説明

感熱記録材料、感熱記録ラベル、感熱記録券紙および感熱記録方法

【課題】 古紙パルプを含有させた支持体を用いても感熱記録材料の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕が大幅に低減する感熱記録材料および感熱記録方法の提供。
【解決手段】 支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層を有し、かつ、該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、該支持体、該サーマルコート層、該アンダーコート層の少なくとも1、前記支持体上に直接にサーマルコート層を有する場合には、該支持体、該サーマルコート層の少なくとも1が、下記一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂を併用するものであるか、または下記一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂を併用するものであることを特徴とする感熱記録材料を主な発明とする。
【化1】


(一般式(I)中、Rは水素原子またはメチル基、nは1〜5の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感熱記録材料に関し、更に詳しくは、古紙パルプが含まれている支持体を用いても感熱紙の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕を大幅に低減することが可能な感熱記録材料、感熱記録ラベル、感熱記録券紙および感熱記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録紙は、通常、無色ないし淡色の発色性ロイコ染料と有機酸性物質などの顕色剤とが、熱時溶融反応して発色する感熱記録材料を記録紙に応用したものである。
これらの感熱記録紙は、計測用レコーダー、コンピューター等の端末プリンター、ファクシミリ、自動券売機用途として、また、バーコードラベル、POSラベルなど広範囲の分野に応用されており、最近、用途と多様化に伴い、感熱記録紙に対する要求品質も、より多様化し、高度化してきている。
【0003】
一方、近年の資源保護運動の高まりから、都市ゴミに含まれる紙類がクローズアップされており、特にオフィスや工場から出される紙ゴミはゴミ全体の量の増加に拍車をかけている。こうしたゴミとして出される紙を回収し、再生紙として再利用したり、支持体に古紙パルプを含有させることが望まれている。
たとえば特許文献1〜3等には、感熱記録紙の支持体に古紙パルプを含有させる発明が記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、古紙パルプを含有する支持体を用いると感熱記録紙の再発色能、すなわち感熱記録紙をある条件下に保存した時、保存後の記録特性が保存前に比べて維持できているかを示す性能が低下することが記載されている。この再発色能が低下する原因として、古紙パルプ中に含まれる界面活性剤により顕色剤が不活性化するためであろうと推定されている。特に顕色剤の2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)は比較的高い水溶性のためか界面活性剤と反応しやすく、不活性化しやすいためであろうと記載されている。このように、古紙パルプを含有する支持体上に水溶性の高い顕色剤を使用することは、再発色能に関して問題があると思われる。
【0005】
一方、感熱記録紙を記録する記録装置に用いられているサーマルヘッドもコストダウンが要求され、サーマルヘッドに低コストの素材が用いられ、簡便に作られるようになってきている。そのため、サーマルヘッドの耐久性が低下し、例えば、サーマルヘッドの発熱体上に設けられる保護膜にピンホールやクラックなどの欠陥を有するような膜形成状態の悪化によるサーマルヘッドの耐久性の低下が懸念されている。
すなわち保護膜にピンホールやクラックがあるサーマルヘッドを高温高湿環境下で使用すると、電気的な腐蝕(電蝕)による破壊現象の出現が危ぶまれる。この現象は、感熱記録材料に含まれるイオン成分によってサーマルヘッドの電極部が腐蝕し、最終的には断線に至り、感熱記録紙に印字ができなくなる惧れがある。そして、この現象はイオン成分が関与するため、水分の多い高湿環境下で特に起こりやすい。
このような状況から、感熱記録材料、サーマルヘッド、プリンター等での故障の発生を防止するための検討が進められ、感熱記録材料での腐蝕原因であるイオン量の低減が行われている。またサーマルヘッドの保護膜の改良が行われ、プリンターの待機時における電圧印加の制御が行われている。
【0006】
ところで、感熱記録材料にラクタム化合物を用いる発明が、特許文献5〜6等に記載されている。
これらの特許文献5及び特許文献6には、特定の構造を持つラクタム化合物(1,1’−(1,4−フェニレンジカルボニル)ビス(ヘキサヒドロ−2−アゼピノン)及び日本触媒化学工業社製TO−30)を、感熱記録材料の記録層中に使用した際の効果について、記載がされている。どちらの化合物も対称性の高い分子であるが、分子量が大きい点に改良の余地があると言わざるを得ない。またこれらの化合物の1分子あたりの−CONH−の比率が小さい為、水分子との親和力が弱く、水分子をトラップする効果が十分ではない。このため、感熱記録材料中で電気腐蝕の原因であるイオン種の使用環境(高湿度環境)における影響を大幅に低減することは不可能であり、上述の再発色能や電蝕に関し十分な解決には至っていない。
【0007】
一方、感熱記録材料にカチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を用いることが、特許文献7〜10に記載されている。
しかしながら前記したラクタム化合物と併用するという技術的な思想はされておらず、水分子をトラップする効果が十分に発揮されていない。よって、感熱記録材料中で電気腐蝕の原因であるイオン種の使用環境(高湿度環境)における影響を大幅に低減することは不可能であった。
【0008】
また、特許文献11〜16において、インクジェットなどに用いられるインクを陽イオン交換樹脂で処理することによって、ニッケル、鉄、バリウム、亜鉛をはじめとする陽イオンを除去することが提案されている。さらに特許文献17には、感熱記録材料に用いる無機顔料を、陽イオン交換樹脂で処理することによって、ナトリウムイオン、カリウムイオンの陽イオンを減少させ、サーマルヘッドの損傷を低減することが提案されている。また、特許文献18には、ジアゾ化合物をマイクロカプセルに内包して用いた感熱記録材料において、マイクロカプセルに内包されないジアゾ化合物をイオン交換処理によって取り除くことで地肌部の発色(カブリ)を抑制する提案がされている。
しかしながら、これらのイオン除去技術がそもそも感熱記録紙中から電気腐蝕の原因であるイオン種を無くす技術と直結するか不明であり、感熱記録材に記録する際の高湿環境下において、電気的な腐蝕の発生を如何に抑制するか、未だ十文には検討されていないのが実状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、古紙パルプを含有させた支持体を用いても感熱記録材料の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕が大幅に低減する感熱記録材料および感熱記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、ロイコ染料と顕色剤を少なくとも含むサーマルコート層を有し、かつ、該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、該支持体、該サーマルコート層、該アンダーコート層の少なくとも1、前記支持体上に直接にサーマルコート層を有する場合には、該支持体、該サーマルコート層の少なくとも1が、下記一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂との併用物を含有するか、または下記一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂との併用物を含有することを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
また請求項2に記載の発明は、支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、ロイコ染料と顕色剤を少なくとも含むサーマルコート層と、該サーマルコート層上にオーバーコート層を有し、かつ、該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、該支持体、該サーマルコート層、該アンダーコート層、該オーバーコート層の少なくとも1、前記支持体上に直接にサーマルコート層を有する場合には、該支持体、該サーマルコート層、該オーバーコート層の少なくとも1が、請求項1に記載の一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂との併用物を含有するか、または請求項1に記載の一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂との併用物を含有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の感熱記録材料において、前記陽イオン交換樹脂が弱酸性陽イオン交換樹脂であり、前記陰イオン交換樹脂が弱塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料の表面又は裏面の少なくとも1つの面に印刷を施した感熱記録ラベルであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に粘着層を設けた感熱記録ラベルであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記粘着層が熱によって粘着性が発現する感熱粘着層である感熱記録ラベルを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に磁気記録層を設けた感熱記録券紙であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、少なくともロイコ染料と顕色剤を含む感熱記録材料の表面にサーマル記録ヘッドを接触させて該ロイコ染料と該顕色剤との熱時溶融により両成分を接触させ発色反応させることにより記録を行う感熱記録方法であって、前記感熱記録材料として請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感熱記録材料を構成する支持体(支持体層)、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層の少なくとも1層に前記一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂との併用物を含有するか、または一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂との併用物を含有することから、支持体に古紙パルプを含有させても感熱記録材料の再発色能が低下せず、また、サーマルヘッドの電蝕を大幅に低減することが可能な感熱記録材料を提供することができる。
また、記録材料として本発明の感熱記録材料を用いることにより、サーマルヘッドの電蝕を大幅に低減する感熱記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、実施形態により、詳細に説明する。
本発明においては、支持体、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層の少なくとも1が、下記一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂との併用物(併用物1)を含有するか、または下記一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂との併用物(併用物2)を含有する感熱記録材料である。なお感熱記録材料が、支持体上に直接にサーマルコート層を有する場合には、該支持体、該サーマルコート層の少なくとも1が、また、支持体上に直接にサーマルコート層を有し、オーバーコート層を有する場合には、該支持体、該サーマルコート層、該オーバーコート層の少なくとも1が、上記した併用物(併用物1または併用物2)を含有している。
【0015】
【化2】

【0016】
前述したように、一般式(I)で表されるラクタム化合物は分子の対称性が低く、比較的低分子量である為、水素結合を介して混じりあう、すなわち水分子を効率良くトラップすることができる。
【0017】
更に上記一般式(I)において−CONH−以外の炭素数が多くなると、水分子との親和力が低くなる為、Rは水素原子、またはメチル基であり、nは整数1〜5のラクタム化合物を用いることが、水分子トラップ効果を最大限発揮できる点で好ましい。この水分子トラップ効果により、特に電蝕の原因であるイオン種を発生し、移動させる環境(湿度)の影響を大幅に低減することが可能となることが見出された。
【0018】
上記一般式(I)で表される本発明で使用されるラクタム化合物としては、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、ヘプトラクタム、γ−バレロラクタム等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
上記一般式(I)で表わされるラクタム化合物を支持体に添加する場合の添加量は、支持体100重量部に対して0.02〜2重量部であり、特に0.1〜1重量部の範囲が好ましい。0.02重量部より小さいと上記一般式(I)で表わされるラクタム化合物の水分子トラップ効果が十分発揮できない為、特に再発色能の向上が不十分となり、2重量部を超えて用いても再発色能の向上がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0019】
<ラクタム化合物との併用物1>
また、本発明においては、上記一般式(I)で表されるラクタム化合物と共に、カチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂を併用(ラクタム化合物との併用物1)する。または上記一般式(I)で表されるラクタム化合物と共に、アニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂を併用する(ラクタム化合物との併用物2)。これにより、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を効率良く抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【0020】
(ラクタム化合物との併用物1におけるカチオン性界面活性剤)
上記一般式(I)で表わされるラクタム化合物と共にカチオン性界面活性剤と、陽イオン交換樹脂を併用する場合(併用物1の場合)、用いられるカチオン性界面活性剤としては、第1級アミン類、第2級アミン類、第3級アミン類、及び第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらはその1種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0021】
第1級アミン類の具体例としては、オレイルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミンが挙げられ、第2級アミン類の具体例としては、ジオレイルアミン、モノオレイルモノメチルアミンが挙げられ、第3級アミン類の具体例としては、ポリオキシアルキレンジオレイルアミン、ポリオキシアリキレンエチレングリコールラウリルアミン、ジメチルモノオレイルアミン、モノメチルジオレイルアミン等が挙げられ、第4級アンモニウム塩の具体例としては、トリメチルモノステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノオレイルアンモニウムクロライド、ジメチルジラウリルアンモニウムクロライド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ポリアルキレンオキシモノメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ビス(ポリアルキレンオキシ)モノメチルモノオレイルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−オレイルイミダゾリンエチル硫酸塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−オレイルイミダゾリンクロライド、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ラウリルイミダゾリンエチル硫酸塩等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0022】
(ラクタム化合物との併用物1における陽イオン交換樹脂)
更に本発明においてカチオン性界面活性剤などと併用される陽イオン交換樹脂は、水溶液中の陽イオン種と反応するものであり、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂がある。この中で本発明においては、脱墨剤(界面活性剤)、感熱記録材料中、及び支持体自体の陽イオン種とイオン交換する必要があるので、強酸性陽イオン交換樹脂については水素イオン型を用いる必要がある。これらの陽イオン交換樹脂は、母体構造として、スチレン系のものとアクリル系のものが多いが、これらに限らず陽イオン交換をおこすことのできるものを挙げることができる。
このような陽イオン交換樹脂については各社から様々なグレードのものが市場に提供されており、その一例としては、例えば、オルガノ株式会社製の製品名アンバーライトシリーズのものを挙げることができる。その他のメーカー製品でも同様に用いることが可能である。
強酸性陽イオン交換樹脂(水素イオン型として用いる)としては、例えばアンバーライトIR120BNa、IR124Na、200CTNa、252Na等が挙げられる。
また弱酸性陽イオン交換樹脂としては、例えばアンバーライトFPC3500、IRC76等が挙げられる。
【0023】
<ラクタム化合物との併用物2>
(ラクタム化合物との併用物2におけるアニオン性界面活性剤)
また前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物と併用して用いるアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂のうち、アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸類、スルホン酸類、硫酸エステル類、及びリン酸エステル類などが挙げられる。これらはその1種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
これらの具体例としては、ジメチルコハク酸ナトリウム、ジエチルコハク酸ナトリウム、ジメチルスルホコハク酸ナトリウム、ジエチルスルホコハク酸ナトリウム、ジプロピルスルホコハク酸ナトリウム、ジブチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジノニルスルホコハク酸ナトリウム、ジデカニルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
(ラクタム化合物との併用物2における陰イオン交換樹脂)
更に本発明においてアニオン性界面活性剤と併用する陰イオン交換樹脂は、水溶液中の陰イオン種と反応するもので、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂がある。この中で本発明においては、感熱記録材料中の陰イオン種とイオン交換する必要があるので、強塩基性イオン交換樹脂については水酸化イオン型を用いる必要がある。一方、弱塩基性陰イオン交換樹脂については、遊離塩基型で使用する。これらの陰イオン交換樹脂は、母体構造としてはスチレン系のものとアクリル系のものが多いが、これらに限らず陰イオン交換をおこすことのできるものを対象と考えている。
このような陰イオン交換樹脂については各社から様々なグレードのものが市場に提供されているが、その一例としては、例えば、オルガノ株式会社製の製品名アンバーライトシリーズのものを挙げることができるが、その他のメーカー製品についても同様に用いることが可能である。
強塩基性陰イオン交換樹脂(水酸化イオン型として用いる)としては、例えばアンバーライトIRA400JCL、IRA400TCL、IRA4400CL、IRA402JCL、IRA402BLCL、IRA410JCL、IRA411CL、IRA910CTCL等が挙げられる。また弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えばアンバーライトIRA478RFCL、IRA67、IRA96SB、XT6050RF、XE583、IRA743等が挙げられる。
【0025】
次に、本発明の感熱記録材料の層構成について、その概略を説明する。
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、サーマルコート層を有するか、さらに該サーマルコート層上にオーバーコート層を有している。なお感熱記録材料を構成する層として、アンダーコート層またはオーバーコート層が含まれない構成の場合、支持体、該サーマルコート層の少なくとも1には、前記した一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂との併用物(併用物1)を含有するか、または前記一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂との併用物(併用物2)を含有する。
【0026】
〔支持体〕
本発明の感熱記録材料に用いる支持体は、古紙パルプを含むパルプを用いて抄造された紙を用いることができる。
上記したカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂を支持体に添加する場合、その添加量は、支持体100重量部に対して0.002〜0.2重量部であり、特に0.01〜0.1重量部の範囲が好ましい。0.002重量部より小さいとカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂のイオントラップ効果が十分発揮できないため、特に電蝕低減の効果が不十分となり、0.2重量部を超えて用いても電蝕低減の効果がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0027】
〔サーマルコート層〕
本発明の感熱記録材料に用いるサーマルコート層には、前述のごとく、支持体、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層の少なくとも1に、前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂が併用、または前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂が併用される。
サーマルコート層において前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物が添加されるときの添加量は、サーマルコート層の全固形分100重量部に対して0.1〜10重量部であり、特に0.5〜5重量部の範囲が好ましい。0.1重量部より小さいと前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物の水分子トラップ効果が十分発揮できないため、特に再発色能の向上が不十分となり、一方、10重量部を超えて用いても再発色能の向上がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
また、サーマルコート層にカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂が添加されるときの添加量は、サーマルコート層の全固形分100重量部に対して0.01〜1重量部であり、特に0.05〜0.5重量部の範囲が好ましい。0.01重量部より小さいとカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂、またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂のイオントラップ効果が十分発揮できないため、特に電蝕低減の効果が不十分となり、1重量部を超えて用いても電蝕低減の効果がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0028】
本発明の感熱記録材料に用いるサーマルコート層には、ロイコ染料と顕色剤とを少なくとも含んでいる。
(ロイコ染料)
サーマルコート層に用いられるロイコ染料としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられているフルオラン系化合物、トリアリールメタン系化合物、スピロ系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、ラクタム系化合物、フルオレン系化合物等が挙げられる。なおその他、トリアリールメタン系化合物、スピロ系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、ラクタム系化合物、フルオレン系化合物等は、公知のものを用いることができる。
このうちフルオラン系化合物としては、例えば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソブチル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−エチル−N−(3−エトキシプロピル)アミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−エトキシエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−フェネチルフルオラン等が挙げられる。
【0029】
(顕色剤)
また、前記ロイコ染料を発色させる顕色剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−ブチルフェノール)、p−ニトロ安息香酸亜鉛、1,3,5−トリス(4−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2−(3,4−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルスルフィド)、4−(β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ)サリチル酸、1,7 −ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、フタル酸モノベンジルエステルモノカルボン酸、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−WHU−ブチル−2−メチル)フェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシル)ブタン、4,4’−チオビス(6−ブチル2−メチルフェノール)4,4’ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジフェノールスルホキシド、p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N−ジ(m−クロロフェニルチオ尿素)、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス(4 −ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’−ジアリル−4,4’−ジフェノールスルホン、3,4−ジヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエン、4,4’−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−クロロフェノール)等。更に、各種オリゴマータイプの化合物などもあげることができる。
【0030】
サーマルコート層中におけるロイコ染料と顕色剤との比は、ロイコ染料1部に対し顕色剤が0.5〜10部、好ましくは、1〜5部(部は何れも重量比率)の範囲で用いるのが好ましい。
【0031】
<サーマルコート層を形成するために用いられるその他の材料>
(結着剤)
本発明におけるサーマルコート層を形成するための結着剤には、後述するジアセトン変性ポリビニルアルコール以外に、例えばメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、デンプン及びその誘導体、カゼイン、ゼラチン、水溶性イソプレンゴム、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソ(又はジイソ)ブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性のもの或はポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、カルボキシル化スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸系共重合体、コロイダルシリカとアクリル樹脂の複合体粒子等の疎水性高分子エマルジョン等が挙げられる。
【0032】
前述の結着剤として、ジアセトン変性ポリビニルアルコールが好ましく使用される。ジアセトン変性ポリビニルアルコールは、イオン性が低いため、イオン性を有する界面活性剤との相互作用が少なく、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
したがって、本発明においては、サーマルコート層の結着剤の全部又は一部をジアセトン変性ポリビニルアルコールに代替させて用いるのが好ましい。
本発明に用いるジアセトン変性ポリビニルアルコールは、ジアセトン基を有するビニルモノマーと脂肪酸ビニルエステルとを共重合させて得た重合体を鹸化する等の公知の方法により製造することができる。ジアセトン基を有するビニルモノマーとしては、具体的にはジアセトンアクリルアミドやメタジアセトンアクリルアミドが好ましい。脂肪酸ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられるが、酢酸ビニルが好ましい。
また、本発明に用いるジアセトン変性ポリビニルアルコールは、共重合可能な他のビニルモノマーと共重合したものであってもよい。これらの共重合可能なビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル、ブタジエン、エチレン、プロピレン、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、本発明に用いるジアセトン変性ポリビニルアルコール中のジアセトン基の含有量は、ポリマー全体の0.5〜20モル%であり、耐水性を考慮すると2〜10モル%の範囲が好ましい。0.5モル%より少ないと実用上耐水性が不十分となり、20モル%を超えてもそれ以上の耐水化の向上が見られず高価になるだけなので経済的でない。また本発明で使用されるジアセトン変性ポリビニルアルコールの重合度は300〜3000で、特に500〜2200の範囲が好ましい。また鹸化度は80%以上が好ましい。なおアンダーコート層、オーバーコート層に用いられる結着剤についても結着剤の全部又は一部がジアセトン変性ポリビニルアルコールが好ましく使用され、共重合可能な他のビニルモノマーと共重合したものであること、その共重合可能なビニルモノマーの例、およびジアセトン変性ポリビニルアルコール中のジアセトン基の含有量などの点も前記同様である。
【0033】
また、本発明においては、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層の少なくとも1層に架橋剤としてヒドラジド化合物が好ましく使用される。ことに、アンダーコート層が設けられている場合、サーマルコート層またはオーバーコート層の少なくとも1層に架橋剤としてヒドラジド化合物が用いられると、架橋構造による耐水化が進行するため、イオン性が更に低下し、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【0034】
本発明で使用される架橋剤としては、ヒドラジド基を持つものであればよく、例えばカルボヒドラジド、蓚酸ヒドラジド、蟻酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、マロン酸ヒドラジド、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、アゼライン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド、ドデカンニ酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,7−ナフトエ酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種以上のヒドラジド化合物を併用しても良いし、機能を損なわない範囲で他の公知の架橋剤と組み合わせても良い。ヒドラジド化合物の中では耐水性や安全性の面からアジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0035】
サーマルコート層におけるヒドラジド化合物の含有量は、ジアセトン変性ポリビニルアルコール100重量部に対して2.5〜25重量部が好ましく、5〜15重量部がより好ましい。
【0036】
また、本発明の感熱記録材料におけるサーマルコート層には、ロイコ染料、顕色剤、結着剤、前記一般式(I)で表されるラクタム化合物、前記カチオン性界面活性剤および陽イオン交換樹脂の併用物(併用物1)、または、前記一般式(I)で表されるラクタム化合物、アニオン性界面活性剤および陰イオン交換樹脂の併用(併用物2)を含有し、またジアセトン変性ポリビニルアルコール並びにヒドラジド化合物の他に、必要に応じて、例えば充填剤や、感度向上剤(増感剤)及び滑剤として種々の熱可融性物質等を併用することができる。
【0037】
充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、クレー、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ポリスチレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等がある。
【0038】
熱可融性物質としては、例えば、高級脂肪酸又はそのエステル、アミド若しくは金属塩の他、各種ワックス類、芳香族カルボン酸とアミンとの縮合物、安息香酸フェニルエステル、高級直鎖グリコール、3,4−エポキシ−ヘキサヒドロフタル酸ジアルキル、高級ケトン、p−ベンジルビフェニル、その他の熱可融性有機化合物等の、50〜200℃の程度の融点を持つものが挙げられる。
【0039】
上記ロイコ染料や顕色剤は、水を分散媒体として使用し、サンドグラインダー、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によってポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びスチレン−無水マレイン酸共重合体及びそれらの誘導体などの水溶性合成高分子化合物などと共に分散させ、分散液とした後、サーマルコート層の塗料調整に用いられる。
【0040】
本発明の感熱記録材料においては、サーマルコート層は乾燥時の重量で3〜10g/m、好ましくは4〜7g/mの範囲で設けることができる。
【0041】
サーマルコート層を形成する方法としてはエアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法などの既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。
【0042】
〔アンダーコート層〕
本発明の感熱記録材料においては、支持体とサーマルコート層の接着性、断熱性、サーマルコート層液塗布時の支持体の耐水性向上等のために、支持体上にアンダーコート層を設けるのが好ましい。
【0043】
本発明の感熱記録材料にアンダーコート層が設けられたときは、前述のごとく、支持体、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層のいずれかの1に、前記一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂との併用物(併用物1)が含有されるか、または前記一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂との併用(併用物)がされる。
【0044】
アンダーコート層において前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物が添加されるときの添加量は、アンダーコート層の全固形分100重量部に対して0.1〜10重量部であり、特に0.5〜5重量部の範囲が好ましい。0.1重量部より少ないと前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物の水分子トラップ効果が十分発揮できないため、特に再発色能の向上が不十分となり、一方、10重量部を超えて用いても再発色能の向上がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0045】
また、アンダーコート層にカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂が添加されるときの添加量は、アンダーコート層の全固形分100重量部に対して0.01〜1重量部であり、特に0.05〜0.5重量部の範囲が好ましい。0.01重量部より少ないとカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂、またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂によるイオントラップ効果が十分発揮できないため、特に電蝕低減の効果が不十分となり、1重量部を超えて用いても電蝕低減の効果がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0046】
また、本発明の感熱記録材料におけるアンダーコート層にはプラスチック中空粒子を結着剤中に分散させることが好ましく、結着剤にはサーマルコート層において説明したのと同様な樹脂を用いることができ、ここでもジアセトン変性ポリビニルアルコールを好ましく用いられる。また、架橋剤としてヒドラジド化合物が好ましく使用される。
さらに、アンダーコート層には、必要に応じて、サーマルコート層において説明したのと同様な充填剤を含有することができる。
【0047】
本発明において使用されるプラスチック中空粒子は、例えば、熱可塑性高分子を殻とし、内部に空気その他の気体を含有するもので、すでに発泡状態となっている球状中空微粒子である。
この熱可塑性中空樹脂粒子の中空率(%:中空度とも言う)は、中空粒子の外径部分の体積と内径部分の体積の比であり下記式1で表示されるものである。
中空率(中空度:%)=(中空粒子の内径部分の体積/中空粒子の外径部分の体積)×100 ・・・(式1)
【0048】
該プラスチック中空微粒子は、アクリル酸エステル、アクリロニトリルなどのアクリル系樹脂や、スチレンなどのスチレン樹脂あるいはそれらの共重合樹脂、アクリロニトリル及び/又はメタアクリロニトリル及び/又はアクリル酸エステル及び/又メタクリル酸エステルの共重合体、ビニル基を1分子当たり2個以上有するビニルモノマー及び/又はジビニルベンゼンを含有するモノマーからなる共重合体などから作ることができる。
【0049】
本発明で用いられるプラスチック中空微粒子は、中空率が好ましくは80%、より好ましくは90%以上のものである。このプラスチック球状中空微粒子のアンダーコート層に占める割合は、25〜75重量%であり、好ましくは40〜60重量%である。
【0050】
本発明の感熱記録材料において、支持体上にアンダーコート層を設ける場合は、乾燥時の重量で0.5〜8g/m、好ましくは1.5〜5g/mの範囲で設けることができる。アンダーコート層を形成する方法としては、サーマルコート層の形成と同様に、エアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法などの既知の塗布方法のいずれを用いてもよい。
【0051】
〔オーバーコート層〕
本発明の感熱記録材料においては、サーマルヘッド等のマッチング性向上や、記録画像保存性をより高める等の目的によって、サーマルコート層の上にオーバーコート層を設けることが好ましい。
本発明の感熱記録材料においてオーバーコート層が設けられたときは、前述のごとく、支持体、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層の少なくとも1に、前記一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂との併用物(併用物1)が含有されるか、または前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂との併用物(併用物2)が含有される。
【0052】
オーバーコート層において前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物が添加されるときの添加量は、オーバーコート層の全固形分100重量部に対して0.1〜10重量部であり、特に0.5〜5重量部の範囲が好ましい。0.1重量部より小さいと前記一般式(I)で表わされるラクタム化合物の水分子トラップ効果が十分発揮できないため、特に再発色能の向上が不十分となり、一方、10重量部を超えて用いても再発色能の向上がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0053】
また、オーバーコート層にカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂(併用物1)またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂(併用物2)が添加されるときの併用物(併用物1または併用物2)の添加量は、オーバーコート層の全固形分100重量部に対して0.01〜1重量部であり、特に0.05〜0.5重量部の範囲が好ましい。0.01重量部より小さいとカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂、またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂のイオントラップ効果が十分発揮できないため、特に電蝕低減の効果が不十分となり、1重量部を超えて用いても電蝕低減の効果がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0054】
また、本発明の感熱記録材料におけるオーバーコート層には結着剤としてサーマルコート層やアンダーコート層において説明したのと同様な樹脂を用いることができ、ここでもジアセトン変性ポリビニルアルコールを好ましく用いられる。また、架橋剤としてヒドラジド化合物が好ましく使用される。この場合、オーバーコート層に占める架橋剤の含有量はオーバーコート層の全固形分100重量部に対して2.5〜25重量部、好ましくは5〜15重量部である。また、充填剤としては、サーマルコート層の説明でしたのと同様な充填剤を用いることができる。
【0055】
オーバーコート層は乾燥時の重量で0.5〜8g/m、好ましくは1.5〜5g/mの範囲で設けることができる。また、オーバーコート層を形成する方法としては、サーマルコート層やアンダーコード層の形成と同様に、エアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法などの既知の塗布方法のいずれを用いてもよい。
【0056】
〔その他の層〕
本発明の感熱記録材料においては、支持体の裏面(サーマルコート層とは反対側の面)に、裏面からの油や可塑剤の浸透を抑えたり、カールコントロールのためにバックコート層を設けてもよい。
【0057】
また、本発明の感熱記録材料においては、表面(おもて面)又は裏面の少なくとも1つの面に印刷を施して感熱記録ラベルとすること、裏面に粘着層を設けて感熱記録ラベルとすること、この裏面に設ける粘着層として熱によって粘着性が発現する感熱粘着層を設けて剥離紙不要の感熱記録ラベルとすること、裏面に磁気記録層を設けて感熱記録券紙とすることができる。
【0058】
バックコート層を設ける場合は、乾燥時の重量で0.1〜3g/m、好ましくは0.5〜2g/mの範囲で設けることができる。また、バックコート層を形成する方法としては、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層の形成と同様に、エアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法などの既知の塗布方法のいずれを用いてもよい。
【0059】
本発明の感熱記録材料は、その表面にサーマル記録ヘッドを接触させる、たとえば押し当てることによって、サーマルコート層中のロイコ染料と顕色剤とが熱時溶融により両成分を接触させて発色反応させることにより、画像が形成される。
【0060】
上述した本発明の感熱記録材料の作用について説明する。
本発明の感熱記録材料には種々の古紙パルプを使用することができるが、新聞、雑誌等の古紙を、脱墨剤を用いて脱インクしたものが主に使用される。
脱墨剤(界面活性剤)としては(1)ノニオン系、(2)脂肪酸系、(3)脂肪酸誘導体系、(4)高級アルコール系、(5)油脂誘導体系の前記(1)〜(5)のいずれかの界面活性剤及び(6)起泡剤(ノニオン系/アニオン系界面活性剤)が使用されており、古紙パルプの製造工程(離解→除塵→脱墨)で除去しきれなかった脱墨剤(界面活性剤)が支持体上に残留することが推定される。
【0061】
上記(1)の界面活性剤はポリオキシエチレン、(2)はカルボン酸、(3)〜(5)はポリオキシアルキレン、(6)はポリオキシエチレン/カルボン酸塩/硫酸エステル塩/スルホン酸塩/リン酸エステル塩構造が親水基部分となっている。
また、カルボン酸/カルボン酸塩/硫酸エステル塩/スルホン酸塩/リン酸エステル塩構造は水中では、親水基の部分が陰イオンに電離し、水素イオン或は陽イオン(例えばNa、K)を放出している。これに対し、ポリオキシエチレン(アルキレン)構造は、水中では親水基の部分は電離していない。
【0062】
ところで、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)に代表されるフェノール性顕色剤は水中では弱酸性、すなわちフェノール性水酸基がごく弱いアニオン性を示すため、上記陽イオンと相互作用することにより顕色能を失ってしまうと考えられる。
【0063】
本発明では、上記一般式(I)で表されるラクタム化合物は、分子の対称性が低く、比較的低分子量で1分子あたりの−CONH−の比率が大きくなる為、水分子と水素結合を介して混じりあう、すなわち水分子を効率良くトラップすることができる。この水分子トラップ効果により、特に電蝕の原因であるイオン種の発生、およびイオンの移動環境(高湿度環境)の影響を大幅に低減することが可能となる。
更に、本発明に用いる上記一般式(I)で表されるラクタム化合物と併用するカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂の内、カチオン性界面活性剤はアルキルアミン塩型及び第4級アンモニウム塩型、即ち、分子内に−N−(正電荷)を持つため、陰イオンに電離した脱墨剤(界面活性剤)の親水基部分を捕捉し、陽イオン交換樹脂は上記水素イオン、陽イオンを捕捉するため、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を効率良く抑制することができ、再発色能の低下を防ぐことができる。
【0064】
また、本発明に用いる上記一般式(I)で表されるラクタム化合物と併用するアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂の内、アニオン性界面活性剤はカルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、及びリン酸エステル型、即ち、分子内に−COO−、−SO−、−PO−(負電荷)を持つため上記水素イオン、陽イオンを捕捉し、陰イオン交換樹脂は陰イオンに電離した脱墨剤(界面活性剤)の親水基部分を補足するため、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を効率良く抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【0065】
また、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層における結着剤(結着樹脂)として、ジアセトン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。ジアセトン変性ポリビニルアルコールは、イオン性が低いため、このようなイオン性を有する界面活性剤との相互作用が少なく、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【0066】
また、ジアセトン変性ポリビニルアルコールはイオン性が低いために、感熱記録材料中或は支持体自体に含まれる陽イオン及び陰イオンのサーマルヘッドへの移動を劇的に抑制することができ、電蝕を低減することができる。
【0067】
また、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層における架橋剤として、ヒドラジド化合物が好ましく使用される。ことに、アンダーコート層が設けられている場合、サーマルコート層及び/またはオーバーコート層に架橋剤としてヒドラジド化合物が用いられると、架橋構造による耐水化が進行するため、イオン性が更に低下し、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【0068】
また、アンダーコート層が中空粒子を含有している場合、その中空粒子の中空率が高ければ高いほど水分がトラップされやすくなり、吸水率がアップするため、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【実施例】
【0069】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない、なお、以下において示す部及び%はいずれも重量基準である。
【0070】
〔A液〕ないし〔C液〕の調製
下記組成よりなる混合物をサンドミルで平均粒径が2μm以下になるよう粉砕し、下記〔A液〕〜〔C液〕を調製した。
【0071】
〔A液〕:染料分散液の調製
1)3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 25部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 25部
3)水 50部
【0072】
〔B液〕:顕色剤分散液の調製
1)4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン 25部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 25部
3)水 50部
【0073】
〔C液〕:顔料分散液の調製
1) シリカ 25部
2) カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 25部
3)水 50部
【0074】
下記組成の混合物を混合攪拌して、〔D液〕及び〔E液〕を調製した。
〔D液〕:樹脂水溶液の調整
1)ジアセトン変性ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(株):D−700VH) 10部
2)水 90部
【0075】
〔E液〕:架橋剤水溶液の調製
1)アジピン酸ジヒドラジド 10部
2)水 90部
【0076】
下記組成比の混合物を混合攪拌して(L−1液)、(L−2液)、(CS液)、(AS液)、(CI−1液)、(CI−2液)、(AI−1液)、及び(AI−2液)を調製した。
(L−1液)
1)ε−カプロラクタム 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0077】
(L−2液)
1)γ−バレロラクタム 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0078】
(CS液)
1)トリメチルモノステアリルアンモニウムクロライド 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0079】
(AS液)
1)ジメチルスルホコハク酸ナトリウム 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0080】
(CI−1液)
1)アンバーライトIR124Na(H型) 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0081】
(CI−2液)
1)アンバーライトC76 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0082】
(AI−1液)
1)アンバーライトIRA478RFCL(OH型) 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0083】
(AI−2液)
1)アンバーライトIRA96SB 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0084】
次に、下記組成比の混合物を混合攪拌してサーマルコート層液〔T液〕:(T−1液)〜(T−10液)を調製した。
(T−1液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
【0085】
(T−2液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)L−1液 20部
【0086】
(T−3液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)CS液 2部
7)CI−1液 2部
【0087】
(T−4液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)AS液 2部
7)AI−1液 2部
【0088】
(T−5液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)L−1液 20部
7)CS液 2部
8)CI−1液 2部
【0089】
(T−6液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)L−1液 20部
7)AS液 2部
8)AI−1液 2部
【0090】
(T−7液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)L−1液 20部
7)CS液 2部
8)CI−2液 2部
【0091】
(T−8液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)L−1液 20部
7)AS液 2部
8)AI−2液 2部
【0092】
(T−9液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)L−2液 20部
7)CS液 2部
8)CI−2液 2部
【0093】
(T−10液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)D液 45部
5)E液 5部
6)L−2液 20部
7)AS液 2部
8)AI−2液 2部
【0094】
次に、下記組成比の混合物を混合攪拌してアンダーコート層液〔U液〕:(U−1液)〜(U−7液)を調製した。
(U−1液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 10部
3)水 50部
4)D液 27部
5)E液 3部
【0095】
(U−2液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 10部
3)水 50部
4)D液 27部
5)E液 3部
6)L−1液 10部
7)CS液 1部
8)CI−1液 1部
【0096】
(U−3液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 10部
3)水 50部
4)D液 27部
5)E液 3部
6)L−1液 10部
7)AS液 1部
8)AI−1液 1部
【0097】
(U−4液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 10部
3)水 50部
4)D液 27部
5)E液 3部
6)L−1液 10部
7)CS液 1部
8)CI−2液 1部
【0098】
(U−5液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 10部
3)水 50部
4)D液 27部
5)E液 3部
6)L−1液 10部
7)AS液 1部
8)AI−2液 1部
【0099】
(U−6液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 10部
3)水 50部
4)D液 27部
5)E液 3部
6)L−2液 10部
7)CS液 1部
8)CI−2液 1部
【0100】
(U−7液)
1)塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液((株)クラレ:クラレKポリマーKL−318) 10部
3)水 50部
4)D液 27部
5)E液 3部
6)L−2液 10部
7)AS液 1部
8)AI−2液 1部
【0101】
次に、下記組成比の混合物を混合攪拌してオーバーコート層液〔O液〕:(O−1液)〜(O−7液)を調製した。
(O−1液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
【0102】
(O−2液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
6)L−1液 10部
7)CS液 1部
8)CI−1液 1部
【0103】
(O−3液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
6)L−1液 10部
7)AS液 1部
8)AI−1液 1部
【0104】
(O−4液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
6)L−1液 10部
7)CS液 1部
8)CI−2液 1部
【0105】
(O−5液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
6)L−1液 10部
7)AS液 1部
8)AI−2液 1部
【0106】
(O−6液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
6)L−2液 10部
7)CS液 1部
8)CI−2液 1部
【0107】
(O−7液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
6)L−2液 10部
7)AS液 1部
8)AI−2液 1部
【0108】
(実施例1)
下記表1の組み合わせにしたがって、上記のように調製した各塗工液を用いて、古紙パルプ80%、NBKP(針葉樹晒しクラフトパルプ)7.8%、ε−カプロラクタム2%、カチオン性界面活性剤0.1%、陽イオン交換樹脂0.1%により構成される中質紙(坪量50g/m)を支持体とする感熱記録材料を作製した。
アンダーコート層を形成する場合は、上記支持体の表面に、アンダーコート層液〔U液〕を乾燥重量が3g/mとなるように塗布乾燥してアンダーコート層塗布済み紙を得た。
また、サーマルコート層の形成は、上記支持体に直接、又は上記アンダーコート層塗布済み紙の上にサーマルコート層液〔T液〕をロイコ染料の乾燥重量が0.5g/m2となるように塗布乾燥してサーマルコート層塗布済み紙を得た。
また、オーバーコート層を形成する場合は、上記サーマルコート層塗布済み紙の上にオーバーコート層液〔O液〕を乾燥重量が3g/mとなるように塗布乾燥し、40℃環境下に15時間保管した後、20kg/cmの圧力でキャレンダー処理して感熱記録材料を得た。
【0109】
(実施例2)
カチオン性界面活性剤の代わりにアニオン性界面活性剤を用い、陽イオン交換樹脂の代わりに陰イオン交換樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0110】
(実施例3〜26及び比較例1〜4)
古紙パルプ80%、NBKP20%により構成される中質紙(坪量50g/m)を用いた以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0111】
【表1】

【0112】
<再発色能試験>
次に前記で得られた各感熱記録材料に対し、以下に示す再発色能試験を行い、その結果を表2に示した。
(1) 保存前発色濃度:各感熱記録材料を大倉電気社製感熱紙発色試験装置(TH-PMD)にて印加エネルギー0.45W/dot、パルス時間1.0msの条件で印字し、発色濃度をマクベス濃度計RD-914にて測定した。
(2) 保存後発色濃度:各感熱記録材料を50℃80%RHの条件に一週間保存し、(1)と同様の条件にて印字を行い、発色濃度をマクベス濃度計RD-914にて測定した。
(3)下記式2で定義する再発色能(%)を求めた。実用的には80%以上必要である。結果を表2に示す。
(再発色能%)=(保存後発色濃度)/(保存前発色濃度)×100 …(式2)
【0113】
<待機電蝕試験>
また、前記で得られた各感熱記録材料に対し、松下電子部品社製サーマルヘッドをつけた感熱印字装置を用いて、加電圧24V、40℃90%RHの環境下で2日間待機した時の電蝕試験を行い、更にそのサーマルヘッドを用いてベタ印字を行い、下記の(式3)で定義する待機電蝕率を求めた。その結果を表2に示す。
(待機電蝕率%)={1-(待機電蝕試験後のベタ印字面積)/(待機電蝕試験前のベタ印字面積)}×100・・・(式3)
【0114】
【表2】

【0115】
表1及び表2から、支持体、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層の少なくとも1層に、前記式(I)で示されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂を併用するか、または前記式(I)で示されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂を併用する実施例の感熱記録材料は、少なくとも70%の再発色能が得られ、待機電蝕率Bも35%以下に抑えることができ、更に本発明の効果を示す層構成を増やしていくことにより、古紙パルプを用いても80%以上の再発色能Aが得られ、待機電蝕率も20%以下に抑えることができることがわかる。
これに対し、前記式(I)で示されるラクタム化合物のみ、あるいはカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂、またはアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂のみを用いた比較例の感熱記録材料は、70%にも満たない再発色能しか得られず、待機電蝕率も50%以上と高く、サーマルヘッドの電蝕を抑えにくいことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【特許文献1】特開昭58−025986号公報
【特許文献2】特開平03−140287号公報
【特許文献3】特開平03−227291号公報
【特許文献4】特公平07−085945号公報
【特許文献5】特開平06−227131号公報
【特許文献6】特開平06−262852号公報
【特許文献7】特開2004−044058号公報
【特許文献8】特開2006−095372号公報
【特許文献9】特許第2815954号公報
【特許文献10】特開2004−174746号公報
【特許文献11】特開平8−311376号公報
【特許文献12】特開平8−311377号公報
【特許文献13】特開平8−311378号公報
【特許文献14】特開平8−311379号公報
【特許文献15】特開平8−311380号公報
【特許文献16】特開平8−311381号公報
【特許文献17】特許第2691948号号公報
【特許文献18】特公平6−086144号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層を有し、かつ、該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、
該支持体、該サーマルコート層、該アンダーコート層のいずれか少なくとも1、前記支持体上に直接にサーマルコート層を有する場合には、該支持体、該サーマルコート層の少なくとも1が、
下記一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂を併用するものであるか、または
下記一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂を併用するものであることを特徴とする感熱記録材料。
【化1】

(上記一般式(I)中、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜5の整数を表す。)
【請求項2】
支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層と、該サーマルコート層上にオーバーコート層を有し、かつ、該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、
該支持体、該サーマルコート層、該アンダーコート層、該オーバーコート層の少なくとも1、前記支持体上に直接にサーマルコート層を有する場合には、該支持体、該サーマルコート層、該オーバーコート層の少なくとも1が、
請求項1に記載の一般式(I)で表されるラクタム化合物とカチオン性界面活性剤と陽イオン交換樹脂を併用するものであるか、または
請求項1に記載の一般式(I)で表されるラクタム化合物とアニオン性界面活性剤と陰イオン交換樹脂を併用するものであることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項3】
前記陽イオン交換樹脂が弱酸性陽イオン交換樹脂であり、前記陰イオン交換樹脂が弱塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料の表面又は裏面の少なくとも1つの面に印刷を施したことを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に粘着層を設けたことを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項6】
請求項5に記載の粘着層が、熱によって粘着性が発現する感熱粘着層であることを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に磁気記録層を設けたことを特徴とする感熱記録券紙。
【請求項8】
少なくともロイコ染料と顕色剤を含む感熱記録材料の表面にサーマル記録ヘッドを接触させて該ロイコ染料と該顕色剤との熱時溶融により両成分を接触させ発色反応させることにより記録を行う感熱記録方法であって、前記感熱記録材料として請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料を用いることを特徴とする感熱記録方法。

【公開番号】特開2011−56911(P2011−56911A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212043(P2009−212043)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】