説明

感染症を治療するための方法

本発明は、細菌感染症を治療および予防するための新規の方法およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2010年2月18日に出願された米国仮出願第61/305,832号の利益を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書中に明確に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
リファキシミン(INN;The Merck Index, XIII Ed., 8304(非特許文献1)を参照されたい)は、リファマイシンクラスの抗生物質に属する抗生物質、例えば、ピリドイミダゾリファマイシンである。リファキシミンは、例えば、胃腸管において伝染性下痢症、過敏性腸症候群、小腸内細菌異常増殖、クローン病、および/または膵機能不全を引き起こす局在性胃腸内細菌に対してその広範囲の抗菌活性を発揮する。リファキシミンは、その化学的および物理的特性のために、無視できる程度の全身性吸収を特徴とすることが報告されている(Descombe J.J.ら Pharmacokinetic study of rifaximin after oral administration in healthy volunteers. Int J Clin Pharmacol Res, 14 (2), 51-56, (1994)(非特許文献2))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】The Merck Index, XIII Ed., 8304
【非特許文献2】Descombe J.J.ら Pharmacokinetic study of rifaximin after oral administration in healthy volunteers. Int J Clin Pharmacol Res, 14 (2), 51-56, (1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
旅行者下痢は先進工業国から発展途上国への旅行者によく見られる病気である。旅行者下痢は一般に、周辺組織に直接損傷を与えるかまたは免疫応答を引き出す腸内細菌性病原体(例えば、ETEC、EAEC、およびソンネ赤痢菌によって発現される毒性因子により引き起こされる。旅行者下痢の他、多数の他の障害もまた胃腸管の細菌感染症を特徴としている。
【0005】
従って、細菌感染症を有効に治療するための組成物および方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
細菌感染症を予防および/または寛解する方法を本明細書中に開示する。一般に、リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)による治療の恩恵を受けられる対象には、細菌感染症に罹りやすいかまたは細菌感染症を有する対象が含まれる。例示的な感染症としては、旅行者下痢を引き起こす細菌感染症が挙げられる。
【0007】
従って、1つの態様において、本発明は、対象にリファキシミンを投与し、それによってC.ディフィシル感染症(CDI)を治療することにより、該対象において該CDIを治療する方法を提供する。
【0008】
1つの実施形態では、前記CDIはバンコマイシンおよび/またはメトロニダゾールおよび/またはリファンピンに対して耐性を示す。
【0009】
1つの実施形態では、前記CDIは院内感染性である。別の実施形態では、前記CDIはC.ディフィシルの強毒株により引き起こされる。1つの実施形態では、該強毒株はトキシンA、トキシンB、およびバイナリートキシンのうちの1つ以上をコードする遺伝子を含む。具体的な実施形態では、該強毒株はtdcC遺伝子内に欠失を含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、旅行者下痢(TD)を有する対象にリファキシミンを投与し、それによってTDを引き起こす細菌の毒力を変更することにより、該対象においてTDを引き起こす該細菌の毒力を変更する方法を提供する。
【0011】
1つの実施形態では、細菌の毒力を低下させる、例えば、1つ以上の毒性因子の発現を低下させることにより毒力を低下させる。1つの実施形態では、1つ以上の毒性因子は、耐熱性エンテロトキシン(ST)および易熱性エンテロトキシン(LT)からなる群より選択される。別の実施形態では、1つ以上の表面接着因子、例えば、CS2/CS3および/またはCS6の発現を低下させることにより、毒力を低下させる。
【0012】
別の実施形態では、1つ以上のエンドペプチダーゼ、例えば、MMP-9などのマトリックスメタロプロテアーゼの発現を低下させることにより、毒力を低下させる。
【0013】
1つの実施形態では、リファキシミンを殺菌濃度以下の(sub-bactericidal)濃度で投与する。
【0014】
別の実施形態では、前記細菌は大腸菌(E.coli)、例えば、毒素原性大腸菌(ETEC)または腸管凝集性大腸菌(EAEC)である。別の実施形態では、前記細菌は炭疽菌(B.anthracis)である。
【0015】
別の態様では、本発明は、上皮細胞を細菌への曝露に先立ってリファキシミンと接触させて、それによって該細菌が該上皮細胞に付着するその能力を低下させることにより、細菌が該上皮細胞に付着するその能力を低下させる方法を提供する。
【0016】
1つの実施形態では、前記細胞からの炎症性サイトカイン放出が阻害される。
【0017】
別の実施形態では、前記細菌は大腸菌、例えば、毒素原性大腸菌(ETEC)または腸管凝集性大腸菌(EAEC)である。別の実施形態では、前記細菌は炭疽菌である。
【0018】
1つの実施形態では、前記細菌は旅行者下痢を引き起こす。
【0019】
別の態様では、本発明は、対象に細菌への曝露に先立ってリファキシミンを投与し、それによって上皮細胞への細菌接着を特徴とする疾患または障害を予防することにより、該対象の該上皮細胞への細菌接着を特徴とする疾患または障害を予防する方法を提供する。
【0020】
別の実施形態では、前記細菌は、大腸菌、例えば、毒素原性大腸菌(ETEC)または腸管凝集性大腸菌(EAEC)である。別の実施形態では、前記細菌は炭疽菌である。
【0021】
1つの態様では、細菌感染症を治療または予防する方法であって、以下:リファキシミンを含む容器を提供すること、ここで該容器は投与指示を記載した印刷ラベル表示を含んでいること;および対象に該容器からリファキシミンを投与することを含む上記方法が本明細書中に提示される。
【0022】
1つの態様では、リファキシミンは、リファキシミンのα型、β型、γ型、δ型、ε型、ζ型、η型、α乾燥型、ι型、β-1型、β-2型、ε乾燥型、メシル酸塩型または非晶質型、および製薬上許容しうる担体である。リファキシミンを医薬組成物として製剤化してもよい。
【0023】
1つの実施形態では、前記医薬組成物は賦形剤をさらに含む。
【0024】
別の実施形態によれば、前記賦形剤は、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤または甘味剤の1つ以上を含む。
【0025】
別の実施形態では、前記組成物を、選択したコーティング錠および素錠、硬および軟ゼラチンカプセル剤、糖衣丸剤、ロゼンジ、オブラート、ペレット剤ならびに密閉包装物に入れた散剤用に製剤化する。1つの実施形態では、前記組成物を局所使用のために製剤化する。
【0026】
1つの実施形態では、リファキシミンを対象に14日間投与する。
【0027】
1つの実施形態では、除外(removing)は、医薬製品の添付文書に記載された投薬指示に従うことにより対象を指導することを含む。
【0028】
1つの実施形態では、前記添付文書は、リファキシミンを14日間投与するよう指示するものである。
【0029】
1つの実施形態では、前記製品は、例えば、旅行者下痢の治療目的でラベルを貼った550mgのリファキシミンを含む。
【0030】
1つの実施形態では、前記製品は550mgのリファキシミンを含む。
【0031】
1つの実施形態では、医薬製品の添付文書は、例えば、感染症および寄生(infestations)、胃腸障害、神経系障害、ならびに筋骨格および結合組織の障害を含む有害事象を警告するものである。
【0032】
本発明の他の実施形態を以下に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、リファキシミンによる前処理後のEAEC付着を表したものである。(A)7×106個のEAEC細菌と共にインキュベートした無処理のHEp-2細胞。矢印はHEp-2細胞およびスライド表面に付着しているEAECを示している(倍率、×100)。(B)リファキシミン(32 ug/mL)で24時間前処理し、洗浄し、さらにその後7×106個のEAEC細菌と共にインキュベートしたHEp-2細胞(倍率、×100)。矢印は、スライド表面およびHEp-2細胞の内縁に付着している細胞を示している。(C)上清中のEAECの濃度または細胞表面に付着したEAECの濃度。24ウェルプレート中でコンフルエントな状態まで増殖させたHEp-2細胞を24時間、リファキシミン、アセトン、もしくはリファンピンで前処理するか、または無処理で放置し;その後該細胞を、材料および方法の項に記載した通りに洗浄してからEAECと共に3時間、3組ずつインキュベートした。上清中のEAECのCFUを測定するために、各ウェルからの上清を採集し、該ウェルをPBSで3回(各回200 uL)洗浄した。上清とこの洗浄液を合わせ、遠心分離し、1 mLのPBSに再懸濁し、連続希釈し、さらにLB寒天プレート上に蒔いた。付着したEAEC細菌の数を測定するために、HEp-2細胞をトリプシン処理し、洗浄し、さらに先に記載した通りにLBプレート上に蒔いた。データは、上清中に見出されたかまたは細胞表面に付着した細菌をウェルに添加した全細菌に占める平均パーセンテージとして表したものである。エラーバー、SE。3連ウェルの上清または細胞分画中のCFU数は、リファキシミンで前処理したHEp-2細胞へのEAEC接着の減少を示している。+は、不対スチューデントt検定によればP_0.05であった。
【図2】図2は、リファキシミン前処理により上皮細胞へのEAEC結合が減少することを表したものである。コンフルエントなHEp-2、HeLa、A549、またはHCT-8細胞を、培地のみで、または64μg/mLのリファキシミン、リファンピン、アセトン(64μL)、もしくはドキシサイクリンを含有する培地で24時間、3組ずつ培養した。これらのウェルを洗浄し、1×107個のEAEC細菌を添加してから3時間インキュベートした。次に該ウェルを(各洗浄)1 mLのPBSで3回洗浄し、さらに細胞を1 mLの滅菌蒸留水の添加により溶解させた。次に、滅菌PBSで連続希釈物を作製してLB寒天プレート上に蒔くことにより、ウェルあたりのCFUの数を測定した。データは、細胞に接着した細菌をウェルに添加した細菌の総数に占めるパーセンテージとして表したものである。不対スチューデントt検定により測定したP値は_0.0001 (+)および_0.03 (§)であった。
【図3−1】図3は、リファキシミン前処理が炭疽菌およびソンネ赤痢菌の接着および内在化に与える効果を表したものである。グラフは炭疽菌(AおよびB)またはソンネ赤痢菌(CおよびD)の接着(AおよびC)または内在化(BおよびD)を示している。炭疽菌芽胞(4.8×105個)またはソンネ赤痢菌細菌(1×107個)は、それぞれA549またはHeLa細胞を含有する24ウェルプレートのウェル中で共培養した。接着アッセイのために、各細菌を1時間インキュベートし;ウェルを洗浄し;さらに細胞をLB寒天プレート上に蒔いた。内在化に関しては、ゲンタマイシン(100μg/mL)とのさらなる1時間のインキュベーションを実施することにより、全ての非内在化細菌を死滅させた。その後ウェルを洗浄し、細胞をLB寒天プレート上に蒔いた。データは、接着または内在化した細胞を添加した全細胞に占める平均パーセンテージとして表したものである。エラーバー、SE。実験を2回繰り返し、似たような結果を得た。+は、不対スチューデントt検定よればP_0.002であった。
【図3−2】図3-1の続きを示す。
【図4】図4は、透析した上清がEAEC接着に与える効果を表したものである。EAEC接着は、750 _Lの透析した馴化培地単独(AおよびC)、透析したリファンピン順化培地(B)、または透析したリファキシミン順化培地(DおよびE)のいずれかと混合した750μLのEAEC溶液(7×106個の細菌/mL)を添加することにより評価した。EAEC接着をHEp-2細胞の存在下(A、B、およびD)または非存在下(CおよびE)でモニタリングした。3時間のインキュベーション後、チャンバーを洗浄し、ライト・ギムザ染色の後に顕微鏡的に調べた(倍率、_40)。これらの実験により、リファキシミンで処理した細胞の上清中の因子(またはその欠如)がEAEC接着に影響を及ぼすことが示された。この実験を2回繰り返し、似たような結果を得た。
【図5−1】図5は、上清サイトカインプロファイル分析を表したものである。抗生物質を使用せずに(A)、リファンピンの存在下(B)で、またはリファキシミンの存在下(C)で24時間培養したHEp-2細胞から得た上清を、Panomicsサイトカインアレイを使用して分析した。各メンブレンアレイは、陽性および陰性の内部対照と共に、36種もの異なるサイトカイン(図面右側に示した)を2重に検出するよう設計した。示したブロットを各上清と共に同時にインキュベートし、同一フィルム上に同時に現像した。ドキシサイクリンまたはアセトンで処理したHEp-2細胞から得た上清も分析した。この実験を3回実施したところ似たような結果が得られ、このことは、リファキシミンが様々な炎症誘発性サイトカインの発現を低下させることを示している。
【図5−2】図5-1の続きを示す。
【図5−3】図5-1の続きを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
リファキシミン(USAN、INN;The Merck Index, XIII Ed., 8304, CAS番号80621-81-4を参照されたい)、(2S,16Z,18E,20S,21S,22R,23R,24R,25S,26S,27S,28E)-5,6,21,23,25ペンタヒドロキシ-27-メトキシ-2,4,11,16,20,22,24,26-オクタメチル-2,7-(エポキシペンタデカ-(1,11,13)トリエニミノ)ベンゾフロ(4,5-e)ピリド(1,2,-a)ベンズイミダゾール-1,15(2H)-ジオン,25-アセテート)は、リファマイシンOから製造された半合成抗生物質である。リファキシミンはリファマイシンクラスの抗生物質に属する分子、例えば、ピリドイミダゾリファマイシンである。リファキシミンは、例えば、胃腸管において伝染性下痢症、過敏性腸症候群、小腸内細菌異常増殖、クローン病、および/または膵機能不全を引き起こす局在性胃腸内細菌に対して広範囲の抗菌活性を発揮する。
【0035】
リファキシミンは伊国特許IT 1154655およびEP 0161534にも記載されている。EP 0161534には、出発物質としてリファマイシンOを使用するリファキシミン製造のための手順が開示されている(The Merck Index, XIII Ed., 8301)。US 7,045,620 B1にはリファキシミンの多形体が開示されており、USSN 11/658,702;USSN 61/031,329;USSN 12/119,622;USSN 12/119,630;USSN 12/119,612;USSN 12/119,600;USSN 11/873,841;公報WO 2006/094662;およびUSSN 12/393012においても同様である。ここで言及した出願および特許は、あらゆる目的に対してそれらの全てが参照により本明細書中に組み込まれるものとする。
【0036】
リファマイシンクラスの抗生物質は、例えば、式Iの構造:
【化1】

【0037】
〔式中のAは、構造A1
【化2】

【0038】
または構造A2
【化3】

【0039】
であってもよく、
式中、-x-は共有化学結合であるかまたは存在せず;Rは水素またはアセチルであり;
R1およびR2は独立して水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ-およびジ-(C1-3)アルキルアミノ-(C1-4)アルキル、(C1-3)アルコキシ-(C1-4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ-(C2-4)-アルキル、ニトロであるか、あるいはR1およびR2はピリジン核の2個の連続した炭素原子と一緒になって、無置換であるかまたは1もしくは2個のメチルもしくはエチル基により置換されているベンゼン環を形成し;R3は水素原子であるかまたは存在しない;ただし条件として、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらなる条件として、AがA2である場合、-x-は共有化学結合であり、かつR3は存在しない〕
を有する化合物である。
【0040】
同様に、先に定義した化合物であって、式中のAが先に示したA1またはA2であり、-x-が共有化学結合であるかまたは存在せず、Rが水素またはアセチルであり、R1およびR2が独立して水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ-(C2-4)アルキル、ジ-(C1-3)アルキルアミノ-(C1-4)アルキル、ニトロであるか、またはR1およびR2がピリジン核の2個の連続した炭素原子と一緒になってベンゼン環を形成し、かつR3が水素原子であるかまたは存在しない;ただし条件として、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらなる条件として、AがA2である場合、-x-は共有化学結合であり、かつR3は存在しない、上記化合物もまた本明細書中に記載する。
【0041】
同様に、先に定義した化合物であって、式中のAが先に示したA1またはA2であり、-x-が共有化学結合であるかまたは存在せず、Rがアセチルであり、R1およびR2が独立して水素、(C1-4)アルキルであるか、またはR1およびR2がピリジン核の2個の連続した炭素原子と一緒になってベンゼン環を形成し、かつR3が水素原子であるかまたは存在しない;ただし条件として、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらなる条件として、AがA2である場合、-x-は共有化学結合であり、かつR3は存在しない、上記化合物もまた本明細書中に記載する。
【0042】
同様に、4-デオキシ-4'-メチル-ピリド[1',2'-1,2]イミダゾ[5,4-c]リファマイシンSVである、先に定義した化合物もまた本明細書中に記載する。同様に、4-デオキシ-ピリド[1',2':1,2]イミダゾ[5,4-c]リファマイシンSVである、先に定義した化合物もまた本明細書中に記載する。
【0043】
同様に、先に定義した化合物であって、式中のAが先に記載した通りであり、-x-が共有化学結合であるかまたは存在せず;Rが水素またはアセチルであり;R1およびR2が独立して水素、(C1-4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ-およびジ-(C1-3)アルキルアミノ(C1-4)アルキル、(C1-3)アルコキシ-(C1-4)アルキル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシ-(C2-4)-アルキル、ニトロであるか、あるいはR1およびR2がピリジン核の2個の連続した炭素原子と一緒になって、無置換であるかまたは1もしくは2個のメチルもしくはエチル基により置換されているベンゼン環を形成し;R3が水素原子であるかまたは存在しない;ただし条件として、AがA1である場合、-x-は存在せず、かつR3は水素原子であり;さらなる条件として、AがA2である場合、-x-は共有化学結合であり、かつR3は存在しない、上記化合物もまた本明細書中に記載する。
【0044】
リファキシミンは、式IIの構造:
【化4】

【0045】
を有する化合物である。
【0046】
特定の実施形態では、前記抗生物質は、リファマイシン、アミノグリコシド、アンフェニコール、アンサマイシン、β-ラクタム、カルバペネム、セファロスポリン、セファマイシン、モノバクタム、オキサセフェム、リンコサミド、マクロライド、ポリペプチド、テトラサイクリン、または2,4-ジアミノピリジンクラスの抗生物質の1つ以上を含む。これらのクラスの例示的な抗生物質を以下に挙げる。
【0047】
特定の科学理論に縛られることを望むものではないが、リファキシミンは、細菌のデオキシリボ核酸依存性リボ核酸(RNA)ポリメラーゼのβサブユニットに結合し、結果的に細菌のRNA合成の阻害をもたらすことにより作用する。リファキシミンは好気性および嫌気性両方の多数のグラム(+)および(-)細菌に対して活性を持つ。in vitroデータは、リファキシミンがスタフィロコッカス属(Staphylococcus)の種、ストレプトコッカス属(Streptococcus)の種、エンテロコッカス属(Enterococcus)の種、および腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の種に対して活性を持つことを示している。
【0048】
「リファキシミン」は、本明細書中で使用する場合、例えば、リファキシミンのα型、β型、γ型、δ型、ε型、ζ型、η型、α乾燥型、ι型、β-1型、β-2型、ε乾燥型、メシル酸塩型または非晶質型を含む、この分子の溶媒和物および多形体を含む。これらの型は、例えば、USSN 11/873,841;USSN 11/658,702;EP 05 004 635.2(2005年5月03日出願);USPN 7,045,620;US 61/031,329;およびG.C.Viscomiら、CrystEngComm, 2008, 10, 1074_1081(2008年4月)により詳細に記載されている。これらの各参考文献は、参照によりその全てが本明細書中に組み込まれるものとする。
【0049】
薬用調製物は、胃腸特異的な抗生物質を以下に論じる通常の賦形剤と共に含有していてもよい。
【0050】
「多形」とは、本明細書中で使用する場合、別個の水和物状態にある単一化合物の異なる結晶形態の発生、例えば、幾つかの化合物および複合体のある特性を指す。従って、多形体は同一分子式を共有する別個の固体であり、さらに各多形体は別個の物理的性質を有している場合がある。そのため、単一化合物が様々な多形体を生じる場合があり、その際、各相は異なる別個の物理的性質、例えば、溶解度プロファイル、融点温度、吸湿性、粒形、密度、流動性、適合性および/またはX線回折ピークを有する。各多形体の溶解度は変動する場合があり、従って、薬学的多形体の存在を同定することは、医薬品に予測可能な溶解度プロファイルを付与するには不可欠である。薬物の(全ての多形体を含む)全ての固体形態を調査すること、および各多形体の安定性、溶解および流動特性を決定することが望ましい。化合物の多形体は、X線回折分光法により、また赤外分光光度法などの他の方法により、研究室で識別することができる。多形体の概評および多形体の薬学的適用については、G. M. Wall, Pharm Manuf. 3, 33 (1986);J. K. HaleblianおよびW. McCrone, J Pharm. Sci., 58, 911 (1969);ならびにJ. K. Haleblian, J. Pharm. Sci., 64, 1269 (1975)(これらの文献は全て、参照により本明細書中に組み込まれるものとする)を参照されたい。本明細書中で使用する場合、多形体という用語は、リファキシミンの形態に関して総称として使用することがあり、また該用語はその文脈において本明細書中に開示したリファキシミンの塩型、水和物型、多形体および非晶質型を含む。この用法は文脈に依存し、このことは当業者には明らかであろう。
【0051】
本明細書中で使用する「GI特異的抗生物質」、および「GI抗生物質」としては、GI疾患に対する効果を有することが知られている抗生物質が挙げられる。例えば、リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)、ネオマイシン、メトロニダゾール、テイコプラニン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、オウグメンチン、セファレキシン、ペニシリン、アンピシリン、カナマイシン、リファマイシン、バンコマイシン、およびそれらの組み合わせは有用なGI特異的抗生物質である。より一層好ましいのは全身性吸収が低いGI特異的抗生物質、例えば、リファキシミンである。低い全身性吸収としては、例えば、10%未満の吸収、5%未満の吸収、1%未満の吸収および0.5%未満の吸収が挙げられる。低い全身性吸収としては、また、例えば、約0.01〜1%の吸収、約0.05〜1%の吸収、約0.1〜1%の吸収、約1〜10%の吸収、または約5〜20%の吸収も挙げられる。
【0052】
「寛解する」、「寛解」、「改善」等は、例えば、ある対象において、または少なくとも少数の対象において、例えば、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲内で生じる改善と一致する、検出可能な改善または検出可能な変化を指す。かかる改善または変化はリファキシミンで治療していない対象と比較して治療した対象において観察される場合があり、この際、無治療の複数対象は同一または類似の疾患、状態、症状等を有するかまたは発症しやすい。疾患、状態、症状またはアッセイパラメータの寛解は、例えば、対象(複数可)による自己評価により、臨床医の評価により、あるいは例えば、生活の質評価、疾患(複数可)もしくは状態(複数可)の進行の遅延、疾患(複数可)もしくは状態(複数可)の重症度の低下、または生体分子(複数可)、細胞(複数可)のレベルもしくは活性(複数可)に関する適切なアッセイ(複数可)を含む、適当なアッセイまたは測定を行うことにより、あるいは対象におけるBDエピソードの検出により、主観的にまたは客観的に判定してもよい。寛解は一過性、遅延性または永続性のものであってよく、あるいは寛解は、GI特異的抗生物質を対象に投与するかまたは本明細書中もしくは引用文献に記載されているアッセイもしくは他の方法において使用するその間またはその後の関連する時点で、例えば、以下に記載する時間枠内に、すなわち、GI特異的抗生物質の投与または使用の約1時間後〜対象(複数可)にかかる治療を施してから約7日、2週、28日、もしくは1、3、6、9ヶ月後またはそれ以上後、に変化しうるものであってもよい。
【0053】
「モジュレーション」、例えば、症状、分子のレベルまたは生物学的活性等の「モジュレーション」とは、例えば、該症状または該活性等が検出可能な程度に増加または減少することを指す。かかる増加または減少は、GI特異的抗生物質で治療していない対象と比較して治療した対象において観察される場合があり、この際、無治療の複数対象は同一または類似の疾患、状態、症状等を有するかまたは発症しやすい。かかる増加または減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%もしくはそれ以上であるか、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲内でありうる。モジュレーションは、例えば、対象の自己評価により、臨床医の評価により、あるいは例えば、生活の質の評価または対象内の分子のレベルもしくは活性に関する適切なアッセイを含む適当なアッセイまたは測定を行うことにより、主観的または客観的に判定してもよい。モジュレーションは一過性、遅延性または永続性のものであってよく、あるいはモジュレーションは、GI特異的抗生物質を対象に投与するかまたは本明細書中もしくは引用文献に記載されているアッセイもしくは他の方法に使用するその間またはその後の関連する時点で、例えば、以下に記載する時間内に、すなわち、GI特異的抗生物質の投与または使用の約1時間後〜対象(複数可)にGI特異的抗生物質を投与してから約2週、28日、3、6、9ヶ月後またはそれ以上後、に変化しうるものであってよい。
【0054】
また「モジュレートする」という用語は、GI特異的抗生物質への曝露に応答した細胞の活性における増加または減少、例えば、所望の最終結果が達成される(例えば、治療のために使用したGI特異的抗生物質の治療結果が特定の治療の間に増加または低下しうる)ような、動物における細胞の少なくとも1つの亜集団の増殖の阻害および/または分化の誘導を指す場合もある。
【0055】
化合物の「予防上有効な量」という語は、対象への単回投与または反復投与時に、細菌感染症を予防または治療する上で有効である、本明細書中に記載した式I、式II、またはその他の本発明の化合物の量を指す。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「対象」には、リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)により治療可能な腸疾患もしくは他の障害に罹患することが可能な生物、または本明細書中に記載したリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)の投与から別の形で恩恵を受けうる生物、例えば、ヒトおよび非ヒト動物が含まれる。好適なヒト動物としては、ヒト対象が挙げられる。本発明の「非ヒト動物」という用語には、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物、例えば齧歯動物、例えばマウス、および非ヒト霊長類などの非哺乳動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。細菌感染症のリスクがある、とは、感染症を発症するリスクがある対象、または感染症の寛解期にあるヒト、または再発しうるヒト、例えば、免疫抑制に苦しむ対象、細菌感染症に曝された対象、医師、看護師、旅行者下痢を引き起こす細菌が潜んでいることが知られている遠隔地に旅行中の対象、高齢者、肝障害のあるヒトなどを含むことを意図している。
【0057】
化合物の「予防上有効な量」という語は、対象への単回投与または反復投与時に、感染症または該感染症により引き起こされる疾患もしくは障害を予防または治療する上で有効である、本明細書中に記載した式I、式II、または他の本発明の化合物の量を指す。
【0058】
「投与」または「投与する」という用語には、GI特異的抗生物質の意図された機能を発揮させるために対象に該GI特異的抗生物質を導入する経路が含まれる。利用しうる投与経路の具体例としては、注射、経口、吸入、膣内、直腸および経皮が挙げられる。医薬調製物を各投与経路に適した形態で与えてもよい。例えば、これらの調製物を、錠剤またはカプセル剤の形態で、注射、吸入、洗眼ローション、点眼剤、軟膏、坐剤など(注射、注入または吸入による投与;ローションまたは軟膏による局所投与;および坐剤による直腸投与)により投与する。経口投与が好ましい。注射はボーラスであってもよいし、または連続注入であってもよい。投与の経路に応じて、GI特異的抗生物質を、その意図された機能を果たすその能力に有害に作用しうる自然状態から保護するために、選択した材料でコーティングするか、または選択した材料中に配置することができる。GI特異的抗生物質は、単独で、あるいは先に記載した他の1つもしくは複数の薬剤または製薬上許容しうる担体またはその両方と共に投与することができる。GI特異的抗生物質は、他の薬剤の投与に先立って、該薬剤と同時に、または該薬剤の投与後に、投与することができる。さらに、GI特異的抗生物質は、in vivoでその活性代謝物またはより活性な代謝物へと転換される前駆体(proform)として投与することもできる。
【0059】
1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与には、同時(並行)投与および任意の順序での逐次投与が含まれる。
【0060】
当業者には容易に明らかとなるように、投与すべき有用なin vivo用量および特定の投与様式は、年齢、体重および治療する哺乳動物種、用いる特定の化合物、および/またはこれらの化合物を用いるその具体的な用途に応じて変わる。所望の結果を得るために必要な用量レベルである有効用量レベルの決定は、通常の薬理学的方法を利用して当業者により達成されうる。典型的には、製品のヒトへの臨床応用は低用量レベルで開始し、所望の効果が得られるまで用量レベルを増加させる。
【0061】
「GI特異的抗生物質を取得する」に見られるような「取得する」という用語は、GI特異的抗生物質を購入するか、合成するかまたは別の方法で手に入れることを含むものとする。
【0062】
化合物の「予防上有効な量」という語は、対象への単回投与または反復投与時に、適応症を予防または治療する上で有効であるGI特異的抗生物質の量を指す。1つの実施形態では、該適応症はIBSである。
【0063】
本明細書中で使用する「医薬品組成物」(または薬剤または薬物)という用語は、患者に適切に投与された場合に所望の治療効果を誘導することができる化学化合物、組成物、薬剤または薬物を指す。医薬品組成物は2種類以上の成分を必ずしも必要としない。
【0064】
本明細書中で使用する場合、「反応の持続性」には、例えば、治療の除外(removal)後の症状の十分な緩和、治療の除外後の症状の継続的で十分な緩和、またはプラセボ反応より大きいかもしくはプラセボ反応よりも優れた反応が含まれる。対象による反応は、例えば、該対象が治療からの除外後にリファマイシンに対して反応を示す場合、持続的であると考えてもよい。反応の持続期間は、例えば、2日間、7日間、2週間、3週間、4週間、12週間、約1週間〜約24週間またはそれ以上でありうる。反応は、例えば以下に概説する方法(例えば、対象による自身の症状の主観的評価または医療提供者もしくは介護者による対象の症状の評価)の1つ以上を利用して測定してもよい。
【0065】
本明細書中で使用する場合、「反応する対象を選択する」、「反応する対象の選択」等には、例えば、対象が感染症症状の減少に基づく治療に反応したと判定すること、および/または製品(例えば、リファキシミン)を一定期間投与するためにラベルの指示に従うこと、等が含まれる。判定または選択は、ラベル(例えば、パッケージもしくは添付文書)の指示、あるいは対象による自身の症状の主観的評価または医療提供者もしくは介護者による対象の症状の評価に基づいていてもよい。
【0066】
治療の方法
細菌感染症または細菌感染症により引き起こされる症状を治療、予防、または軽減する方法であって、その必要がある対象に有効量のリファキシミンを投与することを含む上記方法を本明細書中に提供する。本発明の方法を利用して治療または予防しうる例示的な感染症としては、大腸菌、炭疽菌、またはソンネ赤痢菌による感染症が挙げられる。
【0067】
1つの実施形態では、医薬製品のラベル上に、リファキシミンを14日間(例えば、2週間)投与すべき旨を示す勧告(例えば、選択)がなされている。例えば、細菌感染症を発症するリスクがある対象には、細菌への曝露に先立ってリファキシミンを投与する。
【0068】
別の実施形態では、本発明は、対象にリファキシミンを投与することよる、該対象におけるC.ディフィシル感染症(CDI)の治療のための方法を提供する。少なくとも1つの実施形態では、前記CDIは、1種以上の抗生物質、例えば、バンコマイシン、メトロニダゾールまたはリファンピンに対して耐性を示す。
【0069】
1つの実施形態では、前記CDIは院内感染性感染症である。別の実施形態では、前記CDIはC.ディフィシルの強毒株によって引き起こされる。1つの実施形態では、該強毒株はトキシンA、トキシンB、およびバイナリートキシンのうちの1つ以上をコードする遺伝子を含む。別の実施形態では、該強毒株はtdcC遺伝子内に欠失を含む。
【0070】
リファキシミンを様々な治療レジームにおいて使用してもよい。これらのレジームは対象および治療の種類に応じて変わる場合がある。
【0071】
リファキシミンは、例えば、1日2回、1日3回、または1日当たり4回もしくは必要に応じてより頻繁に投与してもよい。リファキシミンは、例えば約25 mg BID〜約3000 mg TIDの投与量で投与してもよい。別の具体例は、リファキシミンを約4.0 g/日〜約7.25 g/日投与することである。リファキシミンは、例えば、錠剤形態で、粉末形態で、カプセル剤用の液体またはカプセル剤に入れた液体として投与してもよい。
【0072】
その必要がある対象には、細菌感染症を有するかもしくは細菌感染症に罹りやすい対象、または感染症からの寛解期にある対象が含まれる。
【0073】
本明細書中で使用する場合、治療上有効な量とは、ヒトまたは非ヒト対象に投与した場合に、症状の寛解などの治療的利益をもたらすのに有効な量、例えば、細菌感染症の症状、すなわち、旅行者下痢の症状を減少させるのに有効な量を意味する。
【0074】
特定の実施形態では、リファキシミンを対象に、持続期間として約1週間〜約6週間、持続期間として約8週間〜約12週間、または1日〜約7日間投与する。リファキシミンを約1日〜約1年間、または1週間〜約24週間投与してもよい。リファキシミンを治療の経過中に断続的または連続的に投与してもよい。治療の長さは疾患の種類および長さによって異なる場合があり、また治療の適切な長さは、本開示内容の利益を享受する当業者により容易に決定されうる。治療は、細菌感染症の可能性を減らすかまたはなくすために医学専門家により提案された一定の期間、感染より前であってもよい。
【0075】
いずれの実施形態に関しても、リファキシミンを、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回(または特定の対象に対しては必要に応じてより頻繁に)対象に投与することができる。
【0076】
用量は、特定の好適な実施形態によれば、1日に投与されるリファキシミンとして約50〜約6000 mgである。例えば、550 mgの投与量を1日2回対象に投与してもよい。本発明による方法のための他の適当な用量は、医療従事者により、または対象により決定されてもよい。1日に投与するリファキシミンの量は、対象の体重、年齢、健康状態、性別または医学的状態に基づいて増量または減量してもよい。当業者であれば、本開示内容に基づいて対象にとって適切な投与量を決定することができるだろう。
【0077】
特定の実施形態によれば、リファキシミンは、例えば、化学療法剤、抗炎症剤、解熱剤、放射線増感剤、放射線防護剤、泌尿器用薬剤、制吐剤、および/または止瀉剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、マイトマイシン、ゲフィチニブ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、アセトアミノフェン、ミソニダゾール、アミホスチン、タムスロシン、フェナゾピリジン、オンダンセトロン、グラニセトロン、アロセトロン、パロノセトロン、プロメタジン、プロクロルペラジン、トリメトベンズアミド、アプレピタント、ジフェノキシラート・アトロピン合剤、および/またはロペラミドを含む他の化合物と組み合わせて投与してもよい。
【0078】
医薬調製物
本発明は、本明細書中に記載した有効量のリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミンまたはリファキシミン多形体)および製薬上許容しうる担体を含む医薬組成物もまた提供する。さらなる実施形態では、該有効量は細菌感染症、例えば、小腸内細菌異常増殖を治療するのに有効である。
【0079】
旅行者下痢を治療するためのリファキシミンおよびその製剤の使用の具体例については、Infante RM, Ericsson CD, Zhi-Dong J, Ke S, Steffen R, Riopel L, Sack DA, DuPont, HL. Enteroaggregative Escherichia coli Diarrhea in Travelers:Response to Rifaximin Therapy. Clinical Gastroenterology and Hepatology. 2004;2:135-138;およびSteffen R, M.D., Sack DA, M.D., Riopel L, Ph.D., Zhi-Dong J, Ph.D., Sturchler M, M.D., Ericsson CD, M.D., Lowe B, M.Phil., Waiyaki P, Ph.D., White M, Ph.D., DuPont HL, M.D. Therapy of Traveler's Diarrhea With Rifaximin on Various Continents. The American Journal of Gastroenterology. May 2003, Volume 98, Number 5(これらの文献は全て、参照によりそれらの全てが本明細書中に組み込まれるものとする)を参照されたい。
【0080】
1つの実施形態は、リファキシミンまたはその任意の多形体および製薬上許容しうる担体を含む医薬組成物を包含する。すなわち、製剤はただ1つの多形体を含有していてもよく、または2つ以上の多形体の混合物を含有していてもよい。多形体とは、この文脈においては、リファキシミンの任意の物理的形態、水和物、酸、塩等を指す。混合物は、例えば、所望の量の全身性吸着、溶解プロファイル、治療しようとする消化管内の所望の位置などに基づいて選択してもよい。前記医薬組成物は、賦形剤、例えば、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤または甘味剤の1つ以上をさらに含む。前記組成物は、選択したコーティング錠および素錠、硬および軟ゼラチンカプセル剤、糖衣丸剤、ロゼンジ、オブラート、ペレット剤ならびに密閉包装物に入れた散剤用に製剤化してもよい。例えば、前記組成物を局所使用のために、例えば、軟膏、ポマード、乳剤、ゲルおよびローション用に製剤化してもよい。
【0081】
ある実施形態では、製薬上許容しうる製剤、例えば、この製薬上許容しうる製剤を対象に投与した後に少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、1週間、2週間、3週間、または4週間該対象へのリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)の持続的送達をもたらす製薬上許容しうる製剤を使用して、対象にリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)を投与する。
【0082】
特定の実施形態では、これらの医薬組成物は、対象への局所または経口投与に適している。他の実施形態では、後で詳細に記載するように、本発明の医薬組成物を、以下:(1)経口投与、例えば、飲薬(水性もしくは非水性の溶液もしくは懸濁液)、錠剤、ボーラス、散剤、顆粒剤、パスタ剤;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋内もしくは静脈内注射による、例えば、滅菌溶液もしくは滅菌懸濁液としての非経口投与;(3)局所適用、例えば、皮膚に適用する乳剤、軟膏もしくはスプレー剤としての局所適用;(4)膣内もしくは直腸内投与、例えば、ペッサリー、乳剤もしくはフォーム剤としての膣内もしくは直腸内投与;または(5)エアゾール剤、例えば、前記の化合物を含有する水性エアゾール剤、リポソーム調製物もしくは固形粒子としてのエアゾール剤、に適合させたものを含む、固形または液状形態での投与のために特別に製剤化してもよい。
【0083】
「製薬上許容しうる」という語句は、本明細書中に記載した前記のリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)、かかる化合物を含有する組成物、ならびに/あるいは、信頼できる医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴なうことなく人間および動物の組織と接触させて使用するのに適した剤形を指す。
【0084】
「製薬上許容しうる担体」という語句は、身体の1つの器官または部分から該身体の別の器官または部分への対象化学物質の運搬または輸送に関与する、液状または固形の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの製薬上許容しうる材料、組成物またはビヒクルを含む。各担体は、製剤の他の成分と適合しかつ患者にとって有害ではないという意味で「許容しうる」ものでなくてはならない。製薬上許容しうる担体としての役割を果たしうる材料の幾つかの具体例としては、以下:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;(4)トラガカント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤用の蝋;(9)油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)医薬製剤に用いられる他の非毒性適合性物質が挙げられる。
【0085】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および賦香剤、防腐剤および酸化防止剤もまた、前記組成物中に存在させることができる。
【0086】
製薬上許容しうる酸化防止剤の具体例としては、以下:(1)水溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート化剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0087】
リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)を含有する組成物としては、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣内、エアゾール、および/または非経口投与に適した組成物が挙げられる。該組成物は、都合が良いことに、単位剤形として提供することができるし、また薬学分野で周知の任意の方法により調製することができる。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせうる活性成分の量は、治療を受けている宿主、特定の投与様式によって異なる。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせうる活性成分の量は、一般的には、治療効果を生み出す前記の化合物の量であろう。一般に、100パーセントのうち、この量は約1%〜約99%の活性成分、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約10%〜約30%である。
【0088】
リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)の経口または直腸投与のための液状剤形としては、製薬上許容しうるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、該液状剤形は例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物などの、当分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含有していてもよい。
【0089】
不活性希釈剤に加えて、前記の経口用組成物には、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、賦香剤および防腐剤も含ませることができる。
【0090】
懸濁液は、活性なリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにその混合物などの懸濁剤を含有していてもよい。
【0091】
直腸または膣内投与のための本発明の医薬組成物は坐剤として提供してもよく、該坐剤は1つ以上のリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)を、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用の蝋もしくはサリチル酸塩を含む1つ以上の適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することにより調製してもよく、また該坐剤は室温では固形であるが体温では液状であり、またそれ故に、直腸または膣腔内で溶解して活性薬剤を放出する。膣内投与に適した組成物としては、適当であることが当分野で知られているような担体を含有するペッサリー、タンポン、乳剤、ゲル、パスタ剤、フォーム剤またはスプレー製剤が挙げられる。
【0092】
リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)の局所または経皮投与のための剤形としては、散剤、スプレー剤、軟膏、パスタ剤、乳剤、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤を挙げることができる。活性なリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)を、無菌条件下で、製薬上許容しうる担体、および必要とされうる任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と混合してもよい。
【0093】
前記の軟膏、パスタ剤、乳剤およびゲルは、リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)に加えて、賦形剤、例えば、動物性および植物性の脂肪、油、蝋、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはその混合物を含有していてもよい。
【0094】
散剤およびスプレー剤は、リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)に加えて、賦形剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含有していてもよい。スプレー剤は、慣用の噴射剤、例えば、クロロフルオロハイドロカーボンならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性の非置換炭化水素をさらに含有していてもよい。
【0095】
あるいは、リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)は、エアゾール剤により投与することができる。これは例えば、この化合物を含有する水性エアゾール剤、リポソーム調製物または固形粒子を調製することにより達成される。非水性(例えば、フルオロカーボン噴射剤)懸濁液を使用してもよい。音波式ネブライザーは、化合物の分解を引き起こしうる剪断への薬剤の曝露を最小限に抑えるため好ましい。
【0096】
前記医薬組成物中に用いうる適切な水性および非水性担体の具体例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルを挙げることができる。適当な流動度は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散系の場合には所要の粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0097】
同様に、これらの組成物は、佐剤、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含有していてもよい。微生物の活動の阻止を、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることにより保証してもよい。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを前記組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射可能な医薬品形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含めることによりもたらされる場合がある。
【0098】
幾つかの場合には、薬物の効果を延長するために、該薬物の吸収を変更することが望ましい。これは、低い水溶解度を有する結晶質、塩または非晶質の材料の液状懸濁液の使用により達成されうる。その際、薬物の吸収の速度はその溶解速度に依存する場合があり、溶解速度はさらに、結晶サイズおよび結晶形態に依存する場合がある。あるいは、薬物形態の遅延吸収は、該薬物を油性ビヒクル中に溶解させるかまたは懸濁することにより達成される。
【0099】
リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)をヒトおよび動物に医薬品として投与する場合、それらをそれ自体で、または例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を製薬上許容しうる担体と共に含有する医薬組成物として、与えることができる。
【0100】
選択した投与の経路にかかわらず、適切な水和形態で使用しうるリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来法により製薬上許容しうる剤形に製剤化される。
【0101】
本発明の医薬組成物中の活性成分の投与の実際の用量レベルおよびタイムコースは、患者に対する毒性を伴うことなく特定の患者、組成物、および投与様式に関して所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量が得られるように変更してもよい。例示的な投与量範囲は1日当たり25〜3000 mgである。
【0102】
併用療法による治療では、本発明の化合物と他の薬物作用物質(複数可)の両方を従来法により哺乳動物(例えば、ヒト、男性または女性)に投与する。これらの薬剤は、単一の剤形で、または別個の剤形で投与してもよい。前記の他の治療薬の有効量は当業者に周知である。とは言え、他の治療薬の最適な有効量範囲を決定することは、十分に当業者の権限の範囲内にある。別の治療薬を動物に投与する本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物の有効量は他の治療薬を投与しない場合の有効量より少ない。別の実施形態では、従来の薬剤の有効量は、本発明の化合物を投与しない場合の有効量より少ない。このようにして、いずれか一方の薬剤の高投与量に伴う望ましくない副作用を最小限に抑えることができる。他の潜在的な利点(改善された投与計画および/または削減された薬物費を含むがこれらに限定されない)は、当業者には明らかであろう。
【0103】
種々の実施形態では、療法(例えば、予防薬または治療薬)を、5分未満の間隔で、30分未満の間隔で、1時間間隔で、約1時間の間隔で、約1〜約2時間の間隔で、約2時間〜約3時間の間隔で、約3時間〜約4時間の間隔で、約4時間〜約5時間の間隔で、約5時間〜約6時間の間隔で、約6時間〜約7時間の間隔で、約7時間〜約8時間の間隔で、約8時間〜約9時間の間隔で、約9時間〜約10時間の間隔で、約10時間〜約11時間の間隔で、約11時間〜約12時間の間隔で、約12時間〜18時間の間隔で、18時間〜24時間の間隔で、24時間〜36時間の間隔で、36時間〜48時間の間隔で、48時間〜52時間の間隔で、52時間〜60時間の間隔で、60時間〜72時間の間隔で、72時間〜84時間の間隔で、84時間〜96時間の間隔で、または96時間〜120時間の間隔で投与する。好適な実施形態では、2つ以上の療法を同一患者の来診中に投与する。
【0104】
特定の実施形態では、1つ以上のリファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)および1つ以上の他の療法(例えば、予防薬または治療薬)を周期的に投与する。サイクリング療法は、第1療法(例えば、第1の予防薬または治療薬)の一定期間の投与、その後の第2療法(例えば、第2の予防薬または治療薬)の一定期間の投与、場合によっては、その後の第3療法(例えば、予防薬または治療薬)の一定の期間の投与など、ならびに、該療法のうちの1つに対する耐性の発生を減少させるために、該療法のうちの1つの副作用を回避もしくは軽減するために、および/または該療法の効力を改善するためにこの連続投与、すなわちサイクルを繰り返すことを必要とする。
【0105】
特定の実施形態では、同一化合物の投与を繰り返してもよく、また該投与を少なくとも約1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、3週、4週、5週、6週、12週、2ヶ月、75日、3ヶ月、または少なくとも6ヶ月毎としてもよい。他の実施形態では、リファマイシンクラスの抗生物質(例えば、リファキシミン)以外の同一療法(例えば、予防薬または治療薬)の投与を繰り返してもよく、また該投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヶ月、75日、3ヶ月、または少なくとも6ヶ月毎としてもよい。1つの実施形態では、リファマイシンクラスの抗生物質に関するラベルにより、例えば、6週毎よりも頻繁に繰り返さないよう指示されていてもよい。別の実施形態では、リファマイシンクラスの抗生物質に関するラベルにより、例えば、3週毎よりも頻繁に繰り返さないよう指示されていてもよい。別の実施形態では、リファマイシンクラスの抗生物質に関するラベルにより、例えば、3〜12週毎よりも頻繁に繰り返さないよう指示されていてもよい。用量または投与に関して本明細書中に記載した範囲内には、該範囲内のあらゆる値が含まれる。
【0106】
特定の実施形態では、再治療は本明細書中に開示した方法と組み合わせると効果的である。例えば、Rifaximin versus Other Antibiotics in the Primary Treatment and Retreatment of Bacterial Overgrowth in IBS, Janet Yang, Hyo-Rang Lee, Kimberly Low, Soumya Chatterjee, およびMark Pimentel, Dig Dis Sci (2008) 53:169-174を参照されたい。例えば、本明細書中に記載した方法は、対象において症状の軽減を判定すること、および、症状が解消されないままであれば第2コースのリファキシミン治療を施すことをさらに含んでいてもよい。また該方法は、例えば、対象の性別を判定すること、および雄の対象に治療上有効な量を投与することをさらに含んでいてもよい。
【0107】
キット
キット、例えば、対象において感染症を治療するためのキットもまた本明細書中に提供される。該キットは、例えば、リファキシミンの多形体または非晶質型および使用説明書を含有していてもよい。該使用説明書には、処方情報、用量情報、保管情報などが含まれていてもよい。
【0108】
1つの実施形態では、ラベルにはリファマイシンクラスの抗生物質を用いる治療の長さが記載されており、それにより、医療専門家がラベルの指示に従ってリファマイシンクラスの抗生物質を処方する場合には対象を治療から除外する。
【0109】
ラベルの指示としては、例えば、IBSの治療のためにはリファマイシンクラスの抗生物質を14日間服用する、という指示が挙げられる。また該指示は、例えば、感染症の急性の治療または予防のためには1650 mg/日のリファキシミンを14日間服用する、と書かれていてもよい。
【0110】
包装された組成物もまた提供され、該組成物は、リファキシミンの非晶質型、α型、β型、γ型、δ型、ε型、ζ型、またはη型多形体のうちの1つ以上の治療上有効な量および製薬上許容しうる担体または希釈剤を含んでいてもよく、ここで該組成物は、感染症に罹っているかまたは罹りやすい対象を治療するために製剤化されており、かつ感染症に罹っているかまたは罹りやすい対象を治療するための説明書と共に包装されているものとする。
【0111】
(実施例)
本発明は以下に記載する実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく;むしろ、本発明は本明細書中に提供したあらゆる全ての適用および通常の熟練者の技術範囲内にある全ての等価な変更を含むものと解釈されるべきであることは理解されよう。
【実施例】
【0112】
実施例1:リファキシミンは細菌付着を変更する
本実験で提示したデータは、様々な上皮細胞型に与えたリファキシミン媒介性変化が、宿主細胞を生物学的に変更することにより大腸菌(例えば、EAEC)付着を減少させたことを示している。これらの効果は炭疽菌の接着および内在化にまで及んだ。これらの観察結果は、リファキシミンとその近縁物質リファンピンとの間には有意な機能差が存在するということを示している。
【0113】
材料および方法
菌株および細胞系。EAEC株O42(J. Nataro, University of Maryland School of Medicine, Baltimore, MDにより提供されたもの)(20)、ソンネ赤痢菌(2008年に本発明者らの研究所によりインドで患者から取得された臨床分離株)、および炭疽菌Sterne株7702(T. M. Koehler, University of Texas Health Science Center, Houston, TXにより提供されたもの)を本研究に使用した。HEp-2(ヒト咽頭扁平上皮癌)(5、12)、HCT-8(ヒト腸管腺癌細胞系)(11)、A549(ヒト肺腺癌上皮細胞系)(24)、およびHeLa(子宮頸癌細胞系)は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから取得した。これらの細胞系を本研究に使用し、5%CO2の加湿インキュベーター内で10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するダルベッコ最小必須培地(DMEM)で維持した。培地の調製時に抗生物質は使用しなかった。
【0114】
HEp-2細胞アッセイ。HEp-2細胞付着アッセイは、他に明記しない限りは50〜80%コンフルエントな状態まで増殖させた細胞の代わりにコンフルエントな単層を使用したことを除き、以前に記載(11)した通りに実施した。HEp-2細胞をLab-Tek II(Nunc, Rochester, NY)チャンバースライド(chambered slides)中で増殖させてから、抗生物質または適当な対照の存在下で4、8、16、18、および24時間インキュベートした。この抗生物質とのインキュベーション期間の終了時に、チャンバーをPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH 7.4)で3回洗浄した後、1%D-マンノース(Sigma, St. Louis, MO)を含むTrypticaseソイブロス(Difco, Lawrence, KS)中37℃で一晩培養しておいたEAEC(1 mL DMEM、10%FBS、および1%D-マンノース中7×106〜1×107個の細菌)(2、9)を添加した。37℃で3時間のインキュベーション後、上皮細胞への大腸菌O42の付着を、オリンパスC-5060デジタルカメラに取り付けたオリンパスBX60倒立顕微鏡を使用してライト・ギムザ染色(Protocol Hema 3;Fisher Diagnostics, Middletown, VA)後に顕微鏡的に可視化した。
【0115】
細菌の接着および内在化の定量化。HEp-2、HCT-8、A459、またはHeLa細胞を24ウェルプレート(Corning Inc., Corning, NY)中でコンフルエントな状態まで増殖させてから、各抗生物質または対照と共にインキュベートした。24時間後、上清を除去し、さらにウェルを1 mLのPBSで3回穏やかに洗浄した後に、1%D-マンノースを含むTrypticaseソイブロス中37℃で一晩増殖させたEAEC株O42(2、9)もしくはソンネ赤痢菌(1 mL DMEM、10%FBS、1%D-マンノース中7×106〜1×107個)、または以前に記載された通りに(10、24、25)ファージアッセイ(PA)培地でSterne株7702から調製した炭疽菌芽胞(4.8×105個)を添加した。
【0116】
細菌接着の定量化のために、24ウェルプレート中37℃で3時間、各抗生物質で前処理した細胞系の存在下でEAEC O42をインキュベートし、また抗生物質で前処理したHeLa細胞の存在下でソンネ赤痢菌をインキュベートした。このインキュベーションの後、上清を除去し、ウェルを1 mLの滅菌PBSで3回洗浄した。次に蒸留水(1 mL)を該ウェルに添加し、細胞をピペッティングにより剥がし、滅菌PBSで希釈してから、16時間後のCFUの計数による定量化のためにLuria-Bertani(LB)寒天プレート上に蒔いた。炭疽菌付着については、A549細胞を24ウェル組織培養プレート中でコンフルエントな状態まで増殖させてから、先に記載した通りに抗生物質で24時間前処理した。該細胞をPBSで3回洗浄することにより抗生物質を除去し、次いで5%CO2の加湿チャンバー内で37℃で1時間、Sterne株7702芽胞に感染させた。結合していない芽胞をPBSを用いた3回の洗浄により除去し、さらにA549細胞を剥がしてから、CFU測定のために先に記載した通りにLB寒天プレート上に蒔いた。
【0117】
内在化アッセイのために、ソンネ赤痢菌または炭疽菌を、それぞれ、先に記載した通りに抗生物質で処理したHeLaまたはA549細胞と共にインキュベートした。これらの細菌を各細胞系と共にインキュベートしてからウェルを洗浄した後、非内在化細菌を死滅させるために上皮細胞をゲンタマイシン(100μg/mL)を含有する培地と共にさらに1時間インキュベートし、PBSで洗浄し、蒸留水中で溶解させてから、定量化のために先に記載した通りに蒔いた。
【0118】
1つの実験では、様々な抗生物質または対照で処理したHEp-2細胞と共に3時間インキュベートした後の上清中のEAEC細菌の数を測定した。上清を採集してから、ウェルを200μLの滅菌PBSで3回洗浄した。このPBS洗浄物と上清を合わせて、遠心分離し、さらに1 mLの滅菌PBSに再懸濁し;この懸濁液を次に連続希釈してから、定量化のために先に記載した通りにLB寒天プレート上に蒔いた。
【0119】
CFUデータは、接着したかまたは内在化した細菌について3連ウェルから得た平均値±標準誤差(SE)であり、各処理ウェルに添加した全細菌に占めるパーセンテージとして表したものである。細菌数における統計学的差異は、スチューデントのt検定を利用して決定した。
【0120】
抗生物質。リファキシミン(Salix Pharmaceuticals Inc., Morrisville, NC)、リファンピン(Sigma)、ドキシサイクリン(Sigma)、またはゲンタマイシン(Sigma)を付着/内在化アッセイにおいて試験した。リファキシミンはアセトン中に溶解させて、リファンピン、およびドキシサイクリンおよびゲンタマイシンは水中に溶解させた(各々の1μg/μLのストックを調製した)。抗生物質は各実験の開始時に新たに調製した。抗生物質およびアセトンは、使用前に0.22μM孔径のシリンジフィルターを用いて滅菌ろ過した。抗生物質は、HEp-2細胞と共に種々の時間8、32、または64μg/mLでインキュベートし、またHCT-8、A549、またはHeLa細胞と共に24時間32または64μg/mLでインキュベートした。アセトンは、陰性対照として各個抗生物質濃度を送達するために使用した量と同等の量で投与した。試験した濃度は、リファキシミンおよびリファンピンのMICを基にした。選択したリファキシミンの最高投与量(64μg/mL)は、本発明者らの研究所においてEAECについて以前に確立したMIC50に相当する。
【0121】
上清の透析。HEp-2細胞をT-175フラスコ内で先に記載した通りに培養した。該細胞がコンフルエントに達したら、培地を除去し、抗生物質を含有しないか、リファキシミン、リファンピン、ドキシサイクリン、またはアセトン(64μg/mL、または抗生物質を送達するために使用する量と同量のアセトン)を含有する新鮮な培地と取り替えた。24時間後、該培地を採集し、再生セルロース透析チューブ(カットオフ、6〜8 kDa;Spectra/Por, Rancho Domiguez, CA)に入れて、4回交換した4リットルのPBSに対して透析した。各透析ステップは少なくとも6時間続け、かつ4℃で行った。透析した上清は直ちに接着アッセイに使用したか、または使用まで-20℃で保存した。
【0122】
EAEC接着に対する上清の効果は、EAECを種々の抗生物質(または対照)処理群から得た透析培地と混合し、かつこの細菌をチャンバースライド中で培養したHEp-2細胞またはHEp-2細胞を含まないチャンバースライドに添加することにより判定した。接着を先に記載した通りに顕微鏡的に可視化した。
【0123】
サイトカインアレイ。HEp-2細胞をチャンバースライド上に蒔いてコンフルエントな状態まで増殖させた。培地を、いずれかの抗生物質(64μg/mL)を含有する新鮮な培地、希釈対照(64μL)(アセトン)を含有する新鮮な培地、または抗生物質を含有していない新鮮な培地と取り替えた。上清を24時間後に採集し、これを使用することにより、メーカーにより記載されている通りにApo/Fas、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、エオタキシン、顆粒球-単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、上皮増殖因子(EGF)、γインターフェロン(IFN-γ)誘導タンパク質10(IP-10)、レプチン、単球炎症性タンパク質1α(MIP1α)、MIP1、MIP4、MIP5、マトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)、RANTES(活性化により調節され、正常T細胞で発現および分泌されるもの)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、IFN-γ、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、TNF受容体I(TNFRI)、TNFRII、細胞内接着分子1(ICAM-1)、血管細胞接着分子1(VCAM-1)、血管内皮成長因子(VEGF)、インターロイキン-1α(IL-1α)、IL-1、IL-Rα、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6R、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12(p40)、IL-15、およびIL-17の検出を支援するサイトカインアレイメンブレン(Panomics, Fremont, CA)を探査した。各上清タンパク質の存在は、Amersham Hyperfilm ECL(GE Healthcare, Buckinghamshire, United Kingdom)フィルムを感光させた後に現像することにより可視化した。各上清を用いて探査したブロットを同時に分析し、同一Hyperfilm上に同時に現像した。
【0124】
結果
EAEC接着に対するリファキシミンの効果。細菌付着に対するリファキシミンの効果を、まずはEAEC分離株をそれらのスタックトブリック(stackedbrick)接着パターン(8、15)を基に表現型的に定義するために一般に行われている標準HEp-2細胞接着アッセイを利用して調べた。HEp-2細胞をコンフルエントな状態まで増殖させた後に、リファキシミン、リファンピン、ドキシサイクリン、またはアセトンと共にインキュベートした。24時間後、EAEC株O42の添加に先立ってウェルを洗浄した。EAEC O42は、無処理のHEp-2細胞(図1A)またはリファンピン、ドキシサイクリン、もしくはアセトンで処理したHEp-2細胞(データは示さず)に従来のスタックトブリック構造で接着した;とは言え、リファキシミンで前処理したHEp-2細胞への接着のレベルは大幅に低下した(図1B)。これらの効果は時間および濃度に依存的であった;とは言え、64 mg/mLのリファキシミンによる24時間の前処理が細菌付着に対する最大効果を有していたため、この投与量を以後の実験に使用した。
【0125】
様々な抗生物質による前処理後のHEp-2細胞または対照へのEAEC接着を定量化した。リファキシミンで前処理した細胞へのEAEC接着のレベルは、無処理細胞またはリファンピン、アセトン(図1C)、もしくはドキシサイクリンで処理した細胞への接着のレベルよりも有意に低かった。細菌数の差は上清においては認められなかった(図1C)。
【0126】
HEp-2細胞のリファキシミン前処理後のEAEC接着に認められた減少が他の細胞型または細菌にまで及ぶかどうかを判定するために、本発明者らは3種のさらなる細胞系へのEAEC O42 接着を調べた。本発明者らは、2種の大きく異なる病原体:炭疽菌およびソンネ赤痢菌を使用して、接着および内在化に対するリファキシミン前処理の効果を調べた。
【0127】
HEp-2、HCT-8、A549、およびHeLa細胞へのEAEC接着を、先に記載した通りに接着アッセイを行うことにより測定した。各細胞系を24ウェルプレート中でコンフルエントな状態まで増殖させてから、抗生物質を含有しないかまたは64 mgのリファキシミン、リファンピン、ドキシサイクリン、もしくはアセトン(64 mL)を含有する新鮮な培地を24時間添加した。リファキシミン前処理は、HEp-2、HeLa、およびA549細胞へのEAEC接着を有意に減少させた。わずかに少ない数の細菌がリファキシミンで前処理したHCT-8細胞に接着したが、この差は有意ではなく、このことはリファキシミンに対する細胞の感受性の差を示唆している(図2)。
【0128】
炭疽菌およびソンネ赤痢菌の接着および内在化を測定することにより、リファキシミン前処理が異なる細菌においてこれらのプロセスに影響を及ぼすかどうかを判定した。炭疽菌は炭疽の原因物質であるグラム陽性の芽胞形成細菌である。ヒトは肺または腸への芽胞の侵入を介して、または皮膚の擦過傷を介して感染し;感染症は敗血症ならびに髄膜炎および潜在的死亡を含む二次的症状を招く可能性がある。最近になって、Y. Xuの研究室によりA549肺上皮細胞において炭疽菌Sterne株7702に関する接着および内在化のモデルが(ゲンタマイシン保護アッセイを利用して)確立され、本研究ではこれらのプロセスにおけるリファキシミンの役割を調べるために該モデルに修正を加えた。ソンネ赤痢菌はヒトにおいてその結腸粘膜の内側を覆う細胞内に侵入して複製することにより疾患を引き起こす腸内細菌科ファミリーのグラム陰性メンバーである。4つの赤痢菌属の種のうち、ソンネ赤痢菌は先進国における細菌性赤痢の最も多い原因である。
【0129】
各抗生物質(または対照)とのインキュベーション後、リファキシミンで前処理したA549細胞において、炭疽菌の接着および内在化の両方に、内部(internal)ゲンタマイシン単独処理群を含む他の処理群のものと比べて有意な減少が認められた(図3AおよびB)。対照的に、HeLa細胞のリファキシミン前処理は、調べた条件下では他の処理群の効果と比べてソンネ赤痢菌の付着または内在化に対する効果を有していなかった(図3CおよびD)。
【0130】
EAEC接着に対するHEp-2上清の効果。HEp-2細胞へのスタックトブリック構造でのEAEC接着はEAEC分離株を定義付けるための絶対基準(gold standard)であるため、本発明者らは次に、リファキシミン前処理後のEAEC接着に認められた減少が、処理細胞の上清を介して付与されうるHEp-2細胞の生理機能におけるリファキシミン媒介性の変更に起因するものかどうかを確認しようと試みた。この目的のために、HEp-2細胞を、64 mg/mLのリファキシミン、リファンピン、またはドキシサイクリン(またはアセトン[64μL/mL])を含有する培地で24時間増殖させた。その後上清を採集し、さらに6〜8 kDa-カットオフ透析チューブを使用して十分に透析することにより、各処理群に使用した抗生物質のあらゆる痕跡を除去した。これにより、接着に対する上清の効果を調べるために各抗生物質処理群に対応する透析培地をEAECと混合した場合に、観察されるいかなる変化も培地中の抗生物質によらないことを保証した。透析後、前記上清を滅菌濾過してからEAECと混合し、さらにHEp-2細胞(50%コンフルエント)を含むかまたは含まないチャンバースライドへの接着を調べた。3時間のインキュベーション後、該スライドを先に記載した通りに洗浄し染色した。HEp-2細胞単独、すなわち、抗生物質処理を行わなかった(図4AおよびC)HEp-2細胞から得た透析上清、またはリファンピン(図4B)、ドキシサイクリン、もしくはアセトンで前処理したHEp-2細胞から得た透析上清と混合したEAECは、HEp-2細胞の存在とは無関係にチャンバーに接着した(図4AおよびBはHEp-2細胞を含む;図4CはHEp-2細胞を含まない)。PBSと混合しかつチャンバーに3時間直接添加したEAECは図4A〜Cに見られる接着パターンと区別できない様式で接着し(データは示さず)、このことは、細菌接着パターンは接着アッセイに使用した培地/緩衝液による影響を受けないことを示唆している。対照的に、リファキシミンで処理したHEp-2細胞から得た透析上清と混合したEAECは、HEp-2細胞の存在下でも非存在下でも(それぞれ、図4DおよびE)チャンバーウェルへの接着が不十分であった。
【0131】
サイトカインアレイ。リファキシミンで処理したHEp-2細胞から採集した上清はEAEC接着に変化を与える能力を有していたため、本発明者らは、24時間インキュベートしただけ(図5A)か、またはリファンピン(図5B)もしくはリファキシミン(図5C)で前処理(24時間)した各上清のサイトカインプロファイルを定義した。GM-CSF、MIP4、MIP5、MMP3、RANTES、TGF-b、IFN-g、TNFRI、TNFRII、VCAM-1、VEGF、IL-4、IL-6、IL-8、IL-12(p40)、およびIL-15が無処理細胞(図5A)、ドキシサイクリン処理細胞、またはアセトン処理細胞(データは示さず)の上清中に見出された。リファンピンで処理した細胞の上清は、MIP5が検出されなかったことを除いては前記と同一のプロファイルを有していた(図5B)。対照的に、リファキシミンの存在下で培養したHEp-2細胞から分析した上清は、検出可能なレベルのRANTESおよびIL-4のみを含有していた(図5C)。
【0132】
考察
本実施例において、本発明者らは、全処理群の上清から同数の細菌が回収可能であったことから、リファキシミン前処理はEAECの生存能力に影響を及ぼすことなくHEp-2細胞への細菌接着を減少させる、ということを示した。対照的に、リファキシミンで前処理したコンフルエントなHEp-2細胞に接着した細菌の数は、対照抗生物質で処理した細胞または無処理で放置した細胞から回収可能なEAEC細菌の数よりも有意に少なかった。
【0133】
本実施例において提示した前記のデータは、様々な上皮細胞型に与えたリファキシミン媒介性変化が、宿主細胞を生物学的に変更することによりEAEC付着を減少させたことを示している。これらの効果は炭疽菌の接着および内在化にまで及んだ。これらの観察結果は、リファキシミンとその近縁物質リファンピンとの間には有意な機能差が存在することを示している。
【0134】
実施例2:大腸菌およびソンネ赤痢菌の毒力のリファキシミン誘発性の変更
以下の実験により、リファキシミンは結腸フローラの重大な変更を伴うことなく旅行者下痢の持続期間を短縮することが示された。本研究では、リファキシミン(8、32、および64 mg/L)に4、8、18、および24時間曝露した下痢原性の大腸菌およびソンネ赤痢菌株の毒性因子(耐熱性[ST]および易熱性[LT]のエンテロトキシン、表面接着因子[CS2/CS3、CS6]、ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼ-9[MMP-9])の発現と、インターロイキン-8(IL-8)誘導能力を調査した。ETEC分離株はST/LT、CS2/CS3、またはCS6を発現せず;EAECおよびソンネ赤痢菌分離株は検出可能な量のMMP-9を産生しなかった。IL-8の誘導は検出できなかった。発育阻止濃度以下の濃度では、リファキシミンはETEC、EAEC、およびソンネ赤痢菌分離株の毒力を変更した。これらの知見は、結腸フローラの最小変更によらないリファキシミンの効力を説明するのに役立つ。
【0135】
材料および方法
研究用分離株
5つの毒素原性大腸菌株、2つの腸管凝集性大腸菌株、および1つのソンネ赤痢菌分離株を本研究に含めた。該分離株は、2004年の夏にMexicoのGuadalajaraで罹患したTD患者から以前に同定されたものである(5)。あらゆる実験手順(図6)に先立って、全ての研究用分離株をリファキシミンに対して最小発育阻止濃度(MIC)について試験した。リファキシミンに対する全分離株の感受性を、Clinical and Laboratory Standards Instituteの提言を受けて寒天希釈法により測定した。ミューラーヒントン(MH)ブロスをメーカー(Becton Dickinson, Cockeysville, MD)の説明書に従って調製し、リファキシミンをアセトン中に溶解させてからMHブロスで2倍希釈物を調製した。
【0136】
リファキシミンへの分離株の曝露
全分離株は、アセトンを単独で含有するMHブロス(品質管理用)またはアセトンで希釈した様々な濃度のリファキシミン(8、32、または64 mg/L)を含有するMHブロス中37℃で可変期間(4、8、18、および24時間)増殖させた。次に、MHブロスを増殖のためにマッコンキー寒天上に蒔いた。次に、生存ETEC分離株を、ETEC定着因子の発現のために定着因子抗原寒天(1%カザミノ酸、0.15%酵母エキス、0.41 mM MgSO4、0.04 mM MnCl2、1%アガロース、pH 7.4)プレート上で増殖させた。
【0137】
RNA抽出および逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
全RNAは、マッコンキー寒天上で増殖中のETEC株からRNeasyキット(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して抽出した。抽出したRNAを、メーカーの説明書に従ってDNアーゼ(DNaseAmpグレードキット;Invitrogen, Carlsbad, CA)で処理した。RNAの濃度および完全性は、分光光度計を使用し260/280 nmで、さらに1%アガロースゲル上でのゲル電気泳動により、確認した。試料を希釈してから、使用まで-70℃で保存した。
【0138】
抽出した全RNA試料を2ステップRT-PCRに供した。逆転写はSensiscript RT-PCRキット(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して実施した。要約すると、等量(1.5μL)の全RNA(1.5 pg〜15 ng)を、10μLの反応緩衝液(1X 逆転写酵素[RT]緩衝液、200 nM dNTP、1ユニットのRT、5ユニットのRNAアーゼ阻害剤[Roche, Mannheim, Germany])中で、耐熱性(ST)および易熱性(LT)のエンテロトキシンならびに表面接着因子CS2/CS3およびCS6のための800 nMのリバースプライマーと混合し、さらに37℃で1時間インキュベートした。次いで、RT酵素を不活性化するために試料を93℃まで5分間加熱した。
【0139】
RT反応に続き、ST、LT、CS2/CS3、およびCS6遺伝子についてのPCR増幅を行った。このポリメラーゼ連鎖反応は、1ユニットのTaqポリメラーゼ(Sigma-Aldrich, St Louis, MO)、5μLの10X PCR反応緩衝液(1.5 mM MgCl2 [Sigma-Aldrich, St Louis, MO]、200 nMのdNTP [Roche, Mannheim, Germany])、および80 nMの各プライマーを含有する50μLの反応液中で実施した。以下のプライマー対:ST、フォワード5’-tcaccttcccctcaggatg-3’およびリバース5’-tacaagcaggattacaacac-3’;LT、フォワード5’-acggcgttactatcctctc-3’およびリバース5’-tggtctcggtcagatatgtg-3’;CS2/CS3、フォワード5’-agccacactggaactgagac-3’およびリバース5’-agccatttcaccgctacac-3’;CS6、フォワード5’-ctttgaggggcaggttttcgt-3’およびリバース5’- cttagagagaggccgtcgga-3’を使用した。増幅条件は、94℃で5分間の初期変性ステップと、その後の25回のサイクル(94℃(30秒)、57℃(30秒)、および72℃(30秒))を含むものとした。最後の伸長は72℃で5分間実施した。LTの増幅には、2 mMまでのMgCl2の増加と160 nMまでの各プライマーの増加を含めた、若干変更した条件が必要であった。さらに、サイクル数を27回まで増やし、アニーリング温度を55℃まで下げた。ポリメラーゼ連鎖反応産物は1%アガロースゲルを使用して可視化した。ST、CS2/CS3、およびCS6遺伝子に対応する適切なサイズの単一バンドPCR産物が全ての反応において得られた。
【0140】
マトリックスメタロプロテイナーゼ-9検出
マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)の発現は、マッコンキー寒天上で増殖中の全ての生存EAECおよびソンネ赤痢菌分離株においてゼラチンザイモグラフィーを利用して分析した。分離株を1 mLの0.1 Mリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.2)に懸濁してから、1000gで10分間、4℃にて遠心分離した。その上清を、修正したHeussenおよびDowdleのプロトコル(9)を使用してMMP-9活性を検出するためにゼラチンザイモグラフィーに供した。要約すると、該上清を試料緩衝液(125 mM トリス-HCl、pH 6.8、20%グリセロール、4%ドデシル硫酸ナトリウム、0.02%ブロムフェノールブルー)で1:2に希釈してから、20μLを1 mg/mLのゼラチンを含有する10%SDS-PAGEゲル上に載せた。染色済みの標準タンパク質を分子量マーカーとして使用した。電気泳動後、ゲルをインキュベーション緩衝液(2.5%トリトンX-100、50 mM トリス-HCl、pH 7.4、0.02%Brij 35、10 mM CaCl2、2μM ZnCl2)を用いて1時間室温ですすぐことによりSDSを除去した。次に、ゲルを37℃で一晩インキュベートし、続いてクーマシーブリリアントブルーR-250(Thermo Fisher Scientific, Inc, Rockford, IL)で染色した。ゼラチン分解活性を持つタンパク質はバックグラウンドに明瞭な分解バンドとして出現した。マトリックスメタロプロテイナーゼ-9を全てのゼラチン分解タンパク質の中からサイズによって同定した。
【0141】
インターロイキン-8(IL-8)放出に関するHCT-8細胞培養アッセイ
ヒト腸管腺癌細胞系であるHCT-8を使用することにより、以前に公開(Huang, 2004 #15)された通りに炎症性モジュレーターを研究した。HCT-8細胞(ATCC CCL-244;アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、Rockville, MD)の単層を、24ウェル培養プレート(Corning Costar, Corning, NY)内の100 U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および0.25μg/mLのアンホテリシンBを補ったRPMI 1640培地(Sigma-Aldrich Co, St Louis, MO)中で増殖させた。それらを10%ウシ胎仔血清(HyClone, Logan, UT)を補った培地で維持し、およそ4×105個の細胞/ウェルのコンフルエント状態となるまで増殖させた。
【0142】
HCT-8細胞を、抗生物質および血清を含まないRPMI 1640培地中100:1の割合で3組ずつ、マッコンキー寒天から回収したEAEC株に感染させた。細胞を加湿チャンバー内で5%CO2を含有する雰囲気中37℃にて3時間インキュベートし、その後上清を採集した。各ウェル中のIL-8の上清濃度は、市販のヒトIL-8用固相酵素免疫測定法キット(R&D Systems, Minneapolis, MN)を利用して測定した。全ての試料を2回試験し、その平均値を報告した。
【0143】
結果
MIC値
あらゆる実験手順の開始に先立って、全ての分離株の抗菌物質感受性試験を実施した。全てのETECおよびEAEC分離株は64 mg/L〜128 mg/LのMIC値を有していた(3つのETEC分離株は64 mg/LのMIC値を有しており、また2つは128 mg/LのMIC値を有しており;2つのEAEC分離株はリファキシミンに対して64 mg/LのMIC値を有していた)のに対し、ソンネ赤痢菌分離株は16 mg/LというMIC値を有していた。
【0144】
リファキシミン曝露後の分離株の生存能力
全てのETEC株は、リファキシミン8、32、および64 mg/Lへの4および8時間の曝露後ならびにリファキシミン8および32 mg/Lへの18時間の曝露後に生存可能であった。ETEC分離株は、リファキシミン64 mg/Lへの18時間の曝露後またはリファキシミン32および64 mg/Lへの24時間の曝露後に生存可能なものはなかった。EAEC分離株は、リファキシミン8、32、および64 mg/Lに関しては4、8、および18時間の時点で生存可能であった。該EAEC分離株はリファキシミン8 mg/Lへの24時間の曝露後でも生存可能であったが、生存分離株はリファキシミン32および64 mg/Lへの24時間の曝露後には回収されなかった。ソンネ赤痢菌分離株はリファキシミン8 mg/Lに4、8、18、および24時間曝露した際に生存可能であった;とは言え、ソンネ赤痢菌分離株は、リファキシミン32または64 mg/Lへの曝露後は調べたいずれの時点においても生存不能であった。
【0145】
ETEC分離株における毒性因子
リファキシミンに曝露したETEC分離株による毒性因子の発現を表1にまとめた。生存ETEC分離株は、リファキシミン8、32、および64 mg/Lへの4および8時間の曝露後に調べた全ての毒性因子(ST、LT、CS2/CS3、CS6)を発現した。18時間の時点では、全ての毒性因子がリファキシミン8 mg/Lへの曝露後に発現されたが、リファキシミン32 mg/Lへの曝露後には因子は見られなかった。分離株は、リファキシミン64 mg/Lに18時間曝露した際には生存不能であった。分離株はリファキシミン8 mg/Lへの24時間の曝露後に生存可能であったが、これらの分離株はどの毒性因子も発現しなかった。分離株は、リファキシミン32または64 mg/Lへの曝露後24時間の時点では生存不能であった。
【表1】

【0146】
EAECおよびソンネ赤痢菌分離株における毒性因子
前記EAEC分離株はリファキシミン8 mg/Lへの4および8時間の曝露後にMMP-9を発現した。18時間の時点では、一方のEAEC分離株はMMP-9を産生したが、他方の分離株は産生しなかった。いずれの分離株もリファキシミン8 mg/Lで24時間後に生存可能であったが、MMP-9は検出不能であった。同様に、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9はリファキシミン32または64 mg/Lで4、8、または18時間後のいずれの分離株の上清においても検出不能であったが、それら分離株はこれらの時点で生存可能であった。いずれの分離株もリファキシミン32または64 mg/Lの後24時間の時点では生存不能であった。ソンネ赤痢菌分離株の場合、MMP-9はリファキシミン8 mg/Lへの4時間の曝露後にのみ検出可能であり;他の時点およびリファキシミン濃度では、MMP-9が検出不能であったか、または該分離株が生存不能であった。
【0147】
リファキシミン8または32 mg/Lに4または8時間曝露したEAEC株はHCT-8細胞からのIL-8産生を誘発した。リファキシミン64 mg/Lに4時間曝露したEAEC分離株もまたIL-8産生を引き起こした。他の全ての時点およびリファキシミン濃度では、インターロイキン-8はEAEC株によるHCT-8感染後に検出されなかったか、またはEAEC株は生存不能であった。
【0148】
本実施例により、発育阻止濃度以下の濃度(すなわち、生存を可能にする濃度)のリファキシミンは、旅行者下痢の2つの主因(ETECおよびEAEC)ならびにソンネ赤痢菌の毒力ならびに生物学的特性を変更することが示された。ETEC毒性因子ST、LT、CS2/CS3、およびCS6の発現は、発育阻止濃度以下の濃度のリファキシミンに曝露すると低下した。リファキシミン8、32、もしくは64 mg/Lに18時間、またはリファキシミン8 mg/Lに24時間曝露した生存EAEC分離株は、in vitroでHCT-8細胞からのIL-8産生を誘発しなかった。さらに、EAECまたはソンネ赤痢菌におけるMMP-9産生はリファキシミンに曝露すると阻害された。まとめると、これらのデータは、発育阻止濃度以下の濃度のリファキシミンへのin vitro曝露後の、TDを患う患者から分離された病原体における毒性因子の喪失を示唆している。
【0149】
本研究は、下痢原性大腸菌を原因とするTDの持続期間はリファキシミン治療により病原体および結腸フローラの数の大幅な減少を伴わずに首尾よく短縮されるという知見を説明するものである。非侵襲性細菌によるGI感染症の治療では、リファキシミンは生物の毒力とその後の濃度および時間依存的な増殖および阻害ならびに病原体の死滅に関する初期効果を有している場合がある。リファキシミンはその複数の有益な特質により、TDの予防および治療のための理想的な抗生物質となる。
【0150】
実施例3:リファキシミンおよびリファンピンに対するC.ディフィシルのin vitro感受性
本実施例により、リファキシミンはin vitroでC.ディフィシルに対して高レベルの活性を有することが示された。リファンピンに対する耐性の測定からはリファキシミン耐性は予測されなかった。
【0151】
方法
菌株
糞便試料は、HoustonのTexas Medical Center内にある大学病院に入院中の、2006年8月から2007年12月の間に下痢を発症した複数の治療継続成人患者から採集した。全ての糞便試料を、病院の臨床検査室で組織培養アッセイ(Tech Lab(登録商標)Inc, Blacksburg, VA)によりC.ディフィシルのサイトトキシンBについてスクリーニングした。サイトトキシンBに対して陽性の試料を採集の3日以内に研究所に持ち出し、およそ1 gまたは1 mLの大便を等量の無水エタノールと穏やかに混合してから室温で60分間インキュベートした。その上清を廃棄し、得られたペレットのアリコートをC.ディフィシル選択的サイクロセリン-セホキシチンフルクトース寒天プレート(Remel, Lenexa, KS)上に植え付けた。該プレートを嫌気的条件下37℃で48〜72時間培養した。C.ディフィシルの推定コロニーを形態および匂いにより同定し、その後7%のウマ血液を含むTrypticase(商標)ソイブロス(Becton, Dickinson and Company, Sparks, MD)中で-80℃で保存した。C.ディフィシルのコロニーは、16S rRNA遺伝子のコード領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により確認した。[26]確認したC.ディフィシル分離株と2種の対照菌株(ATCC 43593およびATCC 700057)を、トキシンAおよびBならびにBTに関する遺伝子の存在とtcdC-delについてPCRにより分析した。
【0152】
感受性試験
リファンピンに対するC.ディフィシル分離株の感受性は、リファンピンEストリップ(Etest(登録商標);AB Biodisk, Piscataway, NJ)を用いて判定した。リファキシミン(Xifaxan(登録商標);Salix Pharmaceuticals, Inc, Morrisville, NC)に対するC.ディフィシル株の感受性は、Clinical and Laboratory Standards Institute(登録商標)(CLSI)により開発された判定基準をベースとした寒天希釈法を用いて判定した。[29]リファキシミンを10,240μg/mLの濃度でアセトン中に溶解させてから、1024μg/mL〜0.016μg/mLの濃度を提供するために滅菌水で連続2倍希釈物を作製した。希釈したリファキシミンを、メーカーの説明書(Becton, Dickinson and Company, Sparks, MD)に従って調製したミューラーヒントン(MH)寒天に添加した。C.ディフィシル分離株をMH寒天プレート上に植え付けてから、嫌気的条件下37℃で48時間インキュベートした。品質管理のために、大腸菌(ATCC 25922)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 29213)、およびC.ディフィシル(ATCC 700057)の対照菌株に対する最小発育阻止濃度(MIC)を各抗菌剤について測定した。寒天希釈プレート上で該菌株の可視増殖を完全に阻害した試験抗菌剤の最低濃度をMICとした。リファキシミンまたはリファンピンに対する耐性はMIC≧32μg/mLと定義した。
【0153】
結果
入院後に下痢を発症した324人の患者から取得した、C.ディフィシルに似ている計396の細菌分離株を分析した。分析したこれら396分離株のうち、359がC.ディフィシルであることを確認した。リファキシミンおよびリファンピンはC.ディフィシル分離株に対して高レベルの活性を呈し、該分離株の90%の発育が阻止されたMIC(MIC90)はそれぞれ0.25μg/mLおよび4μg/mLであり;該分離株の50%の発育が阻止されたMIC(MIC50)はそれぞれ<0.01μg/mLおよび<0.002μg/mLであった(表2)。分析した359分離株のうちの28(8%)はリファンピンに対して耐性であり、またこれら28分離株のうちの6はリファキシミンに対して耐性であった(すなわち、MIC値≧32μg/mL;表3)。前記359分離株のうちの計11(3%)はリファキシミンのみに対して耐性を示した。全ての対照分離株は、CLSIにより発表されている既定範囲内のMIC値を有していた。[29]
【表2】

【表3】

【0154】
分析した359のC.ディフィシル分離株のうち、318(89%)はトキシンAおよびBに関する遺伝子を含有しており、106(30%)はBTをコードする遺伝子を含有しており、さらに86(24%)はtcdC-delを含有していた。55(15%)分離株はBTおよびtcdC-delに対して陽性であった。リファンピンおよびリファキシミン耐性分離株は、それらの全体的な遺伝子構成の点で異なっていた(表4)。
【表4】

【0155】
考察
今回のin vitro研究では、リファキシミンはC.ディフィシル分離株に対して高レベルの活性を示した。本研究でリファキシミンについて観察されたC.ディフィシル分離株に対する低いMIC値(MIC50は<0.01μg/mL;MIC90は0.25μg/mL)は、以前の研究からのデータに似ている。1983年から2004年の間に米国(近年の流行株を含む)、南アメリカ、および欧州から取得した110のC.ディフィシル分離株の分析により、リファキシミンについてのMIC50値およびMIC90値(それぞれ、0.0075μg/mLおよび0.015μg/mL)が報告された。[21]同様に、1992年から2007年の間にカナダにある2ヶ所の三次医療施設および1ヶ所の公衆衛生研究所から取得した201のC.ディフィシル分離株の検査により、リファキシミンについてのMIC50値およびMIC90値(それぞれ、0.008μg/mLおよび0.015μg/mL)(JA Karlowsky, N Laing, M Alfaらが、the 47th Annual Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy[Chicago, IL, 2007年9月17〜20日]において発表)が示された。本研究では、リファキシミンについてのMIC90(0.25μg/mL)はリファンピンについてのMIC90(4μg/mL)よりも低く、このことは、リファキシミンはCDIに対してリファンピンよりも有効な場合があることを示唆している。
【0156】
また本研究により、リファンピン耐性分離株の割合が本研究では以前に報告された割合[30]よりも低いという事実にもかかわらず、より少数の分離株がリファンピン(359分離株のうち28[8%])よりもリファキシミン(359分離株のうち11[3%])に対して耐性を示したということも示された。本研究において示された、リファキシミン耐性分離株の割合の低さは、他の研究において報告されたものと類似している。複数の場所から取得した110のC.ディフィシル分離株のある研究では、該分離株のうちの2.7%がリファキシミンに対してMIC値に基づく耐性を示した。カナダで行われた他の研究では、リファキシミンは、201のC.ディフィシル分離株のうちのわずか4%において>2μg/mLのMIC値を有していた(JA Karlowsky, N Laing, M Alfaらが、the 47th Annual Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy[Chicago, IL, 2007年9月17〜20日]において発表)。
【0157】
本研究では、前記359分離株のうちのわずか6(2%)がリファンピンとリファキシミンの両方に対して耐性を示し、このことは、リファンピン耐性とリファキシミン耐性との相関関係の欠如を示している。このことは、1つのリファマイシン誘導体に対する耐性からは全てのリファマイシンに対する耐性は予測されないということを明示している。
【参考文献】
【0158】
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参照による組み込み
本出願を通じて引用した全ての参考文献、特許、係属中の特許出願の内容は、参照により本明細書中に明確に組み込まれるものとする。
【0159】
等価物
当業者であれば、本明細書中に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を認識するか、または通常程度の実験を利用して確認できるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてC.ディフィシル感染症(CDI)を治療する方法であって、以下:
対象にリファキシミンを投与すること、
それによってCDIを治療すること
を含む上記方法。
【請求項2】
前記CDIがバンコマイシンに対して耐性を示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記CDIがメトロニダゾールに対して耐性を示す、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記CDIがリファンピンに対して耐性を示す、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記CDIが院内感染性である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記CDIがC.ディフィシルの強毒株により引き起こされる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記強毒株がトキシンA、トキシンB、およびバイナリートキシンのうちの1つ以上をコードする遺伝子を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記強毒株がtdcC遺伝子内に欠失を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
対象において旅行者下痢(TD)を引き起こす細菌の毒力を変更する方法であって、以下:
TDを有する対象にリファキシミンを投与すること;
それによってTDを引き起こす細菌の毒力を変更すること
を含む上記方法。
【請求項10】
前記の細菌の毒力を低下させる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記毒力を、1つ以上の毒性因子の発現を低下させることにより低下させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記の1つ以上の毒性因子が耐熱性エンテロトキシン(ST)および易熱性エンテロトキシン(LT)からなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記毒力を、1つ以上の表面接着因子の発現を低下させることにより低下させる、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記の1つ以上の表面接着因子がCS2/CS3およびCS6からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記毒力を、1つ以上のエンドペプチダーゼの発現を低下させることにより低下させる、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記の1つ以上のエンドペプチダーゼがマトリックスメタロプロテアーゼである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
1つのマトリックスメタロプロテアーゼがMMP-9である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
リファキシミンを殺菌濃度以下の濃度で投与する、請求項9記載の方法。
【請求項19】
前記細菌が大腸菌である、請求項9記載の方法。
【請求項20】
前記大腸菌が毒素原性大腸菌(ETEC)または腸管凝集性大腸菌(EAEC)である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記細菌が炭疽菌である、請求項9記載の方法。
【請求項22】
細菌が上皮細胞に付着するその能力を低下させるための方法であって、以下:
上皮細胞を細菌への曝露に先立ってリファキシミンと接触させること、
それによって該細菌が該上皮細胞に付着するその能力を低下させること
を含む上記方法。
【請求項23】
前記細胞からの炎症性サイトカイン放出が阻害される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記細菌が大腸菌である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記大腸菌が毒素原性大腸菌(ETEC)または腸管凝集性大腸菌(EAEC)である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記細菌が炭疽菌である、請求項22記載の方法。
【請求項27】
前記細菌が旅行者下痢を引き起こす、請求項22記載の方法。
【請求項28】
対象の上皮細胞への細菌接着を特徴とする疾患または障害を予防する方法であって、以下:
対象に細菌への曝露に先立ってリファキシミンを投与すること、
それによって上皮細胞への細菌接着を特徴とする疾患または障害を予防すること
を含む上記方法。
【請求項29】
前記細菌が大腸菌である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記大腸菌が毒素原性大腸菌(ETEC)または腸管凝集性大腸菌(EAEC)である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記細菌が炭疽菌である、請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【公表番号】特表2013−520432(P2013−520432A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554015(P2012−554015)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2011/025170
【国際公開番号】WO2011/103246
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512213457)サリックス ファーマスーティカルズ,リミテッド (1)
【出願人】(505359366)ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (6)
【Fターム(参考)】