説明

感熱記録材料

【課題】非水系インクを用いたインクジェットマーキングシステムにおいて、高い溶剤バリア性を有しながら、耐インク滲み性に優れた感熱記録材料を提供する。
【解決手段】支持体上に、少なくとも電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体、及び加熱時反応して染料前駆体を発色させる電子受容性化合物とを含有する感熱発色層と感熱発色層上に保護層を設けた感熱記録材料において、保護層中にエポキシ化脂肪酸アミドを含有させることにより、非水系インクを用いたインクジェットマーキングシステムにおいて、高い溶剤バリア性を有しながら、耐インク滲み性に優れた感熱記録材料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系インクを用いたインクジェットマーキングシステムにおいて、高い溶剤バリア性を有しながら、耐インク滲み性に優れた保護層を有する感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体、並びに電子受容性化合物とを主成分とする感熱発色層を設けたものであり、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光等で加熱することにより、染料前駆体と電子受容性化合物とが瞬時反応し記録画像が得られるものである。このような感熱記録材料は、比較的簡単な装置で記録が得られ、保守が容易なこと、騒音の発生がないこと等の利点があり、計測記録計、ファクシミリ、プリンター、コンピューターの端末機、ラベル印字機、乗車券やチケット類の発券機等広範囲の分野に利用されている。
【0003】
特に近年は、各種乗車券やチケット類等の換金性の高い用途にも感熱記録材料が用いられるようになってきており、高い熱応答性と高い保存安定性が要求されるだけでなく、各種印刷適性や偽造防止のための処理に対する適性が要求されてきている。
【0004】
最近では感熱記録材料の感熱記録面側に数量管理や偽造防止を目的として、予めナンバリングをオンデマンドに記録する要望が高まっており、インクジェットマーキングシステム等のドロップマーキングが施されている。これらの印字システムにおいて、記録した文字や画像の保存性の高さから、溶剤インクや紫外線や電子線等の活性光線硬化型の非水系インクが用いられる場合がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
これまでにも感熱記録紙の上層にインクジェット記録層を設けて、感熱記録性とインクジェット記録性を併せて付与した感熱記録シートが開示されている(例えば特許文献3)。しかしながら、前記公報に記載されている感熱記録シートのインクジェット記録層は、一般的な水系インクの受容性を付与したものであり、溶剤インクや活性光線硬化型の非水系インクに対する適性は十分とは云えない。
【特許文献1】特開2004−175906号公報
【特許文献2】特開2005−239848号公報
【特許文献3】特開2002−137534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、非水系インクを用いたインクジェットマーキングシステムにおいて、高い溶剤バリア性を有しながら、耐インク滲み性に優れた感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、課題を解決することができる本発明の感熱記録材料を発明するに到った。即ち、少なくとも電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体、及び加熱時反応して該染料前駆体を発色させる電子受容性化合物とを含有する感熱発色層と感熱発色層上に保護層を設けた感熱記録材料において、保護層中にエポキシ化脂肪酸アミドを含有することを特徴とする感熱記録材料である。
【0008】
好ましくは前記保護層中に含有されるエポキシ化脂肪酸アミドが下記一般式1で表される化合物であることを特徴とする感熱記録材料である。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R1、R2はそれぞれ炭素数5から39の炭化水素基を表し、mは1から6の整数、nは2から5の整数を表す。
【0011】
さらに好ましくは、式中、R1、R2がそれぞれ炭素数7から30のアルキル基であることを特徴とする感熱記録材料である。
【発明の効果】
【0012】
支持体上に、少なくとも電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体、及び加熱時反応して染料前駆体を発色させる電子受容性化合物とを含有する感熱発色層と感熱発色層上に保護層を設けた感熱記録材料において、保護層中にエポキシ化脂肪酸アミドを含有させることにより、非水系インクを用いたインクジェットマーキングシステムにおいて、高い溶剤バリア性を有しながら、耐インク滲み性に優れた感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の内容を更に具体的に説明する。本発明の感熱記録材料は、支持体上に少なくとも電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体、及び加熱時反応して染料前駆体を発色させる電子受容性化合物とを含有する感熱発色層と感熱発色層上に保護層を設けた感熱記録材料において、保護層中にエポキシ化脂肪酸アミドを含有させたものである。
【0014】
本発明に用いる支持体としては、紙が主として用いられるが、紙の他に各種織布、不織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、蒸着シート、或いはこれらを貼り合わせ等で組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。
【0015】
本発明に係わる感熱発色層は、少なくとも電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体、及び加熱時反応して染料前駆体を発色させる電子受容性化合物(顕色剤)とを含有し、必要に応じて、結着剤、増感剤、添加剤、顔料、滑剤等を含有させることができる。
【0016】
本発明で使用される通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体としては、一般の感圧記録紙、感熱記録紙等に用いられる公知の物質であれば特に制限されない。以下、具体的な例を挙げるが、これらに制限されるものではない。
(1)トリアリールメタン系化合物
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチル−アミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等。
【0017】
(2)ジフェニルメタン系化合物
4,4´−ビスジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等。
【0018】
(3)キサンテン系化合物
ローダミンB−アニリノラクタム、ローダミンB−p−ニトロアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロル)アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−4−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−4−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェニチルフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(2−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン等。
【0019】
(4)チアジン系化合物
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等。
【0020】
(5)スピロ系化合物
3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3´−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスピロ−ジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)−スピロピラン、3−n−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等が挙げられる。上記の電子供与性染料前駆体は単独もしくは2種以上併用して用いることができる。
【0021】
また上記の電子供与性染料前駆体を樹脂加工した樹脂加工染料前駆体を用いることができる。樹脂加工染料前駆体としては、(1)ビニル単量体を重合して得られる発色調節層により染料前駆体粒子表面を被覆された樹脂被覆染料前駆体、あるいは(2)ポリウレア、ポリウレタンより選ばれた少なくとも1種の樹脂と染料前駆体とからなる複合粒子等が挙げられる。(1)の樹脂被覆染料前駆体は微細に分散された染料前駆体の各々が固体状で樹脂被覆されたもので、被覆度合いにより、発色感度を自由に調節することができる。(2)の複合粒子は熱応答性の良いポリウレア、ポリウレタンを染料前駆体と一体となしながら重合したもので、(1)の樹脂被覆染料前駆体と同様に発色感度を調節することができる。これらの樹脂加工染料前駆体は上記電子供与性染料前駆体と併用して用いることができ、それぞれの発色色調を変えることにより、多色感熱記録材料を得ることが可能である。
【0022】
本発明に係わる感熱発色層に用いられる電子受容性化合物としては、一般に感圧記録紙又は感熱記録紙に用いられる酸性物質に代表される化合物であれば特に制限されない。例えば、粘土物質、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、N,N´−ジアリールチオ尿素誘導体、アリールスルホニル尿素誘導体、ウレアウレタン誘導体、有機化合物の亜鉛塩等の多価金属塩、ベンゼンスルホンアミド誘導体等を挙げることができる。
【0023】
前記電子受容性化合物の具体的な例としては、酸性白土、活性白土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン等の粘土物質、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4´−メチルジフェニルスルホン、2−ヒドロキシ−4´−メチルジフェニルスルホン、4−アリルオキシ−4´−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4´−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4´−プロポキシジフェニルスルホン、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3´−ジアリル−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール、2,4−ビス(フェニルスルホニル)−5−メチルフェノール、4−ヒドロキシ−4´−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4´−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、4−ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、N−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−2−[(4−ヒドロキシフェニル)チオ]アセトアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[(4−ヒドロキシフェニル)チオ]アセトアミド、N−(ベンゼンスルホニル)−N´−(3−ベンゼンスルホニルオキシフェニル)尿素、N−(p−トルエンスルホニル)−N´−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素、N−(p−エチルベンゼンスルホニル)−N´−(3−p−エチルベンゼンスルホニルオキシフェニル)尿素、4,4´−[オキシビス(エチレンオキシ−p−フェニレンスルホニル)]ジフェノール、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4´−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸クロロベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、ノボラックフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、安息香酸、サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ノニルサリチル酸、3,5−ジドデシルサリチル酸、3−メチル−5−tert−ドデシルサリチル酸、5−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−メチル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、4−(ブチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸、4−(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸、4−(デシルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸、酒石酸、シュウ酸、ホウ酸、クエン酸、ステアリン酸等、及びこれらの亜鉛、ニッケル、アルミニウム、カルシウム等の金属塩等が挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明において電子受容性化合物と電子供与性染料前駆体の比率は、質量比で0.5:1〜10:1の範囲が好ましく用いられる。更に好ましくは、1:1〜5:1の範囲である。
【0025】
本発明に係わる感熱発色層は、その熱応答性を向上させるために、増感剤として熱可融性物質を含有させることができる。この場合、60℃〜180℃の融点を持つものが好ましく、特に80℃〜140℃の融点を持つものがより好ましく用いられる。
【0026】
具体的には、ステアリン酸アミド、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、4−アセチルビフェニル、2,2´−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α、α´−ジフェノキシキシレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4−クロルベンジル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジルエステル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、ジフェニルスルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類等、公知の熱可融性物質が挙げられる。これらの化合物は単独もしくは2種以上併用して使用することもできる。また、十分な熱応答性を得るためには、感熱発色層の総固形分中、熱可融性物質が5〜50質量%を占めることが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる画像保存剤としては、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4´−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)の少なくとも1種が特に好ましく用いられる。
【0028】
上記画像保存剤と必要に応じて併用して、その他のヒンダードフェノール系化合物、又はヒンダードアミン系化合物、リン酸エステル誘導体、あるいはベンゾトリアゾール誘導体を用いることができる。
【0029】
必要に応じて併用されるヒンダードフェノール系化合物の具体的な例としては、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3−トリス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−フェニル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3,3−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,5,5−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、1,1,3,3−テトラキス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,3,3−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(5−フェニル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、2,2´−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、2,2´−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(2−メチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(2,6−ジメチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノ−ル)、2,2´−チオビス(4−tert−オクチルフェノ−ル)、2,2´−チオビス(3−tert−オクチルフェノ−ル)、1−[α−メチル−α−(4´−ヒドロキシフェニル)エチル]4−[α´,α´−ビス(4´´−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、トリス(2,6−ジメチル)−4−tert−ブチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0030】
必要に応じて併用されるヒンダードアミン系化合物の具体的な例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−テトラキス[1,2,2,6,6−ペンタメチル(4−ピペリジル)]エステル、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−テトラキス[2,2,6,6−テトラメチル(4−ピペリジル)]エステル等を挙げることができる。
【0031】
必要に応じて併用されるリン酸エステル誘導体の具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、ジフェニルホスフェート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ビス(4−クロロフェニル)ホスフェート、ビス(ベンジルオキシフェニル)ホスフェート、2,2´−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ジメチルオキシホスフェート、ジエチルオキシホスフェート、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、3,5−ジ−tert−ブチルジフェニルホスフェート、ジエチル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、及び2,2´−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートのナトリウム塩、2,2´−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートのカルシウム塩、2,2´−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートの亜鉛塩、2,2´−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートのアンモニウム塩、及びカリウム塩等を挙げることができる。
【0032】
必要に応じて併用されるベンゾトリアゾール誘導体の具体的な例としては、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−tert−ブチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシフェニル]ベンゾトリアゾール、メチル−3−(3−tert−ブチル−5−ベンゾトリアゾリル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、5−tert−ブチル−3−(5−クロロベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシベンゼン−プロピオン酸オクチル、2−(2−ヒドロキシ−3−sec−ブチル−5−tert−ブチルフェニル)−5−tert−ブチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホフェニル)ベンゾトリアゾールナトリウム塩、2−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシ−5−スルホフェニル)ベンゾトリアゾールナトリウム塩、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2´−メチレンビス[4−メチル−6−(5−メチルベンゾトリアゾリル)フェノール]、2,2´−メチレンビス[4−メチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾリル)フェノール]、2,2´−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾリルフェノール]、2,2´−メチレンビス(4−tert−ブチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2´−プロピリデンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2´−イソプロピリデンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2´−イソプロピリデンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾリルフェノール]、2,2´−オクチリデンビス[4−メチル−6−(5−メチルベンゾトリアゾリル)フェノール]等を挙げることができる。
【0033】
本発明の感熱記録材料を構成する感熱発色層は、各発色成分を微粉砕して得られる各々の分散液と結着剤樹脂等を混合し、支持体上に塗布、乾燥することにより得られる。感熱発色層の層構成は、単一であっても、多層であってもよい。
【0034】
感熱発色層に用いられる結着剤樹脂としては、通常の塗工で用いられる種々の結着剤樹脂を用いることができる。
【0035】
具体的には、デンプン類、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂、及びスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等の水分散性樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
感熱発色層には、顔料として、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機顔料、メラミン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー等の有機顔料、椀型あるいは中空状の有機顔料を使用することができる。
【0037】
また、感熱発色層には、加熱印字ヘッド摩耗防止、スティッキング防止等の目的から、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン、カスターワックス等の滑剤、分散・湿潤剤として、アニオン性、ノニオン性の高分子量のものを含む界面活性剤、さらには蛍光染料、消泡剤等が必要に応じて添加される。
【0038】
感熱発色層の形成方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の技術に従って形成することができる。具体的な例としては、凸版、平版、フレキソ、グラビア等の各種印刷方式をはじめ、エアナイフ塗工、ロッドブレード塗工、バー塗工、ブレード塗工、グラビア塗工、カーテン塗工、Eバー塗工等の方法により塗液を支持体に塗工し、乾燥により感熱発色層を形成させることができる。
【0039】
感熱発色層の固形分塗工量は、通常含有する染料前駆体の固形分塗工量で0.1〜2g/m2が適当である。この範囲とすることにより、記録画像、熱応答性に優れ、コスト的にも有利となる。
【0040】
本発明の感熱記録材料は、必要に応じて支持体と感熱発色層の間に単層、或いは複数層の顔料或いは結着剤樹脂を含む下塗り層を1層以上設けることができる。本発明の感熱記録材料が下塗り層を設けたものである場合、その下塗り層の固形分塗工量は、1〜30g/m2が好ましく、3〜20g/m2がより好ましい。
【0041】
下塗り層の顔料として、一般的には焼成カオリンが用いられるが、それ以外にもケイソウ土、タルク、カオリン、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機顔料、メラミン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー等の有機顔料を用いることができる。
【0042】
下塗り層の結着剤樹脂としては、通常の塗工で用いられる種々の水溶性高分子又は水分散性高分子を用いることができる。例えば、デンプン類、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂、及びスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等の水分散性樹脂等が挙げられる。
【0043】
本発明の感熱記録材料は、上記の感熱発色層を設けた後、さらにその上層にエポキシ化脂肪酸アミドを含有する保護層を設けたものである。
【0044】
本発明で用いられるエポキシ化脂肪酸アミドは、一般的には製紙用の内添サイズ剤として使用され、例えば脂肪酸と多価アミンの縮合物をエピクロロヒドリンで変性させることにより得られるものであり、具体的には特開昭54−147211号公報に記載の方法で合成することができる。
【0045】
本発明で用いられるエポキシ化脂肪酸アミドの合成に用いられる脂肪酸としては、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ドトリアコンタン酸、テトラトリトリアコンタン酸、ヘキサトリアコンタン酸、オクタトリアコンタン酸、ヘキサトリアコンタン酸、α−メチルトリデカン酸、α−エチルトリデカン酸、α−ヘキシルカプリン酸、α−ブチルトリデカン酸、α−シクロペンチルラウリン酸、α−シクロペンチルエチルペラルゴン酸、α−シクロヘキシルトリデカン酸、α−シクロヘキシルメチルラウリン酸、ω−シクロヘキシルラウリン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アレプリン酸、ゴルリン酸、ステアロール酸、ベヘノール酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも炭素数6〜40のモノカルボン酸が好ましく、より好ましくは炭素数8〜31の飽和脂肪族モノカルボン酸が用いられる。
【0046】
本発明で用いられるエポキシ化脂肪酸アミドの合成に用いられる多価アミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン等の脂肪族系の多価アミン、イソホロンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジアミン、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4´−ジアミン等の脂環族系の多価アミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等のヒドロキシル基含有の多価アミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ビスアミノプロピルピペラジン等の3級窒素含有の多価アミン等が挙げられる。これらの中でも脂肪族系の多価アミンが好ましく、特にアミノ基を2から3個有する脂肪族系の多価アミンが好ましい。
【0047】
本発明で用いられるエポキシ化脂肪酸アミドの合成において、上記脂肪酸と多価アミンとを反応させる場合、両者の量としては、脂肪酸のカルボキシル基に対して、多価アミンのアミノ基が過剰となる様にするのが好ましい。
【0048】
上記エポキシ化脂肪酸アミドの中でも、一般式1で示される化合物がより好ましい。
【0049】
【化2】

【0050】
式中、R1、R2はそれぞれ炭素数5から39の炭化水素基を表し、mは1から6の整数、nは2から5の整数を表す。
【0051】
さらに好ましくは、式中、R1、R2がそれぞれ炭素数7から30のアルキル基であるエポキシ化脂肪酸アミドである。
【0052】
本発明の保護層に用いられる上記エポキシ化脂肪酸アミドは、保護層の固形分中に0.1〜15質量%含有させることが好ましく、さらに0.3〜5質量%含有させることがより好ましい。
【0053】
本発明に係わる保護層に用いられる水溶性樹脂としては、従来公知の水溶性樹脂から適宜選択される。例えば、無変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、エポキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール等の変性アルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン、キトサンの酸中和物などを用いることができる。これらの中でも変性ポリビニルアルコール、キトサンが好ましく、さらに変性ポリビニルアルコールとキトサンを併用することがより好ましい。
【0054】
本発明に係わる保護層に用いられる水分散性樹脂としては、例えば、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等を自己乳化あるいは分散剤等で乳化したものが挙げられる。これらの中でも印刷適性向上のためポリアクリル酸エステルが好ましい。また水分散性樹脂と前記水溶性樹脂であるキトサンを併用する場合は、ノニオン性又はカチオン性の水分散性樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
本発明に係わる保護層には、記録走行性、筆記性等を向上させる目的で、顔料を含有させることが可能である。顔料の具体例としては、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ等の無機顔料、メラミン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー等の有機顔料を使用することができる。これらの中でも水酸化アルミニウム、コロイダルシリカが好ましい。
【0056】
本発明に係わる保護層には、ヘッド摩耗防止、スティッキング防止等記録走行性向上の目的から、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン、カスターワックスなどの滑剤が必要に応じて添加される。
【0057】
本発明に係わる保護層には、強度、耐水性の向上を目的として、架橋剤を用いることができる。架橋剤としては、ホルマリン、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等のメチロール化合物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂に代表されるエピハロヒドリン残基を有する化合物、多官能エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート等のイソシアネート化合物、過硫酸塩、過酸化物等の酸化剤等が挙げられる。これらの中でもアルデヒド系化合物、イソシアネート化合物がより好ましい。
【0058】
本発明に係わる保護層は1層以上設けることができ、保護層全体としての乾燥塗工量は0.2〜10g/m2が好ましく、0.8〜5g/m2がバリア性、印字感度の点でより好ましい。乾燥塗工量を上げれば溶剤や可塑剤に対するバリア性が向上するが、その一方で印字濃度の低下をきたし問題となる。
【0059】
保護層の形成方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の技術に従って形成することができる。具体的な例としては、凸版、平版、フレキソ、グラビア等の各種印刷方式をはじめ、エアナイフ塗工、ロッドブレード塗工、バー塗工、ブレード塗工、グラビア塗工、カーテン塗工、Eバー塗工等の方法により塗液を支持体に塗工し、乾燥により保護層を形成させることができる。
【0060】
なお、本発明の感熱記録材料においては、必要に応じて裏面側にも保護層(バリア層)を設けたり、粘着剤層を設けたり、磁気記録層、インクジェット記録層等の任意の情報記録層を設けたり、或いは各層の塗布後にスーパーカレンダー掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
【実施例1】
【0061】
以下の様にして、実施例1で使用する感熱記録材料を作製し、特性評価を実施した。
【0062】
<分散液Aの調製>
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド200質量部を10質量%スルホン酸変性ポリビニルアルコール水溶液100質量部、水500質量部の混合物中に分散し、ビーズミルで平均粒径が0.9μmになるまで粉砕し分散液Aを得た。
【0063】
<分散液Bの調製>
電子供与性染料前駆体である3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン50質量部を2.5質量%ポリビニルアルコール水溶液850質量部と共にボールミルで粉砕し、平均粒径1μmの電子供与性染料前駆体分散液900質量部を得た。次いでこの分散液を重合容器に移し、メタクリル酸エチル40質量部及びエチレングリコールジメタクリレート10質量部を加え攪拌しながら70℃に昇温した。これに重合開始剤である過硫酸カリウムの1質量%水溶液50質量部を加えて、攪拌を続けながら6時間反応させた。次いでこれを室温まで冷却し、表面に高分子被覆層を設けた電子供与性染料前駆体粒子の分散液Bを得た。
【0064】
<分散液Cの調製>
3,3´−ジアリル−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン200質量部を10質量%スルホン基変性ポリビニルアルコール水溶液100質量部、水500質量部の混合物中に分散し、ビーズミルで平均粒径が0.9μmになるまで粉砕し分散液Cを得た。
【0065】
<分散液Dの調製>
1,2−ジ(フェノキシメチル)ベンゼン200質量部を10質量%スルホン基変性ポリビニルアルコール水溶液100質量部と水500質量部の混合物中に分散し、ビーズミルで平均粒径が0.9μmになるまで粉砕し分散液Dを得た。
【0066】
<分散液Eの調製>
2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール200質量部を10質量%スルホン基変性ポリビニルアルコール水溶液100質量部と水500質量部の混合物中に分散し、ビーズミルで平均粒径が0.9μmになるまで粉砕し分散液Eを得た。
【0067】
<感熱発色層用塗液Aの調製>
上記分散液A10質量部、分散液B85質量部、分散液C120質量部、分散液D60質量部、分散液E60質量部、30質量%ステアリン酸亜鉛分散液20質量部、20質量%有機中空顔料分散液(日本合成ゴム製SX866B)90質量部、10質量%アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール水溶液180質量部を混合し、適宜塗液濃度を調整し、十分撹拌して感熱発色層用塗液Aを調製した。
【0068】
<感熱発色層の形成>
坪量160g/m2の中性紙上に、上記感熱発色層用塗液Aを、固形分塗工量が約6g/m2になるように塗工、乾燥した後、カレンダー処理にて表面のベック平滑度が300秒から700秒になるように調整して感熱発色層を形成した。
【0069】
<キトサン水溶液の調製>
キトサン(クラレ社製OTS−2)50質量部を水400質量部中に加え、撹拌しながら50質量%乳酸50質量部を加えて10質量%キトサン水溶液を調製した。
【0070】
<分散液Fの調製>
平均粒径約1μm、吸油量約50ml/100gの水酸化アルミニウム200質量部を0.5質量%ポリアクリル酸ナトリウム塩水溶液400質量部中に分散し、ホモミキサーで10分間撹拌し分散液Fを得た。
【0071】
<保護層用塗液Aの調製>
30質量%のカチオン性コロイダルシリカ160質量部、上記分散液F60質量部、10質量%シラノール変性ポリビニルアルコール水溶液200質量部、上記10質量%キトサン水溶液50質量部、30質量%カチオン性アクリルエマルジョン(日信化学工業製、ビニブラン2687)30質量部、30質量%ステアリン酸亜鉛分散液10質量部、20質量%グリオキザール水溶液15質量部、10質量%脂肪族ポリイソシアネート分散液20質量部、20質量%エポキシ化脂肪酸アミド分散液(表1記載の例示化合物1)10質量部を混合し、適宜塗液濃度を調整し、十分撹拌して保護層用塗液Aを調製した。
【0072】
<感熱記録材料の作製>
上記感熱発色層形成済み用紙の感熱発色層上に、上記保護層用塗液Aを、固形分塗工量が約2g/m2になるように塗工、乾燥した後、カレンダー処理にて表面のベック平滑度が1500秒から2500秒になるように調整して保護層形成済みの感熱記録材料を作製した。
【実施例2】
【0073】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物2分散液10質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例3】
【0074】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物3分散液15質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例4】
【0075】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物5分散液15質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例5】
【0076】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物6分散液5質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例6】
【0077】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物11分散液10質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例7】
【0078】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物14分散液10質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例8】
【0079】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物17分散液20質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例9】
【0080】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物18分散液20質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例10】
【0081】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物19分散液20質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例11】
【0082】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物21分散液20質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【実施例12】
【0083】
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを20質量%例示化合物22分散液30質量部とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0084】
(比較例1)
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドを含有しない以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0085】
(比較例2)
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドの代わりに、20質量%のアルキル鎖長18個のアルキルケテンダイマー分散液20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0086】
(比較例3)
実施例1においてエポキシ化脂肪酸アミドの代わりに、40質量%のロジン系中性サイズ剤分散液(荒川化学工業製、NT−87)10質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0087】
[特性評価]
上記実施例1から12及び比較例1から3の感熱記録材料について、下記の評価を実施施した。評価結果を表2に示す。
【0088】
[紫外線硬化型インクの調製]
有機顔料としてC.I.pigment Red−57:1を15質量部、分散剤としてDisperbyk−168(BYK Chemie社製)を10重量部、反応性モノマーとして1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを75質量部をミキサーで30分撹拌した後、ビーズミルにて1時間分散して紫外線硬化型インク原液を調製した。調製した紫外線硬化型インク原液33質量部にPO系モノマーとしてポリプロピレングリコール(400)ジアクリレートを54質量部、反応性オリゴマーとしてウレタンアクリレートを6質量部、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)5質量部を加え10分間撹拌し、更にメチルエチルケトンを25質量部加え撹拌し、顔料濃度約4質量%の紫外線硬化型インクを調製した。
【0089】
[インク滲み評価]
上記のようにして得られた紫外線硬化型インクをピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置に装填し、感熱記録材料の保護層表面に64dpiの解像度で文字印字を行い、2kWのメタルハライドランプを10秒間照射し、インクの硬化を行った。得られた文字印字のドットの様子をルーペで拡大し、滲み具合を観察した。評価基準は、ドット形状が真円を保ち滲みがないものを◎、ほとんどのドットがほぼ真円を保ちほとんど滲みがないものを○、ドット形状が少し崩れており、ドットに少し滲みがあるものを△、ドットにかなりの滲みがあるものを×で示した。
【0090】
[溶剤バリア性評価]
感熱記録材料の保護層表面にメチルエチルケトン0.5mlを滴下し、20秒後に濾紙を押し当てて拭き取り、滴下部の発色度合いを評価した。発色の生じないものがバリア性が高く優れている。評価基準は、全く発色のないものを◎、うすく僅かに発色するものを○、僅かに小さな点発色がみられるものを△、全面にはっきりと発色が確認できるものを×で示した。
【0091】
[印字試験]
大倉電機製ファクシミリ試験機TH−PMDを用いて印字した。ドット密度8ドット/mm、ヘッド抵抗780Ωのサーマルヘッドを使用し、ヘッド電圧20V、パルス幅0.7、1.0msecで通電して画像を得た。未印字部(地肌部)及びパルス幅0.7msecで印字した画像部については赤濃度をマクベスRD−918型反射濃度計(マゼンタモード)にて測定し、パルス幅1.0msecで印字した画像部については黒濃度をマクベスRD−918型反射濃度計(ブラックモード)にて測定した。評価結果を表1に示す。表2中、画像部1、画像部2は、それぞれパルス幅0.7msec、1.0msecで印字した部分の濃度を示す。
【0092】
[耐熱性試験]
印字試験の評価で用いた感熱記録材料を65℃の環境下に24時間置いた後、地肌部と画像部1の濃度をマクベスRD−918型反射濃度計(マゼンタモード)にて測定した。結果を表1に示す。地肌部の濃度の数値が小さい程、耐熱地肌カブリが少なく、記録部の濃度の数値が大きいほど耐熱画像保存性に優れる。
【0093】
[印字走行性評価]
印字試験のときに発生する印字音の大きさ、印字画像の縮み具合で印字走行性を評価した。印字走行性については、印字音が小さく、印字画像の縮みのないものが優れている。評価基準は、印字音が非常に小さく、印字画像の縮みがないものを◎、印字音がやや大きいが、印字画像の縮みのないものを○、印字音がやや大きく、印字画像に若干縮みがみられるものを△、印字音が大きく、印字画像の縮みが大きいものを×で示した。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
表2から明らかな様に、実施例1から12はインク滲み、溶剤バリア性、印字走行性、印字濃度、耐熱性等良好な結果を示す。中でも実施例1から6、実施例8、9がより優れている。一方、比較例1の様にエポキシ化脂肪酸アミドを用いない場合は、インクの滲みが酷くなる。比較例2ではインクの滲みに対してある程度の効果を示すが、溶剤バリア性、印字走行性が悪化し、耐熱地肌カブリも大きくなる。比較例3ではインク滲み、溶剤バリア性が悪化し、印字走行性や耐熱性の低下もみられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体、及び加熱時反応して該染料前駆体を発色させる電子受容性化合物とを含有する感熱発色層と該感熱発色層上に保護層を設けた感熱記録材料において、該保護層中にエポキシ化脂肪酸アミドを含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
前記保護層中に含有されるエポキシ化脂肪酸アミドが下記一般式1で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の感熱記録材料。
【化1】

(式中、R1、R2はそれぞれ炭素数5から39の炭化水素基を表し、mは1から6の整数、nは2から5の整数を表す。)
【請求項3】
前記一般式1におけるR1、R2が炭素数7から30のアルキル基であることを特徴とする請求項2記載の感熱記録材料。

【公開番号】特開2007−112043(P2007−112043A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306868(P2005−306868)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】