説明

感光性黒色樹脂組成物、樹脂ブラックマトリクス基板

【課題】反射色度が無彩色でありながら、高OD値、かつ、高抵抗値を有する樹脂遮光膜を高精細に形成することが可能な感光性黒色樹脂組成物を提供することにある。このような感光性黒色樹脂組成物を用いて樹脂遮光膜を形成することにより、そのようなカラーフィルターを用いることにより、表示特性の優れた液晶表示装置が得られる。
【解決手段】少なくとも(A)遮光材と(B)着色顔料、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)光重合開始剤、(E)反応性モノマーおよび(F)有機溶剤を含有する感光性黒色樹脂組成物であって、前記遮光材(A)として少なくともチタン窒化物粒子を含有し、前記(B)着色顔料として少なくともPR254、PR177、PR179から選ばれる少なくとも1種の赤顔料を含有することを特徴とする感光性黒色樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性黒色樹脂組成物とそれを用いて形成した着色パターンに関し、詳しくはカラーフィルター用或いはタッチパネル用感光性黒色樹脂組成物、およびこれを用いた樹脂ブラックマトリクス基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは、通常、ブラックマトリクスを形成したガラス、プラスチックシートなどの透明基板表面に、赤、緑、青の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成する方法で製造されている。この遮光性膜として用いられるブラックマトリクスは画素間の光漏れによるコントラスト及び色純度の低下を防止する役割を果たしている。
【0003】
また、タッチパネル用基板においても、同様に遮光膜としてブラックマトリクスが形成されるが、ガラスを介して直接視認されるため、反射の色目としては無彩色であることが要求されている。また、構成によっては、ブラックマトリクスを形成した後に電極等を形成する必要があるため、高い抵抗値に加え、高い密着性や耐薬品性が要求されている。
【0004】
従来、ブラックマトリクスとして、クロム、ニッケル、アルミニウム等の金属あるいは金属化合物の蒸着膜が用いられてきたが、その工程が複雑でかつ高価であり、また金属薄膜の表面が高反射性である等の問題点がある。そこで、この問題を解決するものとして、顔料を分散した樹脂組成物を用いる顔料分散法が現在主流となっている。
【0005】
顔料分散法には、ネガ型とポジ型があるが、アクリルポリマー、アクリル系多官能モノマーあるいはオリゴマー、光開始剤、溶剤および顔料を主成分とするネガ型の感光性組成物が広く用いられている。遮光材としては、カーボンブラック、低次酸化チタンや酸窒化チタン等のチタンブラック、酸化鉄等の金属酸化物、その他有機顔料混色系が使用されているが、カーボンブラック及び酸窒化チタンが主流となっている。
【0006】
このような汎用的な顔料分散系の例として、特許文献1には、感光アクリル樹脂にカーボンブラックを分散した樹脂ブラックマトリクスが記載されている。しかしながら、カーボンブラックは単位体積あたりの遮光性が低いため、高OD値化及び薄膜化を達成するためには樹脂ブラックマトリクス中の遮光材の体積比率を増加させる必要があり、樹脂ブラックマトリクス中の樹脂比率が減少することにより樹脂ブラックマトリクスとガラスとの密着性が低下し樹脂ブラックマトリクスが剥がれるといった問題や、十分な抵抗値が得られないという問題が生じる。さらに、カーボンブラックは紫外線透過率が非常に低いため、遮光材の高濃度化によって、十分な感度が得られず高精細なパターンの形成が難しくなるといった問題や、テーパー形状が急唆になるなどの問題があった。
【0007】
一方、酸窒化チタンやチタン窒化物を感光性樹脂材料の遮光材として用いた場合、単位体積あたりの遮光性が高いため、樹脂ブラックマトリクスの高OD値化及び薄膜化が容易であり、かつ、紫外線透過率が高いため、密着性が高く、高精細なパターンの形成が可能となる。しかしながら、酸窒化チタンやチタン窒化物を使用した樹脂ブラックマトリクスは、透過光が青味に着色するとともに、反射光が赤く着色するという問題があった。特許文献5に酸窒化チタンにカーボンブラックを添加することが記載されているが、酸窒化チタンにカーボンブラックを添加し調色した場合には、OD値が低下することに加えて、十分な抵抗値が得られないという問題があり、更には、紫外線透過率が低くなるために感光性樹脂材料の場合は高精細なパターンの形成が困難という問題があった。粒子径の小さなチタン窒化物を遮光材として用い、無彩色な色特性を有する樹脂ブラックマトリクスを得た場合も、同様に十分な感光特性が得られないという問題があった。(特許文献6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−300923号公報
【特許文献2】特開2005−338328号公報
【特許文献3】特開2005−77451号公報
【特許文献4】WO2005−037926号公報
【特許文献5】特開2008−260927号公報
【特許文献6】特開2009−58946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑み創案されたもので、その目的とするところは、高い遮光性を有しながら、無彩色な反射色特性、高い密着性、更には高い抵抗値を有するブラックマトリクスを容易に形成することが可能な感光性黒色樹脂組成物を提供することにある。このような感光性黒色樹脂組成物を用いることにより、薄膜で高ODかつ視認性の良好な樹脂ブラックマトリクスが得られる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、遮光材として以下のような特定のチタン窒化物粒子を選択し、感光性基を有する樹脂と組み合わせることにより、本発明の課題を解決できることを見いだした。
【0011】
すなわち、かかる本発明の目的は以下の構成により達成される。
(1) 少なくとも(A)遮光材、(B)着色顔料、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)光重合開始剤、(E)反応性モノマーおよび(F)有機溶剤を含有する感光性黒色樹脂組成物であって、該(A)遮光材として少なくともチタン窒化物粒子を含有し、該(B)着色顔料として少なくともPR254、PR177、PR179から選ばれる少なくとも1種の赤顔料を含有することを特徴とする感光性黒色樹脂組成物。
(2) 前記チタン窒化物粒子のCuKα線をX線源とした場合の(200)面に由来するピークの回折角2θが42.5°以上43.2°以下であることを特徴とする(1)に記載の感光性黒色樹脂組成物。
(3) 前記チタン酸窒化物の(200)面に由来するピークの半値幅より求めた結晶子サイズが10nm以上50nm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の感光性黒色樹脂組成物。
(4) 前記チタン窒化物粒子の酸素含有量が5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の感光性黒色樹脂組成物。
(5) 前記(A)遮光材と前記(B)着色顔料の総重量和にしめる前記赤顔料の重量比率が5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の感光性黒色樹脂組成物。
(6) (1)〜(5)のいずれか1項に記載の黒色樹脂組成物を透明基板上に塗布し、パターン形成して得られた樹脂ブラックマトリックスが形成されていることを特徴とする樹脂ブラックマトリックス基板。
(7) (6)に記載の樹脂ブラックマトリクスが形成されていることを特徴とするカラーフィルター基板。
(8) (7)に記載のカラーフィルター基板を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の黒色樹脂組成物を用いることにより、高遮光性、無彩色な反射色特性、高い密着性、更には高い抵抗値を有する樹脂ブラックマトリクスを簡便に得られるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の黒色樹脂組成物は、少なくとも(A)遮光材と(B)着色顔料、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)光重合開始剤、(E)反応性モノマーおよび(F)有機溶剤を含み、(A)遮光材として少なくともチタン窒化物粒子を含有し、(B)着色顔料として特定の赤顔料を含有することが必要であり、以下にその望ましい特性を示す。
【0014】
本発明の黒色樹脂組成物は、印刷インク、インクジェットインク、フォトマスク作製材料、印刷用プルーフ作製用材料、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、プラズマディスプレイパネル(PDP)の隔壁、誘電体パターン、電極(導体回路)パターン、電子部品の配線パターン、導電ペースト、導電フィルム、ブラックマトリックス等の遮光画像等の作製に用いることができる。好ましくは、カラー液晶表示装置等に用いるカラーフィルターの表示特性向上のために、着色パターンの間隔部、周辺部分、及びTFTの外光側等に遮光画像(ブラックマトリックスを含む。)を設けるためや、タッチパネル用遮光膜に好適に用いることができる。
【0015】
特に好ましくは、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、無機ELを備えたEL表示装置、CRT表示装置、タッチパネルなどの表示装置の周辺部に設けられた黒色の縁や、赤、青、緑の着色画素間の格子状やストライプ状の黒色の部分、更に好ましくはTFT遮光のためのドット状や線状の黒色パターン等のブラックマトリックスとして好適に用いられる。
【0016】
本発明の黒色樹脂組成物は、(A)遮光材として少なくともチタン窒化物粒子を用いることが重要であり、そのチタン窒化物とは、主成分として窒化チタンを含み、通常、副成分として酸化チタンTiO、Ti2n−1(1≦n≦20)で表せる低次酸化チタン及びTiN(0<x<2.0,0.1<y<2.0)で表せる酸窒化チタンを含有するものである。
【0017】
本発明の効果を顕著なものとするため、本発明で使用するチタン窒化物のCuKα線をX線源とした場合の(200)面に由来するピークの回折角2θとしては、42.5°以上43.2°以下であることが好ましく、更には42.5°以上42.7°以下であることが更に好ましい。回折角θがこの範囲となるチタン窒化物粒子を遮光材として用いることにより、黒色樹脂組成中の遮光材濃度を低く保ったまま、高いOD値を達成することが可能となり、更には、高い紫外線透過率を有するため、高精細かつテーパー形状の良好な樹脂ブラックマトリクスを容易に形成できるようになる。
【0018】
チタン化合物のX線回折スペクトルはCuKα線をX線源とした場合、最も強度の強いピークとしてTiNは(200)面に由来するピークが2θ=42.5°近傍に、TiOは(200)面に由来するピークが2θ=43.4°近傍にみられる。一方、最も強度の強いピークではないがアナターゼ型TiOは(200)面に由来するピークは2θ=48.1°近傍に、ルチル型TiOは(200)面に由来するピークは2θ=39.2°近傍に観測される。よって、窒素原子及び酸素原子を有する結晶構造をとるチタン化合物は回折角2θが42.5°から43.4°の範囲において最も強度の強いピークがみられ、酸素原子を多く含有する結晶状態であるほどピーク位置は42.5°に対して高角度側にシフトする。酸化チタンを窒化して得られる、窒化還元が不十分な酸窒化チタンにおいては回折角2θとして42.9°から43.2°に最も強度の強いピークが確認される(特開2006−209102号公報)。また、副成分として酸化チタンTiOを含有する場合、最も強度の強いピークとしてアナターゼ型TiO(101)に由来するピークが2θ=25.3°近傍に、ルチル型TiO(110)に由来するピークが2θ=27.4°近傍に見られる。しかし、TiOは白色でありブラックマトリクスの遮光性を低下させる要因となるため、ピークとして観察されない程度に低減されていることが好ましい。
【0019】
X線回折ピークの半値幅よりチタン窒化物粒子を構成する結晶子サイズを求めることができ、下式(1)、(2)に示すシェラーの式を用いて算出される。
【0020】
【数1】

【0021】
【数2】

【0022】
ここで、K=0.9、λ(0.15418 nm)、βe:回折ピークの半値幅、βo:半値幅の補正値(0.12°)である。但し、β、βe及びβoはラジアンで計算される。
【0023】
結晶子サイズとしては10nm以上であることが好ましく、更には10nm以上50nm以下であることが好ましく、より好ましくは10以上30nm以下である。結晶子サイズが10nm未満のチタン窒化物粒子を用いると、ブラックマトリクスの遮光性が低下し、更には、分散性が悪化するという問題が生じる。一方、50nmを越えると遮光性が低下し、更には沈降しやすくなり保存安定性が悪化するという問題が生じる。但し、結晶子サイズが小さい方が、遮光性は低下するものの、反射の色目は無彩色に近づくため、本発明においては、適度に小さい方が好ましい。
【0024】
本発明で用いられるチタン窒化物粒子は主成分としてTiNを含み、通常、その合成時における酸素の混入や、特に粒子径が小さい場合に顕著となるが、粒子表面の酸化などにより、一部酸素原子を含有している。含有する酸素量が少ない方がより高いOD値が得られるため好ましく、とりわけ副成分としてTiOを含有しないことが好ましい。しかしながら、酸素含有量が少ない程、反射の色味としては赤みを呈するため、適度に酸素原子を含有していることが好ましい。その酸素含有量としては5質量%以上20質量%以下であり、更には8質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
チタン含有量はICP発光分光分析法により分析し、窒素含有量は不活性ガス融解−熱伝導度法により分析し、酸素含有量は不活性ガス融解−赤外線吸収法により分析することができる。
【0026】
チタン窒化物の合成には一般的に気相反応法が用いられ、電気炉法や熱プラズマ法等が挙げられるが、不純物の混入が少なく、粒子径が揃いやすく、また生産性も高い熱プラズマ法による合成が好ましい。熱プラズマを発生させる方法としては、直流アーク放電、多相アーク放電、高周波(RF)プラズマ、ハイブリッドプラズマ等が挙げられ、電極からの不純物の混入が少ない高周波プラズマがより好ましい。熱プラズマ法による窒化チタン微粒子の具体的な製造方法としては、プラズマ炎中で四塩化チタンとアンモニアガスを反応させる方法(特開平2−22110号公報)や、チタン粉末を高周波熱プラズマにより蒸発させ窒素をキャリアーガスとして導入し冷却過程にて窒化させ合成する方法(特開昭61−11140号公報)や、プラズマの周縁部にアンモニアガスを吹き込む方法(特開昭63−85007号)等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、所望とする物性を有するチタン窒化物粒子にできれば製造方法は問わない。なお、チタン窒化物粒子は種々のものが市販されており、本発明で規定される上記回折角及び上記酸素含有量、さらには、上記した好ましい結晶子サイズ及び比表面積を満足するものも複数市販されている。本発明において、それらの市販品を好ましく用いることができる。
【0027】
本発明において、(B)着色顔料として少なくともピグメントレッド(以下PRと略す)254、PR177、PR179から選ばれる少なくとも1種の赤顔料を用いることが重要である。これらの赤顔料は、着色力が強いため、少量の添加により反射の色目を調整できるため好ましい。
【0028】
上記以外に用いられる赤顔料としては、特に制限はなく、次のようなものが好ましく使用されるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
【0029】
赤色顔料の例としては、ピグメントレッド(以下PRと略す)9、PR48、PR97、PR122、PR123、PR144、PR149、PR166、PR168、PR180、PR190、PR192、PR209、PR215、PR216、PR217、PR220、PR223、PR224、PR226、PR227、PR228、PR240、PR242などが使用される。
【0030】
前記(A)遮光材と前記(B)着色顔料の総重量和にしめる前記赤顔料の重量比率が5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、更には5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。赤顔料の占める割合が大きくなるほど、反射の色目及び紫外線透過率は高くなるが、遮光性が低下するため、上記範囲とすることが好ましい。
【0031】
本発明において、黒色被膜の色度調整のために、OD値が低下しない範囲で(A)遮光材および(B)着色顔料の一部を他の顔料に変えることが可能である。チタン窒化物以外の顔料としては、黒色有機顔料、混色有機顔料、および無機顔料等から用いることができる。黒色有機顔料としては、カーボンブラック、樹脂被覆カーボンブラック、ペリレンブラック、アニリンブラック等が、混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、マゼンダ、シアン等から選ばれる少なくとも2種類以上の顔料を混合して疑似黒色化されたものが、無機顔料としては、グラファイト、およびチタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属微粒子、金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属窒化物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
本発明では、(C)アルカリ可溶性樹脂を必須成分とするが、顔料に対してバインダーとして作用し、かつブラックマトリクス等のパターンを形成する際に、その現像工程においてアルカリ現像液に可溶するものであれば、特に限定されるものではない。中でも、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体を好ましく用いることができる。不飽和カルボン酸の例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸などのモノカルボン酸類、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのジカルボン酸またはその酸無水物、フタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)などの多価カルボン酸モノエステル類などがあげられる。特に(メタ)アクリル酸から導かれる構成単位を含んでなるアクリル系ポリマーが好ましく、さらに、構成単位に含まれるカルボン酸に、エチレン性不飽和基とエポキシ基を含有してなる化合物を反応させて得られたアクリル系ポリマーを用いると、露光、現像の際の感度がよくなるので好ましく用いることができる。エチレン性不飽和基としては、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
【0033】
これらは単独で用いても良いが、他の共重合可能なエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いても良い。共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの(架橋)環式炭化水素基、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレートなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。とくに(メタ)アクリル酸およびベンジル(メタ)アクリレートを含んでなるアクリル系ポリマーは、分散安定性、パターン加工性の各観点から特に好ましい。
【0034】
上記アクリル系ポリマーを、顔料分散時に顔料に対して5〜50%、好ましくは7〜40%添加すると、高度に分散が安定した顔料分散体が得られる。
【0035】
また、上記記載の構成単位に含まれる(メタ)アクリル酸に、エチレン性不飽和基とエポキシ基を含有してなる化合物を反応させて得られたアクリル系ポリマー以外にも、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル系ポリマーを好ましく用いることができる。具体例としては、特許第3120476号公報、特開平8−262221号公報に記載されている共重合体、あるいは市販のアクリル系ポリマーである光硬化性樹脂「サイクロマー(登録商標)P」(ダイセル化学工業(株))、アルカリ可溶性カルド樹脂などが挙げられる。
【0036】
アルカリ可溶性樹脂の平均分子量(Mw)としては、5千〜4万(テトラヒドロフランをキャリヤーとしてゲルパーミェーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算したもの)のものが好ましく、さらには平均分子量が8千〜3万であり、かつ酸価70〜150(mgKOH/g)のポリマーが感光特性、エステル系溶剤に対する溶解性、アルカリ現像液に対する溶解性、残渣抑制の各観点から最も好ましい。
【0037】
(E)反応性モノマーとしては、多官能、単官能のアクリル系モノマーあるいはオリゴマーを用いることができる。多官能モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレート、特許第3621533号公報や特開平8−278630号公報に記載されているようなフルオレンジアクリレート系オリゴマー、あるいはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びその酸変性体、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びその酸変性体、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びその酸変性体、2,2−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]エーテル、4,4′−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]シクロヘキサン、9,9−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−クロロ−4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジメタアクリレート、などがあげられる。これらは単独または混合して用いることができる。
【0038】
これらの多官能モノマーやオリゴマーの選択と組み合わせにより、レジストの感度や加工性の特性をコントロールすることが可能である。とくに感度を上げるためには、官能基が3以上、より好ましくは5以上ある化合物の使用が望ましく、とくにジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びその酸変性体が好ましい。また、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物とメタアクリル酸との反応物に多塩基酸カルボン酸又はその酸無水物を反応させて得られた不飽和基含有アルカリ可溶性モノマーも現像性、加工性の観点から好ましく用いられる。さらに、分子中に芳香環を多く含み撥水性が高いフルオレン環を有する(メタ)アクリレートの併用が現像時にパターンを望ましい形状にコントロールできるので好ましい。
【0039】
(D)光重合開始剤としては、特に制限はないが、アルキルフェノン系および/あるいはオキシムエステル系光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0040】
アルキルフェノン系光重合開始剤として、α−アミノアルキルフェノン系あるいはα−ヒドロキシアルキルフェノン系などがあげられるが、特にα−アミノアルキルフェノン系が高感度の観点から好ましい。例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)“イルガキュア(登録商標)”369である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)“イルガキュア(登録商標)”379である2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホルニル)フェニル]−1−ブタノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどがあげられる。
【0041】
オキシムエステル系光重合開始剤の具体例として、チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)“イルガキュア(登録商標)”OXE01である1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、チバ・スペシャルティ・ケミカル(株)“イルガキュア(登録商標)”OXE02であるエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、旭電化工業(株)製の “アデカ(登録商標)オプトマー”N−1818、N−1919、“アデカクルーズ”NCI−831などがあげられる。
【0042】
また、これらの光重合開始剤に加えて、ベンゾフェノン系化合物、オキサントン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、カルバゾール系化合物、トリアジン系化合物、リン系化合物あるいはチタネート等の無機系光重合開始剤など公知の光重合開始剤を併用して用いることもできる。例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、4−(p−メトキシフェニル)−2,6−ジ−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどがあげられる。
【0043】
本発明の黒色組成物において、(A)遮光材と(B)着色顔料との総和を顔料成分と呼び、顔料成分/樹脂成分の重量組成比は、80/20〜40/60の範囲であることが、高OD値の黒色被膜を得るために好ましい。ここで、樹脂成分とは、ポリマー、モノマーあるいはオリゴマーと高分子分散剤の合計とする。樹脂成分の量が少なすぎると、黒色被膜の基板との密着性が不良となり、逆に顔料成分の量が少なすぎると厚み当たりの光学濃度(OD値/μm)が低くなり問題となる。
【0044】
本発明の黒色樹脂組成物に用いられる(F)有機溶剤としては、特に限定されるものではなく、エステル類、脂肪族アルコール類、ケトン類などが使用できる。
【0045】
具体的なエステル類としては、ベンジルアセテート(沸点214℃)、エチルベンゾエート(沸点213℃)、γ―ブチロラクトン(沸点204℃)、メチルベンゾエート(沸点200℃)、マロン酸ジエチル(沸点199℃)、2−エチルヘキシルアセテート(沸点199℃)、2−ブトキシエチルアセテート(沸点192℃)、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート(沸点188℃)、シュウ酸ジエチル(沸点185℃)、アセト酢酸エチル(沸点181℃)、シクロヘキシルアセテート(沸点174℃)、3−メトキシ−ブチルアセテート(沸点173℃)、アセト酢酸メチル(沸点172℃)、エチル−3−エトキシプロピオネート(沸点170℃)、2−エチルブチルアセテート(沸点162℃)、イソペンチルプロピオネート(沸点160℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点158℃)、酢酸ペンチル(沸点150℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0046】
これらの溶剤のなかで、酢酸エステル系またはプロピオン酸エステル系の溶剤で、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、3−メトキシ−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがとくに好ましい。
【0047】
また、上記以外の溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル(沸点153℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)などのプロピレングリコール誘導体などの脂肪族エーテル類、上記以外の脂肪族エステル類、例えば、酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸ブチル(沸点126℃)、酢酸イソペンチル(沸点142℃)、あるいは、ブタノール(沸点118℃)、3−メチル−2−ブタノール(沸点112℃)、3―メチル―3―メトキシブタノール(沸点174℃)などの脂肪族アルコール類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、キシレン(沸点144℃)、エチルベンゼン(沸点136℃)、ソルベントナフサ(石油留分:沸点165〜178℃)などの溶剤を併用することも可能である。
【0048】
さらに基板の大型化に伴いダイコーティング装置による塗布が主流になってきているので、適度の揮発性、乾燥性を実現するため、2成分以上の混合溶剤から構成するのが好ましい。該混合溶剤を構成する全ての溶剤の沸点が150℃以下の場合、膜厚の均一性が得られない、塗布終了部の膜厚が厚くなる、塗液をスリットから吐出する口金部に顔料の凝集物が生じ、塗膜にスジが発生するという多くの問題を生じる。一方、該混合溶剤の沸点が200℃以上の溶剤を多く含む場合、塗膜表面が粘着性となり、スティッキングを生じる。したがって沸点が150℃以上200℃の溶剤を30〜75質量%含有する混合溶剤が望ましい。
【0049】
本発明の黒色樹脂組成物に用いられる密着性改良剤として、シランカップリング剤を含むことが出来る。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが原料入手の容易さから好ましい。本発明で用いる上記化合物は少量で接着改良効果があるので、添加量としては多く添加する必要はなく、カラーレジスト全固形分に対して、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0050】
本発明の黒色樹脂組成物において、遮光材を樹脂溶液中に均一にかつ安定に分散させるために顔料分散剤を添加することが好ましい。顔料分散剤としては、ポリエステル系高分子顔料分散剤、アクリル系高分子顔料分散剤、ポリウレタン系高分子顔料分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤、顔料誘導体、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カルボジイミド系顔料分散剤等が挙げられる。これらの顔料分散剤は、顔料の種類に応じて、適宜選択されて使用される。また、これらの顔料分散剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上組み合わせて用いてもよい。これらの高分子分散剤は感光性を有していないため、多量に添加すると目的のカラーレジストの感光性能を悪化させる懸念があり、分散安定性、感光性能を加味した適正な添加量にすることが望ましい。顔料に対して1〜50(質量%)添加、さらに好ましくは3〜30(質量%)添加すると、感光性能を悪化させずに、高度に分散を安定化させる効果があり、より一層好ましい。
【0051】
また、本発明の黒色樹脂組成物には、塗布性、着色被膜の平滑性やベナードセルを防止する目的で、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤の添加量は通常、顔料の0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。添加量が少なすぎると塗布性、着色被膜の平滑性やベナードセルを防止効果がなく、多すぎると逆に塗膜物性が不良となる場合がある。界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサンなどを主骨格とするシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。本発明では、これらに限定されずに、界面活性剤を1種または2種以上用いることができる。
【0052】
本発明の黒色樹脂組成物において樹脂成分(モノマーやオリゴマー、光重合開始剤等の添加剤も含む)と顔料成分をあわせた固形分濃度としては、塗工性・乾燥性の観点から2%以上30%以下が好ましく、更には5%以上20%以下であることが好ましい。従って、本発明の黒色組成物は、好ましくは、溶剤と、樹脂成分と顔料成分とから本質的に成り、樹脂成分と遮光材との合計量が好ましくは2%以上30%以下、さらに好ましくは5%以上20%以下であり、残部が溶剤である。上記のとおり、界面活性剤をさらに上記した濃度で含有していてもよい。
【0053】
本発明での黒色樹脂組成物では、分散機を用いて樹脂溶液中に直接顔料を分散させる方法や、分散機を用いて水または有機溶剤中に顔料を分散して顔料分散液を作製し、その後樹脂溶液と混合する方法などにより製造される。顔料の分散方法には特に限定はなく、ボールミル、サンドグラインダー、3本ロールミル、高速度衝撃ミルなど、種々の方法をとりうるが、分散効率と微分散化からビーズミルが好ましい。ビーズミルとしては、コボールミル、バスケットミル、ピンミル、ダイノーミルなどを用いることができる。ビーズミルのビーズとしては、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズなどを用いるのが好ましい。分散に用いるビーズ径としては0.01mm以上5.0mm以下が好ましく、更に好ましくは0.03mm以上1.0mm以下である。顔料の一次粒子径及び一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径が小さい場合には、0.03mm以上0.10mm以下といった微小な分散ビーズを用いる事が好ましい。この場合、微小な分散ビーズと分散液とを分離することが可能な遠心分離方式によるセパレーターを有するビーズミルを用いて分散することが好ましい。一方、サブミクロン程度の粗大な粒子を含む顔料を分散させる際には、0.10mm以上の分散ビーズを用いる事により十分な粉砕力が得られ顔料を微細に分散できるため好ましい。
【0054】
本発明の黒色樹脂組成物を用いたダイコーティング装置による樹脂ブラックマトリクス基板の製造方法の例を説明する。基板としては通常、ソーダガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどの透明基板などが用いられるが、特にこれらに限定されない。ダイコーティング装置としては、例えば特許第3139358号公報、特許第3139359号公報などに開示されている枚葉塗布装置を挙げることができる。この装置により、本発明の黒色樹脂組成物(塗液)を口金から吐出させ、基板を移動させることにより、基板上に黒色樹脂組成物を塗布することができる。この場合、基板は枚葉で多数枚塗布されるため、長時間運転すると、塗液をスリットから吐出する口金部に顔料の凝集物が生じ、これが塗布欠点となり収率低下を招くことがある。この場合、該装置の吐出口である口金を上記150℃以上の沸点を有するエステル系の溶剤を全溶剤に対して40質量%以上含む溶剤で拭き取る工程を設けることにより、塗布欠点が解消され収率が向上する。上記により、基板上に黒色樹脂組成物を塗布した後、風乾、減圧乾燥、加熱乾燥などにより、溶剤を除去し、黒色樹脂組成物の塗膜を形成する。とくに減圧乾燥工程を設けた後、オーブンあるいはホットプレートで追加の加熱乾燥することにより、対流によって生じる塗布欠点が解消され収率が向上する。減圧乾燥は常温〜100℃、5秒〜10分、減圧度500〜10(Pa)、より好ましくは減圧度150〜50(Pa)の範囲で行うのが好ましい。加熱乾燥はオーブン、ホットプレートなどを使用し、50〜120℃の範囲で10秒〜30分行うのが好ましい。
【0055】
続いて該被膜上にマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射する。ついでアルカリ性現像液で現像を行う。非イオン系界面活性剤などの界面活性剤を0.1〜5%添加したアルカリ性現像液を使用すると、より良好なパターンが得られて好ましい。アルカリ性現像液に用いるアルカリ性物質としては特に限定はしないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の1級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の2級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン等の4級アンモニウム塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等のアルコールアミン類、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン、モルホリン等の環状アミン類などの有機アルカリ類が挙げられる。
【0056】
アルカリ性物質の濃度は0.01質量%から50質量%である。好ましくは0.02質量%から10質量%、さらに好ましくは0.02から1質量%である。また現像液がアルカリ水溶液の場合、現像液にエタノール、γーブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤を適宜加えても良い。
【0057】
これら現像液の中では作業環境、廃現像液処理の点から、アルカリ水溶液の水系現像液が好ましい。
【0058】
現像方式は浸漬法、スプレー法、パドル法等を用いるが特に限定しない。現像後、純水などによる洗浄工程を加える。
【0059】
得られた黒色樹脂組成物の塗膜パターンは、その後、加熱処理(ポストベーク)することによってパターンニングされる。加熱処理は通常、空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中などで、150〜300℃、好ましくは180〜250℃の温度のもとで、0.25〜5時間、連続的または段階的に行われる。
【0060】
このように、本発明の黒色樹脂組成物から得られた樹脂ブラックマトリクスの光学濃度(Optical Density、OD値)としては、波長380〜700nmの可視光域において膜厚1.0μmあたり4.0以上であることが好ましく、より好ましくは4.5以上、更には5.0以上であることが好ましい。なお、OD値は顕微分光器(大塚電子製MCPD2000)を用いて測定を行い、下記の関係式(3)より求めることができる。
【0061】
OD値 = log10(I /I) (3)
ここで、I;入射光強度、I;透過光強度となる。
【0062】
また、樹脂ブラックマトリクスの反射色度としては、透明基板の面より測定を行い、JIS−Z8729 の方法に従って、標準C光源に対する反射スペクトルを用いて、CIE L*a*b*表色系により計算された色度値(a*、b*)が共に−3.0以上3.0以下となることが好ましく、特に好ましくは−2.0以2.0以下である。色度値(a*、b*)が、−3.0よりも小さいと、透明基板を介して樹脂ブラックマトリクスを見た場合に、膜面に映った像が青および緑色に着色して視認されるという問題があり、3.0を越えると膜面に映った像が赤および黄色に着色して視認されるという問題がある。
【0063】
また、樹脂ブラックマトリクスの表面抵抗値ρs(Ω/□)としては、1010(Ω/□)以上が好ましく、更には1012(Ω/□)以上であることが好ましい。表面抵抗値は「JIS K6911」に記載の方法により測定を行い、求めることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
<評価方法>
「X線回折」
X線回折は粉末試料をアルミ製標準試料ホルダーに詰め、広角X線回折法(理学電機社製 RU−200R)により測定した。測定条件としては、X線源はCuKα線とし、出力は50kV/200mA、スリット系は1°−1°−0.15mm−0.45mm、測定ステップ(2θ)は0.02°、スキャン速度は2°/分とした。回折角2θ=46°付近に観察される(200)面に由来するピークの回折角を測定した。更に、この(200)面に由来するピークの半値幅より、前述の式(1)、(2)のシェラーの式を用いて、粒子を構成する結晶子サイズを求めた。
【0066】
「組成分析」
チタン含有量はICP発光分光分析法(セイコーインスツルメンツ社製 ICP発光分光分析装置SPS3000)により測定した。酸素含有量及び窒素含有量は(堀場製作所製 酸素・窒素分析装置 EMGA−620W/C)用いて測定し、不活性ガス融解−赤外線吸収法により酸素含有量を、不活性ガス融解−熱伝導度法により窒素含有量を求めた。
【0067】
[OD値]
無アルカリガラス上に膜厚1.0μmの樹脂ブラックマトリクスを形成させ、顕微分光器(大塚電子製MCPD2000)を用いて上述の式(3)より求めた。
【0068】
[反射色度]
厚み0.7mmの無アルカリガラス上に膜厚1.0μmの樹脂ブラックマトリクスを形成させ、紫外・可視・近赤外分光光時計(島津分光光度計UV−2500PC)を用いて、ガラス面からの反射色度を測定した(測定条件は、測定波長領域;300〜780nm、サンプリングピッチ;1.0nm、スキャン速度;低速、スリット幅;2.0nm。)。
【0069】
[密着性]
無アルカリガラス上に乾燥後膜厚が1.0μmとなるように、黒色樹脂組成物を塗布乾燥させ、解像度テスト用マスクを介してi線換算で100mJ/cmとなるように露光を行い、0.045質量%KOH水溶液を用いて未露光部分が溶解する時間の1.7倍の現像を行った。現像後の基板を光学顕微鏡にて観察し、基板上のレジストパターンが残存する最小マスク線幅を記載した。
【0070】
[表面抵抗]
無アルカリガラス上に膜厚1.0μmの樹脂ブラックマトリクスを形成させ、高抵抗抵抗率計(三菱化学製ハイレスタUP)によって表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0071】
アクリルポリマー(P−1)の合成
特許第3120476号公報の実施例1に記載の方法により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(重量組成比30/40/30)を合成後、グリシジルメタクリレート40質量部を付加させ、精製水で再沈、濾過、乾燥することにより、平均分子量(Mw)40,000、酸価110(mgKOH/g)の特性を有するアクリルポリマー(P−1)粉末を得た。
【0072】
実施例1
熱プラズマ法により製造したチタン窒化物粒子(チタン窒化物1、日清エンジニアリング(株)製、TiN UFP Lot13307412)の(200)面に由来するピークの回折角2θは42.65°、このピークの半値幅より求めた結晶子サイズは17.0nm、BET比表面積は105.8m/gであった。また組成分析を行ったところ、チタン含有量は69.9質量%、窒素含有量は19.1質量%、酸素含有量は9.94質量%であった。また、TiOに起因するX線回折ピークは全く見られなかった。
【0073】
チタン窒化物1(180g)、赤顔料としてPR254(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、BT−CF、20g)、アクリルポリマー(P−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量%溶液(94g)、高分子分散剤としてビックケミー・ジャパンBYK6919、20質量%溶液(62g)およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(644g)をタンクに仕込み、ホモミキサー(特殊機化製)で1時間撹拌し、予備分散液1を得た。その後、0.05mmφジルコニアビーズ(ニッカトー製、YTZボール)を70%充填した遠心分離セパレーターを具備したウルトラアペックスミル(寿工業製)に予備分散液1を供給し、回転速度8m/sで2時間分散を行い、固形分濃度25質量%、顔料/樹脂(重量比)=80/20の顔料分散液1を得た。
【0074】
この顔料分散液1(738.9g)にアクリルポリマー(P−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量%溶液(41.4g)、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量%溶液(59.0g)、光重合開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカル(株)“イルガキュア(登録商標)”OXE02(3.7g)、密着性改良剤として信越化学(株)製KBM503(15.0g)、シリコーン系界面活性剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10質量%溶液(4.2g)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(137.8g)に溶解した溶液を添加し、全固形分濃度25質量%、顔料/樹脂(重量比)=60/40の黒色樹脂組成物1を得た。
【0075】
この黒色樹脂組成物1を無アルカリガラスAN100基板上にミカサ(株)製スピンナー1H−DSで塗布し、100℃で10分間プリベイクして塗膜を作製した。 ユニオン光学(株)製マスクアライナーPEM−6Mを用い、フォトマスクを介して露光(200mJ/cm)し、0.045質量%KOH水溶液を用いて現像し、続いて純水洗浄することにより、パターンニング基板を得た。さらに、230℃で30分間キュアした。このようにして、厚みが1.00μmのブラックマトリクス1を作成した。
【0076】
実施例2
使用する赤顔料としてPR254の代わりにPR177(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社、クロモフタルレッドA2B)を用いた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液2および黒色樹脂組成物2を得た。また、黒色樹脂組成物2を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス2を作成した。
【0077】
実施例3
チタン窒化物1の添加量を170g、赤顔料PR177の添加量を30gとした以外は実施例2と同様にして、顔料分散液3および黒色樹脂組成物3を得た。また、黒色樹脂組成物3を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス3を作成した。
【0078】
実施例4
使用する赤顔料としてPR254の代わりに赤顔料PR179(クラリアント社、P2GL−WD)を用いた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液4および黒色樹脂組成物4を得た。また、黒色樹脂組成物4を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス4を作成した。
【0079】
実施例5
熱プラズマ法により製造したチタン窒化物粒子(チタン窒化物2、日清エンジニアリング(株)製、TiN UFP Lot1330907101)の(200)面に由来するピークの回折角2θは42.60°、このピークの半値幅より求めた結晶子サイズは22.8nm、BET比表面積は83.8m/gであった。また組成分析を行ったところ、チタン含有量は71.6質量%、窒素含有量は20.4質量%、酸素含有量は7.15質量%であった。また、TiOに起因するX線回折ピークは全く見られなかった。使用するチタン窒化物としてチタン窒化物1の代わりにチタン窒化物2を用いた以外は実施例3と同様にして、顔料分散液5および黒色樹脂組成物5を得た。また、黒色樹脂組成物5を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス5を作成した。
【0080】
比較例1
赤顔料を添加せずに、チタン窒化物1を200g用いた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液6および黒色樹脂組成物6を得た。また、黒色樹脂組成物6を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス6を作成した。
【0081】
比較例2
赤顔料の代わりに緑顔料PG36(ルーブリゾール社、6YCL、20g)を用いた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液7および黒色樹脂組成物7を得た。また、黒色樹脂組成物7を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス7を作成した。
【0082】
比較例3
チタン窒化物の添加量を150gとし、赤顔料の代わりに黄顔料PY150(ランクセス社、E4GN−GT、50g)を用いた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液8および黒色樹脂組成物8を得た。また、黒色樹脂組成物8を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス8を作成した。
【0083】
比較例4
赤顔料の代わりに青顔料PB15:6(東洋インキ製造株式会社、リオノーゲンブルーES、16g)と紫顔料PV23(クラリアント社、RL−COF、4g)の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液9および黒色樹脂組成物9を得た。また、黒色樹脂組成物9を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス9を作成した。
【0084】
比較例5
使用する顔料として、チタン窒化物1(100g)とカーボンブラック(三菱化学、MA100、100g)の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、顔料分散液10および黒色樹脂組成物10を得た。また、黒色樹脂組成物10を用いて実施例1と同様に厚みが1.00μmのブラックマトリクス10を作成した。
【0085】
評価結果を表1に示す。実施例に示す樹脂組成物を用いて形成したブラックマトリクスは、反射色度(a*、b*)が共に3.0以下となり良好であり、かつ高い抵抗値を有していることが判る。また、紫外線透過率が高いため、感度が高く現像後の密着性も良好で有ることが判る。一方、赤顔料の代わりに、緑顔料、青顔料、紫顔料用いた場合には、反射色度a*及び/或いはb*が3.0以上となり、赤みを呈していることが判る。また、黄顔料を用いた場合には、反射色度は無彩色となるが、遮光性および現像後の密着性が低下していることが判る。カーボンブラックを添加した場合には、遮光性が高く反射色度は無彩色となるが、抵抗値が低く、更には、紫外領域での光透過率が低くなるため、感度が低く、現像後の密着性が不良であった。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の感光性黒色樹脂組成物は、液晶表示装置用カラーフィルター基板のブラックマトリックスに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)遮光材、(B)着色顔料、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)光重合開始剤、(E)反応性モノマーおよび(F)有機溶剤を含有する感光性黒色樹脂組成物であって、該(A)遮光材として少なくともチタン窒化物粒子を含有し、該(B)着色顔料として少なくともPR254、PR177、PR179から選ばれる少なくとも1種の赤顔料を含有することを特徴とする感光性黒色樹脂組成物。
【請求項2】
前記チタン窒化物粒子のCuKα線をX線源とした場合の(200)面に由来するピークの回折角2θが42.5°以上43.2°以下であることを特徴とする請求項1に記載の感光性黒色樹脂組成物。
【請求項3】
前記チタン酸窒化物の(200)面に由来するピークの半値幅より求めた結晶子サイズが10nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性黒色樹脂組成物。
【請求項4】
前記チタン窒化物粒子の酸素含有量が5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性黒色樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)遮光材と前記(B)着色顔料の総重量和にしめる前記赤顔料の重量比率が5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の感光性黒色樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の黒色樹脂組成物を透明基板上に塗布し、パターン形成して得られた樹脂ブラックマトリックスが形成されていることを特徴とする樹脂ブラックマトリックス基板。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂ブラックマトリクスが形成されていることを特徴とするカラーフィルター基板。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルター基板を具備することを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2011−227467(P2011−227467A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52563(P2011−52563)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】