説明

感圧カテーテル用のアクチュエータベース較正システム

【課題】較正機器を提供する。
【解決手段】較正機器が、医療用プローブの遠位端部を保持するように結合された固定具を含む。遠位端部に対する遠位先端部の変形を生じさせるために、プローブの遠位端部に押し当てられ、遠位端部に対して個々の大きさ及び角度を有する複数の力ベクトルを遠位先端部に印加するように、アクチュエータが構成される。アクチュエータによって印加された力ベクトルの大きさを測定するように、検知装置が構成される。力ベクトルに応答する遠位先端部の変形を示す第1の測定値をプローブから受信し、力ベクトルの大きさを示す第2の測定値を検知装置から受信し、角度と第1及び第2の測定値とに基づいて、力ベクトルを第1の測定値の関数として算定するための較正係数を算出するように、較正プロセッサが構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね侵入プローブに関し、具体的には侵入プローブ内の較正用圧力センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲にわたる医療手技において、センサー、チューブ、カテーテル、分配装置及び移植片などの物体を体内に配置することが必要となる。そのような物体を追跡するために、位置検知システムが開発されてきた。磁気的な位置検知は、当該技術分野で知られる方法の1つである。磁気的な位置検知においては、磁場発生器が通常、患者に対して外側の既知の位置に配置される。プローブの遠位端部内にある磁場センサーが、これらの磁場に応答して電気信号を発生し、それらの電気信号が、プローブの遠位端部の位置座標を測定するために処理される。これらの方法及びシステムが、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、PCT国際公開第WO1996/005768 A1号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号及び同第2004/0068178 A1号に記載されており、これらの開示内容はすべて、参照によって本願に組み込まれる。
【0003】
プローブを体内に配置するとき、プローブの遠位先端部を体組織に直接接触させることが望ましい場合がある。この接触は、例えば、遠位先端部と体組織との接触圧力を測定することによって確認され得る。参照によって開示内容が本願に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0100332号、同第2009/0093806号及び同第2009/0138007号には、カテーテルに埋め込まれた力覚センサーを使用して体腔におけるカテーテルの遠位先端部と組織との接触圧力を検知する方法が記載されている。カテーテルの遠位先端部は、バネなどの弾性部材によってカテーテル挿入チューブの遠位端部に結合され、その弾性部材は、心内膜組織に押し当てられるときに遠位先端部に及ぼされる力に応答して変形する。カテーテル内の磁気位置センサーが、挿入チューブの遠位端部に対する遠位先端部の偏向(位置及び向き)を検知する。挿入チューブに対する遠位先端部の移動は、弾性部材の変形を示すものであり、したがって圧力を指示するものとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある実施形態は、固定具と、アクチュエータと、検知装置と、較正プロセッサとを含む較正機器を提供する。固定具は、医療用プローブの遠位端部を保持するように結合される。アクチュエータは、遠位端部に対する遠位先端部の変形を生じさせるために、プローブの遠位端部に押し当てられ、プローブの遠位端部に対して個々の大きさ及び角度を有する複数の力ベクトルを遠位先端部に印加するように構成される。検知装置は、アクチュエータによって印加された力ベクトルの大きさを測定するように構成される。較正プロセッサは、力ベクトルに応答する遠位先端部の変形を示す第1の測定値をプローブから受信し、力ベクトルの大きさを示す第2の測定値を検知装置から受信し、角度と第1及び第2の測定値とに基づいて、力ベクトルを第1の測定値の関数として算定するための較正係数を算出するように構成される。
【0005】
いくつかの実施形態において、この機器はある平坦表面を含み、その平坦表面は、アクチュエータに結合され、プローブの遠位先端部に押し当てられように構成される。開示する実施形態において、プローブの遠位端部は、磁場を発生させる磁場発生器を含み、遠位先端部は、磁場を検知し、検知したその磁場に応答して第1の測定値を生じる磁場センサーを含む。別の実施形態において、この機器は複数の磁場発生器を含み、それらの磁場発生器は、プローブに対して外側にあり、個々の磁場を発生させるように動作可能であり、プローブの遠位端部及び遠位先端部はそれぞれ、第1の測定値を生じさせるためにそれらの磁場を検知する第1及び第2の磁場センサーを含む。
【0006】
更に別の実施形態において、この機器はある治具を含み、その治具は、アクチュエータを保持し、個々の大きさ及び角度で力ベクトルを印加するように較正プロセッサによって制御される。更なる別の実施形態において、その固定具は、プローブの長手軸線に対してプローブを回転させるように構成され、較正プロセッサは、回転されたプローブから受信した第1の測定値を処理することによって、遠位先端部の変形における軸非対称性を検出するように構成される。ある実施形態において、較正プロセッサは、プローブに結合されたメモリー内に較正係数を記憶するように構成される。そのメモリーは、電気的消去可能PROM(E2PROM)を含んでもよい。
【0007】
また、本発明のある実施形態によれば、較正する方法が提供され、その方法は、遠位先端部を有する医療用プローブの遠位端部を固定具内に保持することと、プローブの遠位端部に対して個々の大きさ及び角度を有する複数の力ベクトルを遠位先端部に印加し、遠位端部に対する遠位先端部の変形を生じさせるように、遠位先端部にアクチュエータを押し付けることと、力ベクトルに応答する遠位先端部の変形を示す第1の測定値をプローブから受信することと、アクチュエータに結合された検知装置から、力ベクトルの大きさを示す第2の測定値を受信することと、角度と第1及び第2の測定値とに基づいて、力ベクトルを第1の測定値の関数として算定するための較正係数を算出することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
この開示内容は本願において、添付の図面を参照して単に一例として記載するものである。
【図1】本発明の実施形態による感圧カテーテル用の較正システムの概略絵画図。
【図2】本発明の実施形態による感圧カテーテルを較正する方法を概略的に示す流れ図。
【図3】本発明の別の実施形態による感圧カテーテル用の較正システムの概略絵画図。
【図4】本発明の実施形態による、心内膜組織と接触する感圧カテーテルの遠位先端部を示す概略拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
侵襲プローブには、プローブと体内組織との接触圧力を測定するための圧力センサーを備えるものもある。例えば、心臓カテーテルの遠位先端部は、遠位先端部によって心内膜組織に及ぼされる圧力に応答して変形する圧力センサーを備えてもよい。カテーテル内の位置センサーが遠位先端部の偏向を測定し、それによって接触圧力を指示する。しかしながら、多くの実際的な事例において、実際の接触圧力と位置センサーの読みとの関係は、カテーテルごとに異なるものである。
【0010】
正確な圧力測定を確実にするために、本発明の実施形態は、圧力センサーを備えたプローブ(例えば、カテーテル)を較正するための方法及びシステムを提供する。いくつかの実施形態において、ある較正機器が、カテーテルを装着するための固定具と、カテーテルの遠位先端部に押し当てるための平坦表面を有するアクチュエータと、アクチュエータによって遠位先端部に及ぼされた力を測定するための、アクチュエータに結合された圧力計とを備える。アクチュエータは、様々な角度でカテーテル先端部に接触するように自動的に位置決め及び方向付けされることができ、したがって、(カテーテルと体組織との正面接触と斜め接触の双方をモデル化するために)遠位先端部に対して、長手方向と斜め方向の双方に機械的な力を印加することができる。いくつかの実施形態において、カテーテルは、カテーテルの圧力応答における軸非対称性を検出するために、固定具内で回転されてもよい。
【0011】
較正器具は、望ましい範囲の力を様々な角度からカテーテルの遠位先端部に印加するように、較正手順の一部として構成されてもよい。アクチュエータが既知の力を遠位先端部に印加すると、較正器具は、較正パラメータを決定するために、カテーテル内の位置センサーからの信号を記録する。
【0012】
アクチュエータが、個々の角度及び大きさを有する複数の力ベクトルをカテーテルに印加すると、遠位先端部はこれらの力ベクトルに応答して変形し、カテーテル内の圧力センサーは、遠位先端部の変形(すなわち偏向)の測定値を生じる。較正プロセッサが、カテーテルから変形測定値を、そしてアクチュエータの圧力計から圧力測定値を受け取る。変形測定値及び既知の力ベクトルに基づいて、較正プロセッサは、力ベクトルを先端部の変形量の関数として算定するための較正係数を算出する。このようにして、感圧カテーテルは、組織接触状態の予想範囲全体にわたって較正され得る。加えて、較正プロセッサは、較正手順の間に、カテーテルが異なることによる圧力応答の変動を検出し補正することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、アクチュエータは較正プロセッサによって制御される。所与のカテーテルを較正するために、較正プロセッサは、所望の1組の力ベクトル(すなわち複数の角度における様々な力)をカテーテル先端部に印加するようにアクチュエータに指示してもよい。それに加えて又はそれに代わって、操作者が、変形を生じさせるようにカテーテル先端部に対してアクチュエータを手動で位置決めしてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、較正係数は、カテーテルに結合された不揮発性メモリーに、較正行列として記憶される。カテーテルが医療システムにおいて後に使用されるとき、カテーテルの遠位先端部から体組織に及ぼされる実際の圧力は、行列に記憶された較正係数を使用して、偏向の測定値から高精度で導出されることができる。
【0015】
図1は、本発明の実施形態による感圧カテーテル用の較正システム20の図である。システム20は、較正ユニット24に接続された較正機器22を備えている。以下に示す実施形態において、システム20は、心臓における又は他の体器官における治療上の及び/又は診断上の目的で、プローブを、この例においてはカテーテル26を較正するために使用される。
【0016】
カテーテル26は遠位端部28を備えており、遠位端部28は、継ぎ手32を介して遠位端部に接続された遠位先端部30を有している。十分な圧力を遠位先端部30に印加すると(あるいは逆に言えば、遠位先端部が十分な圧力を体組織などの表面に対して印加する場合)、カテーテル26は継ぎ手32にて屈曲し、それにより遠位先端部30が遠位端部28に対して偏向される。
【0017】
カテーテルの遠位端部28と遠位先端部30は共に、可撓性の絶縁材料34で被覆されている。継ぎ手32の領域も同様に、可撓性の絶縁材料で被覆されており、その絶縁材料は材料34と同じものであってもよく、また、妨害されることなく継ぎ手の屈曲及び収縮が可能となるように特別に適合されたものであってもよい(この材料は、カテーテルの内部構造を露出させるために、図1においては切り取られている)。遠位先端部30は通常、遠位端部28と比較して、相対的に硬質である。
【0018】
遠位先端部30は、弾性部材36によって遠位端部28に接続されている。図1において、弾性部材はコイルバネの形態をなしているが、それに代わって他のタイプの弾性構成要素が、この目的で使用されてもよい。弾性部材36は、遠位先端部に及ぼされた力に応答する先端部30と遠位端部28との相対運動を、限られた範囲で可能にする。
【0019】
遠位先端部30は、磁気位置センサー38を収容している。センサー38は、1つ以上の小形コイルを備えていてもよく、通常、種々の軸線に沿って方向付けられた複数のコイルを備えている。遠位端部28は、弾性部材36付近に小形の内部磁場発生器40を備えている。通常、磁場発生器40はコイルを備えており、そのコイルは、較正ユニット24からカテーテルを通じて送られた電流によって駆動される。
【0020】
別法として、位置センサー38は、別のタイプの磁気センサー、つまり位置変換器として働く電極か、又はインピーダンスベース又は超音波位置センサーなどの他のタイプの位置変換器を備えていてもよい。図1は単一の位置センサーを有するプローブを示しているが、以下で説明する本発明の付加的な実施形態は、複数の位置センサーを有するプローブを利用することができる。
【0021】
磁場発生器40によって生成された磁場により、センサー38内のコイルは、磁場発生器の駆動周波数にて電気信号を発生することになる。これらの信号の振幅は、遠位端部28に対する遠位先端部30の位置及び方向に応じて変動する。較正ユニット24内の較正プロセッサ42は、遠位端部28に対する遠位先端部30の軸方向変位量及び角度偏向の大きさを求めるために、これらの信号を処理する。(コイルによって発生される磁場は軸対称となるため、偏向の大きさのみが、磁場発生器40内の単一のコイルを使用して検出されることができ、偏向の方向は検出されることができない。所望により、磁場発生器40は2つ以上のコイルを備えてもよく、その場合、偏向の方向が同様に求められ得る)。変位と偏向の大きさは、遠位端部28に対する遠位先端部30の運動の全体的な大きさを与えるように、ベクトル加法で結合されてもよい。
【0022】
遠位端部28に対する遠位先端部30の相対運動により、弾性部材36の変形の尺度が得られる。このようにして、磁場発生器40がセンサー38と組み合わせられて感圧システムとして働く。変位と偏向を組み合わせて検知することにより、この感圧システムは、圧力が遠位先端部30に正面から及ぼされるかある角度をなして及ぼされるかにかかわらず、圧力を正確に読み取る。この種のプローブ及び位置センサーの更なる詳細が、前述の米国特許出願公開第2007/0100332号、同第2009/0093806号、及び同第2009/0138007号に記載されている。
【0023】
いくつかの実施形態において、カテーテル26はまた、較正の間に算出された較正係数を記憶する、電気的消去可能PROM(EPROM)などの不揮発性メモリー44を備える。上で議論したように、カテーテルが医療システムにおいて後に使用されるとき、カテーテルの遠位先端部から体組織に及ぼされる実際の圧力は、メモリー44に記憶された較正係数を使用して偏向の測定値から高精度で導出されることができる。
【0024】
較正機器22は、カテーテル26の遠位端部を保持するように構成された固定具46と、平坦表面50を有するアクチュエータ48と、アクチュエータに結合された、圧力計などの検知装置52とを備えている。上で議論したように、カテーテル26は、カテーテルの圧力応答における軸非対称性を検出するために、固定具46内で回転されてもよい。いくつかの実施形態において、較正ユニット24が、固定具46内でのカテーテル26の回転を制御してもよい。別法として、操作者(図示せず)が、固定具内のカテーテルを手動で回転させてもよい。
【0025】
アクチュエータ48の所与の位置に対し、アクチュエータは平坦表面50を遠位先端部30に押し当て、それによって所与の角度から所与の力を遠位先端部に印加する。圧力計52は、アクチュエータ48が遠位先端部30に及ぼす力の大きさを測定する。較正ユニット24は、その間、遠位先端部の偏向を示す信号を位置センサー38から受信する。較正ユニット内の較正プロセッサ42は、測定された先端部の偏向をアクチュエータによって印加された既知の力ベクトルに写像する較正係数を算出する。
【0026】
アクチュエータ48とプローブ26は、好適なインターフェース(例えばケーブルとコネクタ)を介して較正ユニット24に接続されている。較正ユニット24は、較正プロセッサ42とメモリー54とを備えている。プロセッサ42は通常、好適なフロントエンド及びインターフェース回路と共に汎用コンピュータを備えており、そのフロントエンド及びインターフェース回路は、位置センサー38及び圧力計50から信号を受信するためのものであると同時に、アクチュエータ48によって印加される力ベクトルを制御するためのものであるプロセッサ42は、本明細書で説明する機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされてもよい。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサ42にダウンロードされてもよく、あるいは、光学的、磁気的又は電子的記憶メデイアなどの有形のメディアに提供されてもよい。別法として、プロセッサ42の機能の一部又はすべてが、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、アクチュエータ48は、ロボット治具(図示せず)に装着され、そのロボット治具は、カテーテル26の遠位端部に対して、所望の位置及び角度にアクチュエータを位置決めする。そのロボット治具は、アクチュエータ48を位置決め及び方向付けするための、電気モーターなどの任意の好適な機械的及び電気的構成要素を備えていてもよい。通常、このロボット治具は、アクチュエータが所望の力ベクトルをカテーテル先端部に印加するように、較正プロセッサ42によって制御される。
【0028】
図2は、本発明の実施形態による感圧カテーテルを較正する方法を概略的に示す流れ図である。カテーテル26を較正するために、操作者はカテーテルを固定具44内に装着する(工程60)。アクチュエータ48が、ある角度で平坦表面50を遠位先端部30に押し当てる(工程62)。平坦表面50を遠位先端部30に押し当てることにより、カテーテル26は継ぎ手32にて屈曲することになり、それによって遠位先端部が偏向する。遠位先端部30の位置センサー38は、遠位端部28に対する遠位先端部の偏向を示す信号を出力する。
【0029】
較正ユニット24が、偏向の測定値を位置センサー38から、そして力の測定値を圧力計52から受け取る(工程64)。
【0030】
プロセッサ42は次いで、力の測定値、係合の角度、及び偏向の測定値に基づいて、プローブ26の偏向の測定値を較正するための較正係数を算出する(工程66)。所与の係合の角度にて圧力計52から得られた力ベクトルに対して偏向の測定値を写像することにより、較正係数から、偏向の測定値に基づいて遠位先端部30に対する力が求められる。換言すれば、所与の係合の角度に対して、所与の較正係数により、先端部30の偏向の測定値が実際の圧力の読みに変換される。
【0031】
更に多数の較正点が望まれる場合(工程68)、この方法は上記の工程62に戻るが、ここで較正プロセッサ42は、種々の力ベクトルを遠位先端部30に対して印加するようにアクチュエータ48に指示してもよい。種々様々な大きさ及び方向(すなわち角度)を有する多様な力ベクトルを用いることにより、システム20は、広範囲に及ぶ動作上の幾何学的構造にわたってカテーテルの曲げ応答を試験することが可能となる。工程68に戻ると、これ以上、較正点が必要でない場合、プロセッサ42が、較正係数の較正行列をプローブのメモリー44に記憶し、この方法は終了する。
【0032】
図3は、本発明の別の実施形態による感圧カテーテル用の較正システム78の図である。システム78において、カテーテル26の遠位端部28は、遠位端部の位置及び向きの座標を突き止めるための第2の位置センサー80を備えている。位置センサー80は、バイオセンス・ウェブスター社(Biosense Webster)(カリフォルニア州ダイアモンドバー(Diamond Bar))によって製造されているCARTO(商標)ロケーションパッドなど、通常はマウント84に設置される外部磁場発生器82と共に使用される。このCARTO(商標)ロケーションパッド並びに位置センサー38及び80を使用して、遠位端部28の位置と遠位先端部30の偏向との双方を求めることができる。
【0033】
磁場発生器82は、時間及び/又は周波数において、磁場発生器40によって発生された磁場と区別可能である磁場を生成する。例えば、磁場発生器40への電流は、約16kHz〜25kHzの範囲内の選択された周波数で発生されてよく、その一方で磁場発生器82は異なる周波数で駆動される。それに加えて又はそれに代わって、磁場発生器40及び82の動作は、時分割されてもよい。
【0034】
ある駆動回路(例えば較正ユニット24内にある)が、磁場発生器82(通常はコイルを備える)を駆動して磁場を発生させる。位置センサー38及び80が、これらの磁場に応答して電気信号を発生させる。較正ユニット24内のプロセッサ42は、2つの位置センサーの(したがって遠位端部28及び遠位先端部30の)位置及び向きの座標を求めるために、位置センサー38及び80から受信した信号を処理する。上述のCARTO(商標)ロケーションパッドを使用した位置追跡の更なる態様が、上述の米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、PCT国際公開第WO 1996/005768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号及び同第2004/0068178 A1号に詳細に記載されている。
【0035】
図2の工程64に戻ると、CARTO(商標)ロケーションパッド(又は磁場発生器の任意の他の好適な構成)を備える実施形態において、位置センサー38及び80が、それぞれ遠位先端部30及び遠位端部28の位置を示す信号を出力する。同様に工程66において、プロセッサ42は、位置センサー38及び80によって生成された信号を使用して、遠位端部28に対する遠位先端部30の偏向を算出することができる。
【0036】
加えて、プロセッサ42は、カテーテル26の望ましくない屈曲を検出するために、位置センサー38の出力と位置センサー80の出力とを比較することができる。例えば、力が長手方向にて(すなわちカテーテルの軸線に沿って)遠位先端部30に及ぼされるとき、弾性部材36は、遠位先端部が長手方向に遠位端部28により接近して移動するが、屈曲はしないように収縮することができる。遠位先端部30が屈曲又は座屈したことを、位置センサー38及び80からの出力が示す場合、プロセッサ42は、この挙動を、較正されているカテーテルにおける又は較正手順における障害の徴候として識別してもよい。プロセッサは、警告を発するか、あるいは別の方法で、障害の疑いがあることを示唆してもよい。
【0037】
図4は、本発明の実施形態による、心臓92の心内膜組織90と接触する遠位先端部30を示す概略拡大図である。本例において、先端部30は電極94を備えている。心内膜の電気マッピングなど、いくつかの電気生理学的診断及び治療手技において、電極94と組織90との間の力を適切な水準に維持することが重要である。医療従事者(図示せず)が、遠位先端部30を心内膜組織90に押し当てると、カテーテル26が継ぎ手32にて屈曲する。遠位先端部と組織との間の電極の接触が良好となるようにするために、十分な力が必要である。電気接触が不十分であると、結果として読みが不正確となることがある。他方で、過度な力により組織が変形し、したがってマップが歪むこともある。
【0038】
先端部30が組織90に押し当てられるとき、位置センサー38は、遠位端部28に対する先端部30の偏向を示す測定値を生じる。医療画像システム(例えば、マッピングシステム(図示せず))は、プローブのメモリー44に記憶された較正係数(すなわち較正行列)を使用して、これらの測定値を正確な圧力の読みに変換する。このようにして、本発明の実施形態を用いる侵襲プローブの較正により、医療従事者は、プローブから組織に及ぼされる力を正確に制御することが可能となる。
【0039】
以下の特許請求の範囲における機能的要素に加えて、すべての手段又は工程の対応する構造、材料、作用、及び等価物は、特許請求する他の要素と共に、それらの機能を実施するための任意の構造、材料、又は作用を、明確に特許請求されるものとして包含することを意図したものである。本開示の説明は、例示及び説明の目的で提示されているが、開示した形態における開示内容に対して包括的又は限定的となることを意図したものではない。多数の修正形態及び変形形態が、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。その実施形態は、本開示の原理及び実際的な応用について最良に説明するため、並びに、当業者が、種々の修正形態を伴う各実施形態に関する開示内容を、企図される特定の用途に適するものとして理解できるようにするために、選択し説明したものである。
【0040】
添付の特許請求の範囲は、本開示の趣旨及び範囲に含まれる開示内容のすべての特徴及び利点を網羅することが意図されている。多数の修正及び変更が当業者には容易に思い付くため、この開示内容は、本明細書で説明した限られた数の実施形態に限定されことが意図されている。したがって、すべての好適な変形物、修正物、等価物が、本開示の趣旨及び範囲に含まれるものとして分類され得ることが明らかとなろう。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) 医療用プローブの遠位端部を保持するように結合された固定具と、
前記遠位端部に対する前記遠位先端部の変形を生じさせるために、前記プローブの前記遠位先端部に押し当てられ、前記遠位端部に対して個々の大きさ及び角度を有する複数の力ベクトルを前記遠位先端部に印加するように構成されたアクチュエータと、
前記アクチュエータによって印加された前記力ベクトルの前記大きさを測定するように構成された検知装置と、
前記力ベクトルに応答する前記遠位先端部の前記変形を示す第1の測定値を前記プローブから受信し、前記力ベクトルの前記大きさを示す第2の測定値を前記検知装置から受信し、前記角度と前記第1及び第2の測定値とに基づいて、前記力ベクトルを前記第1の測定値の関数として算定するための較正係数を算出するように構成された較正プロセッサと、を含む、較正機器。
(2) 平坦表面を含み、前記平坦表面は、前記アクチュエータに結合され、前記プローブの前記遠位先端部に押し当てられるように構成される、実施態様1に記載の機器。
(3) 前記プローブの前記遠位端部は、磁場を発生させる磁場発生器を含み、前記遠位先端部は、前記磁場を検知し、検知した前記磁場に応答して前記第1の測定値を生じる磁場センサーを含む、実施態様1に記載の機器。
(4) 前記プローブに対して外側にあり、個々の磁場を発生させるように動作可能である複数の磁場発生器を備え、前記プローブの前記遠位端部及び前記遠位先端部はそれぞれ、前記第1の測定値を生じるために前記磁場を検知する第1及び第2の磁場センサーを含む、実施態様1に記載の機器。
(5) 治具を備え、前記治具は、前記アクチュエータを保持し、前記個々の大きさ及び角度で前記力ベクトルを印加するように前記較正プロセッサによって制御される、実施態様1に記載の機器。
(6) 前記固定具は、前記プローブの長手軸線に対して前記プローブを回転させるように構成されており、前記較正プロセッサは、回転された前記プローブから受信された前記第1の測定値を処理することによって、前記遠位先端部の前記変形における軸非対称性を検出するように構成されている、実施態様1に記載の機器。
(7) 前記較正プロセッサは、前記プローブに結合されたメモリー内に前記較正係数を記憶するように構成されている、実施態様1に記載の機器。
(8) 前記メモリーは電気的消去可能PROMを含む、実施態様7に記載の機器。
(9) 遠位先端部を有する医療用プローブの遠位端部を固定具内に保持することと、
前記プローブの前記遠位端部に対して個々の大きさ及び角度を有する複数の力ベクトルを前記遠位先端部に印加し、前記遠位端部に対する前記遠位先端部の変形を生じさせるように、前記遠位先端部にアクチュエータを押し当てることと、
前記力ベクトルに応答する前記遠位先端部の前記変形を示す第1の測定値を前記プローブから受信することと、
前記アクチュエータに結合された検知装置から、前記力ベクトルの大きさを示す第2の測定値を受信することと、
角度と前記第1及び第2の測定値とに基づいて、前記力ベクトルを前記第1の測定値の関数として算定するための較正係数を算出すること、とを含む、較正方法。
(10) 前記アクチュエータを押し当てることは、前記アクチュエータに結合された平坦表面を前記プローブの前記遠位先端部に押し当てることを含む、実施態様9に記載の方法。
【0042】
(11) 前記プローブの前記遠位端部は、磁場を発生させる磁場発生器を含み、前記第1の測定値を受信することは、前記遠位先端部内の磁場センサーから前記第1の測定値を受け取ることを含み、前記磁気センサーは、前記磁場を検知し、検知された前記磁場に応答して前記第1の測定値を生成する、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記第1の測定値を受信することは、第1及び第2の磁場センサーから前記第1の測定値を受け取ることを含み、前記第1及び第2の磁場センサーが、それぞれ前記プローブの前記遠位端部及び前記遠位先端部内に取り付けられており、前記プローブに対して外側にある複数の磁場発生器によって発生された磁場を検知し、前記第1の測定値を生成する、実施態様9に記載の方法。
(13) 前記アクチュエータを押し当てることは、前記個々の大きさ及び角度で前記力ベクトルを印加するように、前記アクチュエータを保持する治具を操作することを含む、実施態様9に記載の方法。
(14) 前記固定具内の前記プローブを前記プローブの長手軸線に対して回転させることと、回転された前記プローブから受信された前記第1の測定値を処理することによって、前記遠位先端部の前記変形における軸非対称性を検出することとを含む、実施態様9に記載の方法。
(15) 前記プローブに結合されたメモリーに前記較正係数を記憶することを含む、実施態様9に記載の方法。
(16) 前記メモリーは電気的消去可能PROMを含む、実施態様15に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブの遠位端部を保持するように結合された固定具と、
前記遠位端部に対する前記遠位先端部の変形を生じさせるために、前記プローブの前記遠位先端部に押し当てられ、前記遠位端部に対して個々の大きさ及び角度を有する複数の力ベクトルを前記遠位先端部に印加するように構成されたアクチュエータと、
前記アクチュエータによって印加された前記力ベクトルの前記大きさを測定するように構成された検知装置と、
前記力ベクトルに応答する前記遠位先端部の前記変形を示す第1の測定値を前記プローブから受信し、前記力ベクトルの前記大きさを示す第2の測定値を前記検知装置から受信し、前記角度と前記第1及び第2の測定値とに基づいて、前記力ベクトルを前記第1の測定値の関数として算定するための較正係数を算出するように構成された較正プロセッサと、を含む、較正機器。
【請求項2】
平坦表面を含み、前記平坦表面は、前記アクチュエータに結合され、前記プローブの前記遠位先端部に押し当てられるように構成される、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記プローブの前記遠位端部は、磁場を発生させる磁場発生器を含み、前記遠位先端部は、前記磁場を検知し、検知した前記磁場に応答して前記第1の測定値を生じる磁場センサーを含む、請求項1に記載の機器。
【請求項4】
前記プローブに対して外側にあり、個々の磁場を発生させるように動作可能である複数の磁場発生器を備え、前記プローブの前記遠位端部及び前記遠位先端部はそれぞれ、前記第1の測定値を生じるために前記磁場を検知する第1及び第2の磁場センサーを含む、請求項1に記載の機器。
【請求項5】
治具を備え、前記治具は、前記アクチュエータを保持し、前記個々の大きさ及び角度で前記力ベクトルを印加するように前記較正プロセッサによって制御される、請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記固定具は、前記プローブの長手軸線に対して前記プローブを回転させるように構成されており、前記較正プロセッサは、回転された前記プローブから受信された前記第1の測定値を処理することによって、前記遠位先端部の前記変形における軸非対称性を検出するように構成されている、請求項1に記載の機器。
【請求項7】
前記較正プロセッサは、前記プローブに結合されたメモリー内に前記較正係数を記憶するように構成されている、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
前記メモリーは電気的消去可能PROMを含む、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
遠位先端部を有する医療用プローブの遠位端部を固定具内に保持することと、
前記プローブの前記遠位端部に対して個々の大きさ及び角度を有する複数の力ベクトルを前記遠位先端部に印加し、前記遠位端部に対する前記遠位先端部の変形を生じさせるように、前記遠位先端部にアクチュエータを押し当てることと、
前記力ベクトルに応答する前記遠位先端部の前記変形を示す第1の測定値を前記プローブから受信することと、
前記アクチュエータに結合された検知装置から、前記力ベクトルの大きさを示す第2の測定値を受信することと、
角度と前記第1及び第2の測定値とに基づいて、前記力ベクトルを前記第1の測定値の関数として算定するための較正係数を算出すること、とを含む、較正方法。
【請求項10】
前記アクチュエータを押し当てることは、前記アクチュエータに結合された平坦表面を前記プローブの前記遠位先端部に押し当てることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プローブの前記遠位端部は、磁場を発生させる磁場発生器を含み、前記第1の測定値を受信することは、前記遠位先端部内の磁場センサーから前記第1の測定値を受け取ることを含み、前記磁気センサーは、前記磁場を検知し、検知された前記磁場に応答して前記第1の測定値を生成する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の測定値を受信することは、第1及び第2の磁場センサーから前記第1の測定値を受け取ることを含み、前記第1及び第2の磁場センサーが、それぞれ前記プローブの前記遠位端部及び前記遠位先端部内に取り付けられており、前記プローブに対して外側にある複数の磁場発生器によって発生された磁場を検知し、前記第1の測定値を生成する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記アクチュエータを押し当てることは、前記個々の大きさ及び角度で前記力ベクトルを印加するように、前記アクチュエータを保持する治具を操作することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記固定具内の前記プローブを前記プローブの長手軸線に対して回転させることと、回転された前記プローブから受信された前記第1の測定値を処理することによって、前記遠位先端部の前記変形における軸非対称性を検出することとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記プローブに結合されたメモリーに前記較正係数を記憶することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記メモリーは電気的消去可能PROMを含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−131058(P2011−131058A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−285631(P2010−285631)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(510322649)バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
【住所又は居所原語表記】4 Hatnufah Street, P.O. Box 275, Yokneam 20692 Israel
【Fターム(参考)】