説明

感圧性接着シート類

【課題】環境問題などの原因となる有機溶剤を使用することなく、また作業性や残存モノマーの問題を生じることなく、接着力や保持力などの接着特性にすぐれ、同時に支持体の特性も任意に変更でき、それによりシート類全体の性能も容易に調整することのできる感圧性接着シート類を提供する。
【解決手段】支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有する感圧性接着シート類において、上記の支持体および感圧性接着剤層がともにポリマー水分散体の塗布膜からなることを特徴とする感圧性接着シート類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有する感圧性接着シート類に関するものである。


【背景技術】
【0002】
シート状やテープ状などの感圧性接着シート類には、支持体の両面に感圧性接着剤層を設けた両面接着シート類、支持体の片面にのみ感圧性接着剤層を設けた接着シート類などが知られており、それぞれの特性に応じて、種々の分野で広く使用されている。

このような感圧性接着シート類は、従来では、あらかじめ作製されたプラスチックフィルムなどを支持体とし、この支持体上に有機溶剤型の感圧性接着剤を塗布乾燥することにより、作製されてきた。


【0003】
しかるに、近年、環境問題などの観点から、感圧性接着剤として、従来の有機溶剤型から、エマルジョン型、ホットメルト型、放射線硬化型などの無溶剤型への転換が行われつつある。

これらの感圧性接着剤には、それぞれの特徴があり、その実用化が試みられているが、有機溶剤型の感圧性接着剤と同じ性能を示す感圧性接着シート類を作製するのは決して容易なことではなかった。


【0004】
最近になって、感圧性接着シート類の性能を支持体を含めて改良しようとする試みもある。たとえば、中間に支持体となる重合性層とその両面側に感圧性接着剤層となる重合性層との3層を積層して、全体を紫外線の照射により重合させてなる両面接着シート類が提案されている(特許文献1)。

この方法では、支持体と感圧性接着剤層との間の投錨性が向上し、かつ支持体の特性が感圧性接着剤層に影響して、接着シート類にすぐれた性能を付与できる。しかしながら、このような紫外線の照射による重合は、いわゆる静地状態の塊状重合のため、重合処理に時間がかかって作業性に問題があり、また重合後に未反応モノマーが残存して、モノマー臭がするなどの問題がある。
【特許文献1】特開平5−255649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に照らして、環境問題などの原因となる有機溶剤を使用することなく、また上記提案方法のような作業性や残存モノマーの問題を生じることなく、接着力や保持力などの接着特性にすぐれ、同時に支持体の特性も任意に変更でき、それによりシート類全体の性能も容易に調整することのできる感圧性接着シート類を提供することを目的としている。


【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、支持体と感圧性接着剤層の両方をポリマー水分散体を使用した塗布膜にて構成することにより、有機溶剤を使用することなく、また前記提案方法のような作業性や残存モノマーの問題を生じることなく、接着力や保持力などの接着特性にすぐれ、同時に支持体の特性も任意に変更でき、それによりシート類全体の性能も容易に調整できる感圧性接着シート類を製造でき、これによれば製造工程上も有利となり、幅広い用途に適用できることを知り、本発明を完成するに至った。


【0007】
すなわち、本発明は、支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有する感圧性接着シート類において、上記の支持体および感圧性接着剤層がともにポリマー水分散体の塗布膜からなることを特徴とする感圧性接着シート類に係るものである。

また、本発明は、支持体の厚さが10〜150μmである上記構成の感圧性接着シート類、感圧性接着剤層の厚さが10〜150μmである上記構成の感圧性接着シート類、垂下したフェノール樹脂板に対し10mm×20mmの接着面積で接着した試験片の自由末端に500gの均一荷重を負荷して40℃で試験片が落下するまでの時間を測定する保持力試験において、120分までに落下しない上記構成の感圧性接着シート類に係るものである。

さらに、本発明は、支持体の両面に感圧性接着剤層を有する上記構成の感圧性接着シート類、支持体を構成する塗布膜の引張試験(断面積:約2mm2 、長さ:10mm、300mm/分の引張速度)による引張弾性率が0.5〜100Kg/mm2 、 破断強さが1kg/mm2 以上、破断伸びが200%以上である上記構成の感圧性接着シート類に係るものである。


【0008】
本発明において、上記構成の感圧性接着シート類は、以下の方法で製造することができる。すなわち、剥離処理したフィルム上に、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布乾燥し、この上に支持体形成用のポリマー水分散体を塗布乾燥して、あるいはこの上にさらに感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布乾燥して、支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有し、支持体および感圧性接着剤層がともにポリマー水分散体の塗布膜からなる感圧性接着シート類を製造する方法である。


【0009】
また、別の製造方法として、剥離処理したフィルム上に、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布し、この上に支持体形成用のポリマー水分散体を塗布し、あるいはこの上にさらに感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布し、その後全体を乾燥して、支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有し、支持体および感圧性接着剤層がともにポリマー水分散体の塗布膜からなる感圧性接着シート類を製造することができる。

さらに、上記の製造方法における感圧性接着剤層形成用および支持体形成用の各ポリマー水分散体の塗布に際し、後記の段落「0024」に示唆し、また後記の段落「0037」(実施例2)に明示しているように、ダイコータを用いて各ポリマー水分散体を同時に塗布することにより、上記構成の感圧性接着シート類を製造することができる。


【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明においては、支持体と感圧性接着剤層の両方をポリマー水分散体を使用した塗布膜にて構成することにより、環境問題などの原因となる有機溶剤を使用することなく、また作業性や残存モノマーの問題などを生じることなく、接着力や保持力などの接着特性にすぐれ、同時に支持体の特性も任意に変更でき、それによりシート類全体の性能も容易に調整することが可能である感圧性接着シート類を提供することができる。


【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における支持体形成用のポリマー水分散体は、乾燥後の塗布膜に粘着性がなく、ある程度の弾性率と強度、伸びを有するもの、とくに、上記塗布膜の引張試験(断面積:約2mm2 、長さ:10mm、300mm/分の引張速度)による引張弾性率が0.5〜100Kg/mm2 、 好ましくは1〜50kg/mm2 であり、また破断強さが1kg/mm2 以上(通常20kg/mm2 まで)、破断伸びが200%以上(通常1,000%まで)の物性を有するものが好ましい。

引張弾性率が低いと感圧性接着シート類とした場合に腰がなくなって作業性が悪くなり、高すぎるとロール状に巻くことができないなどの問題が起こりやすく、破断強さが低すぎると支持体自体の存在感がなくなり、いずれも好ましくない。


【0012】
このようなポリマー水分散体には、上記物性を備えた各種ポリマーの水分散体であって、弾性率や強さを調整するため、必要により、架橋剤や充填剤、顔料、老化防止剤、紫外線吸収剤などを配合したものであってもよい。

ポリマーには、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)などの合成ゴム系ポリマー、ポリウレタン、ポリエポキシ、ポリエステルなどの縮合系ポリマー、ポリアクリル、ポリスチレンなどが挙げられるが、これらのポリマーは、その合成時や水への乳化時に乳化剤が必要である。

これに比べ、ウレタンプレポリマーとアクリルポリマーとの複合体の水分散体として知られる、ウレタン−アクリルハイブリッド水分散体は、乳化剤を使用せずに合成できることから、その耐水性が良好であり、また感圧性接着剤層との投錨性にもすぐれ、さらに物性の変更が容易にできるので、とくに好ましく用いられる。


【0013】
このようなウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を得るには、a)ウレタン−アクリルハイブリッド水分散物を調製したのち、b)これに(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするポリマーのガラス転移温度が273K以上となる非粘着化用単量体を加えて、重合処理することにより、室温で非粘着性のウレタン−アクリルポリマーの水分散体を製造するようにすればよい。


【0014】
上記のa工程では、(1)カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を混合し、これを上記プレポリマーのカルボキシル基を中和して水に分散させ、イソシアネート基の反応による上記プレポリマーの主鎖延長と上記単量体の重合を行う方法により、または、(2)ポリオールに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分としこれにカルボキシル基含有単量体を加えた単量体混合物を共重合させてなる分子内にカルボキシル基と水酸基を有する重合体を混合し、これにポリイソシアネートを反応させてイソシアネートプレポリマーを合成し、このプレポリマーを上記カルボキシル基を中和して水に分散させ、イソシアネート基の反応による主鎖延長を行う方法により、ウレタン−アクリルハイブリッド水分散物を調製する。


【0015】
上記のa工程において、ウレタンを構成させるためのポリオールとしては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなどが好ましく、ポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環式のものを使用でき、水との反応性の低い脂環式のものを使用するのがとくに好ましい。

(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜14の範囲にあるものが好ましい。カルボキシル基含有単量体には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などがある。

また、上記のb工程における非粘着化用単量体には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、ポリマーのガラス転移温度が273K以上、好ましくは300K以上となるものが用いられる。アクリル成分としては、これら以外の共重合可能な単量体を使用することもできる。


【0016】
このようなウレタン−アクリルハイブリッド水分散体の製造に際し、a工程のウレタン−アクリルハイブリッド水分散物の固形分20〜90重量%、b工程の非粘着化用単量体80〜10重量%とし、最終的にポリオール成分10〜50重量%、ポリイソシアネート成分2〜20重量%、アクリル成分40〜90重量%となるように配合組成を調整することにより、前記弾性率と強度、伸びを示すポリマーが得られるとともに、その物性を任意に変更することができる。


【0017】
本発明における感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体は、乾燥後の塗布膜が感圧接着性を示し、良好な接着力や保持力などの接着特性を発揮するポリマーの水分散体であって、必要により、架橋剤、粘着付与樹脂、充填剤、顔料などの添加剤を配合したものであってもよい。

このようなポリマー水分散体としては、アクリル系ポリマーやウレタン−アクリル系ポリマーなどの水分散体、スチレン−ブタジエン共重合体などの合成ゴム、天然ゴムなどのゴム系ポリマーの水分散体が挙げられる。

これらの中でも、支持体形成用のポリマー水分散体として前記したウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を使用したときは、この支持体との投錨性やさらに耐候性などの観点より、アクリル系ポリマーやウレタン−アクリル系ポリマーなどの水分散体を使用するのが好ましい。


【0018】
アクリル系ポリマーの水分散液は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分としこれにカルボキシル基含有単量体などの他の単量体を加えて、常法により乳化重合することにより、容易に製造できる。

また、ウレタン−アクリル系ポリマーの水分散体の製造においては、支持体形成用のウレタン−アクリルハイブリッド水分散体の製造方法におけるa工程の(1)または(2)と同様の方法、つまり、b工程を省く以外は前記同様の方法を採用すればよく、これによりウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を容易に製造することができる。


【0019】
このウレタン−アクリルハイブリッド水分散体の製造に際し、(1)の方法では、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体との重量比を1:9から9:1の範囲内で調整するのが望ましい。

また、(2)の方法では、ポリオール20〜80重量%に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分としこれにカルボキシル基含有単量体を加えた単量体混合物を共重合させてなる分子内にカルボキシル基と水酸基を有する重合体80〜20重量%となるように、混合するのが望ましい。

このように製造されるウレタン−アクリルハイブリッド水分散体は、乳化剤を含まないため、アクリル系ポリマーの水分散液などに比べ、耐水性にすぐれている。


【0020】
本発明においては、上記の支持体形成用および感圧性接着剤層形成用の各ポリマー水分散体を使用して、以下の(イ)〜(ハ)の方法のように、支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有する感圧性接着シート類であって、上記支持体および感圧性接着剤層がともに上記の各水分散体の塗布膜からなることを特徴とする感圧性接着シート類、とくに上記支持体がウレタン−アクリルハイブリッド水分散体の塗布膜からなる感圧性接着シート類を製造する。


【0021】
(イ)の方法は、剥離処理したフィルム上に支持体形成用のポリマー水分散体を塗布乾燥して、上記水分散体の塗布膜からなる支持体を形成する。また、これとは別に、剥離処理したフィルム上に感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布乾燥して、上記水分散体の塗布膜からなる感圧性接着剤層を形成する。つぎに、上記支持体の片面または両面に上記感圧性接着剤層を貼り合わせることにより、感圧性接着シート類を製造するものである。

しかし、この方法は、支持体と感圧性接着剤層の形成を別々に行い、しかもその後に貼り合わせる工程が必要であるため、工程上煩雑である。このため、作業性の観点より、以下の(ロ),(ハ)の方法を採用するのがより好ましい。


【0022】
(ロ)の方法は、剥離処理したフィルム上に、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布乾燥し、この上に支持体形成用のポリマー水分散体を塗布乾燥して、あるいはこの上にさらに感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布乾燥して、支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有し、支持体および感圧性接着剤層がともに上記各水分散体の塗布膜からなる感圧性接着シート類を製造するものである。

この方法は、感圧性接着剤層と支持体とを順次形成しながら積層一体化できるので、工程の簡略化をはかれ、作業性を向上できる。


【0023】
(ハ)の方法は、剥離処理したフィルム上に、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布し、この上に支持体形成用のポリマー水分散体を塗布し、あるいはこの上にさらに感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を塗布し、その後全体を乾燥して、支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有し、支持体および感圧性接着剤層がともに上記各水分散体の塗布膜からなる感圧性接着シート類を製造するものである。

この方法は、感圧性接着剤層と支持体とをこれらの形成と同時に積層一体化でき、さらに乾燥工程が一度で済むため、工程のさらなる簡略化をはかれ、作業性をより一層向上することができる。


【0024】
ただし、上記(ハ)の方法では、各ポリマー水分散体の塗布に際し、各層とも液状であるため、各層が交じり合わないように工夫する必要があり、通常は、各層が層流状態で流れるように塗布できる複数のマニホールを持つダイコータや、塗布した下層の上に一定量を乗せるように塗布できるダイコータを用いるのが望ましい。

さらに、乾燥に際しても、各層が交じり合わないような条件を選択し、また表面が先に乾燥されて皮バリ状態にならないように、剥離処理したフィルム側から加熱するなど、内部から加熱する方法を採用するのが望ましい。


【0025】
上記(イ)〜(ハ)の方法において、剥離処理したフィルムには、紙、ラミネート処理した紙、各種のプラスチックフィルム、金属箔などにシリコーン処理したものなどが用いられる。

これらの剥離処理したフィルムは、シート状やテープ状などのほか、ベルト状などの形状とされたものであってもよく、このフィルム上に塗布膜として感圧性接着剤層および支持体を形成したのちは、感圧性接着剤層の剥離ライナとしてそのまま利用できるものである。


【0026】
このようにして製造される本発明の感圧性接着シート類において、支持体および感圧性接着剤層を構成する各塗布膜の厚さ(乾燥後の厚さ)は、用途目的に応じて、適宜設定することができるが、一般には、支持体が10〜150μm、感圧接着剤層が10〜150μmとなるようにするのが望ましい。

なお、支持体については、支持体形成用のポリマー水分散体中に発泡剤を加えて、塗布後に発泡させることにより、形成される支持体にクッション性を持たすことができるが、この場合には、支持体を構成する塗布膜の厚さとしては、上記よりも厚くなり、たとえば、50〜2,000μmの厚さとすることができる。


【0027】
本発明の感圧性接着シート類は、上記のように、支持体形成用および感圧性接着剤層形成用の各ポリマー水分散体を使用して、これらを塗布乾燥する方法にて製造できるので、ポリマーの調製工程を含めて有機溶剤の使用が不要であり、環境問題や塗布乾燥時に下層の膨潤や溶解などの問題を引き起こすおそれがなく、支持体および感圧性接着剤層形成時の作業性が良好であって、また上記各形成時に残存モノマーの問題などを生じることもない。


【0028】
しかも、このように製造される感圧性接着シート類は、接着力や保持力などの接着特性にすぐれ、同時に支持体の特性も任意に変更でき、それによりシート類全体の性能も容易に調整できる。

とくに支持体の両面に感圧性接着剤層を有するものは、両面接着シート類として、感圧性接着剤層の組成や厚さを調整することで接着特性を変化でき、また支持体の物性や厚さを任意に変えることで特性変更の幅が広がり、各種の用途に対応できる。

また、支持体の片面にのみ感圧性接着剤層を有するものも、上記同様に接着特性を変化できるし、支持体の物性を調整することで個々の用途に適した性能を付与させることができる。


【実施例】
【0029】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。


【0030】
実施例1
<支持体形成用のポリマー水分散体の調製>
数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール50部に、アクリル酸ブチル45部およびアクリル酸5部からなる単量体混合物、水酸基を有する連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール1部、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.05部を加えて、窒素気流下、50℃で6時間重合反応を行い、上記ポリプロピレングリコールと数平均分子量7,500の重合体(アクリルポリマー)との混合物からなる粘稠液体を得た。


【0031】
このような混合物からなる粘稠液体を、100℃に加熱して減圧処理し、残存する水分を除去したのち、イソホロンジイソシアネート11.8部(全水酸基に対して2.3倍当量)を加え、ジブチルチンジラウレート0.01部を加えて、65℃で3時間反応させ、イソシアネートプレポリマーを合成した。

このイソシアネートプレポリマーに、トリエチルアミン7部(カルボキシル基に対して等当量)を加えて、カルボキシル基を中和したのち、攪拌しながら、水150部を加えて、上記プレポリマーを水に分散させた。

ついで、エチレンジアミン1.8部(残存するイソシアネート基に対して等当量)を水16.2部で希釈した溶液を加えて、65℃で3時間反応させ、主鎖延長を行った。


【0032】
このようにして得たウレタン−アクリルハイブリッド水分散物に、水250部を加え、攪拌しながら、アクリル酸ブチル10部とメタクリル酸メチル40部とからなる非粘着化用単量体混合物(コポリマーのガラス転移温度:330K)を加えて、上記水分散物のウレタン−アクリル核ポリマー粒子に吸収させた。ついで、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)〕プロパン0.02部を加えて、重合反応を開始し、50℃で4時間保持したのち、70℃に昇温して1時間保持し、冷却した。

このような重合処理によって、ポリオール成分29重量%、ポリイソシアネート成分7重量%、アクリル成分58重量%(残りの成分には中和剤やウレタンの主鎖延長剤などが含まれる)からなる室温で非粘着性のウレタン−アクリルポリマーが水に安定に分散されたウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を得た。


【0033】
このウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を、支持体形成用のポリマー水分散体とした。なお、この水分散体を離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、130℃で5分間乾燥して、厚さが50μmの均一なフィルムを作製し、このフィルムを用いて、引張試験を行うことにより、引張弾性率、破断強さおよび破断伸びを測定した。その結果は、引張弾性率が4.5kg/mm2 、破断強さが1.4kg/mm2 、破断伸びが680%であった。


【0034】
なお、引張試験は、以下の方法で行った。フィルムを断面積約2mm2 となるようにサンプリングし、引張試験機として、オートグラフAGS−50D型(島津製作所製)を用い、試験サンプルの長さを10mmとし、300mm/分の引張速度で引張試験を行い、そのときの応力−ひずみ曲線の最初の直線部分から、下記の式にしたがって、引張弾性率を計算した。また、破断時の強度(破断強さ)および破断伸びを読み取った。

【数1】


F:引張応力
A:断面積
ΔL:歪み(伸び)の変化量
Lo:サンプルの初期長さ


【0035】
<感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体の調製>
アクリル酸ブチル60部、アクリル酸2−エチルヘキシル35部およびアクリル酸5部からなる単量体混合物を、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2部および過硫酸カリウム(重合開始剤)0.2部を使用して、常法により乳化重合させることにより、粒子内ゲル分(架橋分)を46重量%含有し、溶剤可溶分のポリマーの重量平均分子量が80万であるアクリル系ポリマーが水中に均一に乳化分散されてなる、固形分濃度が35重量%の水分散体を得た。これを、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体とした。


【0036】
<感圧性接着テープの製造>
シリコーン処理したポリエチレンラミネートした剥離紙に、上記感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、120℃で3分乾燥した。この上に、上記支持体形成用のポリマー水分散体を、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、120℃で3分乾燥した。さらにこの上に、再度、上記感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、120℃で3分乾燥した。

このようにして、剥離紙上に各ポリマー水分散体の塗布膜からなる感圧性接着剤層、支持体および感圧性接着剤層がこの順に形成された感圧性接着テープを得た。


【0037】
実施例2
実施例1で調製した支持体形成用および感圧性接着剤層形成用の各ポリマー水分散体を使用し、シリコーン処理したポリエチレンラミネートした剥離紙上に、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体、支持体形成用のポリマー水分散体、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を、3層のマニホールドを有するダイコータにより、乾燥厚さが三者それぞれ50μmになるように、同時に塗布し、その後、全体を90℃で5分、120分で1分乾燥した。

このようにして、剥離紙上に各ポリマー水分散体の塗布膜からなる感圧性接着剤層、支持体および感圧性接着剤層がこの順に形成された感圧性接着テープを得た。


【0038】
実施例3
<支持体形成用のポリマー水分散体の調製>
数平均分子量3,000のポリテトラメチレングリコール50部に、アクリル酸ブチル25部、アクリル酸エチル20部、アクリル酸4.5部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル0.5部からなる単量体混合物、水酸基を有する連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール1部、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.05部を加えて、窒素気流下、50℃で6時間重合反応を行い、上記ポリテトラメチレングリコールと数平均分子量7,400の重合体(アクリルポリマー)との混合物からなる粘稠液体を得た。


【0039】
このような混合物からなる粘稠液体を、100℃に加熱して減圧処理し、残存する水分を除去したのち、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート15.2部(全水酸基に対して2.3倍当量)を加え、さらにジブチルチンジラウレート0.01部を加え、65℃で3時間反応させることにより、イソシアネートプレポリマーを合成した。

このイソシアネートプレポリマーに、トリエチルアミン6.3部(カルボキシル基に対して等当量)を加えて、カルボキシル基を中和したのち、攪拌しながら、水150部を加えて、上記プレポリマーを水に分散させた。

ついで、エチレンジアミン1.9部(残存するイソシアネート基に対して等当量)を水17.1部で希釈した溶液を加えて、65℃で3時間反応させ、主鎖延長を行った。


【0040】
このようにして得たウレタン−アクリルハイブリッド水分散物に、水280部を加え、攪拌しながら、アクリル酸ブチル16部とメタクリル酸メチル64部とからなる非粘着化用単量体混合物(コポリマーのガラス転移温度:330K)を加え、窒素気流中で1時間攪拌して、上記水分散物のウレタン−アクリル核ポリマー粒子に吸収させた。50℃に昇温し、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)〕プロパン0.02部を加え、重合反応を開始し、50℃で4時間保持したのち、70℃に昇温して1時間保持し、冷却した。

この重合処理により、ポリオール成分24.6重量%、ポリイソシアネート成分7.5重量%、アクリル成分64重量%(残りの成分には中和剤やウレタンの主鎖延長剤などが含まれる)からなる室温で非粘着性のウレタン−アクリルポリマーが水に安定に分散されたウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を得た。


【0041】
このウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を、支持体形成用のポリマー水分散体とした。なお、この水分散体を離型処理したポリエステルフィルム上に塗布し、130℃で5分間乾燥して、厚さが50μmの均一なフィルムを作製し、このフィルムを用いて、実施例1と同様の引張試験を行い、引張弾性率、破断強さおよび破断伸びを測定した。その結果は、引張弾性率が6.0kg/mm2 、破断強さが1.7kg/mm2 、破断伸びが950%であった。


【0042】
<感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体の調製>
ジエチレングリコールアジピン酸エステル(数平均分子量2,500、水酸基価41)100部を、80℃で加熱脱気して、水分を取り除いた。これに、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート49.2部を加え、脱気したのち、ジブチルすずジラウレート0.0298部を加え、65℃で1時間反応させた。その後、30℃まで冷却したのち、ジメチロールプロピオン酸12.4部をN−メチルピロリドン31部に溶解して加え、脱気したのち、70℃で3時間反応させて、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを得た。


【0043】
このウレタンプレポリマーにアクリル酸ブチル1,454.4部(ウレタンプレポリマー/アクリル酸ブチルの重量比10/90)を加えて、よく攪拌した。さらに、トリエチルアミン9.4部を加え、よく攪拌して、中和した。別のフラスコに、蒸留水2,762.4部を入れ、1.5時間窒素置換したのち、これに上記の中和物を滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、エチレンジアミン4部を蒸留水で3倍に希釈して加え、さらにN−メチルピロリドン6部に溶解したアゾビスイソブチルバレロニトリル2.19部を加え、60℃に加熱して、2時間反応させることにより、鎖延長および重合を完了した。

このようにして得られたウレタン−アクリルハイブリッド水分散体を、さらにポリカルボン酸型増粘剤で増粘して、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体とした。


【0044】
<感圧性接着テープの製造>
シリコーン処理したポリエチレンラミネートした剥離紙に、上記感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、120℃で3分乾燥した。この上に、上記支持体形成用のポリマー水分散体を、乾燥後の厚さが70μmになるように塗布し、120℃で3分乾燥した。

このようにして、剥離紙上に各ポリマー水分散体の塗布膜からなる感圧性接着剤層および支持体がこの順に形成された感圧性接着テープを得た。


【0045】
実施例4
実施例3で調製した支持体形成用および感圧性接着剤層形成用の各ポリマー水分散体を使用し、シリコーン処理したポリエチレンラミネートした剥離紙上に、まず、感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、つぎに、その上に、支持体形成用のポリマー水分散体を、ディスペンサにより、乾燥後の厚さが70μmになるように塗布した。その後に、全体を80℃で10分、120分で1分乾燥した。

このようにして、剥離紙上に各ポリマー水分散体の塗布膜からなる感圧性接着剤層および支持体がこの順に形成された感圧性接着テープを得た。


【0046】
上記の実施例1〜4の各感圧性接着テープについて、下記の方法により、接着力および保持力を測定した。結果は、表1に示されるとおりであつた。


【0047】
<接着力>
20mm×100mmの感圧性接着テープを、被着体として♯280のサンドペーパでサンディングしたステンレス板に2kgのローラを1往復させる方式で圧着し、23℃で20分間経過後、180度剥離に要する力を測定した。測定条件は、23℃,65%RHの雰囲気下、引張速度300mm/分とした。


【0048】
<保持力>
フェノール樹脂板に感圧性接着テープを10mm×20mmの接着面積で接着し、20分経過後、40℃で20分間放置したのち、フェノール樹脂板を垂下して、感圧性接着テープの自由末端に500gの均一荷重を負荷し、40℃において、感圧性接着テープが落下するまでの時間を測定した。


【0049】
【表1】

【0050】
上記の表1の結果から明らかなように、実施例1〜4のように、支持体形成用および感圧性接着剤層形成用のポリマー水分散体を使用して、これらを剥離紙上に塗布し乾燥することにより、接着力および保持力からなる接着特性にすぐれ、かつ支持体の特性も含めてテープ全体の性能を任意に調整することが可能である感圧性接着テープを容易に製造できるものであることがわかる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面または両面に感圧性接着剤層を有する感圧性接着シート類において、上記の支持体および感圧性接着剤層がともにポリマー水分散体の塗布膜からなることを特徴とする感圧性接着シート類。


【請求項2】
支持体の厚さが10〜150μmである請求項1に記載の感圧性接着シート類。


【請求項3】
感圧性接着剤層の厚さが10〜150μmである請求項1または2に記載の感圧性接着シート類。


【請求項4】
垂下したフェノール樹脂板に対し10mm×20mmの接着面積で接着した試験片の自由末端に500gの均一荷重を負荷して40℃で試験片が落下するまでの時間を測定する保持力試験において、120分までに落下しない請求項1〜3のいずれかに記載の感圧性接着シート類。


【請求項5】
支持体の両面に感圧性接着剤層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の感圧性接着シート類。


【請求項6】
支持体を構成する塗布膜の引張試験(断面積:約2mm2 、長さ:10mm、300mm/分の引張速度)による引張弾性率が0.5〜100Kg/mm2 、 破断強さが1kg/mm2 以上、破断伸びが200%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の感圧性接着シート類。



【公開番号】特開2009−299078(P2009−299078A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223012(P2009−223012)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願平11−53490の分割
【原出願日】平成11年3月2日(1999.3.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】