説明

感光材料およびパターン形成方法

【課題】凹状パターンを効率よく形成できる感光材料を提供する。
【解決手段】感光材料を、フルオレン骨格を有するポリマーで構成する。このようなポリマーは、例えば、下記式(1)で表されるユニットを有するポリマーであってもよい。


(式中、環Zは芳香環を示し、Rはニトロ基又は炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、mは0〜3の整数を示す。)
このような感光材料は、光照射に伴って体積収縮するため、光照射するだけで、現像工程や焼成工程を行わなくても、凹状パターンを形成でき、パターン形成プロセスを大幅に簡略化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射によりパターンを形成(又は描画)可能な感光材料、この感光材料を用いたパターン形成方法およびこの方法により得られたパターンに関する。
【背景技術】
【0002】
光照射によって微細な(例えば、100μm以下の)凹凸形状を作製又は描画できる感光材料として、フォトレジストが広く知られている。このようなフォトレジストを用いた微細加工では、光照射部と光未照射部のフォトレジスト材料との溶解性の差を利用して、微細な凹凸形状を作製する。このようなフォトレジストを用いた微細加工は、通常、(1)フォトレジストの製膜、(2)露光前焼成、(3)マスク露光、(4)露光後焼成、(5)現像、(6)焼成の工程からなる。そして、このような微細加工の光源としては、通常、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどの紫外線を含む拡散光源が広く用いられている。しかし、このような微細加工プロセスは、多段階の工程からなり、簡略化させることが求められる。
【0003】
このような中、集光したレーザー光源を用いて、高価なフォトマスクを用いることなく直接描画する手法[直接描画法(LDI法 Laser Direct Imaging法)]も提案されている。例えば、特許第4065065号公報(特許文献1)には、(A)特定のカルボキシル基含有不飽和樹脂、(B)エポキシ基を有さないエチレン性不飽和化合物、(C)チタノセン化合物、(D)特定の増感色素、ならびに(E)含窒素化合物を含有するエッチングレジスト用感光性樹脂組成物が開示されている。この文献の樹脂組成物は、直接描画法に対応可能である。しかし、この文献の樹脂組成物は、レーザー照射後、通常のフォトレジスト同様に現像工程を施してはじめて凹状に形成される。したがって、凹凸形状(画像)形成工程を大幅に簡略化できるというレーザー直接描画法の利点が十分に発揮されているものではない。
【0004】
現像工程を経ることなく微細加工する手法も提案されている。例えば、特開2009−105136号公報(特許文献2)には、感光性樹脂組成物からなる所定の厚みの感光性樹脂組成物層を形成する工程と、前記感光性樹脂組成物層が光の照射された露光部と、光の照射されていない未露光部とを有するように、かつ前記露光部の厚みが前記未露光部の厚みよりも相対的に薄くなるように、前記感光性樹脂組成物層を部分的に露光する工程と、露光後、現像を行わずに、前記露光部及び前記未露光部の前記感光性樹脂組成物層を焼成する工程とを備えるパターン膜の製造方法が開示されている。この文献に記載の方法では、現像工程を施すことなく、光照射部と光未照射部との間にパターンを作製可能である。しかし、この文献の方法では、光照射後の焼成工程が必須であるため、前記と同様に、画像形成工程を簡略化する点で十分ではない。
【0005】
また、光成形の別の手法として光ナノインプリントと呼ばれる金型を用いた微細加工技術が知られている[例えば、砥粒加工学会誌、46巻、第6号、282−285頁、2002年(非特許文献1)]。光ナノインプリント技術は、低粘度の光硬化性樹脂を、石英などの光透過性のモールドで変形させた後、光照射して光硬化性樹脂を硬化させ、モールドを離すことによりパターンを得る技術である。しかし、このような光ナノインプリント技術では、モールドを樹脂に圧着して使用するので、パターンに対応するモールドが必要であるばかりか、圧着時の流動性や、光照射後における金型との間の離型性が重要な樹脂特性となり、材料設計上、制約が多くなるという課題がある。
【0006】
なお、レーザー光源を用いた樹脂の成形加工技術は広く知られており、例えば、レーザー加工学会誌、15巻、第3号、13頁、2008年(非特許文献2)には、COレーザー、エキシマレーザー、UV YAGレーザーなどの高出力のレーザーによる、プリント基板やポリイミド基板などの樹脂材料へのマイクロメートルスケールの微細な孔あけ加工事例が開示されている。しかし、このような従来公知のレーザーによる樹脂加工技術は、高価な大型のレーザー装置を用いて高出力のレーザーによって、樹脂を蒸発させて加工する技術であり、産業上の応用は限定的でかつ高コスト・高エネルギー消費プロセスである。そのため、より応用性が高く、安価かつ低エネルギー消費の加工技術が求められている。
【0007】
なお、特開2003−27761号公報(特許文献3)には、フルオレン類(例えば、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂、フルオレン系エポキシ樹脂など)で構成されており、かつレーザ光の照射により改質領域を生成可能な成形性組成物に、レーザ光を照射し、照射部位の光学的特性を選択的に変化させるパターン形成方法が開示されている。この文献の方法は、レーザー照射により、色彩、透明性、屈折率、反射率、誘電率といった光学的特性変化を生じさせる方法であり、樹脂の蒸発など、物理的変化を伴うパターン形成技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4065065号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2009−105136号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−27761号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】砥粒加工学会誌、46巻、第6号、282−285頁、2002年
【非特許文献2】レーザー加工学会誌、15巻、第3号、13頁、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、光照射(特に、レーザー光照射)により、効率よく凹状のパターンを直接的に形成できる感光材料、この感光材料を用いたパターン形成方法、およびこの方法で形成されるパターンを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、光照射部位の現像や焼成を要することなく凹状パターンを形成できる感光材料、この感光材料を用いたパターン形成方法、およびこの方法で形成されるパターンを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、低出力の光源(例えば、半導体レーザーなど)であっても、確実に凹状パターンを形成できる感光材料、この感光材料を用いたパターン形成方法、およびこの方法で形成されるパターンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のポリマーに光(特に、レーザー光)照射すると、ポリマー鎖の再配列(例えば、伸びていた鎖がらせん状に縮む再配列など)が生じるためか、体積収縮により光照射部位に直接的に凹部が形成され、溶解度差を利用した現像やエッチングを行うことなく、凹状パターン(凹凸状パターン)が形成されること、しかも、このような凹状パターンは、低出力の光源(例えば、半導体レーザーなどの30mW以下のレーザー)であっても確実に形成されることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の感光材料(光成形材料)は、光照射により凹状パターン(又は凹凸形状のパターン)を形成する(詳細には、光照射部位に凹部を形成することにより凹状パターンを形成する)ための感光材料(光成形材料)であって、フルオレン骨格を有するポリマーで構成された感光材料(光成形材料)である。
【0015】
前記フルオレン骨格を有するポリマーは、例えば、下記式(1)で表されるユニットを有するポリマーであってもよい
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、環Zは芳香環(又は芳香環骨格)を示し、Rはニトロ基又は炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、mは0〜3の整数を示す。)
上記式(1)において、Rは、例えば、アルキル基又はアリール基であってもよい。なお、アルキル基又はアリール基、さらには、Zは、置換基を有していてもよい。
【0018】
前記式(1)で表されるユニットは、代表的には、少なくとも下記式(1A)で表されるユニットを含んでいてもよい。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、Rはニトロ基又は炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、nは0〜3の整数を示す。R、Rおよびmは前記と同じ。)
上記式(1A)において、Rは、アルキル基又はアリール基であってもよい。なお、アルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。代表的には、RおよびRが長鎖アルキル基(例えば、C4−12アルキル基)であってもよい。
【0021】
本発明には、前記感光材料で形成された成形体(例えば、膜状成形体又は感光層)に光照射し、凹状のパターン(又は凹凸形状のパターン)を形成する方法も含まれる。この方法では、光照射するだけで凹状パターンを形成できるため、パターン形成プロセスを大幅に簡略化できる。すなわち、前記方法は、光照射部位を現像および焼成(さらにはエッチング)することなく凹状パターンを形成する方法であってもよい。光照射の光線(又は光源)は、代表的にはレーザー光であってもよく、特に、前記方法では、低出力(出力30mW以下)のレーザー光(例えば、半導体レーザーのレーザー光)を照射してもよい。
【0022】
前記方法では、マスクを介することなく、直接的に光照射してもよい。本発明では、光照射に伴う体積収縮を利用してパターンを形成するので、マスクを介しなくても(さらにはモールドを使用しなくても)、凹状パターンを形成できる。
【0023】
また、本発明には、前記方法により形成されたパターンも含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の感光材料は、光照射(特に、レーザー光照射)するだけで、効率よく凹状のパターンを直接的に形成できる。そのため、本発明の感光材料を使用すると、光照射部位の現像や焼成(さらにはエッチング)を要することなく凹状パターンを形成できる。特に、本発明では、レーザー光により、ナノメートルオーダー程度の微細な凹状パターンを形成できる。しかも、特定のポリマーを光照射により体積収縮させて凹部を形成するので、マスク(フォトマスク)を介することなく(さらには、光透過性のモールドを使用することなく)、直接的に光照射しても、凹状パターンを形成できる。また、本発明の感光材料は、低出力の光源(例えば、半導体レーザーなど)であっても、確実に(又は容易に)凹状パターンを形成できる。そのため、本発明の感光材料およびパターン形成方法では、容易かつ安価に、さらに低いエネルギー消費という経済的又は産業的に極めて有利な条件で凹状パターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例1で形成した膜上の凹凸形状を示す原子間力顕微鏡図(上面図)である。
【図2】図2は、実施例1で形成した膜上の凹凸形状を示す原子間力顕微鏡図(3次元投影図)である。
【図3】図3は、実施例1で形成した膜の光学顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、比較例1で形成した膜の光学顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[感光材料]
本発明の感光材料(光成形材料)は、フルオレン骨格を有するポリマーで構成されており、後述するように、光照射により凹状パターンを形成できる感光材料(光成形材料)である。
【0027】
このようなフルオレン骨格を有するポリマー(通常、熱可塑性ポリマー)は、フルオレン骨格を有していればよく、フルオレン骨格同士が直接結合で連結されたポリマーなどであってもよいが、通常、フルオレン骨格と連結基とが結合したユニットを有している場合が多い。
【0028】
連結基としては、例えば、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)、エステル基(−COO−)、アミド基(−NHCO−)、芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族炭化水素環;オキサジアゾール環などの芳香族複素環)、飽和炭化水素基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレンなどのアルキレン又はアルキリデン基)、不飽和炭化水素基[例えば、ビニレン基(−CH=CH−)、エチニレン基(−C≡C−)などの炭素−炭素不飽和基]、これらの基がさらに連結した基[例えば、オキシアルキレン基(例えば、オキシエチレン基などのオキシC2−4アルキレン基など);ビフェニル環などの芳香環が直接結合で連結した環集合炭化水素環など)など]などが挙げられる。フルオレン骨格を有するポリマーは、これらの連結基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0029】
これらの連結基のうち、芳香環、炭素−炭素不飽和基などの共役系を形成可能な連結基が好ましく、特に、フルオレン骨格を有するポリマーは、エチニレン基を連結基とするユニットを少なくとも有するポリマーであるのが好ましい。なお、エチニレン基を連結基とするポリマーは、後述するカップリング反応を利用することにより高分子量化したポリマーとして簡便に得ることができる。
【0030】
前記ユニットは、フルオレン骨格同士が連結基を介して連結したユニットであってもよく、フルオレン骨格とフルオレン骨格以外の骨格(例えば、フルオレン骨格以外の芳香環骨格)とが連結基を介して連結したユニットなどであってもよい。また、フルオレン骨格を有するポリマーは、同一のユニットのみで構成されていてもよく、異なるユニットで構成されていてもよい。
【0031】
フルオレン骨格を有するポリマーは、代表的には、下記式(1)で表されるユニット(骨格又はセグメント又は繰り返し単位)を有していてもよい。
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、環Zは芳香環を示し、Rはニトロ基又は炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、mは0〜3の整数を示す。)
上記式(1)において、芳香環Zとしては、単環式芳香環[例えば、ベンゼン環、窒素原子含有単環式芳香環(ピロールなど)、酸素含有単環式芳香環(フランなど)、硫黄原子含有芳香環(チオフェン環など)など]、縮合多環式芳香族炭化水素環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、フルオランテン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ペリレン環、ペンタセン環などの縮合2乃至6環式炭化水素環など)、縮合多環式芳香族複素環[例えば、窒素含有縮合多環式芳香族環(例えば、キノリン環、カルバゾール環、フェナトリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン環など)、酸素含有縮合多環式芳香族環(例えば、キサンテン環など)、硫黄含有縮合多環式芳香族環(例えば、チアントレン環など)、複数のヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族環(例えば、フェノチアジン環、フェノキサジン環など)など]、これらの芳香環が結合した環[例えば、3,6−ジフェニル−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン環などの単環式芳香環と縮合多環式芳香族複素環とが結合した環など]などが挙げられる。
【0034】
好ましい環Zには、フルオレン環、ピレン環などの縮合多環式芳香族炭化水素環が含まれる。特に、前記ポリマーは、環Zがフルオレン環である式(1)で表されるユニットを少なくとも有しているのが好ましい。なお、環Zは隣接するユニットとエチニレン基とを連結する二価基である。このような環Zは、通常、縮合環を構成する環のうち異なる環を介して連結している場合が多い。例えば、環Zがフルオレン環である場合にはフルオレン環の1〜4位のいずれかと5〜8位のいずれかを介して連結(例えば、フルオレン−2,7−ジイル基として連結)している場合が多く、環Zがピレン環である場合にはピレン環の1〜3位のいずれかと4〜10位のいずれか、又は4〜5位のいずれかと1〜3および6〜10位のいずれかを介して連結(例えば、ピレン−4,9−ジイル基として連結)している場合が多い。
【0035】
なお、芳香環Zには、置換基[ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、炭化水素基(例えば、アルキル基などの後述の炭化水素基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)、シアノ基、置換アミノ基(例えば、ジアルキルアミノ基など)、複素環基(例えば、カルバゾリル基などの窒素含有複素環基)など]を有する芳香環も含まれる。
【0036】
前記式(1)のRおよびRにおいて、炭化水素基としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基などのC1−20アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基)]、不飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルケニル基(例えば、アリル基などのC2−20アルケニル基)、シクロアルケニル基(例えば、シクロヘキセニル基などのC5−10シクロアルケニル基)など]、芳香族炭化水素基[例えば、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基)、ビフェニリル基など]、芳香脂肪族炭化水素基[例えば、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリールC1−4アルキル基)など]などが挙げられる。これらの炭化水素基(例えば、R)は、さらに置換基[ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)、シアノ基、置換アミノ基(例えば、ジアルキルアミノ基など)、複素環基(例えば、カルバゾリル基などの窒素含有複素環基)など]を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0037】
なお、前記式(1A)においてRは、代表的にはアルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基)などであってもよい。なお、Rの置換数mは、0〜1が好ましく、特に0であってもよい。また、式(1)で表されるユニットにおいて、2つのmは同一又は異なっていてもよい。
【0038】
また、代表的な炭化水素基Rには、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基[フェニル基、トリル基、ナフチル基、ヒドロキシフェニル基(4−ヒドロキシフェニル基など)、ヒドロキシトリル基(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル基など)、ヒドロキシキシリル基(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル基など)、ヒドロキシビフェニリル基(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル基など)、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基(例えば、6−ヒドロキシ−2−ナフチル基など)など]、アラルキル基など(好ましくはアルキル基、アリール基)が含まれる。特に、Rは、溶媒溶解性や製膜性などの観点から、長鎖アルキル基[例えば、炭素数4以上のアルキル基(例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのC4−16アルキル基、好ましくはC4−14アルキル基、さらに好ましくはC4−12アルキル基、特にC6−12アルキル基)など」などの炭素数が比較的大きな基(特に疎水性基)であってもよい。
【0039】
前記式(1)で表されるユニットは、代表的には、少なくとも下記式(1A)で表されるユニット(式(1)において環Zがフルオレン環であるユニット)を含んでいてもよい。
【0040】
【化4】

【0041】
(式中、Rはニトロ基又は炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、nは0〜3の整数を示す。R、Rおよびmは前記と同じ。)
上記式(1A)のRおよびRにおいて、炭化水素基としては、前記と同様の基が挙げられ、代表的なRには、前記代表的なRと同様の基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基など)が含まれる。特に、Rは、前記と同様に、長鎖アルキル基[例えば、炭素数4以上のアルキル基(例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのC4−16アルキル基、好ましくはC4−14アルキル基、さらに好ましくはC4−12アルキル基、特にC6−12アルキル基)など」などであるのが好ましい。なお、2つのRは同一又は異なる基であってもよい。
【0042】
また、前記式(1A)においてRの好ましい態様は、前記Rと同様であり、代表的にはアルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基)などであってもよい。なお、Rの置換数nもまた、0〜1が好ましく、特に0であってもよい。また、式(1A)で表されるユニットにおいて、2つのnは同一又は異なっていてもよい。
【0043】
本発明のポリマーは、通常、前記式(1)で表されるユニット(前記ユニット(1A)を含む、他に同じ)を複数有しているが、このような複数のユニットは、同一のユニットであってもよく、異なるユニット(例えば、Z、R、R、R、R、m、およびnの少なくとも1つが異なるユニットなど)の組み合わせであってもよい。
【0044】
前記式(1A)で表されるユニットを含む場合、前記式(1)で表されるユニット全体(又はポリマーを構成する下記式(a)で表されるユニット全体)に対する前記式(1A)で表されるユニット(又はポリマーを構成する下記式(a1)で表されるユニット)の割合は、例えば、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%(例えば、80〜100モル%)程度であってもよい。
【0045】
【化5】

【0046】
(式中、Z、R、R、およびnは前記と同じ。)
また、前記式(1)で表されるユニットは、電子求引性基(例えば、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基など)を有するユニットを含んでいてもよい。このようなユニットとしては、例えば、下記式(1B)で表されるユニットなどが含まれる。このような電子求引性基を有するユニットは、フルオレン骨格との間で何らかの相互作用が生じるためか、可視光域に新たな吸収帯を生じさせるなどの新たな機能をポリマーに発現できる。
【0047】
【化6】

【0048】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、Rは炭化水素基を示し、pは0以上の整数を示す。R、R、およびmは前記と同じ。)
上記式(1B)において、芳香族炭化水素環Zとしては、前記Zにおいて例示の芳香族炭化水素環(ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環など)などが挙げられる。好ましい環Zは、ベンゼン環であってもよい。式(1)のユニットにおいて、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンの3および6位に結合した2つの環Zは、同一又は異なる芳香族炭化水素環であってもよく、通常、同一であってもよい。なお、環Zは隣接するユニットとピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン骨格とを連結する二価基であり、このような連結基としての環Zの形態は、特に限定されず、環Zの種類に応じて適宜選択できる。例えば、環Zがベンゼン環である場合、二価基は、1,4−フェニレン基(骨格)などのフェニレン基であってもよい。
【0049】
また、前記式(1B)のRおよびRにおいて、炭化水素基としては、前記RおよびRにおいて例示の基が挙げられる。代表的なRは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。特に、Rは、長鎖アルキル基[例えば、炭素数4以上のアルキル基(例えば、ヘキシル基、オクチル基などのC4−16アルキル基、好ましくはC4−14アルキル基、さらに好ましくはC4−12アルキル基、特にC6−12アルキル基)など」などの炭素数が比較的大きな基(疎水性基)であってもよい。なお、式(1B)のユニットにおいて、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンの窒素原子に結合した2つの基Rは、同一又は異なる基であってもよく、通常、同一であってもよい。
【0050】
また、代表的な炭化水素基Rには、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基が含まれる。Rの置換数pは、環Zの種類によるが、例えば、0〜10、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜4(例えば、0〜2)であってもよい。特に、環Zがベンゼン環である場合、pは0〜3、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1であってもよい。なお、異なる環Zに置換するRは同一又は異なる基であってもよく、同一の環Zに置換するRもまたpの数が複数の場合、同一又は異なる基であってもよい。また、異なる環ZにおけるRの置換数pは同一又は異なる数であってもよい。
【0051】
なお、前記式(1B)で表されるユニットを含む場合、前記式(1)で表されるユニット全体(又はポリマーを構成する前記式(a)で表されるユニット全体)に対する前記式(1B)で表されるユニット(又はポリマーを構成する下記式(a2)で表されるユニット)の割合は、例えば、0.1〜50モル%、好ましくは0.3〜30モル%、さらに好ましくは0.5〜20モル%(例えば、1〜10モル%)程度であってもよい。
【0052】
【化7】

【0053】
(式中、Z、R、R、pは前記と同じ。)
また、前記式(1)で表されるユニットが、前記式(1A)で表されるユニットと前記式(1B)で表されるユニットとを含む場合、これらのユニットの割合(又は前記式(a1)で表されるユニットと前記式(a2)で表されるユニットとの割合)は、前者/後者(モル比)=99.9/0.1〜50/50、好ましくは99.5/0.5〜70/30、さらに好ましくは99/1〜80/20(例えば、98.5/1.5〜90/10)程度であってもよい。
【0054】
なお、前記式(1)で表されるユニットを有するポリマーは、前記式(1)で表されるユニットのみを有するポリマーであってもよく、他のユニット[例えば、前記式(1)においてエチニレン基が他の連結基(例えば、ビニレン基、芳香環など)に置換したユニット;前記式(1)において、環Zが芳香環でない二価の基(例えば、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基)に置換したユニット;前記式(1)においてエチニレン基が他の連結基に置換するとともに、環Z1が芳香環でない二価の基に置換したユニットなど]を有していてもよい。通常、このような他のユニットを有するポリマーにおいて、前記式(1)で表されるユニットの割合は、ポリマーを構成する全ユニットに対して、50〜99.9モル%、好ましくは70〜99.5モル%、さらに好ましくは90〜99モル%程度であってもよい。
【0055】
なお、前記式(1)で表されるユニットを有するポリマーは、ユニット(1)と隣接するユニット(ユニット(1)又は他のユニット)とが連結されて結合したポリマーである。例えば、(I)前記式(1A)で表されるユニットを有するポリマーは、下記式(i)で表されるユニット(連結ユニット)を有している場合が多く、(II)前記式(1A)で表されるユニットと前記式(1B)で表されるユニットとを有するポリマーは、(i)で表されるユニットに加えて、下記式(ii)〜(iii)で表されるユニット(連結ユニット)などを有している場合が多い。
【0056】
【化8】

【0057】
(式中、q、rおよびsは、それぞれ1以上の整数を示し、Z、R、R、R、R、R、R、m、n、pは前記と同じ。)
前記フルオレン骨格を有するポリマーは、フルオレン骨格のような剛直な骨格を有しているにもかかわらず、比較的高分子量である。このようなポリマーの重量平均分子量は、例えば、8000以上(例えば、10000〜100000程度)、好ましくは12000以上(例えば、14000〜80000程度)、さらに好ましくは15000以上(例えば、17000〜60000程度)であってもよく、通常18000〜50000(例えば、20000〜40000)程度であってもよい。
【0058】
なお、前記フルオレン骨格を有するポリマーの多分散度(分子量分布Mw/Mn)は、例えば、1.2〜10、好ましくは1.5〜7、さらに好ましくは1.8〜6(例えば、2〜5)程度であってもよい。
【0059】
(製造方法)
フルオレン骨格を有するポリマーの製造方法は、特に限定されないが、通常、フルオレン骨格を有する化合物(二官能性化合物など)を少なくとも含む重合成分を重合させることにより製造できる。例えば、フルオレン骨格を有するポリマー(前記式(1)で表されるユニットを有するポリマーなど)は、フルオレン骨格を有する二官能性化合物(例えば、ジカルボン酸など)と、この化合物の官能基と反応して結合を形成可能な官能基(反応性基)および芳香環骨格を有する二官能性化合物(例えば、ジオール、ジアミンなど)とを反応させて製造してもよく、フルオレン骨格を有する二官能性化合物と、芳香環骨格を有する二官能性化合物と、これらの化合物と相互に反応して結合可能な化合物(ジオール、ジアミンなど)とを反応させて製造してもよい。
【0060】
特に、フルオレン骨格を有する化合物と、芳香環骨格を有する化合物とをカップリング反応により重合させてもよい。カップリング反応としては、有機合成において種々の反応[例えば、ホウ素化合物とハロゲン化物とのカップリング反応(いわゆる鈴木カップリング反応)など]が知られているが、このようなカップリング反応の中でも、特に、2つのハロゲン原子が置換した化合物と、エチニル基が2つ置換した化合物とを組み合わせてカップリング反応(いわゆる薗頭カップリング反応)により重合させると、フルオレン骨格を有する化合物であるにもかかわらず、比較的高分子量のポリマーを効率よく得ることができる。
【0061】
例えば、前記式(1)で表されるユニットを有するポリマーは、下記式(2)で表される化合物と下記式(3)で表される化合物とを少なくともカップリング反応により重合させることにより製造できる。
【0062】
【化9】

【0063】
(式中、XおよびYのうち、一方はハロゲン原子、他方はエチニル基(CH≡C−)であり、Z、R、Rおよびmは前記と同じ。)
上記式(2)および(3)において、X又はYで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。なお、脱離するハロゲン元素の周期が小さいほど、反応性が低くなる場合が多い。式(2)および(3)において、特に、Xがハロゲン原子であり、Yがエチニル基であってもよい。
【0064】
なお、前記式(2)および(3)において、Rなどは前記と同じである。代表的な前記式(2)で表される化合物には、ジハロ−9,9−ジアルキルフルオレン(例えば、2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンなどのジハロ−9,9−ジC4−20アルキルフルオレン、好ましくは2,7−ジハロ−9,9−ジC6−12アルキルフルオレン)、ジハロジアルキルピレン(例えば、4,9−ジブロモ−2,7−ジブチルピレンなどのジハロジC4−20アルキルピレン)、ジハロ−9,9−ジアリールフルオレン[例えば、2,7−ジブロモ−9,9−ジフェニルフルオレンなどのジハロ−9,9−ジC6−10アリールフルオレン;2,7−ジハロ−9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジハロ−9,9−ジ(ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;2,7−ジハロ−9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、2,7−ジハロ−9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどのジハロ−9,9−ジ(ヒドロキシ−モノ又はジC1−4アルキルC6−10アリール)フルオレン;2,7−ジハロ−9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどのジハロ−9,9−ジ(ヒドロキシC2−4アルコキシ−C6−10アリール)フルオレン;2,7−ジハロ−9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)]フルオレンなどのジハロ−9,9−ジ(ヒドロキシC2−4アルコキシ−モノ又はジC1−4アルキルC6−10アリール)フルオレンなど](Xがハロゲン原子である場合)、これらの化合物のハロゲン原子がエチニル基に置換した化合物(Xがエチニル基である場合、後述の化合物など)が含まれる。
【0065】
また、代表的な前記式(3)で表される化合物には、例えば、下記式(3A)で表される化合物(例えば、ジエチニル−9,9−ジアルキルフルオレン(例えば、2,7−ジエチニル−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンなどのジエチニル−9,9−ジC4−20アルキルフルオレン、好ましくは2,7−ジエチニル−9,9−ジC6−12アルキルフルオレン)などの前記代表的な前記式(2)で表される化合物においてハロゲン原子がエチニレン基に置換した化合物)など(Yがエチニル基である場合)の他、ジハロアレーン{例えば、ジハロ単環式アレーン(例えば、ジブロモベンゼンなど)、ジハロ縮合多環式アレーン[例えば、ジハロナフタレン(2,7−ジブロモナフタレンなど)、ジハロジアルキルピレン(例えば、4,9−ジブロモ−2,7−ジブチルピレンなどのジハロジC4−20アルキルピレン)など}、下記式(3B)で表される化合物{例えば、2,5−ジヒドロ−2,5−ジアルキル−3,6−ビス(ハロアリール)−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン{例えば、2,5−ジヒドロ−2,5−ジ−n−ヘキシル−3,6−ビス(4−ブロモフェニル)−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンなどの2,5−ジヒドロ−2,5−ジC4−20アルキル−3,6−ビス(ハロC6−10アリール)−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンなど}など(Yがハロゲン原子である場合)が挙げられる。
【0066】
【化10】

【0067】
(式中、Y、Z、R、R、R、R、n、pは前記と同じ。)
なお、2つのハロゲン原子が置換した化合物が、電子求引基を有していると反応性が大幅に上がる場合があり、一方、エチニル基が2つ置換した化合物に電子求引性基を有していると、反応性が低下する場合がある。
【0068】
なお、前記式(1A)で表されるユニットを有するポリマーを得る場合には、前記式(3)で表される化合物として前記式(3A)で表される化合物を使用すればよく、前記式(1A)で表されるユニットおよび前記式(1B)で表されるユニットを有するポリマーを得る場合には、前記式(3)で表される化合物として前記式(3A)で表される化合物および前記式(3B)で表される化合物を使用すればよい。
【0069】
なお、前記式(3A)で表される化合物を使用する場合、前記式(3)で表される化合物全体に対する前記式(3A)で表される化合物の割合は、例えば、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%(例えば、80〜100モル%)程度であってもよい。
【0070】
また、前記式(3A)で表される化合物と前記式(3B)で表される化合物とを組み合わせて使用する場合、これらの割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99.9/0.1〜50/50、好ましくは99.5/0.5〜70/30、さらに好ましくは99/1〜80/20(例えば、98.5/1.5〜90/10)程度であってもよい。
【0071】
なお、前記式(2)および(3)で表される化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の方法で合成したものを使用してもよい。
【0072】
反応において、前記式(2)で表される化合物の使用割合は、前記式(3)で表される化合物(前記式(3A)で表される化合物および前記式(3B)で表される化合物を含む)の総量1モルに対して、例えば、0.7〜1.3モル、好ましくは0.8〜1.2モル、さらに好ましくは0.9〜1.1モル程度であってもよい。本発明の方法では、比較的定量的に重合反応が進行するため、上記のような使用割合であっても、効率よく前記ポリマーを製造できる。
【0073】
なお、前記他のユニットを導入する場合には、他のユニットに対応する化合物(ジハロゲン化物、ジアセチレン化物など)を、前記式(2)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物に併用すればよい。
【0074】
反応は、通常、触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、カップリング反応(薗頭カップリング反応など)において汎用されている触媒を好適に使用できる。代表的には、パラジウム化合物[例えば、パラジウム(II)錯体(例えば、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムなどのホスフィンパラジウム錯体)、パラジウム(0)錯体(例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィンパラジウムなど)などのパラジウム錯体]と、銅化合物[例えば、銅ハロゲン化物(例えば、ヨウ化銅(I)などのハロゲン化銅(I))など]とを組み合わせて使用する場合が多い。
【0075】
また、反応は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、アミン[例えば、ジ又はトリアルキルアミン(例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミンなど)などの脂肪族アミン]などの有機塩基を好適に利用できる。塩基の中でも、アミンは溶媒としても有用であり、好適に使用できる。塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0076】
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、前記アミンの他、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)などの反応において不活性な溶媒を使用できる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0077】
反応温度は、例えば、0〜200℃(例えば、20〜180℃)、好ましくは30〜150℃(例えば、40〜120℃)、さらに好ましくは50〜100℃程度であってもよい。また、反応は、還流させながら行ってもよい。
【0078】
反応時間は、特に限定されず、反応温度などに応じて適宜選択できるが、通常、1〜72時間、好ましくは2〜48時間、さらに好ましくは5〜36時間程度であってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、減圧下、常圧下又は加圧下で行ってもよい。
【0079】
なお、生成したポリマーは、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
【0080】
なお、本発明の感光材料は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、フルオレン骨格を有するポリマーに加えて、さらに、各種添加剤、例えば、光増感剤、可塑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、補強剤、充填剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、塗布性改良剤、滑剤、バインダー成分(例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂など)などを含んでいてもよい。特に、前記ポリマーは、バインダー成分を用いなくても、適当な形状に成形可能である。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0081】
なお、前記添加剤などを含む場合、前記フルオレン骨格を有するポリマーの割合は、感光材料全体の70〜99.9質量%、好ましくは90〜99.8質量%、さらに好ましくは95〜99.5質量%程度であってもよい。
【0082】
本発明の感光材料は、前記のように、光照射により凹状パターンを形成できるという特徴を有している。すなわち、公知の感光材料は、光照射後、現像工程や焼成工程を経て凹状パターンが形成されるが、本発明の感光材料は、理由は定かではないが、光照射された部位に体積収縮が生じて凹部が形成されるため、光照射するだけで、全体として光照射部位を凹部とする凹状パターン(凹凸状パターン)を形成できる。以下に、このようなパターン形成方法について詳述する。
【0083】
[パターン形成方法およびパターン]
本発明のパターン形成方法では、前記感光材料(又は感光材料で形成された成形体)に光照射し、凹凸形状のパターンを形成する。
【0084】
光照射に供する成形体の形状は、特に限定されず、二次元的形状(例えば、膜状又はフィルム状、板状など)、三次元的形状(例えば、ケーシング、ハウジングなどの形状)などであってもよい。なお、光照射に供する感光材料の成形には、形状に応じて、公知の方法(押出成形法、射出成形法、コーティング法など)を利用できる。
【0085】
前記パターン形成方法では、特に、前記感光材料で形成された膜(又は膜状成形体)に光照射する場合が多い。このような膜状成形体(又は感光層)は、例えば、感光材料を、慣用の方法(例えば、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、バーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法などのコーティング法など)により、基板に塗布することにより形成できる。
【0086】
なお、このような膜を形成する場合、前記感光材料を適当な溶媒に溶解又は分散させた溶液又は分散液の形態で膜形成してもよい。溶媒としては、前記ポリマーの種類に応じて選択でき、例えば、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など)、ケトン類(例えば、アセトンなどのアルカノン類、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノン類)、ハロゲン系溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、スルホン系溶媒(スルホラン、ジメチルスルホンなどの脂肪族スルホン、ジフェニルスルホンなどの芳香族スルホンなど)、エステル類(酢酸エチルなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0087】
基板に塗布する場合、基板としては、用途に応じて、石英、ガラス、金属(アルミニウムなど)、セラミックス、半導体基板(シリコンウェハーなど)、プラスチックなどから適当に選択できる。基板は、必要に応じて、感光層との密着性と高めるため、表面処理してもよい。
【0088】
なお、感光材料を基板に塗布した後、乾燥により溶媒を蒸発させてもよい。溶媒の除去は、例えば、ホットプレートなどの加熱手段を利用して、ソフトベーク(プリベーク)などにより行ってもよい。
【0089】
膜(感光層)は、レジスト層の少なくとも表面に形成してもよい。感光層の構造は、単層構造や多層構造(又は積層、複合構造)であってもよい。
【0090】
膜(感光層)の厚みは、用途に応じて適宜選択でき、例えば、例えば、10nm〜200μm、好ましくは30nm〜150μm、さらに好ましくは50nm〜100μm程度であってもよく、通常50nm〜20μm(例えば、100nm〜10μm、好ましくは500nm〜5μm程度)であってもよい。
【0091】
感光材料(感光層)に対する光照射(露光)の光線(又は光源)としては、パターンの微細度などに応じて種々の光線(活性光線)、例えば、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、UVランプ、g線、i線、電子線、X線などであってもよいが、レーザーを好適に使用できる。
【0092】
レーザーとしては、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザー、半導体レーザーなどが挙げられる。また、レーザーは、X線レーザー、紫外線レーザー、可視光レーザー、赤外線レーザー、遠赤外線レーザーのいずれであってもよい。
【0093】
光線(レーザー光)の波長としては、光源の種類に応じて選択でき、例えば、1nm〜800μm(例えば、5nm〜500μm)、好ましくは10〜5000nm、好ましくは50〜3000nm、さらに好ましくは100〜1000nm程度であってもよい。特に、比較的短波長[例えば、600nm以下(例えば、10〜550nm)、好ましくは500nm以下(例えば、50〜480nm)、さらに好ましくは450nm以下(例えば、100〜410nm)]の光線を好適に使用できる。
【0094】
光線(例えば、レーザー光)の出力は、例えば、0.1mW〜30W、好ましくは0.3mW〜20W、好ましくは0.5mW〜10W程度であってもよい。特に、本発明では、出力が、100mW以下(例えば、0.1〜80mW)、好ましくは50mW以下(例えば、0.2〜40mW)、さらに好ましくは30mW以下(例えば、0.3〜20mW)、通常10mW以下(例えば、0.3〜5mW)程度の低出力の光線(光源)であっても、凹状パターンを形成できる。なお、このような低出力の光線としては、例えば、半導体レーザー(バイオレットレーザー、ブルーレーザー)などが挙げられる。半導体レーザーは、低出力であるとともに、安価でかつ長寿命である場合が多く、パターン製造コストを効率よく削減できる。
【0095】
なお、露光エネルギーは、凹状パターンの深さなどに応じて選択できる。
【0096】
光照射は、用途などに応じて、マスク(フォトマスク)を介して行ってもよい。例えば、マスクを介して、比較的大きな径の光線を照射することにより、比較的大きな凹状パターンを形成してもよい。本発明では、前記のように光照射に伴う体積収縮を利用するので、マスクを介することなく直接的に光照射しても、凹状パターンを形成できる。
【0097】
なお、光照射時の雰囲気は特に限定されるものではなく、大気中であっても窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であってもよい。
【0098】
上記のようにして、凹状パターンが形成される。このような本発明のパターン形成方法では、通常の方法において必要な露光後の現像(工程)や焼成(工程)(さらには、エッチング(切削)処理や加熱処理など)を要することなく、凹状パターンが直接的に形成される。
【0099】
凹状パターンの厚み(又は深さ、凹部の深さ)は、光線の出力、露光エネルギーなどにより用途に応じて調整でき、例えば、1〜1000nm、好ましくは2〜500nm、さらに好ましくは3〜100nm程度であってもよく、通常3〜50nm(例えば、5〜30nm)程度であってもよい。
【0100】
なお、凹状パターンの幅は、光源の径や光源を照射する部位に応じて適宜調整でき、マイクロメートルスケールからナノメートルスケールにいたる幅広いスケールのパターンを形成きる。例えば、光線(レーザー光など)の径程度の幅とすることもできるし、光線(レーザー光など)を走査(所望のパターンの幅方向および長手方向に走査)して照射することにより光線の径よりも大きな幅のパターンとすることもできる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0102】
(合成例1)
2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、下記式(a)で表される化合物)0.33g(0.602mmol)、2,5−ジヒドロ−2,5−ジ−n−ヘキシル−3,6−ビス(4−ブロモフェニル)−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン(下記式(b)で表される化合物)7.9mg(0.013mmol)、ヨウ化銅4.1mg(0.022mmol)、2塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)13mg(0.019mmol)をフラスコに入れて窒素置換した。ここに、25分間窒素ガスを吹き込んだ2,7−ジエチニル−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン(下記式(c)で表される化合物)0.27g(0.615mmol)を含むテトラヒドロフラン(THF)/ジイソプロピルアミン(前者/後者=4/1(体積比))混合溶液を添加し、60℃で18時間攪拌した。冷却後、不溶物を濾別し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をTHF6mLに溶解した後、400mLのメタノールに滴下して沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥して0.40gの褐色固体を得た。
【0103】
得られた褐色固体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Shodex KF−804L)により分析したところ、重量平均分子量が23100、数平均分子量が5300、多分散度が4.36のポリマーあった。なお、NMR測定により、上記の材料が仕込み比を反映して重合したポリマーであることがわかった。
【0104】
【化11】

【0105】
(実施例1)
合成例1で作製したポリマーを1重量%の濃度で含むテトラヒドロフラン溶液を調製した。調製したポリマー溶液を25mm角の石英基板に2000回転/20秒で回転塗布した。塗布後、70℃で5分間、乾燥させて淡黄色のポリマー薄膜(厚み1.0μm)を得た。
【0106】
得られたポリマー薄膜の約35μm×50μmの範囲に、最大出力0.9mW、波長408nmのバイオレットレーザーを5分間走査しながら照射した。バイオレットレーザー照射後のポリマー薄膜の形状を原子間力顕微鏡により評価したところ、バイオレットレーザー照射部は深さ約10〜14nmの矩形の凹形状となっており、目的とする凹凸形状となっていることを確認した。図1に、形成したレーザー照射後の膜上の凹凸形状を示す原子間力顕微鏡図(上面図)を、図2に、形成したレーザー照射後の膜上の凹凸形状を示す原子間力顕微鏡図(3次元投影図)を、図3に、形成したレーザー照射後の膜の光学顕微鏡写真を示す。
【0107】
(比較例1)
合成例1で作成したポリマーに代えて、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂(大阪ガスケミカル(株)製、「OKP4」)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマー薄膜を作成するとともに、レーザー照射した。バイオレットレーザー照射後のポリマー薄膜の形状を原子間力顕微鏡により評価したところ、バイオレットレーザー照射部は凹凸形状を形成していなかった。図4に、形成したレーザー照射後の膜の光学顕微鏡写真を示す。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の感光材料は、例えば、回路形成材料(半導体製造用レジスト、プリント配線板など)、画像形成材料(印刷版材,レリーフ像など)などに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射により凹状パターンを形成するための感光材料であって、フルオレン骨格を有するポリマーで構成された感光材料。
【請求項2】
フルオレン骨格を有するポリマーが、下記式(1)で表されるユニットを有する請求項1記載の感光材料。
【化1】

(式中、環Zは芳香環を示し、Rはニトロ基又は炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、mは0〜3の整数を示す。)
【請求項3】
が、アルキル基又はアリール基である請求項2記載の感光材料。
【請求項4】
式(1)で表されるユニットが、少なくとも下記式(1A)で表されるユニットを含む請求項2又は3に記載の感光材料。
【化2】

(式中、Rはニトロ基又は炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、nは0〜3の整数を示す。R、Rおよびmは前記と同じ。)
【請求項5】
が、アルキル基又はアリール基である請求項4記載の感光材料。
【請求項6】
およびRがC4−12アルキル基である請求項4又は5記載の感光材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の感光材料で形成された成形体に光照射し、凹状のパターンを形成する方法。
【請求項8】
光照射部位を現像および焼成することなく凹状パターンを形成する請求項7記載のパターン形成方法。
【請求項9】
出力30mW以下のレーザー光を照射する請求項7又は8記載のパターン形成方法。
【請求項10】
マスクを介することなく、直接的に光照射する請求項7〜9のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項11】
請求項7〜10記載の方法により形成されたパターン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−52132(P2011−52132A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202873(P2009−202873)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】