説明

感熱記録材料、感熱記録ラベル及び感熱磁気記録紙

【課題】 光照射による地肌部の変色を防ぐことのできる感熱記録材料及びそれを用いた感熱記録ラベル、感熱磁気記録紙の提供。
【解決手段】 支持体上にアンダーコート層、感熱発色層、オーバーコート層を順次設けた感熱記録材料において、該感熱発色層及び/又は該オーバーコート層に、水溶性又はエマルジョンの紫外線吸収性樹脂を含有させ、更に、該感熱記録材料がアンダーコート層、感熱発色層、オーバーコート層の少なくとも1つの層に塩基性化合物を含有せしめることを特徴とする感熱記録材料及びそれを用いた感熱記録ラベル、感熱磁気記録紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光による地肌部(非印字部)の変色が起こりにくい感熱記録材料、感熱記録ラベル及び感熱磁気記録紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙、合成紙、プラスチックフィルム等の支持体上に無色もしくは淡色のロイコ染料と該ロイコ染料を接触時発色させる顕色剤とを主成分とする感熱記録層を設け、該ロイコ染料と該顕色剤との間の熱、圧力等による発色反応を利用した記録材料は種々提案されている。
この種の感熱記録材料は現像、定着等の煩雑な処理を施す必要がなく、比較的簡単な装置で短時間に記録することができること、騒音の発生が少ないこと、更にコストが安いこと等の利点により、図書、文書などの複写に用いられるほか、電子計算機、ファクシミリ、発券機、ラベルプリンター、レコーダー、ハンディターミナル用などの記録材料として広く使用されている。
このような感熱記録体の用途の広がりによって、屋内屋外を問わず感熱記録紙が光にされされた状態で長期間保管されるケースが多くなってきた。例えば、衣類等の表示ラベルに対する商品陳列ケースでの蛍光灯照射や窓からの太陽光照射、部品管理用ラベルに対する倉庫内での蛍光灯の長期照射、更には、物流ラベルに対する屋外での太陽光照射などがある。
【0003】
これらの環境に感熱記録紙がさらされた場合、感熱記録紙を構成する薬品が光によって分解し、着色物を生成して色がつくという現象がおこる。中でも、ロイコ染料が光、特に紫外線によって分解し、着色物を生成し、感熱記録紙が黄色く変色する現象は顕著であり、感熱記録紙の大きな欠点の一つである。
ロイコ染料の光による分解は、酸素の関与した光酸化反応であることが知られており、これまでに多くの改善手段が提案されてきている。
その基本的な考え方は以下の方向性である。
(i)光の遮断(紫外線吸収剤、反射材による光の遮断)
(ii)酸素の遮断(酸素を通さない膜などによる酸素の関与を防ぐ)
(iii)酸化防止剤等(酸化防止剤、光安定剤等によるロイコ染料の光酸化反応の抑制)
これらの方向性のもとに、これまで多くの技術が光による地肌部の変色を抑制するために提案されてきている。
【0004】
例えば、(i)光の遮断に関しては、紫外線吸収剤を用いる例が、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7をはじめ多く提案されている。
通常これらの紫外線吸収剤は分散状態で粒子として存在することから、その吸収効率を向上させる目的で、紫外線吸収剤を高分子の構造中に取り込んだ紫外線吸収性樹脂(UVA樹脂)や、紫外線吸収剤を液体状態(例えば、有機溶剤中に溶解した状態又は、液状の紫外線吸収剤)でマイクロカプセルに内包させる紫外線吸収剤マイクロカプセル(UVAマイクロカプセル)などが提案されており、紫外線吸収剤の吸収効率を高くするための技術開発が進められてきている。
【0005】
この中で、紫外線吸収性樹脂に関しては、例えば特許文献8、特許文献9、特許文献10において、水溶性又はエマルジョン状態のUVA樹脂を感熱記録材料の各層に展開することが提案されている。また、同様に特許文献11、特許文献12、特許文献13においても感熱記録材料の保護層へのUVA樹脂の展開が提案されている。
更に、UVA樹脂によって無機顔料(フィラー)の表面をコートして用いる技術が、特許文献14、特許文献15において提案されている。また、最近においては、UVA樹脂自身を構成するモノマー種に特徴を持たせたUVA樹脂及び、そのUVA樹脂と各種材料(添加剤、支持体=紙等)との組合せ技術が、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20などによって提案されている。
また、同様に、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27などにおいてもUVA樹脂を展開する感熱記録材料側の用途面との組み合わせ(例えば、繰返し記録)などが、継続的に提案されてきている。一方、UVAマイクロカプセルについても同様に特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32、特許文献33、特許文献34、特許文献35等をはじめ多数の提案がなされている。
【0006】
このようにUVA樹脂やUVAマイクロカプセルに関する技術が継続的に提案されつづけるのは、その紫外線吸収効率の高さとその結果として得られる感熱記録紙の非画像部(地肌部)の光による変色防止効果の大きさによるものであるが、その実用展開に関しては各種の課題が存在している。
例えば、UVA樹脂は樹脂状態である為に、従来の感熱記録材料を構成している樹脂材料と同じ展開が可能であるが、UVA樹脂の構造に起因する特性やUVA樹脂を構成する添加剤等の影響による感熱品質への影響などが従来の結着剤としての樹脂材料と大きく異なる為に紫外線吸収機能と別の技術課題が存在している。
一方、UVAマイクロカプセルにおいては、カプセル内に内包された紫外線吸収剤をカプセル壁材によって確実に遮断されている為に、内包物が感熱記録材料の品質面に与える影響をなくすことが可能であるが、マイクロカプセルとしての層形成によって、サーマルヘッドから与えられたエネルギーの消失(ロス)などの発色特性への影響が存在しており、展開上の課題を抱えている。
また、紫外線吸収剤による紫外光の遮断だけでなく、他にも光による感熱記録材料の変色を防ぐ考え方は存在しており、(ii)酸素の遮断に関しては、膨潤性雲母を用いることで、酸素透過率を低くする技術が、特許文献36、特許文献37、特許文献38、特許文献39、特許文献40、特許文献41などで提案されている。また、樹脂層として酸素透過率を制御することが特許文献42で提案されている。
【0007】
更に(iii)にある酸化防止剤、光安定剤に関してもヒンダードアミン、ヒンダードフェノールをはじめとする非常に多くの材料を感熱記録材料に用いることが提案されており、その一例として以下のものを挙げることができる。特許文献43、特許文献44、特許文献45、特許文献46、特許文献47、特許文献48、特許文献49、特許文献50、特許文献51、特許文献52、特許文献53、特許文献54、特許文献55、特許文献56、特許文献57、特許文献58、特許文献59など多数存在する。また、紫外線吸収剤と同様に酸化防止剤を含む高分子化合物も提案されており、特許文献60、特許文献61、特許文献62などが存在する。
しかしながら、光による非画像部(地肌部)の変色を防ぐという機能においては、前記紫外線吸収剤を樹脂状態またはマイクロカプセル状態で存在させた場合の効果が最も大きく、感熱記録紙の欠点である非画像部(地肌部)の光による変色を改良するという点において、非常に有効な技術である。
そこで、我々はUVA樹脂及びUVAマイクロカプセルについて感熱記録材料に展開してゆく技術検討を行なった結果、実用的な技術としてUVA樹脂の展開を選定するとともに、その感熱記録材料への展開において問題となる非画像部(地肌部)の光以外の要因による変色(発色)をコントロールする技術開発を進め後述する技術を獲得するに至った。
【0008】
【特許文献1】特開2002−137544号公報
【特許文献2】特開2002−311132号公報
【特許文献3】特開2000−178263号公報
【特許文献4】特開2000−178276号公報
【特許文献5】特開平11−180041号公報
【特許文献6】特開平10−036371号公報
【特許文献7】特開10−278434号公報
【特許文献8】特開平07−179046号公報
【特許文献9】特開平07−156548号公報
【特許文献10】特開平07−137453号公報
【特許文献11】特開平09−071046号公報
【特許文献12】特開平09−234957号公報
【特許文献13】特開平10−044602号公報
【特許文献14】特開平11−148069号公報
【特許文献15】特開平11−148070号公報
【特許文献16】特開2001−039028号公報
【特許文献17】特開2001−054978号公報
【特許文献18】特開2001−096917号公報
【特許文献19】特開2001−150810号公報
【特許文献20】特開2001−162938号公報
【特許文献21】特開2000−185470号公報
【特許文献22】特開2000−001052号公報
【特許文献23】特開2002−337456号公報
【特許文献24】特開2002−002109号公報
【特許文献25】特開2003−039834号公報
【特許文献26】特開2003−054131号公報
【特許文献27】特開2003−266937号公報
【特許文献28】特開2000−033777号公報
【特許文献29】特開平09−001937号公報
【特許文献30】特許第3094831号公報
【特許文献31】特許第3334347号公報
【特許文献32】特許第3094596号公報
【特許文献33】特許第3094623号公報
【特許文献34】特許第3136734号公報
【特許文献35】特許第3094609号公報
【特許文献36】特開2003−320753号公報
【特許文献37】特開2002−331754号公報
【特許文献38】特開2003−300383号公報
【特許文献39】特開2000−177244号公報
【特許文献40】特開平11−034495号公報
【特許文献41】特開平11−005366号公報
【特許文献42】特開平10−024657号公報
【特許文献43】特開平03−087288号公報
【特許文献44】特開平10−258575号公報
【特許文献45】特開平06−192578号公報
【特許文献46】特開昭62−173282号公報
【特許文献47】特開昭62−039281号公報
【特許文献48】特開平08−244357号公報
【特許文献49】特開2003−154756号公報
【特許文献50】特開平06−072039号公報
【特許文献51】特開平06−072038号公報
【特許文献52】特開平10−129119号公報
【特許文献53】特開平10−129118号公報
【特許文献54】特開平11−157220号公報
【特許文献55】特開2002−254827号公報
【特許文献56】特開平10−193804号公報
【特許文献57】特開平09−300824号公報
【特許文献58】特許第3486001号公報
【特許文献59】特開平08−258430号公報
【特許文献60】特開2003−118234号公報
【特許文献61】特開平07−061144号公報
【特許文献62】特開平07−025141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光照射による地肌部の変色を防ぐことのできる感熱記録材料及びそれを用いた感熱記録ラベル、感熱磁気記録紙又は感熱記録フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、支持体上にアンダーコート層、感熱発色層、オーバーコート層を順次設けた感熱記録材料において、該感熱発色層及び/又は該オーバーコート層に、水溶性又はエマルジョンの紫外線吸収性樹脂を含有させ、更に、該感熱記録材料がアンダーコート層、感熱発色層、オーバーコート層の少なくとも1つの層に塩基性化合物を含有せしめることを特徴とする感熱記録材料に関する。
本発明の第2は、塩基性化合物が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料に関する。
本発明の第3は、塩基性化合物が、ヒンダードアミン化合物であることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料に関する。
本発明の第4は、ヒンダードアミン化合物が、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(化合物1)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(化合物2)、下記構造式(1)の化合物(化合物3)及び下記構造式(2)の化合物(化合物4)の少なくとも1種を含有させることを特徴とする請求項3記載の感熱記録材料に関する。
【化3】

【化4】

本発明の第5は、塩基性化合物として炭酸カルシウムとヒンダードアミン化合物の両者を含有することを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料に関する。
本発明の第6は、感熱発色層中に含まれるロイコ染料が、3−N−エチル−N−p−トリル−6−メチル−7−アニリノフルオランであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感熱記録材料に関する。
本発明の第7は、感熱記録材料の支持体が合成樹脂フィルムであることを特徴とする感熱記録材料に関する。
本発明の第8は、請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に粘着剤を塗布し剥離紙を貼り合わせたことを特徴とする感熱記録ラベルに関する。
本発明の第9は、請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に加熱によって粘着性を発現する感熱粘着層を設けたことを特徴とする剥離紙を必要としない感熱記録ラベルに関する。
本発明の第10は、請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料のオーバーコート層上にシリコーン樹脂層を設けることを特徴とする剥離紙を必要としない感熱記録ラベルに関する。
本発明の第11は、請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面にバックコート層を設けることを特徴とする感熱記録ラベルに関する。
本発明の第12は、請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に磁気記録層を設けた感熱磁気記録紙に関する。
【0011】
本発明において用いる水溶性又はエマルジョン形態の紫外線吸収性樹脂(UVA樹脂)は、紫外線吸収性を有する化合物(UVA)を高分子構造中に含有するものを水溶性に加工又は、疎水性の場合にはエマルジョン加工したものであり、樹脂を構成するモノマー種、樹脂中に含まれるUVA構造に関しては特に限定していない。この場合のUVA構造部については、以下の紫外線吸収性を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤及び、これらの紫外線吸収剤の2量体、3量体等の多量体化合物以下のものを挙げることができる。具体的には、
フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤。
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤。
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2(2′−ヒドロキシ−5′−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤などである。
【0012】
しかしながら、本発明において用いているUVA樹脂を得るにあたっては、通常、UVA構造を有するモノマーを用いて重合することでUVA樹脂を生成することが容易である。従って、以下のUVAモノマー種を用いることが望ましく、このようなUVAモノマーとしては下記一般式(5)、一般式(6)のような構造を一般的な化合物として挙げることができる。
【化5】

【化6】

(上記一般式(5)及び(6)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは直接結合又はメチレン基、Aは直接結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、Rは直接結合又は炭素原子数1から10のアルキレン基、RおよびRは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基を示す。)
【0013】
更に、これらの一般式(5)、一般式(6)に関しては、UVA構造部の安全性等の関係から、2−(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール構造を有する一般式(5)記載の化合物が好ましく、その具体例としては下記化学式(7)で表されるUVAモノマー(商品名=大塚化学性RUVA−93)を一例として挙げることができる。
【化7】

本発明においては、このようなUVAモノマーを他の重合性モノマーと重合させることでアクリル系、アクリルウレタン系をはじめとするUVA樹脂を生成することができる。
本発明においては、これらのUVA樹脂を水溶化又は、エマルジョン化することで感熱記録材料に展開可能なUVA樹脂とすることができる。
この場合、エマルジョン化においては各種乳化剤の存在下で乳化することができるが、水溶化する場合には、例えばアクリル酸モノマーをUVA樹脂を重合する際のモノマー成分として存在させ、更に、アクリル酸部位を例えばアンモニウムやアミン類等の塩基性物質で中和して塩化することで水溶性状態を実現することができる。
【0014】
しかしなから、このようにして生成したUVA樹脂はその分子構造においてフェノール性OH基を持っていることから、これらを樹脂状態で感熱記録材料に用いた場合、発色層に含まれるロイコ染料を発色させてしまい、非画像部(地肌部)安定性を低下させることになる。
この傾向は、特に熱及び/又は湿度がかかった条件下において顕著になり、光による非画像部の着色防止をUVA樹脂によって実現する際に大きな問題となるものである。
また、このようなUVA構造を含む樹脂として存在している為に、従来のUVA化合物を分散粒子の状態で使用していた場合に比べて、非画像部の発色与える影響も大きくなっており、光による変色を防ぐ為の優れた効果を得ることと背反した関係になっている。
このようなUVA樹脂においてロイコ染料を発色させてしまう性質を有する構造(フェノール性OH)を除去することも可能であるが、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が安定に優れた紫外線吸収機能を発現する為にこのフェノール性OH基が関与していることから、フェノール性OH基をなくすことは、紫外線吸収剤としての機能を大幅に低下させることとなり、光による変色を防止するという本来の目的を逸脱する方向である。
【0015】
一方、感熱発色層中のロイコ染料とUVA樹脂を接触しないようにすることもロイコ染料の熱や湿度による発色を防止する為の方法の一つであるが、この場合には、層構成の複雑化や、ロイコ染料のマイクロカプセル化などの隔離策をとることとなり、感熱記録材料を作製する際の障害が大きく現実的ではない。また、発色材料に対して隔離の為の加工を施すことになるので、その発色特性の低下を伴うことからも有効な手段とは言えない。
本発明は、このような状況においてUVA樹脂を有効に使用する際に、感熱発色層中のロイコ染料が熱や湿度によって発色してしまうという不具合に対して塩基性物質を有効に使用することで改善し、しかもUVA樹脂による光による変色防止と発色特性を両立させるものである。
本発明において用いる塩基性物質としては、無機化合物、有機化合物としての塩基性物質を用いることができ、無機化合物としての塩基性物質としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等を挙げることができるが、中でも炭酸カルシウムが優れている
一方、有機化合物としての塩基性化合物としては、アミン系化合物である以下の化合物を挙げることができる。
ブチルアミン、イソブチルアミン、エチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミンなどの1級アミン化合物。ピペリジン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジンなどの2級アミン化合物。これらの1級アミン及び2級アミンには液体状態で存在するものであるが、感熱記録材料の塗工層において塗工成分中に染込んだ状態で保持されることで添加が可能である。
更に、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、トリフェニルアミン誘導体(例:アデカアークルーズTPAシリーズ)、ピラゾール誘導体(例:アデカアークルーズPZシリーズ)、
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(化合物1)(アデカスタブLA−52、アデカアークルーズDN−44M)、
テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(化合物2)(アデカスタブLA−57)、
前記構造式(1)の化合物(化合物3)(アデカスタブLA−63P)、
前記構造式(2)の化合物(化合物4)(アデカスタブLA−68LD)、
下記構造式(8)の化合物(アデカスタブLA−77)、
下記構造式(9)の化合物(アデカスタブLA−87)等のヒンダードアミン化合物。
更に液体状態であるが、前記(化合物1)、(化合物2)と類似構造を有する液体状態のヒンダードアミン化合物である下記構造式(10)の化合物(アデカスタブLA−62)、下記構造式(11)の化合物(アデカスタブLA−67)であらわされるヒンダードアミン化合物なども挙げることができる。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

これらの有機化合物の中では、ヒンダードアミン系化合物は、塩基性物質として熱や湿度に対する非画像部の発色を抑えるとともに、感熱発色層に対する発色阻害もなく優れた特性を発現することができる。更に、これらのヒンダードアミン系化合物は、光安定剤としての機能を持ち合わせていることから、光による非画像部の変色にたいしてもUVA樹脂と相乗効果を発現することができ、非画像の各種環境下における信頼性を著しく向上させることができる。これらの中でも特に化合物(1)〜(4)の化合物がよりいっそう好ましい。
【0016】
本発明の感熱記録材料は、前記UVA樹脂及び塩基性物質以外の各種化学物質を適宜用いることによって構成されており、それらの具体例を以下に列挙する。
本発明において保護層(オーバーコート層)に用いる水溶性樹脂の具体例としては、以下に示すものを上げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ポリビニルアルコール、変成ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタアクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アリカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アリカリ塩、ポリアクリルアミド、変成ポリアクリルアミド、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変成ポリエチレン、ポリビニルアルコール/アクリルアミドブロック共重合体、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子。これらの中で、ポリビニルアルコールが優れており、その中でもジアセトン変性型のポリビニルアルコールが優れている。
次に、前記水溶性樹脂と反応することのできる架橋剤の具体例を示すが、架橋剤についてもこれらに限定されるものではない。
この場合の架橋剤(硬化剤)としては、前記水溶性樹脂と反応することで、水溶性樹脂の水への溶解性を低下させることができるものであればよく、例えば、グリオキザール誘導体、メチロール誘導体、エピクロルヒドリン誘導体、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン及びヒドラジド誘導体等が挙げられる。
【0017】
また、本発明における感熱発色層は熱によって発色する機能を有するものであり、その発色システムの一例としては、塩基性色素前駆体(ロイコ染料)と酸性物質(顕色剤)との発色反応を挙げることができる。この場合、用いられる塩基性色素前駆体(ロイコ染料)は単独又は、2種以上混合して用いることができるが、このようなロイコ染料としては、感熱材料に適用されているものを任意に用いることが可能であり、例えば、次のようなものが挙げられる。
3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(P−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−p−トリル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−ヘキシル−N−イソアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−フラニルメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチル−N−ブチルアミノ−7−(2′−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ピロジリル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2′−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(2′−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2′,4′−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ブチルアミノ−7−(2′−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エトクシエチル−7−アニリノフルオラン等。
これらの中で、3−N−エチル−N−p−トリル−6−メチル−7−アニリノフルオランは、それ自身が光に対する着色が発生しにくく、更に熱や光による発色も起こりにくいことから、本発明の技術を展開することで非常に高い機能を発現できる点で優れている。
【0018】
また、前記ロイコ染料を発色させる顕色剤化合物としては、以下のものを挙げることができる。
4,4′−イソプロピリデンビスフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビスフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(2−ブチルフェノール)、p−ニトロ安息香酸亜鉛、1,3,5−トリス(4−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2−(3,4−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルスルフィド)、4−〔β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ〕サリチル酸、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、フタル酸モノベンジルエステルモノカルボン酸、4,4′−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−ブチル−2−メチル)フェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシル)ブタン、4,4′−チオビス(6−ブチル2−メチルフェノール)4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−イソプロピルオキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジフェノールスルホキシド、p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N−ジ(m−クロロフェニルチオ尿素)、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2′−ジアリル−4,4′−ジフェノールスルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエン、4,4′−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−クロロフェノール)等。
更に、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンをエーテル結合等の連結基を介して重合させたオリゴマータイプの顕色剤を始め、各種オリゴマータイプの化合物などもあげることができる。
また、感熱発色層中におけるロイコ染料と顕色剤との比は、0.5〜10部、好ましくは、1〜5部(部は何れも重量比率)の範囲で用いるのが好ましい。
【0019】
また、感熱発色層においては、感度向上剤及び、種々の熱可融性物質を単独又は2種以上混合して利用することができる。
その具体例としては以下のものが挙げられる。
ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド等のN−置換アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド等のビス脂肪酸アミド類、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、p−ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチル、ジフェニルカーボネート、テレフタル酸ベンジル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジルオキシナフタレン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシエタン)、1,4−ジフェノキシ−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ジフェニルチオブタン、1,4−ジフェニルチオ−2−ブテン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−ベンジルオキシベンジルアルコール、1,3−フェノキシー2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、1,2ビス(4−メトキシフェノキシ)プロパン、1,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−オキサペンタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4−クロロベンジル)等。
【0020】
また、本発明の感熱記録材料を作製するにあたっては、上記の顕色剤、ロイコ染料、熱可融物質以外にも、感熱記録材料を構成するのに慣用的に用いられる各種材料を適宜用いることができる。
それらの例としては、例えば感熱記録層中において各種材料を支持体等の上に結着させるための結着剤があり、それらは単独又は、2種以上混合して用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
ポリビニルアルコール、変成ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタアクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アリカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アリカリ塩、ポリアクリルアミド、変成ポリアクリルアミド、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変成ポリエチレン、ポリビニルアルコール/アクリルアミドブロック共重合体、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水
溶性高分子。ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン等が挙げられる。
これらは、単独もしくは混合して使用され、更に、必要に応じて架橋剤(硬化剤)を添加して硬化させてもよい。
この場合の架橋剤(硬化剤)としては、結着剤と反応するもので、例えば、グリオキザール誘導体、メチロール誘導体、エピクロルヒドリン誘導体、エポキシ化合物、アジリジン化合物等が挙げられる。
【0021】
また、感熱記録材料中に単独又は2種以上混合して用いられる顔料の具体例としては以下のものが挙げられる。
シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク、表面処理されたシリカ等の前記無機系微粉末、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、スチレン/アクリル共重合体、プラスチック球状中空微粒子などの有機系の微粉末が挙げられる。
更に本発明の感熱記録材料の保護層においては、前記樹脂、架橋剤以外の顔料、滑剤(熱可融性物質)を用いることができるが、これらについては前記の顔料、結着剤、架橋剤、滑剤(熱可融物質)を各々単独又は、2種以上混合して用いることができる。
【0022】
また、支持体と感熱発色層の間に中間層を設けているが、この場合の中間層を構成する顔料、結着剤としては、前記の顔料、結着剤を各々単独又は2種以上混合して用いることが可能である。
この場合の顔料の一例である熱可塑性中空樹脂粒子とは、例えば、熱可塑性高分子を殻とし、内部に空気その他の気体を含有するもので、すでに発泡状態となっている球状中空微粒子である。
この熱可塑性中空樹脂粒子の中空率は、中空粒子の外径と内径の比であり下記式で表示されるものである。
中空率(中空度)(%)=(中空粒子の内径/中空粒子の外径)×100
プラスチック球状中空微粒子はアクリル酸エステル、アクリロニトリルなどのアクリル系樹脂や、スチレンなどのスチレン樹脂あるいはそれらの共重合樹脂、アクリロニトリル及び/又はメタアクリロニトリル及び/又はアクリル酸エステル及び/又メタクリル酸エステルの共重合体、ビニル基を一分子当たり2個以上有するビニルモノマー及び/又はジビニルベンゼンを含有するモノマーからなる共重合体などから作ることができる。
【0023】
更に、本発明の感熱記録材料においては、支持体の裏面に顔料、樹脂、架橋剤等を主成分とするバック層を設けることも可能である。
この場合にも顔料、結着剤、滑剤としては前記の顔料、結着剤、滑剤(熱可融物質)が用いられる。
また、支持体としては、通常の紙(酸性紙、中性紙)以外にも、塗布加工可能なものを任意に用いることが可能であり、例えば、合成紙、高分子フィルム等が挙げられる。
なお、本発明の感熱記録材料を得るにあたっては、前記以外にもこの種の感熱記録材料に慣用される添加成分、例えば、界面活性剤、圧力発色防止剤等を併用することができる
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光照射による地肌部の変色を防ぐことのできる感熱記録材料及びそれを用いた感熱記録ラベル、感熱磁気記録紙又は感熱記録フィルムを提供することができた。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0026】
<実施例・比較例サンプルの調製>
各層(感熱発色層、中間層、保護層)の塗布液の調整
アンダーコート層塗布液(U液)の調整
次に、下記組成の混合物を混合攪拌分散してアンダーコート層塗布液[U液]を調整した。
[U液]固形分10%
プラスチック球状中空粒子(中空率90%、固形分40%) 25部
スチレン/ブタジエン共重合ラテックス(固形分濃度47.5%) 15部
水 131部
感熱発色層塗布液(T液)の調整
下記組成よりなる混合物を磁性ボールミルで分散し[A液]〜[C液]を調製する。
[A液]=ロイコ染料分散液
表−1記載のロイコ染料 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 30部
[B液]=顕色剤分散液
4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 30部
[C液]=顔料分散液
ニ酸化ケイ素粉末 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 30部
〔T液〕固形分10%
A液:B液:C液:水=1:3:3:7の混合物。
【0027】
オーバーコート層塗布液(O液)の調整
次に、下記組成の混合物を混合攪拌分散して保護層塗布液[O液]を調整した。
[O液] 固形分10%
無機顔料分散液(固形分:20%) 50部
ステアリン酸亜鉛(固形分:10%) 10部
水溶性樹脂(固形分:10%水溶液) 100部
架橋剤(固形分:10%水溶液) 20部
水 50部
上記のようにして調整した塗布液を用いて市販の上質紙(坪量60g/m)の表面にアンダーコート層形成液を乾燥重量が3g/mとなるように塗布乾燥してアンダーコート層塗布済み紙を得た。次いで、感熱発色層形成液をロイコ染料の乾燥重量が0.5g/mとなるように塗布乾燥して感熱発色層塗布済み紙を得た。更に、その上にオーバーコート層(保護層)塗布液を乾燥重量が3.0g/mとなるようにして塗布乾燥し、40℃環境下に15時間保管した後、20kg/cmの圧力でキャレンダー処理して本発明の感熱記録材料を得た。
尚、上記基本処方系をベースにして、UVA樹脂、塩基性物質を添加して本発明の感熱記録材料を作製する場合には、下記添加成分(UVA樹脂、塩基性物質)を基本処方に対して添加して対応することとする。この場合の塗工層の付着量については、添加成分の量に応じて各層の全付着量を適宜増やすこととする。本発明の効果を示す実施礼及び比較例の構成については、表1に示す。
【0028】
UVA成分の添加
〔UVA1〕
山南合成化学製WF−825(水溶性のUVA樹脂) 全固形分30%(UVA固形分 9%)
〔UVA2〕
新中村化学製ニューコートUVA−204W(水系エマルジョン系のUVA樹脂) 全固形分20%(UVA固形分 9%)
〔UVA3〕/前記〔C液〕と同様にして得られた分散液
RUVA−93水分散液 (UVA1、UVA2に含まれるUVAモノマー自身)UVA固形分20%
これらのUVA1〜UVA3については、UVA成分としての添加量が乾燥後付着量として0.5g/mになるように各層塗工液に添加調合後に塗布乾燥することとする。
塩基性成分の添加
塩基性物質についても前記UVA成分と同様に添加する各層の塗工液中に表1記載の塩基性物質を添加する。
この場合の添加量は、塩基性物質としての乾燥後付着量が0.5g/mとなるように各層塗工液に添加調合後に塗布乾燥することとする。尚、塩基性物質の分散液については、前記〔C液〕と同様にして調製した。
【0029】
【表1】

添加層:OC(オーバーコート層)、TC(感熱発色層)、UC(アンダーコート層)
Dye1:3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
Dye2:3−N−エチル−N−p−トリル−6−メチル−7−アニリノフルオラン
【0030】
前記表−1に示した実施例及び比較例のサンプルに対して以下の項目の評価を実施した。
(発色濃度)
熱傾斜試験機を用いて、200−110℃の温度範囲において10℃きざみで熱ブロックによる印字(2kgf/cm 1秒)を行ない、最大発色濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
(非画像部耐熱性)
試験片を80℃(DRY)の恒温恒湿槽の中で15時間保管し、保管後の非画像部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。但し、実施例18,19及び比較例8については、温度条件を90℃にて試験を実施した。
(非画像部耐湿性)
試験片を40℃−90%RHの恒温恒湿槽の中で15時間保管し、保管後の非画像部の濃度をマクベス反射濃度計で測定した。
(非画像部耐光性)
東洋精機製のウエザオメーターを用いて試験片にキセノン光を12時間照射した後の非画像部の色彩値をミノルタ製分光測色計CM−3700dにて測定し、そのb*値を求めた。
これらの評価結果を下記表2に示す。
【0031】
【表2】

表2の結果より、本発明の感熱記録材料は非画像部(地肌部)の耐光性をUVA樹脂の展開によって改善するとともに、この際に問題となる非画像部の熱や湿度による発色の発生を大幅に改善したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にアンダーコート層、感熱発色層、オーバーコート層を順次設けた感熱記録材料において、該感熱発色層及び/又は該オーバーコート層に、水溶性又はエマルジョンの紫外線吸収性樹脂を含有させ、更に、該感熱記録材料がアンダーコート層、感熱発色層、オーバーコート層の少なくとも1つの層に塩基性化合物を含有せしめることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
塩基性化合物が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
【請求項3】
塩基性化合物が、ヒンダードアミン化合物であることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
【請求項4】
ヒンダードアミン化合物が、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(化合物1)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(化合物2)、下記構造式(1)の化合物(化合物3)及び下記構造式(2)の化合物(化合物4)の少なくとも1種を含有させることを特徴とする請求項3記載の感熱記録材料。
【化1】

【化2】

【請求項5】
塩基性化合物として炭酸カルシウムとヒンダードアミン化合物の両者を含有することを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
【請求項6】
感熱発色層中に含まれるロイコ染料が、3−N−エチル−N−p−トリル−6−メチル−7−アニリノフルオランであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感熱記録材料。
【請求項7】
感熱記録材料の支持体が合成樹脂フィルムであることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に粘着剤を塗布し剥離紙を貼り合わせたことを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に加熱によって粘着性を発現する感熱粘着層を設けたことを特徴とする剥離紙を必要としない感熱記録ラベル。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料のオーバーコート層上にシリコーン樹脂層を設けることを特徴とする剥離紙を必要としない感熱記録ラベル。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面にバックコート層を設けることを特徴とする感熱記録ラベル。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の感熱記録材料の裏面に磁気記録層を設けた感熱磁気記録紙。

【公開番号】特開2006−255901(P2006−255901A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72310(P2005−72310)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】