10.0部
n−ブチルメタクリレート 55.0部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 15.0部
2,2´−アゾビスイソブチロニトリル 4.0部
【0072】
滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1.0部をシクロヘキサノン50部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を続けて、アクリル樹脂溶液を得た。
【0073】
室温まで冷却した後、アクリル樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃で、20分間加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成したアクリル樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにシクロヘキサノンを添加して、アクリル樹脂溶液を調製した。得られたアクリル樹脂の質量平均分子量Mwは40,000であった。
【0074】
(顔料分散体の調製)
下記表1に示す組成の混合物を均一に攪拌混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過し、赤色顔料分散体R、緑色顔料分散体G1、G2、青色顔料分散体B、及び黒色顔料分散体BMを調製した。
PR254:ジケトピロロピロール系顔料(C.I.Pigment Red 254)
(チバ・ジャパン社製「イルガフォーレッドB−CF」)
PR177:アントラキノン系顔料(C.I.Pigment Red 177)
(チバ・ジャパン社製「クロモフタールレッドA2B」)
PG58:ハロゲン化亜鉛フタロシアニン系顔料
(C.I.Pigment Green 58)
(大日本インキ化学工業社製「ファストゲングリーンA10」)
PG36:ハロゲン化銅フタロシアニン系顔料
(C.I.Pigment Green 36)
(東洋インキ製造社製「リオノールグリーン6YK」)
PB15:6:ε型銅フタロシアニン顔料
(C.I.Pigment Blue 15:6)
(BASF製「ヘリオゲンブルーL−6700F」)
PY150:ニッケルアゾ錯体系顔料
(C.I.Pigment Yellow 150)
(ランクセス社製「E4GN」)
CB:カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)
(三菱化学社製「MA11」)
顔料分散剤:日本ルーブリゾール社製「ソルスパース20000」)
アクリル樹脂溶液:先に調製したアクリル樹脂溶液
溶剤:シクロヘキサノン
【0075】
【表1】

【0076】
(感光性樹脂組成物の調製)
先に調製した顔料分散体R、G1、G2、B、BMを含む、下記表2に示す処方の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、各感光性樹脂組成物を得た。
顔料分散体:先に調製した顔料分散体
アクリル樹脂溶液:先に調製したアクリル樹脂溶液
モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(東亞合成社製「アロニックス M−402」)
有機溶剤:シクロヘキサノン
開始剤1:オキシムエステル系光重合開始剤エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュアOXE−02」)
開始剤2:α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア379」)
多官能チオール:TPMB
【0077】
【表2】

【0078】
<実施例1>
(ブラックマトリックスのパタ−ン形成)
前記表2に示したBM1組成物を、10cm×10cmのガラス基板上にスピンコーターで約1.5μmの厚さに塗工し、70℃のオーブン内に15分間静置し、余剰の溶剤を乾燥、除去した。
【0079】
次に、上記BM1組成物の塗膜から150μmの間隔をあけて、20μmのストライプ状のパターンを有するフォトマスクをセットし、露光、その後、現像して未露光部分を取り除いた後、この基板を230℃で30分加熱して、BM(ブラックマトリックス)を形成した。
【0080】
(フィルタセグメントのパタ−ン形成)
前記ブラックマトリックスを形成した10cm×10cmのガラス基板上に、表2に示したR1組成物を、100μmのストライプ状のパターンを有するフォトマスクを用いること以外は、ブラックマトリックスの形成と同様の工程で、赤色のフィルタセグメントを形成した。
【0081】
次に、下記表2に示したG3及びB1組成物を用いて、赤色のフィルタセグメントの形成と同様の工程で、順次、緑色及び青色のフィルタセグメントを形成しカラーフィルタを作製した。
【0082】
<実施例2>
前記表2に示した緑色のG4組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0083】
<比較例1>
前記表2に示した緑色のG1組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0084】
<比較例2>
前記表2に示した緑色のG2組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0085】
<比較例3>
前記表2に示した緑色のG5組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0086】
<比較例4>
前記表2に示した緑色のG6組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0087】
<比較例5>
前記表2に示した緑色のG7組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0088】
<比較例6>
前記表2に示した緑色のG8組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0089】
<評価>
実施例1及び2、比較例1〜6で作製したカラーフィルタを用いて、ビッカース硬度(HV)、膨潤率、算術平均粗さを測定した。また、外観ムラを観察した。これらの評価結果を下記表3に示す。
【0090】
[ビッカース硬度(HV)]
JISZ2244に準拠して、フィッシャー・インスツルメンツ社製微小膜硬度計HM2000を用いて、四角錐圧子(ビッカース圧子)を実施例1及び2、比較例1〜6で作製したカラーフィルタの緑色画素上に、20秒かけて5mNの荷重で押し込んだ時の数値(HV)を測定値とした。
【0091】
[膨潤率]
比較的膨潤率の差が大きく出易いN−メチルピロリドン(NMP)中に室温で5分間、実施例1及び2、比較例1〜6で作製したカラーフィルタを浸漬し、緑色画素部の浸漬前後の膜厚を測定して、下記式(1)により算出した。
式(1) 膨潤率(%)=(溶剤浸漬後の膜厚−溶剤浸漬前の膜厚)/溶剤浸漬前の膜厚×100
【0092】
[算術平均粗さ]
実施例1及び2、比較例1〜6で作製したカラーフィルタの赤色画素及び緑色画素部を、AFM(Atomic Force Microscope)で測定した際に算出される算術平均粗さRa(nm)を測定値とした。なお、AFMとしては、日本ビーコ株式会社製NanoScopeIIIaを用いた。
【0093】
[外観ムラ]
ナトリウムランプ(低圧ナトリウムランプNX55 1本)の光を、作製したカラーフィルタ基板に当て、該反射光の光ムラを目視観測した。この時、基板と目線の角度は、約30°から60°で検査し、下記の基準で評価した。
×:濃いムラが観察された。△:薄いムラが観察された。○:ムラは観察できなかった。
【0094】
【表3】

【0095】
<比較結果>
(ビッカース硬度とカラーフィルタの品質)
カラーフィルタにはある程度の硬度が必要である。即ち、物理的な衝撃に耐えうるためには、ビッカース27以上であることが必要である。また、液晶貼り合せの際、硬度が高すぎるとレジスト表面に割れが発生するため、ビッカース45以下が好ましい。比較例1〜6のなかで、比較例1、3、5、6のG画素上のビッカース硬度は、33.3以下であり、カラーフィルタとした際に外観ムラが観察された。また、比較例2及び4のG画素上のビッカース硬度はそれぞれ35.2、38.6であり、カラーフィルタとした際に薄いながら外観ムラが観察された。実施例1及び2のG画素上のビッカース硬度は、それぞれ41.5、37.1と硬度が高く、外観ムラは観察されなかった。よって、ビッカース硬度は、27から45、より好ましくは、35から45の範囲である。
【0096】
(膨潤率とカラーフィルタの品質)
比較例2と実施例2を比較すると、前記ビッカース硬度は、それぞれ38.6、37.1であり大きな差は見られない。しかしながら、膨潤率は、それぞれ113%、105%であり、カラーフィルタとした際に膨潤率の低い実施例2では、外観ムラが観察されなかった。一方、比較例5は膨潤率が79%と極端に低いが、前記ビッカース硬度も低いことから、膜の硬化が不十分で、カラーフィルタとした際に外観ムラが観察された。よって、膨潤率は、90%から110%、より好ましくは、95%から105%の範囲である。
【0097】
(表面粗度とカラーフィルタの品質)
比較例2と実施例2を比較すると、前記ビッカース硬度は、それぞれ38.6、37.
1であり大きな差は見られない。しかしながら、表面粗度(Ra)はそれぞれ、5.2nm、12.4nmであり、カラーフィルタとした際に表面粗度の高い実施例2では、外観ムラが観察されなかった。よって、硬化後の表面粗度(Ra)は、5nmから15nm、より好ましくは、10nmから15nmの範囲である。
【0098】
上記のように、実施例1及び2で得られた本発明品は、いずれも外観ムラのない良好な品質が得られた。一方、比較例1〜6で得られた比較例品は、いずれも外観ムラが観察され実用レベルには至らなかった。
【符号の説明】
【0099】
1・・・透明基板
2・・・BM(ブラックマトリックス)
3・・・透明着色膜(フィルタセグメント)
4・・・青色感光性樹脂組成物の溶剤浸透部
5・・・膨潤による凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、透明樹脂、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、光重合開始剤を含有した感光性樹脂組成物であって、
(a)硬化後の表面硬度が、該表面に角錐型微小先端を有する圧子を20秒かけて5mNとなる荷重で押し込んだ時に、計測されるビッカース硬度(HV)が27から45
(b)硬化後の膜の膨潤率が、N−メチルピロリドンを溶剤に用いた時に、下記式(1)で示される膨潤率が90%から110%
式(1)
膨潤率(%)=(溶剤浸漬後の膜厚−溶剤浸漬前の膜厚)/溶剤浸漬前の膜厚×100であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、(c)硬化後の表面粗度(Ra)が、5nmから15nmであることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記顔料が少なくとも緑色顔料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
基板上に、少なくとも請求項1乃至3の何れかに記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥する工程と、パターン露光する工程と、現像工程からなるフォトリソグラフィー法を用いることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のカラーフィルタの製造方法により製造されたことを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−97355(P2013−97355A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243250(P2011−243250)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】