説明

感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法

【課題】サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質や、裏移りの少ないという特徴を失わず、しかもマスターの印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワの発生がなく、優れた帯電防止効果を有する感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルム1上に多孔性樹脂膜2及び多孔性繊維膜4をこの順に有してなり、該多孔性繊維膜が導電性物質を含有することを特徴とする感熱孔版印刷用マスターである。該導電性物質が、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂の少なくともいずれかの樹脂、界面活性剤、導電性粉体並びにイオン性高分子化合物から選択される少なくとも1種を含有する態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた帯電防止効果を有する感熱孔版印刷用マスター及び該感熱孔版印刷用マスターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂フィルム上に、インキ透過性支持体としての麻繊維、合成繊維、木材繊維などを混抄した多孔性薄葉紙などを接着剤で貼り合わせると共に、フィルム表面にサーマルヘッドとのスティック防止を図るためのスティック防止層を設けた感熱孔版印刷用マスターが知られ、広く用いられている。
【0003】
しかし、従来の感熱孔版印刷用マスターには、以下のような問題がある。
(1)繊維の重なった部分とフィルムが接する部分に接着剤が大量に(鳥の水掻き状に)集積し、その部分のサーマルヘッドによる穿孔が行われにくくなり、インキの通過を妨げて、印刷ムラが発生する。
(2)繊維自体がインキの通過を妨げて、印刷ムラが発生する。
(3)多孔性薄葉紙などが高価であり、また、ラミネート加工によるロスも大きく、マスターが高価となる。
(4)印刷された紙が重なると、インキがその重なった紙の裏面に付着する、いわゆる裏移りが発生する。
【0004】
そこで、前記問題を解決すべく、熱可塑性樹脂フィルム上に繊維からなるインキ透過性支持体を貼り合わせてなる感熱孔版印刷用マスターについて、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、繊度1デニール以下の極細繊維を用いた支持体が提案されている。この提案によれば、前記(2)及び前記(4)の問題は解決できるが、前記(1)及び前記(3)の問題は依然として残されている。
【0005】
また、特許文献2には、フィルム上に実質的に閉じた形状の放射線硬化型耐熱性樹脂パターンをグラビア、オフセット、フレキソなどの印刷法により形成する方法が提案されている。しかし、前記方法ではインキ透過性支持体としての樹脂層の厚さを50μm以下とすることが困難であり、たとえ樹脂層の厚さを30μm程度に形成できたとしてもその厚さでは、耐熱性樹脂層がサーマルヘッドによる穿孔を妨げてしまい、樹脂層をきれいに穿孔できず、にじみ、かすれなどの印刷ムラが発生してしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献3には、水分散性ポリマーとコロイダルシリカなどの微粒子の混合液をフィルム表面に塗布し、乾燥してなる多孔質層を有する感熱孔版印刷用マスターが提案されている。該感熱孔版印刷用マスターは、例えば、理想科学工業社製の孔版印刷機(プリントゴッコ製版機)を用いて製版し、例えば、EPSON社製のインクジェット記録用インク(HG−4800インク)を用いて印刷される。しかし、この方法により得られる多孔質層は印刷インクの通りが悪く、従来の感熱孔版印刷用インクでは印刷時に十分な濃度が得られないという問題がある。
【0007】
また、特許文献4には、支持体を用いない実質的にフィルムのみからなる感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この提案によれば、前記(1)、(2)、及び(3)の問題は解決することができる。しかし、(i)フィルムが10μm以下の厚さの場合、該フィルムのコシ(stiffness)が弱く、搬送が困難になる。また、(ii)フィルムが5μm以上の厚さの場合、該フィルムの熱感度が小さくなってサーマルヘッドによる穿孔が行われにくくなる、という問題がある。
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献5では、孔版印刷機の版胴周壁部にフィルムが切断されることなく長尺状のまま巻装され、印刷時には版胴の回転と共にフィルム全体も回転させる方法が提案されている。しかし、この方法ではフィルム及び着排版ユニットが印刷時には版胴の回転と共に回転するため、回転のモーメントが大きくなる。また、重力中心の回転軸からの変異が大きく、これらを解決するため、印刷機は重く、大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
前記問題を解決するため、例えば、特許文献6には、樹脂、その樹脂に対する良溶媒、及び貧溶媒を含む流動体を熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成した感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この提案の流動体は、乾燥過程において良溶媒の蒸発による相対的な貧溶媒の増加、液の濃縮などにより樹脂が析出し、乾燥して三次元の網状構造体からなる多孔性樹脂膜がフィルム上に形成される。
また、特許文献7には、W/O(油中水滴)型エマルションを主体とした流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成した感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この提案の流動体は乾燥過程において水滴の部分が乾燥して孔を形成し、多孔性樹脂膜が熱可塑性樹脂フィルム上に形成される。
前記特許文献6及び7の感熱孔版印刷用マスターは、それまで知られたマスターに比べて優れており、普通の使用状態では殆ど問題は生じない。しかし、これらの感熱孔版印刷用マスターは和紙タイプの多孔性支持体を用いたマスターに比べて、曲げ剛度が弱く、また、湿度変化によるカールの発生を防ぐため、吸水率の低い樹脂を多孔性樹脂膜の材料として用いているので導電性が低いという欠点がある。このような低導電性は、印刷機内での搬送やドラムヘの巻装に不利な要因となる。実際に、低温低湿環境下において製版印刷を行った際、搬送時に発生した静電気のためにマスターが印刷機内壁面に貼りついて、スムーズな搬送、印刷ドラムヘの巻装が行えず、マスターがドラム上にシワのある状態で巻かれたり、又は巻装途中でジャムが発生し、印刷機が停止してしまうという問題がある。
【0009】
この問題を解決するため、例えば、熱可塑性樹脂フィルム上に、流動体を塗布し、乾燥してなる多孔性樹脂膜を少なくとも有してなり、多孔性樹脂膜及び機能性薄層の少なくともいずれかに導電性物質を含む感熱孔版印刷用マスターが提案されている(特許文献8参照)。この提案の感熱孔版印刷用マスターは、優れた帯電防止性能を備えたものである。しかし、前記多孔性樹脂膜内の導電性物質や機能性薄層が熱可塑性樹脂フィルムの穿孔、及びインキの通過を阻害することがある。また、搬送性や耐刷性を図り、マスター強度を向上させる目的で多孔性樹脂膜のフィルムと反対の面に多孔性繊維膜を積層すると帯電防止性能が著しく損なわれてしまうという問題がある。
【0010】
一方、熱可塑性樹脂フィルム上に、流動体を塗布し、乾燥してなる多孔性樹脂膜を少なくとも有してなり、多孔性樹脂膜のフィルムと反対側に多孔性繊維膜を積層した感熱孔版印刷用マスターは、熱可塑性樹脂フィルム面の平滑性が高いため、フィルムとサーマルヘッドの接触性が良好である。また、多孔性樹脂膜による断熱性が高いため、サーマルヘッドの熱が効果的にフィルムに伝わり、優れた穿孔性を有している。しかし、前記マスターでは、フィルム表面にイオン性界面活性剤を帯電防止剤として塗布すると、従来の多孔性繊維膜とフィルムをラミネートしただけのマスターではあまり問題とならなかったサーマルヘッドに腐食が生じるという問題がある。また、フィルム表面に液体のイオン性界面活性剤を塗布する方法では、経時により帯電防止性能が低下してしまうという問題もある。
【0011】
したがって、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質や、裏移りの少ないという特徴を失わず、しかもマスターの印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワのない感熱孔版印刷用マスターは未だ提供されておらず、その速やかな開発が望まれているのが現状である。
【0012】
【特許文献1】特開平3−193445号公報
【特許文献2】特開昭62−198459号公報
【特許文献3】特開平4−7198号公報
【特許文献4】特開昭54−33117号公報
【特許文献5】特公平5−70595号公報
【特許文献6】特開平10−24667号公報
【特許文献7】特開平11−235885号公報
【特許文献8】特開2002−127627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質や、裏移りの少ないという特徴を失わず、しかもマスターの印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワの発生がなく、優れた帯電防止効果を有する感熱孔版印刷用マスター及び該感熱孔版印刷用マスターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなり、該多孔性繊維膜が導電性物質を含有することを特徴とする感熱孔版印刷用マスターである。該<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターは、従来の熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性繊維膜を積層したマスターと比較して、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜と、多孔性繊維膜とをこの順に積層してなり、該多孔性繊維膜が導電性物質を含有するので、フィルム穿孔性やインキ通過性への影響が著しく小さく、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜の間の多孔性樹脂膜が導電性物質のフィルムへの接触を防止すると共に、インキ通過量の均一化が図られる。また、従来の熱可塑性樹脂フィルム上に導電性物質を含む層を設けたマスターでは、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔に悪影響を与えないようにするために、その層の厚みや導電性物質の量が制限されるが、多孔性繊維膜に導電性物質を含ませる場合には、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔に悪影響を与えるおそれがないため、導電性物質を多く使用することができ、優れた帯電防止効果を発揮することができる。
【0015】
<2> 導電性物質が、帯電防止剤を含有する前記<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<2>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、導電性物質は必ずしも、本来導電性を有する物質でなくてもよく、例えば樹脂など導電性を有しない物質が帯電防止剤を含有することにより、導電性物質となったものであってもよい。また、導電性物質が帯電防止剤そのものであってもよいし、本来導電性を有する物質に、更に性能向上のために帯電防止剤を含有させたものであってもよい。
<3> 導電性物質が、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂から選択される少なくとも1種を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<3>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、導電性物質が電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂であり、塗工時には液体であるために塗布が容易であり、電子線や紫外線の照射により架橋し、固化するため、移動による帯電防止性能の低下がなく、経時安定性に優れる。また、電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂は、固化することにより導電性物質自体の働きにより繊維の脱落防止が図られる。ここで、前記繊維の脱落とは、多孔性繊維膜を構成する繊維が多孔性繊維膜から脱落することを意味する。この繊維脱落が生じると、ロール状に巻き取ったマスターを再び巻きだす際にフィルム側に転移し、フィルム穿孔時に、サーマルヘッドの熱で軟化、カス固着となり、穿孔不良に結びつくことがある。
【0016】
<4> 樹脂が、ポリオキシエチレンモノアクリレートである前記<3>に記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<4>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂の中でも、ポリオキシエチレンモノアクリレートは反応性が良好であり、かつ保存安定性にも優れる。
【0017】
<5> 導電性物質が、導電性粉体を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<5>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、導電性物質として導電性粉体を用いることにより、該導電性粉体は、親水基が水分を吸着することによって帯電防止性能を得ている界面活性剤タイプの帯電防止剤とは異なり、帯電防止性能が経時で劣化せず、環境の影響もない。
【0018】
<6> 導電性物質が、イオン性高分子化合物を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<6>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、イオン性高分子化合物の親水基が雰囲気中の水分を吸着することによって帯電防止効果が発揮される。また、水溶性の塗布液とすることにより、環境に対する影響が少なくなる利点があるほか、塗布液を塗布し乾燥するだけで固体になるので、マスターの製造が容易であるとともに、マスターを固化させるための特別な設備を必要とせず、低コスト化が図られる。更に、イオン性高分子化合物は、固化後は比較的堅く強度を有するため、マスターの曲げ剛度が向上し、マスターの印刷機内での搬送性の向上や、製版シワの抑制効果の向上が期待できるほか、多孔性繊維膜の繊維の脱落防止効果も高い。
【0019】
<7> 導電性物質が多孔性繊維膜に固体状態で付着している前記<1>から<6>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<7>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、導電性物質が固体の場合には導電性物質が多孔性繊維膜上で流動しないため、マスター製造直後の状態(多孔性繊維膜表面に導電性物質が存在する状態)が長く維持され、帯電防止性能の経時安定性に優れるほか、多孔性繊維膜の繊維の脱落防止効果も高い。
【0020】
<8> 23℃−65%RH環境下での多孔性繊維膜側の表面抵抗値が1×10〜1×1012Ωである前記<1>から<7>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<8>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、23℃−65%RH環境下での多孔性繊維膜側の表面抵抗値が1×10〜1×1012Ωであるので、印刷機内での搬送時に帯電が原因で搬送不良となることが防止される。
【0021】
<9> 熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも樹脂を含む多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、乾燥させて多孔性樹脂膜を形成する多孔性樹脂膜形成工程と、該多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を形成する多孔性繊維膜形成工程を含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。該<9>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法においては、前記多孔性樹脂膜形成工程は、熱可塑性樹脂フィルム上に、樹脂を含有する油中水型乳化液を塗布し、乾燥させて多孔性樹脂膜を形成する。前記多孔性繊維膜形成工程は、該多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を形成する工程である。その結果、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質や、裏移りの少ないという特徴を失わず、しかもマスターの印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワの発生がない感熱孔版印刷用マスターを効率よく製造される。
【0022】
<10> 多孔性樹脂膜の乾燥後付着量は0.3〜30g/mである前記<9>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。
<11> 多孔性繊維膜上に少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する導電性物質塗布工程を含む前記<9>から<10>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。該<11>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法においては、導電性物質を多孔性繊維膜に容易に含有させることができ、生産性に優れる。
【0023】
<12> 導電性物質が、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂の少なくともいずれかの樹脂、界面活性剤、導電性粉体、並びにイオン性高分子化合物から選択される少なくとも1種を含有する前記<9>から<11>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。該<12>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法においては、導電性物質が液状である場合には、例えば、導電性物質とバインダー樹脂を組み合わせて多孔性繊維膜に付与すると、液状の導電性物質とバインダー樹脂とが混合された状態となる。そのため、多孔性繊維膜表面の導電性物質が何らかの理由で除去されてしまったとしても、バインダー樹脂内部から導電性物質が徐々に染み出して、単独塗工時と比較して高い経時安定性が期待できる。また、導電性物質が液状であってもバインダー樹脂と混合して用いることにより、多孔性繊維膜の繊維脱落を抑制できるというメリットがある。
また、本発明のように、多孔性繊維膜のみに導電性物質を含有させた場合には、穿孔性やインキ通過性などの印刷品質へ、ほとんど影響を与えずに、帯電防止効果が得られる。更に、例え使用した帯電防止剤がサーマルヘッドに対する腐食性を有していたとしても、帯電防止剤が直接サーマルヘッドに接触することがないため、サーマルヘッドの腐食が起こらないというメリットがある。腐食性のある帯電防止剤をフィルム面に塗付する場合には、腐食の懸念から帯電防止剤の塗工量が制限されるが、本発明の方法ならばその心配がない。また、液体の帯電防止剤を用いる場合、フィルム面への塗付ならば、摩擦など、何らかの理由で一度、帯電防止剤が除去されてしまうと帯電防止性能は半永久的に失われてしまうが、多孔性繊維膜に含有させた場合には、一度除去されても多孔性繊維膜内部からの帯電防止剤染み出しにより、帯電防止性能が復活するということも期待できる。したがって、多孔性繊維膜に導電性物質を含ませる場合には、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔に悪影響を与えるおそれがないために導電性物質を多く使用することができ、帯電防止に有利である。
<13> 導電性物質塗布液の25℃での粘度が2〜100cPである前記<9>から<12>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。
【0024】
<14> 多孔性繊維膜における不揮発分総塗布量が0.01〜1.0g/mである前記<9>から<13>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター製造方法である。該<14>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法においては、多孔性繊維膜における不揮発分総塗布量が0.01〜1.0g/mであれば、十分な帯電防止効果が得られ、また、印刷画像白抜けの問題も生じない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質や、裏移りの少ないという特徴を失わず、しかもマスターの印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワの発生がなく、優れた帯電防止効果を有する感熱孔版印刷用マスター及び該感熱孔版印刷用マスターの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(感熱孔版印刷用マスター)
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
ここで、図1は、本発明の感熱孔版印刷用マスターの一例を示す模式断面図であり、このマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、樹脂部2と空隙部3とからなる多孔性樹脂膜、及び多孔性繊維膜4がこの順に積層されている。
【0027】
−熱可塑性樹脂フィルム−
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、材料、厚み、大きさ、形状などに特に制限はなく、感熱孔版印刷用マスターに通常使用されている公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。前記材料としては、熱可塑性樹脂が好適であり、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、二軸延伸した樹脂フィルムが特に好ましく、例えば、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレン樹脂フィルム、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムなどが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムの厚さとしては、0.5〜10μmが好ましく、1.0〜5.0μmがより好ましい。前記厚さが、0.5μm未満であると、薄すぎて多孔性樹脂層塗布液の塗布が困難となることがあり、10μmを超えると、サーマルヘッドでの穿孔が困難となることがある。
【0028】
−多孔性樹脂膜−
前記多孔性樹脂膜の構造は、不定形の棒状、球状、又は枝状に連結した(和紙のような短い構成単位が絡み合っているものではなく、印刷などで形成される単純な形状の組み合わせでもない)複雑な三次元構造を有するもの、いわゆる糸瓜に似た構造、ハニカム状構造、蜂の巣状構造などが好適に挙げられる。
【0029】
前記構造を有する多孔性樹脂膜の第1の形成方法としては、例えば、特開平10−24667号公報に開示されているように、多孔性樹脂膜を形成する樹脂の良溶媒(樹脂を溶解可能な溶媒を言う)と貧溶媒(実質的に樹脂を溶解せず、蒸発速度が前記良溶媒の蒸発速度より遅い溶媒を言う)とが互いによく溶ける場合に用いられ、樹脂とその樹脂に対する良溶媒と貧溶媒とを含む流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に半析出状態で塗布し、乾燥して形成する。この樹脂、その良溶媒、及び貧溶媒を含む流動体は乾燥過程において、良溶媒が先に蒸発し、相対的に貧溶媒が増加し、樹脂の濃縮などにより樹脂が析出して、三次元網状構造を形成する。この第1の形成方法では、一般的に糸瓜状構造の多孔性樹脂膜が形成され、エーテルやアセトンなど、蒸発の速い溶剤を選択して生産性を高めることができる。
【0030】
前記多孔性樹脂膜の形成に用いられる樹脂材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマーなどのビニル系樹脂;ポリブチレン樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂;アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルプロピルセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明の目的であるインキ通過性の優れる多孔性樹脂膜を形成するためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0031】
前記多孔性樹脂膜には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、例えば、フィラー、帯電防止剤、スティック防止剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤などを添加することができる。
【0032】
前記フィラーは、多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ、コシなどを調節するために添加される。ここで、前記フィラーとは、顔料、紛体や繊維状物質も含まれる概念であり、これらの中でも、特に、針状、板状、又は繊維状のフィラーが好ましい。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケイ酸マグネシウム、セピオライト、チタン酸カリウム、ウオラストナイト、ゾノライト、石膏繊維などの鉱物系針状フィラー;非酸化物系針状ウイスカ、複酸化物系ウイスカなどの人工鉱物系針状フィラー;マイカ、ガラスフレーク、タルクなどの板状フィラー;カーボンファイバー、ポリエステル繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などの天然又は合成の繊維状フィラーなどが挙げられる。
前記顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂などからなる有機ポリマー粒子;カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカなどの無機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フィラーの添加量は、前記樹脂100質量部に対し5〜200質量部が好ましい。前記フィラーの添加量が、5質量部未満であると、カールが発生し易くなることがあり、200質量部を超えると、多孔性樹脂膜の強度が低下することがある。
【0033】
前記多孔性樹脂膜の第2の形成方法としては、多孔性樹脂膜を形成する樹脂の良溶媒と貧溶媒とが互いに混ざり合わない場合に用いられ、例えば、特開平11−23885号公報に開示されているように、W/O型(油中水型)エマルションを主体とした流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成する方法である。このW/O型エマルションから形成される多孔性樹脂膜は一般的にハニカム状構造、蜂の巣状の三次元的網状構造を有している。この第2の形成方法により形成される多孔性樹脂膜は、W/O型エマルションを主体とする流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して形成されるものであり、主として水の部分が乾燥後、インクが通過する孔となり、溶剤中の樹脂(フィラー、乳化剤などの添加物が含まれていてもよい)が構造体となる。
【0034】
前記樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系誘導体、これらの変性物、又はこれらの共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ビニルブチラール系樹脂、ウレタン系樹脂が特に好ましい。
【0035】
前記W/O型エマルションの形成には、比較的親油性の強いHLBが2.5〜6の界面活性剤が有効であるが、水相にもHLBが8〜20の界面活性剤を使用するとより安定で均一なW/O型エマルションが得られる。高分子界面活性剤の使用も、より安定で均一なエマルションを得る方法の一つである。また、水系にはポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などの増粘剤の添加がエマルションの安定化に有効である。
【0036】
前記多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ、及びコシなどを調節するために、多孔性樹脂膜中には、更に必要に応じてフィラーなどの添加剤を添加することができる。これらの中でも特に、針状、板状、又は繊維状のフィラーが好ましい。なお、フィラーとしては、前記第1の形成方法と同様のものから適宜選択することができる。
【0037】
前記第1及び第2形成方法における多孔性樹脂膜の乾燥後付着量としては、0.3〜30g/mが好ましく、20〜30g/mがより好ましい。前記付着量が、0.3g/m未満であると、インキ付着量が制御されずに印刷物の裏移りが悪くなることがあり、30g/mを超えるとインクの通過を阻害して画像が悪くなることがあり、20〜30g/mであると、マスター自体のコシが強く、取扱性に優れる点で有利である。
【0038】
本発明の感熱孔版印刷用マスターにおける熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜の接着強度としては、1.4N/m以上が好ましく、2.8N/m以上がより好ましい。前記接着強度が、1.4N/m未満であると、ハンドリング及び搬送時に熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との剥離が発生し、シワの原因となるばかりでなく、耐刷時にマスターの伸び、ハガレ、破れといった問題を引起こすことがある。なお、前記接着強度の上限は、インキ通過が阻害されなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
−多孔性繊維膜−
前記多孔性繊維膜としては、材料、大きさ、構造などについては特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、前記材料としては、例えば、ガラス、セピオライト、各種金属などの鉱物繊維;羊毛、絹などの動物繊維;綿、マニラ麻、コウゾ、ミツマタ、パルプなどの天然繊維;スフ、レーヨンなどの再生繊維;ポリエステル、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成繊維;カーボンファイバーなどの半合成繊維;ウィスカ構造を有する無機繊維などの薄葉紙が挙げられる。これらの中でも、天然繊維を含むものが好適に挙げられる。
【0040】
前記多孔性繊維膜を構成する繊維状物質の太さ(例えば、直径)、長さ、形状については、特に制限はなく、熱可塑性樹脂フィルムの穿孔直径、フィルムの厚さなど応じて適宜選択することができる。
前記繊維状物質の直径(太さ)としては、20μm以下が好ましく、1〜10μmがより好ましい。前記直径が、1μm未満であると引張り強度が弱くなることがあり、20μmを超えるとインキ通過が妨げられて繊維による白抜け画像が生じることがある。
前記繊維状物質の長さとしては、0.1〜10mmが好ましく、1〜6mmがより好ましい。前記繊維状物質の長さが、0.1mm未満であると、引張り強度が弱くなることがあり、10mmを超えると、分散を均一に行うのが困難になることがある。
【0041】
前記多孔性繊維膜の坪量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜20g/mが好ましく、3〜10g/mがより好ましい。前記坪量が、20g/mを超えると、インキの通過性が低下して画像鮮明性が低下することがあり、1g/m未満であると、インキ透過性支持体として十分な強度が得られないことがある。
【0042】
前記多孔性繊維膜としては、市販品であってもよいし、適宜形成したものであってもよい。なお、前記多孔性繊維膜を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特公昭49−18728号公報、特公昭49−8809号公報などに記載の方法により形成することができる。
【0043】
前記多孔性繊維膜と前記多孔性樹脂膜を有するフィルムとを貼り合わせる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、少なくとも該多孔性樹脂膜の最外表層が乾燥し、皮膜化した後に、接着剤が塗布された多孔性繊維層と貼り合せることが好ましい。前記多孔性樹脂膜が形成される前に多孔性繊維膜を積層すると、多孔性樹脂膜の形成を阻害して所望の多孔性樹脂膜が得られないことがある。また、前記接着剤は、多孔性樹脂膜の孔を閉塞するおそれがあるため、多孔性繊維膜に塗布した方が好ましい。
【0044】
前記多孔性繊維膜と、前記多孔性樹脂膜を有するフィルムとを貼り合わせる(ラミネートする)場合に用いる接着剤としては、インキ通過性の面より多孔性樹脂膜の孔を塞がないような高粘度の状態のものが好ましい。前記接着剤が、完全に硬化するまでの粘度としては、25℃において100cP以上が好ましく、300cP以上がより好ましい。
この場合、前記接着剤として溶剤型接着剤を使用すると多孔性樹脂膜が侵され、孔を閉塞してしまうため、少なくとも多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜とが積層される時点において溶剤はない方が好ましく、この点から、無溶剤型接着剤、水性又はエマルション型接着剤が好適に用いられる。
【0045】
前記接着剤の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)酢酸エチルなどの有機溶剤で希釈された塗工液を多孔性繊維層に塗布し、乾燥した後、多孔性樹脂膜と貼り合せる方法、(2)無溶剤のまま塗布する方法、などが挙げられ、これらの中でも、環境面及び残留溶剤が発生しない点で、前記(2)無溶剤のまま塗布する方法が好ましい。
前記接着剤の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、オフセットグラビアコーティング法、キスコーティング法、バーコーティング法などが好適に挙げられる。
【0046】
前記接着剤としては、所定の接着強度を得るため及び上記条件を満たす点で、特にポリウレタン系接着剤が好適に挙げられる。該ポリウレタン系接着剤としては、低付着量にて所望の接着強度が得られる無溶剤型ポリウレタン接着剤が好適である。水性又はエマルション型ポリウレタン接着剤では塗工時、多孔性繊維膜の伸縮が発生し、カールなどを悪化させるという面からも無溶剤型ポリウレタン接着剤が好適に用いられる。
【0047】
前記無溶剤型ポリウレタン接着剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)ポリオール成分とイソシアネート成分の反応により得られる一液湿気硬化型のウレタンプレポリマー、(2)ポリオール成分とイソシアネート成分に分かれた二液硬化型の接着剤、などが挙げられる。
【0048】
前記ポリオール成分としては、両末端に水酸基を有し、液体であれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、両末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、などが挙げられる。
【0049】
前記イソシアネート成分としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,4−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサン、2,6−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o−,m−及びp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサヒドロメタキシリデンジイソシアネート(HXDI)、リジンジイソシアネートアルキルエステル(該アルキルエステルのアルキル部分は1〜6個の炭素原子を有することが好ましい)などの脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;トルイレン−2,4−ジイソシアネート(TDI)、トルイレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記多孔性繊維膜に無溶剤型ポリウレタン接着剤を塗布する場合、粘度が高すぎると繊維が脱落して塗工不良が発生するので、ロールを加熱することで粘度を下げて塗工することが好ましい。前記無溶剤型ポリウレタン接着剤の粘度は25℃において3000cP以下が好ましく、300〜1500cPがより好ましい。前記粘度が3000cP未満であると、多孔性樹脂膜と貼り合せ後に開口部を閉塞して、インキ通過性を阻害するおそれがあり、繊維層の繊維脱落が起こり易くなる。
【0051】
前記無溶剤型接着剤を用いた場合には、ロール状に巻かれた感熱孔版印刷用マスターの反応を促進させる目的で、キュアを行うことが好ましい。該キュアの温度としては、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。前記キュアの温度が、50℃を超えると、熱可塑性樹脂フィルムの収縮が発生してカールの問題が生じることがある。なお、前記キュアの時間としては、目的とする接着力が得られることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
前記接着剤の付着量としては、従来の感熱孔版印刷用マスター(熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜との積層品)とは異なり穿孔阻害の影響を考慮する必要はないので、所望の接着強度が得られ、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の孔を閉塞しない範囲であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05〜5.0g/mが好ましく、0.1〜3.0g/mがより好ましい。
【0053】
本発明の感熱孔版印刷用マスターにおける多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜の接着強度としては、1.4N/m以上が好ましく、2.8N/m以上がより好ましい。
前記接着強度が、1.4N/m未満であると、ハンドリング及び搬送時に多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜との膜剥離が発生し、シワの原因となるばかりでなく、耐刷時にマスターの伸び、ハガレ、破れといった問題を引き起こすことがある。なお、前記接着強度の上限はインキ通過が阻害されなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
本発明においては、前記多孔性繊維膜が導電性物質を含有する。この場合、前記導電性物質を前記多孔性繊維膜に含有(付与)する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、導電性物質を含有する導電性物質塗布液を多孔性繊維膜に塗布する方法が、実施が容易で生産性が高い点で好ましい。
【0055】
前記導電性物質としては、前記多孔性繊維膜に導電性を含有(付与)することができるものであれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、導電性粉体、界面活性剤、イオン性高分子化合物、又はこれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、液体であるために塗布が容易であり、電子線や紫外線の照射により架橋し、固化するために、移動による帯電防止性能の低下がなく、経時安定性に優れ、固化することにより導電性物質自体で、上述した繊維の脱落を防止できる点から、電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂が好ましい。
【0056】
前記電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂としては、導電性を有するポリマーであれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、構造中にラジカル重合性の二重結合や親水基を有する樹脂が好適であり、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリレートとラジカル重合性の単官能モノマーや多官能モノマーなどとの共重合体、などが挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンモノメタクリレート、ポリオキシエチレンジアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)モノメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)モノアクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコールポリブチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、などが挙げられる。これらの中でも、反応性が良好であり、かつ保存安定性に優れる点からポリオキシエチレンモノアクリレートが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、紫外線照射により架橋を行う場合には光重合開始剤を含有することが好ましい。該光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能の光重合開始剤、又は多官能の光重合開始剤が用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記単官能の光重合開始剤としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、テトラヒドロフルフリール誘導体のアクリレート、などが挙げられる。
【0059】
前記多官能の重合開始剤としては、例えば、ジシクロベンテニルアクリレート、ジシクロベンテニルオキシエチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジアールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオベンチルグリコール400ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ヒドロキシビバリン酸エステルネオベンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ビス(3’−アクリルオキシエトキシ−2’−ヒドロキシプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、ヒドロキシビバリン酸エステルネオベンチルグリコール誘導体のジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられる。
【0060】
前記電子線照射により硬化させる場合には、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、エレクトロカーテン型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いて行われ、電子線の照射エネルギーとしては、50〜1000keVが好ましく、100〜300keVがより好ましい。
【0061】
前記紫外線照射により硬化させる場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ、無電極放電ランプDバルブなどの光源を用いることが好ましい。これらの中でも、320〜450nmの発光波長の間に連続波長を有するメタルハライドランプ又は無電極放電ランプDバルブが硬化速度が高い点で好適である。
【0062】
なお、電子線又は紫外線を照射すると雰囲気温度が上昇し、熱可塑性樹脂フィルムなどが収縮するおそれがあるため、冷却装置などを用いて冷却することが好ましい。
前記導電性物質塗布液を塗布し、電子線照射又は紫外線照射して硬化させた多孔性繊維膜はドライヤーなどにより乾燥する。該乾燥の温度としては40〜70℃が好ましい。前記乾燥の温度が、70℃を超えると、前記熱可塑性樹脂フィルムが収縮してしまうおそれがあり、40℃未満であると、前記熱可塑性樹脂フィルムの乾燥に時間がかかることがある。
【0063】
前記導電性物質は、帯電防止性能を向上させる観点から、帯電防止剤を含有するのが好ましい。該帯電防止剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、リン酸ジオクチルエステル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記導電性物質としては、帯電防止性能が経時で劣化せず、環境の影響もない点から導電性粉体を用いることも好ましい。該導電性粉体としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫など金属粉;酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジュウムなどの金属酸化物粉体;カーボンブラック、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記導電性物質としては界面活性剤を用いることもできる。該界面活性剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アリルエーテルコポリマー、セスキオレイン酸、ソルビタン、アルキルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、アルキルリン酸エステルモノエタノールアミン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられる。
【0066】
前記導電性物質としての導電性粉体は、バインダー樹脂と併用される。一方、前記導電性物質としての界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、必要に応じて、バインダー樹脂と併用してもよい。
該バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線硬化樹脂、又は紫外線硬化樹脂などのように、多孔性繊維膜への付与時には液体で、その後、電子線照射や紫外線照射などで固化するものが好ましい。前記電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂としては、上述したものの中から目的応じて適宜選択することができる。
【0067】
前記導電性物質としては、イオン性高分子化合物を含有してもよい。該イオン性高分子化合物は水溶性であるものが多く、水溶性である場合には、多孔性繊維膜に水溶液を塗布できるので、環境への影響が少なく、取扱いが容易でマスターの製造方法の簡易化が図られる。更に、該イオン性高分子化合物を使用したマスターでは、曲げ剛度、印刷機内での搬送性、シワ抑制効果、及び多孔性繊維膜の繊維の脱落防止が可能となる。
該イオン性高分子化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩、オレフィン・マレイン酸共重合物ナトリウム塩、アクリルスルホン酸ナトリウム塩などのアニオン系高分子化合物;4級アンモニウムイオン変性アクリル樹脂、4級アンモニウムイオン変性ウレタン樹脂などのカチオン系高分子化合物、などが挙げられる。これらの中でも、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩、オレフィン・マレイン酸共重合物ナトリウム塩が、特に帯電防止効果が高い点で好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記導電性物質は、前記多孔性繊維膜に固体状態で付着していることが好ましい。これは、前記導電性物質が固体状態の場合には、多孔性繊維膜上で流動しないため、マスター製造直後の状態(多孔性繊維膜表面に導電性物質が存在する状態)が長く維持され、帯電防止性能の経時安定性に優れると共に、多孔性繊維膜の繊維の脱落防止効果も高いからである。なお、最終的な感熱孔版印刷用マスターにおいて、導電性物質が固体状態で有ればよく、導電性物質は多孔性繊維膜に付与する際には液体であってもよい。該付与する際に液体であった導電性物質を固体化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥、化学変化などが挙げられる。
前記付着量は、固形分で0.01〜1.0g/mが好ましく、0.02〜0.5g/mがより好ましい。
【0069】
本発明においては、23℃−65%RH環境下での多孔性繊維膜側の表面抵抗値としては、1×10〜1×1012Ωが好ましい。前記表面抵抗値が、1×1012を超えると、特に低温低湿環境下で印刷機内での搬送時に帯電が原因で搬送不良となることがあり、1×10未満であると、帯電防止剤の量を増やすなどして表面抵抗値をそれ以下にしても、印刷機上での搬送性を十分に向上させることができないことがある。
【0070】
なお、本発明の感熱孔版印刷用マスターには、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜を形成した熱可塑性樹脂フィルムの反対面にサーマルヘッドとのスティック防止のためにスティック防止層を設けることができる。
前記スティック防止層におけるスティック防止剤としては、特に制限はなく、従来の感熱孔版印刷用マスターで一般に使用されているものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。なお、前記スティック防止層には、静電気の発生を防止するため、帯電防止剤を添加することもできる。
【0071】
前記スティック防止層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、溶剤などに希釈した溶液をロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、バーコーターなどを用いて塗布し、乾燥することによりスティック防止層を形成することができる。
【0072】
(感熱孔版印刷用マスターの製造方法)
本発明の感熱孔版印刷用マスターの製造方法は、多孔性樹脂膜形成工程と、多孔性繊維膜形成工程とを含んでなり、導電性物質塗布工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0073】
−多孔性樹脂膜形成工程−
前記多孔性樹脂膜形成工程は、熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも樹脂を含む多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、乾燥させて多孔性樹脂膜を形成する工程である。
前記多孔性樹脂膜塗布液は、少なくとも樹脂を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなり、油中水型のものが好ましい。
【0074】
前記多孔性樹脂膜の形成方法としては、上述したように、前記第1の形成方法(特開平10−24667号公報参照)、又は第2の形成方法(特開平11−23885号公報参照)などが挙げられる。
【0075】
−多孔性繊維膜形成工程−
前記多孔性繊維膜形成工程は、前記多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を形成する工程である。
前記繊維状物質からなる多孔性繊維膜の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述したように、短繊維を湿式抄紙した抄造紙であってもよいし、不織布や織物であってもよいし、スクリーン紗などであってもよく、生産性、コスト面等より抄造紙が好ましく用いられる。
【0076】
−導電性物質塗布工程−
前記導電性物質塗布工程は、前記多孔性繊維膜上に少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する工程である。
前記導電性物質としては、上述したように、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂の少なくともいずれかの樹脂、界面活性剤、導電性粉体、並びにイオン性高分子化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0077】
前記導電性物質塗布液の25℃における粘度としては、2〜100cPが好ましく、4〜50cPがより好ましい。前記粘度が2cP未満であると、前記導電性物質塗布液が裏抜けし易く、前記多孔性繊維膜を多孔性樹脂膜上に積層した後に塗布を行うと、前記多孔性樹脂膜に塗付液が付着し、これが前記多孔性樹脂膜の孔を塞ぎインキ通過性を阻害することがある。また、前記多孔性樹脂膜上に積層する前の前記多孔性繊維膜に帯電防止処理をした上で積層する場合には、前記多孔性繊維膜への塗布時に、前記導電性物質塗布液の裏抜けにより搬送ロールなどが汚れ、ロール表面の平滑性を低下させて、塗布ムラの原因になることがある。また、ロールの汚れが蓄積すると、前記汚れの脱落が生じて、前記多孔性繊維膜に付着した場合に、その付着部分が画像白抜けになることがある。更に、前記粘度が、2cP未満であると、導電性物質塗布液が多孔性繊維膜内部にまで浸透し、多孔性繊維膜表面に集まりに難くなるため、帯電防止効果が得られ難くなることがある。
一方、前記塗布液粘度が、100cPを超えると、塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックにより、前記多孔性繊維膜の繊維が引き抜かれ、塗工ロール上に蓄積し、塗布ムラの原因になるほか、蓄積した繊維が脱落し、多孔性繊維膜に付着すると、その部分が画像白抜けになることがある。また、塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックが強いと、塗工時にマスター又は前記多孔性繊維膜が引っ張られシワや塗布ムラが発生することがある。塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックを抑えるにはラインスピードを下げることが有効であるが、生産性が低下する。
【0078】
前記多孔性繊維膜における、導電性物質塗布液の不揮発分総塗布量としては、0.01〜1.0g/mが好ましく、0.02〜0.5g/mがより好ましい。前記不揮発分総塗布量が、上記範囲であると十分な帯電防止効果が得られ、また、印刷画像白抜けの問題も生じない。
【0079】
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スティック防止層形成工程などが挙げられる。
【0080】
本発明の感熱孔版印刷用マスターの製造方法により製造された感熱孔版印刷用マスターは、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質や、裏移りの少ないという特徴を失わず、しかもマスターの印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワの発生がなく、従来からの改題を解決できる高品質なものである。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
まず、タルク(日本タルク株式会社製、ミクロエースL−G)2.4質量部を酢酸エチル36.75質量部中に撹拌分散した後、ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製、エスレックKS1)3.2質量部を溶解した。該溶液にソルビタン脂肪酸エステル(日光ケミカルズ株式会社製、SO−15)0.1質量部、変性シリコーンオイル(信超化学工業株式会社製、KF6012)0.1質量部、及びアクリル系ポリマーO/W型エマルション(ジョンソンポリマー株式会社製、Joncryl−711)0.2質量部を撹拌して溶解した。この溶液を撹拌しながらヒドロキシエチルセルロース(HEC)1質量%水溶液(和光純薬工業株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース使用)25質量部を滴下して、油中水型エマルションを作製した。この油中水型エマルションをグラビアロールを用いて厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上に塗布し、50℃で乾燥して、乾燥後付着量が2.0g/mの多孔性樹脂膜を作製した。
【0083】
次に、多孔性繊維膜(繊度0.2デニールと1.1デニールの2種類のポリエステル繊維からなる抄造紙(坪量8g/m、厚み25μm))に25℃に加温したロールコーターを用いて導電性物質としてのポリオキシエチレンモノアクリレートの80質量%水溶液(25℃、粘度105cP)からなる導電性物質塗布液を塗布し、50℃で乾燥した。この導電性物質塗布液における不揮発分塗布量は1.1g/mであった(塗工速度は100m/min、塗工長は1000m)。なお、導電性物質塗布液の粘度及び不揮発分総塗布量は以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0084】
<導電性物質塗布液の粘度の測定>
導電性物質塗布液の粘度は、下記測定パターンで応力を上昇させていき、流動が安定したところの平均値を液粘度とした。
測定装置:Rheometrics社製のDSR−200
測定温度:25℃
センサー:coneplate、直径50mm〜0.02ラジアン
測定パターン:調温のため、2分間静置した後、3分間で応力を0.001Pa〜10Paまでlogモードで上昇させた。
【0085】
<不揮発分総塗布量(樹脂及び導電性物質の不揮発分総塗布量)の測定>
導電性物質や樹脂などを塗布した多孔性繊維膜25cm×25cmと、塗布していない多孔性繊維膜25cm×25cmとの質量差を求め、g/mに換算したものを前記不揮発分総塗布量とした。
【0086】
次に、ポリウレタンアクリレート樹脂(荒川化学工業株式会社製、ビームセット504H)70質量部、及びアクリル酸エステルモノマー(東亜合成株式会社製、アロニックスM−101)30質量部を約80℃で溶融混合して、電子線硬化性接着剤を調製した。得られた電子線硬化性接着剤を80℃に加熱したロールコーターを用いて、前記多孔性樹脂膜上に乾燥付着量が0.4g/mとなるように塗布した。
【0087】
次に、前記多孔性繊維膜の導電性物質塗布面と、前記多孔性樹脂膜の多孔性樹脂膜側とが重なるようにラミネートし、5Mradの電子線を照射し、硬化させた。
【0088】
次に、シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422)0.5質量部、及びトルエン100質量部からなるスティック防止層塗布液を調製した。このスティック防止層塗布液を前記フィルム面(多孔性繊維膜を積層したのと反対側の面)にバーコーターを用いて、乾燥後の付着量が0.05g/mになるように塗布し、50℃で乾燥してスティック防止層を形成した。以上により、感熱孔版印刷用マスターを作製した。
【0089】
(実施例2)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてポリオキシエチレンモノアクリレートの78質量%水溶液(25℃、粘度95cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.9g/mとした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例3)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてポリオキシエチレンモノアクリレートの65質量%水溶液(25℃、粘度50cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.3g/mとした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例4)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてポリオキシエチレンモノアクリレートの20質量%水溶液(25℃、粘度3cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.013g/mとした以外は、実施例1と同様にして感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例5)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてポリオキシエチレンモノアクリレートの15質量%水溶液(25℃、粘度1.8cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.009g/mとした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例6)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてのポリオキシエチレンモノアクリレートの82質量%水溶液(25℃、粘度115cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を1.5g/mとした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例7)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてのポリオキシエチレンモノアクリレートの8質量%水溶液(25℃、粘度1cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.005g/mとした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例8)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、下記組成の導電性物質塗布液を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分総塗布量を0.15g/mとした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
<導電性物質塗布液>
酸化スズ粉末(三菱マテリアル株式会社製、T−1)30質量部をポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40質量%)50質量部、及び水20質量部と混合し、ボールミルで分散してなる導電性物質塗布液(固形分濃度50質量%、25℃、粘度30cP)を調製した。
【0096】
(実施例9)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、下記組成の導電性物質塗布液を用い、前記多孔性繊維膜への不揮発分総塗布量を0.3g/mとした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
<導電性物質塗布液>
カチオン界面活性剤(日本油脂株式会社製、エレガン264A、固形分濃度35質量%)21.7質量部、ポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40質量%)76質量部、及び水2.3質量部からなる導電性物質塗布液を調製した。
【0097】
(実施例10)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、下記組成の導電性物質塗布液を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分総塗布量を0.2g/mとした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
<導電性物質塗布液>
イオン性高分子化合物として、アニオン系高分子化合物水溶液(JSR社製、K106、不揮発分濃度35質量%)を水で希釈し、不揮発分濃度が17質量%となるよう導電性物質塗布液を調製した。なお、K106中のアニオン系高分子化合物は、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩である。
【0098】
(比較例1)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
ポリウレタンアクリレート樹脂(荒川化学工業株式会社製、ビームセット504H)70質量部、及びアクリル酸エステルモノマー(東亜合成株式会社製、アロニックスM−101)30質量部を約80℃で溶融混合を行い、電子線硬化性接着剤を調製した。これを80℃に加熱したロールコーターを用い付着量が0.4g/mとなるように多孔性繊維膜(繊度0.2デニールと1.1デニールの2種類のポリエステル繊維からなる抄造紙(坪量8g/m、厚み25μm)に塗布した。この多孔性繊維膜の接着剤を塗った面と、前記実施例1の多孔性樹脂膜における多孔性樹脂膜側とが重なるようにラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
【0099】
次に、シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422)0.5質量部、カチオン界面活性剤(日本油脂株式会社製、エレガン264−WAX、固形分濃度100質量%)1.0質量部、及びトルエン100質量部からなるスティック防止・帯電防止層塗布液を調製した。この塗布液をフィルム面(多孔性繊維膜を積層したのと反対側の面)にバーコーターを用いて、乾燥後の付着量が0.3g/mになるように塗布し、50℃で乾燥して感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、スティック防止・帯電防止層塗布液の粘度及び不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0100】
(比較例2)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
ポリウレタンアクリレート樹脂(荒川化学工業株式会社製、ビームセット504H)70質量部、及びアクリル酸エステルモノマー(東亜合成株式会社製、アロニックスM−101)30質量部を約80℃で溶融混合して、電子線硬化性接着剤を調製した。
得られた電子線硬化性接着剤を80℃に加熱したロールコーターを用いて付着量が0.4g/mなるように多孔性繊維膜(繊度0.2デニールと1.1デニールの2種類のポリエステル繊維からなる抄造紙(坪量8g/m、厚み25μm)に塗布した。この多孔性繊維膜の接着剤を塗った面と、多孔性樹脂膜の多孔性樹脂膜側とが重なるようにラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
【0101】
次に、シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422)0.5質量部、電子線硬化性導電性物質としてのポリオキシエチレンモノアクリレート1.0質量部、及びトルエン100質量部からなるスティック防止・帯電防止液をフィルム面(多孔性繊維膜を積層したのと反対側の面)にバーコーターを用いて、乾燥後の付着量が0.3g/mになるように塗布し、50℃で乾燥して感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記スティック防止・帯電防止層塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例3)
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
電子線硬化性導電性物質としてのポリオキシエチレンモノアクリレートの65質量%水溶液(25℃、粘度50cP)を、多孔性繊維膜(繊度0.2デニールと1.1デニールの2種類のポリエステル繊維)からなる抄造紙(坪量8g/m、厚み25μm)に25℃に加温したロールコーターを用いて導電性物質塗布液を塗布し、50℃で乾燥した。不揮発分塗布量は0.3g/mであった(塗工速度は100m/min、塗工長は1000m)。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0103】
次に、ポリウレタンアクリレート樹脂(荒川化学工業株式会社製、ビームセット504H)70質量部、及びアクリル酸エステルモノマー(東亜合成株式会社製、アロニックスM−101)30質量部を約80℃で溶融混合を行い、電子線硬化性接着剤を調製した。
この電子線硬化性接着剤を80℃に加熱したロールコーターを用いて付着量が0.4g/mとなるように上記多孔性繊維膜の導電性物質を含む液を塗ったのと反対側に塗布し、この接着剤を塗った面を、厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
次に、フィルム面(多孔性繊維膜を積層したのと反対側の面)にバーコーターを用いてシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422)0.5質量部、及びトルエン100質量部からなるスティック防止層塗布液を、乾燥後の付着量が0.05g/mになるように塗布し、50℃で乾燥して感熱孔版印刷用マスターを作製した。
【0104】
−評価−
次に、作製した各感熱孔版印刷用マスターについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表2に示す。
【0105】
<表面抵抗の測定>
23℃−65%RH環境下で、各感熱孔版印刷用マスターの多孔性繊維膜側の表面抵抗を測定した。測定装置はセンサー部が、「Hewlett−Packard 16008A Resistivity Cell」、本体が「Yokogawa−Hewlett−Packard 4329A High Resistance Meter」、test voltageは100voltsの設定とした。
各感熱孔版印刷用マスターをシート状態にて23℃−65RH%雰囲気中に4時間吊るし、調湿を行った上で測定した。
【0106】
<塗工ロール上繊維>
各感熱孔版印刷用マスターにおいて、導電性物質塗布液を多孔性繊維膜に塗布した後、ロールコーターの塗工ロール表面を観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:塗工ロール上に繊維がない。
○△:塗工ロール上に繊維が殆どない。
△:塗工ロール上に繊維が少量あるが実用上問題とならない。
×:実用上問題となるレベルの脱落の繊維が観られる。
【0107】
<塗工ロール汚れ>
各感熱孔版印刷用マスターにおいて、導電性物質塗布液を多孔性繊維膜に塗布した後、ロールコーターの塗工ロール表面を観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:塗工ロール上に汚れがない。
○△:塗工ロール状に汚れが殆どない。
△:塗工ロール上に汚れが少量あるが実用上問題とならない。
×:実用上問題となるレベルの汚れが観られる。
【0108】
<搬送性>
各感熱孔版印刷用マスターについて、10℃−20%RHの環境下で印刷機(株式会社リコー製、RicohVT3820)を用いて無製版搬送し、ドラムに巻きつけた際、スキューすることなくドラムにまっすぐにまかれるかどうかの試験を行い、下記基準で評価した。なお、マスターの帯電が大きいと搬送過程において静電気によるマスター同士の貼り付きによって不具合が起こる場合がある。
〔評価基準〕
◎:静電気によるマスターの貼り付きが全くなく、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
○:静電気によるマスターの貼り付きがなく、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
○△:静電気によるマスターの貼り付きが殆どなく、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
△:静電気によるマスターの貼り付きが若干観られるものの、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
×:静電気によるマスターの貼り付きが原因で、マスターがドラムに対して斜めに巻きつけられた。
【0109】
<保存後の搬送性(保存安定性)>
各感熱孔版印刷用マスターを50℃にて1週間保存し、上記同様の搬送試験を行い、下記基準に基づき、保存後の搬送性を評価した。
〔評価基準〕
◎:搬送性に極めて優れている。
○:搬送性に劣化がない。
○△:搬送性に殆ど劣化がない。
△:搬送性にやや劣化は有るものの実用上問題がない。
×:搬送性に劣化が著しく有り、実用上問題となる。
【0110】
<印刷画像白抜けの評価>
穿孔及び印刷装置としてPRIPORT VT3820(株式会社リコー製:東芝社製サーマルヘッド搭載)を用い、各感熱孔版印刷用マスターに10cm×10cmのベタチャートによる製版及び印刷を行った。得られた印刷画像について、下記基準により印刷画像の白抜けの程度を評価した。
〔評価基準〕
○:印刷画像に白抜けがない。
○△:印刷画像に白抜けが殆どない。
△:印刷画像にやや白抜けが観られるが、実用上問題のないレベルである。
×:実用上問題となるレベルの白抜けが観られる。
【0111】
【表1】

*T−1:酸化スズ粉末(三菱マテリアル株式会社製、T−1)
*EM90:ポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40質量%)
*264A:カチオン界面活性剤(日本油脂株式会社製、エレガン264A、固形分濃度35質量%)
*264−WAX:カチオン界面活性剤(日本油脂株式会社製、エレガン264−WAX、固形分濃度100質量%)
【0112】
【表2】

【0113】
表1及び表2の結果から、熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に積層してなり、該多孔性繊維膜が導電性物質を含有する実施例1〜10は、いずれも、帯電特性に優れ、良好な搬送性を有していることが認められる。
比較例1は、フィルム面に液体の導電性物質(低分子界面活性剤)を塗布しているため、経時安定性が低く、印刷画像に悪影響が出るほど多く塗布しても保存後は搬送不良が発生した。
比較例2は、フィルム面に固体の導電性物質(電子線硬化性樹脂)を塗布したためにサーマルヘッドによるフィルム穿孔に不良が発生し、印刷画像に白抜けが多い。
比較例3は、多孔性樹脂膜が存在しないため、多孔性繊維膜に導電性物質を塗布した影響が印刷画像に出易く、印刷画像に白抜けが多い。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、サーマルヘッドによる穿孔性を損なうことなく、優れた画質や、裏移りの少ないという特徴を失わず、しかもマスターの印刷機内での静電気によるジャムやドラム上でのシワの発生がなく、優れた帯電防止効果を有し、感熱孔版印刷用マスターとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、本発明の感熱孔版印刷用マスターの一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0116】
1 熱可塑性樹脂フィルム
2 多孔性樹脂膜樹脂部
3 多孔性樹脂膜空隙部
4 多孔性繊維膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなり、該多孔性繊維膜が導電性物質を含有することを特徴とする感熱孔版印刷用マスター。
【請求項2】
導電性物質が、帯電防止剤を含有する請求項1に記載の感熱孔版印刷用マスター。
【請求項3】
導電性物質が、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂から選択される少なくとも1種を含有する請求項1から2のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
【請求項4】
樹脂が、ポリオキシエチレンモノアクリレートである請求項3に記載の感熱孔版印刷用マスター。
【請求項5】
導電性物質が、導電性粉体を含有する請求項1から4のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
【請求項6】
導電性物質が、イオン性高分子化合物を含有する請求項1から5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
【請求項7】
多孔性繊維膜に導電性物質が固体状態で付着している請求項1から6のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
【請求項8】
23℃−65%RH環境下での多孔性繊維膜側の表面抵抗値が1×10〜1×1012Ωである請求項1から7のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
【請求項9】
熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも樹脂を含む多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、乾燥させて多孔性樹脂膜を形成する多孔性樹脂膜形成工程と、該多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を形成する多孔性繊維膜形成工程を含むことを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
【請求項10】
多孔性樹脂膜の乾燥後付着量は0.3〜30g/mである請求項9に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
【請求項11】
多孔性繊維膜に少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する導電性物質塗布工程を含む請求項9から10のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
【請求項12】
導電性物質が、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂の少なくともいずれかの樹脂、界面活性剤、導電性粉体、並びにイオン性高分子化合物から選択される少なくとも1種を含有する請求項9から11のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
【請求項13】
導電性物質塗布液の25℃での粘度が2〜100cPである請求項9から12のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
【請求項14】
導電性物質塗布液の不揮発分総塗布量が0.01〜1.0g/mである請求項9から13のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−44216(P2006−44216A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321331(P2004−321331)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】