説明

感染性病原体又は毒素に関連する疾患のためのワクチンアジュバントとしての細胞外マトリックス物質

破傷風などの感染性病原体に関連する感染及び疾患並びに生物毒素に関連する疾患の治療及び/又は予防に有用なワクチン及びワクチンアジュバントを開示する。アジュバント及び前記アジュバントを含有するワクチンの製造方法も提供する。破傷風などの感染性病原体に関連する感染及び疾患並びに生物毒素に関連する他の疾患に対して動物をワクチン接種/免疫するための方法も提供する。細胞外マトリックス物質から調製されるアジュバント物質が提供される。前記アジュバント物質は、興味のある感染性病原体抗原又は生物毒素抗原の免疫原性を向上し、並びに免疫した動物の生存率を向上させることを実証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年1月30日に出願の「感染性病原体又は毒素に関連する疾患のためのワクチンアジュバントとしての細胞外マトリックス癌物質」と題する同時継続中の米国特許出願第11/699,448号を参照する。上記出願の開示及び内容の全体を参照することによって、本明細書に含める。
【0002】
37 C.F.Rセクション1.71(g)(1)に従って、本発明が為される以前に有効であった35 U.S.C.103(c)(3)に規定の共同研究契約に従い、ノートルダム大学及びCook Biotech, Inc.(West Lafayette,IN.)によって共同研究契約の範囲内における活動の結果として、本発明は為された。
【0003】
本発明は、一般的に、アジュバントを含むワクチン及び単独のアジュバントに関する。特に、本発明は、少なくとも生物学的組織に由来する一部分、例えば、細胞外マトリックス、特に小腸組織(SIS)に由来するか又はそこから得られるアジュバントに関する。本発明は、組織由来のアジュバントを含むワクチン調製物を用いる、感染性病原体に関連する疾患及び前記病原体による感染又は毒素に対する動物の免疫方法の分野にも関する。本発明はアジュバントの調製方法の分野にも関連し、感染体に関連する疾患に対して動物を免疫するためのワクチンの一部、特に、破傷風の治療及び/又は予防のためのワクチンとして破傷風に対して使用する小腸組織に由来するアジュバントを調製するための方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム(alumと総称する)は、ヒト及び動物のワクチンにおけるアジュバントとして従来使用されている(1)。ジフテリア及び破傷風毒素に対する抗体反応を増大するというalumの効力は良く確立されており(2)、B型肝炎ウイルス抗原ワクチンはalumをアジュバントとしている(3)。alumの有用性は複数の用途のために良く確立されているが、限定的である。例えば、alumはTh1細胞性免疫反応の弱い誘導因子であり、Th2細胞免疫応答に従う抗体産生を刺激する(4−6)。残念なことに、Th2に基づく免疫反応は、結核症(TB)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びC型肝炎ウイルス(HCV)を含む複数の重要な感染性疾患に対する最適な防御を提供しないようである。Alumはインフルエンザワクチンには効力が乏しく、細胞性免疫反応を一貫性無く誘導する。alumをアジュバントとする抗原によって誘導された抗体は、マウスにおいて主にIgG1アイソトープであり、幾つかのワクチン剤による保護に最適である可能性がある。
【0005】
破傷風は、痛み、制御不能な筋肉の痙攣、及び呼吸筋の麻痺による死亡によって特徴付けられる重要なヒト及び動物の疾患である。この疾患は、破傷風菌による感染と関連し、予防接種が一般的である。破傷風ワクチンは、典型的にはアジュバントとしてalumを用いる。
【0006】
感染体及び毒素と関連する疾患の治療及び予防の現存する臨床的な別の方法を向上及び/又は改善する、例えば、破傷風治療用ワクチンの現存する形態を改善するために使用して良い物質及び改善された免疫原性を有する破傷風ワクチンアジュバントについて、医療分野では継続的に必要とされている。
【特許文献1】米国特許出願第11/699,448号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、部分的には、細胞外マトリックス物質(ECM)調製物、例えば、小腸粘膜下層から単離されたマトリックスによって引き起こされる強力な免疫反応を本発明者が見出したことによって作り出された。いずれかの特定の作用のメカニズムに限定することを意図しないが、細胞外マトリックス物質は、とりわけ、共投与する抗原種に対する免疫反応を引き起こす炎症誘発種に対する寄与を通じて強力な免疫応答を提供するようである。本発明は、免疫増強感染体ワクチン調製物及び感染体アジュバントの設計において、ECM、例えば、SIS及びECMの他の形態の調製物の炎症誘導活性を利用する。
【0008】
ECM及びそれに類する物質を使用する感染体ワクチン調製物の作製は、多数の異なる感染性病原体又は生物毒素と組み合わせて使用して良い。例としては、ある実施態様において、前記生物毒素は破傷風毒素である。更なる例としては、ある実施態様において、前記生物毒素はリシンである。
【0009】
本発明は、とりわけ、ワクチンを提供するための三次元細胞外マトリックス物質の修飾及び使用並びにその修飾した調製物を含む点で独特である。例としては、ある実施態様では、前記ワクチンは破傷風ワクチンである。本発明は、かくして、ある実施態様では、許容される生物適合性を有するアジュバント物質と共に非常に改善された感染体調製物を提供する。
【0010】
ECM、例えば、SISアジュバント調製物のアジュバント効果は、感染体又は生物毒素と関連する疾患に対する保護のために投与されるワクチンにまで及ぶ。ある実施態様では、本発明は、SISゲル又はSIS粒子を含むアジュバントを提供する。破傷風トキソイドと共に投与すると、これらの調製物は、破傷風毒素に曝露される動物に対してin vivoにおいて防御免疫を与える。
【課題を解決するための手段】
【0011】
感染体アジュバント
1つの態様では、本発明は、細胞外マトリックス物質(ECM)、例えばSISの修飾された調製物を、感染体ワクチンアジュバントとして提供する。ある実施態様では、これらの調製物は、alumを本質的に含まないものとして記載されて良い。ある実施態様では、ECM物質は、約2倍から約20倍の(希釈された)SISの修飾された調製物として記載されて良い。
【0012】
感染体ワクチン
他の態様では、本発明は、感染性病原体の抗原の調製と共に細胞外マトリックス物質の調製を含む感染体ワクチンを提供する。
【0013】
本発明の1つの態様では、細胞外マトリックス物質(ECM)に特有の免疫原性向上調製物、特に小腸粘膜(SIS)又は腎被膜物質(RCM)に由来する細胞外マトリックスを含む調製物を含むアジュバント組成物を提供する。特定の実施態様では、前記アジュバント組成物は、小腸粘膜組織調製物を含む細胞外マトリックス物質を含む。ある実施態様では、前記アジュバント組成物は、1部の細胞外マトリックス物質(ECM)と9部の製薬学的に許容される担体溶液とを含む。例としては、その様な担体は滅菌生理食塩水である。
【0014】
他の態様によれば、興味のある抗原とアジュバントとを含む組成物が提供される。ある実施態様では、前記抗原はトキソイド抗原である。ある実施態様では、前記ワクチンは、破傷風ワクチン、インフルエンザワクチン、狂犬病ワクチン、ウイルス性肝炎ワクチン、ジフテリアワクチン、炭疽ワクチン、肺炎連鎖球菌感染ワクチン、マラリアワクチン、リーシュマニア症ワクチン、又はブドウ球菌エンテロトキシンワクチンのような、感染性病原体に対して防御するためのワクチンとして記載されて良い。
【0015】
生物毒素
本発明のワクチンの調製に使用して良い生物毒素の例は、以下:
アブリン
アフラトキシン
ボツリヌストキシン
クロストリジウム・パーフリンジェンスεトキシン
コノトキシン
ジアセトキシスシルペノール
リシン
サキシトキシン
シガトキシン
ブドウ球菌エンテロトキシン
テトロドトキシン
T−2トキシン
ジフテリアトキシン
連鎖球菌毒素
コレラトキシン
百日咳ワクチン
肺炎球菌溶血素
である。
【0016】
特定の実施態様では、前記ワクチンは、リシンなどの生物毒素と関連する疾患に対して防御するためのワクチンとして記載されて良い。
【0017】
プリオン関連疾患
ある実施態様では、本発明は、プリオン関連疾患と組み合わせた使用に適切であるアジュバント調製物を提供する。例としては、その様なプリオン関連疾患は、感染性海綿状脳症、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、シカ慢性消耗病、及びクロイツフェルトヤコブ病として分類される全ての疾患を含む。
【0018】
他の実施態様では、本発明は、ウイルス感染に関連する疾患に対して防御するためのワクチンを提供するものとして記載されて良い。例としては、本発明のワクチンを調製して、インフルエンザ、狂犬病、及びウイルス性肝炎と関連するウイルス疾患の治療及び/又は予防において有用な組成物を提供して良い。
【0019】
他の実施態様では、本発明は、細菌感染と関連する疾患に対して防御するためのワクチンを提供するものとして記載されて良い。例としては、本発明のワクチンを調製して、ジフテリア、炭疽、敗血症、肺炎、中耳炎、及び髄膜炎などの疾患と関連する細菌感染の治療及び/又は予防に有用な組成物を提供して良い。
【0020】
他の実施態様では、本発明は、寄生虫感染と関連する疾患に対して防御するためのワクチンを提供するものとして記載されて良い。例としては、本発明のワクチンを調製して、マラリア及びリーシュマニア症と関連する寄生虫感染の治療及び/又は予防に有用な組成物を提供して良い。
【0021】
他の実施態様では、本発明は、生物毒素に対する曝露と関連する病気及び/又は疾患に対して防御するためのワクチンを提供するものとして記載されて良い。例としては、本発明のワクチンを調製して、(呼吸困難を引き起こす)リシンなどの生物毒素に対する曝露又は(食中毒の結果として)ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)に対する曝露と関連する病気の治療及び/又は予防に有用な組成物を提供して良い。
【0022】
アジュバント及びワクチンの調製方法
他の態様では、本発明は、感染体ワクチンの調製方法を提供する。ある実施態様では、前記方法は、本明細書に記載の感染体及び生物毒素に対するワクチン接種のためのアジュバントを調製する工程、及び該アジュバントを興味のある免疫抗原と組み合わせる工程を含む。ある実施態様では、前記興味のある抗原は、破傷風トキソイド調製物である。
【0023】
感染性病原体に対して動物を予防、治療、抑制、及び/又は免疫する方法
本発明の更なる他の広範な態様によれば、感染症を有するか又は感染性病原体に対する曝露と関連する疾患又は病気に罹るリスクを有する動物を治療する方法を提供する。例としては、感染性病原体に対する曝露と関連する疾患は、破傷風、マラリア、ジフテリア、炭疽、敗血症、肺炎、中耳炎、及び髄膜炎を含む。ある実施態様では、本発明は、破傷風に対して動物を免疫する方法を提供する。更なる他の実施態様では、本発明は、破傷風の重症度を抑制し、及び/又は破傷風の発症を完全に予防するための方法を提供する。
【0024】
臨床的な感染性病原体の治療用調製物
更なる他の態様では、本発明は、各種の独特な感染性病原体の治療用調製物を提供する。これらの感染体の治療用調製物は、興味のある適当な抗原と組み合わせたゲル、シート、又は非経口投与に適切な注射可能な調製物の形態であって良い。
【0025】
以下の略語:
ECM − 細胞外マトリックス;
HCV − C型肝炎ウイルス;
HIV − ヒト免疫不全ウイルス;
RCM − 腎被膜物質;
SIS − 小腸粘膜下層
TB − 結核症
を本発明の説明全体に亘って使用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を説明する前に、幾つかの用語を定義することが有益である。以下の定義は本願の全体に亘って使用されると理解されるべきである。
【0027】
定義
用語の定義が該用語の一般的に使用される意味から逸脱する場合には、出願人は、特に示さない限り、以下に与える定義を利用することを意図する。
【0028】
本発明では、用語「アジュバント」は、抗原に対する免疫反応を促進する物質として定義する。
【0029】
本発明では、用語「アジュバンシー」は、特定の抗原に対する動物の免疫反応を促進及び/又は向上させる薬剤の能力として定義する。
【0030】
本発明では、用語「生合成物質」は、全体的又は部分的に、生物学的組織から製造するか又は生物学的組織に由来する物質として定義する。
【0031】
本発明では、用語「生物学的組織」は、ヒトを含む動物組織、又は生体組織又は器官の一部であるか又は一部(例えば、死体の組織)であったプラント組織として定義する。
【0032】
本発明では、用語「細胞外マトリックス」は、細胞又は細胞培養物の増殖を支持し得る組織由来物質又は生合成物質として定義する。
【0033】
本発明では、用語「感染体」は、毒素の生産などの物質の感染又は分泌の後にヒト又は動物における疾患を引き起こし得る任意の細菌、ウイルス、プリオン、又は寄生虫病原体として定義する。当該用語は、その様な病原体の毒素の生産も含む。例としては、その様な感染体は、破傷風の病原体であるボツリヌス菌を含む。
【0034】
本発明では、用語「生物毒素」は、生細胞又は生物によって生産され、体組織に導入されると疾患を引き起こし得る毒性物質、特にタンパク質、例えば、ブドウ球菌エンテロトキシンB及び破傷風毒素である。
【0035】
本発明では、用語「免疫原量」は、興味のある感染性病原体である抗原調製物の量又は動物において臨床的に検出可能な防御反応を誘導する生物毒素の量である。例としては、動物における臨床的に検出可能な防御反応は、感染性病原体抗原又は生物毒素に特異的な動物における抗体の力価の上昇の提示であって良い。
【0036】
感染性病原体に対する抑制及び防御のための活性が向上した調製物を提供する方法を提供する。特定の実施態様では、前記感染性病原体は破傷風である。
【0037】
感染性病原体によって生じる感染の治療及び/又は抑制のための方法も提供する。ある実施態様では、前記方法は、感染性病原体又は生物毒素と関連する抗原と共に、細胞外マトリックス物質(ECM)の幾つかの炎症誘発種の特性を有するアジュバントを含むワクチンを含む組成物を利用する。これらの調製物は、感染性病原体又は生物毒素、例えば、破傷風に対する治療及び/又は予防において、感染性病原体抗原又は生物毒素抗原ワクチンを単独で用いるよりも免疫原性であることが認められる。
【0038】
前記破傷風ワクチンの免疫反応は、アジュバントとしてSISを用いることによって向上する。
【0039】
本発明の説明を、以下の各種の実施例によって増強する。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
感染性病原体と関連する疾患に対するワクチンのためのアジュバントとしてのECMのための物質及び方法
本実施例は、本発明の実施において使用して良い物質及び方法の幾つかの例を提供する。
【0041】
小腸粘膜下層(SIS)
小腸粘膜下層(SIS)は、Cook Biotech,Inc.(West Lafayette,IN)から得られる。実験等級の物質が、ブタの空腸を採取し、10から20cmの長さを生理食塩水溶液に入れることによって調製されたと記載されたSIS調製物の本実験における使用のために提供された(31−33)。全ての腸間膜組織を除去した後に、空腸断片を裏返して、外科用メスの柄と湿らせたガーゼとを用いて縦に拭き取る動作で粘膜をすり減らした。漿膜及び被膜筋層を、次いで、同じ手法を用いて除去した。残存する組織を過酢酸で殺菌して、高純水中で広範に亘ってすすぎ、エチレンオキシドを用いて滅菌した。SIS粒子は、Cook Biotech,Inc(West Lafayette,IN)によって提供され、粉末にして篩にかけたSISである。粒径は、45ミクロンから335ミクロンの範囲内である。SISゲルは、Cook Biotech,Inc(West Lafayette,IN)によって提供され、酸消化及び精製工程を経てSIS物質から製造される。
【0042】
破傷風毒素及び破傷風トキソイド
破傷風毒素及び破傷風トキソイドは、List Biolagical Laboratories(Campbell,CA)から購入した。
【0043】
Alum
Alumは、水酸化アルミニウムゲルアジュバント(Brenntak Biosector,Frederikssund,Denmark)であるAlhydrogel(商標)として購入した。
【0044】
動物(マウス)−統計分析
破傷風毒素の曝露後の生存に対する非生存の結果は、自由度2でカイ二乗試験を用いて群の間で比較した。p≦0.001の際に、差が有意であると解した。
【0045】
(実施例2)
破傷風の抑制におけるアジュバントの使用
感染性病原体又は生物毒素に関連する疾患に対するワクチンのためのアジュバントとしてSISが働くかどうか決定するために、破傷風毒素の不活化形態である破傷風トキソイドと共に調製物を製造した。単層SISのシートから製造されたSISゲル及びSIS粒子の双方をアジュバントとして評価した。簡単に言うと、15匹のBalb/Cメスマウス(Harlan,Inc.,Indianapolis,IN)の群をまずワクチン接種(0.1ml容量/1投与)し、5週間後に再び以下:
SIS粒子;
SISゲル;
破傷風トキソイド(TT;0.03μg/1投与);
TT(0.05μg/1投与);
TT(0.03μg/1投与)+alum(alhydrogel);
TT(0.05μg/1投与)+alum(alhydrogel);
TT(0.03μg/1投与)+SIS粒子;
TT(0.05μg/1投与)+SIS粒子;
TT(0.03μg/1投与)+SISゲル;
TT(0.05μg/1投与)+SISゲル;及び
未処理の対照群
の1つを用いてワクチン接種した。
【0046】
二回目のワクチン接種の5週後に、0.2mlの生理食塩水中の致死用量の破傷風毒素(1ng/1匹のマウス)をマウスの腹腔内に曝露した。次いで、その後96時間に亘ってマウスを観察し、生存マウスの数を各群について記録した。
【0047】
当該試験の結果は以下である。
【0048】
【表1】

【0049】
alhydrogel、SISゲル、又はSIS粒子中で0.03又は0.05μg/1投与の破傷風トキソイドのいずれかを用いてワクチン接種した群は、他の全ての群と比較して、有意に大きい数のマウスが破傷風トキソイドに曝露後に生存した。
【0050】
これらの結果は、破傷風などの感染性病原体と関連する疾患に対するワクチンのためのアジュバントとして働くSISゲル及びSIS粒子の双方の機能を実証する。
【0051】
(実施例3)
感染性病原体の例
本実施例は、広範な感染性病原体及び生物毒素に関連する疾患に関しての本発明の有用性は、破傷風、インフルエンザ、狂犬病、ウイルス性肝炎、ジフテリア、炭疽、肺炎連鎖球菌感染、マラリア、リーシュマニア症、リシン中毒、及びブドウ球菌エンテロトキシンB中毒を含むが、それらに限らない。
【0052】
【表2】

【0053】
ウイルス感染と関連する疾患のためのワクチン
1.インフルエンザ
インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染による急性の熱性呼吸器疾患である。現在のインフルエンザワクチンは、アルミニウムアジュバントを使用する。ワクチンの効力を向上させるために、複数のアジュバントが試験されている。例えば、水中型エマルションMF59は、ワクチン免疫を改善すると報告されているが(Higgins(1996);Martin(1997))、高齢者におけるインフルエンザワクチンの低い効力を完全には解決していない(Banzhoff(2003))。Taenia crassiceps cysticerci由来の合成ペプチドであるGK1は、若いマウスと年をとったマウスの双方においてインフルエンザワクチン接種に伴う免疫反応を向上させると報告されているが(Segura−Velasquez(2006))、ヒトにおける試験は報告されていない。
【0054】
本発明の一部として、免疫学的に有効量のインフルエンザ抗原と組み合わせて、ワクチンアジュバントとして本明細書に記載の細胞外マトリックス物質を含む、インフルエンザワクチンを提供する。例としては、その様なインフルエンザ抗原は、H5N1(ヘマグルチニン[HA]サブタイプ1;ノイラミニダーゼ[NA]サブタイプ1)およびH3N2型インフルエンザAウイルス及びインフルエンザBウイルスの抗原の現在のインフルエンザウイルスの組み合わせを含んで良い。この調製物と他のインフルエンザ抗原調製物はPalese(2006)33に開示されている。この文献及びその教示の全ては、参照によって本明細書に取り込む。
【0055】
2.狂犬病
狂犬病は、狂犬病ウイルスの感染によって生じる神経を破壊する疾患である。狂犬病に対するワクチン接種は、典型的には、不活化ウイルス及びアルミニウムアジュバントを利用する。スクアレンに基づく水中油型タイプのリポイドアジュバントは、アルミニウム塩アジュバントを使用するワクチン接種と比較して、不活化ウイルスワクチンを用いたワクチン接種に対するマウスの免疫反応を有意に増大した(Suli,2004)。Mycobacterium cheloniaeから抽出される糖ペプチド脂質に基づくアジュバントは、不活化狂犬病ウイルスワクチンを用いたワクチン接種に対するマウスの免疫反応を向上した(de Souza Matos(2000))。
【0056】
本発明の一部として、免疫学的に有効量の狂犬病ウイルスと組み合わせて、ワクチンアジュバントとして細胞外マトリックス物質を含む、狂犬病ウイルスを提供して良い。例としては、狂犬病抗原は、不活化狂犬病ウイルスを含んで良い。本発明の製剤において使用して良い不活化狂犬病ウイルスワクチン抗原の1つの例は、Souza Matos(2000)に開示されている。
【0057】
3.ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎、特にB型肝炎ウイルスによって生じるウイルス性肝炎は、世界中で300百万人に影響を与えている重要な健康問題である。ワクチン接種は、効果的な予防方法の希望を与える。ウイルスのペプチドエピトープは、アジュバントとしてMycobacterium tuberculosisに由来するヒートショックプロテイン70と融合させた際に、有意な免疫反応を刺激した(Peng(2006))。メチル化していないCpGジヌクレオチドは、年をとったマウスにおいてB型肝炎抗原とのアジュバントとして有効であった(Qin(2004))。B型肝炎ウイルス抗原からなるワクチン及び免疫刺激性DNA配列は、ヒトにおける臨床試験中である(Sung(2006))。鼻腔内ワクチンの開発において、DL−ラクチド/グリコリドコポリマーミクロスフェアがキトサンと共に、組換えB型肝炎表面タンパク質に基づくワクチンのための有効なアジュバントであった(Jaganathan(2006)10)。
【0058】
本発明の一部として、免疫学的に有効量の肝炎ウイルス抗原と組み合わせて、ワクチンアジュバントとして細胞外マトリックス物質を含む、肝炎ウイルスワクチンが提供されて良い。例としては、その様な肝炎抗原は、組換えB型肝炎表面抗原を含んで良い。例としては、その様なB型肝炎表面タンパク質抗原はJaganathan,(2006)10に開示されており、参照によって本明細書に組み込む。
【0059】
細菌感染に関連する疾患のためのワクチン
1.ジフテリア
dysnepea、衰弱、及び発熱によって特徴付けられる呼吸器疾患であるジフテリアは、身体中に血液によって運ばれる毒素を生産するバクテリアであるジフテリア菌の感染の結果である。ジフテリアに対する免疫は、破傷風及び百日咳に対する免疫と頻繁に組み合わされる。これらのワクチンは、アルミニウム塩アジュバントを典型的に含有する(Sugai(2005)11)。非メチル化CpGジヌクレオチドは、ジフテリア−破傷風−百日咳ワクチンにおけるアジュバントとして有効であり、腹腔に免疫されたマウスにおいて免疫反応を細胞性免疫に変化させる(Sugai(2005)11)。ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、及び百日咳トキソイドを含む精製百日咳菌抗原からなるワクチンのアルミニウム塩アジュバントと関連する副作用を低減する試みが、ワクチンのアルミニウム塩含量の低減が、関連抗原に対して幾何平均抗体濃度の低減を生じさせるが、局所的又は一般的な副作用の低減を生じさせないことを示した(Theeten(2005)12)。モノホスホリル脂質Aは、マウスにおけるジフテリアトキシンのためのアジュバントとして効果的に役に立つことが示されている(Caglar(2005)13)。
【0060】
本発明の一部として、免疫学的に有効量のジフテリア抗原と組み合わせて、ワクチンアジュバントとして細胞外マトリックスを含む、ジフテリアワクチンが提供されて良い。例としては、ジフテリア抗原はジフテリアトキソイドを含んで良い。本発明の実施において使用して良いジフテリアトキソイドの一例はTheeten(2005)12に開示されている。
【0061】
2.炭疽
炭疽は、細菌である炭疽菌によって生じる疾患である。具体的には、前記細菌は、リンパ節の出血性壊死、血液による拡散、ショック、及び死亡を生じさせる毒素を生産する。この毒素の1つのサブユニット(防御抗原)からなるワクチンは、筋肉内又は鼻腔内の経路のいずれかによって投与される微粒子アジュバントと組み合わせた際に、マウスを防御することが示されている(Flick−Smith(2002)14)。さらに、ワクチン接種は、炭疽菌の胞子による感染に対してもマウスを防御した。アルミニウム塩をアジュバントとする炭疽−ワクチン−吸収は、米国で認可された唯一の炭疽ワクチンであり、非常に長期に亘る複雑な投与計画に続く一年毎のブースター注射を含む主な欠点が存在する。さらに、炭疽ワクチンのアルミニウムアジュバントは、1991年の紛争の退役軍人の湾岸戦争症候群と関連する(Petrik(2007)15)。
【0062】
本発明の一部として、免疫学的に有効量の炭疽抗原と組み合わせて、ワクチンアジュバントとして細胞外マトリックス物質を含む、炭疽ワクチンが提供されて良い。例としては、その様な炭疽抗原は、炭疽菌の1つのサブユニット(防御抗原)を含んで良い。1つのその様な特定の抗原サブユニットは、Flick−Smith(2002)14に開示されている。
【0063】
3.肺炎連鎖球菌
高齢者及び若年成人に特に重要な細菌性病原体である肺連連鎖球菌は、敗血症及び肺炎、耳炎、並びに髄膜炎を含む疾患を引き起こす。ワクチンは、アルミニウム塩アジュバントへの肺炎連鎖球菌の吸着を典型的に含み、アルミニウム塩含量の低減が肺炎連鎖球菌ワクチンの免疫原性の低減を引き起こした(Levesque(2006)16)。ヒトの試験において、IL−12は肺炎球菌の多糖類ワクチンに対する免疫反応を改善することができず、IL−12がヒトにおける局所的及び全身の副作用の高い発生率と関連した(Hedlund(2002)17)。鼻腔内多糖類−タンパク質接合体ワクチンのための効果的なアジュバントとして非メチル化CpGジヌクレオチドを用いる肺炎連鎖球菌に対する鼻腔内免疫は、感染及び疾患の予防のための効果的な方法である事が示されている(Sen(2006)18)。同様に、IL−12及びコレラトキシンのBサブユニットの双方が、鼻腔内投与される肺炎連鎖球菌の調製物の効力を向上させることが示されている(Sabirov(2006)19;Pimenta(2006)20)。
【0064】
本発明の一部として、免疫学的に有効量の肺炎球菌と組み合わせて、ワクチンアジュバントとして本明細書に記載の細胞外マトリックス物質を含む、肺炎球菌ワクチンが提供されて良い。例としては、その様な肺炎球菌抗原は、肺炎球菌多糖類抗原を含んで良い。肺炎球菌多糖類抗原の1つの形態は、Hedlund(2002)17に開示されている。この肺炎球菌抗原は、ワクチン調製物において本明細書に記載のアジュバントとの組み合わせにおける一部として使用して良い。
【0065】
寄生虫感染に関連する疾患のためのワクチン
1.マラリア
マラリアは、世界中で数百万人の人々が感染しており、熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされる疾患により年に1〜2百万人が死亡している。かくして、予防方法が必要とされており、抗マラリアワクチンに大きな関心が集まっている。マラリアワクチンの候補である頂端膜抗原は、アルミニウム塩アジュバントAlhydrogel(HCI Biosector,Denmark)によって向上された免疫原性を有することが報告されており、CpGオリゴデオキシヌクオチド(Mullen(2006)21)アジュバントを含めることによって、アジュバントの効果が更に向上され、Th1反応からTh1/Th2の混合の反応に変化した。Alhydrogel及びMontanide ISA 720(Seppic,France)は、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイト周囲タンパク質に由来する防御エピトープに基づくワクチンのためのアジュバントとしてアカゲザルにおいて比較された。Montanide ISA 720は優れた免疫反応を誘導したが、注射部位における無菌性膿瘍の形成は有意な欠点として記録された(Langermans(2005)22)。アカゲザルにおいて実施されたスポロゾイト周囲タンパク質ワクチンを用いた他の試験は、幾つかの新規水中油型アジュバントが、3−脱アセチル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)及びサポニンQuillaja saponaria 21(QS21)の免疫刺激剤と共に、安全であり、且つ、改善された抗体反応を刺激したことを示した(Stewart(2006)23)。同じ水中油型アジュバントの幾つかが、熱帯熱マラリア原虫抗原であるLiver Stage Antigen−1の作製したワクチンに対する免疫反応を改善した(Brando(2006)24)。
【0066】
本発明の一部として、免疫学的に有効量のマラリア抗原と組み合わせて、ワクチンアジュバントとして細胞外マトリックス物質を含む、マラリアワクチンが提供されて良い。例としては、その様なマラリア抗原は熱帯熱マラリア原虫抗原Liver Stage Antigen−1を含んで良い。この抗原は、Brando(2006)24に詳細に開示されており、当該文献は参照によって本明細書に組み込む。この抗原は、本明細書に記載したような抗マラリアワクチンを提供するためのアジュバントとして本明細書に記載した細胞外マトリックス物質と組み合わせて良い。
【0067】
2.リーシュマニア症
リーシュマニア症は、リーシュマニア属に由来する寄生虫の種による感染と関連する寄生虫症である。皮膚病変から致死性の内臓の形態までの広範な臨床疾患の形態が感染によって生じる。効果的な非毒性の治療が存在しない状況下において、大きな努力がワクチン開発に向けられている。寄生虫のDNAに基づくワクチンは、部分的な防御を誘導することが示されており、リン酸アルミニウムアジュバントは当該ワクチンの液性反応に対する効果が無いが、マウスモデルにおける感染に対する細胞性免疫反応及び防御を僅かに増大させることが報告されている(Rosado−Vallado(2005)25)。アジュバントとしてIL−12と共にalum及び可溶性リーシュマニア症抗原を用いたアカゲザルの評価では、アジュバントが防御免疫を改善するが、皮下注射の部位で一過的な小節が発生することが示された(Kenney(1999)26)。CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、alumに結合させるか又はさせずに、生きている弱毒化森林型熱帯リーシュマニア単独又は熱殺菌された森林型熱帯リーシュマニアプロマスティゴートの溶解物との組み合わせからなるワクチンの効果的なアジュバントとして役立った(Mendez(2003)27)。部分的な防御免疫は刺激されるが、alum含有ワクチンを接種したマウスは、治癒までに10週まで必要とした大きな皮膚病変を生じた。
【0068】
本発明の一部として、免疫学的に有効量のリーシュマニア症抗原又は任意の他の上述の抗原種と組み合わせて、ワクチンアジュバントとして細胞外マトリックスを含む、抗寄生虫感染関連疾患ワクチンが提供されて良い。例としては、リーシュマニア症抗原は、Kenny(1999)26に詳細に開示されているリーシュマニア症抗原を含んで良く、当該文献は参照によって具体的に本明細書に含める。
【0069】
生物毒素と関連する疾患のためのワクチン
1.リシン
リシンは、キャスタービーン植物であるトウゴマの種子によって天然に生産されている毒素である。ヒト及び動物が前記毒素に曝露されると、重度な呼吸困難及び死がもたらされる。エアロゾル、経口摂取、又は注射によって投与される効力及び能力のために、リシンは強力な生物兵器であると解されている。リシンのための改善された市販のワクチンが現在では存在するが、ヒトにおける試験で、リシンのサブユニットの1つの組換えの非毒性形態の使用を試験している(Vitetta(2006)28)。この調製物はアジュバントなしで投与され、その試験の幾つか、特に高用量においてリシン中和抗体を誘導した。しかしながら、全ての用量の群は、筋肉痛及び頭痛を含む有意な副作用を生じることが認められた。リポソームカプセル化によるアジュバントを用いたリシントキソイドは、アルミニウム塩アジュバントをアジュバントとして用いたワクチンよりも、気管内投与した際により強力な免疫反応を誘導することが認められた(Griffiths(1997)29)。脱グリコシル化鎖Aリシン(DCAR)及び大腸菌の易熱性エンテロトキシンの変異体であるアジュバントLTR72からなるワクチンは、ワクチン接種したマウスの強力なリシンに対する抗体反応を生じさせたが、リシンで曝露された際の肺損傷に対する改善された防御を生じさせなかった(Kende(2006)30)。
【0070】
本発明の一部として、免疫学的に有効量のリシントキソイド抗原と組み合わせて、本明細書に記載したようなワクチンアジュバントとして細胞外マトリックス物質を含む、抗リシンワクチンが提供されて良い。例としては、その様なリシントキソイド抗原は、Griffith(1997)29に詳細に開示されており、当該文献は参照によって具体的に本明細書に含める。
【0071】
2.ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)
SEBは、細菌である黄色ブドウ球菌によって生じ、食中毒と関連する。SEBトキソイドを生分解性ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)ミクロスフェアに含めることは,alumに吸着させ、フロイント完全アジュバントと組み合わせたSEBトキソイドと同程度にマウスの免疫反応を向上した。同様に、SEBトキソイドは、ポリ乳酸ポリグリコール酸コポリマーナノスフェアに含めることによって効果的にアジュバント化して、結果として得られた免疫反応が、アジュバントとしてalumを用いて達成した免疫反応に匹敵した(Desai(2000)32)。
【0072】
本発明の一部として、免疫学的に有効量のリシントキソイド又はSEBトキソイドなどの抗原と組み合わせて、ワクチンアジュバントとして細胞外マトリック物質を含む、抗毒素関連疾患ワクチンが提供されて良い。例としては、その様な抗原はVitetta(2006)28及びEldridge(1991)31に詳細に開示されており、その教示は参照によって具体的に本明細書に含める。
【0073】
プリオンと関連する疾患のためのワクチン
ある実施態様では、本発明は、プリオン関連疾患と組み合わせて使用するために適切なアジュバント調製物を提供する。例としては、その様なプリオン関連疾患は、感染性海綿状脳症、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、シカ慢性消耗病、及びクロイツフェルトヤコブ病として分類される全ての疾患を含む。
【0074】
プリオンは免疫及びリンパ網内系細胞を用いて、脳への進入を得ているが(Aguzzi,2003)36、液性免疫反応が感染を抑制することを示唆する証拠が存在する。特に、細胞性プリオンタンパク質(PrPc)に対する抗体は、プリオンの伝播を阻害することが既知である(Petetz,200137;Enari,200138)。今なお、内因性のPrPcに対する宿主の耐性は、活性ワクチン接種に対して主な障害として残っている。マウスでは、ペプチド及びポリペプチドなどの組換えPrPc抗原を用いたワクチン接種が、弱い免疫応答のみを刺激した。フロイント(Polymenidou, 200439;Koller, 200240;Sigurddson,200241;Gilch,200342;Hanan,200143;Hanan,200144;Souan,200145;Arbel,200346);Montanide IMS−1313 (Schwartz,200347);TiterMax(登録商標),ブロックコポリマーCRL−8941,スクアレン,代謝可能な油,及び独特な微粒子安定剤の組み合わせ(Gilch,200342);並びにCpGオリゴヌクレオチド(Rosset,200448)などのアジュバントとのプリオン抗原の共投与は共投与は強力な免疫応答を誘導することができなかった。
【0075】
細胞外マトリックス物質の本明細書に記載のアジュバント調製物は、プリオンタンパク質(PrPc)と共に使用して、プリオン関連感染に対する改善されたワクチンを提供され得ることが予想される。
【0076】
本願において参照した全ての文献、特許、論文、並びに他の資料は参照によって本明細書に含まれる。
【0077】
本発明は添付の図面を参照して幾つかの実施態様との組み合わせにおいて十分に記載しているが、各種の変形例及び修飾例が当業者には明らかであり得ると理解されるべきである。その様な変形例及び修飾例は、それらが添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内を逸脱しない限り、添付の特許請求の範囲に規定の本発明の範囲内に含まれると解されるべきである。
【0078】
[参考文献]



【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明のある実施態様による、外科的移植の28日後のラットにおけるSIS細胞外マトリックス物質の残留を表わす。残存する生体物質は、一時的なリンパ球と共にマクロファージで覆われている。H & Eで染色し、400倍で観察した。
【図2】図2は、本発明のある実施態様による、7日前にRCMで検出した、アキレス腱の修復が起こったラットにおける移植/腱表面の界面における単核球炎症の病巣を表わす。H & Eで染色し、200倍で観察した。
【図3】図3は、本発明のある実施態様による、1ng/マウスの破傷風毒素を腹腔内に曝露した後に、0.03μgの破傷風トキソイドでワクチン接種したマウスの生存データを表わす。処理した群は、未処理(なし);SISゲル(SG);SIS粒子(SP);破傷風トキソイド(TT);TTとalum(TT/Alum);TTとSISゲル(TT/SG);及びTTとSIS粒子(TT/SP)である。各群は15匹のマウスからなる。未処理であるか又はSISゲル若しくはSIS粒子のみでワクチン接種した全てのマウスは死亡し;アジュバントを用いずに破傷風トキソイドでワクチン接種した6匹のマウスが生存し、並びにalum、SISゲル、又はSIS粒子中の破傷風トキソイドでワクチン接種した全てのマウスは生存した。これは、全ての他の群と比較して後者の三つの群について生存するマウスの数における有意(P≦0.001)な増大を表わす。
【図4】図4は、本発明のある実施態様による、1ng/マウスの破傷風毒素を腹腔内に曝露した後に、0.05μgの破傷風トキソイドでワクチン接種したマウスの生存データを表わす。処理した群は、未処理(なし);SISゲル(SG);SIS粒子(SP);破傷風トキソイド(TT);TTとalum(TT/alum);TTとSISゲル(TT/SG);及びTTとSIS粒子(TT/SP)である。各群は15匹のマウスからなる。未処理又はSISゲル若しくはSIS粒子のみでワクチン接種した全てのマウスは死亡し;アジュバントを用いずに破傷風トキソイドでワクチン接種した8匹のマウスが生存し;並びにalum、SISゲル、又はSIS粒子中の破傷風トキソイドでワクチン接種した全てのマウスが生存した。これは、全ての他の群と比較して、後者の三つの群について生存マウスの数の有意(P≦0.001)な増大を表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外マトリックス物質を含む、感染性病原体又は生物毒素の免疫原性の向上において有用なアジュバント。
【請求項2】
前記ワクチンが、破傷風、インフルエンザ、狂犬病、ウイルス性肝炎、ジフテリア、炭疽、肺炎連鎖球菌感染、マラリア、リーシュマニア症、リシン中毒、プリオン、又はブドウ球菌エンテロトキシンB中毒のためのワクチンである、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項3】
前記ワクチンが破傷風のためのワクチンである、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項4】
興味のある感染性病原体抗原調製物の免疫原量;及び
感染性病原体ワクチンアジュバント
を含む、感染性病原体又は生物毒素ワクチンとして使用するために適切な組成物であって、
前記感染性病原体ワクチンアジュバントが細胞外マトリックス物質を含み、前記感染性病原体ワクチンアジュバントの存在下における前記興味のある感染性病原体抗原調製物の免疫原量が、前記感染性病原体ワクチンアジュバントの非存在下において検出可能な防御反応を誘導する前記興味のある感染性病原体抗原調製物の免疫原量よりも少ない、組成物。
【請求項5】
興味のある感染性病原体抗原調製物が敗血症トキソイドを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記感染性病原体ワクチンアジュバントが、小腸粘膜組織に由来する細胞外マトリックス物質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
興味のある感染性病原体抗原の免疫原性を向上させることができる細胞外マトリックス物質を含む感染性病原体ワクチンアジュバントを得る工程;
興味ある感染性病原体抗原の免疫原量と前記感染性病原体ワクチンアジュバントとを組み合わせる工程;
を含む方法によって、請求項4に記載の方法によって製造される組成物であって、
前記感染性病原体ワクチンアジュバントが細胞外マトリックス物質を含み、前記感染性病原体ワクチンアジュバントの存在下において防御反応を刺激するために十分な前記興味のある感染性病原体抗原の免疫原量が、前記感染性病原体ワクチンアジュバントの非存在下において防御反応を刺激するために十分な前記興味のある感染性病原体抗原の免疫原量よりも少ない、方法。
【請求項8】
破傷風ワクチンとして更に規定される、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞外マトリックス物質が腎被膜組織を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞外マトリックス物質が、小腸粘膜下層組織又は筋膜細胞外マトリックス物質を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
前記興味のある感染性病原体抗原調製物が、前記興味のある感染性病原体抗原又はその毒性生産物の不活化調製物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
前記生物毒素調製物が、興味のある生物毒素の不活化調製物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞外マトリックス物質が、小腸粘膜下層組織、腎被膜物質、又は筋膜細胞外マトリックス物質に由来する、請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
前記細胞外マトリックス物質が小腸粘膜下層組織由来である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞外マトリックス物質がブタの小腸粘膜下層組織由来である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記細胞外マトリックス物質アジュバントが、細胞外マトリックス物質(ECM)と製薬学的に許容される担体溶液とを1:10の比率で含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
興味のある感染性病原体に対して動物を免疫するための方法であって、
興味のある感染性病原体又は前記興味のある感染性病原体によって生産される毒性生産物についての前記動物における免疫反応を刺激するために十分な、興味のある感染性病原体抗原と感染性病原体ワクチンアジュバントとを含む組成物の免疫原量を投与する工程を含み、前記動物において免疫反応を刺激するために十分な前記組成物の免疫原量が、前記感染性病原体ワクチンアジュバントの非存在下において免疫反応を刺激するために十分な前記興味のある感染性病原体抗原の免疫原量よりも少ない、方法。
【請求項18】
興味のある前記感染性病原体抗原が破傷風トキソイド調製物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物の免疫原量が0.03μgから0.05μgの破傷風トキソイドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
免疫した動物が、免疫していない動物と比較して向上した生存率を有する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−516763(P2010−516763A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547231(P2009−547231)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/069727
【国際公開番号】WO2008/094276
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(506154719)ユニバーシティ オブ ノートル ダム (4)
【Fターム(参考)】