説明

感染症判定装置及び情報処理装置、情報処理方法

【課題】感染症の可能性の有無を判断することが可能な感染症判定装置を提供する。
【解決手段】感染症判定装置100であって、体温測定部120と、振動数(心拍数、呼吸数)測定部130と、通常モードと判定モードとを切り替える切替部と、前記判定モードのもとで前記体温測定部120による測定により得られた被検者の体温データと、前記通常モードのもとで記憶された体温データと、前記判定モードのもとで前記振動数測定部130による測定により得られた前記被検者の振動数データと、前記通常モードのもとで記憶された振動数データとを用いて前記被検者の細菌感染症の可能性を示す評価値を算出する算出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症を判定する感染症判定装置及び情報処理装置、情報処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肺炎や尿路感染症等の感染症は、現在、高齢者の死亡原因の上位を占めている。一般に、これらの多くは細菌感染症であり、初期段階における症状がウィルスによるかぜ等の症状と似かよっており、区別がつきにくい一方で、対処が遅れた場合には、重篤化し、死に至る確率も高い。このため、早期の発見及び治療が重要となってくる。
【0003】
通常、肺炎は、医師が聴診器で胸部の音を聞くことにより判断が可能であり、かつ、胸部X線検査を行うことで、確実に診断を行うことができる。また、尿路感染症については、血液検査や尿の培養、腹部CT検査、腹部エコー検査等を行うことで、診断することができる。つまり、細菌感染症は、適切な検査設備のもとで医師等による診断を受ければ、重篤化を確実に回避することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような検査設備を備え、医師が常駐している病院や特定の介護施設等であれば、早期に診断が可能である一方で、在宅介護を受けている高齢者や、一般の介護施設、あるいは、医療過疎地域にいる高齢者等の場合には、そもそもこのような診断を早期に受けることが困難である。
【0005】
例えば、検査設備がなく、判断する医師もいない状況下では、介護者等が、肺炎や尿路感染症等の細菌感染症をかぜ等の他の疾病と区別し、細菌感染症の疑いがあるか否かを判断したうえで、早期に病院に搬送させるといった処置をとる必要がある。
【0006】
しかしながら、重篤であるにも関わらず見かけの症状が乏しいケースも少なくなく、介護者等がそのような判断まで行うことは容易ではない。また、細菌感染症の疑いがあると判断した場合であっても、しばらく様子を見てから対処するのが一般的である。このため、結果として、重篤化した状態で病院に搬送されてくるケースも多い。
【0007】
このようなことから、上述のような介護現場や医療過疎地域では、介護者等でも簡単に測定を行うことができ、かつ、細菌感染症の有無や重篤度を確実に判断することが可能な装置の提供が望まれている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡単に測定を行うことができ、かつ細菌感染症の有無を判断することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る感染症判定装置は以下のような構成を備える。即ち、
被検者の体温を測定する体温測定部と、
該被検者の振動数を測定する振動数測定部と、
前記体温測定部による測定により得られた体温データと、前記振動数測定部による測定により得られた振動数データとを、前記被検者を識別する識別子と対応付けて記憶部に記憶する第1のモードと、前記体温測定部による測定により得られた体温データと、前記振動数測定部による測定により得られた振動数データとを用いて、前記被検者の細菌感染症の可能性の有無を判定する第2のモードとを切り替える切替部と、
前記第2のモードのもとで前記体温測定部による測定により得られた前記被検者の体温データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された体温データと、前記第2のモードのもとで前記振動数測定部による測定により得られた前記被検者の振動数データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された振動数データとを用いて、前記被検者の細菌感染症の可能性を示す評価値を算出する算出部と、
前記算出部により算出された評価値を表示する表示部とを備える。
【0010】
なお、前記振動数は心拍数及び/または呼吸数である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単に測定を行うことができ、かつ細菌感染症の有無を判断することが可能な装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係る感染症判定装置100の外観構成を示す図である。
【図1B】被検者が感染症判定装置100を用いて測定を行う様子を示した図である。
【図1C】本発明の第2の実施形態に係る感染症判定装置100の外観構成を示す図である。
【図2】感染症判定装置100の機能構成を示す図である。
【図3】感染症判定装置100のモード遷移図である。
【図4】測定モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】表示モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】平常時体温・心拍数手動入力処理及び平常時体温・心拍数算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】細菌感染症リスク評価値算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】測定モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】細菌感染症リスク評価値判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る感染症判定装置における細菌感染症リスク評価値判定処理の概要を説明するための図である。
【図11A】細菌感染症リスク評価値判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図11B】細菌感染症リスク評価値判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図11C】細菌感染症リスク評価値判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る感染症判定装置1200の外観構成を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施形態における感染症判定装置は、被検者の平常時の体温及び心拍数に対する、被検者の現在の体温及び心拍数の変化量(体温変化量、心拍数変化量)を算出し、体温変化量と心拍数変化量との比を評価値として求めることで、細菌感染症の有無を判定する点、更には、呼吸数を評価値として使用することで、重篤度を判定する点に特徴がある。
【0014】
なお、当該評価値は、20未満であれば細菌感染症の可能性が低く、20以上であった場合に細菌感染症の可能性が高まることから、「デルタ心拍数20ルール」とも呼ばれ、例えば、「Modern Physician Vol.29 No.10 2009−10」等においてその詳細が開示されている。
【0015】
このように、ユーザは、被検者の体温と心拍数を測定するだけで、細菌感染症の有無を判断することができるため、検査設備がなく、判断する医師がいない状況下であっても、ユーザによる細菌感染症の早期発見が期待できる。
【0016】
更に、以下の各実施形態における感染症判定装置では、評価値の算出に際して、通常モードと判定モードとを切替可能に設け、被検者の日々の測定結果を利用することで、平常時の体温及び心拍数を算出する構成とした。これにより、評価値の算出に用いるデータ(平常時の体温データ及び心拍数データ)の精度が向上し、細菌感染症の判断の正確度を向上させることが可能となった。以下、各実施形態の詳細について説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
1.感染症判定装置の外観構成
はじめに、本発明の第1の実施形態に係る感染症判定装置100の外観構成について説明する。図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る感染症判定装置100の外観構成を示す図である。
【0018】
図1Aにおいて、110は本体部であり、全体としてタマゴ型の形状を有している。具体的には、正面から見た場合も((A)参照)、側面から見た場合も((B)参照)、楕円形状を有しており、中央部分が厚みのある構成となっている。
【0019】
このような形状としたのは、本実施形態に係る感染症判定装置100が、主に高齢者を被検者としており、高齢者のような腋下の窪みが大きい体形であっても、腋下に挟んだ際に腋下に確実に接触させることができ、安定して測定することができるようにするためである。なお、図1Aに示す感染症判定装置100の外観構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0020】
図1Aの(A)に示すように、本体部110の正面側中央位置の平面には、ユーザインタフェース部111が配されている。
【0021】
ユーザインタフェース部111は、測定された体温や心拍数等の各種データを表示したり、モードの切り替えや設定値の入力を行うためのメニュー項目等を表示する表示部114を備える。また、表示されたメニュー項目に対して、カーソルを移動させたり、決定指示を入力したりするための、操作ボタン112、113を備える。
【0022】
120は体温測定部であり、図1Aの(A)、(B)に示すように、本体部110の頭頂部全体を覆うように配されている。130は生体情報としての振動数である心拍数を測定する心拍数測定部であり、図1Aの(B)に示すように、本体部110の背面側(ユーザインタフェース部111に対向する側)に配されている。
【0023】
体温測定部120と心拍数測定部130とがそれぞれ上述のような配置を有しているのは、本実施形態に係る感染症判定装置100では、被検者の腋下に挟んだ状態で、体温測定と心拍数測定(振動数測定)とを同時に(あるいは連続的に)行うことを前提としているためである。具体的には、体温測定部120が被検者の腋下に接触した状態で、心拍数測定部130は被検者の心臓の側面位置に相当する位置に接触するように構成されている。
【0024】
図1Bは、感染症判定装置100を被検者の腋下に挟む様子を示した図である。図1Bに示すように、感染症判定装置100を被検者の腋下に挟んだ状態で、体温測定部120は、被検者の腋下の領域141に接触するように構成されている。また、心拍数測定部130(図1Bにおいて不図示)は、被検者の心臓の側面位置に相当する領域142に接触するように構成されている。
【0025】
2.感染症判定装置の機能構成
図2は感染症判定装置100の機能構成を示す図である。図2に示すように、感染症判定装置100は、温度に比例した時間分のON信号を出力する温度計測部210(図1の体温測定部120に対応する)と、心拍に応じた変位信号を出力する心拍数計測部270(図1の心拍数測定部130に対応する)と、温度計測部210より出力されたON信号及び心拍数計測部270より出力された変位信号に基づいて各種処理を行い、被検者の体温及び心拍数を演算すると共に、感染症判定装置100全体の動作を制御する演算制御部220と、演算された被検者の体温及び心拍数等を表示する表示部230(図1の表示部114に対応する)と、各種操作を行うための操作部260(図1の操作ボタン112、113に対応する)と、音声データを出力する音声出力部240と、電源部250とを備える。
【0026】
温度計測部210は、サーミスタ、コンデンサ、測温用CR発振回路等から構成されており、サーミスタにより検出された温度を発振信号として出力する。出力された発振信号は内部のカウンタにおいてカウントされることで、デジタル量として出力される。なお、温度計測部210の構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0027】
演算制御部220は、温度計測部210より出力されるON信号のON時間を計測するタイマー222を備える。
【0028】
また、演算制御部220は、タイマー222により計測された時間に基づいて温度データを算出するとともに、算出された温度データの時間変化に基づいて、被検者の体温を予測演算するプログラムや、心拍数計測部270より出力される変位信号に基づいて、被検者の1分間あたりの心拍数を算出するプログラム、ならびに、算出された体温及び心拍数に基づいて、被検者の平常時の体温及び心拍数に対する、被検者の現在の体温及び心拍数の変化量(体温変化量、心拍数変化量)を算出し、体温変化量と心拍数変化量との比を評価値として求め、細菌感染症の可能性の有無を判断するプログラム等が格納されたROM(記憶媒体)224と、算出された温度データを時系列で一時的に記憶したり、算出された体温及び心拍数を一時的に記憶したり、算出された細菌感染症リスク評価値を一時的に記憶したりするためのRAM226と、算出された体温、心拍数及び細菌感染症リスク評価値を、被検者を識別するための識別子と対応付けて格納したり、所定の音声データが予め格納されたEEPROM225と、ROM224に格納されたプログラムに従って演算や判断を行う演算処理部223とを備える。つまり、演算制御部220は、マイクロコンピュータなどのCPU(中央処理装置)と、CPUにより実行される装置全体の制御プログラムや各種データを記憶するROM224と、ワークエリアとして測定データや各種データを一時的に記憶するRAM226などを備えるCPUとして機能する演算処理部223を備えている。
【0029】
更に、演算制御部220は演算処理部223における演算結果を表示する表示部230を制御するための表示制御部227を備える。
【0030】
更に、演算制御部220は、上記タイマー222、表示制御部227、演算処理部223、温度計測部210、心拍数計測部270を制御する制御回路221を備える。
【0031】
3.感染症判定装置におけるモード遷移
次に、感染症判定装置100におけるモード遷移について図3を用いて説明する。図3に示すように、感染症判定装置100におけるモードは、表示モードと測定モードとに大別することができ、測定モードは更に、通常モードと判定モードとに分けることができる。
【0032】
表示モードとは、感染症判定装置100において測定された体温、心拍数及び細菌感染症リスク評価値であって、感染症判定装置100のRAM226またはEEPROM225に記憶された体温及び心拍数のうち、指定された被検者についての平常時の体温及び心拍数や、直近の通常モードにおいて測定された体温及び心拍数、または直近の判定モードにおいて測定された体温、心拍数、及び細菌感染症リスク評価値を表示するモードである。
【0033】
なお、RAM226には判定モードにおいて測定された直近の体温データ、心拍数データ及び細菌感染症リスク評価値、並びに通常モードにおいて測定された直近の体温データ及び心拍数データが格納されているものとする。また、EEPROM225には、通常モードで測定された体温データ及び心拍数データのうち、ユーザにより記憶指示がなされた体温データ及び心拍数データが格納されているものとする。
【0034】
なお、平常時の体温及び心拍数は、EEPROM225に格納されている体温データ及び心拍数データのうち、指定された被検者についての体温データ及び心拍数データに基づいて算出され、表示されるものとする。
【0035】
一方、測定モードとは、感染症判定装置100において体温及び心拍数を測定するモードである。
【0036】
このうち、通常モードは、発熱等が生じていない健康な状態で、体温及び心拍数を測定・表示するモードであり、ユーザからの指示に従って、測定した体温及び心拍数は被検者毎にわけて被検者を識別するための識別子と対応付けてEEPROM225に記憶される。なお、上述したように、通常モードにおいて測定され記憶された体温及び心拍数は、各被検者の平常時の体温及び心拍数を算出するために用いられる。
【0037】
また、判定モードは、発熱等が生じた際に、体温及び心拍数を測定・表示するとともに、被検者の平常時の体温及び心拍数に対する、被検者の現在の体温及び心拍数の変化量(体温変化量、心拍数変化量)を算出し、体温変化量と心拍数変化量との比を評価値として求めて、細菌感染症の可能性について判定し、判定結果に応じてユーザに警報を報知するモードである。
【0038】
4.測定モードにおける処理
次に測定モードにおける処理、判断の流れについて図4を用いて説明する。操作ボタン112、113が操作されることにより、表示部114に表示されたメニュー項目より測定モードが選択され、測定モードに遷移すると、感染症判定装置100では、図4に示す処理を実行する。
【0039】
ステップS401では、現在が通常モードであるのか判定モードであるのかを判断する。ステップS401において、現在が、通常モードであると判断した場合には(表示部114に表示されたメニュー項目において通常モードが選択されていた場合には)、ステップS402に進む。
【0040】
ステップS402では、測定開始指示がなされたか(表示部114に表示されたメニュー項目より測定開始指示が選択されたか)否かを判断し、測定開始指示がなされたと判断するまで待機する。ステップS402において、測定開始指示がなされたと判断した場合には、ステップS403に進み、体温測定処理を行う。なお、体温測定処理は、上記予測演算プログラムに従って実行されるものとするが、本発明は、これに限定されず、他の任意のプログラムにより実行されてもよい。
【0041】
ステップS403における体温測定処理が終了すると、ステップS404では、心拍数測定処理を行い、心拍数測定処理が終了すると、ステップS405では、測定終了ブザーを出力し、被検者に対して、体温測定処理及び心拍数測定処理が終了したことを報知する。
【0042】
ステップS406では、体温測定の結果と心拍数測定の結果とを表示する。更に、体温測定の結果と心拍数測定の結果とを感染症判定装置100内に記憶するか否かをユーザに問い合わせる。
【0043】
ステップS407では、ユーザにより記憶すべき旨の指示が入力されたか否かを判定し、記憶すべき旨の指示が入力されたと判定した場合には、ステップS408に進み、被検者を識別するための識別子及び測定日時と対応付けて、体温測定の結果と心拍数測定の結果とを記憶し、処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS407において、記憶すべき旨の指示が入力されなかったと判定した場合には、そのまま処理を終了する。
【0045】
これにより、通常モードにおいて測定を行った際の体温測定の結果と心拍数測定の結果とが、被検者ごとに蓄積されることとなり、これらの測定結果を用いることにより、各被検者の平常時の体温と心拍数とを、高い精度で求めることが可能となる。
【0046】
一方、ステップS401において、現在が判定モードであると判断した場合には(表示部114に表示されたメニュー項目において判定モードが選択されていた場合には)、ステップS411に進む。ステップS411では、体温及び心拍数を測定しようとしている被検者を識別するための識別子を入力する。
【0047】
ステップS412では、ステップS411において入力された被検者について、通常モードにおいて予め測定した体温と心拍数とが蓄積されているか否かを判定する。ステップS412において、通常モードにおいて予め測定した体温と心拍数とが蓄積されていると判定された場合には、ステップS413に進む。
【0048】
ステップS413では、通常モードにおいて予め測定した体温と心拍数とを用いて、当該被検者の平常時の体温と心拍数とを算出する。なお、平常時体温・心拍数算出処理の詳細は後述する。
【0049】
一方、ステップS412において、通常モードにおいて測定された体温と心拍数とが蓄積されていないと判定された場合には、ステップS414に進む。ステップS414では、ユーザが、被検者の平常時の体温と心拍数とを手動で入力する。なお、平常時体温・心拍数手動入力処理の詳細は後述する。
【0050】
ステップS415では、測定開始指示がなされたか否かを判断し、測定開始指示がなされたと判断するまで待機する。ステップS415において測定開始指示がなされたと判断した場合には、ステップS416に進む。
【0051】
ステップS416では、体温測定処理を行い、ステップS417では、心拍数測定処理を行う。ステップS417における心拍数測定処理が終了すると、ステップS418では、ステップS413において算出された平常時の体温・心拍数またはステップS414において入力された平常時の体温・心拍数と、ステップS416及びステップS417において測定された体温・心拍数とに基づいて、細菌感染症リスク評価値を算出する。なお、細菌感染症リスク評価値算出処理の詳細は、後述する。
【0052】
ステップS419では、測定終了ブザーを出力し、被検者に対して、体温測定処理及び心拍数測定処理が終了したことを報知する。
【0053】
ステップS420では、体温測定の結果と心拍数測定の結果とを表示する。更に、細菌感染症リスク評価値を表示する。
【0054】
ステップS421では、ステップS418において算出された細菌感染症リスク評価値が所定の閾値以上(20以上)であるか否かを判定する。ステップS421において、細菌感染症リスク評価値が20以上であると判定した場合には、細菌感染症の可能性が高いと判断し、ステップS422に進む。ステップS422では、細菌感染症の可能性が高い旨の警報を出力する。一方、ステップS421において、細菌感染症リスク評価値が20未満であると判定した場合には、細菌感染症の可能性が低いと判断し、処理を終了する。
【0055】
5.表示モードにおける処理
次に表示モードにおける処理の流れについて図5を用いて説明する。操作ボタン112、113が操作されることにより、表示部114に表示されたメニュー項目より表示モードが選択され、測定モードに遷移すると、感染症判定装置100では、図5に示す処理を実行する。
【0056】
ステップS501では、ユーザがデータを表示させたい被検者を識別するための識別子を入力する。ステップS501において、被検者を識別するための識別子が入力されると、感染症判定装置100では、表示メニュー項目を表示する。表示モードにおいて表示されるメニュー項目には、例えば、ステップS501において指定された被検者についての、平常時の体温・心拍数と、前回の判定モードにおける体温測定の結果及び心拍数測定の結果及び評価値及び評価値の判定結果と、前回の通常モードにおける体温測定の結果及び心拍数測定の結果等が含まれる。
【0057】
ステップS502では、表示した表示メニュー項目に対して、ユーザがいずれのメニュー項目を選択したかを判定する。ステップS502において平常時の体温・心拍数の表示指示を選択したと判定した場合には、ステップS503に進む。
【0058】
ステップS503では、ステップS501において指定された被検者について、通常モードにおいて測定され、かつEEPROM225に蓄積された体温と心拍数とを用いて、平常時の体温と心拍数とを算出する。なお、平常時体温・心拍数算出処理の詳細は後述する。
【0059】
ステップS504では、ステップS503において算出された、平常時の体温及び心拍数を表示する。
【0060】
一方、ステップS502において、前回の判定モードにおいて測定した測定結果についての表示指示が選択されたと判定した場合には、ステップS505に進む。
【0061】
ステップS505では、ステップS501において指定された被検者について、前回の判定モードにおいて測定した測定結果(体温測定の結果、心拍数測定の結果、評価値、評価値についての判定結果)を読み出す。
【0062】
ステップS506では、ステップS505において読み出した、前回の判定モードにおいて測定した測定結果を、前回の判定モードにおける測定日時とともに、表示する。
【0063】
一方、ステップS502において、前回の通常モードにおいて測定した測定結果についての表示指示が選択されたと判定した場合には、ステップS507に進む。
【0064】
ステップS507では、ステップS501において指定された被検者について、前回の通常モードにおいて測定した測定結果(体温測定の結果、心拍数測定の結果)を読み出す。
【0065】
ステップS508では、ステップS507において読み出した、前回の通常モードにおいて測定した測定結果を、前回の通常モードにおける測定日時とともに、表示する。
【0066】
6.詳細処理について
次に上記測定モード及び表示モードにおける処理の詳細について説明する。
(1)平常時体温・心拍数手動入力処理(ステップS414)の詳細
図6(A)は、平常時体温・心拍数手動入力処理(ステップS414)の詳細を示すフローチャートである。通常モードにおいて予め測定した体温と心拍数とがEEPROM225に蓄積されていないとステップS412において判定した場合に、図6(A)に示すフローチャートを開始する。
【0067】
ステップS601では、一般値を使用するか否かをユーザに問い合わせる。ステップS601における問い合わせの結果、一般値を使用する旨の指示が入力されたと判定した場合には、ステップS602に進み、予め定められた値(例えば、体温値:36.5℃または36.0℃、心拍数:70回/分)を平常時の体温及び心拍数とする。
【0068】
一方、ステップS601における問い合わせの結果、一般値を使用しない旨の指示が入力されたと判定した場合には、ステップS603に進む。ステップS603では、ユーザが手動で入力した被検者の平常時の体温を受け付け、平常時体温とする。更に、ステップS604では、ユーザが手動で入力した被検者の平常時の心拍数を受け付け、平常時心拍数とする。
【0069】
(2)平常時体温・心拍数算出処理(ステップS413、ステップS503)の詳細
図6(B)は、平常時体温・心拍数算出処理(ステップS413、ステップS503)の詳細を示すフローチャートである。通常モードにおいて予め測定した体温と心拍数とがEEPROM225に蓄積されているとステップS412において判定した場合(またはステップS502において平常時の体温・心拍数の表示指示が選択された判定された場合)に、図6(B)に示すフローチャートを開始する。
【0070】
ステップS611では、ステップS411(またはステップS501)において指定された被検者について、通常モード時に測定され、蓄積された体温と心拍数とを読み出す。
【0071】
ステップS612では、ステップS611において読み出された体温と心拍数それぞれについて、ばらつき(σt、σh)を算出する。
【0072】
ステップS613では、ステップS612において算出された体温値のばらつき(σt)に対して、所定の範囲を超える体温値(例えば、3σtを超える体温値)を除いた体温値を用いて、平均値(平均体温データ)を算出し、平常時の体温とする。同様に、所定の範囲を超える心拍数(例えば、3σhを超える心拍数)を除いた心拍数を用いて、平均値(平均拍動数データ)を算出し、平常時の心拍数とする。
【0073】
(3)細菌感染症リスク評価値算出処理(ステップS418)の詳細
図7は、細菌感染症リスク評価値算出処理(ステップS418)の詳細を示すフローチャートである。ステップS701では、ステップS416における体温測定処理の結果(T)を読み出す。ステップS702では、ステップS413において自動算出された、またはステップS414において手動入力された平常時の体温(Tavg)を読み出す。
【0074】
更に、ステップS703では、ステップS417における心拍数測定処理の結果(H)を読み出す。ステップS704では、ステップS413において自動算出された、またはステップS414において手動入力された平常時の心拍数(Havg)を読み出す。
【0075】
ステップS705では、読み出された体温測定処理の結果(T)と平常時の体温(Tavg)との差分と、読み出された心拍数測定処理の結果(H)と平常時の心拍数(Havg)との差分と、を用いて、細菌感染症リスク評価値を算出する。具体的には下式に基づいて算出する。
【0076】
評価値=(H−Havg)/(T−Tavg)
なお、上記式から算出された評価値が20以上の場合には、細菌感染症の可能性が高く、この法則は、デルタ心拍数20ルールとして知られている。
【0077】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る感染症判定装置100では、被検者の平常時の体温及び心拍数に対する、被検者の現在の体温及び心拍数の変化量(体温変化量、心拍数変化量)を算出し、体温変化量と心拍数変化量との比を評価値として求めることで、細菌感染症の可能性を判定する構成とした。この結果、従来のように、特別な検査設備を用いることなく、体温測定と心拍数測定という簡易な測定を行うだけで、医師がいなくても細菌感染症の有無を判断することが可能となった。
【0078】
また、本実施形態に係る感染症判定装置100では、測定モードを通常モードと判定モードとに分け、被検者が日ごろ測定する体温及び心拍数を、被検者ごとに記憶しておく構成とした。そして、判定モードにおいて細菌感染症リスク評価値を算出する際に用いる、平常時の体温及び心拍数を、当該記憶した体温及び心拍数を用いて算出することとした。
【0079】
この結果、平常時の体温及び心拍数を被検者ごとに高精度に求めることが可能となり、細菌感染症リスク評価値に基づく判定を精度よく行うことが可能となった。
【0080】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、被検者の腋下に感染症判定装置を配置することで、被検者の体温および心拍数の測定を行う形態をとったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図1Cの(C)に示すように、センサプローブ140を被検者の外耳道へ挿入し、体温、心拍数(振動数)を測定する構成としてもよい。
【0081】
なお、本実施形態に係る感染症判定装置の構成と、上記第1の実施形態に係る感染症判定装置の構成との相違点は、体温測定部120と心拍数測定部130である。
【0082】
そのため、ここでは当該相違点を中心に説明し、上記第1の実施形態と共通する構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0083】
本実施形態における体温測定部120及び心拍数測定部130はセンサプローブ140の内部に配置される(図1Cの(A))。体温測定部120としては、赤外線センサや熱電対(サーモパイル熱電対)、サーミスタなどを用いることができる。また、心拍数測定部130としては、赤外線センサ、圧力センサなどを用いることができる。
【0084】
心拍数測定部130では、赤外線センサや圧力センサなどから検出されたシグナルの経時振動からフーリエ変換により心拍数成分である1.5Hz付近の周波数成分を抽出することにより、心拍数を算出する。そのため体温測定部120で赤外線センサを用いた場合、1つの赤外線センサで体温と心拍数の両方の測定を行うことができる。なお、周波数解析は、演算処理部223において実施するように構成してもよい。
【0085】
[第3の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、被検者の平常時の体温及び心拍数に対する、被検者の現在の体温及び心拍数の変化量(体温変化量、心拍数変化量)を算出し、体温変化量と心拍数変化量との比を評価値として求め、細菌感染症の可能性を評価する構成としたが、本発明はこれに限定されず、更に呼吸数を加味して評価するように構成してもよい。
【0086】
一般に、健常者の呼吸数は20回/分程度とされ25回/分を越えると頻呼吸として扱われ、特に感染症診断において重要であることが知られている(マクギーの身体診断学 第二版 p131、p243)。更に、呼吸数は細菌感染症における被検者の重篤度を判断する上で有用な指標となっており、具体的には肺炎の重篤度診断基準であるPort Score(N Engl J Med 1997; 336:243−250)及びCURB−65(Thorax 2001; 56:296−301)では呼吸数≧30回/分が重症度判断基準の項目として取り上げられている。また、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症の診断基準項目(米国胸部疾患学会 Critical Care Medicine学会 1992)として呼吸数>20回/分が取り上げられており、体温>38℃または<36℃、心拍数>90/分のいずれかの条件と同時に満たされることが診断の判断基準となっている。そこで、本実施形態では、呼吸数を、被検者の重篤度を判断する目的で使用することとする。以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0087】
なお、本実施形態に係る感染症判定装置の外観構成及び機能構成は、上記第1、第2の実施形態に係る感染症判定装置の外観構成及び機能構成と同じであるため、ここでは説明を省略する。ただし、生体情報としての振動数である呼吸数を測定する呼吸数測定部は、第1の実施形態と同じ外観構成及び機能構成である場合には、圧動センサやマイクロフォン、歪みゲージ、赤外線センサ、バイオインピーダンス法などを使用することで、心拍数を測定する心拍数測定部130と共有させるようにしても良いし、加速度センサ、マイクロ波ドップラーセンサなどを使用することで、心拍数を測定する心拍数測定部130とは別個に配するようにしてもよい。また、第2の実施形態と同じ外観構成及び機能構成である場合には、圧力センサもしくは、赤外線センサから得られるシグナルをフーリエ変換により呼吸数成分である0.3Hz付近の周波数成分を抽出することにより、呼吸数を算出する構成としてもよい。
【0088】
1.測定モードにおける処理
本実施形態の感染症判定装置の測定モードにおける処理を図8に示す。なお、図8に示す処理は、上記第1の実施形態において図4を用いて説明した処理と概ね同じであるため、ここでは、図4との相違点について説明する。
【0089】
判定モードにおける処理において、ステップS801では、呼吸数(1分間あたりの呼吸回数)を検出する。ステップS802では、ステップS413において算出された平常時の体温・心拍数またはステップS414において入力された平常時の体温・心拍数と、ステップS416及びステップS417において測定された体温・心拍数とに基づいて算出された細菌感染症リスク評価値と、ステップS801において検出された呼吸数とに基づいて、細菌感染症リスクについて判定を行う。なお、細菌感染症リスクの判定処理(ステップS802)の詳細は以下に説明するとおりである。
【0090】
2.細菌感染症リスク判定処理(ステップS802)の詳細
図9は、細菌感染症リスク判定処理(ステップS802)の詳細を示すフローチャートである。ステップS901では、ステップS418において算出された細菌感染症リスク評価値が20以上であるか否かを判定する。ステップS901において、細菌感染症リスク評価値が20以上であると判定された場合には、ステップS902に進み、細菌感染症の可能性が高いと判断する。更に、ステップS903では、細菌感染症の可能性が高い旨の警報を出力する。
【0091】
一方、ステップS901において、細菌感染症リスク評価値が20未満であると判定された場合には、ステップS904に進み、ステップS801において検出された呼吸数が30回/分以上であるか否かを判定する。
【0092】
ステップS904において、呼吸数が30回/分以上であると判定された場合には、ステップS902に進み、細菌感染症の重篤度が高いと判断し、ステップS903において、警報を出力する。
【0093】
一方、ステップS904において、呼吸数が30回/分未満であると判定された場合には、ステップS905に進み、細菌感染症の重篤度が低いと判断する。
【0094】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る感染症判定装置では、体温と心拍数に加え、呼吸数を検出する機能を付加する構成とした。更に、細菌感染症リスクを判定するにあたり、算出された細菌感染症リスク評価値に加え、検出された呼吸数も考慮する構成とした。これにより、細菌感染症の重篤度を、より精度よく判断することが可能となった。
【0095】
[第4の実施形態]
上記第3の実施形態では、細菌感染症リスクを判定するにあたり、呼吸数を考慮し、算出された細菌感染症リスク評価値が20未満の場合について、当該呼吸数に基づいて細菌感染症リスクを判定する構成としたが、本発明はこれに限定されない。また、上記第3の実施形態では、細菌感染症リスクの高低のみを判定する構成としたが本発明はこれに限定されない。
【0096】
例えば、予め体温と心拍数と呼吸数とを各座標とする3次元空間を複数の領域に分割しておき、測定された体温、心拍数、呼吸数がいずれの領域に属するかを判定することで、それぞれの領域ごとに細菌感染症リスクに関する表示内容を切り替えるように構成してもよい。
【0097】
更に、予め体温と呼吸数と細菌感染症リスク評価値とを各座標とする3次元空間を複数の領域に分割しておき、測定された体温、呼吸数及び算出された細菌感染症リスク評価値が、いずれの領域に属するかを判定することで、それぞれの領域ごとに細菌感染症リスクに関する表示内容を切り替えるように構成してもよい。
【0098】
なお、測定された体温、心拍数、呼吸数及び算出された細菌感染症リスク評価値に基づいて判定された領域に対応する表示内容が、体温と心拍数と呼吸数とを各座標とする3次元空間から導き出される表示内容と、体温と呼吸数と細菌感染症リスク評価値とを各座標とする3次元空間から導き出される表示内容とで、異なっていた場合には、細菌感染症リスクが高いことを示す表示内容を優先させるように構成されているものとする。以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0099】
1.表示内容の切り替えに用いられる3次元空間についての説明
図10は、本実施形態の感染症判定装置において、測定結果(及び算出結果)に基づいて表示内容を切り替える際に用いられる3次元空間を示す図である。
【0100】
図10の(A)は、体温と心拍数と呼吸数とを各座標とする3次元空間を示す図であり、図10の(B)は、体温と呼吸数と細菌感染症リスク評価値とを各座標とする3次元空間を示す図である。
【0101】
図10(A)、(B)に示すように、各3次元空間は、体温が、36℃未満の場合と、36℃以上37℃未満の場合、37℃以上38℃未満の場合、38℃以上の場合の4つに区分され、呼吸数が、平常時呼吸数未満の場合と、平常時呼吸数以上20回/分以下の場合と、20回/分より大きく30回/分より小さい場合と、30回/分以上の場合の4つに区分されている。更に、図10(A)においては、心拍数が90回/分以下の場合と、90回/分より大きい場合の2つに区分されている。更に、図10(B)においては、細菌感染症リスク評価値が20未満の場合と、20以上の場合の2つに区分されている。
【0102】
なお、平常時呼吸数は、通常モードにおいて予め測定され、EEPROM225に蓄積された呼吸数の平均値(平均呼吸数データ)をいい、通常モードにおいて予め測定されるべき呼吸数がEEPROM225に蓄積されていなかった場合には、デフォルト値として20回/分が設定されるものとする。
【0103】
また、平均値により算出された平常時呼吸数が20回/分を超えていた場合には、3次元空間は平常時呼吸数未満の場合と、平常時呼吸数以上25回/分以下の場合と、25回/分より大きく30回/分より小さい場合と、30回/分以上の場合の4つに区分されるものとする。
【0104】
なお、区分された各領域に記載されている表示タイプのうち、表示タイプ1は、細菌感染症の可能性が低いこと、及び呼吸数が安定していることを示すメッセージを表している。表示タイプ2は、細菌感染症の可能性が低いこと、及び呼吸数がやや高いことを示すメッセージを表している。表示タイプ3は、細菌感染症の可能性が低いこと、及び体温が安定していることを示すメッセージを表している。
【0105】
一方、表示タイプ4とは、何らかの原因で、体温が高いか呼吸数が高い場合であり、病院に行って診察を受けた方がよい旨のメッセージを表している。
【0106】
また、表示タイプ5とは、何らかの原因で、体温が極めて高いか呼吸数が極めて高い場合であり、直ちに病院に搬送した方がよい旨のメッセージを表している。
【0107】
更に、表示タイプ6とは、細菌感染症の重篤度が高いこと、及び、病院への搬送に関して、緊急性が極めて高いことを示すメッセージを表している。
【0108】
このように、本実施形態に係る感染症判定装置では、体温と心拍数に加え、呼吸数を測定するとともに細菌感染症リスクの高低を判断するだけでなく、細菌感染症リスクが低い場合と、細菌感染症リスクが高い場合との間の状態についても解析し、病院への搬送の必要性及びその確度を表示する構成とした。これにより、介護者等は、病院へ搬送すべきか否かを的確に判断することが可能となる。
【0109】
2.細菌感染症リスク判定処理(ステップS802)の詳細
次に、本実施形態に係る感染症判定装置における、細菌感染症リスク判定処理について説明する。図11A〜図11Cは、本実施形態に係る感染症判定装置における、細菌感染症リスク判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0110】
ステップS1101では、ステップS416において測定された体温が、36℃未満であるか否かを判定する。ステップS1101において、体温が36℃未満であると判定された場合には、ステップS1102に進み、ステップS801で検出された呼吸数が平常時呼吸数以下であるか否かを判定する。
【0111】
ステップS1102において、呼吸数が平常時呼吸数以下であると判定された場合には、ステップS1104に進み、ステップS417で測定された心拍数が90回より大きいか否かを判定する。ステップS1104において、90回以下であると判定された場合には、ステップS1105に進み、表示タイプ3を表示する。一方、90回より大きいと判定された場合には、ステップS1106に進み、表示タイプ6を表示する。
【0112】
一方、ステップS1102において、呼吸数が平常時呼吸数より大きいと判定された場合には、ステップS1103−1に進み、当該呼吸数が20回以上(または25回以上)であるか否かを判定する。ステップS1103−1において呼吸数が20回未満(または25回未満)であると判定された場合には、ステップS1104に進む。一方、ステップS1103−1において、呼吸数が20回以上(または25回未満)であると判定された場合には、ステップS1103−2に進み、更に、呼吸数が30回以上であるか否かを判定する。ステップS1103−2において呼吸数が30回未満であると判定された場合には、ステップS1107に進み、心拍数が90回より大きいか否かで、表示タイプ5または表示タイプ6のいずれかを表示する(ステップS1108、S1109)。一方、ステップS1103−2において呼吸数が30回以上であると判定された場合には、表示タイプ6を表示する(ステップS1109)。
【0113】
一方、ステップS1101において、体温が36℃以上であると判定された場合には、ステップS1110に進み、体温が36℃以上37℃未満であるか否かを判定する。ステップS1110において、体温が36℃以上37℃未満でないと判定された場合には、図11Bに進む(詳細は後述)。一方、ステップS1110において、体温が36℃以上37℃未満であると判定された場合には、ステップS1111に進む。
【0114】
ステップS1111では、呼吸数が平常時呼吸数以下であるか否かを判定して、平常時呼吸数以下であれば、ステップS1112に進み、表示タイプ1を表示する。
【0115】
一方、ステップS1111において、平常時呼吸数より大きいと判定された場合には、ステップS1113−1に進み、当該呼吸数が20回以上(または25回以上)であるか否かを判定する。ステップS1113−1において、呼吸数が20回未満(または25回未満)であると判定された場合には、ステップS1114に進み、表示タイプ2を表示する。一方、ステップS1113−1において、呼吸数が20回以上(または25回以上)であると判定された場合には、ステップS1113−2に進み、更に、当該呼吸数が30回以上であるか否かを判定する。呼吸数が30回未満であると判定された場合には、ステップS1115に進み、心拍数が90回より大きいか否かで、表示タイプ4または表示タイプ5のいずれかを表示する(ステップS1116、S1117)。一方、ステップS1113−2において呼吸数が30回以上であると判定された場合には、表示タイプ6を表示する(ステップS1118)。
【0116】
一方、ステップS1110において、体温が37℃以上であると判定された場合には、図11BのステップS1120に進む。ステップS1120では、体温が37℃以上38℃以下であるか否かを判定し、38℃より大きいと判定された場合には、図11Cに進む(詳細は後述)。一方、ステップS1120において、体温が38℃以下であると判定された場合には、ステップS1121に進む。ステップS1121では、呼吸数が平常時呼吸数以下であるか否かを判定し、平常時呼吸数以下であると判定された場合には、ステップS1122において、細菌感染症リスク評価値が20以上であるか否かを判定する。
【0117】
ステップS1122において細菌感染症リスク評価値が20未満であると判定された場合には、ステップS1123において表示タイプ1を表示し、20以上であると判定された場合には、ステップS1124において表示タイプ6を表示する。
【0118】
一方、ステップS1121において、呼吸数が平常時呼吸数を超えていると判定された場合には、ステップS1125−1に進み、当該呼吸数が20回以上(または25回以上)であるか否かを判定する。ステップS1125−1において、呼吸数が20回未満(または25回未満)であると判定された場合には、ステップS1126に進み、心拍数が90回より大きいか否かで、表示タイプ2または表示タイプ6のいずれかを表示する(ステップS1127、S1128)。
【0119】
一方、ステップS1125−1において、呼吸数が20回以上(または25回以上)であると判定された場合には、ステップS1125−2に進み、呼吸数が30回以上であるか否かを判定する。30回未満であると判定された場合には、ステップS1129−1に進み、心拍数が90回より大きいか否かの判定を行う。心拍数が90回以下の場合は、ステップS1129−2に進み、細菌感染症リスク評価値が20以上であるか否かを判定する。そして、評価値が20以上であるか否かで、表示タイプ4または表示タイプ6のいずれかを表示する(ステップS1130、S1131)。
【0120】
一方、ステップS1129−1において心拍数が90回より大きいと判定された場合には、ステップS1129−3へ進み、細菌感染症評価値が20以上であるか否かを判定する。そして、評価値が20以上か否かで、表示タイプ5または表示タイプ6のいずれかを表示する(ステップS1132、S1133)。一方、ステップS1125−2において呼吸数が30回以上であると判定された場合には、表示タイプ6を表示する(ステップS1133)。
【0121】
一方、ステップS1120において、体温が38℃より大きいと判定された場合には、図11CのステップS1140に進む。ステップS1140では、呼吸数が平常時呼吸数以下であるか否かを判定し、平常時呼吸数以下であると判定された場合には、ステップS1141−1において、細菌感染症リスク評価値が20以上であるか否かを判定する。
【0122】
ステップS1141−1において細菌感染症リスク評価値が20未満であると判定された場合には、ステップS1141−2において心拍数が90回より大きいか否かを判定し、90回以下である場合には、ステップS1142において表示タイプ4を表示する。ステップS1141−1において細菌感染症リスク評価値が20以上であると判定された場合、及びステップS1141−2において心拍数が90回より大きいと判定された場合には、ステップS1143において表示タイプ6を表示する。
【0123】
一方、ステップS1140において、呼吸数が平常時呼吸数を超えていると判定された場合には、ステップS1144−1に進み、当該呼吸数が20回以上(または25回以上)であるか否かを判定する。ステップS1144−1において、呼吸数が20回未満(または25回未満)であると判定された場合には、ステップS1145−1に進み、心拍数が90回より大きいか否かの判断を行う。心拍数が90回以下と判定された場合には、ステップS1145−2へ進み、細菌感染症リスク評価値が20以上か否かで、表示タイプ4または表示タイプ6のいずれかを表示する(ステップS1146、S1147)。一方、ステップS1145−1において心拍数が90回より大きいと判定された場合には、表示タイプ6を表示する(ステップS1147)。
【0124】
一方、ステップS1144−1において、呼吸数が20回以上(または25回以上)であると判定された場合には、ステップS1144−2に進み、呼吸数が30回以上であるか否かを判定する。呼吸数が30回未満であると判定された場合には、ステップS1148に進み、心拍数が90回より大きいか否かを判定する。ステップS1148において、心拍数が90回未満であると判定された場合には、ステップS1149に進む。ステップS1149では、細菌感染症リスク評価値が20以上か否かを判定し、20未満であると判定された場合には、ステップS1150において表示タイプ5を表示する。一方、ステップS1144−2において呼吸数が30回以上と判定された場合、ステップS1148において心拍数が90回より大きいと判定された場合、または、ステップS1149において、細菌感染症リスク評価値が20以上であると判定された場合には、ステップS1151に進み、表示タイプ6を表示する。
【0125】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、細菌感染症リスクの高低のみならず、細菌感染症リスクが中程度の場合についても、体温、心拍数、呼吸数とから、医師診察の必要性及びその確度を表示することが可能となった。
【0126】
[第5の実施形態]
上記第1乃至4の実施形態では、体温測定機能及び心拍数測定機能(及び呼吸数測定機能)と、平常時体温・心拍数算出機能(呼吸数算出機能)及び細菌感染症リスク評価値算出機能及び細菌感染症リスク判定機能とを、同じ装置内に収容する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、体温測定機能及び心拍数測定機能(及び呼吸数測定機能)を別体の装置として構成し、当該装置にて測定された体温測定及び心拍数測定(及び呼吸数測定)の結果を手動または自動で入力することで、平常時体温・心拍数(呼吸数)の算出や、細菌感染症リスク評価値の算出、細菌感染症リスクの判定を行う構成としてもよい。
【0127】
図12は、平常時体温・心拍数(呼吸数)の算出や、細菌感染症リスク評価値の算出、細菌感染症リスクの判定を行う情報処理装置1200のハードウェア構成を示す図である。
【0128】
図12において、1201は制御メモリ(ROM)、1202は中央演算処理装置(CPU)、1203はメモリ(RAM)、1204はコンピュータ読取可能な外部記憶装置(記録媒体)である。
【0129】
また、1205はユーザの指示を入力するための入力装置、1206は表示装置、1207は電子体温計及び/または心拍数(呼吸数)測定装置との間でデータの送受信を行うためのインタフェース装置である。更に、1208はバスである。
【0130】
本実施形態に係る情報処理装置1200において、感染症判定アプリケーション1211は、外部記憶装置1204に実行可能に格納されているものとする。感染症判定アプリケーション1211は、中央演算処理装置1202による制御のもと、バス1208を介して適宜メモリ1203に取り込まれ、中央演算処理装置1202によって処理される。これにより、図4〜図7、図8、図9、図11A〜図11Cに示す処理を実行する。
【0131】
なお、感染症判定アプリケーション1211では、図4または図8のステップS402〜S405に示す各工程を実行する代わりに、電子体温計及び心拍数(呼吸数)測定装置よりそれぞれ体温データ及び心拍数データ(呼吸数データ)を受信し、外部記憶装置1204に記憶する処理を実行する。
【0132】
また、図4または図8のステップS415〜S417、S419に示す各工程を実行する代わりに、電子体温計及び心拍数(呼吸数)測定装置よりそれぞれ体温データ及び心拍数データ(呼吸数データ)を受信し、細菌感染症リスク評価値算出処理・細菌感染症リスク判定処理を実行する。
【0133】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、被検者の平常時の体温及び心拍数に対する、被検者の現在の体温及び心拍数の変化量(体温変化量、心拍数変化量)を算出し、体温変化量と心拍数変化量との比を評価値として求めることによる細菌感染症リスクの判定、更には呼吸数を加味したうえでの細菌感染症リスクの判定を、情報処理装置上において行うことが可能となった。
【0134】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、振動数データとして心拍数データを用いることとしたが、本発明はこれに限定されず、脈拍数データを用いるようにしてもよい。なお、心房細動の患者では脈拍数と心拍数が一致せず、脈格差があることが知られており、このような場合には、心拍数データを用いて細菌感染症リスク評価値を算出することが望ましい。
【符号の説明】
【0135】
100・・・感染症判定装置、110・・・本体部、111・・・ユーザインタフェース部、112・・・操作ボタン、113・・・操作ボタン、114・・・表示ボタン、120・・・体温測定部、130・・・心拍数測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の体温を測定する体温測定部と、
該被検者の振動数を測定する振動数測定部と、
前記体温測定部による測定により得られた体温データと、前記振動数測定部による測定により得られた振動数データとを、前記被検者を識別する識別子と対応付けて記憶部に記憶する第1のモードと、前記体温測定部による測定により得られた体温データと、前記振動数測定部による測定により得られた振動数データとを用いて、前記被検者の細菌感染症の可能性の有無を判定する第2のモードとを切り替える切替部と、
前記第2のモードのもとで前記体温測定部による測定により得られた前記被検者の体温データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された体温データと、前記第2のモードのもとで前記振動数測定部による測定により得られた前記被検者の振動数データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された振動数データとを用いて、前記被検者の細菌感染症の可能性を示す評価値を算出する算出部と、
前記算出部により算出された評価値を表示する表示部と
を備えることを特徴とする感染症判定装置。
【請求項2】
前記振動数が心拍数であることを特徴とする請求項1に記載の感染症判定装置。
【請求項3】
前記振動数が呼吸数であることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載の感染症判定装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記評価値を算出するにあたり、前記第2のモードのもとで前記体温測定部による測定により得られた前記被検者の体温データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された体温データを用いて算出した前記被検者の平均体温データとの差分データを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感染症判定装置。
【請求項5】
前記算出部により算出された評価値が、所定の閾値以上であると判定された場合に、細菌感染症の可能性があるとして警報を出力する出力部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の感染症判定装置。
【請求項6】
前記評価値が体温データ及び心拍数データを用いて算出される評価値である場合、前記所定の閾値が20であることを特徴とする請求項5に記載の感染症判定装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記記憶部に前記被検者の体温データ及び振動数データが記憶されていなかった場合に、前記被検者の平均体温データ及び振動数データとして、予め定められたデータを用いて前記評価値を算出することを特徴とする請求項4に記載の感染症判定装置。
【請求項8】
前記第2のモードのもとで、前記記憶部に前記被検者の体温データ及び振動数データが記憶されていなかった場合に、前記被検者の平均体温データ及び平均振動数データのユーザによる入力を可能にする入力部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の感染症判定装置。
【請求項9】
前記算出部は、更に、前記第1のモードのもとで、所定の被検者が指定された場合に、該被検者を識別する識別子に対応付けて記憶された前記体温データと振動数データとを用いて、該被検者の平均体温データと平均振動数データとを算出し、
前記表示部は、更に、前記算出部において算出された前記平均体温データと前記平均振動数データとを表示することを特徴とする請求項1に記載の感染症判定装置。
【請求項10】
前記第2のモードのもとで前記体温測定部による測定により得られた前記被検者の体温データと、前記第2のモードのもとで前記振動数測定部による測定により得られた前記被検者の呼吸数データと、前記算出部により体温データ及び心拍数データを用いて算出された評価値とを各座標とする3次元空間を、所定の閾値に基づいて複数の領域に区分し、いずれの領域に属するかに基づいて、前記表示部では、表示を切り替えることを特徴とする請求項3に記載の感染症判定装置。
【請求項11】
体温測定部による測定により得られた被検者の体温データと、振動数測定部による測定により得られた振動数データとを入力する入力部と、
前記入力部により入力された体温データ及び振動数データを、前記被検者を識別する識別子と対応付けて記憶部に記憶する第1のモードと、前記入力部により入力された体温データ及び振動数データを用いて、前記被検者の細菌感染症の可能性の有無を判定する第2のモードとを切り替える切替部と、
前記第2のモードのもとで前記入力部により入力された前記被検者の体温データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された体温データと、前記第2のモードのもとで前記入力部により入力された前記被検者の振動数データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された振動数データとを用いて、前記被検者の細菌感染症の可能性を示す評価値を算出する算出部と、
前記算出部により算出された評価値を表示する表示部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項12】
体温測定部による測定により得られた被検者の体温データと、振動数測定部による測定により得られた該被検者の振動数データとを入力部を介して入力する入力工程と、
前記入力工程において入力された体温データ及び振動数データを、前記被検者を識別する識別子と対応付けて記憶部に記憶する第1のモードと、前記入力工程において入力された体温データ及び振動数データを用いて、前記被検者の細菌感染症の可能性の有無を判定する第2のモードとを切り替える切替工程と、
前記第2のモードのもとで前記入力部により入力された前記被検者の体温データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された体温データと、前記第2のモードのもとで前記入力部により入力された前記被検者の振動数データと、前記第1のモードのもとで前記記憶部に記憶された振動数データとを用いて、前記被検者の細菌感染症の可能性を示す評価値を算出する算出工程と、
前記算出工程において算出された評価値を表示する表示工程と
を備えることを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
請求項11に記載の情報処理方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項11に記載の情報処理方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムが格納されたコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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