慢性リンパ性白血病細胞株および抗体を産生するためのその使用
【課題】 CLL株、CLL−AATならびにこれらの細胞を使用する抗体の調製および特徴づけること。
【解決手段】 ATCC受託番号XXXXXの下で寄託された、細胞株CLL−AAT。抗体を調製するための方法であって、該方法は、以下の工程:(i)請求項1に記載のCLL細胞株の表面上に提示される少なくとも1つの抗原に対する抗体を作製する工程;および(ii)該抗体が、CLL細胞関連抗原に結合することを決定する工程、を包含する、方法。
【解決手段】 ATCC受託番号XXXXXの下で寄託された、細胞株CLL−AAT。抗体を調製するための方法であって、該方法は、以下の工程:(i)請求項1に記載のCLL細胞株の表面上に提示される少なくとも1つの抗原に対する抗体を作製する工程;および(ii)該抗体が、CLL細胞関連抗原に結合することを決定する工程、を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2000年12月8日に出願された、米国仮出願番号60/254,113(この開示は本明細書中に参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
慢性リンパ性白血病(CLL)細胞由来の細胞株、ならびにCLL疾患の研究および処置におけるこれらの細胞の使用が、開示される。具体的には、本開示は、「CLL−AAT」と称され、ブダペスト条約の規約に従って、ATCC受託番号XXXXXで、2001年11月28日にAmerican Type Culture Collection(Manassas,Virginia,USA)に寄託された、CLL細胞株に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
慢性リンパ性白血病(CLL)は、白血球の疾患であり、そして西半球における最も通常の形態の白血病である。CLLは、ゆっくりと増殖するが延長した寿命を有する、悪性リンパ球の増殖に関する疾患の種々の群を代表する。CLLは、種々のカテゴリーに分類され、このカテゴリーとしては、例えば、古典的および混合型のB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)、B細胞およびT細胞の前リンパ性白血病(prolymphocyic leukemia)、ヘアリーセル白血病、ならびに大顆粒リンパ性白血病(large granular lymphocytic leukemia)が挙げられる。
【0004】
全ての異なる型のCLLのうちでも、B−CLLは、全ての白血病の約30%を占める。B−CLLは、50歳を超えた個体においてより頻繁に起こるが、より若い人々においても次第に増加して見られる。B−CLLは、形態学的には正常であるが生物学的には未熟なBリンパ球の蓄積(これは、機能の損失を導く)によって特徴付けられる。リンパ球は、通常、感染と戦うように機能する。しかし、B−CLLにおいて、リンパ球は、血液および骨髄に蓄積し、そしてリンパ節の膨潤を引き起こす。正常な骨髄細胞および血液細胞の生成が低下し、そして患者はしばしば、重篤な貧血および低い血小板計数を経験する。このことは、減少した数の白血球に起因して、生命を脅かす出血の危険性および重大な感染の発生を生じ得る。
【0005】
白血病のような疾患をさらに理解するためには、これらの疾患の病因、病原論、および生物学に関する研究のための道具として使用され得る、適切な細胞株を有することが重要である。悪性ヒトBリンパ球細胞株の例としては、前B急性リンパ芽球性白血病(Reh)、びまん性大細胞リンパ腫(WSU−DLCL2)、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WSU−WM)が挙げられる。不運なことに、既存の細胞株の多くは、臨床的に最も通常の型の白血病およびリンパ腫を代表しない。
【0006】
インビトロでのエプスタイン−バーウイルス(EBV)感染の使用は、悪性細胞の代表であるいくらかのCLL由来細胞株(特に、B−CLL細胞株)を生じた。これらの細胞株の表現型は、インビトロの腫瘍の表現型とは異なり、そのかわりに、B−CLL株の特徴は、リンパ芽球細胞株の特徴に類似する傾向がある。EBV感染の補助によってB−CLL細胞を不死化する試みは、ほとんど成功していない。このことの理由は不明であるが、EBVレセプターの発現、結合または取り込みの欠如に起因するのではないことは、公知である。Wellsらは、B−CLL細胞が、細胞周期のG1/S期で止められること、および形質転換関連EBV DNAが発現されないことを見出した。このことは、B−CLLでのEBVの感染が、正常なB細胞での感染とは異なることを示唆する。EBVで形質転換されたCLL細胞株は、さらに、分化し、EBVによって不死化されたリンパ芽球細胞株(LCL)とより類似した形態を有するようである。
【0007】
EBVネガティブなCLL細胞株である、WSU−CLLが、以前に樹立された(Mohammadら(1996)Leukemia 10(1):130−7)。しかし、他のこのような細胞株は、公知ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該分野において、EBVで形質転換することによって樹立されたのではなく、かつ初代CLL細胞に特徴的な表面マーカーを発現する、CLL細胞株に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1) ATCC受託番号XXXXXの下で寄託された、細胞株CLL−AAT。
(項目2) 抗体を調製するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)項目1に記載のCLL細胞株の表面上に提示される少なくとも1つの抗原に対する抗体を作製する工程;および
(ii)該抗体が、CLL細胞関連抗原に結合することを決定する工程、
を包含する、方法。
(項目3) 前記決定する工程が、前記抗体がCLL細胞上でアップレギュレートされる抗原に結合することを決定することを含む、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記決定する工程が、前記抗体がCLL細胞に特異的な抗原と結合することを決定することを含む、項目2に記載の方法。
(項目5) 前記抗体が、項目1に記載のCLL細胞株またはその一部での生物の免疫によって作製される、項目2に記載の方法。
(項目6) 前記抗体が、項目1に記載のCLL細胞株を用いて、合成抗体ライブラリーをパニングすることによって作製される、項目5に記載の方法。
(項目7) 前記ライブラリーを、ファージディスプレイによってスクリーニングして、前記抗体を単離する、項目6に記載の方法。
(項目8) CLL細胞に結合する抗体を特徴付けるための方法であって、該方法は、項目1に記載の細胞株に対する抗体の結合を評価する工程を包含する、方法。
(項目9) 前記抗体が、CLLに罹患している1人以上の患者から単離された初代CLL細胞を用いて、抗体ライブラリーをパニングすることによって単離される、項目8に記載の方法。
(項目10) 項目2に記載の方法によって産生される、抗体。
(項目11) 項目1に記載の細胞株によってアップレギュレートされる抗原に結合する、抗体。
(項目12) 以下:
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24および配列番号25、
からなる群より選択される配列を有する、抗体。
【0010】
(要旨)
1つの実施形態において、EBVでの不死化によって樹立されたのではない、悪性起源のCLL細胞株が提供される。この細胞株は、初代CLL細胞由来であり、そしてATCC受託番号XXXXXで寄託されている。好ましい実施形態において、この細胞株は、CLL−AATである。CLL−AATは、B−CLL初代細胞由来のB−CLL細胞株である。
【0011】
さらなる局面において、CLL−AAT細胞株は、CLLの診断および/または処置において有用なモノクローナル抗体を生成するために使用される。抗体は、免疫原として本明細書中に開示されるような細胞を使用することによって生成され得、従って、動物(この動物から、モノクローナル抗体が単離され得る)における免疫応答を上昇させる。このような抗体の配列が決定され得、そしてこの抗体またはその改変体は、組換え技術によって産生され得る。この局面において、「改変体」とは、そのモノクローナル抗体の配列に基づく、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体が挙げられる。
【0012】
さらに、組換えライブラリー由来の抗体(「ファージ抗体」)が、本明細書中に記載される細胞、またはこの細胞由来のポリペプチドを、これらの抗体を標的特異性に基づいて単離するためのベイトとして使用して、選択され得る。
【0013】
なおさらなる局面において、抗体は、抗体ライブラリーを、初代CLL細胞またはこの細胞由来の抗原を使用してパニングすることによって生成され得、そしてさらに、本発明の細胞株を使用して、スクリーニングおよび/または特徴付けされ得る。従って、CLLに特異的な抗体を特徴付けるための方法が提供され、この方法は、CLL細胞株に対する抗体の結合を評価する工程を包含する。
【0014】
さらなる局面において、当業者に周知の方法によって(例えば、免疫沈降、および引き続く質量分析によって)、CLL−AAT細胞株を使用して、CLL細胞において独特に発現されるタンパク質を同定するための方法が提供される。このようなタンパク質は、CLL−AAT細胞株、またはCLL患者由来の初代細胞において、独特に発現され得る。
【0015】
低分子ライブラリー(多くは市販のもの)が、細胞に基づくアッセイにおいて、CLL−AAT細胞株を使用してスクリーニングされて、これらの細胞に特徴的な増殖を調節し得る因子を同定し得る。例えば、CLL−AAT細胞株におけるアポトーシスを調節する因子、またはCLL−AAT細胞株の成長および/もしくは増殖を阻害する因子が、同定され得る。このような因子は、治療化合物の開発のための候補である。
【0016】
CLL−AAT細胞株から単離された核酸は、CCL特異的遺伝子を同定するための差引きハイブリダイゼーション実験において、またはマイクロアレイ分析(例えば、遺伝子チップ実験)において、使用され得る。CLL細胞において転写が調節される遺伝子が、同定され得る。この様式で同定されたポリペプチドまたは核酸遺伝子産物は、CLLに対する抗体または低分子治療剤の開発のための手掛かりとして、有用である。
【0017】
好ましい局面において、CLL−AAT細胞株は、細胞によって内在化される細胞表面成分に結合する内在化抗体を同定するために使用され得る。このような抗体は、治療用途のための候補である。特に、細胞質において安定なままであり、そして細胞内結合活性を維持する単鎖抗体は、この様式でスクリーニングされ得る。
【0018】
(詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合、「CLL」とは、任意のリンパ球(B細胞およびT細胞の種々の発生段階を含むが、これらに限定されない)に関与する、慢性リンパ性白血病をいい、CLLとしては、B細胞CLLが挙げられるが、これに限定されない。本明細書中で使用される場合、B−CLLとは、CD5+、CD23+、CD20dim+、sIgdim+、および細胞周期のG0/G1で阻止されている成熟B細胞表現型を有する白血病をいう。
【0019】
「悪性起源」とは、形質転換されている(例えば、EBVによって)非増殖細胞とは対照的に、悪性CLL初代細胞由来の細胞株の誘導をいう。本開示に従う細胞株は、それ自体で、悪性の表現型であってもなくてもよい。「悪性」表現型を有するCLL細胞は、繰り返しの細胞増殖周期によって特徴付けられる、基質培地から離れた細胞増殖を含み、そしてアポトーシスに対する耐性を示す。
【0020】
(細胞株の調製)
細胞株は、当業者に公知の確立された方法に従って産生され得る。一般に、細胞株は、不死化細胞が培養物中で自発的に生成されるまで、患者由来の初代細胞を培養することによって産生される。次いで、これらの細胞を、単離し、そしてさらに培養して、アポトーシスに耐性を示すクローン細胞集団または細胞を産生する。
【0021】
例えば、CLL細胞は、CLLに罹患している患者から採取された末梢血から単離され得る。これらの細胞を、洗浄し得、そして必要に応じて、存在する細胞の型を決定するために免疫型決定(immunotype)し得る。その後、細胞を、培地(例えば、IL−4を含有する培地)中で培養し得る。有利には、培地の全てまたは一部を、培養プロセス中に1回以上交換する。それによって、細胞株が、単離され得、そして培養物中での増加された増殖によって同定される。
【0022】
(モノクローナル抗体の調製)
本明細書中で使用される場合、抗体とは、選択された標的に結合し得る、完全な抗体または抗体フラグメントをいう。これらには、以下が含まれる:Fv、ScFv、Fab’およびF(ab’)2、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、操作された抗体(キメラ抗体、CDR移植抗体およびヒト化抗体、完全ヒト抗体、および人工的に選択された抗体を含む)、ならびにファージディスプレイまたは代替技術を使用して産生される合成抗体または半合成抗体。小さいフラグメント(例えば、FvおよびScFv)は、それらの小さいサイズおよび結果としての優れた組織分布に起因して、診断適用および治療適用のための有利な特性を有する。
【0023】
これらの抗体は、特に、診断適用および治療適用に意図される。従って、これらは、毒素または標識のようなエフェクタータンパク質を含む、改変された抗体であり得る。インビボでの抗体分布の画像化を可能にする標識が特に好ましい。このような標識は、放射活性標識または放射線不透過性標識(例えば、金属粒子)であり得、これらは、患者の体内で容易に可視化され得る。さらに、標識は、蛍光標識、または患者から取り出した組織サンプル上で可視化され得る他の標識であり得る。
【0024】
組換えDNA技術を使用して、本開示に従って産生された抗体を改良し得る。このようにして、キメラ抗体は、診断適用または治療適用においてその免疫原性を減少するために構築され得る。さらに、免疫原性は、CDRグラフティング、および必要に応じて、フレーム改変により、抗体をヒト化することによって最小化され得る。米国特許第5,225,539号を参照のこと(この内容は、参考として本明細書中で援用される)。
【0025】
抗体は、動物の血清から得られ得るか、またはモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントの場合には、細胞培養物中で産生され得る。組換えDNA技術を使用して、確立された手順に従って、細菌細胞培養物、または好ましくは、哺乳動物細胞培養物において抗体を産生し得る。選択された細胞培養系は、好ましくは、抗体産物を分泌する。
【0026】
別の実施形態において、本明細書中に開示される抗体の産生のためのプロセスは、ハイブリッドベクターで形質転換された宿主(例えば、E.coliまたは哺乳動物細胞)を培養する工程を包含する。ベクターは、1以上の発現カセットを含み、その発現カセットは、プロモーター、そのプロモーターを作動可能に連結させた、シグナルペプチドをコードする第1のDNA配列、および、その第1のDNA配列を適切な読み枠で連結させた、抗体タンパク質をコードする第2のDNA配列、を含む。次いで、抗体タンパク質を、収集しそして単離する。必要に応じて、発現カセットは、抗体タンパク質をコードするポリシストロニック(例えば、ジシストロニック)のDNA配列に作動可能に連結したプロモーターを含み得、このDNA配列は、各々個々に、シグナルペプチドに対して、適切な読み枠で作動可能に連結される。
【0027】
インビトロでのハイブリドーマ細胞または哺乳動物宿主細胞の増殖は、適切な培養培地で行われ、適切な培養培地としては、従来の標準培養培地(例えば、Dulbecco改変Eagle培地(DMEM)またはRPMI 1640培地など)が挙げられ、これらには、必要に応じて、哺乳動物血清(例えば、ウシ胎仔血清)、または微量元素および増殖維持補助剤(例えば、フィーダー細胞(例えば、正常マウス腹膜滲出細胞、脾細胞、骨髄マクロファージ)、2−アミノエタノール、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、オレイン酸など)が補充される。細菌細胞または酵母細胞である宿主細胞の増殖は、当該分野で公知の適切な培養培地中で同様に行われる。例えば、細菌について、適切な培養培地としては、培地LE,NZCYM、NZYM、NZM、Terrific Broth、SOB、SOC、2×YT、またはM9ミネラル培地が挙げられる。酵母について、適切な培養培地としては、YPD、YEPD、最少培地、または完全最少ドロップアウト(Dropout)培地が挙げられる。
【0028】
インビトロ産生は、比較的純粋な抗体調製物を提供し、そして大量の所望の抗体を与えるためにスケールアップを可能にする。細菌細胞、酵母、植物または哺乳動物細胞の培養のための技術は、当該分野で公知であり、そしてこれらには、均質懸濁物培養(例えば、エアリフトリアクタまたは連続攪拌リアクタにおける)および固定化または捕捉化細胞培養(例えば、中空繊維内、マイクロカプセル内、あるいはアガロースマイクロビーズ上またはセラミックカートリッジ上での)が挙げられる。
【0029】
大量の所望の抗体はまた、インビボで哺乳動物細胞を増殖させることによって得られ得る。この目的のために、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、組織適合性の哺乳動物に注入し、抗体産生腫瘍の増殖を引き起こす。必要に応じて、動物を、注入前に、炭化水素(特に、プリスタン(テトラメチルペンタデカン)のような鉱油)でプライムする。1〜3週間後、抗体を、これらの哺乳動物の体液から単離する。例えば、Balb/cマウス由来の抗体産生脾細胞との適切な骨髄腫細胞の融合によって得られたハイブリドーマ細胞、または所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株Sp2/0由来のトランスフェクトされた細胞を、Balb/cマウス(必要に応じて、プリスチン(pristine)で予め処理した)に腹腔内注入する。1〜2週間後、腹水を動物から採取する。
【0030】
前述および他の技術は、例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497;米国特許第4,376,110号;HarlowおよびLane、Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harbor(この開示は、その全てが参考として本明細書中で援用される)において議論される。組換え抗体分子の調製のための技術は、上記の参考文献において、そしてまた、例えば、WO97/08320;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,508,717号;Smith、1985、Science、第225巻、1315−1317頁;ParmleyおよびSmith 1988、Gene 73、305−318頁;De La Cruzら、1988、Journal of Biological Chemistry、263、4318−4322頁;米国特許第5,403,484号;米国特許第5,223,409号;WO88/06630;WO92/15679;米国特許第5,780,279号;米国特許第5,571,698号;米国特許第6,040,136号;Davisら、Cancer Metastasis Rev.、1999;18(4):421−5;Taylorら、Nucleic Acids Research 20 (1992):6287−6295;Tomizukaら、Proc.Nat.Academy of Sciences USA97(2)(2000):722−727に記載される。これら全ての参考文献の内容は、参考として本明細書中に援用される。
【0031】
細胞培養物上清を、優先的には、CLL細胞の免疫蛍光染色によって、免疫ブロッティングによって、酵素免疫アッセイ(例えば、サンドイッチアッセイまたはドットアッセイ)または放射免疫アッセイによって、所望の抗体についてスクリーニングする。
【0032】
抗体の単離のために、培養上清中または腹水中の免疫グロブリンを、例えば、硫酸アンモニウムでの沈殿、吸湿性材料(例えば、ポリエチレングリコール)に対する透析、選択的な膜を通す濾過などによって、濃縮し得る。必要な場合および/または所望の場合、抗体を、従来のクロマトグラフィー方法(例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAEセルロースによるクロマトグラフィーおよび/または(免疫)アフィニティークロマトグラフィー(例えば、本開示に従うCLL細胞株由来の1以上の表面ポリペプチドでの、あるいはプロテインAまたはプロテインGでの、アフィニティークロマトグラフィー))によって精製する。
【0033】
別の実施形態は、適切な哺乳動物(例えば、ウサギ)を、プールされたCLL患者サンプルで免疫するという点で特徴付けられる、細胞株に対する抗体を分泌する細菌細胞株の調製のためのプロセスを提供する。免疫されたウサギから産生されるファージディスプレイライブラリーを、当該分野で周知の方法(例えば、本明細書中に参考として援用される種々の参考文献に開示される方法のような)に従って、構築し、そして所望の抗体でパニングする。
【0034】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞もまた、企図される。好ましいハイブリドーマ細胞は、遺伝的に安定であり、所望の特異性の本明細書中に記載のモノクローナル抗体を分泌し、そして深冷凍培養物から融解および再クローニングによって活性化され得る。
【0035】
別の実施形態において、本明細書中に記載のCLL細胞株に対するモノクローナル抗体を分泌する、ハイブリドーマ細胞株の調製のためのプロセスを提供する。このプロセスにおいて、適切な哺乳動物(例えば、Balb/cマウス)を、本開示に記載される細胞由来の1以上のポリペプチドまたはその抗原性フラグメント、その細胞株自体、または記載されるような精製ポリペプチドを含む抗原性キャリアで免疫する。免疫された哺乳動物の抗体産生細胞を、培養物中で手短に増殖させるか、または適切な骨髄腫細胞株の細胞と融合させる。その融合物に含まれるハイブリッド細胞をクローン化し、そして所望の抗体を分泌する細胞クローンを選択する。例えば、本発明の細胞株で免疫されたBalb/cマウスの脾細胞を、骨髄腫細胞株PAIまたは骨髄腫細胞株Sp2/0−Ag 14の細胞と融合させ、得られたハイブリッド細胞を、所望の抗体の分泌についてスクリーニングし、そして陽性のハイブリドーマ細胞をクローン化する。
【0036】
本開示に従う106細胞〜107細胞の細胞株を、数ヶ月(例えば、2〜4ヶ月)にわたって数回(例えば、4〜6回)、皮下および/または腹腔内に注入することによって、Balb/cマウスを免疫するという点で特徴付けられる、ハイブリドーマ細胞株を調製するためのプロセスが、好ましい。免疫されたマウス由来の脾細胞を、最後の注入後、2〜4日目に採取し、そして融合プロモーター(好ましくは、ポリエチレングリコール)の存在下で、骨髄腫細胞株PAIの細胞と融合させる。好ましくは、骨髄腫細胞を、分子量約4000の約30%〜約50%のポリエチレングリコールを含有する溶液中の、免疫したマウス由来の3〜20倍過剰の脾細胞と融合する。融合後、細胞を、正常骨髄腫細胞が所望のハイブリドーマ細胞を過剰増殖させるのを妨げるために規則的な間隔で、選択培地(例えば、HAT培地)を補充した、本明細書中上記のような適切な培養培地中で拡大する。
【0037】
さらなる実施形態において、本明細書中上記の細胞株に対する抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む、組換えDNAを生成する。用語DNAは、コード一本鎖DNA、このコードDNAおよびその相補的DNAからなる二本鎖DNA、またはこれらの相補的(一本鎖)DNA自体を含む。
【0038】
さらに、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAは、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする真正のDNA配列、あるいはそれらの変異体を有する、酵素的または化学的に合成されたDNAであり得る。真正のDNAの変異体は、1以上のアミノ酸が、欠失されているかまたは1以上の他のアミノ酸と交換されている上記の抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAである。好ましくは、この改変は、ヒト化適用および発現最適化適用において、抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。用語、変異体DNAはまた、1以上のヌクレオチドが、他のヌクレオチドで置換され、その新しいコドンが、同じアミノ酸をコードする、サイレント変異体を包含する。用語、変異体配列はまた、縮重配列を含む。縮重配列は、無数のヌクレオチドが、元々コードされるアミノ酸配列の変化を生じることなく、他のヌクレオチドで置換されるという点で、遺伝コードの意味において縮重されている。このような縮重配列は、それらの異なる制限部位、および/または、特定の宿主(特に、E.coli)によって好まれる特定のコドンの頻度に起因して、重鎖マウス可変ドメインおよび/または軽鎖マウス可変ドメインの最適な発現を得るために有用であり得る。
【0039】
用語、変異体は、当該分野で公知の方法に従う真正のDNAのインビトロ変異誘発によって得られたDNA変異体を含むことが、意図される。
【0040】
完全なテトラマー免疫グロブリン分子のアセンブリおよびキメラ抗体の発現のために、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードする組換えDNAインサートを、重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインをコードする対応するDNAと融合し、次いで、例えば、ハイブリッドベクターへの組み込み後に、適切な宿主細胞に移入する。
【0041】
ヒト定常ドメインg(例えば、γ1、γ2、γ3またはγ4(好ましくは、γ1またはγ4))に融合された、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の重鎖マウス可変ドメインをコードするインサートを含む、組換えDNAもまた提供される。ヒト定常ドメインκまたはλ(好ましくは、κ)に融合された、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の軽鎖マウス可変ドメインをコードするインサートを含む、組換えDNAもまた提供される。
【0042】
別の実施形態は、組換えポリペプチドをコードする組換えDNAに関し、ここで、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインが、スペーサー基によって連結され、このスペーサー基は、必要に応じて、宿主細胞における抗体のプロセシングを容易にするためのシグナル配列、および/または、抗体の精製を容易にするためのペプチドをコードするDNA、および/または、切断部位、および/または、ペプチドスペーサー、および/または、エフェクター分子を含む。
【0043】
エフェクター分子をコードするDNAは、診断適用または治療適用に有用なエフェクター分子をコードするDNAであることが、意図される。従って、毒素または酵素(特に、プロドラッグの活性化を触媒し得る酵素)であるエフェクター分子が、特に指摘される。このようなエフェクター分子をコードするDNAは、天然に存在する酵素または毒素をコードするDNAあるいはその変異体の配列を有し、そして当該分野で周知の方法によって調製され得る。
【0044】
本明細書中に開示される抗体および抗体フラグメントは、診断および治療に有用である。従って、本明細書中に開示される抗体を含む治療または診断のための組成物が、提供される。
【0045】
診断組成物の場合、抗体は、好ましくは、抗体を検出するための手段と一緒に提供され、この手段は、酵素、蛍光、放射性同位体または他の手段であり得る。抗体およびその検出手段は、診断に意図される診断キットにおいて、同時の、別々の、または連続的な使用のために提供され得る。
【0046】
(本発明の細胞株の使用)
CLL細胞株の発生に対する、多くの利点が存在する。なぜなら、これは、CLLについての診断剤および処置の開発のための重要なツールを提供するからである。
【0047】
本開示に従う細胞株は、CLLの病因、病理および生物学についてのインビトロ研究に使用され得る。これは、CLL疾患の治療に有用である適切な薬剤の同定を補助する。
【0048】
細胞株はまた、上記のような、CLLのインビトロ診断およびインビボ診断のため、ならびに、他の方法によって(例えば、CLL患者由来の初代細胞および/または抗原での抗体ライブラリーのパニングによって)産生された抗体のスクリーニングおよび/または特徴付けのための、モノクローナル抗体を産生するために使用され得る。
【0049】
細胞株はまた、それ自体で使用され得るか、または抗原が、その細胞株から誘導され得る。有利には、このような抗原は、CLLに特異的な細胞表面抗原である。これらは、本開示に従う細胞株から直接単離され得る。あるいは、本明細書中に記載の細胞株から作製されるcDNA発現ライブラリーは、CLL特異的抗原を発現させるために使用され得、この抗原は、抗CLL抗体の選択および特徴付け、ならびに新規CLL特異的抗原の同定に有用である。
【0050】
モノクローナル抗体治療を使用するCLLの処置は、当該分野で提唱されている。最近、Hainsworth(Oncologist 5(5)(2000)376−384)は、モノクローナル抗体由来の現在の治療を記載した。特に、リンパ性白血病は、リンパ球腫瘍上の複数のリンパ球特異的抗原の存在に起因して、この治療アプローチの良い候補であると考えられる。
【0051】
既存の抗体治療(例えば、Bリンパ球の表面上に発現される、Rituximab TM(CD20抗原に対する))は、特定のリンパ性疾患に対して首尾よく使用されている。しかし、より低い密度のCD20抗原が、CLL中のBリンパ球の表面上で発現される(Almasriら、Am.J.Hematol.,40(4)(1992)259−263)。
【0052】
従って、本明細書中に記載のCLL細胞株は、本発明の細胞株の1以上の抗原決定基に対する特異性を有する、新規抗CLL抗体の開発、ならびにCLLの治療および診断におけるそれらの使用を可能にする。
【0053】
当業者が、本明細書中に記載の組成物および方法をより良く実施し得るために、以下の実施例を、例示目的で与える。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
(細胞株CLL−AATの単離)
(細胞株の確立)
CLLと診断された患者の末梢血を得た。WBC数は、1.6×108/mlであった。単核細胞を、Histopaque−1077密度勾配遠心(Sigma Diagnostics,St.Louis,MO)によって単離した。細胞を、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)を補充した、Isocove改変Dulbecco培地(IMDM)で2回洗浄し、そして5mlの氷冷IMDM/10% FBS中に再懸濁した。生存細胞を、トリパンブルーでの染色によってカウントした。細胞を、等量の85% FBS/15% DMSOと混合し、そして1mlアリコートで、液体窒素中で保存のために凍結させた。
【0055】
免疫表現型決定は、90%を超えるCD45+リンパ球集団が、IgD、κ軽鎖、CD5、CD19およびCD23を発現することを示した。この集団はまた、低レベルのIgMおよびCD20を発現した。約50%の細胞が、高レベルのCD38を発現した。これらの細胞は、λ軽鎖、CD10およびCD138について陰性であった。
【0056】
細胞のアリコートを、解凍し、洗浄し、そして20%の熱不活化FBS、2mMのL−グルタミン、100ユニット/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、50μMの2−メルカプトエタノール、および5ng/mlの組換えヒトIL−4(R & D Systems,Minneapolis,MN)を補充したIMDM中、107/mLの密度で再懸濁した。これらの細胞を、加湿5% CO2雰囲気下、37℃で培養した。定常増殖が観察されるまで、培地を、4日毎に、部分的に交換した。5週間後、培養物中の細胞数が、約4日毎に倍増し始めた。この細胞株を、CLL−AATと名付けた。
【0057】
(細胞株の特徴付け)
フローサイトメトリーによる細胞株の免疫表現型分類は、IgM、κ軽鎖、CD23、CD38およびCD138の高い発現、CD19およびCD20の中程度の発現、ならびにIgDおよびCD5の弱い発現を示した。この細胞株は、λ軽鎖、CD4、CD8およびCD10については、ネガティブであった。
【0058】
この細胞株の免疫表現型分類をまた、初代B−CLL細胞に対する特異的結合について選択されたウサギscFv抗体のパネルを使用する全細胞ELISAによっても行った。これら全てのCLL特異的scFv抗体はまた、AAT−CLL細胞株を認識した。対照的に、ほとんどのscFvは、B細胞リンパ腫由来の2つの細胞株(Ramos(バーキットリンパ腫細胞株)およびRL(非ホジキンリンパ腫細胞株))に結合しなかった。
【0059】
(実施例2)
(抗体ファージディスプレイおよび細胞表面パニングを使用する、B−CLL特異的細胞表面抗原に対するscFv抗体の選択)
(免疫およびscFv抗体ライブラリーの構築)
末梢血単核細胞(PBMC)を、Scripps Clinic(La Jolla、CA)にてCLL患者から得た血液から単離した。2匹のウサギを、CLLを有する異なる10人のドナーからプールされた2×107のPBMCで免疫した。3回の免疫(2回の皮下注射、その後の1回の静脈内注射)を、3週間間隔で行った。血清力価を、フローサイトメトリーを使用して、初代CLL細胞に対する血清IgGの結合を測定することによってチェックした。最後の免疫の5日後、脾臓、骨髄およびPBMCを動物から回収した。総RNAを、Tri−Reagent(Molecular Research Center,Inc)を使用してこれらの組織から単離した。単鎖Fv(scFv)抗体ファージディスプレイライブラリーを、以前に記載のように構築した(Barbasら、(2001)Pharge Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。細胞表面パニングについて、再増幅ライブラリー由来のファージミド粒子を、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて沈殿させ、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再懸濁し、そしてPBSに対して一晩透析した。
【0060】
(細胞表面パニングによる抗体選択)
これらのライブラリーを、Siegelら(1997、J.Immunol.Methods 206:73−85)に記載されるように、磁気活性化細胞識別(MACS)を用いるポジティブ−ネガティブ選択によって、CLL細胞表面特異的抗体について富化した。簡潔には、scFv抗体ライブラリー由来のファージミド粒子を、MPBS(PBS(pH7.4)中2%脱脂粉乳、0.02%アジ化ナトリウム)中で25℃にて1時間プレインキュベートして、非特異的結合部位をブロッキングした。約107の初代CLL細胞を、常磁性ミクロビーズ(Miltenyi Biotec、Sunnyvale、CA)に結合体化したマウス抗CD5 IgGおよびマウス抗CD19 IgGで標識した。未結合のミクロビーズを、洗浄によって除去した。標識されたCLL細胞(「標的細胞」)を、過剰の「抗原ネガティブ吸収細胞」と混合し、ペレット化し、そして50μlのファージ粒子(1010〜1011cfu)中に再懸濁した。この吸収細胞は、細胞表面に非特異的に固着するファージ、ならびに標的および吸収細胞の両方の上に存在する「共通」抗原に特異的なファージを吸収するように働く。使用される吸収細胞は、TF−1細胞(ヒト赤白血病細胞株)または免疫磁気ネガティブ選択(StemSep system、StemCell Technologies、Vancouver、Canada)によって末梢血から単離された正常ヒトB細胞のいずれかであった。標的細胞に対する吸収細胞の比は、容量にして約10倍であった。25℃での30分のインキュベーション後、細胞/ファージ混合物を、MiniMACS MS+分離カラムに移した。このカラムを0.5mlのMPBSで2回洗浄し、そして0.5mlのPBSで1回洗浄して、未結合のファージおよび吸収細胞を除去した。標的細胞を、1mlのPBSでカラムから溶出させ、そして最大速度で15秒間微小遠心分離してペレット化した。捕捉されたファージ粒子を、標的細胞を200μlの酸溶出緩衝液(0.1N HCl、グリシンでpHを2.2に調節、および1μg/mlのBSA)中に再懸濁することによって溶出した。25℃で10分のインキュベーション後、この緩衝液を、12μLの2M Tris塩基(pH10.5)で中和し、そして溶出したファージを、次の回のパニングのために、E.coli中で増幅した。各回のパニングについて、投入ファージおよび産出ファージの力価を決定した。投入力価は、標的細胞/吸収細胞混合物に添加される再増幅ファージ粒子の数であり、そして産出力価は、標的細胞から溶出された捕捉ファージの数である。富化係数(E)は、式E=(Rn産出/Rn投入)/(R1産出/R1投入)を使用して算定される。ほとんどの場合、102〜103倍の富化係数は、3回または4回で達成されるはずである。
【0061】
(パニング後の富化抗体プールの分析)
3〜5回のパニング後、捕捉されたファージのプールを、フローサイトメトリーおよび/または全細胞ELISAによって、CLL細胞に対する結合についてアッセイした:
1.HAタグ化可溶性抗体の形態で完全プールを生成するために、2mlの非サプレッサーE.coli株(例えば、TOP10F’)に、1μl(109〜1010cfu)のファージミド粒子を感染させた。元々のパニングしていないライブラリーを、ネガティブコントロールとして使用した。カルベニシリンを20μMの最終濃度まで添加し、そしてこの培養物を、37℃にて250rpmで1時間振とうした。8mlのSB培地(50μg/mlのカルベニシリンを含む)を添加し、そしてこの培養物を約0.8のOD600まで増殖させた。IPTGを、1mMの最終濃度まで添加して、LacプロモーターからのscFvの発現を誘導し、そして37℃での振とうを、4時間続けた。この培養物を3000×gで15分間遠心分離した。可溶性抗体を含む上清を濾過し、1mlのアリコートで−20℃で保存した。
【0062】
2.標的細胞に対するscFv抗体プールの結合 対 吸収細胞に対するscFv抗体プールの結合を、高親和性ラット抗HA(クローン3F10、Roche Molecular Biochemicals)を二次抗体として使用し、PE結合体化ロバ抗ラットを三次抗体として使用するフローサイトメトリーによって決定した。
【0063】
3.標的細胞に対する抗体プールの結合 対 吸収細胞に対する抗体プールの結合をまた、上記のように全細胞ELISAによって決定した。
【0064】
(パニング後の個々のscFvクローンのスクリーニング)
パニング後の個々のscFvクローンをスクリーニングするために、TOP10F’細胞に、上記のようにファージプールに感染させて、カルベニシリンおよびテトラサイクリンを含むLBプレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートした。個々のクローンを、1ウェル当たり0.6〜1.0mlのSB−カルベニシリン培地を含む深型96ウェルプレート中でインキュベートした。この培養物を、HiGro振とうインキュベーター(GeneMachines、San Carlos、CA)において、37℃にて520rpmで、6〜8時間増殖させた。この時点で、各ウェル由来の90μlのアリコートを、10μlのDMSOを含む深型96ウェルプレートに移した。この複製プレートを、−80℃で保存した。IPTGを、1mMの最終濃度まで元のプレートに添加し、そして振とうを3時間続けた。このプレートを3000×gで15分間遠心分離した。可溶性scFv抗体を含む上清を、別の深型96ウェルプレートに移し、−20℃で保存した。
【0065】
HAタグ化scFv抗体をスクリーニングするための、高感度全細胞ELISAが開発された:
1.ELISAプレートを、コンカナバリンA(0.1M NaHCO3中10mg/ml、pH8.6、0.1mM CaCl2)でコーティングする。
【0066】
2.このプレートをPBSで洗浄した後、50μlのPBS中0.5〜1×105の標的細胞または吸収細胞を各ウェルに添加し、そしてこのプレートを250×gで10分間遠心分離する。
【0067】
3.PBS中0.02%のグルタルアルデヒド50μlを添加し、細胞を4℃で一晩固定する。
【0068】
4.PBSでの洗浄後、非特異的結合部位を、4%の脱脂粉乳を含むPBSを用いて室温で3時間ブロッキングする。
【0069】
5.これらの細胞を、50μlの可溶性HAタグ化scFv抗体またはFab抗体(TOP10F’上清)と共に、室温で2時間インキュベートし、次いでPBSで6回洗浄する。
【0070】
6.結合した抗体を、マウス抗HA二次抗体(クローン12CA5)およびアルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗マウスIgG三次抗体を使用して検出する。色を、アルカリホスファターゼ基質PNPPで発色させて、マイクロプレートリーダーを使用して405nmで測定する。
【0071】
scFvクローンの一次スクリーニングを、初代CLL細胞 対 正常ヒトPBMCに対するELISAによって行った。CLL細胞に対して陽性かつ正常PBMCに対して陰性であったクローンを、正常ヒトB細胞、ヒトB細胞株、TF−1細胞およびCLL−ATT細胞株に対するELISAによって再スクリーニングした。これらのクローンをまた、3つの異なる患者から単離されたCLL細胞に対するELISAによって再スクリーニングして、患者特異的または血液型特異的な抗原を認識するクローンを排除した。代表的なELISAの結果を、図2〜6に示し、そして表1に要約する。
【0072】
得られた独自のscFv抗体クローンの数を、DNAフィンガープリントおよび配列決定によって決定した。scFv DNA挿入物を、PCRによってこのプラスミドから増幅し、そして制限酵素BstNIで消化した。得られたフラグメントを4%アガロースゲルで分離し、そしてエチジウムブロマイドで染色した。異なる制限フラグメントパターンを有するクローンは、異なるアミノ酸配列を有するはずである。同一のパターンを有するクローンは、おそらく、類似または同一の配列を有する。独自のBstNIフィンガープリントを有するクローンを、DNA配列決定によってさらに分析した。25個の異なる配列が見出され、これらは、密接に関連する相補性決定領域を有する16群の抗体にクラスター化され得た(表1)。
【0073】
(フローサイトメトリーによる、scFv抗体の特徴づけ)
いくつかのscFv抗体の結合特異性を、3色フローサイトメトリーによって分析した。正常なドナーから単離されたPBMCを、FITC結合体化抗CD5およびPerCP結合体化抗CD19で染色した。scFv抗体を用いる染色を、ビオチン結合体化抗HAを二次抗体として、およびPE結合体化ストレプトアビジンを使用して行った。3つの抗体(scFv−2、scFv−3およびscFv−6)は、CD19+Bリンパ球集団を特異的に認識することが見出された(データは示さず)。第四の抗体(scFv−9)は、2つの異なる細胞集団(CD19+Bリンパ球およびCD5+Tリンパ球のサブセット)を認識した(図7を参照のこと)。T細胞サブセットのさらなる特徴付けによって、これが、CD4+CD8−TH細胞のサブ集団であることが示された。
【0074】
scFv抗体によって認識される抗原が初代CLL細胞上で過剰発現されるか否かを決定するために、5人の異なるCLL患者および5人の正常なドナー由来のPBMCを、scFvを用いて染色し、フローサイトメトリーによって比較した(図8および表2)。ポジティブ細胞集団の平均蛍光強度を比較することによって、CLL細胞上の抗原の相対的発現レベル 対 正常細胞上の抗原の相対的発現レベルを決定し得た。1つの抗体(scFv−2)は、正常PBMCよりも低い強度で一貫してCLL細胞を染色し、一方、scFv−3およびscFv−6は両方とも、一貫して正常PBMCよりもより明るくCLL細胞を染色した。第四の抗体(scFv−9)は、5つのCLLサンプルのうちの2つを、正常PBMCより強い強度で染色したが、他の3つのCLLサンプルについては、中程度にのみより明るい染色を与えた(図8および表2)。図8において見られるように、scFv−3およびscFV−9によって認識される抗原は、CLL−AAT細胞株が誘導される初代CLL腫瘍上で過剰発現される。CCL−AAT細胞株を確立するために使用される、CLL患者由来の初代PBMC、または正常ドナー由来のPBMCを、scFv抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。scFv−3およびscFv−9は、平均蛍光強度によって測定されるように、正常PBMCよりもより明るくCLL細胞を染色する。
【0075】
このことは、scFv−3およびscFv−6に対する抗原が、全てではないにしろほとんどのCLL腫瘍上で約2倍過剰発現され、一方、scFv−9は、CLL腫瘍のサブセット上で3〜6倍過剰発現されることを示す。
【0076】
(免疫沈降(IP)および質量分析(MS)による、scFv抗体によって認識される抗原の同定)
これらの抗体に対する抗原を同定するために、scFvを使用して、全細胞溶解物または細胞のミクロソーム画分から調製された溶解物由来の抗原を免疫沈降させた。免疫沈降した抗原をSDS−PAGEによって精製し、そしてMALDI−MS分析によって同定した(データは示さず)。scFv−2は、RL細胞およびCLL−AAT細胞の両方から、100kdの抗原を免疫沈降した。これは、B細胞特異的マーカーのCD19として同定された。scFv−3およびscFv−6は両方とも、CLL−AAT細胞から45kdの抗原を免疫沈降した。これは、CLL細胞および活性化B細胞についての公知のマーカーであるCD23として同定された。scFv−9は、CLL−AAT細胞由来の50kdの抗原を免疫沈降した。しかし、本発明者らは、MALDI−MS分析に十分な量でこの抗原を単離していない。なぜなら、その発現は、CLL−AAT細胞株上でダウンレギュレートされたようだからである。
【0077】
(参考文献)
以下の参考文献は、本発明が関連する分野の状態をより完全に記載するために、参考として本明細書に援用される。以下のこれらの刊行物または上記の参考文献に援用される刊行物と本開示との間の任意の不一致は、本開示の利益となるように説明されるべきである。
【0078】
【表1】
【0079】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。当業者は、本明細書に添付される特許請求の範囲内の他の改変を想定する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、磁気活性化細胞選別(MACS)による、抗体ライブラリーの細胞表面パニングに関与する代表的な工程を、概略的に示す。
【図2】図2は、初代B−CLL細胞への選択されたscFvクローンの結合、および正常ヒトPBMCへの結合の非存在を実証する、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。この図および他の図における2°+3°との表示は、マウス抗HAで染色され、そして抗マウス抗体単独を検出する、ネガティブコントロールウェルを表す。この図および他の図におけるRSC−Sライブラリーとの表示は、もとのウサギscFvのパニングされていないライブラリーから調製された可溶性抗体を表す。この図および他の図におけるR3/RSC−Sプールとの表示は、3回目のパニングからのscFv抗体のプール全体から調製された、可溶性抗体を表す。抗CD5抗体を、ポジティブコントロールとして使用して、等数のB−CLL細胞およびPBMC細胞が各ウェルにプレートされたことを確認した。
【図3】図3は、初代B−CLL細胞および正常初代ヒトB細胞への、選択されたscFv抗体の結合を比較する、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。抗CD19抗体を、ポジティブコントロールとして使用して、等数のB−CLL細胞および正常B細胞が各ウェルにプレートされたことを確認した。他のコントロールは、図2の説明文において記載される通りであった。
【図4】図4は、scFvクローンが患者特異的(すなわち、イディオタイプ)抗原に結合するか、血液型特異的(すなわち、HLA)抗原に結合するかを決定するために使用された、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。各クローンを、3つの異なるB−CLL患者から単離されたPBMCに対する結合について試験した。1つの患者サンプルに結合するクローンを、患者または血液型に特異的であるとみなした。
【図5】図5は、初代B−CLL細胞および3種のヒト白血病細胞株への、scFvクローンの結合を比較する、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。Ramosは、バーキットリンパ腫由来の成熟B細胞株である。RLとは、非ホジキンリンパ腫由来の成熟B細胞株である。TF−1とは、赤白血病由来の赤芽球細胞株である。
【図6】図6は、初代B−CLL細胞およびCLL−AAT(B−CLL患者由来の細胞株)への、scFvクローンの結合を比較する、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。TF−1細胞を、ネガティブコントロールとして含めた。
【図7】図7は、3色フローサイトメトリーによって分析した場合の、本開示に従うscFv抗体の結合特異性を示す。正常な末梢血単核細胞において、scFv−9によって認識される抗原は、Bリンパ球上に中程度に発現され、そしてTリンパ球の部分集団上で弱く発現される。正常ドナー由来のPBMCを、3色フローサイトメトリーによって、抗CD5−FITC、抗CD19−PerCP、およびscFv−9/抗HA−ビオチン/ストレプトアビジン−PEを使用して分析した。
【図8】図8は、本開示に従うscFv抗体によって認識される抗原の発現レベルを示す。
【図9A】図9Aは、CDR配列および選択されたscFv抗体の結合特異性の要約を提供する、表1である。
【図9B】図9Bは、CDR配列および選択されたscFv抗体の結合特異性の要約を提供する、表1である。
【図10】図10は、図8に記載したような、正常PBMCに対して、初代CLL細胞上でのscFv抗原の発現レベルを比較する、フローサイトメトリーの結果の要約を示す、表2である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2000年12月8日に出願された、米国仮出願番号60/254,113(この開示は本明細書中に参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
慢性リンパ性白血病(CLL)細胞由来の細胞株、ならびにCLL疾患の研究および処置におけるこれらの細胞の使用が、開示される。具体的には、本開示は、「CLL−AAT」と称され、ブダペスト条約の規約に従って、ATCC受託番号XXXXXで、2001年11月28日にAmerican Type Culture Collection(Manassas,Virginia,USA)に寄託された、CLL細胞株に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
慢性リンパ性白血病(CLL)は、白血球の疾患であり、そして西半球における最も通常の形態の白血病である。CLLは、ゆっくりと増殖するが延長した寿命を有する、悪性リンパ球の増殖に関する疾患の種々の群を代表する。CLLは、種々のカテゴリーに分類され、このカテゴリーとしては、例えば、古典的および混合型のB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)、B細胞およびT細胞の前リンパ性白血病(prolymphocyic leukemia)、ヘアリーセル白血病、ならびに大顆粒リンパ性白血病(large granular lymphocytic leukemia)が挙げられる。
【0004】
全ての異なる型のCLLのうちでも、B−CLLは、全ての白血病の約30%を占める。B−CLLは、50歳を超えた個体においてより頻繁に起こるが、より若い人々においても次第に増加して見られる。B−CLLは、形態学的には正常であるが生物学的には未熟なBリンパ球の蓄積(これは、機能の損失を導く)によって特徴付けられる。リンパ球は、通常、感染と戦うように機能する。しかし、B−CLLにおいて、リンパ球は、血液および骨髄に蓄積し、そしてリンパ節の膨潤を引き起こす。正常な骨髄細胞および血液細胞の生成が低下し、そして患者はしばしば、重篤な貧血および低い血小板計数を経験する。このことは、減少した数の白血球に起因して、生命を脅かす出血の危険性および重大な感染の発生を生じ得る。
【0005】
白血病のような疾患をさらに理解するためには、これらの疾患の病因、病原論、および生物学に関する研究のための道具として使用され得る、適切な細胞株を有することが重要である。悪性ヒトBリンパ球細胞株の例としては、前B急性リンパ芽球性白血病(Reh)、びまん性大細胞リンパ腫(WSU−DLCL2)、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WSU−WM)が挙げられる。不運なことに、既存の細胞株の多くは、臨床的に最も通常の型の白血病およびリンパ腫を代表しない。
【0006】
インビトロでのエプスタイン−バーウイルス(EBV)感染の使用は、悪性細胞の代表であるいくらかのCLL由来細胞株(特に、B−CLL細胞株)を生じた。これらの細胞株の表現型は、インビトロの腫瘍の表現型とは異なり、そのかわりに、B−CLL株の特徴は、リンパ芽球細胞株の特徴に類似する傾向がある。EBV感染の補助によってB−CLL細胞を不死化する試みは、ほとんど成功していない。このことの理由は不明であるが、EBVレセプターの発現、結合または取り込みの欠如に起因するのではないことは、公知である。Wellsらは、B−CLL細胞が、細胞周期のG1/S期で止められること、および形質転換関連EBV DNAが発現されないことを見出した。このことは、B−CLLでのEBVの感染が、正常なB細胞での感染とは異なることを示唆する。EBVで形質転換されたCLL細胞株は、さらに、分化し、EBVによって不死化されたリンパ芽球細胞株(LCL)とより類似した形態を有するようである。
【0007】
EBVネガティブなCLL細胞株である、WSU−CLLが、以前に樹立された(Mohammadら(1996)Leukemia 10(1):130−7)。しかし、他のこのような細胞株は、公知ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該分野において、EBVで形質転換することによって樹立されたのではなく、かつ初代CLL細胞に特徴的な表面マーカーを発現する、CLL細胞株に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1) ATCC受託番号XXXXXの下で寄託された、細胞株CLL−AAT。
(項目2) 抗体を調製するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(i)項目1に記載のCLL細胞株の表面上に提示される少なくとも1つの抗原に対する抗体を作製する工程;および
(ii)該抗体が、CLL細胞関連抗原に結合することを決定する工程、
を包含する、方法。
(項目3) 前記決定する工程が、前記抗体がCLL細胞上でアップレギュレートされる抗原に結合することを決定することを含む、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記決定する工程が、前記抗体がCLL細胞に特異的な抗原と結合することを決定することを含む、項目2に記載の方法。
(項目5) 前記抗体が、項目1に記載のCLL細胞株またはその一部での生物の免疫によって作製される、項目2に記載の方法。
(項目6) 前記抗体が、項目1に記載のCLL細胞株を用いて、合成抗体ライブラリーをパニングすることによって作製される、項目5に記載の方法。
(項目7) 前記ライブラリーを、ファージディスプレイによってスクリーニングして、前記抗体を単離する、項目6に記載の方法。
(項目8) CLL細胞に結合する抗体を特徴付けるための方法であって、該方法は、項目1に記載の細胞株に対する抗体の結合を評価する工程を包含する、方法。
(項目9) 前記抗体が、CLLに罹患している1人以上の患者から単離された初代CLL細胞を用いて、抗体ライブラリーをパニングすることによって単離される、項目8に記載の方法。
(項目10) 項目2に記載の方法によって産生される、抗体。
(項目11) 項目1に記載の細胞株によってアップレギュレートされる抗原に結合する、抗体。
(項目12) 以下:
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24および配列番号25、
からなる群より選択される配列を有する、抗体。
【0010】
(要旨)
1つの実施形態において、EBVでの不死化によって樹立されたのではない、悪性起源のCLL細胞株が提供される。この細胞株は、初代CLL細胞由来であり、そしてATCC受託番号XXXXXで寄託されている。好ましい実施形態において、この細胞株は、CLL−AATである。CLL−AATは、B−CLL初代細胞由来のB−CLL細胞株である。
【0011】
さらなる局面において、CLL−AAT細胞株は、CLLの診断および/または処置において有用なモノクローナル抗体を生成するために使用される。抗体は、免疫原として本明細書中に開示されるような細胞を使用することによって生成され得、従って、動物(この動物から、モノクローナル抗体が単離され得る)における免疫応答を上昇させる。このような抗体の配列が決定され得、そしてこの抗体またはその改変体は、組換え技術によって産生され得る。この局面において、「改変体」とは、そのモノクローナル抗体の配列に基づく、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体が挙げられる。
【0012】
さらに、組換えライブラリー由来の抗体(「ファージ抗体」)が、本明細書中に記載される細胞、またはこの細胞由来のポリペプチドを、これらの抗体を標的特異性に基づいて単離するためのベイトとして使用して、選択され得る。
【0013】
なおさらなる局面において、抗体は、抗体ライブラリーを、初代CLL細胞またはこの細胞由来の抗原を使用してパニングすることによって生成され得、そしてさらに、本発明の細胞株を使用して、スクリーニングおよび/または特徴付けされ得る。従って、CLLに特異的な抗体を特徴付けるための方法が提供され、この方法は、CLL細胞株に対する抗体の結合を評価する工程を包含する。
【0014】
さらなる局面において、当業者に周知の方法によって(例えば、免疫沈降、および引き続く質量分析によって)、CLL−AAT細胞株を使用して、CLL細胞において独特に発現されるタンパク質を同定するための方法が提供される。このようなタンパク質は、CLL−AAT細胞株、またはCLL患者由来の初代細胞において、独特に発現され得る。
【0015】
低分子ライブラリー(多くは市販のもの)が、細胞に基づくアッセイにおいて、CLL−AAT細胞株を使用してスクリーニングされて、これらの細胞に特徴的な増殖を調節し得る因子を同定し得る。例えば、CLL−AAT細胞株におけるアポトーシスを調節する因子、またはCLL−AAT細胞株の成長および/もしくは増殖を阻害する因子が、同定され得る。このような因子は、治療化合物の開発のための候補である。
【0016】
CLL−AAT細胞株から単離された核酸は、CCL特異的遺伝子を同定するための差引きハイブリダイゼーション実験において、またはマイクロアレイ分析(例えば、遺伝子チップ実験)において、使用され得る。CLL細胞において転写が調節される遺伝子が、同定され得る。この様式で同定されたポリペプチドまたは核酸遺伝子産物は、CLLに対する抗体または低分子治療剤の開発のための手掛かりとして、有用である。
【0017】
好ましい局面において、CLL−AAT細胞株は、細胞によって内在化される細胞表面成分に結合する内在化抗体を同定するために使用され得る。このような抗体は、治療用途のための候補である。特に、細胞質において安定なままであり、そして細胞内結合活性を維持する単鎖抗体は、この様式でスクリーニングされ得る。
【0018】
(詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合、「CLL」とは、任意のリンパ球(B細胞およびT細胞の種々の発生段階を含むが、これらに限定されない)に関与する、慢性リンパ性白血病をいい、CLLとしては、B細胞CLLが挙げられるが、これに限定されない。本明細書中で使用される場合、B−CLLとは、CD5+、CD23+、CD20dim+、sIgdim+、および細胞周期のG0/G1で阻止されている成熟B細胞表現型を有する白血病をいう。
【0019】
「悪性起源」とは、形質転換されている(例えば、EBVによって)非増殖細胞とは対照的に、悪性CLL初代細胞由来の細胞株の誘導をいう。本開示に従う細胞株は、それ自体で、悪性の表現型であってもなくてもよい。「悪性」表現型を有するCLL細胞は、繰り返しの細胞増殖周期によって特徴付けられる、基質培地から離れた細胞増殖を含み、そしてアポトーシスに対する耐性を示す。
【0020】
(細胞株の調製)
細胞株は、当業者に公知の確立された方法に従って産生され得る。一般に、細胞株は、不死化細胞が培養物中で自発的に生成されるまで、患者由来の初代細胞を培養することによって産生される。次いで、これらの細胞を、単離し、そしてさらに培養して、アポトーシスに耐性を示すクローン細胞集団または細胞を産生する。
【0021】
例えば、CLL細胞は、CLLに罹患している患者から採取された末梢血から単離され得る。これらの細胞を、洗浄し得、そして必要に応じて、存在する細胞の型を決定するために免疫型決定(immunotype)し得る。その後、細胞を、培地(例えば、IL−4を含有する培地)中で培養し得る。有利には、培地の全てまたは一部を、培養プロセス中に1回以上交換する。それによって、細胞株が、単離され得、そして培養物中での増加された増殖によって同定される。
【0022】
(モノクローナル抗体の調製)
本明細書中で使用される場合、抗体とは、選択された標的に結合し得る、完全な抗体または抗体フラグメントをいう。これらには、以下が含まれる:Fv、ScFv、Fab’およびF(ab’)2、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、操作された抗体(キメラ抗体、CDR移植抗体およびヒト化抗体、完全ヒト抗体、および人工的に選択された抗体を含む)、ならびにファージディスプレイまたは代替技術を使用して産生される合成抗体または半合成抗体。小さいフラグメント(例えば、FvおよびScFv)は、それらの小さいサイズおよび結果としての優れた組織分布に起因して、診断適用および治療適用のための有利な特性を有する。
【0023】
これらの抗体は、特に、診断適用および治療適用に意図される。従って、これらは、毒素または標識のようなエフェクタータンパク質を含む、改変された抗体であり得る。インビボでの抗体分布の画像化を可能にする標識が特に好ましい。このような標識は、放射活性標識または放射線不透過性標識(例えば、金属粒子)であり得、これらは、患者の体内で容易に可視化され得る。さらに、標識は、蛍光標識、または患者から取り出した組織サンプル上で可視化され得る他の標識であり得る。
【0024】
組換えDNA技術を使用して、本開示に従って産生された抗体を改良し得る。このようにして、キメラ抗体は、診断適用または治療適用においてその免疫原性を減少するために構築され得る。さらに、免疫原性は、CDRグラフティング、および必要に応じて、フレーム改変により、抗体をヒト化することによって最小化され得る。米国特許第5,225,539号を参照のこと(この内容は、参考として本明細書中で援用される)。
【0025】
抗体は、動物の血清から得られ得るか、またはモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントの場合には、細胞培養物中で産生され得る。組換えDNA技術を使用して、確立された手順に従って、細菌細胞培養物、または好ましくは、哺乳動物細胞培養物において抗体を産生し得る。選択された細胞培養系は、好ましくは、抗体産物を分泌する。
【0026】
別の実施形態において、本明細書中に開示される抗体の産生のためのプロセスは、ハイブリッドベクターで形質転換された宿主(例えば、E.coliまたは哺乳動物細胞)を培養する工程を包含する。ベクターは、1以上の発現カセットを含み、その発現カセットは、プロモーター、そのプロモーターを作動可能に連結させた、シグナルペプチドをコードする第1のDNA配列、および、その第1のDNA配列を適切な読み枠で連結させた、抗体タンパク質をコードする第2のDNA配列、を含む。次いで、抗体タンパク質を、収集しそして単離する。必要に応じて、発現カセットは、抗体タンパク質をコードするポリシストロニック(例えば、ジシストロニック)のDNA配列に作動可能に連結したプロモーターを含み得、このDNA配列は、各々個々に、シグナルペプチドに対して、適切な読み枠で作動可能に連結される。
【0027】
インビトロでのハイブリドーマ細胞または哺乳動物宿主細胞の増殖は、適切な培養培地で行われ、適切な培養培地としては、従来の標準培養培地(例えば、Dulbecco改変Eagle培地(DMEM)またはRPMI 1640培地など)が挙げられ、これらには、必要に応じて、哺乳動物血清(例えば、ウシ胎仔血清)、または微量元素および増殖維持補助剤(例えば、フィーダー細胞(例えば、正常マウス腹膜滲出細胞、脾細胞、骨髄マクロファージ)、2−アミノエタノール、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、オレイン酸など)が補充される。細菌細胞または酵母細胞である宿主細胞の増殖は、当該分野で公知の適切な培養培地中で同様に行われる。例えば、細菌について、適切な培養培地としては、培地LE,NZCYM、NZYM、NZM、Terrific Broth、SOB、SOC、2×YT、またはM9ミネラル培地が挙げられる。酵母について、適切な培養培地としては、YPD、YEPD、最少培地、または完全最少ドロップアウト(Dropout)培地が挙げられる。
【0028】
インビトロ産生は、比較的純粋な抗体調製物を提供し、そして大量の所望の抗体を与えるためにスケールアップを可能にする。細菌細胞、酵母、植物または哺乳動物細胞の培養のための技術は、当該分野で公知であり、そしてこれらには、均質懸濁物培養(例えば、エアリフトリアクタまたは連続攪拌リアクタにおける)および固定化または捕捉化細胞培養(例えば、中空繊維内、マイクロカプセル内、あるいはアガロースマイクロビーズ上またはセラミックカートリッジ上での)が挙げられる。
【0029】
大量の所望の抗体はまた、インビボで哺乳動物細胞を増殖させることによって得られ得る。この目的のために、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、組織適合性の哺乳動物に注入し、抗体産生腫瘍の増殖を引き起こす。必要に応じて、動物を、注入前に、炭化水素(特に、プリスタン(テトラメチルペンタデカン)のような鉱油)でプライムする。1〜3週間後、抗体を、これらの哺乳動物の体液から単離する。例えば、Balb/cマウス由来の抗体産生脾細胞との適切な骨髄腫細胞の融合によって得られたハイブリドーマ細胞、または所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株Sp2/0由来のトランスフェクトされた細胞を、Balb/cマウス(必要に応じて、プリスチン(pristine)で予め処理した)に腹腔内注入する。1〜2週間後、腹水を動物から採取する。
【0030】
前述および他の技術は、例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497;米国特許第4,376,110号;HarlowおよびLane、Antibodies:a Laboratory Manual,(1988)Cold Spring Harbor(この開示は、その全てが参考として本明細書中で援用される)において議論される。組換え抗体分子の調製のための技術は、上記の参考文献において、そしてまた、例えば、WO97/08320;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,508,717号;Smith、1985、Science、第225巻、1315−1317頁;ParmleyおよびSmith 1988、Gene 73、305−318頁;De La Cruzら、1988、Journal of Biological Chemistry、263、4318−4322頁;米国特許第5,403,484号;米国特許第5,223,409号;WO88/06630;WO92/15679;米国特許第5,780,279号;米国特許第5,571,698号;米国特許第6,040,136号;Davisら、Cancer Metastasis Rev.、1999;18(4):421−5;Taylorら、Nucleic Acids Research 20 (1992):6287−6295;Tomizukaら、Proc.Nat.Academy of Sciences USA97(2)(2000):722−727に記載される。これら全ての参考文献の内容は、参考として本明細書中に援用される。
【0031】
細胞培養物上清を、優先的には、CLL細胞の免疫蛍光染色によって、免疫ブロッティングによって、酵素免疫アッセイ(例えば、サンドイッチアッセイまたはドットアッセイ)または放射免疫アッセイによって、所望の抗体についてスクリーニングする。
【0032】
抗体の単離のために、培養上清中または腹水中の免疫グロブリンを、例えば、硫酸アンモニウムでの沈殿、吸湿性材料(例えば、ポリエチレングリコール)に対する透析、選択的な膜を通す濾過などによって、濃縮し得る。必要な場合および/または所望の場合、抗体を、従来のクロマトグラフィー方法(例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAEセルロースによるクロマトグラフィーおよび/または(免疫)アフィニティークロマトグラフィー(例えば、本開示に従うCLL細胞株由来の1以上の表面ポリペプチドでの、あるいはプロテインAまたはプロテインGでの、アフィニティークロマトグラフィー))によって精製する。
【0033】
別の実施形態は、適切な哺乳動物(例えば、ウサギ)を、プールされたCLL患者サンプルで免疫するという点で特徴付けられる、細胞株に対する抗体を分泌する細菌細胞株の調製のためのプロセスを提供する。免疫されたウサギから産生されるファージディスプレイライブラリーを、当該分野で周知の方法(例えば、本明細書中に参考として援用される種々の参考文献に開示される方法のような)に従って、構築し、そして所望の抗体でパニングする。
【0034】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞もまた、企図される。好ましいハイブリドーマ細胞は、遺伝的に安定であり、所望の特異性の本明細書中に記載のモノクローナル抗体を分泌し、そして深冷凍培養物から融解および再クローニングによって活性化され得る。
【0035】
別の実施形態において、本明細書中に記載のCLL細胞株に対するモノクローナル抗体を分泌する、ハイブリドーマ細胞株の調製のためのプロセスを提供する。このプロセスにおいて、適切な哺乳動物(例えば、Balb/cマウス)を、本開示に記載される細胞由来の1以上のポリペプチドまたはその抗原性フラグメント、その細胞株自体、または記載されるような精製ポリペプチドを含む抗原性キャリアで免疫する。免疫された哺乳動物の抗体産生細胞を、培養物中で手短に増殖させるか、または適切な骨髄腫細胞株の細胞と融合させる。その融合物に含まれるハイブリッド細胞をクローン化し、そして所望の抗体を分泌する細胞クローンを選択する。例えば、本発明の細胞株で免疫されたBalb/cマウスの脾細胞を、骨髄腫細胞株PAIまたは骨髄腫細胞株Sp2/0−Ag 14の細胞と融合させ、得られたハイブリッド細胞を、所望の抗体の分泌についてスクリーニングし、そして陽性のハイブリドーマ細胞をクローン化する。
【0036】
本開示に従う106細胞〜107細胞の細胞株を、数ヶ月(例えば、2〜4ヶ月)にわたって数回(例えば、4〜6回)、皮下および/または腹腔内に注入することによって、Balb/cマウスを免疫するという点で特徴付けられる、ハイブリドーマ細胞株を調製するためのプロセスが、好ましい。免疫されたマウス由来の脾細胞を、最後の注入後、2〜4日目に採取し、そして融合プロモーター(好ましくは、ポリエチレングリコール)の存在下で、骨髄腫細胞株PAIの細胞と融合させる。好ましくは、骨髄腫細胞を、分子量約4000の約30%〜約50%のポリエチレングリコールを含有する溶液中の、免疫したマウス由来の3〜20倍過剰の脾細胞と融合する。融合後、細胞を、正常骨髄腫細胞が所望のハイブリドーマ細胞を過剰増殖させるのを妨げるために規則的な間隔で、選択培地(例えば、HAT培地)を補充した、本明細書中上記のような適切な培養培地中で拡大する。
【0037】
さらなる実施形態において、本明細書中上記の細胞株に対する抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む、組換えDNAを生成する。用語DNAは、コード一本鎖DNA、このコードDNAおよびその相補的DNAからなる二本鎖DNA、またはこれらの相補的(一本鎖)DNA自体を含む。
【0038】
さらに、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAは、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする真正のDNA配列、あるいはそれらの変異体を有する、酵素的または化学的に合成されたDNAであり得る。真正のDNAの変異体は、1以上のアミノ酸が、欠失されているかまたは1以上の他のアミノ酸と交換されている上記の抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAである。好ましくは、この改変は、ヒト化適用および発現最適化適用において、抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。用語、変異体DNAはまた、1以上のヌクレオチドが、他のヌクレオチドで置換され、その新しいコドンが、同じアミノ酸をコードする、サイレント変異体を包含する。用語、変異体配列はまた、縮重配列を含む。縮重配列は、無数のヌクレオチドが、元々コードされるアミノ酸配列の変化を生じることなく、他のヌクレオチドで置換されるという点で、遺伝コードの意味において縮重されている。このような縮重配列は、それらの異なる制限部位、および/または、特定の宿主(特に、E.coli)によって好まれる特定のコドンの頻度に起因して、重鎖マウス可変ドメインおよび/または軽鎖マウス可変ドメインの最適な発現を得るために有用であり得る。
【0039】
用語、変異体は、当該分野で公知の方法に従う真正のDNAのインビトロ変異誘発によって得られたDNA変異体を含むことが、意図される。
【0040】
完全なテトラマー免疫グロブリン分子のアセンブリおよびキメラ抗体の発現のために、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードする組換えDNAインサートを、重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインをコードする対応するDNAと融合し、次いで、例えば、ハイブリッドベクターへの組み込み後に、適切な宿主細胞に移入する。
【0041】
ヒト定常ドメインg(例えば、γ1、γ2、γ3またはγ4(好ましくは、γ1またはγ4))に融合された、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の重鎖マウス可変ドメインをコードするインサートを含む、組換えDNAもまた提供される。ヒト定常ドメインκまたはλ(好ましくは、κ)に融合された、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の軽鎖マウス可変ドメインをコードするインサートを含む、組換えDNAもまた提供される。
【0042】
別の実施形態は、組換えポリペプチドをコードする組換えDNAに関し、ここで、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインが、スペーサー基によって連結され、このスペーサー基は、必要に応じて、宿主細胞における抗体のプロセシングを容易にするためのシグナル配列、および/または、抗体の精製を容易にするためのペプチドをコードするDNA、および/または、切断部位、および/または、ペプチドスペーサー、および/または、エフェクター分子を含む。
【0043】
エフェクター分子をコードするDNAは、診断適用または治療適用に有用なエフェクター分子をコードするDNAであることが、意図される。従って、毒素または酵素(特に、プロドラッグの活性化を触媒し得る酵素)であるエフェクター分子が、特に指摘される。このようなエフェクター分子をコードするDNAは、天然に存在する酵素または毒素をコードするDNAあるいはその変異体の配列を有し、そして当該分野で周知の方法によって調製され得る。
【0044】
本明細書中に開示される抗体および抗体フラグメントは、診断および治療に有用である。従って、本明細書中に開示される抗体を含む治療または診断のための組成物が、提供される。
【0045】
診断組成物の場合、抗体は、好ましくは、抗体を検出するための手段と一緒に提供され、この手段は、酵素、蛍光、放射性同位体または他の手段であり得る。抗体およびその検出手段は、診断に意図される診断キットにおいて、同時の、別々の、または連続的な使用のために提供され得る。
【0046】
(本発明の細胞株の使用)
CLL細胞株の発生に対する、多くの利点が存在する。なぜなら、これは、CLLについての診断剤および処置の開発のための重要なツールを提供するからである。
【0047】
本開示に従う細胞株は、CLLの病因、病理および生物学についてのインビトロ研究に使用され得る。これは、CLL疾患の治療に有用である適切な薬剤の同定を補助する。
【0048】
細胞株はまた、上記のような、CLLのインビトロ診断およびインビボ診断のため、ならびに、他の方法によって(例えば、CLL患者由来の初代細胞および/または抗原での抗体ライブラリーのパニングによって)産生された抗体のスクリーニングおよび/または特徴付けのための、モノクローナル抗体を産生するために使用され得る。
【0049】
細胞株はまた、それ自体で使用され得るか、または抗原が、その細胞株から誘導され得る。有利には、このような抗原は、CLLに特異的な細胞表面抗原である。これらは、本開示に従う細胞株から直接単離され得る。あるいは、本明細書中に記載の細胞株から作製されるcDNA発現ライブラリーは、CLL特異的抗原を発現させるために使用され得、この抗原は、抗CLL抗体の選択および特徴付け、ならびに新規CLL特異的抗原の同定に有用である。
【0050】
モノクローナル抗体治療を使用するCLLの処置は、当該分野で提唱されている。最近、Hainsworth(Oncologist 5(5)(2000)376−384)は、モノクローナル抗体由来の現在の治療を記載した。特に、リンパ性白血病は、リンパ球腫瘍上の複数のリンパ球特異的抗原の存在に起因して、この治療アプローチの良い候補であると考えられる。
【0051】
既存の抗体治療(例えば、Bリンパ球の表面上に発現される、Rituximab TM(CD20抗原に対する))は、特定のリンパ性疾患に対して首尾よく使用されている。しかし、より低い密度のCD20抗原が、CLL中のBリンパ球の表面上で発現される(Almasriら、Am.J.Hematol.,40(4)(1992)259−263)。
【0052】
従って、本明細書中に記載のCLL細胞株は、本発明の細胞株の1以上の抗原決定基に対する特異性を有する、新規抗CLL抗体の開発、ならびにCLLの治療および診断におけるそれらの使用を可能にする。
【0053】
当業者が、本明細書中に記載の組成物および方法をより良く実施し得るために、以下の実施例を、例示目的で与える。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
(細胞株CLL−AATの単離)
(細胞株の確立)
CLLと診断された患者の末梢血を得た。WBC数は、1.6×108/mlであった。単核細胞を、Histopaque−1077密度勾配遠心(Sigma Diagnostics,St.Louis,MO)によって単離した。細胞を、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)を補充した、Isocove改変Dulbecco培地(IMDM)で2回洗浄し、そして5mlの氷冷IMDM/10% FBS中に再懸濁した。生存細胞を、トリパンブルーでの染色によってカウントした。細胞を、等量の85% FBS/15% DMSOと混合し、そして1mlアリコートで、液体窒素中で保存のために凍結させた。
【0055】
免疫表現型決定は、90%を超えるCD45+リンパ球集団が、IgD、κ軽鎖、CD5、CD19およびCD23を発現することを示した。この集団はまた、低レベルのIgMおよびCD20を発現した。約50%の細胞が、高レベルのCD38を発現した。これらの細胞は、λ軽鎖、CD10およびCD138について陰性であった。
【0056】
細胞のアリコートを、解凍し、洗浄し、そして20%の熱不活化FBS、2mMのL−グルタミン、100ユニット/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、50μMの2−メルカプトエタノール、および5ng/mlの組換えヒトIL−4(R & D Systems,Minneapolis,MN)を補充したIMDM中、107/mLの密度で再懸濁した。これらの細胞を、加湿5% CO2雰囲気下、37℃で培養した。定常増殖が観察されるまで、培地を、4日毎に、部分的に交換した。5週間後、培養物中の細胞数が、約4日毎に倍増し始めた。この細胞株を、CLL−AATと名付けた。
【0057】
(細胞株の特徴付け)
フローサイトメトリーによる細胞株の免疫表現型分類は、IgM、κ軽鎖、CD23、CD38およびCD138の高い発現、CD19およびCD20の中程度の発現、ならびにIgDおよびCD5の弱い発現を示した。この細胞株は、λ軽鎖、CD4、CD8およびCD10については、ネガティブであった。
【0058】
この細胞株の免疫表現型分類をまた、初代B−CLL細胞に対する特異的結合について選択されたウサギscFv抗体のパネルを使用する全細胞ELISAによっても行った。これら全てのCLL特異的scFv抗体はまた、AAT−CLL細胞株を認識した。対照的に、ほとんどのscFvは、B細胞リンパ腫由来の2つの細胞株(Ramos(バーキットリンパ腫細胞株)およびRL(非ホジキンリンパ腫細胞株))に結合しなかった。
【0059】
(実施例2)
(抗体ファージディスプレイおよび細胞表面パニングを使用する、B−CLL特異的細胞表面抗原に対するscFv抗体の選択)
(免疫およびscFv抗体ライブラリーの構築)
末梢血単核細胞(PBMC)を、Scripps Clinic(La Jolla、CA)にてCLL患者から得た血液から単離した。2匹のウサギを、CLLを有する異なる10人のドナーからプールされた2×107のPBMCで免疫した。3回の免疫(2回の皮下注射、その後の1回の静脈内注射)を、3週間間隔で行った。血清力価を、フローサイトメトリーを使用して、初代CLL細胞に対する血清IgGの結合を測定することによってチェックした。最後の免疫の5日後、脾臓、骨髄およびPBMCを動物から回収した。総RNAを、Tri−Reagent(Molecular Research Center,Inc)を使用してこれらの組織から単離した。単鎖Fv(scFv)抗体ファージディスプレイライブラリーを、以前に記載のように構築した(Barbasら、(2001)Pharge Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)。細胞表面パニングについて、再増幅ライブラリー由来のファージミド粒子を、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて沈殿させ、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に再懸濁し、そしてPBSに対して一晩透析した。
【0060】
(細胞表面パニングによる抗体選択)
これらのライブラリーを、Siegelら(1997、J.Immunol.Methods 206:73−85)に記載されるように、磁気活性化細胞識別(MACS)を用いるポジティブ−ネガティブ選択によって、CLL細胞表面特異的抗体について富化した。簡潔には、scFv抗体ライブラリー由来のファージミド粒子を、MPBS(PBS(pH7.4)中2%脱脂粉乳、0.02%アジ化ナトリウム)中で25℃にて1時間プレインキュベートして、非特異的結合部位をブロッキングした。約107の初代CLL細胞を、常磁性ミクロビーズ(Miltenyi Biotec、Sunnyvale、CA)に結合体化したマウス抗CD5 IgGおよびマウス抗CD19 IgGで標識した。未結合のミクロビーズを、洗浄によって除去した。標識されたCLL細胞(「標的細胞」)を、過剰の「抗原ネガティブ吸収細胞」と混合し、ペレット化し、そして50μlのファージ粒子(1010〜1011cfu)中に再懸濁した。この吸収細胞は、細胞表面に非特異的に固着するファージ、ならびに標的および吸収細胞の両方の上に存在する「共通」抗原に特異的なファージを吸収するように働く。使用される吸収細胞は、TF−1細胞(ヒト赤白血病細胞株)または免疫磁気ネガティブ選択(StemSep system、StemCell Technologies、Vancouver、Canada)によって末梢血から単離された正常ヒトB細胞のいずれかであった。標的細胞に対する吸収細胞の比は、容量にして約10倍であった。25℃での30分のインキュベーション後、細胞/ファージ混合物を、MiniMACS MS+分離カラムに移した。このカラムを0.5mlのMPBSで2回洗浄し、そして0.5mlのPBSで1回洗浄して、未結合のファージおよび吸収細胞を除去した。標的細胞を、1mlのPBSでカラムから溶出させ、そして最大速度で15秒間微小遠心分離してペレット化した。捕捉されたファージ粒子を、標的細胞を200μlの酸溶出緩衝液(0.1N HCl、グリシンでpHを2.2に調節、および1μg/mlのBSA)中に再懸濁することによって溶出した。25℃で10分のインキュベーション後、この緩衝液を、12μLの2M Tris塩基(pH10.5)で中和し、そして溶出したファージを、次の回のパニングのために、E.coli中で増幅した。各回のパニングについて、投入ファージおよび産出ファージの力価を決定した。投入力価は、標的細胞/吸収細胞混合物に添加される再増幅ファージ粒子の数であり、そして産出力価は、標的細胞から溶出された捕捉ファージの数である。富化係数(E)は、式E=(Rn産出/Rn投入)/(R1産出/R1投入)を使用して算定される。ほとんどの場合、102〜103倍の富化係数は、3回または4回で達成されるはずである。
【0061】
(パニング後の富化抗体プールの分析)
3〜5回のパニング後、捕捉されたファージのプールを、フローサイトメトリーおよび/または全細胞ELISAによって、CLL細胞に対する結合についてアッセイした:
1.HAタグ化可溶性抗体の形態で完全プールを生成するために、2mlの非サプレッサーE.coli株(例えば、TOP10F’)に、1μl(109〜1010cfu)のファージミド粒子を感染させた。元々のパニングしていないライブラリーを、ネガティブコントロールとして使用した。カルベニシリンを20μMの最終濃度まで添加し、そしてこの培養物を、37℃にて250rpmで1時間振とうした。8mlのSB培地(50μg/mlのカルベニシリンを含む)を添加し、そしてこの培養物を約0.8のOD600まで増殖させた。IPTGを、1mMの最終濃度まで添加して、LacプロモーターからのscFvの発現を誘導し、そして37℃での振とうを、4時間続けた。この培養物を3000×gで15分間遠心分離した。可溶性抗体を含む上清を濾過し、1mlのアリコートで−20℃で保存した。
【0062】
2.標的細胞に対するscFv抗体プールの結合 対 吸収細胞に対するscFv抗体プールの結合を、高親和性ラット抗HA(クローン3F10、Roche Molecular Biochemicals)を二次抗体として使用し、PE結合体化ロバ抗ラットを三次抗体として使用するフローサイトメトリーによって決定した。
【0063】
3.標的細胞に対する抗体プールの結合 対 吸収細胞に対する抗体プールの結合をまた、上記のように全細胞ELISAによって決定した。
【0064】
(パニング後の個々のscFvクローンのスクリーニング)
パニング後の個々のscFvクローンをスクリーニングするために、TOP10F’細胞に、上記のようにファージプールに感染させて、カルベニシリンおよびテトラサイクリンを含むLBプレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートした。個々のクローンを、1ウェル当たり0.6〜1.0mlのSB−カルベニシリン培地を含む深型96ウェルプレート中でインキュベートした。この培養物を、HiGro振とうインキュベーター(GeneMachines、San Carlos、CA)において、37℃にて520rpmで、6〜8時間増殖させた。この時点で、各ウェル由来の90μlのアリコートを、10μlのDMSOを含む深型96ウェルプレートに移した。この複製プレートを、−80℃で保存した。IPTGを、1mMの最終濃度まで元のプレートに添加し、そして振とうを3時間続けた。このプレートを3000×gで15分間遠心分離した。可溶性scFv抗体を含む上清を、別の深型96ウェルプレートに移し、−20℃で保存した。
【0065】
HAタグ化scFv抗体をスクリーニングするための、高感度全細胞ELISAが開発された:
1.ELISAプレートを、コンカナバリンA(0.1M NaHCO3中10mg/ml、pH8.6、0.1mM CaCl2)でコーティングする。
【0066】
2.このプレートをPBSで洗浄した後、50μlのPBS中0.5〜1×105の標的細胞または吸収細胞を各ウェルに添加し、そしてこのプレートを250×gで10分間遠心分離する。
【0067】
3.PBS中0.02%のグルタルアルデヒド50μlを添加し、細胞を4℃で一晩固定する。
【0068】
4.PBSでの洗浄後、非特異的結合部位を、4%の脱脂粉乳を含むPBSを用いて室温で3時間ブロッキングする。
【0069】
5.これらの細胞を、50μlの可溶性HAタグ化scFv抗体またはFab抗体(TOP10F’上清)と共に、室温で2時間インキュベートし、次いでPBSで6回洗浄する。
【0070】
6.結合した抗体を、マウス抗HA二次抗体(クローン12CA5)およびアルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗マウスIgG三次抗体を使用して検出する。色を、アルカリホスファターゼ基質PNPPで発色させて、マイクロプレートリーダーを使用して405nmで測定する。
【0071】
scFvクローンの一次スクリーニングを、初代CLL細胞 対 正常ヒトPBMCに対するELISAによって行った。CLL細胞に対して陽性かつ正常PBMCに対して陰性であったクローンを、正常ヒトB細胞、ヒトB細胞株、TF−1細胞およびCLL−ATT細胞株に対するELISAによって再スクリーニングした。これらのクローンをまた、3つの異なる患者から単離されたCLL細胞に対するELISAによって再スクリーニングして、患者特異的または血液型特異的な抗原を認識するクローンを排除した。代表的なELISAの結果を、図2〜6に示し、そして表1に要約する。
【0072】
得られた独自のscFv抗体クローンの数を、DNAフィンガープリントおよび配列決定によって決定した。scFv DNA挿入物を、PCRによってこのプラスミドから増幅し、そして制限酵素BstNIで消化した。得られたフラグメントを4%アガロースゲルで分離し、そしてエチジウムブロマイドで染色した。異なる制限フラグメントパターンを有するクローンは、異なるアミノ酸配列を有するはずである。同一のパターンを有するクローンは、おそらく、類似または同一の配列を有する。独自のBstNIフィンガープリントを有するクローンを、DNA配列決定によってさらに分析した。25個の異なる配列が見出され、これらは、密接に関連する相補性決定領域を有する16群の抗体にクラスター化され得た(表1)。
【0073】
(フローサイトメトリーによる、scFv抗体の特徴づけ)
いくつかのscFv抗体の結合特異性を、3色フローサイトメトリーによって分析した。正常なドナーから単離されたPBMCを、FITC結合体化抗CD5およびPerCP結合体化抗CD19で染色した。scFv抗体を用いる染色を、ビオチン結合体化抗HAを二次抗体として、およびPE結合体化ストレプトアビジンを使用して行った。3つの抗体(scFv−2、scFv−3およびscFv−6)は、CD19+Bリンパ球集団を特異的に認識することが見出された(データは示さず)。第四の抗体(scFv−9)は、2つの異なる細胞集団(CD19+Bリンパ球およびCD5+Tリンパ球のサブセット)を認識した(図7を参照のこと)。T細胞サブセットのさらなる特徴付けによって、これが、CD4+CD8−TH細胞のサブ集団であることが示された。
【0074】
scFv抗体によって認識される抗原が初代CLL細胞上で過剰発現されるか否かを決定するために、5人の異なるCLL患者および5人の正常なドナー由来のPBMCを、scFvを用いて染色し、フローサイトメトリーによって比較した(図8および表2)。ポジティブ細胞集団の平均蛍光強度を比較することによって、CLL細胞上の抗原の相対的発現レベル 対 正常細胞上の抗原の相対的発現レベルを決定し得た。1つの抗体(scFv−2)は、正常PBMCよりも低い強度で一貫してCLL細胞を染色し、一方、scFv−3およびscFv−6は両方とも、一貫して正常PBMCよりもより明るくCLL細胞を染色した。第四の抗体(scFv−9)は、5つのCLLサンプルのうちの2つを、正常PBMCより強い強度で染色したが、他の3つのCLLサンプルについては、中程度にのみより明るい染色を与えた(図8および表2)。図8において見られるように、scFv−3およびscFV−9によって認識される抗原は、CLL−AAT細胞株が誘導される初代CLL腫瘍上で過剰発現される。CCL−AAT細胞株を確立するために使用される、CLL患者由来の初代PBMC、または正常ドナー由来のPBMCを、scFv抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。scFv−3およびscFv−9は、平均蛍光強度によって測定されるように、正常PBMCよりもより明るくCLL細胞を染色する。
【0075】
このことは、scFv−3およびscFv−6に対する抗原が、全てではないにしろほとんどのCLL腫瘍上で約2倍過剰発現され、一方、scFv−9は、CLL腫瘍のサブセット上で3〜6倍過剰発現されることを示す。
【0076】
(免疫沈降(IP)および質量分析(MS)による、scFv抗体によって認識される抗原の同定)
これらの抗体に対する抗原を同定するために、scFvを使用して、全細胞溶解物または細胞のミクロソーム画分から調製された溶解物由来の抗原を免疫沈降させた。免疫沈降した抗原をSDS−PAGEによって精製し、そしてMALDI−MS分析によって同定した(データは示さず)。scFv−2は、RL細胞およびCLL−AAT細胞の両方から、100kdの抗原を免疫沈降した。これは、B細胞特異的マーカーのCD19として同定された。scFv−3およびscFv−6は両方とも、CLL−AAT細胞から45kdの抗原を免疫沈降した。これは、CLL細胞および活性化B細胞についての公知のマーカーであるCD23として同定された。scFv−9は、CLL−AAT細胞由来の50kdの抗原を免疫沈降した。しかし、本発明者らは、MALDI−MS分析に十分な量でこの抗原を単離していない。なぜなら、その発現は、CLL−AAT細胞株上でダウンレギュレートされたようだからである。
【0077】
(参考文献)
以下の参考文献は、本発明が関連する分野の状態をより完全に記載するために、参考として本明細書に援用される。以下のこれらの刊行物または上記の参考文献に援用される刊行物と本開示との間の任意の不一致は、本開示の利益となるように説明されるべきである。
【0078】
【表1】
【0079】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。当業者は、本明細書に添付される特許請求の範囲内の他の改変を想定する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、磁気活性化細胞選別(MACS)による、抗体ライブラリーの細胞表面パニングに関与する代表的な工程を、概略的に示す。
【図2】図2は、初代B−CLL細胞への選択されたscFvクローンの結合、および正常ヒトPBMCへの結合の非存在を実証する、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。この図および他の図における2°+3°との表示は、マウス抗HAで染色され、そして抗マウス抗体単独を検出する、ネガティブコントロールウェルを表す。この図および他の図におけるRSC−Sライブラリーとの表示は、もとのウサギscFvのパニングされていないライブラリーから調製された可溶性抗体を表す。この図および他の図におけるR3/RSC−Sプールとの表示は、3回目のパニングからのscFv抗体のプール全体から調製された、可溶性抗体を表す。抗CD5抗体を、ポジティブコントロールとして使用して、等数のB−CLL細胞およびPBMC細胞が各ウェルにプレートされたことを確認した。
【図3】図3は、初代B−CLL細胞および正常初代ヒトB細胞への、選択されたscFv抗体の結合を比較する、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。抗CD19抗体を、ポジティブコントロールとして使用して、等数のB−CLL細胞および正常B細胞が各ウェルにプレートされたことを確認した。他のコントロールは、図2の説明文において記載される通りであった。
【図4】図4は、scFvクローンが患者特異的(すなわち、イディオタイプ)抗原に結合するか、血液型特異的(すなわち、HLA)抗原に結合するかを決定するために使用された、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。各クローンを、3つの異なるB−CLL患者から単離されたPBMCに対する結合について試験した。1つの患者サンプルに結合するクローンを、患者または血液型に特異的であるとみなした。
【図5】図5は、初代B−CLL細胞および3種のヒト白血病細胞株への、scFvクローンの結合を比較する、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。Ramosは、バーキットリンパ腫由来の成熟B細胞株である。RLとは、非ホジキンリンパ腫由来の成熟B細胞株である。TF−1とは、赤白血病由来の赤芽球細胞株である。
【図6】図6は、初代B−CLL細胞およびCLL−AAT(B−CLL患者由来の細胞株)への、scFvクローンの結合を比較する、全細胞ELISAの結果を示すグラフである。TF−1細胞を、ネガティブコントロールとして含めた。
【図7】図7は、3色フローサイトメトリーによって分析した場合の、本開示に従うscFv抗体の結合特異性を示す。正常な末梢血単核細胞において、scFv−9によって認識される抗原は、Bリンパ球上に中程度に発現され、そしてTリンパ球の部分集団上で弱く発現される。正常ドナー由来のPBMCを、3色フローサイトメトリーによって、抗CD5−FITC、抗CD19−PerCP、およびscFv−9/抗HA−ビオチン/ストレプトアビジン−PEを使用して分析した。
【図8】図8は、本開示に従うscFv抗体によって認識される抗原の発現レベルを示す。
【図9A】図9Aは、CDR配列および選択されたscFv抗体の結合特異性の要約を提供する、表1である。
【図9B】図9Bは、CDR配列および選択されたscFv抗体の結合特異性の要約を提供する、表1である。
【図10】図10は、図8に記載したような、正常PBMCに対して、初代CLL細胞上でのscFv抗原の発現レベルを比較する、フローサイトメトリーの結果の要約を示す、表2である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCC受託番号XXXXXの下で寄託された、細胞株CLL−AAT。
【請求項1】
ATCC受託番号XXXXXの下で寄託された、細胞株CLL−AAT。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公開番号】特開2006−6334(P2006−6334A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190777(P2005−190777)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【分割の表示】特願2002−559567(P2002−559567)の分割
【原出願日】平成13年12月10日(2001.12.10)
【出願人】(502116287)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【分割の表示】特願2002−559567(P2002−559567)の分割
【原出願日】平成13年12月10日(2001.12.10)
【出願人】(502116287)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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