説明

感熱印刷媒体

【課題】 熱エネルギに感応して変色し表示情報の印刷が可能な感熱層を備えた感熱印刷媒体の感熱層の保護機能を向上させることを目的とする。
【解決手段】 透明フィルム4の片面に、熱エネルギに感応して可逆的に変色することにより表示情報の書換えが可能な感温変色インクを印刷して感熱層3を形成し、この感熱層3を形成した透明フィルム4を熱圧着により基材2に貼り付けて感熱印刷媒体であるリライトカード1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギに感応して変色し表示情報の印刷が可能な感熱層を備えた感熱印刷媒体に関し、特に、感熱層の保護機能を向上させた感熱印刷媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱エネルギに感応して可逆的に変色し表示情報の印刷が可能な感熱層を有し、カード表面の表示情報が書換えできるリライトカードが、定期券、ポイントカード、プリペードカード、駐車券或いは各種整理券等に用いられている。このようなリライトカードとしては、ロイコ染料を用いた可逆性感温材料で形成した感熱層を有するリライトカードが一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。また、温度に応じて可逆的に異なる色に変色する感温変色インクで感熱層を形成したものもある。
【0003】
ところで、上述のリライトカードの表示情報の印刷は、現状ではサーマルヘッドを使用するのが一般的であり、サーマルヘッドをカードに接触させて感熱層に熱エネルギを与え感熱層を変色させることにより表示情報を印刷する。このため、サーマルヘッドとの接触で感熱層が傷付くのを防ぐために、従来のリライトカードは感熱層を透明な保護層で覆っている。そして、サーマルヘッドと感熱層との間の距離が離れると、十分な熱エネルギが感熱層に伝達し難く、サーマルヘッドからの熱エネルギが保護層で拡散され、表示情報の印刷がぼやけて明瞭な印刷ができない虞れがあるので、従来では透明な塗料を印刷することで厚さの薄い印刷保護層を設けるようにしている。
【特許文献1】特開2003−251969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような印刷保護層は、薬剤に弱く、例えばリライトカードの場合、リサイクルする際に汚れを落とすために薬剤洗浄すると印刷保護層が剥がれる等の虞れがある。また、薄い印刷保護層のために物と擦れたときに感熱層に引っ掻き傷が付き易い。
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、感熱層の保護機能を向上させた感熱印刷媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1の発明は、熱エネルギに感応して変色することにより表示情報の印刷が可能な感熱層を備える感熱印刷媒体であって、基材と透明フィルムとの間に前記感熱層を配置して構成したことを特徴とする。
【0006】
かかる構成では、感熱層が透明フィルムの保護層で覆われるようになる。これにより、透明フィルムによる保護層は従来の印刷による保護層より厚くできるので、感熱層の保護機能が向上するようになる。この場合、感熱層の印刷処理は、サーマルヘッドに代えて、透明フィルムを通しても感熱層に十分な熱エネルギを与えられる装置、例えばレーザマーカ装置を用いて行なえばよい。
【0007】
請求項2の発明では、前記感熱層を、熱エネルギに感応して可逆的に変色し前記表示情報の書換えが可能な感温材料で形成すると共に、前記基材に前記透明フィルムを熱圧着により貼り付ける構成とするようにした。
【0008】
具体的には、請求項3のように、前記感熱層を片面に印刷した透明フィルムの感熱層印刷面を前記基材側にして、前記透明フィルムを前記基材に貼り付ける構成とするとよい。
また、請求項4のように、前記感熱層を設けたリボン状フィルムを、前記基材と前記透明フィルムとの間に設ける構成としてもよい。
また、請求項5のように、前記感熱層を印刷した前記基材に、前記透明フィルムを貼り付ける構成としてもよい。
【0009】
請求項6のように、前記感熱層を、第1の色から第2の色に変色する第1変色点温度と、該第1変色点温度より低温で前記第2の色から前記第1の色に変色する第2変色点温度とを有する感温変色インクで形成するとよい。
【発明の効果】
【0010】
かかる本発明の感熱印刷媒体によれば、感熱層を従来の印刷による保護層より厚い透明フィルムで覆うので、物と接触しても感熱層に傷が付き難く、また、薬剤に対しても透明フィルムが剥がれ難く、耐擦過性、耐薬剤性が向上し、感熱層の保護機能が向上する。
【0011】
また、感熱層に対する表示情報の印刷をサーマルヘッドではなくレーザマーカ装置で行い、透明フィルムの厚さをサーマルヘッドでは明瞭な印刷ができない程度に設定すれば、感熱印刷媒体の印刷処理装置の多くはサーマルヘッドを使用しているので、表示情報を改竄し難くなる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明に係る感熱印刷媒体の第1実施形態としてリライトカードの断面構造を示す。
図1において、本実施形態の感熱印刷媒体であるリライトカード1は、カード状の基材2と、感熱層3と、透明フィルム4とを備え、基材2と透明フィルム4との間に感熱層3を配置して構成する。
【0013】
前記基材2は、例えばPET等で形成される。
前記感熱層3は、熱エネルギに感応して可逆的に変色して表示情報が書換え可能に印刷できるもので、例えば温度に応じて可逆的に変色する感温変色インクを透明フィルム4の片面に予め印刷して形成する。前記感温変色インクは、従来公知のもので、温度を上昇させたときに第1の色から第2の色に変色する第1変色点温度と、温度を降下させたときに第2の色から第1の色に変色する第2変色点温度とが異なるヒステリシス特性の変色温度特性を有し、第1変色点温度より低い第2変色点温度と第1変色点温度の間の温度域で、変色後の第1の色又は第2の色が維持される。また、感温変色インクを用いれば、ロイコ染料を使用した感熱層に比べて多色の印刷ができる。尚、感熱層3には、感温変色インクの他に、ロイコ染料を用いたもの等従来公知の可逆的感温材料を使用できることは言うまでもない。
前記透明フィルム4は、感熱層3を保護する保護層の役割を果たすもので、サーマルヘッドでは感熱層3に十分な熱エネルギを伝達できずに明瞭な印刷が行なえない程度の厚さにするとよい。具体的には例えば70μm以上の厚さにする。
【0014】
このリライトカード1は、例えば図2に示すようにして製造する。
搬送される透明フィルム4上に例えば黄、赤、青、黒等の通常の塗料で順次転写ローラー6を用いて通常の印刷をし、最後に、感温変色インクを透明フィルム上に付着させて感熱層3を印刷する。そして、この感熱層3を印刷した透明フィルム4を、感熱層3側が基材2側になるようにして基材2に例えばヒートローラ等を用いて熱圧着により接着してリライトカード1を形成する。
【0015】
かかるリライトカード1の感熱層3に表示情報を印刷する場合、従来のサーマルヘッドではなくレーザマーカ装置を用い、レーザ光を透明フィルム4を通して感熱層3に照射して変色させ、レーザ光の照射点を表示情報データに基づいて移動させ、その移動軌跡で所望の表示情報を感熱層3に印刷する。
【0016】
かかる構造のリライトカード1によれば、感熱層3を保護する保護層を従来の印刷保護層より厚い透明フィルム4で形成したので、透明フィルム4表面が物と接触しても感熱層に傷が付き難い。また、リライトカード1をリサイクル使用する際に、表面の汚れを落とすために洗浄液等の薬剤を使用しても、透明フィルム4が剥がれ難い。従って、カード表面の耐擦過性、耐薬剤性が向上して感熱層3の保護機能が向上する。また、透明フィルム4の厚さをサーマルヘッドでは明瞭な印刷ができないような厚さとし、レーザマーカ装置で表示情報の印刷を行なうようにすれば、感熱印刷媒体の印刷処理装置の多くはサーマルヘッドを使用しているので、表示情報を改竄し難くなる効果を有するようになる。更に、基材2に透明フィルム4を貼り付ける場合に、接着材を使用すると感熱層3の表示情報の視認性が低下するが、感熱層3に可逆的に変色して表示情報の書換えができる感温変色インクのような感温材料を使用すれば、基材2に透明フィルム4を熱圧着で貼り付けることができ、保護層として透明フィルム4を使用しても表示情報の視認性を確保できる。
【0017】
次に、本発明に係る感熱印刷媒体の第2実施形態を図3及び図4に示す。
図3及び図4において、本実施形態のリライトカード11は、カード状の基材12と、透明フィルム14との間に、熱エネルギにより可逆的に変色する感温材料を印刷して予め感熱層を形成したリボン状のフィルム13を設ける構造であり、図3に示すように表示情報印刷部としてストライプ状の感熱層を設ける構成である。
【0018】
かかるリライトカード11は、リボン状のフィルム13の片面に、予め前述した感温変色インク等の可逆的に変色する感温材料を印刷して感熱層を形成し、この感熱層を形成したフィルム13を、基材12と透明フィルム14との間に配置し、基材11に対して透明フィルム14を熱圧着で貼り付けることにより製造する。
かかるリライトカード11も、第1実施形態と同様の作用効果を有する。
【0019】
尚、第1実施形態では、感熱層3を印刷した透明フィルム4を基材2に貼り付けるようにしたが、感熱層3を予め印刷形成した基材2に透明フィルム4を熱圧着して貼り付けるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、表示情報の書換えが可能なリライトカードを例に説明したが、感熱層に書換えができない感温材料を使用してもよいことは言うまでもない。ただし、この場合は、基材に透明フィルムを貼り付ける方法としては、熱圧着ではなく接着剤を使用する必要がある。
また、本発明の感熱印刷媒体の形態は、上述の各実施形態で示したカード状に限らずシート状でもよく、媒体形態はどのような形態でもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る感熱印刷媒体の第1実施形態の断面構造図
【図2】同上第1実施形態のリライトカードの製造方法の説明図
【図3】本発明に係る感熱印刷媒体の第2実施形態の平面図
【図4】同上第2実施形態のリライトカードの製造方法の説明図
【符号の説明】
【0021】
1、11 リライトカード
2、12 基材
3 感熱層
4,14 透明フィルム
13 リボン状フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギに感応して変色することにより表示情報の印刷が可能な感熱層を備える感熱印刷媒体であって、
基材と透明フィルムとの間に前記感熱層を配置して構成したことを特徴とする感熱印刷媒体。
【請求項2】
前記感熱層を、熱エネルギに感応して可逆的に変色し前記表示情報の書換えが可能な感温材料で形成すると共に、前記基材に前記透明フィルムを熱圧着により貼り付ける構成とした請求項1に記載の感熱印刷媒体。
【請求項3】
前記感熱層を片面に印刷した透明フィルムの感熱層印刷面を前記基材側にして、前記透明フィルムを前記基材に貼り付ける構成とした請求項1又は2に記載の感熱印刷媒体。
【請求項4】
前記感熱層を設けたリボン状フィルムを、前記基材と前記透明フィルムとの間に設ける構成とした請求項1又は2に記載の感熱印刷媒体。
【請求項5】
前記感熱層を印刷した前記基材に、前記透明フィルムを貼り付ける構成とした請求項1又は2に記載の感熱印刷媒体。
【請求項6】
前記感熱層を、第1の色から第2の色に変色する第1変色点温度と、該第1変色点温度より低温で前記第2の色から前記第1の色に変色する第2変色点温度とを有する感温変色インクで形成する請求項2に記載の感熱印刷媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−22022(P2007−22022A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211299(P2005−211299)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】