感覚統合運動機能の計測装置
【課題】把持動作データの取得から、感覚統合運動機能の定量的評価を行う。
【解決手段】感覚統合運動機能の計測を行う計測装置は、被験者によって把持される柔軟性のある測定部本体11と、測定部本体11の歪みを測定する歪みゲージ12と、歪みゲージ12で測定された信号を処理するブリッジ回路20と、ブリッジ回路20で処理された信号を増幅する信号増幅アンプ40と、信号増幅アンプ40で得られた数値を処理することができる処理装置40と、処理装置40で処理された結果を表示する表示部50とを備える。
【解決手段】感覚統合運動機能の計測を行う計測装置は、被験者によって把持される柔軟性のある測定部本体11と、測定部本体11の歪みを測定する歪みゲージ12と、歪みゲージ12で測定された信号を処理するブリッジ回路20と、ブリッジ回路20で処理された信号を増幅する信号増幅アンプ40と、信号増幅アンプ40で得られた数値を処理することができる処理装置40と、処理装置40で処理された結果を表示する表示部50とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感覚統合運動機能の計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な理由により身体機能が損なわれた場合、リハビリテーション訓練を行うことで、運動機能の回復を目指すのが一般的である。そのような場合、医師やセラピストの経験による判断でリハビリテーション訓練が行われている。
【0003】
特許文献1には、中枢神経への障害へのリハビリテーション方法について開示がされている。当該発明では、力センサを用いて得た情報を表示することによって、バイオフィードバックを得る技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、視覚・聴覚の視点から各感覚器官を刺激し、脳神経や各神経系及びそれらの伝達神経系等の刺激・活性化を促すことで、運動能力や神経系の維持等を促す技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、リハビリテーションを行なうにあたって、運動感覚機能を評価する装置が開示されている。設定された量を動かすことで、下半身及び下肢の運動感覚機能を評価する装置が開示されている。
【0006】
なお、特許文献4には、1人でもゲーム感覚でリハビリテーションを行なえる装置が、特許文献5には、膝の屈伸について認識できた角度と実際に曲げられた角度を測定することで、認知訓練を行なう装置が開示されている。また、指の輪を開こうとする力に抵抗して保持する力を計測する技術が特許文献6に開示されている。さらに、球形状もしくは円筒状の把持部と圧電素子を有する圧力計が特許文献7に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−8605号公報
【特許文献2】特開2008−206932号公報
【特許文献3】特開2006−296468号公報
【特許文献4】特開2002−272795号公報
【特許文献5】特開2003−175085号公報
【特許文献6】特開2004−49828号公報
【特許文献7】特開2001−29508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、これまでに提案されてきた一般的なリハビリテーション器具は、大型のものが多い。またセンサなどで、リハビリテーションの効果や運動機能等を解析する場合には、複数のセンサを必要とするものが多く(例えば、複数の力センサとCCDカメラの画像を組み合わせるなど)、処理が複雑になりがちである。
【0009】
また、一つの装置で特定部位の訓練しか行なえないものがほとんどである。
【0010】
従来、様々な理由により身体機能が損なわれた場合、リハビリテーション訓練を行うことで、運動機能の回復を目指すのが一般的である。そのような場合、医師やセラピストの経験による判断でリハビリテーション訓練が行われている。しかしながらこのような手法では、検者間で差が生まれ、リハビリテーション訓練による回復効果にも顕著な違いが現れてしまう。以上の理由から、より効果の高い安定した訓練プログラムを作成するには客観的かつ簡便に判断可能な計測装置が望まれている。
【0011】
そこで本発明では、これらの要望を満たす計測装置を開発し、それを用いて四肢等の感覚統合運動機能の定量的評価システムを構築することを目的とする。特に本発明では、把持動作データの取得から、感覚統合運動機能の定量的評価を行う。なお、本明細書中では感覚統合運動機能という言葉を用いているが、感覚統合運動、感覚運動統合機能、感覚運動統合と呼ばれることもある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の感覚統合運動機能の計測装置では、柔軟性のある測定部本体と、測定部本体の歪みを測定する歪みゲージと、歪みゲージで測定された信号を処理するブリッジ回路と、ブリッジ回路で処理された信号を増幅する信号増幅アンプと、信号増幅アンプで得られた数値を処理することができる処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
柔軟性のある測定部本体は、被験者によって把持などの測定対象となる動作を行われる。また、測定部本体に柔軟性のある素材を用いることで、つぶさないように保持することが硬い場合に比べて困難になる。柔軟性のある素材(柔らかいもの)を潰さないように把持するためには、特に手指の場合には、手指の協調性が必要となる。そのため、手指の協調性が取れているかどうかを、判断することができる。つまり、圧力計や硬いものを把持する場合とは異なる能力が必要となり、手指の能力の一つの指針となりうる。
【0014】
そのため、以前から、一部の療法士によって、柔らかいものをつぶさないように把持できるかどうかの確認のために、紙で作成した筒などを握らせて、潰したか潰していないかの判定を行うということが行われていた。しかし、この方法では、潰したか潰さないかのどちらかでしか結果が分からず、実際にどのような力が加えられているかという情報をえることができなかった。しかし、本発明の装置では、どのような力が加えられているかを計測することができる。
【0015】
また、本発明の装置においては、自分ではつぶしていないつもりでも、実際につぶれているなどの極微小な変化をみることができる。また、微小な力でも変形を伴わせることで、被験者の目に明らかな結果を提示できるのと同時に、反発力という形で被験者に刺激を与えることができる。
【0016】
測定部本体の変形量は歪みゲージを用いることで正確に測定することができる。歪みゲージから読み取られた変形量によって、抵抗値が変化する。なおこの歪みゲージの数は必要な精度に応じて増やすことができる。
【0017】
歪みゲージで変化した抵抗値の信号をブリッジ回路に入れることで、微小な抵抗値の変化を電圧値の変化として定量的に測定することが可能となる。
【0018】
信号増幅アンプを用いることで、そのままでは微弱な信号をその後の処理に適するように増幅する。
【0019】
また、処理手段で得られた信号をもとに適切に処理を行う。具体的には、後述するように、健常者と障害者の値を比較してレーダーチャートの作成、バイオフィードバックをかけるための値の処理や、結果を表示するための処理など、必要な様々な処理を行う。
【0020】
本発明の処理手段の他の態様として、被験者に対して測定動作の指示をする測定指示手段と、測定指示手段の指示に従い測定された数値を解析する解析手段と、解析手段で解析された結果を表示する表示手段と、を備えるようにすることもできる。
【0021】
測定指示手段は、たとえば測定動作として把持動作を行う場合に、把持のタイミングを視覚的もしくは聴覚的に合図を出すようにする。もしくは、合図を出さない場合には、測定を開始する前に、何秒ずつどのような動作を行えばよいかを指示するようにしてもよい。
【0022】
このように構成することで、結果を適切に処理し、障害の程度を把握することができる。また、測定データを解析することで、患者等の素人が見ても、視覚的に理解ができる結果となる。
【0023】
本発明の処理手段の他の態様として、上記処理手段は、被験者に対する測定内容を開発する開発手段を備えるようにすることもできる。
【0024】
このように構成することで、障害に応じた測定プログラムを開発することができる。患者毎に症状は千差万別なため、療法士の治療経験から患者に適した治療方法を開発することができれば、よりリハビリテーション効果をあげることができる。
【0025】
本発明の処理手段の他の態様として、測定する際にバイオフィードバックをかけるかどうかを判定する判定手段と、バイオフィードバックをかける場合に段階的にバイオフィードバックの程度を調節する調節手段と、を有し、上記処理手段で処理された結果を表示する表示手段と、を備えるようにすることもできる。
【0026】
ここで、バイオフィードバックとは、生体機能情報を工学的な助けをかりて、数値などで表現して、人間がわかる情報に置き換えて、伝えることをさす。
【0027】
このように構成することで、バイオフィードバックのかけ方により、どの程度感覚機能が弱っているかを測定することができる。
【0028】
本発明の処理手段の他の態様として、開眼での測定と閉眼での測定を指示する測定指示手段と、開眼と閉眼での測定結果を比較処理する比較手段と、を備えるようにすることもできる。
【0029】
このように構成することで、運動機能と感覚機能を切り分けて評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明における感覚統合運動機能の計測装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の感覚統合運動機能の計測装置測定部の一例を示す図である。
【図3】計測装置の制御のメインのフローチャートである。
【図4】メインのフローチャートのステップS10の測定サブルーティンのフローチャートである。
【図5】メインのフローチャートのステップS20の解析サブルーティンのフローチャートである。
【図6】メインのフローチャートのステップS30の表示サブルーティンのフローチャートである。
【図7】メインのフローチャートのステップS40の開発サブルーティンのフローチャートである。
【図8】開発のフローチャートのステップS400の把持動作パターンの作成のサブルーティンのフローチャートである。
【図9】開発のフローチャートのステップS450の検査項目登録のサブルーティンのフローチャートである。
【図10】本発明の実施例におけるパラメータの定義の図である。
【図11】本発明の実施例におけるレーダーチャートの例の図である。
【図12】感覚統合運動機能の計測装置を運動機能と感覚機能の切り分けの測定装置として用いる場合の処理のフローチャートである。
【図13】感覚統合運動機能の計測装置を感覚機能の障害の程度の測定装置として用いる場合の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
(1)感覚統合運動機能の計測装置の概略構成
(2)感覚統合運動機能の計測装置の制御
(3)解析の具体例
(4)変形例1(運動機能と感覚機能の切り分け)
(5)変形例2(BF)
(6)まとめ
(1)感覚統合運動機能の計測装置の概略構成
図1は、本発明における感覚統合運動機能の計測装置の概略構成を示す図である。装置は測定部10と、ブリッジ回路20と、アンプ30と、処理装置40と、表示部50とから構成される。柔軟性のある素材からできた測定部10に貼り付けられた歪みゲージ12で測定された値が、ブリッジ回路20とアンプ30を通して処理装置40に送られる。そして、処理装置40で処理された結果が表示部50に表示される。
【0032】
さらに具体的に説明する。図2は、測定部10の実施形態の一例である。測定部10は中空の管状の柔軟物の本体部11と、歪みゲージ12から構成される。本体部11は、測定する部位にあわせて大きさを変化させることができる。また、本体部11は硬い素材でできたものと、柔軟性のある素材で用意することもできる。柔軟性のある素材の方の本体の素材としては、例えばシリコンがあげられる。その理由としては、ある程度つぶれたときの復元力と被験者への刺激を促す反発力があること、また加工のしやすさや、被験者に対する安全性などが挙げられる。また、柔軟性のある素材の他の一例として、ポリエチレンがあげられる。ポリエチレンの場合にはシリコンより柔らかいため、把持がさらに困難になり感覚統合運動機能を正確に計測することができる。なお、柔軟性(柔らかさ)については、訓練者の症状に応じて個々に設定することが可能である。
【0033】
本体部を中空の筒状にしたのは、内側に歪みゲージ12が貼り付けやすいため、製作が容易であるからである。ここでは中空の管状のものを例としてあげたが、管状でなく角柱状などでもいいし、中空でなくても流体を詰めたものでも良い。また、中空でない場合には、歪みゲージ12を埋め込む等の加工をすればよい。
【0034】
例えば、本体部11の内部側面に約90度ずつ位置をずらして、歪みゲージ12を4つ貼り付ける。このような位置とする理由は検出精度をあげるためである。また、把持する際の指の位置による計測値への影響を軽減することが可能となる。歪みゲージ12の数については検出精度の要求に応じて増やしていく。
【0035】
歪みゲージ12で得られた信号はブリッジ回路20に入る。ブリッジ回路20を介すことにより、微小な抵抗値の変化を電圧値として計測することができる。歪みゲージ12のブリッジへの結線方法は、ゲージに対する温度補償や出力電圧のことを考えて4アクティブゲージ法とする。4アクティブゲージ法とは、ブリッジ回路の4辺にひずみゲージが接続される回路で、4枚ともアクティブゲージとする方法である。
【0036】
ブリッジ回路20で処理された信号はアンプ30で増幅される。アンプ30を介すのは、そのままの信号では微弱なため、その後の処理をするのには適さないためである。
【0037】
処理装置40の例としてパソコン41を本実施例では用いている。また処理装置40には、測定結果等を記憶する記憶部42を備えている。なお記憶部42はパソコン41のハードディスクなどの内部記憶媒体でも、外付けハードディスクやUSBメモリなどの外部記憶媒体でもよい。パソコン41では、アンプ30で増幅された信号を元に、測定結果を記憶部42に記憶し、後述する制御を行う。
【0038】
表示部50では、処理装置で処理された結果を表示する。この表示方法としては、視覚にうったえる様に、モニタ51に表示することもできるし、音声の強弱で状況がわかるようにしても良いし、その両方を用いても良い。
【0039】
(2)感覚統合運動機能の計測装置の制御
図3は、計測装置の制御のメインのフローチャートである。
【0040】
ステップS1で、パソコン41によってメニュー画面が表示される。使用者は、メニュー画面から実施するメニューを選択する。ここではメニューの内容として、評価メニュー、表示メニュー、開発メニューがあり、メニュー画面にはそれらが選択可能な状態で表示されている。ステップS2〜ステップS4で、パソコン41がどのメニューを選択したか判定する。評価メニューを使用者が選択していると、ステップS2がYESになり、パソコン41がステップS10〜のサブルーティンを実施する。同様に、表示メニューを使用者が選択していると、ステップS3がYESとなり、パソコン41がステップS30のサブルーティンを実施する。同様に、使用者が開発メニューを選択すると、ステップS4がYESとなり、パソコン41がステップS40のサブルーティンを実施する。どのメニューも使用者が選択していない場合には、ステップS5でパソコン41がメニューの選択がされていないと判断し、ステップS1に戻る。
【0041】
図4は、メインのフローチャートのステップS10の測定サブルーティンのフローチャートである。
【0042】
測定のサブルーティンが開始されると、ステップS101で、パソコン41によって、把持動作パターンの選択表示画面が表示される。把持動作パターンの選択表示画面には、どのようなパターンで把持動作を行うかのパターンの一覧が表示されている。たとえば、2分把持して2分離すパターンや5分把持して5分離すパターン等が選択可能な形で表示されている。次にステップS102で、把持動作パターンが使用者によって選択されたとパソコン41が判断すると、ステップS103で、選択された把持動作パターンを例えば5分把持5分離すパターンです等と表示し、ステップS104で把持動作の開始の合図としてスタート表示やスタート音の発生を行う。パターンにあわせて被験者が把持動作を行っている間、ステップS105で歪みゲージ12からブリッジ回路20、アンプ30を介して送られてくる時系列データをパソコン41が収集する。ステップS106で、パソコン41が終了条件を満たしたと判断すると、ステップS107で、時系列データを記憶部42に保存し、サブルーティンを終了する。
【0043】
図5は、メインのフローチャートのステップS20の解析サブルーティンのフローチャートである。
【0044】
解析のサブルーティンが開始されると、ステップS201で、パソコン41によって、測定のサブルーティンで測定された歪みゲージの時系列データがいつの誰のデータで解析済みかという情報が選択可能な形で表示される。ここでは、測定後未解析のデータや既に解析済みのデータが表示されるため、その中から解析するデータを使用者が選択する。ステップS202で、パソコン41によって、時系列データが選択されたと判断すると、ステップS203で選択された時系列データを読み込む。すると、ステップS204で、パソコン41が後述する障害検査項目の値の抽出を行う。ステップS205で、パソコン41は規定された全ての検査項目の値が抽出できたかを判定し、抽出できなかった場合には、ステップS209でエラー表示を行い、サブルーティンを終了する。抽出がされた場合には、ステップS206で、規定項目の健常者データを読み込み、ステップS207で、抽出した時系列データと健常者のデータを比較し、必要に応じてレーダーチャート等比較可能な形にする。そしてステップS208で、パソコン41が比較した結果を保存し、サブルーティンを終了する。
【0045】
図6は、メインのフローチャートのステップS30の表示サブルーティンのフローチャートである。
【0046】
表示のサブルーティンが開始されると、ステップS301で、パソコン41によって、解析済みの検査データの選択表示画面がいつのだれのデータかわかる形で選択可能な形で表示される。ステップS302で、検査データが使用者によって選択されたと判断すると、ステップS303で、パソコン41によって、選択された検査データを読み込み、ステップS304で検査データをモニタ51に表示し、サブルーティンを終了する。
【0047】
図7は、メインのフローチャートのステップS40の開発サブルーティンのフローチャートである。
【0048】
開発のサブルーティンが開始されると、ステップS41で、パソコン41によって、開発メニューの選択表示画面が表示される。開発メニューには把持動作パターンの作成メニューと被験者実験のメニューが選択可能な形で表示される。ステップS42で、把持動作パターンの作成メニューが使用者によって選択されたと判断すると、ステップS400の把持動作パターンの作成のサブルーティンに進む。ステップS42で、把持動作パターンの作成メニューが選択されていないと判断すると、ステップS43で、被験者実験のメニューが選択されているかどうかを判断する。この被験者実験のメニューでは、健常者と障害者と分けてメニューを作成し、それぞれ別のデータベースに登録するようにしてもよい。ステップS43で、被験者実験のメニューが選択されたと判断すると、ステップS10の測定サブルーティンを行う。ステップS10の測定サブルーティンが終了すると、測定結果をステップS44で登録する。この際の登録は健常者と障害者と分けて登録するようにしてもよい。ステップS400のサブルーティンが終了、もしくはステップS44でデータベースへの登録が行われると、ステップS46に進む。ステップS46では、開発に必要な所定の実験データの数が健常者・障害者ともに集まっているかを判定する。所定のデータが収集されていると判断すると、ステップS450の検査項目の登録サブルーティンに進む。ステップS46で、所定のデータが収集されていないと判断すると、ステップS47で、被験者の実験を引き続き行うかどうか判定する。ステップS47で、使用者が被験者の実験を引き続き行うと入力したと判定すると、ステップS10に戻り、引き続き被験者の実験を行う。ステップS47で、使用者が被験者の実験を行わないと判断すると、このサブルーティンを終了する。
【0049】
図8は、開発のフローチャートのステップS400の把持動作パターンの作成のサブルーティンのフローチャートである。
【0050】
把持動作パターンの作成のサブルーティンが開始されると、ステップS401で、使用者が把持回数を入力し、パソコン41がそれを保存する。同様にステップS402で把持時間を保存し、ステップS403で目標とする把持力を保存し、ステップS404でリリース時間を保存する。そして、ステップS405でそれ以外の測定に必要な項目を保存する。そしてステップS406で、把持動作パターンの設定が完了したかどうかを使用者に確認し、使用者が完了したと入力したと判定すると、ステップS407で作成した把持動作パターンを表示する。ステップS408で意図したとおりの設定になっているかどうかを使用者に確認し、使用者が意図通りになっていると入力したと判定すると、把持動作パターンの作成のサブルーティンを終了する。
【0051】
図9は、開発のフローチャートのステップS450の検査項目登録のサブルーティンのフローチャートである。
【0052】
検査項目登録のサブルーティンが開始されると、ステップS451で、パソコン41によって、開発プログラムで作成された把持動作パターンの選択画面が表示される。ステップS452で、把持動作パターンが選択されたと判断すると、ステップS453で選択された把持動作パターンで測定された健常者と障害者の時系列データを読み込んでモニタ51に表示する。表示された時系列データをもとに、ステップS454で後述するように特徴量として読み取る値を障害検査項目と使用者が指定したものをパソコン41が登録し、その基準値を使用者が調整し、その結果をパソコン41が登録する。ステップS455で、パソコン41によって、設定された障害検査項目とその基準値を登録して、サブルーティンを終了する。
【0053】
(3)解析の具体例
感覚統合運動機能の計測装置でのステップS20の解析のサブルーティンにおける障害検査項目の値の抽出の具体例について説明する。
【0054】
まず解析の具体例を説明するにあたり、解析するための時系列データの測定の方法について説明する。測定方法として、把持動作方法を用いる。ここで把持動作方法とは、手で10秒毎の合図とともに本体部11をつぶさずに把持して、5cm持ち上げ、その後本体部11を静かにおいて手を離すという方法を所定回数繰り返し行う方法である。なおこの測定方法はあくまでも一例であって、他の方法であってもよい。また測定対象部位は本実施例では手指であるが、体の他の四肢に対しても用いることができる。なお、測定部10の大きさは、測定対象となる体の部位に合わせたサイズの測定部10を用意する。たとえば、手指の場合には、手で普通に握れる程度の大きさのものとする。
【0055】
ここで、評価に用いる検査項目について説明する。図10は把持動作方法を用いた際の定量的に測定するための検査項目を定義した図である。把持動作方法における動作を4つの状態に分類する。
【0056】
Waitとは手を初期位置に初期姿勢で置いた状態を示す。
【0057】
Gripとは、合図が鳴って、手を初期位置から水平に移動して、測定部10を潰さずに把持し、持ち上げるまでの状態を示す。
【0058】
Holdとは、測定部10を潰さずに5cm持ち上げた状態を次の合図が鳴るまで保ち続ける状態を示す。
【0059】
Releaseとは、合図が鳴ってから、測定部10を静かに下ろし、測定部10を放して手を初期位置に初期姿勢で置くまでの状態を示す。
【0060】
そして、Wait以外の3つの状態をGripについては立ち上がり時間Tgで、Holdについては標準偏差Hsで、Releaseについては立ち下がり時間Trを用いて評価をする。また対象物に対する適切な把持力の調整が行えているかの評価としてHold時の平均電圧Vhを用い、体性感覚フィードバックの評価についてはオーバーシュート電圧OSとHold時の平均電圧Vhと、繰り返し動作を行う中でそれぞれの減少率OS’,Vh’を用いて評価をする。ここで、図10においてTgとは合図が鳴ってから電圧値が平均電圧Vh(Hold時の後の5秒間Thの電圧の平均とったもの)に達するまでの時間を示し、Hsとは、Th間における標準偏差を示し、Trとは、合図が鳴ってから電圧値が零になるまでの時間を示し、OSとは立ち上がり波形の最大電圧とVhとの差を示し、OS’は最初の試行時のOSと繰り返した最終試行時のOSの減少率を示し、Vh’は最初の試行時のVhと繰り返した最終試行時のVhの減少率である。
【0061】
さらに測定した6つの検査項目の値をもとにどのように定量的な評価を行うかを説明する。まず、6つの検査項目それぞれの健常者領域というものを算出する。これは同じ条件下で複数の健常者及び障害者に把持動作を行ってもらい、6つの検査項目の値を測定し、その健常者の平均値及び標準偏差を求め、障害者の値と比較することにより健常者領域を確定する。このようにして求めた健常者領域の値の範囲を1としてレーダーチャートに設定する。図11はこのようなレーダーチャートの例である。そして、その値と被験者の実際の実行結果においての各検査項目の値を比較する。この各検査項目のレーダーチャートでの値が大きくなればなるほど健常者領域から外れていくことを意味している。各検査項目と把握動作に影響を及ぼす機能は、TgがGrip動作における関節可動域と関係し、TrがRelease動作における関節可動域と関係し、HsがHold動作における筋持久力と関係し、Vhが把持動作対象物に対する適切な把持力に関係し、Vh’及びOS’は感覚統合運動機能に関係している。このような関係によって、レーダーチャートを見ることで把持動作におけるどのような動作が苦手で,どの機能が不足しているかが一目瞭然となる。
【0062】
このレーダーチャートの結果を見て療法士が訓練メニューを構築することによって、効率的な訓練が可能となる。また患者側からすると、日々の訓練を記録することによって自分の置かれている立場や目指すべき目標が明確になるため、訓練のモチベーションの向上に繋がると考えられる。
【0063】
(4)変形例1
以下に、感覚統合運動機能の計測装置を運動機能と感覚機能の切り分け態様を説明する。なお上記説明と同様の部分は省略し、異なる部分のみをここでは説明するものとする。
【0064】
手の把持動作における入力は視覚と、体性感覚である深部感覚と表在感覚の3つで、それらを統合して運動機能に伝わり,把持動作を行うということを表している。臨床の場面では、障害が、運動機能と感覚機能ならびにそれらの複合機能である統合運動のどの機能にあるのかを切り分けて評価することが困難である。
【0065】
そこで、感覚統合運動機能の計測装置を運動機能と感覚機能を切り分けて評価するための測定装置として用いる場合には、運動機能と感覚機能を切り分けて評価するため、以下の方法で測定する。
【0066】
図12は、感覚統合運動機能の計測装置を運動機能と感覚機能を切り分けて評価する測定装置として用いる場合の処理のフローチャートである。
【0067】
切り分け装置としての機能が選択された場合、ステップS500で把持動作方法を指示する。ここで把持動作方法の指示とは、開眼にするか閉眼にするかをパソコン41は被験者に対して指示する。順番としては開眼を先に指示し、ステップS550の結果がNoで戻ってきたときに閉眼で行う。そしてステップS510で図4に示した測定プログラムを実施する。その後ステップS520で図5に示した解析プログラムを実施する。ステップS520で行った解析結果をもとに判定をステップS530で行う。ステップS530での判定の結果が健常者のレベルにあるかどうかを健常者のデータをもとにステップS540で判定する。その結果健常者のレベルにあると判定された場合には、ステップS550に進む。ステップS550では、開眼と閉眼の両方での測定が終わっているかを判定し、終了していない場合(開眼のみしか行っていない場合)にはステップS500に戻る。ステップS550で開眼と閉眼の両方の測定が終わっていると判断した場合にはステップS560に進む。またステップS540で結果が健常者のレベルにないと判断された場合には、ステップS560に進む。ステップS560では、結果を表示する。開眼、閉眼ともに潰さずに把持動作ができた場合は感覚機能、運動機能ともに正常となり、正常という結果を表示する。開眼において把持動作が達成されなかった場合には運動機能に問題ありと判断し、その結果を表示する。ただしこの場合には感覚機能にも問題がある場合もありえる。また、開眼においてのみ潰さずに把持動作ができた場合は、把持動作自体は正常に行えるため運動機能に問題はないが、感覚機能に問題があるということになるので、その結果を表示する。
【0068】
以上の手順を用いることによって、感覚機能と運動機能のどちらに障害があるのかを切り分けることができる。
【0069】
(5)変形例2
感覚統合運動機能の計測装置をバイオフィードバックの程度を変更することで感覚機能の障害の程度を測定する装置として用いる場合について説明する。なお上記説明と同様の部分は省略し、異なる部分のみをここでは説明するものとする。
【0070】
ここで、バイオフィードバックとは、生体機能情報を工学的な助けをかりて、数値などで表現して、人間がわかる情報に置き換えて、伝えることをさす。例えば、測定部のつぶれ具合を、モニタ51などで表示したり、音などの強弱で表現したりすることがあげられる。そのため、バイオフィードバックの量を調整することで、感覚機能が弱っている場合にそれを補助することができる。逆にいうと、バイオフィードバックで補助された量だけ感覚機能に障害があるということができる。そのため障害の程度の測定を行うことができる。
【0071】
図13は、感覚統合運動機能の計測装置を感覚機能の障害の程度の測定装置として用いる場合の処理のフローチャートである。ここではバイオフィードバックをかける方法としてモニタへのつぶれの表示という形で行う。なお、図中ではバイオフィードバックは、BFと表記している。
【0072】
障害の程度の測定装置としての機能が選択された場合、ステップS600でバイオフィードバックをかけずに、把持動作を行うように指示する。そしてステップS610で図4示した測定プログラムを実施する。その後ステップS620で図5に示した解析プログラムを実施する。ステップS620で行った解析結果をもとに結果が健常者レベルにあるかどうかの判定をステップS630で行う。ステップS630で健常者レベルにあると判定した場合には、ステップS690で、感覚機能に障害がない旨表示させる。
【0073】
ステップS630で健常者のレベルにないと判定された場合には、ステップS640でバイオフィードバックをかけた把持動作を行うように被験者に指示する。ステップS640では、バイオフィードバックをかける量を最初は少なくしておき、ステップS680でステップS640に戻ってくる毎に、バイオフィードバックをかける量を増やしていく。例えばLV1〜LV3の3段階でバイオフィードバックをかけたとすると、LV1では、バイオフィードバックを実際の値の5倍でかけ、LV2では実際の10倍などの形でバイオフィードバックをかけるといった形で行う。バイオフィードバックをかけた状態で、ステップS650で図4に示した測定プログラムを実施する。その後ステップS660で図5に示した解析プログラムを実施する。ステップS660で行った解析結果をもとに結果が健常者レベルにあるかどうかの判定をステップS670で行う。結果が健常者のレベルにあると判断されれば、ステップS690でどの程度バイオフィードバックをかけたかを表示する。(例えばLV1〜LV3などの形で表示をする。)ステップS670で、健常者のレベルにないと判断されれば、ステップS680でさらにバイオフィードバックをかけて行うかを判定する。例えばバイオフィードバックのかけかたをLV1〜LV3の3段階で設定してあった場合には、その3段階が全て終了していなければ、またステップS640に戻る。3段階全てが終了していれば、ステップS690で、感覚機能が機能していない旨表示する。
【0074】
なおここではバイオフィードバックを3段階で行うように設定したが、これは被験者の状況に応じて、5段階などでレベルは適宜設定することができる。
(6)まとめ
身体機能が損なわれてリハビリテーション訓練を行うにあたり、医師やセラピストの経験によらず、安定的に訓練プログラムを提供することが求められている。したがって、本発明では訓練プログラムを開発するための、客観的かつ簡便な計測装置の提供を目的としている。
【0075】
そこで、本発明では、柔軟性のある測定部10と、その歪みを測定する歪みゲージ12と、歪みゲージで測定された信号を処理するブリッジ回路20と、ブリッジ回路で処理された信号(電圧)を増幅するアンプ30と、増幅された信号を処理する処理手段40と、を備える感覚統合運動機能の計測装置を提供する。
【符号の説明】
【0076】
10・・・測定部
11・・・測定部の本体部
12・・・歪みゲージ
20・・・ブリッジ回路
30・・・アンプ
40・・・処理装置
41・・・パソコン
42・・・記憶部
50・・・表示部
51・・・モニタ
【技術分野】
【0001】
この発明は、感覚統合運動機能の計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な理由により身体機能が損なわれた場合、リハビリテーション訓練を行うことで、運動機能の回復を目指すのが一般的である。そのような場合、医師やセラピストの経験による判断でリハビリテーション訓練が行われている。
【0003】
特許文献1には、中枢神経への障害へのリハビリテーション方法について開示がされている。当該発明では、力センサを用いて得た情報を表示することによって、バイオフィードバックを得る技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、視覚・聴覚の視点から各感覚器官を刺激し、脳神経や各神経系及びそれらの伝達神経系等の刺激・活性化を促すことで、運動能力や神経系の維持等を促す技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、リハビリテーションを行なうにあたって、運動感覚機能を評価する装置が開示されている。設定された量を動かすことで、下半身及び下肢の運動感覚機能を評価する装置が開示されている。
【0006】
なお、特許文献4には、1人でもゲーム感覚でリハビリテーションを行なえる装置が、特許文献5には、膝の屈伸について認識できた角度と実際に曲げられた角度を測定することで、認知訓練を行なう装置が開示されている。また、指の輪を開こうとする力に抵抗して保持する力を計測する技術が特許文献6に開示されている。さらに、球形状もしくは円筒状の把持部と圧電素子を有する圧力計が特許文献7に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−8605号公報
【特許文献2】特開2008−206932号公報
【特許文献3】特開2006−296468号公報
【特許文献4】特開2002−272795号公報
【特許文献5】特開2003−175085号公報
【特許文献6】特開2004−49828号公報
【特許文献7】特開2001−29508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、これまでに提案されてきた一般的なリハビリテーション器具は、大型のものが多い。またセンサなどで、リハビリテーションの効果や運動機能等を解析する場合には、複数のセンサを必要とするものが多く(例えば、複数の力センサとCCDカメラの画像を組み合わせるなど)、処理が複雑になりがちである。
【0009】
また、一つの装置で特定部位の訓練しか行なえないものがほとんどである。
【0010】
従来、様々な理由により身体機能が損なわれた場合、リハビリテーション訓練を行うことで、運動機能の回復を目指すのが一般的である。そのような場合、医師やセラピストの経験による判断でリハビリテーション訓練が行われている。しかしながらこのような手法では、検者間で差が生まれ、リハビリテーション訓練による回復効果にも顕著な違いが現れてしまう。以上の理由から、より効果の高い安定した訓練プログラムを作成するには客観的かつ簡便に判断可能な計測装置が望まれている。
【0011】
そこで本発明では、これらの要望を満たす計測装置を開発し、それを用いて四肢等の感覚統合運動機能の定量的評価システムを構築することを目的とする。特に本発明では、把持動作データの取得から、感覚統合運動機能の定量的評価を行う。なお、本明細書中では感覚統合運動機能という言葉を用いているが、感覚統合運動、感覚運動統合機能、感覚運動統合と呼ばれることもある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の感覚統合運動機能の計測装置では、柔軟性のある測定部本体と、測定部本体の歪みを測定する歪みゲージと、歪みゲージで測定された信号を処理するブリッジ回路と、ブリッジ回路で処理された信号を増幅する信号増幅アンプと、信号増幅アンプで得られた数値を処理することができる処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
柔軟性のある測定部本体は、被験者によって把持などの測定対象となる動作を行われる。また、測定部本体に柔軟性のある素材を用いることで、つぶさないように保持することが硬い場合に比べて困難になる。柔軟性のある素材(柔らかいもの)を潰さないように把持するためには、特に手指の場合には、手指の協調性が必要となる。そのため、手指の協調性が取れているかどうかを、判断することができる。つまり、圧力計や硬いものを把持する場合とは異なる能力が必要となり、手指の能力の一つの指針となりうる。
【0014】
そのため、以前から、一部の療法士によって、柔らかいものをつぶさないように把持できるかどうかの確認のために、紙で作成した筒などを握らせて、潰したか潰していないかの判定を行うということが行われていた。しかし、この方法では、潰したか潰さないかのどちらかでしか結果が分からず、実際にどのような力が加えられているかという情報をえることができなかった。しかし、本発明の装置では、どのような力が加えられているかを計測することができる。
【0015】
また、本発明の装置においては、自分ではつぶしていないつもりでも、実際につぶれているなどの極微小な変化をみることができる。また、微小な力でも変形を伴わせることで、被験者の目に明らかな結果を提示できるのと同時に、反発力という形で被験者に刺激を与えることができる。
【0016】
測定部本体の変形量は歪みゲージを用いることで正確に測定することができる。歪みゲージから読み取られた変形量によって、抵抗値が変化する。なおこの歪みゲージの数は必要な精度に応じて増やすことができる。
【0017】
歪みゲージで変化した抵抗値の信号をブリッジ回路に入れることで、微小な抵抗値の変化を電圧値の変化として定量的に測定することが可能となる。
【0018】
信号増幅アンプを用いることで、そのままでは微弱な信号をその後の処理に適するように増幅する。
【0019】
また、処理手段で得られた信号をもとに適切に処理を行う。具体的には、後述するように、健常者と障害者の値を比較してレーダーチャートの作成、バイオフィードバックをかけるための値の処理や、結果を表示するための処理など、必要な様々な処理を行う。
【0020】
本発明の処理手段の他の態様として、被験者に対して測定動作の指示をする測定指示手段と、測定指示手段の指示に従い測定された数値を解析する解析手段と、解析手段で解析された結果を表示する表示手段と、を備えるようにすることもできる。
【0021】
測定指示手段は、たとえば測定動作として把持動作を行う場合に、把持のタイミングを視覚的もしくは聴覚的に合図を出すようにする。もしくは、合図を出さない場合には、測定を開始する前に、何秒ずつどのような動作を行えばよいかを指示するようにしてもよい。
【0022】
このように構成することで、結果を適切に処理し、障害の程度を把握することができる。また、測定データを解析することで、患者等の素人が見ても、視覚的に理解ができる結果となる。
【0023】
本発明の処理手段の他の態様として、上記処理手段は、被験者に対する測定内容を開発する開発手段を備えるようにすることもできる。
【0024】
このように構成することで、障害に応じた測定プログラムを開発することができる。患者毎に症状は千差万別なため、療法士の治療経験から患者に適した治療方法を開発することができれば、よりリハビリテーション効果をあげることができる。
【0025】
本発明の処理手段の他の態様として、測定する際にバイオフィードバックをかけるかどうかを判定する判定手段と、バイオフィードバックをかける場合に段階的にバイオフィードバックの程度を調節する調節手段と、を有し、上記処理手段で処理された結果を表示する表示手段と、を備えるようにすることもできる。
【0026】
ここで、バイオフィードバックとは、生体機能情報を工学的な助けをかりて、数値などで表現して、人間がわかる情報に置き換えて、伝えることをさす。
【0027】
このように構成することで、バイオフィードバックのかけ方により、どの程度感覚機能が弱っているかを測定することができる。
【0028】
本発明の処理手段の他の態様として、開眼での測定と閉眼での測定を指示する測定指示手段と、開眼と閉眼での測定結果を比較処理する比較手段と、を備えるようにすることもできる。
【0029】
このように構成することで、運動機能と感覚機能を切り分けて評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明における感覚統合運動機能の計測装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の感覚統合運動機能の計測装置測定部の一例を示す図である。
【図3】計測装置の制御のメインのフローチャートである。
【図4】メインのフローチャートのステップS10の測定サブルーティンのフローチャートである。
【図5】メインのフローチャートのステップS20の解析サブルーティンのフローチャートである。
【図6】メインのフローチャートのステップS30の表示サブルーティンのフローチャートである。
【図7】メインのフローチャートのステップS40の開発サブルーティンのフローチャートである。
【図8】開発のフローチャートのステップS400の把持動作パターンの作成のサブルーティンのフローチャートである。
【図9】開発のフローチャートのステップS450の検査項目登録のサブルーティンのフローチャートである。
【図10】本発明の実施例におけるパラメータの定義の図である。
【図11】本発明の実施例におけるレーダーチャートの例の図である。
【図12】感覚統合運動機能の計測装置を運動機能と感覚機能の切り分けの測定装置として用いる場合の処理のフローチャートである。
【図13】感覚統合運動機能の計測装置を感覚機能の障害の程度の測定装置として用いる場合の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
(1)感覚統合運動機能の計測装置の概略構成
(2)感覚統合運動機能の計測装置の制御
(3)解析の具体例
(4)変形例1(運動機能と感覚機能の切り分け)
(5)変形例2(BF)
(6)まとめ
(1)感覚統合運動機能の計測装置の概略構成
図1は、本発明における感覚統合運動機能の計測装置の概略構成を示す図である。装置は測定部10と、ブリッジ回路20と、アンプ30と、処理装置40と、表示部50とから構成される。柔軟性のある素材からできた測定部10に貼り付けられた歪みゲージ12で測定された値が、ブリッジ回路20とアンプ30を通して処理装置40に送られる。そして、処理装置40で処理された結果が表示部50に表示される。
【0032】
さらに具体的に説明する。図2は、測定部10の実施形態の一例である。測定部10は中空の管状の柔軟物の本体部11と、歪みゲージ12から構成される。本体部11は、測定する部位にあわせて大きさを変化させることができる。また、本体部11は硬い素材でできたものと、柔軟性のある素材で用意することもできる。柔軟性のある素材の方の本体の素材としては、例えばシリコンがあげられる。その理由としては、ある程度つぶれたときの復元力と被験者への刺激を促す反発力があること、また加工のしやすさや、被験者に対する安全性などが挙げられる。また、柔軟性のある素材の他の一例として、ポリエチレンがあげられる。ポリエチレンの場合にはシリコンより柔らかいため、把持がさらに困難になり感覚統合運動機能を正確に計測することができる。なお、柔軟性(柔らかさ)については、訓練者の症状に応じて個々に設定することが可能である。
【0033】
本体部を中空の筒状にしたのは、内側に歪みゲージ12が貼り付けやすいため、製作が容易であるからである。ここでは中空の管状のものを例としてあげたが、管状でなく角柱状などでもいいし、中空でなくても流体を詰めたものでも良い。また、中空でない場合には、歪みゲージ12を埋め込む等の加工をすればよい。
【0034】
例えば、本体部11の内部側面に約90度ずつ位置をずらして、歪みゲージ12を4つ貼り付ける。このような位置とする理由は検出精度をあげるためである。また、把持する際の指の位置による計測値への影響を軽減することが可能となる。歪みゲージ12の数については検出精度の要求に応じて増やしていく。
【0035】
歪みゲージ12で得られた信号はブリッジ回路20に入る。ブリッジ回路20を介すことにより、微小な抵抗値の変化を電圧値として計測することができる。歪みゲージ12のブリッジへの結線方法は、ゲージに対する温度補償や出力電圧のことを考えて4アクティブゲージ法とする。4アクティブゲージ法とは、ブリッジ回路の4辺にひずみゲージが接続される回路で、4枚ともアクティブゲージとする方法である。
【0036】
ブリッジ回路20で処理された信号はアンプ30で増幅される。アンプ30を介すのは、そのままの信号では微弱なため、その後の処理をするのには適さないためである。
【0037】
処理装置40の例としてパソコン41を本実施例では用いている。また処理装置40には、測定結果等を記憶する記憶部42を備えている。なお記憶部42はパソコン41のハードディスクなどの内部記憶媒体でも、外付けハードディスクやUSBメモリなどの外部記憶媒体でもよい。パソコン41では、アンプ30で増幅された信号を元に、測定結果を記憶部42に記憶し、後述する制御を行う。
【0038】
表示部50では、処理装置で処理された結果を表示する。この表示方法としては、視覚にうったえる様に、モニタ51に表示することもできるし、音声の強弱で状況がわかるようにしても良いし、その両方を用いても良い。
【0039】
(2)感覚統合運動機能の計測装置の制御
図3は、計測装置の制御のメインのフローチャートである。
【0040】
ステップS1で、パソコン41によってメニュー画面が表示される。使用者は、メニュー画面から実施するメニューを選択する。ここではメニューの内容として、評価メニュー、表示メニュー、開発メニューがあり、メニュー画面にはそれらが選択可能な状態で表示されている。ステップS2〜ステップS4で、パソコン41がどのメニューを選択したか判定する。評価メニューを使用者が選択していると、ステップS2がYESになり、パソコン41がステップS10〜のサブルーティンを実施する。同様に、表示メニューを使用者が選択していると、ステップS3がYESとなり、パソコン41がステップS30のサブルーティンを実施する。同様に、使用者が開発メニューを選択すると、ステップS4がYESとなり、パソコン41がステップS40のサブルーティンを実施する。どのメニューも使用者が選択していない場合には、ステップS5でパソコン41がメニューの選択がされていないと判断し、ステップS1に戻る。
【0041】
図4は、メインのフローチャートのステップS10の測定サブルーティンのフローチャートである。
【0042】
測定のサブルーティンが開始されると、ステップS101で、パソコン41によって、把持動作パターンの選択表示画面が表示される。把持動作パターンの選択表示画面には、どのようなパターンで把持動作を行うかのパターンの一覧が表示されている。たとえば、2分把持して2分離すパターンや5分把持して5分離すパターン等が選択可能な形で表示されている。次にステップS102で、把持動作パターンが使用者によって選択されたとパソコン41が判断すると、ステップS103で、選択された把持動作パターンを例えば5分把持5分離すパターンです等と表示し、ステップS104で把持動作の開始の合図としてスタート表示やスタート音の発生を行う。パターンにあわせて被験者が把持動作を行っている間、ステップS105で歪みゲージ12からブリッジ回路20、アンプ30を介して送られてくる時系列データをパソコン41が収集する。ステップS106で、パソコン41が終了条件を満たしたと判断すると、ステップS107で、時系列データを記憶部42に保存し、サブルーティンを終了する。
【0043】
図5は、メインのフローチャートのステップS20の解析サブルーティンのフローチャートである。
【0044】
解析のサブルーティンが開始されると、ステップS201で、パソコン41によって、測定のサブルーティンで測定された歪みゲージの時系列データがいつの誰のデータで解析済みかという情報が選択可能な形で表示される。ここでは、測定後未解析のデータや既に解析済みのデータが表示されるため、その中から解析するデータを使用者が選択する。ステップS202で、パソコン41によって、時系列データが選択されたと判断すると、ステップS203で選択された時系列データを読み込む。すると、ステップS204で、パソコン41が後述する障害検査項目の値の抽出を行う。ステップS205で、パソコン41は規定された全ての検査項目の値が抽出できたかを判定し、抽出できなかった場合には、ステップS209でエラー表示を行い、サブルーティンを終了する。抽出がされた場合には、ステップS206で、規定項目の健常者データを読み込み、ステップS207で、抽出した時系列データと健常者のデータを比較し、必要に応じてレーダーチャート等比較可能な形にする。そしてステップS208で、パソコン41が比較した結果を保存し、サブルーティンを終了する。
【0045】
図6は、メインのフローチャートのステップS30の表示サブルーティンのフローチャートである。
【0046】
表示のサブルーティンが開始されると、ステップS301で、パソコン41によって、解析済みの検査データの選択表示画面がいつのだれのデータかわかる形で選択可能な形で表示される。ステップS302で、検査データが使用者によって選択されたと判断すると、ステップS303で、パソコン41によって、選択された検査データを読み込み、ステップS304で検査データをモニタ51に表示し、サブルーティンを終了する。
【0047】
図7は、メインのフローチャートのステップS40の開発サブルーティンのフローチャートである。
【0048】
開発のサブルーティンが開始されると、ステップS41で、パソコン41によって、開発メニューの選択表示画面が表示される。開発メニューには把持動作パターンの作成メニューと被験者実験のメニューが選択可能な形で表示される。ステップS42で、把持動作パターンの作成メニューが使用者によって選択されたと判断すると、ステップS400の把持動作パターンの作成のサブルーティンに進む。ステップS42で、把持動作パターンの作成メニューが選択されていないと判断すると、ステップS43で、被験者実験のメニューが選択されているかどうかを判断する。この被験者実験のメニューでは、健常者と障害者と分けてメニューを作成し、それぞれ別のデータベースに登録するようにしてもよい。ステップS43で、被験者実験のメニューが選択されたと判断すると、ステップS10の測定サブルーティンを行う。ステップS10の測定サブルーティンが終了すると、測定結果をステップS44で登録する。この際の登録は健常者と障害者と分けて登録するようにしてもよい。ステップS400のサブルーティンが終了、もしくはステップS44でデータベースへの登録が行われると、ステップS46に進む。ステップS46では、開発に必要な所定の実験データの数が健常者・障害者ともに集まっているかを判定する。所定のデータが収集されていると判断すると、ステップS450の検査項目の登録サブルーティンに進む。ステップS46で、所定のデータが収集されていないと判断すると、ステップS47で、被験者の実験を引き続き行うかどうか判定する。ステップS47で、使用者が被験者の実験を引き続き行うと入力したと判定すると、ステップS10に戻り、引き続き被験者の実験を行う。ステップS47で、使用者が被験者の実験を行わないと判断すると、このサブルーティンを終了する。
【0049】
図8は、開発のフローチャートのステップS400の把持動作パターンの作成のサブルーティンのフローチャートである。
【0050】
把持動作パターンの作成のサブルーティンが開始されると、ステップS401で、使用者が把持回数を入力し、パソコン41がそれを保存する。同様にステップS402で把持時間を保存し、ステップS403で目標とする把持力を保存し、ステップS404でリリース時間を保存する。そして、ステップS405でそれ以外の測定に必要な項目を保存する。そしてステップS406で、把持動作パターンの設定が完了したかどうかを使用者に確認し、使用者が完了したと入力したと判定すると、ステップS407で作成した把持動作パターンを表示する。ステップS408で意図したとおりの設定になっているかどうかを使用者に確認し、使用者が意図通りになっていると入力したと判定すると、把持動作パターンの作成のサブルーティンを終了する。
【0051】
図9は、開発のフローチャートのステップS450の検査項目登録のサブルーティンのフローチャートである。
【0052】
検査項目登録のサブルーティンが開始されると、ステップS451で、パソコン41によって、開発プログラムで作成された把持動作パターンの選択画面が表示される。ステップS452で、把持動作パターンが選択されたと判断すると、ステップS453で選択された把持動作パターンで測定された健常者と障害者の時系列データを読み込んでモニタ51に表示する。表示された時系列データをもとに、ステップS454で後述するように特徴量として読み取る値を障害検査項目と使用者が指定したものをパソコン41が登録し、その基準値を使用者が調整し、その結果をパソコン41が登録する。ステップS455で、パソコン41によって、設定された障害検査項目とその基準値を登録して、サブルーティンを終了する。
【0053】
(3)解析の具体例
感覚統合運動機能の計測装置でのステップS20の解析のサブルーティンにおける障害検査項目の値の抽出の具体例について説明する。
【0054】
まず解析の具体例を説明するにあたり、解析するための時系列データの測定の方法について説明する。測定方法として、把持動作方法を用いる。ここで把持動作方法とは、手で10秒毎の合図とともに本体部11をつぶさずに把持して、5cm持ち上げ、その後本体部11を静かにおいて手を離すという方法を所定回数繰り返し行う方法である。なおこの測定方法はあくまでも一例であって、他の方法であってもよい。また測定対象部位は本実施例では手指であるが、体の他の四肢に対しても用いることができる。なお、測定部10の大きさは、測定対象となる体の部位に合わせたサイズの測定部10を用意する。たとえば、手指の場合には、手で普通に握れる程度の大きさのものとする。
【0055】
ここで、評価に用いる検査項目について説明する。図10は把持動作方法を用いた際の定量的に測定するための検査項目を定義した図である。把持動作方法における動作を4つの状態に分類する。
【0056】
Waitとは手を初期位置に初期姿勢で置いた状態を示す。
【0057】
Gripとは、合図が鳴って、手を初期位置から水平に移動して、測定部10を潰さずに把持し、持ち上げるまでの状態を示す。
【0058】
Holdとは、測定部10を潰さずに5cm持ち上げた状態を次の合図が鳴るまで保ち続ける状態を示す。
【0059】
Releaseとは、合図が鳴ってから、測定部10を静かに下ろし、測定部10を放して手を初期位置に初期姿勢で置くまでの状態を示す。
【0060】
そして、Wait以外の3つの状態をGripについては立ち上がり時間Tgで、Holdについては標準偏差Hsで、Releaseについては立ち下がり時間Trを用いて評価をする。また対象物に対する適切な把持力の調整が行えているかの評価としてHold時の平均電圧Vhを用い、体性感覚フィードバックの評価についてはオーバーシュート電圧OSとHold時の平均電圧Vhと、繰り返し動作を行う中でそれぞれの減少率OS’,Vh’を用いて評価をする。ここで、図10においてTgとは合図が鳴ってから電圧値が平均電圧Vh(Hold時の後の5秒間Thの電圧の平均とったもの)に達するまでの時間を示し、Hsとは、Th間における標準偏差を示し、Trとは、合図が鳴ってから電圧値が零になるまでの時間を示し、OSとは立ち上がり波形の最大電圧とVhとの差を示し、OS’は最初の試行時のOSと繰り返した最終試行時のOSの減少率を示し、Vh’は最初の試行時のVhと繰り返した最終試行時のVhの減少率である。
【0061】
さらに測定した6つの検査項目の値をもとにどのように定量的な評価を行うかを説明する。まず、6つの検査項目それぞれの健常者領域というものを算出する。これは同じ条件下で複数の健常者及び障害者に把持動作を行ってもらい、6つの検査項目の値を測定し、その健常者の平均値及び標準偏差を求め、障害者の値と比較することにより健常者領域を確定する。このようにして求めた健常者領域の値の範囲を1としてレーダーチャートに設定する。図11はこのようなレーダーチャートの例である。そして、その値と被験者の実際の実行結果においての各検査項目の値を比較する。この各検査項目のレーダーチャートでの値が大きくなればなるほど健常者領域から外れていくことを意味している。各検査項目と把握動作に影響を及ぼす機能は、TgがGrip動作における関節可動域と関係し、TrがRelease動作における関節可動域と関係し、HsがHold動作における筋持久力と関係し、Vhが把持動作対象物に対する適切な把持力に関係し、Vh’及びOS’は感覚統合運動機能に関係している。このような関係によって、レーダーチャートを見ることで把持動作におけるどのような動作が苦手で,どの機能が不足しているかが一目瞭然となる。
【0062】
このレーダーチャートの結果を見て療法士が訓練メニューを構築することによって、効率的な訓練が可能となる。また患者側からすると、日々の訓練を記録することによって自分の置かれている立場や目指すべき目標が明確になるため、訓練のモチベーションの向上に繋がると考えられる。
【0063】
(4)変形例1
以下に、感覚統合運動機能の計測装置を運動機能と感覚機能の切り分け態様を説明する。なお上記説明と同様の部分は省略し、異なる部分のみをここでは説明するものとする。
【0064】
手の把持動作における入力は視覚と、体性感覚である深部感覚と表在感覚の3つで、それらを統合して運動機能に伝わり,把持動作を行うということを表している。臨床の場面では、障害が、運動機能と感覚機能ならびにそれらの複合機能である統合運動のどの機能にあるのかを切り分けて評価することが困難である。
【0065】
そこで、感覚統合運動機能の計測装置を運動機能と感覚機能を切り分けて評価するための測定装置として用いる場合には、運動機能と感覚機能を切り分けて評価するため、以下の方法で測定する。
【0066】
図12は、感覚統合運動機能の計測装置を運動機能と感覚機能を切り分けて評価する測定装置として用いる場合の処理のフローチャートである。
【0067】
切り分け装置としての機能が選択された場合、ステップS500で把持動作方法を指示する。ここで把持動作方法の指示とは、開眼にするか閉眼にするかをパソコン41は被験者に対して指示する。順番としては開眼を先に指示し、ステップS550の結果がNoで戻ってきたときに閉眼で行う。そしてステップS510で図4に示した測定プログラムを実施する。その後ステップS520で図5に示した解析プログラムを実施する。ステップS520で行った解析結果をもとに判定をステップS530で行う。ステップS530での判定の結果が健常者のレベルにあるかどうかを健常者のデータをもとにステップS540で判定する。その結果健常者のレベルにあると判定された場合には、ステップS550に進む。ステップS550では、開眼と閉眼の両方での測定が終わっているかを判定し、終了していない場合(開眼のみしか行っていない場合)にはステップS500に戻る。ステップS550で開眼と閉眼の両方の測定が終わっていると判断した場合にはステップS560に進む。またステップS540で結果が健常者のレベルにないと判断された場合には、ステップS560に進む。ステップS560では、結果を表示する。開眼、閉眼ともに潰さずに把持動作ができた場合は感覚機能、運動機能ともに正常となり、正常という結果を表示する。開眼において把持動作が達成されなかった場合には運動機能に問題ありと判断し、その結果を表示する。ただしこの場合には感覚機能にも問題がある場合もありえる。また、開眼においてのみ潰さずに把持動作ができた場合は、把持動作自体は正常に行えるため運動機能に問題はないが、感覚機能に問題があるということになるので、その結果を表示する。
【0068】
以上の手順を用いることによって、感覚機能と運動機能のどちらに障害があるのかを切り分けることができる。
【0069】
(5)変形例2
感覚統合運動機能の計測装置をバイオフィードバックの程度を変更することで感覚機能の障害の程度を測定する装置として用いる場合について説明する。なお上記説明と同様の部分は省略し、異なる部分のみをここでは説明するものとする。
【0070】
ここで、バイオフィードバックとは、生体機能情報を工学的な助けをかりて、数値などで表現して、人間がわかる情報に置き換えて、伝えることをさす。例えば、測定部のつぶれ具合を、モニタ51などで表示したり、音などの強弱で表現したりすることがあげられる。そのため、バイオフィードバックの量を調整することで、感覚機能が弱っている場合にそれを補助することができる。逆にいうと、バイオフィードバックで補助された量だけ感覚機能に障害があるということができる。そのため障害の程度の測定を行うことができる。
【0071】
図13は、感覚統合運動機能の計測装置を感覚機能の障害の程度の測定装置として用いる場合の処理のフローチャートである。ここではバイオフィードバックをかける方法としてモニタへのつぶれの表示という形で行う。なお、図中ではバイオフィードバックは、BFと表記している。
【0072】
障害の程度の測定装置としての機能が選択された場合、ステップS600でバイオフィードバックをかけずに、把持動作を行うように指示する。そしてステップS610で図4示した測定プログラムを実施する。その後ステップS620で図5に示した解析プログラムを実施する。ステップS620で行った解析結果をもとに結果が健常者レベルにあるかどうかの判定をステップS630で行う。ステップS630で健常者レベルにあると判定した場合には、ステップS690で、感覚機能に障害がない旨表示させる。
【0073】
ステップS630で健常者のレベルにないと判定された場合には、ステップS640でバイオフィードバックをかけた把持動作を行うように被験者に指示する。ステップS640では、バイオフィードバックをかける量を最初は少なくしておき、ステップS680でステップS640に戻ってくる毎に、バイオフィードバックをかける量を増やしていく。例えばLV1〜LV3の3段階でバイオフィードバックをかけたとすると、LV1では、バイオフィードバックを実際の値の5倍でかけ、LV2では実際の10倍などの形でバイオフィードバックをかけるといった形で行う。バイオフィードバックをかけた状態で、ステップS650で図4に示した測定プログラムを実施する。その後ステップS660で図5に示した解析プログラムを実施する。ステップS660で行った解析結果をもとに結果が健常者レベルにあるかどうかの判定をステップS670で行う。結果が健常者のレベルにあると判断されれば、ステップS690でどの程度バイオフィードバックをかけたかを表示する。(例えばLV1〜LV3などの形で表示をする。)ステップS670で、健常者のレベルにないと判断されれば、ステップS680でさらにバイオフィードバックをかけて行うかを判定する。例えばバイオフィードバックのかけかたをLV1〜LV3の3段階で設定してあった場合には、その3段階が全て終了していなければ、またステップS640に戻る。3段階全てが終了していれば、ステップS690で、感覚機能が機能していない旨表示する。
【0074】
なおここではバイオフィードバックを3段階で行うように設定したが、これは被験者の状況に応じて、5段階などでレベルは適宜設定することができる。
(6)まとめ
身体機能が損なわれてリハビリテーション訓練を行うにあたり、医師やセラピストの経験によらず、安定的に訓練プログラムを提供することが求められている。したがって、本発明では訓練プログラムを開発するための、客観的かつ簡便な計測装置の提供を目的としている。
【0075】
そこで、本発明では、柔軟性のある測定部10と、その歪みを測定する歪みゲージ12と、歪みゲージで測定された信号を処理するブリッジ回路20と、ブリッジ回路で処理された信号(電圧)を増幅するアンプ30と、増幅された信号を処理する処理手段40と、を備える感覚統合運動機能の計測装置を提供する。
【符号の説明】
【0076】
10・・・測定部
11・・・測定部の本体部
12・・・歪みゲージ
20・・・ブリッジ回路
30・・・アンプ
40・・・処理装置
41・・・パソコン
42・・・記憶部
50・・・表示部
51・・・モニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性のある測定部本体と、
前記測定部本体の歪みを測定する歪みゲージと、
前記歪みゲージで測定された信号を処理するブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路で処理された信号を増幅する信号増幅アンプと、
前記信号増幅アンプで得られた数値を処理することができる処理手段と、を備えることを特徴とする感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項2】
前記処理手段は、
被験者に対して測定動作の指示をする測定指示手段と、
前記測定指示手段の指示に従い測定された数値を解析する解析手段と、
前記解析手段で解析された結果を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項3】
前記処理手段は、被験者に対する測定内容を開発する開発手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項4】
前記処理手段は、
測定する際にバイオフィードバックをかけるかどうかを判定する判定手段と、
バイオフィードバックをかける場合に段階的にバイオフィードバックの程度を調節する調節手段と、を有し、
当該計測装置は、さらに前記処理手段で処理された結果を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項5】
前記処理手段は、開眼での測定と閉眼での測定を指示する測定指示手段と、開眼と閉眼での測定結果を比較処理する比較手段と、を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項1】
柔軟性のある測定部本体と、
前記測定部本体の歪みを測定する歪みゲージと、
前記歪みゲージで測定された信号を処理するブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路で処理された信号を増幅する信号増幅アンプと、
前記信号増幅アンプで得られた数値を処理することができる処理手段と、を備えることを特徴とする感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項2】
前記処理手段は、
被験者に対して測定動作の指示をする測定指示手段と、
前記測定指示手段の指示に従い測定された数値を解析する解析手段と、
前記解析手段で解析された結果を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項3】
前記処理手段は、被験者に対する測定内容を開発する開発手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項4】
前記処理手段は、
測定する際にバイオフィードバックをかけるかどうかを判定する判定手段と、
バイオフィードバックをかける場合に段階的にバイオフィードバックの程度を調節する調節手段と、を有し、
当該計測装置は、さらに前記処理手段で処理された結果を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の感覚統合運動機能の計測装置。
【請求項5】
前記処理手段は、開眼での測定と閉眼での測定を指示する測定指示手段と、開眼と閉眼での測定結果を比較処理する比較手段と、を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の感覚統合運動機能の計測装置。
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−24394(P2012−24394A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167151(P2010−167151)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(510203795)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(510203795)
【Fターム(参考)】
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