説明

感熱記録シートおよびその使用方法

【課題】本発明は、シート基材の上に不可逆感熱記録層と可逆感熱記録層を備え、表示内容によって消色可能な表示と消色不可能な表示を使い分けられるようにした感熱発色シートおよびその使用方法の提供を課題とする。
【解決手段】シート基材2と、その表面に対し、互いに重ならないようにして設けられた不可逆感熱記録層3および可逆感熱記録層4と、それらの表面を被覆する剥離剤層5と、シート基材2の裏面に設けられた粘着剤層と、感熱記録シート1を単葉ラベル7に分離するためのミシン目8と、で構成されている。可逆感熱記録層4の発色開始温度は、その消色開始温度よりも高く、かつ不可逆感熱記録層3の発色開始温度よりも高くなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録シートおよびその使用方法に関し、特にシート基材の上に不可逆感熱記録層と可逆感熱記録層とを備える感熱記録シートおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面を記録層とするシート基材の裏面に設けられた粘着剤層を、シート基材の表面と対接させて剥離可能に巻き回されてなる、いわゆる台紙なしラベルが知られている。プリンタで使用される一般的な台紙なしラベルは、その表面に感熱記録層が設けられて感熱記録による印字が可能とされ、その表面には、あらかじめ必要に応じてロゴマークなどの固定情報が印刷されるとともに、それらの全面を剥離剤層で被覆することで、粘着剤の貼着・剥離が可能となっている。また、基材の裏面と粘着剤層との間には、黒色で矩形状の位置検出マークが所定のピッチで印刷され、これによって印字の先頭位置や、単葉ラベルにカットする位置などが適正に定まるようになっている(例えば特許文献1参照)。このような台紙なしラベルは、例えばラベルの搬送方向と直交する方向(幅方向)に多数の発熱体が配列されたラインサーマルヘッドを備えるラベルプリンタに取り付けられ、プラテンローラとラインサーマルヘッドとの間で挟持・搬送されながら、位置検出マークによる位置情報に基づいて、ラベル表面の所定位置に対し、商品名、価格、バーコード、発行年月日、製造者、その他注意事項などが印字される。
【0003】
しかしながら、表面へのロゴマークなどの印刷に加え、裏面に位置検出マークを印刷するためには、表裏に印刷が行える専用の印刷設備が必要となるという問題があった。さらに、位置検出マークの上には粘着剤層が設けられるので、粘着剤層の透明度によっては、位置検出マークの色が不鮮明となり、位置検出マークの検出感度が低下するという問題もあった。
【0004】
これに対し、位置検出マークをラベルの表面に印刷するようにすれば、このような問題は解消されるが、位置検出マークは、印字や単独のラベルへのカットの後は必要なくなるにもかかわらず、いつまでもラベル表面に表示され続けるので、意匠上好ましくないという問題があった。また、ラベル表面に対して、ラベルの名称や基材の種類、メーカー名などの表示を行うようにすれば、ラベルの見分けが容易となり好適であるが、このような表示を行うと、ラベル表面の表示が煩雑となって本来の表示が読み取りにくく、意匠上も好ましくないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−183979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シート基材の上に不可逆感熱記録層と可逆感熱記録層を備え、表示内容によって消色可能な表示と消色不可能な表示を使い分けられるようにした感熱発色シートおよびその使用方法を提供する点にある。
また、不可逆感熱記録層の発色と可逆感熱記録層の消色を同一温度で行うことができる感熱記録シートおよびその使用方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の感熱記録シートは、不可逆感熱記録層と可逆感熱記録層とがシート基材の上に互いに重なることなく設けられた感熱記録シートであって、前記可逆感熱記録層の発色開始温度は、その消色開始温度よりも高く、かつ前記不可逆感熱記録層の発色開始温度よりも高くなるように設定されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記可逆感熱記録層は、前記シート基材の幅方向端部に対して帯状に設けることができる。
【0009】
また、前記可逆感熱記録層には、位置検出マークを加熱によって所定のピッチで発色表示することができる。
【0010】
また、前記不可逆感熱記録層と前記可逆感熱記録層の上に剥離剤層が設けられるとともに、前記シート基材の前記剥離層を有する面の反対面に粘着剤層が設けられ、前記剥離剤層を外側にして剥離可能に巻き回されてロール状に形成することができる。
【0011】
また、本発明の感熱記録シートの使用方法は、請求項3記載の感熱記録シートの使用方法であって、複数の発熱体が配列されたラインサーマルヘッドを備えるとともに、光反射型または光透過型センサーを備えたプリンタで、前記感熱記録シートを搬送しながら、前記光反射型または前記光透過型センサーで前記位置検出マークを読み取る読み取り工程と、前記位置検出マークで検出された位置情報に基づいて前記発熱体を発熱させ、前記不可逆感熱記録層の発色開始温度と前記可逆感熱記録層の消色開始温度のいずれか高い温度以上、かつ、前記可逆感熱記録層の発色開始温度未満の温度で加熱して、前記可逆感熱記録層の発色による少なくとも前記位置検出マークを表す印字を消色するとともに、前記不可逆感熱記録層の発色による印字を行う消色・発色工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記消色・発色工程における前記可逆感熱記録層および前記不可逆感熱記録層の加熱温度は、同一に設定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の感熱記録シートは、不可逆感熱記録層と可逆感熱記録層とがシート基材の上に互いに重なることなく設けられた感熱記録シートであって、可逆感熱記録層の発色開始温度は、その消色開始温度よりも高く、かつ不可逆感熱記録層の発色開始温度よりも高くなるように設定されているので、不可逆感熱記録層による印字と、可逆感熱記録層による印字の消色と、を同一温度で行うことができるという効果を奏す。
【0014】
また、可逆感熱記録層は、シート基材の幅方向端部に対して帯状に設けるようにしたので、不可逆感熱記録層が設けられた領域と区別をしやすいという効果を奏す。
【0015】
また、可逆感熱記録層には、位置検出マークを加熱によって所定のピッチで発色表示したので、位置検出マークを消去可能に設けることができるという効果を奏す。
【0016】
また、不可逆感熱記録層と可逆感熱記録層の上に剥離剤層が設けられるとともに、シート基材の剥離層を有する面の反対面に粘着剤層が設けられ、剥離剤層を外側にして剥離可能に巻き回されてロール状に形成するようにしたので、粘着剤層の露呈もなくて保管が容易であるだけでなく、これを繰り出して印字が行えるとともに、被貼着体に貼付することができるという効果を奏す。
【0017】
また、本発明の感熱記録シートの使用方法は、複数の発熱体が配列されたラインサーマルヘッドを備えるとともに、光反射型または光透過型センサーを備えたプリンタで、感熱記録シートを搬送しながら、光反射型または光透過型センサーで位置検出マークを読み取る読み取り工程と、位置検出マークで検出された位置情報に基づいて発熱体を発熱させ、不可逆感熱記録層の発色開始温度と可逆感熱記録層の消色開始温度のいずれか高い温度以上、かつ、可逆感熱記録層の発色開始温度未満の温度で加熱して、可逆感熱記録層の発色による少なくとも位置検出マークを表す印字を消色するとともに、不可逆感熱記録層の発色による印字を行う消色・発色工程と、を有するので、商品名などのように消色を目的としない表示内容は、不可逆感熱記録層での消色不可能な印字を行い、位置検出マークなどのように、いずれは消し去るべき表示内容は、可逆感熱記録層での消色可能な印字を行い、不要となれば消去を行うようにすることができるという効果を奏す。
【0018】
また、消色・発色工程における可逆感熱記録層および不可逆感熱記録層の加熱温度は、同一に設定することができるので、ラインサーマルヘッドの幅方向の温度条件を変えることなく、印字と消色とを並行して行うことができるという効果を奏す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態にかかる感熱記録シートの平面図、図2は、図1のX−X断面図、図3は、ロール状に形成した感熱記録シートを表す説明図である。
【0021】
本実施の形態にかかる感熱記録シート1は、図1〜図3を参照すると、シート基材2と、その表面に対し、互いに重ならないようにして設けられた不可逆感熱記録層(以下、不可逆層)3および可逆感熱記録層(以下、可逆層)4と、それらの表面を被覆する剥離剤層5と、シート基材2の裏面に設けられた粘着剤層6と、感熱記録シート1を単葉ラベル7に分離するためのミシン目8と、で構成されている。不可逆層3は単葉ラベル7の大半の領域を占めており、可逆層4は帯状の狭幅で不可逆層3の幅方向右端および長手方向後端に対して設けられている。上記各層は印刷またはコーティングなどの方法により設けることができる。また、不可逆層3や可逆層4の表面には、必要に応じてロゴマークや会社名などの印刷が行われる。
【0022】
シート基材2は、印字用のラベルに用いられる一般的な基材が適用可能であり、例えば上質紙、アート紙、コート紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルム、PP(ポリプロピレン)樹脂フィルム、PE(ポリエチレン)樹脂フィルム、PS(ポリスチレン)樹脂フィルム、フォイル紙、合成紙などを用いることができる。
【0023】
不可逆層3は、常温では無色であるが、所定の温度に加熱すると発色し、温度を変えてもこの発色状態が維持される不可逆感熱記録組成物を主体とし、感熱記録シート1に対してバーコードなどの印字を行うラベルプリンタによって、商品名、価格、バーコードまたは二次元コード、製造業者などの印字が行われる領域とされる。不可逆感熱記録組成物は、ラベルプリンタ用の感熱紙として一般的に使用される組成物が使用可能である。
【0024】
可逆層4は、所定の温度に加熱すると発色するが、これを冷却後、発色温度よりも低温の消色温度領域で加熱すると消色する可逆感熱記録組成物を主体とし、不可逆層3に印字が行われた後は不要となる表示が行われる領域とされる。可逆層4には、あらかじめ、熱ロールやラベルプリンタなどの加熱手段によって、感熱記録シート1の製造時、あるいはその後に、ラベルプリンタの印字位置を制御するためのマークである位置検出マーク9や、必要に応じて感熱記録シート1の名称、基材の種類、メーカー名、サイズ、ロットナンバーなどが印字される。なお、位置検出マーク9と単葉ラベル7の先端となるミシン目8とは所定の間隔で設ける必要があるため、ミシン目8との位置関係がずれないように、通常、位置検出マーク9の表示はミシン目8の加工と同時に行われる。
【0025】
可逆感熱記録組成物は、常温では無色であるが、所定の温度で加熱することによって発色し、それよりも低温領域における加熱によって消色する一般的なものが用いられる。このようなものとして、例えば、電子供与性の発色成分であるロイコ染料と、リン酸、カルボン酸、フェノールなどのロイコ染料を発色させることができる顕色能を持つ構造と分子内の凝集力をコントロールする構造とを併せ持つ長鎖型の顕色剤と、の組み合わせによる組成物などが使用可能である(特開平11−105427)。また、発色と消色とが必ずしも繰り返し発現する必要はなく、発色とその後の消色とが少なくとも1度行われるものであれば特に問題はない。なお、可逆層4の発色開始温度は、不可逆層3の発色開始温度よりも高温に設定されている。
【0026】
また、不可逆層3、可逆層4の発色開始温度、消色開始温度は、使用される可逆または不可逆感熱記録組成物の材質やその配合比率などを適宜選択することによって、変更可能である。
【0027】
不可逆または可逆感熱記録組成物の発色時の色は、特に限定するものではないが、位置検出マーク9やバーコードなどは、光を照射して受光するセンサーによって周辺領域との反射または透過率の差に基づいて光学的読み取りが行われるので、通常は、周辺領域よりも照射光に対する反射または透過率が、センサーの特性に応じて低くなるような色が選定される。
【0028】
粘着剤層6には、ラベル用の粘着剤として広範に使用されているエマルジョン型粘着剤や溶剤型粘着剤、あるいはホットメルト型粘着剤やUV硬化型粘着剤のような無溶剤型粘着剤が使用可能であるが、特にエマルジョン型粘着剤や溶剤型粘着剤を使用する場合は、水や溶剤がシート基材2に浸透しないように、シート基材2と粘着剤層との間に浸透を防止するための保護層を設けるようにするのが望ましい。また、粘着剤層6の粘着力に関しては、被貼着体に対して一時的な接着を意図したいわゆる弱粘着性のものから永久接着を意図したいわゆる強粘着性のものまで、シート基材2の材質、加工方法、貼着対象物の表面状態、およびその用途などに応じて適宜選択される。
【0029】
次に、感熱記録ラベル1の発色、消色温度−色濃度特性について説明する。
図4は、不可逆層3の発色開始温度T1が、可逆層4の消色開始温度T2よりも低い場合の加熱温度と色濃度の関係を示す図、図5は、不可逆層3の発色開始温度T1が、可逆層4の消色温度領域(消色開始温度T2以上、発色開始温度T3未満)にある場合の加熱温度と色濃度の関係を示す図である。本願発明では、図4または図5の関係を満たす不可逆層3と可逆層4の組み合わせが用いられる。
【0030】
このような構成の感熱記録シート1は、図3に示す如く、紙製やプラスチック製の支管10に対して粘着剤層6の表面を密着させて貼着した後、これを巻回して、感熱記録シート1の表面に設けられた剥離剤層5に対し、粘着剤層6を剥離可能に貼着して、ロール状に形成することができる。
【0031】
図4、図5において、上段は不可逆層3の発色特性、下段は可逆層4の発色・消色特性を相互比較可能に示したものである。また、発色過程は実線で表し、消色過程は点線で表している。不可逆層3は、加熱によって温度T1までは消色濃度D1で推移するが、温度T1以上で発色して発色濃度D2となり、その後は冷却後も発色濃度D2が維持される。一方、可逆層4は加熱によって温度T2までは消色濃度D3で推移し、温度T2以上で発色して発色濃度D4となり、その後は冷却後も発色濃度D4が維持されるが、これを再度加熱すると、温度T2以上で消色を開始して発色濃度D4から消色濃度D3となって、冷却後もこの消色濃度D3が維持される。
【0032】
斜線で表された領域は、不可逆層3の発色と可逆層4の消色とを同一温度で行うことができる温度領域を示したものである。図4では可逆層4の消色開始温度T2以上、可逆層4の発色開始温度T3未満の温度領域がこれに該当し、図5では不可逆層3の発色開始温度T1以上、可逆層4の発色開始温度T3未満の温度領域がこれに該当する。
【0033】
すなわち、本実施の形態の感熱記録シート1は、図1で示したように、不可逆層3と、幅方向右端および長手方向後端に可逆層4が設けられており、不可逆層3の発色と可逆層4の消色とを同一温度で行うことができる温度領域(図4、図5の斜線で表される領域)が設定されているので、この領域内の温度条件で印字を行うことによって、不可逆層3の発色と可逆層4の消色とを同時に行えるようになっている。
【0034】
このような温度領域が存在せず、不可逆層3の発色と可逆層4の消色温度が異なる場合は、各々の発色層に対応して、サーマルヘッドの発熱体の温度制御領域を2分割し、各々異なる温度で加熱を行うか、一度所定温度で印字を行った後、再度異なる温度で印字を行うといった煩雑な工程が必要となる。いずれにしても、プリンタの制御にかかる負荷が大
きくなるという不都合が生ずる。
【0035】
本願発明の感熱記録シート1は、不可逆層3と可逆層4の発色、消色温度を適宜組み合わせることによって、同一温度条件で一度に印字可能とし、このような不都合を回避するようにしたものである。
【0036】
不可逆層3の発色温度T1の設定値は、使用環境によっても異なるが、使用時や保管時の環境温度、サーマルヘッドの蓄熱などの影響を受けないように、通常は60℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上である。
【0037】
次に、本実施の形態にかかる感熱記録シート1の使用方法について説明する。
図6は、本実施の形態の感熱記録シート1に印字を施すのに用いられるラベルプリンタ11、図7はラベルプリンタ11で不可逆層3に印字するとともに、可逆層4の印字を消色する状態を表す図である。
【0038】
ラベルプリンタ11は、ロール状の感熱記録シート1を取り付けてシート状に繰り出す供給装置12と、感熱記録シート1に表面側からテンションを与えて搬送方向を転向するガイドローラ13と、感熱記録シート1に設けられた位置検出マーク9の位置情報を読み取るセンサー14と、感熱記録シート1の搬送方向と直交する方向に複数の発熱体15が配列されたラインサーマルヘッド16と、この発熱体15に対向して設けられ、感熱記録シート1をラインサーマルヘッド16との間で挟持して搬送するためのプラテンローラ17と、筐体18とが備わる。
【0039】
なお、ここでは、あらかじめ熱ロールやラベルプリンタなどの加熱手段によって、感熱記録シート1の単葉ラベル7に形成された可逆層4に対し、以下の発色表示が行われている場合について説明する。すなわち、単葉ラベル7の幅方向右端部には、位置検出マーク、製造工場名「北上工場2007/3/20」、ロットナンバー「lot.07032000802」の表示19が設けられ、長手方向後端部には、メーカー名と商品名「サトーノンセパラベル(感熱)」、単葉ラベル7のサイズ「w111×p38」といった表示20が行われている。
【0040】
かかる表示が行われたロール状の感熱記録シート1は、ラベルプリンタ11の供給装置12に対して回動可能に取り付けられ、以下のようにして表面の可逆層4の表示を消色するとともに、不可逆層3の発色による印字を行う。
【0041】
ラベルプリンタ11の供給装置12に取り付けられたロール状の感熱記録シート1は、シート状に繰り出されてガイドローラ13で搬送方向を転向された後、センサー14によって可逆層4に表示された位置検出マーク9の位置情報が読み取られる。読み取られた位置情報に基づいて、印字を行うラベルの先頭位置が割り出され、ラベルの先頭位置がラインサーマルヘッド16の所定位置に達すると、印字の情報に基づいて、ラインサーマルヘッド16の発熱体15に通電が行われる。
【0042】
ここで、不可逆層3の発色温度をT1、可逆層4の消色開始温度をT2、可逆層4の発色開始温度をT3としたときに、感熱記録シート1に設けられた各層の発色・消色温度がT1≦T2<T3の場合は、図4において斜線部で表したT2以上T3未満の温度範囲で発熱させて急冷し、発色・消色温度がT2<T1<T3の場合は、図5において斜線部で表したT1以上T3未満の温度範囲で発熱させて急冷するようにする。これによって、不可逆層3には、「樽生缶ビール詰め合わせ」、「夏季限定」、「特価3600円」、「佐藤酒店」、二次元コードが発色濃度D2で印字されるとともに、可逆層4に発色濃度D4であらかじめ表示されている位置検出マーク9、製造工場名などの印字は消色されて消色濃度D3となる。なお、消色の場合は、消色しようとする印字に対して重ね印字を行うようにしてもよいが、若干の位置づれによって消色の腰が発生する場合があるため、それよりも少なくとも一回り大きい範囲を加熱するようにするのが望ましい。
【0043】
以上説明の如く、本発明の感熱記録シートは、消色・発色工程における可逆感熱記録層および不可逆感熱記録層の加熱温度を同一に設定することができるので、ラインサーマルヘッドの幅方向の温度条件を変えることなく、あるいはシートを繰り返し印字を行うことなく、不可逆感熱記録層の印字と可逆感熱記録層の消色とを並行して一度で行うことができるという効果を奏す。
【0044】
本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態にかかる感熱記録シートの平面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】ロール状に形成した感熱記録シートを表す説明図である。
【図4】不可逆層の発色開始温度T1が、可逆層の消色開始温度T2よりも低い場合の加熱温度と発色濃度の関係を示す図である。
【図5】不可逆層の発色開始温度T1が、可逆層の消色開始温度T2以上、発色開始温度T3未満にある場合の加熱温度と発色濃度の関係を示す図である。
【図6】本実施の形態に印字を施すのに用いられるラベルプリンタである。
【図7】ラベルプリンタで不可逆層に印字するとともに、可逆層の印字を消色する状態を表す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 感熱記録シート
2 シート基材
3 不可逆感熱記録層(不可逆層)
4 可逆感熱記録層(可逆層)
5 剥離剤層
6 粘着剤層
7 単葉ラベル
8 ミシン目
9 位置検出マーク
10 支管
11 ラベルプリンタ
12 供給装置
13 ガイドローラ
14 センサー
15 発熱体
16 ラインサーマルヘッド
17 プラテンローラ
18 筐体
19、20 表示
T1 不可逆層の発色開始温度
T2 可逆層の消色開始温度
T3 可逆層の発色開始温度
D1 消色濃度(不可逆層)
D2 発色濃度(不可逆層)
D3 消色濃度(可逆層)
D4 発色濃度(可逆層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆感熱記録層と可逆感熱記録層とがシート基材の上に互いに重なることなく設けられた感熱記録シートであって、
前記可逆感熱記録層の発色開始温度は、その消色開始温度よりも高く、かつ前記不可逆感熱記録層の発色開始温度よりも高くなるように設定されていることを特徴とする感熱記録シート。
【請求項2】
前記可逆感熱記録層は、前記シート基材の幅方向端部に対して帯状に設けられていることを特徴とする請求項1記載の感熱記録シート。
【請求項3】
前記可逆感熱記録層には、位置検出マークが加熱によって所定のピッチで発色表示されていることを特徴とする請求項1または2記載の感熱記録シート。
【請求項4】
前記不可逆感熱記録層と前記可逆感熱記録層の上に剥離剤層が設けられるとともに、前記シート基材の前記剥離層を有する面の反対面に粘着剤層が設けられ、前記剥離剤層を外側にして剥離可能に巻き回されてロール状に形成されてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の感熱記録シート。
【請求項5】
請求項3記載の感熱記録シートの使用方法であって、
複数の発熱体が配列されたラインサーマルヘッドを備えるとともに、光反射型または光透過型センサーを備えたプリンタで、前記感熱記録シートを搬送しながら、前記光反射型または前記光透過型センサーで前記位置検出マークを読み取る読み取り工程と、
前記位置検出マークで検出された位置情報に基づいて前記発熱体を発熱させ、前記不可逆感熱記録層の発色開始温度と前記可逆感熱記録層の消色開始温度のいずれか高い温度以上、かつ、前記可逆感熱記録層の発色開始温度未満の温度で加熱して、前記可逆感熱記録層の発色による少なくとも前記位置検出マークを表す印字を消色するとともに、前記不可逆感熱記録層の発色による印字を行う消色・発色工程と、を有することを特徴とする感熱記録シートの使用方法。
【請求項6】
前記消色・発色工程における前記可逆感熱記録層および前記不可逆感熱記録層の加熱温度は、同一に設定されていることを特徴とする請求項5記載の感熱記録シートの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−238768(P2008−238768A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86466(P2007−86466)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】