説明

感熱記録材料、感熱記録ラベル、感熱記録券紙及び感熱記録方法

【課題】支持体に古紙パルプを含有させても感熱記録材料の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕が大幅に低減され、更に減感及び地肌かぶりを抑制することが可能な感熱記録材料を提供すること、またサーマルヘッドの電蝕を抑制することが可能な感熱記録方法を提供すること。
【解決手段】支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層を設けると共に、該支持体、サーマルコート層及び該アンダーコート層のいずれか1つにアミノ酸を含み、かつ該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料において、前記アミノ酸として中性アミノ酸を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料に関し、更に詳しくは支持体に古紙パルプが含まれていても感熱紙の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕を大幅に低減することが可能な感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は通常では無色ないし淡色の発色性ロイコ染料と有機酸性物質のような顕色剤とが、熱時溶融反応して発色することを記録紙に応用したものであり、その一例としては特公昭43−4160号公報、特公昭45−14039号公報等に開示されている。
【0003】
これらの感熱記録材料は、計測用レコーダー、コンピューター等の端末プリンター、ファクシミリ、自動券売機、バーコードラベル、POSラベルなど広範囲の分野に利用されているが、最近はこれら用途と多様化に伴い、感熱記録材料に対する要求品質もより多様化、高度化してきている。
【0004】
一方、近年の資源保護の運動の高まりから、都市ゴミに含まれる紙類がクローズアップされており、特にオフィスや工場から出される紙ゴミはゴミ全体量の増加に拍車をかけている。そのため、こうしたゴミとして出される紙を回収し、再生紙として再利用したり、支持体に古紙パルプを含有させることが望まれている。
【0005】
感熱紙の支持体に古紙パルプを含有させることについては、既に特許文献1、特許文献2、特許文献3等に記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、古紙パルプを含有する支持体を用いると感熱紙の再発色能、すなわち感熱紙をある条件下に保存した時、保存後の記録特性が保存前と比較してどの程度維持できているかという特性、が低下することが記載されている。そして再発色能が低下する原因として、古紙パルプ中に含まれる界面活性剤により顕色剤が不活性化するためであろうと推定されており、特に2,2‘−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)は比較的水溶性が高いためか界面活性剤と反応しやすく、不活性化しやすいためであろうと記載されており、古紙パルプを含有する支持体上に水溶性の高い顕色剤を使用することは、再発色能に関して問題があることが想定される。
【0007】
一方、感熱紙においては、記録装置の低コスト化に伴い、それに用いられているサーマルヘッドに対してもコストダウンが要求されるようになり、サーマルヘッドも低コストの素材で簡便に作られるようになってきている。そのため、サーマルヘッドの耐久性が低下し、例えば、サーマルヘッドの発熱体上に設けられる保護膜の膜形成状態が悪かったり、保護膜にピンホールやクラックなどの欠点を有するものもあった。
【0008】
上記保護膜にピンホールやクラックがある場合の最大の問題点としては、特に高温高湿環境下において使用する場合のサーマルヘッドの電気的な腐蝕破壊が挙げられる。この現象は、感熱記録材料に含まれるイオン成分によってサーマルヘッドの電極部が腐蝕され、最終的には断線してしまうことで、印字ができなくなってしまうものである。そして、この現象は、イオン成分が関与していることから、高湿環境下において起こりやすくなっている。
【0009】
このような状況から、感熱記録材料、サーマルヘッド、プリンターにおいては、故障発生を防ぐための検討が進められており、感熱記録材料では腐蝕原因であるイオン量を低減することが行われている。また、サーマルヘッドにおいてはヘッドの保護膜の改良が行われ、プリンターにおいても待機時の電圧印加を制御することが行われている。
【0010】
ところで、本発明は感熱記録材料にアミノ酸を利用するものであるが、これまでも、感熱記録材料にアミノ酸及びその誘導体を用いることは特許文献5や特許文献6の提案がある。
【0011】
すなわち、特許文献5には耐光性や耐可塑剤性に優れ、更に生分解性に優れ、環境ホルモンなどの有害物質を含まない感熱記録材料として、アミノ酸類と糖類を用いて加熱により画像を形成する感熱記録材料が提案されている。しかしながら、この記録材料はアミノ−カルボニル反応による褐色発色を利用するものであり、加熱によりロイコ染料と顕色剤との発色反応を利用する本発明の感熱記録材料とは発色原理も課題も全く異なるものである。
【0012】
また、特許文献6にはロイコ染料と顕色剤を用いる本発明の感熱記録材料と同じ感熱記録材料の顕色剤として、安定でかつ汎用性の高い記録物を得るため、アミノ基の水素をアシル基で置換したアミノ酸誘導体を用いることが提案されている。しかしながら、ここでは、アミノ基の水素をアシル基で置換しているため、双性イオンとして作用することが出来ず、イオントラップ効果が十分に発揮できないため、感熱記録材料中の電気腐蝕の原因であるイオン種を完全に無くすことは不可能であり、上述の再発色能や電蝕に関して十分な解決策とはならないと思われる。
【0013】
【特許文献1】特開昭58−025986号公報
【特許文献2】特開平03−140287号公報
【特許文献3】特開平03−227291号公報
【特許文献4】特公平07−085945号公報
【特許文献5】特開2005−254764号公報
【特許文献6】特許第3340820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、支持体に古紙パルプを含有させても感熱記録材料の再発色能が低下せず、しかもサーマルヘッドの電蝕が大幅に低減され、更に減感及び地肌かぶりを抑制することが可能な感熱記録材料を提供すること、またサーマルヘッドの電蝕を抑制することが可能な感熱記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層を設けると共に、該支持体、サーマルコート層及び該アンダーコート層のいずれか1つにアミノ酸を含み、かつ該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、前記アミノ酸が中性アミノ酸であることを特徴とする。
ここで、サーマルコート層とは熱時溶融によりロイコ染料と顕色剤を接触させて発色反応を行う感熱記録層を、アンダーコート層とは支持体と感熱記録層との間に設けられ、感熱記録層に加えられた印字エネルギーを最大限活用するための下引き層をいう。
【0016】
請求項2に記載の発明は、支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層を設け、更にサーマルコート層上にオーバーコート層を設けると共に、該支持体、該サーマルコート層、該アンダーコート層及び該オーバーコート層のいずれか1つにアミノ酸を含み、かつ該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、前記アミノ酸が中性アミノ酸であることを特徴とする。
ここで、オーバーコート層とは感熱記録層の上に設けられ、感熱記録層にて形成された画像品質を維持するための保護層をいう。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の感熱記録材料において、前記中性アミノ酸が、25℃における溶解度が15g/100gH2O以上であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料において、前記アンダーコート層がプラスチック球状中空粒子を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の感熱記録材料において、前記プラスチック球状中空粒子の中空率が80%以上であることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の感熱記録材料において、前記のサーマルコート層、アンダーコート層及びオーバーコート層の少なくとも1層に結着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の感熱記録材料において、前記のサーマルコート層、アンダーコート層及びオーバーコート層の少なくとも1層に架橋剤としてヒドラジド化合物を含有することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料の表面及び/又は裏面に印刷を施した感熱記録ラベルを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に粘着層を設けた感熱記録ラベルを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に熱によって粘着性が発現する感熱粘着層を設けた剥離紙不要の感熱記録ラベルを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に磁気記録層を設けた感熱記録券紙を特徴とする。
【0026】
請求項12に記載の発明は、少なくともロイコ染料と顕色剤を含む感熱記録材料の表面にサーマル記録ヘッドを押し当てて該ロイコ染料と該顕色剤との熱時溶融により両成分を接触させて発色反応をさせることにより記録を行う感熱記録方法であって、前記感熱記録材料が請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料であることを特徴とする。
【0027】
上記本発明の感熱記録材料の作用について説明すると、
本発明の感熱記録材料には種々の古紙パルプを使用することができるが、主に新聞、雑誌等の古紙を脱墨剤を用いて脱インクしたものが使用される。
ところで、脱墨剤としては、(1)ノニオン系、(2)脂肪酸系、(3)脂肪酸誘導体系、(4)高級アルコール系、(5)油脂誘導体系、の界面活性剤及び(6)起泡剤(ノニオン系/アニオン系界面活性剤)が使用されており、古紙パルプの製造工程(離解→除塵→脱墨)で除去しきれなかった脱墨剤(界面活性剤)が支持体上に残留することが推定される。
【0028】
上記(1)の界面活性剤はポリオキシエチレン、(2)はカルボン酸、(3)〜(5)はポリオキシアルキレン、(6)はポリオキシエチレン/カルボン酸塩/硫酸エステル塩/スルホン酸塩/リン酸エステル塩構造が親水基部分となっている。
【0029】
また、カルボン酸/カルボン酸塩/硫酸エステル塩/スルホン酸塩/リン酸エステル塩構造は水中では、親水基の部分が陰イオンに電離し、水素イオン或は陽イオン(例えばNa+、K+)を放出している。これに対し、ポリオキシエチレン(アルキレン)構造は、水中では親水基の部分は電離していない。
【0030】
ところで、2,2´−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)に代表されるフェノール性顕色剤は水中では弱酸性、すなわちフェノール性水酸基がごく弱いアニオン性を示すため、上記陽イオンと相互作用することにより顕色能を失ってしまうことが考えられる。
【0031】
しかし、本発明に用いる中性アミノ酸は、25℃における溶解度が15g/100gHO以上と水に溶けやすいため、両性イオンとして存在しやすく、すなわちアミノ酸のカルボキシル基がプロトンを放出して−COOとなり、アミノ基がプロトンと結合して−NHとなることから、カルボキシル基に起因する−COO(負電荷をもつ)が上記水素イオン、陽イオンを捕捉し、アミノ基に起因する−NH(正電荷をもつ)が陰イオンに電離した脱墨剤(界面活性剤)の親水基部分を捕捉するため、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を効率よく抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【0032】
また、本発明では中性アミノ酸を使用しているため、酸性アミノ酸や塩基性アミノ酸を用いた場合と異なり、従来技術で述べた地肌かぶり/減感等の問題は発生しない。
【0033】
更に、上でも述べた様に本発明に用いる中性アミノ酸は、水に溶けやすいため、両性イオンとして存在しやすく、イオントラップ効果が最大限に発揮されるため、感熱記録材料中或は支持体自体に含まれるイオン種のサーマルヘッドの電極への移動を大幅に防ぐことができ、電蝕を低減することができる。
【0034】
また、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層における結着剤(結着樹脂)としては、ジアセトン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。ジアセトン変性ポリビニルアルコールは、イオン性が低いため、このようなイオン性を有する界面活性剤との相互作用が少なく、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)との反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【0035】
また、ジアセトン変性ポリビニルアルコールはイオン性が低いために、感熱記録材料中或は支持体自体に含まれる陽イオン及び陰イオンのサーマルヘッドへの移動を劇的に抑制することができ、電蝕を低減することができる。
【0036】
また、アンダーコート層が中空粒子を含有している場合、その中空粒子の中空率が高ければ高いほど水分がトラップされやすくなり、吸水率がアップするため、上記顕色剤と脱墨剤(界面活性剤)の反応を抑制することができ、再発色能低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、支持体(支持体層)、サーマルコート層、アンダーコート層及びオーバーコート層のいずれか少なくとも1層に中性アミノ酸を含むことから、支持体に古紙パルプを含有させても感熱記録材料の再発色能が低下せず、また、サーマルヘッドの電蝕を大幅に低減することができ、更に感度倍率を維持したまま、耐熱地肌かぶりも抑制することが可能な感熱記録材料を提供することができる。
また、記録材料として本発明の感熱記録材料を用いることにより、サーマルヘッドの電蝕が大幅に抑制された感熱記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明において用いる中性アミノ酸とは、1分子中のアミノ基とカルボキシル基の数の割合が等しく、等電点が5〜7のものを指す。中性アミノ酸の場合、等電点は(アミノ基の酸解離定数pKa+カルボキシル基の酸解離定数pKa)/2で与えられる。
ここで、等電点が5より小さいアミノ酸は酸性アミノ酸と呼ばれ、酸性の性質を示すため、特に高湿環境下で地肌かぶりが発生しやすくなるため、好ましくない。
また、等電点が7より大きいアミノ酸は塩基性アミノ酸と呼ばれ、塩基性の性質を示すため、ロイコ染料と顕色剤の発色反応を阻害し、減感現象が起きやすくなるため、好ましくない。
【0039】
中性アミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、シトルリン、バリン、トレオニン、メチオニン、グルタミン等が挙げられるが、特に25℃における溶解度が15g/100gH2O以上の中性アミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、セリン、プロリン等がより好ましい。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
また、中性アミノ酸の添加量は、サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層の全固形分100重量部に対して0.1〜10重量部であり、特に0.5〜5重量部の範囲が好ましい。
中性アミノ酸の添加量が0.5重量部より小さいと中性アミノ酸のイオントラップ効果が十分発揮できないため、特に再発色能の向上が不十分となる。一方、5重量部を越えて用いても再発色能の向上がそれ以上見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0041】
中性アミノ酸を支持体に添加する場合の添加量は、支持体100重量部に対して0.02〜2重量部であり、特に0.1〜1重量部の範囲が好ましい。0.1重量部より小さいと中性アミノ酸のイオントラップ効果が十分発揮できないため、特に再発色能の向上が不十分となる。一方、1重量部を越えて用いても再発色能の向上がそれ以上見られず高価になるだけで経済的でない。
【0042】
本発明に用いるジアセトン変性ポリビニルアルコールは、ジアセトン基を有するビニルモノマーと脂肪酸ビニルエステルとを共重合させて得た重合体を鹸化する等の公知の方法により製造することができる。
【0043】
ジアセトン基を有するビニルモノマーとしては、具体的にはジアセトンアクリルアミドやメタジアセトンアクリルアミドが好ましい。
【0044】
脂肪酸ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられるが、酢酸ビニルが好ましい。
【0045】
本発明で使用されるジアセトン変性ポリビニルアルコールは、共重合可能な他のビニルモノマーを共重合したものであってもよい。
【0046】
これらの共重合可能なビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル、ブタジエン、エチレン、プロピレン、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0047】
本発明で使用されるジアセトン変性ポリビニルアルコール中のジアセトン基の含有量は、ポリマー全体の0.5〜20モル%であり、耐水性を考慮すると2〜10モル%の範囲が好ましい。2モル%より少ないと実用上耐水性が不十分となり、10モル%を越えてもそれ以上の耐水化の向上が見られず高価になるだけなので経済的でない。
【0048】
また本発明で使用されるジアセトン変性ポリビニルアルコールの重合度は300〜3000で、特に500〜2200の範囲が好ましい。また鹸化度は80%以上が好ましい。
【0049】
本発明で使用される架橋剤は、ヒドラジド基を持つものであればよく、例えばカルボヒドラジド、蓚酸ヒドラジド、蟻酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、マロン酸ヒドラジド、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、アゼライン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド、ドデカンニ酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,7−ナフトエ酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種以上のヒドラジド化合物を併用しても良いし、機能を損なわない範囲で他の公知の架橋剤と組み合わせても良い。ヒドラジド化合物の中では耐水性や安全性の面からアジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0050】
本発明の感熱記録材料は、支持体上にアンダーコート層を乾燥時の重量で0.5〜8g/m 、好ましくは1.5〜5g/m の範囲で設けることができる。また、サーマルコート層は乾燥時の重量で3〜10g/m 、好ましくは4〜7g/mの範囲で各々設けることができる。また、オーバーコート層は乾燥時の重量で0.5〜8g/m 、好ましくは1.5〜5g/mの範囲で設けることができる。
【0051】
更に、上記アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層以外に、支持体の裏面にバックコート層を設けてもよく、乾燥時の重量で0.1〜3g/m、好ましくは0.5〜2g/m の範囲で設けることができる。
【0052】
また、アンダーコート層に用いるプラスチック球状中空粒子は、例えば、熱可塑性高分子を殻とし、内部に空気その他の気体を含有するもので、すでに発泡状態となっている球状中空微粒子である。
【0053】
この熱可塑性中空樹脂粒子の中空率は、中空粒子の外径部分の体積と内径部分の体積の比であり下記式で表示されるものである。
【0054】
〔数1〕
中空率(中空度)(%)=(中空粒子の内径部分の体積/中空粒子の外径部分の体積)×100
【0055】
プラスチック球状中空微粒子は、アクリル酸エステル、アクリロニトリルなどのアクリル系樹脂や、スチレンなどのスチレン樹脂あるいはそれらの共重合樹脂、アクリロニトリル及び/又はメタアクリロニトリル及び/又はアクリル酸エステル及び/又メタクリル酸エステルの共重合体、ビニル基を一分子当たり2個以上有するビニルモノマー及び/又はジビニルベンゼンを含有するモノマーからなる共重合体などから作ることができる。
【0056】
次に、サーマルコート層に用いられるロイコ染料の例としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられているフルオラン系化合物、トリアリールメタン系化合物、スピロ系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、ラクタム系化合物、フルオレン系化合物等が挙げられる。
【0057】
このうちフルオラン系化合物としては、例えば、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソブチル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−エチル−N−(3−エトキシプロピル)アミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−エトキシエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−フェネチルフルオラン等が挙げられる。
【0058】
上記ロイコ染料を発色させる顕色剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる。4 ,4´−イソプロピリデンビスフェノール、4 ,4´−イソプロピリデンビス(o −メチルフェノール)、4 ,4´−VHF −ブチリデンビスフェノール、4,4´−イソプロピリデンビス(2 −WHU −ブチルフェノール)、p −ニトロ安息香酸亜鉛、1 ,3 ,5 −トリス(4 −WHU −ブチル−3 −ヒドロキシ−2 ,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2 ,2 −(3 ,4 −ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビス(4 −ヒドロキシ−3 −メチルフェニルスルフィド)、4 −(β−(p −メトキシフェノキシ)エトキシ)サリチル酸、1 ,7 −ビス(4 −ヒドロキシフェニルチオ)−3 ,5 −ジオキサヘプタン、フタル酸モノベンジルエステルモノカルボン酸、4 ,4´−シクロヘキシリデンビスフェノール、4 ,4´−イソプロピリデンビス(2 −クロロフェノール)、2 ,2´−メチレンビス(4 −メチル−6 −WHU −ブチルフェノール)、4 ,4´−ブチリデンビス(6 −WHU −ブチル−2 −メチル)フェノール、1 ,1 ,3 −トリス(2 −メチル−4 −ヒドロキシ−5 −シクロヘキシル)ブタン、4 ,4´−チオビス(6 −WHU −ブチル2 −メチルフェノール)4 ,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4 −ベンジルオキシ−4´−ヒドロキシジフェニルスルホン、4 −イソプロピルオキシ−4´−ヒドロキシジフェニルスルホン、4 ,4´−ジフェノールスルホキシド、p −ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p −ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、1 ,3 −ビス(4 −ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、1 ,3 −ビス(4 −ヒドロキシフェニルチオ)−2 −ヒドロキシプロパン、N ,N −ジフェニルチオ尿素、N ,N −ジ(m−クロロフェニルチオ尿素)、サリチルアニリド、5 −クロロサリチルアニリド、ビス(4 −ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス(4 −ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、1 ,3 −ビス(4 −ヒドロキシクミル)ベンゼン、1 ,4 −ビス(4 −ヒドロキシクミル)ベンゼン、2 ,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2 ,2´−ジアリル−4 ,4´−ジフェノールスルホン、3 ,4 −ジヒドロキシ−4´−メチルジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエン、4 ,4´−チオビス(2 −メチルフェノール)、4 ,4´−チオビス(2 −クロロフェノール)等。更に、各種オリゴマータイプの化合物などもあげることができる。また、感熱発色層中におけるロイコ染料と顕色剤との比は、0 .5 〜10 部、好ましくは、1 〜5 部(部は何れも重量比率)の範囲で用いるのが好ましい。
【0059】
本発明によれば、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層には上記ジアセトン変性ポリビニルアルコールとヒドラジド化合物の他に、必要に応じ結合剤、充填剤が使用される。用いられる充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、クレー、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ポリスチレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等がある。
【0060】
結合剤としては、例えばメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、デンプン及びその誘導体、カゼイン、ゼラチン、水溶性イソプレンゴム、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソ(又はジイソ)ブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性のもの或はポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、カルボキシル化スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸系共重合体、コロイダルシリカとアクリル樹脂の複合体粒子等の疎水性高分子エマルジョン等が挙げられる。
【0061】
上記ロイコ染料や顕色剤は水を分散媒体として使用し、サンドグラインダー、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によってポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びスチレン−無水マレイン酸共重合体及びそれらの誘導体などの水溶性合成高分子化合物などと共に分散させ、分散液とした後、感熱記録層の塗料調製に用いられる。
【0062】
サーマルコート層、アンダーコート層、オーバーコート層、バックコート層等の各層を形成する方法としてはエアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法などの既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。
【実施例】
【0063】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において示す部及び%はいずれも重量基準である。
【0064】
下記組成よりなる混合物をサンドミルで平均粒径が2μm以下になるよう粉砕し、〔A−液〕ないし〔C−液〕を調製した。
(A−液)染料分散液の調製
1)3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 25部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 25部
3)水 50部
【0065】
(B−液)顕色剤分散液の調製
1)4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン 25部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 25部
3)水 50部
【0066】
(C−液)顔料分散液の調製
1) シリカ 25部
2) カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 25部
3) 水 50部
【0067】
下記組成比の混合物を混合攪拌して、〔D液〕及び〔E液〕を調製した。
(D−液)樹脂水溶液の調製
1)ジアセトン変性ポリビニルアルコール 10部
2)水 90部
【0068】
(E−液)架橋剤水溶液の調製
1)アジピン酸ジヒドラジド 10部
2)水 90部
【0069】
下記組成比の混合物を攪拌して、〔AA−1液〕ないし〔AA−6液〕を調製した。
(AA−1液)
1)アスパラギン酸(溶解度0.5g/100gH2O) 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0070】
(AA−2液)
1)アルギニン(溶解度15.0g/100gH2O) 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0071】
(AA−3液)
1)グルタミン(溶解度4.3g/100gH2O) 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0072】
(AA−4液)
1)シトルリン(溶解度13.3g/100gH2O) 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0073】
(AA−5液)
1)アラニン(溶解度 17.5g/100gH2O) 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0074】
(AA−6液)
1)セリン(溶解度43.6g/100gH2O) 10部
2)ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 80部
【0075】
次に下記組成比の混合物を混合攪拌して感熱発色層液〔T液〕を調製した。
(T−1液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
【0076】
(T−2液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)AA−1液 25部
【0077】
(T−3液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)AA−2液 25部
【0078】
(T−4液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)AA−3液 25部
【0079】
(T−5液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)AA−4液 25部
【0080】
(T−6液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)AA−5液 25部
【0081】
(T−7液)
1)A液 50部
2)B液 150部
3)C液 50部
4)AA−6液 25部
【0082】
(T−8液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)AA−6液 25部
5)D液 50部
【0083】
(T−9液)
1)A液 40部
2)B液 120部
3)C液 40部
4)AA−6液 25部
5)D液 45部
6)E液 5部
【0084】
次に下記組成比の混合物を混合攪拌してアンダーコート層液〔U液〕を調製した。
(U−1液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール 20部
3)水 60部
【0085】
(U−2液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)AA−3液 10部
【0086】
(U−3液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)AA−4液 10部
【0087】
(U−4液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)AA−5液 10部
【0088】
(U−5液)
1)焼成カオリン 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)AA−6液 10部
【0089】
(U−6液)
1)スチレン/アクリル共重合体からなる中空樹脂粒子
(中空率50%、固形分40%) 20部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
3)水 60部
4)AA−6液 10部
【0090】
(U−7液)
1)塩化ビニリデン/アクリロニトリル/メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子
(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 50部
4)AA−6液 10部
【0091】
(U−8液)
1)塩化ビニリデン/アクリロニトリル/メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子
(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 50部
4)AA−6液 10部
5)D液 30部
【0092】
(U−9液)
1)塩化ビニリデン/アクリロニトリル/メタクリレート共重合体からなる中空樹脂粒子
(中空率90%、固形分40%) 10部
2)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 10部
3)水 50部
4)AA−6液 10部
5)D液 27部
6)E液 3部
【0093】
次に下記組成比の混合物を混合攪拌して保護層液〔O液〕を調製した。
(O−1液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
【0094】
(O−2液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
6)AA−3液 10部
【0095】
(O−3液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
6)AA−4液 10部
【0096】
(O−4液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
6)AA−5液 10部
【0097】
(O−5液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)カルボン酸変性ポリビニルアルコール10%水溶液 100部
4)ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂10%水溶液 20部
5)水 50部
6)AA−6液 10部
【0098】
(O−6液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)水 50部
5)AA−6液 10部
【0099】
(O−7液)
1)水酸化アルミニウム10%分散液 50部
2)ステアリン酸亜鉛10%分散液 20部
3)D液 100部
4)E液 20部
5)水 50部
6)AA−6液 10部
【0100】
(実施例1)
古紙パルプ80%、NBKP18%、アラニン2%により構成される中質紙(坪量50g/m)を用いた以外は比較例1(下記表1参照)と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0101】
(実施例2〜36及び比較例1〜3)
下記表1の組み合わせにしたがって、上記のようにして調製した各塗工液を用いて、古紙パルプ80%、NBKP20%により抄造された中質紙(坪量50g/m)を支持体とする感熱記録材料を作製した。
アンダーコート層を形成する場合は、上記支持体の表面に、アンダーコート層液〔U液〕を乾燥重量が3g/m となるように塗布乾燥してアンダーコート層塗布済み紙を得た。
また、サーマルコート層の形成は、上記支持体上に直接、又は上記アンダーコート層塗布済み紙の上にサーマルコート層液〔T液〕をロイコ染料の乾燥重量が0.5g/m となるように塗布乾燥してサーマルコート層塗布済み紙を得た。
また、オーバーコート層を形成する場合は、上記さーマルコート層塗布済み紙の上にオーバーコート層液〔O液〕を乾燥重量が3g/m となるように塗布乾燥し、40℃環境下に15時間保管した後、20kg/cm2 の圧力でキャレンダー処理をして感熱記録材料を得た。
【0102】
(実施例37)
更に、古紙パルプ80%、NBKP18%、アラニン2%により構成される中質紙(坪量50g/m)を用いた以外は実施例36と同様にして感熱記録材料を得た。
【0103】
【表1】


【0104】
<再発色能試験>
次に前記で得られた各感熱記録材料に対し、以下に示す再発色能試験を行い、その結果を表2に示した。
(1) 保存前発色濃度:各感熱記録層を大倉電気社製感熱紙発色試験装置(TH-PMD)にて、印加エネルギー0.45W/dot、パルス時間1.0msの条件で印字し、発色濃度をマクベス濃度計RD-914にて測定した。
(2)保存後発色濃度:各感熱記録材料を50℃80%の条件に一週間保存し、(1)と同様の条件にて印字を行い、発色濃度をマクベス濃度計RD-914にて測定した。
(3) 再発色能:式1で定義する再発色能(%)を求めた。実用的には80%以上必要である。その結果を表2に示す。
【0105】
〔数1〕
(再発色能)=(保存後発色濃度)/(保存前発色濃度)×100(%) ・・(式1)
【0106】
<待機電蝕試験>
また、前記で得られた各感熱記録材料に対し、松下電子部品社製サーマルヘッドをつけた感熱印字装置を用いて、加電圧24V、40℃90%RHの環境下で2日間待機した時の電蝕試験を行い、更にそのサーマルヘッドを用いてベタ印字を行い、式2で定義する待機電蝕率を求めた。その結果を表2に示す。
【0107】
〔数2〕
(待機電蝕率)={1−(待機電蝕試験後のベタ印字面積)/(待機電蝕試験前のベタ印字面積)}×100(%) ・・(式2)
【0108】
<動的発色試験>
各感熱記録材料を大倉電気社製感熱紙発色試験装置(TH-PMD)にて印加エネルギー0.45W/dot、1ライン記録時間20msec/L、走査密度8×385ドット/mm条件下で、1msec毎にパルス幅0.0〜0.7msecに可変させて印字し、印字濃度をマクベス濃度計RD-914にて測定し、濃度が1.0となるパルス幅から、式3で定義する感度倍率を求めた。その結果を表2に示す。
【0109】
〔数3〕
(感度倍率)=(比較例1のパルス幅)/(サンプルのパルス幅)・・(式3)
【0110】
<耐熱地肌かぶり性試験>
また、前記で得られた各感熱記録材料に対し、以下に示す耐熱性試験を行い、その結果を表2に示した。
(1)保存前地肌濃度:保存前の地肌濃度をマクベス濃度計RD-914にて測定した。
(2)保存後地肌濃度:各感熱記録材料を70℃Dryの条件に24時間保存し、保存後の地肌濃度をマクベス濃度計RD-914にて測定した。
(3)式4で示す耐熱地肌かぶり性を求めた。その結果を表2に示す。
【0111】
〔数4〕
(耐熱地肌かぶり性)=(保存後地肌濃度)−(保存前地肌濃度) ・・(式4)
【0112】
【表2】

【0113】
表1及び表2から、支持体、アンダーコート層、サーマルコート層、オーバーコート層のいずれか少なくとも1層に中性アミノ酸を含む実施例の感熱記録材料は、古紙パルプを用いても80%以上の再発色能が得られ、待機電蝕率も20%以下に抑えられ、更に感度倍率を維持したまま、耐熱地肌かぶりを抑えることができることがわかる。
これに対して酸性アミノ酸もしくは塩基性アミノ酸を用いた比較例の感熱記録材料は、70%にも満たない再発色能しか得られず、待機電蝕率も45%以上と高く、サーマルヘッドの電蝕を抑えにくいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層を設けると共に、該支持体、サーマルコート層及び該アンダーコート層のいずれか1つにアミノ酸を含み、かつ該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、前記アミノ酸が中性アミノ酸であることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
支持体上に、直接又はアンダーコート層を介して、少なくともロイコ染料と顕色剤を含むサーマルコート層を設け、更にサーマルコート層上にオーバーコート層を設けると共に、該支持体、該サーマルコート層、該アンダーコート層及び該オーバーコート層のいずれか1つにアミノ酸を含み、かつ該支持体に古紙パルプを含む感熱記録材料であって、前記アミノ酸が中性アミノ酸であることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項3】
前記中性アミノ酸の25℃における溶解度が15g/100gH2O以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
前記アンダーコート層がプラスチック球状中空粒子を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項5】
前記プラスチック球状中空粒子の中空率が80%以上であることを特徴とする請求項4に記載の感熱記録材料。
【請求項6】
前記のサーマルコート層、アンダーコート層及びオーバーコート層の少なくとも1層に結着剤としてジアセトン変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項7】
前記のサーマルコート層、アンダーコート層及びオーバーコート層の少なくとも1層に架橋剤としてヒドラジド化合物を含有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料の表面及び/又は裏面に印刷を施したことを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に粘着層を設けたことを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に熱によって粘着性が発現する感熱粘着層を設けたことを特徴とする剥離紙不要の感熱記録ラベル。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に磁気記録層を設けたことを特徴とする感熱記録券紙。
【請求項12】
少なくともロイコ染料と顕色剤を含む感熱記録材料の表面にサーマル記録ヘッドを押し当てて該ロイコ染料と該顕色剤との熱時溶融により両成分を接触させて発色反応をさせることにより記録を行う感熱記録方法であって、前記感熱記録材料が請求項1から7のいずれかに記載の感熱記録材料であることを特徴とする感熱記録方法。

【公開番号】特開2008−279673(P2008−279673A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126351(P2007−126351)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】