説明

慢性疲労症候群の治療用の抗CD20抗体又はその断片などのB細胞除去剤

本発明は、第一の側面において、慢性疲労症候群及び筋痛性脳脊髄炎の治療用のB細胞除去性抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片に関する。特に、本発明は、好ましくはヒト化されている抗CD20モノクローナル抗体又はその断片の、慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の前記疾患に罹患した被検者における治療への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の側面において、慢性疲労症候群及び筋痛性脳脊髄炎の治療用のB細胞除去性抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片に関する。特に、本発明は、好ましくはヒト化されている抗CD20モノクローナル抗体又はその断片の、慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の前記疾患に罹患した被検者における治療への使用に関する。
【0002】
さらなる側面において、本発明は、慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎のそれに罹患した被検者における治療のためのB細胞除去剤全般に関する。
【背景技術】
【0003】
慢性疲労症候群
慢性疲労症候群(CFS)は、連続して少なくとも6ヶ月存続して、職業、社会、又は個人的な活動の従前レベルの実質的な低下を伴う、説明不能で重篤な疲労を特徴とする。また、これらの患者は、短期記憶又は集中の障害、筋肉痛、関節炎の証拠がない関節痛、頭痛、睡眠障害、及び運動後の消耗といった持続性又は再発性の症状をしばしば体験する(Fukuda K, et al., 1994, Ann Intern Med 121 :953-9et al 1994)。多くの研究が血液検査や放射医学上の検討において微妙な変化を示してきたが、バイオマーカーも診断検査法も存在していない。
【0004】
CFSの罹患率は全世界で少なくとも0.5%であると考えられていて、女性:男性の比は、3:1である(Wyller VB. 2007, Acta Neurol Scand Suppl 187:7-14)。
CFSの病因は、依然として不明である。様々な仮説には、免疫学、ウイルス学、神経内分泌学、及び心理学上の機序が含まれる。CFSの病理発生は多因子性であり、宿主と環境の両方の要因が関与すると推察されている(Devanur & Kerr 2006)。
【0005】
現行のCFS研究の優先項目について記載している2007年11月の最新の概説では、この病理発生を解明することの逼迫した必要性が強調されている(Kerr JR et al., 2007, J Clin Pathol 60:113-6)。
【0006】
CFSに罹患している多くの患者には、疲労の発症に先立つ急性ウイルス感染症の既往歴がある。研究データが免疫系活性化の証拠を示しているものの、その疾患機序は依然として知られていない。2001年には、診断検査法を開発することと、より特異的な治療法の開発を導くことを目的として、CFSの分子機序を解明するための共同研究グループが結成された(Devanur LD, Kerr JR. 2006, J Clin Virol 37:139-50)。
【0007】
いくつかの遺伝子発現研究がCFSにおいて実施されてきて、免疫応答と防御機序の機能不全に準拠して、特異的であるが複雑な遺伝子の諸変化があることを示した。あるマイクロアレイ研究は、16の遺伝子のCFSにおける示差的な発現を示して、T細胞活性化とニューロン及びミトコンドリアの機能の障害を示唆した(Kaushik N, et. Al., 2005, J Clin Pathol 58:826-32)。エプシュタイン・バーウイルス(EBV)感染後にCFSを発症した患者からと、疲労を発症しないEBV感染被検者からの末梢血単核細胞の全RNAの系列試料を使用した別のマイクロアレイ研究は、ミトコンドリア機能と細胞周期に影響を及ぼすいくつかの遺伝子が脱調節されていると結論した(Vernon SD, et. Al., 2006, BMC Infect Dis 6:15)。CFSにおける別の遺伝子発現研究は、膜輸送及びイオンチャネルに関与するいくつかの遺伝子が含まれる運動応答遺伝子の障害を示唆した(Whistler T, et. al., 2005, BMC Physiol 5:5)。最近、CFSにおける遺伝子ネットワークの分析は、臨床症状と重症度に差異がある7種の異なる遺伝子サブタイプを明らかにした(Kerr J, et. al., 2007, J Clin Pathol)。他のいくつかの研究は、CFSにおける全体的な遺伝子発現を取り扱ってきた(Fang H, et. al., 2006, Pharmacogenomics 7:429-40;
Whistler T, et al., 2003, J Transl Med 1 :10)。この遺伝子発現データは、決定的ではないものの、CFSには様々な細胞機能を表徴する遺伝子発現障害があることを示唆して、この疾患には種々雑多な病理発生があることを示す可能性がある。
【0008】
CFS研究において流布している主題は、ウイルス感染症のような急性の外因刺激に続いて持続的な免疫脱調節があるというものである。CFSに関連していると報告された微小病原体は、エプシュタイン・バーウイルス(Lerner AM, et al., 2004, In Vivo 18:101-6)、エンテロウイルス(Chia JK, Chia AY. 2007, J Clin Pathol)、パルボウイルスB19(Matano S, et al., 2003, Intern Med 42:903-5)、サイトメガロウイルス(Lerner AM, et al., 2002, In Vivo 16:153-9)、ヒトヘルペスウイルス6型(Chapenko S, et al., 2006, J Clin Virol 37 Suppl 1 :S47-51 ; Komaroff AL. 2006, J Clin Virol 37 Suppl 1 :S39-46)、クラミジア・ニューモニエ(Nicolson GL, et al., 2003, Apmis 111 :557-66)である。しかしながら、これらのデータには、一貫性がない(Soto NE, Straus SE., 2000, Herpes 7:46- 50)。
【0009】
感染後の疲労症候群に関する最近の研究は、感染後迅速に回復した対照と比較して、12ヶ月の期間にわたり、ex vivo サイトカイン産生の差異を見出さなかった(Vollmer-Conna U, et al., 2007, Clin Infect Dis 45:732-5)。他の研究は、活性化T細胞数の増加とサイトカインレベルの上昇によって実証されるような免疫活性化の証拠があるにもかかわらず、CFS患者は、NK細胞の低い細胞傷害性と免疫グロブリンの不足を伴う、抑制された細胞免疫機能を有する場合があると主張している(Patarca R. 2001 , Ann N Y Acad Sci 933: 185-200)。
【0010】
他の研究では、対照と比較して、多数の循環Bリンパ球があること、NK細胞サブセットが変化していること、接着分子の発現の増加も伴うことが報告された(Tirelli U, et al., 1994, Scand J Immunol 40:601-8)。一方、別の研究は、CFS患者においてCD56+NK細胞が低下していること、そしてCD4+及びCD8+Tリンパ球が低下していることを示した(Racciatti D, et al., 2004, lnt J lmmunopathol Pharmacol 17:57- 62)。また、CFS患者からのT細胞及びNK細胞は、より低いレベルの細胞内顆粒タンパク質、ペルホリンを発現することが見出され、細胞傷害性に媒介する能力の低下を示唆した。
【0011】
ある研究は、CFS患者において、免疫機能に関連した血液検査(laboratory)マーカーのいくつかの異常を示した(Klimas NG, et al., 1990, J Clin Microbiol 28:1403-10)。最も一致した結果は、低いNK細胞の細胞傷害性、さらにまた、CD8+T細胞の増加、CD20+B細胞数の上昇、そしてCD20とCD5を同時発現するB細胞サブセットの増加であった(Klimas et al 1990)。これらのデータは、CFS患者におけるNK細胞活性の顕著な減少に伴う、活性化CD8+細胞傷害性Tリンパ球の増大を報告した研究によってある程度支持された(Barker E, et al., 1994. Clin Infect Dis 18 Suppl 1 :S136-41)。
【0012】
CFS患者と対照を比較した最近の研究は、in vitro でのマイトジェン刺激後のT細胞及びNK細胞でCD69の発現が減少することを報告し、これらの細胞によって媒介される細胞性免疫の初期活性化における障害を示唆した(Mihaylova I, et al., 2007, Neuro Endocrinol Lett 28:477-83)。
【0013】
しかしながら、CFSにおける免疫脱調節に関するデータは一致してなくて、CFS患者のリンパ球サブセットをうつ病、多発性硬化症の患者と健常の対照のそれと比較した研究では、T、B、又はNK細胞のサブセットに差異を見出さなかった(Robertson MJ, et al., 2005, Clin Exp Immunol 141 :326-32)。同様に、CFSの免疫学に関する概説は、この研究分野で実施された諸研究には多様な特質があって、免疫学的異常の一致したパターンは確認し得ないと結論付けた(Lyall M, et al., 2003, J Psychosom Res 55:79-90)。
【0014】
CFSにおける免疫脱調節の仮説と並んで、この疾患の機序として、内因性の血管作用性神経ペプチドに対する自己免疫が提唱された(Staines DR., 2005, Med Hypotheses 64:539-42)が、科学的データに裏付けられてはいない。この著者はまた、線維筋痛症、多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、及び小児突然死症候群の病因にも同様の機序があると示唆して、ホルモン、神経伝達物質、免疫調節物質、及び神経栄養因子(neutrophes)として作用する血管作用性神経ペプチドに対する自己免疫がこれら疾患の複雑な臨床像を説明する可能性があるとの仮説を唱えている。しかしながら、これら神経ペプチドに対する自己抗体は、CFSにおいて報告されていない。
【0015】
ある研究は、循環性の抗筋肉及び抗CNS抗体のCFS患者と対照における存在について検討したが、病原性の抗体は検出されなかった。CFSにおける抗核自己抗体に関する別の報告(Skowera A, et al., 2002, Clin Exp Immunol 129:354-8)は、関連性がないと結論付けたが、ニューロン特異抗原に共通した自己抗体及び抗体について検討した別の報告は、微小管関連タンパク質2及びssDNAに対する抗体がCFSにおいてより高率であることを示した(Vernon SD, Reeves WC. 2005, J Autoimmune Dis 2:5)。ある単一の研究は、ムスカリン性コリン作動性受容体に対する自己抗体がCFS患者の亜集合に存在していることを示して(Tanaka S, et al., 2003, lnt J MoI Med 12:225-30)、CFSでは、対照に比較して、不溶性の細胞性抗原に対する自己抗体のより高いレベルが報告された(von Mikeecz A., et al., 1997, Arthritis Rheum 40: 295-305)。
【0016】
しかしながら、病原性自己抗体の存在についても、Tリンパ球媒介性自己抗体についても、首尾一貫したデータを伴う直接的な証拠はない。動物モデルにおいて(推定)ヒト自己抗原に類似した抗原での免疫化によってCFS疾患を再現させた間接的な証拠もない。
【0017】
CFSは、現行では、自己免疫疾患として定義されておらず、CFSの薬理学的治療のコクラン(Cochrane)レビューでの最新プロトコールも、その病因は不明であると述べている(Rawson KM, et al., 2007. Pharmacological treatments for chronic fatigue syndrome in adults. (Protocol) Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 4. Art. No.: CD006813「成人の慢性疲労症候群の薬理学的治療。(プロトコール)系統的レビューのコクランデータベース、第4号、項目番号:CD006813)。
【0018】
他のCFS病理発生仮説は、血小板機能不全(Kennedy G, et al., 2006, Blood Coagul Fibrinolysis 17:89-92)、神経障害(Natelson BH1 et al., 2005, Clin Diagn Lab Immunol 12:52-5)、神経内分泌障害(Van Den Eede F, et al., 2007, Neuropsychobiology 55:112-20)、代謝性又は自律神経性の障害、イオンチャネル機能不全(Chaudhuri A, et al., 2000, Med Hypotheses 54:59-63)、亜鉛欠乏症(Maes M, et al., 2006, J Affect Disord 90:141-7)、毒素曝露又は過去の予防接種(Appel S, et al., 2007, Autoimmunity 40:48-53)である。他の仮説は、CFS病理発生においてあり得る機序として、細胞内の免疫脱調節を伴う、運動に対する異常な応答に注目した(Nijs J, et al., 2004, Med Hypotheses 62:759-65)。また、n−3及びn−6長鎖多価不飽和脂肪酸を合成する能力の感染後損傷もCFSの病態生理において重要と提唱されてきた(Puri BK. 2007, J Clin Pathol 60:122-4)。
【0019】
このように、最新ジャーナルでのCFSに関する最近の概説は、この疾患が目下のところ原因不明であると述べている(Hampton T. 2006, Jama 296:2915; Hooper M. 2007, J Clin Pathol 60:466-71; Prins JB, et al., 2006, Lancet 367:346-55)。従って、CFSの病因及び病理発生について首尾一貫したピクチャーは描かれていない。
【0020】
現行のCFS治療法
正確な病理発生に関する知識の不足と原因機序が知られていないために、CFSに対する現行の標準的な特定治療法はない。系統的な概説は、進取的な筋肉リハビリテーションを行動及び認知の治療と組み合わせることを重視した「生物心理社会モデル」とCFSを結び付けるべきであると結論付けた(Maquet et al, 2006, Ann Readapt Med Phys 49:337-47, 418-27)
生物学的な仮説に基づいた療法を評価する研究がほとんど実施されてこなかった理由は、CFSの病因が知られていないためであろう。
【0021】
多数の証拠がおそらくは外因性の刺激によって突然生じた免疫系の脱調節を示唆しているので、2つの研究により静脈内γ−グロブリンのCFSへの使用が評価された。1つは、急性のパルボウイルスB19感染後のCFS患者3名についての症例報告であった。5日間の静脈内免疫グロブリンで治療されて、臨床症状の改善とサイトカイン脱調節の解消を得た(Kerr et al , 2003., Clin Infect Dis 36:e100-6)。71名の青年期CFS患者を対象にした二重盲検、プラセボ対照の無作為化試験では、3回のγ−グロブリン注入を1ヶ月ごとに投与して、平均18ヶ月で6ヶ月ごとのフォローアップ時に、γ−グロブリン治療群で機能改善があった。この試験の最初の6ヶ月では、プラセボ群とγ−グロブリン治療群の両方で改善が報告されてた(Rowe 1997, J Psychiatr Res 31 :133-47)。
【0022】
抄録形式(Lamprecht 2001 , Meeting of the American association of chronic fatigue syndrome (AACFS)「米国慢性疲労症候群学会(AACFS)会議、シアトル」で報告されたパイロット試験では、6名のCFS患者にエタネルセプト(Enbrel[エンブレル]、即ち、TNF媒介性の細胞性応答を阻害するように作用する可溶性の競合的TNF受容体である、ヒト腫瘍壊死因子受容体、p75 Fc融合タンパク質)が投与されて、臨床上の有益性が報告された。
【0023】
他の治療戦略の中では、バルガンシクロビルを使用して、長期持続性の疲労があって、エプシュタイン・バーウイルス又はヒトヘルペスウイルス6型に対する抗体力価が上昇している12名の患者が治療されて、9名で症状の改善があったが、その効果が抗ウイルス効果によるのか又は免疫調節により媒介されたのかは不確実であった(Kogelnik AM,. 2006., J Clin Virol 37 Suppl 1 :S33-8)。免疫調節作用の特性がある抗生物質のアジスロマイシンでの治療は、99名のCFS患者の59%で改善をもたらした(Vermeulen & Scholte 2006, J Transl Med 4:34)。
【0024】
現行のCFS研究の優先項目に関する最新の概説(Kerr et al 2007, J Clin Pathol 60:113-6)では、この疾患の分子病理発生の理解に注力する、有用なバイオマーカーを検証する、そして特定治療法の開発に役立つ新たな研究が奨励されている。この目的には、マイクロアレイを使用する遺伝子発現全体の分析が含まれる、様々な分子技術が利用可能で使用されてきた。
【0025】
B細胞リンパ腫及び自己免疫におけるB細胞除去性抗体の例としてのリツキシマブ
リツキシマブ(Mabthera[マブセラ]、RITUXAN(登録商標))は、膜貫通分子、CD20の細胞外部分中のエピトープに対して指向されたモノクローナル抗体である。この抗体は、断片抗原結合(Fab)部分がマウスであり、Fc部分がヒトである、ヒト−マウスのキメラ抗体である。CD20タンパク質は、Bリンパ球で発現されるが、幹細胞や成熟形質細胞では発現されない。CD20はまた、大多数のB細胞リンパ腫で発現される。CD20は、膜貫通カルシウム伝導と細胞周期進行の調節に関与している可能性があるが、正確な機能は知られていない(Janas et al 2005, Biochem Soc Symp:165-75)。リツキシマブのCD20への結合時には、そのFc部分への補体の結合と補体カスケードの活性化を介して、そしてまた抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)の活性化を介して、免疫学的な細胞殺傷が媒介される(Glennie et al 2007, MoI Immunol 44:3823-37)。
【0026】
リツキシマブ分子は、その結合後に内部化せず、形質膜から除かれないので、このモノクローナル抗体が細胞表面上に存続して、免疫学的攻撃を延長することが可能になる。
B細胞リンパ腫の治療におけるリツキシマブの役割は、にわかに注目されている。無痛性リンパ腫において、化学療法と組み合せてリツキシマブを使用する免疫化学療法、又はリツキシマブ単独療法は、今や現行の標準治療法であり、最も一般的なタイプの侵襲性B細胞リンパ腫(び慢性大細胞性B細胞リンパ腫)において、高齢者(Coiffier et al 2002, N Engl J Med 346:235-42)と若年患者(Pfreundschuh et al 2006, Lancet Oncol 7:379-91)の両方で、そしてまた最も一般的な無痛性リンパ腫(濾胞性リンパ腫)(Marcus et al 2005, Blood 105:1417-23)において全体生存率を改善してきた。濾胞性リンパ腫の選択された患者において、リツキシマブはまた、導入療法後の維持治療として3ヶ月ごとに2年間の注入で使用されて、全体生存率の改善を示している(van Oers et al 2006, Blood 108:3295-301)。
【0027】
近年、リツキシマブは、自己免疫疾患においても有効な治療薬であることが証明されたが、ここではB細胞の除去が、例えば慢性関節リウマチにおける臨床改善としばしば関連している(Dass et al 2006, Expert Opin Pharmacother 7:2559-70)。リツキシマブが療法上の役割を有する様々な自己免疫疾患のリストが増えている(Sanz et al 2007, Front Biosci 12:2546-67)。将来のB細胞標的指向化とその除去のためには、特異的なB細胞サブセットに対する抗体の開発が重要であろう(Dorner & Lipsky 2007, Expert Opin Biol Ther 7:1287-99)。
【0028】
リツキシマブ抗体は、CD20抗原に対して指向された、遺伝子工学処理されたキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは、米国特許第5,736,137号において「C2B8」と呼ばれた抗体である。RITUXAN(登録商標)は、再発性又は難治性で低グレード又は濾胞性のCD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の治療に適用されている。in vitro の作用機序研究は、RITUXAN(登録商標)がヒト補体へ結合して、補体依存性細胞傷害活性(CDC)によりリンパ様B細胞系を溶解することを実証した(Reff et al. Blood 83(2):435-445 (1994))。追加的に言えば、それは、抗体依存性T細胞傷害活性(ADCC)のアッセイにおいて有意な活性を有する。より最近、RITUXAN(登録商標)は、トリチウム化チミジン取込みアッセイにおいて抗増殖効果を有してアポトーシスを直接誘導するが、他の抗CD19及びCD20抗体はそうでないことが示された(Maloney et al Blood 88(10):637a (1996))。RITUXAN(登録商標)と化学療法及び毒素とのシナジーも、実験的に観測されてきた。特に、RITUXAN(登録商標)は、薬剤抵抗性のヒトB細胞リンパ腫細胞系をドキソルビシン、CDDP、VP−16、ジフテリア毒素、及びリシンの細胞傷害効果へ感作させる(Demidem et al Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997))。in vivo の前臨床試験は、RITUXAN(登録商標)がカニクイザルの末梢血、リンパ節、骨髄より、おそらくは補体及び細胞媒介性のプロセスを介してB細胞を除去することを示した(Reff et al. Blood 83(2):435-445 (1994))。CD20抗体に関する特許及び特許公開公報には、米国特許第5,776,456号、5,736,137号、5,843,439号、6,399,061号、及び6,682,734号、並びに米国特許出願番号:US2002/0197255A1、US2003/0021781A1、US2003/0082172A1、US2003/0095963A1、US2003/0147885A1(Anderson et al);米国特許第6,455,043B1号及びWO00/09160(Grillo-Lopez, A.);WO00/27428(Grillo-Lopez and White);WO00/27433(Grillo-Lopez and Leonard);WO00/44788(Braslawsky et al);WO01/10462(Rastetter, W.);WO01/10461(Rastetter and White);WO01/10460(White and Grillo-Lopez);US2001/0018041 A1、US2003/0180292A1、WO01/34194(Hanna and Hariharan);米国特許出願番号:US2002/0006404及びWO02/04021(Hanna and Hariharan);米国特許出願番号:US2002/0012665 A1及びWO01/74388(Hanna, N.);米国特許出願番号:US2002/0058029A1(Hanna, N.);米国特許出願番号:US2003/0103971A1(Hariharan and Hanna);米国特許出願番号:US2002/0009444A1及びWO01/80884(Grillo-Lopez, A);WO01/97858(White, C);米国特許出願番号:US2002/0128488A1及びWO02/34790(Reff, M.);WO02/060955(Braslawsky et al.);WO2/096948(Braslawsky et al.);WO02/079255(Reff and Davies);米国特許第6,171,586B1及びWO98/56418(Lam et al);WO98/58964(Raju, S.);WO99/22764(Raju, S.);WO99/51642、米国特許第6,194,551B1号、米国特許第6,242,195B1号、米国特許第6,528,624B1号、及び米国特許第6,538,124号(Idusogie et al.);WO00/42072(Presta, L.);WO00/67796(Curd et al.);WO01/03734(Grillo-Lopez et al.);米国特許出願番号:US2002/0004587A1及びWO01/77342(Miller and Presta);米国特許出願番号:US2002/0197256(Grewal, L);米国特許出願番号:US2003/0157108A1(Presta, L.);米国特許第6,565,827B1号、6,090,365B1号、6,287,537B1号、6,015,542号、5,843,398号、及び5,595,721号(Kaminski et al);米国特許第5,500,362号、5,677,180号、5,721,108号、6,120,767号、6,652,852B1号(Robinson et al);US特許第6,410,391B1号(Raubitschek et al);米国特許第6,224,866B1号及びWO00/20864(Barbera-Guillem, E.);WO01/13945(Barbera-Guillem, E.);WO00/67795(Goldenberg);US特許出願番号:US2003/0133930A1及びWO00/74718(Goldenberg and Hansen);WO00/76542(Golay et al.);WO01/72333(Wolin and Rosenblatt);米国特許第6,368,596B1号(Ghetie et al);米国特許第6,306,393号及び米国特許出願番号:US2002/0041847A1(Goldenberg, D.);米国特許出願番号:US2003/0026801A1(Weiner and Hartmann);WO02/102312(Engleman, E.);US特許出願番号:2003/0068664(Albitar et al.);WO03/002607(Leung, S.);WO03/049694、US2002/0009427A1、及びUS2003/0185796A1(Wolin et al);WO03/061694(Sing and Siegall);US2003/0219818A1(Bohen et al.);US2003/0219433A1及びWO03/068821(Hansen et al.);US2003/0219818 A1(Bohen et al.);US2002/0136719A1(Shenoy et al);WO2004/032828(Wahl et al.)が含まれ、このいずれも参照により本明細書に明確に組み込まれる。また、米国特許第5,849,898号及びEP出願番号330,191(Seed et al);米国特許第4,861,579号及びEP332.865 A2(Meyer and Weiss);USP4,861,579(Meyer et al);WO95/03770(Bhat et al);US2003/0219433A1(Hansen et al)も参照のこと。
【0029】
リツキシマブの安全性プロフィール
B細胞リンパ腫の治療におけるリツキシマブの安全性プロフィールはよく知られていて、370,000名の患者のデータベースからの経験に基づく(Kavanaugh 2006, J Rheumatol Suppl 77:18-23)。リンパ腫の治療では、主に最初の腫瘍負荷が高い患者において、サイトカイン放出によって引き起こされる、最初の注入の間の軽度〜中等度の反応が最も一般的な副作用である(Solal-Celigny 2006, Leuk Res 30 Suppl 1 :S16-21)。この注入の間には、リツキシマブ分子のタンパク質の性質により、アレルギー反応が見られる場合がある。
【0030】
すべてのB細胞指向療法での懸念は、体液性免疫に対して予測される影響である。延長される治療では、そして特に(3週ごとにほぼ6〜8回のリツキシマブ注入を用いる導入療法後の)維持治療(即ち、3ヶ月ごとに2年間の注入)では、B細胞の除去がより顕著であり、ほとんどの患者は、低γ−グロブリン血症になるものである。しかしながら、低レベルの免疫グロブリンとB細胞の除去は、感染症の臨床リスクに対して重大な影響を及ぼさないようである。
【0031】
リツキシマブの使用からの1つの潜在的で重篤な副作用は、間質性肺疾患の発症である。これは、潜在的には生命を脅かす合併症であるが、ごく稀であり、文献では16症例しか報告されていない(Wagner et al 2007, Am J Hematol 82:916-9)。
【0032】
慢性の自己免疫疾患におけるリツキシマブ治療に関連した安全性の課題は、臨床試験において不当に扱われていて(Edwards et al 2006, Best Pract Res Clin Rheumatol 20:915-28)、これまでのフォローアップではさほど十分な時間がない。故に、長期の安全性は、特にリツキシマブが年に1回又は2回、多年の間投与される場合、依然として明瞭にすべきことである。自己免疫疾患の患者では、リツキシマブ注入はしばしば2回(2〜3週離して)投与され、この連続注入が6〜12ヶ月後に繰り返される場合がある。即ち、(短期間で)リンパ腫患者よりかなり少ない用量である。
【0033】
今日、B細胞を除去することが可能な次世代の抗CD20抗体が臨床試験において使用されていて、おそらくは今後数年以内に臨床現場で使用されよう。例えば、グラクソ・スミスクライン社の完全ヒト化抗CD20抗体、オファツモマブ(Ofatumomab)は、現在、B細胞リンパ腫の再発について臨床試験中である。次世代の完全ヒト化抗CD20抗体は、さらにより強力なB細胞除去をもたらすと思われるので、B細胞リンパ腫の治療においてリツキシマブよりさらにより有効であるはずである。さらに、それらは、リツキシマブについて記載されるより少ない副作用を示すと推定されている。
【0034】
慢性疲労症候群の治療には様々なレジメンが示唆されてきた。例えば、US2007/025375では、慢性疲労症候群に罹患している患者の治療のために複雑な治療計画が提供されている。前記レジメンは、とりわけ、ミルナシプランの投与を含む。
【0035】
CFS/MEの未知の病因に照らして、CFSの有効な治療に有用な化合物への不断の要求がある。
【発明の概要】
【0036】
本発明は、慢性疲労症候群の治療に適用可能な新規化合物を提供することを目的とする。特に、本発明者は、抗CD20抗体のようなB細胞除去剤が慢性疲労症候群の治療に有用であることを見出している。
【0037】
好ましくは、抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片は、モノクローナル抗体である。特に好ましくは、前記モノクローナル抗体は、ヒト被検者へ投与されるとき、ヒト化抗体である。本発明においては、その抗体が、例えば遺伝子工学によって組換え的に産生され得る抗体断片として存在してよいことも考慮される。
【0038】
さらなる側面において、本発明は、慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の治療の方法に関するが、前記方法は、B細胞除去剤、例えばB細胞除去性の抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片の治療有効量を前記疾患又は障害に罹患した被検者へ投与する工程を含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、1年の期間にわたる3名の患者のCFS症状の発現が、異なる治療介入、即ちリツキシマブ(登録商標)又はメトトレキサート(M)の効果を浮き彫りにすることを図示的に示す。CFS症状の症状スコアは、0〜10の範囲にあり、ここで0は無症状を意味して、一方10は、きわめて重篤なCFSの症状を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の治療用の、抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片のようなB細胞除去性の生物学的実体、又はB細胞除去活性を有する低分子のような化学的実体のいずれかのB細胞除去剤に関する。
【0041】
本発明の文脈において、「慢性疲労症候群(CFS)」及び「筋痛性脳脊髄炎(ME)」という用語は、同義的に使用される。
本明細書に使用されるように、「B細胞除去」又は「B細胞除去活性」という用語は、被検者の循環B細胞レベルを低下させる、化学的実体又は生物学的実体(例、抗体)のいずれかの実体の能力を意味する。B細胞除去は、例えば、細胞死を誘導するか又は増殖を抑制することによって達成してよい。
【0042】
「CD20」抗原又は「CD20」は、ヒトの末梢血又はリンパ様器官に由来するB細胞の90%より多くの表面に見出される、約35kDaの非グリコシル化リンタンパク質である。CD20は、正常B細胞並びに悪性B細胞の両方に存在しているが、幹細胞では発現されない。文献にあるCD20の他の名称には、「Bリンパ球限定抗原」と「Bp35」が含まれる。CD20抗原については、例えば、Clark et al. Proc. Natl. Acad. Sd. (USA) 82:1766 (1985) に記載されている。CD20という用語には、ヒト以外の種の同等分子も含まれる。最近、T細胞及びNK細胞のサブセット上でのCD20の低レベル発現が報告された。
【0043】
「B細胞」は、骨髄内部で成熟するリンパ球であり、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、又はエフェクターB細胞(形質細胞)が含まれる。
より広義の意味において、本発明は、抗体又はその断片のCFSの治療への使用だけでなく、B細胞除去活性を有するCD20分子アンタゴニスト全般のCFSの治療への使用にも関する。
【0044】
本明細書において相互交換可能的に使用される「アンタゴニスト」又は「B細胞除去剤」は、例えば、B細胞上のCD20のようなB細胞表面マーカーへの結合時に、B細胞を哺乳動物において破壊するか又は除去する、及び/又は、例えば、B細胞によって誘発される体液性応答を抑制又は予防することによって、1以上のB細胞機能に干渉する分子のことである。本発明によるアンタゴニスト又はB細胞除去剤は、それで治療された哺乳動物においてB細胞を除去する(即ち、循環B細胞レベルを低下させる)ことができる。そのような除去は、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害活性(CDC)、B細胞増殖の阻害、及び/又はB細胞死の誘導(例えば、アポトーシスを介する)のような様々な機序を介して達成されてよい。本発明の範囲内に含まれるアンタゴニストには、任意選択的に細胞傷害剤と共役するか又はそれへ縮合した、B細胞表面マーカーへ結合する、抗体、合成又はネイティブ配列のペプチド、及び低分子アンタゴニストが含まれる。好ましいアンタゴニストは、CD20抗体又はCD20結合抗体断片である。さらに、既知のB細胞除去剤、メトトレキサートのような低分子アンタゴニストが好ましい。
【0045】
T細胞又はNK細胞のサブセットのような、B細胞以外の細胞がCD20抗原を発現する限りにおいて、これらの細胞も、CD20を介して作用する薬剤であるB細胞除去剤で除去される。
【0046】
「アポトーシスを誘導する」アンタゴニストは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞萎縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス体と呼ばれる)の形成のように、標準アポトーシスアッセイによって決定される、例えばB細胞のプログラム化された細胞死を誘導するものである。
【0047】
本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用されて、具体的には、それらが所望の生物学的活性を明示する限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体より形成される多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)、及び抗体断片が含まれる。
【0048】
好ましい態様において、CFSの治療に有用な抗体は、B細胞除去性のCD20結合抗体断片である。
「CD20結合抗体断片」は、その抗原結合領域を含む、インタクト抗体の一部を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖(linear)抗体;単鎖抗体分子;及び、抗体断片より形成される多重特異性抗体が含まれる。本発明の目的では、「インタクト抗体」は、重鎖及び軽鎖の可変ドメイン、並びにFc領域を含んでなる抗体である。
【0049】
「ネイティブ抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖へ連結するが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変動する。それぞれの重鎖と軽鎖はまた、規則的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V11)を有して、いくつかの定常ドメインがこれに続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V1)、そしてその他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと並列していて、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並列している。軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの間では、特別なアミノ酸残基がインターフェイスを形成すると考えられている。
【0050】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が抗体間の配列において広範囲に異なっていて、それぞれの特別な抗体のその特別な抗原への結合及び特異性に使用されるという事実に関連する。しかしながら、この可変性は、抗体の可変ドメイン全体で万遍に分布しているわけではない。それは、軽鎖と重鎖の両方の可変ドメインにおいて超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。ネイティブな重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、主にβシート配置をとって、3つの超可変領域によって連結した4つのFRをそれぞれ含み、これはそのβシート構造を連結して、ある場合はその一部を形成するループを形成する。各鎖中の超可変領域は、FRによってごく近傍にまとめられて、他の鎖由来の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(例えば、Kabat et al「Sequences of proteins of Immunological Interest(免疫学的に興味深いタンパク質の配列)」第5版、米国国立衛生研究所、保健局、メリーランド州ベセスダ(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体を抗原へ結合させることに直接は関与しないが、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)における抗体の参画のような、様々なエフェクター機能を発揮する。
【0051】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、緊密に非共有連結した1つの重鎖と1つの軽鎖の可変ドメインのダイマーからなる。それぞれの可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用してVH−VLダイマーの表面上の抗原結合部位を画定するのは、この配置においてである。集合して、この6つの超可変領域は、抗体へ抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は、抗原に特異的な3つの超可変領域だけを含んでなるFvの半分)でも、結合部位全体よりは低いアフィニティーではあるが、抗原を認識して結合する能力を有する。Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1以上のシステインが含まれる、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での少数の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基(複数)が少なくとも1つのフリーチオール基を担うFab’の表記法である。F(ab’)抗体断片は、元来は、ヒンジシステインをその間に有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。あらゆる脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なる種類の1つへ帰属させることができる。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依拠して、抗体は、異なるクラスへ帰属させることができる。インタクト抗体の5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2へさらに分類される場合がある。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、α、δ、ε、γ、及びμとそれぞれ呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元配置はよく知られている。「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、抗原結合に望まれる構造をFvが形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVH及びVLドメインの間にさらに含む。scFvの概説については、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies(モノクローナル抗体の薬理学)」113巻、Rosenburg and Moore 監修、Springer-Verlag,ニューヨーク(1994)中、Pluckthun, 269-315 を参照のこと。
【0052】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位がある小さな抗体断片を意味し、該断片は、同じポリペプチド鎖(VH−V1)において軽鎖可変ドメイン(V1)へ連結した重鎖可変ドメイン(V11)を含む。同じ鎖上のこの2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、これらのドメインは、別の鎖の相補ドメインと対合して2つの抗原結合部位を創出するように強いられる。ダイアボディについては、例えば、EP404097;WO93/11161;及び、Hollinger et al, Proc. Natl. Acad. Sd. USA, 90: 6444-6448 (1993) により詳しく記載されている。
【0053】
本明細書に使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団より得られる抗体を意味する。即ち、この集団を含んでなる個別の抗体は、そのモノクローナル抗体の産生の間に生じ得る可能な変異体(このような変異体は、概して微量に存在する)を除けば、同一である、及び/又は同じエピトープへ結合する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体が典型的には含まれるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらに他の免疫グロブリンが混在していない点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の集団より得られるという抗体の特徴を示すのであって、ある特別な方法による抗体の産生を必要とするものと解釈してはならない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al, Nature, 256: 495 (1975) によって初めて記載されたハイブリドーマ法によって作製しても、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製してもよい。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al, Nature, 352: 624-628 (1991) 及び Marks et al, J. Mol Biol, 222: 581-597 (1991) に記載の技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。本明細書のモノクローナル抗体には、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特別な種に由来するか又は特別な抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応配列に同一又は相同である一方で、その鎖(複数)の残りは別の種に由来するか又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体、並びにそのような抗体の断片中の対応配列に同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)が、それらが所望の生物学的活性を明示する限りにおいて含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al, Proc. Natl. Acad. Sd. USA, 81: 6851-6855(1984))。本発明において興味深いキメラ抗体には、非ヒト霊長動物(例、ヒヒ、アカゲザル、カニクイザルのような旧世界ザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含んでなる、「霊長動物化」抗体が含まれる(米国特許第5,693,780号)。非ヒト(例、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの部分で、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここではレシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、ウサギ又はヒト霊長動物のような非ヒト種の超可変領域(ドナー抗体)からの残基に置き換えられている。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでよい。これらの修飾は、抗体機能をさらに洗練させるためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むものであり、ここでは、超可変ループの全部又は実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのそれに対応して、FRの全部又は実質的に全部が、上記のFR置換(複数)を除けば、ヒト免疫グロブリン配列のそれである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれを含んでもよい。さらなる詳細については、Jones et al, Nature 321 :522-525 (1986); Riechmann et al, Nature 332:323- 329 (1988); 及び Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992) を参照のこと。「超可変領域」という用語は、本明細書において使用されるとき、抗原結合の主因となる抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(Ll)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)と重鎖可変ドメイン中の残基31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3));Kabat et al「Sequences of proteins of Immunological Interest(免疫学的に興味深いタンパク質の配列)」第5版、米国国立衛生研究所、保健局、メリーランド州ベセスダ(1991))及び/又は「超可変ループ」由来の残基(例、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91〜96(L3)と重鎖可変ドメイン中の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)、及び96〜101(H3);Chothia and Lesk J. Mol .Biol. 196: 901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書に定義されるような超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。「裸の抗体」は、細胞傷害部分又は放射標識のような異種分子へ共役していない抗体(本明細書に定義されるような)である。CD20抗原へ結合する抗体の例には:「C2B8」(「リツキシマブ」(「RITUXAN(登録商標)」と今日呼ばれている)(米国特許第5,736,137号、参照により本明細書に明確に組み込まれる);「Y2B8」又は「イブリツモマブ・チウセキタン」と明記されるイットリウム−[90]−標識2B8マウス抗体、ZEVALIN(登録商標)(米国特許第5,736,137号、参照により本明細書に明確に組み込まれる);「トシブモマブ」とも呼ばれるマウスIgG2a「BI」、131Iで標識して「131I−BI」抗体(ヨウ素113I−トシツモマブ、BEXXARTMを産生してもよい(米国特許第5,595,721号、参照により本明細書に明確に組み込まれる);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press et al. Blood 69(2): 584-591 (1987))と、「フレームワークパッチ化」又はヒト化1F5が含まれるこれらの変異体(WO03/002607,Leung, S.;ATCC寄託番号:HB−96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5,677,180号、参照により本明細書に明確に組み込まれる);ヒト化2H7;オファツムマブ、CD20 huMax−CD20上の新規エピトープに対する完全ヒト化IgG1(Genmab,デンマーク;WO2004/035607);AME−133(Applied Molecular Evolution);A20抗体又はキメラ又はヒト化A20抗体(それぞれ、cA20、hA20)のようなその変異体(US2003/0219433,lmmunomedics);並びに、International Leukocyte Typing Workshop より入手可能なモノクローナル抗体:L27、G28−2、93−1B3、B−CI、又はNU−B2(「Leukocyte Typing III(白血球タイプ決定法III)」(McMichael,監修、440頁,オックスフォード大学出版局(1987)中 Valentine et al)が含まれる。さらに、好適な抗体は、例えば、オクレリズマブ(Ocrelizumab,Biogen Idec/Genentech/Roche の完全ヒト化CD20抗体)、抗体GA101(Biogen Idec/Genentech/Roche の第三世代のヒト化抗CD20抗体)である。さらに、Biolex Therapeutics のBLX−301(最適にグリコシル化されたヒト化抗CD20)又は Immunomedics のベルツズマブ(Veltuzumab)(hA20)、又は Inexus Biotechnology のDXL625もともにヒト化抗CD20抗体であり、適している。
【0054】
さらに、他のB細胞除去剤、特に、エプラツズマブ(Epratuzumab)のような抗CD22抗体、又はMDX−1342のような抗CD19ヒト化抗体もCFSの治療に使用することができる。
【0055】
本明細書の「リツキシマブ」又は「RITUXAN(登録商標)」又は「マブセラ(mabthera)」という用語は、米国特許第5,736,137号(参照により本明細書に明確に組み込まれる)においてCD20抗原に対して指向されて「C2B8」と明記された、遺伝子工学処理によるキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体を意味して、CD20へ結合する能力を保持するその断片も含まれる。純粋に本発明の目的で言えば、そして他に示さなければ、「ヒト化2H7」は、ヒトCD20へ結合するヒト化抗体又はその抗原結合断片を意味し、ここで該抗体は、霊長動物のB細胞を in vivo で除去するのに有効である。
【0056】
B細胞除去剤又はアンタゴニスト、特に抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片の「有効量」という表現は、CFSを治療するのに有効であるB細胞除去剤又はアンタゴニストの量を意味する。例えば、抗CD20抗体は、慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の治療のために、投与量につき10mg〜5000mgの範囲で投与される。例えば、投与量は、リツキシマブの100〜1000mg/mの範囲、特に、単回注入として500mg/mであってよい。典型的には、メトトレキサートの投与量は、5mg〜30mg/週の範囲にある。
【0057】
1つの好ましい態様において、B細胞除去剤は、化学的実体、例えば低分子である。当該技術分野では、多様なB細胞除去剤が知られていて、例えば、既知のB細胞除去剤は、BAFF−アンタゴニストである。さらに、既知のB細胞除去剤には、BR3のアンタゴニスト、α4−インテグリンのアゴニスト、等が含まれる。例えば、メトトレキサートは、B細胞除去活性を示す葉酸の類似体である。他の有用なB細胞除去剤は、CD20に対する低分子モジュラー免疫医薬品(small modular immunopharmaceuticals:SMIP)である。例えば、B細胞除去剤として作用するSMIPは、Trubion Pharmaceuticals のTRU−015又はSBI−087である。また、SMIPは、強力なB細胞除去活性を有する、抗体より小さな単鎖ポリペプチドであり得る。
【0058】
好ましい態様では、B細胞除去剤の生物学的実体を代表する抗CD20抗体とB細胞除去剤の化学的実体を代表するメトトレキサートの組合せが慢性疲労症候群又は筋痛性脳脊髄炎を治療するのに有用である。これら実体の投与は、同時的、分離的、又は連続的に行ってよい。例えば、第一のレジメンでは抗体又はメトトレキサートのいずれか一方を被検者へ投与して、一方、第二のレジメンでは他の薬剤を投与する。
【0059】
B細胞除去剤、アンタゴニスト、特に、抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片を含んでなる組成物は、十分な医療実践に一致したやり方で製剤化、投薬、及び投与される。この文脈での考慮要因には、治療される特別な疾患又は障害の段階、治療される特別な哺乳動物、個々の被検者の臨床症状、薬剤送達の部位、投与の方法、投与の計画、並びに医療実践者に知られた他の要因が含まれる。B細胞除去剤の有効量は、投与される抗体又は抗体断片と同様に、そのような考察によって支配される。一般的な提案として、投薬につき非経口的に投与されるアンタゴニストの有効量は、1以上の投薬で、被検者の身体の1平方メートル(m)につき約20mg〜約10,000mgの範囲であろう。インタクトな抗体の例示の投与レジメンには、375mg/m(毎週)x4;1000mgx2(例えば、1日目と15日目);又は1グラムx3が含まれる。被検者への投与用の抗体は、前記抗体の単回治療有効投与量において、50〜2000mg/mであるか、又は50〜2000mg/mの前記抗体又はそのCD20結合抗体断片の頻回治療有効投与量である。しかしながら、上記に述べたように、抗体の上記提案量は、療法上の多数の考慮事項に依るものである。適正な用量及び計画を選択するときの重要因子は、上記に示したように、得られる結果である。B細胞除去剤アンタゴニストは、抗体と同じように、非経口、局所、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、及び/又は病巣内の投与が含まれる、あらゆる好適な手段によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下の投与が含まれる。鞘内投与も考慮される。さらに、B細胞除去剤アンタゴニストは、抗体と同じように、好適にもパルス注入によって、例えば、減量させるアンタゴニストの用量で投与してよい。好ましくは、投薬は、静脈内注射によって与えられる。
【0060】
このようなB細胞除去性アンタゴニストを産生する方法についてここで記載する。アンタゴニスト(複数)の産生又はそのスクリーニングに使用すべき抗原は、例えば、所望のエピトープを含有する、可溶型のCD20又はその一部であり得る。代替的に、又は追加的に、CD20をその細胞表面で発現する細胞も、アンタゴニスト(複数)を産生するか又はそれをスクリーニングするのに使用することができる。アンタゴニストを産生するのに有用な他のCD20の形態は、当業者に明らかであろう。
【0061】
好ましいアンタゴニストは抗体であるが、本発明では抗体以外のアンタゴニストも考慮される。例えば、アンタゴニストは、低分子アンタゴニストを含んでよい。低分子のライブラリーについてCD20に対してスクリーニングして、その抗原へ結合する低分子を同定することができる。あるいは、その低分子について、既知の技術によって、そのB細胞除去活性全般に関してスクリーニングしてよい。その低分子について、そのアンタゴニスト特性をさらにスクリーニングしてよい。アンタゴニストは、ラショナルデザイン又はファージディスプレイによって産生されるペプチドであってもよい(例えば、1998年8月13日公開のWO98/35036を参照のこと)。1つの態様において、選択される分子は、抗体のCDRに基づいて設計された「CDR模倣体」又は抗体類似体であってよい。このようなペプチドは、それ自体が拮抗性であっても、該ペプチドは、該ペプチドの拮抗特性を加えるか又は高めるように、細胞傷害剤へ縮合させてもよい。本発明に準拠して使用する抗体アンタゴニストの産生の例示技術についての記載を以下に続ける。
【0062】
(i)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原及びアジュバントの多数の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって動物において産生する。二機能性又は誘導化の薬剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した共役)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRN=C=NR(ここでRとRは異なるアルキル基である)を使用して、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質(例、アオガイヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、又は大豆トリプシン阻害剤)へ関連抗原を共役させることが有用であり得る。
【0063】
例えば、100μg又は5μgのタンパク質又は共役体(conjugate)(それぞれ、ウサギ又はマウスに対して)を3容量のフロイント完全アジュバントと組み合わせて、その溶液を多数の部位で皮内注射することによって、動物をその抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後に、フロイント完全アジュバント中の元の1/5〜1/10量のペプチド又は共役体で、多数の部位での皮下注射によってその動物を追加免疫する。7〜14日後にその動物を出血させて、血清について抗体力価を検定する。力価がプラトーに達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、動物は同じ抗原の共役体で追加免疫するが、異なるタンパク質へ、及び/又は異なる架橋連結試薬を介して共役する。共役体はまた、組換え細胞培養においてタンパク縮合体として作製することができる。また、免疫応答を高めるために、ミョウバンのような凝集剤を好適にも使用する。
【0064】
(ii)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団より得られる。即ち、この集団を含んでなる個別の抗体は、そのモノクローナル抗体の産生の間に生じる可能な変異体(このような変異体は、概して微量に存在する)を除けば、同一である、及び/又は同じエピトープへ結合する。このように、「モノクローナル」という修飾語は、別種の抗体又はポリクローナル抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al, Nature, 256: 495 (1975) によって初めて記載されたハイブリドーマ法を使用して作製しても、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製してもよい。
【0065】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子へ特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離されて配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。単離したならば、そのDNAを発現ベクター中へ配置させてから、他のやり方では免疫グロブリンタンパク質を産生しない、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞へそれをトランスフェクトさせて、モノクローナル抗体の組換え宿主細胞中での合成を得ることができる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する概説論文には、Skerra et al, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262 (1993) と Pluckthun, Immunol. Revs., 130:151-188 (1992) が含まれる。さらなる態様において、抗体又は抗体断片は、McCafferty et al, Nature, 348:552-554 (1990) に記載の技術を使用して産生される抗体ファージライブラリーより単離することができる。Clackson et al, Nature, 352:624-628 (1991) とMarks et al, J. MoI. Biol., 222:581-597 (1991) は、ファージライブラリーを使用する、マウス抗体とヒト抗体の単離についてそれぞれ記載する。後続の公表論文は、鎖シャフリング(Marks et al, Bio/Technology, 10:779-783 (1992))、並びにきわめて大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及び in vivo 組換え(Waterhouse et al, Nuc. Acids. Res., 21 :2265-2266 (1993))による、高いアフィニティー(nM範囲)のヒト抗体の産生について記載する。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離の伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する有効な代替法である。DNAはまた、例えば、ヒトの重鎖及び軽鎖定常ドメインのコーディング配列を相同マウス配列の代わりに置換すること(米国特許第4,816,567号;Morrison, et al, Proc. Natl Acad. ScL USA, 81 :6851 (1984))によって、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコーディング配列の全部又は一部を免疫グロブリンコーディング配列へ共有結合させることによって修飾してよい。典型的には、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、ある抗原への特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原への特異性を有する別の抗原結合部位を含んでなるキメラの二価抗体を創出するために、抗体の定常ドメインに置換されるか、又はそれらは、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換される。
【0066】
(iii)ヒト化抗体
当該技術分野では、非ヒト抗体をヒト化する方法について記載されてきた。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源よりそれへ導入された1以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には「インポート」可変ドメインより取られる「インポート」残基としばしば呼ばれる。ヒト化は、本質的には、Winter と共同研究者の方法(Jones et al, Nature, 321 :522-525 (1986); Riechmann et al, Nature, 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988))に従って、超可変領域配列をヒト抗体の対応配列で置換することによって実施することができる。従って、そのような「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、ここではインタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が非ヒト種由来の対応配列によって置換されていて、実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基とおそらくはいくつかのFR残基が齧歯動物の抗体中の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体を作製するときに使用すべき重鎖と軽鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を抑えるのにきわめて重要である。いわゆる「ベストフィット」法によって、齧歯動物の抗体の可変ドメイン配列を既知のヒト可変ドメイン配列の全体ライブラリーに対してスクリーニングする。次いで、齧歯動物の配列に最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受容する(Sims et al, J. Immunol, 151 :2296 (1993); Chothia et al, J. MoI. Biol, 196:901 (1987))。別の方法は、軽鎖又は重鎖の可変領域の特別な亜群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特別なフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用してよい(Carter et al, Proc. Natl Acad. ScL USA, 89:4285 (1992); Presta et al, J. Immunol, 151 :2623 (1993))。抗原への高い親和性と他の好ましい生物学的特質を保持して抗体をヒト化することがさらに重要である。この目標を達成するには、好ましい方法に従って、親配列とヒト化配列の三次元モデルを使用する、親配列と様々な概念上のヒト化産物の解析の方法によってヒト化抗体を製造する。三次元の免疫グロブリンモデルは、普通に入手可能であって、当業者に馴染みがある。選択される候補免疫グロブリン配列のあり得る三次元コンホメーション構造を図解及び図示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらディスプレイの視察によって、候補免疫グロブリン配列の機能における該残基のあり得る役割の分析、即ち、その抗原へ結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原(複数)への親和性の増加といった所望の抗体特性が達成されるように、レシピエント及びインポート配列よりFR残基を選択して組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的かつ最も実質的に関与する。
【0067】
(iv)ヒト抗体
ヒト化に代わる方法として、ヒト抗体を産生することができる。例えば、免疫化のときに、内因性の免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の完全レパートリーを産生することが可能となるトランスジェニック動物(例、マウス)を産出することが今や可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系列の突然変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(J11)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性の抗体産生の完全な阻害をもたらす。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイをそのような生殖細胞系列突然変異マウスに移すと、抗原チャレンジ時にヒト抗体の産生をもたらすものである。例えば、Jakobovits et al, Proc. Natl. Acad. ScL USA, 90: 2551(1993); Jakobovits et al, Nature, 362: 255-258 (1993);Bruggermann et al, Year in Immuno., 7:33 (1993);及び、米国特許第5,591,669号、5,589,369号、及び5,545,807号を参照のこと。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al, Nature 348:552-553 (1990))を使用して、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーよりヒト抗体及び抗体断片を in vitro で産生することができる。この技術に従って、抗体Vドメイン遺伝子を、MI3又はfdのような繊維状バクテリオファージのメジャー又はマイナーいずれかのコートタンパク質遺伝子へインフレームでクローニングして、このファージ粒子の表面に機能性の抗体断片として提示する。この繊維状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能特性に基づいた選択はまた、この特性を明示する抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。このように、このファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、多様なフォーマットにおいて実施することができるが、その概説については、例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993) を参照のこと。ファージディスプレイには、V遺伝子セグメントのいくつかの供給源を使用することができる。Clackson et al, Nature, 352:624-628 (1991) は、免疫化マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さなランダムコンビナトリアルライブラリーより抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。Marks et al., J. MoI. Biol. 222:581-597 (1991), 又は Griffith et al, EMBOJ. 12:725-734 (1993) に記載の技術に本質的に従って、非免疫化ヒトドナーよりV遺伝子のレパートリーを構築して、多様なアレイの抗原(自己抗原が含まれる)に対する抗体を単離することができる。また、米国特許第5,565,332号及び5,573,905号を参照のこと。ヒト抗体はまた、in vitro 活性化B細胞によって産生してよい(米国特許第5,567,610号及び5,229,275号を参照のこと)。
【0068】
(v)抗体断片
抗体断片の産生には、様々な技術が開発されてきた。伝統的には、インタクト抗体のタンパク分解的な消化を介してこれらの断片を導いた(例えば、Morimoto et al, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992) 及び Brennan et al, Science, 229:81 (1985) を参照のこと)。しかしながら、これらの断片は、今日では、組換え宿主細胞より直接産生することができる。例えば、抗体断片は、上記に考察した抗体ファージライブラリーより単離することができる。あるいは、Fab’−SH断片を大腸菌(E. coli)より直接回収して、化学的にカップリングさせて、F(ab’)断片を生成することができる(Carter et al, Bio/Technology 10:163-167 (1992))。別のアプローチによれば、組換え宿主培養物よりF(ab’)断片を直接単離することができる。当業者には、抗体断片の産生のための他の技術が明らかであろう。他の態様において、選択される抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;及び、米国特許第5,587,458号を参照のこと。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるような「線状抗体」であってもよい。そのような線状抗体断片は、単特異性又は二重特異性であってよい。
【0069】
医薬製剤
本発明に拠って使用する抗体又は他のアンタゴニストのようなB細胞除去剤の治療用製剤は、所望の度合いの純度を有する抗体又はその断片を任意選択の医薬的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤と混合することによって、凍結乾燥製剤又は水溶液剤の形態で保存用に調製する(「Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントン製薬科学)」第16版、Osol, A. 監修(1980))。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、利用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンが含まれる抗酸化剤;保存剤(塩化アンモニウムオクタデシルジメチルベンジル;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールのような);低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンのようなアミノ酸;単糖、二糖、及び、グルコース、マンノース、又はデキストリンが含まれる他の炭水化物;EDTAのようなキレート形成剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールのような糖;ナトリウムのような塩形成性の対イオン;金属錯体(例、Zn−タンパク質錯体);及び/又は、TWEENTM、PLURONICSTM、又はポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0070】
例示の抗CD20抗体製剤は、参照により本明細書に明確に組み込まれる、WO98/56418に記載されている。この公開公報は、40mg/mL リツキシマブ、25mM 酢酸塩、150mM トレハロース、0.9% ベンジルアルコール、0.02% ポリソルベート20をpH5.0で含んでなり、2〜8℃で少なくとも2年間の貯蔵期間を有する、液体の多投与量製剤について記載する。興味深い別の抗CD20製剤は、9.0mg/mL 塩化ナトリウム、7.35mg/mL クエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mL ポリソルベート80、及び注射用滅菌水(pH6.5)に10mg/mL リツキシマブを含む。皮下投与に適用される凍結乾燥製剤については、米国特許第6,267,958号(Andya et al)に記載されている。そのような凍結乾燥製剤は、好適な希釈剤で高いタンパク質濃度へ復元されて、その復元された製剤は、本発明で治療される哺乳動物へ皮下投与することができる。抗体又はアンタゴニストの結晶化した形態についても考慮される。例えば、US2002/0136719A1を参照のこと。
【0071】
有効成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によるか又は界面重合化によって製造されるマイクロカプセル剤、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル剤とポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル剤に、コロイド状の薬物送達系(例えば、リポソーム剤、アルブミンマイクロスフェア剤、ミクロエマルジョン、ナノ粒子剤、及びナノカプセル剤)に、又はマクロエマルジョンに捕捉されてよい。そのような技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントン製薬科学)」第16版、Osol, A. 監修(1980)に開示されている。持続放出調製物も調製してよい。持続放出調製物の好適な例には、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス剤が含まれ、該マトリックス剤は、成形品(例、フィルム剤)又はマイクロカプセル剤の形態である。持続放出マトリックス剤の例には、ポリエステル剤、ヒドロゲル剤(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びエチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸リュープロライドからなる注射用マイクロスフェア剤)のような分解性乳酸−グリコール酸共重合体、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。in vivo 投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【実施例】
【0072】
ハウケランド(Haukeland)大学病院の腫瘍学及び医科物理学部門では、43歳の安定したCFSの女性患者(エプシュタイン・バーウイルス感染の後で、1997年に初診)において、細胞傷害性の化学療法の後で顕著な症状改善が観察された。彼女は、2003年にホジキン病を発症して、化学療法と放射線で治療された。彼女は2004年にリンパ腫を再発して、化学療法で治療された。予測に反して(CFS患者は、一般に、どの種類の薬物及びストレスにも十分に耐えられない)、この患者は、この化学療法の間と後で、CFS症状の顕著な減少を体験した。この変化は、リンパ腫の活性に関連したものと解釈されず、そしてその効果は、化学療法開始後ほぼ5ヶ月間続いてから、CFS様症状が徐々に再発した。投与した化学療法剤には、細胞傷害効果に加えて、免疫調節効果もあった。CFS症状に対する効果は、化学療法の間に投与された薬物、メトトレキサートにより主に媒介されると仮定されている。
【0073】
我々の患者が癌化学療法の間と後で遭遇したことを理解する試みにおいてCFSに関する文献を吟味すると、体験された、顕著であるが一過性の症状改善のあり得る説明と思われたのは、免疫系の修飾であるという結論が下された。CFS患者において見られる慢性のB細胞活性化は、この症状とまた、中枢神経系と血液循環の改変のような報告された生理学的変化と、脳組織、脊髄神経根、又は心筋におけるリンパ球浸潤の報告に重要であるのかもしれない。
【0074】
B細胞除去のあり得る作用形式は、T細胞系との相互作用(それにより炎症プロセスを変化させる)のようないくつかの部位で、そして血管作用性神経ペプチドのような、免疫ホメオスタシスにおいて重要な多面的プレーヤーのレベルに影響を及ぼすことにあり得る。
【0075】
免疫調節性の細胞傷害療法後のCFS患者における疲労及び疼痛の予期せぬ改善とともに上記の既存データを考慮すれば、B細胞除去は、概念として、CFSの治療を可能にし得ると仮定される。
【0076】
目下のところ、B細胞除去の達成は、モノクローナル抗CD20抗体、リツキシマブの使用によって最も容易に達成される。しかしながら、新世代の抗CD20抗体も、推定されるより強力なB細胞除去の達成により、CFS症状に対して少なくとも同様の効果を有すると考えられる。
【0077】
パイロット患者1:
第一のパイロット患者として、上記の女性は、この手技の実験的な性質とそれに伴うリスクについて知らされた後で、リツキシマブ500mg/mを単回注入として受けた。治療前、彼女は、顕著な疲労がある安定したCFSを有して、戸外で働くことも家事をすることもできなかった。彼女は、外出には電動車椅子を使用した。注入後5週目と6週目の間に始まって、彼女は、疲労の著しい減少、筋肉痛の減少、皮膚の灼熱痛の減少、及び頭痛の低下、それに伴うオピオイド鎮痛薬の必要性の漸減といった、顕著な症状改善を体験した。疲労の低下により、彼女は長時間の散歩が可能になり、自らの趣味を再開して、家事をして子供たちの世話をすることができた。彼女はまた、集中する能力を維持する、認知機能の顕著な改善を報告して、再び読書をすることができて、例えばコンピュータ作業もできた。この一回目の注入後の効果は、リツキシマブ注入後14週間まで続いてから低下して、CFS症状が徐々に、完全にではないが再発した。
【0078】
1回目のリツキシマブ注入から5ヶ月後、彼女は再び安定した、無力化させるCFS症状を有した。彼女は、新しい単回注入のリツキシマブを同じ投与量で受けた。6週後、彼女は、生活の質に対する重大な効果を伴う、すべてのCFS症状(疲労、疼痛、認知症状)からの漸次かつ重要な回復を再び体験した。2回目の注入(低用量の500mg/mでの単回注入として)の後で、治療効果は16週まで続いてから、その後症状はゆっくりと、次第に悪化した。
【0079】
そこで、二回目のリツキシマブ注入から18週後より、経口の低用量メトトレキサートを毎週、7.5mg/週より始めて、その用量を次の2ヶ月間は12.5mg/週へ増やすことを決定した。毎週のMtxの開始から12週後、彼女は再び漸次かつ中等度のCFS症状回復を体験している。彼女は現在Mtxを22週間使用して、その改善が中等度で有意であるが、現下では、リツキシマブ治療後ほどは顕著でも迅速でもないと解釈している。しかしながら、彼女は依然としてその状態の漸次改善を体験している。このCFS症状の発現を図1に示す。
【0080】
パイロット患者2:
彼は42歳の男性であり、8年前のエプシュタイン・バー感染後にCFSを発症した。彼には顕著な疲労があって、このことに遭遇して以来、どんな仕事もすることができなかった。彼は1日の大半を肘掛け椅子に座るように束縛された。軽い運動の後で、彼は、消耗、筋肉痛及び頭痛の増加という大問題を抱えた。彼にはまた、発熱感、発汗、及び下痢があった。彼には重篤な認知障害があった。かつては熟練したコンピュータ技師であったが、彼はコンピュータを使うことも、本の1〜2頁以上を文脈に沿って読むこともできなかった。
【0081】
彼にリツキシマブ(500mg/m)の単回注入を与えた。最初に改善した(注入後3週間で)症状は、長く続いていた下痢であった。注入後6週目から、彼は、疲労、疼痛、認知、及び自律神経性の症状において劇的に改善した顕著な反応を体験している。このとき、彼は、マニュアル作業を行って、コンピュータゲームと読書を楽しむことができた。比較的低い用量(単回注入:1000mg)の後では、その効果は12週まできわめて明瞭で、その後徐々に低下した。彼とその家族は、この臨床上の改善が有意なものであり、家族全体の生活の質に重大な影響を及ぼすと記述した。
【0082】
1回目のリツキシマブ注入から5ヵ月後、彼は、今度は2回のリツキシマブ1000mg注入、2週間隔で再治療された。1回目の治療に倣って、彼は初めに(3週後)下痢から回復し始めた。次いで、6週後には、認知症状の減少を報告して、それから数日後には、疲労が改善し始めた。
【0083】
この2回のリツキシマブ注入は、注入から16週後に明瞭なCFS症状改善を最も顕著にもたらした。その後、彼は、その症状のきわめて遅くて漸次の増加を体験している。しかしながら、注入から5ヵ月後、彼は依然として臨床反応を有している(彼は、依然として治療前の状態より良好である)(図1)。彼は、現在、毎週の経口低用量メトトレキサート治療を開始した。
【0084】
パイロット患者3
彼女は22歳の学生であり、7年前の単球増加症の後でCFSを発症している。当初、彼女には、頭痛が含まれる疼痛、認知障害、及び自律神経症状を伴う、顕著な疲労がある発病段階の臨床像があった。しかしながら、この4年間、彼女はいくらかの改善を体験したが、依然として顕著な疲労、過度の睡眠要求、及び軟便が残った。彼女には、中等度の認知障害と中等度の筋肉痛があった。
【0085】
彼女にリツキシマブ(500mg/m)の単回注入を与えた。この患者も、注入後3週間で軟便からの改善を体験した。注入から6週後、彼女は、筋肉痛のいくらかの改善に気づいた。この最初の5ヶ月で、彼女には疲労の軽度改善もあったが、一過性であり、他の患者より短い期間のものであった。
【0086】
しかしながら、注入後6ヶ月目から、彼女は、すべてのCFS症状に対して、この7年間で体験したことのない高い機能レベルまでの重要な臨床反応を体験した。彼女は、フルタイムで勉学することを始めて、問題なく読書することができて、その短期記憶にも顕著な改善を認めた。この劇的な改善は、当時4.5ヶ月続いた。次いで、翌週から、彼女はCFS症状の漸次再発を体験した。彼女は、現在、リツキシマブの新たな注入(2回の注入、500mg/m、2週間隔で投与)を受けている。
【0087】
メトトレキサート(Mtx)は、既知の(しかし十分には理解されていない)免疫調節特性のある治療薬剤である。慢性関節リウマチに対して週1回のスケジュールで経口投与すると、その薬物効果の1つが中等度のB細胞除去であり、それは、機序の上ではリツキシマブの効果に似ているが、さほど明瞭ではない(Edwards et al. NEJM, 2004.「Efficacy of B-Cell Targeting Therapy with Rituximab in Patients with Rheumatoid Arthritis(慢性関節リウマチ患者におけるリツキシマブでのB細胞標的指向療法の効果)」)。この3名のパイロット患者のうちの1人(患者1)について言えば、彼女はメトトレキサートでこの22週間(毎週)治療されて、Mtx開始後10週目から始まる、CFS症状に対する有意で中等度の臨床反応を有した。
【0088】
結論すると、リツキシマブ治療後には3名のパイロット患者のうち3名で重要な臨床反応があり、うち2名では、2回目のリツキシマブ治療後にも繰り返される臨床反応が観察された。
【0089】
3番目の患者は、リツキシマブ注入後6週目では、CFS症状の限定された改善があった。しかしながら、注入後6〜10.5ヶ月で、彼女には、今日まで続く(注入後10.5ヶ月間)、すべてのCFS関連症状の重要な臨床反応があった。次いで、彼女は漸次の再発を有して、現在は新たなリツキシマブ治療を受けている(2回の注入、即ち、彼女の1回目のリツキシマブ治療後47及び49週目)。
【0090】
3名の患者で全5回の治療は、顕著〜中等度の主症状改善をもたらした。これら3名の患者では、症状改善の動態(kinetics)がきわめて似ているが、さらに、患者3では、図1に示すように、重要な遅発性かつ長期持続性の反応がある。この間隔は、Bリンパ球によって産生され得るある種のタンパク質について知られる分解及び半減期と矛盾しない。リツキシマブ治療後の症状の再発現は、補体依存性細胞傷害活性(CDC)を介して、そして抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)によって媒介される、CD20抗原指向性のB細胞溶解の後で幹細胞由来プレ形質細胞B細胞が成熟化することと矛盾しない。これらの未熟なB細胞では、タンパク質の産生、とりわけ抗体の産生が可能であることが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性疲労症候群及び筋痛性脳脊髄炎の治療のためのB細胞除去剤。
【請求項2】
B細胞除去性抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片である、請求項1に記載のB細胞除去剤。
【請求項3】
モノクローナル抗体又はそのCD20結合抗体断片である、請求項2に記載のB細胞除去性抗CD20抗体又はCD20結合抗体断片。
【請求項4】
ヒト化抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片である、請求項2に記載のB細胞除去剤。
【請求項5】
CD20へ結合するB細胞除去性CD20抗体断片であり、好ましくは、F(ab’)、F(ab’)、Fab、Fv、及びsFvからなる群より選択される抗原結合断片である、請求項2に記載のB細胞除去剤。
【請求項6】
ヒト化抗体:リツキシマブ(Rituximab)、オファツムマブ(Ofatumumab)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)、GA101、BCX−301、ベルツズマブ(Veltuzumab)、又はDXL625より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のB細胞除去剤。
【請求項7】
メトトレキサート、TRU−015、又はSBI−087である、請求項1に記載のB細胞除去剤。
【請求項8】
慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎の治療用の請求項1〜6のいずれか1項に記載のB細胞除去剤であって、ここでそのB細胞除去性抗CD20抗体の量は、投与量につき10mg〜5000mgの範囲にある、前記除去剤。
【請求項9】
B細胞除去性抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片であって、50〜2000mg/mの前記抗体の単回治療有効投与量又は50〜2000mg/mの前記抗CD20抗体又はその抗CD20結合抗体断片の頻回治療有効投与量で被検者へ投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のB細胞除去剤。
【請求項10】
慢性疲労症候群及び筋痛性脳脊髄炎を治療する方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載のB細胞除去剤をそれに罹患した被検者へ投与する工程を含んでなる、前記方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のB細胞除去剤の1又は2の注入剤を2週以内に2回投与する工程を含んでなる、慢性疲労症候群及び筋痛性脳脊髄炎を治療するための方法。
【請求項12】
慢性疲労症候群又は筋痛性脳脊髄炎に罹患している被検者へB細胞除去性抗CD20抗体又はそのCD20結合抗体断片のメトトレキサートとの組合せを同時的、分離的、又は連続的に投与することによる、請求項10又は11に記載の慢性疲労症候群及び筋痛性脳脊髄炎を治療する方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のB細胞除去剤の、慢性疲労症候群又は筋痛性脳脊髄炎の治療への使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−508754(P2011−508754A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541057(P2010−541057)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000003
【国際公開番号】WO2009/083602
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(509338400)ベルゲン・テクノロジオーヴァーフォリング・アクティーゼルスカブ (3)
【Fターム(参考)】