説明

感熱記録体

【課題】本発明は、スティッキング性、スクラッチ、ヘッド粕、捺印性、印刷適性が良好で、更に記録感度及び記録保存性に優れた感熱記録体を提供するものである。
【解決手段】支持体上に、ロイコ染料、呈色剤、滑剤、顔料及び接着剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、前記滑剤として高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスから選ばれる少なくとも1種を含有し、前記顔料として粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ1次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの2次粒子を含有することを特徴とする。前記滑剤が高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤の発色反応を利用した感熱記録層を有する感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料と呈色剤の発色反応を利用し、加熱によって発色画像を形成する感熱記録体はよく知られている。このような感熱記録体は比較的安価であり、また画像形成のための記録装置は、コンパクトで、且つその保守も容易なため、ファクシミリや各種計算機等のアウトプット、科学計測機器のプリンター等の記録媒体としてだけでなく、POSラベル、ATM、CAD、ハンディーターミナル、各種チケット用紙等の各種プリンターの記録媒体として広範囲に使用されている。
【0003】
しかしながら、感熱記録体は、ロイコ染料と呈色剤とが熱によって融解、接触することによって発色する機構のため、熱によって融解した感熱記録体の成分が記録ヘッドに融着し、送りロールによって強制的に融着部が剥がれる、所謂スティッキングが起こり易い。
【0004】
スティッキングの問題を解決するために、感熱記録層中に炭酸カルシウム、クレー、タルク、尿素−ホルマリン樹脂、非晶質シリカ等の吸油性顔料を添加する方法が良く知られている。(非特許文献1参照)
【0005】
その中でも、非晶質シリカは、吸油量が多く、白色度の高い感熱記録体が得られるため、特に好ましく用いられている。一次粒子径が30nm以上で二次粒子径が200〜1000nmといった、一次粒子径がかなり大である反面、二次粒子径が著しく微細な非晶質シリカを使用する記録層(特許文献1参照)、微粉珪素を使用する記録層(特許文献2参照)、球面処理されたシリカ微粒子を使用する記録層(特許文献3参照)、特定の吸油量を有する無定形シリカを使用する記録層(特許文献4参照)、二次粒子の平均粒子径が3〜10μmで更に吸油量を規定した無定形シリカを使用する記録層(特許文献5参照)、非晶質シリカを使用する記録層(特許文献6参照)等が提案されているが、スティッキングやスクラッチによる不要な発色の抑制、記録濃度等の点で更なる改善が要請されている。
【0006】
また、コロイダルシリカと呼ばれる、無定形シリカのコロイド粒子(一次粒子から実質的になっており、該一次粒子の凝集物である二次粒子が実質上存在しないもの)を感熱記録層に配合した感熱記録体(特許文献7、8参照)が提案されているが、記録濃度、スティッキング抑制の点で更なる改善が求められている。
【0007】
【非特許文献1】志賀 喬、紙パルプ技術タイムス、27(8)、34(1984)
【特許文献1】特開昭59−22794号公報
【特許文献2】特開昭59−26292号公報
【特許文献3】特開昭62−176878号公報
【特許文献4】特開平7−76172号公報
【特許文献5】特開平8−310132号公報
【特許文献6】特開2003−11519号公報
【特許文献7】特開平5−294065号公報
【特許文献8】特開2004−25775号公報
【0008】
一方、スティッキングやサーマルヘッドへの粕付着といった、所謂ヘッドマッチング性を改善するために、感熱記録層中にステアリン酸アミドとステアリン酸亜鉛を3:1〜1:3の範囲内の重量割合で含有させる方法(特許文献9参照)や、感熱記録層中に高級脂肪酸金属塩と共に高級脂肪酸を含有させる方法(特許文献10参照)も提案されているが、モバイルプリンター等の低電圧駆動プリンターによる、紙送りの低トルク化への対応に向けて更なる改善が望まれ、捺印性や印刷適性の点でも更なる改善が求められている。
【0009】
【特許文献9】特開昭56−5791号公報
【特許文献10】特開昭57−137185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、スティッキング性、スクラッチ、ヘッド粕、捺印性、印刷適性が良好で、更に記録感度及び記録保存性に優れた感熱記録体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、感熱記録層中に滑剤として高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスから選ばれる少なくとも1種を含有し、且つ顔料として粒子径を制御した無定形シリカを用いることにより、スティッキング性、スクラッチ、ヘッド粕、捺印性、印刷適性が良好で、更に記録感度及び記録保存性に優れた感熱記録体が得られ、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、支持体上に、ロイコ染料、呈色剤、滑剤、顔料及び接着剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、前記滑剤として高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスから選ばれる少なくとも1種を含有し、前記顔料として粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ1次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの2次粒子を含有することを特徴とするものである。
前記滑剤は高級脂肪酸金属塩とポリオレフィンワックスを併用することが好ましく、その総量は感熱記録層の全固形分に対して2〜20質量%程度であることが好ましい。
また、前記2次粒子を感熱記録層の全固形分に対して5〜40質量%程度含有させることが好ましい。
前記滑剤の平均粒子径は0.1〜8μm程度であることが好ましい。
前記高級脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記ポリオレフィンワックスが、エチレン系重合体ワックス、変性エチレン系重合体ワックス及び酸化エチレン重合体ワックスから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記ポリオレフィンワックスが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が500〜20,000の範囲であることが好ましい。
前記感熱記録層が、さらに塩基性顔料を含有することが好ましい。
前記塩基性顔料が、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
前記塩基性顔料が、感熱記録層の全固形分に対して1〜20質量%含有されることが好ましい。
前記感熱記録層に含有される接着剤が、アクリル樹脂であり、該アクリル樹脂が感熱記録層の全固形分に対して1〜50質量%存在していることが好ましい。
アクリル樹脂が、(a)(メタ)アクリロニトリルと(b)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体との共重合体であることが好ましい。
アクリル樹脂が、
(XI)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種及び
(III)アクリル酸及びメタクリル酸のアルキル若しくはヒドロキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体であって、ガラス転移温度Tgが−10〜100℃である共重合体であるか、又は、
(XI)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種、
(III)アクリル酸及びメタクリル酸のアルキル若しくはヒドロキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種、
(I)アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種、及び
(VI)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体であって、ガラス転移温度Tgが10〜100℃である共重合体であることが好ましい。
前記感熱記録層が、更に水溶性樹脂を含むことが好ましい。
水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールであり、前記ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが前記アクリル樹脂固形分に対して25〜600質量%存在することが好ましい。
水溶性樹脂が、重合度500〜5000のアセトアセチル変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。
水溶性樹脂が、ジアセトン変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の感熱記録体は、スティッキング性、スクラッチ、ヘッド粕、捺印性、印刷適性が良好で、更に記録感度及び記録保存性に優れるという効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、支持体上に、ロイコ染料、呈色剤、滑剤、顔料及び接着剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、前記滑剤として高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスから選ばれる少なくとも1種を含有し、前記顔料として粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ1次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの2次粒子を含有することを特徴とする感熱記録体である。
【0015】
本発明の感熱記録層において、滑剤として高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスから選ばれる少なくとも1種を使用し、且つ特定の粒子径を持った無定形シリカ1次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの2次粒子とを併用することにより、サーマルヘッドによる印字の際に溶融した感熱記録体の溶融成分が、素早く、且つ多量に吸収されることにより、スティッキングが抑制され、且つスクラッチ、ヘッド粕、捺印性及び印刷適性が良好となる利点がある。
【0016】
本発明で使用する高級脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム等が挙げられるが、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0017】
本発明で使用するポリオレフィンワックスとしては、エチレン系重合体ワックス、変性エチレン系重合体ワックス、酸化エチレン重合体ワックスが挙げられる。
【0018】
エチレン系重合体ワックスは、触媒存在下に、エチレン単独またはエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンを重合させてなるものである。炭素数3〜10のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。エチレン系重合体ワックスは、前記炭素数3〜10のα−オレフィンを1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
変性エチレン系重合体ワックスは、エチレン系重合体ワックスを、ビニル系単量体、不飽和カルボン酸またはその誘導体、シリコン等によりグラフト変性または共重合したものである。
酸化エチレン系重合体ワックスは、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、ヒドロキシル基等の酸素含有官能基を導入したエチレン系重合体ワックスである。
【0019】
前記ポリオレフィンワックスが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が500〜20,000の範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明における滑剤の平均粒子径は、0.1〜8μm、好ましくは0.5〜8μm、より好ましくは0.8〜6μmである。ここで平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%数平均値である。
【0021】
前記滑剤の含有量は、感熱記録層の全固形分に対して2〜20質量%程度含有されるのが好ましく、5〜15質量%程度含有されるのがより好ましい。2〜20質量%の範囲であれば、スティッキング性、印刷適性および捺印性に優れた感熱記録体が得られる。
【0022】
本発明で使用する顔料は、無定形シリカ1次粒子が凝集してなる2次粒子が挙げられるが、前記2次粒子の含有量は、感熱記録層の全固形分に対して5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜35質量%である。5〜40質量%であれば、スティッキング性、ヘッド粕、印刷適性、捺印性および記録部の保存性に優れた感熱記録体が得られる。
【0023】
感熱記録層中で使用する前記2次粒子の5質量%分散液のpHは、5.5〜10.0であることが好ましく、より好ましくは6.0〜9.5である。pH5.5未満では、ロイコ染料を発色させてしまい、感熱記録体の白地発色を生じる。また、pH10.0を超えると、発色を阻害して記録感度が低下する恐れがある。
【0024】
前記無定形シリカ1次粒子の粒子径は、3nm以上30nm未満、特に4〜29nm、好ましくは5〜28nm、より好ましくは10〜27nmである。
【0025】
本発明で使用する粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ1次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの2次粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、一般市販の合成無定形シリカ等の塊状原料、液相での化学反応によって得られた沈殿物等を機械的手段で粉砕する方法や、金属アルコキシドの加水分解によるゾル−ゲル法、気相での高温加水分解等の方法によって得ることができる。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー、湿式メディアレス微粒化装置等が挙げられる。機械的粉砕をする場合は、水中で粉砕して、シリカ水分散液とするのが好ましい。
【0026】
ここで、1次粒子の粒子径Dpは、下記計算式から算出できる。
【0027】
Asp(m/g)=SA×n(1)
上記式(1)において、Aspは比表面積を表し、SAは1次粒子1つの表面積を表し、nは1g当たりの1次粒子の個数を表す。
【0028】
Dp(nm)=3000/Asp(2)
上記式(2)において、Dpは1次粒子の粒子径を表し、Aspは比表面積を表す。
【0029】
上記式(2)は、シリカの形状を真球と仮定し、且つシリカの密度d=2(g/cm)として導出されたものである。
【0030】
より詳しく述べるならば、前記導出法は、次の通りである。即ち、比表面積Aspは、表面積/(体積×密度)で算出される。ここで、密度の単位をg/cmとする。1次粒子の形状を真球状と仮定し、その直径をDp(nm)とすると、前記1次粒子の表面積は4π(Dp/2)であり、体積は(1/3)×4π(Dp/2)であるから、比表面積Asp=6/(Dp×d)となる。ここで、シリカの密度を、シリカの一般的な値に基き、d=2(g/cm)とすると、Asp(m/g)=6/(Dp×10―9×2×10)=3000/Dpとなる。従って、1次粒子の粒子径は、Dp(nm)=3000/Asp、即ち、上記式(2)で算出される。
【0031】
比表面積は、無定形シリカの質量当たりの表面積であり、上記式(2)から分かるように、その値が大きいほど1次粒子が小さくなる。1次粒子が小さくなると、1次粒子から形成される細孔が小さくなり、毛管圧が高くなる。従って、感熱記録体の溶融成分が速やかに吸収され、スティッキングが抑制されるものと考えられる。また1次粒子から形成される2次粒子も複雑となり、溶融成分を吸収できる容量が確保できる。しかし、1次粒子径が3nm未満であると、2次粒子の製造が困難であるだけでなく、形成される細孔容積が小さすぎて溶融成分が吸収されず、スティッキング及びヘッド粕が発生すると推測される。また30nm以上であると、毛管圧が低下し、溶融成分が速やかに吸収されないため、スティキング及びヘッド粕が発生すると推測される。
【0032】
なお、上記「溶融成分」とは、感熱記録層の成分が、感熱記録時に溶融して形成された溶融物を示し、感熱記録層上に印刷部が存在するときは、更に前記印刷部を形成している印刷インクが溶融して形成された溶融物も含む。
【0033】
ここで、無定形シリカの比表面積は、微細顔料(即ち、本発明で使用する無定形シリカ)を105℃にて乾燥し、得られた粉体試料の窒素吸着等温線を、比表面積測定装置(Coulter社製3100型)を用い、200℃で2時間真空脱気した後、測定し、リファレンス定容法に基くガス吸着・脱着方法により算出したものである(B.E.T比表面積)。
【0034】
以上により、本発明で使用する無定形シリカの1次粒子の粒子径は、上記比表面積測定装置で実測した比表面積の値を用いて、上記式(2)により、算出されたものである。
【0035】
前記無定形シリカ2次粒子の粒子径は、30〜900nm、好ましくは40〜850nm、より好ましくは50〜800nmである。平均粒子直径が30nm未満であると、2次粒子の製造が困難であるだけでなく、形成される細孔の容積が小さすぎて感熱記録体の溶融成分が吸収できず、スティッキングが発生する恐れがある。また、900nmを超えると透明性が低下するため、記録感度が減少し、しかも塗工層の強度が低下する恐れがある。
【0036】
2次粒子の平均粒子直径とは、前記方法により得られたシリカの水分散液を固形分濃度5重量%に調整し、ホモミキサーにて5000rpmで30分間攪拌分散した直後に分散液を親水性処理したポリエステルフィルム上に乾燥後の重量が3g/m程度になるように塗工、乾燥してサンプルとし、電子顕微鏡A(SEMとTEM)で観察し、1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、電子顕微鏡写真の5cm四方中の2次粒子のマーチン径を測定して平均したものである(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年参照)。
【0037】
上記ホモミキサーでの撹拌分散は、単に測定の精度を上げるために均一分散させるために行うものであり、ホモミキサーでの撹拌分散の前後で2次粒子のサイズが変化することは実質上ないと考えられている。
【0038】
その他感熱記録層中には、本発明の所望の効果を損なわない限りにおいて、感熱記録体の感熱記録層に従来から使用されている公知の顔料を添加することも可能である。かかる顔料としては、例えばカオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、プラスチックピグメント等が挙げられる。特に、塩基性顔料が好ましく、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選ばれる顔料は、地肌カブリを抑制したり、スクラッチによる発色を改良する効果があるため、好ましく用いられる。
【0039】
前記塩基性顔料の添加量は、感熱記録層の全固形分に対して1〜20質量%が好ましく、より好ましくは、1〜15質量%程度である。1〜20質量%の範囲内であれば、地肌カブリの抑制効果やスクラッチの改良効果が高く、記録感度も良好である。
【0040】
また、前記塩基性顔料は、感熱記録体の分野で使用されているものであれば、特に限定されないが、一般には平均粒子径が0.1〜5μm程度、特に0.1〜3μm程度が好ましい。ここで、塩基性顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%数平均値である。
【0041】
本発明で使用する接着剤としては、例えば、種々の分子量の部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、及びエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸3元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、及びカゼイン等の水溶性高分子材料、並びにポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びスチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の疎水性重合体のラテックス等が挙げられ、1種または2種以上で併用することも可能である。
【0042】
前記接着剤の中でも、種々の分子量のポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールとしては、例えば重合度500〜5000の部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、重合度500〜5000、特に500〜4500のアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、重合度500〜3000、特に500〜2500のジアセトン変性ポリビニルアルコール、重合度300〜3500、特に300〜2500の珪素変性ポリビニルアルコール等を利用できる。ここで特に、ジアセトン変性ポリビニルアルコール或いはアセトアセチル変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0043】
また前記接着剤の中でも、種々の分子量のアクリル酸及びメタクリル酸誘導体のアクリル樹脂、例えば変性アクリル樹脂、グラフトアクリル樹脂、アクリル酸アミド共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アセトアセチル変性アクリルアミド共重合体、ジアセトン変性アクリルアミド共重合体、シリル変性アクリルアミド共重合体等を利用できる。
【0044】
前記アクリル樹脂は、特に紫外線硬化型インクとの密着性がよく、好ましく用いられる。アクリル樹脂はコア・シェル型の2層構造エマルジョンや単層エマルジョンでもよく、グラフト化によりポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを保護コロイドに含んでもよい。
【0045】
アクリル樹脂の製造に使用可能なモノマー成分としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸、スチレン、ビニルトルエン、ビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチルなどのアクリル酸、及びメタクリル酸のアルキルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド、及びメタクリルアミドの誘導体、ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0046】
特に、アクリル樹脂の製造に使用可能なモノマー成分としては、例えば
(I)アクリル酸、メタクリル酸、
(II)クロトン酸の如きエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸の如きエチレン性不飽和ジカルボン酸及びこれらのモノアルキルエステル、特にC1−C10モノアルキルエステル、
(III)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチルなどのアクリル酸及びメタクリル酸のアルキル若しくはヒドロキシアルキルエステル(特にC1−C10アルキル若しくはC1−C10ヒドロキシアルキルエステル)、
(IV)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、
(V)スチレン、ビニルトルエン、ビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、
(VI)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド、
(VII)ビニルピロリドンの如き複素環式ビニル化合物、
(VIII)塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン化合物、
(IX)エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、
(X)ブタジエンの如きジエン類、
(XI)(メタ)アクリロニトリル
等が挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリロニトリル」という用語は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル又はこれらの混合物を意味する。
【0047】
本発明で使用されるアクリル樹脂としては、例えば、上記モノマー(I)、モノマー(III)、モノマー(VI)及びモノマー(XI)からなる群から選ばれる少なくとも2種のモノマーの共重合体樹脂、上記モノマー(I)、モノマー(III)、モノマー(VI)及びモノマー(XI)からなる群から選ばれる少なくとも一種と、上記モノマー(II)、モノマー(IV)、モノマー(V)、モノマー(VII)、モノマー(VIII)、モノマー(IX)及びモノマー(X)からなる群から選ばれた少なくとも一種との共重合体樹脂等が例示でき、たとえばアクリル酸とアクリロニトリルとの共重合体樹脂、アクリル酸、アクリロニトリルおよびアクリルアミドの共重合体樹脂、アクリル酸C1−C10アルキルエステルとアクリロニトリルとの共重合体樹脂、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミドおよびアクリル酸C1−C10アルキルエステルの4元共重合体樹脂等があげられる。
【0048】
本願発明で好ましく用いられるアクリル樹脂としては、例えば上記モノマー(III)とモノマー(XI)との共重合体樹脂(例えば、アクリル酸C1−C10アルキルエステルとアクリロニトリルとの共重合体樹脂)、上記モノマー(I)、モノマー(III)、モノマー(VI)及びモノマー(XI)の共重合体樹脂(例えば、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミドおよびアクリル酸C1−C10エステルの4元共重合体樹脂)があげられる。
【0049】
また、本発明の特に好ましい一態様によると、接着剤として使用するアクリル樹脂は、(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体との共重合体であり、かかる重合体の中でも、ガラス転移温度(Tg)が−10℃〜100℃、特に0〜80℃である共重合体が好ましい。
【0050】
該共重合体における(メタ)アクリロニトリルの割合は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、好ましくは20〜80質量%程度であり、更に好ましくは30〜70質量%程度である。
【0051】
(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体の例としては、上記モノマー(I)〜(X)を例示できる。本発明で使用する上記共重合体において、(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体の割合は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、好ましくは80〜20質量%程度であり、更に好ましくは70〜30質量%程度である。
【0052】
本発明における(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体の中でも、分子中に1個又は2個以上(特に1個又は2個)のカルボキシル基を含有するビニル単量体を、少なくとも1種含んでいるものが好ましい。
かかるカルボキシル基含有ビニル単量体の割合は、共重合樹脂の全質量中、1〜10質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは2〜8質量%である。
【0053】
該カルボキシル基含有ビニル単量体の例としては、上記モノマー(I)(即ち、アクリル酸及びメタアクリル酸の少なくとも1種)、上記モノマー(II)(即ち、クロトン酸の如きエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸の如きエチレン性不飽和ジカルボン酸)及びモノマー(I)及び(II)のモノアルキルエステル(特にC1−C10モノアルキルエステル)からなる群から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
なかでも、カルボキシル基含有ビニル単量体の好ましい例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸の如きエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸の如きエチレン性不飽和ジカルボン酸及びそのモノアルキルエステル(特にC1−C10モノアルキルエステル)からなる群から選ばれる一種又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
なかでも、(XI)のアクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(III)のアクリル酸及びメタクリル酸のアルキル若しくはヒドロキシアルキルエステル(特にC1−C10アルキル若しくはC1−C10ヒドロキシアルキルエステル)からなる群から選ばれる少なくとも1種との共重合体が好ましい。この共重合体のなかでも、ガラス転移温度Tgが−10〜100℃程度、特に0〜80℃程度の共重合体が特に好ましい。該共重合体において、モノマー(XI)とモノマー(III)の含有量は広い範囲から適宜選択できるが、一般には、モノマー(XI)20〜80質量%程度(特に30〜70質量%程度)及びモノマー(III)80〜20質量%程度(特に70〜30質量%程度)であるのが好ましい。
また、次のモノマー(XI)、モノマー(III)、モノマー(I)及びモノマー(VI)を共重合させてなる共重合体も好ましい:
(XI)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種、
(III)アクリル酸及びメタクリル酸のアルキル若しくはヒドロキシアルキルエステル(特にC1−C10アルキル若しくはC1−C10ヒドロキシアルキルエステル)からなる群から選ばれる少なくとも1種、
(I)アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種、
(VI)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種。
このモノマー(XI)、モノマー(III)、モノマー(I)及びモノマー(VI)の共重合体のなかでも、ガラス転移温度Tgが10〜100℃程度、特に15〜70℃程度の共重合体が特に好ましい。
該共重合体において、各モノマーの比率は特に限定されず広い範囲から選択できるが、例えば、モノマー(I)が1〜10質量%(特に2〜8質量%程度)、モノマー(III)が1〜50質量%(特に2〜45質量%程度)、モノマー(VI)が1〜50質量%(特に2〜45質量%程度)及びモノマー(XI)が20〜80質量%(特に30〜70質量%程度)であるのが好ましい。
【0054】
前記アクリル樹脂の使用量は広い範囲から適宜選択できるが、一般には、感熱記録層の全固形分に対してアクリル樹脂が1〜50質量%である。この範囲であると、特に紫外線硬化型インクとの密着性に優れ、サーマルヘッドへの粕付着が抑制され、しかも感熱記録時に印刷部においてスティッキングを起こす恐れが抑制される。感熱記録層の全固形分に対するアクリル樹脂の含有量は、2〜20質量%程度がより好ましい。
【0055】
前記アクリル樹脂は、可塑剤や油等の溶剤に対するバリア性が劣ることがあるため、前記の水溶性樹脂を併用することが好ましい。例えばポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
【0056】
前記水溶性樹脂のなかでも、顔料とのバインダー効果、可塑剤や油等の溶剤に対する記録部の保存性に特に優れていることから、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールが好ましく、とりわけアセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等の各種変性ポリビニルアルコールがより好ましく用いられる。
【0057】
前記水溶性樹脂、特にポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを使用する場合、その使用比率は、前記アクリル樹脂固形分に対して25〜600質量%、特に25〜550質量%が好ましく、更に好ましくは30〜500質量%程度である。25〜600質量%の範囲であると、バインダー効果や溶剤に対する記録部の保存性改良効果が良好であり、またインクとの密着性も良好である。
【0058】
本発明におけるロイコ染料は、単独または2種以上混合することができるが、例えばトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリルフタリド系等のロイコ染料が好ましく用いられる。ロイコ染料の具体例として、例えば3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、クリスタルバイオレットラクトン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(N−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(N−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(N−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、および3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン等が挙げられる。
【0059】
本発明における呈色剤としては、従来公知の呈色剤を使用することができ、単独または2種以上併用することもできる。呈色剤の具体例として、例えば4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン等のフェノール性化合物、ウレアウレタン化合物(WO00/14058公報、WO01/66515公報)、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩等が挙げられる。
【0060】
またフェノール類以外の呈色剤として、特開平5−32601号公報に開示されている、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニル尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(p−メトキシフェニル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(o−トリル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(m−トリル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(p−トリル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(o−クロロフェニル)尿素、N−(ベンゼンスルホニル)−N’−フェニル尿素、N−(p−クロロベンゼンスルホニル)−N’−フェニル尿素、または特開平5−147357号公報に開示の、4,4−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、n−ブチル−4−(3−(p−トルエンスルホニル)ウレイド)ベンゾエート、N−フェニル−N’−3−(4−p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノベンゾイルオキシ)−プロピルウレア、1,5−(3−オキソペンチレン)ビス(3−(3’−(p−トルエンスルホニル)ウレイド)ベンゾエート)、1,5−ペンタメチレンビス(3−(3’−(p−トルエンスルホニル)ウレイド)ベンゾエート)、1,6−ヘキサメチレン ビス(3−(3'−(p−トルエンスルホニル)ウレイド)ベンゾエート)等のスルホニルウレア基を有する化合物等が挙げられる。
【0061】
本発明における呈色剤としては、前記のように挙げられるが、特に4−ヒドロキシ−4’−イソプロポシジフェニルスルホンが好ましい。更に前記ウレアウレタン化合物(WO00/14058公報、WO01/66515公報)を、感熱記録層の全固形分に対して1〜15質量%有するのが望ましい。ここで、呈色剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%数平均値である。
【0062】
本発明では記録感度を高めるために増感剤を使用することもできる。増感剤は単独または2種以上併用することもできるが、例えばステアリン酸アミド、ステアリン酸メチレンビスアミド、ステアリン酸エチレンビスアミド、4−ベンジルビフェニル、p−トリルビフェニルエーテル、ジ(p−メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−メトキシフェノキシ)エタン、1,2−ジ(4−クロロフェノキシ)エタン、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−メトキシフェノキシ)−2−(3−メチルフェノキシ)エタン、2−ナフチルベンジルエーテル、1−(2−ナフチルオキシ)−2−フェノキシエタン、1,3−ジ(ナフチルオキシ)プロパン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ−p−メチル−ベンジル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジベンジル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0063】
また感熱記録層中には公知の助剤、例えば離型剤、消泡剤、濡れ剤、防腐剤、蛍光増白剤、分散剤、増粘剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤または耐水化剤等の各種助剤を適宜添加してもよい。
【0064】
本発明の感熱記録層において、上記ロイコ染料の感熱記録層中の含有率は、一般に3〜50質量%程度(好ましくは5〜20質量%程度)であり、呈色剤の含有率は一般に3〜60質量%程度(好ましくは5〜40質量%)程度である。接着剤の含有率は一般に3〜50質量%程度(好ましくは5〜20質量%程度)である。
増感剤が含まれる場合は、増感剤の含有率は1〜40質量%程度であることが好ましい。また、滑剤類は、1〜30質量%程度の含有率で含まれることが好ましく、顔料は、10〜50質量%程度の含有率で含まれることが好ましい。
【0065】
本発明では耐水性を向上させるために耐水化剤を使用することもできる。耐水化剤としてヒドラジド化合物或いはジルコニウム化合物が挙げられる。
ヒドラジド化合物としては、ヒドラジド基を持つものであれば良いが、例えばアジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、蟻酸ジヒドラジド、酢酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、マイレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、酒石酸酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ナフトエ酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ジヒドラジド、アクリル酸ジヒドラジド含有の共重合体等が挙げられる。アクリル酸ジヒドラジド含有の共重合体として、アクリルアミドとアクリル酸ジヒドラジドの共重合体等が挙げられる。また2種以上のヒドラジド化合物を使用しても良く、他の公知の耐水化剤と組み合わせて使用しても良い。ヒドラジド化合物の中でも、安全性を考慮してアジピン酸ジヒドラジド、アクリル酸ジヒドラジド含有の共重合体が望ましい。
【0066】
ジルコニウム化合物としては、従来公知の種々のものを採用し得るが、アセチルアセトン・ジルコニウム錯体、塩基性炭酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZC)、炭酸ジルコニウム・カリウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、珪酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、燐酸ジルコニウム、燐酸ナトリウム・ジルコニウム、六弗化ジルコニウム等が挙げられる。また、商品名:ジルコゾールAC−7(第一稀元素化学工業社製)及び商品名:ベイコート20(Bacote20;登録商標、日本軽金属社製)等の市販品を用いることもできる。これらのジルコニウム化合物の中でも、画像の耐水性を向上させることができる点で、特に、炭酸ジルコニウム塩が好ましく用いられ、とりわけジルコゾールAC−7及びベイコート20がより好ましい。前記ジルコニウム化合物は、その形状に特に制限されず用いられ、例えば、ペースト状、溶液状、粉末状等の種々の形状のものが用いられる。イオン特性についても、中性、陽イオン性及び陰イオン性の何れのものも用いることができるが、特に前記のジルコゾールAC−7及びベイコート20のような溶液状で、陰イオン性のものが好ましい。
【0067】
前記ジルコニウム化合物は、架橋構造を形成し得る樹脂と共に使用すると効果的であり、前記水溶性樹脂及びアクリル樹脂を使用することが効果的である。前記感熱記録層における、前記樹脂と前記ジルコニウム化合物の反応は定かではないが、ジルコニールイオンとの反応により、C−(O−Zn)−O−C(但し、mは整数)等の強い結合の架橋構造が形成されるものと考えられる。なお、これらの樹脂は架橋構造を形成しても、前記接着剤として利用できる。
【0068】
前記ヒドラジド化合物及びジルコニウム化合物の使用量は、該ヒドラジド化合物及び該ジルコニウム化合物の種類や所望の架橋度合等に応じて適宜定めることができるが、本発明の効果をより向上させる点で、前記感熱記録層100質量部中、好ましくは0.1〜15質量部、更に好ましくは0.2〜10質量部である。
【0069】
本発明の感熱記録層は、一般的に知られている方法により作成することが出来る。例えば、感熱記録層用塗液はロイコ染料、呈色剤を別々に接着剤水溶液と共に、ボールミル等の分散機で粉砕分散した後、前記特定の滑剤及びシリカ2次粒子と必要に応じて増感剤、各種助剤等と混合攪拌して調製する。次いで、支持体上に感熱記録層用塗液を、公知の方法で塗布、乾燥すればよい。
【0070】
前記感熱記録層用塗液の塗布量は、乾燥後の重量で1〜15g/m程度が好ましく、2〜8g/m程度が特に好ましい。
【0071】
本発明に用いられる支持体としては、紙、表面に顔料、ラテックス等を塗工したコーテッド紙、ポリオレフィン系樹脂から作られた副層構造の合成紙、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド等のプラスチックフィルム等から選ぶことが出来る。
【0072】
本発明では、必要に応じて、支持体と感熱記録層との間に、記録感度及び記録走行性を高めるために、下塗層を設けることが出来る。
【0073】
下塗層は、吸油量が70ml/100g以上、特に80〜150ml/100g程度の吸油性顔料、有機中空粒子及び膨張性粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに接着剤を主成分とする下塗層用塗液を支持体上に塗布、乾燥して形成される。ここで、上記吸油量は、JIS K 5101−1991の方法に従い、求められる値である。
【0074】
上記吸油性顔料としては、各種のものが使用できるが、具体例としては、焼成カオリン、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム等の無機顔料が挙げられる。これら吸油性顔料の平均粒子径(レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%値)は0.1〜5μm程度、特に0.2〜3μm程度であるのが好ましい。
【0075】
上記吸油性顔料の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗層の全固形分に対して2〜95質量%程度、特に5〜90質量%程度であるのが好ましい。
【0076】
また有機中空粒子としては、従来公知のもの、例えば膜材がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等からなる中空率が50〜99%程度の粒子が例示できる。ここで中空率は(d/D)×100で求められる値である。該式中、dは有機中空粒子の内径を示し、Dは有機中空粒子の外径を示す。有機中空粒子の平均粒子径(レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD2000、島津製作所社製)による50%値)は0.5〜10μm程度、特に1〜3μm程度であるのが好ましい。
【0077】
上記有機中空粒子の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗層の全固形分に対して2〜90質量%、特に5〜70質量%程度であるのが好ましい。
【0078】
なお、上記吸油性無機顔料を有機中空粒子と併用する場合、吸油性無機顔料と有機中空粒子とは上記使用量の範囲で使用し、且つ吸油性無機顔料と有機中空粒子の合計量が下塗層の全固形分に対して、5〜90質量%程度、特に10〜80質量%程度であるのが好ましい。
【0079】
熱膨張性粒子としては、各種公知のものが使用できるが、具体例としては、低沸点炭化水素をインサイト重合法により、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどの共重合物でマイクロカプセル化した熱膨張性微粒子等が挙げられる。低沸点炭化水素としては、例えばエタン、プロパン等が挙げられる。
【0080】
熱膨張性粒子の使用量は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗層の全固形分に対して1〜80質量%程度、特に10〜70質量%程度であることが好ましい。
【0081】
下塗層に使用される接着剤としては、前記感熱記録層に使用される接着剤が適宜使用し得るが、特にデンプン−酢酸ビニルグラフト共重合体、各種ポリビニルアルコール、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが好ましい。
【0082】
各種ポリビニルアルコールとしては、完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0083】
上記接着剤の使用割合は広い範囲で選択できるが、一般には下塗層の全固形分に対して5〜30質量%程度、特に10〜25質量%程度であることが好ましい。
【0084】
その他、各種助剤として、滑剤、消泡剤、濡れ剤、防腐剤、蛍光増白剤、分散剤、増粘剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤等、公知のものを用いることができる。
【0085】
下塗層用塗液の塗布量は、乾燥重量で3〜20g/m程度、好ましくは5〜12g/m程度とするのが好ましい。
【0086】
下塗層用塗液の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、グラビアコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の従来公知の塗布方法がいずれも採用できる。
【0087】
本発明の感熱記録体は、印刷を施し、チケット用紙等に利用するのに適しており、印刷インクの定着性がよく、感熱記録時に印刷部においてスティッキングが実質上完全に、または実用上問題ないレベルに抑制されている。
【0088】
本発明の感熱記録体は、感熱記録層上に、印刷することにより形成された印刷部を有しているのが有利である。印刷に使用されるインクとしては、紫外線硬化型インクが好ましく、印刷は慣用されている方法で行えばよい。
【0089】
紫外線硬化型インクは、各種のものが公知であるが、一般的に色材、プレポリマー、モノマー、光開始剤、添加剤で構成される。上記色材としては、有機着色顔料、無機着色顔料、染料、蛍光染料等が例示できる。
【0090】
プレポリマーとしては、ポリオールアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アルキドアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。またモノマーとしては、モノアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート等が挙げられる。光開始剤は、使用するプレポリマー及びモノマーに応じて公知の光開始剤から適宜選択すればよい。添加剤としては、滑剤、消泡剤、界面活性剤等が例示できる。
【0091】
これら成分を含む紫外線硬化型インクとしては、各種の市販品が市場で入手でき、例えば、Flash Dry SerIes(東洋インキ社製)、例えばFDS TKシリーズ、FDS ニューシリーズ等;BESTCURE(T&K TOKA社製)、例えば「UV RNC」、「UV NVR」、「UV STP」等;DAI Cure(大日本インキ社製)、例えば「アビリオ」、「セプター」、「MUシール」等を挙げることができる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
なお、市販シリカの「平均2次粒子径」は、特に断らない限り、メーカーのカタログ記載値を記載している。
またシリカ分散液に関して、「1次粒子の粒子径」は、比表面積の値を用いて前記式(2)に従って算出した値である。また、シリカ分散液に関して、「2次粒子の平均粒子直径」は、後記の<2次粒子の平均粒子直径>の項に記載の方法に従って測定した値である。
【0093】
2次粒子の平均粒子直径とは、前記方法により得られたシリカの水分散液を固形分濃度5質量%に調整し、ホモミキサーにて5000rpmで30分間攪拌分散した直後に分散液を親水性処理したポリエステルフィルム上に乾燥後の重量が3g/m程度となるように塗工、乾燥してサンプルとし、電子顕微鏡A(SEMとTEM)で観察し、1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、電子顕微鏡写真の5cm四方中の2次粒子のマーチン径を測定して平均したものである(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年参照)
【0094】
実施例1
<下塗層用塗液の調製>
焼成クレー(商品名:アンシレックス、エンゲルハード社製)85部を水320部に分散して得られた分散物に、スチレン−ブタジエン共重合物エマルジョン(固形分濃度50%)40部と、酸化澱粉の10%水溶液50部とを混合攪拌して下塗層用塗液を得た。
【0095】
<ロイコ染料分散液(A液)の調製>
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水5部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が0.5μmとなるまで粉砕してロイコ染料分散液(A液)を得た。
【0096】
<呈色剤分散液(B液)の調製>
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水5部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が1.0μmとなるまで粉砕して呈色剤分散液(B液)を得た。
【0097】
<増感剤分散液(C液)の調製>
1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン10部、メチルセルロースの5%水溶液5部、及び水5部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が1.0μmとなるまで粉砕して増感剤分散液(C液)を得た。
【0098】
<感熱記録層用塗液の調製>
A液6部、B液15部、C液6部、アクリル樹脂(商品名:バリアスターXOT−1110、(メタ)アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリルアミドの共重合体であって、(メタ)アクリル酸の割合が共重合樹脂全質量に対して5質量%のもの、Tg=23℃、固形分濃度25%、三井化学社製)12部、シリカ(商品名:EM2512、2次粒子の平均粒子直径300nm、1次粒子の粒子径15nm、比表面積200m/g、グレースデビソン社製)の25%水分散液24部、ジアセトン変性ポリビニルアルコール(商品名:DF10、重合度:1000、日本酢ビ・ポバール社製)の20%水溶液7.5部、ステアリン酸亜鉛エマルション(商品名:ハイミクロンF−930、平均粒子径0.9μm、固形分濃度40%、中京油脂社製)3.75部、エチレン系重合体ワックス(商品名:ケミパールW−401、平均粒子径1μm、数平均分子量:5000〜8000、固形分濃度40%、三井化学社製)3.75部、ウレアウレタン化合物水分散液(商品名:N619、珪酸マグネシウム5重量%含有、固形分濃度45%、中京油脂社製)6.67部、アジピン酸ジヒドラジドの40%水溶液3.75部、及び水12部からなる組成物を混合撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0099】
<感熱記録体の作製>
48g/mの原紙の一方の面上に、乾燥後の塗布量が9.0g/mになるように下塗層用塗液を塗布乾燥し、更に下塗層上に乾燥後の塗布量が5.0g/mとなるように感熱記録層用塗液を塗布乾燥した。その後スーパーカレンダーによって処理し、その表面の平滑度が王研式平滑度計で500〜2000秒の感熱記録体を得た。
【0100】
実施例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ステアリン酸亜鉛エマルション(商品名:ハイミクロンF−930、前出)3.75部及びエチレン系重合体ワックス(商品名:ケミパールW−401、前出)3.75部の代わりに、ステアリン酸亜鉛エマルション(商品名:ハイミクロンF−930、前出)7.5部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0101】
実施例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ステアリン酸亜鉛エマルション(商品名:ハイミクロンF−930、前出)3.75部及びエチレン系重合体ワックス(商品名:ケミパールW−401、前出)3.75部の代わりに、エチレン系重合体ワックス(商品名:ケミパールW−401、前出)7.5部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0102】
実施例4
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ステアリン酸亜鉛エマルション(商品名:ハイミクロンF−930、前出)3.75部の代わりに、ステアリン酸亜鉛エマルション(商品名:ハイドリンZ−8−36、平均粒子径5μm、固形分濃度36%、中京油脂社製)4.17部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0103】
実施例5
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、エチレン系重合体ワックス(商品名:ケミパールW−401、前出)3.75部の代わりに、エチレン系重合体ワックス(商品名:ケミパールW−400、平均粒子径4μm、数平均分子量:5000〜8000、固形分濃度40%、三井化学社製)3.75部を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0104】
比較例1
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、ステアリン酸亜鉛エマルションとエチレン系重合体ワックスを使用しなかった以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0105】
比較例2
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、シリカ(商品名:EM2512、前出)の25%水分散液24部及び水12部の代わりに、シリカ(商品名:ミズカシルP−527、平均二次粒子径4500nm、一次粒子の粒子径54nm、比表面積56m/g、水澤化学社製)6部及び水30部とした以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
なお、ここで使用されたシリカの平均粒子直径は、平均二次粒子径と同じ4500nmであった。
【0106】
比較例3
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、シリカ(商品名:EM2512、前出)の25%水分散液24部及び水12部の代わりに、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−42M、昭和電工社製)の40%水分散液15部及び水21部とした以外は実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0107】
かくして得られた8種類の感熱記録体について以下の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0108】
<耐スティッキング性>
感熱プリンター(商品名:レスプリT8、サトー社製)を用い、2Inch/sec(濃度5A)で感熱記録体を特定の印字パターンで発色させ、印字開始から印字終了までの印字長さと印字品質に問題あるか否かを目視観察し、以下のように評価した。
A:印字長さ、印字品質とも問題ない。
B:印字長さは問題はなく、印字品質が極僅かに劣るが実用上問題はない。
C:印字長さ、あるいは印字品質で実用上問題がある。
【0109】
<耐スクラッチ性>
感熱記録体の感熱記録層表面を、さじ(タイトプレートタイプ、SUS410製)で引っかき、発色の程度を評価した。発色は引っかきの熱によって起こるが、引っかき(擦れ)に対する耐性があると熱の発生が少なく発色が起こらない。
A:全く発色しない。
B:少し発色するが、実用上問題のないレベルである。
C:発色し、実用上問題となるレベルである。
【0110】
<ヘッド粕>
感熱プリンター(商品名:レスプリT8、前出)を用い、4Inch/sec(濃度3A)で感熱記録体を発色させ、サーマルヘッドの粕付着状況を目視観察し、以下のように評価した。
A:粕付着は全く見られない。
B:極僅かに粕付着が見られたが、実用上問題のないレベルである。
C:粕付着が見られ、実用上問題となるレベルである。
【0111】
<捺印性>
シャチハタ印鑑を用いて、押印後3秒後に捺印を拭き取ることで、インクが流れるか否かにより評価した:
A:捺印が定着しており、問題なし。
B:極僅かにインク流れが見られたが、実用上問題のないレベルである。
C:インク流れが見られ、実用上問題となるレベルである。
【0112】
<印刷適性>
各感熱記録体をRI印刷機(明製作所社製)で、UVインク(商品名:ベストキュアーSTP 藍W、T&K TOKA社製)をインク量が0.5ccで印刷後、紫外線照射装置(商品名:EYE GRANDAGE、ランプ電力:1.5kW、コンベア速度812m/mIn、アイグラフィックス社製)により紫外線を照射させ、UVインクを硬化させた。得られた各感熱記録体の印刷部にセロハンテープを貼り合わせた後、引き剥がすことによって以下のように評価した:
A:印刷部の剥がれがなく、インク密着性が優れ、見た目にも着色が鮮やか。
B:僅かに印刷部の剥がれが見られるが、実用上問題のないレベルである。
C:印刷部が剥がれて密着性が劣り、実用上問題となるレベルである。
【0113】
<記録感度>
感熱評価機(商品名:TH−PMD、大倉電気社製)を用い、0.24mJ/dotで各感熱記録体を発色させ、記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
【0114】
<耐熱性>
各感熱記録体を、80℃の温度環境下で1日経過観察し、地肌部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定し、以下のように評価した。
A:地肌部濃度が0.10以下であり、地肌カブリは非常に良好。
B:地肌部濃度が0.10を超え0.15未満であるが、地肌カブリは実用上問題ない。
C:地肌部濃度が0.15以上であり、地肌カブリに問題あり。
【0115】
<耐可塑剤性>
感熱評価機(商品名:TH−PMD、大倉電気社製)を用い、0.24mJ/dotで各感熱記録体を発色させる。ポリプロピレンパイプ(40mmφ管)上に塩化ビニルラップフィルム(三井化学プラテック社製)を3重に巻きつけ、その上に感熱記録体を記録部面が外になるように挟み、更にその上から塩化ビニルラップフィルムを3重に巻きつけ、40℃の温度環境下で1日経過観察し、記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:RD−914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定し、以下のように評価した:
A:記録部濃度が1.20以上であり、耐可塑剤性は非常に良好。
B:記録部濃度が1.00以上1.20未満であるが、耐可塑剤性は実用上問題ない。
C:記録部濃度が1.00未満であり、耐可塑剤性に問題あり。
【0116】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、ロイコ染料、呈色剤、滑剤、顔料及び接着剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、前記滑剤として高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスから選ばれる少なくとも1種を含有し、前記顔料として粒子径3nm以上30nm未満の無定形シリカ1次粒子が凝集してなる平均粒子直径30〜900nmの2次粒子を含有することを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
前記滑剤が高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスである、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記滑剤の総量が、感熱記録層の全固形分に対して2〜20質量%である、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記2次粒子が、感熱記録層の全固形分に対して5〜40質量%含有される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記滑剤の平均粒子径が0.1〜8μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項6】
前記高級脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項7】
前記ポリオレフィンワックスが、エチレン系重合体ワックス、変性エチレン系重合体ワックス及び酸化エチレン重合体ワックスから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項8】
前記ポリオレフィンワックスが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が500〜20,000の範囲である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項9】
前記感熱記録層が、さらに塩基性顔料を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項10】
前記塩基性顔料が、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種である、請求項9に記載の感熱記録体。
【請求項11】
前記塩基性顔料が、感熱記録層の全固形分に対して1〜20質量%含有される、請求項9または10に記載の感熱記録体。
【請求項12】
前記感熱記録層に含有される接着剤が、アクリル樹脂であり、前記アクリル樹脂が感熱記録層の全固形分に対して1〜50質量%存在している、請求項1〜11のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項13】
アクリル樹脂が、(a)(メタ)アクリロニトリルと(b)(メタ)アクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体との共重合体である、請求項12に記載の感熱記録体。
【請求項14】
アクリル樹脂が、
(XI)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種及び
(III)アクリル酸及びメタクリル酸のアルキル若しくはヒドロキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体であって、ガラス転移温度Tgが−10〜100℃である共重合体であるか、又は、
(XI)アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種、
(III)アクリル酸及びメタクリル酸のアルキル若しくはヒドロキシアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種、
(I)アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種、及び
(VI)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体であって、ガラス転移温度Tgが10〜100℃である共重合体である、請求項12または13に記載の感熱記録体。
【請求項15】
前記感熱記録層が、更に水溶性樹脂を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の感熱記録体。
【請求項16】
前記水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールであり、前記ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが前記アクリル樹脂固形分に対して25〜600質量%存在する、請求項15に記載の感熱記録体。
【請求項17】
前記水溶性樹脂が、重合度500〜5000のアセトアセチル変性ポリビニルアルコールである、請求項15または16に記載の感熱記録体。
【請求項18】
前記水溶性樹脂が、ジアセトン変性ポリビニルアルコールである、請求項15または16に記載の感熱記録体。

【公開番号】特開2008−100392(P2008−100392A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283228(P2006−283228)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】