説明

慢性創傷の治療用ハーブ抽出物

本発明は、好ましくは高周波のパルス電磁場による治療を含めた、Mellilotus sp.(メリロット(Melilotus officinalis))に由来するハーブ抽出物を調製する方法に関する。随意的にセレン、および/または尿素、および/またはフルクトース、および/またはホスホグリセロール(またはそのナトリウム塩)を含むハーブ抽出物は、とりわけ正常な創傷修復能力が弱まっている状態に関係し、慢性創傷、好ましくは糖尿病性足部潰瘍および/または褥瘡の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、随意的にパルス電磁場による処理を含めた、メリロット(Melilotus officinalis)からハーブ抽出物を調製する方法に関する。本発明はさらに、随意的に、尿素、フルクトース、セレン、および/またはホスホグリセロール、またはそのナトリウム塩を含む、前記方法によって調製されるハーブ抽出物、および慢性創傷、好ましくは糖尿病性足部潰瘍および/または褥瘡の治療のための使用に関する。本発明はまた、医薬組成物およびキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、何世紀にも亘り、人間の主要な問題の1つである。この疾病は、膵臓のβ細胞からのインスリンの分泌の喪失、および/または末梢細胞の表面のインスリン受容体の機能障害に代表され、その両方が、血流においてパラクリニカル的に高濃度のグルコースを示す。
【0003】
米国だけで、推定で1820万人、人口の6.3%が、生涯にわたり深刻な状態の糖尿病に罹患している。それらのうち、1300万人が診断されている。約520万人は未だに診断を受けていない。毎年、20歳以上の約130万人が糖尿病と診断されている。
【0004】
糖尿病は、世界中で、死亡および障害の主な原因の1つとして幅広く認識されている。2000年には、米国における死亡の主な原因の第6番目であった。しかしながら、糖尿病は、死亡証明書における死亡の根本にある原因として過少報告される可能性が高い。糖尿病を有する者のうち、約65%の死亡は心疾患および心臓発作に起因している。
【0005】
糖尿病は、身体のほとんどすべての部位に影響を及ぼす、長期的合併症に関係している。疾病は、しばしば、失明、心臓および血管の疾病、心臓発作、腎不全、切断、および神経損傷の原因となる。抑制されていない糖尿病は妊娠を困難にさせる場合があり、糖尿病を患う女性から生まれる乳児には出生異常が多く見られる。
【0006】
2002年には、米国における糖尿病の費用は、合計1320億ドルにも上った。障害給付金、失われた労働時間、および早死を含めた間接費用は、合計400億ドルにもなり、入院、診療、および治療の提供を含めた糖尿病の看護のための直接医療費は、合計920億ドルにも上った。
【0007】
糖尿病は短期的および長期的に有害な作用を有する。血糖値の調節は糖尿病の長期的な有害な作用を低減および遅延させるための最良の予防的治療であるが、これは常に可能というわけではなく、高血糖値の持続時間、患者の生理機能および人種、および疾病の重症度を含めたいくつかの要因に応じて、長期的な有害な作用が現れる。3つの主な長期的な有害作用は、網膜症、腎症および神経障害である。網膜症は網膜に影響を及ぼし、疾病の最終期では失明を引き起こす。腎症は腎臓に影響を及ぼし、それらに機能不全を引き起こし、神経障害は手足、主に足の感覚の喪失を生じる。二次的な有害な作用として、足の神経の神経障害は、通常、細菌および他の日和見感染症に感染した創傷の発生を引き起こす。これらの創傷の治療は、通常はうまくいかず、最終的には、足を部分的または全体的に切断しなければならなくなる。
【0008】
切断後、糖尿病患者は、糖尿病に起因する他のいくつかの問題に加えて身体障害者となる。障害は人間に社会的および経済的な副次的悪影響を及ぼす。
【0009】
糖尿病を患う人々のうち、15%が彼らの生涯において足部潰瘍を経験するであろう。足部潰瘍は、糖尿病を患う患者の将来における下肢切断の主要な予測因子である。実際、足部潰瘍を患う人々の約14〜24%は、切断を必要とする。したがって、糖尿病が非外傷性の下肢切断の主な原因であることは、驚きではない。過去10年間において、切断を防ぐことを目的とした多くの努力にもかかわらず、糖尿病を患う人々における下肢切断の発生率は上昇している。したがって、防止戦略にとって、切断率を低減することが可能な、創傷の治癒のための適切な技術が不可欠である。
【0010】
糖尿病性潰瘍または褥瘡などの慢性創傷の治癒は、臨床に関する重要な問題である。慢性創傷の促進的治癒に関する既知の方法としては:
− 圧力除去装置(非特許文献1〜4)
− ハイドロセラピー
− 超音波治療
− 電気刺激(非特許文献5)
− 高圧酸素療法
− 持続陰圧吸引療法
− 皮膚移植および人工皮膚置換、ならびにヒト組織工学の分野を利用する方法(非特許文献6)
− 外科的静脈リハビリテーション(非特許文献7)
− 遺伝子治療(非特許文献8)
−プロテアーゼを制御する創傷被覆材の利用(非特許文献9)
−PDGF−BB(レグラネクス(Regranex))またはEGFなどの成長因子担持ゲルの利用(非特許文献10)、および
−最終的にNOを放出するハイドロゲルの局所塗布(非特許文献11)
が挙げられる。
【0011】
慢性創傷を治療するための既知の方法は、それでもなお幾つかの不都合な点および欠点を有する。すなわち、それらのいくつかは非常に高価であり、その理由から通常は利用できる状態になく、それらのいくつかは患者にとって非常に困難であるかまたは苦痛を伴う処方計画を要し、慢性創傷は非常に高い再発率を特徴とすることから、かなり頻繁に、それらが十分に有効でない場合がある。
【0012】
慢性創傷の治療の大幅な進歩にもかかわらず、慢性創傷を、比較的低い再発率で完全に治癒させることが可能な治療が依然として必要とされている。
【0013】
したがって、再発率の低下を伴う、慢性創傷の促進した治癒を提供し、外科的介入を回避することが可能であろう、代替となる、改善された、および優れた薬学的手法が依然として必要とされている。
【0014】
したがって、慢性創傷、好ましくは糖尿病性足部潰瘍および/または褥瘡の治療に有用な、有効(すなわち再発の危険性が最小化された)かつ容易に投与可能であろう、薬学的手法を提供することが本発明の目的である。
【0015】
驚くべきことに、本発明に従ったハーブ抽出物は、糖尿病性足部潰瘍、神経障害性の前肢の潰瘍を含めた神経障害性潰瘍、糖尿病性の圧迫潰瘍または糖尿病性の静脈性潰瘍などのタイプの慢性創傷を治療することができる。
【0016】
さらには、本発明に従ったハーブ抽出物は、何らかの理由によって、長期間に亘り、1つの場所にとどまっている人々に影響を及ぼす褥瘡の治療にも使用することができる。
【0017】
一般に、本発明は、糖尿病などの状態と関係があるのみならず、老齢期にある患者、または通常の創傷治癒能力が深刻に弱まっているが、ステロイド治療する間に、慢性創傷の治療に使用することが可能なハーブ抽出物を提供する。
【0018】
有利には、本発明に従ったハーブ抽出物は、促進された創傷閉鎖を伴う完全な治癒を提供し、また予想外なことに、瘢痕に非常に有効な発毛を伴って、治癒創傷における組織の質も改善する。より健全な瘢痕組織の獲得により、より低い、将来における潰瘍の再発率を確保する。
【0019】
先行技術では、スイートクローバーとしても知られるメリロット(Mellilotus)は、内服的にまたは外用的に投与される場合、一部の疾患に役立つことが知られている。
【0020】
特許文献1には、血栓症の治療のための、アセチルサリチル酸および、スイートクローバー(すなわちメリロット)の葉、セイヨウトチノキの種、およびルスクスの根の乾燥抽出物を含有する、経口投与のための錠剤の形態をした、幾つかの成分の乾燥組成物が記載されている。
【0021】
特許文献2には、静脈炎、拡張蛇行性静脈、動脈硬化症、痔核および高血圧症などの循環系の問題、ならびに特に男性(いわゆる「スペアタイヤ」)のみならず、女性(セルライト)においても問題である、限局性の脂肪症、すなわち贅肉の治療など、治療に有用な、経口投与のための、イチョウ(Ginkgo biloba)のビフラボン抽出物、ロイコシアニジン、メリロット(Mellilotus)および/またはアエスクルス(Aesculus)の抽出物、センテラ(Centella)抽出物、およびヒバマタ(Fucus)抽出物を含有する、多成分の抗酸化組成物が記載されている。
【0022】
特許文献3には、血管内皮、細胞外マトリックス、あるいは、動脈、静脈またはリンパ系の周囲組織への損傷、および高血圧に起因する、循環および慢性的な変性の問題の治療に有用な、経口投与のための、イチョウ(Ginkgo biloba)のビフラボン抽出物、ロイコシアニジン、メリロット(Mellilotus)および/またはアエスクルス(Aesculus)抽出物、およびセンテラ(Centella)抽出物を含有する、多成分の抗酸化組成物が記載されている。
【0023】
特許文献4には、メリロット(Mellilotus)抽出物、ならびに皮膚の老化の予防または改善に有用な他の多くの植物性抽出物を含有する、外用の化粧用または皮膚用組成物が記載されている。
【0024】
特許文献5には、特に、および随意的に、吹き出物の治療に有用なメリロット(Mellilotus)抽出物を含めた、複数の薬草の治療剤が記載されている。
【0025】
特許文献6には、にきびおよび酒さなどの肌のトラブルの治療のための多くの血液の微小循環の改善薬の1つとして、メリロット(Mellilotus)抽出物を含有する多成分の局所用組成物が記載されている。
【0026】
特許文献7には、特に、クマリンおよび/またはスイートクローバー(すなわちメリロット)およびルチン抽出物を、患者のミトコンドリア膜タンパク質複合体に作用する、虚血および/または、虚血またはエネルギー欠乏に関連する病状の治療に有用な活性化合物として含む、医薬組成物が記載されている。
【0027】
しかしながら、先行技術文献のいずれも、Mellilotus sp.のハーブ抽出物を、慢性創傷、特に糖尿病性足部潰瘍および/または褥瘡の治療に使用することを目的としていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】独国出願第102004022746号明細書
【特許文献2】欧州特許第1214084号明細書
【特許文献3】欧州特許第1214085号明細書
【特許文献4】欧州特許出願第1426030号明細書
【特許文献5】特開2001−322943号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0156873号明細書
【特許文献7】国際公開第98/51291号パンフレット
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Armstrong DG, et al., “Off-loading the diabetic foot wound, a randomized clinical trial”, Diabetes Care 2001, 24, 1019-1022
【非特許文献2】Ha Van G, et al., “Nonremovable, windowed, fibroglass cast boot in the treatment of diabetic plantar ulcers: Efficacy, safety, and compliance”, Diabetes Care 2003, 26, 2848-2852
【非特許文献3】Mueller MJ, et al., “Effect of Achilles tendon lengthening on neuropathic plantar ulcers. A randomized trial”, J. Bone Joint Surg. 2003, 85A, 1436-1445
【非特許文献4】Moffat CJ., et al., “Randomized trial of four-layer and two-layer bandage system in the management of chronic venous ulceration”, Wound Rep. Reg. 2003, 11, 166-171
【非特許文献5】Peters EJ, et al., “Electric stimulation as an adjunct to heal diabetic foot ulcers: a randomized clinical trial”, Arch. Phys. Med. Rehabil. 2001, 82, 721-725
【非特許文献6】Marston WA, et al., “The efficacy and safety of Dermagraft in improving the healing of chronic diabetic foot ulcers”, Diabetes Care 2003, 26, 1701-1705
【非特許文献7】Bianchi C, et al., “Subfascial endoscopic perforator vein surgery combined with saphenous vein ablation: Results and critical analysis”, J. Vasc. Surg. 2003, 38, 67-71
【非特許文献8】Yamasaki K, et al., “Reversal of Impaired Wound Repair in iNOS-deficient Mice by Topical Adenoviral-mediated iNOS Gene Transfer”, J. Clin. Invest., Vol. 101, No. 5, March 1998, 967-971
【非特許文献9】Cullen B, et al., “Mechanism of action of Promogran, a protease modulating matrix, for the treatment of diabetic foot ulcers”, Wound Rep. Reg. 2002, 10, 16-25
【非特許文献10】Tsang MW, et al., “Human Epidermal Growth Factor enhances healing of diabetic foot ulcers”, Diabetes Care 2003, 26, 1856-1861
【非特許文献11】Bohl Masters KS, et al., “Effect of nitric oxide releasing poly(vinyl alcohol)hydrogel dressings on dermal wound healing in diabetic mice”, Wound Rep. Reg. 2002, 10, 286-294
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の目的は、ハーブ抽出物を調製する方法によって解決されるが、該方法は、
(a)Mellilotus sp.に由来する植物性材料を提供し、
(b)前記植物性材料を乾燥し、
(c)有機溶媒を加え、
(d)前記植物性材料と前記有機溶媒の混合物をインキュベートし、
(e)前記ハーブ抽出物を得る、
各工程を有してなる。
【0031】
1つの実施の形態では、植物性材料は、メリロット(Melilotus officinalis)に由来する。
【0032】
メリロット(Melilotus officinalis)に由来する植物性材料は、葉および/または細い茎を含むことが好ましい。
【0033】
1つの実施の形態では、工程(b)における乾燥は、約20〜50℃、好ましくは約37〜45℃、最も好ましくは約42℃の範囲の温度で行われる。
【0034】
工程(b)における乾燥は、約3〜4日間、行われることが好ましい。
【0035】
1つの実施の形態では、有機溶媒は、好ましくは約60〜96%(v/v)、さらに好ましくは約80〜96%(v/v)、最も好ましくは約96%(v/v)のエタノールである。
【0036】
1つの実施の形態では、工程(d)におけるインキュベーションは、約20〜40日間、好ましくは約22〜38日間、最も好ましくは25〜35日間、行われる。
【0037】
1つの実施の形態では、工程(d)におけるインキュベーションは、約20〜50℃、好ましくは約37〜45℃、最も好ましくは約42℃の範囲の温度で行われる。
【0038】
1つの実施の形態では、本方法は、追加的に、(f)尿素を加える工程を有してなる。
【0039】
1つの実施の形態では、本方法は、追加的に、(g)フルクトースを加える工程を有してなる。
【0040】
1つの実施の形態では、本方法は、追加的に、(h)ホスホグリセロールおよび/またはそのナトリウム塩を加える工程を有してなる。
【0041】
1つの実施の形態では、本方法は、追加的に、(i)セレンおよび/またはその有機または無機塩を加える工程を有してなる。
【0042】
セレンまたはその塩は、約1〜100mg/l、好ましくは約5〜50mg/l、最も好ましくは約10〜20mg/lの範囲の濃度である遊離のセレンに加えられることが好ましい。
【0043】
1つの実施の形態では、本方法は、追加的に、(j)前記ハーブ抽出物をパルス電磁場に曝露する工程を有してなる。
【0044】
1つの実施の形態では、電磁場パルスは、正弦曲線状、矩形状、および/または確率論的形状を有する。
【0045】
1つの実施の形態では、パルス電磁場は、約5〜750kHz、好ましくは約50〜350MHz、最も好ましくは約250MHzの範囲の周波数を有する。
【0046】
1つの実施の形態では、パルス電磁場は、約10〜200W、好ましくは約20〜100W、最も好ましくは約45Wの範囲の出力を有する。
【0047】
1つの実施の形態では、パルス電磁場は、100〜150μテスラの範囲の磁場強度を有する。
【0048】
1つの実施の形態では、工程(j)における曝露は、約3〜5分間、行われることが好ましい。
【0049】
1つの実施の形態では、工程(j)における曝露は繰り返し行われ、3回行われることが好ましい。
【0050】
本発明の目的は、さらに、本発明に従った方法によって入手可能なハーブ抽出物によって解決する。
【0051】
本発明の目的は、さらに、被験体における慢性創傷の治療のための、本発明に従った、または本発明に従った方法によって抽出される、ハーブ抽出物の使用によって解決する。
【0052】
本発明の目的は、さらに、被験体における慢性創傷の治療のための医薬組成物の製造のための、本発明に従った、または本発明に従った方法によって抽出される、ハーブ抽出物によって解決する。
【0053】
1つの実施の形態では、慢性創傷は、正常な創傷修復能力が弱まっている状態に関係する。
【0054】
1つの実施の形態では、慢性創傷は、糖尿病などの病状に関係する、および/または、老齢期にある患者またはステロイド治療の間に生じる。
【0055】
1つの実施の形態では、慢性創傷は、糖尿病性足部潰瘍、神経障害性の前肢の潰瘍を含めた神経障害性潰瘍、糖尿病性の圧迫潰瘍、または糖尿病性の静脈性潰瘍;長期的な障害に関連する褥瘡または圧迫潰瘍である。
【0056】
1つの実施の形態では、慢性創傷は、糖尿病性足部潰瘍である。
【0057】
1つの実施の形態では、慢性創傷は、褥瘡である。
【0058】
本使用の1つの実施の形態では、被験体は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0059】
1つの実施の形態では、被験体は妊娠していない。
【0060】
本発明の目的は、さらに、本発明に従った、または本発明に従った方法によって抽出された、ハーブ抽出物を含有する、医薬組成物によって解決する。
【0061】
1つの実施の形態では、医薬組成物はさらに、薬学的に許容される担体を含有する。
【0062】
1つの実施の形態では、医薬組成物は、注射による投与用に製剤化される。
【0063】
1つの実施の形態では、医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0064】
1つの実施の形態では、医薬組成物は、局所投与用に製剤化される。
【0065】
本発明の目的は、さらに、本発明に従った医薬組成物を含むキットによって解決する。
【0066】
本明細書では「慢性創傷」という用語は、その創傷が、長期間にわたって治癒せず、頻繁に再発する傾向が強い、特有の症状を有する臨床症状のことをいう。慢性創傷は、通常、糖尿病、老齢期にある患者、移動能力が限られた患者、またはステロイド治療の患者など、正常な創傷治癒能力が弱まっている状態に関連する。したがって、創傷の治癒が思わしくない患者は、糖尿病性足部潰瘍、糖尿病性の神経障害性前肢潰瘍を含めた神経障害性潰瘍、糖尿病性の圧迫潰瘍または糖尿病性の静脈性潰瘍を含む、糖尿病性潰瘍を患う患者、ならびに、褥瘡を患う、移動能力が限られた患者である。褥瘡は、通常、何らかの理由によって、長期間1つの場所にとどまっている人々に起こる。
【0067】
本明細書では「確率論的形状」という用語は、電磁場パルスがノイズの形態をしているという意味を有する。好ましくは、電磁場パルスは、矩形をしており、内部の正弦曲線状の波動と調和している。パルス電磁場の「出力」(W)とは、例えば有効出力を意味する。パルス電磁場の「磁場強度」(テスラ)の値は、例えばピークからピークまでとして示される。
【0068】
本明細書では「医薬組成物」という用語は、本発明のハーブ抽出物を含有することが意図されている。本発明のハーブ抽出物の薬学的に活性成分を少なくとも1つ含む、および/または、前記活性成分の誘導体または類似体の少なくとも1つ、およびその対応する塩を含む医薬組成物もまた考慮されている。
【0069】
医薬組成物は、例えば、溶液、シロップ、エリキシル剤、エマルションおよび懸濁液などの液体形態、または例えばカプセル、カプレット、錠剤、丸薬、粉末、および坐剤などの固体形態でありうる。顆粒または半固体の形態およびジェルキャップもまた考慮されている。医薬組成物が液体または粉末の場合、投与単位は、随意的に、例えば茶さじ1杯分のように測定されるべきである。ハーブ抽出物または薬学的に活性な成分に加えて、医薬組成物は、例えば、フレーバー剤、甘味料、染料、保存剤、安定剤、着色剤、希釈剤、懸濁剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、および崩壊剤を含みうる。例えば錠剤は、コーティングされうる。注入可能な液体は、無菌であるべきである。経皮的送達システムおよびリポソーム系もまた考慮されている。言及するすべての製剤は、即時放出、持続放出および徐放性の放出用に意図されうる。
【0070】
本明細書では「薬学的に許容される」という用語は、少なくとも非毒性であることを意味する。本開示において意味する「薬学的に許容される担体」は、所望の投与経路に応じて、さまざまな形態を取りうる。この用語は、水またはエタノールなどの従来の製薬用の希釈剤、およびコーンスターチ、乳糖、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、ゼラチンカプセルまたはガムなどの従来の錠剤化成分を含む。
【0071】
本発明の医薬組成物は、経口、舌下、非経口、静脈内、腹膜内、経鼻、膣、直腸、皮下、皮内、筋肉内、および局所など、さまざまな経路を通じて投与することができる。投与単位は、1日、1週間または1月に1回または数回投与されうる。送達はまた、例えば注入によって、または経皮的な徐放性の放出システムを通じて、連続的であってもよい。
【0072】
よって、本発明は、随意的に電磁場放射処理された、メリロット(Melilotus officinalis)に由来するハーブ抽出物を提供する。臨床データは、糖尿病性足部潰瘍および/または褥瘡などの慢性創傷の治療における抽出物の有益な効果を示した。研究は、インビトロおよび実験動物モデルの両方について行い、それによって本抽出物が、毒性、変異原性、または発癌性を示さないことが明らかになった。しかしながら、妊娠は禁忌である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】治療開始時、1ヵ月後、および2ヵ月後の患者の平均潰瘍面積(cm2)の図。各対の差異は統計的に有意(P値0.0001,0.002,および0.009)。ハーブ抽出物は、注入によって、および局所軟膏として、ヒト患者に投与した。
【図2】治療第1日目に撮影した試験群のラットの写真(糖尿病性のラットモデルにおける皮膚創傷に対する本発明に従ったハーブ抽出物のインビボ試験の間に撮影した写真。ハーブ抽出物は、試験群の動物の創傷を覆う、その溶液を含んだ包帯の形態で施用した。図3〜5も同様)。
【図3】治療第22日目に撮影した試験群のラットの写真。創傷は完全に治癒し、新しい長い毛が瘢痕領域全体を覆っている。先の損傷の痕跡は見られなかった。
【図4】試験第1日目に撮影した対照群のラットの写真。
【図5】試験第22日目に撮影した対照群のラットの写真。創傷は閉鎖したものの、瘢痕はまだ著しく分断し、完全にむき出しになっている。
【図6】経口の形態のハーブ抽出物の群における、治療開始時に撮影した、糖尿病性足部潰瘍の写真(ヒト被験体の糖尿病性足部潰瘍における、発明に従ったハーブ抽出物の臨床試験の間に撮影した写真。図7〜13も同様)。
【図7】経口の形態のハーブ抽出物の群における、治療の終わりに撮影した、上記患者の糖尿病性足部潰瘍の写真。
【図8】局所形態のハーブ抽出物の群における、治療開始時に撮影した、別の糖尿病性足部潰瘍の写真。
【図9】局所形態のハーブ抽出物の群における、治療の終わりに撮影した、上記患者の糖尿病性足部潰瘍の写真。
【図10】経口形態と局所形態を組み合わせたハーブ抽出物の群における、治療開始時に撮影した、糖尿病性足部潰瘍の写真。
【図11】経口形態と局所形態を組み合わせたハーブ抽出物の群における、治療の終わりに撮影した、上記患者の糖尿病性足部潰瘍の写真。
【図12】静脈内注射の形態のハーブ抽出物の群における、治療開始時に撮影した、別の糖尿病性足部潰瘍の写真。
【図13】静脈内注射の形態のハーブ抽出物の群における、治療の終わりに撮影した、上記患者の糖尿病性足部潰瘍の写真。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明を説明することを意図した以下の実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、実施例は、特許請求の範囲の対象または保護の範囲に制限的な影響を有することは意図されていない。
【実施例】
【0075】
実施例1:未加工のハーブ抽出物の調製
メリロット(Melilotus officinalis)の葉および細い茎を荒野から採集する。有用な部分を取り分け、最初の洗浄をした後、木製の網の上、暗所で3〜4日間、材料を乾燥する。乾燥状態では、植物性材料は変色することなく緑色をしており、葉および茎は砕けやすい。抽出では、気密のガラス容器を使用する。乾燥した植物性材料を小片(2〜5cm)に砕き、空間が残らないようにガラス容器に入れる。充填(圧縮)後、容器が完全に満たされるまでEtOH(96% v/v)を加える。容器をインキュベーター(37〜45℃、好ましくは42℃)に20〜40日間、暗緑色の溶液が観察されるまで静置する。
【0076】
30〜40日後、植物性材料が無色になったら、それぞれ各1リットルのメリロット(Melilotus officinalis)抽出物に、50mgの尿素、700mgのセレン、16mgのフルクトース、および1000mgのホスホグリセロールのナトリウム塩を加える。次に、容器を再び密閉し、インキュベーターに42℃で24時間、保持する。布フィルターを用いて植物性材料から分離することにより、抽出物を回収する。
【0077】
実施例2:電磁処理
インキュベーション後、実施例1の抽出物を入れた容器を、電磁場に4回、各3分間曝露し、一緒にプールした。得られた抽出物をそれぞれ、5、0.45および0.22μmのフィルターに順次通し、滅菌バイアルに分配した。ラベルし、包装した後、ハーブ抽出物は使用可能になる。
【0078】
磁性インパルス発生器(MIG)が生じる電流は方向が変化しないことから、未加工の抽出物に曝露する電磁場は強力かつ単極のパルスを発する。パルスを発する磁場は、5kHz〜750kHzの範囲の非常に高い周波数を有する。この実施例では、矩形状のパルスが用いられる。しかしながら、正弦曲線状または確率論的形状も同様に考慮されている。好ましくは、パルスは矩形状をしており、内部の正弦曲線状の波動と調和することが好ましい。特定の種類の生成パルスが分子内の原子の物理構成および/または分子の配置にいくらかの変化を生じさせ、それによって化学的性質の変化を生じさせると仮定される。
【0079】
ハーブ抽出物は、電磁場に3回、各2〜5分間、好ましくは5分間曝露する。使用するパルスの電気出力は約20〜100Wであり、最良の効果は45Wで得られる。
【0080】
実施例3:予備的臨床研究−毒性試験
予備的臨床研究では、実施例2に従った本発明のハーブ抽出物を、急性毒性および慢性毒性について検査した。薬物の急性毒性の研究では、BALB/cマウスおよびウィスター系ラットに、単回の筋肉注射で注入した。薬物の慢性毒性は、ウィスター系ラットで3ヶ月間、およびイヌで1ヶ月間、研究を行った。ハーブ抽出物の変異原性、胎児毒性、催奇性、アレルゲン性、免疫毒性の性質の可能性、ならびに生殖機能における影響についても検査した。
【0081】
毒性についての結論:
実施例2のハーブ抽出物についての毒性研究の結果を要約すると、調製物は、実験動物のハーブ抽出物の単回の筋肉注射において非毒性であり、筋肉注射では、ウィスター系ラットおよびイヌにおいて良好な耐容性を示したといえる。
【0082】
本研究は、0.5〜1.0ml/マウス(BALB/cマウス)の用量で、通常の生理食塩水で1:10に希釈したハーブ抽出物の単回の筋肉注射では、動物に中毒および死亡を生じないことを示した。1.5〜2.0ml/マウス(75〜100ml/kg)に投与量を増大すると、動物の自発運動量の低下および鬱症状を引き起こしたが、死亡は観察されなかった。
【0083】
BALB/cマウスへの通常の生理食塩水で1:5に希釈したハーブ抽出物の筋肉注射は、痛み、動物の深刻な鬱症状、および死亡を生じた。LD50に近い用量におけるBALB/cマウスへのハーブ抽出物の筋肉内および腹腔内投与では、動物に鬱症状、昏睡および活動休止を生じた。LD50におけるマウスのハーブ抽出物の中毒パターンは、溶剤としてハーブ抽出物中に存在するエチル・アルコールによる毒性と似ていた。毒性指標によれば、BALB/cマウスおよびウィスター系ラットにLD50レベル(42〜52ml/kg)で筋肉内および腹腔内投与した場合、ハーブ抽出物は毒性が低いことが立証された。調製物の毒作用に対する所定の動物種の感応性には明確な差異および性別に関係する差異は見られなかった。さらには、BALB/cマウスにおける筋肉内経路と腹腔内経路の投与では顕著な差異はなかった。
【0084】
ウィスター系ラットにおける、3ヶ月間、1日に調製物の0.07および0.21ml/kgの筋肉注射、および、イヌにおける、1ヶ月間、1日に0.07ml/kgのハーブ抽出物の筋肉注射で、慢性毒性の実験を行った。調製物の言及した用量を、注射前に、滅菌した通常の生理食塩水で1:10に希釈した。
【0085】
研究結果は、ウィスター系ラットにおける3ヶ月の慢性実験における0.07および0.21ml/kg、およびイヌにおける1ヶ月の慢性実験における0.07ml/kgの用量のハーブ抽出物は、動物に良好な耐容性を示し、血液学的指標、試験動物の主器官における機能状態(用いた生化学的検査およびECGのデータによる)には影響を及ぼさないことを示唆した。これらの群の動物には、慢性毒性実験の終了後に、内臓の病理形態学的な変化または毒アレルゲン性(toxicoallergenic)反応は見られなかった。ウィスター系ラットにおける0.07および0.21ml/kg用量、およびイヌにおける0.07ml/kg用量の、通常の生理食塩水で1:10に希釈した調製物の長期間の筋肉注射では、局所的な刺激性作用は示さなかった。
【0086】
厚生省の薬理学に関する党州委員会(Pharmacological State Committee of Ministry of Public Health)の要求に従い、ハーブ抽出物の変異原性の性質の研究を行った。
【0087】
エームス試験において指標菌であるネズミチフス菌に遺伝子突然変異を誘発し、交配種F1(CBA*C5716)マウスの骨髄細胞に染色体異常を誘発し、SOS染色体試験において、マウスの胚細胞およびE.coli PQ37のDNAの修復システムに優性の致死突然変異を生じさせる、調製物の能力について研究を行った。
【0088】
これらの研究の結果、ハーブ抽出物はいずれの変異原性の性質も有しないことが明らかになった。
【0089】
妊娠ウィスター系ラットへの0.21ml/kg用量におけるハーブ抽出物の筋肉注射は、妊娠期間中のすべてにおいて、対照群と比較して、実験動物の妊娠しているメスの体重増加には影響を与えなかった。妊娠期間、生存している胎児数、着床部位、黄体、および胎芽の体重は、対照群と比較して顕著な差異を示さなかった。実験群における着床前の死亡の指標は、大きく変化しなかったが、着床後の死亡は対照群と比較して実験群で低かった。
【0090】
出生前期の間に0.21ml/kgのハーブ抽出物の影響を被る、胎児の標準的な部分の肉眼検査および顕微鏡検査の間に、すべての事例の6.7%に、胎児の発育不全が観察された。その影響は、胎芽の発育の欠陥として評価されうる。
【0091】
出生前期の間に0.21ml/kgのハーブ抽出物に曝露したラット胎児の骨格系の発達の研究に必要な、アリザリン染料で染色した準備した部分の分析は、骨格の発育欠陥は示さなかった。しかしながら、同時に、骨化点の大部分において骨化の遅延が観察された。
【0092】
妊娠期間第1日目〜第20日目の0.21ml/kgのハーブ抽出物の筋肉注射の影響下、対照群と比較して、新生ラット数の低下および死産ラット数の増加が判明し。出生前期の間にハーブ抽出物に曝露したラットの体重は、対照群の指標よりも少なかった。子孫発展における実験結果は、身体発育の遅延を示した。
【0093】
したがって、本実験は、妊娠第1日目〜第20日目の0.21ml/kgのハーブ抽出物の筋肉注射が、ハーブ抽出物に曝露された動物において、胎児毒性および催奇性作用を有することを立証するために行った。したがって、妊娠はハーブ抽出物の処方にとって、禁忌とみなすことができる。
【0094】
10週間の雄ラットおよび2週間の雌ラットへの0.21ml/kgのハーブ抽出物の毎日の筋肉注射では、動物の生殖機能における調製物の影響は立証されなかった。
【0095】
モルモットにおけるハーブ抽出物のアレルゲン性の特性の研究は、感作のため1日のインターバルで5回投与する、0.07および0.14ml/kgの用量でのハーブ抽出物の筋肉注射、および、感作後、第14日目および第21日目に0.14ml/kgのハーブ抽出物を決められた用量における腹腔内投与では、調製物はアナフィラキシー・ショックを生じなかった。
【0096】
実験した用量および感作スケジュールにおけるハーブ抽出物は、モルモットにおける遅延型の超過敏反応およびマウスにおける膝窩リンパ節の反応の、アレルゲン性作用を有しなかった。
【0097】
0.07ml/kgおよび0.18ml/kg用量では、ハーブ抽出物は抗体形成数および脾臓における真核細胞に影響を及ぼさず、マウスにおける遅延型の超過敏反応を生じなかった。データは、体液および細胞性免疫において、ハーブ抽出物に消極的な影響がなく、したがって、調製物には免疫毒性がないことの証拠である。
【0098】
本発明に従ったハーブ抽出物の毒性を試験する予備的臨床研究で行なったすべての実験、および得られた結果に基づいて、ハーブ抽出物は、妊娠のみを禁忌とした臨床試験を対象とする。
【0099】
実施例4:糖尿病ラットの皮膚創傷の治癒における、ハーブ抽出物の効能
概要
糖尿病性潰瘍などの慢性創傷の治療は、重要な臨床に関する問題である。治療を促進する方法としては、成長因子を負荷したゲル、高圧酸素、移植、および人工皮膚置換の使用が挙げられる。この研究は、本発明に従ったハーブ抽出物を含む新規天然混合物に対するインビボ反応を検査する。蒸留水を用いた本発明に従ったハーブ抽出物と比較する正常に機能しない創傷治癒を有する糖尿病性のラットモデルにおける動物の予備的研究を行った。結果として、創傷の完全閉鎖までの時間は、ハーブ抽出物で治療した群のほうが短かった。創傷治癒における差異は、本治療の第9日目には明白となった。ハーブ抽出物処理した動物は、小さい瘢痕組織を有し、体毛の成長が完了したのに対し、水で処理した動物では、体毛の成長が正常に機能しない瘢痕が明らかとなった。この研究結果は、この新規ハーブ抽出物の皮膚使用が創傷治癒を調節し、体毛の成長を活性化する可能性を有することを示唆している。
【0100】

圧迫潰瘍、糖尿病性足部潰瘍、および静脈性潰瘍などの慢性創傷は、すべての皮膚創傷の約70%を構成する。このような慢性創傷は莫大な費用を招き、何百万の人々の生活の質を害する。およそ糖尿病性足部潰瘍の5人に1人は、最後には切断に至る。創傷は、規則的または適時の手順で治癒しない場合、または治癒過程が構造的完全性をもたらさない場合に、慢性または非治癒性とみなされる。不適切に治癒する創傷は、必要な機械的完全性を有さず、引き続き治癒される状態でありうる。
【0101】
糖尿病の病因におけるおよびフリー・ラジカルの役割に関して、フリー・ラジカルの消去およびその抗酸化能における新規ハーブ抽出物の非常に高い可能性を考慮すると(Biomed Pharmacother. 2005 Aug;59(7): 365-73. Review.)、我々は、本ハーブ抽出物への皮膚の曝露がいかにしてラットモデルにおける糖尿病性の創傷の治癒を補助しうるかを調べることを目的とした。
【0102】
方法
新規ハーブ抽出物(実施例2に従う)のインビボ試験に使用した動物モデルは、糖尿病性のラットの背面皮膚における全層創傷であった。PSRC/TUMSの動物収容施設の体重200〜250gのウィスター系ラットを使用した。動物は別々のケージに入れた。糖尿病は、ストレプトゾトシン(Sigma−Aldrich社(英国所在)製)の投与によって誘発した。ストレプトゾトシンは、55mg/kg用量を腹腔内投与した。ストレプトゾトシンの投与の前に、ラットの基線血糖を決定した。48時間後、再度、血糖を測定してラットが糖尿であることを確実にした。血糖値が倍加した場合に、糖尿病の誘発と承認した。グルコースは、Glucometer(Infopia Co.社(韓国所在))によって判定した。血糖の判定は毎日5日間継続し、糖尿病の存在を確実にした。ストレプトゾトシン誘発性の糖尿病の存在に関しては、かなり体重が減少し、弱った動物、および不確実な血糖値を有するものは、実験から除外した。合計14匹のラットを使用し、対照群および試験群に同数を割り当てた。試験群には適用する本発明に従ったハーブ抽出物を含む0.5mlの溶液を与え、対照群には蒸留水を与えた。時間=0日目に、全層、円形の15mm直径の創傷を創出した(Wound Rep. Reg. 2002; 10: 286−294に従う)。ラットにペントバルビタール(55mg/kg)の腹腔内投与によって麻酔し、背面皮膚に、ベタジンを用いる外科手術のための準備をした。外科用はさみを使用して、創傷を創出した。時間=0日目に、創傷に直接、準備した包帯を巻いた。滅菌ガスで創傷を覆い、注意深く巻いた。手術後、毎日2〜3日間は、創傷を新しい対照用または試験用包帯と交換すると同時に、ラットを麻酔下においた。創傷を滅菌生理食塩水で洗い流して残骸を除去し、創傷領域を清潔にした。デジタルカメラを使用して創傷の写真を撮影した。写真は、創傷の大きさおよび新しい新鮮な上皮組織の外観に関し、創傷治癒を検査した。写真撮影後、新しい包帯を創傷に置き、再び創傷を覆った。バイアスの制御は、各実験群にコードを割り当てることによって達成した。治験責任医師には各群の内容を伏せて、試験および対照は同様の外観を有していた。コードは、最後の4週間の解析の完了後に壊した。すべての動物実験は、UMDNJ IACUC審査委員会に承認された適切な手法のもとで行われた。
【0103】
図2〜5は、糖尿病性のラットモデルにおける皮膚創傷についての本発明に従ったハーブ抽出物のインビボ試験の間に撮影した写真を示している。ハーブ抽出物は、試験群の動物の創傷を覆うそれらの溶液を含む、包帯の形態で適用した。
【0104】
図2および3は、それぞれ、治療第1日目および22日目に撮影した試験群(ハーブ抽出物で処理した)のラットの写真を提示するものである。治療第15日目の試験群では、創傷は完全に閉じ、新しい短い体毛が瘢痕領域を覆っている。治療第22日目には、創傷は完全に治癒し、新しい長い体毛が瘢痕領域全体を覆っている。以前の創傷の徴候は見られない。
【0105】
図4および5は、それぞれ、治療第1日目および22日目に撮影した対照群(非治療)のラットの写真を提示している。治療第15日目の対照群では、創傷は閉じていない。試験第22日目には、創傷は閉じたが、瘢痕はまだ著しく分断され、完全にむき出しになっている。
【0106】
インビボにおける創傷治癒におけるハーブ抽出物の作用
図に示すように、試験群および対照群における創傷領域および周辺は同様である;しかしながら、試験群では、特に創傷領域および周辺の差異が最も明白になった第15日目において、より急速に閉鎖する傾向にあった。創傷の完全閉鎖までの時間はハーブ抽出物処理した動物のほうが短かった。対照および試験群の両方において、創傷領域は第9日目には縮小し始め、ほぼ完全な創傷閉鎖は、最初に第15日目に生じた(7匹のラットのうちの1匹)。第22日目までには、創傷は両方の群で実質的に閉鎖したが、ハーブ抽出物処理群における体毛の成長は、水で処理した群と比較して、実質的に完了していた。
【0107】
結論
本研究結果は、本発明に従ったハーブ抽出物を含む皮膚用の調製物が創傷治癒を促進する可能性を有することを示唆している。しかしながら、体毛の成長が対照群よりも効果的であることから、本研究のハーブ抽出物は、創傷閉鎖の促進よりもむしろ、治癒創傷における組織の質を改善するように思われる。慢性創傷は、時機を逸した治癒だけでなく、治癒後に閉鎖する状態にならないことをも特徴とし、したがって、閉鎖までの時間は、治療効果にとって、唯一の関連評価項目または唯一の根拠でなくて構わない。
【0108】
ハーブ抽出物で処理した試験群の動物に、より健全な瘢痕組織を得ることによって、再発率が低下することが予想できる。
【0109】
実施例5:糖尿病性足部潰瘍を有する患者におけるハーブ抽出物の最大耐量(MTD)の評価(第1相臨床試験)
糖尿病性足部の治療における主目的は潰瘍の治癒である。糖尿病性足部について、多くの療法が提案され、使用されているが、それらのすべては、潰瘍の改善および切断の予防において、部分的な効果しか有しない。さらに効果的な治療が必要とされている。よって、実施例2に従った注入可能なハーブ抽出物を、糖尿病性足部の治癒における治療および進行に導入する。この研究の主目的は、糖尿病性足部潰瘍の治療のために静脈内に注入する、この抽出物の最大耐量を評価することである。
【0110】
非盲検、対照群なしの2段階デザインで、第1相臨床試験を行った。除外基準のない、糖尿病を有する18歳より年齢が上の6名の男性患者がインフォームド・コンセントに署名した後に参加した。
【0111】
1時間、100mlの塩化ナトリウムの0.9%溶液で希釈した、実施例2に従ったハーブ抽出物の静脈内投与で患者を治療した。初期用量は、1日に2mlを28日間であり、次の段階で増減した。
【0112】
本抽出物のDLT(用量規定毒性)評価のため、6名の患者すべてについて判断した。
【0113】
1日に2ml、4ml、6.7ml、および10mlの漸増用量の抽出物を28日間、それぞれ投与した4名の患者には、臨床評価および実験室評価による副作用は観察されなかった。
【0114】
第5段階の、1日に13.5mlの漸増用量のハーブ抽出物では、患者は、治療第8日目に、注入部位に静脈炎を示した。注入部位を変更後、同一用量では静脈炎が継続したが、用量を6.7mlに低下後に消失した。
【0115】
この用量漸増の第2の患者でも、13.5ml/日で静脈炎が観察され、したがって抽出物は、6.7ml/日の用量で継続した。13.5ml/日用量では他の副作用は見られなかった。
【表1】

【0116】
6名の患者を2ml/日から始める漸増用量で治療した。この用量では、最大10ml/日まで容易に耐容し、および副作用またはDLTは認められなかった。13.5ml/日で静脈炎を示した2つの事例では、非難されたことにより、抽出物を最大6.7ml/日まで低下させた。他の臨床および実験室評価では、最大10ml/日まで、副作用がないことが実証された。最大耐量(MTD)には10ml/日用量が適しており、DLTは注入部位における局所的静脈炎のみであると結論付けられる。
【0117】
実施例2のハーブ抽出物は静脈炎以外に副作用のない、安全な薬物であり、糖尿病を患う患者の糖尿病性足部潰瘍に、高い信頼度で使用することができる。
【0118】
実施例6:糖尿病性足部潰瘍におけるハーブ抽出物の薬理効果(第2相臨床試験)
患者および方法
イラン国シーラーズ所在のシーラーズ大学医学部、内分泌代謝研究センター(Endocrine and Metabolism Research Center)において、本研究を行った。患者は、次の試験対象患者基準を満たす場合に、本研究への登録資格を有した:少なくとも30日の間、少なくとも1cm2の面積(最大長×最大幅)の糖尿病性足部潰瘍を有する、18歳以上。主な除外基準には次のものが挙げられる:感染の臨床的症状;骨が露出している;合併症または創傷治癒に干渉しうる病状(例えば、上皮性悪性腫瘍、脈管炎、結合組織疾患、または免疫系障害);既知の現在のアルコールまたは他の薬物の乱用、または透析、コルチステロイド、免疫抑制剤、放射線治療、または化学療法を伴う治療、任意の薬物に対する既知の過敏症;適当な靴用装置または免荷装置の取り付けに気が進まない、または出来ない外来患者。
【0119】
インフォームド・コンセントの後、基準/初診で、全体的な病歴および患者の現在の病状の評価を入手し、記録した。併用薬およびそれらの使用上の指示についても記録した。期間、タイプ、および管理を含めた患者の糖尿病の状態を現在の活動レベル、歩行能力、および潰瘍または切断の病歴と共に書き留めた。
【0120】
血液検査結果には、グリコヘモグロビン、グルコース、アルブミン、クレアチニン、血清尿素窒素、およびアルカリ・ホスファターゼのレベル;肝機能;および再生産年齢の女性のヒト絨毛性ゴナドトロピンレベルを含めた。ベースライン時に対象創傷の最大長および最大幅を測定した。対象創傷をベースライン時、およびその後1ヶ月ごとに写真撮影した。対象創傷を、局所感染および創傷の状態について、洗浄および/またはデブリドマンの前後に評価した(改善、安定、または悪化)。最初、および、必要な場合にはすべての追訪時に、研究対象の潰瘍に、健常組織の外科的デブリドマンを行った。
【0121】
面積測定(センチメートル単位で測定する最大長×最大幅)を用いて、創傷面積を決定した。包帯交換時に創傷を等張の塩化ナトリウム溶液で洗浄した。患者および/または医療提供者は、包帯の交換手順について指導を受けた。すべての患者は、体重負荷を制限して、必要な活動についてのみ移動するように指導された。
【0122】
薬物プロトコル
実施例2のハーブ抽出物を、毎日の筋肉注射(0.4ml/日)として徐々に使用した。
【0123】
追跡調査
2週間ごとに追跡調査を行った。各外来時に治験責任医師は次の項目を評価および記録した:研究対象創傷、薬物使用についての遵守、足用装置および/または免荷装置の使用、および有害事象の有無。
【0124】
結果
得られた結果を、治療開始時、1ヵ月後、および2ヵ月後の患者の平均潰瘍面積(cm2)のグラフとして図1に示す。各対の差異は統計的に有意である(P値0.0001、0.002、および0.009)。
【0125】
我々の基準を満たす10名(男性7名、女性3名)を研究に登録した。潰瘍の平均表面積は、開始時(12.32±11cm2)、1ヵ月後(9.55±9cm2)、および2ヵ月後(6.96±6cm2)、p<0.05であった。
【0126】
我々は、患者に有害な作用がないことを確認した。グルコース、アルブミン、クレアチニン、血清尿素窒素、アルカリ・ホスファターゼ、および肝機能を含む研究データでは、上記薬物で治療した後に顕著な変化は見られなかった。
【0127】
実施例7:無作為臨床試験:
糖尿病性足部潰瘍を有する患者におけるハーブ抽出物の経口、局所および併用療法の治療効果の評価
糖尿病性足部潰瘍は、糖尿病患者の罹患および死亡の主な原因1つである。
【0128】
それは、糖尿病患者において高頻度に見られ、約4.6%〜12%と報告されている。残念なことに、多数の糖尿病性の足部の患者は、足部または下肢の切断を必要とする。
【0129】
最近の療法は、創傷治癒および切断の予防に部分的効果を有する。さらに効果的な薬が非常に所望されている。この臨床試験の目的は、合併症の治療における新規方法を導入することができる、本発明に従ったハーブ抽出物の経口、局所および、経口および局所形態の組合せの、糖尿病性の足部における治療効果を評価することである。
【0130】
経口群では、患者は、それぞれ100mgの活性材料を含有する、カプセルの形態に充填された乾燥形態のハーブ抽出物で治療された。抽出物の適用する用量は、1日に2カプセル(2回用量)を45日間であった。
【0131】
局所群では、患者を、ワセリンに基づいて3%濃度で調製した、軟膏の形態のハーブ抽出物で治療した。適用する用量の抽出物は、潰瘍床における軟膏の薄層、およびその周囲の厚い層であり、60日間、1日に2回、毎回、少なくとも1時間は潰瘍をむき出しにした。
【0132】
併用群では、上述のように、同時に45日間、患者を経口および局所形態のハーブ抽出物で治療した。
【0133】
すべての患者は、治療の間の2週間、および治療方針の終了後も2ヶ月間は、従った。
【0134】
患者は、必要に応じて、標準的な方法で治療された。必要な場合には、ポビドンヨード浴、抗生物質による治療;創傷デブリドマン、免荷、足奇形の矯正など、すべての試験群に標準的治療および指針を適用した。患者はすべて、インフォームド・コンセントの書類に署名した後、参加した。
【0135】
18名の患者(各治療群に6名ずつ)がこの臨床試験にスカウトされ、彼ら全員が成功裏に治療期間を終了した。
【0136】
すべての患者は、II型の糖尿病を有しており、38〜69歳の年齢であった。創傷サイズの平均および標準偏差(SD)は、ベースラインと比較して、治療終了時、およびその2ヵ月後の時点で縮小していた:それぞれ、経口群で211±210および333±296、局所群で192±210および529±442、および併用群で500±404および779±477。各群における上記比較および創傷サイズの縮小はすべて、統計的に有意であった(p<0.05)。3種類の治療群間で、創傷治癒および創傷サイズの縮小に顕著な差異はなかった(p>0.05)。
【0137】
結論として、これら18名の患者の結果は、糖尿病性足部潰瘍の治癒および肉芽組織の形成における薬物の、経口、局所およびこれら2つの形態の併用のすべてのタイプが完全に効果的であることを実証した。
【0138】
ほとんどの患者における潰瘍は完全に閉鎖し、他の患者では潰瘍の直径が顕著に縮小した。実際に、1名を除くすべての患者は、治療に対する優れた反応を備えており、潰瘍の平均サイズは治療2ヶ月後までには80%を超えて縮小した。治療期間に、臨床検査、実験室分析および他の評価において、副作用は見られなかった。
【0139】
一部の結果を図6〜11に示す。
【0140】
本臨床試験の結果によれば、本発明に従ったハーブ抽出物は、次のように、治療に利用可能な多くの利点を有していると結論付けられよう:
− 常用量では完全に安全である(通常の有効量で副作用は見られなかった)
− 糖尿病性足部潰瘍に完全に有効である(ほとんどの患者で完全に改善)
− 糖尿病性の足部を有するすべての患者に適用できる(すべての患者が本抽出物に応答した)
− 治療効果は短期間で現れる(2週間以内)
− 入院の減少および潰瘍の早い改善に伴い、直接および間接費用が劇的に削減される。
【0141】
実施例8:多重センターの無作為臨床試験:
糖尿病性足部潰瘍を患う患者におけるハーブ抽出物の治療効果の評価(第3相臨床試験)
糖尿病の長期合併症は、糖尿病患者の罹患および死亡の主な原因である。
【0142】
糖尿病患者における糖尿病性足部の有病率は、約4.6%〜12%であると報告されている。残念なことに、多数の糖尿病性足部患者が、足または下肢の切断を必要とする。
【0143】
最近の治療は、創傷治癒および切断の予防に部分的効果を有するが、さらに効果的な薬に対する高い需要が存在する。この臨床試験の目的は、この合併症の治療における新規方法を導入することが可能な、糖尿病性足部における、注入可能な形態の本発明に従ったハーブ抽出物の治療効果を評価することである。
【0144】
患者は、塩化ナトリウムの0.9%溶液で希釈した、実施例2に従ったハーブ抽出物の静脈内注射で治療された。抽出物の適用する用量は、0.5時間以内に注入する、100mlの通常の生理食塩水で1日4mlを28日間であった。すべての患者は、治療期間の間、従った。
【0145】
対照群では、標準的方法で患者を治療した。必要な場合には、ポビドンヨード浴、抗生物質による治療;創傷デブリドマン、免荷、足奇形の矯正など、標準的治療および指針を、両方の試験群に適用した。すべての患者はインフォームド・コンセント書類に署名した後に参加した。
【0146】
26名の患者(治療介入群15名、対照群11名)は治療期間を終了し、本結果は中間解析であった。これら26名の患者の主な結果は、新規ハーブ抽出物治療を受けた15名の患者において、糖尿病性足部潰瘍の改善、肉芽組織の形成、微小血管循環の改善および切断の予防に、本薬物が完全に効果的であることを実証した。
【0147】
ほとんどの患者の潰瘍は完全に閉鎖し、他の患者では潰瘍の直径は顕著に縮小した。標準的治療を開始して1ヵ月後、潰瘍の平均サイズは、対照において12%未満に縮小した(p<0.05)。治療期間には、臨床検査、実験室分析および他の評価において、副作用は見られなかった。
【0148】
一部の結果を図12〜13に示す。
【0149】
初期解析の結果によれば、本発明に従ったハーブ抽出物は、次のような治療に利用可能な多くの利点を有すると考えられる:
− 常用量では完全に安全である(通常の有効量で副作用は見られなかった)
− 糖尿病性足部潰瘍に完全に有効である(ほとんどの患者で完全に改善)
− 糖尿病性足部を有するすべての患者に適用できる(すべての患者が本抽出物に応答した)
− 治療効果は短期間で現れる(2週間以内)
− 入院の減少および潰瘍の早い改善に伴い、直接および間接費用が劇的に削減される(イランにおける糖尿病性足部潰瘍の平均入院期間は約3.8週間であるが、本研究では、患者は約8日間入院した)
− 多くの場合において、本抽出物は切断を回避できる(治療を受けた2つの事例では、治療を受けた切断候補であったが、治療後には切断は必要なかった。対照群では、1名の患者が同一の状態を有していたが、5日後に下肢を切断した)。
【0150】
実施例9:無作為臨床試験:
褥瘡を患う患者におけるハーブ抽出物の静脈内投与の効果の判定
主目的は、褥瘡を患う患者における、実施例2に従ったハーブ抽出物の静脈内投与の効果を判定し、それを標準的治療と比較することである。
【0151】
患者は、褥瘡を患う成人男性および女性の被験体(18歳を超える年齢)を含む。脊髄の合併症(事故または先天的)、下肢の切断、脳血管障害などの慢性疾患、または骨粗鬆症に起因する骨折に由来する潰瘍を有するすべての患者が含まれる。彼らの潰瘍は、大きさは少なくとも1cm2(最大長×最大幅)でなければならず、少なくとも2週間前に生じていなければならない。
【0152】
9名は治療介入群、および9名は対照群である、18名の患者が臨床試験を終えた。治療介入群の平均年齢は44.7±19歳であり、対照群は46.7±22.7歳であり、男性の女性に対する比率は、各群共、7対2であった。治療介入群の潰瘍面積は35.1±30.1cm2であったのが、治療後には12.2±19cm2に変化した(P=0.004)。対照群の潰瘍面積は、開始時には17.6±17.3cm2であり、治療期間の終了時には14.8±14.5cm2であった(P=0.205)。
【表2】

【0153】
残念なことに、手術をしない褥瘡または外科的デブリドマン後の褥瘡の完全かつ完璧な治療は存在しなかった。最小の副作用しか有さない、創傷治癒を誘発することのできる、薬物が必要であることは明らかである。18名の患者についての本研究の結果によれば、治療群における治癒率は対照群における他の患者と比較して有意であった。本臨床試験の結果は、本発明のハーブ抽出物が、褥瘡の治療において、新規かつ有効な薬物とみなすことができ、患者の生活の質を顕著に改善できることを実証した。よって、広範囲デブリドマンおよびグラフトの関与の必要性が低減される。最後に、本発明のハーブ抽出物は褥瘡の治療を顕著に改善することができ、よって、褥瘡および圧迫潰瘍において、新規かつ有効な薬物として使用することができると結論付けることができる。
【0154】
前述の説明、特許請求の範囲、及び図面に開示する特徴は、本発明を、それらのさまざまな形態で、別々に、また、それらの任意の組合せで、実現するための材料でありうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーブ抽出物を調製する方法であって、
(a)Mellilotus sp.に由来する植物性材料を提供し、
(b)前記植物性材料を乾燥し、
(c)有機溶媒を加え、
(d)前記植物性材料と前記有機溶媒の混合物をインキュベートし、
(e)前記ハーブ抽出物を得る、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
前記植物性材料がメリロット(Melilotus officinalis)に由来することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記メリロット(Melilotus officinalis)に由来する植物性材料が、葉および/または細い茎を含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(b)における乾燥が、約20〜50℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(b)における乾燥が、約3〜4日間、行われることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、エタノールであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程(d)におけるインキュベーションが、約10〜40日間、行われることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(d)におけるインキュベーションが、約20〜50℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、
(g)尿素を加える工程
をさらに有してなることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、
(g)フルクトースを加える工程
をさらに有してなることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、
(h)ホスホグリセロールおよび/またはそのナトリウム塩を加える工程
をさらに有してなることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、
(i)セレンおよび/またはその有機または無機塩を加える工程
をさらに有してなることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記セレンまたはその塩が、約1〜100mg/lの範囲の濃度の遊離のセレンに加えられることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、
(j)前記ハーブ抽出物をパルス電磁場に曝露する工程
をさらに有してなることを特徴とする請求項1〜13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記電磁場パルスが、正弦曲線状、矩形状、および/または確率論的形状を有することを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記パルス電磁場が、約5〜750kHzの範囲の周波数を有することを特徴とする請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記パルス電磁場が、約10〜200Wの範囲の出力を有することを特徴とする請求項14〜16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記パルス電磁場が、100〜150μテスラの範囲の磁場強度を有することを特徴とする請求項14〜17いずれか1項記載の方法。
【請求項19】
工程(j)における曝露が、約3〜5分間、行われることを特徴とする請求項14〜18いずれか1項記載の方法。
【請求項20】
工程(j)における曝露が繰り返し行われることを特徴とする請求項14〜19いずれか1項記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20いずれか1項記載の方法によって得られるハーブ抽出物。
【請求項22】
被験体における慢性創傷の治療のための、請求項21記載の、または請求項1〜20いずれか1項記載の方法によって調製される、ハーブ抽出物の使用方法。
【請求項23】
被験体における慢性創傷の治療用の医薬組成物の製造のために、請求項21記載の、または請求項1〜20いずれか1項記載の方法によって調製される、ハーブ抽出物の使用方法。
【請求項24】
前記慢性創傷が、正常な創傷修復能力が弱まっている状態に関係することを特徴とする請求項22または23記載の使用方法。
【請求項25】
前記慢性創傷が、病状に関係する、および/または老齢期にある患者またはステロイド治療の間の患者に生じることを特徴とする請求項22〜24いずれか1項記載の使用方法。
【請求項26】
前記慢性創傷が、糖尿病性足部潰瘍、神経障害性の前肢の潰瘍を含めた神経障害性潰瘍、糖尿病性の圧迫潰瘍または糖尿病性の静脈性潰瘍;長期的な障害に関係する褥瘡または圧迫潰瘍であることを特徴とする請求項22〜25いずれか1項記載の使用方法。
【請求項27】
前記慢性創傷が糖尿病性足部潰瘍であることを特徴とする請求項22〜26いずれか1項記載の使用方法。
【請求項28】
前記慢性創傷が褥瘡であることを特徴とする請求項22〜26いずれか1項記載の使用方法。
【請求項29】
前記被験体が脊椎動物であることを特徴とする請求項22〜28いずれか1項記載の使用方法。
【請求項30】
前記被験体が妊娠していないことを特徴とする請求項22〜29いずれか1項記載の使用方法。
【請求項31】
請求項21記載の、または請求項1〜20いずれか1項記載の方法によって調製される、ハーブ抽出物を含む医薬組成物。
【請求項32】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
注射による投与用に製剤化された、請求項31または32記載の医薬組成物。
【請求項34】
経口投与用に製剤化された、請求項31または32記載の医薬組成物。
【請求項35】
局所投与用に製剤化された、請求項31または32記載の医薬組成物。
【請求項36】
請求項31〜35いずれか1項記載の医薬組成物を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−500785(P2011−500785A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530589(P2010−530589)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003779
【国際公開番号】WO2009/053850
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508232378)パルスロース カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】PARSROOS CO.
【Fターム(参考)】