説明

感光性黒色導電組成物及びプラズマディスプレイパネルにおけるその使用

【課題】黄色度が低く色調が改善された一層構造のバス電極をもたらしうる感光性黒色導電組成物の提供。
【解決手段】(a)Ag粉末、(b)黒色顔料、(c)ガラスフリット、(d)カルボキシル基含有樹脂、(e)光重合性モノマー、(f)光重合開始剤、及び(g)融点300〜400℃のカリウム化合物を含む、感光性黒色導電組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性黒色導電組成物、特にプラズマディスプレイパネル(以下、PDPということがある)の一層構造のバス電極形成用の組成物、並びにこの組成物を用いて得られた一層構造のバス電極、及びこの一層構造のバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
PDPは、プラズマ発光を利用した平面表示素子の一種である。例えば、PDP(AC型)の典型的な基本構造は、図1に示すとおりである。
【0003】
この構造では、ガラス等の透明材料からなる表示面側基板1と背面側基板2とを、所定の空間を有して互いに対向させて構成してあり、該空間には、放電ガスとして希ガスが封入されている。表示面側基板1には、透明電極3と、透明電極3のライン抵抗を下げるためのバス電極4とから構成された電極対が、所定のピッチで多数設けられ、それらが透明な誘電体層5、さらには保護層6で覆われている。同様に誘電体層7で覆われた背面側基板2には、上記の電極対と直交する多数のアドレス電極8が設けられている。これら電極対とアドレス電極8との交差部、あるいはその近傍には、隔壁9によって放電セルが画定され、これら各放電セルを選択的に放電させて蛍光体10を発光させることによって表示が行われる。
【0004】
バス電極4は、コントラスト及び電気特性の観点から、一般に、導電性物質としてAgを使用した白層と、黒色顔料を使用した黒層の白黒二層構造のものが主流となっている。
【0005】
近年、PDPの製造コスト低減の要求が高まっている。従来のバス電極形成は、フォトリソグラフィ法を用いた工法が主流であり、白・黒層各々について、印刷・乾燥・露光の工程が必要である。このため、バス電極を一層構造で形成すれば、製造工数の低減につながり、ひいては、コストダウンへの寄与が図れる。一層構造のバス電極については、導電性を得るためのAg粒子、コントラストを得るための四酸化三ルテニウムを含む黒色顔料、密着性を得るためのガラスフリットを含む組成物や、超伝導体を含む組成物によって形成することが提案されている(特許文献1及び2)。
【0006】
ところで、従来の二層構造のバス電極は、ガラス基板上のITO膜からなる透明電極の上に形成される。このため、バス電極の製造工程(特に焼成時)における、ガラス基板へのAg成分の拡散がITO膜によって抑制されていた。しかしながら、一層構造のバス電極の場合は、それとは異なり、ITO膜なしで、バス電極がガラス基板上に直接、形成される。このため、バス電極のAg成分が、特に焼成時にガラス基板に拡散しやすい。Ag成分がガラス基板に拡散すると黄変を生ぜしめ、バス電極の色調劣化を引き起こすという問題がある。この問題に対し、組成物に酸化銅、酸化クロム等の遷移金属酸化物を含有するガラスフリットを配合し、焼成時におけるAg拡散を抑制する技術が提案されている(特許文献3)。しかしながら、遷移金属酸化物を含むガラスフリットを多量に配合しており、低比抵抗のAg電極形成が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−6435号公報
【特許文献2】特開2006−196455号公報
【特許文献3】特開2003−162962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、黄色度が低く色調が改善された一層構造のバス電極をもたらしうる感光性黒色導電組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、融点300〜400℃のカリウム化合物を使用することにより、一層構造のバス電極の黄色度を低下させ、色調改善が可能となることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、(a)Ag粉末、(b)黒色顔料、(c)ガラスフリット、(d)カルボキシル基含有樹脂、(e)光重合性モノマー、(f)光重合開始剤、及び(g)融点300〜400℃のカリウム化合物を含む、感光性黒色導電組成物に関し、特にプラズマディスプレイパネルの一層構造のバス電極形成用の前記の組成物に関する。また、本発明は、前記の組成物を用いて得られた一層構造のバス電極に関する。さらに、本発明は、前記の一層構造のバス電極を備えたプラズマディスプレイパネルに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性黒色導電組成物によれば、黄色度が低く色調の改善された一層構造のバス電極を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のPDP(AC型)の典型的な基本構造である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、(a)Ag粉末を含む。(a)成分の形状は、特に限定されず、球状、リン片状、針状、不定形状が挙げられ、好ましくは、球状である。比表面積は、比抵抗及び解像度の点から、好ましくは、0.1〜2.5m/gであり、より好ましくは、0.3〜2.0m/gである。本明細書において、比表面積は、BET法で測定した値である。(a)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
本発明の組成物は、(b)黒色顔料を含む。黒色顔料は、特に限定されず、例えば、Fe、Co、Cr、Mn、Ni、Cu、Al、Ru等の1種又は2種以上の金属酸化物が挙げられる。コストの面からは、Ru以外の金属酸化物、特にRu以外の複合酸化物を使用することが好ましく、例えばFe−Co−Cr系黒色顔料、Fe−Co−Mn系黒色顔料、Fe−Mn系黒色顔料、Fe−Co−Cr−Ni系黒色顔料が挙げられる。コスト面から、組成物は、ルテニウム化合物、四酸化三コバルトを含有しないことが好ましい。(b)成分の形状は、特に限定されず、球状、リン片状、針状、不定形状が挙げられる。平均粒子径は、0.01〜5μmとすることができ、黒色度の点から、(b)成分の比表面積は、好ましくは、3〜20m/gであり、より好ましくは5〜15m/gである。本明細書において、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折散乱法で測定したメジアン径(体積基準)をいう。(b)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。黒色顔料は、例えば、原料となる酸化物等を混合粉砕し、所定の温度で焼成し、次いで、粉砕することにより得ることができる。混合・粉砕は、公知の方法により行うことができる。
【0014】
本発明の組成物は、(c)ガラスフリットを含む。(c)成分は、当該分野で公知のものを使用することができる。当該分野では、通常、軟化点が600℃以下のものが用いられ、580℃以下のものが好ましい。具体例としては、ホウケイ酸ビスマス系、ホウケイ酸アルカリ金属系、ホウケイ酸アルカリ土類金属系、ホウケイ酸亜鉛系、ホウケイ酸鉛系、ホウ酸鉛系、ケイ酸鉛系等を挙げることができ、環境への配慮の点から鉛フリーであることが好ましく、例えばホウケイ酸ビスマス系、ホウケイ酸アルカリ金属系が挙げられる。形状は、特に限定されず、平均粒子径は、通常、0.1〜10μmであり、好ましくは、0.2〜5μmである。(c)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
(d)カルボキシル基含有樹脂
(d)成分は、特に限定されず、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、不飽和カルボン酸のホモポリマーやコポリマー、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物とのコポリマーが挙げられる。
【0016】
不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸又はこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0017】
エチレン性不飽和化合物の具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。熱分解性の点から、メチルメタクリレートが好ましい。
【0018】
特に、エチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む感光性樹脂としたものが好ましく、例えば、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物とのコポリマーに、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させて製造することができる。
【0019】
エチレン性不飽和基を有するペンダントの具体的な例としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられるが、これらに限定されない。このようなペンダントを、コポリマーの主鎖に付加させる方法としては、コポリマーの主鎖中のカルボキシル基に、グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させる方法が知られている。
【0020】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、α−エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0021】
また、コポリマーの主鎖中のカルボキシル基に、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、アリルクロリド、メタアリルクロリド等を付加反応させてもよい。
【0022】
これらのエチレン性不飽和化合物又はクロリドの付加量は、感光特性の点から、コポリマー主鎖中のカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量が望ましく、さらに好ましくは0.1〜1モル当量が望ましい。
【0023】
(d)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
(e)光重合性モノマー
(e)成分は、感光性を有する炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物であれば、特に限定されず、当該分野で公知のものを使用することができる。具体的な例として、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0025】
(e)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
(f)光重合開始剤
(f)成分は、特に限定されず、当該分野で公知のものを使用することができる。具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロロアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロリド、キノリンスルホニルクロリド、N−フェニルチオアクリドン、4,4’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、カンファーキノン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、及びエオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0027】
(f)成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0028】
(g)融点300〜400℃のカリウム化合物
本発明は、(g)融点300〜400℃のカリウム化合物を含むことが特徴である。(g)成分を使用することにより、バス電極の黄色度を低下させ、色調改善を図ることができる。その機構は明らかではないが、バス電極の製造工程(特に、焼成時)における、(g)成分のK成分がガラスの成分に作用して、Ag成分の拡散を抑制していると考えられる。融点300〜400℃のカリウム化合物としては、硝酸カリウム、水酸化カリウム、二クロム酸カリウムが挙げられ、作業性、環境面の点から、硝酸カリウムが好ましい。
【0029】
本発明の組成物において、(a)成分100質量部あたり、(b)成分は、黒色度の点から、2〜12質量部とすることができ、3〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは、4.5〜9質量部である。(c)成分は、比抵抗の点から、1〜25質量部とすることができ、3〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは、3.5〜18質量部である。(d)成分は、解像度の点から、5〜40質量部が好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。(e)成分は、解像度の点から、1〜10質量部が好ましく、より好ましくは4〜8質量部である。(f)成分は、解像度の点から、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜4質量部である。(g)成分は、比抵抗及び黄色度低下の点から、0.3〜17質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部であり、さらに好ましくは0.8〜6質量部であり、特に1〜5質量部である。
【0030】
感光性組成物は、有機溶媒に分散させて感光性ペーストとすることができる。有機溶媒の具体例としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、ソルベッソ(登録商標)100、ソルベッソ(登録商標)150等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせ使用してもよい。有機溶媒の量は、ペーストの塗布方法によって適宜、選択することができる。
【0031】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の導電性粒子、可塑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、重合禁止剤、増感剤、安定剤等を含有することができる。
【0032】
本発明の組成物をペースト化したものを用いて、当該分野で公知の方法により、バス電極を形成することができる。具体的な、一層構造のバス電極の形成としては、以下が挙げられる。
(1)ガラス基板(例えば、ソーダライムガラス基板)上に、本発明の感光性黒色導電組成物のペーストを塗布し、乾燥させる。
(2)次いで、所定の露光パターンを有するパターンマスクを重ね合わせ、露光した後、アルカリ水溶液等の現像液により現像して、電極パターンを形成する。
(3)その後、例えば、600℃以下の温度で焼成し、一層構造のバス電極を形成する。この工程は、300〜450℃温度域での脱バインダ過程、及びそれに続く600℃以下のAg焼結過程を含む温度プロファイル条件を採用することができる。
【0033】
本発明の感光性黒色導電組成物のペーストを使用することにより、CIE1976(L)系の黄色度の指標となるb値を低下させ、色調改善を図ることができる。
【0034】
本発明の感光性黒色導電組成物は、プラズマディスプレイパネルにおける一層構造のバス電極の形成に好適であるが、従来の白黒二層構造のバス電極の黒層の形成にも使用することができる。この場合、二層構造のバス電極の白層は、従来の公知の白層形成用ペーストを使用することができる。また、本発明の感光性黒色導電組成物は、プラズマディスプレイパネルにおけるバス電極以外の導電性部分の形成にも用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に詳細に説明する。部、%は、他に断りのない限り、質量部、質量%を表す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
表1に示す量(部表示)で、カルボキシル基含有樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤からなる有機組成物に、Ag粉末、黒色顔料及びガラスフリット、カリウム化合物、その他の成分を添加した後、三本ロールミルにて均一に混練、分散して、感光性黒色導電組成物のペースト(実施例1、比較例1〜4)を調製した。次いで、下記の手順にて、バス電極特性(比抵抗及び色調)を測定した。結果を、表1に示す。なお、平均粒子径は、レーザー式粒度分布測定装置(マイクロトラック HRA MICROTRAC 9320−X100)を用いて測定したメジアン径(体積基準)であり、測定にあたっては、測定サンプル0.5gをヘキサメタリン酸ソーダ(分散剤)0.5質量%溶液100mlに添加し、超音波で3分間分散したものを使用した。
【0037】
〔バス電極の作製〕
以下のようにして、実施例及び比較例の各ペーストを用いて、バス電極を作成した。
(1)PDP用ガラス基板(ソーダライムガラス基板)、50mm×75mm、厚み2.8mm)にペーストを全面印刷した(48mm×70mm、ポリエステル350メッシュ、乳剤厚10μm)。
(2)80℃、10分の条件で乾燥させた。
(3)所定のパターンマスクを介し、UV200mJ/cm照射を行った(スポットUV照射機SP−7(USHIO製)、10mW/cm)。
(4)所定時間(TTC(The Total Cleaning Time)×1.5)、アルカリ現像液をスプレーし、取り出し後、直ちに水洗した。
(5)エアーで水分除去した後、メッシュベルト式連続炉で、580℃、10分の条件で焼成してバス電極を作製した。
上記のようにして、各ペーストで、異なるパターンマスクを使用して、ライン/スペースが50μm/50μm、100μm/100μm、200μm/200μmのバス電極を作製することができた。
〔比抵抗〕
上記のバス電極と同様にして、幅 1mm×長さ 100mmのパターンを作製して、LCRメーターを用い、パターン両端部間の抵抗を測定した。その後、表面粗さ計を用い、パターンの膜厚さを測定した。これらの測定値を用い、比抵抗を算出した。
〔L、b値〕
上記のバス電極と同様にして、20mm×20mmパターンを作製して、L及びb値を、ガラス面より色彩計NF999(日本電色工業製)で測定した。L値が小さいほど、黒色度に優れ、b値が高いほど黄色に近づく。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1と比較例1との対比から、硝酸カリウムを添加することにより、バス電極の比抵抗を低く保ちながら、黄色度を低下させ、色調改善を図れることがわかる。なお、酢酸カリウム及び炭酸カリウムを使用した比較例2及び4では、ペーストが固化し、バス電極の作製ができなかった。
【0040】
硝酸カリウムの量を表2に示す量(Ag粉末を100質量部とする)に変更したほかは、実施例1と同様にして、硝酸カリウムの量を変動させた感光性黒色導電組成物のペースト(実施例2〜6)を調製した。次いで、上記の手順にて、バス電極特性(比抵抗及び色調)を測定した。結果を、表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示されるように、硝酸カリウムの量を変動させた、実施例2〜6においても、実施例1と同様に、硝酸カリウムを添加していない比較例1に対して、黄色度が低下し、色調改善が見られた。
【0043】
黒色顔料の種類を表3に示すものに変更したほかは、実施例1と同様にして、感光性黒色導電組成物のペースト(実施例7〜10)を調製した。また、比較例1と同様にして、感光性黒色導電組成物のペースト(比較例5〜8)を調製した。次いで、上記の手順にて、バス電極特性(比抵抗及び色調)を測定した。結果を、表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例7〜10と比較例5〜8との対比から、硝酸カリウムを添加することにより、バス電極の比抵抗を保ちながら、黄色度を低下させ、色調改善を図れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の感光性黒色導電組成物によれば、黄色度が低く色調が改善された一層構造のバス電極をもたらしうる感光性黒色導電組成物が提供される。
【符号の説明】
【0047】
1 表示面側基板
2 背面側基板
3 透明電極
4 バス電極
5 誘電体層
6 保護層
7 誘電体層
8 アドレス電極
9 隔壁
10 蛍光体
11 観察者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Ag粉末、(b)黒色顔料、(c)ガラスフリット、(d)カルボキシル基含有樹脂、(e)光重合性モノマー、(f)光重合開始剤、及び(g)融点300〜400℃のカリウム化合物
を含む、感光性黒色導電組成物。
【請求項2】
プラズマディスプレイパネルの一層構造のバス電極形成用の請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(g)成分が、硝酸カリウムである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
(a)成分100質量部に対して、(g)成分が0.3〜17質量部である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
(b)成分が、平均粒子径0.5〜1.5μmの黒色顔料である、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
(b)成分が、Fe−Co−Mn系黒色顔料、Fe−Co−Cr系黒色顔料及びFe−Co−Ni−Crである、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
(a)成分100質量部に対して、(b)成分が2〜12質量部、(c)成分が1〜25質量部、(d)成分が10〜30質量部、(e)成分が1〜10質量部である、かつ(f)成分が0.1〜10質量部である、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物を用いて得られた一層構造のバス電極。
【請求項9】
請求項8記載の一層構造のバス電極を備えたプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2010−271399(P2010−271399A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121078(P2009−121078)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】