説明

感熱記録媒体、画像形成装置およびその方法

【課題】 メインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させず、しかも記録シートの管理を容易にすることができる記録シート等を提供する。
【解決手段】 温度T1で加熱されると内カプセル33内の低温発色カプセル31が発色する。そして、温度Ta(>T1)で所定の長時間加熱されると、内カプセル33が浸透状態あるいは破壊状態になり、内カプセル33の外側、且つ外カプセル37の内側にある発色抑制剤39によって、内カプセル33内における低温発色機能が抑制(定着)される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱式の感熱記録媒体、並びに当該感熱記録媒体に画像を形成する画像形成装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在実用化されているプリンタには、インクジェット方式や感熱転写方式、複写機を電子化したレーザ方式等がある。これらは、いずれもインクやインクリボン、トナーなどを紙(シート)に転写している。従って、プリントが終わると、インクやインクリボン、そしてそれらを内包した専用カートリッジ等が廃棄物となる。また、写真画質を実現するには、結局は専用紙を使う必要がある。
一方、専用の記録シートを必要とするが、インクやインクリボン、並びに専用カートリッジを廃棄しないプリンタとして、ファクシミリやバーコード印刷に用いられている感熱方式のプリンタがある。このような感熱方式で写真画質のカラー印刷を実現するためには多くの技術的困難があり、実用化されていない。
その最大の技術的障壁としては、3色3層の各発色層をサーマルヘッドの熱制御だけで独立に制御して発色させ、しかも発色する各色に濃淡を付けて濃度階調した制御が困難なためにカラー写真の画質の印刷が実現できなかった。このような中で、富士写真フィルム株式会社の特許文献1の技術的思想を基に、1996年に発売を開始した直接感熱記録方式(TA方式)が唯一の実用化例である。
【0003】
このTA方式は、シアン、マゼンダ、イエローの順に感熱発色層を基板上に積層し、最上層には耐熱性保護層を配置している。イエローとマゼンタの発色層は、ジアゾニウム塩化合物とカプラーを発色素材とし、紫外線で画像の定着が可能である。また、シアン発色層は定着の必要がないので、染料前駆体と有機酸を発色素材としている。各層のマイクロカプセルは異なる熱感度と紫外線感度を持っており、異なる熱エネルギと異なる波長の紫外線を、5回のステップに分けて与えることによって発色と定着を繰り返しながら、フルカラーのプリントを作成する。
具体的には、TA方式は、(1)イエロー画像情報で、低熱エネルギでイエロー画像を形成し、(2)波長が419nnmの紫外線を全面照射し、(3)イエロー画像を定着し、(4)マゼンタ画像を中熱エネルギで形成する(このときイエロー発色層は加熱しても発色しないため、影響を受けない)、(4)波長が365nmの紫外線を全面照射し、マゼンタ画像を定着し、(5)シアン画像を高熱エネルギで形成する。
【0004】
また、上記TA方式とは別に、3段階の圧力と3段階の温度とを組み合わせて、カプセル内のジアゾ化合物とカプセル外のカプラーとを化学反応させて発色させるシステムが特許文献2に提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−40192号公報
【特許文献2】特開平11−170692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記TA方式では、感熱発色層が紫外線で定着されるため、記録シートの保管が難しいという問題がある。
また、上述した特許文献2のシステムでは、3段階の圧力を記録シートに適切に加えて発色させる制御が困難であるという問題がある。
また、記録シートの薄型化、並びに画像形成工程の簡単化の要請がある。
さらには、ニジミがない高品質な画像を形成したいという要請もある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために、画像形成装置のメインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で感熱記録媒体に画像を形成でき、しかも感熱記録媒体を容易に管理することを可能とする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、ニジミがない高品質な画像を形成することを可能にする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するため、請求項1の発明の発色カプセルは、第1の温度で発色する発色要素と、前記発色要素を内包し、前記第1の温度より高い第2の温度になった場合、あるいは所定の圧力を受けた場合に、カプセル壁が浸透状態あるいは破壊状態なる内カプセルと、前記内カプセルと前記発色要素の発色を抑制する発色抑制剤とを内包する外カプセルとを有する。
請求項1の発色カプセルでは、第1の温度で加熱されると、発色要素が発色する。その後、第2の温度で加熱されるたり、所定の圧力が加えられると、内カプセルが浸透状態あるいは破壊状態になり、発色抑制剤によって発色要素の発色機能が抑制される。
本発明の発色カプセルでは、外カプセル内で、発色反応および発色抑制反応が行われる。そのため、発色抑制剤が、外カプセル外の他の物質と反応してニジミなどが生じることを回避でき、高画質な画像を形成できる。また、当該発色カプセルでは、圧力により定着するため、カプセルの管理が容易である。
【0009】
請求項2の発明は、第1の温度で発色する第1の発色要素と、前記第1の発色要素を内包し、前記第1の温度より高い第2の温度になった場合、あるいは所定の圧力を受けた場合に、カプセル壁が浸透状態あるいは破壊状態なる内カプセルと、前記内カプセルと前記第1の発色要素の発色を抑制する発色抑制剤とを内包する外カプセルとを有する発色カプセルと、前記第2の温度より高い第3の温度で発色する第2の発色要素とを有する。
請求項2の発明は、請求項1の発色カプセルを第1の発色要素として用いた感熱記録媒体であり、請求項1と同様の作用効果が得られる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記第1の発色要素は、前記第1の温度の状態に第1の時間あることを条件に発色し、前記第2の発色要素は、前記第3の温度の状態に、前記第1の時間より短い第2の時間あることを条件に発色することを特徴としている。
このように温度に加えて時間を各発色要素の発色条件とすることで、意図しない発色を抑制でき、高画質化が可能になる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記第3の温度より高い第4の温度の状態に前記第2の時間より短い第3の時間あることを条件に発色する第3の発色要素をさらに有し、第1の発色層内に前記発色カプセルを配置し、第2の発色層内に前記第2の発色要素を配置し、第3の発色層内に前記第3の発色要素を配置し、基板上に前記第1の発色層、前記第2の発色層および前記第3の発色層を積層したことを特徴としている。
3種類の発色要素を用いることで、カラー画像形成が可能になる。この場合に、画像形成時に感熱記録媒体に加える圧力は1種類でよいため、制御が簡単である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項2〜4の発明において、前記発色要素は、当該発色要素が内包する材料が前記発色要素外に放出し、発色要素外の物質と反応して発色する要素、あるいは前記発色要素内に、当該発色要素外の材料が、当該発色要素内に流入して、当該発色要素内の物質と反応して発色する要素であることを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項2〜5の発明において、前記発色抑制剤は、前記発色要素の材料である電子供与性染料前駆体、電子受容性顕色剤、塩基性物質または酸性物質のうち、一つ以上の材料の化学構造を変化させて発色反応を起こさないようにする機能、前記発色要素の材料である電子供与性染料前駆体、電子受容性顕色剤、塩基性物質または酸性物質のうち、一つ以上の材料の化学構造を変化させて、化学反応しても色素が生成できずに発色しないようにする機能、あるいは前記発色要素の材料を内包したマイクロカプセルの壁の物質透過性を変化させて浸透性を低下させて発色反応を抑制する機能を有することを特徴としている。
【0014】
請求項7の発明の画像形成装置は、感熱記録媒体に対して画像を熱記録するサーマルヘッドと、低温発色温度で前記感熱記録媒体に画像を形成するように前記サーマルヘッドを制御する低温発色処理と、前記低温発色処理の後に前記低温発色温度より高い発色抑制温度で前記感熱記録媒体の低温発色を抑制するように前記サーマルヘッドを制御する低温発色抑制処理と、前記低温発色抑制処理の後に前記発色抑制温度より高い高温発色温度で前記感熱記録媒体に画像を形成するように前記サーマルヘッドを制御する高温発色処理とを行う制御手段とを有する。
請求項7の発明では、制御手段の制御に従って、以下の動作を行う。
サーマルヘッドが、低温発色温度で前記感熱記録媒体を加熱し、当該感熱記録媒体に低温発色画像を形成する。
次に、前記サーマルヘッドが、前記低温発色温度より高い発色抑制温度で前記感熱記録媒体を加熱し、当該感熱記録媒体の低温発色を抑制する。
次に、前記サーマルヘッドが、前記発色抑制温度より高い高温発色温度で前記感熱記録媒体を加熱し、当該感熱記録媒体に高温発色画像を形成する。
【0015】
請求項8の発明の画像形成装置は、感熱記録媒体に対して画像を熱記録するサーマルヘッドと、前記感熱記録媒体の低温発色機能を抑制するための圧力を加える加圧手段と、低温発色温度で前記感熱記録媒体に画像を形成するように前記サーマルヘッドを制御する低温発色処理と、前記低温発色処理の後に前記感熱記録媒体に前記圧力を加えるように前記加圧手段を制御する低温発色抑制処理と、前記低温発色抑制処理の後に前記発色抑制温度より高い高温発色温度で前記感熱記録媒体に画像を形成するように前記サーマルヘッドを制御する高温発色処理とを行う制御手段とを有する。
請求項7の発明では、制御手段の制御に従って、以下の動作を行う。
サーマルヘッドが、低温発色温度で前記感熱記録媒体を加熱し、当該感熱記録媒体に低温発色画像を形成する。
次に、前記加圧手段が、所定の圧力を前記感熱記録媒体に加え、当該感熱記録媒体の低温発色を抑制する。
次に、前記サーマルヘッドが、前記発色抑制温度より高い高温発色温度で前記感熱記録媒体を加熱し、当該感熱記録媒体に高温発色画像を形成する。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記サーマルヘッドと前記加圧手段とを一体的に構成し、前記感熱記録媒体に接触する前記サーマルヘッドの加熱面によって前記圧力を加えることを特徴としている。
【0017】
請求項10の発明の画像形成方法は、低温発色温度で加熱を行って感熱記録媒体に画像を形成する第1の工程と、前記第1の工程の後に前記低温発色温度より高い発色抑制温度で加熱を行って前記感熱記録媒体の低温発色を抑制する第2の工程と、前記第2の工程の後に前記発色抑制温度より高い高温発色温度で加熱を行って前記感熱記録媒体に画像を形成する第3の工程とを有する。
【0018】
請求項11の発明の画像形成方法は、低温発色温度で加熱を行って感熱記録媒体に画像を形成する第1の工程と、前記第1の工程の後に前記感熱記録媒体に所定の圧力を加えて前記感熱記録媒体の低温発色を抑制する第2の工程と、前記第2の工程の後に前記発色抑制温度より高い高温発色温度で加熱を行って前記感熱記録媒体に画像を形成する第3の工程とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像形成装置のメインテナンスが容易で、カートリッジ等の廃棄物を発生させずに簡単な制御で感熱記録媒体に画像を形成でき、しかも感熱記録媒体を容易に管理することを可能とする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、ニジミがない高品質な画像を形成することを可能にする感熱記録媒体、画像形成装置および画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係わる記録シート、並びに当該記録シートに画像を形成するプリンタについて説明する。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を説明する。
[本発明の構成との対応関係]
先ず、本実施形態の構成要素と、本発明の構成要素との対応関係を説明する。
図2に示す低温発色カプセル31が請求項1の発色要素の一例であり、内カプセル33が本発明の内カプセルの一例であり、外カプセル37が本発明の外カプセルの一例である。また、低温発色抑制剤39が本発明の発色抑制剤の一例である。
また、低温発色・発色抑制カプセル21が請求項2等の発色カプセルの一例であり、中温発色カプセル25が第2の発色要素の一例であり、高温発色カプセル27が第3の発色要素の一例である。
また、図6に示すサーマルヘッド45が請求項7等のサーマルヘッドの一例である。また、図6に示す制御部51が、請求項7等の制御手段の一例である。
【0021】
[記録シート10]
先ず、本実施形態で用いられる記録シート10を説明する。
図1は、本実施形態で用いる記録シート10の断面構成図である。
図1に示すように、記録シート10は、例えば、基材11上に低温発色層9、熱バリア層11、中温発色層13、熱バリア層15、高温発色層17および保護層19を順に積層して構成される。
【0022】
記録シート10の低温発色層9は、低温発色・発色抑制カプセル21を内包している。低温発色・発色抑制カプセル21は、その内部に低温発色カプセルと、発色抑制剤とを内包している。
低温発色・発色抑制カプセル21は、内カプセル33と、その内カプセル33を内包する外カプセル37によって構成される2重カプセル構造をしている。
低温発色・発色抑制カプセル21は、温度T1で加熱されると内カプセル33内の低温発色カプセル31が発色する。
【0023】
そして、低温発色・発色抑制カプセル21は、温度Ta(>T1)で所定の長時間加熱されると、内カプセル33が浸透状態あるいは破壊状態になり、内カプセル33の外側、且つ外カプセル37の内側にある発色抑制剤39によって、内カプセル33内における低温発色機能が抑制(定着)される。なお、本実施形態において、低温発色・発色抑制カプセル21の発色に要する上記所定の長時間は、中温発色カプセル25および高温発色カプセル27の後述する発色条件である中時間および短時間より短い時間として定義する。
低温発色・発色抑制カプセル21によれば、外カプセル37内で、発色反応および発色抑制反応が行われるため、ニジミが無い、高品質な画像形成ができる。すなわち、低温発色抑制剤39が外カプセル37内に維持されているため、低温発色抑制剤39によって画質劣化の要因となる反応が生じることを回避できる。
【0024】
基材11は、例えば、ポリエステルやポリエチレンテレフタレート(PET)等によって構成される。基材11は、白色あるいは透明である。
【0025】
低温発色層9は、図2に示す低温発色・発色抑制カプセル21をバインダ内に分散させて内包する。
低温発色・発色抑制カプセル21は、図2に示すように、内カプセル33および外カプセル37を備えた2重カプセル構造を有している。
内カプセル33は、低温発色カプセル31、カプラー(顕色剤)35、並びに必要に応じて塩基性物質または酸性物質を分散させて内包する。
外カプセル37は、内カプセル33および発色抑制剤39を内包する。
【0026】
低温発色カプセル31は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が図3に示す温度T1(例えば、100℃)であり、中温発色カプセル25および高温発色カプセル27より低い。
内カプセル33は、例えば、温度T1以上の低温状態が所定の長時間続くと、低温発色カプセル31が内包する発色剤と内カプセル33内のカプラー35とが反応して発色する。
【0027】
低温発色カプセル31は、いわゆるマイクロカプセルであり、その壁が90〜140℃のガラス転移点を持つポリウレアあるいはポリウレタンからなる。低温発色カプセル31は、ガラス転移点前後で物質浸透(透過)性が大きくなる特性を持つ。これにより、図4(A)に示すように、温度T1未満(非低温)においては、低温発色カプセル31内にカプラー35は浸透せず、低温発色カプセル31内の発色剤は発色しない。一方、図4(B)に示すように、温度T1以上(上記低温状態)が所定の長時間続くと、内カプセル33内のカプラー35が低温発色カプセル31内に浸透し、カプラー35と低温発色カプセル31内の発色剤とが反応して色素が形成されて発色する。
【0028】
低温発色カプセル31等の本実施形態におけるマイクロカプセルの壁は、例えば、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等の合成樹脂で形成される。具体的には、低温発色カプセル21等の壁として、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、尿素−ホルムアルデヒドポリマー等が用いられる。
また、低温発色カプセル31、中温発色カプセル25および高温発色カプセル27のマイクロカプセルの平均粒径は、例えば約3〜4μmであり、そのガラス転移点は壁の材質によって規定される。また、低温発色・発色抑制カプセル21の外カプセル37および内カプセル33の平均粒径、例えば、10〜30μmである。マイクロカプセルは、反応する物質を多層構造の状態で隔離しておくだけでなく、マイクロカプセルの壁を隔ててミクロンに分散して共存させることにより、数μの薄い塗布膜の中で、常温では十分に隔離性を保ちながら、加熱時に瞬時に十分な物質浸透性を持たせる機能を持つ。
【0029】
なお、低温発色カプセル31は、上記低温状態になると、その壁が溶けて、カプセル内の発色剤がカプセル外に流出して、カプセル外のカプラー35と反応して発色するように構成してもよい。
本実施形態において、発色剤と、それに反応するカプラー(顕色剤)35との組み合わせには、例えば、ジアゾ化合物(発色剤)とカプラー(顕色剤)との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)との組み合わせ等がある。なお、ジアゾ化合物の化学構造とカプラーの化学構造との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料の化学構造と電子受容性化合物の化学構造との組み合わせによって任意の色相を発色できることは公知である。
【0030】
なお、上記ジアゾ化合物は、例えば、リン酸トリクレジル等である。ジアゾ化合物は、電子供与性染色前駆体(染料前駆体)であり、塩基性雰囲気でカプラーと反応して発色する。カプラーは、例えば、レゾルシルやフロログルシンであり、塩基性雰囲気中でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成する。塩基性雰囲気は、水難溶性か水不溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質(例えば、有機アンモニウム塩)によって作られる。
また、上記電子供与性無色染料は例えばロイコ染料であり、電子受容性化合物は例えばフェノール系酸性物質である。この組み合わせでは、ロイコ染料が酸性物質である顕色剤に吸着して酸化されて発色する。
【0031】
また、カプラー35としては、例えば、2−ヒドロキシ−3ナフトエ酸アニリド等が用いられる。
また、上記電子受容性化合物としては、例えば、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が用いられる。
【0032】
また、本実施形態では、発色剤をマイクロカプセル内に内包する場合を例示するが、例えば、発色剤と顕色剤とをバインダ内に分散して配置し、加熱によりバインダが溶融して発色剤と顕色剤とが反応するような構成にしてもよい。
【0033】
内カプセル33は、その壁のガラス転移点が図3に示す温度Ta(例えば、130℃)であり、低温発色カプセル31より高く、中温発色カプセル25および高温発色カプセル27より低い。
内カプセル33は、温度Ta以上の状態が一定時間続くと、そのカプセル壁が浸透状態、あるいは破壊状態になり、内カプセル33の外側且つ外カプセル37内側にある低温発色抑制剤39と、内カプセル33内の低温発色カプセル31およびカプラー35等とを混合する。これにより、低温発色抑制剤39の発色抑制機能が発揮され、内カプセル33内における低温発色機能が抑制される。ここで、上記一定時間は、例えば、上記長時間より短く、上記中時間より長い時間として定義される。
内カプセル33の壁の材料としては、内カプセル33内の酸性物質あるいは塩基性物質と、カプラー35とに十分な耐性を持つものが用いられる。内カプセル33の材料としては、例えば、市販品の相転移性アクリル高分子材料を用いることができる。
【0034】
外カプセル37に内包される低温発色抑制剤は、例えば、内カプセル33内の低温発色カプセル31の発色剤、カプラー35、塩基性物質および酸性物質のうち、1つ以上の物質の化学構造を変化させて、化学反応を起こさないようにする機能、あるいは化学反応しても色素が生成されないようにする機能を有する。
また、低温発色抑制剤39低温発色カプセル31のカプセルの壁の物質透過性を変化させて浸透性を低下させて発色反応を抑制する機能を有していてもよい。
なお、本実施形態において、低温発色抑制剤39の発色抑制機能が発揮される条件として温度Ta以上という温度条件を例示したが、所定の圧力が加えられたことを条件としてもよい。
【0035】
外カプセル37の壁は、例えば、低温発色抑制剤39に対して十分な耐性を持ち、且つ、内カプセル33が浸透状態あるいは破壊状態になって低温発色抑制機能が発揮された場合の外カプセル37内の物質に対しても十分な耐性を持つ材料を用いて構成される。さらに、外カプセル37の壁の材料は、高温発色カプセル27の発色温度である温度T3においても、溶融しないものである必要がある。具体的には、高分子材料、例えば、ポリウレタン、ポリ尿素、エポキシ樹脂、尿素/ホルマリン樹脂、メラニン/ホルマリン樹脂などが用いられる。
なお、外カプセル37は、記録シート10の画像形成過程、並びに記録シート10の補間時に浸透および破壊せず、カプセル内と外とを適切に分離する。
【0036】
内カプセル33内において電子供与性無色染料(発色剤:例えばロイコ染料)と電子受容性化合物(顕色剤:例えば酸性物質)との組み合わせで発色する場合には、低温発色カプセル31
として、例えば、リン酸エステル類、テトラヒドロフタル酸、脂肪酸エステル、2価アルコールエステル類、エポキシ系可塑剤あるいはトリメット酸系可塑剤等が用いられる。
【0037】
熱バリア層11は、例えば、中温発色層13および高温発色層17が保護層19側から加熱されて発色する場合に、その熱が低温発色層9に伝達して低温発色層9が発色することを抑制する機能を有する。
熱バリア層11は、例えば、この層が熱溶媒を含む場合などに、加熱の際に相変化を受ける不活性材料を含む任意の材料によって構成される。熱バリア層11の代表的な材料としては、ポリ(ビニルアルコール)のようなポリマー材料が挙げられる。
【0038】
中温発色層13は、中温発色カプセル25、顕色剤、並びに必要に応じて塩基性物質または酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。中温発色カプセル25は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、150〜280℃の中温である。中温発色層13は、例えば、図3に示す温度T2(>Ta,Taは例えば160℃)以上の中温状態が中時間続くと、中温発色カプセル25が内包する発色剤と中温発色層13内の顕色とが反応して発色する。中温発色カプセル25の壁のガラス転移点を除いて、発色の原理は、図2に示す低温発色カプセル31と同じである。中温発色カプセル25の発色条件である上記中時間は、前述した低温発色カプセル31の発色条件である長時間より短く、高温発色カプセル27の発色条件である短時間より短い時間として定義される。
【0039】
熱バリア層15は、例えば、高温発色層17が保護層19側から加熱されて発色される場合に、その熱が中温発色層13に伝達して中温発色層13が発色することを抑制する機能を有する。熱バリア層15の材料は、例えば、上述した熱バリア層11と同じである。
【0040】
高温発色層17は、高温発色カプセル27、顕色剤、並びに必要に応じて塩基性物質あるいは酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。高温発色カプセル27は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、300〜350℃の高温である。高温発色層17は、例えば、図3に示す温度T3(例えば、330℃)以上の高温状態が所定の短時間続くと、高温発色カプセル27が内包する発色剤と高温発色層17内の顕色剤とが反応して発色する。高温発色カプセル27の壁のガラス転移点を除いて、発色の原理は、図2に示す低温発色カプセル31と同じである。
【0041】
保護層19は、低温発色層9を保護するための層である。保護層19は、例えば、耐熱機能を有する。
【0042】
本実施形態において、低温発色抑制層7、低温発色層9、中温発色層13および高温発色層17の各々の厚みは、例えば1〜4μmである。
また、熱バリア層11の厚みは例えば5〜25μmであり、熱バリア層15の厚みは例えば3〜10μmである。
また、各層への発色の割り当ては、例えば、図5に示すように、低温発色層9にイエロー、中温発色層13にマゼンダ、高温発色層17にシアンを割り当てる。但し、これは一例であり、割り当てパターンは任意である。
なお、本実施形態では、プリンタ40において、記録シート10の各層の発色時に保護層19側から加熱を行う。
【0043】
[プリンタ40]
次に、図1に示す記録シート10に画像を形成するプリンタを説明する。
なお、本実施形態で以下に説明するプリンタは一例であり、後述する変形例等に記載するプリンタを用いて記録シート10に画像を形成してもよい。
図6は、図1に示す記録シート10に画像を記録(印刷)するプリンタ40の構成図である。
図6に示すように、プリンタ40は、例えば、シート収容ケース41、シート送りローラ43、サーマルヘッド45、プラテンローラ47および制御部51を有する。
シート収容ケース41は、複数の記録シート10を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート10は、バネ53等の付勢手段によってシート送りローラ43に向けて押されている。
【0044】
シート送りローラ43は、シート収容ケース41の最上段の記録シート10に接触して位置する。シート送りローラ43は、制御部51からの制御信号に基づいてモータ(図示せず)によって回転駆動される。シート送りローラ43が回転すると、バネ53の付勢力により記録シート10とシート送りローラ43との間に生じた摩擦力によって、シート送りローラ43の回転に連動してシート収容ケース41の最上段の記録シート10がサーマルヘッド45に向けて搬送される。なお、制御部51は、上記制御信号に基づいて、モータ(シート送りローラ43)の回転量を制御することで、記録シート10の位置や送り量を制御する。
【0045】
記録シート10の搬送経路におけるシート送りローラ43の下流側には、サーマルヘッド45が設けられている。
サーマルヘッド45は、複数の発熱素子を主走査方向にライン状に並べた発熱素子アレイを備えている。サーマルヘッド45は、発熱素子アレイを記録シート10に接触した状で、形成する画像に応じたパターンで各発熱素子を発熱させる。本実施形態では、各発熱素子は、少なくとも、非発熱状態、低温発熱状態、定着発熱状態、中温発熱状態および高温発熱状態の5状態を有し、これら5状態のうち一つが制御部51によって選択される。
各発熱素子の発熱温度は、その発熱素子に接続された抵抗に電流を流す時間によって制御される。制御部51は、加熱時間に応じて、サーマルヘッド45の各発熱素子に電流を流す時間を規定するストローブ信号のパルス幅を制御する。
【0046】
また、その他の温度制御方法として、制御部51は、例えば、発熱温度に応じては発熱素子間に生じる電圧を制御(発熱温度が高くなるに従って上記電圧が大きくなるように制御)してもよい。
また、各発熱素子が制御信号のレベルに応じた電圧によって発熱する場合に、制御部51は、制御信号のパルス電位、パルス幅およびパルス回数を制御することで、各色の濃度を制御できる。
なお、サーマルヘッド45は、低温発色状態、定着発熱状態、中温発色状態および高温発色状態の各々において、画像データの諧調に応じた複数の発熱温度を調整可能にしてもよい。
【0047】
プラテンローラ47は、記録シート10の搬送経路を挟んで反対側には、サーマルヘッド45が設けられている。プラテンローラ47は、記録シート10の搬送に応じて回転し、記録シート10とサーマルヘッド45の発熱素子との接触状態を安定にする。
【0048】
制御部51は、例えば、マイクロコンピュータ等の電子回路であり、プリンタ40の動作を統括的に制御する。制御部51の処理は、例えば、プログラム等に記述されている。
【0049】
以下、図6および図7を参照して、プリンタ40の動作例を説明する。
図8は、図1に示す記録シート10に画像を形成するプリンタの動作例を説明ためのフローチャートである。
【0050】
ステップST0:
図6に示すプリンタのシート収容ケース41に、複数枚の記録シート10を収容する。シート収容ケース41に収容された記録シート10は、バネ53の付勢力によって紙送りローラ43に向けて押され、最上段の記録シート10と紙送りローラ43との間に摩擦力が生じている。
【0051】
ステップST1:
制御部51からの制御に基づいてシート送りローラ43が回転し、シート収容ケース41の最上段に収容された記録シート10がサーマルヘッド45に向けて搬送される。
【0052】
ステップST2:
制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の低温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を低温で上記所定の長時間発熱させる。これにより、記録シート10の低温発色層9が、画像情報に対応した低温発色成分の画素パターンで、図3に示す温度T1の低温で長時間加熱され、低温加熱された位置の低温発色・発色抑制カプセル21の低温発色カプセル31内の発色剤が、内カプセル33内でカプラー35と反応して発色する。
このとき、内カプセル33は、その壁が溶融および破壊されてないため、隔離機能を果たしている。
また、中温発色カプセル25および高温発色カプセル27は、発色条件を満たさないため、発色しない。
【0053】
ステップST3:
ステップST2に続いて、制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート10のヘッド接触面全域の各発熱素子を図3に示す温度Taより高く温度T2より低い温度で、一定時間(例えば、上記長時間より短く、上記中時間より長い時間)発熱させる。これにより、低温発色層9内の図2に示す低温発色・発色抑制カプセル21の内カプセル33が浸透状態あるいは破壊状態になる。その結果、内カプセル33内の低温発色カプセル31およびカプラー35と、内カプセル33外の低温発色抑制剤39とが反応して、低温発色カプセル31の発色機能が抑制される。すなわち、低温発色が定着される。このとき、低温発色抑制剤39が外カプセル37内に維持されているため、低温発色抑制剤39によって画質劣化の要因となる反応が生じることを回避できる。
【0054】
ステップST4:
ステップST3に続いて、制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の高温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を高温且つ短時間で発熱させる。これにより、記録シート10の高温発色層17が、画像情報に対応した高温発色成分の画素パターンで、図3に示す温度T3の高温で短時間加熱され、高温加熱された位置の高温発色カプセル27内の発色剤とその周囲のカプラーとが反応して発色(高温発色)する。
このとき、低温発色層9は既に定着されているため、低温発色は生じない。また、高温発色層17と中温発色層13との間には熱バリア層15が介在する。また、高温加熱時間は短時間である。そのため、熱バリア層15による熱伝達時間(遅延時間)により、中温発色層13を発色させずに高温発色層17を発色できる。
【0055】
ステップST5:
ステップST4に続いて、制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド45が、記録シート10に形成する画像の中温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を中温且つ中時間で発熱させる。これにより、記録シート10の中温発色層13が、画像情報に対応した中温発色成分の画素パターンで、図3に示す温度T2の中温で中時間加熱され、中温加熱された位置の中温発色カプセル25内の発色剤とその周囲のカプラーとが反応して発色(中温発色)する。
このとき、高温発色層17は発色条件を満たさないため、発色しない。また、低温発色層9は、既に定着されていること、並びに、熱バリア層11の存在になり発色しない。
【0056】
本実施形態において、ステップST2〜ST5の発色処理および定着処理は、記録シート10上でサーマルヘッド45が接触した領域に対して順に行われる。当該接触領域についてステップST2〜ST4の処理が終了すると、プラテンローラ47が回転して次の接触領域についてステップST2〜ST5の処理が行われる。
【0057】
ステップST6:
制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ47が回転し、図6に示すように、記録シート10が図6中右側の搬出口に向けて搬送される。
【0058】
以上説明したように、記録シート10によれば、図2に示すように、低温発色・発色抑制カプセル21内において、発色反応および発色抑制(定着)反応が行われ、発色および発色抑制に伴い、発色抑制剤がカプセル外の他の物質と反応して意図しないニジミが発生することを回避でき、高品質な画像形成ができる。すなわち、低温発色抑制剤39が外カプセル37内に維持されているため、低温発色抑制剤39によって画質劣化の要因となる反応が生じることを回避できる。
また、記録シート10によれば、低温発色層9の発色抑制(定着)を行うため、画像形成後の変色を抑制でき、耐候性を向上できる。また、紫外線定着ではないため、記録シート10の管理が容易になる。
また、本実施形態の記録シート10およびプリンタ40によれば、インクカートリッジやインクリボン等の消耗品が不要となる。そのため、従来のインクカートリッジ等を必要とするプリンタに比べて、インクカートリッジの交換が不要で、メインテナンスが容易になり、ランニングコストを安くできる。また、本実施形態によれば、使用済みのインクリボンやカセットといった廃棄物をなくすことができる。なお、本実施形態の記録シート10およびプリンタ40によれば、インクリボンを使用する方式のように、プリント内容がシート側に残ることも無いので、機密保持性に優れている。
【0059】
また、本実施形態のプリンタ40によれば、図7に示すように、低温発色、低温定着、高温発色および中温発色を順に行うため、これらの処理を図6に示すプリンタのサーマルヘッド45によって1ヘッドで温度と時間を制御して連続して実現できる。これにより、プリンタ40の構成および制御を簡単にできると共に、画像形成を短時間で行うことができる。これは、サーマルヘッドが高価であることから製造コストの削減に有用であると共に、小型化の要請にも応えられる。
すなわち、ライン型サーマルヘッドを1つで実現する場合には、従来のTA方式では、記録シートをサーマルヘッドに2往復半通過させるため、画像形成時間が長い。また、当該TA方式は、紫外線ランプと2種類のフィルタの切り替え手段も必要とし、プリンタが大型化してしまう。本実施形態のプリンタは、このような問題を解決できる。
【0060】
また、記録シート10では、高温発色層17を保護層19側に配置し、低温発色層9を基材5側に配置する。そのため、プリンタ40による加熱時のエネルギを小さくできると共に、加熱時間を短縮できる。
【0061】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では図3に示すように、低温発色抑制機能が発揮される条件(内カプセル33の壁が浸透状態あるいは破壊状態になる条件)として、温度Ta以上という温度条件で規定した。
本実施形態の記録シート110は、図1に示す構成を有し、図2に示す低温発色・発色抑制カプセル121の内カプセル133のみが、第1実施形態の内カプセル33と異なる。
内カプセル133は、図8(A)に示すように、温度条件ではなく、所定の圧力P1以上の圧力が印加されたことを条件に、例えば、破壊状態(あるいは浸透状態)になり、低温発色抑制剤39による発色抑制機能が発揮される。
記録シート110において、低温発色カプセル31、中温発色カプセル25および高温発色カプセル27の発色条件は、図8(B)に示され、第1実施形態と同じである。
【0062】
上述した記録シート110に画像を形成するプリンタは、例えば、図6に示すサーマルヘッド45を、図9に示すサーマルヘッド445を用いた構成をしている。
図9に示すサーマルヘッド445は、ヘッド部545の加熱面で記録シート10等を加圧する。
図9に示す構成では、継ぎ手520の一端にヘッド545部が固定されている。継ぎ手520は、中心軸520aを中心に回転する。継ぎ手520の他端は、バネ541によって、回転軸520aを中心に継ぎ手520を半時計回りに回転する向きに付勢されている。バネ541よる付勢力は、ヘッド部545の加熱面によって記録シート110を図8(A)に示す通常圧力P0で押す力として作用する。
【0063】
継ぎ手521は、回転軸520aを中心に回転自在に設置され、一端の先端部521aが継ぎ手520の一辺に接触している。
また、継ぎ手521の他端521bは、カム530の外周に接触している。また、継ぎ手521は、バネ540の一端が固定されている。カム530が回転すると、継ぎ手521が回転軸520aを中心として、カム530の外周の段差に応じた所定の回転角度幅で時計方向および逆時計方向に交互に回転する。
このとき、継ぎ手521が時計方向に最も回転した位置において、先端部521aは継ぎ手520を押圧しない。すなわち、バネ540の付勢力は、サーマルヘッド545には作用しない。
【0064】
一方、継ぎ手521が反時計方向に最も回転した位置において、先端部521aは継ぎ手520を押圧し、バネ540の付勢力はサーマルヘッド545を記録シート10に押し付ける向きに作用する。これにより、サーマルヘッド545の加熱面によって記録シート110を図8(A)に示す破壊圧力P1で押す力が生じる。
図9の構成を用いたプリンタでは、制御部51が、カム530の回転を制御することで、ヘッド部545の加熱面を介して記録シート110に加える圧力を制御できる。
【0065】
当該プリンタの動作は、図7に示すステップST3において、サーマルヘッド445が、破壊圧力P1を記録シート110に加えることで、図2に示す内カプセル33を破壊等し、低温定着を行う点を除いて、第1実施形態のプリンタ40の動作と同じである。
本実施形態のプリンタにおいても、第1実施形態のプリンタ40と同様に、複数の加熱温度と加圧の有無を1ヘッドで実現できるため、記録シート110に1パスで画像を形成できる。すなわち、記録シート110がヘッドと1回接触して通過するだけで画像形成が可能である。
【0066】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
例えば、上述した実施形態では、図1に示すように低温発色層9を基板5側に配置した例を例示したが、低温発色層9は、図10に示すように中温発色層13と高温発色層17との間に配置してもよい。また、低温発色層9は、図11に示すように、保護層19側に配置してもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、低温発色層9の低温発色・発色抑制カプセル21のみを2重カプセル構造にしたが、さらに中温発色層13の中温発色カプセル25を図2に示す2重カプセル構造にしてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、記録シートを3色に発色させて記録を行う場合を例示したが、記録シートに4色以上に発色させて記録を行ってもよい。例えば、イエロー、シアンおよびマゼンダの3色に、ブラックを加えて4色で記録シートを発色させてもよいし、ライトシアンおよびライトマゼンダを加えて5色で記録シートを発色させてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、本発明の感熱記録媒体として記録シートを例示したが、本発明の感熱記録媒体の形状はシート状以外でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、感熱記録媒体に記録を行うシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の記録シートの構成図である。
【図2】図2は、図1に示す低温発色・発色抑制カプセルの構成を説明するための図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態の低温発色カプセル、内カプセル、中温発色カプセル、高温発色カプセルの特性を説明ための図である。
【図4】図4は、図1に示す記録シート内の高温発色カプセル、低温発色カプセルおよび低温発色抑制カプセルの特性を説明ための図である。
【図5】図4は、図1および図2に示す低温発色・発色抑制カプセルの発色および定着原理を説明ための図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態のプリンタを説明ための図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態のプリンタの画像形成動作を説明ためのフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態の低温発色・発色抑制カプセルの内カプセルの特性を説明ための図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態の記録シートに画像を生成するプリンタのサーマルヘッドを説明するための図である。
【図10】図10は、図1に示す記録シートの第1の変形例を説明するための図である。
【図11】図11は、図1に示す記録シートの第2の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0072】
10,110‥記録シート、5‥基材、9‥低温発色層、11‥熱バリア層、13‥中温発色層、15‥熱バリア層、17‥高温発色層、19‥保護層、21,121‥低温発色・発色抑制カプセル、25‥中温発色カプセル、27‥高温発色カプセル、31‥低温発色カプセル、33,133‥内カプセル、37‥外カプセル、39‥低温発色抑制剤、40‥プリンタ、41‥シート収容ケース、43‥シート送りローラ、45,445‥サーマルヘッド、47‥プラテンローラ、51‥制御部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の温度で発色する発色要素と、
前記発色要素を内包し、前記第1の温度より高い第2の温度になった場合、あるいは所定の圧力を受けた場合に、カプセル壁が浸透状態あるいは破壊状態なる内カプセルと、
前記内カプセルと前記発色要素の発色を抑制する発色抑制剤とを内包する外カプセルと
を有する発色カプセル。
【請求項2】
第1の温度で発色する第1の発色要素と、前記第1の発色要素を内包し、前記第1の温度より高い第2の温度になった場合、あるいは所定の圧力を受けた場合に、カプセル壁が浸透状態あるいは破壊状態なる内カプセルと、前記内カプセルと前記第1の発色要素の発色を抑制する発色抑制剤とを内包する外カプセルとを有する発色カプセルと、
前記第2の温度より高い第3の温度で発色する第2の発色要素と
を有する感熱記録媒体。
【請求項3】
前記第1の発色要素は、前記第1の温度の状態に第1の時間あることを条件に発色し、
前記第2の発色要素は、前記第3の温度の状態に、前記第1の時間より短い第2の時間あることを条件に発色する
請求項2に記載の感熱記録媒体。
【請求項4】
前記第3の温度より高い第4の温度の状態に前記第2の時間より短い第3の時間あることを条件に発色する第3の発色要素
をさらに有し、
第1の発色層内に前記発色カプセルを配置し、
第2の発色層内に前記第2の発色要素を配置し、
第3の発色層内に前記第3の発色要素を配置し、
基板上に前記第1の発色層、前記第2の発色層および前記第3の発色層を積層した
請求項3に記載の感熱記録媒体。
【請求項5】
前記発色要素は、当該発色要素が内包する材料が前記発色要素外に放出し、発色要素外の物質と反応して発色する要素、あるいは
前記発色要素内に、当該発色要素外の材料が、当該発色要素内に流入して、当該発色要素内の物質と反応して発色する要素
である請求項2〜4のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項6】
前記発色抑制剤は、
前記発色要素の材料である電子供与性染料前駆体、電子受容性顕色剤、塩基性物質または酸性物質のうち、一つ以上の材料の化学構造を変化させて発色反応を起こさないようにする機能、
前記発色要素の材料である電子供与性染料前駆体、電子受容性顕色剤、塩基性物質または酸性物質のうち、一つ以上の材料の化学構造を変化させて、化学反応しても色素が生成できずに発色しないようにする機能、あるいは
前記発色要素の材料を内包したマイクロカプセルの壁の物質透過性を変化させて浸透性を低下させて発色反応を抑制する機能を有する
請求項2〜5のいずれかに記載の感熱記録媒体。
【請求項7】
感熱記録媒体に対して画像を熱記録するサーマルヘッドと、
低温発色温度で前記感熱記録媒体に画像を形成するように前記サーマルヘッドを制御する低温発色処理と、前記低温発色処理の後に前記低温発色温度より高い発色抑制温度で前記感熱記録媒体の低温発色を抑制するように前記サーマルヘッドを制御する低温発色抑制処理と、前記低温発色抑制処理の後に前記発色抑制温度より高い高温発色温度で前記感熱記録媒体に画像を形成するように前記サーマルヘッドを制御する高温発色処理とを行う制御手段と
を有する画像形成装置。
【請求項8】
感熱記録媒体に対して画像を熱記録するサーマルヘッドと、
前記感熱記録媒体の低温発色機能を抑制するための圧力を加える加圧手段と、
低温発色温度で前記感熱記録媒体に画像を形成するように前記サーマルヘッドを制御する低温発色処理と、前記低温発色処理の後に前記感熱記録媒体に前記圧力を加えるように前記加圧手段を制御する低温発色抑制処理と、前記低温発色抑制処理の後に前記発色抑制温度より高い高温発色温度で前記感熱記録媒体に画像を形成するように前記サーマルヘッドを制御する高温発色処理とを行う制御手段と
を有する画像形成装置。
【請求項9】
前記サーマルヘッドと前記加圧手段とを一体的に構成し、前記感熱記録媒体に接触する前記サーマルヘッドの加熱面によって前記圧力を加える
請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
低温発色温度で加熱を行って感熱記録媒体に画像を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に前記低温発色温度より高い発色抑制温度で加熱を行って前記感熱記録媒体の低温発色を抑制する第2の工程と、
前記第2の工程の後に前記発色抑制温度より高い高温発色温度で加熱を行って前記感熱記録媒体に画像を形成する第3の工程と
を有する画像形成方法。
【請求項11】
低温発色温度で加熱を行って感熱記録媒体に画像を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に前記感熱記録媒体に所定の圧力を加えて前記感熱記録媒体の低温発色を抑制する第2の工程と、
前記第2の工程の後に前記発色抑制温度より高い高温発色温度で加熱を行って前記感熱記録媒体に画像を形成する第3の工程と
を有する画像形成方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−296722(P2007−296722A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125998(P2006−125998)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】