説明

感圧接着剤及びその活用

【課題】本発明は、使用時は剥れることなく、剥離する際には樹脂フィルム等からの剥離性が良好で、凹凸、異物、埃などが被着体にあっても貼り合せ時に感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入することがなく、フィッシュアイが発生しない感圧接着剤層の形成が可能な感圧接着剤及び該感圧接着剤を用いてなる表面保護フィルムを提供することにある。
【解決手段】スチレン系ブロック共重合体(A)、鉱物油軟化剤(B)、および酸化防止剤(C)からなる、軟化点が80〜150℃の範囲である感圧接着剤(D)であって、
スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン系ブロック共重合体全体に対してスチレンの比率が10〜40重量%であり、
鉱物油軟化剤(B)は、ナフテン環と炭素原子数20個以上のアルカンとを含み、かつ、鉱物油軟化剤全体に対して炭素原子数20個以上のアルカンの比率が55重量%以上であり、
スチレン系ブロック共重合体(A)5〜50重量部、鉱物油軟化剤(B)50〜95重量部を合計100重量部になるように配合したものであって、
酸化防止剤(C)は、スチレン系ブロック共重合体(A)と鉱物油軟化剤(B)との合計100重量部に対して0.05〜10重量部を含むことを特徴とする感圧接着剤(D)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材表面への塵埃の付着や傷つきを防止する表面保護フィルムに用いられる感圧接着剤に関する。より詳細には、樹脂フィルム等に対して良好な接着性及び剥離性を有する感圧接着剤層を構成するのに用いられる感圧接着剤及び該感圧接着剤を用いてなる表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加工時及び運搬時に表面への汚れの付着や傷つきを防止することを目的として、樹脂フィルム、金属板、化粧合板、塗装鋼板などに表面保護フィルムが仮着されることがある。その中でも、樹脂フィルム、塗装鋼板などに表面保護フィルムが多用されている。
【0003】
一般に、樹脂フィルム等の表面を保護するための表面保護フィルム用の感圧接着剤としては、耐候性、透明性、剥離力調整の容易さの点からアクリル系感圧接着剤が使用されている。このアクリル系感圧接着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基、水酸基、エポキシ基等の官能基を含有したモノマーを共重合したアクリル系共重合体をポリイソシアネート、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、金属キレート等で架橋させて使用される。特に、剥離力を適度に低くし、被着体への濡れ性を抑制し、更に剥離性を良好にするために架橋密度を高く設定するのが一般的である(特許文献1〜5)。
【0004】
特許文献1〜5で知られている表面保護フィルム用の粘着剤組成物は、いずれも室温での使用において剥離力は適度に低く保たれ、被着体からの剥離が容易である。また、低温域でもタックを消失することなく、剥離力は適度に低く保たれ、剥離が容易である。しかし、一度高温雰囲気下に置かれると剥離力が急激に上がってしまい、剥離すると被着体に粘着剤組成物がうっすらと残ってしまうということがある。
【0005】
ところで、表面保護フィルムは、凹凸のほとんどない被着体に貼り合せる場合には、貼り合せ作業は容易であるが、数μmの凹凸がある被着体に貼り合せると感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入してしまうことがあり、それが皺の原因になることや空気が混入した部分を起因として剥れてしまうことがある。
また、目視で容易に確認できない異物や埃などが被着体にあると、表面保護フィルムを貼り合せた際に、その部分を中心にフィッシュアイと呼ばれる欠点となってしまう。そのため、一度剥離した後に異物や埃を除去し、再度貼り合せる工程が必要になるので作業の効率を低下させてしまう。
【0006】
従って、表面保護フィルムに積層される感圧接着剤には剥離性が良好であることに加え、数μmの凹凸のある部分にも柔軟に対応して感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入することがなく、異物や埃などがあってもフィッシュアイが発生しないことが求められる。このために、弾性率の低い材料を用いて感圧接着剤自体を柔らかくすることによって、凹凸のある部分に柔軟に対応して感圧接着剤層と被着体の界面に空気が残ることがなく貼り合せることは出来る。また、架橋密度を低くすることで異物や埃などが被着体にあってもフィッシュアイを防ぐことは可能である。
【0007】
しかし、弾性率の低い材料は概して濡れ性が高く、密着性が上がってしまい、経時で剥離力が上がってしまう。また、架橋密度を低くすると剥離力は上がってしまい、剥離性が低下し、被着体に感圧接着剤が残ってしまうという問題もある。
【0008】
これら種々の要求に対して様々な組成物が提案されてきた。例えば、表面保護フィルム用のウレタンウレア組成物、アクリル系組成物、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物が知られている(特許文献6〜8参照)。
特許文献6に記載のウレタンウレア組成物は、様々な条件でも剥離力が適度に低く、剥離性は良好であった。しかし、ウレタンウレア組成物の特有の性質ゆえに指触タックがほとんどなく、3μm以上の凹凸のある被着体に貼り合せるとウレタンウレア組成物と被着体の界面に空気が混入してしまう。
特許文献7、8に記載のアクリル系組成物、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物は、凹凸のある被着体に貼り合せても組成物と被着体の界面に空気が混入することなく、被着体汚染もないが、剥離力が高すぎて、比較的広い面積の樹脂フィルム等に貼り合せた場合、剥離することが困難である。
【0009】
ところで、ホットメルト型感圧接着剤の技術分野では、スチレン系ブロック共重合体を主成分として、軟化剤、粘着付与樹脂から構成される感圧接着剤を加熱溶融させて塗工する方法が一般的である。ホットメルト型感圧接着剤の特性を活かし、ホットメルト型感圧接着剤を表面保護フィルム用途に活用することは十分に可能であるが、実務的には表面保護フィルム等に使用される感圧接着剤はアクリル系樹脂が大部分を占めていた。
スチレン系ブロック共重合体は、弾性率、屈折率が高い等のアクリル系樹脂にはない長所を持ち合わせてはいるが、スチレン系ブロック共重合体を溶解するためには高温で剪断力をかけないと溶融しないため、製造効率が悪い。また、アクリル系樹脂と比較して塗工が困難で、塗工面も平滑になりにくく、高価である。そこで、長年にわたリアクリル系樹脂を主成分とする感圧接着剤が各種用途で適用されてきた。
【0010】
しかし、感圧接着剤の用いられる分野も多岐にわたり、要求レベルが年々上がっている。また、新たな要求特性が追加されることにより、従来のアクリル系樹脂を主成分とした感圧接着剤では種々の要求に十分こたえられなくなりつつある。そこでアクリル系樹脂以外の素材で、スチレン系ブロック共重合体を主成分とする感圧接着剤が検討されるようになってきた。
【0011】
例えば、表面保護フィルム用の粘着性ポリマーと粘着付与樹脂とからなる粘着剤組成物に常温で固体のブロッキング防止剤が外部添加されてなる粘着剤が知られている(特許文献9)。
【0012】
また、表面保護フィルム用のA−B−A型ブロック共重合体またはA−B−A型ブロック共重合体とA−B型ブロック共重合体との混合物(Aはスチレン系重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロックもしくはイソプレン重合体ブロックまたはこれらを水素添加して得られるオレフィン系重合体ブロック)100重量部に対してオキシカルボン酸の高級アルキルエステル0.05〜10重量部を含有する粘着剤が知られている(特許文献10)。
【0013】
また、表面保護フィルム用のスチレン系化合物重合ブロックとスチレン−共役ジエンランダム共重合ブロックとからなるエラストマーの水素添加樹脂及び/又はスチレン−共役ジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加樹脂100重量部に対してベンゾトリアゾール系化合物0.01〜3重量部が添加されてなる粘着剤が知られている(特許文献11)。
【0014】
しかし、特許文献9〜11に記載されている粘着剤は、剥離力が高く、比較的広い面積の樹脂フィルム等に貼り合せた場合、剥離することが困難である。また、粘着剤層に柔軟性がなく、貼って、一度剥離した後は、再度貼り合せることは出来ないため、貼り合せて空気や異物などが混入した場合には使用できなくなってしまう。
【0015】
また、再剥離性を有しているA−B型及び/又はA−B−A型で示されるブロック共重合体(Aは芳香族ビニル単量体の重合体ブロック、Bは共役ジエン系単量体の重合体ブロック)をエラストマーの主成分とする気泡含有ホットメルト粘着剤が知られている(特許文献12)。
【0016】
また、表面保護フィルム用のスチレン重合体ブロック(A)とスチレンと共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)とからなるブロック共重合体を主要骨格とするスチレン系エラストマーの水素添加物100重量部に対し、共役ジエン重合体ブロックの重量分率が50〜95重量%であり、スチレン重合体ブロック又はスチレンと共役ジエンとのランダム共重合体ブロックの重量分率が5〜50重量%であるスチレン系エラストマーの水素添加物5〜100重量部が配合された粘着剤が知られている。(特許文献13)。
【0017】
特許文献12、13に記載されている粘着剤は凹凸のある被着体に対しての密着性が良好で、適度な剥離力ではあるが、特許文献12に記載されている粘着剤は気泡が感圧接着剤層に含まれているため透明性が低下してしまう。特許文献12に記載されている粘着剤は、一度高温雰囲気下に置かれると剥離力が上がってしまうため、剥離することが困難である。
【特許文献1】特開2005−97451号公報
【特許文献2】特開平10−251609号公報
【特許文献3】特開2007−169458号公報
【特許文献4】特開2002−97435号公報
【特許文献5】特開2002−3808号公報
【特許文献6】特開2007−23117号公報
【特許文献7】特開2006−265537号公報
【特許文献8】特開2008−56757号公報
【特許文献9】特開2007−126569号公報
【特許文献10】特開2002−338918号公報
【特許文献11】特開2001−81433号公報
【特許文献12】特開平11−124554号公報
【特許文献13】特開2002−105424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、使用時は剥れることなく、剥離する際には樹脂フィルム等からの剥離性が良好で、凹凸、異物、埃などが被着体にあっても貼り合せ時に感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入することがなく、フィッシュアイが発生しない感圧接着剤層の形成が可能な感圧接着剤及び該感圧接着剤を用いてなる表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。
即ち、本発明は、スチレン系ブロック共重合体(A)、鉱物油軟化剤(B)、および酸化防止剤(C)からなる、軟化点が80〜150℃の範囲である感圧接着剤(D)であって、
スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン系ブロック共重合体全体に対してスチレンの比率が10〜40重量%であり、
鉱物油軟化剤(B)は、ナフテン環と炭素原子数20個以上のアルカンとを含み、かつ、鉱物油軟化剤全体に対して炭素原子数20個以上のアルカンの比率が55重量%以上であり、
スチレン系ブロック共重合体(A)5〜50重量部、鉱物油軟化剤(B)50〜95重量部を合計100重量部になるように配合したものであって、
酸化防止剤(C)は、スチレン系ブロック共重合体(A)と鉱物油軟化剤(B)との合計100重量部に対して0.05〜10重量部を含むことを特徴とする感圧接着剤(D)に関する。
【0020】
また、本発明は、酸化防止剤(C)が、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤であることを特徴とする上記感圧接着剤(D)に関する。
【0021】
また、本発明は、上記感圧接着剤(D)から形成される感圧接着剤層が、フィルム状基材の片面もしくは両面に積層されてなる表面保護フィルムに関する。
【0022】
また、本発明は、感圧接着剤層の厚さが、1〜500μmであることを特徴とする上記表面保護フィルムに関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、使用時は剥れることなく、樹脂フィルム等からの剥離性が良好で、凹凸、異物や埃などがあっても貼り合せ時に感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入することなく、フィッシュアイが発生しない感圧接着剤層の形成が可能な感圧接着剤及び該感圧接着剤を用いてなる表面保護フィルムを提供することが出来る。さらに、本発明の感圧接着剤は、従来の感圧接着剤よりも屈折率を高く設定でき、粘弾性の調整が幅広くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の感圧接着剤について説明する。
本発明の感圧接着剤(D)は、軟化点が80〜150℃の範囲にあって、後述するスチレン系ブロック共重合体(A)、鉱物油軟化剤(B)、及び酸化防止剤(C)、必要に応じてその他の添加剤を配合して感圧接着剤層を形成する。
【0025】
本発明に用いられる感圧接着剤(D)を構成するスチレン系ブロック共重合体(A)としては、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(SBS、トリブロック)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体の水添物(SEBS、トリブロック)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(SIS、トリブロック)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体の水添物(SEPS、トリブロック)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(SBIS、トリブロック)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレンブロック共重合体の水添物(SEEPS、トリブロック)、また、カルボキシル変性した上記記載のスチレン系ブロック共重合体、更には、スチレンブロックの中にはスチレンの他に、スチレンとα−メチルスチレン等の芳香族系ビニル化合物の共重合体も例示される。
【0026】
これらスチレン系ブロック共重合体(A)の中でも、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体の水添物(SEBS、トリブロック)、カルボキシル変性したスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体の水添物(カルボキシル変性SEBS、トリブロック)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体の水添物(SEPS、トリブロック)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレンブロック共重合体の水添物(SEEPS、トリブロック)が後述する鉱物油軟化剤(B)の保持性が良いため、好ましく用いられる。スチレン系ブロック共重合体(A)は、単独で用いられても、2種類以上が併用されてもよい。
【0027】
これらスチレン系ブロック共重合体(A)に含まれるスチレンの比率はスチレン系ブロック共重合体(A)全体に対して10〜40重量%であり、好ましくは15〜35重量%である。10重量%未満であると感圧接着剤の凝集力が低下する。40重量%を超えると透明性が低下し、後述する鉱物油軟化剤の保持性が悪くなる。
【0028】
上記スチレン系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算重量平均分子量で50,000〜400,000の範囲が好ましく、より好ましくは80,000〜350,000の範囲である。重量平均分子量が50,000未満では、感圧接着剤の凝集力が低下するため、後述する鉱物油軟化剤の保持性が悪くなる。重量平均分子量が400,000を超えると、剥離力が低くなりすぎるとともに、流動性が悪くなり、製造が困難になることがある。
【0029】
本発明に用いられる感圧接着剤(D)を構成する鉱物油軟化剤(B)としては、ナフテン環と炭素原子数20個以上のアルカンを含み、鉱物油軟化剤全体に対して炭素原子数20個以上のアルカンの比率が55重量%以上である鉱物油軟化剤が好ましい。鉱物油軟化剤には芳香族環を含んでいても構わない。鉱物油軟化剤全体に対して、原子数20個以上のアルカンが60重量%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環が35〜50重量%のものをナフテン系、芳香族環が35重量%以上のものを芳香族系として分類している。また、鉱物油軟化剤(B)に含まれる炭素原子数20個以上のアルカンの炭素原子数の上限としては80個以下が好ましい。
【0030】
これら鉱物油軟化剤(B)としては、鉱物油軟化剤全体に対してナフテン環又はナフテン環と芳香族環の合計の比率が15〜45重量%であり、好ましくは20〜40重量%である。15重量%未満であると、フィルム状基材に積層して被着体に貼り合せた際に、ローラー効果が発揮しないため、凹凸のある被着体に対応できず、感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入してしまうことがある。45重量%を超えるとナフテン環や芳香族環がブリードアウトしてしまうことがある。また、着色のしやすさという観点から、芳香族系鉱物油軟化剤は使用することは出来ず、パラフィン系鉱物油軟化剤やナフテン系鉱物油軟化剤であっても、芳香族環が10重量%未満でないと着色しやすいため、使用することは出来ないことがある。
【0031】
スチレン系ブロック共重合体(A)と鉱物油軟化剤(B)の合計を100重量部としたとき、感圧接着剤(D)に用いられるスチレン系ブロック共重合体(A)の配合量は、5重量部〜50重量部で、好ましいくは10重量部〜45重量部である。5重量部未満では感圧接着剤の凝集力を維持することが困難となり、50重量部を超える場合には、表面保護フィルムを貼り合せた際に、凹凸のある被着体に対応できず、感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入してしまう。
【0032】
スチレン系ブロック共重合体(A)と鉱物油軟化剤(B)の合計を100重量部としたとき、感圧接着剤(D)に用いられる鉱物油軟化剤(B)の配合量は、50重量部〜95重量部で、好ましくは55重量部から90重量部以下である。50重量部未満では、表面保護フィルムを貼り合せた際に、凹凸のある被着体に対応できず、感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入してしまう。95重量部を超えると配合は、鉱物油軟化剤(B)がブリードアウトしてしまう。
【0033】
本発明の感圧接着剤(D)には、一般的な感圧接着剤の場合には全く使用されないか、使用する場合であっても加工性の改善や密着性を上げるためにごく少量しか使用されない鉱物油軟化剤を50重量部以上と多量に添加することが極めて重要である。即ち、感圧接着剤はスチレンの比率とナフテン環又はナフテン環と芳香族環の合計の比率を制御することにより、スチレンの物理的な架橋により凝集力を維持しつつ、ナフテン環や芳香族環がサブミクロンサイズの微細な凹凸にも容易に入り込むことで、被着体に馴染みやすくなり、ブタジエンやイソプレン等によりナフテン環と芳香族環がブリードアウトするまでには至らないように抑制するという効果を発揮する。
【0034】
本発明の感圧接着剤(D)を構成する酸化防止剤(C)としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤は、単独で用いても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0035】
感圧接着剤(D)に酸化防止剤(C)を含有させることにより、加熱による熱劣化や自動酸化を効果的に抑制することができるので、物性の安定性が向上する。
【0036】
上記フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル]プロピオネート等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤は、単独で用いても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0037】
上記リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。
【0038】
上記フェノール系酸化防止剤は、自動酸化の連鎖成長過程で生じるROO・(パーオキシラジカル)に水素を供与して安定化し、自身はオルト位置換基によって保護された安定なフェノキシラジカルとなって連鎖反応を停止するラジカルトラップ剤としての機能を有し、そのことにより感圧接着剤層の熱劣化を効果的に抑制する。特に、フェノール系酸化防止剤と、フェノール系酸化防止剤よりラジカルトラップ反応の速いラクトン系酸化防止剤やビタミンE系酸化防止剤等とを併用することにより、上記光劣化抑制効果はより優れたものとなる。
【0039】
上記リン系酸化防止剤は、過酸化物、ROOHを非ラジカル的に分解し、自動酸化過程の連鎖反応を停止する機能を有し、そのことにより感圧接着剤層の熱劣化を効果的に抑制する。
【0040】
酸化防止剤(C)の添加量は、感圧接着剤層を形成するために用いられるスチレン系ブロック共重合体(A)と鉱物油軟化剤(B)の合計100重量部に対して、0.05〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜8重量部である。酸化防止剤の添加量が0.05重量部未満であると、酸化防止剤を添加することによる上記効果を十分に得られないことがあり、10重量部を超えると、酸化防止剤が感圧接着剤層の表面にブリードアウトすることがある。
【0041】
本発明の感圧接着剤(D)には、発明の目的を損なわない範囲で粘着付与樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、接着昂進防止剤、シランカップリング剤、イソシアネート系化合物などの添加剤が添加されてもよい。
【0042】
上記粘着付与樹脂としては、水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油系樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アルコン」等)、テルペン系樹脂(例えば、ヤスハラケミカル社製、商品名「クリアロン」等)が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0043】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの通常使用されるものが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0044】
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系の通常使用されるものが挙げられる。
【0045】
上記接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0046】
上記シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0047】
上記イソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のポリイソシアネート化合物及びこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体などが挙げられる。これらイソシアネート系化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
本発明の目的を損なわない範囲で添加できる粘着付与樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、接着昂進防止剤、シランカップリング剤、イソシアネート系化合物など添加剤の添加量は感圧接着剤(D)100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.05〜8重量部である。10重量部を超えてしまうとブリードアウトしてしまうことがある。
【0049】
本発明の感圧接着剤(D)の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、23℃で5×10〜5×10Paの範囲であることが好ましい。剪断貯蔵弾性率がこの範囲外の場合には、剥離工程における作業性が悪くなることがある。
【0050】
本発明の感圧接着剤(D)を製造する方法としては特に限定されず、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、撹拌機を備えた溶融釜、一軸または二軸の押し出し機を用いて加熱混合するホットメルト法、適当な溶剤に配合成分を投入し、これを攪拌することによって感圧接着剤の均一な溶液を得る溶剤法など、いずれの方法も用いることができるが、ホットメルト法が環境への影響が少ないため好ましい。
【0051】
本発明の感圧接着剤は、無溶剤で、あるいはその溶液を、紙、樹脂フィルム等のフィルム状基材に通常用いられる塗工機またはホットメルト塗工機を用いて均一に塗布し、必要に応じて乾燥、冷却することによって、各種積層体を製造することができる。本発明の感圧接着剤は、耐熱性に優れており、溶融温度を高めても溶融粘度の経時変化が少ないため、ホットメルト型感圧接着剤として好適に使用することができので、加熱溶融させることにより、支持体上に塗布することが好ましい。
【0052】
次に本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体の基本的構成は、フィルム状基材/感圧接着剤層/離型性フィルムのような片面積層体、あるいは離型性フィルム/感圧接着剤層/フィルム状基材/感圧接着剤層/離型性フィルムのような両面積層体である。使用時に、離型性フィルムが剥がされ、感圧接着剤層が被着体に貼付される。感圧接着剤は、貼着の際被着体に感圧接着剤層が触れるその瞬間に感圧接着剤層がタックを有すのみならず、感圧接着剤以外の接着剤とは異なり、貼着中も完全に固化することなく、タックと適度な固さを有しつつ、貼着状態を維持するための凝集力を有することが必要である。凝集力は重量平均分子量に大きく依存する。
【0053】
フィルム状基材の素材としては、特に制限無く使用することが出来る。例えば、樹脂フィルムとしては、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、プリプロピレン、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂があり、単層のものでもこれらの積層物であってもよい。その他、不織布、織布、布、紙、ガラス、金属箔、金属メッシュとこれらを含む複合物が挙げられる。また、必要に応じて、フィルムの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理などの易接着処理、帯電防止処理、着色処理などを施してもよい。さらに後述する離型性フィルムもフィルム状基材として用い、離型性フィルムに感圧接着剤を塗工することもできる。これらフィルム状基材の厚みには特に制限はないが、作業性から1μmから1000μmが好ましい。
【0054】
感圧接着剤層の厚さは、1μmから500μm、好ましくは5μmから300μm、更に好ましくは10μmから200μmである。1μm以下では十分な剥離力が得られないことがあり、500μmを超えても剥離力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0055】
感圧接着剤層は、必要に応じて、離型性フィルム等と貼り合せて用いることが出来る。離型性フィルムとしては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)、ポリエチレン、プリプロピレン、ポリノルボルネン等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PPS樹脂フィルム、TACフィルム、アクリル系樹脂フィルム、またはこれらに離型処理を施したもの等が挙げられる。
【0056】
本発明の積層体は、感圧接着剤層が離型性フィルム以外のフィルム状基材と離型性フィルムとの間、離型性フィルム以外のフィルム状基材と離型性フィルム以外のフィルム状基材との間、あるいは離型性フィルムと離型性フィルムの間に挟持された構成のいずれであってもよい。離型性フィルム以外のフィルム状基材と離型性フィルムとの間に感圧接着剤層が挟持された構成が好ましい。
【実施例】
【0057】
以下に、この発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、この発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を意味するものとする。
【0058】
[製造例1〜61]
表1に示した部数で、スチレン系ブロック共重合体(A)、鉱物油軟化剤(B)、酸化防止剤(C)を攪拌機を備えたニーダーに加え、150℃で3時間攪拌し、ホットメルト型感圧接着剤を得た。結果を表3に示した。
【0059】
[製造例62]
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器および滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート65.6部、2−エチルヘキシルアクリレート28.2部、4−ヒドロキシブチルアクリレート6部、アクリル酸0.2部からなるモノマー混合物のうち25%と酢酸エチル35部、トルエン15部を入れ、4つ口フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤として1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル0.0875重量部を添加して、攪拌しながら窒素雰囲気中で4つ口フラスコ内の混合物の温度を87℃に昇温させて初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りのモノマー混合物75%、酢酸エチル25重量部及び1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル0.075重量部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら2時間環流下で反応させ、さらに2時間反応させた。その後、酢酸エチル25重量部にアゾビスイソブチロニトリル0.25重量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、さらに1時間30分反応させた。反応終了後、反応混合物をトルエン154重量部で希釈して、固形分28.9%、重量平均分子量(Mw)55.2万のアクリル系共重合体の溶液を得た。表2に部数を示す。
【0060】
製造例62のアクリル系共重合体の溶液100部に「タケネートD262」(TDI型イソシアネート、固形分49.8%、三井武田ケミカル社製)6.69部を添加し、十分に攪拌して感圧接着剤の溶液を得た。得られた結果を表3に示す。
【0061】
[製造例63]
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器および滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート70部、n−ドデシルメルカプタン0.2部、過酸化物系開始剤(ナイパ−BMT−K40:日本油脂社製)0.06部を入れ、4つ口フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気中で4つ口フラスコ内の混合物の温度を70℃に昇温させて3時間反応させた後、スチレン30部を2時間かけて滴下し、さらに10時間反応させ、重量平均分子量(Mw)74万のアクリル系共重合体を得た。表2に部数を示した。
【0062】
製造例63のアクリル系共重合体100部を酢酸エチル250部に溶解して感圧接着剤の溶液を得た。
【0063】
[製造例64]
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器および滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート98.2部、アクリル酸1.5部及び2−ヒドロキシエチルアクリレート0.3部からなるモノマー混合物のうち40部と、酢酸エチル60部を入れ、4つ口フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気中で4つ口フラスコ内の混合物の温度を80℃に昇温し、80℃になったところで過酸化物系開始剤(ナイパ−BMT−K40:日本油脂社製)0.1部を添加して反応を開始した。反応開始後、10分経過してから、残りのモノマー混合物60部と酢酸エチル20部及び過酸化物系開始剤(ナイパ−BMT−K40:日本油脂社製)を0.1部混合した物を、1時間30分かけて均一に滴下しながら、還流下で重合を続けた。モノマーの滴下が終了してから1時間30分後に、後添加用開始剤として1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリルを0.3部とトルエン40部を添加し、さらに1時間30分反応し、固形分45.1%、重量平均分子量(Mw)55.5万のアクリル系共重合体の溶液を得た。
【0064】
上記アクリル系共重合体の溶液に、トルエン20部、粘着付与樹脂(「アルコンP−100」:荒川化学工業社製)20部を加え、アクリル系共重合体及び粘着付与樹脂を含む溶液を得た。このアクリル系共重合体及び粘着付与樹脂を含む溶液100部に対し、「コロネートL−55E」(変性TDI系イソシアネート、固形分55%、日本ポリウレタン社製)1.5部を添加し、十分に攪拌して感圧接着剤の溶液を得た。
【0065】
なお、GPCによる分子量測定条件は以下の通りである。
GPC測定装置:Liquid Chromatography Model 510(Waters社製)
検出器:M410示差屈折計
カラム:Ultra Styragel Linear(7.8mm×30cm)
Ultra Styragel 100A(7.8mm×30cm)
Ultra Styragel 500A(7.8mm×30cm)
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
試料濃度は0.2%、注入量は200マイクロリットル/回とした。
【0066】
(実施例1〜46、比較例1〜15)
上記製造例1〜61で得られたホットメルト型感圧接着剤をTダイ法により押し出し、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム、東レ株式会社製、厚さ50μm)に感圧接着剤層が35μmになるように積層し、離型性フィルム/感圧接着剤層/PETフィルムという構成の積層体を得た。
【0067】
(比較例16〜19)
上記製造例62〜64で得られた感圧接着剤の溶液をシリコーン系離型剤で表面処理された離型性フィルムに、乾燥後の塗工量が35μmとなるように、感圧接着剤の溶液を塗布し、100℃で60秒間熱風循環式乾燥機内で乾燥し、感圧接着剤層を形成した後、加圧ニップロールを用いてPETフィルム(東レ株式会社製、厚さ50μm)を貼り合せた。23℃、相対湿度65%で7日間養生を行って、離型性フィルム/感圧接着剤層/PETフィルムという構成の積層体を得た。
【0068】
【表1】

【0069】
表1の中のスチレン系ブロック共重合体(A)の略号を以下に示す。
1020: セプトン1020(クラレ社製)、SEP、スチレンの比率36重量%
2002: セプトン2002(クラレ社製)、SEPS、スチレンの比率30重量%
2004: セプトン2004(クラレ社製)、SEPS、スチレンの比率18重量%
2005: セプトン2005(クラレ社製)、SEPS、スチレンの比率20重量%
2006: セプトン2006(クラレ社製)、SEPS、スチレンの比率35重量%
2007: セプトン2007(クラレ社製)、SEPS、スチレンの比率30重量%
2063: セプトン2063(クラレ社製)、SEPS、スチレンの比率13重量%
2104: セプトン2104(クラレ社製)、SEPS、スチレンの比率65重量%
4033: セプトン4033(クラレ社製)、SEEPS、スチレンの比率30重量%
4044: セプトン4044(クラレ社製)、SEEPS、スチレンの比率32重量%
4055: セプトン4055(クラレ社製)、SEEPS、スチレンの比率30重量%
4077: セプトン4077(クラレ社製)、SEEPS、スチレンの比率30重量%
4099: セプトン4099(クラレ社製)、SEEPS、スチレンの比率30重量%
8004: セプトン8004(クラレ社製)、SEBS、スチレンの比率31重量%
8006: セプトン8006(クラレ社製)、SEBS、スチレンの比率33重量%
8007: セプトン8007(クラレ社製)、SEBS、スチレンの比率30重量%
8076: セプトン8076(クラレ社製)、SEBS、スチレンの比率30重量%
8104: セプトン8104(クラレ社製)、SEBS、スチレンの比率60重量%
D1101: クレイトンD1101(クレイトンポリマー社製)、SBS、スチレンの比率31重量%
D1155: クレイトンD1155(クレイトンポリマー社製)、SBS、スチレンの比率40重量%
D1160: クレイトンD1160(クレイトンポリマー社製)、SIS、スチレンの比率18.5重量%
D1162: クレイトンD1162(クレイトンポリマー社製)、SIS、スチレンの比率44重量%
D1171: クレイトンD1171(クレイトンポリマー社製)、SBIS、スチレンの比率19重量%
G1650: クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)、SEBS、スチレンの比率30重量%
G1651: クレイトンG1651(クレイトンポリマー社製)、SEBS、スチレンの比率33重量%
G1652: クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)、SEBS、スチレンの比率30重量%
G1654X: クレイトンG1654X(クレイトンポリマー社製)、SEBS、スチレンの比率31重量%
G1701: クレイトンG1701(クレイトンポリマー社製)、SEP、スチレンの比率37重量%
G1726: クレイトンG1726(クレイトンポリマー社製)、SEBS、スチレンの比率30重量%
FG1901X: クレイトンFG1901X(クレイトンポリマー社製)、SEBS、スチレンの比率30重量%
3450: クインタック3450(日本ゼオン社製)、SIS、スチレンの比率19重量%
【0070】
表1の中の鉱物油軟化剤(B)の略号を以下に示す。
PW−90: PW−90(出光興産社製)、パラフィン系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン71重量%、ナフテン環29重量%
PW−380: PW−380(出光興産社製)、パラフィン系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン73重量%、ナフテン環27重量%
NP−24: NP−24(出光興産社製)、ナフテン系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン41.7重量%、ナフテン環46重量%、芳香族環12.3重量%
NR−26: NR−26(出光興産社製)、ナフテン系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン40.9重量%、ナフテン環47.6重量%、芳香族環11.5重量%
NR−68: NR−68(出光興産社製)、ナフテン系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン44重量%、ナフテン環44重量%、芳香族環12重量%
NS−90S: NS−90S(出光興産社製)、ナフテン系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン52重量%、ナフテン環42.8重量%、芳香族環5.2重量%
NS−100: NS−100(出光興産社製)、ナフテン系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン56.5重量%、ナフテン環39.7重量%、芳香族環3.8重量%
NM−280: NM−280(出光興産社製)、ナフテン系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン49.2重量%、ナフテン環38.7重量%、芳香族環12.1重量%
AC−12: AC−12(出光興産社製)、芳香族系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン28.6重量%、ナフテン環36.2重量%、芳香族環35.2重量%
AC−460: AC−460(出光興産社製)、芳香族系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン28.4重量%、ナフテン環20.5重量%、芳香族環51.1重量%
AH−16: AH−16(出光興産社製)、芳香族系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン31.0重量%、ナフテン環24.3重量%、芳香族環44.7重量%
AH−24: AH−24(出光興産社製)、芳香族系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン24重量%、ナフテン環33重量%、芳香族環43重量%
AH−58: AH−58(出光興産社製)、芳香族系鉱物油軟化剤、炭素原子数20個以上のアルカン31.5重量%、ナフテン環25.5重量%、芳香族環43重量%
【0071】
表1の中の酸化防止剤(C)の略号を以下に示す。
IRGANOX 1010: ペンタエリストールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ジャパン製)
IRGAFOS 168: トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバ・ジャパン製)
【0072】
表1の中の添加剤の略号を以下に示す。
アルコンP−100: アルコンP−100(荒川化学工業社製)、水添石油系粘着付与樹脂、軟化点100℃
アルコンP−115: アルコンP−115(荒川化学工業社製)、水添石油系粘着付与樹脂、軟化点115℃
クリアロンP−115: クリアロンP−115(ヤスハラケミカル社製)、水添テルペン系粘着付与樹脂、軟化点115℃
KBE−403: 3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
TDI−TMP: トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
【0073】
【表2】

【0074】
[剥離力の測定方法]
長さ10cm、幅25mmに切り取った積層体を用意し、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、2kgのゴムローラを1往復させることでアクリル板に積層体を圧着した。23℃、相対湿度65%雰囲気下に24時間静置後、引張試験機にて、速度300mm/分で、積層体を180°方向に引っ張ってアクリル板から剥離させた時の強度を測定した。
〔判定基準〕
○:0.2N/25mm幅以上〜0.8N/25mm幅未満
△:0.1N/25mm幅以上〜0.2N/25mm幅未満、0.8N/25mm幅以上〜2N/25mm幅未満
×:0.1N/25mm幅未満、2N/26mm幅以上
【0075】
[耐熱剥離力の測定方法]
長さ10cm、幅25mmに切り取った積層体を用意し、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、2kgのゴムローラを1往復させることでアクリル板に積層体を圧着した。60℃雰囲気下に24時間静置し、23℃、相対湿度65%雰囲気下に1時間静置した後、引張試験機にて、速度300mm/分で、積層体を180°方向に引っ張ってアクリル板から剥離させた時の強度を測定した。
〔判定基準〕
○:0.4N/25mm幅以上〜1.2N/25mm幅未満
△:0.1N/25mm幅以上〜0.4N/25mm幅未満、1.2N/25mm幅以上〜2.5N/25mm幅未満
×:0.1N/25mm幅未満、2.5N/25mm幅以上
【0076】
[被着体汚染]
長さ10cm、幅50mmに切り取った積層体を用意し、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、2kgのゴムローラを1往復させることでガラス板に積層体を圧着した。45℃、相対湿度95%雰囲気下に500時間静置し、23℃、相対湿度65%雰囲気下に1時間静置した後、ガラス板から積層体を剥離し、ガラス表面を目視にて確認し、以下のように評価した。
〔判定基準〕
◎:ガラス板の表面に感圧接着剤は全く確認出来なかった。
○:ガラス板の表面にうっすら感圧接着剤が残っていたがほとんど目立たなかった。
△:ガラス板の表面にうっすら感圧接着剤が残っており、明らかに確認できた。
×:ガラス板の表面に部分的に感圧接着剤の残りが認められた。
【0077】
[凹凸追従性]
長さ15cm、幅8cmに切り取った積層体を用意し、表面粗さRa値が1μm及び5μm(小坂研究所社製三次元微細形状測定器ET−30HK、触針先端R=2μR)であるアクリル板に、積層体を貼り合せた際の様子を目視にて確認し、以下のように評価した。
〔判定基準〕
◎:凹凸面に貼り合せる際に、感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入することなく滑らかに貼付された(拡張濡れ)。
○:凹凸面に貼り合せる際に、感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入することもあるが、一度剥離して注意深く再度貼り合せれば感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入することなく貼付された(拡張濡れ)。
△:凹凸面に貼り合せる際に、感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入するが、ローラーで加重することにより感圧接着剤層と被着体の界面に空気が混入することなく貼付された(圧着濡れ)。
×:凹凸面に貼り合せる際に、ローラーで加重貼付しても感圧接着剤層と被着体の界面の空気が抜け切らなかった。
【0078】
[フィッシュアイ]
長さ15cm、幅8cmに切り取った積層体を用意し、平均粒系が5μmのアクリル微粒子をアクリル板に1〜3個/cmになるように置き、積層体を貼り合せ、フィッシュアイの有無を目視にて確認し、以下のように評価した。
〔判定基準〕
◎:微粒子を中心として空気層がある円形のフィッシュアイが全くない。
○:微粒子を中心として空気層がある円形のフィッシュアイがほとんどない。
△:微粒子を中心として空気層がある円形のフィッシュアイが全体の半分程度ある。
×:微粒子を中心として空気層がある円形のフィッシュアイが全体的にある。
【0079】
[加熱後の外観(黄変調査)]
製造例1〜61で作製した感圧接着剤をスチレン缶に100部取り、密封した。170℃雰囲気下に72時間静置し、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で1時間静置した後、目視にて外観を確認した。評価基準は以下の通りである。また、製造例62、63、64で作製した感圧接着剤の溶液は溶剤を除去した後、スチレン缶に100部取り、上記試験と同様の方法で外観確認した。
〔判定基準〕
◎:ほとんど着色していない。
○:やや黄色味かかっているが使用可能である。
△:黄色味かかっているが、着色した樹脂であれば使用できる。
×:褐色になっていて使用できない。
【0080】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したとおり、本発明の感圧接着剤により、樹脂フィルム等に対して良好な接着性及び剥離性を有し、溶剤などを使用しないため環境への負荷も少ない表面保護フィルムを作製することが出来る。その例として、剥離力、耐熱剥離力、被着体汚染、凹凸追従性、フィッシュアイ、加熱後の外観が挙げられる。近年の環境への取り組みを考えると、要求特性はますます厳しくなっていくものと考えられる。そこで、本発明の感圧接着剤は、上記の特性を発揮できるため、さらに有用になると考えられる。
また、本発明の感圧接着剤は、一般ラベル、シールの他、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着付与樹脂、接着剤、積層構造体用接着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング用等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート接着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、また、各種樹脂添加剤及びその原料等としても非常に有用に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系ブロック共重合体(A)、鉱物油軟化剤(B)、および酸化防止剤(C)からなる、軟化点が80〜150℃の範囲である感圧接着剤(D)であって、
スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン系ブロック共重合体全体に対してスチレンの比率が10〜40重量%であり、
鉱物油軟化剤(B)は、ナフテン環と炭素原子数20個以上のアルカンとを含み、かつ、鉱物油軟化剤全体に対して炭素原子数20個以上のアルカンの比率が55重量%以上であり、
スチレン系ブロック共重合体(A)5〜50重量部、鉱物油軟化剤(B)50〜95重量部を合計100重量部になるように配合したものであって、
酸化防止剤(C)は、スチレン系ブロック共重合体(A)と鉱物油軟化剤(B)との合計100重量部に対して0.05〜10重量部を含むことを特徴とする感圧接着剤(D)。
【請求項2】
酸化防止剤(C)が、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1記載の感圧接着剤(D)。
【請求項3】
請求項1または2記載の感圧接着剤(D)から形成される感圧接着剤層が、フィルム状基材の片面もしくは両面に積層されてなる表面保護フィルム。
【請求項4】
感圧接着剤層の厚さが、1〜500μmであることを特徴とする請求項3記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2010−90352(P2010−90352A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282459(P2008−282459)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】